説明

腐食測定野外装置

【課題】オンライン腐食監視またはオフライン腐食データロギング用の野外トランスミッタにおいて、導電率、一般的な腐食、および/または局部腐食の値を提供する低電力腐食測定装置を提案する。
【解決手段】電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、4〜20mAループに結合可能で4〜20mAループからの電源を用いて装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に腐食測定に関し、具体的には腐食を測定する低電力野外装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野外に設置されるトランスミッタ装置は、プロセス変数情報を制御装置および/またはデータ収集装置に提供するためにプロセス制御状況において広く採用されている。野外装置は、検査室測定器具類とは異なり、極端な温度と湿度にさらされる可能性がある製造工場、化学処理プラント、石油製油所などにおける悪環境条件に耐える密閉保護筐体を用いて構成されている。このような装置は、典型的に、温度、流体圧力、流量、および現行プロセスの制御に使用されるその他の変数を検出する分散制御システムにおいて採用され、一般に、4〜20mA制御ループによって他の制御装置に接続され、この制御ループからトランスミッタはその電源を得て、この制御ループを通じて検出された制御変数は制御システムに提供される。ループ給電トランスミッタは、様々なプロセス変数の検出に広く利用可能であり、トランスミッタは一般に測定されたプロセス変数に従って4mA〜20mAのループ電流を変えるように構成される(たとえば、プロセス変数範囲の0%が4mAで表わされ、100%が20mAに対応する)。他のトランスミッタはHARTなどの標準プロトコルに従ってデジタル通信を提供し、これによって、当該トランスミッタは制御ループを介してデータ、命令、およびその他の情報を送受信することができる。
【0003】
多くの化学プロセスは、流体をパイプ、タンク、およびその他の構造物の中に貯蔵し、あるいはこれらを通じて輸送する必要があり、これらの構造物は、輸送または貯蔵された流体と接触することによりやがて腐食する可能性がある。こうした状況において、このような腐食の量と速度を確認して保守を目的とした構造的完全性の説明と評価(informed evaluation)を可能にし、さらに、流体そのものの望ましくない腐食レベルまたは予期せぬ腐食レベルを明らかにすることが望ましく、この場合、腐食データが抑制剤注入などの改善策の適用および/またはこのような改善策の効率の確認と最適化とに使用されてもよい。他の腐食測定用途として、コンクリート中の鋼の腐食など、非流体にさらされる構造物の腐食が挙げられ、腐食を引き起こす材料は、一般に、固体、液体、または気体のいずれであれ、電解質と呼ばれる。しかし、ほとんどの化学処理環境の特性とパイプラインおよび流体貯蔵タンクの大きさおよび場所に起因して、精巧で高価な実験室等級の計装測定システムを用いて腐食測定を実施することは非現実的であることが多い。特に、このような高価なシステムは、パイプラインまたは貯蔵タンクの腐食状態のリアルタイムによるオンライン測定に適応しない。さらに、オンライン測定装置は、標準4〜20mA制御ループまたはバッテリ電源から得られるような非常に低い割当電力で動作することができなければならない。これらの用途に対して腐食測定機能を提供するために、最近では野外腐食トランスミッタが導入されている。しかし、従来の野外腐食トランスミッタは、これまでのところ、改良された野外トランスミッタにとって1つまたは複数の腐食関連値を測定するのに必要とされる所要レベルの腐食測定精度と、広範な構造材料、輸送される流体タイプ、および温度に関する腐食測定への適応性とを提供することができていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基本的な理解を容易にするためにここで本発明の様々な態様が要約され、この要約は、本発明を包括的に概観するものではなく、本発明の一部の要素を明確にするものでも本発明の範囲を明確にするものでもない。むしろ、この要約の主目的は、以下に提示されるより詳細な説明に先立って本発明の一部の概念を単純化して示すことである。本発明は、腐食速度、局部腐食性(たとえば、孔食)、溶液(電解質)抵抗または導電率などの1つまたは複数の腐食関連値をリアルタイムで正確に測定し、高価で繊細な実験室計装システムに馴染まない野外状況に採用されうる低電力野外装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つまたは複数の態様に従って、ループ給電腐食測定装置は、電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するために提供される。装置は、4〜20mAループからの電源、バッテリ、ソーラーパネルなどを用いて装置に給電する電源システムと、電解質中にある2つ以上の測定電極とインタフェースする信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムとを備える。信号調整は、1つまたは複数の励起信号を第1の電極を介して電解質に提供し、電極の少なくとも第2の電極を介して電流、電圧などの1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出する検出回路を含む。一部の実施形態において、スイッチングシステムは、溶液(電解質)抵抗(導電率)測定(SRM)、高調波歪み解析(HDA)、線形分極抵抗測定(LPR)、電気化学的ノイズ測定(ECN)などを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の測定方式を用いて、電解質抵抗または導電率、腐食速度、局部腐食指数などの腐食関連値を容易に提供する複数の異なる構成の励起および検出回路の回路部品と電極とを選択的に相互接続するための対応する制御信号によって動作しうる複数のアナログスイッチが備えられる。また、スイッチングシステムは、励起(補助)および検出(作用)電極がドライバアンプのフィードバック経路内にあるように励起回路のドライバアンプを結合するために動作してもよく、こうすると、これらの電極間に流れる電流によって作用電極と基準電極との間の電圧が印加される励起電圧に等しくなる。さらに、一部の実施形態において、スイッチングシステムは、電流制限抵抗が電流検出動作に影響を与えないように電流/電圧変換器回路のフィードバック経路にある検出回路の電流制限抵抗器を接続する。
【0006】
また、装置は、電解質に提供される励起信号を制御し、検出部品を選択的に構成して動作させ、検出回路からの側定値に基づいて1つまたは複数の腐食関連値を計算するためのプローブインタフェースと動作可能に結合される、たとえば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSPなどの処理システムを含む。また、プロセッサは、その後アップロードする場合に不揮発性メモリに計算された腐食値を記憶するように動作する。腐食値(単数または複数)は、接続された制御ループに4〜20mA信号の形のプロセス変数出力として提供されてもよい。装置は、所与の装置サイクルにおける測定値の数と測定方式とのユーザ構成を可能にし、かつループあるいはその他他の有線または無線通信を介して腐食関連値をユーザに提供する、HARTまたはその他の方式のデジタル通信用の通信インタフェースを含んでもよい。
【0007】
本発明の他の態様に従って、DCフリー検出信号に基づいてアナログデジタル(A/D)変換器に非DCフリー信号を提供するために、整流器システムが検出回路と結合され、DCフリー検出信号は電解質に提供される励起信号の交番極性に呼応して検出信号の極性を交番する同期整流器の一部であってもよい。このように、A/D入力は、サブナイキストサンプリング速度を可能にし、かつ測定電流の値を確認するために平均化する非ゼロ平均値を有する。整流器を使用することによって、非DCフリー信号に関連する誤差と腐食の悪化とを軽減する実質的にDCフリーの方形波励起信号が容易に供給されるとともに、電解質抵抗/導電率を測定する際に低いA/Dサンプリング速度で取り込まれた多くの検出電流読取り値を処理システムが平均化しうるように装置の電力が容易に節約される。一例において、同期整流器は、検出信号の極性を交番するためにプロセッサによってトグルされる第1のスイッチと、電解質抵抗を正確に測定するためにはるかに低いサンプリング速度でサンプリングされて平均化されうる非DCフリー信号を受信するアナログデジタル変換器を用いて励起周波数で実質的にDCフリーのAC励起信号を電解質に提供するために励起信号の極性を同期的に交番する第2のスイッチとからなる。一実施形態において、DCフリー方形波励起は、約500Hz以下、好ましくは約100〜200Hzの周波数で提供され、A/D変換器は毎秒約10サンプル未満の速度で検出電流をサンプリングする。
【0008】
本発明のさらなる態様に従って、装置は、電極を4〜20mAループから直流絶縁する絶縁障壁を含み、これによって、装置は別の絶縁障壁を必要とせずに所与のプラント設備に容易に組み入れられる。本発明の他の態様は、大電流および/または高電圧から保護するために装置内に本質的安全回路を備える必要があり、これは2段階システムであってもよく、電極を保護する抵抗器を含んでもよい。
【0009】
本発明の別のさらなる態様に従って、装置はスタンドアロンデータ収集および記憶装置として動作することができ、この場合、プロセッサは、一連の装置サイクルの各々において腐食関連値を計算し、計算腐食関連値をユーザによるその後の検索のために記憶し、この場合、その値は装置内の不揮発性メモリに記憶されてもよい。この態様において、装置は、ユーザが装置を構成しおよび/または装置から記憶された計算腐食関連値をHARTまたはその他の適切な通信プロトコルを用いて検索しうるように制御ループあるいはその他の有線または無線手段を通じて外部の通信装置とインタフェースしてもよく、1日分または複数日分の計算腐食関連値を記憶してもよい。
【0010】
本発明のさらなる態様に従って、電解質抵抗測定は、A/D変換器の入力範囲をより有効に利用するためにAC励起振幅を動的に調整することによって改良されてもよく、処理システムは第1の振幅の励起信号を提供し、得られた検出電流信号が所定の閾値を超えるまで励起信号振幅を選択的に増加させる。
【0011】
本発明の別のさらなる態様に従って、装置は、電流検出および整流器回路におけるオフセット誤差を補償するために自己較正するように機能し、処理システムは励起回路を制御して最初は励起信号を提供せず、同期整流器に検出電流信号の極性の交番を開始させる。プロセッサは、同期整流器は励起信号なしで動作している間にA/D変換器を用いて検出電流をサンプリングし、1つまたは複数の検出電流信号サンプルに基づいてオフセット値を計算する。この後、計算されたオフセット値は、電解質抵抗または他の腐食関連値を計算する際にオフセット補正として後で使用するために記憶される。
【0012】
別の態様において、励起は電極の差を補償するためにHDA測定中に調整され、処理システムは、励起信号を印加せずに検出電圧信号を測定し、検出電圧値をオフセットとして記憶し、その後、励起回路にオフセットとともに正弦波励起電圧信号を提供させ、検出電流信号の高調波に基づいてHDAを用いて腐食関連値を計算する。
【0013】
本発明の他の態様に従って、改善された高調波歪み解析(HDA)方式の測定が約50mHz以上の周波数の正弦波AC励起を用いて容易に行なわれ、装置は1サイクルを超える(好ましくは約10〜20サイクル)検出正弦波電流信号に基づいて1つまたは複数の腐食関連値を計算する。これによって、装置の測定サイクル時間を著しく延長することなく電流高調波読取り値を得るためのフーリエ解析を的確に実施するのに十分な電流サンプルを用いた腐食速度の測定が容易になる。
【0014】
本発明の別のさらなる態様は、HDA測定および計算が、可能であれば、高い電解質抵抗状況あるいはHDA測定において誤差の可能性を示す他の状態においてLPR測定に自動的に切り替えて実施される動的アルゴリズム変更に関する。この態様において、処理システムは、HDA方式測定を実施して、一連の装置サイクルの各々における検出回路によって検出される電流信号の高調波に基づいてStern−Geary定数(B値)を計算する。この後、1つまたは複数の妥当性試験が、量(R/(R+R))が閾値(たとえば、一例において約0.1)よりも小さいかどうかを判断し、量(2I−I)がゼロより大きいかどうかを判断し、および/または計算されたB値が所定範囲(たとえば、一実施形態において約10〜60mV)にあるかどうかを判断することによって、計算された電解質(電解質)抵抗Rと計算された分極抵抗Rの相対的大きさの確認など、計算されたB値に対して実施される。一実施形態において、妥当性試験(単数または複数)が高調波歪み解析から正確な腐食関連値が得られる可能性が高いことを示す場合、処理システムは計算されたB値による高調波歪み解析を用いて腐食関連値(単数または複数)を選択的に計算し、そうでなければ、腐食値(単数または複数)はユーザ定義のB値またはデフォルトのB値によるLPR測定を用いて計算される。
【0015】
本発明の他の態様に従って、処理システムは、電気化学ノイズ(ECN)測定値を用いて腐食関連値を導出する際に、ランニングモーメント計算(running moment calculation)を用いて少なくとも1つの統計値を計算し、これによって、大量のデータを記憶する必要性を軽減し、各装置サイクルにおける所要計算回数を削減する。
【0016】
関係する態様において、プロセッサは、サンプリングされた電流信号の標準偏差とサンプリングされた電流信号のrmsとに基づいて局部腐食指数を計算するように機能し、この場合、標準偏差とrmsはいずれもランニングモーメント計算に基づいている。
【0017】
本発明の別のECNに関係する態様は、ECN測定中に、補助電極と作用電極とを回路の仮想グラウンドに接続することによってこれらの電極を効果的に短絡する必要がある。一実施形態において、処理システムは、スイッチング部品を選択的に再構成して補助電極と作用電極とをプローブインタフェースシステム内の仮想グラウンドに接続し、ECNを用いて検出回路によって検出される信号に基づいて腐食関連値(単数または複数)を計算する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、装置における線形分極抵抗(LPR)の使用に関し、この場合、所定のユーザB値ではなく計算されたB値が採用される。さらに、計算されたB値は、ノイズイミュニティを高めるために一部の実施形態においてローパスフィルタ処理されることが好ましい。一実施形態において、処理システムは、一連の装置サイクルの各々において検出回路によって検出された電流信号の高調波に基づいてB値を計算し、計算されたB値と線形分極抵抗測定を用いて検出回路によって検出される電流信号とに基づいて所与の装置サイクルにおける腐食関連値を計算する。
【0019】
以下の説明と図面は、本発明の一部の例示的実装を詳しく示しており、本発明の様々な原理が実行される可能性のあるいくつかの例示的方法を示すものである。しかし、図示された例は、本発明の多くの可能な実施形態を網羅するものではない。本発明の他の目的、利点、および新規な特徴は、図面と併せて考察される本発明の以下の詳細な説明に示されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1つまたは複数の態様に従って関連するプローブおよび電極とともにループまたはバッテリ式トランスミッタを含む、例示的な腐食測定装置を示す斜視図である。
【図2】デジタルシステム、ループインタフェース、およびプローブインタフェースを含む、図1のトランスミッタのさらなる詳細を示す概念図である。
【図3A】様々な異なる腐食測定値に関するプロセッサ制御励起回路、検出回路、および装置のプログラムによる再構成用のアナログスイッチングシステムを含む、図1および2の例示的なトランスミッタにおけるプローブインタフェースシステムおよびデジタルシステムの部分を示す回路図である。
【図3B】絶縁トランスおよび2段階の本質的安全障壁を含む、図1および2の例示的なトランスミッタのループインタフェースシステムにおける絶縁回路のさらなる詳細を示す回路図である。
【図4】図1〜3Bの装置におけるSRM、HDA、LPR、セルオフセット電圧、およびECN測定値に関する複数の例示的なスイッチングシステム構成を示す表を例示する。
【図5】腐食測定に関して輸送または貯蔵される電解質にさらされる電極によってパイプまたは貯蔵構造物内に設置される測定装置のプローブおよび電極を図式的に示す部分断面側面図である。
【図6】図5の設備における電極の1つの等価回路と測定電解質とを示す簡略図である。
【図7】電解質抵抗測定に関する実質的にDCフリーの200Hz方形波、HDAおよびLPR測定用の100mHz正弦波、および励起のないECN部分を含む、図1〜6の装置の多相測定サイクルにおける励起回路によって測定電解質に印加される例示的な励起波形を示すグラフである。
【図8】電解質抵抗測定に関して装置において使用される実質的にDCフリーの方形波励起信号をさらに示すグラフである。
【図9A】図1〜6の装置における動的励起振幅調整を用いた電解質(溶液)抵抗測定(SRM)に関する例示的な動作を示すフローチャートである。
【図9B】図1〜6の装置における動的振幅調整中の異なる励起波形振幅に関する方形波励起電圧および対応する測定平均電流の電圧および電流プロットを示すグラフである。
【図9C】図1〜6の装置における動的振幅調整中の異なる励起波形振幅に関する方形波励起電圧および対応する測定平均電流の電圧および電流プロットを示すグラフである。
【図9D】図1〜6の装置における動的振幅調整中の異なる励起波形振幅に関する方形波励起電圧および対応する測定平均電流の電圧および電流プロットを示すグラフである。
【図10A】約200Hzで印加される例示的な方形波電圧励起信号のプロットと、約300msの低サンプリング周期を用いた2つの例示的な非同期A/D変換器サンプルとを示すグラフである。
【図10B】図10Aにおける2つの例示的なサンプリング時間での励起電圧および検出電流プロットを示すグラフである。
【図10C】図1〜6の装置におけるオンライン電流アンプオフセット測定に関する例示的な動作を示すフローチャートである。
【図11】図1〜6の装置における計算されたB値の妥当性試験を含む、HDAまたはLPR測定の動的アルゴリズム変更に関する装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】図1〜6の装置におけるHDA腐食測定に関する例示的なオフセット測定および励起信号調整を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで図を参照すると、本発明のいくつかの実施形態または実装が図面とともに以下に説明されており、全体を通じて同じ要素を表わすのに同じ参照符号が使用され、様々な特徴とプロットは必ずしも一定の縮尺で描かれていない。本発明は、腐食測定を提供するとともに1つまたは複数の最新の腐食測定方式を用いて監視し、標準4〜20mA制御ループまたはその他の通信手段によって接続される分散制御システムに採用される可能性のある、あるいは記憶された腐食データをユーザ通信装置にダウンロードする機能を有するスタンドアロン装置として働く可能性のあるリアルタイムの腐食監視および/またはオフライン腐食データロギングに関する導電率、一般的な腐食、および/または局所的腐食の値を提供するプログラム可能な低電力腐食測定野外装置に関する。
【0022】
最初に図1を参照すると、腐食監視/測定用として装置2が組み込まれる金属構造物の材料に適合した材料で作られることが好ましいプローブ6と3つ一組の電極8とともに、以下でさらに詳しく説明されるプロセッサベースの電子回路を内蔵するトランスミッタヘッド4とを含む、例示的な野外腐食測定装置2が本発明の1つまたは複数の態様に従って示されており、ここで、電極8は、パイプライン、貯蔵タンク、またはその他の対象となる構造物など、設置された構造物で貯蔵または輸送される溶液あるいは他の電解の個体、気体、または液体の中に沈められかあるいは埋め込まれている。トランスミッタハウジング4とプローブ6は、環境保護材料で構成され、装置2をオンライン腐食監視などの野外用途に使用して、腐食速度、局部腐食指数(腐食局在の程度)、および/または電解質抵抗(導電率)に関するプロセス変数を発生することができる。動作中、プローブ6は、パイプまたは流体チャンバーの中で腐食プロセスにさらされるように、パイプまたは流体チャンバーの内部に延在する電極とともに対象となる構造物に取り付けられる。
【0023】
以下でさらに詳しく説明されるように、装置2は、分極抵抗R、溶液抵抗R、および電気化学ノイズ測定値の測定を含む、多くの異なる腐食関連測定を実施することができる。線形分極抵抗(LPR)測定はほとんどの状況で機能する簡単な手法であり、この場合、設定電圧が試験電極に印加され、分極抵抗Rに関する値を得るために派生電流が測定される。この後、腐食電流Icorrが分極抵抗R(=印加電圧/流れる電流)からIcorr=B/Rとして計算され、ここで、BはStern Geary定数である。LPRは、存在する顕著な溶液抵抗R(Rと直列に現れる)の影響だけでなくB値の不確実な知識による影響も受け、特に、以下でさらに図示されて説明される実施形態におけるように正弦波励起を用いて行なわれる場合はノイズなどに対して一般にきわめて強く、影響を受けない。高調波歪み解析(HDA)は、派生電流の高調波からIcorrを直接計算し(印加電圧が純粋な正弦波である場合)、B値の知識を必要としない。LPRからのIcorrとHDAからのIcorrとは理論的に同じであるべきなので、既知のRまたは測定されたRに基づくHDA計算で使用される高調波情報からBを計算することが可能である。また、HDAは、応答を「線形化する」傾向がある溶液抵抗Rによって影響を受け、高調波歪みは非線形Rの効果であり、Rと直列に現れるRの効果ではない。高調波は低レベルのものとなりうるので、HDAによる測定結果(Icorrharm)は、測定ごとにノイズによって乱される可能性があり、B値がノイズの多いIcorrとRとから計算される場合は計算されたB値もノイズが多くなる。こうした状況に対応するために、Icorrharmに対して計算された値はフィルタ処理または平均化されうるが、これは、装置2の応答時間を遅らせて腐食の変化を検出する機能を阻害することになる。これらの矛盾する目的に対応するために、装置2は、各測定値(RとIcorrharmとからの)に対する瞬時のB値を計算し、デジタルローパスフィルタ処理によってBの変動を平均化し、フィルタ処理され計算されたB値はIcorrを計算するために瞬時のRとともに使用されうる。SRM、LPR、およびHDAに関するすべての摂動法は、試験電極の平均腐食速度を提供し、局部腐食にあまり敏感でない。しかし、ECNは装置2においても発生しうるものであり、装置2はあらゆる局部腐食の兆候を示す非摂動測定法(励起が外部から印加されない)を提供する。さらに、ECNは、キャビテーション損傷、浸食損傷、応力腐食割れなど、試験電極に自然に形成されるあらゆる保護酸化被膜への機械的損傷によって生じる局部腐食だけでなく、電気化学的に生じる局部腐食(孔食、すきま腐食など)も検出しうる。
【0024】
また、図2を参照すると、トランスミッタ4の電子装置が図式的に示されており、これは、装置2が標準4〜20mA制御ループ11とインタフェースする直流絶縁および本質的安全(IS)障壁回路12を有するループインタフェース10と、制御ループ11、あるいはバッテリ13、ソーラーパネル(図示せず)、またはその他の電源のいずれかの電流から得られる内部装置電源を提供する電源システム14とを含む。ループインタフェース10は、プロセッサ22がHARTまたはその他の通信プロトコルを用いて外部通信装置(図示せず)と通信しうるように、デジタルシステム20のプロセッサ22と制御ループ11とに動作可能に結合される通信インタフェース16をさらに含み、外部通信装置によって、ユーザは装置2を構成またはプログラムしてもよく、および/または記憶され計算腐食関連値を装置20から検索してもよい。さらに、プロセッサ22がループの電流を制御して測定/計算されたプロセス変数(たとえば、腐食速度、局部腐食指数、導電率などに対応する4〜20mAのループ電流レベル)を示しうるように、例示的なループインタフェース10はループ11の電流を制御する専用デジタルアナログ変換器(DAC)10を含み、さらに、FSKまたはその他のループ電流の変調方式を備え、HARTなどの適切なプロトコルに従ってループ11あるいはその他の有線または無線通信手段を介してデジタル通信を実施する。
【0025】
また、装置2は処理システム22を備えるデジタルシステム20を含み、処理システム22はマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックなど、任意の形態の処理回路であってもよく、これらによって、本明細書に記載された様々な機能性が達成されうる。デジタルシステム20は、1つまたは複数の形態のメモリ24、特に、フラッシュ、FRAMなどの不揮発性メモリを含み、アナログデジタル変換器(A/D)26を含んでもよく、A/D26および/またはメモリ24は独立した部品または回路であってもよく、あるいはプロセッサ22に内蔵されていてもよい。
【0026】
さらに、腐食測定装置2は、測定される電解質の中にある複数の測定電極8とインタフェースする信号調整回路34を有するプローブインタフェースシステム30を含む。図示された実装において、さらに、プローブインタフェース30は、以下でさらに説明されるような一部の測定方式に対して信号調整回路34によって少なくとも1つの電極8に印加される励起信号を発生する第2のDAC32を含み、励起DAC32は代替的にデジタルシステム20内に設置されてもよく、随意にプロセッサ22と一体化されてもよい。信号調整回路34は、DAC32の出力に従って、別名、補助電極の第1の電極E1を介して電解質に励起信号を提供する励起回路34aを備え、検出回路34bは他の電極E2および/またはE3の一方または両方を介して、電圧、電流などの1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するために提供され、第2の電極E2は電解質中の電圧信号を検出するために使用されるものとして本明細書では基準電極と呼ばれ、残る電極E3は腐食速度に関する電流信号を検出する作用電極(a work or working electrode)と呼ばれ、基準および/または補助電極E2、E1は不活性物質で作られる。さらに、信号調整システム34は、励起回路34aおよび検出回路34bの様々な部品と複数の異なる構成の電極8とのプロセッサ制御による再構成を可能にする複数のアナログスイッチング部品を有するスイッチングシステム34cを含む。
【0027】
また、図3A、3B、および4を参照すると、図3Aにおいて、励起回路34a、検出回路34b、およびU13〜U16と表示された4個のアナログスイッチング装置34cからなるスイッチングシステムを含む、プローブインタフェースシステム30とデジタルシステム20との一部の部品のさらなる詳細が示される。アナログスイッチU13〜U16の各々は、「0」状態と「1」状態として図に示される2つのスイッチング状態を有し、処理システム22は各スイッチ34cの状態を制御するための対応するスイッチング制御信号CS13〜CS16を提供する。さらに、アナログスイッチU13〜U16は、チップ選択入力(図示せず)によって制御されて、スイッチ端子が極端子のいずれからも切断される第3の動作状態を有しうる。このため、スイッチU13〜U16は、励起および検出回路34aおよび34bの部品のプロセッサ制御による相互接続用に結合されて腐食測定装置2を複数の異なる腐食測定配置で再構成し、図4は装置2のSRM、HDA、LPR、セルオフセット電圧、およびECN測定動作に関するスイッチの設定または状態を説明する表70を示す。例示的な装置2は、図4における測定モードのいずれか1つで動作させるためにユーザによってプログラムされてもよく、または一連の装置サイクルの各々においてリストに記載された測定方式の2つ以上を任意に組み合わせて測定を実施してもよく、これによって、腐食トランスミッタ2は容易に構成されて任意の腐食測定または監視用途を提供する。この点において、ループインタフェース30は、単一のユーザプログラム可能な装置2でECN、HDA、SRM、LPR、およびオフセットを用いて腐食測定および監視に関して進歩した性能を提供す一方で、アンプとその他の部品の数を最小にすることによって、ループまたはバッテリ電源から受ける厳しい電力制約の範囲内でインピーダンスと精度とに関する信号調整回路と電極8との最適な相互接続を可能にする。
【0028】
プロセッサ22は、各測定期間中に励起DAC32を制御して、励起回路34a、第1の(補助)電極E1、およびスイッチングシステム34cを介してセルに適切な励起を提供し、さらに、測定A/D26を動作させて、検出回路34b、スイッチ34c、ならびにそれぞれ基準および作用電極E2およびE3を介してセル電圧および/または電流の対応する測定値を得る。電極結合は、プローブ6と励起回路34aおよび検出回路34bへの接続を形成する抵抗器R49〜R51、ならびにフィルタネットワークR54〜R56、C56、C57、およびC58とを介して行なわれる。以下で説明されるシナリオにおいて、装置2は、装置U13〜U16のスイッチングを制御して各装置サイクルにおける一連の測定を実施する。さらに、図示された装置2において、選択可能な測定方式(たとえば、SRM、HDA、およびLPR)の一部は、励起信号の印加を含むが、他の測定方式(たとえば、ECN)は励起信号の印加を含まず、一般的な腐食はHDAまたはLPR測定方式を用いて計算され、電解質抵抗または導電率はSRM法を用いて測定され、ECN測定は局部腐食指数値を計算する際に使用される。一般に、励起信号(もしあれば)は、スイッチU13の「0」状態経路に直接接続された第1のアンプ(たとえば、オペアンプ)U12Aを用いた第1の極性、またはスイッチU13の「1」状態に接続されたインバータ構成アンプU12Bを介した反対の第2の極性のいずれかで、DAC32によって提供される電圧信号として補助電極E1に印加され、ドライバアンプU10Aは対応する出力電圧をスイッチU16と抵抗器R61の「0」状態経路を介して補助電極E1に提供する。さらに、これらの構成において、電極は励起回路34aのドライバアンプU10Aのフィードバックループ内にあり、これによって、補助電極E1と作用電極E3との間に流れる電流が基準電極E2と作用電極E3の間の電位を印加励起信号電圧と等しくせしめることになる。さらに、一部の使用可能な構成において、励起は印加されず、スイッチングシステムは補助電極E1を励起回路34aから電気的に絶縁し、処理システム22は検出回路34bによってE2とE3の間で検出される電圧信号をサンプリングする。
【0029】
あらゆる印加された励起電圧信号から派生するリターン電流は、例示的な3つの電極の定電位測定構成(potentiostatic measurement configuration)において作用電極E3を流れ、検出回路34bは電流電圧変換器のフィードバック経路の電流制限抵抗器R57とともに電流電圧変換器を形成する電流検出アンプU9Aによってこのような電流を検出し、これによって、電流制限抵抗器R57(たとえば、一実施形態において1kΩ)は電流検出動作に影響を与えない。電流電圧変換器の抵抗R57が電流経路にもたらす電圧降下はゼロに近く、この値は高い信号感度と広いダイナミックレンジの要件に従ってゲインを提供し過負荷に対してU9Aの反転入力を保護するように選択されてもよく、抵抗R57の電流測定への影響を排除するようにU9Aのフィードバックループ内にある。検出回路34bのこの電流電圧変換器は、HDAおよびECN測定において電流を検出するために使用され、さらに、分極抵抗LPRを測定する際に同期整流器と組み合わせて使用される。
【0030】
電流電圧変換器アンプU9Aは、スイッチU15のそれぞれ「0」状態と「1」状態とに対するアンプU8Aの反転入力または非反転入力のいずれかに出力を提供し、この場合、U8Aの出力は2つの入力の1つを電流検出用のA/D変換器26に提供する。したがって、電流検出極性スイッチU15は、プロセッサ22からの制御信号CS15を介してトグルスイッチングを実現するために一部の測定方式に対して整流器として動作されてもよい。この点において、励起極性スイッチU13と電流検出極性スイッチU15は、同期的に動作されるとき(プロセッサ22によって制御信号CS13とCS15のスイッチングを制御して)、これらのアナログスイッチング部品は電解質(溶液)抵抗Rを測定する一部の実施形態(SRMモード)において使用される同期整流器を構成する。さらに、電流検出部品は、腐食測定装置2においてHDA、LPR、およびECN測定を実施する際に作用電極E3からの検出電流を測定する極性スイッチU15をトグルすることなく採用される。検出回路34bは、高インピーダンス経路R59を介して基準電極E2における電圧を検出するA/D26の第2のアナログ入力を駆動するアンプU7Aによる電圧検出機能をさらに提供し、基準電極E2における電圧はアンプU5Aを用いて基準電圧VREF31と比較される。
【0031】
したがって、A/D26は、プロセッサ22の制御下でアナログ電圧値とアナログ電流値を得て変換することができ、この後、これらの側定値に対応するデジタル値をプロセッサ22に提供する。さらに、A/D変換器26は、一実施形態においてデルタシグマ変調器ベースの変換器など、任意の適切な変換装置であってもよく、比較的遅い変換速度で動作されることが好ましい。たとえば、図示された実施形態におけるA/D26は、ループまたはバッテリ式実装に対する電源システム14の割当電力を超えないように、毎秒約10サンプル未満、たとえば、一実施形態において300msecごとに1回のサンプリングなど、励起信号周波数よりも著しく低いサンプリング速度で様々な腐食関連検出信号の測定サンプルを得るために動作される。したがって、処理システム22は、プローブインタフェースシステム30と動作可能に結合され、励起回路34aによって電解質に提供される励起信号を制御し、制御信号CS13〜CS16をスイッチングシステム34cに提供しスイッチング部品U13〜U16を選択的に再構成して複数の異なる腐食測定方式を実施し、検出回路34bからの受信測定値に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する。
【0032】
したがって、トランスミッタ4の回路は、HART通信のサポートを含む4〜20mAループインタフェースに加えて、励起信号の印加を制御し、信号測定値を得て信号解析を実施し、腐食速度、電解質抵抗または導電率、および/または局部腐食指数のプロセス変数を発生するために、プローブ6を介した電極8への励起信号の印加、電極信号を検出するための信号調整、アナログデジタル変換回路26、および処理部品22を提供する。装置2はプロセス変数を表わす制御ループ11内の4〜20mA信号を発生するように構成されてもよく、プロセス変数は現行の一般に連続的な腐食プロセスの現在の速度を表わす1年当りのmilまたはmm単位の一般腐食速度、電解質抵抗または導電率の値、あるいは孔食または局部腐食指数であってもよく、孔食または局部腐食指数は無単位で低い腐食速度を有する可能性があるが、パイプまたはタンク材料内で材料強度を弱める、小さいが、最終的に深い孔となる可能性があるプロセスにおける局所化の程度の尺度を表わす。また、装置2は、定期的に、あるいはループ11上の別の制御実体またはユーザ通信装置からのデータ要求に応じて、これらの値の1つまたは複数をデジタル通信によって報告するように構成されてもよい。
【0033】
ここで、図1〜3Bを参照すると、装置2は、4〜20mAループから電極E1〜E3と装置2の回路を直流絶縁する絶縁および本質的安全(IS)障壁12を含む。図3Bに示されるように、4〜20mAループ11からの電流は、ヒューズF1、サージ保護装置N1、および抵抗器R3と、整流器12a1と、この後に続く絶縁トランスT1への入力を提供するインバータ12a2を有する一次側安全領域(primary safety area)12aの入力段を通過する。トランスT1の絶縁出力は、電圧制限ツェナーN6〜N9とトランジスタP5〜P8および抵抗器R17、R21、R29〜R30、R34、R35およびコンデンサC34から形成される電流制限回路を備える電圧保護回路12b1を含む、二次側絶縁領域12bに入力を提供する。この第1の本質的安全障壁段12bの出力は、ループコントローラ回路15で観察されうる電圧をさらに制限する追加的な電圧制限ツェナーN10〜N15を含む第2のIS障壁段12cに入力を提供する。また、装置2のIS保護は、電極E1〜E3を保護するための1kΩの保護抵抗器R57〜R61を提供する。動作中、測定電解質と電極E1〜E3は、典型的に接地グラウンドに接続され、これによって、プローブインタフェース回路30の初段はやはり低インピーダンス経路を介して接地される。絶縁回路12、および特に絶縁トランスT1を提供することによって、複数の装置が同じタンクまたはパイプライン内に設置される場合の4〜20mA制御ループ11による潜在的なグラウンドループ問題が軽減または回避される。したがって、装置2は、外部絶縁部品なしで使用されてもよく、それによって設置費が節約される。さらに、絶縁トランスT1は、例示的な一体型の防爆(本質的安全、すなわちIS)障壁の部品を構成する。この二段IS回路12bおよび12cは、外部IS回路を必要とせずに本質的安全性を必要とする用途に装置2を使用することができ、それによって、設置費がさらに削減される。これらの用途において、たとえば、ハウジング4(図1)は、防爆認定を受けた筐体(たとえば、米国の場合)として構成され、あるいは欧州では「EXd」と表示され、装置2に内部IS回路を提供するとこれを非ISループ11に接続することが可能になる。このように、例示的な装置2は、追加障壁を必要とせずにEXdまたは防爆設置法(Explosion proof installation method)を電極8とプローブ6(図1)に対するIS保護に効果的に「変換」する。
【0034】
また、図5〜7を参照すると、動作中、プローブ6は、図5に示されるように、パイプまたはその他の金属構造物40で輸送される電解質50に電極8が浸漬された状態で設置され、電極は埋め込み型を含む任意の形状であってもよく、互いに一列に並んでいる必要がなく、図5の実例は略図にすぎない。図6は、図5の装置内の電極E1の1つに関する等価電気回路60と測定電解質50とを示し、他の電極E2およびE3の電気回路は図6に示される回路と同等である。図6に示されるように、電極/電解質回路60は、電極E1と電解質50との間の電気化学二重層容量Cdlに並列の内部セル電圧Vと分極抵抗Rの直列組合せを含み、電解質50はSMR測定の主題である抵抗Rを有する。図7の励起信号グラフ100に示されるように、トランスミッタ装置2の可能な一構成での信号測定は、3つの測定期間101、102、および103で実施され、これらの測定期間は一連の装置サイクルの各々において代替的に任意の順序であってもよく、あるいは、装置2は装置サイクルにつき1つの測定のみを実施するか、または所与の装置サイクルで2つ以上の測定方式の任意の組合せを実施するようにプログラムされてもよい。この構成において、SRM測定は、初期に溶液抵抗値Rを提供し続け、この後、溶液抵抗値Rは腐食速度を決定する際にLPRまたはHDA測定で使用され、溶液抵抗Rと分極抵抗Rは図6に示されるように基本的に直列であるので分極抵抗Rのあらゆる計算誤差を補正する。
【0035】
図7に示される例示的な構成の第1の測定段階101において、同期整流器は、以下でさらに説明されるように、最初にオフセット測定のために期間100aで動作され、この後、AC励起信号の振幅は期間100bで動的に調整される。この後、比較的高い周波数のAC励起信号が溶液抵抗/導電率測定のために部分101において印加され、この後に異電極8によって生じるアンバランスに起因するオフセットが測定されるギャップ100cが続く。第1の段階101において、さらに、装置2は平均ゼロ(実質的にDCオフセットのない)のAC波形を有利に印加して作用電極インタフェースの分極を回避する。さらに、例示的な装置2において、DAC32とプロセッサ22は、低速で動作され(電力節約のために)、SRM中のDAC出力は所与のDCレベルに設定され、出力極性はスイッチングシステム34cを用いて切り替えられてSRM測定用の両極性方形波励起信号を発生する。段階101でSRM測定によって形成されうる小さいDCセル電流の効果を最小にするために、段階101の期間はできる限り短く設定され、ギャップ期間101cは段階102におけるSRM測定の後とLPR測定の前に分極なしで提供され、これによって、作用電極界面を脱分極しうる。
【0036】
第1の段階101において、電解質(溶液)抵抗R(したがって、電解質導電率1/R)は高周波の方形波励起を用いて測定される。第2の部分102において、装置2は、比較的低周波の正弦波励起電圧を印加して電流と関連高調波を測定し、LPRおよび/またはHDA法を用いて腐食速度を判定する。第3の部分103において、励起は印加されず、装置はECN測定を用いて電気化学ノイズを測定し、局部腐食指数を判定する。
【0037】
装置サイクルの第1の部分101の間、図4の表70のSRM行に示されるように、プロセッサ22はスイッチングシステム34cにスイッチU13〜U16を構成させ、U14とU16を「1」のスイッチ状態とし、スイッチU13とU15が処理システム22の制御下で同期的にトグルされて、約500Hz未満、好ましくは約100〜200Hzの方形波励起/電流検出整流器周波数を提供し、図7のグラフ100は第1の測定期間101における約200Hzの周波数での動作を示す。図6の等価回路において、比較的高い周波数(たとえば、約50Hzを超える)を印加すると容量Cdlがあるために上脚を実効的に短くすることになり、作用電極E3を介して検出される派生AC電流は電解質抵抗Rに逆比例することが注目される。SRM測定には、正弦波、方形波などの他の波形が使用されうる。期間101における図示されたSRM測定は、検出回路34bと作用電極E3において検出されるセル電流のA/D26とによる測定とともに、補助電極E1における方形波励起電圧の提供を必要とする。DAC32(図3A)は、制御信号CS13を介してプロセッサ22によって制御される励起周波数で印加される励起電圧の極性を交番するU13のスイッチングを用いてプロセッサ22で制御されるレベルのDC出力信号を提供する。また、作用電極E3で得られる検出セル電流も励起周波数の方形波となる。また、プロセッサ22は、信号CS15を介して電流検出極性スイッチU15を動作させて同じ周波数でトグルし、これによって、検出されたAC電流信号は整流されて整流された入力信号をA/D変換器26に与える。電力を節約するために、プロセッサ22はA/D変換器26のサンプリングを、一実施形態において約3.3Hzなどのはるかに低い周波数で制御する。したがって、プロセッサ22は、検出電流の多くの読取り値を得て、これらの読取り値を平均化して平均検出電流を求め、平均検出電流は、この後、電解質抵抗Rの計算に使用される。
【0038】
また、図8を参照すると、セル内の腐食を悪化させないように、同期整流器が動作することによって実質的にDCフリーの励起信号を補助電極E1に提供することができ、U15を介して検出電流信号を整流することによってA/D変換器26を低いサンプリング速度で動作させて電力を節約することができ、同時に処理システム22が正確な平均電流値を得ることができるように十分なサンプルを採取し、このような整流がない限り平均電流値はゼロまたはほぼゼロになる。この点において、DC電圧を補助電極に印加すると測定されている腐食プロセスの電気化学が変化し、したがって、その後の腐食速度測定を妨げられる可能性があることが注目される。さらに、電流検出回路の整流は、このようなDC成分を平均値ゼロのAC成分に実質的にチョッピングすることによって異電極8に起因する検出電流のあらゆるDCを効果的に排除することになる。さらに、同期整流もスイッチング周波数以外の周波数での妨害を除去するように動作する。図8は、DAC32と同期整流器の動作によって第1の測定期間101に印加されるおよそ±20mVの振幅を有する1つの可能な実質的にDCフリーの方形波励起信号波形を示し、図3AのDAC32は補助電極E1に励起波形を形成するために後でスイッチU13のトグリングによって極性が切り替えられる実質的に一定のDC値を提供する。したがって、装置2は、第1の測定期間101中に非侵襲のDCフリー方形波励起信号を有利に提供し、同期整流を提供することによって、DCおよびノイズの除去を伴うループまたはバッテリ電源の限られた割当電力の中でSRM測定を実施する際に検出電流の低速サンプリングを可能にする。
【0039】
また、図9A〜9Dを参照すると、装置2は、所定の時間または各SRM測定期間101の最初のいずれかにのSRM測定において方形波励起信号の大きさまたは振幅を調整することが好ましい。これは、A/D変換器22の入力範囲の利用の改善を容易にし、これによって、測定された電流サンプルと計算された平均電流値とにおける精度の改善を容易にして電解質抵抗(または、導電率)測定を改善する。図9Aにおけるプロセス120は、この例示的な動作を示しており、122で、SRMサイクル101は始まり、124で、比較的高い周波数の方形波励起信号が第1の(たとえば、低い)ピークツーピーク振幅で補助電極E1に提供される。一例において、方形波周波数は約200Hzであるが、好ましくは約500Hz以下の他の値が使用されてもよい。図9B〜9Dは、図9Aのプロセス120に従った種々の励起波形振幅に対する方形波励起電圧と対応する測定平均電流の電圧および電流プロットを示すグラフ140、144、150、154、160、および164を表わす。図9Bの第1のプロット140において、約200Hzの方形波が比較的低い第1の振幅142で印加される。プロセス120の126で、平均電流は、たとえば、上記のように同期整流器を用いて、あるいは他の適切な平均電流値の測定法を用いてA/D26によって複数の測定値を採取して測定される。128で、こうして採取された平均電流値が所定の閾値THを超えているかどうかが判断され、ここでは、A/D入力範囲の最適利用に関する結論が出されうる適切な閾値が使用されてもよい。一例において、閾値はA/D入力範囲の約1/2に関係しているが、他の値も使用されうる。
【0040】
図9Bの電流プロット144に示されるように、測定電流が閾値THを超えない場合(128のNO)、130で、励起信号振幅は増加され(たとえば、処理システム22の制御下でDAC32の出力を増加することによって)、図9Aのプロセス120は前に戻って126で平均電流を再測定する。この状況は図9Cのプロット150および154に示されており、新たな励起信号振幅152は図9Bの初期振幅142よりも大きい。128で、新たな平均電流は閾値THと比較され、図9Cのプロット154に見られるように、この電流はやはり閾値TH以下である。したがって、130で、図9Aのプロセス120は励起振幅を図9Dの励起電圧プロット160に示されるレベル162に再び増加させる。この時点で、図9Dのプロット164に示されるように、最新の励起振幅162が閾値THよりも大きい派生検出平均電流を提供し(図9Aの128におけるYES)、図9Aのプロセス120は132に進み、そこで電解質抵抗Rが最新の励起電圧振幅値を用いて計算され、134で、期間101におけるSRMプロセスは終了する。このように、腐食測定装置2は、A/D変換範囲の全域を利用するように適合され、132で、処理システム22は既知の最新励起電圧振幅を測定され計算された最新の平均電流値と関連付けて電解質抵抗Rおよび/または電解質導電率を計算する。励起振幅のこの適応調整は、有効A/D分解能の最適利用を容易にし、非常に低い、あるいは非常に高い電解質導電率を有する用途に対して精度を犠牲にせずに装置2を適応させる。
【0041】
また、図10A〜10Cを参照すると、装置2は、やはり電流アンプのオフセットを較正して計算腐食関連値の精度をさらに改善する。この点において、非同期A/Dサンプリングに関連して前述された同期整流器の利用は、測定電流およびA/D変換器26の入力が図10Aおよび10Bに示されるように方形波の各サイクル中にわずかに増加する状況に至る可能性がある。図10Aのプロット170は、SRM測定において採用される200Hzの方形波電圧励起信号を、約300msの長いA/Dサンプリング周期を用いて得られた、それぞれ時間TおよびTにおける2つの例示的な非同期A/D変換器サンプルS1およびS2とともに表わす。図10Bにおけるグラフ172および174は、図10Aにおける2つの例示的なサンプリング時間TおよびTでのそれぞれの励起電圧および検出電流プロットの例示的部分をさらに詳しく示しており、第1の電流サンプルS1と第2のサンプルS2は励起サイクル内の異なる時点でサンプリングされたというだけの理由で第1の電流サンプルS1は第2のサンプルS2よりも少し低いことが分かる。これらの誤差に加え、電流信号の検出に使用されるオペアンプU8AおよびU9Aのオフセットは、R、腐食速度、および/または局部腐食の計算における精度低下の一因となる可能性がある。整流器の反転入力経路と非反転入力経路との間のDCオフセット差、セルドライバアンプU10Aの有限速度、プローブ入力の抵抗器とコンデンサからは、さらに誤差が生じる可能性がある。
【0042】
これらの誤差を抑制するために、装置2は、182で始まる、図10Cに示される例示的なプロセス180によってオンライン電流アンプオフセット測定を行ない、これによって、装置2は測定された電流アンプオフセットに基づいてオンラインオフセット値を自動的に判定し、この間に、同期整流器部品U13およびU15はプロセッサ22によってトグルされる。184で、プロセッサ22は、DAC32に励起信号をゼロに設定させ、励起電圧を印加せずに184で信号CS13およびCS15を介してそれぞれ同期整流器部品U13およびU15のトグリングを開始し、整流器部品は上記のSRM測定に通常使用される速度と同じ速度で(たとえば、実装に関係する約200Hzで)信号CS13およびCS15によって切り替えられる。プロセッサ22は、188で、A/D26を用いて検出電流信号の多数のサンプルを採取し、190で、平均電流値を計算し、この後、平均電流値は上記のSRM測定において後でオフセットとして使用するために記憶され、192で、オンライン電流アンプオフセット測定は終了する。この後、期間101のSRM測定中に、アンプU9AおよびU8Aを含む電流検出回路のオフセットの悪影響を弱め、A/D変換器26の同期整流器動作と非同期サンプリングに関連するサンプリング誤差を補償するために、プロセッサ22は記憶されたオフセットを使用して電解質抵抗値Rを計算する前に電流読取り値を補正する。
【0043】
ここで、図3A、3B、4、7、および11を参照すると、装置2はやはり改善されたHDAおよび/またはLPR測定方式を提供しており、図4は図3AのU13〜U16のスイッチ状態に関するこれらのモードに対応したスイッチングシステム構成を示す。したがって、装置2は、LPRまたはHDA法を用いて一般的な腐食速度Icorrを計算するように構成可能である。基本的なLPR測定は、典型的に、デフォルトまたはユーザ入力のB値を採用するが、HDA法は測定された電流高調波に従ってB値と腐食速度を同時に計算する必要がある。しかし、本発明者らは従来のHDA計算がすべての食用途で実行可能でも確固たるものでもないことを十分に理解しており、装置2は測定された電流高調波および電解質抵抗を用いてオンライン妥当性試験の結果に従ってこれらの方法(HDAまたはLPR)のどちらか一方を選択的に採用するように動作する。
【0044】
図7における第2の例示的な測定部分102は、この部分102に印加される励起を表わしており、この場合、電流高調波のLPRまたはHDA方式の測定に対して、低周波の正弦波励起電圧が補助電極E1を介してセルに印加される。これらの測定方式において、正弦波励起信号は、装置のサイクル時間を過度に長くせずに励起信号の1サイクルを超える電流サンプルを測定できる約50mHz以上の励起周波数であることが好ましい。したがって、一部の好ましい実施形態において、励起信号は、約100〜200mHzの励起周波数で提供されており、図7の例では約100mHzの励起周波数を使用している。さらに、好ましい実施形態における処理システム22は、第2の期間102において高調波歪み解析またはLPRを用いて、10サイクルを超える、好ましくは約20サイクルの検出された正弦波電流信号に基づいて腐食関連値を計算する。したがって、10mHzの励起を印加して1サイクルだけにわたって電流信号を測定する従来の装置と比較すると、図示された装置2は、1サイクルを超える採取されたデータを用いて処理システム22内で離散フーリエ変換を実施する改善された機能を提供し、これによって、得られる腐食関連値の計算精度を改善する。この点において、約20サイクルを超えてサンプリングされた電流信号による約10mHzの例示的な励起周波数を使用すると、顕著な改善がもたらされるが、HDAまたはLPR測定に対する第2の測定期間102の持続期間はわずかしか増加しない。
【0045】
図7の第2の期間102において、低周波の正弦波励起は、プロセッサ22において腐食関連値の計算に使用される励起周波数の基本波成分と第2および第3高調波を含む、様々な周波数領域成分を有する派生検出電流信号を生じる。この高調波情報は、検出電流信号をサンプリングし、これをA/D26によってデジタルデータに変換することによって得られ、処理システム22は離散フーリエ変換(DFT)を実施して検出電流に対する周波数領域スペクトルを生成する。上記のように、装置2の例示的な実施形態は、1励起サイクルを超えて検出された電流信号をサンプリングし、約50mHzを超える励起周波数を使用することが好ましく、装置のサイクル時間を過度に延ばさないためには約100〜200mHzを使用することが好ましいが、本発明はこれらの具体例に限定されない。DFTの周波数領域スペクトルから、基本波および様々な高調波の振幅が得られ、高調波測定データは腐食速度を計算する際に使用される。さらに、可能な一実装において、DFTは正弦波励起電圧の生成に呼応して計算され、正弦波励起電圧は処理システム22のメモリ参照テーブルまたはメモリ24(図2)からDAC32(図3A)によって一連の小さいステップとして生成され、同じ参照テーブルはDFT計算に使用される。この点において、例示的な参照テーブル96は、テーブルのサイズを小さく保つために1サイクル当たり96ステップを使用しており、2等分、3等分、および4等分することも可能である。
【0046】
DFTは、図示された例では、電流サンプル値に参照テーブルの適正な数を掛けることによって基本的に「その場で」行なわれる。さらに、例示的なDFT計算は、高調波の各々において実数成分と虚数成分とを計算してこれらの二乗和平方根(たとえば、(実数+虚数1/2)としての絶対値を採用するが、これは実数成分と虚数成分のいずれか一方を選択することよりもノイズの影響を受けにくいからである。基本波と第2および第3高調波とは、各離散正弦波ステップ後、A/D値に正弦波参照テーブルの適正な値を掛けてその結果を適正なアキュムレータ変数に加算することによって計算され、この方法は一時データ記憶の必要性を軽減する。DAC32の出力は、最小1ビットのステップサイズを減らすために抵抗分割器R52、R53を用いて調整されることが好ましく、R52とR53の値は1ビットのステップサイズを最小にする一方で最大限広いセルオフセット範囲をカバーするように選択されることが好ましいかもしれず、処理システム22はセルオフセットおよび/または所要摂動振幅が有効範囲を超えないようにしてもよい。さらに、図示された実施形態において、A/D26によるセル電流検出/測定の前に流れるセル電流に正弦波出力のステップ変化が影響しうるようにシーケンスが遅延されてもよい。
【0047】
励起周波数は、腐食プロセスの典型的な時定数(たとえば、Rと並列のCdl)未満であるが2励起信号サイクル以上からデータを採取するための適正な測定時間として十分に高くなるように選択されることが好ましい。この点において、多少高い周波数でかなり大きいサイクル数にわたってサンプリングすると、サンプリングされる欠陥部の総量(amount of sampled discontinuities)が抑制される。たとえば、信号がかなりゆっくりドリフトしている場合にデータが1サイクルの間しか採取されなければ欠陥部がサンプリングされることになり(たとえば、最初と最後のサンプルの差)、この場合、このような欠陥部は過剰な高調波成分を有するフーリエスペクトルをもたらしてHDA測定法に悪影響を与えることになる。さらに、複数サイクルにわたる平均化は、干渉およびノイズに対する耐性を改善する。
【0048】
図示された実装において、腐食速度を決定しうる腐食電流Icorrを計算するために、処理システム22は測定期間102において採取された高調波データを用いて各装置サイクルにおける次式(1)〜(3)の値を求める。
(1)Icorrharm=I/((48)1/2*(2−I1/2
(2)BHARM=(Icorrharm正弦波振幅/I)−(Rcorrharm
(3)Icorr=((BHARMまたはBUSER)/((正弦波振幅)−(R))
【0049】
ここで、Iは検出電流の基本波成分であり、IとIはそれぞれ第2高調波成分と第3高調波成分である。正弦波振幅は期間102で印加される正弦波励起電圧信号の振幅であり、BはV(ボルト)単位の用途特有の腐食プロセス値である。腐食電流Icorrが計算された時点で、これに固有の電極サイズ、ファラデー定数、および物質の原子量に関係する定数を掛けて1年当りのmmまたはmil単位の腐食速度を計算することができる。
【0050】
また、図11を参照すると、例示的な腐食測定装置の別の特徴は、測定電流高調波I、I、およびIに基づくB値BHARMの計算、ならびに計算されたBHARM値および計算された電解質抵抗Rに基づくLPRまたはHDAアルゴリズムの選択的使用である。この実施形態において、HDA測定および計算は、可能であれば実施され、HDA結果が所与の装置サイクルにおける1つまたは複数の妥当性試験に基づいて疑わしいと思われる場合、処理システム22はLPR方式の測定に変わる。特に、装置2は、HDA計算の正当性が保証されるかどうかを判断するために3種類の試験の1つまたは複数を自動的に実施し、高電解質抵抗状況またはHDA測定において誤差の可能性を示す他の状態でアルゴリズムをLPRに選択的に変更する。
【0051】
動的に変化するHDA/LPRプロセス200が図11に示されており、これは前述の図7の例示的な装置サイクルにおいて第2の期間102に202で始まり、204で、プロセッサ22によってDAC32と励起回路34aは正弦波励起信号を補助電極E1に提供し、206で、A/D変換器26を用いて検出回路34bによって作用電極E3で検出される電流信号を測定する。208で、プロセッサ22はDFTを実施して電流高調波I、I、およびIを特定し、この後、210で、HDA腐食測定が妥当であるかどうかを確認するために1つまたは複数の試験を実施する。212で、特に、量(2−I)が正であるかどうかが判断される。正でなければ(212でNOであれば)、被試験量(2−I)の平方根は上式(1)の分母に現れるのでHDA方式の測定は妥当でないと見なされる。プロセス200は図11で230に進み、ここで、処理システム22はデフォルトまたはユーザが提供するB値BUSERを得て、232で、これを前述のLPR腐食電流の式(3)に採用して現期間102のIcorrを計算し、この後、240でサイクルは終了する。
【0052】
しかし、第1の被試験量(2−I)が正(212でYES)であることが分かると、プロセス200は214に進み、ここで、高調波が正確に測定可能かどうかを判断するために分極抵抗Rと比較した電解質抵抗Rの相対的サイズを判断し、Rが高ければセル応答を線形化して高調波レベルを低下させようとする。図示された実施形態において、214で、量(R/(R+R))は、一例において約0.1などの閾値と比較され、閾値よりも小さければ(214でNO)、プロセッサ22はHDAが疑わしいと判断して216に進む前に215でフラグを設定する。あるいは、プロセスは、215でフラグが設定された後LPR動作に切り替えるために230に進んでもよい。214での試験が高いRを示さなければ(214でYES)、216、218で、プロセスは第3の試験に進み、216で、処理システム22は測定電流高調波I、I、およびIと計算されたB値BHARMのローパスフィルタを用いて上式(1)および(2)を求めることによってICORRHARMとBHARMを計算する。図示された例における計算されたB値BHARMは、いずれの短期間の変動および無効な読取り値を除去して測定された高調波がきわめて低い振幅となりうる状況で装置感度を拡大するために、デジタル的にローパスフィルタ処理(たとえば、プロセッサ22によって実施される移動平均などのローパス型デジタルフィルタ処理)される。
【0053】
この後、218で、計算されたB値BHARMが一例として約10〜60mV(または、たとえば、水性電気化学にとって有望であることが知られている他の範囲)など、最小値BMINと最大値BMAXの間の指定された有効と推定される範囲にあるかどうかが判断される。移動平均または他のデジタルフィルタなど、計算されたB値BHARMの例示的なローパスフィルタ処理は、いずれの短期間の変動および一時的に逸脱した読取り値を除去するように有利に動作し、そのためにフィルタ処理または平滑化されて計算されたB値を使用することによって、装置感度が低振幅の高調波状況に対して強化される可能性がある。一例において、フィルタ処理された値BHARMは、(1−X)計算されたB値BHARM(n−1)計算されたB値BHARM(n)として計算され、ここで、一実装におけるXは約0.05である。BHARMが試験範囲になければ(218でNO)、HDA法は疑わしく、プロセス200は上記のように230と232に進む。そうでなければ(218でYES)、220で、処理システム22は計算されたB値BHARMを用いて上式(3)を求めることによってHDA法を用いて腐食電流を計算する。
【0054】
腐食装置2のさらに別の特徴は、所定のユーザB値BUSERの代わりにLPR方式の測定を実施する際に計算されたB値BHARM(たとえば、好ましくはローパスフィルタ処理された)を利用することができることである。一実施形態において、処理システムは、上式(2)に従って各装置サイクル内で検出回路によって検出される電流信号の高調波に基づいてB値を計算し、BHARMに基づいて式(3)を用いて腐食関連値(単数または複数)を計算する。さらに、ユーザは、ユーザB値BUSERを用いてLPR測定に合わせて装置2を構成してもよく、ユーザB値BUSERは試験クーポン、電気抵抗プローブ、または壁厚測定からの重量損失データをLPR読取り値と関連付けるなど、適切な手段によって得られてもよく、計算されたB値BHARMはユーザまたは装置2が接続されるDCSによって監視されてもよい。この点において、計算されたB値BHARMで観察される変化は、プロセスの電解質組成変化またはプロセス制御/監視の視点から対象となる他のプロセス事象における変化を示す可能性がある。
【0055】
また、図12を参照すると、装置2の別の特徴は、電極8の差を補償するための正弦波HDA/LPR励起信号の調整である。この点において、同じ電極8を有する理想的なセルでは正弦波励起のサイクル全体にわたって電極間に最終的なDC電流が流れるはずがなく、この場合、作用電極E3の電気化学が乱されるはずがない。しかし、異電極8を仮定すると、目標は装置2によって励起が印加されないときに作用電極E3を流れる電流がゼロになるようにすることである。電極8はドライバアンプU10Aのフィードバックループ内にあるので、補助電極E1から作用電極E3に流れる電流によって基準電極E2と作用電極E3の間の電位が印加された励起の電位と等しくなる。
【0056】
図12の例において、254で、処理システム22は、アナログスイッチを図4の表70内のECN測定に対して示された状態に切り替える。このように構成されると、256で、基準電極E2における電圧信号は励起なしで測定されてHDA測定中に励起オフセットとして使用するために記憶されると、258で、オンライン電極オフセット測定が終了する。この後、260で、スイッチングシステム34cはプロセッサ22によって図4の表70に示されるHDA構成に切り替えられ、262で、プロセッサ22の制御下でDAC32によってオフセット値が励起信号に加算されてHDA測定が行なわれる。こうして、電極8間の差に起因するいずれの誤差も補償するために、装置2はオフセットを用いて図7の第2の測定期間102にHDA測定を実施する。HDAが実施される前にセルオフセットを測定して測定されたオフセットを印加された正弦波に加えることによって、電極差によって生じるあらゆる電流はHDA測定中に効果的に排除されて、装置は電極E1〜E3間の物理的な差を補償するので、HDA腐食速度結果の精度と信頼性が高くなる。作用電極E3における測定に関して、電極差に起因する誤差電流は分極が適用されるときに現れるものと考えられ、補償オフセットを提供することにより作用電極E3は、一部の他の電位の近くではなく、基準電極(RE)に対して測定されるその自由腐食電位(Rcorr)の近くで分極されて総合的な腐食測定精度を改善しうる。
【0057】
図7に示される例示的な装置サイクルの第3の測定部分103は、ECN方式の測定に対して外部励起なしで自然ノイズの検出を採用する。この測定モードにおいて、装置2は、検出電流(および電圧)を測定し、これらに基づき、一部の実施形態において平均、標準偏差(σ)、およびrmsを含む、統計パラメータを計算し、さらにこれらの統計値をデータの統計学的「モーメント」から計算する。使用場所で、電圧ノイズまたは電位ノイズが基準電極E2と回路グラウンドとの間で測定され、ここで、補助電極E1と作用電極E3はスイッチングシステム34cによって効果的に仮想グラウンドに接続される。統計学的モーメントそのものは完全なデータセット(たとえば、時間に対して測定される電圧および電流の多くのサンプル)から計算されるが、このような方法はプロセッサ22および高いメモリ使用量において多大な計算オーバーヘッドを要することになる。したがって、好ましい実施形態において、メモリを大幅に削減する必要があるため、「ランニングモーメント(running moment)」法が採用される。図示された実装において、プロセッサ22は、電流および電圧の両方または電流のみに対してノイズデータの最初の2つの統計学的モーメントを計算し、これから平均、標準偏差、およびrmsに対する統計値が計算されてオンライン電気化学ノイズ(ECN)測定で使用される。ECNは、ノイズ指数または局部腐食指数値を計算する装置2において有利に採用され、所与の電解質中で電極8の局部腐食性向を示す装置2ではいかなる形のかかる局部腐食指数が計算されてもよい。一実施形態において、無次元の局部腐食指数が計算され、これは、一定レベルを超えると、所与の設備で局部腐食が発生している可能性を示す。一実施形態において、装置2は、電流ノイズ標準偏差σと電流ノイズrms値(rms)との比として局部腐食指数値を提供し、この値は0〜1であり、高いσ値と低いDC電流値(通常、孔食の場合に見られる)は局部腐食指数として高い(1に近い)値をもたらすことになる。一方、低い一様な腐食(低いσと低いDC電流)はゼロに近い局部腐食指数値に対応する。可能な一実装において、0.3の閾値が警戒限界として採用される可能性があり、この値を超えると、局部腐食の可能性がユーザに知らされてもよいが、適切な指数(無単位または有単位)と対応する比較値とが選択されてもよい。
【0058】
電流ノイズが作用電極E3を介して装置2においてサンプリングされ、加重平均またはランニングモーメントが計算され、電流ノイズ統計値は局部腐食指数の計算に使用される。さらに、一実施形態において、電圧(電位)ノイズは、プローブインタフェース30の電圧検出回路とA/D26への第2の入力チャネルとを用いて同様に測定されてもよい。好ましい一実装において、装置2は、局部腐食指数またはその他の統計的尺度を導出する際にrmsまたは標準偏差の計算にランニングモーメント計算を使用する。このように、装置2は大量のデータを記憶する必要がなく、各装置サイクルで必要な計算の数が低減される。一実装において、ノイズ統計値が各A/Dサンプルに対するランニングモーメントとして計算され、このプロセスは一例において1000などの一定数のサンプル「n」が得られるまで繰り返す。この場合、2つのモーメント変数M1およびM2が処理システム22によってゼロに初期化され、nに対する変数が1に設定される。この後、処理システム22は、スイッチングシステムをECN構成に設定し、サンプリングされた電流および電圧測定値は、ランニング計算(running computations)に組み入れられて各サンプリング時間にモーメント値を更新する。次式はモーメントを更新するために提供され、xnが現在の電流サンプル値でありnが現在のサンプル番号(たとえば、この例でnは1〜1000の範囲にわたる)である。
d=(xn−M1)
M2=M2+(1/n)(d(1−(1/n)−M2))
M1=M1+(d/n)
【0059】
さらに、この実装において、同様の計算が電流サンプルと同時に採取される電圧サンプルに対して行なわれ、ここで、処理システム22は電圧ノイズに対する移動モーメント値(moving moment value)M1およびM2も計算する。さらに、上記の計算は、各試行に対して(1−1/n)のような一定の共通因数を事前に計算するなどして実行時間とメモリ利用に関して最適化されることが好ましく、M1およびM2の計算は電流と電圧の両読取り値に対して所定数の読取り値(たとえば、n=1000)が得られるまで各サンプルサイクルについて前述の順序で行なわれる。この後、電流統計値は以下のように計算されてもよい。
【0060】
平均=M1
電流標準偏差σ=(M2)1/2
電流rms値rms=(M1+M2)1/2
電流ノイズ指数=(M2/(M1+M2))1/2
プロセッサ22は、電圧ノイズに関する類似の統計値を同様に計算した後、電流腐食ノイズIcorrnoiseを下記のように計算する。
corrnoise=((BHARMまたはBUSERσ)/(ln(10)σ
【0061】
別の可能な実施形態において、プロセッサ22は、サンプリングされた電流信号の標準偏差と、サンプリングされた電流信号のrmsとに基づいて局部腐食指数を計算し、ここでは、標準偏差とrmsはいずれもランニングモーメント計算に基づいている。この実装において、電圧信号は検出される必要がなく、対応する電圧ノイズ統計値は局部腐食測定にとって計算される必要がなく、したがって、プロセッサ22に関する計算オーバーヘッドと記憶装置オーバーヘッドが低減される。この方法において、モーメントM1およびM2は、測定された電流ノイズ(励起なしでの)に対して計算され、電流ノイズ指数Icorrnoiseは下記のように計算される。
corrnoise=σ/rms=(M2/(M1+M2))1/2
【0062】
装置2の別の特徴は、補助電極E1と作用電極E3とをECN測定中にプローブインタフェースシステム30の仮想グラウンドに接続することによって、これらを効果的に短絡することを含む。一実施形態において、処理システムは、図4の表70のECN入力に示されるように、スイッチング部品U13〜U16を選択的に再構成し、これによって、補助電極E1は抵抗器R54およびR58を通じ、さらにスイッチU14の「0」状態を通じて仮想グラウンドを提供するアンプU10Aの反転入力に接続され、作用電極E3は第3の測定期間103においてECN測定中に、図3Aに示されるように抵抗器R56を通じてU9Aの反転入力で仮想グラウンドに接続され、その間に、プロセッサ22は上記の測定と計算を実施する。ECN測定の場合、補助電極E1と作用電極E3は効果的に短絡(たとえば、これらの電極間をゼロΩにして)されるが、電流制限保護抵抗器R57を含む、作業電極E3と結合された検出回路の電流電圧変換器によって両電極間に流れる電流を測定するように依然として動作する。この点において、例示的な検出回路34bは、この抵抗(たとえば、一実施形態において約1kΩ)をアンプU9Aのフィードバックループ内に含んでいるため、この抵抗は流れる電流によって認識されない。
【0063】
装置2の別の有利な特徴は、スタンドアロンデータ収集および記憶装置としての動作に対する適応性であり、これは4〜20mA制御ループ11を通じてループ給電されてもよく、あるいは図2におけるバッテリ13を通じてバッテリ給電されてもよく、バッテリ13はソーラーパネルまたは他の手段によって充電可能であってもよい。この点において、処理システム22は、一連の装置サイクルの各々において前述のR、腐食速度、局部腐食指数などの腐食関連値を計算し、計算された値をユーザによるその後の検索のために不揮発性メモリ24(図2)記憶する。装置2は、制御ループ11を通じてユーザ通信装置(図示せず)によって、あるいは他の有線または無線手段によってアクセスされ、たとえば、HARTまたはその他の適切な通信プロトコル(単数または複数)を用いて累積腐食データをダウンロードすることができる。さらに、装置2は、図示された実施形態において長い装置サイクル時間では5日分を超えるデータなど、1日分または複数日分の計算腐食関連値を記憶するように機能する。この点に関して、短縮されたサイクル時間の場合、数ヶ月分さらには数年分のデータなど、より多くのデータが記憶されうる。この特徴は、装置2が分散制御システムから切り離される可能性がありかつバッテリまたはソーラーパワーで独立に動作して一度に数日間の腐食情報を収集する可能性があり、この後、データは装置2から数分で読み取られ、こうしてスプレッドシートまたは別のシステムに転送してさらに評価するために外部のユーザ通信装置に記憶されうる遠隔用途において有利であり、バッテリ11は一部の実装において装置2に接続されたソーラーパネルによって充電されてもよい。
【0064】
上記の例は本発明の様々な態様のいくつかの可能な実施形態を単に例証するもので、本明細書および添付図面を読んで理解すると同等の変更形態および/または修正形態が当業者には考えられる。前述の部品(アセンブリ、装置、システム、回路など)によって実施される様々な機能に特に関連して、このような部品を説明するために使用される用語(「意味」への言及を含む)は、特に他の指示がない限り、本発明の図示された実装において機能を実施する開示された構造物と構造的に等価でないにしても説明された部品(すなわち、機能的に等価な)の特定機能を実施するハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せなどの部品に対応するものである。さらに、本発明の特定の特徴はいくつかの実装の1つのみに関して開示されている場合もあるが、このような特徴は要望に応じて、かつ所与または特定の用途に有利なように他の実装の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせられてもよい。また、用語「含む(“including”,“includes”)」、「有する(“having”,“has”,“with”)」またはこれらの変異形が詳細な説明および/または特許請求の範囲において使用される限りにおいて、このような用語は用語「備える(“comprise”)」と同様に包括的であることを意図するものである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、腐食性電解質を輸送する、あるいは腐食性電解質にさらされるパイプまたは他の構造物における腐食効果の野外監視および解析に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で、前記4〜20mAループからの電源を用いて、前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムとを備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を印加するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して一つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記励起回路と前記検出回路とに結合される複数のアナログスイッチング部品を有するスイッチングシステムとを含み、前記スイッチング部品は、対応する制御信号に従って、前記励起回路と検出回路の回路部品と前記電極とを複数の異なる構成に選択的に相互接続するように機能し、更に、
前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムとを含み、前記処理システムは、前記電解質に印加される前記励起信号を制御し、前記制御信号を前記スイッチングシステムに与えて前記スイッチング部品を選択的に再構成し、複数の異なる腐食測定方式を実施し、前記検出回路から受信される測定値に基づいて少なくとも一つの腐食関連値を計算することを特徴とするループ給電腐食測定装置。
【請求項2】
前記処理システムの制御下で前記第1の電極を介して励起信号を前記電解質に提供させるために前記処理システムと前記励起回路とに動作可能に結合されるデジタルアナログ変換器と、
検出された電気信号をデジタル値に変換し、前記デジタル値を前記処理システムに提供するために前記処理システムと前記検出回路とに動作可能に結合されるアナログデジタル変換器と、
DCフリー検出信号に基づいて前記アナログデジタル変換器に非DCフリー信号を提供するために前記検出回路に結合される整流器システムと、
をさらに備える、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項3】
前記整流器システムは前記電解質に提供される励起信号の交番極性に呼応して複数の検出信号を交番する同期整流器である、請求項2に記載の腐食測定装置。
【請求項4】
前記同期整流器は前記スイッチングシステムの少なくとも1つの前記スイッチング部品を含む、請求項3に記載の腐食測定装置。
【請求項5】
前記同期整流器は、
前記処理システムからの第1の制御信号に従って前記検出回路における検出信号の極性を交番する第1のスイッチング部品と、
前記処理システムからの第2の制御信号に従って前記励起回路における複数の励起信号を交番する第2のスイッチング部品と、
を備え、
前記処理システムは、前記励起システムが励起信号周波数において前記電解質にAC励起信号を提供し前記アナログデジタル変換器がDCフリーの検出信号に基づいて非DCフリー信号を受信するように、前記第1の制御信号と第2の制御信号とを実質的に同期させて提供する、請求項3に記載の腐食測定装置。
【請求項6】
前記アナログデジタル変換器は前記励起周波数以下のサンプリング周波数で動作される、請求項5に記載の腐食測定装置。
【請求項7】
前記アナログデジタル変換器は毎秒約10サンプル未満のサンプリング速度で動作される、請求項2に記載の腐食測定装置。
【請求項8】
前記処理システムは前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記制御信号を前記スイッチングシステムに提供して一連の装置サイクルの各々において1つまたは複数の腐食測定方式を選択的に実施し、前記測定方式は電解質抵抗測定、高調波歪み解析、線形分極抵抗測定、および電気化学ノイズ測定の群から選択される、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項9】
所与の装置サイクルにおける測定値数と測定方式がユーザ設定可能である、請求項8に記載の腐食測定装置。
【請求項10】
前記装置をユーザが構成しうる通信インタフェースをさらに備える、請求項9に記載の腐食測定装置。
【請求項11】
前記装置は前記通信インタフェースを介して4〜20mAループに少なくとも1つの腐食関連値を提供するようにユーザによって構成可能である、請求項10に記載の腐食測定装置。
【請求項12】
前記通信インタフェースはHARTプロトコル通信をサポートする、請求項10に記載の腐食測定装置。
【請求項13】
前記処理システムは腐食速度と局部腐食指数の少なくとも一方を計算する、請求項8に記載の腐食測定装置。
【請求項14】
前記処理システムは腐食速度と局部腐食指数の少なくとも一方を計算する、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項15】
前記電源システムは前記装置に代替的にバッテリ電源から給電するように機能する、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項16】
前記励起回路はドライバアンプを含み、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記ドライバアンプのフィードバック経路における前記第1および第2の電極と結合するように機能する、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項17】
前記検出回路は、入力を有する電流電圧変換器と、該電流電圧変換器の入力と前記電極の前記第2の電極との間に結合される電流制限抵抗器とを含み、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記電流電圧変換器のフィードバック経路における前記電流制限抵抗器と結合するように機能する、請求項1に記載の腐食測定装置。
【請求項18】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
検出された電気信号をデジタル値に変換し、前記デジタル値を前記処理システムに提供するために前記処理システムと前記検出回路とに動作可能に結合されるアナログデジタル変換器と、
DCフリーの検出信号に基づいて前記アナログデジタル変換器に非DCフリー信号を提供するために前記検出回路と結合される整流器システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項19】
前記整流器システムは前記電解質に提供される交番極性の励起信号に呼応して検出信号の極性を交番する同期整流器である、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項20】
前記同期整流器は、
前記処理システムからの第1の制御信号に従って前記検出回路における複数の検出信号の極性を交番する第1のスイッチング部品と、
前記処理システムからの第2の制御信号に従って前記励起回路における励起信号の極性を交番する第2のスイッチング部品と、
を備え、
前記処理システムは、前記励起システムが励起信号周波数において前記電解質にAC励起信号を提供し前記アナログデジタル変換器がDCフリーの検出信号に基づいて非DCフリー信号を受信するように、前記第1の制御信号と第2の制御信号とを実質的に同期させて提供する、請求項19に記載の腐食測定装置。
【請求項21】
前記アナログデジタル変換器は前記励起周波数以下のサンプリング周波数で動作される、請求項20に記載の腐食測定装置。
【請求項22】
前記アナログデジタル変換器は毎秒約10サンプル未満のサンプリング速度で動作される、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項23】
前記励起信号は約500Hz以下の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号であり、前記アナログデジタル変換器は毎秒約10サンプル未満のサンプリング速度で動作される、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項24】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項23に記載の腐食測定装置。
【請求項25】
前記励起信号は約200Hzの励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項23に記載の腐食測定装置。
【請求項26】
前記励起信号は約500Hz以下の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項27】
前記励起回路はドライバアンプを含み、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記ドライバアンプのフィードバック経路における前記第1および第2の電極と結合するように機能する、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項28】
前記検出回路は、入力を有する電流電圧変換器と、該電流電圧変換器の入力と前記電極の前記第2の電極との間に結合される電流制限抵抗器とを含み、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記電流電圧変換器のフィードバック経路における前記電流制限抵抗器と結合するように機能する、請求項18に記載の腐食測定装置。
【請求項29】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
ドライバアンプを含み、前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記励起回路と前記検出回路とに結合される複数のアナログスイッチング部品を有するスイッチングシステムであって、前記スイッチング部品は対応する制御信号に従って前記励起および検出回路の回路部品と複数の異なる構成の前記電極とを選択的に相互接続するように機能する、スイッチングシステムと、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記制御信号を前記スイッチングシステムに提供して前記スイッチング部品を選択的に再構成するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムであって、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記ドライバアンプのフィードバック経路における第1および第2の電極と結合するように機能する、処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項30】
前記検出回路は、入力を有する電流電圧変換器と、該電流電圧変換器の入力と前記電極の前記第2の電極との間に結合される電流制限抵抗器とを含み、前記スイッチングシステムは電流を検出する前記検出回路を前記電流電圧変換器のフィードバック経路における前記電流制限抵抗器と結合するように機能する、請求項29に記載の腐食測定装置。
【請求項31】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
前記電極を前記4〜20mAループから直流絶縁する絶縁障壁と、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項32】
前記絶縁障壁は前記4〜20mAループと電源システムとの間に結合される絶縁トランスを備える、請求項31に記載の腐食測定装置。
【請求項33】
前記ループインタフェースは電圧および電流制限部品を有する本質的安全障壁を備える、請求項31に記載の腐食測定装置。
【請求項34】
前記本質的安全障壁は前記絶縁障壁の出力に結合される電圧および電流制限部品を有する第1段と、該第1段と前記装置のループコントローラ回路との間に結合される追加電圧制限部品を有する第2段とを備える、請求項33に記載の腐食測定装置。
【請求項35】
前記本質的安全障壁は前記電極に結合される保護抵抗器をさらに備える、請求項34に記載の腐食測定装置。
【請求項36】
前記本質的安全障壁は前記電極に結合される保護抵抗器をさらに備える、請求項33に記載の腐食測定装置。
【請求項37】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムと、電圧および電流制限部品を有する本質的安全障壁とを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項38】
前記本質的安全障壁は前記絶縁障壁の出力に結合される電圧および電流制限部品を有する第1段と、該第1段と前記装置のループコントローラ回路との間に結合される追加電圧制限部品を有する第2段とを備える、請求項37に記載の腐食測定装置。
【請求項39】
前記本質的安全障壁は前記電極に結合される保護抵抗器をさらに備える、請求項38に記載の腐食測定装置。
【請求項40】
前記本質的安全障壁は前記電極に結合される保護抵抗器をさらに備える、請求項37に記載の腐食測定装置。
【請求項41】
前記本質的安全障壁は絶縁トランスをさらに備える、請求項37に記載の腐食測定装置。
【請求項42】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視する腐食測定装置であって、
約20mA以下の電流を用いて前記装置に給電するための電源システムと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の少なくとも1つを介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
一連の装置サイクルの各々において前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算し、ユーザによるその後の検索のために前記装置内に複数の計算腐食関連値を記憶するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
前記処理システム動作可能に結合され、ユーザが前記装置を構成しうるか、またはユーザが外部通信装置を介して前記装置から記憶された計算腐食関連値を検索しうる前記外部通信装置とインタフェースするように機能する通信インタフェースと、
を備える、腐食測定装置。
【請求項43】
前記装置は4〜20mAループに結合可能なループインタフェースを含み、前記電源システムは前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するように機能する、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項44】
前記通信インタフェースは前記4〜20mAループを介して前記装置が通信装置とインタフェースするように機能する、請求項43に記載の腐食測定装置。
【請求項45】
前記電源システムはバッテリ電源から前記装置に給電するように機能するバッテリをさらに備える、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項46】
前記通信インタフェースは前記装置が無線通信装置とインタフェースするように機能する、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項47】
前記通信インタフェースはHARTプロトコル通信をサポートする、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項48】
前記装置は少なくとも1日分の計算腐食関連値を記憶する、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項49】
前記電極を前記4〜20mAループから直流絶縁する絶縁障壁をさらに備える、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項50】
前記ループインタフェースは電圧および電流制限部品を有する本質的安全障壁を備える、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項51】
不揮発性メモリをさらに備え、前記処理システムはユーザによるその後の検索のために前記計算腐食関連値を前記不揮発性メモリに記憶する、請求項42に記載の腐食測定装置。
【請求項52】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質にAC励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記方形波励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて一連の装置サイクルの各々における電解質抵抗値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムであって、前記処理システムは第1の振幅の前記励起信号を提供し、得られる検出信号が所定の閾値を超えるまで前記励起信号振幅を選択的に増加させる、処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項53】
前記励起信号は約500Hz以下の励起周波数において実質的にDCフリーのAC信号である、請求項52に記載の腐食測定装置。
【請求項54】
前記励起信号は方形波信号である、請求項53に記載の腐食測定装置。
【請求項55】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項54に記載の腐食測定装置。
【請求項56】
前記励起信号は約200Hzの励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項55に記載の腐食測定装置。
【請求項57】
前記励起信号は方形波信号である、請求項52に記載の腐食測定装置。
【請求項58】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項57に記載の腐食測定装置。
【請求項59】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項52に記載の腐食測定装置。
【請求項60】
前記励起信号は約200Hzの励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項59に記載の腐食測定装置。
【請求項61】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
前記処理システムの制御下で前記電解質に提供される複数の交番励起信号に呼応して複数の検出信号を交番する同期整流器と、
を備え、
前記処理システムは前記励起回路に最初は励起信号を提供させずに前記同期整流器に検出電流信号の極性の交番を開始させ、前記同期整流器が励起信号なしで動作する間に前記検出電流をサンプリングし、少なくとも1つの検出電流信号サンプルに基づいてオフセット値を計算し、前記オフセット値を記憶し、後で前記少なくとも1つの腐食関連値を計算する際にオフセット補正として使用する、ループ給電腐食測定装置。
【請求項62】
前記励起信号は方形波信号である、請求項61に記載の腐食測定装置。
【請求項63】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項62に記載の腐食測定装置。
【請求項64】
前記励起信号は約200Hzの励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項63に記載の腐食測定装置。
【請求項65】
前記励起信号は約100Hz以上の励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項61に記載の腐食測定装置。
【請求項66】
前記励起信号は約200Hzの励起周波数において実質的にDCフリーの方形波信号である、請求項65に記載の腐食測定装置。
【請求項67】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に励起信号を選択的に提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備え、
前記処理システムは前記励起回路に最初は励起信号を提供させずに励起信号が印加されていない間に前記検出回路によって検出される電圧信号をサンプリングし、前記検出電圧値をオフセットとして記憶し、この後、前記励起回路が正弦波励起電圧信号をオフセットとともに前記電解質に供給させ、高調波歪み解析を用いて前記検出回路によって検出される電流信号の高調波に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、ループ給電腐食測定装置。
【請求項68】
前記処理システムが前記検出回路によって検出される前記電圧信号をサンプリングしている間に前記第1の電極を前記励起回路から電気的に絶縁するスイッチングシステムをさらに備える、請求項67に記載の腐食測定装置。
【請求項69】
前記検出回路は励起信号が印加されない間に第2の電極と第3の電極との間の電圧を検出する、請求項68に記載の腐食測定システム。
【請求項70】
前記検出回路は励起信号が印加されない間に第2の電極と第3の電極との間の電圧を検出する、請求項67に記載の腐食測定システム。
【請求項71】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に正弦波励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して腐食に関係する1つまたは複数の電流信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、高調波歪み解析を用いて前記検出回路によって検出される複数サイクルの正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項72】
前記正弦波励起信号は約50mHz以上の励起周波数である、請求項71に記載の腐食測定装置。
【請求項73】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて10サイクルを超える前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項72に記載の腐食測定装置。
【請求項74】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて約20サイクルの前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項72に記載の腐食測定装置。
【請求項75】
前記正弦波励起信号は約100〜200mHzの励起周波数である、請求項71に記載の腐食測定装置。
【請求項76】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて10サイクルを超える前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項75に記載の腐食測定装置。
【請求項77】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて約20サイクルの前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項75に記載の腐食測定装置。
【請求項78】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて10サイクルを超える前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項71に記載の腐食測定装置。
【請求項79】
前記処理システムは高調波歪み解析を用いて約20サイクルの前記検出された正弦波電流信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算する、請求項71に記載の腐食測定装置。
【請求項80】
前記正弦波励起信号は約100mHzの励起周波数である、請求項71に記載の腐食測定装置。
【請求項81】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に正弦波励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して腐食に関係する1つまたは複数の電流信号を検出するように機能する検出回路と、
前記電解質に提供される前記励起信号を制御し、一連の装置サイクルの各々において前記検出回路によって検出される電流信号の高調波に基づいてB値を計算し、前記計算されたB値の妥当性試験を実施するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムであって、各装置サイクルに対して、前記妥当性試験から高調波歪み解析が正確な腐食関連値をもたらす可能性があることが判明する場合、あるいはユーザ定義またはデフォルトのB値による線形分極抵抗測定を用いて少なくとも1つの腐食関連値を計算する場合に前記処理システムは前記計算されたB値とともに高調波歪み解析を用いて少なくとも1つの腐食関連値を選択的に計算する、処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項82】
前記B値は第1、第2、および第3の電流高調波であるそれぞれI、I、およびIに基づいて計算され、前記妥当性試験は量(2I−I)がゼロよりも大きいかどうかを判断することを含む、請求項81に記載の腐食測定装置。
【請求項83】
前記妥当性試験は量(R/(R+R))が閾値未満であるかどうかを判断することをさらに含み、ここで、Rは計算された電解質抵抗でありRは計算された分極抵抗である、請求項82に記載の腐食測定装置。
【請求項84】
前記妥当性試験は前記計算されたB値が所定範囲にあるかどうかを判断することをさらに含む、請求項83に記載の腐食測定装置。
【請求項85】
前記妥当性試験は前記計算されたB値が所定範囲にあるかどうかを判断することをさらに含む、請求項82に記載の腐食測定装置。
【請求項86】
前記妥当性試験は量(R/(R+R))が閾値未満であるかどうかを判断することを含み、ここで、Rは計算された電解質抵抗でありRは計算された分極抵抗である、請求項81に記載の腐食測定装置。
【請求項87】
前記妥当性試験は前記計算されたB値が所定範囲にあるかどうかを判断することをさらに含む、請求項86に記載の腐食測定装置。
【請求項88】
前記閾値が約0.1である、請求項86に記載の腐食測定装置。
【請求項89】
前記妥当性試験は前記計算されたB値が所定範囲にあるかどうかを判断することをさらに含む、請求項81に記載の腐食測定装置。
【請求項90】
前記所定範囲は約10mV以上および約60mV以下のB値を含む、請求項89に記載の腐食測定装置。
【請求項91】
前記計算されたB値はローパスフィルタ処理される、請求項81に記載の腐食測定システム。
【請求項92】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の少なくとも1つの電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
ランニングモーメント計算を用いた少なくとも1つの統計値の計算を含む電気化学ノイズ測定を用いて前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項93】
前記信号調整回路は補助電極、基準電極、および作用電極とインタフェースし、前記プローブインタフェースシステムは該プローブインタフェースシステムと結合されて前記プローブインタフェースシステムの回路部品と複数の異なる構成の前記電極とを選択的に相互接続するために対応する制御信号に従って動作可能な複数のアナログスイッチング部品を有するスイッチングシステムを備え、前記処理システムは電気化学ノイズモードにおいて前記スイッチングシステムに制御信号を提供し、電気化学ノイズ測定中に前記プローブインタフェースシステムにおいて前記スイッチングシステムに前記補助および作用電極を仮想グラウンドに接続させる、請求項92に記載の腐食測定装置。
【請求項94】
前記処理システムは局部腐食指数をサンプリングされた電流信号の標準偏差とサンプリングされた電流信号のrmsとに基づいて計算し、前記標準偏差およびrmsはいずれもランニングモーメント計算(running moment calculation)に基づく、請求項92に記載の腐食測定装置。
【請求項95】
前記処理システムは局部腐食指数をサンプリングされた電流信号の標準偏差とサンプリングされた電流信号のrmsとの比として計算する、請求項94に記載の腐食測定装置。
【請求項96】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
前記プローブインタフェースシステムの回路部品と複数の異なる構成における前記電極とを選択的に相互接続するために対応する制御信号に従って動作可能な複数のアナログスイッチング部品を有するスイッチングシステムと、
前記スイッチングシステムに制御信号を提供し、前記スイッチング部品を選択的に再構成して前記スイッチングシステムに前記補助および作用電極を前記プローブインタフェースシステムにおける仮想グラウンドに接続させ、電気化学ノイズ測定を用いて前記検出回路によって検出される信号に基づいて少なくとも1つの腐食関連値を計算するために前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項97】
電解質にさらされる構造物の腐食を測定または監視するループ給電腐食測定装置であって、
4〜20mAループに結合可能で前記4〜20mAループからの電源を用いて前記装置に給電するための電源システムを備えるループインタフェースと、
前記電解質内にある複数の測定電極とインタフェースするための信号調整回路を有するプローブインタフェースシステムと、
を備え、
前記信号調整回路は、
前記電極の第1の電極を介して前記電解質に正弦波励起信号を提供するように機能する励起回路と、
前記電極の少なくとも第2の電極を介して1つまたは複数の腐食関連電気信号を検出するように機能する検出回路と、
一連の装置サイクルの各々において前記検出回路によって検出される電流信号の高調波に基づいてB値を計算し、計算されたB値とともに線形分極抵抗測定を用いて前記検出回路によって検出される電流信号に基づいて所与の装置サイクルにおける少なくとも1つの腐食関連値を計算するために、前記プローブインタフェースシステムと動作可能に結合される処理システムと、
を備える、ループ給電腐食測定装置。
【請求項98】
前記計算されたB値はローパスフィルタ処理される、請求項97に記載の腐食測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−544008(P2009−544008A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519569(P2009−519569)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/069533
【国際公開番号】WO2008/008567
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(509012463)ペッパール アンド フックス インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】