説明

腐食抑制剤

【課題】皮膜形成機能と中和機能とを兼ね備えた腐食抑制剤であって、高温環境でも長期間安定的に保存することができ、しかも1バッチで容易に製造することが可能な腐食抑制剤を提供する。
【解決手段】次の(A)〜(D)の各群の成分を含有する腐食抑制剤。
(A)炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミン化合物
(B)界面活性剤
(C)2−アミノ−2−メチル−プロパノール、モルホリン、及びモノイソプロパノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性アミン
(D)炭素数が6〜16個の脂肪族アルコール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ蒸気復水系統の熱交換器や配管等に使用される金属の腐食を抑制するための腐食抑制剤に係り、特に高温環境での長期保存安定性に優れた腐食抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の蒸気発生系統では、給水中の溶存酸素や重炭酸イオンや二酸化炭素によるpHの低下で、水蒸気や復水系統の熱交換器や配管等を構成する金属が腐食する。この腐食を抑制するために、特に、薬剤を用いる方法が広く実施されている。
【0003】
この薬剤は、主に、酸素や二酸化炭素等の腐食性因子を含む水蒸気や復水が金属表面に直接接触しないように、金属表面に防食性の皮膜を形成する皮膜性薬剤と、水に含まれる二酸化炭素を中和する中和性薬剤とに大別されるが、腐食をより効果的に抑制するために、皮膜形成の機能と中和の機能とを一剤で備えるものが提案されている(特公平4−45590号公報参照)。これは、炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミンと、アルカノールアミン化合物と、炭素数が8〜24個の脂肪族アルカリ金属塩とを含むものである。この薬剤において、長鎖脂肪族アミンは皮膜形成機能を、アルカノールアミン化合物は中和の機能を、脂肪族アルカリ金属塩は、長鎖脂肪族アミンを水系にエマルジョン化して分散させる界面活性剤の役割をそれぞれ担っている。
【0004】
しかしながら、上述の皮膜形成機能と中和機能とを兼ね備えた水性エマルジョン系薬剤は、保存安定性が不十分であり、特に高温環境での長期的な保存に適さない欠点がある。このため、安定性の向上のために、界面活性剤の種類と中和剤であるアミンの種類を替えて幾つかの改良提案がなされている(例えば特開平11−335878号公報、特開2002−256462号公報参照)。これらの薬剤は、炭素数が10〜24の長鎖脂肪族アミン化合物と脂肪族アミノアルコール化合物とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを含む組み合わせ、或いは炭素数が10〜24の長鎖脂肪族アミン化合物と脂肪族アミノアルコール化合物とポリグリセリンエステル化合物とを含む組み合わせなどであり、基本的には長鎖脂肪族アミン化合物と脂肪族アミノアルコール化合物と界面活性剤の配合系の腐食抑制剤となっている。
【特許文献1】特公平4−45590号公報
【特許文献2】特開平11−335878号公報
【特許文献3】特開2002−256462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
皮膜形成機能と中和機能とを兼ね備えた水性エマルジョン系腐食抑制剤については、保存安定性の向上を目的に、改良提案がなされているが、特開平11−335878号公報及び特開2002−256462号公報の実施例にも示されるように、これらの改良薬剤を製造する方法は、まず、長鎖脂肪族アミン化合物と脂肪族アミノアルコール化合物とポリグリセリンエステル化合物、或いは長鎖脂肪族アミン化合物と脂肪族アミノアルコール化合物とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの混合液を調製した後、これを冷水中に滴下して水性エマルジョン化を行うという、2段階のバッチ製法である。このような2段階製法では、反応釜等の設備を複数保有する必要があり、また、製造後の洗浄廃液の排出量も多く、しかも、この洗浄廃液は脂肪酸等のCODを含むものであり、環境に対する負荷も問題となる。
【0006】
しかも、これらの改良された水性エマルジョン系薬剤であっても、未だに長期保存安定性は十分ではなく、特に高温環境ではゲル化(増粘)しやすく、実際の使用に関しては高粘度ポンプが必要になるという欠点があった。
【0007】
本発明は、皮膜形成機能と中和機能とを兼ね備えた腐食抑制剤であって、高温環境でも長期間安定的に保存することができ、しかも1バッチで容易に製造することが可能な腐食抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の腐食抑制剤は、次の(A)〜(D)の各群の成分を含有することを特徴とする。
(A)炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミン化合物
(B)界面活性剤
(C)2−アミノ−2−メチル−プロパノール、モルホリン、及びモノイソプロパノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性アミン
(D)炭素数が6〜16個の脂肪族アルコール
【0009】
請求項2の腐食抑制剤は、請求項1において、(A)長鎖脂肪族アミン、(B)界面活性剤、(C)水溶性アミン及び(D)脂肪族アルコールが水性媒体中にエマルジョン化してなる腐食抑制剤であって、(A)長鎖脂肪族アミンの含有量が0.1〜5.0重量%で、(B)界面活性剤の含有量が0.1〜10重量%で、(C)水溶性アミンの含有量が0.5〜50重量%、(D)脂肪族アルコールの含有量が0.2〜1.0重量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項3の腐食抑制剤は、請求項1又は2において、(B)界面活性剤がポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膜形成機能と中和機能とを兼ね備えた腐食抑制剤であって、高温環境でも、ゲル化(増粘)等の性状変化の問題がなく、長期間、安定的に保存することができる腐食抑制剤が提供される。しかも、この腐食抑制剤は、(A)長鎖脂肪族アミン化合物、(B)界面活性剤、(C)水溶性アミンを製造釜に入れて加熱攪拌して均一溶液とし、そこに水を投入して乳化し、その後(D)脂肪族アルコールを投入して攪拌した後、攪拌しながら徐々に冷却することで、一バッチで容易に製造することができるため、製造釜は一つで良く、また、廃液排出量も大幅に低減されるため、工業的に極めて有利である。
【0012】
本発明の腐食抑制剤は、(A)長鎖脂肪族アミンの含有量が0.1〜5.0重量%で、(B)界面活性剤の含有量が0.1〜10重量%で、(C)水溶性アミンの含有量が20〜40重量%で、(D)脂肪族アルコールの含有量が0.2〜1.0重量%であることが好ましい。また、(B)界面活性剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むものが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の腐食抑制剤の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の腐食抑制剤は、次の(A)〜(D)の各群の成分を含有することを特徴とする。
(A)炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミン化合物(以下「(A)成分」と称す場合がある。)
(B)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む界面活性剤(以下「(B)成分」と称す場合がある。)
(C)2−アミノ−2−メチル−プロパノール、モルホリン、及びモノイソプロパノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性アミン(以下「(C)成分」と称す場合がある。)
(D)炭素数が6〜16個の脂肪族アルコール(以下「(D)成分」と称す場合がある。)
【0015】
(A)成分の炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミン化合物は、金属の表面に対し、水による腐食を抑制するための皮膜を形成するための成分であり、長鎖脂肪族基の炭素数が10〜22個、好ましくは12〜20個のものである。この炭素数が10個未満の場合は、金属に対して皮膜を形成しにくくなる可能性があり、腐食抑制機能が不十分になる可能性がある。逆に、炭素数が24個を超える場合は、腐食抑制剤のエマルジョンがゲル化しやすくなり、安定性が損なわれる可能性がある。
【0016】
なお、この長鎖脂肪族アミン化合物を構成する長鎖脂肪族基は、不飽和結合を含んでいても良い。また、この長鎖脂肪族アミン化合物を構成するアミノ基は、その水素部分がメチル基やエチル基などの炭化水素基により、適宜置換されていても良い。さらに、この長鎖脂肪族アミン化合物は、脂肪酸塩であっても良い。この場合、脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸およびステアリン酸を挙げることができる。
【0017】
(A)成分の長鎖脂肪族アミン化合物のうち、好ましいものとしては、例えば、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミンなどの飽和脂肪族アミン、オレイルアミン、リシノレイルアミン、リノレイルアミン、リノレニルアミンなどの不飽和脂肪族アミン、ヤシ油アミン、硬化牛脂アミンなどの混合アミンなどを挙げることができる。なお、長鎖脂肪族アミンは、2種類以上のものが併用されても良い。
【0018】
これらの長鎖脂肪族アミン化合物の具体例うち、特に好ましいものは、オクタデシルアミンである。オクタデシルアミンは、米国FDA規格において、ボイラ水用添加剤として使用が認められており、これを(A)成分として用いた場合には、ボイラから発生した蒸気が漏れて食品と接触しても安全性の面で問題がないので、食品製造業においても使用できる利点を有する。
【0019】
(B)成分の界面活性剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含み、そのポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、好ましくはポリグリセリンと長鎖脂肪酸とのエステルが挙げられる。このエステルは、モノエステルであっても良いし、ジエステル若しくはそれ以上のエステルであっても良い。また、ジエステル若しくはそれ以上のエステルの場合、ポリグリセリンに対して2種以上の脂肪酸等がエステル結合していても良いし、脂肪酸によるエステル結合とリン酸等によるエステル結合とを同時に含んでいても良い。ポリグリセリン脂肪酸エステルの長鎖脂肪酸としては、通常、炭素数が12〜18個のものが好ましく、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸およびカプリル酸を挙げることができる。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとして特に好ましいものは、ポリグリセリンと長鎖脂肪酸とのエステルの一種であるポリグリセリンステアリン酸エステルである。ポリグリセリンステアリン酸エステルは、食品添加物としての使用が認められている化合物であり、人体若しくは環境に対する安全性の高いものであるため、これを界面活性剤として含む本発明の腐食抑制剤は、食品加工用や滅菌処理用の水蒸気や水を供給するためのボイラをはじめとする各種装置に対しても適用することができる。
【0021】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、親油性/親水性バランスを表すHLB値が13〜15のものを用いるのが好ましい。HLB値が13未満の場合は、本発明の腐食抑制剤の乳化安定性、特に、長期間に渡る乳化安定性が低下する可能性がある。逆に、15を超える場合は、目的とする水性エマルジョンが得られない可能性がある。
【0022】
一方、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル等が挙げられ、エチレンオキサイドは4〜30モルの割合で付加されているのが好ましい。
米国FDA規格をはじめ、国際的に広く食品添加物として使用が認められているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを使用した場合には、ボイラーから発生した蒸気が漏れて食品と接触しても安全性の面で問題が無いので、食品製造業においても使用できる利点を有する。
【0023】
これら(B)成分のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、それぞれ、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0024】
(C)成分の水溶性アミンは、水に含まれる二酸化炭素を中和するための成分であり、水溶性アミンとして特に限定されるものではないが、米国FDA規格記載品である2−アミノ−2−メチル−プロパノール、モルホリン、モノイソプロパノールアミンが好ましい。
これらの水溶性アミンは1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0025】
(D)成分の炭素数が6〜16個の脂肪族アルコールとしては、飽和アルコールであっても良く、不飽和アルコールであっても良く、また、直鎖アルコールであっても分岐アルコールであっても良い。脂肪族アルコールとしては、特に炭素数8〜16のものが好ましく、具体例としては、オクタノール、ノナノール、セタノール等の飽和直鎖アルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の飽和分岐アルコールが挙げられるが、その他、l−メントール、テルピネオール、オイゲノール、イソオイゲノール、ケイ皮アルコール、ゲラニオール、シトロネロール、ボルネオール、リナロール等のアルコール系香料を用いることもできる。
【0026】
脂肪族アルコールは安全性の面から食品用香料の中から選択するのが好ましく、特にイソオイゲノール、オイゲノール、ケイ皮アルコール、l−メントール、ゲラニオール、シトロネロール、テルピネオール、ボルネオールを用いることが好ましい。
これらの脂肪族アルコールは1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0027】
本発明の腐食抑制剤は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)を水等の水性媒体中にエマルジョン化させた組成物として提供されるが、このような腐食抑制剤中の(A)成分である前述の長鎖脂肪族アミン化合物の含有量は、0.1〜5.0重量%、特に0.5〜1.0重量%であることが好ましい。(A)成分の長鎖脂肪族アミン化合物含有量が0.1重量%未満では金属に対して腐食防止用の所要の皮膜を形成するのが困難になる可能性があり、また、このような皮膜を形成するための腐食抑制剤使用量が過大となって不経済である上に、腐食抑制剤そのものの安定性、特に乳化安定性が損なわれる可能性がある。逆に、5.0重量%を超える場合は、腐食抑制剤がゲル化し易くなり、金属部材に対して所要の皮膜を形成するのが困難になったり、狭小な金属配管を閉塞させる可能性がある。また、腐食抑制剤が相分離しやすくなり、乳化安定性が低下する可能性がある。
【0028】
また、腐食抑制剤中の(B)成分の界面活性剤の含有量は、0.1〜10重量%、特に2〜3.5重量%であることが好ましい。(B)成分の界面活性剤の含有量が0.1重量%未満では、腐食抑制剤の保存安定性が不十分であり、10重量%よりも多くても、それに見合う効果の向上は得られず、界面活性剤使用量が増大して不経済である。
【0029】
また、(C)成分の水溶性アミンの腐食抑制剤中の含有量は0.5〜50重量%、特に20〜40重量%であることが好ましい。(C)成分の水溶性アミンの含有量が上記範囲より少ないと炭酸ガスの中和がしにくくなる可能性があり、多いと腐食抑制剤の乳化安定性が低下する可能性がある。
【0030】
また、(D)成分の脂肪族アルコールの含有量は0.2〜1.0重量%、特に0.4〜0.8重量%とすることが好ましい。(D)成分の脂肪族アルコールの含有量が0.2重量%未満では、(D)成分を添加することによる保存安定性の改善効果を十分に得ることができず、1.0重量%を超えると凝集により増粘が起こり易い。
【0031】
このような本発明の腐食抑制剤は、(A)成分の長鎖脂肪族アミン化合物と、(B)成分の界面活性剤と、(C)成分の水溶性アミンとを製造釜に入れて60〜70℃程度に加熱攪拌して均一な溶液とし、その後、ここへ所定量の水を投入して製造釜を40〜60℃に保温しながら1〜8時間程度攪拌し、(D)成分の脂肪族アルコールを投入して更にその温度で1〜8時間程度攪拌し、その後、攪拌しながら徐々に室温まで冷却することにより、一つの製造釜で容易に調製することができる。
【0032】
なお、本発明の腐食抑制剤は、前述の(A)成分〜(D)成分以外に、必要に応じて腐食抑制剤の慣用成分やその他の補助添加成分を任意に含有することができる。このような任意添加剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリンなどの可溶化剤、金属イオン封鎖剤、凍結防止剤などが挙げられる。
【0033】
本発明の腐食抑制剤は、供給水又は蒸気に対し、アミン添加量として0.1〜200mg/L、好ましくは1〜100mg/Lの濃度となるように連続的あるいは間欠的に添加することによって、金属部分の腐食を有効に抑制することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0035】
実施例1〜3、比較例1,2
(腐食抑制剤の調製)
表1に示す配合で(A)〜(C)成分を製造釜に仕込み、60〜70℃に加熱攪拌して均一に溶解した。次に水を表1に示す量投入し、製造釜を45〜50℃に保温して3〜4時間攪拌した。その後、表1に示す割合で(D)成分を製造釜に投入し、45〜50℃を維持したまま2〜3時間攪拌した(ただし、比較例1,2では(D)成分を用いず。)。その後、攪拌しながら徐々に室温まで冷却した。
【0036】
【表1】

【0037】
(保存安定性の評価)
各例で調製された薬剤を25℃又は45℃の恒温槽内にそれぞれ静置保管し、適時取り出して粘度の経時変化を調べ、結果を表2に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2より、本発明の腐食抑制剤は45℃での保管においても粘度は殆ど変化せず、安定性に優れるが、比較例の腐食抑制剤は45℃の保管で増粘し、性状が変化することが明らかである。
【0040】
(腐食抑制効果の評価)
各例で調製された腐食抑制剤について、以下のようにして、テストボイラを用いた蒸気復水系の腐食抑制効果を評価し、結果を表3に示した。
圧力1MPaの蒸気発生器に軟化水を供給して連続運転し、蒸気凝縮水中に軟鋼製のテストピースを浸漬し、48時間経過後の腐食速度を調べた。蒸気発生器には脱酸素剤の添加を併せて行い、溶存酸素濃度1mg/L以下に調整した。蒸気凝縮水の温度は約40℃に保持した。軟化水は野木町水を処理したもので平均的な酸消費量(pH4.8)は40mg−CaCO/Lであった。各腐食抑制剤の添加量は100mg/L−給水とした。
なお、腐食抑制剤を添加しない場合の腐食速度をブランクとして表3に記載した。
【0041】
【表3】

【0042】
表3より、本発明の腐食抑制剤は腐食抑制効果は従来品と同等であり、優れた効果を示すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)〜(D)の各群の成分を含有することを特徴とする腐食抑制剤。
(A)炭素数が10〜24個の長鎖脂肪族アミン化合物
(B)界面活性剤
(C)2−アミノ−2−メチル−プロパノール、モルホリン、及びモノイソプロパノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性アミン
(D)炭素数が6〜16個の脂肪族アルコール
【請求項2】
請求項1において、(A)長鎖脂肪族アミン、(B)界面活性剤、(C)水溶性アミン及び(D)脂肪族アルコールが水性媒体中にエマルジョン化してなる腐食抑制剤であって、(A)長鎖脂肪族アミンの含有量が0.1〜5.0重量%で、(B)界面活性剤の含有量が0.1〜10重量%で、(C)水溶性アミンの含有量が0.5〜50重量%、(D)脂肪族アルコールの含有量が0.2〜1.0重量%であることを特徴とする腐食抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2において、(B)界面活性剤がポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする腐食抑制剤。