説明

脱硝装置及び脱硝方法

【課題】有触媒脱硝に用いる触媒が劣化しても、十分にNOxを除去することができる脱硝装置及び脱硝方法を提供すること。
【解決手段】ボイラ1からの排ガスに無触媒脱硝及び有触媒脱硝を行う脱硝装置100において、ボイラ1の負荷と第1NH注入部7で注入するNHの量とを第1相関関係として予め記憶し、ボイラ1の負荷に応じて第1NH注入部7で注入するNHの量を制御し、ボイラ1の負荷と脱硝触媒設置部9の入口側におけるNOxの濃度である入口NOx濃度Cinとを第2相関関係として予め記憶し、ボイラ1の負荷に応じて入口NOx濃度Cinを予測し、この入口NOx濃度Cinに基づいて第2NH注入部8で注入するNHの量を制御し、脱硝触媒が劣化したと検知した場合には、この劣化に応じて第1相関関係及び第2相関関係を書き換えて、NHの注入量を最適に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝装置及び脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼炉からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去(脱硝)する脱硝装置として、以下の特許文献1に記載の脱硝装置が知られている。この脱硝装置では、燃焼炉である加圧流動層ボイラからの燃焼排ガスにアンモニア(還元剤)を注入し無触媒脱硝を行って低減処理排ガスを得、この低減処理排ガスに更にアンモニアを注入し、脱硝触媒を有する脱硝触媒装置で有触媒脱硝を行って触媒通過排ガスを得、この触媒通過排ガスを煙突から外部に放出している。そして、加圧流動層ボイラの運転負荷と、この運転負荷時の加圧流動層ボイラからの排ガスに含まれるNOxを除去するために必要なアンモニア注入量とを相関させた制御関数をアンモニア注入制御手段に予め設定し、このアンモニア注入制御手段が加圧流動層ボイラからの負荷信号を受けて、上述の制御関数に基づいて上記アンモニア注入量を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような脱硝装置を、燃料を空気と混合させて火炉内を循環させながら燃焼する循環流動層ボイラに適用する場合、循環流動層ボイラでは他の形式のボイラに比して排ガス中に含まれる煤塵の量が多いため、この煤塵が有触媒脱硝に用いる触媒に詰まって、触媒が劣化するおそれがある。また、循環流動層ボイラでは、石炭等の化石燃料以外に、バイオマス、廃プラスチック、廃タイヤ、汚泥、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)、及びRDF(Refuse Derived Fuel)等の燃料を燃焼することが可能であるが、これらの燃料には、鉛や亜鉛等の重金属類、ナトリウム、カリウム、及びリン等が含まれており、これらの物質が触媒を劣化させるおそれがある。
【0005】
このように、触媒が劣化すると、有触媒脱硝におけるNOxの除去効率が低下するため、上述の脱硝装置のようにボイラの負荷とアンモニア注入量とを相関させた制御関数を用いてアンモニア注入量を制御しても、所望通りにNOxを十分除去できない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、有触媒脱硝に用いる触媒が劣化しても、十分にNOxを除去することができる脱硝装置及び脱硝方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱硝装置は、燃焼炉で発生するNOxを含有した排ガスに、還元剤を注入して無触媒脱硝を行う無触媒脱硝手段と、無触媒脱硝を行った排ガスに還元剤を注入し、脱硝触媒を用いて有触媒脱硝を行う有触媒脱硝手段とを備える脱硝装置であって、燃焼炉の負荷と無触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量との相関関係である第1相関関係を予め記憶し、第1相関関係に基づいて無触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量を制御し、且つ、燃焼炉の負荷と脱硝触媒の入口側におけるNOxの濃度である入口NOx濃度との相関関係である第2相関関係を予め記憶し、第2相関関係に基づいて入口NOx濃度を予測し、当該入口NOx濃度に基づいて有触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量を制御する制御手段と、脱硝触媒の劣化を検知する触媒劣化検知手段とを備え、制御手段は、触媒劣化検知手段により脱硝触媒が劣化したと検知した場合に、脱硝触媒の劣化に応じて第1相関関係及び第2相関関係を書き換えることが可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る脱硝方法は、燃焼炉で発生するNOxを含有した排ガスに、還元剤を注入して無触媒脱硝を行い、無触媒脱硝を行った排ガスに還元剤を注入し、脱硝触媒を用いて有触媒脱硝を行う脱硝方法であって、燃焼炉の負荷と無触媒脱硝で注入する還元剤の注入量との相関関係である第1相関関係を予め記憶し、第1相関関係に基づいて無触媒脱硝で注入する還元剤の注入量を制御し、且つ、燃焼炉の負荷と脱硝触媒の入口側におけるNOxの濃度である入口NOx濃度との相関関係である第2相関関係を予め記憶し、第2相関関係に基づいて入口NOx濃度を予測し、当該入口NOx濃度に基づいて有触媒脱硝で注入する還元剤の注入量を制御し、脱硝触媒が劣化したと検知した場合に、脱硝触媒の劣化に応じて第1相関関係及び第2相関関係を書き換えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、燃焼炉の負荷と無触媒脱硝で注入する還元剤の量とが第1相関関係として予め記憶され、燃焼炉の負荷に応じて無触媒脱硝手段で注入する還元剤の量が制御される。また、燃焼炉の負荷と入口NOx濃度とが第2相関関係として予め記憶され、燃焼炉の負荷から入口NOx濃度が予測され、この入口NOx濃度に応じて有触媒脱硝で注入する還元剤の量が制御される。そして、脱硝触媒が劣化したと検知した場合には、脱硝触媒の劣化に応じて第1相関関係及び第2相関関係が書き換えられて還元剤の注入量を最適に調整でき、従って、有触媒脱硝に用いる触媒が劣化しても、十分にNOxを除去することができる。
【0010】
ここで、制御手段は、燃焼炉で燃焼する燃料の種類に応じて、第1相関関係及び第2相関関係を複数記憶することが可能であることが好ましい。こうすると、燃焼炉で燃焼する燃料の種類に応じて、還元剤の注入量を一層最適に調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有触媒脱硝に用いる触媒が劣化しても、十分にNOxを除去することができる脱硝装置及び脱硝方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る脱硝方法を適用した脱硝装置を示す構成図である。
【図2】第1相関関係を示すグラフである。
【図3】第2相関関係を示すグラフである。
【図4】図1に示す脱硝装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の脱硝装置及び脱硝方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る脱硝方法を適用した脱硝装置を示す構成図である。図1に示すように、脱硝装置100は、ここでは循環流動層ボイラであるボイラ(燃焼炉)1を備えるプラントPに設けられるものであり、ボイラ1からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去するための装置である。
【0015】
プラントPでは、先ず、ボイラ1で、石炭等の化石燃料の他、バイオマス、廃プラスチック、廃タイヤ、汚泥、RPF、及びRDF等の燃料が、ボイラ1内に給気された空気と混合されて、ボイラ1内を循環しながら燃焼され、この燃焼により煤塵等の固体粒子やNOxを含有する排ガスが発生し、この排ガスがボイラ1の上部に接続された第1ダクトD1からサイクロン2に送られる。サイクロン2では、遠心分離による固気分離により、排ガスから固体粒子が分離され、固気分離された固体粒子は、サイクロン2の下部から配管を通じてボイラ1に戻され、一方、固体粒子が分離された排ガスは、サイクロン2の上部から配管を通じて熱回収部3,4に送られる。熱回収部3,4では、排ガスから熱が回収され、熱回収後の排ガスは第2ダクトD2を通じて排ガス浄化装置5に送られる。排ガス浄化装置5では、排ガスに未だ同伴している飛灰等の微細な固体粒子が除去されると共に排ガスの脱硫が行われて排ガスが浄化され、この浄化済みの排ガスが煙突6を通じて外部に放出される。
【0016】
このようなプラントPに設けられる脱硝装置100は、第1NH(アンモニア)注入部7、第2NH注入部8、脱硝触媒設置部9、触媒入口O濃度計10、触媒入口NOx濃度計11、触媒出口O濃度計12、触媒出口NOx濃度計13、触媒出口NH濃度計14、排ガス流量算出部15、触媒劣化検知部16、ボイラ運転部17、及び脱硝分配部18を備えている。
【0017】
第1NH注入部7は、ボイラ1で発生するNOxを含有した排ガスに還元剤(ここでは、NH)を注入して無触媒脱硝を行う無触媒脱硝手段として機能するものであり、ボイラ1とサイクロン2との間の第1ダクトD1にNHを注入するように設けられている。なお、無触媒脱硝は、例えば、排ガスの温度が700〜1100℃程度の領域で行われる。
【0018】
第2NH注入部8は、第1ダクトD1で無触媒脱硝を行った排ガスにNHを注入するものであり、熱回収部3,4の間にNHを注入するように設けられている。また、脱硝触媒設置部9は、第2NH注入部8からアンモニアが注入された排ガスを、設置した脱硝触媒に通過させてNOxを除去するためのものであり、第2NH注入部8と熱回収部4との間に配置されている。このように、第2NH注入部8と脱硝触媒設置部9とが、第1NH注入部7で無触媒脱硝を行った排ガスにNHを注入し、その後、脱硝触媒を用いて有触媒脱硝を行う有触媒脱硝手段として機能する。ここで、脱硝触媒としては、例えば、セラミックにバナジウムを担持させたものが用いられる。また、脱硝触媒の表面積である触媒表面積S(m)は、プラントPの運転条件により決まる固定値であり、触媒劣化検知部16に予め記憶されている。なお、有触媒脱硝は、例えば、排ガスの温度が200〜400℃程度の領域で行われる。
【0019】
第1NH注入部7及び第2NH注入部8には、これらにNHを供給するためのNH供給部19が接続されている。第1NH注入部7とNH供給部19とを接続する配管には、第1NH注入部7に供給されるNHの量である第1NH注入量Ain1(Nm/h)を測定する第1NH流量計20と、第1NH注入部7に供給されるNHの量を調節する第1調節弁21とが設けられている。
【0020】
第2NH注入部8とNH供給部19とを接続する配管には、第2NH注入部8に供給されるNHの量である第2NH注入量Ain2(Nm/h)を測定する第2NH流量計22と、第2NH注入部8に供給されるNHの量を調節する第2調節弁23とが設けられている。
【0021】
触媒入口O濃度計10は、第2NH注入部8と脱硝触媒設置部9との間に配置され、脱硝触媒設置部9の入口側における排ガス中のOの濃度である入口O濃度Bin(%)を測定するものである。この触媒入口O濃度計10は、触媒劣化検知部16と接続されており、測定された入口O濃度Binを触媒劣化検知部16に出力する。
【0022】
触媒入口NOx濃度計11は、第2NH注入部8と脱硝触媒設置部9との間に配置され、脱硝触媒設置部9の入口側における排ガス中のNOxの濃度である入口NOx濃度Cin(ppm)を測定するものである。この触媒入口NOx濃度計11は、触媒劣化検知部16と接続されており、測定された入口NOx濃度Cinを触媒劣化検知部16に出力する。
【0023】
ここで、脱硝触媒設置部9の入口側に配置される上述の触媒入口O濃度計10及び触媒入口NOx濃度計11は、排ガスに未だ同伴している飛灰等の微細な固体粒子により劣化や不具合を生じるおそれがあるため、間欠的に動作させることが好ましい。そのため、本実施形態においては、触媒入口O濃度計10及び触媒入口NOx濃度計11は、詳しくは後述する触媒劣化検知部16による脱硝触媒の劣化の判定時にのみ動作し、それ以外の運転時には動作しないようにしている。
【0024】
触媒出口O濃度計12は、第2ダクトD2に配置され、脱硝触媒設置部9の出口側における排ガス中のOの濃度である出口O濃度Bout(%)を測定するものである。この触媒出口O濃度計12は、触媒劣化検知部16と接続されており、測定された出口O濃度Boutを触媒劣化検知部16に出力する。
【0025】
触媒出口NOx濃度計13は、第2ダクトD2に配置され、脱硝触媒設置部9の出口側における排ガス中のNOxの濃度である出口NOx濃度Cout(ppm)を測定するものである。この触媒出口NOx濃度計13は、触媒劣化検知部16と接続されており、測定された出口NOx濃度Coutを触媒劣化検知部16に出力する。また、触媒出口NOx濃度計13は、脱硝分配部18と接続されており、測定された出口NOx濃度Coutを脱硝分配部18に出力する。
【0026】
触媒出口NH濃度計14は、第2ダクトD2に配置され、脱硝触媒設置部9の出口側における排ガス中のNHの濃度である出口NH濃度Aout(ppm)を測定するものである。この触媒出口NH濃度計14は、触媒劣化検知部16と接続されており、測定された出口NH濃度Aoutを触媒劣化検知部16に出力する。
【0027】
排ガス流量算出部15は、第1ダクトD1を通過する排ガスの流量である排ガス量G(Nm/h)を算出するものであり、触媒劣化検知部16に接続され、算出した排ガス量Gを触媒劣化検知部16に出力する。なお、排ガス流量算出部15が排ガス量Gを算出する方法としては、第1ダクトD1に流量計を設置してこの流量計により測定される値を用いて算出する方法、ボイラ1の負荷から算出する方法、及び、ボイラ1で燃焼する燃料の量から算出する方法等が用いられる。
【0028】
触媒劣化検知部16は、脱硝触媒が所定以上に劣化したか否かを検知する触媒劣化検知手段として機能するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットで構成されている。この触媒劣化検知部16は、入力された各種の値を用いて、下記式(1)で表される反応速度定数Kを算出する。そして、触媒劣化検知部16は、反応速度定数Kが予め記憶されている所定の閾値を下回っているか否かを判定することにより、脱硝触媒が所定以上に劣化したか否かを判定して脱硝触媒の劣化を検知する。
【数1】

【0029】
ここで、AV(Nm/h)は面積速度、Effは脱硝効率、αはモル比を表している。また、Cin6%、Cout6%、Aout6%は、脱硝触媒設置部9の入口側及び出口側の酸素濃度であるBin及びBoutを用いて、同じ酸素濃度下(ここでは6%)における濃度に換算した値である。
【0030】
この触媒劣化検知部16は、脱硝分配部18と接続されており、脱硝触媒が所定以上に劣化したと検知した場合に、その旨の信号を脱硝分配部18に出力する。
【0031】
ボイラ運転部17は、ボイラ1の運転を制御するためのものであり、触媒劣化検知部16と同様に、電子制御ユニットで構成されている。このボイラ運転部17は、脱硝分配部18と接続されており、ボイラ1の負荷やボイラ1で燃焼する燃料の種類といった情報を脱硝分配部18に出力する。なお、ボイラ1の負荷は、例えば、ボイラ1で燃焼する燃料の量から決定することができる。
【0032】
脱硝分配部18は、NH供給部19から第1NH注入部7及び第2NH注入部8に供給されるNHの量を決定し制御する制御手段として機能するものであり、触媒劣化検知部16と同様に、電子制御ユニットで構成されている。
【0033】
図2は第1相関関係を示すグラフ、図3は第2相関関係を示すグラフである。脱硝分配部18は、図2に示すような、ボイラ1の負荷(横軸)と第1NH注入量Ain1(縦軸)との相関関係である第1相関関係を示すグラフを記憶している。この第1相関関係を示すグラフは、脱硝触媒の劣化の程度及びボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じて、複数記憶されている。これにより、脱硝分配部18は、脱硝触媒の劣化の程度及びボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じて、ボイラ運転部17から入力されたボイラ1の負荷の情報を基に、第1NH注入部7に供給する第1NH注入量Ain1を決定する(詳しくは後述)。
【0034】
ここで、決定された第1NH注入量Ain1に従って、NHを第1NH注入部7に供給した場合に、無触媒脱硝を行った排ガスに残留するNOxの濃度(入口NOx濃度Cin)は、例えば、プラントPの試運転時に測定し記憶しておくことで、その後は予測することが可能である。すなわち、ボイラ1の負荷を基に第1NH注入量Ain1を決定すると同時に、その時の入口NOx濃度Cinを予測することが可能である。
【0035】
そこで、脱硝分配部18は、入口NOx濃度Cinを予測すべく、図3に示すような、ボイラ1の負荷(横軸)と入口NOx濃度Cin(縦軸)との相関関係である第2相関関係を示すグラフを記憶している。この第2相関関係を示すグラフは、上述のように、例えば、プラントPの試運転時の測定結果から作成することが可能である。また、この第2相関関係を示すグラフは、第1相関関係を示すグラフに対応して、脱硝触媒の劣化の程度及びボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じ複数記憶されている。これにより、脱硝分配部18は、脱硝触媒の劣化の程度及びボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じて、ボイラ運転部17から入力されたボイラ1の負荷の情報を基に、入口NOx濃度Cinを予測する(詳しくは後述)。
【0036】
さらに、脱硝分配部18は、第2相関関係から予測された入口NOx濃度Cinに基づいて、下記式(2)により、第2NH注入量Ain2を決定する。
【数2】

【0037】
ここで、Ctargetは、有触媒脱硝後における目標のNOxの濃度である脱硝目標NOx濃度(ppm)を表している。
【0038】
脱硝分配部18は、触媒劣化検知部16から脱硝触媒設置部9が所定以上に劣化した旨の信号を入力された場合に、第1NH注入量Ain1を決定するためのグラフ、及び、入口NOx濃度Cinを予測するためのグラフを、記憶されている他のグラフに書き換えることが可能となっている(詳しくは後述)。
【0039】
脱硝分配部18には、図示しない手動スイッチが設けられている。この手動スイッチが押されると、脱硝分配部18は、触媒劣化検知部16から脱硝触媒設置部9が所定以上に劣化した旨の信号を入力していない場合でも、第1NH注入量Ain1を決定するためのグラフ、及び、入口NOx濃度Cinを予測するためのグラフを、記憶されている他のグラフに強制的に書き換えることが可能となっている。
【0040】
手動スイッチが押される場合としては、例えば、第2NH注入部8が詰まった等の不具合により、有触媒脱硝における第2NH注入量Ain2が所望通りに得られないときに、強制的に、有触媒脱硝における第2NH注入量Ain2を減らして、代わりに、無触媒脱硝における第1NH注入量Ain1を増やす場合等が挙げられる。また、例えば、プラントPの定期検査時等にプラントPを停止させて、脱硝触媒設置部9の抜き取り検査を行い、脱硝触媒が劣化していると判断されたときに、強制的に、有触媒脱硝における第2NH注入量Ain2を減らして、代わりに、無触媒脱硝における第1NH注入量Ain1を増やす場合等が挙げられる。
【0041】
脱硝分配部18は、第1調節弁21と接続されており、決定された第1NH注入量Ain1が得られるように、第1調節弁21に制御信号(a)を送る。また、脱硝分配部18は、第2調節弁23と接続されており、決定された第2NH注入量Ain2が得られるように、第2調節弁23に制御信号(b)を送る。
【0042】
なお、脱硝分配部18は、触媒出口NOx濃度計13から入力された出口NOx濃度Coutにより、所望の脱硝性能が発揮されているか否かを確認し、フィードバック制御を行うことが可能となっている。
【0043】
次に、脱硝装置100の動作について説明する。
【0044】
図4は、図1に示す脱硝装置の動作を示すフローチャートである。
【0045】
図4に示すように、脱硝装置100の動作は、脱硝分配部18が、触媒劣化検知部16から脱硝触媒が所定以上に劣化した旨の信号を入力されたか否かを判定する触媒劣化進行自動判定を実行することから始まる(ステップS101)。脱硝触媒が所定以上に劣化したか否かは、触媒劣化検知部16が反応速度定数Kを算出し、この反応速度定数Kが予め記憶されている所定の閾値を下回っているか否かを判定することにより判定する。この触媒劣化検知部16による判定は、所定の間隔、例えば1日1回程度の頻度で行われ、それ以外の運転時には行われない。
【0046】
ステップS101にて、信号を入力していないと判定した場合、脱硝分配部18は、手動スイッチが押されたか否かを判定する触媒劣化進行手動判定を実行する(ステップS103)。
【0047】
ステップS103にて、手動スイッチが押されていないと判定した場合、脱硝分配部18は、NH供給部19から第1NH注入部7及び第2NH注入部8に供給されるNHの量を調整する脱硝分配調整は不要と判断し、脱硝装置100の一連の動作は終了する。
【0048】
一方、ステップS101にて信号を入力されたと判定した場合、又は、ステップS103にて手動スイッチが押されたと判定した場合には、脱硝分配部18は、脱硝分配調整が必要と判断する(ステップS105)。
【0049】
ここで、脱硝触媒の劣化が少ない場合、有触媒脱硝における脱硝効率は高いため、有触媒脱硝を積極的に行うべく、無触媒脱硝における第1NH注入量Ain1を少なくし、有触媒脱硝における第2NH注入量Ain2を多くした方が好ましい。そこで、脱硝分配部18は、図2(a)に示すような、第1NH注入量Ain1が少ないグラフを選択して第1NH注入量Ain1を決定し、決定された第1NH注入量Ain1に従って第1調節弁21に制御信号(a)を送信して第1NH注入部7からNHを注入する共に、図3(a)に示すような、入口NOx濃度Cinが高いグラフを選択して入口NOx濃度Cinを予測し、上述の式(2)に基づいて、第2NH注入量Ain2を決定し、決定された第2NH注入量Ain2に従って第2調節弁23に制御信号(b)を送信して第2NH注入部8からNHを注入する。
【0050】
その後、プラントPの運転により、脱硝触媒が劣化してきた場合には、有触媒脱硝における脱硝効率は低下してくるため、無触媒脱硝も利用すべく、無触媒脱硝における第1NH注入量Ain1を増やし、有触媒脱硝における第2NH注入量Ain2を減らした方が好ましい。
【0051】
そこで、ステップS105にて脱硝分配調整が必要と判断すると、脱硝分配部18は、次に、脱硝触媒の劣化に応じて、第1NH注入量Ain1を決定するためのグラフを、図2(b),(c)に示すように、第1NH注入量Ain1が多いグラフに段階的に書き換え(ステップS107)、これと対応するように、入口NOx濃度Cinを予測するためのグラフを、図3(b),(c)に示すように、入口NOx濃度Cinが低いグラフに段階的に書き換える(ステップS109)。そして、脱硝装置100の一連の動作は終了し、書き換えたグラフに基づいて決定された第1NH注入量Ain1、及び、第2NH注入量Ain2に従って、第1NH注入部7、及び、第2NH注入部8からNHを注入する。
【0052】
このように、本実施形態に係る脱硝装置100では、ボイラ1の負荷と、無触媒脱硝で注入するNHの量である第1NH注入量Ain1とが、第1相関関係として脱硝分配部18に予め記憶され、ボイラ1の負荷に応じて第1NH注入量Ain1が制御される。また、ボイラ1の負荷と、脱硝触媒設置部9の入口側における排ガス中のNOxの濃度である入口NOx濃度Cinとが、第2相関関係として脱硝分配部18に予め記憶され、ボイラ1の負荷に応じて入口NOx濃度Cinが予測され、この入口NOx濃度Cinに応じて有触媒脱硝で注入するNHの量である第2NH注入量Ain2が制御される。そして、脱硝触媒が劣化したと検知された場合には、脱硝触媒の劣化に応じて第1相関関係及び第2相関関係が書き換えられ、これにより、NHの注入量を最適に調整でき、従って、有触媒脱硝に用いる脱硝触媒が劣化しても、十分にNOxを除去することができる。
【0053】
また、このように、本実施形態に係る脱硝装置100では、予め記憶された第2相関関係から入口NOx濃度Cinが予測されるため、触媒入口NOx濃度計11を脱硝触媒の劣化の判定時にのみ動作させ、それ以外の運転時には動作させないようにすることができる。これにより、触媒入口NOx濃度計11の劣化や不具合を抑制することができる。
【0054】
また、脱硝分配部18は、ボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じて、第1相関関係及び第2相関関係を複数記憶しているため、ボイラ1で燃焼する燃料の種類に応じて、NHの注入量をより一層最適に調整することができる。
【0055】
以上、本発明の脱硝装置及び脱硝方法に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、脱硝分配部18は、第1相関関係及び第2相関関係をグラフとして記憶しているが、これに代えて、第1相関関係及び第2相関関係を関数として記憶していても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、還元剤としてNHを使用しているが、これに代えて、尿素水を使用しても良い。さらに、第1NH注入部7及び第2NH注入部8で注入する還元剤は、同一のものであっても良いし、異なるものであっても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、無触媒脱硝手段である第1NH注入部7は、第1ダクトD1に設けられているが、ボイラ1に設けられても良い。さらに、上記実施形態では、有触媒脱硝手段である第2NH注入部8及び脱硝触媒設置部9は、熱回収部3,4の間に設けられているが、これに限らず、排ガスの流れる方向において無触媒脱硝手段である第1NH注入部7の下流側にあれば良い。
【符号の説明】
【0058】
1…ボイラ(燃焼炉)、7…第1NH注入部(無触媒脱硝手段)、8…第2NH注入部(有触媒脱硝手段)、9…脱硝触媒設置部(有触媒脱硝手段)、16…触媒劣化検知部(触媒劣化検知手段)、18…脱硝分配部(制御手段)、100…脱硝装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼炉で発生するNOxを含有した排ガスに、還元剤を注入して無触媒脱硝を行う無触媒脱硝手段と、前記無触媒脱硝を行った排ガスに還元剤を注入し、脱硝触媒を用いて有触媒脱硝を行う有触媒脱硝手段とを備える脱硝装置であって、
前記燃焼炉の負荷と前記無触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量との相関関係である第1相関関係を予め記憶し、前記第1相関関係に基づいて前記無触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量を制御し、且つ、前記燃焼炉の負荷と前記脱硝触媒の入口側におけるNOxの濃度である入口NOx濃度との相関関係である第2相関関係を予め記憶し、前記第2相関関係に基づいて入口NOx濃度を予測し、当該入口NOx濃度に基づいて前記有触媒脱硝手段で注入する還元剤の注入量を制御する制御手段と、
前記脱硝触媒の劣化を検知する触媒劣化検知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記触媒劣化検知手段により前記脱硝触媒が劣化したと検知した場合に、前記脱硝触媒の劣化に応じて前記第1相関関係及び前記第2相関関係を書き換えることが可能であること、
を特徴とする脱硝装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記燃焼炉で燃焼する燃料の種類に応じて、前記第1相関関係及び前記第2相関関係を複数記憶することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の脱硝装置。
【請求項3】
燃焼炉で発生するNOxを含有した排ガスに、還元剤を注入して無触媒脱硝を行い、前記無触媒脱硝を行った排ガスに還元剤を注入し、脱硝触媒を用いて有触媒脱硝を行う脱硝方法であって、
前記燃焼炉の負荷と前記無触媒脱硝で注入する還元剤の注入量との相関関係である第1相関関係を予め記憶し、前記第1相関関係に基づいて前記無触媒脱硝で注入する還元剤の注入量を制御し、且つ、前記燃焼炉の負荷と前記脱硝触媒の入口側におけるNOxの濃度である入口NOx濃度との相関関係である第2相関関係を予め記憶し、前記第2相関関係に基づいて入口NOx濃度を予測し、当該入口NOx濃度に基づいて前記有触媒脱硝で注入する還元剤の注入量を制御し、
前記脱硝触媒が劣化したと検知した場合に、前記脱硝触媒の劣化に応じて前記第1相関関係及び前記第2相関関係を書き換えること、
を特徴とする脱硝方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239970(P2012−239970A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111472(P2011−111472)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】