説明

脱穀部カバー構造

【課題】脱穀後部カバーを縦向きの支持軸を支点に側方に向けて回動させることにより、広く開放された側方から燃料補給作業を楽な姿勢で能率よく行うと共に、燃料補給作業に併せてメンテナンス作業を同時に行なうことができる脱穀部カバー構造を提供する。
【解決手段】
刈取部4と脱穀部5を前後方向に設置した走行機体3に、燃料タンク12を脱穀部5の後方に載置し、燃料タンク12を脱穀後部カバー5bで覆うコンバインであって、前記脱穀後部カバー5bを蝶番手段26と係脱固定手段27によって開閉回動自在に設けると共に、開動姿勢の脱穀後部カバー5bを蝶番手段26を構成する縦向きの支持軸30によって回動及び着脱自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに使用される脱穀部カバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体に搭載した脱穀部の後方に燃料タンクを載置したコンバインは、脱穀部の側壁を脱穀本体部カバーと脱穀後部カバーを前後に隣接して覆う脱穀部カバー構造としている。そして、燃料タンクの載置相当位置にある脱穀後部カバー側に燃料供給口カバーを開閉自在に設け、燃料供給口カバーを開けた状態で燃料タンクに燃料の補給を行う構成にしている。(例えば特許文献1。)。
【特許文献1】特開2006−288291号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示されるコンバインの脱穀部カバー構造は、脱穀後部カバーを外すことなく燃料供給口カバーを開いて、そのカバー孔から燃料補給タンク内の燃料を簡易型の燃料ポンプを利用して燃料供給を行うことができる利点がある。然し、燃料補給作業を行うとき、燃料供給口カバーのカバー孔は小窓なので、このカバー孔に手を差し込んだ状態での燃料供給口キャップの開閉が行い難いと共に、燃料ポンプを利用しない場合に燃料補給タンク自身が有するフレキシブル給油口管を燃料タンクの供給口に差し込んで行なう簡易な方式の給油作業が行ない難い等の欠点がある。
【0004】
即ち、上記燃料補給タンクは燃料供給口から後部下カバーで隔てられて離間した位置で持ち上げ状態で支持するので、燃料補給タンクを傾けて燃料を補給するとき、タンク肩部が後部下カバーに接当して干渉してしまい、燃料補給タンクを持ち上げ傾斜させて行う燃料供給作業を困難にする。従って、燃料補給を無理な姿勢で行うことから給油口管が外れて燃料の補給漏れを生じ易いと共に、燃料補給タンク内の油を一部残して完全給油を行い難い等の問題がある。
また上記のような燃料補給作業を行う機会を利用し、脱穀部側に付着する藁屑や塵埃の除去作業やベルト伝動機構等の点検や清掃等のメンテナンス作業を行おうとすると、燃料供給口カバーを開けた状態の脱穀後部カバーを改めて外すことになるので、脱穀部の側方を開放する作業が2度手間になると共に、脱穀後部カバーの開閉構造を備えた上に燃料供給口カバーの開閉構造も必要とするので、煩雑でコスト高なカバー構造になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明による脱穀部カバー構造は、第1に、刈取部4と脱穀部5を前後方向に設置した走行機体3に、燃料タンク12を脱穀部5の後方に載置し、燃料タンク12を脱穀後部カバー5bで覆うコンバインであって、前記脱穀後部カバー5bを蝶番手段26と係脱固定手段27によって開閉回動自在に設けると共に、開動姿勢の脱穀後部カバー5bを蝶番手段26を構成する縦向きの支持軸30によって回動及び着脱自在に設けることを特徴としている。
【0006】
第2に、脱穀後部カバー5bを後部上カバー17と後部下カバー19とによって上下に分割形成し、後部上カバー17を側壁21に着脱自在に取付支持すると共に、後部下カバー19を蝶番手段26と係脱固定手段27によって開閉回動自在に取付支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を備えた脱穀部カバー構造は次のような効果を奏する。脱穀後部カバーを蝶番手段と係脱固定手段によって安定よく取付支持すると共に、脱穀後部カバーを縦向きの支持軸を支点に側方に向けて回動させるので、作業者は広く開放された側方から燃料補給タンクを支持しながら燃料供給口に近接させて燃料補給作業を楽な姿勢で能率よく行うことができる。
また燃料補給時に作業者は側壁の開放部位を広く視認できるので、燃料補給作業に併せて藁屑や塵埃の除去等の清掃作業を同時に行なうことができる。
さらに脱穀後部カバーは縦向きの支持軸によって回動及び着脱自在に設けたことにより、開動姿勢において支持軸から簡単に取り外すことができ、メンテナンス作業を容易に行なうことができる。
【0008】
脱穀後部カバーを側壁に着脱自在に取付支持した後部上カバーと、蝶番手段と係脱固定手段によって開閉自在に取付支持した後部下カバーとによって上下に分割形成したことにより、燃料補給時には後部上カバーを装着したままで、支持軸を支点に後部下カバーを速やかに開閉回動することができるので、燃料補給作業を能率よく行うことができると共に、燃料補給時に作業者の身体とカッタ伝動機構等との接触を防止することができる。
また後部下カバーを開いたとき、後部上カバーも簡単に外すことができるので、側壁の後側全面を簡単に全開することができメンテナンス作業を行い易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1はコンバインであり、左右のクローラよりなる走行装置2を備えた機体フレーム3に、前部に前処理部4を昇降自在に設け、その後方に脱穀部5と操縦部6とを左右に配置し、操縦部4の後部にグレンタンク7を搭載し、脱穀部5の後部には藁処理装置としてのカッタ装置8を装着している。
【0010】
上記脱穀装置5の後壁9とカッタ装置8の前底壁10と機体フレーム3とで、機体幅方向に形成される側面視山形状をなす空間部11には、図示しないエンジンに燃料を供給する燃料タンク12を収納した状態で載置している。
上記燃料タンク12から上方に延設した燃料供給口13は、燃料供給管にキャップ14を開閉自在に設けており、前記空間部11の頂部近傍で外側に向けて指向させることにより燃料の補給を行い易くしている。
【0011】
そして、上記のように各作業部と共に燃料タンク12を設置したコンバイン1は、脱穀部5とカッタ装置8の左側面を着脱自在な複数のサイドカバーによって覆っており、これにより脱穀部5及びカッタ装置8の各種伝動機構や作業点検部並びに側壁の保護を図っている。またサイドカバーは脱穀部5に対し後述する構成によって開閉自在に取付固定しており、側壁側の清掃や点検及び修理等のメンテナンス作業並びに燃料補給作業を、サイドカバーを開けて行なうようにしている。
【0012】
上記コンバイン1のサイドカバーは、脱穀部5の左側において前後に隣接させ設けた、本体部側を覆う脱穀本体部カバー5aと後部側を覆う脱穀後部カバー5bとからなり、図示例においては脱穀本体部カバー5aは、上下で分割形成された脱穀部上カバー15と脱穀部下カバー16とで構成し、本発明に関る脱穀後部カバー5bは上下で略2等分状の大きさで分割形成された後部上カバー17と後部下カバー(燃料タンク部カバー)19とから構成している。
【0013】
上記脱穀部上カバー15は脱穀部5の側面で扱口に沿って前後方向に張設されるフィードチェン20を覆い、脱穀部下カバー16は脱穀部5の左側に設置される図示しない伝動機構や作業点検部を覆っている。
また後部上カバー17と後部下カバー19は、脱穀部5とカッタ装置8の左側の側壁21及び該側壁21に沿って構成されるカッタ伝動機構22等を覆い、且つ後部下カバー19は前記燃料タンク12も覆っている。尚、上記カッタ伝動機構22は脱穀部5の後部に対し着脱自在に取付支持され、脱穀部5側の図示しない駆動プーリからカッタ軸の入力プーリ23にベルト25を巻き掛けて伝動している。
【0014】
次に図2〜図5を参照し後部下カバー19及び各カバーの取付構造について説明する。
先ず後部下カバー19は、その前側を側壁21側に設けた複数の蝶番手段26によって回動自在に支持し、後側を係脱固定手段27によって係脱自在に支持している。
上記蝶番手段26は図4で示すように、側壁21に取付固定される支持部材29の先端に丸棒状の支持軸30を縦向きに備え、この支持軸30につる巻き状のスプリング31と、後部下カバー19側に取付固定した筒体32を上方から嵌挿し回動自在に設けている。上記スプリング31は両端の直線部をそれぞれ、支持部材29と後部下カバー19側に接当させることにより、後部下カバー19をカバー開動方向に付勢している。尚、蝶番手段26は後部下カバー19側に支持軸30を縦向きに設けると共に、側壁21側に筒体32を設けた構成にすることもできる。
【0015】
また係脱固定手段27は図2,図3で示すように、側壁21側に突設した縦向きの係合杆33と、後部下カバー19に取付支持されて上記係合杆33に係脱自在に係合するフック部35を回動及び係合方向に付勢支持した係脱固定具36とから構成している。
この構成により、係脱固定具36を係合解除方向に操作しフック部35を係合杆33から外すと、後部下カバー19はスプリング31の付勢によって支持軸30を支点に外側(前方側方)に開動させることができるので、後部上カバー17の下方の側壁21を大きく開放し、燃料タンク12の燃料供給口13を露出することができる。これにより作業者は広く開放された機体の後方側から、各種のメンテナンス作業や燃料補給作業を能率よく簡単に行うことができる。
【0016】
一方、後部上カバー17は図2,図5で示すように、脱穀部後側の側壁21の上側に前記のものと同様な係脱固定手段27を設け、該係脱固定手段27の前方下方側にフック取付手段37を設けて着脱自在に取付支持している。尚、上記フック取付手段37は側壁21側に突設した係合杆39と、後部下カバー19側から突設して上記係合杆39に上方から係脱自在に係合するフック辺40とで構成している。
【0017】
この構成により作業者は、係脱固定手段27を操作し係合を解除した状態で、上方向に持ち上げ作動をすることにより、フック取付手段37のフック辺40を係合杆39から外すと係合を解除させることができ、後部上カバー17を側壁21から簡単に取り外すことができる。
また前記脱穀部上カバー15及び脱穀部下カバー16は、それぞれ前記後部上カバー17と同様な構成からなる係脱固定手段27とフック取付手段37等からなる取付手段によって、カバーの適所を脱穀本体部側壁の上下に着脱自在に安定よく取付支持している。
【0018】
上記構成からなるコンバイン1は、脱穀後部カバー5bを後部上カバー17と後部下カバー19とで分割形成し、後部上カバー17を側壁21に着脱自在に取付支持すると共に、後部下カバー19を開閉自在に取付支持した構成にしているので、燃料タンク12への燃料補給を行うとき、係脱固定手段27を解除操作しフック部35を縦向きの係合杆33から外すと、後部下カバー19は機体前側の支持軸30を支点にスプリング31の付勢によって簡単に開けることができる。
【0019】
従って、燃料補給時には後部上カバー17を装着したままで、後部下カバー19を支持軸30を支点に大きく側方回動させると、燃料タンク12の燃料供給口13及びその周囲を露出させることができる。これにより後部下カバー19は前方側方に向けて開動退避した状態になるので、作業者は広く開放された後方側から、燃料供給口13のキャップ14を簡単に取り外すことができ、また燃料補給タンクを持ち上げ把持し安定よく支持しながら燃料供給口13にできるだけ近接させることができ、燃料を漏らすことなく補給作業を楽な姿勢で能率よく行うことができる。
【0020】
このとき後部上カバー17を取り外すことなく装着しているので、燃料補給時に軽量な後部下カバー19のみを速やかに開閉することができると共に、作業者の身体がカッタ伝動機構22等に接触することを防止することができる等の利点がある。
そして、この燃料補給時に作業者は自ずと側壁21の開放部位を広く視認できるので、燃料補給作業を終えたとき藁屑や塵埃の除去等の清掃作業を同時且つ容易に行なうことができ、そののち逆順の動作によって後部下カバー19を閉鎖固定することができる。
【0021】
このように後部上カバー17と分割形成した後部下カバー19は、脱穀部5の後部の下半分程度を前後方向に広く開放することができると共に、開閉作業を軽快に行うことができる。また後部下カバー19の開動をしたとき、上半分状の後部上カバー17も簡単に外すことができるので、側壁21の後側全面を簡単に全開することができ、カッタ伝動機構22部の清掃や点検等のメンテナンス作業も行い易くすることができる。
【0022】
さらに後部下カバー19は縦向きの支持軸30に回動及び着脱自在に嵌挿支持しているので、開動姿勢において後部下カバー19を上方に持ち上げ移動するだけで支持軸30から簡単に取り外すことができる。従って、後部下カバー19の着脱を速やかに行うことができるので、脱穀部5の側壁21を全面開放をして行うメンテナンス作業を後部下カバー19に邪魔されることなく簡単に遂行することができる。
【0023】
尚、脱穀後部カバー5bは上記構成に限ることなく、後部上カバー17を後部下カバー19と一体的に形成した構成にすると、脱穀後部カバー5bは蝶番手段26を支点に一体的に開閉回動することができるので、燃料補給をする度に側壁21の後側全面を簡単に全開することができ、燃料補給作業と同時にカッタ伝動機構22等のメンテナンス作業も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの脱穀部カバーの構成を示す側面図である。
【図2】脱穀後部カバーの構成を一部断面をして示す側面図である。
【図3】図1の後部下カバーの取付構造を示す平断面図である。
【図4】蝶番手段の構成を示す斜視図である。
【図5】図1の後部上カバーと後部下カバーの取付構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 コンバイン
3 走行機体
4 刈取部
5 脱穀部
5a 脱穀本体部カバー
5b 脱穀後部カバー
12 燃料タンク
17 後部上カバー
19 後部下カバー
21 側壁
26 蝶番手段
27 係脱固定手段
30 支持軸







【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部(4)と脱穀部(5)を前後方向に設置した走行機体(3)に、燃料タンク(12)を脱穀部(5)の後方に載置し、燃料タンク(12)を脱穀後部カバー(5b)で覆うコンバインであって、前記脱穀後部カバー(5b)を蝶番手段(26)と係脱固定手段(27)によって開閉回動自在に設けると共に、開動姿勢の脱穀後部カバー(5b)を蝶番手段(26)を構成する縦向きの支持軸(30)によって回動及び着脱自在に設けることを特徴とした脱穀部カバー構造。
【請求項2】
脱穀後部カバー(5b)を後部上カバー(17)と後部下カバー(19)とによって上下に分割形成し、後部上カバー(17)を側壁(21)に着脱自在に取付支持すると共に、後部下カバー(19)を蝶番手段(26)と係脱固定手段(27)によって開閉回動自在に取付支持する請求項1記載の脱穀部カバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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