説明

脱窒反応槽の水素供与体量制御装置の高感度・安定化

【課題】気化器で得られたメタノールガスのみを測定し、また安定的に測定する装置を提供する。
【解決手段】気化器23に外部から空気を導入する前に活性炭21で空気中の可燃物等を取り除き、浄化空気として気化器に取り込むことにより、ベースの値が変動しないようにした。気化器でのエアレーション空気は気化器上部より取り循環使用し、エアレーションによる希釈がないようすることにより感度を上げた。この時、外部からの空気取り込み量は検知に必要な空気量に絞った。また、検知器26,27 2台を交互に切り替え使用し、1方が試料ガス採取時、他方が浄化空気により検知器の洗浄を行い、検出の安定化を図った。また、気化器への試料供給量を安定化させるため、装置下部にサンプリング槽32を設けて、そこから試料ポンプ30で定量供給することにより安定したガス検知とメタノール添加制御が行える高感度水素供与体添加制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱窒反応槽に対する水素供与体添加量の制御装置に関する分野
【背景技術】
【0002】
従来、生物化学的脱窒プロセスにおける脱窒反応においては流入する硝酸性窒素を含んだ廃水は、脱窒菌で窒素ガスまで還元するためのメタノール等の水素供与体(有機炭素源)を脱窒槽に添加する必要がある。メタノールの添加量の理論的化学当量は硝酸性窒素化合物1質量部に対してメタノール約1.9である。しかし、廃水中の硝酸濃度は変動するために、硝酸濃度の最大値の1.9倍以上のメタノールを定量的に添加して脱窒素処理を行っている。このことによるメタノール過剰供給は資源の無駄ばかりでなく、結果的に、後工程における再曝気槽容量を大きくする必要がある。その上、再曝気槽での余剰汚泥排出や曝気に必要なブロワー電力など無駄が多い。このため、脱窒反応における酸化還元電位(ORP)を測定するORP電極法や、硝酸イオンを直接的に測定するイオン電極方式でメタノールを量の制御が行われてきた。しかしながら、それらの方法では余剰のメタノールを直接的に測定し、制御することはできない。そこで、脱窒槽の処理液の極一部を連続的に気化器に取り、そこでバブリングして、余剰メタノールを気化させて、メタノールガスセンサーで検知し、脱窒槽へのメタノール添加を制御する方法並びに制御装置が開発され販売されるに到った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−238293
【特許文献2】特開平7−328698
【特許文献3】特開平8−24883
【特許文献4】特開平8−299987
【特許文献5】特開2003−71492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでに行われてきたメタノールをガス化してメタノールガス濃度を計測し制御する方式において、設置した工場間による大きなばらつきがあった。一工場においても日ごとの変動が大きく安定した制御が行えない状況が頻繁に発生した。原因を調査したところメタノール制御装置設置場所における空気中の可燃性ガス等の影響で測定ガスに誤差が出る。また、メタノール検知器が長時間連続運転中すると感度が低下をきたすことが判明した。そこで、雰囲気ガスの影響を受けず、長時間安定して運転できるメタノールモニター装置の改善が今回の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
雰囲気ガスの影響を取り除く方法として外気を導入する前に活性炭で空気中の可燃ガス等を取り除き、浄化空気として気化器に取り込むことによりベースの値が変動しないようにした。これまで、気化器のバブリングは外部空気を取り込み、気化器下部の液に吹き込み、上部の気相部より一部(0.5L/min)がオートドレインを通してメタノールガスセンサーに行き、他は外部に放出していた。今回、外部からの空気の取り込みは自動的流量調整機能のあるメタノールガスセンサーを用いて吸引量は0.5L/minとし、バブリング空気量の大部分は循環使用した。このことにより、液相から気化するメタノールガス濃度は飛躍的に濃くなり、感度向上に寄与した。
そして、長時間ガスセンサーへのメタノールガス暴露による感度低下を防ぐため、検知器2台使用し、1方が試料ガス採取、他方が浄化空気による検知器の洗浄を行った。この検知器は自動流量調整装置が付いており、ガス濃度の安定化が図れるものを使用した。このバルブの切り替えは一定時間、たとえば、1時間おきに自動切換えを行い、検知器の感度劣化が起こらないようにした。
また、これまでは、脱窒槽液からのサンプリングはチューブポンプを用いて脱窒槽から直接採取していた。脱窒槽のスラリーによるチューブポンプサクション側配管での詰まりなどによる流量変化に起因する誤差をなくすため、ガスモニター下部にサンプリング槽を設け、サクション側の距離を短くする改造を行った。また、サンプリングポンプを可変速モーターによりサンプリング量を変えられるサンプリングポンプを用いた。そのフローを図―1に示す。
【0006】
図―1より新鮮な空気は活性炭21を通り周辺空気中の検知器と反応するガス(可燃性ガスなど)を取り除いた後、気化器23に送られる。気化器23の下部のサンプリングされた液ではPID制御されたヒーターで30から40℃の間の一定温度に維持される。上部配管4よりエアーポンプ24が吸引した気化器上部の気体を、気化器気相から0.5L/minがメタノールガス検知器に吸引される。
【0007】
気液平衡に達したメタノールを含んだガスは、オートドレーン25で除湿させて検知器26,27に送られる。
【0008】
検知器26、27は交互に使われる。例えば1時間ごとに切り替えを行い、一方が気化器ガスを測定している場合、他は活性炭20を通ってきた洗浄用空気でガスセンサー部はクリーニングされる。交互に使うことと、雰囲気ガス中の可燃性ガスなどを活性炭で取り除くことにより検知器の感度を維持できる。
【0009】
検知器26、27で得られたメタノールガス濃度の信号はPID28に送られ、PID制御で設定値との差を修正する4−20mA出力でメタノールポンプ29の添加量を制御する。
【00010】
試料液は脱窒槽よりポンプにてサンプル槽32に運ばれオーバーフロー配管11で廃水処理施設に戻される。その一部を試料ポンプ30で気化器に試料液を送る。
この試料ポンプは流量を変化させることができ、常に一定の流量となるよう調整できる。これは、流量が変動した場合気化率も変動するためで、常に一定の気化率となるようするものである。
【発明の効果】
【0011】
これまでのメタノールガス検知によるメタノール添加制御装置に比べ、感度を7〜8倍に上げることができると同時に装置の安定性が格段に向上した。簡便な方法で脱窒槽の残留メタノールを正確に測定し、脱窒処理工程でのメタノールの添加制御を正確に行い、その結果、メタノールの消費量の削減と後工程の再曝気槽を小型化でき、その上、再曝気槽での余剰汚泥および曝気エネルギーの削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】メタノール添加制御装置のフローシート
【図2】気化温度とメタノールガス濃度の関係
【図3】気化時間とメタノールガス濃度の関係
【図4】現状メタノール制御装置のメタノール濃度とメタノールガス濃度の関係
【図5】新型メタノール制御装置のメタノール濃度とメタノールガス濃度の関係
【実施例1】
【0011】
気化温度とメタノールガス濃度の関係を調べた。メタノール濃度としては50mg/L気化時間としては40℃、1時間気液平衡後の値を図―2に示した。図―2より気化温度と間には明らかな関係が認められた。メタノールの蒸気圧は温度に関係していると考えられる。そしてこのことより、気化温度は一定に保つ必要がある。実用的な気化温度はセンサーの許容温度が40℃で、感度を最大に持っていくためと年間通じて気温の変化の影響を少なくするため、気化温度としては40℃とした。
【実施例2】
【0012】
気化時間(気化器でのサンプリング液滞留時間)とメタノールガス濃度の関係を調べた。メタノール濃度としては50mg/L、気化温度としては40℃、1時間気液平衡後の値を図―3に示した。図―3より気化時間とメタノールガス濃度には明らかな関係が認められた。サンプリング量を増やしていくとガス濃度は下がった。この原因としては気化時間が短いと気液平衡状態に達しないと考えられる。しかし、気化時間が長いと今度はタイムラグが起こるので、気化時間としては2.5分が適当と考える。
【実施例3】
【0013】
液中メタノール濃度と気相中のメタノールガス濃度の関係を調べた。気化温度としては40℃、気化時間としては2.5分で1時間気液平衡後の値を求めた。既存のメタノール添加制御装置でのデータを図―4、今回開発の制御装置でのデータを図―5に示した。どちらも液中メタノール濃度とメタノールガス濃度の間には正の相関が認められた。しかし、現状の制御装置での液中メタノールに対するメタノールガス濃度の傾きが0.1768であるのに対し新型制御装置での傾きは1.345と感度は7.6倍となり当初の目的である感度向上がなされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中の硝酸態窒素又は亜硝酸態窒素に対し与える水素供与体(メタノール)を利用して、窒素ガスに還元する脱窒反応槽を有する生物化学的脱窒プロセスにおける脱窒槽への水素供与体添加量を制御する方法において、脱窒槽から採取した試料中のメタノールを気化させて添加制御を行う場合、周辺大気の影響を除外し検出感度を上げるための空気洗浄装置(活性炭)を用いることによる変動抑制を行う水素供与体制御装置
【請求項2】
請求項1において感度向上のため気化器でのエアレーションを循環空気とした水素供与体制御装置。
【請求項3】
請求項1において検出器の安定化を図るために検出器を2台併用として切り替え運転を行う水素供与体制御装置
【請求項4】
請求項1において気化率の安定化を図るためにサンプル槽を設けた水素供与体制御装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103219(P2013−103219A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262928(P2011−262928)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(510209487)株式会社アクアテック (4)
【Fターム(参考)】