説明

脱穀装置の選別部構造

【課題】 選別部の側板に摺接する弾性変形可能なシール部材をシーブケースの側辺に沿って取付けるよう構成した脱穀装置の選別部構造において、シール部材を所定の姿勢に適切かつ容易に組付けることができるとともに、シール機能を確実に発揮させることができるようにする。
【解決手段】 シール部材22を、シーブケース側辺7sに沿う長さを有する取付け基部22aから選別部側板5sに摺接するリップ片22bを片持ち状に延出して構成し、この取付け基部22aをコの字形断面に形成された支持枠25に嵌入装着してシーブケース7の側辺7sに形成した取付け溝23に嵌入止着し、シール部材22を取付け溝23に嵌入止着した状態において、支持枠25の先端部pと取付け溝23の開口端部qとでリップ片22bの基部を挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選別部の側板に摺接する弾性変形可能なシール部材をシーブケースの側辺に沿って取付けるよう構成した脱穀装置の選別部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シール部材は、処理物が選別部の側板とシーブケースとの間から洩れ落ちるのを防止するためにシーブケースの側辺に沿って装着されるものであり、例えば、特許文献1に示されているように、弾性樹脂材からなる角棒状の取付け基部からリップ片を片持ち状に延出して構成されたシール部材をシーブケースの側辺に形成した取付け溝に嵌入止着し、そのリップ片の先端部を選別部の側板に弾性変形状態で摺接させるようにしている。
【特許文献1】特開平11−75509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成のシール部材は細長くて柔軟な部品であるために、シーブケース側辺の取付け溝に嵌入する際に変形しやすく、組付けに手数がかかることがあった。また、組み付けられたシール部材のリップ片は、取付け溝から大きく露出した取付け基部から延出された状態にあるために、リップ片が根元から容易に屈曲変形しやすい状態にあり、上下移動量の大きいシーブケース後部においてはリップ片が下方に巻き込み変形されてシール機能が低下するおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、シール部材を所定の姿勢に適切かつ容易に組付けることができるとともに、シール機能を確実に発揮させることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、選別部の側板に摺接する弾性変形可能なシール部材をシーブケースの側辺に沿って取付けるよう構成した脱穀装置の選別部構造であって、
前記シール部材を、前記シーブケースの側辺に沿う長さを有する取付け基部から選別部の側板に摺接するリップ片を片持ち状に延出して構成し、このシール部材の前記取付け基部をコの字形断面に形成された支持枠に嵌入装着し、支持枠に嵌入保持されたシール部材の取付け基部をシーブケースの側辺に形成した取付け溝に嵌入止着し、シール部材を前記取付け溝に嵌入止着した状態において、前記支持枠の先端部と取付け溝の開口端部とで前記リップ片の基部が挟持されるように構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、シール部材の組付けに際しては、先ず、シール部材の取付け基部をコの字形断面に形成された支持枠に嵌入装着してシール部材全体を保形し、次いで、シール部材をシーブケースの取付け溝に嵌入して止着する。この場合、シール部材は支持枠によって棒状に保形されていて勝手に屈曲変形しない状態となっているので、取扱いやすく、かつ、取付け溝への嵌入を速やかに行うことができる。
【0007】
また、組付けが完了した状態では、支持枠の先端部と取付け溝の開口端部とでリップ片の基部が挟持されるので、リップ片の突出姿勢が安定し、シーブケースが上下に大きく移動してもリップ片が巻き込み変形され難い状態となる。
【0008】
従って、第1の発明によると、シール部材を所定の姿勢に適切かつ容易に組付けることができるとともに、シール機能を確実に発揮させることができ、シーブケース側辺と選別部側板との間から処理物の洩れ落ちのない良好な揺動選別を行うことができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記シーブケースの取付け溝の溝底に形成した取付け孔に圧入止着される連結用突起を前記シール部材の取付け基部に設けるとともに、前記支持枠には、前記連結用突起が係入される切欠き凹部を形成してあるものである。
【0010】
上記構成によると、支持枠によって棒状に保形されたシール部材の所定位置に連結用突起が所定の方向に向いて突出されることになり、取付け溝の溝底に形成した取付け孔に連結用突起を容易に圧入することができ、組付け作業性が高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、自脱型コンバインに搭載される脱穀装置の縦断した側面図が示されている。この脱穀装置は、図外左方の刈取り部からで搬送されてきた横倒れ姿勢の刈取り穀稈をフィードチェーン1で受取り、その穂部を扱室2に挿入した状態で図中左方から右方に通過搬送することで、扱室2に前後水平に軸支した扱胴3によって脱穀処理し、穀稈から分離した処理物を扱室下部に沿って張設した受網4で選別し、受網4を漏下した処理物を扱室2の下方に配備された選別部5の前半部に落下供給するとともに、受網4を漏下しなかった処理物を扱室終端の送塵口6から搬出して選別部5の前後中間部に落下供給し、選別部5に落下供給された処理物を前後に長いシーブケース7で受け止め、載置した処理物を後方(図1では右方)に向けて揺動搬送しながら粗選別用の前部チャフシーブ8、精選別用のグレンシーブ9、ほぐし用の選別ラック10、後部チャフシーブ11、ストローラック12、などを利用して篩い選別するとともに、選別部前端部に備えた唐箕13から後方上方に向けて選別風を供給して風選処理し、グレンシーブ9から漏下した穀粒を1番回収部14に、また、後部チャフシーブ11やストローラック12から漏下した2番物を2番回収部15にそれぞれ選別回収し、1番回収部14に回収した1番物(穀粒)を1番スクリュー16によって機外にまで横送りした後、穀粒タンクなどの回収部に供給し、2番回収部15に回収した2番物を2番スクリュー17によって横送りした後、シーブケース7の前部に還元供給して再選別処理を行うように構成されている。
【0012】
また、扱室2の後方で選別部5の後部上方箇所には、排ワラ搬送経路の下側に位置させて横断流ファンからなる排塵ファン18が横架されており、扱室2の終端に形成された送塵口6から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって選別部5の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が排塵ファン18に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。また、前記排塵ファン18の上方には排ワラ搬送装置19が配備されており、扱室2から搬出されてきた排ワラが後方かつ穂先側に向けて斜め搬送され、図示されていない排ワラカッタや排ワラ結束装置などの排ワラ処理装置に供給されるようになっている。
【0013】
前後および上下に揺動される前記シーブケース7は樹脂成形されたものであり、このシーブケース7の前側辺7fと左右側辺7sには、選別部5における前側板5fおよび左右の側板5sとシーブケース7との間から処理物が洩れ落ちるのを防止するシール部材21,22が取付けられている。
【0014】
シーブケース7の前側辺7fに取付けられるシール部材21は、樹脂シート材、あるいは、樹脂コートした布材、等からなる前後広幅の弾性シート材からなり、シーブケース7の前後移動および上下移動にかかわらず前側板5fとシーブケース前側辺7fとの間を閉塞するよう前側辺7fにボルト締め連結されている。
【0015】
シーブケース7の左右側辺7sに沿って取付けられるシール部材22は、弾性変形可能な樹脂材で前後に長く成形されたものであり、図3,4に示すように、角棒状の取付け基部22aから斜め上方に向けてリップ片22bが片持ち状に延出されるとともに、取付け基部22aの内側面に長手方向に所定間隔をもって複数個の連結用突起22cが一体突設されている。
【0016】
他方、シーブケース7における左右の側辺7sの上端部には横外方に向けて開口した取付け溝23が形成されるとともに、その溝底には前記連結用突起22cを貫通止着する取付け孔24が形成されている。
【0017】
上記構成のシール部材22は支持枠25で保形した上でシーブケース7の取付け溝23に組付けられる。この支持枠25は金属板を上向きコの字形断面に屈曲して構成されたものであり、シール部材22における取付け基部22aを支持枠25に上方から嵌入することで、取付け基部22aにおける外側面、内側面、および、下面の三面が支持枠25で密着支持されて、シール部材22全体が棒状に保形されるようになっている。ここで、支持枠25の内側辺には上方に開口した切欠き凹部26が形成され、ここに連結用突起22cが係入されるようになっている。
【0018】
また、前記支持枠25における外側辺の先端部pがリップ片22bの基部下面に沿って屈曲延出されるとともに、取付け溝23の外側の開口端部qがリップ片22bの基部上面に沿って屈曲延出されており、リップ片22bの基部が外側辺の先端部pと取付け溝23の開口端部qとによって挟持されて所定の向きの突出姿勢に保持されるようになっている。
【0019】
このようにシーブケース7における左右側辺7sの上端部に取付けられたリップ片22bは、左右両側方向の弾性変形は容易で選別部5の側板5sに沿って変形圧接されて好適なシール機能を発揮するが、基部が上下から挟持されて保形されているので下方への巻き込み変形がしにくいものとなっている。
【0020】
〔他の実施例〕
【0021】
(1)図5に示すように、シーブケース7における左右側辺7sの上端部に取付け溝23を上方に向けて形成して実施することもできる。この場合は、リップ片22bの基部が支持枠25の先端部pと取付け溝23の下側の開口端部qとで上下から挟持されて保形されることになる。
【0022】
(2)シーブケース7の前側辺7fに取付けられるシール部材21を、左右側辺のシール部材22と同様に嵌め込み連結することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】シーブケースの平面図
【図3】シーブケース側辺におけるシール部材の取付け部を示す縦断正面図
【図4】シール部材取付け構造を示す分解斜視図
【図5】別実施例におけるシール部材の取付け部を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0024】
5 選別部
5s 側板
7 シーブケース
7s 側辺
22 シール部材
22a 取付け基部
22b リップ片
22c 連結用突起
23 取付け溝
24 取付け孔
25 支持枠
26 切欠き凹部
p 支持枠の先端部
q 取付け溝の開口端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別部の側板に摺接する弾性変形可能なシール部材をシーブケースの側辺に沿って取付けるよう構成した脱穀装置の選別部構造であって、
前記シール部材を、前記シーブケースの側辺に沿う長さを有する取付け基部から選別部の側板に摺接するリップ片を片持ち状に延出して構成し、このシール部材の前記取付け基部をコの字形断面に形成された支持枠に嵌入装着し、支持枠に嵌入保持されたシール部材の取付け基部をシーブケースの側辺に形成した取付け溝に嵌入止着し、シール部材を前記取付け溝に嵌入止着した状態において、前記支持枠の先端部と取付け溝の開口端部とで前記リップ片の基部が挟持されるように構成してあることを特徴とする脱穀装置の選別部構造。
【請求項2】
前記シーブケースの取付け溝の溝底に形成した取付け孔に圧入止着される連結用突起を前記シール部材の取付け基部に設けるとともに、前記支持枠には、前記連結用突起が係入される切欠き凹部を形成してある請求項1記載の脱穀装置の選別部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−50940(P2006−50940A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234276(P2004−234276)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】