説明

脱脂コラーゲン

豚皮(pig rind)はソーセージ・ケーシングやフィルムのような製品に加工するためのコラーゲン源の一つである。しかし、それは大量の脂質を含んでいる。本発明は、コラーゲン源を小片に切断し、圧搾することで脂質を除去し、崩壊させることで繊維ペーストを形成する方法による、脱脂コラーゲンペーストの製造方法に関する。
このペーストは押出成形コラーゲン製品のようなゲルの製造に用いることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の皮、特に豚コラーゲン源からのコラーゲンゲル製造用ペーストの製造方法に関する。さらに詳しくは、豚皮(pig rind)の処理、その脱脂、ケーシングやフィルムなどのコラーゲン製品への加工に適したコラーゲンゲルの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
野生動物由来の再構成されたコラーゲンから作られた、フィルムやソーセージ用ケーシングなどの人造のコラーゲン製品は、長年市販されてきている。コラーゲンフィルムは、通常ハムのような包装食品に使用され、コラーゲンケーシングは、通常肉混合物を詰め、ソーセージを作る。現在では、動物コラーゲンの主な由来は、牛の皮から得られる牛コラーゲンである。牛が蓄殺された後、皮とその裏にあるコラーゲン層を一緒に剥ぎ取られる。皮は通常石灰で処理しコラーゲンを膨潤させる。その後コラーゲン層は機械的に皮(hide)から引き離し薄皮(スプリット(split))を形成し、ミンチにし、公知の方法でコラーゲンゲルに加工する。
【0003】
コラーゲンとしては潜在的に、豚、羊、山羊、鳥、魚等の皮などの数多くの他の由来のものも利用可能であるが、これらのどれも現在までに商業的使用が普及しているようにはみえない。
【0004】
天然コラーゲンは、引き剥がした豚皮として、またはより一般的にはいわゆる「ラインド(rind)」として、豚から得られる。引き剥がした豚皮は、豚、通常雌豚の体から、全体あるいはほぼ全体の皮を剥がして製造する。それらは、従来型の毛で覆われた皮であり、保存のため、またさらなる加工をしやすくするために塩で処理されることもある。このような豚皮は牛の薄皮(スプリット(split))と同様に加工される。皮片(ラインド(rind))は、通常A4用紙の大きさぐらいのより小さい断片であり、豚(通常、子豚)が切り分けられた後、肉片から切り取られる。皮片の大きさや形は、当然それらが切り取られる肉片によって決まる。通常、皮片は相当量の脂肪と共に切り取られる。
【0005】
本発明者の国際公開公報第2003/017770号パンフレット(特許文献1)及び同第2004/073407号パンフレット(特許文献2)は、豚由来の豚コラーゲンから得られる人造のコラーゲン製品を製造するときに直面した課題に関する。豚コラーゲン特有の問題は、比較的脂肪の含有量が高いことである。もし脂肪が減少されない場合、力学的な特性の劣ったコラーゲン製品となってしまう。コラーゲンから脂肪を物理的に分離するのは難しいことが分かっている。なぜなら天然の豚皮において、脂肪層とコラーゲン層はきっちりと層を成しているわけではなく、コラーゲン層は毛の周辺に脂肪含有物を含むことが多いからである。従って、牛コラーゲンと比較すると、脱肉機内で皮下脂肪層を切り取ることによって、単に豚皮中の脂肪含有物からコラーゲンを簡単に分離するのでは通常十分ではない。
【0006】
国際公開公報第2003/017770号パンフレット(特許文献1)は、子豚原料の脱脂、また雌の成豚皮の脱脂について記載している。一般的に、物理的な分離とさらなる脂肪除去工程を組み合わせて脱脂を行う。両方の場合において、豚皮は、脱肉機内で物理的に脂肪とコラーゲン層に分離される。
【0007】
国際公開公報第2004/073407号パンフレット(特許文献2)は、同様の脱脂工程を雌豚の皮のみに行うことについて記載している。
【0008】
しかしながら、これらの明細書に記述された方法で豚コラーゲンから脂肪を除去するには問題がある。第一に、豚皮は通常アルカリ処理(炭酸ナトリウムあるいは水酸化ナトリウムを用いる。)を受けコラーゲンを膨潤させる。このことは、コラーゲン層を拡張させ、脱肉機内での皮とコラーゲン層の分離を容易にする。分離された豚皮は、さらなる強アルカリ処理を受け、コラーゲンから毛を除去する。このようなアルカリ処理はコラーゲンを分解し、得られたコラーゲン製品の力学的物性が軽減させることが知られている。さらに、通常アルカリを中和するための中和処理も必要である。
【0009】
米国特許第6482240号公報(特許文献3)及び同第7022358号公報(特許文献4)は、酵素を用いた豚皮片(rind)の脱脂による脂肪含有量の低減について記述している。
【0010】
さらに、豚皮の利用可能性に関する問題がある。上記した特許刊行物における多くの実施例は、雌の成豚の皮の処理に関する。この雌の成豚は一才以上であり、一般的には繁殖用である。しかしながら、大多数の豚(通常90%前後)が子豚であり、4月齢前後で食肉用に蓄殺される。通常、雌の成豚は、常に豚の総個体数のうちほんの少しの割合を占めるにすぎない。それ故、雌の成豚の皮の供給源は限られている。一方、雌の成豚の皮はサイズがより大きく、脱肉機内で脂肪層の機械的除去をするのにより適している。一般的に、4月齢で蓄殺された子豚から得られる皮は、A4用紙の大きさの小片(ラインド(rind)として知られている)のみが利用できる。それ故、脱肉機内での処理にはそれほど適していない。
【0011】
さらなる問題は、豚皮、特に雌の成豚の皮は、通常皮革工場で加工されることである。このような工場では一般的に食品加工用に適した状況下で作業されていないので、衛生規則についての問題が起きる可能性がある。
【0012】
【特許文献1】国際公開公報第2003/017770号パンフレット
【特許文献2】国際公開公報第2004/073407号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6482240号公報
【特許文献4】米国特許第7022358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上記の問題を軽減する、天然コラーゲン源、特に豚コラーゲンから脂肪を除去する方法、特に比較的小さい原料の断片を脱脂するのに適した方法を提供することである。
【0014】
概して言えば、本発明は天然コラーゲンを小片に切断し、脂肪をそのコラーゲン片から加圧下で絞り出すことにより取り除く。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特に、本発明は、獣類、哺乳類、鳥類あるいは魚皮から摂取される天然コラーゲンを準備し、
そのコラーゲンを小片に切断し、
そのコラーゲン片を加圧し脂肪分を搾り出し、脱脂コラーゲン片を製造し、
その脱脂コラーゲン片を分解し、繊維状のペーストを形成することを含む脱脂コラーゲンペーストの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、主に羊(子羊及び雌の成羊)、山羊、鳥(鶏、七面鳥など)、魚(鮭皮など)のような幅広い種類の獣類、哺乳類、鳥類あるいは魚由来のコラーゲンペーストの製造に適用できる。しかしながら、本方法は、特に、脂肪を多く含む豚皮片(rind)の処理に適している。天然の豚皮においてコラーゲンと脂肪の比率は、通常1:1〜1.5:1の範囲であることが知られている。豚皮片(rind)においては、通常1:1〜1:5である。
【0017】
豚の皮膚の構造上の特質はよく知られており、例えばWorld Leather, 85-90頁, 1997年10月において議論されている。このように豚の皮膚は、外側から内側に向かって、表皮層、真皮層、皮下脂肪層からなることが知られている。真皮層は表皮層に比べて厚く、コラーゲン線維が主に存在している。大量の剛毛もまた真皮層に存在しており、脂肪の円錐体(cones)は、各剛毛小嚢を基部として皮下脂肪層から真皮層を通って上方に向かって延びている。このように、コラーゲンを含む真皮層と皮下脂肪層の間が分離する傾向がある。この分離は、子豚ではあまりはっきりしないが、成豚ではよりはっきりしている。
【0018】
従来技術では、脂肪に対するコラーゲンの割合を増やす最も効果的な方法の一つは、皮なめしにおいて機械的な豚皮の取り扱いを慎重に制御することである。新鮮な豚の皮膚は、皮下脂肪とある程度の真皮層を除去し、脂肪に対するコラーゲンの割合が要求される範囲になるまで、機械的に脱肉処理を受けることが可能である。しかしながら、上記したように、子豚から多く入手できるA4用紙の大きさの皮片(rind)を機械的に脱肉処理することは難しい。本発明は、皮片(rind)(表皮層、真皮層、皮下脂肪層)を小片に切断し、その後脂肪を絞り出し、脂肪に対するコラーゲンの割合を増加させることによってこの問題を回避する。
【0019】
本発明の別の態様では、豚コラーゲン製品の脂肪の割合を乾燥重量基準で20%以下、特に18%、とりわけ16%の水準まで減らす。
【0020】
コラーゲンの脂肪に対する割合は少なくとも2.5:1、好ましくは少なくとも3、さらに好ましくは少なくとも3.5、特に好ましくは少なくとも4:1である。コラーゲンと脂肪の割合は、10:1、さらに20:1以上に高くてもよい。好ましくは、30対1以上、特に40対1以上がよい。しかしながら、脂肪含有量は、最終コラーゲン製品の特性のバランスが全体的として良好にとられるように制御されるのが好ましい。好ましい範囲としては、25:1〜50:1、特に30:1〜45:1が挙げられる。このように、最終製品におけるある一定の脂肪の割合は製品の外観を改善してそれに魅力ある光彩を与え、この製品が料理品方面で使用されるフィルムであるとき、フィルムの料理特性を改善させる傾向がある。豚の脂肪の不飽和性は、予期しないほどの強度を生み出すだろう(例えば、架橋によって)。
【0021】
このように、製品に含まれるグリセロールあるいは他の保湿剤のような添加物の量は、脂肪の割合の範囲に依存することになる。
【0022】
本発明で推奨される目的は、原則的に豚由来のコラーゲン製品の供給である。牛コラーゲンを含めることは望ましくないが、少量の、好ましくは10%以下、特に5%以下の羊、家禽、鳥類、魚類由来のコラーゲンも任意に含まれていてもよい。
【0023】
コラーゲンの特性は、子豚(約4月齢)由来のコラーゲンと雌の成豚(約1歳以上)由来のコラーゲンを混合することにより変化させることができる。通常、子豚コラーゲンは、その混合物中に10〜100重量%、特に20〜80重量%、とりわけ30〜50重量%含まれる。より成長した豚の原料は、より繊維質になりやすく、最終製品の強度が増す傾向がある。
【0024】
一般的に、天然コラーゲンは、皮全体、すなわち表皮層、真皮層、皮下脂肪層からなる。しかしながら、本発明の脱脂工程は、皮下脂肪層をすでに取り除いた皮にも適用できる。同様に、表皮層も部分的または完全に除去されていてもよい。
【0025】
豚皮は通常豚を蓄殺し、60℃の熱湯で消毒し、その後毛をバーナーで焼いて取り除く。皮がまだ体に付いている状態で、肉片に切断する。その後、豚皮を肉片から剥がし、皮片(rind)が得られる。皮片の正確な大きさはその肉片の大きさによるが、通常500〜1000cm2である。最大でも大体A4用紙の大きさになる傾向があり、豚の背中から得られる。本発明の利点は、どんな大きさの、皮片(rind)も使用できることである。
【0026】
その天然皮(特に皮片あるいは豚皮)は、脱脂に適した大きさ、特に1〜100cm2(例えば、2〜50cm2)の小片に切らなければならない。このことは、回転カッターと、一つあるいはそれ以上の開口板を用いて細かく刻むことにより実現される。または、回転カッターあるいは他の切断作業によって実現される。
【0027】
コラーゲン片は圧力をかけられ脂肪を搾り出し、それにより、脂肪の含有量を低減させる。これは、スクリューコンベヤ装置のような機械的分離機の中で効果的になされる。スクリューとその外筒との間においてコラーゲン片に圧力がかけられ、その大きさが減少する。外筒は、通常、加圧により不純物を含む半流動的な脂肪混合物を押し出すスクリーンを含む。スクリーンは、メッシュ、開口部を備えたケーシング、数個の細長い隙間、あるいは隣接した円形薄板など任意の適当な構造であればよい。適当な用具は、米国特許第4215450号、米国特許第4340184号、米国特許第4561834号、米国特許第4638954号に例示されており、カナダのハミルトンにあるポス・デザイン・リミテッド社より市販されている。加圧の方法としては、他にもローラーやプレス機を用いる方法もある。
【0028】
脱脂された小片は、脱脂工程によりわずかに大きさが減少する。またその形は一般的に全く一様ではない。
脱脂されたコラーゲン片は、通常細かく切り刻んだ後、崩壊させることによりバラバラに分解し繊維状のペーストとなる。この分解工程は、コラーゲンの繊維質の特性を保ち、最終生成物に強度を与えるために実施される。
【0029】
必要であれば、さらに脂肪除去工程を行ってもよい。例えば、脂肪はまた、水酸化ナトリウムのようなアルカリで処理して化学的に除去してもよい。微量の脂肪は、押出成形ゲルの製造における他の工程において除去してもよい。脂肪除去の他の選択肢としては、溶媒抽出法(液体二酸化炭素のような食品用に利用できる薬剤を用いる)が挙げられる。酵素処理も選択肢の一つであるが、コラーゲンの繊維質特性を減少させる可能性があるので好ましくない。
【0030】
繊維質状コラーゲンペーストを公知の方法により加工して、押出成形可能な水溶性のゲルを製造してもよい。そのペーストを塩酸などの強い鉱酸または乳酸などの有機酸により酸性化し、コラーゲンを膨潤させる。これに代えて、既知の技術によりアルカリ膨潤ゲルを製造することができる。通常このゲルは、94〜96重量%の水、4〜6重量%(通常5重量%程度)のコラーゲン及びその他の構成物質を含む。
【0031】
任意で、押出成形可能なゲルに、アルギネートグリコール(例えばエチレングリコールアルギネートあるいはプロピレングリコールアルギネート)のようなアルギン酸エステルが含まれていてもよい。これにより、製品の強度、特に湿潤強度が増すことが知られている。このような強度の向上は、バーストハイト保持値(Burst Height Retention value)や縦方向の (MD;machine direction)湿潤せん断強度測定において検出される。一般的に、アルギン酸エステルは、ゲル中に1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで(フィルム中においては、通常20重量%まで、好ましくは10重量%までに相当する)存在する。ゲル中や製品中におけるコラーゲンとアルギン酸エステルの比は一般的に重量比で95:5〜75:25の範囲である。
【0032】
その他の望ましい既知の添加剤(例えばフレーバー(風味料)、着色剤、香辛料)と共に、グリセロール及びソルビトールのような湿潤剤を含む他の添加剤が含まれていてもよい。湿潤剤は、乾燥重量基準で10〜45%、好ましくは15〜45%(例えば15〜45%、あるいは10〜40%)加えられることが望ましい。保湿剤は、グリセロール、ソルビトールあるいはそれらの混合物からなる。セルロースは、ケーシングやフィルムの張力の収縮を改善するために含まれていてもよい。またゲルは、コラーゲンフィルムの架橋に効果的でそれによって強度を増加させる、小量のグルタルアルデヒド、グリオキザル、燻煙液、または多価陽イオン(アルミニウム等)のような架橋剤を含んでいてもよい。アルミニウムイオンはまた最終生成物を防水処理する。しかしながら、強度を増大させると、弾力性が減少する。ゲルはその後、均質化され、ろ過され、押出成形前に静置される。
【0033】
一般的にゲルのコラーゲン固形分含有量は、2〜20重量%、好ましくは2.5〜7重量%である。最終生成物のコラーゲン固形分含有量は通常50〜70重量%(大体60重量%)である。
【0034】
ゲルを押し出してフィルムを形成するには、通常スロット押出成形機を通して実行され、押し出された材料は、通常支持ベルト上に塗布される。湿った状態での厚さは0.2〜5mmである。押出成形されたフィルムはさらに塩浴(例えば、塩化ナトリウムまたは硫酸アンモニウム溶液)、アルカリ浴(例えば、炭酸ナトリウム)またはグルタルアルデヒド溶液などの液体凝固剤で処理して、フィルムを凝固させてもよい。アンモニアガスなどの気体のアルカリを用いて凝固してもよい。これらの処理は生成物の乾燥工程の前に行っても後に行なってもよい。
【0035】
管状のケーシングを形成する押出成形は、環状の打ち抜き型を通して行うこともできる。押出成形されたコラーゲンは公知の方法で加工されケーシングに形成される。
コラーゲンゲルはまた、共押出成形装置において直接ソーセージ肉またはその他の詰め物の上に押し出される。
【0036】
本発明は、また脱脂されたペーストから形成したコラーゲンゲルや、ゲルから形成された押出成形された製品(フィルムやケーシングなど)にも適用できる。また、ゲルを用いた共押出成形方法や共押出成形製品にも適用できる。
【実施例】
【0037】
本発明の実施例を単なる例示として述べる。
【0038】
(1)サイズの縮小/脱脂
原材料は、通常、毛を焼かれ、熱湯消毒され、はぎ取った新鮮な豚皮である。典型的な切断/脱脂の工程は、次のいくつかあるいはすべての工程を含んでもよい。
【0039】
1.一斉サイズ縮小と予備脱脂
機械的な分離機を使用する一斉サイズ縮小と予備脱脂について以下に記載する。
おおよそ25〜40%の脂肪を除去し、その結果、コラーゲンと脂肪の比が1:1の皮片を得る。
脂肪の少ない背中の皮片(おおよそ45cmx20cm)は、直接地方の解体工場から入手した。皮片は、肉片から円錐脂肪の底面近くで切り、皮下脂肪をできるだけ少なくした。出発原料での脂肪含有量が多くても最終生成物に大きな影響はない(常に1:1〜2:1の範囲内である)。皮片を冷蔵庫から取り出し、1時間に1トンの速さで、数バッチで15トンを直接分離機(Poss mechanical separator;ポス・デザイン・リミテッド社製)のフィード・ホッパーに供給した。分離機の絞り弁本体は、スクリーンを通過する原料の量をコントロールするよう手動で調整された。脂肪の少ない背中の皮片を原料として、最初のバッチの重量の約33%が除去され、その大多数が脂肪であった。分離機に投入された皮片と最終生成物の間には16℃の温度上昇が観測された。皮片の大きさは、この工程中に、通常2〜42cm2の間で変化し、脂肪の水準は湿重量基準で15.5%減少した。最初の皮片と比較して、残留脂肪は、円錐脂肪中よりむしろ、圧倒的に外皮上にあった。皮片のコラーゲン含有量は、水からなる残留物の28%程度であった。分離機により、コラーゲンと脂肪の比が1:1まで脂肪含有量を減少することができた。
【0040】
図1は、豚皮片(pieces of pig rind)を脱脂するのに適したメカニカル・セパレータの正面概略図である。このセパレータは、豚皮片を受けるためのフィード・スクリュー1、豚皮片(pork rind)を小片に切断するためのナイフ部2、セパレータ・ヘッド22、液体状となった脂肪混合物が通過し排出される有孔膜3、及び脱脂された豚皮片のための排出口4から成る。
【0041】
さらに詳細には、このセパレータはドライブ・モーター10から成り、ドライブ・モーター10はベルト・ドライブ12を動かし、このベルト・ドライブ12はリダクション・ギア14を経由し、フィード・スクリュー1を順番に回転させる。フィード・スクリュー1は回転可能な状態で外部ケーシング16の中に取り付けられている。
【0042】
外部ケーシング内のフィード・ホッパー18に投入された豚皮片は、フィード・スクリューにより豚皮片を細かく切断するためのナイフ部2へと運ばれる。切断された小片は円錐型のセパレーション・スクリュー20から成るセパレーション・ヘッド22に入る。有孔膜を備えたセパレーション・スクリュー20の環状の隙間は順方向に向かって減少しているので、小片が加圧され、有孔膜を通して脂肪の混合物が強制的に外に押し出される。脱脂された小片はセパレータ・スクリューを通して運ばれ、排出口4より排出される。
【0043】
2.化学的脱脂
残余脂質は、例えば、Tween80のような水性洗浄剤を使用することで効率的に減らすことができる。脱脂された豚皮片(rind)の小片は水(豚皮片(rind)の100〜500重量%相当の水)が入った容器に入れられる。洗浄剤脱脂は0.2%の濃度で行うのが効果的であり、さらに温度を18〜30℃の間とするとより効果的である。脱脂を繰り返し、できるだけ脂質を除去する。脱脂された豚皮片(rind)は3〜4回水(豚皮片(rind)の100〜500重量%相当の水)ですすぎ洗いされる。豚皮片(rind)の小片が含んでいるコラーゲンの割合は、通常、脂質に対して10:1〜30:1の割合である。この最終的な水洗浄は、脱脂コラーゲンの保存期間を延ばすための処理と置き換えてもよく、例えば、クエン酸塩緩衝剤等の、食品に用いるのに適した緩衝剤を用いてpHを中和(pH5またはそれ以下)しても良い。
それに代えて、豚皮片の小片は、石灰(1-1%)などのアルカリで処理してもよい。さらに場合によっては脂質の水準を減らしたり、コラーゲンの構造を広げたり、保存期間を延ばすためにリパーゼ(0.4-1%)および洗剤(0.2+%)を添加してもよい。この方法で処理された豚皮片の小片は、一般的にpH4〜6に中和され、前記したように洗浄される。
【0044】
2)コラーゲンゲルの製造
実施例:A(豚皮片(rind)と雌豚の皮(sowskin))
a)前記した機械的作業及び化学洗浄により、新鮮な豚皮片(rind)の小片を脱脂した。
b)これらの豚皮(rind)の小片を8mm角の雌豚皮(sowskin)の小片と40:60の比率で混ぜ合わせ、まずミンチ用マシーンで、次にプレートミルを用いて崩壊させ、繊維状のペーストを製造した。
c)次いで、このペーストをセルロース及び酸の混合物と共に混ぜ合わせ、下記の組成からなる膨潤水溶液ペーストを形成した。
【0045】
コラーゲン 4.37%
塩酸 0.209%
セルロース 0.871%
脂質 0.23%
【0046】
【表1】

【0047】

【0048】
最終ケーシングソーセージの特性
重量47g、呼び径26mm、長さ100mmの鎖状ソーセージ(links)を製造するため、各製品を15mmの管とチャックアセンブリを備えたPAL 52真空充填機を用いて詰め込んだ。全ての場合において、ソーセージは隙間無くしっかり充填されるよう注意を払った。本試験には、標準的なイギリスの朝食用粗挽きポークソーセージのレシピが用いられた。
驚いたことに、豚皮(Pork rind)を含む新しいケーシングから製造されたソーセージは、雌豚の皮(sowskin)100%のケーシングや、牛皮(bovine)100%のケーシングを用いたものと比べても、少量の油で炒めたり、焼いたり、フライにした際に、遜色ない結果が得られた。
【0049】
実施例:B
a)前記した機械的作業と化学洗浄、さらにリパーゼの添加による石灰処理により、新鮮な豚皮(rind)の小片を脱脂した。
b) これらの豚皮(rind)の小片を8mm角の雌豚皮(sowskin)の小片と40:60の比率で混ぜ合わせ、まずミンチ用マシーンで、次にプレートミルを用いて崩壊させ、繊維状のペーストを製造した。
c)このペーストをセルロース及び酸の混合物と共に混ぜ合わせ、下記の組成からなる膨潤水溶液ペーストを形成した。
【0050】
コラーゲン 4.57%
塩酸 0.206%
セルロース 1.03%
脂質 0.41%
【0051】
1.このペーストを乳製品用のホモジナイザーにより均質化し、粘着性で滑らかな膨潤ゲルを製造した。
2.このゲルを押出成形し、同時にアンモニア・ガス・チェンバーへ収容された連続支持ベルト上で、環状押出成形機により空気で膨張させ、湿壁の厚みを0.4mmとした。
3.管状に凝固したケーシングを水浴に通して残存している塩分を取除き、更にグリコールを含む浴を通過させてケーシングを柔らかくした。
4.柔らかくしたケーシングを、膨張したままの状態で、マルチゾーンドライヤーを用いて60〜120℃の温度範囲で乾燥させた。
5.得られた呼び径26mmの乾燥管状ケーシングに、ひだ付け装置を使用してひだ付け加工した。
6.ひだ付け加工後、パッキングする前にケーシング湿分を約20%に増加させ、測定重量が2.6g/mとなるようにした。
【0052】

【0053】

【0054】
最終ケーシングソーセージの特性
重量47g、呼び径26mm、長さ100mmの鎖状ソーセージ(links)を製造するため、各製品を15mmの管とチャックアセンブリを備えたPAL 52 真空充填機を用いて詰め込んだ。
全ての場合においてソーセージは隙間無くしっかり充填されるよう注意を払った。本試験には、標準的なイギリスの朝食用粗挽きポークソーセージのレシピが用いられた。
驚いたことに、石灰処理を行った豚皮(limed Pork rind)を含む新しいケーシングから製造されたソーセージは、雌豚皮(sowskin)100%のケーシングや牛皮(bovine)100%のケーシングを用いたものに比べても、少量の油で炒めたり、焼いたり、フライにした際に遜色ない結果が得られた。加えて、この製品の引張特性は石灰未処理の豚皮(non-limed rind)に比べても卓越していた。
【0055】
実施例:C(セルロースを含むもの)
a)前記した機械的作業と化学洗浄により、新鮮な豚皮(rind)の小片を脱脂した。
b)これらの豚皮(rind)の小片を、まずミンチ用マシーンで、次にプレートミルを用いて崩壊させ、繊維状のペーストを製造した。
c)このペーストをセルロースと酸の混合物に混ぜ合わせ、下記の組成からなる膨潤水溶液ペーストを形成した。
【0056】
コラーゲン 4.90%
塩酸 0.21%
セルロース 1.115%
脂質 0.1%
【0057】
1.このペーストを乳製品用のホモジナイザーにより均質化し、粘着性で滑らかな膨潤ゲルを製造した。
2.このゲルを押出成形し、同時にアンモニア・ガス・チェンバーへ収容された連続支持ベルト上で、環状押出成形機により空気で膨張させ、湿壁の厚みを0.4mmとした。
3.管状に凝固したケーシングを水浴に通して残存している塩分を取除き、更にグリコールを含む浴を通過させてケーシングを柔らかくした。
4.柔らかくしたケーシングを、膨張したままの状態で、マルチゾーンドライヤーを用いて60〜120℃の温度範囲で乾燥させた。
5.得られた呼び径26mmの乾燥管状ケーシングに、ひだ付け装置を使用してひだ付け加工した。
6.ひだ付け加工後、パッキングする前にケーシング湿分を約20%に増加させ、測定重量が2.6g/mとなるようにした。
【0058】

【0059】

【0060】
最終ケーシングソーセージの特性
重量47g、呼び径26mm、長さ100mmの鎖状ソーセージ(links)を製造するため、各製品を15mmの管とチャックアセンブリを備えたハンドマン社(Handtmann)のVF80真空充填機を用いて詰め込んだ。全ての場合において、ソーセージはしっかり充填されるよう注意を払った。本試験には標準的なイギリスの朝食用粗挽きポークソーセージのレシピが用いられた。
製造されたケーシングは透明度が高く、少量の油で炒めたり、焼いたり、フライにした際の調理性にも優れていた。
【0061】
実施例:D
a)前記した機械的作業と化学洗浄により、新鮮な豚皮(rind)の小片を脱脂した。
b)これらの豚皮(rind)の小片を、まずミンチ用マシーンで、次にプレートミルを用いて崩壊させ、繊維状のペーストを製造した。
c)このペーストを酸と混ぜ合わせ、下記の組成からなる膨潤水溶液ペーストを形成した。
【0062】
コラーゲン 4.495%
塩酸 0.207%
脂質 1.5%
【0063】
1.このペーストを乳製品用のホモジナイザーにより均質化し、粘着性で滑らかな膨潤ゲルを製造した。
2.このゲルを押出成形し、同時にアンモニア・ガス・チェンバーへ収容された連続支持ベルト上で、環状押出成形機により空気で膨張させ、湿壁の厚みを0.4mmとした。
3.管状に凝固したケーシングを水浴に通して残存している塩分を取除き、更にグリコールを含む浴を通過させてケーシングを柔らかくした。
4.柔らかくしたケーシングを、膨張したままの状態で、マルチゾーンドライヤーを用いて60〜120℃の温度範囲で乾燥させた。
5.得られた呼び径26mmの乾燥管状ケーシングに、ひだ付け装置を使用してひだ付け加工した。
6.ひだ付け加工後、パッキングする前にケーシング湿分を約20%に増加させ、測定重量が2.6g/mとなるようにした。
【0064】

【0065】

【0066】
最終的なケーシングソーセージの製造
重量47g、呼び径26mm、長さ100mmの鎖状ソーセージ(links)を製造するため、各製品を15mmの管とチャックアセンブリを備えたハンドマン社(Handtmann)のVF80 真空充填機を用いて詰め込んだ。全ての場合において、ソーセージはしっかり充填されるよう注意を払った。本試験には、標準的なイギリスの朝食用粗挽きポークソーセージのレシピが用いられた。製造されたケーシングは押出成形後の透明度が優れていた。
【0067】
実施例E(ケーシングの製造)
a)前記した機械的作業と化学洗浄により、新鮮な豚皮(rind)の小片を脱脂した。
b)これらの豚皮(rind)の小片をミンチ用マシーンを用いて崩壊させ、繊維状のペーストを製造した。
c)このペーストをセルロースと酸の混合物と混ぜ合わせ、下記の組成からなる膨潤水溶液ペーストを形成した。
【0068】
コラーゲン 4.5%
塩酸 0.17%
セルロース 0.9%
脂質 0.45%
グルタルアルデヒド コラーゲン重量基準にて350ppm
【0069】

【0070】

【0071】
最終的なケーシングソーセージの製造
この生産物は、段の付いた12mmの管とチャックアセンブリを備えたハンドマン社(Handtmann)のALPLHマシーンを用いて1分間に400個の鎖状ソーセージ(links)が詰められ、吊り下げユニットに6リンク毎に輪にして吊された。
重量50g、呼び径23.5mm、長さ120mmの鎖状ソーセージ(links)が製造された。ソーセージはしっかり充填され、いずれも破けることのないよう注意を払った。ソーセージの中身としては典型的な台湾スタイルのものが用いられた。充填が終わり、6リンクの長さで輪にされたソーセージは、以下の異なる方法に従って処理された。
【0072】
方法1:
段階 時間 %相対湿度 温度(℃)
1-蒸し工程 15 100 70
2-蒸し工程 15 100 75
3-冷却工程 10 シャワー
【0073】
方法2:
段階 時間 %相対湿度 温度(℃)
1-乾燥工程 10 50 60
2-蒸し工程 15 100 70
3-蒸し工程 15 100 75
3-冷却工程 10 シャワー
【0074】
全てのソーセージは、どちらの工程においても破れたり裂けたりすることがなく、順調に加工できた。
これらのソーセージはローラーグリル上で温度約160℃で40分間再加熱され、そして70〜90℃のローラーグリル上で保温された。
これらの調理済みソーセージには裂け目や損傷は見受けられず、本出願の製造方法を用いれば、市販の製品に匹敵するほどの望ましい柔らかさを持った皮の製造が可能であると判断された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の豚皮(pig rind)の小片を脱脂するのに適したメカニカル・セパレータの正面概略図である。
【符号の説明】
【0076】
1 フィード・スクリュー
2 ナイフ部
3 有孔膜
4 排出口
10 ドライブ・モーター
12 ベルト・ドライブ
14 リダクション・ギア
16 外部ケーシング
18 フィード・ホッパー
20 セパレーション・スクリュー
22 セパレータ・ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
獣類、哺乳類、鳥類あるいは魚皮から摂取される天然コラーゲンを準備し、
そのコラーゲンを小片に切断し、
そのコラーゲン片を加圧し脂肪分を搾り出し、脱脂コラーゲン片を製造し、
その脱脂コラーゲン片を分解し、繊維状のペーストを形成することを含む脱脂コラーゲンペーストの製造方法。
【請求項2】
コラーゲンが豚皮(pig skin)由来である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
コラーゲンが豚皮片(pig rind)由来である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
豚のコラーゲンペースト中に含まれる脂肪分が、乾燥重量基準で20%以下である請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
ペーストに含まれるコラーゲンと脂肪の比が10以上:1である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ペーストに含まれるコラーゲンと脂肪の比が20以上:1である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ペーストに含まれるコラーゲンと脂肪の比が、25:1〜50:1の範囲である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
天然コラーゲンが豚のコラーゲンであり、10%以下の羊、鶏、鳥類、魚類由来のコラーゲンを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
豚コラーゲンが子豚及び雌の成豚由来のものであり、20〜80%の子豚のコラーゲンを含む、先行するいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
コラーゲンが1〜100cm2の大きさの小片に切断される、先行するいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
スクリューコンベヤ内でコラーゲン片から脂肪分を搾り出す、先行するいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
脱脂された小片は、まずみじん切りにされ、その後崩壊される、先行するいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項13】
さらにアルカリ処理により脂肪を取り除く、先行するいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項14】
先行するいずれかの請求項に従い製造した脱脂コラーゲンペーストを膨潤させることを含む押出成形可能なコラーゲンゲルの製造方法。
【請求項15】
さらにアルギネートグリコールの添加を含む請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
さらに保湿剤の添加を含む請求項14または15に記載の製造方法。
【請求項17】
さらにセルロースの添加を含む請求項14、15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
さらに凝固剤の添加を含む請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
ゲルのコラーゲン固形分含有量が、2〜20重量%の範囲である請求項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれかによって製造されたゲルを押出成形することにより製造されるコラーゲン製品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−520799(P2009−520799A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546639(P2008−546639)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004932
【国際公開番号】WO2007/072064
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503364490)
【Fターム(参考)】