説明

脳波表示装置、脳波表示方法、及びプログラム

【課題】簡易な設備により、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出することができる脳波表示装置を提供する。
【解決手段】 脳波表示装置は、脳波を計測する脳波計測手段と、計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出手段と、算出された二次元脳波図に基づき、三次元の標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出手段とを有する。三次元脳波図算出手段は、算出された二次元脳波図を、伸縮させ、二次元で表わされた標準脳と同一の形態に変形させる変形処理と、変形させた二次元脳波図を同心円状に切断する切断処理と、切断された二次元脳波図の各部分を、三次元で表わされた標準脳の表面の対応する位置に貼り付ける貼付処理と、貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間する補間処理とを実行することにより、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、三次元位置計測装置を用いて、被験者の頭表位置から脳機能を推定する脳機能部位推定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−160281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡易な設備により、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出することができる脳波表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る脳波表示装置は、頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測手段と、前記脳波計測手段により計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出手段と、前記二次元脳波図算出手段により算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出手段とを有する。
好適には、前記三次元脳波図算出手段は、前記二次元脳波図算出手段により算出された二次元脳波図を、伸縮させ、二次元で表わされた標準脳と同一の形態に変形させる変形処理と、前記変形処理により変形された二次元脳波図を、同心円状に切断する切断処理と、前記切断処理により切断された二次元脳波図の各部分を、三次元で表わされた標準脳の表面の対応する位置に貼り付ける貼付処理と、前記貼付処理により貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間する補間処理とを実行することにより、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する。
【0006】
また、本発明に係るプログラムは、頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測機能と、前記脳波計測機能により計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出機能と、前記二次元脳波図算出機能により算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出機能とをコンピュータに実現させる。
【0007】
また、本発明に係る脳波表示方法は、頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測ステップと、前記脳波計測ステップにより計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出ステップと、前記二次元脳波図算出ステップにより算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出ステップとを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な設備により、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】脳波表示装置10を用いて脳波を計測している状態を表わす図である。
【図2】脳波表示プログラム100の機能構成を例示する図である。
【図3】脳波図標準化処理S10におけるステップ1〜4を例示する模式図である。
【図4】二次元脳波図に基づいて算出された三次元脳波図(三次元で表わされる標準脳における脳波図)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1は、脳波表示装置10を用いて脳波を計測している状態を表わす図である。
図1に例示するように、脳波表示装置10は、被験者に被せられた脳波キャップ20と信号ケーブル40を介して接続されている。
【0011】
脳波表示装置10は、CPU及び記憶媒体などを備えるコンピュータであり、脳波表示プログラム100(図2を用いて後述)がインストールされている。脳波キャップ20には、複数の電極30が配置されている。脳波キャップ20に電極30を配置する位置は、特に限定するものではない。例えば、電極30は、国際式10−20電極配置法などに基づき、脳波キャップ20に配置されればよい。この脳波キャップ20を被験者に被せることにより、被験者の頭部の所定位置に電極30が配置される。脳波表示装置10は、脳波キャップ20に配置された各電極30を用いて、被験者の頭部の所定位置における脳波を計測する。そして、脳波表示装置10は、脳波図標準化処理S10(図3を用いて後述)を実行することにより、計測した脳波に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する。なお、脳波は、脳各部位における電位、電流、又は磁場などの大きさにより表わされる。また、標準脳は、複数の被験者のデータを正規化して、各被験者の脳画像を座標により解剖学的な位置が同定できるようにモデル化したものである。標準脳としては、例えば、Tarailach脳又はMontreal脳などがある。
【0012】
以上説明したように、脳波表示装置10は、簡易な設備により、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出することができる。
【0013】
図2は、脳波表示プログラム100の機能構成を例示する図である。
図2に例示するように、脳波表示プログラム100は、脳波計測部102と、二次元脳波図算出部104と、三次元脳波図算出部106と、表示部108とを有する。なお、脳波表示プログラム100は、脳波表示装置10のハードウェア資源(CPU、及び記憶媒体など)を利用して実行される。また、脳波表示プログラム100は、一部又は全部をASIC等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0014】
脳波計測部102は、頭部の複数部位における脳波を計測する。
本実施例では、脳波計測部102は、脳波キャップ20に配置された電極30により検出された脳波を、信号ケーブル40を介して受信し、計測する。
【0015】
二次元脳波図算出部104は、脳波計測部102により計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する。
本実施例では、二次元脳波図算出部104により算出される二次元脳波図は、脳波計測部102により計測された脳波の大きさを等高線図で表したものである。
【0016】
三次元脳波図算出部106は、二次元脳波図算出部104により算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する。
本実施例では、三次元脳波図算出部106により算出される脳波図は、二次元脳波図算出部104により算出された二次元脳波図を、画像処理により加工し、三次元で表わされる標準脳に貼り付けたものである。
【0017】
表示部108は、三次元脳波図算出部106により算出された標準脳における脳波図を、ディスプレイ等の表示機器に出力する。
【0018】
図3は、脳波図標準化処理S10におけるステップ1〜4を例示する模式図である。
図3に例示するように、ステップ1において、二次元脳波図算出部104は、脳波計測部102により計測された脳波の大きさを等高線図で表わした二次元脳波図を算出する。
【0019】
ステップ2において、三次元脳波図算出部106は、ステップ1で算出された二次元脳波図を、伸縮させ、二次元で表わされた標準脳と同一の形態に変形させる。より具体的には、三次元脳波図算出部106は、ステップ1で算出された二次元脳波図と、二次元で表わされた標準脳とを、互いの中心部Oが一致するように、重ね合わせる。そして、三次元脳波図算出部106は、ステップ1で算出された二次元脳波図を、中心部Oからの放射線上において伸縮させ、二次元で表わされた標準脳と同一の形態に変形させる。
【0020】
ステップ3において、三次元脳波図算出部106は、ステップ2で変形された二次元脳波図を、同心円状に所定の間隔で切断する。そして、三次元脳波図算出部106は、切断された二次元脳波図の各部分を、三次元で表わされた標準脳の表面の対応する位置に貼り付ける。
【0021】
ステップ4において、三次元脳波図算出部106は、ステップ3で貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間する。なお、ステップ3で貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間する手法は、特に限定するものではない。例えば、三次元脳波図算出部106は、線形補間法又はスプライン補間法などを用いて、ステップ3で貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間すればよい。
【0022】
図4は、二次元脳波図に基づいて算出された三次元脳波図(三次元で表わされる標準脳における脳波図)を例示する図である。
図4に例示するように、脳波表示プログラム100は、上述した脳波図標準化処理S10を実行することで、二次元脳波図算出部104により算出された二次元脳波図200に基づき、各方向(前側、後側、左側、右側、及び上側)から見た三次元脳波図210を算出する。
【0023】
以上説明した処理により、脳波表示装置10は、一次元データとして計測した脳波を、三次元で表わされた標準脳に対応付けて表示することができる。これにより、利用者は、標準脳を基にして、脳波図の平均画像及び標準偏差マップを作成し、計測した脳波と正常者の脳波とを客観的に比較解析することができる。さらに、脳波表示装置10が、脳血流SPECT又はFDG−PET等で用いられている標準脳に脳波を対応付けることにより、利用者は、脳血流又は脳代謝等と脳波との関連を調べ、アルツハイマー病における特異的な疾患等を診断することができる。
なお、脳波表示装置10は、標準脳に変換された脳波画像と、脳に関する他の検査画像とを重ねて表示させてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 脳波表示装置
20 脳波キャップ
30 電極
100 脳波表示プログラム
102 脳波計測部
104 二次元脳波図算出部
106 三次元脳波図算出部
108 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測手段と、
前記脳波計測手段により計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出手段と、
前記二次元脳波図算出手段により算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出手段と
を有する
脳波表示装置。
【請求項2】
前記三次元脳波図算出手段は、
前記二次元脳波図算出手段により算出された二次元脳波図を、伸縮させ、二次元で表わされた標準脳と同一の形態に変形させる変形処理と、
前記変形処理により変形された二次元脳波図を、同心円状に切断する切断処理と、
前記切断処理により切断された二次元脳波図の各部分を、三次元で表わされた標準脳の表面の対応する位置に貼り付ける貼付処理と、
前記貼付処理により貼り付けられた二次元脳波図の各部分の間の隙間を補間する補間処理と
を実行することにより、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する
請求項1に記載の脳波表示装置。
【請求項3】
頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測機能と、
前記脳波計測機能により計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出機能と、
前記二次元脳波図算出機能により算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出機能と
をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項4】
頭部の複数部位における脳波を計測する脳波計測ステップと、
前記脳波計測ステップにより計測された脳波に基づき、二次元脳波図を算出する二次元脳波図算出ステップと、
前記二次元脳波図算出ステップにより算出された二次元脳波図に基づき、三次元で表わされる標準脳における脳波図を算出する三次元脳波図算出ステップと
を有する脳波表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189081(P2011−189081A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59913(P2010−59913)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】