説明

脱穀装置用の扱胴

【課題】作製時における加工の手間を少なくしてコスト低減を図ることが可能となる脱穀装置用の扱胴を提供する。
【解決手段】駆動回転されることにより扱室14に供給された穀稈を脱穀処理するように構成されるとともに、回転軸芯方向に沿う姿勢で且つ周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状部材47が備えられ、各棒状部材47の夫々に径方向外方に向けて突出する状態で且つ回転軸芯に沿う方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の扱歯48が取り付けられ、扱歯48が棒状部材47の表面に溶接固定する状態で取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回転されることにより扱室に供給された穀稈を脱穀処理するように構成されるとともに、回転軸芯方向に沿う姿勢で且つ周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状部材が備えられ、前記各棒状部材の夫々に径方向外方に向けて突出する状態で且つ前記回転軸芯に沿う方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の扱歯が取り付けられている脱穀装置用の扱胴に関する。
【背景技術】
【0002】
上記脱穀装置用の扱胴において、従来では、前記棒状部材として丸パイプ材が用いられ、前記扱歯として丸棒部材が用いられて、丸パイプ材からなる棒状部材に軸芯方向と直交する方向に貫通孔を形成し、その貫通孔を挿通して棒状部材の中心部を通るように扱歯を挿入した状態で扱歯と棒状部材とを溶接又はネジ締結により固定するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、扱胴の作製にあたっては、棒状部材に扱歯を取り付けるための貫通孔を多数形成する穿孔作業を行ったのちに、扱歯を棒状部材に固定する扱歯固定作業を行わなければならず、穿孔作業と扱歯固定作業という別々の作業が必要となり、加工に手間が掛かるものとなっており、それだけコスト高になる不利があった。
【0005】
本発明の目的は、作製時における加工の手間を少なくしてコスト低減を図ることが可能となる脱穀装置用の扱胴を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脱穀装置用の扱胴は、駆動回転されることにより扱室に供給された穀稈を脱穀処理するように構成されるとともに、回転軸芯方向に沿う姿勢で且つ周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状部材が備えられ、前記各棒状部材の夫々に径方向外方に向けて突出する状態で且つ前記回転軸芯に沿う方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の扱歯が取り付けられているものであって、その第1特徴構成は、前記扱歯が前記棒状部材の表面に溶接固定する状態で取り付けられている点にある。
【0007】
第1特徴構成によれば、扱歯が棒状部材の表面に溶接固定する状態で取り付けられているから、棒状部材に扱歯が挿通するための貫通孔を形成する孔加工作業が不要であるから、扱胴を作製するにあたっては、扱歯を棒状部材の表面に溶接する扱歯固定作業だけで対応できる。
【0008】
従って、扱胴の作製時における加工の手間を少なくしてコスト低減を図ることが可能となる脱穀装置用の扱胴を提供できるに至った。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記棒状部材の表面が平坦面に形成されている点にある。
【0010】
第2特徴構成によれば、棒状部材の表面が平坦面に形成されているから、扱歯を棒状部材の平坦面からなる表面に当て付けて溶接するようにすると、扱歯の位置決めが行い易いものとなり、組付け作業性の向上を図ることが可能となる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記扱歯が前記棒状部材における回転方向下手側に位置する表面に溶接固定する状態で取り付けられている点にある。
【0012】
第3特徴構成によれば、棒状部材における回転方向下手側に位置する表面は、扱胴が回転駆動されることにより扱室に供給された穀稈に衝突作用する部分であるが、この回転方向下手側に位置する表面に扱歯が溶接固定されているから、この棒状部材の表面に扱歯により突起部が形成されることになる。
【0013】
このように棒状部材における突起部が形成された表面により穀稈に対して脱穀作用が行われることから、平坦な表面で脱穀作用する場合に比べて、棒状部材による穀稈に対する脱穀作用が強くなり、それだけ脱穀性能を向上させることが可能となる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記扱歯が、回転軸芯方向の一端側から他端側に移送される脱穀処理物の移送終端側に対応する箇所では、移送始端側に対応する箇所よりも前記回転軸芯に沿う方向での間隔が狭い状態で前記各棒状部材に取り付けられている点にある。
【0015】
第4特徴構成によれば、脱穀処理物は扱胴の回転軸芯方向の一端側から他端側に移送されることになるが、脱穀処理物の移送始端側に対応する箇所では扱歯の回転軸芯に沿う方向での間隔が広く、脱穀処理物の移送終端側に対応する箇所では移送始端側に対応する箇所よりも扱歯の回転軸芯に沿う方向での間隔が狭いものとなる。
【0016】
脱穀装置において、扱室に供給された穀稈を脱穀処理する場合、脱穀処理物の移送始端側に対応する箇所では、多くの穀稈が着粒状態のままであるから扱歯による打撃回数が少なくても脱穀性能は充分に発揮し易いものとなる。又、移送始端側では多くの穀稈が着粒状態となっていることから全体の処理物量が多く、扱歯による打撃回数を多くすると駆動負荷が大きくなる。
一方、脱穀処理物の移送終端側に対応する箇所では、多くの穀稈が既に脱粒しているものの、この脱粒した穀粒が脱粒茎稈等の処理物の間にササリ込む状態で存在することがあり、このようなササリ籾は打撃回数を多くしなければ分離し難いものとなる。
【0017】
そこで、移送終端側に対応する箇所では、扱歯の回転軸芯に沿う方向での間隔を狭くすることにより、打撃回数を多くさせて充分な脱穀性能を発揮することができるのであり、又、移送始端側に対応する箇所では扱歯の回転軸芯に沿う方向での間隔を広くすることにより、充分な脱穀性能を発揮できるものでありながらも扱胴全体としての扱歯の個数を少なくして構造を簡素化することが可能となり、しかも、打撃回数の減少によって駆動負荷を軽減させることもできる。
【0018】
従って、第4特徴構成によれば、脱穀性能を低下させることなく、構造を簡素化することにより更なる低コスト化を図ることが可能となり、しかも、駆動負荷の軽減を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断側面図である。
【図4】(a)は棒状部材の縦断正面図を示す図であり、(b)は扱歯を備えた棒状部材の一部斜視図である。
【図5】脱穀装置の縦断正面図である。
【図6】受網の分解斜視図である。
【図7】受網の縦断側面図である。
【図8】側部カバーの開放状態での支持部の斜視図である。
【図9】別実施形態の扱胴の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係る脱穀装置用の扱胴を全稈投入形コンバインの脱穀装置に適用した場合について説明する。
図1には、稲や麦などを収穫対象とする全稈投入形コンバインの全体側面が示されており、このコンバインは、車体フレーム1にエンジン2や図外の変速装置などを搭載し、車体フレーム1の下部に、変速装置などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される左右一対のクローラ式走行装置3を装備し、車体フレーム1の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置4を昇降揺動可能に連結し、車体フレーム1の左半部に、刈取搬送装置4からの刈取穀稈に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5を搭載し、車体フレーム1の右半部に、脱穀装置5からの穀粒を貯留するとともにその貯留した穀粒の袋詰めを可能にする袋詰装置6を搭載し、車体フレーム1における袋詰装置6の前方箇所に搭乗運転部7を備えて構成されている。
【0021】
図1,2に示すように、刈取搬送装置4は、車体の走行に伴って、その前部左右両端に装備したデバイダ9が植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分け、その前部上方に配備した回転リール10が、左右のデバイダ9で梳き分けられた収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込み、その底部に装備したバリカン形の切断機構11が収穫対象の植立穀稈の株元側を切断し、切断機構11の後方に配備したオーガ12が、切断機構11による切断後の刈取穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めるとともに、その所定箇所において後方に向けて送り出し、その所定箇所から脱穀装置5の前上部にわたる搬送コンベヤからなるフィーダ13が、オーガ12からの刈取穀稈を脱穀装置5に向けて搬送するように構成されている。
【0022】
図3,5に示すように、脱穀装置5は、その上部に形成した扱室14に、刈取穀稈の搬送方向に沿って架設した前後向きの支軸15を支点にして回転する扱胴16と、その扱胴16の下方に位置して円弧状に形成される受網17とが備えられ、扱室14の機体後方側箇所には排稈口18が形成されている。
受網17の下方には、受網17から漏下した処理物の選別を行う揺動選別機構19、選別用の風を送風する唐箕20、揺動選別機構19にて選別された穀粒を回収する一番回収部21、枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物である二番物を回収する二番回収部22等が備えられ、揺動選別機構19の機体後方側には吹き飛ばされた細かなワラ屑等を機外に排出するための排出口23が形成されている。
【0023】
扱室14は、扱胴16を覆う受網17や天板24などによって区画形成され、その前端下方部位に供給口25が形成され、その供給口25にフィーダ13の後端部が接続され、そのフィーダ13で搬送された刈取穀稈の全体が脱穀処理物として供給口25から投入供給される。
【0024】
天板24の内面には、扱胴16の回転作動に伴って、扱室14の上部に搬送された脱穀処理物を処理物移送方向下手側(機体後方側)に向けて案内する複数の送塵弁49が、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で備えられている。
【0025】
扱胴16は、その支軸15が脱穀装置5の前壁26と後壁27とにわたって回転可能に架設され、エンジン2からの動力で支軸15を支点にして回転駆動されることで、扱室14に供給された刈取穀稈に対して脱穀処理を施して、送塵弁49により案内して処理物を回転軸芯方向一端側から他端側、言い換えると機体前方側から機体後方側に向けて移送しながら脱穀処理を行うように構成されている。
【0026】
受網17は、格子状に形成されたコンケーブ受網であり、扱室14に供給された刈取穀稈を受け止めて、刈取穀稈に対する扱胴16の脱穀処理を補助し、その脱穀処理で得られた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生したワラ屑などを下方の揺動選別機構19に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構19への漏下を防止する。
【0027】
揺動選別機構19は、カム式の駆動機構28によって前後方向に揺動駆動されるシーブケース29の上部に、粗選別用のグレンパン30とチャフシーブ31とストローラック32とを備え、シーブケース29の下部に、精選別用のグレンパン33とグレンシーブ34とを備えて構成されている。そして、単粒化穀粒やワラ屑などが混在する状態で受網17から漏下した選別処理物を、上部のグレンパン30やチャフシーブ31あるいはストローラック32で受け止めて、篩い選別による粗選別処理を施し、かつ、単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが混在する状態でチャフシーブ31から漏下した選別処理物を、下部のグレンパン33やグレンシーブ34で受け止めて、篩い選別による精選別処理を施して、選別処理物を、単粒化穀粒(一番物)と、枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物(二番物)と、細かなワラ屑などの塵埃とに選別する。
【0028】
唐箕20は回転駆動されることで選別風を生起し、その選別風が、受網17から漏下した選別処理物や、揺動選別機構19で選別される選別処理物などに向けて供給されることで、選別処理物に対して風力選別処理を施して、選別処理物から比重の小さいワラ屑などを吹き分けて、脱穀処理方向下手側すなわち機体後部側の排出口23に向けて搬送する。
【0029】
一番回収部21は、唐箕20からの選別風でワラ屑などの塵埃が除去された状態で、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下した単粒化穀粒を回収し、回収した単粒化穀粒を、その底部に左右向きに配備した一番スクリュー36にて脱穀装置5の横側外方に搬送するように構成されている。又、搬送された穀粒は揚送スクリュー(図示せず)にて袋詰装置6の上部に備えた穀粒タンク40に向けて搬送する。
【0030】
二番回収部22は、揺動選別機構19により選別された枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物(二番物)を回収し、回収した混在物を二番スクリュー38にて脱穀装置5の横側外方に搬送するように構成されている。又、搬送された混在物は再処理部(図示せず)による再脱穀処理を行った後に揺動選別機構19に還元するように構成されている。
【0031】
図3に示すように、扱胴16は、その前端部に装備した掻込部16Aと、その掻込部16Aの後端に連接した脱穀処理部16Bとを備えて構成されている。掻込部16Aの外周面には、扱胴16の回転作動時に、供給口25から供給された刈取穀稈を後方の脱穀処理部16Bに向けて掻き込み搬送する2枚の螺旋羽根43が一体装備されている。
【0032】
図3,5に示すように、脱穀処理部16Bは、支軸15の前部に溶接固定された第1プレート44、支軸15の前後中間部に溶接固定された第2プレート45、支軸15の後端部に溶接固定された第3プレート46、回転軸芯方向に沿う前後向きの姿勢で扱胴16の周方向に一定間隔を隔てて並ぶ状態で配備された6本の棒状部材47、及び、各棒状部材47に扱胴16の径方向外方に向けて突出する姿勢で処理物移送方向(前後方向)に間隔を隔てて並ぶように装備した複数の扱歯48などによって構成されている。
【0033】
各プレート44〜46は、支軸15を中心とする円形で、その外周側における支軸15からの等距離の位置に各棒状部材47がボルト連結されており、各プレート44〜46と6本の棒状部材47が一体的に連結されて略円筒状の扱胴16が構成されている。
【0034】
そして、図4,5に示すように、棒状部材47は四角形の角パイプ状に形成されており、この棒状部材47の平坦面に形成される4つの表面のうちの扱胴16の回転方向Q(図5参照)の下手側に位置する表面47Aに丸棒部材にて形成される扱歯48が溶接固定されている。すなわち、扱歯48は、長手方向が扱胴16の径方向に沿うような姿勢で棒状部材47の上記表面47Aに基端側の外周面を当てつけた状態で溶接固定されている。扱歯48は、棒状部材47の上記表面47Aの全幅又は略全幅にわたって長い範囲で接しており、その接触箇所における扱歯48の前部側箇所及び後部側箇所の夫々において、長い接触範囲の全領域又は略全領域で溶接が行われており、充分な耐久性を有するものとなっている。
【0035】
図3に示すように、扱歯48が、機体前後方向後端側(脱穀処理物の移送方向終端側)に対応する箇所、具体的には第2プレート45よりも機体前後方向後側の箇所では、機体前後方向前端側(移送方向の始端側)に対応する箇所、具体的には第2プレート45よりも機体前後方向前側の箇所よりも扱胴回転軸芯に沿う方向(機体前後方向)での間隔が狭い状態で棒状部材47に取り付けられている。
このように構成することで、多くの穀粒が着粒状態となっている搬送始端側では間隔を広めにして扱歯48の個数をできるだけ少なくして、構成の簡素化並びに駆動負荷の軽減を図りながら、多くの穀粒が既に脱粒している搬送終端側では、扱歯48の間隔を狭くして扱歯48による打撃作用の頻度を高めて、脱粒茎稈等の処理物の間にササリ込む穀粒を分離させて良好な脱穀作用を発揮できるようにしている。
【0036】
扱胴16は、その外方に向けて突出する複数の扱歯48が、脱穀処理部16Bの周方向と前後方向とに間隔を隔てて並ぶように配備され、又、脱穀処理部16Bの内部空間Sが扱室14における扱胴16の外方側の空間に連通して、その内部空間Sへの脱穀処理物の入り込みを許容するようになっている。その結果、扱胴16の回転作動時には、その外周側の脱穀処理物と内部空間Sに入り込んだ脱穀処理物とを攪拌しながら、それらの脱穀処理物に対して、棒状部材47や扱歯48の打撃や梳き込みなどによる脱穀処理を施すことになる。つまり、扱胴16の回転作動時には、複数の扱歯48だけでなく、扱胴16の脱穀処理部16Bを形成する6本の棒状部材47までもが、脱穀処理物に作用する部材として機能することから、脱穀性能の向上を図ることができる。
【0037】
又、脱穀処理部16Bの内部空間Sが扱室14における扱胴16の外方側に連通することで、大量の刈取穀稈が扱室14に供給された場合であっても、扱胴16の外方側の空間だけでなく脱穀処理部16Bの内部空間Sも脱穀処理用の処理空間として有効利用することができる。
【0038】
扱室14の左側を覆う側部カバー50が機体後部側(扱胴16の軸芯方向一端部側)の縦軸芯周りで開閉揺動自在に機体左側に位置する第1支持フレーム51に支持されており、この側部カバー50を縦軸芯周りで揺動させて扱室14を開放させると、点検用の開口Kが形成されるようになっている。そして、この点検用の開口Kから受網17をメンテナンスのために脱着することができるようになっている。
【0039】
前記側部カバー50は、前後方向に長尺に形成されており、枢支部分のガタと自重による片持ち荷重によって揺動端側が少し下方に傾斜するのを防止するために、揺動端側が予め少し斜め上方に向くように支持構造が構成されている。
【0040】
つまり、図8に示すように、側部カバー50は、第1支持フレーム51の後部に連結された縦フレーム64に形成された上下一対の支持アーム65a,65bに対して、側部カバー50側に設けられた上下一対の支持ブラケット66a,66bが夫々縦向きの枢支ピン67a.67bによって枢支連結されている。そして、図1に示すように、これらの上下2つの枢支ピン67a,67bのうち上部側の枢支ピン67aが下側の枢支ピン67bに対して、所定量だけ後方側に位置ずれさせた状態で設けられている。
このように構成することで、揺動端側が予め少し斜め上方に位置するように構成されており、側部カバー50を閉じるときに、枢支部分のガタや自重による片持ち荷重に起因して揺動端側が少し下方に傾斜することを防止して、適正な位置で閉じることができるようになっている。
【0041】
図2に示すように、受網17は、周方向並びに軸芯方向の夫々に二分割された4個の受網構成体17A,17B,17C,17Dにて構成されるとともに、横側部に形成された点検用の開口Kを通して着脱可能に設けられている。4個の受網構成体17A,17B,17C,17Dのうち開口Kから遠い側に位置する2個の奥側の受網構成体17A,17Bの軸芯方向両側部を受け止め支持する円弧状の複数のガイドレール52が備えられ、4個の受網構成体17A,17B,17C,17Dのうち開口側に位置する2個の手前側の受網構成体17C,17Dの一端部が奥側の受網構成体17A,17Bの端部に着脱自在に連結されるとともに、他端部が開口Kの上縁に沿って設けられた第1支持フレーム51に着脱自在に連結されている。
【0042】
以下、受網17の構成並びにその取り付け構造について具体的に説明する。
4個の受網構成体17A,17B,17C,17Dは同一形状であり、図6に示すように、円周方向の両側部に設けられた断面略L字形の基枠53Aに、帯状板からなる複数の縦桟53Bを、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てる状態で前後向きに整列配備し、円弧状に湾曲形成した帯状板からなる複数の第1横桟53Cを、扱胴16の支軸方向となる前後方向に所定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備し、円弧状に湾曲形成した丸棒の線材からなる複数の第2横桟53Dを、隣接する第1横桟53Cの間において、前後方向に一定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備して、その網目が、扱胴16の周方向に沿う方向の長さが前後方向に沿う方向の長さよりも長くなる横長の矩形に形成されている。
【0043】
前記基枠53Aは、断面形状が略L字状であって径方向外方に突出する形状としてあり、この外方に突出する部分に適宜間隔をあけてボルト挿通孔59を形成してあり、この基枠53Aにより、後述するように他の部材との間でボルト連結することが可能な連結部60が構成されている。
【0044】
図5に示すように、扱室14の左右両側には、機体前後方向に沿って延びる状態で断面コの字状の第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54が備えられ、天板24はそれら第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54夫々の上部に連結固定されている。
図7に示すように、受網17の機体前部側箇所には、供給口25を備えるとともに受網17と揺動選別機構19との間の隙間を覆うように構成された前部側仕切り板56が、左右両側の第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54に亘って連結される状態で備えられており、この前部側仕切り板56に複数のガイドレール52のうちの機体前部側の受網支持用のガイドレール52Aが溶接固定されている。
【0045】
又、図5,6,7に示すように、受網17の機体後部側箇所には、受網17の形状に沿うように円弧状に形成された後部側仕切り板57が左右両側の第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54に亘って連結される状態で備えられており、この後部側仕切り板57に、複数のガイドレール52のうちの機体後部側の受網支持用のガイドレール52Bが溶接固定されている。
【0046】
図6に示すように、奥側の受網構成体17A,17Bと手前側の受網構成体17C,17Dとの連結箇所に対応する位置(受網17の最下端位置に対応する位置)に、前部側仕切り板56と後部側仕切り板57とに亘って中継用支持体58が架設連結されており、受網17の前後方向中間位置において、第2支持フレーム54と中継用支持体58とに亘って、複数のガイドレバー52のうちの前後方向中間部の受網支持用のガイドレール52Cがボルト連結される状態で取り付けられている。つまり、ガイドレール52Cの開口側の端部を中継用支持体58によって支持する構成となっている。
【0047】
図5に示すように、奥側の受網構成体17A,17Bは、奥側の端部が第2支持フレーム54に接当し且つ開口側端部に形成された連結部60(基枠53A)が中継用支持体58に接当する状態で前後両側のガイドレール52によって受止め支持される。そして、図5,7に示すように、手前側の受網構成体17C,17Dにおける奥側の端部に形成された連結部60が、奥側の受網構成体17A,17Bの連結部60と中継用支持体58と共にボルトBoで共締め連結する構成となっている。尚、ボルトBoに締結されるナットNtは中継用支持体58の奥側箇所に予め溶接して固定されている。つまり、作業者が開口Kを通して機体外部からボルトBoを締結並びに解除することで着脱自在に、手前側の受網構成体17C,17D、奥側の受網構成体17A,17Bを中継用支持体58と共締め連結することができるように構成されている。
【0048】
説明を加えると、図5,6に示すように、中継用支持体58は、上下方向に延びる中央の縦板部58Aと、その縦板部58Aの上端部から奥側に向けて突出する上側水平面部58Bと、縦板部58Aの下端部から開口側に向けて突出する下側水平面部58Cとを備えて構成されている。
【0049】
そして、奥側の受網構成体17A,17Bの開口側端部に形成された連結部60(基枠53Aの外方延設部分)と、手前側の受網構成体17C,17Dにおける奥側の端部に形成された連結部60(基枠53Aの外方延設部分)とが中継用支持体58の縦壁部58Aの開口側側面に受止め支持されるとともに、それらをボルトBoで共締め連結するのである。
又、奥側の受網構成体17A,17Bの縦桟53Bが、中継用支持体58の上側水平面部58Bの上面部に載置支持されており、手前側の受網構成体17C,17Dにおける基枠53Aの外方延設部分の先端が、中継用支持体58の下側水平面部58Cの上面部に載置支持される構成となっている。
【0050】
又、手前側の受網構成体17C,17Dは、開口側の端部に位置する連結部60が第1支持フレーム51にボルトBoで連結されることになる。このようにして手前側の受網構成体17C,17Dは奥側の端部及び開口側の端部の両端部で固定支持される。一方、奥側の受網構成体17A,17Bは、奥側端部が第2支持フレーム54に当て付けた状態で開口側の端部が中継用支持体58にボルト連結されることになるので、全ての受網構成体17A,17B,17C,17Dを位置固定状態で取り付けることができる。
【0051】
つまり、受網17は、装置枠体62としての第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54によって着脱自在に支持される構成となっている。
【0052】
メンテナンスのために受網17を着脱させるときは、側部カバー50を開放させて点検用の開口Kを通して作業者が着脱作業を行うことになる。つまり、手前側の受網構成体17C,17Dの第1支持フレーム51に対するボルト締結と中継用支持体58に対するボルト締結とを夫々解除して、開口Kを通して手前側の受網構成体17C,17Dを取り外すことができる。又、手前側の受網構成体17C,17Dと中継用支持体58とのボルト締結を解除すると、奥側の受網構成体17A,17Bと中継用支持体58とのボルト締結も合わせて解除されるから、奥側の受網構成体17A,17Bも開口Kを通して取り外すことができる。
【0053】
そして、4個の受網構成体17A,17B,17C,17Dのうち機体前部側(軸芯方向一端側に対応)に位置する前部側(一端側に対応)の受網構成体17A,17Cと、機体後部側(軸芯方向他端側に対応)に位置する後部側(他端側に対応)の受網構成体17B,17Dとの間にそれらの隙間を埋める隙間埋め部材63が、中継用支持体58、第1支持フレーム51及び第2支持フレーム54に支持される状態で設けられている。そして、この隙間埋め部材63は受網17の周方向の全域又は略全域にわたって設けられており、奥側の端部が右側の支持フレーム54に連結固定され、中間部が中継用支持体58に連結固定され、さらに、開口側の端部が第1支持フレーム51に連結固定されている。
【0054】
説明を加えると、図6に示すように、隙間埋め部材63は、板体を略弓形の円弧形状となるように形成して構成されており、奥側の受網構成体17A,17Bに対応する奥側の隙間埋め部材63Aと、手前側の受網構成体17C,17Dに対応する手前側の隙間埋め部材63Bとで構成されている。
【0055】
奥側の隙間埋め部材63Aは、前後方向中間部の受網支持用のガイドレール52Cにおける中間仕切り体を兼用するものであり、上述したように両側端部が、第2支持フレーム54と中継用支持体58とに夫々ボルト連結されて固定されており、この隙間埋め部材63Aの両側にガイドレール52Cが固定されている。そして、この奥側の隙間埋め部材63Aは、奥側の受網構成体17A,17Bにおける第1横桟53Cの内周側縁部とほぼ面一になるように構成されている。
【0056】
手前側の隙間埋め部材63Bは、奥側の端部が中継用支持体58にボルト連結され、開口側の端部が第1支持フレーム51にボルト連結される状態で取り付けられており、図7に示すように、手前側の受網構成体17C,17Dにおける第1横桟53Cの内周側縁部とほぼ面一になるように構成されている。尚、奥側の隙間埋め部材63Aの手前側端部と手前側の隙間埋め部材63Bの奥側端部は、中継用支持体58を挟んでそれらがボルトBoにて共締め連結されている。
そして、奥側の隙間埋め部材63Aの開口側端部が中継用支持体58の断面形状に沿うように切欠形成されており、その端縁が縦板部58Aと上側水平面部58Bとに接当する状態で支持されている。又、手前側の隙間埋め部材63Bも同様に、奥側の端縁が縦板部58Aと下側水平面部58Cとに接当する状態で支持されている。
【0057】
図7に示すように、手前側の隙間埋め部材63Bと奥側の隙間埋め部材63Aとが、それらに一体的に設けられたフランジ部63cを介して中継用支持体58を挿通するボルトBoにより共締め連結する構成となっている。ちなみに、各受網構成体17A,17B,17C,17Dの基枠53Aには、隙間埋め部材63Bと隙間埋め部材63Aとを連結するために設けられるフランジ部63cを除けるために両側部にL字形の切欠kが形成されている。
【0058】
図5,6に示すように、後部側仕切り板57の内周側は受網17の形状に沿うように円弧状に形成されるが、外周側は複数の直線部分からなる折れ線形状に構成されている。開口K側の端縁57aは側部カバー50の内面に沿うような縦向きに形成され、中継用支持体58に対向する下方側端縁57bは中継用支持体58よりも下方に大きく突出しないように水平向きの直線形状に構成されている。奥側の端縁57cは図示しない側壁に沿うような縦向きに形成されている。
又、隙間埋め部材63は、扱胴16の軸芯方向視(前後方向視)で後部側仕切り板57と同じような形状となっており、外周側は複数の直線部分からなる折れ線形状に構成されている。
【0059】
隙間埋め部材63を設けることによって、前部側の受網構成体17A,17Cと後部側の受網構成体17B,17Dとの間の端部の第1横桟53C同士の間に隙間が形成されてワラ屑等が入り込むことを回避できる。その結果、引っ掛かったワラ屑により脱穀処理物の移送が阻害されることを回避し易いものにできる。
【0060】
又、後部側の受網構成体17B,17Dと後部側仕切り板57との間に、隙間を覆う隙間覆い部材68が後部側仕切り板57に溶接されて支持される状態で設けられている。つまり、図6,7に示すように、この後部側に位置する隙間覆い部材68は、後部側の受網構成体17B,17dと後部側仕切り板57との間の隙間を上方から覆うように後部側仕切り板57から前方に向けて突出する状態で設けられている。又、この隙間覆い部材68は、扱胴16の最下端部に相当する位置の近傍に受網17の周方向の一部の領域に設けられている。
【0061】
後部側の受網構成体17B,17Dと後部側仕切り板57との間は、受網17における処理物移送方向終端部に相当する位置であり、この箇所を通過すると排稈口18が形成されるので、処理物が滞留するおそれは少ないが、この位置に長めのワラが入り込んで下方に向けて突出すると、下方側のストローラック32上のワラ屑に引っ掛かり、処理の邪魔になるおそれがあるので、隙間覆い部材68を設けて、このようなワラの詰まりを回避できるようにしている。
【0062】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、棒状部材47が角形の角パイプ状に構成されるものを示したが、このような構成に代えて、例えば、図9(a),(b)に示すように、断面形状がチャンネル形のものやH形のものでもよい。又、図示はしないが断面形状がL字形のもの、断面形状が丸パイプ状のものを部分的に平坦面にプレス加工したもの等でもよい。又、表面が平坦面に形成されるものに限らず、図9(c)に示すように丸パイプ状のものとしてもよい。但し、この場合には、扱歯48として丸パイプ状の棒状部材47の表面に沿うように折り曲げたものを用いることになる。
【0063】
(2)上記実施形態では、扱歯48が棒状部材47の表面47Aの全幅又は略全幅にわたって長い範囲で接しており、扱歯48の前部側箇所及び後部側箇所の夫々において、長い接触範囲の全領域又は略全領域で溶接が行われる構成としたが、前記接触範囲の一部の箇所、例えば、1箇所又は複数の箇所で部分的に溶接が行われるものでもよく、扱歯48の前部側箇所と後部側箇所のうちのいずれか一方でのみ溶接が行われるものでもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、扱歯48が棒状部材47における回転方向下手側に位置する表面47Aに溶接固定する状態で取り付けられるものを示したが、扱歯48が棒状部材47における回転方向上手側に位置する表面に溶接固定するものでもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、扱胴16が、掻込部16Aと脱穀処理部16Bとを備える構成としたが、扱胴16としては、掻込部16Aを備えないものでもよく、又、掻込部16Aに、螺旋羽根43の代わりに整流歯又は扱歯48を備えるものであってもよい。
【0066】
(5)上記実施形態では、棒状部材47が6本備えられる構成としたが、棒状部材47の装備数量は種々変更が可能であり、例えば、8本の棒状部材47を装備するようにしてもよい。
【0067】
(6)上記実施形態では、扱歯48として丸棒部材を用いたが、扱歯48としては、角棒鋼材、丸パイプ材、あるいは、フラットバーなどを採用するようにしてもよく、又、U字状やV字状に屈曲形成されたものを採用するようにしてもよい。
【0068】
(7)上記実施形態では、扱歯48が、回転軸芯方向の一端側から他端側に移送される脱穀処理物の移送終端側に対応する箇所では、移送始端側に対応する箇所よりも回転軸芯方向での間隔が狭い状態で棒状部材に取り付けられるものを示したが、棒状部材47の前端から後端に亘って徐々に扱歯48同士の間隔が狭くなるものや、第2プレート45の前後で広い狭いを分けるのではなく、第2プレート45の前側又は後側で広い狭いを分けるものでもよい。又、扱歯48が、回転軸芯方向の全範囲にわたり回転軸芯方向での間隔が一定となる状態で棒状部材47に取り付けられる構成としてもよい。
【0069】
(8)上記実施形態では、全稈投入型のコンバインに備えられる脱穀装置に備えられる扱胴を示したが、自脱型のコンバインに備えられる脱穀装置に備えられる扱胴でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、周方向に間隔を隔てて並ぶ複数の棒状部材に扱歯が取り付けられている脱穀装置用の扱胴に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
14 扱室
17 受網
47 棒状部材
47A 表面
48 扱歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回転されることにより扱室に供給された穀稈を脱穀処理するように構成されるとともに、回転軸芯方向に沿う姿勢で且つ周方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の棒状部材が備えられ、前記各棒状部材の夫々に径方向外方に向けて突出する状態で且つ前記回転軸芯に沿う方向に間隔を隔てて並ぶ状態で複数の扱歯が取り付けられている脱穀装置用の扱胴であって、
前記扱歯が前記棒状部材の表面に溶接固定する状態で取り付けられている脱穀装置用の扱胴。
【請求項2】
前記棒状部材の表面が平坦面に形成されている請求項1記載の脱穀装置用の扱胴。
【請求項3】
前記扱歯が前記棒状部材における回転方向下手側に位置する表面に溶接固定する状態で取り付けられている請求項1又は2記載の脱穀装置用の扱胴。
【請求項4】
前記扱歯が、回転軸芯方向の一端側から他端側に移送される脱穀処理物の移送終端側に対応する箇所では、移送始端側に対応する箇所よりも前記回転軸芯に沿う方向での間隔が狭い状態で前記各棒状部材に取り付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱穀装置用の扱胴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate