説明

脱窒方法

【課題】(亜)硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒する方法において、低濃度原水を高負荷で処理する場合においても、処理効率を低下させることなく、高水質の処理水を安定に得る
【解決手段】pH4以上7未満で脱窒処理する第1脱窒工程と、その後、pH7〜8で脱窒処理する第2脱窒工程とを含むことを特徴とする脱窒方法。第1脱窒工程における脱窒処理をpH4以上7未満で行うことにより、低濃度原水の高負荷運転でHRTが短くなった場合であっても、担体やグラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成を抑制し、高負荷時の処理性能の安定性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒する方法において、低濃度原水を高負荷で処理する場合においても、処理効率を低下させることなく、高水質の処理水を安定に得る脱窒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオン(以下「(亜)硝酸イオン」と総称する。)を含有する排水(NOx含有排水)に水素供与体を添加して脱窒細菌により生物的に脱窒処理することにより、(亜)硝酸イオンを窒素ガスに分解して除去することができる。この方法において、脱窒細菌に好適なpHは6.0〜8.5とされており(特許文献1,2)、特許文献1では、脱窒反応液のpHが6.0〜8.5の間の基準値となるように、反応槽への原水供給量を制御することが提案されている。
【0003】
このような脱窒方法としては、脱窒細菌の保持形態により浮遊法、担体法、自己造粒法がある。このうち、浮遊法は、広く採用されているが、運転に適用される容積窒素負荷は1kg−N/m/day程度と低いため、処理に必要な反応槽容量が大きく、広い敷地面積が必要となる。
【0004】
これに対して、担体を用いる担体法(固定床法又は流動床法)であれば、浮遊法よりも高い容積負荷で運転することが可能である。また、沈殿槽における分離汚泥の返送が不要となるため、沈殿槽での汚泥管理の手間が省け、維持管理が容易となる。
【0005】
また、自己造粒法として、脱窒細菌の凝集能を利用して自己造粒させ、反応塔内に沈降性の良い粒状化汚泥(グラニュール)を形成した反応塔に、NOx含有排水を上向流で通水することで脱窒を行わせるUSB(Upflow Sludge Blanket:上向流汚泥床)方式の脱窒法もある。
この方法は、付着担体を用いることなく脱窒細菌を選択的に自己造粒させて、反応塔内に脱窒細菌を高濃度の粒状に凝集させたグラニュールの汚泥床を形成し、NOx含有排水を反応塔下部から導入して水素供与体の存在下でこのグラニュールと接触させて排水中の(亜)硝酸イオンを分解し、脱窒処理水を反応塔上部の固気液分離部から取り出すものである。
【0006】
このようなUSB脱窒法では、脱窒細菌を反応塔内に高い密度で保持することができ、2kg−N/m/day以上の高容積負荷での運転が可能となるため、高濃度の(亜)硝酸イオンを含む排水を効率的に処理することができると共に、装置設置面積の縮小を図ることができる。
【0007】
上記の担体法や自己造粒法、特に、USB脱窒法は実際にNOx含有排水処理に用いられており、対象とする排水によっては安定した処理が可能であるが、次のような課題がある。
【0008】
即ち、(亜)硝酸イオン濃度の低い低濃度原水の場合に高負荷運転を行うと、HRT(水理学的滞留時間)が短くなってしまい、短いHRTでの運転で、担体やグラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成により、汚泥の会合、担体やグラニュールの流動性低下を引き起こし、処理効率が低下する。
この現象は、原水に含まれる栄養塩、ミネラル、重金属等が少ない場合も発生する。例えば、電子部品の製造分野で排出されるフッ硝酸排水のように、超純水に硝酸や一部の無機物のみを含むだけの排水を原水とする場合には、担体やグラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成により、処理効率が低下する。
【0009】
このような場合、高負荷運転ができなくなるため、結果として容積負荷は小さくなり、浮遊法に対するメリットが出なくなる。また、栄養塩、ミネラル、重金属等の少ない原水の場合、添加剤として、脱窒処理に必要な無機物(Fe,Cu,Mo,Mg,K,Ca等)を多く添加する必要が生じる。
【0010】
一方、浮遊法の場合においては、低濃度原水の高負荷運転でHRTが短くなると、糸状性細菌が多くなってバルキングが発生し、汚泥の沈降性が悪くなり、また、脱窒効率は経時により大幅に低下することとなる。
【0011】
なお、特許文献1には、USB反応塔内を脱窒細菌の最適pH(6.0〜8.5)に調整するために、反応塔の高さ方向の複数箇所でpH調整剤を添加することが提案されているが、この方法は、反応塔内全体をpH6.0〜8.5に調整するためのものであり、上記課題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−54726号公報
【特許文献2】特許第3256755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、(亜)硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒処理するに当たり、低濃度原水を高負荷で処理する場合においても、処理効率を低下させることなく、高水質の処理水を安定に得ることができる脱窒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明(請求項1)の脱窒方法は、硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒処理する脱窒工程を含む脱窒方法において、該脱窒工程は、pH4以上7未満で脱窒処理する第1脱窒工程と、その後、pH7〜8で脱窒処理する第2脱窒工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2の脱窒方法は、請求項1の脱窒方法において、前記脱窒工程は、脱窒細菌の造粒物が充填された反応塔に、原水を上向流で通水して行う工程であり、原水を該反応塔に導入するに先立ち、アルカリ添加によりpH4以上7未満に調整する工程と、該反応塔からの流出水のpHが7〜8になるように、該反応塔の中間部において、必要に応じてアルカリを添加する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項3の脱窒方法は、請求項2の脱窒方法において、前記反応塔のHRTが10時間以下となる条件で処理することを特徴とする。
【0017】
請求項4の脱窒方法は、請求項1ないし3のいずれか1項の脱窒方法において、前記原水の硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオン濃度が1,000mg−N/L以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、(亜)硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒処理するに当たり、第1脱窒工程における脱窒処理をpH4以上7未満で行うことにより、低濃度原水の高負荷運転でHRTが短くなった場合であっても、担体法や自己造粒法において、担体やグラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成を抑制し、高負荷時の処理性能の安定性の向上を図ることができる。
【0019】
これは次のような理由による。
即ち、例えば、自己造粒法による脱窒処理の場合、原水は水素供与体と共にUSB反応塔に導入され、浮遊細菌やグラニュールにより、窒素ガスまで還元される。この時、低濃度原水の高負荷運転でHRTが低く、例えば、10時間以下となると、反応塔から浮遊菌が洗い流される割合が多くなり、脱窒反応の大部分が、グラニュールを構成する脱窒細菌に依存することとなる。このような場合、脱窒細菌は系内へ残ろうとするため、グラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成を行い、結果として、反応塔内の流動性は著しく低下する。
【0020】
この場合において、本発明に従って、脱窒工程の初期段階において、pHを4以上7未満の弱酸性とすることにより、汚泥の荷電状態の改善、ミネラル、重金属の取り込み促進の効果が奏され、グラニュールへの菌体の過剰付着や粘質物の過剰生成を防ぎ、反応塔内での流動性が維持できるようになる。
【0021】
脱窒細菌の活性が高いpH条件は、中性から弱アルカリ性域とされているため、pH4以上7未満の弱酸性域では脱窒細菌の活性はやや低下するが、本発明によれば、pH弱酸性に調整することによる、この脱窒細菌の活性の低下分を補って、効率的な処理が可能になる。
ただし、脱窒工程全体にわたって弱酸性とすると、脱窒細菌の活性は大幅に低下することとなるため、本発明では、pH4以上7未満の第1脱窒工程後に、pH7〜8の第2脱窒工程を行う。
【0022】
担体法による脱窒処理においても、上記と同様の理由で処理効率の向上が図れる。
【0023】
また、栄養塩、ミネラル、重金属等の含有量の少ない原水を処理する場合であっても、第1脱窒工程のpHを4以上7未満の弱酸性とすることによる、汚泥の荷電状態の改善、ミネラル、重金属の取り込み促進の効果で、不足分を補足するための添加剤の添加量を必要最低限の量にまで低減することができる。
【0024】
一方、浮遊法にあっても、第1脱窒工程のpHを4以上7未満にすることにより、締め固まった汚泥フロックができやすくなり、糸状性細菌の発生を抑制することにより汚泥の沈降性を高めると共に、処理効率を安定化させることができる。
【0025】
更に、本発明によれば、第1脱窒工程を比較的低いpH条件で行うことにより、pH調整に必要なアルカリの使用量の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の脱窒方法の実施の形態の一例を示すUSBの脱窒装置の系統図である。
【図2】本発明の脱窒方法の実施の形態の他の一例を示す浮遊式脱窒装置の系統図である。
【図3】実施例1と比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1,2は、本発明の脱窒方法の実施の形態の一例を示す脱窒装置の系統図であり、図1はUSB脱窒装置を示し、図2は浮遊式脱窒装置を示す。
【0028】
図1において、1は、USB反応塔であり、内部にはグラニュールの汚泥床1Aが形成されている。グラニュールの汚泥床1Aは通常、反応塔容積の4〜6割を占め、図示した如く反応塔1の下部に形成される。反応塔1の上部には固気液分離手段2が設けられている。原水は、循環槽3でUSB反応塔1の循環水と共にpH調整された後、USB反応塔1の下部から塔内に導入される。反応塔1に導入された水は、反応塔1内の汚泥床1A内を上向流で流通する過程で脱窒細菌により脱窒処理され、脱窒処理水は反応塔1の上部の固気液分離手段2で分離され、その一部が処理水として系外へ排出され、残部は循環水として循環槽3に循環される。
【0029】
図2の脱窒装置では、原水は、pH調整槽11でpH調整された後、第1脱窒槽12及び第2脱窒槽13で順次槽内の浮遊細菌により脱窒処理され、次いで沈殿槽14で固液分離され、分離水が処理水として系外へ排出される。沈殿槽14の分離汚泥は、その一部が返送汚泥として第1脱窒槽12の入口側に返送され、残部は余剰汚泥として系外へ排出される。
【0030】
本発明においては、このような脱窒処理に当たり、pH4以上7未満の条件で脱窒処理する第1脱窒工程と、この第1脱窒工程後にpH7〜8で脱窒処理する第2脱窒工程とを行う。
【0031】
従って、図1に示すUSB脱窒装置においては、循環槽3に、槽内液のpHが4以上7未満となるようにアルカリを添加してpH調整し、pH調整水をUSB反応塔1に導入する。
【0032】
このようにpH4以上7未満のpH調整水がUSB反応塔1に導入されることにより、反応塔1の入口側の脱窒汚泥床1Aにおいて、pH4以上7未満の条件で脱窒処理が行われる(第1脱窒工程)。
【0033】
反応塔1に導入された水は、塔内を上向流で流通する過程で脱窒細菌により脱窒処理され、(亜)硝酸イオンが窒素にまで分解されることで、pHが上昇する。
このpH上昇で反応塔1から流出する処理水のpHが7〜8の範囲であれば、この反応塔1内では、pH7〜8の第2脱窒工程が行われているため、反応塔1に更にアルカリを添加する必要はない。ただし、反応塔1の流出水のpHが7未満の場合には、反応塔1の中間部、例えば反応塔1の底部から、グラニュール汚泥床1Aの流動状態における高さの1/20〜1/2程度の高さ位置の1ヶ所又は複数個所でアルカリを添加して、反応塔1の流出水のpHが7〜8の範囲となるように調整する。
【0034】
また、図2の脱窒装置では、第1脱窒槽12内の水のpHが4以上7未満となるように、pH調整槽11(第1脱窒工程)にアルカリを添加する。第1脱窒槽12から第2脱窒槽(第2脱窒工程)に流入した水のpHが(亜)硝酸イオンの分解で上昇して、pH7〜8の範囲になる場合は、更なるアルカリの添加が必要であるが、第2脱窒槽13のpHが低い場合には、第2脱窒槽13の入口側或いは第2脱窒槽13にアルカリを添加する。
【0035】
本発明において、第1脱窒工程におけるpHが高過ぎると、本発明による効果を十分に得ることができない。ただし、第1脱窒工程のpHが低過ぎると、脱窒細菌の活性が大きく損なわれる恐れがあるので、第1脱窒工程におけるpH条件は、好ましくは6.0以上7.0未満、特に好ましくは6.5〜6.8とする。
【0036】
また、第2脱窒工程におけるpHは、この第1脱窒工程におけるpHよりも高い条件で脱窒細菌の好適pHであることが好ましく、特にpH7〜8とすることが好ましい。
【0037】
なお、原水のpH調整に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。
【0038】
第1脱窒工程と第2脱窒工程の処理時間については、第1脱窒工程の時間が短か過ぎると比較的低pH条件の第1脱窒工程を設けることによる本発明の効果を十分に得ることができず、長過ぎると処理効率が低下するおそれがある。また第2脱窒工程の処理時間が短か過ぎると脱窒効率が低下するおそれがあり、長すぎてもそれ以上の脱窒効果は得ることはできず、徒に処理時間が長くなって処理効率が低下する。
【0039】
従って、第1、第2脱窒工程の処理時間はHRTの値として、第1脱窒工程が1/20〜1/2時間、第2脱窒工程が1/2〜19/20時間であり、第2脱窒工程の処理時間が第1脱窒工程の処理時間の1〜20倍となるようにすることが好ましい。
【0040】
このような本発明の脱窒方法は、(亜)硝酸イオン濃度の低い希薄なNOx含有排水に好適であり、例えば電子部品製造排水、即ち超純水系排水などの(亜)硝酸イオン濃度が1,000mg/L以下、例えば、100〜1,000mg/L程度の原水の処理に有効である。
【0041】
また、本発明の脱窒方法は、このような希薄な原水を脱窒槽のHRT10時間以下、例えば1〜6時間、容積負荷2〜10kg−N/m/dayで処理する場合に、前述の低pH条件の第1脱窒工程による効果が有効に発揮され、好ましい。
【0042】
なお、本発明に係る脱窒反応は水素供与体の存在下で行われるため、原水には、必要に応じて、メタノール等の水素供与体を添加する必要がある。
この添加量は、通常、脱窒処理に供される水中のメタノール等の水素供与体の濃度がNOx−Nに対して1.8〜3.5g−メタノール/g−NOx−N程度となる量である。また、脱窒処理には、脱窒細菌の栄養塩やミネラル、重金属等が必要となることから、原水中にこれらの成分が不足する場合には、適宜これらを補給する。
【0043】
なお、図1,2ではUSB方式又は浮遊方式の脱窒処理に本発明を適用した場合を例示したが、本発明はこれらの方式に限らず、担体法、即ち、固定床式脱窒処理や流動床式脱窒処理にも有効に適用することができる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0045】
[実施例1]
図1に示すUSB脱窒装置(反応塔容量3.0L,高さ100cm)を用いて、硝酸を含有する原水に、水素供与体としてのメタノールを620mg/Lと重金属混合液(Fe、Cu、Ni、Mo、Co)10mg/Lとリン酸5mg/Lを添加して処理した(以下、これらを添加したものを「調整原水」と称す。)。
【0046】
調整原水を18mL/minで循環槽3に導入し、循環槽3からは、210mL/minの流量でUSB反応塔1の底部に被処理水(調整原水と循環水の混合水)を導入した。この循環槽3には、水酸化ナトリウム水溶液を添加して、槽内pHを6.5に調整した。USB反応塔1の処理水のpHは7.1であった。
【0047】
このときのUSB反応塔の容積負荷は2.5kg−N/m/day、HRTは2.7時間であった。この条件で一ヶ月以上運転を継続した。
【0048】
この処理における原水の硝酸濃度と処理水の硝酸濃度の経時変化を図3に示す。
図3に示されるように、運転期間中、窒素除去率90%以上で安定な脱窒処理を行えた。
また、USB反応塔内1のグラニュール粒径は2mm程度であり、反応塔1内は良好な流動性を維持していた。運転開始から約一ヶ月後における反応塔1内のMLSSは38,000mg/Lで、反応塔1内にグラニュールが高濃度に保持されていた。
【0049】
なお、反応塔1内の水のpHを調べたところ、反応塔1の底面から30cmの高さ位置において、pH7以上となっており、従って、第1脱窒工程のHRTは0.81時間、第2脱窒工程のHRTは1.89時間と推定された。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、循環槽3内のpHが7.2となるように水酸化ナトリウム水溶液を添加したこと以外は同様にして処理を行った。
このときの処理水の硝酸濃度の経時変化は、図3に示す通りであり、経時により処理効率は低下し、窒素除去率は90%より低くなった。
また、反応塔1内のグラニュール粒径は3mm以上となり、グラニュール同士の会合、流出が多くなり、運転開始から約一ヶ月後における反応塔1内のMLSSは18,000mg/Lで、運転開始二ヵ月後には、反応塔1内のグラニュールはすべて流出した。
【0051】
[実施例2]
図2に示す浮遊式脱窒装置で硝酸濃度290mg−N/Lの原水の処理を行った。第1脱窒槽12及び第2脱窒槽13の容量はいずれも1.5Lである。
原水はpH調整槽11において水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、第1脱窒槽12内のpHが6.5、第2脱窒槽13内のpHが7.2となるようにpH調整した。
水素供与体としてはメタノールを870mg/L添加し、容積負荷1.2kg−N/m/day、HRT6.8時間で運転した。
この条件で一ヶ月以上運転したところ、処理水の窒素除去率は90%以上を安定して維持していた。
また、生成した脱窒汚泥は沈降性に優れ、沈殿槽14で良好な固液分離性を維持していた。
【0052】
[比較例2]
実施例2において、第1脱窒槽12のpHが7.2となるようにpH調整したこと以外は同様の条件で処理を行った。
この条件で一ヶ月以上運転したところ、処理水の窒素除去率は90%未満となった。
また、汚泥の沈降性が悪く、沈殿槽14での界面上昇、汚泥濃度の低下が発生し、運転開始二ヶ月後には、窒素除去率は70%以下に低下した。
【符号の説明】
【0053】
1 USB反応塔
3 循環槽
11 pH調整槽
12 第1脱窒槽
13 第2脱窒槽
14 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオンを含む原水を、水素供与体の存在下に脱窒細菌と接触させて脱窒処理する脱窒工程を含む脱窒方法において、
該脱窒工程は、pH4以上7未満で脱窒処理する第1脱窒工程と、その後、pH7〜8で脱窒処理する第2脱窒工程とを含むことを特徴とする脱窒方法。
【請求項2】
前記脱窒工程は、脱窒細菌の造粒物が充填された反応塔に、原水を上向流で通水して行う工程であり、原水を該反応塔に導入するに先立ち、アルカリ添加によりpH4以上7未満に調整する工程と、該反応塔からの流出水のpHが7〜8になるように、該反応塔の中間部において、必要に応じてアルカリを添加する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の脱窒方法。
【請求項3】
前記反応塔のHRTが10時間以下となる条件で処理することを特徴とする請求項2に記載の脱窒方法。
【請求項4】
前記原水の硝酸イオン及び/又は亜硝酸イオン濃度が1,000mg−N/L以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脱窒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−253352(P2010−253352A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104278(P2009−104278)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】