説明

脱穀装置の扱胴

【課題】扱歯への穀桿の絡まりを防止し、脱穀性能及び後方への搬送性能の良好な脱穀装置の扱胴を提供する。
【解決手段】扱胴軸(12)の前部に支持された前部支持部材(13)と、扱胴軸(12)の後部に支持された後部支持部材(15)にわたる円筒状の筒体(61)を備え、扱胴軸(12)の軸心方向に間隔をおいて設置される複数の扱歯(60A)を有したプレート(60)を筒体(61)の外周面上に周方向の間隔をおいて配置することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の扱胴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製作作業の負担を軽減するために、機体の前後方向に延伸する扱同軸の前端部、中間部、及び後端部に固着された支持部材に、前後方向に扱歯を立設した桟部材を架設した扱胴が提案されている(特許文献1参照)。
また、機体の前後方向に延伸する扱胴軸の前端部、中間部、及び後端部に固着された略六角形状の支持部材の頂点部に、前後方向に扱歯を立設した桟部材を架設し、周方向に隣接する桟部材間の空隙を遮蔽板で閉塞した扱胴が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−28019号公報
【特許文献2】特開2011−182654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の発明における扱胴は、扱室に供給された穀稈が桟部材に絡み、脱粒性能、後方への搬送性能を低下させる虞があった。
また、特許文献2記載の発明における扱胴は、胴部の断面形状が六角形状であるため、頂点部間の平面部(遮蔽板)の強度が低く、多量の穀稈が扱室に供給された場合に、この穀稈から受ける反力によって、扱胴外周の平面部が変形する虞があった。また、周方向に隣接して配置される桟部材の扱歯の前後方向での間隔が等しいために、特に、扱胴の上流側において、収穫された丈の長い穀桿が扱歯に絡み、脱粒性能を低下させ、また、後方への搬送性能を低下させる虞があった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにあり、次なる課題は、保守・点検を容易行なうことができる脱穀装置の扱胴を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(10)内に軸架される扱胴軸(12)を備え、該扱胴軸(12)の前部に支持された前部支持部材(13)と、扱胴軸(12)の後部に支持された後部支持部材(15)にわたる円筒状の筒体(61)を備えた脱穀装置の扱胴において、前記扱胴軸(12)の軸心方向に間隔をおいて設置される複数の扱歯(60A)を有したプレート(60)を備え、該複数のプレート(60)を前記筒体(61)の外周面上に周方向の間隔をおいて配置した脱穀装置の扱胴である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記筒体(61)の前部に取込み螺旋部(16)を備えた請求項1記載の脱穀装置の扱胴である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記プレート(60)を筒体(61)の外周面に対して着脱自在な構成とした請求項1又は2記載の脱穀装置の扱胴である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記プレート(60)を扱胴軸(12)の軸心方向において分割した請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記扱歯(60A)を、その先端側ほど扱胴(11)の回転方向上手側に位置する傾斜姿勢とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴である。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記プレート(60)を、第1扱歯(18A)を備えた第1プレート(18)と第2扱歯(19A)を備えた第2プレート(19)から構成し、該第1プレート(18)と第2プレート(19)を筒体(61)の外周面上に交互に備え、該第1プレート(18)における第1扱歯(18A)の設置間隔よりも、第2プレート(19)における第2扱歯(19A)の設置間隔を大きく設定した請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴である。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記第1扱歯(18A)と第2扱歯(19A)を、扱胴軸(12)の軸心方向でずらして配置した請求項6記載の脱穀装置の扱胴である。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記第1扱歯(18A)および第2扱歯(19A)の高さを、前記扱室(10)の穀稈供給口側から穀稈出口側に向かって、段階的又は連続的に高く形成した請求項6又は7記載の脱穀装置の扱胴である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、円筒状の筒体(61)を有することで、扱胴(11)の強度を高めて、脱穀性能を向上させることができ、扱胴軸(12)の軸心方向に間隔をおいて設置される複数の扱歯(60A)を有したプレート(60)を備え、該複数のプレート(60)を前記筒体(61)の外周面上に周方向の間隔をおいて配置しているので、穀稈がプレート(60)に絡み付き難く、このプレート(60)に絡み付く穀稈による脱穀負荷の増大を抑制することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、筒体(61)の前部に取込み螺旋部(16)を備えているので、取込み螺旋部(16)によって取り込んだ穀稈を扱歯によって脱粒させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、プレート(60)を筒体(61)の外周面に対して着脱自在な構成としているので、扱歯(60A)が磨耗した場合に、複数の扱歯(60A)をまとめて交換することができ、交換作業を容易化することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、脱穀処理物が多く扱歯(60A)が磨耗しやすいプレート(60)の前側部分のみを交換することができ、交換作業の更に容易化することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、プレート(60)の扱歯(60A)を、先端側ほど扱胴(11)の回転方向上手側に位置する傾斜姿勢としているので、扱歯への穀稈の絡み付きを抑制して脱穀負荷を低減することができ、穀桿を下流側に効率的に搬送することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、第1プレート(18)における第1扱歯(18A)の設置間隔よりも、第2プレート(19)における第2扱歯(19A)の設置間隔を大きく設定したので、脱穀処理物が第2扱歯(19A)の前後間隔を通過しやすくなり、取込み螺旋部(16)から後方への穀稈取込み性能が向上し、扱歯の間隔が異なる第1プレート(18)と第2プレート(19)により穀稈に脱粒作用を与えて脱穀することで脱穀性能を更に高めることができる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、第1プレート(18)の第1扱歯(18A)と、第2プレート(19)の第2扱歯(19A)を、扱胴軸(12)の軸心方向でずらして配置したので、第1扱歯(18A)間を通過した脱穀処理物に第2扱歯(19A)が作用し、第2扱歯(19A)間を通過した脱穀処理物に第1扱歯(18A)が作用するので、未脱穀のまま脱穀装置外に排出される穀粒の量を低減し、脱粒性能を高めることができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項6又は7記載の発明による効果に加えて、プレート(18、19)の扱歯(18A、19A)の高さを、扱室(10)の穀稈供給口側から穀稈出口側に向かって、段階的又は連続的に高くしているので、脱穀処理物の量が多い扱室(10)の前部の詰りを抑制して脱穀負荷を低減するとともに脱穀された穀粒の表面への損傷を防止し、脱穀処理物が少ない扱室(10)の後部では、未脱穀の穀粒を脱粒させ、脱粒性能を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断正面図である。
【図4】脱穀装置の縦断左側面図である。
【図5】脱穀装置の縦断背面図である。
【図6】扱胴と扱網の縦断左側面図である。
【図7】扱胴と扱網の背面図である。
【図8】扱胴の縦断左側面図である。
【図9】扱胴の要部断面図である。
【図10】扱胴の要部拡大左側面図である。
【図11】図8のA―A断面図である。
【図12】図8のB―B断面図である。
【図13】8列プレートを備える扱胴の背面図である。
【図14】他の扱歯の取付け方法の第1説明図である。
【図15】他の扱歯の取付け方法の第2説明図である。
【図16】前後2分割プレートを備える扱胴の縦断左側面図である。
【図17】扱歯の高さ調整方法の第1説明図である。
【図18】扱歯の高さ調整方法の第2説明図である。
【図19】第2実施形態の扱胴の要部左側面図である。
【図20】第3実施形態の扱胴の要部左側面図である。
【図21】扱胴の斜視図である。
【図22】扱胴の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は背面図、(e)は右側面図、(f)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするために便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0024】
汎用コンバインは、図1、図2に示すように、機体フレーム1の下方には土壌面を走行する為の左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の上方左側には脱穀・選別を行なう脱穀装置3が設けられ、脱穀装置3の前方には圃場の穀桿を収穫する刈取前処理装置4が設けられている。脱穀装置3で脱穀・選別された穀粒は脱穀装置3の右側に設けられたグレンタンク5に貯留され、貯留された穀粒は排出筒7により外部へ排出される。また、機体フレーム1の上方右側には操作者が搭乗する操作部を備えた操縦部6が設けられている。
【0025】
刈取前処理装置4は、掻込み装置4Aと、横刈刃装置4Bと、オーガ装置4Cと、フィーダハウス4D等によって構成され、掻込み装置4Aと、横刈刃装置4Bによって刈取られた稲、麦、大豆、そば等の穀稈は、オーガ装置4Cによってフィーダハウス4Dの前方に寄せ集められた後、フィーダハウス4Dによって脱穀装置3に揚上搬送される。
【0026】
脱穀装置3は、図3〜図5に示すように、上部に穀稈の脱穀を行う扱室10を備え、扱室10の下側に脱穀された穀粒の選別を行なう選別室20を備えている。また、扱室10で脱穀された排藁は、扱胴11によって後方に搬送された後、扱胴11の終端部から外部に排出される。なお、図3、図5の矢印は、扱胴11の回転方向を示しており、正面視において、扱胴11は反時計方向に回転している。
【0027】
(扱室)
扱室10の前後板10A、10Cには、機体前後方向に延伸する扱胴11を軸架する扱胴軸12の前後端部がそれぞれ回転自在に軸支され、扱室10の中板10Bには、図6、図7に示すように、扱胴11の下側に張設される扱網50が支持されている。なお、中板10Bの上部は、脱穀されながら後方に搬送される穀稈への抵抗を低減するために、上部から基部に向かって円弧状の切欠き部が形成されている。また、供給される穀稈の量に応じて中板10Bを上下方向に移動する移動手段を設けることがより好適である。
【0028】
(扱胴)
扱胴11は、図8、図21、図22に示すように、扱胴軸12の前端部に設けられた前側板(前部支持部材)13と、扱胴軸12の前側部に設けられた中側板(中間部支持部材)14と、扱胴軸12の後端部に設けられた後側板(後部支持部材)15によって支持された筒体61によって形成され、筒体61は前部に円錐台状の取込み螺旋部16を備え、後部に円筒状の筒部17を備えている。筒部17の外周面には扱歯60Aが立設されたプレート60が周方向に60度の間隔を持って周設されている。なお、扱歯60Aは扱歯18A、19A(第1扱歯18A,第2扱歯19A)を含み、プレート60はプレート18、19(第1プレート18,第2プレート19)を含む。
【0029】
鋼材等からなる円柱状の扱胴軸12の前側部(前後方向の中心よりも前側の部位)には、中側板14を固定する略三角形の固定部材12Aが設けられ、後端部には、後側板15を固定する略三角形の固定部材12Bが設けられている。また、固定部材12Aの前面には、ボルト等の締結部材が溶接によって固着されており、固定部材12Bの後面には、ボルト等の締結部材が溶接によって固着されている。なお、本実施形態においては、1個の中側板14に対応して、扱胴軸12の前側部に1個の固定部材12Aが設けられているが、設置する中側板14の数、位置に応じて、固定部材12Aの数、位置は異なる。
【0030】
鋼材等からなる円盤状の前側板13は、供給された穀稈の前方への脱落を防止するために、取込み螺旋部16の前端部の外径よりも大径に形成されている。また、前側板13の中心部は、溶接等によって扱胴軸12に固着され、前側板13の後面は、取込み螺旋部16の前端部の中心に向かって延伸する折曲げ部にボルト等の締結手段によって連結されている。
【0031】
鋼材等からなる円盤状の中側板14は、一度に多量の穀稈が供給された場合に、穀稈の押圧によって筒部17の変形を防止ために、扱胴軸12と、筒部17を連結する部材である。
中側板14の外周部には、図11に示すように、筒部17の内周部に溶接等によって固着された支持部材17Aを緩嵌させるために、周方向に60度の間隔を持って略矩形上の切込み部14Aが形成され、各切込み部14Aの右側に隣接する部位には、図10に示す筒部17の内周部に形成された切欠き部17Dと係合する突起部14Bが形成されている。また、中側板14の中心部は、図9に示すように、扱胴軸12上に設けられた固定部材12Aにボルト等の締結手段によって連結されている。
【0032】
後方に搬送される穀稈は、シーブ23の前側部の上方に設けられた扱室10の中板10Bによって抵抗を受けるために中板10Bの前側には多量の穀稈が滞留し、滞留した穀稈は、扱胴11の筒部17を押圧する。滞留した穀稈の押圧によって筒部17の変形を防止するために、扱胴11の中側板14を中板10Bの前方の近傍位置に設けるのが好適である。なお、本実施例においては、前後方向に延伸する筒部17の前側部(前後方向の中心よりも前側の部位)に1枚の中側板14を設けているが、2枚以上の中側板14を設けることもできる。また、複数の中側板14を筒部17の前側部から後側部(前後方向の中心よりも後側の部位)に亘って設けることもできる。
【0033】
中側板14の外周部は、突起部14Bを筒部17の溝部17Dに係合した後に、溶接等によって筒部17の内周部に固着される。中側板14の中心部と扱胴軸12の固定部材12Aの連結は、中側板14に形成された略三角形の挿入孔14Cと、後側板15に形成された略三角形の挿入孔15Cに扱胴軸12を挿通し、扱胴軸12を60度回転させた後に連結する。また、扱胴軸12の固定部材12Aへのボルト等の連結作業は、筒部17の前側部に設けられた開閉自在な作業窓(図示省略)を開放にして行う。
【0034】
鋼材等からなる円盤状の後側板15は、一度に多量の穀稈が供給された場合に、穀稈の押圧によって筒部17の変形を防止ために、扱胴軸12と、筒部17を連結する部材である。
後側板15の外周部には、図12に示すように、周方向に60度の間隔を持って突起部15Bが形成されている。突起部15Bは、図10に示す筒部17の内周部に形成された切欠き部17Eと係合する。また、後側板15の中心部は、図9に示すように、扱胴軸12上に設けられた固定部材12Bにボルト等の締結手段によって連結されている。さらに、後側板15の後面には、扱胴11の終端部から機外に排出される排藁の扱胴軸12や固定部材12Bへの巻き付きを防止するために、鋼材等からなるアングル状の除去部材15Dが、回転方向に対して約30度の後退角度を持たせて周方向に180度の間隔を持って溶接によって後側板15に固着されている。
【0035】
後側板15の外周部は、突起部15Bを筒部17の溝部17Eに係合した後に、溶接等によって筒部17の内周部に固着される。中側板15の中心部と扱胴軸12の固定部材12Bの連結は、中側板14に形成された略三角形の挿入孔14Cと、後側板15に形成された略三角形の挿入孔15Cに扱胴軸12を挿通し、扱胴軸12を60度回転させた後に連結する。また、扱胴軸12の固定部材12Bへのボルト等の連結作業は、筒部17の後方から行う。
【0036】
鋼材等からなる円錐台状の取込み螺旋部16の外周面には、供給された穀稈を後方に搬送するために、後側に向かって傾斜した搬送螺旋16Aが設けられ、搬送螺旋16Aの下部には、搬送螺旋16Aの剛性を高めるために、周方向に所定の間隔をもって略三角形のリブ16Bが設けられている。また、取込み螺旋部16の終端部は、筒部17の前端部に溶接等によって固着されている。
【0037】
鋼材等からなる円筒状の筒部17の内周面には、図11、図12に示すように、複数の扱歯18Aが立設されたプレート18及び複数の扱歯19Aが立設されたプレート19をそれぞれ固定する前後方向に延伸する支持部材17Aが周方向に60度の間隔を持って溶接等によって固着されている。
支持部材17Aの断面形状は、略コの字状であり、その頂部17B(筒部の内周面と対向する部位)は、外方に向かって円弧状に形成されており、筒部17の内周面と支持部材17Aを強固に固着するために、頂部17Bの曲率は、筒部17の曲率と略同一にされている。また、支持部材17Aの頂部17Bの内面には、ナット等の締結部材が溶接によって固着され、支持部材17Aの内方に向かって延伸する両脚部17Cは、中側板14の切込み部14A及び後側板15の切込み部15Aに緩嵌されており、中側板14及び後側板15には、溶接等によって固着されていない。
【0038】
筒部17の外周面には、前後方向に複数の扱歯18Aが立設された鋼材等からなる略板状のプレート18と、前後方向に複数の扱歯19Aが立設された鋼材等からなる略板状のプレート19が周方向に60度の間隔を持って交互に周設されている。プレート18、19は、図11、図12に示すように、筒部17の内周面に固着された支持部材17Aとボルト等の締結手段締結手段(締結具)17Gによって着脱自在に取付けられ、支持部材17Aとプレート18、19によって筒部17を挟持する構成となっている。また、プレート18、19は、外方に向かって円弧状に形成されており、プレート18、19の曲率は、筒部17の曲率と略同一にされている。
【0039】
本実施形態においては、筒部17の外周面に扱歯18Aが立設されたプレート18と、扱歯19Aが立設されたプレート19を周方向に60度の間隔を持って交互に周設しているが、図13に示すように、扱歯18Aが立設されたプレート18と、扱歯19Aが立設されたプレート19を周方向に45度の間隔を持って交互に周設することもできる。また、略板状のプレート18、19に替えて、鋼材等からなる角管状のプレート18、19にすることもできる。
【0040】
部品点数を削減するために、図14に示すように、外方部に突出部98B、99Bが形成されたプレート98、99を筒部97にボルト等の締結部材で連結し、扱歯98A、99Aをプレート98、99の突出部98B、99Bに形成された孔と筒部97に形成された孔に挿通し、扱歯98A、99Aとプレート98、99を溶接等によって固着させることもできる。また、図15に示すように、外方部に突出部98B、99Bが形成されたプレート98、99を2枚積層し、筒部97にボルト等の締結部材で連結し、扱歯98A、99Aをプレート98、99の突出部98B、99Bに形成された孔に挿通し、扱歯98A、99Aとプレート98、99を溶接等によって固着させることもできる。なお、この場合、筒部97の外周面に孔を加工する必要が無くなり、製作費用の低減にも繋がる。
【0041】
筒部17の外周面に隣接して取付けられたプレート18の扱歯18Aの間隔と、プレート19の扱歯19Aの間隔は、供給された穀稈の扱歯18、19への絡みつきを防止し、脱穀性能を高め、後方への穀稈の搬送を効率的に行うために、図8に示すように、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔に対して2倍の間隔とし、扱歯18Aと扱歯19Aの位相を1/2位相(1/2間隔)相違させて、側面視において、扱歯18Aと扱歯19Aが相互に重ならないようにしている。
【0042】
本実施形態においては、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔に対して2倍の間隔としているが、扱歯19Aの間隔を、扱歯18Aの間隔に対して3倍、4倍の間隔とすることもできる。また、図16に示すように、プレート18、19を前後方向に2分割にすることができる。2分割にした場合、前側プレート18C、19Cに立設された扱歯18A、19Aに摩耗が生じた場合、後側プレート18D、19Dを筒部17の外周面に取付けたまま、前側プレート18C、19Cのみを取り外すことができ交換作業が容易になる。なお、図16に示す本実施形態においては、プレート18、19を前後方向に2分割にしているが、3分割にすることもできる。
【0043】
鋼材等からなる扱歯18A、19Aは、図8、図11、図12に示すように、供給された穀稈の絡みつきによる脱穀性能の低下を防止するために、円柱状に形成するのが好適である。また、扱歯18A、19Aは、扱胴11の回転方向に対して約10度の後退角を持ってそれぞれプレート18、19に溶接等によって固着されている。なお、扱胴11の前側部で脱穀性能を高め、扱胴11の後側部で穀稈の搬送性能を高めるためには、プレート18、19の前側部(中側板14より前方に位置する部位)に立設される扱歯18A、19Aの後退角を小さくし、プレート18、19の後側部(中側板14より後方に位置する部位)に立設される扱歯18A、19Aの後退角を大きくするか、後述する扱室10後部の案内板10Eの前端よりも後方に位置する扱歯18A、19Aの後退角を大きくすることが好適であり、また、前側から後側に向かうに従って段階的、連続的に扱歯18A、19Aの後退角を大きくすることもできる。
【0044】
扱網50からの濾過率を高め、穀物の表面への外傷を防止するために、前側部の扱歯18A、19Aの高さを低くし、後側部の扱歯18A、19Aの高さを高くするのが好適である。また、前側から後側に向かうに従って段階的、連続的に扱歯18A、19Aの高さを高くすることもできる。
プレート18、19が2分割されている場合においては、図17に示すように後側プレート18D、19Dと筒部17の間にスペーサ18E、19Eを設け、後側プレート18D、19Dに立設される扱歯18A、19Aの高さを、前側プレート18C、19Cに立設された扱歯18A、19Aよりも高くすることができる。また、図18に示すように、支持部材17Aの頂部17Bの内面に基端部にネジ等が形成された扱歯18A、19Aを締結するナット等の締結部材17Fを溶接によって固着し、扱歯18A、19Aのネジ込み量によって、扱歯18A、19Aの高さを調整することもできる。なお、扱歯18A、19Aの高さとは、筒部17の外表面から、扱歯18A、19Aの先端部までの高さを言う。
【0045】
扱室10の上部には、図3〜図5に示すように、内面に複数の送塵ガイド42が並設された扱胴カバー40が設けられている。扱胴カバー40は、正面視において、前後方向に延伸する軸41を中心に開閉する。
【0046】
扱胴11は、図5に示すように、後述する送塵ガイド42による穀稈の後方への搬送を効率的に行うために、扱胴11の筒部17の外周面と扱胴カバー40の頂部40Aの距離X1が、扱胴11の筒部17の外周面と扱胴カバー40の側部40B、40Cの距離X2よりも大きくなるように、扱胴軸12によって扱室10の前後板10A、10Cに支持されている。
また、扱胴11は、脱穀を効率的に行なって扱ぎ残しを低減するために、扱胴11の筒部17の外周面と扱網50の下部50Aの距離Y1が、扱胴11の筒部17の外周面と扱網50の側部50B、50Cの距離Y2よりも小さくなるように、扱胴軸12によって扱室10の前後板10A、10Cに支持されている。
【0047】
脱穀された排藁は、扱胴11の終端部から扱室10の後部に設けられた排出口10Dを通過して外部に排出される。排出口10Dは、図5に示すように、排藁を外部に効率的に排出するために、扱胴11の回転方向の下流側の上部(扱胴11の12持〜3時に対向する位置)に設けるのが好適である。また、扱室10の扱網50の終端部の下方には、扱胴11の終端部から漏下する排藁等の排塵物を揺動選別装置21の後側に誘導するために、左右方向に延伸し、後下り傾斜する案内板10Eが設けられ、扱室10の扱胴11の終端部の下方には、排出口10Dを通過した排藁を外部に誘導するために、略四角形の寄せ板10Fが前後方向に沿って設けられている。
【0048】
扱胴カバー40の内面には、穀稈の後方への搬送を効率的に行うために、6枚の鋼材等からなる送塵ガイド42が並設されている。
【0049】
送塵ガイド42の下端部は、穀稈への抵抗を低減するために、左端部(扱胴11の回転方向の上流側)から下方に向かって傾斜した後、穀稈の後方への搬送の効率を高めるために、扱胴11の外周面に対向して下端部から基部に向かって円弧状に切欠かれた後、排藁の漏下を効率的に行うために、送塵ガイド42の下端部と扱胴11の外周面の間隔を広げるように略幅方向の中間部から下方に向かって再び傾斜している。
【0050】
後方への穀稈の搬送を効率的に行うために、回転レバー46を揺動させることによって送塵ガイド42の傾斜角度を変更することができる。
各送塵ガイド42は、送塵ガイド42の幅方向の略中心に設けられた軸43に回転自在に支持されており、各送塵ガイド42の左側上部は、前後に延伸している連結レバー44によって相互に連結されている。連結レバー44の前部は、軸45の下部に溶接等によって固着され、軸45は、扱胴カバー40の外面に設けられた支持部材47に回転自在に支持され、軸45の上部には、連結レバー44に対して略直交方向に延伸する回転レバー46が溶接等によって固着されている。なお、後方への搬送される穀稈の押圧によって送塵ガイド42の傾斜角度の変動を防止するために、軸43は、送塵ガイド42の幅方向の中心よりも左側(扱胴11の回転方向側)に配置するのが好適である。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の扱胴11について詳述する。また、同一部材については、同一符号を付し、重複した説明は省略する。
筒部17の外周面に隣接して取付けられたプレート78の扱歯78Aの間隔と、プレート79の扱歯79Aの間隔は、後方への穀稈の搬送を効率的に行い、扱網50からの濾過率を高めるために、図19に示すように、プレート78、79の前側部に立設された扱歯78A、79Aの間隔を、プレート78、79の後側部に立設された扱歯78A、79Aの間隔に対して2倍の間隔としている。また、隣接して取付けられたプレート78、79の扱歯78A、79Aは前側部では、位相を相違させて、側面視において、扱歯78Aと扱歯79Aが相互に重ならないようにし、後側部では、位相を一致させて、側面視において、扱歯78Aと扱歯79Aが相互に重なっている。なお、前述したように、プレート79に立設された扱歯79Aの間隔を、周方向に隣接するプレート78に立設された扱歯78Aの間隔に対して2〜4倍大きくすることもできる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の扱胴11について詳述する。また、同一部材については、同一符号を付し、重複した説明は省略する。
供給された穀稈の扱歯88、89への絡みつきを防止し、脱穀性能を高め、後方への穀稈の搬送を効率的に行うために、図20に示すように、筒部17の前側部においては、扱歯88Aが立設されたプレート88と、扱歯89Aが立設されたプレート89を周方向に90度の間隔を持って交互に周設し、後側部においては、扱歯88Aが立設されたプレート88と、扱歯89Aが立設されたプレート89を周方向に60度の間隔を持って交互に周設している。また、第3実施形態においては、扱歯88Aの間隔と扱歯89Aの間隔は等しく、側面視において、扱歯88Aと扱歯89Aの位相を一致させて、側面視において、扱歯88Aと扱歯89Aが相互に重なっている。なお、前述したように、プレート89に立設された扱歯89Aの間隔を、周方向に隣接するプレート88に立設された扱歯88Aの間隔に対して2〜4倍大きくすることもできる。
【0053】
(選別室)
扱室10の下側には、扱室10から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の藁屑等とに選別するための選別室20が設けられている。選別室20の上部には揺動選別装置21が設けられ、選別室20の下部には揺動選別装置21に空気を送風する唐箕25と、揺動選別装置21から漏下する穀粒を回収する一番受樋28と、揺動選別装置21から漏下する枝梗等が付着した穀粒を回収する二番受樋29とが、前側から後側に向かって設けられている。なお、一番受樋28で回収された穀粒はグレンタンク5に移送され、二番受樋29で回収された穀粒等は扱胴11の前部に移送され、再び扱胴11によって脱穀される。
【0054】
揺動選別装置21は、唐箕25の上方に配置された移送棚22と、移送棚22の下流側に配置されたシーブ23と、さらにシーブ23の下流側に配置されたストローラック24とによって構成されている。
【0055】
移送棚22は、扱室10から漏下する穀粒を下流側に配置されたシーブ23に移送できればよく、移送棚22の後部を後下がりに傾斜させたり、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりすることができる。
【0056】
シーブ23は、移送棚22から移送された穀粒又は扱室10から直接漏下する穀粒と藁屑等の異物とを選別する篩であり、下流側が高くなるように傾斜した薄い板状体からなる固定シーブ部材を揺動選別装置21の揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。
【0057】
ストローラック24は、シーブ23から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗等が付着した穀粒等を篩い選別する篩である。
【0058】
唐箕25の送風口26には、風割27によって上下に形成された上側風路26Aと下側風路26Bとが設けられている。また、送風口26の後側に設けられた一番受樋28の内部には、グレンタンク5に連通する螺旋コンベア式の一番コンベア28Aが配置され、二番受樋29の内部には、扱胴11の前部に連通する螺旋コンベア式の二番コンベア29Aが配置されている。
【符号の説明】
【0059】
3 脱穀装置
4 刈取前処理装置
5 グレンタンク
10 扱室
10A 前板
10B 中板
10C 後板
11 扱胴
12 扱胴軸
13 前側板(前部支持部材)
14 中側板(中間部支持部材)
15 後側板(後部支持部材)
16 取込み螺旋部
17 筒部
17A 支持部材
18 プレート(第1プレート)
18A 扱歯(第1扱歯)
18C 前側プレート
18D 後側プレート
19 プレート(第2プレート)
19A 扱歯(第2扱歯)
19C 前側プレート
19D 後側プレート
20 選別室
21 揺動選別装置
25 唐箕
40 扱胴カバー
50 扱網
60 プレート
60A 扱歯
61 筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(10)内に軸架される扱胴軸(12)を備え、該扱胴軸(12)の前部に支持された前部支持部材(13)と、扱胴軸(12)の後部に支持された後部支持部材(15)にわたる円筒状の筒体(61)を備えた脱穀装置の扱胴において、
前記扱胴軸(12)の軸心方向に間隔をおいて設置される複数の扱歯(60A)を有したプレート(60)を備え、該複数のプレート(60)を前記筒体(61)の外周面上に周方向の間隔をおいて配置した脱穀装置の扱胴。
【請求項2】
前記筒体(61)の前部に取込み螺旋部(16)を備えた請求項1記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項3】
前記プレート(60)を筒体(61)の外周面に対して着脱自在な構成とした請求項1又は2記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項4】
前記プレート(60)を扱胴軸(12)の軸心方向において分割した請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項5】
前記扱歯(60A)を、その先端側ほど扱胴(11)の回転方向上手側に位置する傾斜姿勢とした請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項6】
前記プレート(60)を、第1扱歯(18A)を備えた第1プレート(18)と第2扱歯(19A)を備えた第2プレート(19)から構成し、
該第1プレート(18)と第2プレート(19)を筒体(61)の外周面上に交互に備え、
該第1プレート(18)における第1扱歯(18A)の設置間隔よりも、第2プレート(19)における第2扱歯(19A)の設置間隔を大きく設定した請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項7】
前記第1扱歯(18A)と第2扱歯(19A)を、扱胴軸(12)の軸心方向でずらして配置した請求項6記載の脱穀装置の扱胴。
【請求項8】
前記第1扱歯(18A)および第2扱歯(19A)の高さを、前記扱室(10)の穀稈供給口側から穀稈出口側に向かって、段階的又は連続的に高く形成した請求項6又は7記載の脱穀装置の扱胴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2013−110990(P2013−110990A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258487(P2011−258487)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】