説明

脱臭・脱色処理用組成物

【課題】土壌中に極めて多量に貯えられている天然炭素(所謂、黒ボク土)と、入手が容易な籾殻クン炭とを混合して得られる混合組成固形物の優れた吸収性、吸着性を可及的に減退させず、あるいは稀釈させず効率的に空気などの気体並びに水などの液体を処理するのに利用する脱臭・脱色処理用組成物を提供するものである。
【解決手段】天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)とを主成分とし、前記天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなること、この混合物に骨材を混入すること、接合剤が、無機質接合剤あるいは有機質接合剤であることを特徴とする脱臭・脱色処理用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気などの気体あるいは水などの液体に対する脱臭・脱色処理を目的として、例えば、ペレット状に成形した成形体を供するための組成物に関するものであり、特に、天然腐植黒色粘土(黒ボク土)と籾殻クン炭との混合物を主成分とし、これを有機系または無機系の接合剤で接合し、必要に応じて添加剤を混合ないしは混練してなる脱臭並びに脱色処理用組成物に関するものである。
【0002】
この発明になる脱臭・脱色処理用組成物は、空気脱臭剤、特に水などの液体処理剤、産業用並びに工業用処理剤、上水用並びに下水用処理剤、畜産用処理剤、あるいは、家庭用の各種脱臭剤並びに各種脱色剤などとして、極めて広い範囲にわたって適用することができる脱臭・脱色処理剤であって、優れた脱臭性並びに脱色性を有し、汚濁物質の除去に極めて高い性能を有するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の脱臭剤としての主流技術は、活性炭(木炭)を用いるものであって、植物性原料から人工的に合成されるものであり、それらは、水蒸気賦活法あるいは塩化亜鉛賦活法により製造されているものである。しかしながら、この脱臭剤の主成分として用いられている活性炭については、国内産の原料が極めて乏しく、その殆どが輸入に依存する現状である。一方、諸外国においても、森林伐採などの環境破壊の問題により、現在においては、その輸入も大変困難になっている。従って、上水並びに下水処理場などのように、当該活性炭を比較的大量に使用する様な場合においては、高価な活性炭を省くことができれば経済的にも極めて有利である。
【0004】
そこで、本発明者は、上記する入手困難で、且つ、経済的に不利な従来の活性炭(木炭)による脱臭剤に代えて、上記するこの発明になる天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)を主成分とする混合物による脱臭・脱色処理用組成物の研究開発に邁進し、その過程において、従来の活性炭の脱臭並びに脱色性能特性と、この発明になる天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)との混合組成物による脱臭並びに脱色性能特性とを対比するべく、各種試験を行い、詳細に比較検討した。
【0005】
まず、従来の脱臭剤としての活性炭の場合は、臭気物質や着色物質が吸着し始めると迅速に飽和点に達してしまい、吸着能力が急激に低下し、逆に、吸着された物質が表面から脱着され臭気発生や被処理物の再着色の原因となり易いことが判明した。さらに、この活性炭は、脱臭容量および脱色容量(飽和点)が、天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)との混合組成物のそれと比較して格段に低い。従って、この発明になる天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)とを主成分とする混合組成物が、上記する公知の水浄化剤(液体処理剤)によって長期安定、吸着、脱臭、脱色性能が達成され、尚かつ低廉化が達成されるとの確信を得た。
【特許文献1】特許第3328439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、上記する従来技術の問題点を解消すべくなしたものであって、特に重要な要素は、土壌中に極めて多量に貯えられている天然炭素(所謂、黒ボク土)と、入手が容易な籾殻クン炭とを混合して得られる混合組成固形物の優れた吸収性、吸着性を可及的に減退させず、あるいは稀釈させず効率的に空気などの気体並びに水などの液体を処理するのに利用する脱臭・脱色処理用組成物を提供するものである。
【0007】
さらに、この発明は、上記脱臭・脱色処理用組成物から製造される種々の態様(固形状に成形された脱臭脱色処理用固形材、ペレット状に成形された脱臭脱色処理用ペレット材、シート状に成形された脱臭脱色処理用シート材、フィルタ状に成形された脱臭脱色処理用フィルタ材など)でなる長い有効寿命を有する脱臭脱色剤並びにその多様な用法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)とを主成分とし、天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用組成物を構成するものである。
【0009】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脱臭・脱色処理用組成物であって、前記天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなる混合物に骨材を混入してなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の脱臭・脱色処理用組成物であって、前記接合剤が、無機質接合剤であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明において請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の脱臭・脱色処理用組成物であって、前記接合剤が、有機質接合剤であることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明において請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を固形状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用固形材を構成するものである。
【0013】
さらに、この発明において請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物をペレット状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用ペレット材を構成するものである。
【0014】
さらに、この発明において請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を顆粒状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用顆粒材を構成するものである。
【0015】
さらに、この発明において請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を適宜スラリーないし易動性ペーストの形でウエーブ基材に塗布ないし含浸させ乾燥してシート状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用シート材を構成するものである。
【0016】
さらに、この発明において請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物をフィルタ状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用フィルタ材を構成するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明になる脱臭・脱色処理用組成物は、天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)とを主成分とし、天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなるものであり、且つ、必要に応じて当該天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなる混合物に骨材を混入してなるものであり、多量に存在する素材並びに入手が容易な素材によって構成されるものであって、多量生産に適合し、且つ、経済的にも極めて有利に作用するものといえる。
【0018】
さらに、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物は、空気脱臭剤、特に水などの液体処理剤、産業用並びに工業用処理剤、上水用並びに下水用処理剤、畜産用処理剤、あるいは、家庭用の各種脱臭剤並びに各種脱色剤などとして、極めて広い範囲にわたって適用することができる脱臭・脱色処理剤であって、優れた脱臭性並びに脱色性を有し、汚濁物質の除去に極めて高い性能を有するものであり、それらの点において極めて有効に作用するものといえる。
【0019】
さらにまた、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物を各種態様に成形することによって、固形状に成形してなる脱臭脱色処理用固形材、ペレット状に成形してなる脱臭脱色処理用ペレット材、シート状に成形してなる脱臭脱色処理用シート材、フィルタ状に成形してなる脱臭脱色処理用フィルタ材などの脱臭脱色剤を供し、且つ、その多様な用法に供し得る点においても極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
この発明になる脱臭・脱色処理用組成物は、天然炭素(黒ボク土)と籾殻クン炭とを混合したものを主成分とし、これに接合剤を混合したものからなっている。この天然炭素(黒ボク土)および籾殻クン炭は、古くから発芽床剤や育苗床剤、土壌改良材などの農業資材として広く利用されてきたものである。上記クン炭については、当該クン炭を苗代内に散布しておくと、該苗代内の水が透明化することがわかった。また、天然炭素については、当該天然炭素が、上水、下水処理施設、産業用、工業用、家庭用の臭気除去に極めて効果的なものである。
【0021】
この発明において、前記接合剤は、例えば、セメントなどの無機質接合剤、あるいは、樹脂、糊などの有機質接合剤である。
【0022】
これらの特性に鑑みて構成される天然炭素(黒ボク土)と籾殻クン炭との混合物を濾過剤として、水中から強い臭気を発する汚水に対して処理すると、極めて顕著な臭気の除去と、同時に汚水のBOD、COD値を大幅に低減させる効果が認められた。そこで、この天然炭素(黒ボク土)と籾殻クン炭を用いて、ガス液および染色排水中の着色物質の除去効果を研究検討した。
【0023】
この発明に使用した天然炭素(黒ボク土)と籾殻クン炭の真比重、比表面積を表1に示し、天然炭素(黒ボク土)の粗径分布を図1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
次いで、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物の性状を実験するための実験方法について説明する。図2は、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物の性状を実験するための実験装置の概要を示すものであって、図2Aは、凝集実験のための凝集実験装置1を示すものであり、当該凝集実験装置1は、栓付きシリンダー2を含むものからなっている。図2A中、参照符号3は、試料液滴下手段を示すものであり、当該試料液滴下手段3により栓付きシリンダー2内に収容された試料水4は、その下部側において沈降凝集層5を形成し、その上部側において浮上(上澄み)凝集層6を形成する。
【0026】
一方、図2Bは、濾過実験のための濾過実験装置11を示すものであり、当該濾過実験装置11は、ガラスカラム12を含むものからなっている。試料水供給手段13により試料水がガラスカラム12内に供給され充填層14を形成する。ガラスカラム12の上部側および下部側にガラスウール15、16が配置してあり、図2B中、参照符号17は、濾過済み試料の回収ビーカーを示すものである。
【0027】
1.実験方法
(1)凝集効果
図2Aに示す凝集実験装置により、室温条件(20℃)下で内径2.5cm、長さ25cmの栓付きシリンダーに試料水100mlおよび20ml添加し、添加直後から30分、60分、90分および24時間後について、生成した凝集層の厚さを測定した。
次いで、凝集効果によって生成した沈降または浮遊SS(懸濁物質)を、濾紙で濾別(定量5A)上のSSを105℃で乾燥し、秤量した。さらに、濾液については蒸発乾固による溶解性SS量を測定した。また、上澄み液のpH値、COD値および吸光度を測定した。COD値の測定は、JIS K0101に基づく過マンガン酸カリ法で、吸光度の測定には、それぞれの試料水が示す最大吸収波長について分光光度計(島津分光光度計、UV-12002)を用いて測定し、上澄み液のpH値は、pHメータにより測定した。
【0028】
(2)脱色効果
図2Bに示す濾過実験装置により、内径2.0cm、長さ25cmのガラスカラムにクン炭、黒ボク土および両者の混合物を50ml/min(線速度0.26cm/min)で室温条件(20℃)下で通過させた。色度の測定は、試料水と濾過処理水について吸光度の測定で行い、着色物質の除去効果を検討した。吸光度は、各試料について最大吸収波長について分光光度計を用いて測定し、試料水の吸光光度測定は、通水の開始から一定の時間毎に行った。また、この実験では、クン炭および黒ボク土中に存在する微生物による対象物質の補足と分解による変質効果を期待することから、実験に先立ってグルコース0.01%液10リットルを10ml/minで透過させて、カラム内の微生物相の繁殖を図った。
【0029】
2.測定結果並びに考察
(1)凝集剤(S−L)の効果
S金属(株)のガス液原水について凝集剤(S−L)の添加量を変え、経時的に測定した凝集層の生成状況を表2に示す。凝集液を添加すると、直ちに懸濁質の凝集が起こるが、凝集物は液の表面に浮上するものと底部に沈降するものに分かれ、容積比では前者1に対して後者がほぼ3の割合となる。このことは添加した凝集液中の成分の種類によって比重の異なった凝集物やコロイドが生成することを示している。
凝集液の添加量を増やすにつれて凝集懸濁質の生成量が増加する傾向がみられるが、添加する凝集液中に含まれる金属類の反応物の生成も考えられることから、必ずしもその全部がガス液の濁質とはみなしにくい。また、凝集液の添加直後から24時間後までの凝集について測定したが、本凝集剤によるガス液中の濁質の凝集は、添加から60分でほぼ完了するものと認められた。
この凝集剤はきわめて強い酸性(pH 1.5)を呈することから、その添加量の増加によって、ガス液のpHは、強アルカリ性(pH 約9)から急速に酸性側に移行し、添加量が容積比え20%になるとpH=1.8と強酸性を示す。また、この凝集剤の添加による上澄み水のCOD値をみると、添加率1.2〜5.8%ではCOD値は原水(3.900mg/l)と同程度で、添加率11〜20%でCOD値が26〜36%減少することが認められた。
【0030】
【表2】

【0031】
凝集剤の添加によって生成した沈降物を濾紙で濾別した後、105℃で乾燥、秤量して求めたSS量および上澄み水を蒸発乾固の後秤量して求めた溶解性SS量の値は表中に示すとおりで、沈降SS量は凝集剤の増加につれて増大する。これに対して溶解性SS量は、添加量が3ml(容積比3.6%)まで減少することが、さらに添加量を増やすと溶解性SS量が増加する。これは、凝集剤中に溶存する多量の金属塩の影響によるものと考えられる。
【0032】
この実験において、濃厚な暗褐色を呈するS金属(株)のガス液原水に鉱物系抽出液である凝集剤(S−L)を添加することによって、溶存濁質の顕著な凝集効果が認められ、同時に液中の着色物質の除去もみられたことから、本液の添加による脱色効果を測定した。
【0033】
すなわち、ガス液を透過する光の波長を変えて検討したところ、450nmが最大吸収波長となることが認められた。そこで、この波長の光を照射し、その透過率の変化で脱色効果をあらわすと表2に示すとおりの結果が得られた。表2中の値は、蒸留水での光透過率を100%として示したもので、S金属(株)のガス液原水では、光透過率が4.7%と非常に小さく、その着色の程度が非常に濃厚であることを示している。
【0034】
ガス液原水に凝集剤を添加すると、溶解性SSの除去とともに着色物質も同時に除去されることが認められるが、表2にみられるように、その効果は、光透過率で30〜40%と低く、上澄み水は依然として明らかな暗褐色または褐色を呈しており、この凝集剤成分は、それらの着色物質に対する凝集効果が小さく、本液の添加のみでガス液の着色を除去することが不十分であると認められた。
【0035】
(2)メチレンブルー液の脱色
クン炭および黒ボク土は、広い範囲のガス状物質や水中溶存物質の除去に有効で、汚濁河川水の濾過処理で著しい透明度の向上が得られている。そこで、これの着色水の脱色に対する応用性について検討した。
【0036】
実際の事業場の着色排水に適用する前に予備実験としてメチレンブルー液に対する脱色効果を測定した。すなわち、クン炭、クン炭と黒ボク土の混合物(体積比3:1)各100mlを充填したガラスカラム(cm/sec)で通過させ、カラムの出入口で経時的に採取した試料水の光透過率を分光光度計で測定した。なお、着色液のメチレンブルー液(5万倍液)の最大吸収波長は667mmで、この波長について測定を行った。また、着色水の脱色には、従来から活性炭粒子による濾過法が広く利用されていることから、この実験においても対照として市販粒状活性炭(40〜60mesh)について、同様の手順で測定した。
【0037】
この実験の結果は、図3に示すとおりで、粒状活性炭では通水開始直後から光透過率40%で、着色除去効果が非常に低いことが認められる。これに対して、クン炭およびクン炭と黒ボク土の混合物の除去効果は非常に優れており、後者では通水開始から約30分(通水量15リットル)での着色除去率は、ほぼ90%を示すことが認められた。
【0038】
また、混合物の場合には、約700分後(35リットル通過)においても、なお光透過率が85%と高い。このことは、混合物の黒ボク土中に存在する微生物による捕捉メチレンブルーの分解作用あるいは土壌成分との結合とも考えられるが、除去機構の詳細については今後の検討が必要である。
【0039】
(3)S金属(株)ガス液の着色除去
S金属(株)のコークス濾ガス洗浄水(安水)について、上記と同様の方法でクン炭、クン炭と黒ボク土の混合物および粒状活性炭による着色除去効果を測定した。その結果をガス液の原水について図4に、また、ガス液の活性汚泥法による処理水について図5に示す。なお、ガス液について、最大吸収波長を検討したところ、350nmであったことから、光透過率の測定は、この波長について行った。
【0040】
ガス液を活性炭濾過した場合の光透過率は、通水の開始直後から50%で、30分後(通水量1.5リットル)で20%に低下しており、ガス液の暗褐色の原因となっている着色物質に対する除去効果が非常に小さいことを示し、クン炭と黒ボク土の混合物では、通水開始から約50分(通水量2.5リットル)で透過率は80%以上と高い除去率を示すものである。
【0041】
また、クン炭では、通水量の増加につれて透過率が急速に低下するが、混合物充填の場合での低減傾向はかなりゆるやかであり、150分後(7.5リットル通過)においても35%と活性炭処理の初期と同程度を示している。このような減少傾向の違いは、前記メチレンブルーの場合と同様に黒ボク土中に存在する微生物の分解作用や土壌成分による効果とも考えられるが、詳細については今後の課題である。
【0042】
ガス液を冷却水で3〜4倍稀釈した後、処理された活性汚泥処理水(廃安水)の場合には、活性炭濾過でもかなり高い脱色効果が認められる。すなわち、通水開始から80分(通水量4リットル)で透過率は80〜84%と高い。しかし、活性炭処理では、通水量の増加につれて透過率が急速に低下し、120分(通水量6リットル)で透過率は25%以下を示した。これに対して、クン炭およびクン炭と黒ボク土の混合物の場合には、活性炭よりも優れた除去効果が認められた。
【0043】
(4)COD除去効果
各事業場排水中の着色物の除去に用いた粒状活性炭と、黒ボク土+クン炭の混合物とについて、各試料排水のpHおよびCOD値の変化を測定した。その結果は、表3に示すとおりである。この実験は、添加量3.6%、通水開始から10分後に測定(通水速度L/20min、0.26cm/sec)で行われた。
【0044】
表3に示すように、各事業場排水中の着色物の除去に関して、活性炭濾過によるCOD除去率は、約39%であり、黒ボク土+クン炭の混合物濾過によるCOD除去率は、約70%以上であり、この発明になる黒ボク土+クン炭の混合物を用いた濾過によるCOD除去率が極めて顕著である。
【0045】
【表3】

【0046】
この発明では、上記するような構成でなる脱臭・脱色処理用組成物を用いて、以下に示すような多様な形態の脱臭・脱色処理材を成形することができる。
(1)脱臭・脱色処理用組成物を固形状に成形してなる脱臭・脱色処理用固形材。
(2)脱臭・脱色処理用組成物をペレット状に成形してなる脱臭・脱色処理用ペレット材。
(3)脱臭・脱色処理用組成物を顆粒状に成形してなる脱臭・脱色処理用顆粒材。
(4)脱臭・脱色処理用組成物を適宜スラリーないし易動性ペーストの形でウエーブ基材に塗布ないし含浸させ乾燥してシート状に成形してなる脱臭・脱色処理用シート材。
(5)脱臭・脱色処理用組成物をフィルタ状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用フィルタ材。
などであり、それぞれの形態に応じた多くの使用態様を供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、この発明になる脱臭・脱色処理用組成物に使用される天然炭素(黒ボク土)の粗径分布を示すグラフである。
【図2】図2は、脱臭・脱色処理用組成物の性状を実験するための実験装置の概要を示すものであって、図2Aは、凝集実験のための凝集実験装置の概要を示す説明図であり、図2Bは、濾過実験のための濾過実験装置の概要を示す説明図である。
【図3】図3は、メチレンブルー液(5万倍液)に対する脱色効果を測定したものであり、経過時間(分)ごとの光透過率(%)を示すグラフである。
【図4】図4は、S金属(株)ガス液原水に対する脱色効果を測定したものであり、経過時間(分)ごとの光透過率(%)を示すグラフである。
【図5】図5は、S金属(株)ガス液処理水に対する脱色効果を測定したものであり、経過時間(分)ごとの光透過率(%)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 凝集実験装置
2 栓付きシリンダー
3 試料液滴下手段
4 試料水
5 沈降凝集層
6 浮上(上澄み)凝集層
11 濾過実験装置
12 ガラスカラム
13 試料水供給手段
14 充填層
15、16 ガラスウール
17 濾過済み試料の回収ビーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然炭素(黒ボク土)とクン炭素(籾殻)とを主成分とし、前記天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用組成物。
【請求項2】
前記天然炭素およびクン炭素と接合剤とを混合してなる混合物に骨材を混入してなることを特徴とする請求項1に記載の脱臭・脱色処理用組成物。
【請求項3】
前記接合剤が、無機質接合剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱臭・脱色処理用組成物。
【請求項4】
前記接合剤が、有機質接合剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱臭・脱色処理用組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を固形状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用固形材。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物をペレット状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用ペレット材。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を顆粒状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用顆粒材。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物を適宜スラリーないし易動性ペーストの形でウエーブ基材に塗布ないし含浸させ乾燥してシート状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用シート材。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脱臭・脱色処理用組成物をフィルタ状に成形してなることを特徴とする脱臭・脱色処理用フィルタ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45600(P2009−45600A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216608(P2007−216608)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(300042786)
【Fターム(参考)】