説明

脱臭装置の圧力損失防止方法および装置

【課題】 脱臭装置における圧力損失の原因となるスケールの生成を抑制することができる脱臭装置の圧力損失防止方法および装置を提供する。
【解決手段】 内部に設けた充填層2に、脱臭に関与する微生物を固定した充填材を充填する脱臭装置1において、ポリリン酸塩類を含む循環水を充填層2に繰り返し散水することにより、脱臭装置1から溶出する溶出成分のスケール化を防止して圧力損失の上昇を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭装置の圧力損失防止方法および装置に関し、脱臭装置の構成部材から溶出するカルシウムに起因して脱臭担体等において圧力損失が増加することを抑制する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脱臭装置としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは充填式生物脱臭塔の内部に充填層を設け、充填層に脱臭に関与する微生物を固定した脱臭担体を充填するものであり、充填式生物脱臭塔の底部に設けた貯水部に滞留する循環水を散水ポンプによって充填層の上方から散水し、充填層を通過して貯水部に戻った循環水を繰り返し散水するものである。
【0003】
この構成において、脱臭担体に生育した微生物によるアンモニアの脱臭作用が進行すると、循環水には硝酸アンモニウムおよび亜硝酸アンモニウムが溶解してアンモニア性窒素、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等の無機性窒素が蓄積する。他の先行技術文献としては特許文献2または3がある。
【特許文献1】特開平7−24247号公報
【特許文献2】特開2001−149744号公報
【特許文献3】特開平10−323696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した構成においては、循環水中の硝酸によって、脱臭担体を充填した担体充填層壁、貯水部の水槽壁からカルシウム等の金属類が溶出する。あるいは循環水に地下水を使用するとカルシウムを含む場合がある。このカルシウムが臭気中の硫黄成分や空気中の二酸化炭素との反応により、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等を生成し、脱臭担体、各種配管内、槽壁面等にスケールとして固着して圧力損失を生じ、脱臭性能を低下させる。
【0005】
このため従来は圧力損失の高まりにより脱臭装置の動力負荷が大きくなって時点で、スケールを除去し、あるいは脱臭担体を入れ替えることにより、圧力損失の原因となる脱臭担体の詰まりや配管の詰まりを取り除いていた。
【0006】
本発明は上記した課題を解決するものであり、脱臭装置における圧力損失の原因となるスケールの生成を抑制することができる脱臭装置の圧力損失防止方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の脱臭装置の圧力損失防止方法は、内部に設けた充填層に、脱臭に関与する微生物を固定した充填材を充填する脱臭装置において、ポリリン酸塩類を含む循環水を充填層に繰り返し散水するものである。
【0008】
上記した構成により、充填材に生育した微生物によるアンモニアの脱臭作用によって、循環水中に硝酸アンモニウムおよび亜硝酸アンモニウムが溶解する。循環水中の硝酸によって、脱臭装置の担体充填層壁、貯水部の水槽壁等のコンクリート構造物や金属物、さらには充填材に軽量気泡コンクリートを採用する場合には充填材自体からカルシウム、鉄、マグネシウム等が溶出する。
【0009】
ポリリン酸塩類、例えばポリリン酸ナトリウムを数mg/L以上含む循環水を充填層に繰り返し散水することにより、ポリリン酸塩類がカルシウム、鉄、マグネシウム等と臭気中の硫黄成分や空気中の二酸化炭素との結合を抑制し、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の生成を防止する。このため、充填材、槽壁面等にスケールが固着することに起因する圧力損失の発生を防止でき、脱臭性能を長期的に維持することができる。
【0010】
本発明の脱臭装置の圧力損失防止装置は、内部に充填層を有し、脱臭に関与する微生物を固定した充填材を充填層に充填し、充填層に繰り返し循環水を散水する散水手段を有する脱臭装置において、循環水にポリリン酸塩類を添加する薬剤供給手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ポリリン酸塩類を含む循環水を充填層に繰り返し散水することでスケールの生成を抑制し、充填材間の詰まりによる圧力損失の上昇や、循環水を散布するノズルや配管の閉塞を防止でき、継続的な脱臭性能の維持、故障防止、維持管理費の低減等を図ることができる。また、脱臭装置から溶出するカルシウム、鉄、マグネシウム等がスケール化しないことで、脱臭装置から排出する排水は、カルシウム、鉄、マグネシウム等を含むことで肥料として有効な資源となり、またポリリン酸塩類もリン酸肥料として有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、脱臭装置1は内部に充填層2を有し、充填層2に充填材を充填している。本実施の形態では、充填材として軽量気泡コンクリートの粒状体を採用している。粒状体は多数の微細孔隙を有する多孔性であり、表面および内部に臭気ガス3に含まれるアンモニア成分を吸着して溶解させるための水分を保持する。
【0013】
粒状体は、酸化的環境となる表面に、アンモニア成分を酸化反応により分解する亜硝酸菌、硝化菌等の好気性菌を付着固定化しており、還元的環境となる微細孔隙内に、好気性菌の酸化反応によって生じる反応生成物を脱窒する脱窒菌を付着固定化している。
【0014】
脱臭装置1の散水手段は、充填層2の上方に配置する散水ノズル4と、充填層2の下方に配置する貯水部5と、散水ノズル4と貯水部5を接続してなる循環水系6からなり、循環水系6はポンプ(図示省略)を備えている。
【0015】
この循環水系6には、循環水にポリリン酸塩類としてポリリン酸ナトリウムを添加する薬剤供給系7を接続している。薬剤供給系7は貯水部5に直接に接続することも可能であり、貯水部5に補給水を供給する配管(図示省略)に接続することも可能である。さらには、固形状のポリリン酸塩類を貯水部5に投入することも可能である。
【0016】
貯水部5にはバルブ(図示省略)を備えた排水系8を接続しおり、脱臭装置1のケーシングには臭気ガス3の供給口9と無臭ガス10の排出口11を設けている。
上記した構成における作用を説明する。散水ノズル4から循環水を充填層2に散水し、充填層2から貯水部5に流下する循環水を、循環水系6を通して散水ノズル4へ供給する。循環水には薬剤供給系7から所定濃度(数mg/L以上)でポリリン酸ナトリウムを添加し、ポリリン酸ナトリウムを含む循環水を充填層2に繰り返し散水する。
【0017】
この状態で、供給口9から臭気ガス3を脱臭装置1へ供給し、充填層2に臭気ガス3を通気する。充填層2では、充填材の軽量気泡コンクリートの粒状体が表面および内部に保持する水分に臭気ガス3のアンモニア成分を吸着して溶解させ、粒状体の酸化的環境となる表面において好気性菌によりアンモニア成分を酸化し、反応生成物として硝酸アンモニウムおよび亜硝酸アンモニウムを生成し、還元的環境となる微細孔隙内において脱窒菌により反応生成物を脱窒する。
【0018】
この循環水中の硝酸によって、脱臭装置1の担体充填層壁、貯水部の水槽壁等のコンクリート構造物や金属物、さらには充填材の軽量気泡コンクリートからカルシウム、鉄、マグネシウム等が溶出する。
【0019】
しかし、循環水に含まれたポリリン酸ナトリウムが、カルシウム、鉄、マグネシウム等と臭気中の硫黄成分や空気中の二酸化炭素との結合を抑制し、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等の生成を防止する。
【0020】
このため、充填材、槽壁面等にスケールが固着することによる、充填材間の詰まりに起因する圧力損失の発生を防止でき、スケールによる散水ノズル4や循環水系6の閉塞を防止して継続的な脱臭性能の維持、故障防止、維持管理費の低減等を図ることができる。
【0021】
ところで、ポリリン酸ナトリウムはリン酸肥料として有効であり、また脱臭装置1から排出系8を通して取り出す排水がスケール化しない状態でカルシウム、鉄、マグネシウム等を含むことで、排水は肥料として有効な資源となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態における脱臭装置を示す模式図
【符号の説明】
【0023】
1 脱臭装置
2 充填層
3 臭気ガス
4 散水ノズル
5 貯水部
6 循環水系
7 薬剤供給系
8 排水系
9 供給口
10 無臭ガス
11 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けた充填層に、脱臭に関与する微生物を固定した充填材を充填する脱臭装置において、ポリリン酸塩類を含む循環水を充填層に繰り返し散水することを特徴とする脱臭装置の圧力損失防止方法。
【請求項2】
内部に充填層を有し、脱臭に関与する微生物を固定した充填材を充填層に充填し、充填層に繰り返し循環水を散水する散水手段を有する脱臭装置において、循環水にポリリン酸塩類を添加する薬剤供給手段を設けたことを特徴とする脱臭装置の圧力損失防止装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−280998(P2006−280998A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100288(P2005−100288)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】