説明

脱穀装置

【課題】選別性能を向上とササリ粒の回収効率の向上。
【解決手段】扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33終端部からの被処理物を受け入れて処理する排塵処理胴35を軸架した排塵処理室37を設け、前記扱室33及び排塵処理室37より漏下する被処理物を揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38の始端側から順番に移送棚49、複数のグレンシーブ38a、複数のチャフシーブ38b及びストローラック38cを設ける構成とし、前記排塵処理室37終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラック53を設けるにあたり、該排塵ラック53はストローラック38cの上方であって揺動選別棚38と一体的に設けたことを特徴とする脱穀装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に扱胴を軸架して設け、扱室終端部からの被処理物を受け入れて処理する排塵処理胴を軸架した排塵処理室を設け、扱室及び排塵処理室より漏下する被処理物を揺動選別棚で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、揺動選別棚の始端側から順番に移送棚、シーブ及びストローラックを設ける構成とし、排塵処理室終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラックを設ける技術的構成がある。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2−60519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の技術では、排塵処理室の終端部から落ちてくる被処理物を排塵ラックで受けて処理を行ない、ササリ粒を回収できる構成ではあるが、排塵ラックは脱穀装置の前方位置に配置されているので、排塵ラック上の被処理物を効率よく機外へと排出できないという欠点がある。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消しようするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33終端部からの被処理物を受け入れて処理する排塵処理胴35を軸架した排塵処理室37を設け、前記扱室33及び排塵処理室37より漏下する被処理物を揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38の始端側から順番に移送棚49、複数のグレンシーブ38a、複数のチャフシーブ38b及びストローラック38cを設ける構成とし、前記排塵処理室37終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラック53を設けるにあたり、該排塵ラック53はストローラック38cの上方であって揺動選別棚38と一体的に設けたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、扱室33内の被処理物及び排塵処理室37内の被処理物は、下方の揺動選別棚38上に落下する。揺動選別棚38上に落下した被処理物は、移送棚49、複数のグレンシーブ38a、複数のチャフシーブ38b及びストローラック38cへと通過しながら選別される。扱室33内から下方に落下しなかった被処理物は、排塵処理室37内へ送られて処理される。排塵処理室37の終端部から落下した被処理物は、排塵ラック53上に落ちてほぐされ、ササリ粒が回収される。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記排塵ラック53の始端部は、前記ストローラック38cの始端部よりも後方に配置したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0008】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、排塵ラック53上の被処理物は機外への移動量が少なくなる。
請求項3記載の発明では、前記排塵ラック53の終端部は、前記揺動選別棚38の終端部よりも後方に配置したことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
【0009】
請求項3の作用は、請求項2の作用に加え、排塵ラック53上の被処理物は、機外へ排出され易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、排塵処理室37の終端部から落下した被処理物は、排塵ラック53上に落ちてほぐされ、ササリ粒が回収されるようになる。さらに、排塵ラック53上の被処理部は、効率良く機外へと排出されるようになる。
【0011】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、選別風が排塵ラック53の始端部に直接当接するのを防止できるようになるので、選別風の乱れを防止できて選別性能が低下するのを防止できるようになる。
【0012】
請求項3記載の発明においては、請求項2の効果に加え、排塵ラック53上の被処理物は、速やかに機外へと排出されるようになる。特に、多量の被処理物が存在しても、詰まり等を防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0014】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0015】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0016】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0017】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0018】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0019】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0020】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0021】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0022】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図である。
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。
【0023】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0024】
さらに、図5は図4にて示すA−A断面図であるが、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0025】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0026】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a,二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン51は、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35と対向する位置に設けられている。52は揺動選別棚38を揺動駆動させるクランク軸である。
【0027】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0028】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。
【0029】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0030】
前記排塵処理胴35の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻き介いされているラセン形状となっている。
【0031】
しかし、本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに、二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0032】
前述のように、扱室33内の脱穀物で揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送されていく。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向下手側に搬送されていく。また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
【0033】
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分においても、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けていて、該排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないようにしている。
【0034】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0035】
図3、図6及び図7等に示している53は排塵ラックである。この排塵ラック53は、前記ストローラック38cの上方であって、揺動選別棚38と一体的に設けられている。そして、排塵処理室37終端部の排出口54から排出される被処理物を受けて解すことで、ササリ粒を回収できる構成としている。
【0036】
また、排塵処理室37終端部の排出口54から排出される被処理物は、ストローラック38c上に載らないので、揺動選別棚38の前方から送られてくる被処理物と合流しない。したがって、揺動選別棚38の処理能力が向上するようになる。また、排塵処理室37終端部の排出口54から排出される被処理物は、排塵ラック53上を転がりながら吸引ファン51に吸引されるようになるので、排塵物の機外への排出が効率良く速やかに行われるようになる。
【0037】
55は吸引ファン55の軸芯であり、Bは吸引ファン51の回転方向を示している。そして、排塵ラック53は吸引ファンの軸芯55よりも後方に位置しているので、吸引ファン51の回転方向との関係から、排塵ラック53上の排塵物は、上方に巻き上がりながら吸引ファン51に吸い込まれていくようになる。これにより、この上方への巻き上がりの途中でササリ粒が回収されるようになるので、ロスが低減するようになる。また、排塵ラック53は吸引ファン51の吸込口56の下端部近傍(極端に下方に位置していない)に位置しているので、排出の抵抗となるのを防止できるようになる。
【0038】
57は脱穀装置終端部の排出口であるが、吸引ファン51以外にも機外への排出口57を有しているので、高能率の作業が可能となる。
排塵ラック53の長さDとストローラック38cの長さCは略同じ長さに構成している。そして、排塵ラック53の先端部の位置はストローラック38cの先端部よりも後方としている。これにより、一番棚先58上を通過してチャフシーブ38bを吹き上がる選別風の流れが妨げられるのを防止できるようになる。
【0039】
また、排塵ラック53の終端部の位置は揺動選別棚38よりも後方位置としているので、排塵処理室37から排出された排塵物を効率よく機外へと導くことが可能となる。
排塵ラック53の上下の長さEは、ストローラック38cの上下の長さFよりも短くなるように構成している。これにより、排塵ラック53とストローラック38cとの間の空間部が広くなるので、粗大な長ワラ等の送りに支障が生じるのを防止できるようになる。
【0040】
排塵ラック53を取り付けるプレート59の形状について、前側は前方下方に折り曲げて(59a)、後側は後方上方(59b)に折り曲げて構成している。これにより、選別風はGのような流れとなるので、選別風が直接排出口57方向へ向かうのを防止できるようになり、単粒が直接機外へと排出されるのを防止できるようになる。
【0041】
前述したように、揺動選別棚38には複数のグレンシーブ38aを構成しているが、このグレンシーブ38aの始端部は、従来のものよりも前方に位置するように構成している。具体的には、扱室33終端部の落下口60よりも前方であって、この落下口60分の長さ分前方に位置するように構成している。これにより、扱室33から落下してくる被処理物の選別が事前に行えるようになるので、選別性能が向上するようになる。
【0042】
各グレンシーブ38aは連結板61で連結されており、この連結板61と揺動選別棚38本体との間には引張りスプリング62が設けられている。したがって、グレンシーブ38aは常に開き方向になっている。また、グレンシーブ38aの後方には、複数のチャフシーブ38bが構成されているが、この複数のチャフシーブ38bも連結板63で連結されている。この連結板63の前部にはストッパプレート64が取り付けられている。そして、ストッパプレート64はグレンシーブ38aの連結板61に当接している。したがって、グレンシーブ38aの開き度合いは、チャフシーブ38bの開き度合いで規制されている構成である。即ち、チャフシーブ38bが開閉の動きをすると、グレンシーブ38aも開閉の動きをする構成である。これにより、グレンシーブ38aを開閉させるための複雑なリンク機構等が不要となり、重量も軽くなる。また、ストッパプレート64を設けることで、揺動選別棚38の補強となる。
【0043】
前記引張りスプリング62は、複数のチャフシーブ38bよりも前方であってケーブル67の上方に位置しているので、各部材の干渉を防止できるようになる。
さらに、このような構成において、グレンシーブ38aの回動角度とチャフシーブ38bの開き角度は略同じに構成している。そして、グレンシーブ38aの開き角度が全開となっても、チャフシーブ38bは開き方向に回動するように構成している。これにより、グレンシーブ38aで選別できなかった被処理物もチャフシーブ38bで選別できるようになるので、ロスが低減されるようになる。
【0044】
また、グレンシーブ38aの開き角度が全開となった状態を、稲の標準位置となるように設定しているので、揺動選別棚38前方でのろ過を促進することが可能となる。そして、扱室33の終端からチャフシーブ38bに導かれる被処理物は、ろ過が制限されるので、青葉や稈切れの混入が防止できるようになる。
【0045】
また、グレンシーブ38aとチャフシーブ38bが全閉になった状態においては、略同じ角度で全閉となるように構成している。これにより、夾雑物の混入が効果的に行えるようになる。
【0046】
図11に示すように、ストッパプレート64はヘアーピン65を外すと簡単に取り外せるように構成しているので、点検整備が容易に可能となる。また、ストッパプレート64を外すと、グレンシーブ38aはチャフシーブ38bの動きにかかわらず全開状態となるので、例えば、小麦やワラ屑の発生が少ない品種であっても、前方のグレンシーブ38aでのろ過量を多くし、後方のチャフシーブ38bで夾雑物の混入を防止できるようになる。
【0047】
また、ストッパプレート64は揺動選別棚38の側面に取り付けられているので、この部分に相当する脱穀装置の側壁に着脱自在な窓(図示せず)を設けることで、ストッパプレート64の取り外しや取り付けが容易となる。即ち、揺動選別棚38自体を脱穀装置から外さなくてもよくなるので、点検整備が容易となる。
【0048】
66は各チャフシーブ38bを開き方向に引張っている引張スプリングである。したがって、被処理物の重量にかかわらず開き角度を安定させることができるようになる。また、仮に、ケーブル67が切れても常時開き方向となるので、三番ロスが増加するのを防止できるようになる。
【0049】
グレンシーブ38aの上面ラインHに対して、チャフシーブ38bの上面ラインIの方を後ろ上がりとなるように構成している。これにより、グレンシーブ38a上での流れがよくなる。また、チャフシーブ38b上では通過する時間が長くなるので、選別が向上するようになる。
【0050】
また、グレンシーブ38a間の長さ68は、チャフシーブ38b間の長さ69よりも短くなるように構成している。これにより、稈切れが各グレンシーブ38aから落ちにくくなるので、一番の選別性能が低下するのを防止できるようになる。
さらに、グレンシーブ38a間の長さが短いことで、グレンシーブ38a上の被処理物はスムーズに送られていくようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置正面の断面図
【図6】脱穀装置の一部の側断面図
【図7】脱穀装置の背面図
【図8】脱穀装置の一部の側断面図
【図9】揺動選別棚の一部の側面図
【図10】揺動選別棚の一部の側面図
【図11】揺動選別棚の一部の平面図
【符号の説明】
【0052】
9 脱穀装置
30 扱網
31 扱胴
33 扱室
35 排塵処理胴
37 排塵処理室
38 揺動選別棚
38a グレンシーブ
38b チャフシーブ
38c ストローラック
49 移送棚
51 空間部
53 排塵ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(33)内に扱胴(31)を軸架して設け、該扱室(33)終端部からの被処理物を受け入れて処理する排塵処理胴(35)を軸架した排塵処理室(37)を設け、前記扱室(33)及び排塵処理室(37)より漏下する被処理物を揺動選別棚(38)で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚(38)の始端側から順番に移送棚(49)、複数のグレンシーブ(38a)、複数のチャフシーブ(38b)及びストローラック(38c)を設ける構成とし、前記排塵処理室(37)終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラック(53)を設けるにあたり、該排塵ラック(53)はストローラック(38c)の上方であって揺動選別棚(38)と一体的に設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記排塵ラック(53)の始端部は、前記ストローラック(38c)の始端部よりも後方に配置したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記排塵ラック(53)の終端部は、前記揺動選別棚(38)の終端部よりも後方に配置したことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−304706(P2006−304706A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132346(P2005−132346)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】