説明

脱臭素子

【課題】本発明は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材および脱臭触媒を設け、容易且つ安価に自由な形状に変形したり加工したりすることができる脱臭素子を提供すること。
【解決手段】柔軟性のあるPTC面状発熱体1の表面に吸着材2および脱臭触媒3のどちらか一方、または吸着材2および脱臭触媒3の両方を設けるように構成することにより、容易且つ安価に自由な形状に変形したり加工したりすることができる脱臭素子を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機、空気清浄機等の通風路に設置したり、居室、車室内、冷蔵庫内、トイレ内等に設置して脱臭を行う脱臭素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脱臭素子として、PTCヒータの表面に臭気分解触媒を設け、PTCヒータを加熱することによって臭気を酸化分解して脱臭を行うものが知られている。
【0003】
例えば、PTCヒータは、通電によって自己発熱するヒータ線と、ヒータ線が挿入されたアルミニウム板で構成され、アルミニウム板の表面に臭気分解触媒がコーティングされた脱臭素子がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−10569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の脱臭素子は、金属の板、フィン等の硬い材質で構成されるため、脱臭素子の形状を用途に応じて自由に成型するにはコストが高くなる、という課題を有していた。また、日常的に外圧等によって折り、曲げ等の変形が生じる場所へ脱臭素子を装着できない、という課題を有していた。
【0005】
本発明は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材および脱臭触媒を設けて脱臭を行う脱臭素子および脱臭装置を提供することを目的とする。柔軟性を有することで、容易且つ安価に自由な形状に変形したり、加工することができる。例えば、カーペットやカーテン、椅子、家具、壁等の表面材料の一部に使用し、設置スペースを設けることなく室内空気の脱臭を行うことも可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の脱臭素子は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材を設けたことを特徴とする。
【0007】
これによって、表面の吸着材に悪臭を吸着し脱臭する一方、吸着した悪臭はPTC面状発熱体に通電して発熱させ吸着材を加熱することで脱着させ、吸着材を再生することができる。
【0008】
また、本発明の脱臭素子は、前記吸着材はゼオライトを含むことを特徴とする。
【0009】
これによって、吸着材への悪臭の吸着および吸着後の加熱による脱着を効率良く進めることができる。
【0010】
また、本発明の脱臭素子は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に脱臭触媒を設けたことを特徴とする。
【0011】
これによって、PTC面状発熱体に通電して発熱させ触媒を熱することで表面に吸着した悪臭と触媒との反応を促進して分解除去することができる。
【0012】
また、本発明の脱臭素子は、折り曲げてプリーツ形状に加工し、前記プリーツ形状の山と谷の一部または全部に開口部を設け、その開口部に通風させることを特徴とする。
【0013】
これによって、表面積を拡げ且つ通風を確保できるフィルター形状に加工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の脱臭素子は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材および脱臭触媒を設けたことにより、容易且つ安価に自由な形状に変形したり、加工することが可能となり、また、日常的に折り、曲げ等によって変形が生じる場所にも脱臭素子の装着が可能となり、設置場所を限定されることなく種々の場所にて空気の脱臭を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材を設けたことによって、表面の吸着材に悪臭を吸着し脱臭する一方、吸着した悪臭はPTC面状発熱体に通電して発熱させ吸着材を熱することで脱着させ、吸着材を再生することができ、形状が自在で設置場所を限定されることなく常に高い脱臭性能を発揮することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記吸着材はゼオライトを含むことによって、吸着材への悪臭の吸着および吸着後の加熱による脱着を効率良く進めることができ、形状が自在で設置場所を限定されることなくより高い脱臭性能を発揮することができる。
【0017】
第3の発明は、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に脱臭触媒を設けたことによって、PTC面状発熱体に通電して発熱させ触媒を熱することで表面に吸着した悪臭と触媒との反応を促進して分解除去することができ、形状が自在で設置場所を限定されることなく常に強力な脱臭性能を発揮することができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1の発明から第3の発明において、前記PTC面状発熱体は、折り曲げてプリーツ形状に加工し、前記プリーツ形状の山と谷の一部または全部に開口部を設け、その開口部に通風させることによって、表面積を拡げ且つ通風を確保できるフィルター形状に加工することができ、繰り返し再生可能なメンテフリーの脱臭フィルターを提供することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における脱臭素子の構成を示す模式図である。
【0021】
柔軟性のあるPTC面状発熱体1の表面に、ゼオライトや活性炭等の吸着材2が担持されていて、悪臭を吸着して脱臭するものである。吸着容量が飽和に近づき脱臭性能が低下してきた場合は、PTC面状発熱体1に通電し表面を加熱しながら、新鮮空気を通風することで、吸着していた悪臭が脱着し、吸着材が再生され元の脱臭性能を回復することができる。なお、PTC面状発熱体1は自己温度制御により所定の温度で安定するため、別途制御回路を設ける必要がなく簡単な構成で脱臭素子を動作させることができる。
【0022】
また、吸着材にゼオライトを使用することによって、悪臭が吸着したゼオライトは加熱且つ新鮮空気を通風することで脱着が容易となるため、より効率良く脱臭素子の再生を行うことができる。なお、疎水性ゼオライトを用いることによって、湿気に影響されることなく高い吸着性能を発揮することができる。
【0023】
また、図2は、同脱臭素子の別の構成を示す模式図である。
【0024】
PTC面状発熱体1の表面に、白金、パナジウムといった貴金属系やMn系等の脱臭触媒3が担持されていて、表面に付着した悪臭の酸化分解を促進して脱臭するものである。PTC面状発熱体1に通電し表面を加熱することによって、悪臭と触媒との分解反応を促進し、より強い脱臭性能を発揮するものである。
【0025】
なお、1つの脱臭素子に吸着材と脱臭触媒とを混合して担持することによって、悪臭の吸着と分解を同時に実施することも可能となり、より優れた脱臭性能を有する脱臭素子を提供することができる。
【0026】
以上のように、柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材や脱臭触媒を担持した脱臭素子は、容易且つ安価に自由な形状に加工することが可能となり、また、外圧等によって折り、曲げ等の変形が生じる場所にも脱臭素子の装着が可能となり、設置場所を限定されることなく種々の場所にて空気の脱臭を行うことができる
(実施の形態2)
図3は本発明の第2の実施の形態における脱臭素子の断面図であり、図4は同脱臭素子内部の平面図である。
【0027】
脱臭素子は、PET等の樹脂製フィルム等を用いた柔軟性多孔質体4の表面に、銀等を含む柔軟性のある導電性ペーストが所定のパターンで印刷され、間隔を置いて対をなして配置された柔軟性電極5を形成している。また、柔軟性電極5にこれと電気的に接続して設けるように柔軟性PTC抵抗体6が所定のパターンで印刷されており、これらを被覆する樹脂製フィルム等の柔軟性内側被覆材7で被覆され絶縁されている。さらにその外側には、吸着材や脱臭触媒が大量に担持できやすいように不織布等の表面に凹凸を有する柔軟性外側被覆材8が貼り付けられ、その表面に吸着材および脱臭触媒9が担持されている。
【0028】
これによって、例えば、折り、曲げ等の変形が生じるカーペットやカーテン、椅子等の表面素材に使用することが可能となり、設置スペースを要することなく室内空気の脱臭を行うことができると共に、再生可能な脱臭素子であることから取替え等のメンテナンスを要することなく高い脱臭性能を持続させることができる。
【0029】
(実施の形態3)
図5は、本発明の第3の実施の形態における脱臭素子の斜視図であり、図6は同脱臭素子を上方から見た平面図である。
【0030】
脱臭素子は、図5のように折り曲げてプリーツ形状に加工し、プリーツ形状の山と谷の両方に開口部を設ける。図6のように、10は山の開口部、11は谷の開口部であり、空気と接触する表面積を拡げ且つ通風を確保できるフィルター形状に加工することができる。その開口部に送風機等で室内の悪臭を含んだ空気を通風させることによって、脱臭素子表面の吸着材に悪臭が吸着される。さらに、PTC面状発熱体に通電、加熱することによって悪臭を脱着および分解を促進し、繰り返し再生可能なメンテフリーの脱臭フィルターを提供することができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、プリーツ形状の山と谷の全部に開口部を設けたが、山か谷のどちらか一方に開口部を設けたり、一部の山、谷のみに開口部を設けても良く、また開口部の形状を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる脱臭素子は、空気清浄機、空気調和機や冷蔵庫等、浄化対象空間の空気を送風する機能を有するさまざまなの機器にフィルター形状に加工して搭
載可能であるだけでなく、カーテンやカーペット、椅子、家具、壁等の表面材料の一部として居室、非居室を問わず、また車室内等も含めて空間のあらゆる場所に設置可能であり、非常に広範囲な用途展開を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭素子を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態1における脱臭素子を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態2における脱臭素子の一例を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態2における脱臭素子内部の一例を示す平面図
【図5】本発明の実施の形態3における脱臭素子の一例を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態3における脱臭素子の一例を示す平面図
【符号の説明】
【0034】
1 PTC面状発熱体
2 吸着材
3 脱臭触媒
4 柔軟性多孔質体
5 柔軟性電極
6 柔軟性PTC抵抗体
7 柔軟性内側被覆材
8 柔軟性外側被覆材
9 吸着材および脱臭触媒
10 山の開口部
11 谷の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に吸着材を設けたことを特徴とする脱臭素子。
【請求項2】
前記吸着材はゼオライトを含むことを特徴とする請求項1に記載の脱臭素子。
【請求項3】
柔軟性のあるPTC面状発熱体の表面に脱臭触媒を設けたことを特徴とする脱臭素子。
【請求項4】
前記脱臭素子は、折り曲げてプリーツ形状に加工し、前記プリーツ形状の山と谷の一部または全部に開口部を設け、その開口部に通風させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脱臭素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−280495(P2006−280495A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102185(P2005−102185)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】