脱穀装置
【課題】一番物の選別性能を向上させるようにする。
【解決手段】扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33下側の扱網30より漏下する被処理物を、揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚49、グレンシーブ38a、チャフシーブ38b、ストローラック38cとから構成し、前記グレンシーブ38aは前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成したことを特徴とする脱穀装置の構成とする。
【解決手段】扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33下側の扱網30より漏下する被処理物を、揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚49、グレンシーブ38a、チャフシーブ38b、ストローラック38cとから構成し、前記グレンシーブ38aは前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成したことを特徴とする脱穀装置の構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に扱胴を軸架して設け、扱室下側の扱網より漏下する被処理物を、揺動選別棚で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、揺動選別棚は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚、グレンシーブ、チャフシーブ、ストローラックとから構成している。そして、移送棚とチャフシーブとの間にあるグレンシーブについては、その前部側と後部側とでピッチや傾斜角度は同じ構成である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−330616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、移送棚とチャフシーブとの間にあるグレンシーブから落下する被処理物については、ある程度藁屑等が少ないものの、被処理物量が多くなると、一番に回収される一番物の選別が悪くなるという欠点があった。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消して、一番に回収される整粒の選別性能を向上させた脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33下側の扱網30より漏下する被処理物を、揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚49、グレンシーブ38a、チャフシーブ38b、ストローラック38cとから構成し、前記グレンシーブ38aは前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、扱室33内の扱胴31で脱穀された被処理物は、扱網30より下方の揺動選別棚38上に落下する。揺動選別棚38上に落下した被処理物は、移送棚49、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ、チャフシーブ38b、ストローラック38cへと搬送されながら揺動選別される。扱室33の前側部分になるほど、脱穀された被処理物は藁屑が少ない状況であるので、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPからは、比較的藁屑の少ない穀粒が下方へと落下する。続いて、グレンシーブ38aの後部グレンシーブQのからも藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するが、前部グレンシーブPよりは多少藁屑が多く混在する。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記前部グレンシーブPのピッチ間隔Dは、後部グレンシーブQのピッチ間隔Eに対して広く構成すると共に、前部グレンシーブPの傾斜角度Hは、後部グレンシーブQの傾斜角度Iに対して大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0008】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、前部グレンシーブPからの濾過よりも後部グレンシーブQからの濾過が促進される。そして、後部グレンシーブQ上よりも前部グレンシーブP上の方が被処理物の移送が良好となる。
【0009】
請求項3記載の発明では、前記前部グレンシーブPのピッチ間隔D及び傾斜角度Hは、移送棚49のピッチ間隔J及び傾斜角度Kと略同じに構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
【0010】
請求項3の作用は、請求項1又は請求項2の作用に加え、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、扱室33の前側部分になるほど、脱穀された被処理物は藁屑が少ない状況であるので、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPからは、早めに比較的藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するので、一番に回収される一番物の穀粒の選別が良好となる。続いて、グレンシーブ38aの後部グレンシーブQのからも藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するが、前部グレンシーブPよりは多少藁屑が多く混在する。しかしながら、既に前部グレンシーブPにおいてある程度被処理物が処理されているので、後部グレンシーブQでの被処理物の処理時には負荷が少なくなる。
【0012】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、前部グレンシーブPからの濾過よりも後部グレンシーブQからの濾過が促進されるので、前部グレンシーブPからは無駄な藁屑の落下が少なくなる。これにより、一番の選別が良好となる。
【0013】
請求項3記載の発明においては、請求項1又は請求項2の効果に加え、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となるので、多量の被処理物が揺動選別棚38上に落下してきても、移送棚49から前部グレンシーブPにかけて被処理物が詰まるのを防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0015】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0016】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0017】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0018】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0019】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0020】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0021】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0022】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0023】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図である。
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。33aは扱室33終端部に設けられている排出口である。
【0024】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0025】
さらに、図5は図4にて示すA−A断面図であるが、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0026】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0027】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a,二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン51は、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35と対向する位置に設けられている。52は揺動選別棚38を揺動駆動させるクランク軸である。
【0028】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0029】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。
【0030】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0031】
前記排塵処理胴35の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状となっている。
【0032】
しかし、本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに、二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0033】
前述のように、扱室33内の脱穀物で揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送されていく。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向下手側に搬送されていく。また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
【0034】
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分においても、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けていて、該排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないようにしている。
【0035】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0036】
図6は揺動選別棚38の側面図であり、図7は揺動選別棚38を示している。
グレンシーブ38aの配置のピッチ間隔は、後方のチャフシ−ブ38bのピッチ間隔Bに対して短く構成している。また、グレンシーブ38aのそれぞれの隙間は、後方のチャフシ−ブ38bの隙間Cに対して狭く構成している。これにより、グレンシーブ38aから落下する被処理物については、長い藁屑が少なくなってある程度選別された状態となり、その後、唐箕43からの選別風で選別されるので、一番ラセン46に取り込まれる穀粒は選別が良好となる。
【0037】
前記グレンシーブ38aについては、さらに、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成されている。そして、前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dは、後方の後部グレンシーブQの配置のピッチ間隔Eに対して狭く構成(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQの傾斜角度が略同じ場合)すると共に、前部グレンシーブPのそれぞれの隙間Fは、後方の後部グレンシーブQの隙間Gに対して狭く構成している。
【0038】
これにより、揺動選別棚38の前部から後部にかけて被処理物のろ過量が次第に増加するようになる。よって、揺動選別棚38前部での比重選別が不充分な状態で、被処理物が選別網38d上に導かれることを防止できるようになるので、三番ロスを低減させることができるようになる。
【0039】
また、前部グレンシーブPの傾斜角度Hは、後部グレンシーブQの傾斜角度Iに対して大きくなるように構成している。この場合は、前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dは、後方の後部グレンシーブQの配置のピッチ間隔Eに対して広くなるように構成する。これにより、グレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)において、前部グレンシーブPよりも後部グレンシーブQの方が濾過が促進されると共に、後部グレンシーブQよりも前部グレンシーブPの方が被処理物の移送が良好となる。
【0040】
前記前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dとチャフシ−ブ38bのピッチ間隔Bの関係については、略同じピッチ間隔となるように構成している。そして、前部グレンシーブPとチャフシ−ブ38bの隙間と傾斜角度については、チャフシ−ブ38bは回動可能に構成しているので、略同じか又はチャフシ−ブ38bの方が大きくなるように構成している。
【0041】
これにより、チャフシ−ブ38bは前部グレンシーブPより濾過が良好となり、被処理物が揺動選別棚38の終端に来るまでに良好に回収可能となる。また、チャフシ−ブ38bは回動可能に構成しているので、低流量の作業時などにはシ−ブ傾斜角度を前部グレンシーブPの傾斜角度と略同じ角度まで調整可能とすることで、選別が悪化するのを防止できるようになる。
【0042】
前部グレンシーブPと、該前部グレンシーブPの前方に構成している移送棚49との関係について述べる。
前部グレンシーブPのピッチ間隔D及び傾斜角度Hは、移送棚49のピッチ間隔J及び傾斜角度Kと略同じに構成している。これにより、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となる。そして、多量の被処理物を処理する場合においても詰まり等の発生を防止できるようになり、揺動選別棚38の駆動系の破損も防止できるようになる。
【0043】
図7と図8に示す58aと58bは、それぞれ左寄せ板と右寄せ板である。この左寄せ板58aと右寄せ板58bは、前述したグレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)上に設ける構成としている。
【0044】
これにより、移送棚49上である程度均平された被処理物を、さらに、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ上で強制的に均平化することで、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQからの被処理物の濾過が適正に行なわれるようになる。
【0045】
前述した二番処理胴受樋40の搬送終端部(前端部)は、前記左寄せ板58aと右寄せ板58bに始端部よりも前方となるように構成している。即ち、二番処理室41から落下する二番物は、左寄せ板58aと右寄せ板58bの前方に落ちるように構成している。これにより、移送棚49上に落下した二番物は、一旦移送棚49上である程度均平化されるので、その後、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ上で均平化され易くなる。
【0046】
図9で示すように、移送棚49の前後長さLとグレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)の前後長さMは、略同じとなるように構成する。しかも、グレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)部分は、従来は移送棚49部分であったところをグレンシーブ38aで構成したものである。これにより、揺動選別棚38の全長長さの多くの部分から、被処理物が下方に落下可能に構成したので、処理能力が増大するようになる。
【0047】
図10に示すように、前記前部グレンシーブPには、左寄せ板58aと右寄せ板58bが溶接で一体的に構成されている。さらに、前部グレンシーブPの左右の両端部には、左右のプレ−ト59a,59bが溶接で固定されている。そして、図11に示すように、前記左右のプレ−ト59a,59bは、揺動選別棚38の左右の側壁38e,38fにボルト60で取り付けられている構成である。
【0048】
これにより、グレンシーブPと左寄せ板58a及び右寄せ板58bは一体的に構成されているので、強度が向上するようになる。また、揺動選別棚38本体から容易に取外しできるので、点検や保守作業が容易となる。
【0049】
図12は、脱穀装置9を後方から見た図である。プ−リ61、ベルト62、プ−リ63は、吸引ファン51を駆動する伝動系であり、プ−リ64、ベルト665は、カッタ−装置19の伝動系である。これら吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系は、カバ−66で覆う構成である。また、このカバ−66には、フィ−ドチェン15の始端部から後方部にかけての側方部を覆っているチェンカバ−67の一部が覆う構成である。
【0050】
これにより、吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系は、藁屑による影響を防止できるようになる。
さらに、前記チェンカバ−67の下側には、下部カバ−68が設けられている構成であるので、走行装置1などの下側から吹き上がってくる風(塵埃を含む風)の影響から防止できるようになる。また、前記下部カバ−68は、下方に向かって傾斜している構成であるので、下部カバ−68上には藁屑や塵埃等が溜りにくくなる。
【0051】
本実施例においては、フィ−ドチェン15は前部側を支点として側方に回動する構成であるが、前述したカバ−66、チェンカバ−67、下部カバ−68は、フィ−ドチェン15と一緒に側方に回動する構成としている。これにより、吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系の点検作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置正面の断面図
【図6】揺動選別棚の側面図
【図7】揺動選別棚の平面図
【図8】脱穀装置の一部の正面図
【図9】揺動選別棚の側面図
【図10】揺動選別棚の側面図
【図11】脱穀装置の一部の正面図
【図12】脱穀装置の背面図
【符号の説明】
【0053】
9 脱穀装置
30 扱網
31 扱胴
33 扱室
38 揺動選別棚
38a グレンシーブ
38b チャフシーブ
38c ストローラック
D 前部グレンシーブのピッチ間隔
E 後部グレンシーブのピッチ間隔
H 前部グレンシーブの傾斜角度
I 後部グレンシーブの傾斜角度
J 移送棚のピッチ間隔
K 移送棚の傾斜角度
P 前部グレンシーブ
Q 後部グレンシーブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインやハーベスタに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
扱室内に扱胴を軸架して設け、扱室下側の扱網より漏下する被処理物を、揺動選別棚で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、揺動選別棚は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚、グレンシーブ、チャフシーブ、ストローラックとから構成している。そして、移送棚とチャフシーブとの間にあるグレンシーブについては、その前部側と後部側とでピッチや傾斜角度は同じ構成である。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−330616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、移送棚とチャフシーブとの間にあるグレンシーブから落下する被処理物については、ある程度藁屑等が少ないものの、被処理物量が多くなると、一番に回収される一番物の選別が悪くなるという欠点があった。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消して、一番に回収される整粒の選別性能を向上させた脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、扱室33内に扱胴31を軸架して設け、該扱室33下側の扱網30より漏下する被処理物を、揺動選別棚38で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚38は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚49、グレンシーブ38a、チャフシーブ38b、ストローラック38cとから構成し、前記グレンシーブ38aは前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項1の作用は、扱室33内の扱胴31で脱穀された被処理物は、扱網30より下方の揺動選別棚38上に落下する。揺動選別棚38上に落下した被処理物は、移送棚49、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ、チャフシーブ38b、ストローラック38cへと搬送されながら揺動選別される。扱室33の前側部分になるほど、脱穀された被処理物は藁屑が少ない状況であるので、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPからは、比較的藁屑の少ない穀粒が下方へと落下する。続いて、グレンシーブ38aの後部グレンシーブQのからも藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するが、前部グレンシーブPよりは多少藁屑が多く混在する。
【0007】
請求項2記載の発明では、前記前部グレンシーブPのピッチ間隔Dは、後部グレンシーブQのピッチ間隔Eに対して広く構成すると共に、前部グレンシーブPの傾斜角度Hは、後部グレンシーブQの傾斜角度Iに対して大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0008】
請求項2の作用は、請求項1の作用に加え、前部グレンシーブPからの濾過よりも後部グレンシーブQからの濾過が促進される。そして、後部グレンシーブQ上よりも前部グレンシーブP上の方が被処理物の移送が良好となる。
【0009】
請求項3記載の発明では、前記前部グレンシーブPのピッチ間隔D及び傾斜角度Hは、移送棚49のピッチ間隔J及び傾斜角度Kと略同じに構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置としたものである。
【0010】
請求項3の作用は、請求項1又は請求項2の作用に加え、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、扱室33の前側部分になるほど、脱穀された被処理物は藁屑が少ない状況であるので、グレンシーブ38aの前部グレンシーブPからは、早めに比較的藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するので、一番に回収される一番物の穀粒の選別が良好となる。続いて、グレンシーブ38aの後部グレンシーブQのからも藁屑の少ない穀粒が下方へと落下するが、前部グレンシーブPよりは多少藁屑が多く混在する。しかしながら、既に前部グレンシーブPにおいてある程度被処理物が処理されているので、後部グレンシーブQでの被処理物の処理時には負荷が少なくなる。
【0012】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、前部グレンシーブPからの濾過よりも後部グレンシーブQからの濾過が促進されるので、前部グレンシーブPからは無駄な藁屑の落下が少なくなる。これにより、一番の選別が良好となる。
【0013】
請求項3記載の発明においては、請求項1又は請求項2の効果に加え、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となるので、多量の被処理物が揺動選別棚38上に落下してきても、移送棚49から前部グレンシーブPにかけて被処理物が詰まるのを防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1及び図2には、本発明を具現化した農業機械であるコンバインが示されている。
走行装置1を有する車台2の前方には、刈取装置3が設けられている。この刈取装置3には、植立穀稈を分草する複数の分草具4と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置5と、植立穀稈を刈り取る刈刃6と、該刈刃6にて刈り取られた穀稈を挟持して後方に搬送する搬送装置7が設けられている。この搬送装置7は刈刃6後方の株元搬送装置8と該株元搬送装置8から搬送されてくる穀稈を引き継いで脱穀装置9に供給する供給搬送装置10とから構成されている。
【0015】
前記刈取装置3は、車台2の前部に立設する懸架台11の上方に設ける回転軸11aを支点にして上下動する刈取装置支持フレーム12にて、その略左右中間部で支持されている。そして、刈取装置3は操作部13に設ける操向レバー14を前後方向に傾動させることによって刈取装置支持フレーム12と共に上下動する構成である。
【0016】
車台2の上方には、前記供給搬送装置10から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送するフィードチェン15を有する脱穀装置9と、該脱穀装置9の右側方であって、この脱穀装置9で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16と、該グレンタンク16の前方に位置していてコンバインの各種操作を実行する操作部13が載置されている。また、車台2の前部には走行装置1を駆動する走行伝動装置17が設けられている。
【0017】
脱穀装置9の後方には、前記フィードチェン15から搬送されてくる排稈を引き継いで搬送する排稈チェン18と、該排稈チェン18の終端部下方には排稈を切断するカッター装置19が設けられている。また、この実施例のカッター装置19の後方には、排稈を結束するノッター等の他の作業機を装着してもよい。
【0018】
前記グレンタンク16内の穀粒量が満杯となると、揚穀筒20と穀粒排出オーガ21から穀粒を機外へと排出する。揚穀筒20は電気モータ(図示せず)にて旋回可能に構成され、また、穀粒排出オーガ21は油圧シリンダ22にて昇降可能に構成されている。そして、穀粒排出オーガ21は揚穀筒20の上部に連結されて一体的に構成され、揚穀筒20が旋回すると、穀粒排出オーガ21も一緒に旋回する構成となっている。
【0019】
また、コンバインは操作部13に設ける副変速レバー23を操作して走行伝動装置17内の副変速の位置を決定し、その後、走行変速レバー24を操作してエンジン(図示せず)からの動力を油圧無段変速装置及び走行伝動装置17を介して走行装置1の左右のクローラ26、26に伝動して任意の速度で走行する構成である。このように、前記走行変速レバー24の操作量によって速度が変速されるとともに、走行変速レバー24の前方向と後方向の操作によってコンバインが前後進する構成である。
【0020】
また、コンバインは操作部13に設ける前記操向レバー14を左右方向に傾倒操作することによって左右方向に旋回する構成であり、さらに、操向レバー14の左右方向への傾倒操作量によって旋回半径が決定される構成である。
【0021】
このようなコンバインを前進させて刈取作業をすると、圃場面に植立している穀稈は、分草具4にて分草され、その後、引起装置5にて引き起こされて刈刃6にて刈り取られる構成である。その後、刈り取られた穀稈は株元搬送装置8にて後方へ搬送され、供給搬送装置10へと引き継ぎ搬送される。この供給搬送装置10に引き継がれた穀稈は、さらに後方へと搬送されて、脱穀装置9のフィードチェン15へと引継ぎ搬送され、穀稈はフィードチェン15で後方へ搬送されながら脱穀装置9にて脱穀選別される構成である。
【0022】
このように脱穀選別された穀粒は、一番揚穀筒27からグレンタンク16内へと搬送されて一時貯留され、このグレンタンク16内に貯留される穀粒量が満杯になると、操作部13の報知手段(ブザーや表示装置)でオペレータに報知される構成である。その後、刈取作業を中断して、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出する作業を開始する。コンバインを任意の位置(トラック近傍位置)へと移動させ、穀粒排出オーガ21をオーガ受け28から離脱させて穀粒排出口21aをトラックの荷台等の位置へ移動させる。そして、操作部13に設けている穀粒排出レバー29を入り状態として、グレンタンク16内の穀粒を機外へと排出し、グレンタンク16内の穀粒排出が終了すると、穀粒排出オーガ21は再びオーガ受け28へと収納されていく構成である。
【0023】
前記脱穀装置9について、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は脱穀装置9の側面図、図4は脱穀装置9の平面図である。
脱穀装置9内には、扱網30を有する扱胴31を扱胴軸32で軸架した扱室33と、該扱室33の一側には、扱室33の後部からの処理物を受け入れて処理する排塵処理網34を有する排塵処理胴35を排塵処理胴軸36で軸架した排塵処理室37が設けられている。そして、扱室33と排塵処理室37の下方には揺動選別棚38を設けている。33aは扱室33終端部に設けられている排出口である。
【0024】
また、排塵処理胴35の前方には、二番処理胴39と二番処理胴受樋40(網や格子状のものでもよい。)からなる二番処理室41が構成されている。二番処理胴39は、本実施例では扱胴31の一側(グレンタンク16側)であって、排塵処理胴35の前方にこの排塵処理胴35と一体的に構成されている。この二番処理胴39は基本的には二番物を処理するものである。この二番処理胴39は二番処理胴軸42にて支持されている構成であるので、前記排塵処理胴35と二番処理胴39とは一体的に排塵処理胴軸36と二番処理胴軸42とで支持されている構成である。
【0025】
さらに、図5は図4にて示すA−A断面図であるが、扱網30から漏れた被処理物は二番処理室41内に取り込まれる構成であるので、前記二番処理胴39は二番物の他に、扱室33内から入り込んできた被処理物も一緒に処理する構成となっている。前記扱網30と二番処理胴受樋40(網や格子状でもよい)と排塵処理網34は、それぞれ扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35の下方に設けられている。
【0026】
前記扱室33と二番処理室41と排塵処理室37の下方には、落下してくる被選別物を受けて選別する揺動選別棚38が設置されていて、該揺動選別棚38の下方には、選別風送り方向始端側に唐箕43を設け、該唐箕43から送風される選別風の送り方向下手側には、風路44と風路45が設けられていて、この風路44と風路45の下手側に一番ラセン46を設け、該一番ラセン46の選別風送り方向下手側には二番ラセン47を設けている。この二番ラセン47にて収集された二番物を前記二番処理室41へ揚穀するための二番揚穀筒48が設けられている。
【0027】
前記揺動選別棚38の構成について説明する。揺動選別棚38は、選別送り方向の始端側から順番に、落下した脱穀物を後方に移送する移送棚49,脱穀物を選別するグレンシーブ38a,二番物を選別するチャフシーブ38b,排塵物をほぐしてササリ粒を回収すると共に排塵物を機外に移送して放出するストローラック38cとから構成されている。該ストローラック38cの下方は、二番物を二番ラセン47内へ案内する二番棚先47aで構成されていて、この二番棚先47aの終端部近傍まで前記排塵処理胴35が延出している構成である。吸引ファン51は、選別室50内の軽い塵埃を機外に排出するためのもので、扱胴31に対して排塵処理胴35と対向する位置に設けられている。52は揺動選別棚38を揺動駆動させるクランク軸である。
【0028】
前記刈取装置3から搬送されてきた穀稈は、脱穀装置9のフィードチェン15の始端部に引き継がれると共に、該フィードチェン15に引き継がれた穀稈は、後方に搬送されながら、扱胴31と扱網30により脱穀される。脱穀された脱穀物の一部は揺動選別棚38上に落下して、該揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの風選作用により選別され、一番ラセン46内へと取り込まれていき、該一番ラセン46に取り込まれた穀粒は、グレンタンク16内に一時貯溜される構成である。脱穀後の排稈はフィードチェン15の終端部から、排稈チェン18の始端部に引き継がれて搬送されていき、その後、カッター19に送られて切断され下方の圃場上に放出されていく構成となっている。
【0029】
扱室31の残りの脱穀物は、後方へと搬送されていくが、その途中において一部の脱穀物は二番処理室41内に取り込まれていく。該二番処理室41内に取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向上手側に搬送されながら、二番処理胴39と二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀(特に、枝梗粒が処理される)されて、下方の揺動選別棚38上に落下していく。扱胴31と二番処理胴39と排塵処理胴35は、共に選別風送り方向上手側から下手側を見た状況(脱穀装置9の正面視)において、時計回りで回転する構成である。従って、二番処理胴39の処理歯39aの向きは、脱穀物を選別風送り方向の上手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。
【0030】
即ち、該処理歯39aには被処理物を選別風送り方向上手側に搬送する作用があり、さらに、被処理物を処理する作用も併せ持っている。即ち、処理歯39aは螺旋の一部であり、また、その円周方向の先端部と二番処理胴受樋40との間の相互作用にて被処理物を処理する構成となっている。二番処理胴39の搬送終端部に設けられている羽根39bは、被処理物を揺動選別棚38上に強制的に送り出すものである。
【0031】
前記排塵処理胴35の排塵処理歯35aは、扱室33の後部からの脱穀物を選別風送り方向の下手側方向に送るような向きに固着しておく必要がある。本実施例では、該排塵処理歯35aは、排塵処理胴35の外周面に巻回いされているラセン形状となっている。
【0032】
しかし、本実施例では、排塵処理網34の目合いが荒い(格子状)ので、一部の短い藁屑は揺動選別棚38上に落下し、落下しなかった長い藁屑は排塵処理室37の終端部まで搬送されて、排塵処理胴35の終端部の羽根35bにてストローラック38c上に強制的に排出される。そして、このように被処理物が排塵処理室37内にて搬送される間に、排塵処理胴35とこの排塵処理胴35の設けられている処理歯35cと排塵処理網34との相互作用で、さらに脱穀されるとともに、脱穀物はほぐされて中に混在している穀粒(いわゆるササリ粒)が取り出されて下方の揺動選別棚38上に落下し、さらに、二番ラセン47内へと回収されていく構成である。
【0033】
前述のように、扱室33内の脱穀物で揺動選別棚38上に落下せず、二番処理室41内にも取り込まれなかった残りの脱穀物は、扱室33の終端部まで搬送されていく。この扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物は、排塵処理室37内に取り込まれ、取り込まれた脱穀物は、選別風送り方向下手側に搬送されていく。また、扱室33の終端部まで搬送されてきた脱穀物のうち、排塵処理室37内に取り込まれなかった脱穀物は下方の揺動選別棚38上に落下していく構成である。
【0034】
扱室33内の終端部から排塵処理室37内に脱穀物を送る際において、脱穀物が詰まらないように、扱室33から排塵処理室37への引継ぎ部分においても、排塵処理胴35の外周にラセン形状の排塵処理歯35aを設けていて、該排塵処理歯35aの送り作用で引継ぎ部に脱穀物が詰まらないようにしている。
【0035】
このような、揺動選別棚38の揺動作用と唐箕43からの選別風の作用にもかかわらず、一番ラセン46内に取り込まれなかった残りの穀粒は、他の排塵物と共にさらに後方に送られ、二番ラセン47内へと取り込まれていく。該二番ラセン47内に取り込まれた二番物は、二番揚穀筒48にて前記二番処理室41の選別風送り方向下手側に還元されて、扱室33からの脱穀物と合流し、その後、選別風送り方向の上手側に搬送されながら、二番処理胴受樋40との相互作用で脱穀処理されながら搬送され、終端部の羽根39bにより下方の揺動選別棚38上に強制的に落下していく構成である。
【0036】
図6は揺動選別棚38の側面図であり、図7は揺動選別棚38を示している。
グレンシーブ38aの配置のピッチ間隔は、後方のチャフシ−ブ38bのピッチ間隔Bに対して短く構成している。また、グレンシーブ38aのそれぞれの隙間は、後方のチャフシ−ブ38bの隙間Cに対して狭く構成している。これにより、グレンシーブ38aから落下する被処理物については、長い藁屑が少なくなってある程度選別された状態となり、その後、唐箕43からの選別風で選別されるので、一番ラセン46に取り込まれる穀粒は選別が良好となる。
【0037】
前記グレンシーブ38aについては、さらに、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQとから構成されている。そして、前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dは、後方の後部グレンシーブQの配置のピッチ間隔Eに対して狭く構成(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQの傾斜角度が略同じ場合)すると共に、前部グレンシーブPのそれぞれの隙間Fは、後方の後部グレンシーブQの隙間Gに対して狭く構成している。
【0038】
これにより、揺動選別棚38の前部から後部にかけて被処理物のろ過量が次第に増加するようになる。よって、揺動選別棚38前部での比重選別が不充分な状態で、被処理物が選別網38d上に導かれることを防止できるようになるので、三番ロスを低減させることができるようになる。
【0039】
また、前部グレンシーブPの傾斜角度Hは、後部グレンシーブQの傾斜角度Iに対して大きくなるように構成している。この場合は、前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dは、後方の後部グレンシーブQの配置のピッチ間隔Eに対して広くなるように構成する。これにより、グレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)において、前部グレンシーブPよりも後部グレンシーブQの方が濾過が促進されると共に、後部グレンシーブQよりも前部グレンシーブPの方が被処理物の移送が良好となる。
【0040】
前記前部グレンシーブPの配置のピッチ間隔Dとチャフシ−ブ38bのピッチ間隔Bの関係については、略同じピッチ間隔となるように構成している。そして、前部グレンシーブPとチャフシ−ブ38bの隙間と傾斜角度については、チャフシ−ブ38bは回動可能に構成しているので、略同じか又はチャフシ−ブ38bの方が大きくなるように構成している。
【0041】
これにより、チャフシ−ブ38bは前部グレンシーブPより濾過が良好となり、被処理物が揺動選別棚38の終端に来るまでに良好に回収可能となる。また、チャフシ−ブ38bは回動可能に構成しているので、低流量の作業時などにはシ−ブ傾斜角度を前部グレンシーブPの傾斜角度と略同じ角度まで調整可能とすることで、選別が悪化するのを防止できるようになる。
【0042】
前部グレンシーブPと、該前部グレンシーブPの前方に構成している移送棚49との関係について述べる。
前部グレンシーブPのピッチ間隔D及び傾斜角度Hは、移送棚49のピッチ間隔J及び傾斜角度Kと略同じに構成している。これにより、移送棚49から前部グレンシーブPにかけての被処理物の流れが良好となる。そして、多量の被処理物を処理する場合においても詰まり等の発生を防止できるようになり、揺動選別棚38の駆動系の破損も防止できるようになる。
【0043】
図7と図8に示す58aと58bは、それぞれ左寄せ板と右寄せ板である。この左寄せ板58aと右寄せ板58bは、前述したグレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)上に設ける構成としている。
【0044】
これにより、移送棚49上である程度均平された被処理物を、さらに、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ上で強制的に均平化することで、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQからの被処理物の濾過が適正に行なわれるようになる。
【0045】
前述した二番処理胴受樋40の搬送終端部(前端部)は、前記左寄せ板58aと右寄せ板58bに始端部よりも前方となるように構成している。即ち、二番処理室41から落下する二番物は、左寄せ板58aと右寄せ板58bの前方に落ちるように構成している。これにより、移送棚49上に落下した二番物は、一旦移送棚49上である程度均平化されるので、その後、前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ上で均平化され易くなる。
【0046】
図9で示すように、移送棚49の前後長さLとグレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)の前後長さMは、略同じとなるように構成する。しかも、グレンシーブ38a(前部グレンシーブPと後部グレンシーブQ)部分は、従来は移送棚49部分であったところをグレンシーブ38aで構成したものである。これにより、揺動選別棚38の全長長さの多くの部分から、被処理物が下方に落下可能に構成したので、処理能力が増大するようになる。
【0047】
図10に示すように、前記前部グレンシーブPには、左寄せ板58aと右寄せ板58bが溶接で一体的に構成されている。さらに、前部グレンシーブPの左右の両端部には、左右のプレ−ト59a,59bが溶接で固定されている。そして、図11に示すように、前記左右のプレ−ト59a,59bは、揺動選別棚38の左右の側壁38e,38fにボルト60で取り付けられている構成である。
【0048】
これにより、グレンシーブPと左寄せ板58a及び右寄せ板58bは一体的に構成されているので、強度が向上するようになる。また、揺動選別棚38本体から容易に取外しできるので、点検や保守作業が容易となる。
【0049】
図12は、脱穀装置9を後方から見た図である。プ−リ61、ベルト62、プ−リ63は、吸引ファン51を駆動する伝動系であり、プ−リ64、ベルト665は、カッタ−装置19の伝動系である。これら吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系は、カバ−66で覆う構成である。また、このカバ−66には、フィ−ドチェン15の始端部から後方部にかけての側方部を覆っているチェンカバ−67の一部が覆う構成である。
【0050】
これにより、吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系は、藁屑による影響を防止できるようになる。
さらに、前記チェンカバ−67の下側には、下部カバ−68が設けられている構成であるので、走行装置1などの下側から吹き上がってくる風(塵埃を含む風)の影響から防止できるようになる。また、前記下部カバ−68は、下方に向かって傾斜している構成であるので、下部カバ−68上には藁屑や塵埃等が溜りにくくなる。
【0051】
本実施例においては、フィ−ドチェン15は前部側を支点として側方に回動する構成であるが、前述したカバ−66、チェンカバ−67、下部カバ−68は、フィ−ドチェン15と一緒に側方に回動する構成としている。これにより、吸引ファン51とカッタ−装置19の伝動系の点検作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】脱穀装置の側断面図
【図4】脱穀装置の平面図
【図5】脱穀装置正面の断面図
【図6】揺動選別棚の側面図
【図7】揺動選別棚の平面図
【図8】脱穀装置の一部の正面図
【図9】揺動選別棚の側面図
【図10】揺動選別棚の側面図
【図11】脱穀装置の一部の正面図
【図12】脱穀装置の背面図
【符号の説明】
【0053】
9 脱穀装置
30 扱網
31 扱胴
33 扱室
38 揺動選別棚
38a グレンシーブ
38b チャフシーブ
38c ストローラック
D 前部グレンシーブのピッチ間隔
E 後部グレンシーブのピッチ間隔
H 前部グレンシーブの傾斜角度
I 後部グレンシーブの傾斜角度
J 移送棚のピッチ間隔
K 移送棚の傾斜角度
P 前部グレンシーブ
Q 後部グレンシーブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(33)内に扱胴(31)を軸架して設け、該扱室(33)下側の扱網(30)より漏下する被処理物を、揺動選別棚(38)で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚(38)は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚(49)、グレンシーブ(38a)、チャフシーブ(38b)、ストローラック(38c)とから構成し、前記グレンシーブ(38a)は前部グレンシーブ(P)と後部グレンシーブ(Q)とから構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記前部グレンシーブ(P)のピッチ間隔(D)は、後部グレンシーブ(Q)のピッチ間隔(E)に対して広く構成すると共に、前部グレンシーブ(P)の傾斜角度(H)は、後部グレンシーブ(Q)の傾斜角度(I)に対して大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記前部グレンシーブ(P)のピッチ間隔(D)及び傾斜角度(H)は、移送棚(49)のピッチ間隔(J)及び傾斜角度(K)と略同じに構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項1】
扱室(33)内に扱胴(31)を軸架して設け、該扱室(33)下側の扱網(30)より漏下する被処理物を、揺動選別棚(38)で受けて揺動移送しながら揺動選別する脱穀装置において、該揺動選別棚(38)は被処理物の搬送方向上手側から下手側にかけて移送棚(49)、グレンシーブ(38a)、チャフシーブ(38b)、ストローラック(38c)とから構成し、前記グレンシーブ(38a)は前部グレンシーブ(P)と後部グレンシーブ(Q)とから構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記前部グレンシーブ(P)のピッチ間隔(D)は、後部グレンシーブ(Q)のピッチ間隔(E)に対して広く構成すると共に、前部グレンシーブ(P)の傾斜角度(H)は、後部グレンシーブ(Q)の傾斜角度(I)に対して大きくなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記前部グレンシーブ(P)のピッチ間隔(D)及び傾斜角度(H)は、移送棚(49)のピッチ間隔(J)及び傾斜角度(K)と略同じに構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−267629(P2007−267629A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94545(P2006−94545)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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