説明

腕時計

【課題】機械的強度に優れ、時刻表示部を必要に応じて、袖口を捲くることなく、容易に袖口の外に覗かせることができ、安全に時刻を認識できる腕時計を提供する。
【解決手段】本発明の腕時計は、時刻表示部を有する時計本体と時計本体を支持するバンドを有し、時計本体がバンドに対して、水平に回転できる腕時計であり、バンドの長手方向と時刻表示部の12時−6時方向が一致する通常状態と、バンドの長手方向に対して時刻表示部の12時−6時方向が所定の角度を有する傾斜状態とを有しており、傾斜状態では、時刻表示部の少なくとも一部がバンドの幅方向に突出することを特徴とする。その結果、時刻表示部を袖口を捲り上げずに常時、見ることを可能にし、それ以外は袖口内のバンドの長手方向に直列に設置しておけば手首の動きの妨げとはならず、洋服の着脱の際に袖口に引っ掛かることもなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻を表示する腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計は、時刻を表示する時計本体とバンドとからなり、時計本体はバンドに支持されて手首の中央に位置しており、バンドの長手方向に沿って、平行に設置されている。通常、時刻を確認するために、長袖の衣服を身につけている場合には袖口を捲くり上げて時刻表示部を覗かせる動作を必要とする。しかし、場合によっては、この動作が煩わしいものとなったり、瞬時の判断を必要とする際には、間に合わないこともある。そこで、袖口をまくり上げる動作を必要とせず、時刻表示部をあらかじめ袖口から覗かせておき、視線を向けるだけで、容易に見ることの可能な腕時計が特許文献1と特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57-89974号公報(第1頁、第1−4図)
【特許文献2】特開平5−232253号公報(第3頁、第1−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された腕時計では、時刻表示部が、時刻を見る作業時間以外は手首の動きの妨げとなり、洋服の着脱の際には袖が引っ掛かってしまうなどの問題がある。また、特許文献2に記載された腕時計では、必要時以外は時計本体の収納が可能であるが、その際には、袖口を広げる方向に時計本体を移動させるので、結局、時計本体を引き出す際には袖口を捲ることが必要である。また、時計本体に接続した蝶番あるいはスライド式の可動部は機械的強度が劣るため、外部から強い衝撃を受けると容易に時計本体が外れ、損壊してしまう可能性が大きい。
このように、従来の腕時計では、時計本体の時刻表示部をあらかじめ袖口から覗かせておくことが可能な時計もあったが、日常生活をする上で、実用上、不都合な課題を残していた。
【0005】
本発明は、上記の従来技術の有する問題を鑑みてなされたものであり、機械的強度に優れ、必要に応じて容易に時刻表示部を袖口から外に覗かせることのできる腕時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の腕時計は、時刻表示部を有する時計本体と時計本体を支持するバンドを有し、時計本体がバンドに対して、水平に回転できる腕時計であって、バンドの長手方向と時刻表示部の12時−6時方向が一致する通常状態と、バンドの長手方向に対して時刻表示部の12時−6時方向が所定の角度を有する傾斜状態とを有しており、傾斜状態では、時刻表示部の少なくとも一部がバンドの幅方向に突出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、時刻表示部を有した時計本体が扇状に回転移動し、固定できる。従って、必要に応じて時刻表示部を袖口を捲り上げずに容易に覗かせることができ、それ以外は袖口内のバンドの長手方向に平行に設置しておけば手首の動きの妨げとはならず、洋服の着脱の際に袖口に引っ掛かることもなくなる。
【0008】
また、時計本体は時計バンドの一部である台座上で軸を介して結合し、扇状に回転移動するだけなので、蝶番あるいはスライド式の可動部と比較して、機械的強度が高いため、外部からの強い衝撃によって容易に時計本体が外れたり、損壊することがない腕時計の提供が可能となる。
【0009】
更には、本発明の腕時計はデザイン的にも優れ、時計本体の表面の時刻表示部と並んで装飾品を設置すれば、アクセサリーとしての装飾効果もある。更には、時計本体に太陽電池を組み込めば、電池交換不要の時計を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の腕時計の機能を説明するための外観斜視図及び平面図である。
【図2】本発明の腕時計の時計本体の構造を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の腕時計のバンドの構造を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の腕時計の時計本体とバンドとの関係を説明するための外観斜視図である。
【図5】本発明の腕時計の時計本体とバンドとの関係を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の腕時計の使用例を示す平面図である。
【図7】本発明の腕時計の他の実施例を示す外観斜視図である。
【図8】本発明の腕時計の他の実施例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例】
【0012】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1における腕時計の外観斜視図及び平面図である。図2は、本発明の実施例1の時計本体構造を示す外観斜視図である。図3は、本発明の実施例1の腕時計のバンド構造を示す外観斜視図である。図4は、本発明の実施例1の腕時計の時計本体とバンドとの関係を示す外観斜視図である。図5は、本発明の実施例1の腕時計の時計本体とバンドとの関係を示す模式断面図である。図6は、本発明の実施例1の腕時計の使用例を示す平面図である。
【0013】
まず、本実施例1の腕時計の構成について説明する。本実施例1の腕時計は、図1に示すように、表面に時刻表示部30を有する時計本体10と、時計本体10を支持するバンド20とからなり、時計本体10がバンド20の一部である駒23表面に対して、円弧状に水平に回転移動し、所定の位置で固定することができる。図1(a)は回転させる前の通常状態であり、バンド20の長手方向と時刻表示部30の12時−6時方向が一致するようにして固定されている。この状態では、長袖の洋服を着た場合、時計本体10は長袖の中に隠れており、時刻を瞬時に知ることはできない。同図(b)は、バンド20の長手方向に対して時刻表示部30の12時−6時方向を所定の角度で傾斜させた状態であり、この時、時刻表示部30の少なくとも一部がバンド20の幅方向に突出している。この状態では、長袖から時刻表示部30を覗かせておくことができ、作業中でも袖口を捲くらずに手首部分に視線を向けるだけで容易に時刻を知ることが可能となる。同図(c)は同図(b)を上方から見た平面図であり、時計本体10が円弧状に水平に回転移動し、傾斜して固定されていることがわかる。
【0014】
次に本実施例1の腕時計の各構成部品について説明する。図2は時計本体10であり、時計本体10裏面には、水平方向に回転移動する時計本体10の回転範囲を規定するための円弧状の溝11と、回転可能な軸を嵌合するための穴12が設けられている。また、図3は本実施例1のバンド20であり、バンド20の駒23には、時計本体10を取り付けるための回転可能な軸22と、円弧状の溝11に係合する突起21とを有している。
【0015】
次に、図4と図5に基づいて、突起21と回転可能な軸22の具体的な構成と、時計本体10とバンド20の組み合わせ構造を説明する。すなわち、駒23の穴28にはベアリング24が収納され、穴の上面側から回転可能な軸22が挿入されると共に、穴の下面側からネジ25が挿入され、軸22にネジ25を螺合することにより、軸22はベアリング24によって回転可能に保持されている。そして、軸22を保持したベアリング24は、穴28に螺合するキャップ26によって穴28内に収納固定されている。
【0016】
次に、突起21は円弧状の溝11の底面に圧接する弾性ピボットを採用している。図5に示すように突起21は駒23の穴29に下面側から収納配置され、穴29に螺合する固定ネジ27によって穴29内に収納固定されている。
回転可能な軸22が時計本体10の下面に設けた穴12に対して圧入固定されると共に、突起21は円弧状の溝11に係合されている。図2に示すように円弧状の溝11の底面には、突起21の弾性ピボットが嵌り、所定の水平角度位置で時計本体10を位置決めするための凹部13、14を有している。
【0017】
以上の構成を採用することにより、本実施例1の腕時計は、図1(a)に示すようにバンド20の長手方向に対して、時刻表示部30の12時−6時方向が一致する通常状態と、バンド20の長手方向に対して、時刻表示部30の12時−6時方向が所定の角度を有する傾斜状態とを切り替えることができる。傾斜状態のときには、時刻表示部30の少なくとも一部をバンド20の幅方向に突出して固定することができる。したがって、図6の本実施例1の腕時計の使用例でわかるように、時刻表示部30を袖口200から覗かせることが可能である。また、回転可能な軸22と円弧状の溝11と突起21は、従来例の蝶番あるいはスライド式と比較し、機械的強度が強く、外部からの強い衝撃によって容易に時計本体が外れたり、損壊しにくい構造である。さらに、円弧状に回転できる角度は任意であるが、作業時の腕の角度および視線の位置からバンドの長手方向と12時−6時方向とのなす角度は45度付近が適当である。
【0018】
また、回転可能な軸22は時刻表示部30の中心から外れた位置に設けることが好ましい。例えばアナログ時計の場合なら指針の回転中心から外れた位置であり、デジタル時計なら、デジタル表示装置の中央から外れた位置である。本実施例1では、回転可能な軸22を嵌合するための穴12を時刻表示部30から離れた時計本体10裏面の下方部に設けることにより、より少ない角度で時刻表示部30をバンドの幅方向に大きく突出させて、袖口から覗かせることを可能にしている。
【0019】
また、図5に示すように、回転可能な軸22と突起21は、時計ムーブメントを収納するための裏蓋60を避けた位置に設けられている。この構造を採用することにより、時計本体10を傾斜させれば、電池交換時にバンド20が裏蓋60を邪魔することがなくなり、容易に電池交換ができる。
【0020】
また、本実施例1では、バンド20の一部である駒23を貫通させて、突起21を突出させたが、これに限るものではなく、時計本体10とバンド20のどちらか一方に突起21を設け、他方に円弧状の溝11を設けても良い。
【0021】
(実施例2)
図7は、本発明の腕時計の第2の実施例を示している。すなわち、時計本体10の表面
の時刻表示部30から外れた、空いている領域を利用して、ダイヤモンドや輝石などの宝飾品を設置し、装飾品としての機能を持たせている。図7では、時刻表示部30から外れた時計本体10の下方部に装飾部材40を設置してある。このように本発明の腕時計はデザイン性を向上させるための装飾を施すことが可能となり、時計本体10の表面の時刻表示部30と並んで装飾部材40を設ければ、アクセサリーとしての装飾効果も発揮させることができる。
【0022】
(実施例3)
図8は、本発明の腕時計に第3の実施例を示している。すなわち、時計本体10の表面の時刻表示部30から外れた、空いている領域を利用して、太陽電池50を組み込むことにより、電池交換不要の腕時計を可能にする。本実施例では、面で受光する太陽電池50を示しているが、これに限定するものではない。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、実施例1では、回転可能な軸22を嵌合するための穴12は、時刻表示部30から離れた時計本体10裏面の下方部に設けたが、これに限定するものではなく、裏蓋60に穴12を設けても良い。また、時計本体10に電波受信用アンテナを内蔵させれば、時刻修正機能を具備させることも可能である。その他、時計本体10を利用して、種々の機能を付加させることが可能である。更に、本発明の時刻表示部30はアナログ表示としたが、デジタル表示でも良い。
【符号の説明】
【0024】
10 時計本体
11 円弧状の溝
12 回転可能な軸を取り付けるための穴
13,14 凹部
20 バンド
21 突起
22 回転可能な軸
24 ベアリング
30 時刻表示部
40 装飾部材
50 太陽電池
60 裏蓋
100 手
200 袖口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻表示部を有する時計本体と、前記時計本体を支持するバンドを有する腕時計において、前記時計本体が前記バンドに対して水平に回転して、前記時刻表示部の少なくとも一部が前記バンドの幅方向に突出する状態を有することを特徴とする腕時計。
【請求項2】
前記時計本体と前記バンドとが回転可能な軸を介して結合しており、前記時計本体と前記バンドのどちらか一方に突起を設けるとともに、他方には回転範囲を規定するために前記突起と係合する扇状の溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記回転可能な軸は、前記時刻表示部から外れた位置に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の腕時計。
【請求項4】
前記時計本体が時計ムーブメントを収納するための裏蓋を有し、前記回転可能な軸と前記突起とは前記裏蓋をさけた位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の腕時計。
【請求項5】
前記突起は前記溝の底面に圧接する弾性ピボットであり、前記溝の底面には前記弾性ピボットを位置決めするための凹部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の腕時計。
【請求項6】
前記時計本体の表面に、装飾部材を取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の腕時計。
【請求項7】
前記時計本体の表面に、太陽電池を組み込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の腕時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−211864(P2012−211864A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78395(P2011−78395)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)