説明

脱穀装置のグレンシーブ着脱構造

【課題】 構造の複雑化や揺動選別機構の重量化を招くことなく、グレンシーブのメンテナンス性や耐久性の向上を図れるようにする。
【解決手段】 揺動選別機構11に、脱穀処理後の処理物から穀粒を篩い分けるグレンシーブ24を、揺動選別機構11の左右の側壁53,54にわたるように装備した脱穀装置のグレンシーブ着脱構造において、揺動選別機構11の右側壁53の下縁部53Aに、グレンシーブ24の右端部との係合を可能にする係合部55を形成し、かつ、右側壁53に、グレンシーブ24の左端部との連結具62による連結を可能にする連結部54B,57を形成して、揺動選別機構11の底部にグレンシーブ24を着脱可能に装備するように構成し、脱穀装置の左側壁34に、グレンシーブ24の抜き差しを許容する開口34Aを形成するとともに、その開口34Aを閉塞する蓋体63を着脱可能に装備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動選別機構に、穀粒の漏下を許容するグレンシーブを、前記揺動選別機構の右側壁と左側壁とにわたるように装備してある脱穀装置のグレンシーブ着脱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置のグレンシーブ着脱構造としては、揺動選別ケース(シーブケース)の第1側壁(左右一方の側壁)に、揺動選別ケースの横外方からのグレンシーブの抜き差しを可能にする第1開口部を形成し、この第1開口部を介して、揺動選別ケースに対するグレンシーブの着脱を行うように構成し、グレンシーブの一端部に、揺動選別ケースへのグレンシーブの装着に伴って第1開口部を閉塞し、かつ、第1側壁に着脱可能に連結される蓋材を備え、揺動選別ケースの第1側壁に対向する脱穀装置の側板に、蓋材を備えたグレンシーブの出し入れを可能にする第2開口部を形成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平09−191753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来構成では、第1開口部を閉塞する蓋材をグレンシーブに備えることにより、蓋材を含むグレンシーブ全体としての重量が重くなる。そのため、グレンシーブの着脱に要する労力が大きくなる。また、蓋材をグレンシーブに備えることにより、脱穀装置の側板に形成する第2開口部を、蓋材の出し入れを許容するために、蓋材の面積よりも大きい開口面積を有するように形成する必要があり、さらに、その第2開口部を閉塞する蓋を、第2開口部の開口面積よりも大きい面積を有するように形成する必要がある。そのため、第2開口部を閉塞する蓋の重量が重くなり、その蓋の着脱に要する労力が大きくなる。つまり、グレンシーブの清掃や交換などのメンテナンスを行う場合に要する労力の軽減を図る上において改善の余地がある。
【0004】
また、上記の従来構成では、グレンシーブの支持が、グレンシーブの一端部に備えた蓋材を揺動選別ケースの第1側壁に連結する片持ち支持となるため、耐久性の面で改善の余地がある。
【0005】
そこで、前述した特許文献1に記載の発明には、グレンシーブの蓋材とは反対側の端部と、この端部に対応する揺動選別ケースの第2側壁とに、互いに係脱自在な係合突部と係合穴とを振り分け配備する構成が記載されており、この構成を採用することにより、グレンシーブの支持を、グレンシーブの一端側での前述した蓋材と第1側壁との連結と、グレンシーブの他端側での係合突部と係合穴との係合とによる両持ち支持とすることができる。
【0006】
しかしながら、前述した従来構成において単純に上記の係合構造を採用すると、前述した従来構成は、一端部に蓋材を備えたグレンシーブを揺動選別ケースの第1開口部から抜き差しする構成であることから、係合突部と係合穴とを係合する際に、それらの位置関係を第1開口部から目視確認しようとしても、蓋材が邪魔になって、係合突部と係合穴との位置関係を目視確認することが極めて困難になり、係合突部と係合穴との係合に手間取ることになる。
【0007】
その係合を容易にするために、グレンシーブと蓋材とを独立構成することも考えられるが、この場合には、グレンシーブのメンテナンス時に、グレンシーブと蓋材とを揺動選別ケースに対して個々に着脱させる手間を要することになり、結果、グレンシーブのメンテナンス性を低下させることになる。
【0008】
そこで、前述した特許文献1に記載の発明には、グレンシーブの係合側の端部が揺動選別ケースとの係合位置に向かうようにグレンシーブを案内するガイドレールを、揺動選別ケースの第1側壁と第2側壁とにわたって架設する構成が記載されている。しかしながら、この構成では、ガイドレールを備えることによって構造の複雑化や揺動選別機構の重量化を招くことになる。
【0009】
つまり、上記の構成では、グレンシーブのメンテナンス性を低下させることなく揺動選別機構の耐久性を向上させるためには、構造の複雑化や揺動選別機構の重量化を招くようになる。
【0010】
本発明の目的は、構造の複雑化や揺動選別機構の重量化を招くことなく、グレンシーブのメンテナンス性や耐久性の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
揺動選別機構に、脱穀処理後の処理物から穀粒を篩い分けるグレンシーブを、前記揺動選別機構の右側壁と左側壁とにわたるように装備してある脱穀装置のグレンシーブ着脱構造において、
前記右側壁と前記左側壁のうちの一方の側壁の下縁部に、その一方の側壁と同じ側に位置する前記グレンシーブの左右一端部との係合を可能にする係合部を形成し、
かつ、前記右側壁と前記左側壁のうちの他方の側壁に、その他方の側壁と同じ側に位置する前記グレンシーブの左右他端部との連結具による連結を可能にする連結部を形成することにより、
前記揺動選別機構の底部に前記グレンシーブを着脱可能に装備するように構成し、
前記連結部が位置する側の脱穀装置の側壁に、前記グレンシーブの抜き差しを許容する開口を形成するとともに、その開口を閉塞する蓋体を着脱可能に装備してあることを特徴とする。
【0012】
この特徴構成によると、グレンシーブの清掃や交換などのメンテナンスを行う場合には、先ず、脱穀装置の側壁から蓋体を取り外して開口を開放する。次に、その開口から手を差し入れて、連結具による揺動選別機構の連結部とグレンシーブの左右他端部との連結を解除し、その解除後に、揺動選別機構の係合部とグレンシーブの左右一端部との係合を解除して、揺動選別機構の底部からグレンシーブを取り外すとともに開口からグレンシーブを取り出す。これにより、グレンシーブの清掃や交換などを行える。
【0013】
グレンシーブの清掃や交換などを行った後は、先ず、メンテナンス後のグレンシーブを、開口から、揺動選別機構の下方の空間に差し入れる。次に、その開口から、揺動選別機構の係合部と、その下方に位置するグレンシーブの左右一端部との位置関係を目視確認しながら、揺動選別機構の係合部にグレンシーブの左右一端部を係合する。その後、連結具によりグレンシーブの左右他端部を揺動選別機構の連結部に連結する。これにより、揺動選別機構の底部にグレンシーブが取り付けられる。そして、その連結後に、脱穀装置の側壁に蓋体を取り付けて開口を閉塞する。
【0014】
つまり、揺動選別機構における一方の側壁の下縁部に係合部を形成し、揺動選別機構の底部にグレンシーブを装備することにより、揺動選別機構に対するグレンシーブの着脱を揺動選別機構の下方の空間を利用して行える。そのため、前述した従来構造のように、揺動選別機構の他方の側壁に、グレンシーブの抜き差しを可能にする開口を形成する必要がなく、また、その開口を閉塞する蓋体をグレンシーブの左右他端部に備える必要もなくなる。
【0015】
これにより、グレンシーブの軽量化を図ることかでき、グレンシーブの着脱に要する労力を軽減することができる。
【0016】
また、脱穀装置の側壁に形成する開口を、グレンシーブの抜き差しを許容する程度の開口面積を有する比較的小さいものにすることができ、その開口を閉塞する蓋体として、その開口の開口面積よりも大きい面積を有する程度の比較的小さいものを採用することができる。その結果、蓋体の軽量化を図ることができ、その蓋体の着脱に要する労力を軽減することができる。
【0017】
しかも、グレンシーブの支持を、揺動選別機構の係合部にグレンシーブの左右一端部を係合し、かつ、連結具によりグレンシーブの左右他端部を揺動選別機構の連結部に連結することによる両持ち支持としながらも、揺動選別機構の係合部にグレンシーブの左右一端部を係合する際には、それらの位置関係を開口から容易に目視確認することができ、これにより、それらの係合を、ガイドレールなどを要することなく速やかに行うことができる。
【0018】
従って、構造の複雑化や揺動選別機構の重量化を招くことなく、グレンシーブのメンテナンス性や耐久性の向上を図ることができる。
【0019】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記脱穀装置の前記側壁に装備されるベルトテンション式の伝動機構に、この伝動機構の伝動ベルトが緊張する緊張状態と弛緩する弛緩状態との切り換えを可能にする付勢機構を備え、
前記付勢機構に、前記伝動ベルトを緊張付勢するバネと、前記脱穀装置の前記側壁に揺動可能かつ着脱可能に係合される操作レバーとを備え、
前記付勢機構を、前記操作レバーの揺動操作により、前記バネが前記伝動ベルトを緊張付勢する付勢状態とその付勢を解除する解除状態とに切り換えられるように構成してあることを特徴とする。
【0020】
ところで、脱穀装置には、揺動選別機構の他に、選別後の穀粒を搬送する1番スクリュー、選別後の未脱穀粒や切れワラなどが混在する混在物を搬送する2番スクリュー、および、選別に伴って舞い上がる塵埃などを機外に排出する排塵ファン、などが装備され、それらに対する伝動を可能にするベルトテンション式の伝動機構が脱穀装置の側壁に配備されている。
【0021】
そのため、脱穀装置の側壁に形成した開口からグレンシーブの抜き差しを行う場合には、脱穀装置の側壁に配備した伝動機構の伝動ベルトなどが邪魔になることがある。
【0022】
そこで、この請求項2に記載の発明では上記の特徴構成を採択しているのであり、これにより、グレンシーブのメンテナンスを行う場合には、操作レバーの揺動操作によりバネを付勢状態から解除状態に切り換えて、伝動機構を緊張状態から弛緩状態に切り換える。そして、この切り換えによって弛みが生じた伝動ベルトを伝動プーリから外すことなどにより、伝動ベルトを開口の開口領域から外すようにする。また、開口の開口領域に操作レバーが位置する場合には、脱穀装置の側壁から操作レバーを取り外す。
【0023】
これにより、脱穀装置の側壁に形成した開口からのグレンシーブの抜き差しを、伝動機構の伝動ベルトなどによって邪魔されることなく速やかに行うことができる。
【0024】
グレンシーブのメンテナンス後は、伝動ベルトの伝動プーリへの巻き掛けなどを行い、その後、脱穀装置の側壁から操作レバーを取り外した場合には脱穀装置の側壁に操作レバーを取り付け、操作レバーの揺動操作によりバネを解除状態から付勢状態に切り換えて、伝動機構を弛緩状態から緊張状態に切り換える。
【0025】
これにより、伝動機構を元の伝動可能状態に簡単に戻すことができる。
【0026】
従って、脱穀装置の側壁にベルトテンション式の伝動機構が配備された場合であっても、グレンシーブのメンテナンス性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る脱穀装置のグレンシーブ着脱構造を、自脱型コンバインの脱穀装置に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断側面図である。この図に示すように、脱穀装置は、車体フレーム(図示せず)の左半部に搭載された下部ケース1、および、その下部ケース1に開閉操作可能に連結された上部ケース2、などにより処理空間が形成されている。下部ケース1の左側部には、突起付きの無端回動チェーンからなるフィードチェーン3が配備されている。フィードチェーン3は、図外の刈取搬送装置により搬送された刈取穀稈の株元側を、刈取搬送装置から受け取るとともに、上部ケース2の左側部に配備した挟持レール(図示せず)との間に挟持して後方に向けて搬送することにより、刈取穀稈の穂先側を、下部ケース1と上部ケース2との間に形成された供給口4から処理空間に供給する。
【0029】
処理空間には、刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す脱穀部5、脱穀処理により得られた処理物に選別処理を施す選別部6、および、選別処理により得られた穀粒などを回収する回収部7、などが備えられている。
【0030】
脱穀部5は、下部ケース1の上部側に着脱可能に敷設した受網8や、前後向きの軸心周りでの回転が可能となるように上部ケース2に備えた扱胴9、などにより構成されている。受網8は、扱胴9の外周に沿って湾曲する円弧状に形成され、かつ、扱胴9の周方向に2分割可能に構成された格子状のコンケーブ受網であり、扱胴9の下部側を覆うように配置設定されている。扱胴9は、エンジン(図示せず)からの動力により、前後向きの軸心を支点して正面視右回りに回転駆動されることにより、フィードチェーン3の搬送作用により受網8と扱胴9との間に供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施し、その脱穀処理で得られた処理物を受網8から選別部6に向けて漏下させ、受網8から漏下しなかった処理物を、受網8の後方に形成した送塵口10から選別部6に向けて排出する。
【0031】
選別部6は、脱穀部5からの処理物に篩い選別処理を施す揺動選別機構11、脱穀部5からの処理物に風力選別処理を施す主唐箕12と第1副唐箕13と第2副唐箕14、送塵口10からの処理物などに作用する拡散胴15、および、風力選別処理により吹き上げられたワラ屑などの塵埃を吸引して車外に排出する排塵ファン16、などを備えて構成されている。
【0032】
揺動選別機構11は、平面視矩形状のシーブケース17を備え、そのシーブケース17の上部側には、粗選別用の第1グレンパン18、粗選別用の第2グレンパン19、粗選別用のチャフシーブ20、粗選別用の第1ストローラック21、および、粗選別用の第2ストローラック22、などが配備されている。シーブケース17の底部には、ガイドプレート23および精選別用のグレンシーブ24が配備されている。シーブケース17の後部には、エンジンからの動力で作動する偏心カム式の駆動部25が装備されている。これにより、揺動選別機構11は、エンジンからの動力で駆動部25が作動することにより揺動駆動され、この揺動により、脱穀部5からの処理物に篩い選別処理を施して、単粒化した穀粒などを漏下させる一方で、漏下しなかった切れワラやワラ屑などを脱穀装置の後端部に形成した排塵口26に向けて搬送する。
【0033】
主唐箕12は、左右向きの軸心周りでの回転が可能となるように下部ケース1の前下部に装備されている。そして、主唐箕12は、エンジンからの動力により、左右向きの軸心を支点して回転駆動されることにより、グレンシーブ24の前下方から排塵ファン16や排塵口26に向けて流動する選別風を生起し、この選別風により、グレンシーブ24により精選別される処理物に含まれた比重の軽い切れワラやワラ屑などを排塵ファン16や排塵口26に向けて風力搬送する。
【0034】
第1副唐箕13は、左右向きの軸心周りでの回転が可能となるように下部ケース1の前端部に装備されている。そして、第1副唐箕13は、エンジンからの動力により、左右向きの軸心を支点して回転駆動されることにより、第1グレンパン18とガイドプレート23との間から排塵ファン16や排塵口26に向けて流動する選別風を生起し、この選別風により、チャフシーブ20に向けて流下する処理物に含まれた比重の軽い切れワラやワラ屑などを排塵ファン16や排塵口26に向けて風力搬送する。
【0035】
第2副唐箕14は、左右向きの軸心周りでの回転が可能となるように下部ケース1の後下部に装備されている。そして、第2副唐箕14は、エンジンからの動力により、左右向きの軸心を支点して回転駆動されることにより、第1ストローラック21や第2ストローラック22を通って排塵ファン16や排塵口26に向けて流動する選別風を生起し、この選別風により、第1ストローラック21や第2ストローラック22により篩い選別される処理物に含まれた比重の軽い切れワラやワラ屑などを排塵ファン16や排塵口26に向けて風力搬送する。
【0036】
拡散胴15は、左右向きの軸心周りでの回転が可能となるように上部ケース2の後上部に装備されている。そして、拡散胴15は、エンジンからの動力により、左右向きの軸心を支点して回転駆動されることにより、第2グレンパン19から第1ストローラック21に向けて搬送される処理物をほぐして、その処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱穀粒などのチャフシーブ20や第1ストローラック21からの漏下を促進させる。
【0037】
排塵ファン16は、左右向きの軸心周りでの回転が可能となるように上部ケース2の後上部に装備されている。そして、排塵ファン16は、エンジンからの動力により、左右向きの軸心を支点して回転駆動されることにより、選別風で風力搬送されたワラ屑などの塵埃を吸引して排塵口26から機外に排出する。
【0038】
これにより、脱穀部5からの処理物を、グレンシーブ24から漏下する1番物としての単粒化穀粒と、グレンシーブ24の後方に供給される2番物としての未脱穀粒や切れワラなどが混在する混在物と、排塵口26から機外に排出される3番物としての切れワラやワラ屑などとに精度良く選別することができる。
【0039】
回収部7は、グレンシーブ24から漏下した単粒化穀粒を回収するようにグレンシーブ24の下方に形成した1番回収部27、および、グレンシーブ24の後方に供給された混在物を回収するようにグレンシーブ24の後方に形成した2番回収部28、により構成されている。1番回収部27の底部には、エンジンからの動力により左右向きの軸心周りに回転駆動されることにより、1番回収部27に回収された単粒化穀粒を右方に向けて搬送する1番スクリュー29が配備されている。2番回収部28の底部には、エンジンからの動力により左右向きの軸心周りに回転駆動されることにより、2番回収部28に回収された混在物を右方に向けて搬送する2番スクリュー30が配備されている。
【0040】
1番スクリュー29の右端部には、1番スクリュー29との連動により、1番スクリュー29により搬送された単粒化穀粒を揚送して穀粒タンク(図示せず)の内部に供給する揚送コンベヤ31が連接されている。2番スクリュー30の右端部には、2番スクリュー30との連動により、2番スクリュー30により搬送された混在物に扱き処理を施す2番処理銅32と、2番処理銅32による扱き処理後の混在物を選別部7に還元する2番還元スクリュー33とが連接されている。
【0041】
図示は省略するが、エンジンからの動力は、ベルトテンション式の脱穀クラッチを介して脱穀装置に伝達されている。脱穀装置には、エンジンからの動力を扱胴9や主唐箕12などに分配供給する動力分配機構が装備されている。
【0042】
図2〜5に示すように、主唐箕12に供給された動力は、下部ケース1における左側壁(脱穀装置の側壁の一例)34の外面側に配備されたベルトテンション式の第1伝動機構35を介して、第1副唐箕13および1番スクリュー29に分配供給され、1番スクリュー29に供給された動力が、左側壁34の外面側に配備されたベルトテンション式の第2伝動機構36を介して、第2副唐箕14、拡散胴15、および2番スクリュー30、に分配供給されている。
【0043】
第2伝動機構36は、1番スクリュー29と一体回転する第1伝動プーリ37、第2副唐箕14と一体回転する第2伝動プーリ38、拡散胴15と一体回転する第3伝動プーリ39、2番スクリュー30と一体回転する第4伝動プーリ40、排塵ファン16への伝動を可能にする出力プーリ41、一対の遊転プーリ42、テンションプーリ43、および、それらにわたって連動可能に渡し掛けた伝動ベルト44、などにより構成されている。
【0044】
図2〜6に示すように、テンションプーリ43は、1番スクリュー29の軸心を支点にして揺動するテンションアーム45の遊端に配備されている。テンションアーム45は、その遊端部と左側壁34に備えた受具46とにわたる付勢機構47により緊張方向に揺動付勢されている。
【0045】
付勢機構47は、テンションアーム45の遊端部に一端部が係止される引っ張りバネ48、引っ張りバネ48の他端部が係止されるテンションボルト49、テンションボルト49に螺合されるボス付きのナット50とロックナット51、および、ナット50を介してテンションボルト49を受け止め支持する操作レバー52、を備えて、第2伝動機構36を、テンションアーム45を緊張方向に揺動付勢して伝動ベルト44を緊張させる緊張状態と、その付勢を解除して伝動ベルト44を弛緩させる弛緩状態とに切り換え可能に構成されている。
【0046】
受具46には、テンションボルト49の係入を許容する凹部46Aと、操作レバー52の係合保持を可能にする左右一対の係合孔46Bとが形成されている。操作レバー52には、操作レバー52に対するテンションボルト49の摺動変位を許容するスリット52A、受具46の対応する係合孔46Bに係合するフック状の左右一対の係合爪52B、付勢機構47の緊張状態での維持を可能にする台座部52C、および、台座部52Cから一直線状に延出する把持部52Dが形成されている。
【0047】
この構成から、付勢機構47を組み付ける場合には、先ず、テンションアーム45に、引っ張りバネ48やテンションボルト49などを介して操作レバー52を連係する。次に、操作レバー52の各係合爪52Bを受具46の対応する係合孔46Bに係合し、操作レバー52の把持部52Dが左側壁34に沿って起立するように、各係合孔46Bに対する各係合爪52Bの係入を深めていく。すると、引っ張りバネ48の作用により、テンションボルト49が、操作レバー52のスリット52Aに沿って、操作レバー52の台座部52Cに向けて摺動変位し、受具46の凹部46Aに係入する。また、把持部52Dの起立に伴って、操作レバー52の台座部52Cが受具46に載置されるとともに、引っ張りバネ48の作用により、その台座部52Cに、テンションボルト49に螺合したナット50が載置される。
【0048】
そして、この状態では、引っ張りバネ48の作用により、テンションアーム45が緊張方向に揺動付勢されるとともに、操作レバー52の台座部52Cが受具46とナット50との間に挟持されるようになり、結果、付勢機構47の引っ張りバネ48が、テンションアーム45を介して伝動ベルト44を緊張付勢する付勢状態に維持されるとともに、第2伝動機構36が、伝動ベルト44が緊張する緊張状態に維持される。
【0049】
この状態で、テンションボルト49に対するナット50の螺合位置を調節すると、適切な付勢力でテンションアーム45を緊張方向に揺動付勢することができ、その後、ロックナット51による弛み止めを行うことにより、テンションアーム45を適切な付勢力で緊張方向に揺動付勢した引っ張りバネ48の適切な付勢状態が維持されるとともに、伝動ベルト44が適切に緊張された緊張状態に第2伝動機構36が維持される。
【0050】
この緊張状態において、操作レバー52の把持部52Dを、起立姿勢から左外方に向けて傾倒させると、その傾倒に伴って、操作レバー52の台座部52Cが受具46から離間して起立するとともに、引っ張りバネ48の作用により、テンションボルト49が、操作レバー52の台座部52Cから把持部52Dに向けてスリット52Aに沿って摺動変位し、受具46の凹部46Aから抜け出る。また、操作レバー52の把持部52Dが左下方に向けて傾倒するのに伴って、テンションボルト49が操作レバー52の遊端側に接当し、引っ張りバネ48が付勢状態から解除状態に切り換わって自由長になることにより、テンションアーム45の緊張方向への揺動付勢が解除され、第2伝動機構36が緊張状態から弛緩状態に切り換えられるとともにその状態で維持される。
【0051】
この弛緩状態において、操作レバー52の把持部52Dを左側壁34に向けて起立させると、引っ張りバネ48の作用により、テンションボルト49が、スリット52Aに沿って台座部52Cに向けて摺動変位して受具46の凹部46Aに係入する。また、把持部52Dの起立に伴って、操作レバー52の台座部52Cが受具46に載置されるとともに、引っ張りバネ48の作用により、その台座部52Cに、テンションボルト49に螺合したナット50が載置されることにより、第2伝動機構36が、組み付け時に設定した適切な緊張状態に切り換えられるとともにその状態で維持される。
【0052】
そして、前述した弛緩状態においては、引っ張りバネ48が自由長になることから、操作レバー52の各係合爪52Bを受具46の各係合孔46Bから容易に抜き出すことができる。
【0053】
つまり、操作レバー52を揺動操作することにより、第2伝動機構36を緊張状態と弛緩状態とに容易に切り換えることができるとともに、操作レバー52の受具46からの取り外しを可能にすることができ、これにより、伝動ベルト44の交換などのメンテナンスを容易に行える。
【0054】
図2〜9に示すように、シーブケース17は、その右側壁53および左側壁54の各下縁部53A,54Aがシーブケース17の内方に向かうように屈曲形成されている。右側壁53には、その下縁部53Aの下面との間に、前後向きの係合溝(係合部の一例)55を形成する断面形状L字形の支持部材56が溶接されている。左側壁54には、前後一対の貫通孔(連結部の一例)54Bが穿設され、裏ナット(連結部の一例)57が溶接されている。
【0055】
グレンシーブ24は、平面視矩形状のクリンプ網58、クリンプ網58の右端部に下面側から右縁に沿う姿勢で接合した第1補強部材59、クリンプ網58の左端部に下面側から左縁に沿う姿勢で接合した第2補強部材60、および、クリンプ網58の前端部に下面側から前縁に沿う姿勢で接合した第3補強部材61、などにより構成されている。第1補強部材59は、クリンプ網58に接合される平面部59Aと、その平面部59Aの左端部から垂下する第1垂下部59Bと、平面部59Aの後端部から垂下する第2垂下部59Cとを有するように屈曲形成されている。第2補強部材60は、クリンプ網58に接合される平面部60Aと、その平面部60Aの左端部から起立する起立部60Bとを有するように屈曲形成されている。起立部60Bは、左側壁54の各貫通孔54Bとの対向箇所に前後一対の貫通孔60Cが穿設されている。第3補強部材61は、クリンプ網58に接合される平面部61Aと、その平面部61Aの後端部から垂下する垂下部61Bとを有するように屈曲形成されている。
【0056】
シーブケース17において、係合溝55は、グレンシーブ24の右端部、つまり、クリンプ網58の右端部および第1補強部材59の平面部59Aの係入を許容するように形成されている。支持部材56には、グレンシーブ24の右端部を係合溝55に案内する傾斜面56Aが形成されている。
【0057】
この構成により、シーブケース17の係合溝55にグレンシーブ24の右端部を係合し、シーブケース17の左側壁54にグレンシーブ24の起立部60Bを前後一対のボルト(連結具の一例)62で連結することにより、シーブケース17の底部にグレンシーブ24を簡単に装着することができる。また、シーブケース17の左側壁54とグレンシーブ24の起立部60Bとのボルト連結を解除し、シーブケース17の係合溝55からグレンシーブ24の右端部を抜き出すことにより、シーブケース17の底部からグレンシーブ24を簡単に取り外すことができる。
【0058】
グレンシーブ24において、第1補強部材59の第2垂下部59Cと第3補強部材61の垂下部61Bとは、グレンシーブ24の右端部をシーブケース17の係合溝55に係入した状態においては、第1補強部材59の第2垂下部59Cが支持部材56の後端部に隣接し、かつ、第3補強部材61の垂下部61Bが支持部材56の前端部に隣接するように設定されている。つまり、第1補強部材59の第2垂下部59Cおよび第3補強部材61の垂下部61Bにより、シーブケース17に対するグレンシーブ24の前後方向での位置決めを行える。
【0059】
下部ケース1の左側壁34は、グレンシーブ24との対向箇所に、回収部7などの状態を点検するための点検口(開口の一例)34Aが形成され、かつ、この点検口34Aを閉塞する蓋体63が着脱可能に装備されている。点検口34Aは、この点検口34Aからのグレンシーブ24の出し入れを許容する開口面積を有するように形成されている。蓋体63の下縁部には、点検口34Aの下縁部に対して挟持するように係合する複数の係合片63Aが形成されている。蓋体63の上縁部には、前後一対の貫通孔63Bが穿設されている。左側壁34は、蓋体63の各貫通孔63Bとの対向箇所に貫通孔34Bが穿設され、裏ナット64が溶接されている。
【0060】
つまり、点検口34Aの下縁部に蓋体63の各係合片63Aを係合し、下部ケース1の左側壁34に蓋体63の上縁部を前後一対のボルト65で連結することにより、点検口34Aを蓋体63によって簡単に塞ぐことができる。また、下部ケース1の左側壁34と蓋体63の上縁部とのボルト連結を解除し、点検口34Aの下縁部と蓋体63の各係合片63Aとの係合を解除することにより、点検口34Aを簡単に開放することができる。
【0061】
そして、以上の構成から、グレンシーブ24の清掃や交換などのメンテナンスを行う場合には、先ず、付勢機構47の操作レバー52を起立姿勢から左方に傾倒させて、付勢機構47を緊張状態から弛緩状態に切り換える。そして、この切り換え後、下部ケース1における左側壁34の受具46から操作レバー52を取り外すとともに、その切り換えによって弛みが生じた伝動ベルト44を第3伝動プーリ39から外すことなどにより、付勢機構47と伝動ベルト44とを点検口34Aの開口領域から外す。その後、下部ケース1の左側壁34から蓋体63を取り外して点検口34Aを開放することにより、この点検口34Aからの作業によって、グレンシーブ24をシーブケース17の底部から取り外して点検口34Aから取り出すことができ、グレンシーブ24の清掃や交換などを容易に行える。
【0062】
グレンシーブ24の清掃や交換などを行った後は、そのメンテナンス後のグレンシーブ24を、点検口34Aから差し入れて、シーブケース17の底部に取り付ける。この取り付け後、下部ケース1の左側壁34に蓋体63を取り付けて点検口34Aを閉塞する。その後、伝動ベルト44を、点検口34Aの開口領域を通るように第3伝動プーリ39などに巻き掛けた後、付勢機構47の操作レバー52を、付勢機構47が点検口34Aの開口領域を通るように左側壁34の受具46に係合するとともに、左側壁34に沿うように起立させて、付勢機構47を弛緩状態から緊張状態に切り換えることにより、簡単に元の作業可能状態に戻すことができる。
【0063】
なお、図示は省略するが、下部ケース1の左側壁34には、第1伝動機構35や第2伝動機構36などを覆い隠す化粧カバーが着脱可能に装備されている。
【0064】
〔別実施形態〕
【0065】
〔1〕脱穀装置としては、全稈投入型のコンバインに搭載されるものであってもよい。また、副唐箕13,14を備えていないものであってもよい。
【0066】
〔2〕揺動選別機構11としては、その底部にグレンシーブ24を着脱可能に備えるものであれば、グレンパン18,19やチャフシーブ20などの配置や構成は種々の変更が可能である。
【0067】
〔3〕グレンシーブ24としては、クリンプ網58の代わりに樹脂網などを備えるものであってもよい。
【0068】
〔4〕グレンシーブ24の着脱構造としては、脱穀装置の右側壁に形成した開口34Aからグレンシーブ24の抜き差しを行うように構成したものであってもよい。
【0069】
〔5〕係合部55および連結部54B,57の形状や数量などは種々の変更が可能であり、連結具62の種類や数量などは、連結部54B,57の形状や数量などに応じて種々の変更が可能である。
【0070】
〔6〕開口34Aとしては、グレンシーブ24の着脱用に形成されたものであってもよい。また、開口34Aおよび蓋体63の大きさや形状は、グレンシーブ24の大きさや形状などに応じて種々の変更が可能である。
【0071】
〔7〕ベルトテンション式の伝動機構36としては、主唐箕12に供給された動力を、第1副唐箕13や1番スクリュー29などに分配供給するように構成されたものであってもよく、また、主唐箕12に供給された動力を、第1副唐箕13や1番スクリュー29などに加えて、第2副唐箕14や2番スクリュー30などに分配供給するように構成されたものであってもよい。
【0072】
〔8〕付勢機構47の構成としては、操作レバー52の揺動操作により、伝動機構36の緊張状態と弛緩状態との切り換えを可能にする構造が得られるのであれば、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】グレンシーブの着脱構造を示す要部の側面図
【図3】第2伝動機構の緊張状態を示す要部の縦断背面図
【図4】第2伝動機構の弛緩状態を示す要部の縦断背面図
【図5】グレンシーブの着脱状態を示す要部の縦断背面図
【図6】付勢機構の構成などを示す要部の分解斜視図
【図7】グレンシーブの着脱構造を示す要部の縦断背面図
【図8】グレンシーブの平面図
【図9】グレンシーブの着脱構造を示す要部の分解斜視図
【符号の説明】
【0074】
11 揺動選別機構
24 グレンシーブ
34 脱穀装置の側壁
34A 開口
36 ベルトテンション式の伝動機構
44 伝動ベルト
47 付勢機構
48 バネ
52 操作レバー
53 右側壁グレンシーブ
53A 下縁部
54 左側壁グレンシーブ
54B 連結部
55 係合部
57 連結部
62 連結具
63 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動選別機構に、脱穀処理後の処理物から穀粒を篩い分けるグレンシーブを、前記揺動選別機構の右側壁と左側壁とにわたるように装備してある脱穀装置のグレンシーブ着脱構造であって、
前記右側壁と前記左側壁のうちの一方の側壁の下縁部に、その一方の側壁と同じ側に位置する前記グレンシーブの左右一端部との係合を可能にする係合部を形成し、
かつ、前記右側壁と前記左側壁のうちの他方の側壁に、その他方の側壁と同じ側に位置する前記グレンシーブの左右他端部との連結具による連結を可能にする連結部を形成することにより、
前記揺動選別機構の底部に前記グレンシーブを着脱可能に装備するように構成し、
前記連結部が位置する側の脱穀装置の側壁に、前記グレンシーブの抜き差しを許容する開口を形成するとともに、その開口を閉塞する蓋体を着脱可能に装備してあることを特徴とする脱穀装置のグレンシーブ着脱構造。
【請求項2】
前記脱穀装置の前記側壁に装備されるベルトテンション式の伝動機構に、この伝動機構の伝動ベルトが緊張する緊張状態と弛緩する弛緩状態との切り換えを可能にする付勢機構を備え、
前記付勢機構に、前記伝動ベルトを緊張付勢するバネと、前記脱穀装置の前記側壁に揺動可能かつ着脱可能に係合される操作レバーとを備え、
前記付勢機構を、前記操作レバーの揺動操作により、前記バネが前記伝動ベルトを緊張付勢する付勢状態とその付勢を解除する解除状態とに切り換えられるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置のグレンシーブ着脱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−95287(P2009−95287A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270442(P2007−270442)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】