説明

脱酸素剤を含む密封容器を用いた薬学的処方物を含むアンプルの保管

プラスチック材料で形成されそして0.5〜5mlの薬学的処方物を含むアンプルが、パウチの中に、脱酸素剤とともに密封される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的処方物を含むアンプルの保管のために用いられ得る容器の密封に関し、特に、処方物の経時的な酸化を減少させるかまたは防ぐパウチ内へのアンプルの密封に関する。本発明はまた、特に、そのようなアンプルを含む密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学的処方物は、種々の異なる包装(ガラス、金属、プラスチックおよび自然素材で形成された包装を含む)により提供される。液体処方物(例えば、溶液または懸濁液)については、包装は、漏出を防ぐために密封されなければならず、かつ密封されたままでなければならない。しかしながら、すべてのそのような容器には、多くの技術的または実用上の困難性が存在している。
【0003】
ネブライザーを用いて患者の肺に薬物を投与することが知られており、これにより、呼吸が正常な間に患者に薬物を投与することが可能となる。薬物は、単位用量アンプル(UDA)で提供され、このアンプルは、比較的小容量、代表的には、1mL〜5mLの溶液を含み、そして代表的にはプラスチック材料で形成される。アンプルの作成方法は、無菌条件下でのブローフィルシール法(BFS)による。このブローフィルシール法において、アンプルは、多部分であるが本質的には1工程のプロセスで、押出成形による形成および溶液の充填が行われる。必要に応じて、そして内容物が熱不安定性でない場合は、加熱滅菌法が用いられ得る。例えば、アンプルは、最終滅菌法によって、すなわち、アンプルが充填され、そして密封された後に、滅菌され得る。これらの方法は十分に確立され、そして世界的に規制当局(regulatory authorities)によって認められている。
【0004】
既存のアンプルの公知の問題は、酸素、その他の気体およびその他の揮発性化合物がアンプル内に入ることを許容し、かつ水(水分)が出て行くことを許容することである。内容物試験により、保管中に、汚染物質がアンプルの壁のプラスチックを通過し、そして処方物中に吸収され得ることが明らかとなっている。ある特定の例としては、アンプル内部に許容できない量のバニリンが見出され、製品の不具合を生じ、そして、規制当局に、この外部汚染に対する防護対策がなければアンプルを許可しないと拒絶されるに至った。
【0005】
米国食品医薬品局は、近年、アンプル内容物の周囲による汚染を避けるために、アンプルを密封パウチにより外装することを要求している。パウチ材料は、代表的には、紙および/またはポリマー、アルミニウム、ならびに低密度ポリエチレン(LDP)の三層積層体である。このパウチが許容し得る解決策とみなされているが、内容物は、依然として経時的な酸化を受けやすい。これは、酸素感受性の材料を含む薬物処方物について、特に問題である。
【0006】
プロセスのできるだけ多くの工程の間、無菌空気よりもむしろ窒素を用いて、アンプルを形成および充填するブローフィルシール法を行うことが知られている。窒素は、アンプル内の溶液を覆うために用いられ得る。窒素は、アンプルがパウチ内部に密封される時点でパウチの中に導入され得る。しかしながら、このプロセスで窒素を用いるために、特殊な装置または既存の装置の改良を要するという問題がある。窒素の使用に関する健康および安全対策は、生産コストおよび時間を増加させる傾向があり、そしてパウチの中への窒素封入の効果はさまざまであり、完全に効果的というわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、あるいは少なくとも改善することである。本発明の好ましい実施態様の目的は、密封容器内へのアンプル保管の代替方法、より好ましくは改善方法を提供すること、ならびにアンプルを含む代替の、好ましくは改善された密封容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要約
本発明は、容器内に密封されたアンプル内の処方物の酸化を減少させるかまたは防ぐ、脱酸素剤の使用に基づく。
【0009】
第1の局面において、本発明は、(i)10mlまでの薬学的処方物を含む1以上のアンプル、および(ii)脱酸素剤を含む、密封容器を提供する。
【0010】
好ましくは、1以上のアンプルは、プラスチック材料で形成される。また、好ましくは、アンプルは、吸入薬を含有する。1以上のアンプルおよび脱酸素剤は、容器内に密封される。いくつかの実施態様では、容器材料は、金属または金属化合物を含み、これは例えば、外表面上のコーティングとして、または外表面の中に組み込まれる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様では、容器はパウチである。
【0012】
第2の局面において、本発明は、アンプルの内容物の酸化的劣化を減少させる方法を提供し、該方法は、脱酸素剤を含む容器内にアンプルを密封する工程を含む。
【0013】
第3の局面において、本発明は、容器からの水分の流出を減少させる方法を提供し、該方法は、脱酸素剤を含むパウチ内に容器を密封する工程を含む。
【0014】
第4の局面において、本発明は、アンプルの密封方法を提供し、1以上のアンプルは、脱酸素剤を含むパウチ内に密封される。
【0015】
第5の局面において、本発明は、プラスチック材料で形成されたアンプルを提供し、該アンプルは、脱酸素剤を含むパウチ内に密封される。
【0016】
第6の局面において、本発明は、容器内に密封された1以上のアンプル内の処方物の酸化を減少させるかまたは防ぐ、脱酸素剤の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、脱酸素剤を含む容器(例えば、パウチ)内に包装されたアンプルからなる包装物を提供する。本発明はまた、容器内に脱酸素剤とともに密封された5、10、20、30個またはそれ以上のアンプルを提供し、アンプルは、好都合にはストリップ状である。あるいは、個々のアンプル、または、1以上のストリップおよび1以上の個々のアンプルの組み合わせが、容器内に密封され得る。使用において、脱酸素剤の存在が、容器内の酸素含有量を著しく減少させ、アンプル内容物の経時的な酸化を減少させ、そしてまた、アンプル内容物の安定性を改善することが見出された。
【0018】
アンプルのストリップが容器内に密封され、このストリップから1つのアンプルを切り離すために容器が開封されると、残りのアンプルは空気に曝される。しかしながら、アンプルの内容物の酸化が、保管期間と比べて比較的長期間にわたって空気に曝された後にのみ生じ、そして開封された容器内のアンプルは、通常、著しい酸化が生じ得る前にすべて使用されるため、これは重大な問題にはならない。
【0019】
本発明の1つの特定の実施態様では、容器は再密封可能であり、使用者によって単一のアンプルが取り外されることを許容する。容器は、その後閉じられ、脱酸素剤が依然として所定の位置にある状態で、密封容器を再度形成する。これは、開封されている間にパウチ内に入り込んだ酸素を取り除くように、そして、パウチ中に拡散し得るいかなるさらなる酸素をも「拭い取る」ように、機能する。したがって、容器の酸素含有量がより低くなることで、残りのアンプルの内容物の経時的な酸化を減少させる。
【0020】
特定の好ましい実施態様では、容器はパウチを含み得、パウチ材料は、代表的に、金属または金属化合物を含み、そしていくつかの実施態様では、三層積層体を含み得る。代表的な三層積層体の構成は、紙および/またはポリマー、アルミニウムならびに低密度ポリエチレンを含み得る。
【0021】
本発明の好ましい実施態様では、パウチはガス不透過性である。
【0022】
アンプルは、代表的に、プラスチック材料を含むか、またはプラスチック材料で形成される。プラスチック材料は、特に、ポリプロピレンまたはポリエチレン(低密度または高密度)あるいはアンプルの製造または飲料産業で使用されるその他のポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタラート、である。さらに、アンプルは、代表的に、医薬品(例えば、吸入薬または注射薬)を、薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて含む。
【0023】
本発明の好ましい実施態様では、アンプルは、プラスチック材料で形成される。
【0024】
本明細書に記載されたアンプルは、代表的に、10mlまで、好ましくは0.5ml以上、または1〜5mlの容量を有し得る。例えば、アンプルは、2〜4mlの吸入薬を含み得る。
【0025】
好ましい実施態様では、アンプルは、薬学的に許容可能なキャリア中の吸入薬1ml以上、または2〜3mlを含む。
【0026】
本発明で用いられる脱酸素剤は、一般に、食品産業で用いられそして承認されている、市販の小包(packet)または小袋(sachet)である。これらの脱酸素剤は、浸出し得る物(leachables)を含まず、したがって保管される製品の汚染が避けられる。
【0027】
脱酸素剤の大きさは、代表的に20〜2000cc(脱酸素剤が吸収し得る酸素の体積を示す)、好ましくは20〜1000cc、より好ましくは20〜500ccの範囲である。本発明の1つの実施態様では、50cc小包が用いられる。これにもかかわらず、用いられる脱酸素剤の大きさおよび容量を、容器の大きさ、容器内のアンプルの数、およびアンプルの全体容量に応じて変更し得ることが、当業者にとって明らかである。
【0028】
以下の実施例は、本発明を支持するために提供される。実施例の内容は、説明のためにのみ提供され、本発明の範囲をいかなるようにも限定することは意図されない。
【実施例】
【0029】
実施例1
それぞれ、1つの4アンプルカードおよび1つのFreshPax D−50脱酸素剤小包(MultiSorb)を含む包装物を調製し、ホイルに密封した。包装物は、標準大気条件で調製し、密封時に空気を含ませた。
【0030】
脱酸素データを、Mocon Head Space Analyzerを用いて時間間隔で分析した。その結果を以下に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
脱酸素剤なしのコントロール包装物では、8日目に20.5%のOが測定された。
【0033】
実施例2
本研究は、製品の劣化防止における、そしてそれによる保管後の溶液内に存在する不純物量の減少における、脱酸素剤の有効性を実証するために設計した。
【0034】
噴霧吸入用溶液を、ブローフィルシール技術を用いて3mlのLDPEアンプルに製造した。その後、製品からの水分の損失および製品の外部汚染を防ぐために、5アンプルのストリップを、包装で覆ってホイル内に密封した。
【0035】
1バッチの噴霧吸入用レバルブテノール/イプラトロピウムブロミド溶液(1.25mg/0.5mg/2ml)の組み合わせ製品を、2006年に製造した。このバッチの2つのサブロットを生産し、ラベル付けしたサブロット1(アンプルを、脱酸素剤を含むホイルパウチに密封した)およびサブロット2(アンプルを、標準のホイルパウチに密封した)を12ヶ月保管し、その後下記に示すように試験した。
【0036】
下記に要約した関連物質データは、25℃/60%RHで12ヶ月保管した製品についてのものである。
【0037】
【表2】

【0038】
脱酸素剤とともに包装された製品で検出された不純物量は、脱酸素剤なしで包装された製品で見られたものよりも、一般に25〜40%低かったことがわかる。パウチ内に脱酸素剤がある場合、不純物量の合計は30%の減少を示した。
【0039】
本研究は、ホイルパウチ内にある脱酸素剤が、アンプル内の噴霧吸入用溶液の安定特性を改善するという仮説を支持する。
【0040】
実施例3
本研究は、脱酸素剤を含むホイルパウチの中にアンプルが保管された場合の、無酸素環境の発生および維持における、脱酸素剤の有効性を実証するために設計した。
【0041】
アンプルを、標準大気条件でブローフィルシール技術を用いて製造し、密封時に空気のみを含ませた。それぞれ、1つのFreshPax D−50脱酸素剤小包(MultiSorb)を含むアルミニウムパウチ内に密封された4つの空のアンプルを含む包装物を、調製した。
【0042】
包装物は、標準大気条件で調製し、そして密封時のパウチおよびアンプルの中の空気の酸素含有量は、20.5%であった。包装物を18ヶ月保管し、その後下記に示すように試験した。各パウチの中、および各パウチからの2つのアンプルの中の酸素含有量を、内部プロトコルSAP392.01およびSEP156.01に従って測定した。
【0043】
酸素含有量の測定には、Systech Gaspace Advance Oxygen Micro Headspace Analyserを用いた。Gaspace機器を、酸素を2.00%含むことが証明された気体で校正し、そしてまた、環境大気でも校正した。パウチおよびアンプルのヘッドスペース内の酸素濃度を、「時限(timed)」法を用いて測定した。試験時間は、45秒間とした。サンプリング時に良好な密封が得られることを確実にするために、自己接着性のセプタムを、パウチおよびプラスチックアンプルに取り付けた。
【0044】
ヘッドスペースの酸素含有量の結果を、以下の表に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
パウチから酸素が完全に取り除かれ、アンプルは酸素含有量の76%の減少を示したことがわかる。
【0047】
結論として、パウチ内の脱酸素剤の存在が、パウチから、そしてアンプルのヘッドスペースから、酸素を引き出したものと思われる。驚くべきことに、これらの結果は、これまでの内部研究の所見とは対照的であった。これまでの内部研究の所見は、窒素でパージされた脱酸素剤を含まないパウチにおいて、アンプルのヘッドスペースとパウチの内部との間で酸素濃度の平衡がなかったことを示していた(データは示さず)。本研究で見られた平衡についての1つの考えられる解釈は、脱酸素剤が、2つの環境間で平衡に向かう推進力として機能することである。
【0048】
本研究では、より長い保管期間後に、または、代替的に、より大きな脱酸素剤を用いることによって、アンプルとパウチとの間で完全な平衡が達成され得る。もちろん、本研究で用いたアンプルは、完全に空気で満たされていたので、薬剤(actives)で満たされたアンプルが含むよりも著しく多い酸素を含んだ。薬剤で満たされたアンプルは、そのより低い酸素体積のため、本研究の条件下で完全な平衡に到達すると考えられる。
【0049】
したがって、本発明は、アンプルを含む密封容器およびこれを得る方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mlまでの薬学的処方物を含む1つ以上のアンプルおよび脱酸素剤を含む、密封容器。
【請求項2】
前記1つ以上のアンプルが、薬学的に許容可能なキャリア中の吸入薬の溶液を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記1つ以上のアンプルが、プラスチック材料で形成されそしてブローフィルシール法によって製造される、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記容器が、複数のアンプルを含む、請求項1から3のいずれかに記載の容器。
【請求項5】
10個以上のアンプルを含む、請求項1から4のいずれかに記載の容器。
【請求項6】
前記脱酸素剤が、20から2000ccの酸素を吸収し得る、請求項1から4のいずれかに記載の容器。
【請求項7】
前記容器の材料が、金属または金属化合物を含む、請求項1から6のいずれかに記載の容器。
【請求項8】
前記容器の材料が、アルミニウムを含む、請求項1から7のいずれかに記載の容器。
【請求項9】
前記容器が再密封可能である、請求項1から8のいずれかに記載の容器。
【請求項10】
前記容器がパウチである、請求項1から9のいずれかに記載の容器。
【請求項11】
10mlまでの薬学的処方物を含むアンプルの内容物の酸化的劣化を減少させる方法であって、脱酸素剤を含む容器内に該アンプルを密封する工程を含む、方法。
【請求項12】
前記アンプルが、薬学的に許容可能なキャリア中の吸入薬の溶液を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アンプルが、プラスチック材料で形成され、ブローフィルシール法によって製造される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記容器が、複数のアンプルを含む、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記容器が、10個以上のアンプルを含む、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記脱酸素剤が、20から2000ccの酸素を吸収し得る、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記容器の材料が、金属または金属化合物を含む、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記容器の材料が、アルミニウムを含む、請求項11から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記容器が再密封可能である、請求項11から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記容器がパウチである、請求項11から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
10mlまでの処方物を含みそして容器内に密封された1つ以上のアンプル内の酸化を減少させまたは防ぐための、脱酸素剤の使用。
【請求項22】
実質的に本明細書に前述される、脱酸素剤を含む、密封容器。

【公表番号】特表2010−515509(P2010−515509A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545227(P2009−545227)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000076
【国際公開番号】WO2008/084231
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(503183455)ブレス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】