説明

腎細胞腫を治療するためのCG250およびIL−2またはIFN−αを含有する抗腫瘍剤

【課題】新たなサイトカイン療法の治療効果を増加させる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、腫瘍をもつ患者に腫瘍に関連した抗原炭酸脱水酵素IX(CAIX/G250/MN)に向けられた抗体と組み合わせて治療用量のサイトカインを投与するための方法に関する。改善された療法は、抗G250抗体だけの増強効果と組み合わせた、著しく減少された、サイトカイン関連毒性が単独の抗腫瘍剤だけで観察される治療的応答に関連して陽性の治療的応答を生じることによって特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い用量のサイトカイン(特にIL−2またはIFN−α)および抗腫瘍抗体を同時に投与することにより、悪性疾患、特に腎細胞腫(RCC)を治療するための抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎細胞腫(RCC)の30000件の新規症例が1999年に米国で診断されたことは、評価され、この場合には、この疾患から11900人の死亡をまねいた(1)。診断の時に顕性の転移性疾患をもつ新規症例の評価は、25%〜40%の範囲にある(2;3)。これらの患者の予後徴候の見通しは、暗く、生存者は、中央値で10ヶ月である。疾患が局在化されて現れる残りの症例については、治療の選択は、根治的な腎摘出術である。しかし、患者の三分の一は、後に転移性疾患を発現し、究極的には、前記癌腫により死亡する。
【0003】
今日、化学療法では転移性疾患をもつ患者の生存を長引かせるのに十分な抗腫瘍活性は実証されていない(4;5)。単独の作用物質または複数の作用物質での化学療法では、10〜15%を上廻る応答率は実証されていない。化学療法および手術法に対する満足な応答に到らないこと、および宿主免疫機作がRCCの自然の歴史において重要な役割を演じているという間接的な証拠に基づいて、前記疾患における免疫治療の研究は、続けられている(6〜8)。実際に、インターフェロン−α(IFN−α)およびインターロイキン(IL−2)は、患者の約20%において抗腫瘍活性を示した(9〜13)が、しかし、これは、しばしば苛酷な毒性と関連していた。
【0004】
インターロイキン−2(IL−2)は、免疫系刺激剤であり、これは、T細胞、NK細胞およびLAK細胞の増殖および活性を増大させることができ、IL−6ならびにインターフェロンα(IFN−α)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を含む種々のサイトカインの分泌を誘発させることができる。IL−2の初期投与は、血管区分からのリンパ球の一時的な消失を引き起こし、24〜48時間後にリバウンドを生じる。延長された投与の後、白血球の種々の型の膨脹が見られる。IL−2は、癌腫のための免疫治療剤として広範囲に亘って研究され、黒色腫および腎癌腫に抗して活性を有することが示された(6、8)。高い用量のIL−2療法は、進展した腎細胞腫の治療のためにFDA(米国食品医薬品庁)によって認可された。用量方法は、8時間毎に0.6〜0.7MIU/kgの静脈内ボーラスからなり、さらに治療が毒性によって制限されるまで繰り返される(18)。治療経過は、7〜10日間によって分離された治療の2つの作業周期からなる。それぞれの作業周期において、患者は、IL−2の10〜14回の用量を投与されることができる。全応答率は、15%であり、この場合完全応答率は、5%である。
【0005】
この高い用量のIL−2の治療に関連して著しい毒性が存在し、この場合には、集中的な患者管理ユニットにおける摂取量を必要とする。昇圧の支持器を必要とする低血圧症をもつ敗血症様症候群ならびに呼吸困難をまねく全身系の血管漏洩が起こりうる。他の毒性/副作用は、心不整脈、体液貯留、発熱、頭痛および精神錯乱、肝臓酵素の上昇、吐き気および嘔吐、血小板減少症、甲状腺機能亢進症/甲状腺機能減退症およびそう痒症である(18)。高い毒性プロフィールに基づき、選択的な用量方法、例えば低い用量での静脈内療法および皮下療法は、毒性を減少させ、一方で有効性を保持するという目的で開発された。一般に、前記の低い用量での治療は、実際にはるかに低い毒性であると述べることができる(19−22)。しかし、一般に、この低い用量でのIL−2療法は、何らの実質的な有効性を示さない。
【0006】
抗体G250は、腫瘍に関連した抗原炭酸脱水酵素IX(CAIX/G250/MN)を認識し、この場合には、腎癌腫75%以上が存在する。標準細胞との反応性は、胃上皮および肝臓内の胆管に制限されている(14;15)。放射線免疫療法のための131I標識化を有するネズミG250抗体のI/II期試験は、終えられ、試験結果は、刊行物に記載されている(16)。ヒトIgG1κFc(IgG1 kappa Fc)領域を有するマウスFv領域からの制限されたキメラG250抗体は、競合的複合アッセイでネズミG250抗体と等価であることが示された。キメラ抗体は、131Iで標識化され、RCC患者の診断的研究に使用された(17)。
【0007】
サイトカインと治療抗体との組合せ物の投与については、参考文献24、25、26、27、28、米国特許第5104652号明細書(特許文献1)およびWO 01/87336(特許文献2)に記載されている。抗体とサイトカインとの組合せ物を投与するための異なる方法が存在したが、しかし、この方法は、一般に望ましい相乗効果を示さず、最終的には、不成功のままであった。IL−2治療プロトコルの大部分は、副作用の減少を達成させるために、IL−2の間欠的な短期間の投与からなる。
【0008】
Liu他(Cancer Immunol Immmunother 51 (2002), 171-177(非特許文献1))では、インビトロでのキメラG250抗体の投与によるADCCにおけるサイトカインの増加について記載されている。この著者らによれば、この結果は、キメラG250抗体とサイトカイン、例えばIL−2との組合せによる免疫療法がRCCの治療の見込みを示すかも知れないことを示唆している。
【0009】
Beck他、Proceedings of the American Association for Cancer Research, Vol.43, (March 2002)のアブストラクト(非特許文献2)には、転移性RCC中での低い用量のIL−2との組合せでモノクロナール抗体G250を用いてのI/II期試験が記載されている。I期では、患者は、選択的な低い用量および周期的なパルス治療方法に従い、6週間に亘ってG250を1週間に1回静脈内投与され、IL−2を皮下投与された(一日当たりIL−2 1.8MIUまたは5.4MIU、1回量)。II期の間、6人の患者は、連続してさらに6週間治療を受け、9人の付加的な患者は、12週間の治療を受けた。治療は、十分に許容されるものであったが、14人の患者の中の4人の患者は、当初進展性の疾患が安定化することを示した。この4人の中の1人の患者は、第34週目の再検査で認められたように部分的な鎮静を示した。1人の付加的な患者は、第16週目に初めて観察された部分的な鎮静を有し、この応答は、最終的に第34週目で確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5104652号明細書
【特許文献2】WO 01/87336
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cancer Immunol Immmunother 51 (2002), 171-177
【非特許文献2】Proceedings of the American Association for Cancer Research, Vol.43, (March 2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の基礎を成す目的は、実質的な副作用をまねくことなく以前のプロトコルよりも有効性を有する、抗腫瘍抗体及び低い容量のサイトカイン(IL−2またはIFN−α)を同時投与することにより治療するための抗腫瘍剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、腎細胞腫を治療するための、MN(G250)抗原に向けられた抗腫瘍抗体および低い用量のIFN−αを含有する抗腫瘍剤が提供され、この抗腫瘍剤は、低い用量のIFN−αが第1の治療段階での投与のためのものであり、抗腫瘍抗体および低い用量のIFN−αが第2の治療段階での同時投与のためのものであることによって特徴付けられる。
【0014】
更に、本発明の実施態様は、次の段階:
(a)第1の治療段階が低い用量のサイトカインを投与すること、好ましくは低い用量のサイトカインを連続的または繰返し投与することを含み、
(b)第2の治療段階が抗腫瘍抗体および低い用量のサイトカインを同時投与することを含み、この場合サイトカインは、好ましくは連続的にかまたは繰返し投与されることによって特徴付けられる、悪性疾患を治療する方法に関する。
【0015】
本発明によれば、サイトカインは、低い用量の形で投与され、この場合投与は、好ましくは連続的にかまたは繰返し全治療時間間隔に亘って行なわれる。投与は、好ましくは毎日か1週間にそれぞれ二日目毎および/または3回(deily each second day, and/or three times a week)である。この連続的に/繰り返される低い用量での投与により、サイトカインレベルは、例えばADCCの増加によって抗腫瘍抗体の活性を増加させるのに十分な高さでありおよび/または実質的な副作用、特にサイトカインに関連した毒性なしに患者の免疫系、例えばNK細胞を活性化させるのに十分な高さである。抗腫瘍抗体またはサイトカイン単独での投与と比較して、組み合わせた投与の治療的効率は、15%以上増加されている。
【0016】
本発明によれば、"低い用量のサイトカイン"の投与は、サイトカインが毒性の副作用の実質的な不在下、例えばNational Cancer Institute (NCI) Common Toxicity Criteria (CTC) Version 2.0, April 1999 毒性度3またはそれ以上の実質的な不在下、よりいっそう好ましくは毒性度2またはそれ以上の実質的な不在下、最も好ましくは毒性度1またはそれ以上の実質的な不在下で抗体療法の有効性を改善する、製薬学的に有効である用量で投与されることを意味する。
【0017】
サイトカインは、好ましくはインターロイキン、例えばIL−2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15、インターフェロン(例えばIFN−α、IFN−βおよびIFN−γ)、TNF−α、TNF−β、神経成長因子(NGF)、CD40のリガンド、FASのリガンド、CD27のリガンド、CD30のリガンド、マクロファージ抑制蛋白質、ランツ(Rantes)、活性断片および製薬学的に認容性の類似物およびその誘導体ならびにその混合物からなる群から選択されたものである。よりいっそう好ましくは、サイトカインは、IL−2およびIFN−αから選択されたものである。IL−2の好ましい用量は、毎日1MIU〜10MIUの範囲内、特に毎日1.5MIU〜6MIUの範囲内にある。IFN−αの好ましい用量は、1週間に3回1〜10MIU、特に1週間に3回1〜4MIUの範囲内にある。
【0018】
サイトカインの用量は、全治療の間、一定であることができる。また、用量は、特に2段階プロトコルの第2の治療段階において、可変の用量であることができ、即ち用量は、第1の低い用量と第2の低い用量との間の治療の間に変更されてもよく、この場合第2の低い用量は、第1の低い用量の5倍まで高くともよい。例えば、第1の低い用量は、治療の第1週目に、例えば2段階のプロトコルの第2の治療段階で与えられてよく、第2週目では、第1の用量と第2の用量は、選択的に与えられる。第3週目においては、投与は、第1週目と同様であり、第4週目では、投与は、第2週目と同様であり、以下、同じように続けられる。
【0019】
サイトカインは、皮下投与されてもよいし、静脈内投与されてもよいし、これらの任意の組合せで投与されてもよい。好ましい投与は、皮下投与である。
【0020】
本発明によれば、療法の第2の活性成分は、抗腫瘍抗体である。本発明による"抗腫瘍抗体"の用語は、悪性疾患、特に腎細胞腫に抗して有効性を有する任意の抗体に関する。好ましくは、抗腫瘍抗体は、所謂腫瘍抗原、即ち上記したような悪性腫瘍と関連した抗原、特にポリペプチドまたは炭水化物構造体に向けられている。
【0021】
よりいっそう好ましくは、抗腫瘍抗体は、MN(G250)抗原に向けられた抗体から選択されている。MN抗原に対する抗体は、例えば欧州特許第0637336号明細書に記載されている。殊に好ましくは、抗腫瘍抗体は、キメラG250抗体もしくはヒトG250抗体またはそれらの断片である。これらの抗体は、PCT/EP/02/01282およびPCT/EP/02/01283に記載されたような方法によって製造されることができる。
【0022】
抗腫瘍抗体は、好ましくは例えば注入または静脈内注射によって静脈内投与される。抗腫瘍抗体の投与は、好ましくは5〜20日間の時間間隔、例えば約1週間の時間間隔である。
【0023】
全治療プロトコルは、好ましくは50〜200日間の時間間隔を有する。治療が2段階の治療を有する場合には、第1の治療段階は、好ましくは5〜20日間、例えば約1週間を有し、第2の治療段階は、好ましくは5〜200日間、例えば約70〜120日間を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、サイトカインは、低い用量の形で投与され、この場合投与は、好ましくは連続的にかまたは繰返し全治療時間間隔に亘って行なわれる。投与は、好ましくは毎日か1週間にそれぞれ二日目毎および/または3回(deily each second day, and/or three times a week)である。この連続的に/繰り返される低い用量での投与により、サイトカインレベルは、例えばADCCの増加によって抗腫瘍抗体の活性を増加させるのに十分な高さでありおよび/または実質的な副作用、特にサイトカインに関連した毒性なしに患者の免疫系、例えばNK細胞を活性化させるのに十分な高さである。抗腫瘍抗体またはサイトカイン単独での投与と比較して、組み合わせた投与の治療的効率は、15%以上増加されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
更に、本発明は、次の実施例につき説明される。
【実施例】
【0026】
実施例1
キメラG250抗体(cG250)とIL−2を同時投与することよりなる臨床試験
1.1 最終点判断基準
第1の最終点
毒性
対象物の腫瘍応答
第2の最終点
ADCC
HACA
進展時間
全体に亘っての生存率
1.2 設計
前向きで開放標識付けされたsingle armの作為的なI/II期の多施設共同治験を、進展した腎細胞腫をもつ患者で実施した。この研究のI期の部分で、第1の6人の患者に、交互に低い用量によりcG250を1週間に1回静脈内投与し、IL−2を皮下投与し、6週間、周期的なパルス治療方法を受けさせた。定義された判断基準により薬剤に関連した毒性が受容可能であることが示された後、前記の6人の患者を全部で12週間でさらに6週間治療し、付加的に9人の患者(II期の部分の開始)を12週間の治療に登録した。客観的な応答(CR、PR)または安定な疾患を示す患者に6週間の付加的な治療作業周期を提供した。
【0027】
進展時間を除く全てのパラメーターの最終的な分析についてのデーターベースの開示は、全ての患者について22週間目での評価であった。更に、長時間の結果、引続く客観的に応答があったものの進展時間の定義および安定な疾患を示す患者を評価した。
【0028】
1.3 治療、用量および用量による養生法/投与の研究
cG250を第1表中の治療方法により投与した。IL−2だけを1週間前に先に投与し、1回の用量につきキメラモノクロナール抗体cG250 20mgを、全部で11週間連続的に標準の食塩水50〜100mlの静脈内注入によって1週間(±2日)で1回投与した。30分間に亘り、注入液を投与した。
【0029】
IL−2を第1表中の治療方法により皮下投与した。被検者に、12週間連続的に商業的に入手可能な組換えヒトIL−2の一日1回の注入を家庭で受けさせたかまたは自己投与させた。第1週目で開始し、患者に毎日IL−2を1.8MIUの1回量で皮下投与した。第2週目の第1日目にcG250を先に投与してから同量のIL−2を投与した。2週目の残りの日数で、患者に一日当たり1.8MIUを皮下投与した。第3週目の第1日目から第3日目で患者にIL−2を一日当たり5.4MIUでパルス投与した。残りの日数でIL−2を1.8MIUで投与した。第3週目のIL−2治療を第5週目、第7週目、第9週目および第11週目で繰返し、第2週目の治療方法を第4週目、第6週目、第8週目、第10週目および第12週目で繰り返した。
【0030】
一般に、IL−2注入は、家庭で患者が早朝に行なった。cG250投与の日についてだけ、この注入は、患者が外来として診察されるまで遅延させた。G250投与の日には、G250治療の1時間後に、患者にIL−2(用量の如何を問わず)を投与した。
【0031】
1.4 試験方法および試験手段/フローチャート研究
研究方法は、この文節に詳細に記載されている。このプロトコルの試験および方法の一般的な概観は、G250/IL−2投与方法に記載されている(第1表)。
【0032】
患者を、必要に応じて生命徴候の毎週の制御、毒性評価、性能状況および実験室試験、例えばCBC、血液化学および放射線試験によって治療時間の間、安全性の理由について注意を逸らさないで監視した。全ての血液採取をそれぞれIL−2およびG250の投与前に実施した。5ヶ月間で患者1人当たりの血液採取の全体積は、約300mlであった。
【0033】
実施された研究/評価は、次の第1表中に記載されている:
第1表:cG250/IL−2投与方法
cG250:週1回の静脈内注入、各週の第1日目に投与した、外来として診察される患者。
IL−2:1週間に7日間の皮下注射、第1日目は、月曜日または火曜日である。外来として診察される患者、および家庭での注入。
【0034】
【表1】

【0035】
1.5 毒性の分類法
アレルギー反応:NCI CTC毒性度尺度に従ってアレルギー毒性度2以上の任意の等級については患者を研究から除外した。
発熱:予定されたcG250注入の日に39℃を上廻って発熱した(等級2)が、しかし、アレルギー症状をもたない患者には、熱が38℃以下に低下する(等級0)までcG250を投与しなかった。熱が2日間低下しなかった場合には、cG250注入を取りやめ、次に予定されたG250注入日に治療を再開した。
【0036】
39℃を上廻って発熱した日にIL−2の皮下注射を行なった。毎日のIL−2注入は、熱が38℃以下に低下するまで取りやめた。パラセンタモル500mgの使用により、温度が38℃以下に減少しなかった場合には、温度がふたたび38℃以下になるまで、注入は、中断された。
【0037】
注入の部位での痛み、かゆみ、紅斑、膨脹、炎症、静脈炎および腫瘍は、NCI CTC判断基準によれば、"局所的な副反応"と見なされ;判断基準は、"アレルギー反応/過敏症"の一部として診断された。
【0038】
1.6 有効性の評価
1.6.1 有効性のパラメーター
腫瘍の客観的な応答は、有効性の主要なパラメーターであった。腫瘍の評価は、1)測定可能なターゲットの病変についての最小寸法の要件および2)明らかに定義された二次元的測定での腫瘍質量を有するWHO腫瘍評価ガイドラインに基づいて実施された。
【0039】
ターゲットの病変についての腫瘍の測定は、CTスキャンまたはMRIスキャンで実施された。全てのインジケーターに関連して、最大の腫瘍直径の病変による最少寸法は、1.0cmであった。
【0040】
含まれる全ての器官の代表例である、器官1個当たり最大5個所の病変になるまで測定可能な1.0cm以上の全ての病変は、ターゲットの病変として識別され、記録され、基準線として測定された。
【0041】
1.6.2 評価方法(例えば、腫瘍応答、特異的試験)
腫瘍の評価は、造影媒体強化螺旋状コンピューター断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像診断法(MRI)に基づくものであった。同様の方法は、研究を通じて使用された。全ての測定は、物差しまたはキャリパを用いて、メートル法での表記法で記録された。全ての基準線の評価は、治療の開始時および治療の開始前の4週間以内にできるだけ厳密に実施された。
【0042】
腫瘍応答は、WHOの判断基準に応じて次のように評価された:
完全応答(CR):2つの評価によって測定された公知の全ての疾患の消失は、4週間未満と離れていなかった。
部分応答(PR):2つの評価によって治療効果を測定するために測定された病変の最大直径と垂直方向の直径との積の総和の50%以上の減少は、4週間未満と離れていなかった。付加的に、新たな病変の現出または任意の病変の進展は、存在しなかった。
変化なし(NC)=安定な疾患(SD):全腫瘍寸法における50%を上廻る減少は、確立されなかったし、1つ以上の測定可能な病変が証明された寸法の25%も増加しなかった。
進展性疾患(PD):1つ以上の測定可能な病変の寸法の25%以上の増加、または新たな病変の現出。
【0043】
1.6.3 腫瘍評価のタイミング
腫瘍評価を研究の参加前、第16週目および第22週目ならびにドロップアウトについてはドロップアウト時間に実施した。第22週目の評価は、第16週目に確認された放射線医学の結果の確認に役立った。
【0044】
cG250治療の終結後3ヶ月毎にCTを実施することによって治療の経過中に進展しなかった全ての患者について再調査するという努力がなされた。これは、客観的な応答時間または安定した疾患を評価するのに役立った。
【0045】
1.6.4 ADCCアッセイ
患者からの単離された抹消血液単核細胞(PBMC)の抗体依存性の細胞媒介細胞毒性(ADCC)を、Lamers et al.(29)により、51Cr放出アッセイを用いて分析した。ターゲット細胞は、SKRC MW1−cl4であった(G250抗原過剰発現RCC細胞系列)。対照は、SKRC PBJ−cl1(G250抗原陰性RCC細胞系列)およびP815(抗P815血清を有する陽性対照)であった。G250を用いてのインキュベーションおよび患者のPBMCの連続希釈の後に、溶解されたターゲット細胞によって放出された51Crを上澄み液中で測定した。ターゲット細胞の特異的溶解による質量平均を計算した。
【0046】
1.7 統計
1.7.1 方法/分析
研究は、登録された最大で30人の評価可能な患者を有する患者の2つの群の連続的な登録者数に基づくものであった。15人の患者を登録した後(段階1)、15人の患者の第2の群を登録することにより、研究を継続させた。
【0047】
30人の患者の最大の登録者数で試験を81%促進され、5%の推測される自発的な応答率に対して15%の客観的な応答率を検出することができた。
【0048】
この試験設計は、暫定的な分析で早期を停止の機会を最大にするけれども、客観的な応答速度および自発的な応答速度の下で患者の予想される登録者数を最少化するために選択された。計算方法は、Waldにより変更されたSequential Probability Ratio Testであった(30、31)。
【0049】
研究の大きさは、α≦0.05および1−β≧0.80に基づき、5%の自発的な応答率と15%の潜在的な真の応答率との差を検出することができた。
【0050】
1.8 結果
国際的に受け容れられた定義(32)により、疾患が研究の参加時から進展してから大体少なくとも6ヶ月の間の客観的な応答または疾患安定化は、一般に"臨床的な利点"として受け容れられた。
【0051】
現在の研究において、患者の約30%は、客観的な応答または疾患安定化を22週間またはそれ以上示し、それ故に、上記の治療方法は、治療された患者群にとって"臨床的な利点"を表わす。このような範囲に対する臨床的な利点は、前記の極めて問題のある患者群には観察されなかった(転移性RCC患者、しばしば疾患の末期段階で)。
【0052】
更に、治療は、安全である。静脈内投与されたcG250と皮下投与されたIL−2の組合せ療法は、十分に許容された。cG250に対する深刻な逆作用は、全く観察されなかった。IL−2療法に対する中程度の逆作用(大抵の場合には、低い用量での投与のために許容しうる)が観察され、アレルギー反応およびヒト抗キメラ抗体(HACA)は、全く観察されなかった。
【0053】
実施例2
キメラG250抗体(cG250)およびIFN−αを同時投与することよりなる臨床試験
臨床試験を実施例1の記載と同様に実施したが、しかし、第2表に示したような投与プロトコルに変更した:
第2表:cG250/IFN−α投与方法
cG250:週1回の静脈内注入、各週の第1日目に投与した、外来として診察される患者。
IFN−α:1週間に3回の皮下注射、外来として診察される患者、および家庭での注入。
【0054】
【表2】

【0055】
cG250の静脈内投与とIFN−αの皮下投与の組み合わされた療法は、十分に許容された。cG250に関連した深刻な逆作用は、観察されなかった。
【0056】
IFN−α療法にとって典型的な中程度の逆作用だけが見出された。この逆作用は、低い用量での投与プロトコルのために十分に許容された。更に、アレルギー反応およびHACA反応は、全く観察されなかった。
【0057】
先行する結果は、治療された患者群にとって臨床的利点の存在を示す。
7 参考文献



【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明により、新たに、実質的な副作用をまねくことなく以前のプロトコルよりも有効性を有する、抗腫瘍抗体及び低い容量のサイトカイン(IL−2またはIFN−α)を同時投与することにより悪性疾患(特に腎細胞腫(RCC))を治療するための抗腫瘍剤を提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍抗体およびサイトカインをそれらを必要とする被検者に同時投与することにより成る、癌腫を治療する方法において、サイトカインを低い用量の形で連続的にかまたは繰返し投与することを特徴とする、癌腫を治療する方法。
【請求項2】
抗腫瘍抗体およびサイトカインをそれらを必要とする被検者に同時投与することにより成る、癌腫を治療する方法において、
(a)第1の治療段階が低い用量のサイトカインを投与することを含み、
(b)第2の治療段階が抗腫瘍抗体および低い用量のサイトカインを同時投与することを含むことを特徴とする、癌腫を治療する方法。
【請求項3】
低い用量のサイトカインがNIC CTC毒性度3またはそれ以上の実質的に不在下で製薬学的に有効である用量を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
低い用量のサイトカインの一日の投与量を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
サイトカインがインターロイキンおよびインターフェロンから選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
サイトカインがIL−2である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
IL−2の用量が一日当たり1〜10MIUの範囲内にある、請求項6記載の方法。
【請求項8】
サイトカインがIFN−αである、請求項5記載の方法。
【請求項9】
IFN−αの用量が1週間3回で1〜10MIUの範囲内にある、請求項8記載の方法。
【請求項10】
サイトカインが治療の間、実質的に一定の用量で投与される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
サイトカインが治療の間、変動する用量で投与される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
サイトカインが皮下に投与される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
抗腫瘍抗体がMN(G250)抗原に向けられた抗体から選択される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
抗腫瘍抗体がキメラG250抗体もしくは人体G250抗体またはそれらの断片である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
抗腫瘍抗体が5〜20日間の時間間隔で投与される、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
第1の治療段階が5〜20日間を有する、請求項2記載の方法。
【請求項17】
第2の治療段階が50〜200日間を有する、請求項2記載の方法。

【公開番号】特開2011−68696(P2011−68696A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3153(P2011−3153)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2004−516641(P2004−516641)の分割
【原出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【出願人】(501022343)ヴィレックス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Wilex AG
【住所又は居所原語表記】Grillparzer Strasse 10, D−81675 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】