説明

腫瘍の成長を抑制する抗体および抗体フラグメント類

【課題】モノクロナール抗体、抗体フラグメントおよび単鎖抗体の有利な特性を併せ持つ新しい抗腫瘍剤を提供する。
【解決手段】マウス抗EGFレセプター抗体の不変部および可変軽鎖が欠失した抗EGFレセプターモノクローナル抗体225およびそれらのフラグメントのキメラ化およびヒューマナイズ化物からなる。また、細胞毒性剤であるエフェクター分子に接合したモノクロナール抗体225の超可変部を有する分子からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1995年6月7日出願の特許願第08/482,982号の一部継続出願である1995年12月15日出願の特許願第08/573,289号の更なる一部継続出願であり、これら両方の開示を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本発明はある種の腫瘍細胞の成長を抑制するのに有用な抗体類および抗体フラグメント類に関する。
【背景技術】
【0003】
最近の研究によって、ヒト悪性疾患の病因および進行における成長因子レセプター・チロシンキナーゼ類の重要な役割が解明されるに至っている。これら生体レセプターはそれらを発現する細胞膜中のトランスメンブラン・ドメインによりアンカーされている。細胞外ドメインが成長因子に結合するのである。成長因子が細胞外ドメインに結合すると、シグナルが細胞内キナーゼ・ドメインに伝達される。このシグナル伝達が、細胞の増殖および分化をもたらす事象に寄与する。 表皮成長因子(EGF)レセプター・ファミリーのメンバーは、重要な成長因子レセプター・チロシンキナーゼ類である。EGFレセプター・ファミリーで発見された第1のメンバーは、見掛け分子量約165kDを有する糖蛋白質であった。この糖蛋白質は、メンデルソーン[Mendelsohn]らの特許文献1に記述されており、EGFレセプター(EGFR)として知られているものである。
EGFRリガンドがEGFレセプターに結合すると細胞の成長につながる。EGFおよびトランスフォーミング成長因子アルファ(TGF−アルファ)はEGFRの2つの公知のリガンドである。
【0004】
多くのレセプター・チロシンキナーゼ類がヒト腫瘍中に異常に多数発見されている。たとえば、上皮起源の多くの腫瘍がそれらの細胞膜上に高レベルのEGFレセプターを発現する。EGFレセプターを発現する腫瘍の例としては、膠芽腫、ならびに肺、胸、頭および首、ならびに膀胱の癌などがある。腫瘍細胞膜上のEGFレセプターの増幅および/または過発現が予知の難しさに関係する。
【0005】
腫瘍抗原に対する抗体、特にモノクローナル抗体が可能性のある抗癌剤として追究されている。それら抗体は多くのメカニズムを通して腫瘍の成長を抑制する。たとえば、抗体は抗体依存性の細胞毒性(ADCC)または補体依存性の細胞毒性(CDC)により免疫学的に腫瘍の成長を抑制する。
あるいは、抗体が成長因子のレセプターへの結合に競合することもある。そのような競合がレセプターを発現する腫瘍の成長を抑制する。
別のアプローチでは、毒素を腫瘍抗原に対する抗体に接合させる。抗体部分がその接合体を腫瘍に向かわせ、腫瘍が毒素部分で殺される。
【0006】
たとえば、特許文献1は、EGFレセプターに結合する225と呼ばれるマウスモノクローナル抗体について記述している。この特許はカリフォルニア大学に譲渡され、イムクローン・システムズ社[ImClone Systems Incorporated] に排他的実施権を供与されている。この225抗体は、培養EGFR発現腫瘍系の成長の抑制、ならびにヌードマウスに異種移植されて成長するこれら腫瘍のin vivoでの成長を抑制することができる。しかしながら、第一相臨床試験では、ヒトに300mgまでのマウス225抗体を投与しても臨床的応答は観察されなかった。非特許文献2参照。非特許文献3参照。さらに最近では、225にドキソルビシンまたはシス−プラチンを混成した治療体系が、マウスに十分に樹立されたヒト異種移植モデルのいくつかに対して治療の相乗効果を示している。非特許文献1。
【特許文献1】米国特許第4,943,533号
【非特許文献1】バサルガ[Basalga]ら、J.Natl.CancerInst.,85,1327−1333(1993)。 ディブジ[Divgi]ら、J.Natl.Cancer Inst.,83,97−104(1991) マスイ[Masui]ら、Cancer Res.,44,5592−5598(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マウスモノクローナル抗体をヒトの治療に使用することの不都合な点は、マウスIg配列の存在によるヒト抗マウス抗体(HAMA)応答の可能性があることである。この不都合は、マウス(またはその他の非ヒト哺乳類)抗体の全不変部をヒトの不変部と置き換えることによって低減させることができる。マウス抗体の不変部をヒトの配列で置き換えることは通常キメラ化(キメライゼーション)と呼ばれている。
【0008】
このキメラ化プロセスはまた、マウス抗体の超可変部または相補性決定領域(CDR)以外の可変部を、対応するヒト配列で置き換えることによってより効果的に行うことができる。CDR以外の可変部は、また可変フレームワーク領域(FR)としても知られている。
【0009】
不変部および非CDR可変部をヒトの配列と置き換えることは、通常ヒューマナイズ化(ヒューマナイゼーション)と呼ばれている。このヒューマナイズ化抗体は、より多くのマウス配列がヒト配列で置き換えられることによって、免疫抗原性が少なくなる(すなわち、HAMA応答の出現が少ない)。不都合なことに、ヒト配列に置き換えるマウス抗体の領域が多くなればなるほど、そのコストと作業はともに増加する。
抗体の免疫原性を減らす別の方法は、抗体フラグメントを使用することである。たとえば、アバウド−ピラク[Aboud-Pirak]ら、Journal of theNational Cancer Institute,80,1605− 1611(1988)による論文では、108.4と呼ばれる抗EGFレセプター抗体を、抗体フラグメントの抗腫瘍効果と比較している。この腫瘍モデルはヌードマウスにおけるKB細胞の異種移植をベースとしたものである。KB細胞はヒト口腔類表皮癌から得られ、高レベルのEGFレセプターを発現する。
【0010】
アバウド−ピラク[Aboud-Pirak]らは、抗体および二価F(ab’)2 フラグメントはともにin vivoでの腫瘍成長を遅らせたが、F(ab’)2 フラグメントは効果が少なかったことを見出している。この抗体の一価Fabフラグメントは細胞関連のレセプターへの結合能力は保存されていたが、腫瘍成長を遅らせることはなかった。
したがって、効果的かつ安価に生産でき、ヒトに対する免疫原性が少ないかまたは全くなく、腫瘍細胞上に多数発現されるレセプターへの結合能力があり、それら成長因子のレセプターに対する結合を遮断する能力を有する改良された抗腫瘍剤に対する必要性が切望されている。本発明の一目的は、モノクローナル抗体、抗体フラグメントおよび単鎖抗体の有利な特性を併せ持つそうした新しい抗腫瘍剤の発見にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらおよびその他の目的は、当分野の通常の技術者には明らかとなるように、抗体の不変部および可変軽鎖が欠失したポリペプチドを提供することにより達成されたが、このポリペプチドはNYGVH(配列番号:1)、GVIWSGGNTDYNTPFTSR(配列番号:2)、またはVIWSGGNTDYNTPFTS(配列番号:3)のアミノ酸配列を有するものである。このポリペプチドは腫瘍成長を抑制する分子などのエフェクター分子に接合させることができる。本発明はさらにそれらポリペプチド類をコードするDNAにも関する。
【0012】
本発明はまた、NYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSのアミノ酸配列で構成されたポリペプチド類も含む。
本発明はまた、ヒト抗体の不変部と、ドキソルビシン、タキソール、またはシス−ジアミンジクロロ白金(シスプラチン)などの細胞毒素剤に接合されたモノクローナル抗体225の可変部を有する分子も含む。本発明はさらに抗体の可変軽鎖の不変部が欠失したポリペプチド(このポリペプチドはアミノ酸配列NYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSを有する)の有効量をヒトに投与することを特徴とするヒトにおける腫瘍細胞の成長を顕著に抑制する方法も包含する。別の観点から見た場合、本発明はアミノ酸配列NYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSで構成されたポリペプチドの有効量をヒトに投与することを特徴とするヒトにおける腫瘍細胞の成長を著しく抑制する方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、ヒトにおけるEGFレセプターを発現する腫瘍細胞の成長を顕著に抑制する方法も含む。この方法は、ヒト抗体の不変部とモノクローナル抗体225の可変部を有する分子の有効量を、化学療法剤などの細胞毒性分子の存在下および非存在(特に非存在下)の両方において、ヒトに投与することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明はその一面において、抗体の不変部と可変軽鎖が欠失したポリペプチドに関し、当該ポリペプチドはモノクローナル抗体225の第1および第2重鎖の相補性決定領域を含む。これらの相補性決定領域は以下のアミノ酸配列を有する:
CDR−1:NYGVH(配列番号:1)
CDR−2:GVIWSGGNTDYNTPFTSR(配列番号:2)
上記の第1および第2相補性決定領域を含有するペプチドは当分野で公知の方法により得ることができる。たとえば、このポリペプチド類はそのポリペプチドをコードするDNAを適当な宿主中にて発現させ、単離することができる。このDNAは当分野で周知の方法により4つのヌクレオチド類の全部または一部から化学的に合成することができる。そうした方法としては、Science,230,281−285(1985)のカルーサーズ[Caruthers]記述の方法がある。
【0015】
このDNAはまたマウスモノクローナル抗体225からも得ることができ、これについてはメンデルソーンらの米国特許第4,943,533号に記述されている。この抗体はメリーランド州ベセスダの米国基準株保存機関(ATCC)に、1995年6月7日に寄託されている(寄託番号11935)。抗体の可変重鎖領域を得る方法は当分野では公知である。そうした方法としてはたとえば、ボス[Boss](セルテック社[Celltech])およびカビリー[Cabilly](ジェネンテック社[Genentech])による米国特許に記載されているものがある。それぞれ、米国特許 第4,816,397号および第4,816,567号参照。
【0016】
本発明の蛋白質をコードするDNAは、さまざまなクローニングおよび発現ベクターで広範な種類の宿主細胞に挿入して複製およびリコンビナント蛋白質を発現させるために使用することができる。宿主は原核生物でも真核生物でもよい。
このポリペプチドは、NYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSのいずれかを含む。あるいはこのポリペプチドは、NYGVH配列と、GVIWSGGNTDYNTPFTSRまたはVIWSGGNTDYNTPFTSの配列のいずれかとを含むものでもよい。
このポリペプチドはまたエフェクター分子に接合することもできる。エフェクター分子はたとえば、腫瘍成長を抑制したり、ポリペプチドが腫瘍細胞などの細胞に入らせたり、ポリペプチドを細胞中の適切な場所に向かわせるなど、種々の有用な機能を果たす分子である。
【0017】
エフェクター分子としては、たとえば細胞毒性分子を挙げることができる。細胞毒性分子は蛋白質、あるいは非蛋白質有機化学療法剤とすることができる。好適な化学療法剤の例としては、たとえば、ドキソルビシン、タキソール、およびシスプラチンなどがある。
本発明のポリペプチドへの接合に好適なその他いくつかのエフェクター分子の例としては、シグナル導入インヒビター類、ラス(ras)・インヒビター類、および細胞サイクル・インヒビター類がある。シグナル導入インヒビター類の例としては、ケルセチン[quercetin](グラジエリ[Grazieri]ら、Biochem.Biophs.Acta,714,415(1981));ラベンダスチンA[lavendustin A](オノダ[Onoda]ら、J.Nat.Prod.,52,1252(1989));およびハービマイシンA[herbimycin A](ウシャラ[Ushara]ら、Biochem.Int.,41,831(1988))などの蛋白質チロシンキナーゼ・インヒビターがある。ラス・インヒビター類としては、ジェームス[James]ら、Sience,260,1937(1993)記述のベンゾジアゼピン・ペプチド擬似体などのラス・ファルネシレーション・インヒビター類があり、これは下記の式を有する:
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、RはHまたはCH3 であり、Xはメチオニン、セリン、ロイシン、またはそれらのエステルまたはアミド誘導体である。)
蛋白質および非蛋白質の化学療法剤を当分野で公知の方法によりポリペプチドに接合することができる。そうした方法としては、たとえば、ドキソルビシンの接合にはグリーンフィールド[Greenfield]ら、Cancer Research,50,6600−6607(1990)の記述の方法、ならびにプラチナ化合物の接合にはアーノン[Arnon]ら、Adv.Exp.Med.Biol.,303,79−90(1991)およびキセレバ[Kiseleva]ら、Mol.Biol.(USSR),25,508−514(1991)などの方法がある。
【0020】
本発明はさらにヒト抗体の不変部、ならびにモノクローナル抗体225の超可変部を有する修飾抗体を含む。これらの修飾抗体は任意に細胞毒素剤などのエフェクター分子に接合されてもよい。超可変部以外の可変部はまたヒト抗体の可変部から導くこともできる。そうした抗体はヒューマナイズ化されたもの(humanized)と呼ばれる。ヒューマナイズ化抗体を作る方法は当分野では公知である。方法としてはたとえば、ウインター[Winter]による米国特許第5,225,539号に記述されている。
225抗体のヒューマナイズ化の最も完全な方法はCDR移植である。実施例IVに記述されているように、抗原への結合に直接関与するマウス抗体の補体決定領域またはCDRがヒト可変部に移植され、“再形成ヒト”可変部を作り出す。これら完全にヒューマナイズ化された可変部が次にヒト不変部に結合され、“すべてがヒューマナイズ化された”完全な抗体を作り出す。抗原にうまく結合する完全にヒューマナイズ化された抗体を作り出すためには、再形成ヒト可変部を注意深く設計することが必要である。225抗体CDRが移植されるヒト可変部は注意深く選定しなければならず、通常はヒト可変部のフレームワーク領域(FR)内の重要な位置にいくつかのアミノ酸の変化を創出することが必要である。
設計された再形成ヒトH225可変部は、選択したヒトカッパー軽鎖可変部のFR中に1以下のアミノ酸変更と、選択したヒト重鎖可変部のFR中に12のアミノ酸変更を含む。これら再形成ヒトH225重鎖およびカッパー軽鎖可変部遺伝子をコードするDNA配列は、それぞれヒトγ1およびヒトκ不変部遺伝子をコードするDNA配列に結合される。この再形成ヒトH225抗体は次に哺乳類細胞に発現し、A431細胞表面上に発現されるヒトEGFレセプターへの結合をマウスM225抗体、ならびにキメラC225抗体と比較して試験する。
【0021】
抗体の超可変部外の可変部もまたモノクローナル抗体225から誘導される。その場合、全可変部がマウスモノクローナル抗体225から誘導されるが、この抗体はキメラ化抗体、すなわちC225と呼ばれる。キメラ化抗体を作り出す方法は当分野では公知である。そうした方法にはたとえば、ボス[Boss](セルテック社[Celltech])およびカビリー[Cabilly](ジェネンテック社[Genentech])の米国特許に記述されているものがある。それぞれ米国特許第4,816,397号および第4,816,567号参照。
これら修飾抗体の不変部はヒトクラスのいずれか、すなわちIgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEとすることができる。上記クラスのサブクラス、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4もすべて好適であるが、この中ではIgG1が好ましい。
【0022】
ポリペプチドへの接合に関して上に挙げたエフェクター分子はいずれもまた本発明のキメラ化またはヒューマナイズ化抗体に接合することができる。ドキソルビシン、タキソールおよびシスプラチンが好ましい。
【0023】
本発明のポリペプチドおよび抗体は有効量をヒトに投与した場合に腫瘍細胞の成長を顕著に抑制する。最適用量は多くのパラメータ、たとえば年齢、性別、体重、治療する症状の程度、投与する活性成分、および投与方法などを考慮して医師が決定することができる。一般的にはEGFレセプターを飽和させることができるポリペプチドおよび抗体の血清濃度が望ましい。約0.1nM以上の濃度で通常十分である。たとえば、100mg/m2 のC225用量は約8日分の約20nMの血清濃度となる。
大まかなガイドラインとして、毎週10−300mg/m2 の量の抗体用量が与えられる。血清レベルをEGFレセプターを飽和させる濃度以上に保つためには相当する用量の抗体フラグメントをより頻繁な間隔で使用しなければならない。
投与に好適なルートは、経静脈、皮下、および筋肉内投与である。経静脈投与が好ましい。本発明のペプチドおよび抗体は薬学的に許容される追加の成分とともに投与することができる。そうした成分としてはたとえば、前述のような免疫系刺激剤および化学療法剤などがある。
【0024】
本発明のキメラ化およびヒューマナイズ化抗体は驚くべきことに、マウス225抗体とは異なり、たとえシスプラチン、ドキソルビシン、タキソールおよびそれらの誘導体などの化学療法剤を含むその他の抗腫瘍剤が存在しない場合であっても、ヒトにおける腫瘍成長を顕著に抑制することが突き止められた。顕著な抑制とは、少なくとも20%、好ましくは30%、そしてさらに好ましくは50%の腫瘍縮退を意味する。最良のケースでは、腫瘍の90%、そして100%もの縮退が達成される。あるいは、顕著な抑制とはRIが0.3以上、好ましくは0.4以上、そしてさらに好ましくは0.5以上を意味するとしてもよい。
【0025】
腫瘍成長の顕著な抑制および/またはRIの増加は多くの形で現れる。たとえば、寿命の延長および/またはそれまで激しく進行していた腫瘍成長の安定化といったことである。
患者に化学療法剤の治療を継続するには副作用が激しすぎるといったケースでは、C225を化学療法剤に置き換えることができ、それらに匹敵する結果を得ることができる。
たとえば、実施例III−1に示されている結果は、225とC225のinvitroの抑制特性は同程度であるものの、これら抗体のin vivoの効果は著しく異なることを示している。抗体のアイソタイプは225とC225の間に見られる差には重要な役割を果たしていない(たとえば、マウスIgG1対ヒトIgG1)。最近の報告書では、225もC225いずれも補体介在の溶離を誘発することは全くなく、これら抗体のADCC反応性は種特異性と思われると報告している。ナラムラ[Naramura]ら、Immunol.Immunother.,37,343−349(1993)。したがって、A431異種移植の抑制が免疫応答によって仲介されたものであったならば、225はADCCに関与するマウスエフェクター細胞を活性化する能力があることから、抗体としてもっと作用したはずである。しかし実際はそうはなっていない。
【0026】
加えて、225またはC225による治療に対する同一群の個々の動物には応答の様子に差異が見られる。C225単独の場合には1mg用量で完全な腫瘍減退を誘発させるのに非常に効果的であるのに対し、この用量レベルの225ではごく僅かの効果しか示していない。実施例III−1の実験2および3においては各検討の最後の時点では約40%の動物に腫瘍がなかった。それらグループで応答した動物は通常治療プロトコルの開始時点では小さな腫瘍であったが、ここでもまた最初の腫瘍負荷がC225の生物学的効果に一定の役割を果たすことが示されている。特筆すべきは、225またはC225のいずれかで治療した動物はすべての検討においてPBS対照群と比べて大きな生存特性を示したことである。
【0027】
実施例III−2に示されているように、前立腺癌はまたC225による抗EGFR免疫治療の介在に適当な標的である。転移性前立腺癌細胞はTGF−αならびにEGFRをともに発現するため、末期の前立腺癌は特に好適な標的となる。
【0028】
実施例III−2はバイオヒト前立腺癌細胞のEGFRの活性化およびヌードマウスにおける前立腺異種移植の成長に対するC225の生物学的効果を説明するものである。in vitro実験は、ヒト前立腺癌細胞3系統に対するEGFRの発現レベル、ならびにレセプターの機能活性化を遮断するC225の効果を判別できるように設計された。図7は、LNCaP(アンドロゲン依存性)およびPC−3ならびにDU145(アンドロゲン非依存性細胞)に見られるA431細胞でのEGFR発現レベルを比較したFACS分析の結果を示している。PC−3(MFI=135)およびDU−145(MFI=124)細胞は両方とも、A431細胞(MFI=715)よりもレセプターの発現が約7倍少なかった。MFIは抗原密度の間接的な指標であることから、PC−3およびDU145細胞はともにそれぞれ約105 レセプターを発現したと考えられる。一方LNCaP細胞は非常に低い表面レセプターの発現(MFI=12)であった。
【0029】
上記のように、A431細胞によって発現されるEGFRは細胞外添加のリガンド(EGF)によって刺激されるが、C225はレセプターの活性化を排除することができる。図8は前立腺系における同様の検討結果を示している。 LNCaP、PC−3およびDU145に対するEGFの添加はEGFRのリン酸化を誘発し、これはC225によって極めて効果的に遮断された。これらのデータはC225がリガンドにより活性化されるEGFRシグナル経路を効果的に抑制し、またin vivoにおける成長に必要なEGFR活性化に対して抗腫瘍活性を有することを示している。
in vivoにおける腫瘍成長を抑制するC225の能力を、無胸腺ヌードマウスに樹立されたDU145異種移植について試験した。DU145細胞をマトリゲルと組み合わせて1動物当たり106 細胞個接種した。動物の100%が20日以内に腫瘍を発現した。予備実験において1mg(10x)の用量レベルで顕著な腫瘍抑制を誘発することが示された。これらの検討では、C225は0.5mg(10x)用量レベルで注射された。
【0030】
図9に示すように、樹立されたDU145異種移植の成長を顕著に抑制するのに効果的なのはC225だけであった(p<0.5)。全体的な治療効果は34日目までには明らかとなり、36日目までには対照群と比べて有意となった(図9A)。擬似物注入群におけるすべての腫瘍は本検討全期間を通じて成長した(図9B)が、抗体の抗腫瘍効果は本検討期間を通じて認められた(図9C)。PBS処理動物における自然緩解はこのモデルではまったく見られなかったが、C225処理動物の60%は60日目までは腫瘍がなく(図10A)、さらに抗体注入の終了後90日間でも腫瘍なしの状態が継続した。加えて、C225群で消えなかった腫瘍は治療停止後も極めてゆっくり成長した(55日目;図9C)が、このことはこの抗体の長期持続効果を示唆したものである。治療期間中には生存曲線に顕著な差は見られなかった(図10B)。
【0031】
実施例III−2はC225が明らかに、樹立されたEGFR−陽性DU145異種移植の成長を抑制する能力があり、治療動物において長期的な腫瘍緩解を高率で誘発することができることを示している。これらの結果はin vitroデータでは予測できなかったことである。
DU145細胞と同様のレベルでEGFRを発現するすべての細胞系がC225に対してin vivoで応答したわけではない。たとえば、KB細胞(ヒト類表皮癌)は1細胞当たり約2×105 のEGFRを発現し、EGFによるレセプターの活性化はC225によりin vitroで遮断された。しかしながらKB異種移植片は、樹立されたA431腫瘍を持つ動物の100%において完全な緩解を誘発させることができるレベルである1mg用量(×10)のC225を含む治療には応答しなかった。驚くべきことに実施例III−2に示されているように、DU145腫瘍細胞を接種したマウスに対する0.5mg用量(×10)のC225単独治療では、すべての治療動物において顕著な腫瘍退行をもたらした。マウスの60%が治療終了後に完全な緩解を示した。C225によるレセプター活性化の遮断はまた、ヒトにおける転移性前立腺癌の治療、特に癌の末期段階における臨床的効果を持つ可能性がある。
【実施例】
【0032】
実施例I 材料
実施例I−1 細胞系および培地
A431細胞を通常通り、ダルベッコの改変イーグル培地および10%胎児ウシ血清、2mM L−グルタミンおよび抗生物質を添加したハムのF−12培地の1:1混合物中で増殖させた。
アンドロゲン非依存性および依存性のヒト前立腺癌細胞系(DU145、PC−3およびLNaP)を、ATCC(メリーランド州ロックビル)から入手し、10%胎児ウシ血清(インターゲン、ニューヨーク州パーチェス)および2mM L−グルタミン(シグマ社)を添加したRPMI 1640培地(ミズーリ州セントルイスのシグマ社)中で通常通り維持した。マイコプラズマの存在を確認するために定期的に細胞をチェックした。
【0033】
実施例I−2 M225およびC225の調製と精製
225抗体をプリスタン・プライム処理したBalb/cマウス中で腹水として増殖させた。腹水液体はHPLC(ABXおよびプロテインG)により精製し、SDS PAGEにより>95%の純度を有すると判定された。
ヒト臨床用グレードC225を血清を含まない独自の培地中で一ロット300リットル単位で増殖させた。分離後、濃縮肉汁を一連のクロマトグラフィ・カラムを通して精製し、無菌条件下で小瓶に詰めた。純度はSDS PAGEにより>99%と判定された。
【0034】
実施例I−3 ドキソルビシン−C225接合体の調製
C225ドキソルビシン接合体(C225−DOX)をグリーンフィールド[Greenfield]ら、Cancer Research,50,6600−6607(1990)記述の方法の変法を用いて調製した。即ち、ドキソルビシンを架橋剤PDPH(3−[2−ピリジルチオ]プロピオニルヒドラジド)(ピアース・ケミカル社[Pierece Chemical Co.])と反応させ、ドキソルビシン13−[3−(2−ピリジルジチオール)プロピオニル]ヒドラゾン ヒドロクロリドのアシルヒドラゾン誘導体を形成させた。C225をN−サクシンイミジル3−(ピリジルジチオ)プロピオネート試薬でチオール化し、ドキソルビシンヒドラゾンと反応させて、ヒドラジドならびにジスルフィド結合を含有する接合体を形成させた。この複合体を中性pHでゲルろ過により精製した。このC225−ドキソルビシン接合体は中性からアルカリpH(pH7−8)において安定であり、4℃で保存した。この接合体はpH6で容易に加水分解され、活性ドキソルビシンを放出した。
【0035】
実施例I−4 抗体225のキメラ化
実施例I−4A HおよびL鎖cDNAsのクローニング
225マウスハイブリドーマ細胞系を含む培地を組織培養フラスコ中で1リットルに増やした。全細胞RNAを、2−メルカプトエタノールを含むグアニジンイソチオシアネートで洗浄した溶液を溶離し、その溶液をダウンス・ホモジナイザーでせん断して細胞DNAを分解し、調製液を10mLの塩化セシウム緩衝剤の上に広げて調製した。24,000rpm で16時間遠心分離後、ペレットをトリス−EDTA(TE)緩衝液中に再懸濁させ、エタノールで沈降させた。ポリA(+)mRNA画分を、オリゴdTセルロースに結合させ溶離させることにより単離した。cDNAライブラリを、ポリA(+)mRNAをテンプレートとし、オリゴdTをプライマーとして使用して調製した。第2ストランドは、RNアーゼHとDNAポリメラーゼIを使用したニック翻訳により合成した。2本鎖DNAは2mLセファロースG75カラムを通過させて、オリゴdTおよび微量混入物を取り除いた。精製したDNAを下記配列のポリリンカーに連結させた:
【0036】
5’−AATTCTCGAGTCTAGA−3’(配列番号:31)
ただしこの配列は、クローニングベクターへの連結のためのEco RI 4塩基接着性末端、ならびにcDNAsの次の操作のためのXho IおよびXba Iの制限部位をコードする。連結されたcDNAは次に5%ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動によりサイズ選別を行った。適当なサイズの画分(H鎖用には〜1500bp、およびL鎖cDNA用には〜900bp)をゲル切片から電気的に溶離し、Eco RI消化ラムダgt10ファージDNAに連結した。ライブラリはin vitroで連結産物をパッケージし、リコンビナントファージを大腸菌株C600 HFL株上に広げることにより作成した。HおよびLのcDNAを含むファージをマウス・カッパーおよびガンマ不変部の放射標識オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、ファージ・フィルタ・リフトにより同定した。同定されたファージを制限マップ化した。
【0037】
最長cDNA挿入を有する単離物を、プラスミドベクター(重(H)鎖可変(V)領域用にはEco RI−Bam HIフラグメント、および軽(L)鎖可変(V)領域にはEco RI−Hpa Iフラグメント)中にサブクローニングし、DNAを配列した。このサブクローニングされたフラグメントは完全なV領域と関連マウス不変(C)領域の小部分を含んでいる。合計8つのL鎖cDNAが配列決定されたが、これらは4つの異なるmRNAsを表わすものである。同一のV領域と正しいガンマ1C領域の部分をコードする3つの全長H鎖cDNAsが配列決定された。ガンマ2a配列を含むその他3つの単離物もまた同定されたが、これらについてはそれ以上調べなかった。正しいL鎖cDNAを同定するために、マウス225抗体のサンプルを先ずSDS還元ゲル電気泳動によりHおよびL鎖を分離し、膜へブロッティングした後、自動エドマン分解によって配列決定した。
L鎖用に得られた配列はcDNAの1つと適合した。この単離物をJ5に再配列したが、VkT2と91%相同性があることが判明した。H鎖V領域はVH 101サブグループVII−1と96%の相同性のあることが判明した。
【0038】
実施例I−4B cDNAの適合化と発現ベクターの構築
V領域は、それぞれの本体をV/C結合部に最も近いユニークな制限部位とV領域の境界そのものの間の配列をコードする合成DNAデュプレックスに連結することにより発現に適するようにした。これに第2の短いイントロン配列を連結したが、これは連結された後V領域に対する機能的スプライス・ドナー部位を回復させた。L鎖のイントロンの末端はBam HI部位であり、H鎖イントロンの末端はHind III部位である。次いで適合V領域をにXba I−Bam HIフラグメント(Xba I部位はcDNAクローニングに使われた当初のリンカー中にあったもの)として単離し、一方適合H鎖V領域はXho I−Hind IIIフラグメントとして単離した。
ヒトカッパーおよびヒトガンマ1不変部を含む発現ベクターpdHL2を適合L鎖V領域の挿入に使用した。次に得られたプラスミドpdHL2−Vk (225)をXba IおよびBam HIで消化し、適合L鎖V領域の挿入に使用した。得られたプラスミドpdHL2−Vk(225)は次にXho IおよびHind IIIで消化し、適合H鎖V領域の挿入に使用した。最終的なベクターを制限マッピングによりpdHL2−ch225であると同定した。
【0039】
実施例I−4C トランスフェクト・ハイブリドーマ細胞中へのキメラ225の発現
pdHL2−ch225プラスミドをプロトプラスト融合によりハイブリドーマSp2/0 Ag14細胞中に導入した。プラスミドに寄生しているバクテリアを増殖させて600nmで0.5の最適密度とし、その時点で増殖を停止させ、かつプラスミド複製数を増幅させるためにクロラムフェニコールを添加した。翌日このバクテリアをリゾチームで処理し、細胞壁を取り除き、得られたプロトプラストをポリエチレングリコール1500によりハイブリドーマ細胞に融合させた。融合後、この細胞を抗体中で増殖させて生存バクテリアを殺し、96穴プレート上に塗布した。選択培地(メトトレキセート(MTX)を0.1μM含有)を24−48時間後に添加し、発現プラスミド上に存在するマーカー遺伝子(デヒドロフォレート・レダクターゼ)の発現を利用して、トランスフェクトされた細胞だけを増殖させた。
2週間後、いくつかのMTX耐性クローンを得、これらの抗体発現を試験した。培養上清を、捕捉試薬として抗ヒトIg(Fc特異性)抗体で被覆したウェルに加えた。検出系はHRP接合ヤギ抗ヒトカッパー抗体とした。クローンのほとんどがヒト抗体決定成分を分泌することが突き止められたが、最も高い生産能力を持つ3つをさらに1μMおよび次に5μMのメトトレキセートで増殖に適するようにした。SdER6およびSdER14と命名されたこれら系統の2つは高レベルのMTXでよく増殖を続け、限界希釈によりサブクローニングした。サブクローンの生産性を、増殖培地中1mL当たり2×105 細胞個の細胞接種によりテストし、蓄積された抗体を7日目に測定することにより試験した。第1のサブクローニングからの最も高い生産能力の2つの系統はSdER6.25とSdER14.10であった。これらを再びサブクローニングし、最終の3つの候補系統をSdER6.25.8、SdER6.25.49、およびSdER14.10.1と命名した。クローンSdER6.25.8を抗体の発現を根拠として選択した。
【0040】
実施例I−5 SdER6.25.8から発現されたC225の分析
クローンSdER6.25.8から産生された抗体について、抗体の性質を特性付けするために検討した。C225抗体を発現するトランスフェクト細胞クローンからの培養上清をテストして、異なるレベルのEGFレセプターを発現するヒト腫瘍細胞への結合能力を試験した。A431上皮癌細胞(高発現)は強度に染色されたが、M24黒色腫細胞(1/10の少ないレセプターを発現)は中程度に染色された。EGFレセプターを発現しない神経芽細胞腫IMR−32は染色されなかった。
【0041】
実施例I−6 C225抗体のキメラ化の効果
見掛けのKdは、ELISAおよびSPR法によって、それぞれC225については0.1および0.201nM、225については1.17および0.808nMと判明した(表1)。これらの結果は表1に示す既発表のC225のデータ(Kd=0.39nM)ならびに225のデータ(Kd=0.79nM、Kd=1nM)と同程度であった。これらの抗体は培養A431細胞の増殖を同じ程度に抑制することが判明した(表2)。さらに225およびC225はA431細胞中でEGFRのEGF誘発リン酸化を遮断する能力を有した。これらの結果は225のキメラ化が抗体の生物学的特性には影響を与えず、EGFRに対するC225の相対的な結合親和性を増加させたことを示している。
【0042】
実施例II 方法および検定
実施例II−1 ELISAによる相対親和力の測定
抗体の相対結合親和性は、すでにロッカー[Lokker]ら、J.Immunol.,146,893−898(1991)に記述されているELISAプロトコルを使用して判定した。即ち、A431細胞(1穴当たり104 または105 個)を96穴マイクロ滴定プレート中で一晩37℃で増殖させる。細胞を3.7%中性緩衝ホルマリンにより室温で10分間固定する。PBSで3回洗浄後、穴をハンクスの平衡塩溶液中に入れた1%ウシ胎児血清により、室温で2時間遮断する。C225または225を種々の濃度(50nMからスタートする連続稀釈液)で穴に加える。37℃で2時間のインキュベーション後、プレートをPBSで十分に洗浄し、ヤギ抗ヒト抗体(ミズーリ州セントルイスのシグマ社;1:1000)を用いて37℃で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、クロモゲンTMB(メリーランド州ゲイサーバーグのカークガード&ペリー社[Kirkegaard and Perry])を暗所で30分間添加する。呈色反応を1N硫酸により停止させ、プレートをELISAリーダーで450nmで読み取る。相対結合親和性は1/2最大ODを与える濃度とした。
【0043】
実施例II−2 表面プラスモン共鳴法(SPR)を使用した225およびC225の親和定数
M225およびC225の見掛けの結合親和力をまた、InAcoreTM(ニュージャージー州ピスカタウェイのファルマシア・バイオセンサー社[PharmaciaBiosensor];製造者の使用注意書き301およびオシャネシ[O'Shannessy]ら、Anal.Biochem.,212,457−468(1993))を使用して求めた。即ち、製造者の説明のように溶解性リコンビナントEGFRをアミノ基を通じて、センサ・チップ上に固定化する。225とC225のEGFRに対するリアルタイムの結合パラメータを種々の抗体濃度で確立し、見掛けのKdをBiaevaluationTM 2.0 ソフトウェアを使用した非線形フィッティングにより得た結合速度定数から計算した。
【0044】
実施例II−3 in vitroでの225およびC225による細胞増殖抑制
225およびC225のin vitroの抑制活性を、A431細胞(300−500/ウェル)を完全増殖培地中、96穴マイクロ滴定プレートに塗布して測定した。種々の濃度のC225または225を添加(4複製数/1濃度)した後、プレートを37℃で48時間インキュベートし、24時間3H−チミジンを用いてパルスを印加した。細胞を採取し、フィルタ・マット上に集め、ウォーレス・マイクロベータ[Wallace Microbeta]シンチレーション・カウンターで計測し、抑制パーセントを求めた。抑制パーセントは、抗体処理細胞の3Hチミジン取り込み量と、抗体の存在なしで増殖させた細胞の3Hチミジン取り込み量を比較した場合の減少度と定義した。
【0045】
実施例II−4 実験動物での検討
無胸腺ヌードマウス(nu/nu;6−8週齢、雌)をチャールス・リバー研究所[Charles River Laboratories] から入手した。動物(1処置群当たり10匹)の右脇腹に、0.5mLのハンクス平衡塩類溶液に加えた107 個のA431細胞を接種した。腫瘍が目に見える程度(約7−12日)、および平均容積が150〜300mm3 に到達するまで観察した。その時点で抗体治療を開始した。治療は1週間に2回の腹腔内注射(0.5mLのPBS中に種々の濃度で)を5週間にわたり行なった。U1動物にはPBSの注射をした。腫瘍を1週間2回測定し、その容積を次の式を使用して計算した:π/6×大径×(小径)2 。最後の抗体治療(治療開始後8週間目)の時点で、U1および極端に大きな腫瘍の試験動物を安楽死させ、その後少なくとも3週間動物を継続観察した。腫瘍のない動物および小さな腫瘍の動物についてはさらに2−3ヵ月継続した。それぞれの検討における腫瘍成長の統計的分析はスチューデントの両側(two-tailed)T検定を使用して行なった。抗体は腫瘍成長抑制効果を示したのに加え、多くの動物では完全な緩解(すなわち、腫瘍なし)となった。この生物学的効果は緩解指数RI、すなわち腫瘍なしのマウスの数/治療群の合計動物数、として定量的に表わした。試験終了は大きな腫瘍の動物については安楽死の時点、その他の動物については2〜3ヵ月後とした。治療中に死んだ動物は分析から除外した。たとえば、8匹の生存動物中完全緩解が1匹の場合はRI=0.125となる。
【0046】
実施例III C225の生物学的活性
実施例III−1 ヌードマウスのA431異種移植の成長を抑制する抗体能力
試験動物には脇腹にA431細胞を接種した。150〜300mm3 の腫瘍が7〜10日目までに現われた。(表3の実験1−4を参照)次に実験動物を無作為抽出し、PBSまたは225(実験1)の注射、PBS、225、またはC225の注射(実験2);およびPBSまたはC225(実験3と4)を注射した。実験1−3において、実験動物は1mgの抗体(0.5mL PBS中)を週2回、5週間にわたって投与され、1匹当たりの抗体合計用量は10mgであった。実験4においては、実験動物は1、0.5、および0.25mg/1回注射で、それぞれ合計用量が10、5および2.5mgの3つのいずれかの用量を投与された。腫瘍は週2回、全治療期間にわたり測定した。腫瘍のない動物および小さい腫瘍の動物については、大きい腫瘍の動物を屠殺後2〜3ヵ月間継続モニタした。
図1はヌードマウスにおけるA431腫瘍の成長に対する225の効果を示す(実験1)。実験群およびU1群の平均腫瘍容積は同程度であったが(図1A)、ただ1匹だけ完全な腫瘍緩解が観察された(緩解指数(RI)0.17;図1Bおよび表3)。225とC225の比較を図2(表3の実験2)に示す。グループ間には平均腫瘍サイズに有意差はなかったが、C225で治療した動物はRIが0.44(すなわち、4/9完全緩解)であったのに対し、225の場合はRIが0.11であった(図2Bおよび表3)。PBS U1群の37日目の明らかな腫瘍退縮(図2A)はこの時点での3/10動物の死亡のためであり、それに伴う全腫瘍容積の減少によるものである。C225については同程度のRIが実験3で見られた(図3B;RI=0.4)。加えて、C225による腫瘍成長の抑制もまた、PBS処理マウスの異種移植の成長と比較した場合に有意であった(図3A;32日目以降p<0.02)。
【0047】
C225を受けた多くの動物が1mg/1回注射レベルで腫瘍の退縮を示したことから、最低生物学的有効量が求められた。図4は用量応答実験の結果を示す(実験4)。1mg/1回注射を受けたすべての動物は完全な緩解となり、抗体注射を終了後100日以上腫瘍のない状態となった(図4AおよびB;表3)。これらの結果は、p値が33日目のp<0.006から、59日目にp<0.0139へと変化し、極めて顕著であった。C225は実験3において顕著な腫瘍退縮を示した(図3)が、実験2および3において、C225の1mg用量を投与された動物の約40%が完全緩解した。実験3および4における1mg用量の効果がU1に対比して平均腫瘍容積を著しく低減させたのは、小さい腫瘍のマウスをこれらの実験の治療プロトコルの開始時点で使用したことによるものであろう(152mm3 [実験4]および185mm3 [実験3]対267mm3 [実験2])。これらのデータはC225の臨床効果が腫瘍負荷に関連することがあることを示唆している。
【0048】
実験4の0.5mg用量においては、腫瘍成長の全体的な抑制はPBSおよび0.5mg群の両方の動物の腫瘍容積が大きく変化しているため、統計的に有意ではなかった。しかしながら、RIは0.5mg群については高く(RI=0.63;図4Bおよび表2)、抗体が個々の実験動物に高い腫瘍応答を誘発したことを示している。興味深いことに、実験4の0.5mg用量群は実験3の1mg用量群よりもRIが高かった。この結果はおそらく腫瘍負荷の影響に帰することができるであろう。0.5mg用量群の腫瘍の開始時点における平均容量は160mm3 であったが、個々の動物で腫瘍の大きさには大きな変動があった。小さな腫瘍(<100mm3 )を持った多くの実験動物はC225の生物効果に最も敏感であった。0.25mg用量において、平均腫瘍成長はPBS U1よりも大きいように見えた。これは治療開始時点で大きな腫瘍(760および1040mm3 )を持った2匹の動物を含めたためであり、このため実験4の経過における平均腫瘍容積が増加した。総体的には、これらのグループ間には顕著な差異は見られなかったが、0.25mg用量群の1匹(1/8)は検討の終了時点で腫瘍がなかったことが特記される(RI=0.13)。47日目にRIの低下が見られた。この時点で、明らかに完全緩解していたマウス1匹に腫瘍が再発した。この唯一のケースにおいて、C225が一時的な生物効果を示しただけであった。この動物は表3には含めなかった。1mg用量群と同様に、0.5および0.25mg群の腫瘍のない動物は、PBS対照マウスを屠殺後最低2〜3ヵ月は腫瘍のない状態が維持された。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表2に示す結果は、in vitroでA431の成長を抑制する225およびC225の能力を試験した典型的な実験を示したものである。詳細は上記の通りである。抑制パーセントは、抗体が存在しない場合の細胞増殖の3−Hチミジン取り込み量に対する抗体処理サンプル(4複製数/濃度)の取り込み量の減少と規定される。
表3は樹立A431腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスにおいてPBS、225、またはC225を週2回、5週間治療後の完全な腫瘍緩解を比較したものである。実験4以外の実験動物は0.5mL PBS中1mgの抗体で腹腔内ルートで治療したが、実験4はマウスに1、0.5、または0.25mg/1回の注射を行った用量応答実験である。この表は大きい腫瘍を抱えた実験動物(PBS対照 試験群)を安楽死させた時点のRIを示したものである。完全な緩解または小さい腫瘍を示した動物はすべて2〜3ヵ月さらに治療を継続した。実験動物の総数の差は、この実験におけるこれら処理群中のマウスの死亡によるものである。
【0052】
【表3】

【0053】
実施例III−2 ヌードマウスに樹立したヒト前立腺癌異種移植の成長抑制
実施例III−2A C225のDU145、PC−3およびLNCaPへの結合のFACS分析
DU145、PC−3およびLNCaP細胞に対するEGFレセプターの相対的発現レベルをFACS分析により測定した。細胞を完全培地中でほぼコンフルエンシーになるまで増殖させ、非酵素的会離緩衝液(シグマ社)を使用してフラスコから取り出し、100ulの冷H−BSA(1%BSAを含むハンクス平衡塩溶液)中に1試験管当たり5−10×105 個再懸濁させた。試験管に10μgのC225または無関係の骨髄腫由来ヒトIgG1(カリフォルニア州バーリンゲームのタゴ社[Tago])を加え、氷上60分間インキュベートした。冷H−BSAで洗浄後、FITC(カリフォルニア州バーリンゲームのタゴ社[Tago])に接合したヤギ抗ヒトIgGを加え、さらに30分間氷上で保った。細胞を冷H−BSAで2回洗浄し、1mLのH−BSAに再懸濁させ、コールター・エピックス・エリート細胞ソーター(フロリダ州ハイアレアのコールター社[Coulter])を使用して分析した。基底蛍光強度はFITC標識二次抗体だけを使用して決定し、非特異性蛍光は無関係のアイソタイプコントロールにより規定した。データは、抗原密度の間接的な尺度である平均蛍光強度MFIで示した。MFIは平均チャンネル蛍光に各サンプルの陽性細胞のパーセントを乗じたものである。
【0054】
実施例III−2B PC−3、DU145およびLNCaP細胞のリン酸化検定
PC−3、DU145およびLNCaP細胞に対してリン酸化検定を行ない、これらの細胞により発現されたEGFレセプターが機能を有するか、また C225で抑制されたかを判定した。この検定およびウエスタン・ブロット分析はジル[Gill]ら、Nature,293,305−307(1981)の記載に従って行なった。即ち、DU145、PC−3およびLNCaP細胞を完全培地中で90%コンフルエンシーになるまで増殖させ、次いで実験24時間前にDMEM−0.5%ウシ血清中で栄養素欠乏状態にした。細胞をC225の存在下または非存在下で室温で15分間EGFで刺激した。次に単層を1mMの バナジウム酸ナトリウムを含む氷冷PBSで洗浄した。細胞を溶離し、SDS PAGEにかけ、次いでウエスタン・ブロット分析を行なった。リン酸化のパターンはブロットをホスホチロシンに対するモノクローナル抗体(ニューヨーク州レークプラシドのUBI社)によりプローブし、次いでECL法(アマーシャム社[Amersham])を使用して検出することにより判定した。
【0055】
実施例III−2C 動物実験
無胸腺ヌードマウス(nu/nu;6−8週齢、雄;マサチューセッツ州ウイルミントンのチャールス・リバー研究所[Charles River Laboratories]の右脇腹に、0.2mLのマトリゲルを混合した0.2mLのハンクス平衡塩類溶液に加えた106 個のDU145を接種した。腫瘍が目に見える程度(投与後約14〜20日)、および平均容積が100mm3 に到達するまでマウスを観察した。動物の体重を測定し、無作為に治療群に分けた(1群10匹)。週2回0.5mgのC225の腹腔内注射を5週間にわたり投与する抗体治療を開始した。対照動物にはPBSを注射した。予備検討において、ポリクローナルのDU145吸収ヒトIgGで処理した動物とPBSで処理した動物の間には、DU145異種移植の成長には顕著な差がないことが確認された。腫瘍を週2回測定し、その容積は次記の式を用いて計算した:π/6×大径×(小径)2。最終抗体注射(治療開始後8週間目)の時点で対照動物を安楽死させ、、その後動物を少なくとも3週間継続観察した。腫瘍のない動物および小さな腫瘍を持った動物についてはさらに2〜3ヵ月継続した。各検討における腫瘍成長の統計的分析は、シグマスタット(カリフォルニア州サン・ラファエルのジャンデル社[Jandel])のコンピュータ・プログラムを使用して、スチューデントの両側T検定により判定した。p値が<0.05の場合、有意であるとみなした。
【0056】
実施例III−3 225のCDR領域を含むペプチドの生物活性
本実施例は、225−CDR配列を使用して構築したペプチド類がEGFレセプターを発現する細胞系統に対して生物活性を有することを示すものである。下記の配列の6つの一連のペプチドを製作した:
重鎖
CDR−1 NYGVH
CDR−2 GVIWSGGNTDYNTPFTSR
CDR−3 RALTYYDYEFAYW(配列番号:32)
軽鎖
CDR−1 RASQSIGTNIH(配列番号:33)
CDR−2 YASESIS(配列番号:34)
CDR−3 QQNNWP(配列番号:35)
【0057】
これらのペプチドを濃度1mg/mLでPBS中に溶解させた。A431細胞を96穴プレート中に1ウェル当たり1,000細胞個入れた。ペプチドは種々の濃度で加えた。キメラC225抗体および無関係のアイソタイプ適合免疫グロブリンをそれぞれ陽性および陰性U1として使用した。プレートを37℃で72時間インキュベートし、一晩3H−チミジンでパルスをかけた。細胞を採取し、液体シンチレーション・カウンターにより計測した。抑制パーセントは、抗体またはペプチド処理細胞の3−Hチミジン取り込み量を、抗体またはペプチドの存在なしで増殖した細胞の3−Hチミジン取り込み量と比較した場合の減少度と定義した。
【0058】
図5から明らかなように、A431細胞はC225、ならびにモノクローナル抗体225の重鎖CDR−1および重鎖CDR−2により抑制された。対照的に、アイソタイプ適合の無関係抗体およびU1ペプチドはA431細胞を抑制しなかった。これらの結果は、重鎖CDR−1と−2はEGFRに対するリガンドの結合に干渉することによってA431細胞の増殖を抑制することができることを示している。
【0059】
実施例III−4 C225−ドキソルビシン接合体(C225−DOX)の生物活性
C225−DOXの生物活性をEGFR発現細胞系A431、KBおよびMDA−468、ならびにEGFR非発現細胞系発現Molt−4およびSK−MEL−28を使用してin vitroで評価した。EGFレセプターの発現は、C225およびC225−DOX接合体を使用したFACS分析により検証した。検定は72時間のインキュベーション期間で、[3H]−チミジンおよびWST−1の検出値を使用して実施した。EGFRc発現細胞系、すなわちA431、KBおよびMDA−468細胞のすべての検定において、C225−DOXは、無治療またはhIgG1 U1類の治療に比べて細胞増殖の高い抑制を示した。ドキソルビシン単独またはC225とドキソルビシンの混合物と、等モル濃度のC225−DOXの比較では、C225−DOX接合体を使用した場合が4〜5倍高い抑制を示した。C225−DOXによる増殖の抑制はまた高用量の EGFRc非発現細胞系でも見られた。EGFRc陰性細胞系におけるC225−DOX抑制はEGFRc−陽性細胞系より5〜15倍低く、ドキソルビシン単独の等モル濃度で見られた抑制と同程度であった。431細胞に対するC225−DOXの活性に関する代表的な結果を表6に示す。
【0060】
実施例IV M225のヒューマナイズ化
実施例IV−1 略号
ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM);ウシ胎児血清(FCS);リボ核酸(RNA);メッセンジャーRNA(mRNA);デオキシリボ核酸 (DNA);二本鎖DNA(ds−DNA);ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);酵素結合免疫吸収検定(ELISA);時間(hr);分(min);秒 (sec);ヒトサイトメガロウイルス(HCMV);ポリアデニレー ション(poly(A)+);免疫グロブリン(IgG);モノクローナル抗体(mAb);相補性決定領域(CDR);フレームワーク領域(FR);トリス−ホウ酸緩衝液(TBE);ウシ血清アルブミン(BSA);リン酸緩衝生理食塩水(PBS):室温(RT);ナノメートル(nm);上皮成長因子レセプター(EGFR)。
【0061】
実施例IV−2 材料
培地組成物およびその他すべての組織培養材料は、JRHバイオサイエンシーズ社[JRH
Biosciences](米国)から購入したFCS以外は、ライフ・テクノロジーズ社[Life Technologies](英国)から入手した。RNA単離用キットはストラットジーン社[Stratgene](米国)から入手し、第一ストランドcDNA合成キットはファルマシア社[Pharmacia](英国)から購入した。PCR反応用のすべての構成要素および装置は、アンプリタック[AmpliTaq]TM DNAポリメラーゼを含め、パーキンエルマー社[Perkin Elmer](米国)から購入した。TAクローニングTMキットはインビトロジェン社[Invitrogen](米国)から入手し、シーケナーゼ[Sequenase] TM DNA配列キットはアマーシャム・インターナショナル社[Amarsham International](英国)から購入した。アガロース(ウルトラピュア[UltraPure]TM)はライフ・テクノロジーズ社(英国)から入手した。ウィザード[Wizard]TM PCRプレップスDNA精製キット、マジック[Magic]TMDNAクリーンアップシステムおよびXL1ブルー・コンピテント細胞はプロメガ社[Promega](米国)から購入した。その他すべての分子生物製品はニューイングランド・バイオラボ社[New England Biolabs](米国)から購入した。ナンク−イムノ プレート マキシソープ[Nunc-Immuno Plate MaxiSorp]TM 免疫プレートはライフ・テクノロジーズ社(英国)から入手した。Fcγフラグメント特異性ヤギ抗ヒトIgG抗体およびヤギ抗ヒトIgG(H+L)/ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合物はともに、ジャクソン・イムノリサーチ・ラボラトリーズ社[Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.](米国)から購入した。TMB基質Aおよび基質Bはカーケガード・ペリー社[Kirkegaard-Pery](米国)から入手した。ELISA用のその他すべての製品はシグマ社(英国)から入手した。マイクロプレート・マネージャ[Microplate Manager] TMデータ分析ソフトウェア・パッケージはバイオ・ラッド社[Bio-Rad](英国)から購入した。分子モデル化パッケージQUANTAはポリジェン社[Polygen Corporation](米国)から入手した、またIRIS 4Dワークステーションはシリコン・グラフィックス社[Silicon Graphics](米国)から購入した。
【0062】
実施例IV−3 マウス可変部遺伝子のPCRクローニングと配列決定
10%(v/v)FCS、50ユニット/mL ペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンおよび580μg/mL L−グルタミンを添加したDMEMを使用してマウスM225ハイブリドーマ細胞系を懸濁状態で増殖させた。約108 の生存可能細胞を採取し、一方ハイブリドーマ細胞からの上澄みをELISAにより検定し、それら細胞がマウス抗体を産生していることを確認した。製造者の指示に従ってRNA単離キットを使用して108 個の細胞から全RNAを単離した。このキットはチョムチンスキー[Chomczynski]およびサッチー[Sacchi](6)に記載のようにグアニジンチオシアネートフェノール−クロロホルム1段階抽出法を利用するものである。同じく製造者の指示通りに第一ストランドcDNA合成キットを用いて、キットに供給されているNotI−(dT)18プライマーを使用してM225ハイブリドーマmRNAの1本鎖コピーを作った。33μlの最終反応容量中、約5μgの全RNAを使用した。次いで、反応完了混合物を氷冷する前に、5分間90℃に加熱してRNA−cDNAデュプレックスを変性させ、逆転写酵素を不活性化した。
マウス可変部遺伝子をPCR増幅するために、ジョーンズ[Jones]およびベンディッグ[Bendig](7)に記載の方法を踏襲した。基本的には、M225抗体のマウス可変部遺伝子をPCRクローンするために、2シリーズの縮重プライマー、すなわち1シリーズはマウスカッパー軽鎖遺伝子(すなわち、MKV1−11;表4)のリーダー配列にアニールするように設計されたものと、1シリーズはマウス重鎖遺伝子(すなわち、MHV1−12;表5)のリーダー配列にアニールするように設計されたものを、マウスカッパー軽鎖不変部遺伝子(MKC;表4)の5’末端およびマウスγ1重鎖不変部遺伝子(MHCG1;表5)の5’末端にそれぞれアニールするように設計されたプライマーとともに使用した。MKVとMHV縮重プライマーにはそれぞれの不変部プライマーとを用いた別々の反応を準備した。PCR反応試験管をパーキンエルマー480 DNAサーマル・サイクラーに入れ、94℃で1分間、50℃で1分間および70℃で1分間、合計25サイクルかけた(94℃で1.5分間の最初の溶融後)。最後のサイクル終了時に、反応を4℃に冷却する前に最終的なエクステンション・ステップを72℃で10分間行なった。アニーリング(50℃)とエクステンション・ステップ(72℃)の間以外は長めのランプ時間2.5分とし、サイクルの各ステップの間に30秒間のランプ時間を設けた。
【0063】
各PCR反応からの20μlアリコートをアガロースゲルに流し、どれが正しいサイズのPCR産物を産生したかを調べた。全長可変ドメイン遺伝子を増幅させたと思われるPCR反応を繰り返し、独立したPCRクローンを産生させ、それによりPCRエラーの影響を少なくするようにした。正しいサイズのこれらPCR産物の6μlアリコートをTAクローニングTMキットで提供されたpCRTMIIベクター中に直接クローニングし、製造者の指示に記述されているようにしてINVαF’コンピテント細胞に形質転換した。正しいサイズで挿入されたプラスミドを含むコロニーを、グッソー[Gussow]およびクラクソン[Clackson](8)の方法に基づき、表6に記述されているpCRTMII順およびpCRTMII逆オリゴヌクレオチド・プライマーを用いてコロニーをPCRスクリーニングすることによって同定した。同定された推定陽性クローンは、最終的にレドストン[Redston]およびカーン[Kern](9)の方法に基づいたシーケナーゼTM DNA配列キットを使用して、二本鎖プラスミドDNA配列決定を行った。
【0064】
実施例IV−4 キメラ遺伝子の構築
クローニングしたマウスリーダー可変部遺伝子は、PCRプライマーを用いて5’および3’末端の両方で修飾し、可変および不変部遺伝子の正しいRNAスプライシングのための免疫グロブリン鎖(10)とスプライスドナー部位のそれぞれをコードするmRNAの効率的な真核翻訳のための発現ベクター、即ちKozak配列への挿入に好適な制限酵素部位を製作した。マウスの両可変部遺伝子の5’末端にはHindIII部位が付加されるが、別の制限部位がマウス可変部遺伝子の3’末端に付加される。すなわちVH 遺伝子の3’末端にBamHI部位が、またVK 遺伝子の3’末端にXbaI部位が付けられる。
PCR反応はケトルボロー[Kettleborough]ら(11)のキメラ遺伝子構築法に基づいて、重鎖用にプライマーC225VH 5’およびC225VH 3’を、またカッパー軽鎖用にC225VK 5’とC225VK 3’を使用して行なった(表7)。最初の94℃での90秒間の溶融ステップに続き、混合物を94℃で2時間および72℃で4時間の25サイクルでPCR増幅した。一般的な3段階サイクルに対してこの2段階PCRサイクルが可能であるが、これはそれぞれのプライマーがテンプレートDNAを24塩基に対してアニールするように設計されており、これにより72℃という比較的高温でアニールできるからである。各ステップと最後のサイクルの終了の間には30秒間のランプ時間をおき、PCR反応は4℃に冷却する前に最終エクステンション・ステップを72℃で10分間行なって完了した。PCR産物はウィザードTM PCRプレップスDNA精製キットを製造者の指示に従って使用してカラム精製し、プラスミドpUC19のような適当な制限酵素で消化し、1%アガロース/TBE緩衝液(pH8.8)ゲル上で分離した。重鎖およびカッパー軽鎖可変部遺伝子をアガロースゲルから切り取り、ウィザードのPCRプレップスDNA精製キットを使用して精製した。pUC19もまたアガロースゲルから切り取り、マジックTM DNAクリーンアップシステムを製造者の指示に従って使用して精製した。次に重鎖およびカッパー軽鎖可変部遺伝子を別々に精製pUC19に連結し、それぞれpUC−C225VH およびpUC−C225VK プラスミドを産生させ、XL1ブルー・コンピテント細胞中に形質転換した。適切なプラスミドを含むと思われる陽性コロニーを、オリゴヌクレオチドプライマーRSPおよびUP(表6)を使用したPCRスクリーニングにより同定し、最終的にds−DNAを配列して、配列修飾の導入を確認し、またPCR反応の結果として望ましくない変化がDNA配列に起きていないことを確認した。
【0065】
カッパー軽鎖可変部の5’末端のシグナルペプチド配列を修飾するために、ケトルボロー[Kettleborough]ら(11)のプロトコルに従ってPCR突然変異誘発を利用した。PCRプライマーC225VK 5’spおよびC225VK 3’sp(表7)をpUC−C225VK テンプレートDNAに使用し、改変2段階PCR増幅プロトコルを使用して修飾遺伝子(C225VK sp)を作った。このPCR産物を次に、精製PCR産物とpUC−C225C*KをHindIIIおよびPstIで消化する前にカラム精製した。このPCRフラグメントとプラスミドDNAを次にアガロースゲル精製し、一緒に連結およびクローニングしてプラスミドpUC−C225VK spを作製した。前記のように、推定陽性形質転換個体をPCRスクリーニング(RSPおよびCPプライマーを使用)により同定し、次いでds−DNA配列決定を行ない、修飾シグナルペプチドの存在とPCRエラーのないことを確認した。
この適合マウスカッパー軽鎖および重鎖リーダー可変部遺伝子を次に、マウスVH の場合にはHindIII−BamHIフラグメントとして、またマウスVK の場合にはHindIII−XbaIフラグメントとして、哺乳類細胞中にキメラ軽鎖および重鎖を発現するように設計されたベクター中に挿入した。これらベクターはHCMVエンハンサーとプロモーターを含み、免疫グロブリン鎖、免疫グロブリン可変部遺伝子の挿入のためのMCS、適当なヒトカッパー軽鎖および重鎖不変部のcDNAクローン、免疫グロブリン鎖mRNAをポリアデニレート化するための合成ポリ(A+)配列、免疫グロブリン鎖の転写を終了させるように設計された人工配列、dhfrまたはneoなど形質転換した安定細胞系を選択するための遺伝子、ならびにCOS細胞への一時的なDNA複製のためのSV40複製オリジンを進めるためのHCMVエンハンサーおよびプロモーターを含む。ヒトカッパー軽鎖哺乳類発現ベクターはpKN100(図11)と呼ばれ、またヒトガンマ1重鎖哺乳類発現ベクターはpG1D105(図12)と呼ばれる。推定陽性のコロニーについては、キメラカッパー軽鎖ベクターに対してはプライマーHCMViおよびNew.Hukを使用し、またキメラ重鎖ベクターに対してはプライマーHCMViおよびHuCガンマ1を使用してPCRスクリーニングし(表6)、発現ベクター構築物中の正しい挿入の存在を確認するために制限分析を行なった。M225抗体のマウス可変部遺伝子を含む新しい構築物はそれぞれpKN100−C225CK (またはpKN100−C225VK sp)およびpG1D105−C225VH と呼ばれる。
【0066】
実施例IV−5 マウスM225抗体可変部の分子モデル化
H225抗体のCDR移植可変部の設計の補助として、マウスM225抗体の可変部分子モデルを作った。免疫グロブリンのようによく特性付けされた蛋白質ファミリーの構造モデル化については、相同によるモデル化の確立された方法を使用して行われる。これをUNIX(登録商標)オペレーティングシステムで作動するIRIS 4Dワークステーションで、分子モデル化パッケージQUANTAならびにブルックヘブンの解明蛋白質構造結晶データベース(12)を使用して行なった。
M225可変部のFRは、類似の構造的に解明されている免疫グロブリン可変部のFRに基づいてモデル化する。同一のアミノ酸側鎖はそれらの元々の配向を維持するが、適合しない側鎖はオリジナルのマウスM225抗体のchi角を保つために最大オーバーラップ法を使用して置換する。M225可変部のほとんどのCDRは構造レベルのCDRに相当する超可変ループの標準型構造をベースとしてモデル化する。しかしながら、重鎖可変部のCDR3などの場合には、標準型構造は不明であるため、CDRループは構造的に解明された蛋白質中に存在する類似のループ構造をベースとしてモデル化する。最後に、望ましくない原子接触をなくし、ファン・デア・ワールスおよび静電作用を最適化するために、QUANTAで実施されているようなCHARMmポテンシャル(17)を利用してエネルギーを最小化する。
【0067】
M225抗体の軽鎖可変部のFRはマウスモノクローナル抗体HyHel−10のFabフラグメント(18)からのFRに基づいてモデル化する。重鎖可変部のFRはマウスモノクローナル抗体D1.3のFabフラグメント(19)のFRに基づいてモデル化する。マウスM225抗体とモデルとした可変部の間の異なるアミノ酸の側鎖をまず置換する。次に、Fab HyHel−10抗体の軽鎖を、カバットら(20)が規定しているように、残基35−39、43−47、84−88および98−102を適合させることによってD1.3の軽鎖の上に重ねる。この目的は、2つの異種可変部、すなわちHyHel−10をベースとするカッパー軽鎖可変部とD1.3をベースとする重鎖可変部を互いに正しい配向にすることにある。
【0068】
mAb M225の軽鎖可変部のCDR1(L1)は、チョシーア[Chothia]ら(14)が提唱するように、標準型残基位置33の通常のロイシンの代わりにイソロイシンが存在する以外は、L1標準型グループ2に適合する。しかしながら、この置換はこの超可変ループに標準型ループ構造を割り当てることに関して大きなメリットを得るには保存度が高すぎると考えられる。マウスFab HyHel−10のL1ループはアミノ酸の長さが同一で、M225mAbのL1ループと同じく位置33のロイシンを有する同じ標準型グループに適合する。
したがってこの超可変ループをM225カッパー軽鎖可変部のL1ループをモデル化するのに使用する。同様に、M225 mAbのCDR2(L2)およびCDR3(L3)はともにそれぞれの標準型グループ1ループ構造に適合する。加えて、HyHel−10Fabフラグメントの対応超可変ループ構造はともにグループ1である。したがって、M225カッパー軽鎖可変部のL2およびL3ループはFab HyHel−10のL2およびL3をモデルとする。
同様に、mAb M225の重鎖可変部のCDR1(H1)およびCDR2(H2)超可変ループはともに、チョシーアら(14)が規定するようにそれぞれの標準型グループ1ループ構造に適合する。そのうえ、マウスD1.3Fabフラグメントの対応H1およびH2超可変ループもまたそれぞれの標準型グループ1ループ構造に適合する。したがって、軽鎖の場合と同じように、これらの超可変ループはベースとするモデルの重鎖可変部のH1およびH2ループをモデルとする。ループ構造をM225の重鎖可変部のCDR3(H3)超可変ループへの適合を同定するために、同一長さのループと類似のアミノ酸配列をブルックヘブン・データベースで検索する。この分析によりマウスFab26/9(21)のH3ループはM225 mAbのH3ループと極めて近く、したがってこのマウスM225可変部モデルの超可変ループのベースとして使用した。モデル全体の明らかな立体的衝突を調節するために、QUANTAで行われているように、望ましくない原子接触をなくし、またファン・デア・ワールスおよび静電作用を最適化するために最終的にエネルギー最小化を行う。
【0069】
実施例IV−6 再形成ヒトH225抗体変異体の設計
H225抗体のCDR移植可変部を設計する第1のステップは、ヒューマナイズ可変部のベースとなるヒト軽鎖および重鎖可変部の選定である。このプロセスの助けとするために、M225抗体の軽鎖および重鎖可変部をカバットら(20)が規定するように、まずヒトカッパー軽鎖可変部の4つのサブグループのコンセンサス配列ならびにヒト重鎖可変部の3つのサブグループのコンセンサス配列を比較する。マウスM225軽鎖可変部はヒトカッパー軽鎖サブグループIのコンセンサス配列と、全体的には61.68%の同一性およびFRだけでは65.00%の同一性で、またサブグループIIIのコンセンサス配列とは、全体的には61.68%の同一性とFRだけでは68.75%の同一性を有し、ともに最も良く類似している。マウスM225重鎖可変部はヒト重鎖サブグループIIのコンセンサス配列と、全体的には52.10%、FRだけでは57.47%の同一性を持ち、最も良く類似している。この分析は、ヒト可変部のどのサブグループが、CDR移植のテンプレートととするためのヒト可変部の良好なベースとなりうるかを示すために利用されるが、これはこれら人為的に構築するいくつかのサブグループの個々の配列に見られる多様性のために常に適用できるとは限らない。
こうした理由によって、マウスM225可変部を公表されているヒト可変部の個々の配列の全記録例とも比較した。ヒト抗体配列に関しては、マウスM225軽鎖可変部は、ヒト抗体LS7’CL(22)のヒトカッパー軽鎖可変部の配列と極めて類似している−ただしこれはマウスL7’CL配列とは関係ない。ヒトLS7’CLのカッパー軽鎖可変部はヒトカッパー軽鎖可変部のサブグループIIIのメンバーである。マウスM225とヒトLS7’CL軽鎖可変部の全体的な配列同一性は、全体としては64.42%、またFRだけに関しては71.25%と計算される。マウスM225重鎖可変部はヒト抗体38P1’CL(23)のヒト重鎖可変部の配列と極めて似ている。意外なことに、ヒト38P1’CLの重鎖可変部はヒト重鎖可変部のサブグループIIではなくサブグループIIIのメンバーである。マウスM225とヒト38P1’CL重鎖可変部の全体的な配列同一性は48.74%で、FRだけでは58.62%の同一性と計算される。これらの比較に基づいて、ヒトLS7’CL軽鎖可変部が再形成ヒトM225軽鎖可変部の設計のためのヒトFRドナー・テンプレートとして選択され、またヒト38P1’CL重鎖可変部が再形成ヒトM225重鎖可変部の設計のためのヒトFRドナー・テンプレートとして選択された。
よく行われているように、M225抗体のヒューマナイズ化のために選択されるヒト軽鎖および重鎖可変部は2つの異なるヒト抗体から得られる。そのような選択プロセスによってM225可変部と最も高い同一性を示すヒト可変部を使用することができる。さらに、2つの異なるヒト抗体から得られた可変部に基づくCDR移植抗体の成功例が多くある。最もよく研究されている例は、再形成ヒトCAMPATH−1抗体(24)である。にもかかわらず、そのような戦略ではまたカッパー軽鎖および重鎖可変部の間のドメイン間のパッキング残基の注意深い分析も必要とされる。この領域における間違ったパッキングは、たとえ再形成ヒト抗体のCDRループ構造が同一であるとしても、抗原結合に劇的な影響を与えることがある。したがって、チョシーアら(25)が規定しているように、VK /VH 界面に存在するアミノ酸が通常でないか、あるいはめったにない残基であるかどうかをチェックする。もしそのような残基が同定された場合、その検討位置の特定の残基を通常見られるアミノ酸に変える突然変異誘発を検討しなければならない。
【0070】
設計プロセスにおける第2ステップは、カバットら(20)が規定するように、M225CDRを選択したヒト軽鎖および重鎖可変部FRへ挿入して単純なCDR移植を作り出すことである。このような単純なCDR移植によってヒューマナイズされたマウス抗体は通常抗原に対して殆ど、または全く結合力を示さない。したがって、これらアミノ酸残基が抗原との作用で直接的か、またはCDRループの位置を変化させることによる間接的な作用のいずれかで抗原に対する結合力に悪影響を及ぼしていないかどうかを判定するために、ヒトFRのアミノ酸配列を検討することが重要である。
抗原に対する良好な結合能を得るために、ヒトのドナーFR中のアミノ酸をそれらに対応するマウスM225残基に変更するかどうかを決定するのがこの設計プロセスの第3ステップである。これはヒューマナイズ化法における困難かつ決定的に重要なステップであり、またM225可変部のモデルが設計プロセスに最も有用となるのがこの段階である。このモデルに関して以下の点を議論する。超可変ループのための標準型構造(13−16)が保存されていることが極めて重要である。したがってヒューマナイズ化H225可変部にこれら標準型構造の一部分であるマウスFR残基すべてを保存することが決定的に重要なことである。また、M225抗体の配列を他のマウス抗体の類似配列と比較して、アミノ酸配列が通常でないか、めったにないものかどうかを判断することもまた役に立つ。なぜならばそのような配列の場合、抗原結合能にマウス残基が重要な役割を果たすからである。M225可変部のモデルを検討することにより、これらアミノ酸のどれが、または特定位置のその他の残基のいずれが、抗原結合能に影響を及ぼすことができるかまたはできないかを予測することが可能となる。個々のカッパー軽鎖および重鎖可変部のヒトドナー配列を、そのドナー配列が属するヒト可変部サブグループのコンセンサス配列と比較し、特に通常でないアミノ酸を同定することもまた重要なことである。この設計プロセスをたどることにより、ヒト可変部中のある位置のアミノ酸をマウスM225可変部のその位置にあるアミノ酸へ変更すべきとされるヒトFR中の数多くのアミノ酸が同定される。
表8は再形成ヒトH225カッパー軽鎖可変部の第1バージョン(225RKA )をいかに設計するかを説明するものである。再形成ヒトFR中に、ヒトFR中に存在するアミノ酸をオリジナルのマウスFR中に存在するアミノ酸へ変更する必要があると考えられるただ1つの残基がある。この変更はカバットら(20)が規定しているように、FR2中の位置49である。ヒトLS7’CLカッパー軽鎖可変部中にあるチロシンをマウスM225カッパー軽鎖可変部中にあるようにリシンに変更する。モデルからは、M225中のリシンは重鎖可変部のCDR3(H3)に近い位置にあり、それと相互作用をしているように思われる。この残基はまたカッパー軽鎖可変部のCDR2(L2)に隣接した位置にあることになり、これはカバットら(20)が規定しているように、M225カッパー軽鎖可変部が属するマウスカッパー軽鎖サブグループVメンバーではこの位置にあることはめったにない。こうした理由から、マウスのリシン残基を225RKA に保存することは賢明なことと考えられる。
【0071】
第2バージョンとして、位置49のリシンをオリジナルのヒト・チロシンアミノ酸に置き換えることによって、225RKA 中に作られたFR2修飾を逆転させた再形成ヒトカッパー軽鎖(225RKB )も作成した。したがって、この再形成ヒトカッパー軽鎖のこのバージョンはFR中にマウスの残基は一切含まないことになる。
再形成ヒトH225重鎖可変部の設計に関して、表9は第1バージョン(225RHA )を示している。そこには、ヒト38P1’CL FR中にあるアミノ酸をオリジナルのマウスM225FRにあるアミノ酸に変更しなければならないものとして、全部で8つの残基が再形成ヒトFR中にある(すなわちA24V、T28S、F29L、S30T、V48L、S49G、F67L、およびR71K)。マウス配列のFR1の位置24、28、29および30にあるアミノ酸残基は、H1超可変ループ構造に重要ないくつかの標準型残基であることから(14)、再形成ヒトH225重鎖可変部に維持された。標準型残基は超可変ループの正しい配向および構造にとって極めて重要なものであることから、それらは再形成可変部に概ね常に保存される。そのうえ残基位置24−30はH1超可変ループそのものの一部であると考えられ、それらを保存することがこのループの正しいコンフォーメーションおよび配向にとってさらに重要なことと考えられる。同様に、FR3中の残基位置71は、チョシーアら(14)が同定しているように、H2超可変ループの正しい配向と構造にとって重要な重鎖可変部中のもう1つの位置であり、これはCDR2の標準型アミノ酸の1つと同様のものである。したがって、マウスFRのリシンはこの残基位置でヒトFR中のアルギニンと置換する。FR2の位置48と49、ならびにFR3中の67において、ヒト38P1’CL VH 配列中に存在するバリン、セリンおよびフェニルアラニン残基(それぞれ)は、マウスM225 VH 配列中に存在するロイシン、グリシン、およびロイシン(それぞれ)に変わる。この切断は、これら3つのすべての残基がH2ループの下に埋まり、超可変ループのコンフォーメーションに影響を与え、よって抗体結合能に干渉することになるモデルをベースとして行われる。これらは次いで、再形成ヒトH225重鎖可変部の第1バージョンに保存されているマウス残基となる。
【0072】
再形成ヒトH225重鎖可変部のバージョンB(225RHB )は、225RHA で行われたすべての置換を取り込み、さらに別のマウス残基も含む。FR2の位置41においてヒト・スレオニン残基は、マウスサブグループIBのこの位置に必ず見られ、かつヒト・サブグループIIIにも極めて一般的に見られるプロリンと置き換えられる。対照的に、スレオニンはヒト・サブグループIIIのこの位置には通常見られず(11/87回だけ見られる)、モデルからこの残基はM225VH 領域の表面にあるターン部に存在するように見える。これが超可変ループ構造にどのような効果を持つかは不詳であるが、このバージョンの再形成ヒトH225重鎖可変部がこの点を明らかにすることになろう。
再形成ヒトH225重鎖可変部のバージョンC(225RHC )は、225RHA で行われた置換をすべて取り込み、さらにFR3の位置68および70にある2つのマウス残基も含む。マウスM225可変部のモデルから、位置68のセリンと位置70のアスパラギンはともに抗原結合部位の表面および端部にあると考えられる。これらアミノ酸のいずれかまたは両方がEGFRと直接反応する可能性があるため、ヒトFR中の位置68のスレオニンと位置70のセリンは対応する225RHC のマウス残基に置き換えられる。
再形成ヒトH225重鎖可変部のバージョンD(225RHD )は、単純に225RHA 、225RHB および225RHC で行われたすべてのマウスFR置換を取り込み、これら変化の組み合わせ効果を見るものである。
再形成ヒトH225重鎖可変部のバージョンE(225RHE)は、225RHA で行われたすべての置換を取り込み、さらにFR3の位置78のもう1つの残基変更も組み込んでいる。モデルから、位置78のマウスアミノ酸(バリン)が、CDR1の下に埋もれた位置からH1超可変ループのコンフォーメーションに影響を与えることを示すいくつかの証拠が得られる。結果として225RHE では、ヒト残基(ロイシン)はマウスアミノ酸に置き換わる。
【0073】
実施例IV−7 ヒューマナイズ化抗体可変部遺伝子の構築
再形成ヒトH225VK 領域(225RKA )の構築物の第1バージョンは、基本的にサトウら(26)の記述のように行なった。つまり、再形成ヒト可変部遺伝子を合成するための2段階PCR増幅プロトコルを使用し、FR修飾をコードするPCRプライマーをキメラC225VK 遺伝子のDNAテンプレートにアニールする。その結果、キメラC225VK のFR DNA配列は、プライマーによって再形成ヒトカッパー軽鎖可変部遺伝子225RKA の配列に修飾された。新しく合成された再形成可変部遺伝子をカラム精製後にHindIIIおよびXbaIで消化し、アガロースゲルで精製し、pUC19にサブクローニングした(同じ方法で消化およびアガロースゲル精製して)。新たに構築されたプラスミドpUC−225RKA を次にXL1ブルー・コンピテント細胞に形質転換した。推定陽性クローンはPCRスクリーニングによって同定(プライマーRSPおよびUPを使用)し、次いでそれらの一体性とPCRエラーが存在しないことを確認する両方の目的で、最終的にds−DNA配列決定を行った。確認された陽性クローンから個々のクローンを選択し、HindIII−XbaIフラグメントとして直接ヒトカッパー軽鎖哺乳類発現ベクター(pKN100)中に挿入し、プラスミドpKN100−225RKA を作製した。このベクター構築物の完全性はPCRスクリーニング(プライマーHCMViおよびNEW.HUKを使用して)と制限消化分析により確認した。
【0074】
再形成ヒトH225KVK のバージョンB(225RKB )は、オリゴヌクレオチドプライマー225RKB .K49YおよびAPCR40(表11)を使用して構築した。65.5μlの滅菌蒸留/脱イオン水、5μlの2ng/μlプラスミドpUC−225RKA テンプレートDNA、10μlの10×PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl2 、各2μlのdNTPの10 mMストック溶液、225RKB .K49YとプライマーAPCR40の2.5μlアリコート(それぞれ10μM)、および0.5μlのAmpliTaqTM DNAポリメラーゼを含む100μlのPCR反応混合液を、50μlの鉱油でオーバーレイし、DNAサーマル・サイクラーに充填した。PCR反応は、2段階プロトコルを25サイクル繰り返してPCR増幅し、このPCR産物をMscIで切断する前にカラム精製した。プラスミドpUC−225RKA もまたMscIで切断し、消化したPCR産物およびこのプラスミドフラグメントの両方をアガロースゲル精製した。このPCR産物を次に、XL1ブルー・コンピテント細胞に形質転換する前に、pUC−225RKA にクローニングしてpUC−225RKB を作り出した。推定陽性形質転換体は、先ずプライマー225RKB .K49YおよびPCRスクリーニング検定でUPを使用して同定し、次いでds−DNA配列により確認した。選択された個々のクローンは最終的にpKN100にサブクローニングし、プラスミドpKN100−225RKB を産生させ、プライマーHCMViおよびNEW.HUK(表6)を使用したPCRスクリーニング検定と制限分析の両者でその正しい構築物を確認した。
【0075】
再形成ヒトH225VH 領域の第1バージョン(225RHA )の構築もまた、基本的にはサトウら(26)の記述のように行なった。再形成ヒト225RHA 遺伝子の場合には、PCRプライマー(表2)を、再形成ヒトカッパー軽鎖可変部遺伝子の5’の半分を作り出すために先にヒューマナイズされたmAbのDNAテンプレートと、再形成ヒトカッパー軽鎖可変部遺伝子の3’の半分を合成するためにキメラC225VH 遺伝子の両方へアニールした。ここでもまた2段階PCR増幅プロトコルを使用し、作り出された再形成可変部遺伝子は、アガロースゲル精製したHindIII−BamHIフラグメントとしてpUC19ベクター中にクローニングし、プラスミドpUC−225RHA を作り出した。推定陽性クローンはPCRスクリーニングによって同定(プライマーRSPおよびUPを使用)し、次いでそれらのDNA配列を確認し、PCRエラーが存在しないことを確認する両方の目的で最終的にds−DNA配列決定を行った。確認された陽性クローンから個々のクローンを選択し、HindIII−XbaIフラグメントとして直接ヒトγ重鎖哺乳類発現ベクターpG1D105中に挿入し、プラスミドpG1D105−225RHA を作り出した。このプラスミドの構築は次にプライマーHCMViおよびγAS(表6)を使用したPCRスクリーニング検定と制限分析の両者によって確認した。
再形成ヒトH225VH のバージョンB(225RHB )は、下記のように2段階PCR突然変異法により合成した。2つの別々の100μl PCR反応混合物をまず、65.5μlの滅菌蒸留/脱イオン水、5μlの2ng/μlプラスミド、pUC−225RHA テンプレートDNA、10μlの10× PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl2 、dNTPの10mM保存溶液各2μl、ならびに最初のPCR反応においてはプライマーAPCR10および225RHB .T41P−AS、第2のPCR反応においてはプライマーAPCR40と225RHB .T41P−S(表13)の2.5μlアリコート(各10μM)、そして最後に0.5μlのAmpliTaqTM DNAポリメラーゼを混合することにより調製した。2つのPCR反応混合物のそれぞれを50μlの鉱油でオーバーレイし、DNAサーマル・サイクラーに充填し、2段階プロトコルを使用して25サイクルPCR増幅した。50μlの蒸留/脱イオン水に再懸濁する前に、2つのPCR産物をアガロースゲル精製してPCR反応で残っているテンプレートDNAをすべて分離し、それらの濃度を確定した。
【0076】
第2のPCR反応においては、第1PCR反応からの2つのPCR産物のそれぞれの20pモルのアリコート(8μlのAPCR10/225RHB .T41P−AS PCR産物および10μlのAPCR40/225RHB .T41P−S PCR産物に相当)を、57.5μlの滅菌蒸留/脱イオン水、10μlの10×PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl2 、dNTPの10mM保存溶液各2μl、ならびに0.5μlのAmpliTaqTM DNAポリメラーゼに加えた。このPCR反応を鉱油でオーバーレイし、2段階プロトコルを7サイクルだけ行なってPCR増幅した。次に第3のPCR反応を、1μlの第2のPCR反応の産物、69.5μlの滅菌蒸留/脱イオン水、10μlの10×PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl2 、dNTPの10mMストック溶液のそれぞれ2μl、ネステッドプライマーRSPとUPの2.5μlアリコート(それぞれ10μM)ならびに0.5μlのAmpliTapTMDNAポリメラーゼを包含させて調製した。このPCR反応に鉱油をオーバーレイし、最後の25サイクルを2段階プロトコルを使用して増幅した。このPCR産物を次にカラム精製し、アガロースゲル精製HindIII−BamHIフラグメントとして単離し、HindIII−BamHI消化ならびにアガロースゲル精製プラスミドpUC19にサブクローニングし、そして最終的にXL1ブルー・コンピテント細胞に形質転換した。推定陽性形質転換個体を先述のように最初に同定し、次いで確認した。選定した個々のクローンをpG1D105にサブクローニングし、プラスミドpG1D105−225RHB を産生させた。これをプライマーHCMViとγAS(表6)を使用したPCRスクリーニング検定と制限分析により確認した。
再形成ヒトH225VH のバージョンC(225RHB )は、225RKC と同様の方法で合成した。65.5μlの滅菌蒸留/脱イオン水、5μlの2mg/μlプラスミドpUC−225RHA テンプレートDNA、10μlの10×PCR緩衝液II、6μlの25mM MgCl2 、各2μlのdNTPの10mM保存溶液、プライマーAPCR40と225RHC .T68S/S70N(表13)の2.5μlアリコート(それぞれ10μM)、および0.5μlのAmpliTaqTM DNAポリメラーゼを含む100μlのPCR反応混合液を調製した。PCR反応を鉱油でオーバーレイし、2段階プロトコルを25サイクル使用してPCR増幅し、SalIおよびBamHIで消化する前にカラム精製した。プラスミドpUC−225RHA もまたSalIおよびBamHIで切断し、消化PCR産物とプラスミドの両方をアガロースゲル精製した。このPCR産物を次にpUC−225RHA にクローニングし、XL1ブルー・コンピテント細胞に形質転換する前にpUC−225RHC を作り出した。推定陽性形質転換個体をまずプライマーRSPとUPを使用したPCRスクリーニング検定で同定し、その後ds−DNA配列決定により確認した。選択した個々のクローンを次にpG1D105中にサブクローニングしてプラスミドpG1D105−225RHC を産生させた。このベクターの正しい構築は、プライマーHCMViとγAS(表6)を使用したPCRスクリーニング検定と制限分析で最終的に検証した。
再形成ヒトH225VH のバージョンD(225RHD )は、H225抗体の再形成ヒト重鎖のバージョンBおよびCに変化を取り入れた産物である。思いがけないことに、pUC−225RHB とpUC−225RHC の両方をSalIとBamHIで消化することにより、これらの重鎖可変部遺伝子に作られた変化を融合させることが可能である。pUC−225RHB からの2.95kbベクターフラグメントとpUC−225RHC からの約180bpの挿入フラグメントを連結する前にアガロースゲル精製し、XL1ブルー・コンピテント細胞に形質転換した。陽性形質転換個体を同定し、選択した個々のクローンをpG1D105にサブクローニングしてプラスミドpG1D105−225RHD を産生させる前に、ds−DNA配列した。このベクターの正しい構築は前述の通りにして最終的に確認した。
【0077】
再形成ヒトH225VH のバージョンE(225RHE )は、225RHA の誘導体であり、プライマーAPCR40と225RHE .L78V(表13)を使用して225RHC と同じ方法で合成した。プラスミドpUC−225RHE から選択した225RHE クローンをpG1D105にサブクローニングし、ベクターpG1D105−225RHE を産生させ、これが正しい構築物であることを通常の方法で検証した。
【0078】
実施例IV−8 COS細胞へのDNAのトランスフェクション
ケトルボローらの方法(11)を用いてCOS細胞へ哺乳類発現ベクターをトランスフェクトした。
【0079】
実施例IV−9 リコンビナント225抗体のプロテインA精製
キメラC225抗体と種々の再形成ヒトH225抗体構築物をともにコルビンジャー[Kolbinger]ら記述のプロトコル(27)に基づいてプロテインA精製を行なった。
【0080】
実施例IV−10 マウス抗体のELISA
96穴Nunc−Immuno Plate MaxiSorpTM免疫プレートの各ウェルを、先ず塗覆用緩衝液(0.05M炭酸塩−重炭酸塩緩衝液、pH9.6)で稀釈した0.5ng/μlヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異性)抗体の100μlアリコートで被覆し、一晩4℃でインキュベートした。ウェルを200μl/ウェルのマウス遮断(ブロッキング)緩衝液(PBS中2.5%(w/v)BSA)により37℃で1時間遮断し、その後200μl/ウェルの洗浄用緩衝液(PBS/0.05%(v/v)トイーン−20[Tween-20])アリコートで3回洗浄した。100μl/ウェルの実験用サンプル(すなわち、M225ハイブリドーマ細胞系から採取した培地を遠心分離して細胞破片を除去したもの)アリコートおよびサンプル−酵素接合緩衝液(0.1Mトリス−HCl(pH7.0)、0.1M NaCl、0.02%(v/v)トイーン−20および0.2%(w/v)BSA)に希釈した1:2サンプル稀釈液を免疫プレート上に分配した。さらに、1000ng/mL濃度から連続的に1:2稀釈した精製マウスIgG標準液を免疫プレート上に加えた。この免疫プレートを37℃で1時間インキュベートし、200μl/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μlのヤギ抗マウスIgG/ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合体をサンプル−酵素接合体緩衝液で1000倍に稀釈したものを各ウェルに加えた後、免疫プレートを37℃で1時間インキュベートし、前記と同様に洗浄した。TMBペルオキシダーゼ基質A:ペルオキシダーゼ基質B(1:1)の100μlアリコートを各ウェルに加え、10分間RTの暗所でインキュベートした。各ウェルに50μlの1N H2SO4を加えて反応を停止させた。450nmにおける光学密度を最終的にBio−Rad3550マイクロプレート・リーダーとマイクロプレート・マネージャーTMを組み合わせて使用して確定した。
【0081】
実施例IV−11 全長ヒトγ1/κ抗体のELISAによる定量
96穴Nunc−Immuno Plate MaxiSorpTM イムノプレートの各ウェルを、先ず塗覆用緩衝液(0.05M炭酸塩−重炭酸塩緩衝液、pH9.6)で稀釈した0.5ng/μlヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異性)抗体の100μlアリコートで被覆し、一晩4℃でインキュベートした。ウェルを200μl/ウェルのヒト遮断緩衝液(PBS中2.0%(w/v)BSA)によりRTで2時間遮断し、その後200μl/ウェルの洗浄用緩衝液(PBS/0.05%(v/v)トイーン−20[Tween-20])アリコートで3回洗浄した。100μl/ウェルの実験用サンプルのアリコート(すなわち、採取したCOS細胞を遠心分離して細胞破片を除去した上澄み)、およびサンプル−酵素接合緩衝液(0.1Mトリス−HCl(pH7.0)、0.1M NaCl、0.02%(v/v)トイーン−20および0.2%(w/v)BSA)に希釈した1:2サンプル稀釈液を免疫プレート上に分配した。さらに、標準として使用する1:2連続稀釈した精製ヒトγ1/κ抗体を免疫プレート上に加えた。この免疫プレートを37℃で1時間インキュベートした後、200μl/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。100μlのヤギ抗ヒトカッパ軽鎖/ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合体をサンプル−酵素接合体緩衝液で5000倍に稀釈したものを各ウェルに加えた後、免疫プレートを37℃で1時間インキュベートし、前記と同様に洗浄した。その後のプロトコルはマウス抗体ELISAの場合と同様にした。
【0082】
実施例IV−12 EGFR抗原結合の検出のためのA431細胞のELISA
A431細胞の表面に発現されたEGFRに対するリコンビナント225抗体構築物の相対的結合能を判定するための方法は、イムクローン・システムズ社[ImClone Systems Inc.]の提供する方法に基づいた。A431細胞を96穴平底組織培養プレート上に入れ、10%(v/v)FBSを加えたDMEM培地中で37℃および5%CO2 で一晩インキュベートした。翌日培地を取り除き、細胞をPBS中で1回洗浄し、次いでPBS中0.25%(v/v)グルタルアルデヒド100μl/ウェルで固定した。これを取り除き、プレートを再びPBSで洗浄し、200μl/ウェルのPBSに入れた1%(w/v)BSAにより37℃で2時間遮断した。遮断溶液を取り除き、100μl/ウェルアリコートの実験用サンプル(すなわち、採取COS細胞の上清を遠心分離して細胞破片を除去したもの)およびそれらの1:2サンプル稀釈液(PBSに入れた1%(w/v)BSAで稀釈したもの)を組織培養プレート上に塗布した。さらに、標準として使用する、20μg/lの開始濃度から1:5で連続的に稀釈した精製ヒトγ1/κ抗体の80μl/ウェルのアリコートもプレートに加えた。この免疫プレートを37℃で1時間インキュベートした後、200μl/ウェルの0.5%(v/v)Tween20のPBS溶液で3回洗浄した。100μlのヤギ抗ヒトIgG(H+L)/ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ接合体をPBS中1%(w/v)BSAで5000倍に稀釈したものを各ウェルに加えた後、免疫プレートを37℃で1時間インキュベートし、先ず200μl/ウェルの0.5%(v/v)Tween20のPBS溶液で(3回)、次に蒸留脱イオン水(2回)で洗浄した。その後のプロトコルはマウス抗体ELISAの場合と同様であった。
【0083】
実施例IV−13 M225抗体の可変部のクローニングと配列決定
RNA精製のために細胞を採取する時点でのM225ハイブリドーマ細胞からの培地中のマウス抗体の存在を、マウス抗体ELISAを使用して検証した。第一ストランド合成に続き、1本鎖cDNAテンプレートを2シリーズの縮重プライマー、すなわち1シリーズはカッパー軽鎖シグナルペプチド/可変部遺伝子特異性のもの(表4)と、2番目のシリーズは重鎖シグナルペプチド/可変部遺伝子特異性のもの(表5)を使用してPCR増幅した。これらのプライマーを使用してM225ハイブリドーマ細胞系からM225抗体のVK 遺伝子およびVH 遺伝子の両方をPCRクローニングした。
プライマーMKV4(κ軽鎖シグナルペプチドのDNA配列の5’末端にアニール)およびMKC(マウスκ不変領域遺伝子の5’末端にアニールするように設計されたもの)を使用して、M225κ軽鎖可変部遺伝子を約416bpフラグメントとしてPCRクローニングした。同様にして、プライマーMHV6(重鎖シグナルペプチドのDNA配列の5’末端にアニール)およびMHCG1(マウスγ1重鎖遺伝子のCH1 ドメインの5’末端にアニールするように設計したもの)を使用して、M225重鎖可変部遺伝子を、約446bpフラグメントとしてPCRクローニングした。
マウスM225可変部遺伝子の野生型配列への導入エラーの可能性、すなわちAmpliTaqTM DNAポリメラーゼそのものまたは逆転写により導入される変化(誤差頻度はAmpliTaqTMの約1/10である)を少なくするために厳格なプロトコルを使用した。別々の全RNA調製およびそれに続く第一ストランドcDNA合成反応のそれぞれからの少なくとも2つのPCR産物をPCRクローニングし、次いでM225mAbのκ軽鎖および重鎖可変部遺伝子両方のDNA鎖について完全にDNA配列決定を行なった。
【0084】
これら各PCR反応からのいくつかの個々のクローンのDNA配列分析から、マウスM225抗体VK およびVH 遺伝子はそれぞれ図13および14に示されているように確定された。M225VK およびVH 領域のアミノ酸配列を他のマウス可変部、ならびにカバットのデータベース(20)に細分されている可変部のサブグループのコンセンサス配列とも比較した。この分析からM225VK 領域はマウスκサブグループVのコンセンサス配列と最も近似しており、このサブグループに対して62.62%の同一性と76.64%の類似性を有することが判明した。しかしながら、このκ軽鎖可変部はまたマウスκサブグループIIIとも61.68%の同一性とコンセンサス配列に対する76.64%の類似性という極めて高い適合性を示した。M225κ軽鎖可変部のFRだけ(すなわち、CDR中のアミノ酸を除く)をマウスサブグループIIIおよびVと比較した場合、同一性はこの両方のサブグループに対して66.25%に上がり、一方類似性はサブグループIIIに対して78.75%、そしてサブグループVに対してはちょうど80.00%に増加した。M225VH 領域の同様の分析によって、この領域はカバット・データベース(20)のマウス重鎖サブグループIBのコンセンサス配列に極めて近い適合性を示した。M225のマウス重鎖可変部アミノ酸配列とサブグループIBのコンセンサス配列の同一性は78.15%と測定され、一方類似性は84.87%と計算され、その他のコンセンサス配列はこれらの値にはるか及ばなかった。これらの結果から、このマウスM225可変部が典型的なマウス可変部であることが確認された。
【0085】
実施例IV−14 キメラC225抗体の構築と発現
C225VK およびVH 遺伝子を構築するために調製された2つのPCR反応からのPCR産物を、HindIII−BamHIフラグメントとして別々にpUC19にサブクローニングし、推定陽性形質転換体を同定するためにPCRスクリーニングした。同定されたそれら形質転換体を次にds−DNA配列決定し、それらが合成されていることを確認し、次いでそれぞれの哺乳類発現ベクター中にサブクローニングした。キメラC225κ軽鎖および重鎖可変部のDNAおよびアミノ酸配列はそれぞれ図15および16に示されている。正しい挿入が存在することを確認するためのPCRスクリーニングと制限分析により発現ベクターの完全性が確認された後、これらベクターをCOS細胞中に同時トランスフェクトした。72時間のインキュベーション後、培地を回収し、細胞破片を遠心分離により取り除き、抗体の産生およびEGFRへの結合をELISAにより分析した。残念ながら、キメラ抗体はこのCOS細胞同時トランスフェクションの上清中には検出されなかった。
C225VK のリーダー配列の分析により、これはマウスκ軽鎖サブグループIIIおよびVのその他のκ軽鎖可変部のリーダー配列(20)と比較して異常であることが判明した。より好適なリーダー配列を見つけ出すために、カバット・データベースを分析し、C225VK アミノ酸配列にマッチし、かつシグナルペプチド配列が既知の個々のκ軽鎖を同定した。この調査によりマウス抗体L7’CL(28)が、C225VK 領域に対して94.79%の同一性と94.79%の類似性を示し、かつFR1については完全にマッチし、分泌中のシグナルペプチドの切り出しに重要な役割を果たすものであることを見出した。L7’CLκ軽鎖シグナルペプチドのアミノ酸配列(すなわち、MVSTQFLVFLLFWIPASRG(配列番号:36))は、疎水性核などのシグナル配列において重要と考えられるすべての特性を示し、したがってPCRクローニング225VK のシグナルペプチドをこの新しい配列で置き換えることを決定した。もう1つ興味深い点は、M225VK とL7’CLシグナルペプチドの間の差はほとんどすべて、M225VK 遺伝子が最初にPCRクローニングされたとき、MKV4プライマーがシグナルペプチドの最初の11のアミノ酸にアニールされた5’末端(すなわち最初の33塩基でこれはシグナルペプチドの最初の11のアミノ酸に相当する)で起きていることであった。したがって、これらの差異はプライマーで誘発されたシグナルペプチドのDNA配列のエラーであると考えられる。C225VK テンプレートのPCR突然変異誘発では約390bpの産物を産生した。HindIII−PstIで消化および精製したフラグメントを次に同じように消化およびアガロースゲル精製したプラスミドpUC−C225VK 中にサブクローニングし、XL1ブルー・コンピテント細胞中に形質転換した。推定陽性形質転換体を同定し、次いでds−DNA配列決定した。C225VK sp遺伝子(図17)をpKN100にサブクローニングし、得られた発現ベクター(pKN100−C225VK sp)をPCR選別および制限消化して、正しい挿入物の存在を確認した。このベクターを最終的にCOS細胞中にpG1D105−C225VH と同時トランスフェクションし、72時間のインキュベーション後に培地を回収し、細胞破片を遠心分離で取り除き、ELISAにより抗体の産生とEGFRに対する結合を分析した。この場合には、キメラC225抗体がCOS細胞の同時トランスフェクションの上清中に濃度約150ng/mLで検出され、またこの抗体は細胞ELISAにおいてEGFRに結合した。図18はそうした実験の典型的な例の1つを示している。
【0086】
実施例IV−15 再形成H225抗体(225RKK /225RHA )の構築と発現
再形成ヒトH225κ軽鎖可変部の第1バージョン(225RKA )の構築では約416bpの産物を産生し、これを次にHindII−BamHIフラグメントとしてpUC19中にサブクローニングした。推定陽性形質転換体はPCRスクリーニング検定とそれに続くds−DNA配列により同定された。225RKA 遺伝子(図19)をpKN100中にサブクローニングし、得られた発現ベクター(pKN100−225RKA )をPCRスクリーニングおよび制限消化して正しい挿入物の存在を確認した。同様に再形成ヒトH225重鎖可変部の第1バージョン(225RHA )の構築では約446bpの産物を産生し、これを次にHindII−BamHIフラグメントとしてpUC19中にサブクローニングした。ここでも推定陽性形質転換体をPCRスクリーニング検定と、それに続くds−DNA配列により同定した。225RHA 遺伝子(図20)をpG1D105中にサブクローニングし、得られた発現ベクター(pG1D105−225RHA )をPCRスクリーニングおよび制限消化して正しい挿入物の存在を確認した。
これらのベクターを次にCOS細胞中に同時トランスフェクトし、72時間のインキュベーション後に培地を回収し、細胞破片を遠心分離で取り除き、ELISAにより抗体の産生とEGFRに対する結合を分析した。COS細胞上清中の再形成ヒト抗体の濃度は、C225キメラ抗体の一時的発現に続くものよりは若干高かった(約200ng/mL)。加えて、EGFRに対する高いレベルの結合が細胞ELISAで示された。図8はそうした実験の典型的な例を示すもので、再形成ヒトH225抗体(225RKA /225RHA )が、キメラ C225抗体の約65%の相対親和力で、A431細胞の表面に発現されたEGFRに結合していることを示している。
【0087】
構築された2つのバージョンのκ軽鎖再形成ヒトH225可変部のアミノ酸配列を図21に示し、一方構築された重鎖再形成ヒトH225可変部の5つのバージョンのアミノ酸配列を図22に示した。
【0088】

【0089】

【0090】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8−1】

【0096】
【表8−2】

【0097】
【表8−3】

【0098】
【表8−4】

【0099】
【表8−5】

【0100】
【表8−6】

【0101】
【表9−1】

【0102】
【表9−2】

【0103】
【表9−3】

【0104】
【表9−4】

【0105】
【表9−5】

【0106】
【表9−6】

【0107】
【表10−1】

【0108】
【表10−1】

【0109】
【表11】

【0110】
【表12】

【0111】
【表25】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】ヌードマウスに樹立されたA431腫瘍の異種移植片の成長に対する225の効果を示す。実験動物の脇腹に107 個の細胞を注射した。腫瘍が平均容積2−300mm3 に到達した時点で、PBSまたは1mg/検体の225を、週2回5週間投与する治療を開始した。腫瘍の容積および緩解指数(Remission Index:RI)は“実施例”部分での説明のようにして決定した。
【図2】ヌードマウスに樹立されたA431腫瘍の異種移植片の成長に対する225およびキメラ化225(C225)の効果を示す。実験動物には1mg/マウスのPBSを、週2回5週間与えた。A:平均腫瘍容積;B:緩解指数。37日目におけるPBS対照群における明らかな腫瘍の退行は、対照群10匹中の3匹の死亡と、それに伴う合計腫瘍容積の減少によるものである。
【図3】ヌードマウスに樹立されたA431腫瘍の異種移植片の成長に対するC225の効果を示す。実験動物には1mgのC225またはPBSを、週2回5週間与えた。C225群の平均腫瘍容積は対照に比べて統計的に有意な生物学的効果を示した(本文参照)。A:平均腫瘍容積(星印は対照との統計的有意差を示す)、B:緩解指数。
【図4】ヌードマウスに樹立されたA431異種移植片の成長に対するC225の容量応答性である。実験動物には、材料と方法の項に説明するように、PBS、1、0.5、または0.25mg/動物を週2回、5週間与えた。1mg/用量のC225で治療した動物は、対照に比べて統計的に有意な生物学的効果を示した(本文参照)。A:平均腫瘍容積(星印は対照との統計的有意差を指す)、B:緩解指数。250μg用量グループの47日目のRIの低下は、明らかに腫瘍がなかった動物における腫瘍の再発によるものである(このケースでは、C225の効果は一時的なものであった)。
【図5】C225ならびにモノクローナル抗体225の重鎖CDR−1と重鎖CDR−2によるA431細胞の抑制を示す。
【図6】A431細胞のC225−ドキソルビシン接合体の濃度を関数としたin vivoにおける抑制を示す。
【図7】ヒト前立腺癌細胞に対するEGFR発現のFACS分析である。LNCaP(アンドロゲン依存性ヒト前立腺癌)、DU145およびPC−3(アンドロゲン非依存性ヒト前立腺癌)、ならびにA431(ヒト類表皮癌)細胞を増殖フラスコからEDTAにより取り出し、C225で染色したもの。データは抗原発現の間接的尺度であるMFI(平均蛍光強度)で示した。この図に示されている結果は少なくとも5回の実験の結果を表わしている。
【図8】C225によるEGFRのEGF誘発リン酸化の抑制を示す。LNCaP、DU145、およびPC−3単層を、C225の存在下または非存在下でEGFで刺激した。細胞を溶離し、SDS PAGEに付し、ブロッティングし、そしてPTyrに対するマウスモノクローナル抗体(レークプラシドのUBI製)を用いてスクリーニングした。レーンA:添加なし(EGFRリン酸化の基底レベル);レーンB:C225の非存在下、室温で15分間10ng/mLのEGFによりEGFRを刺激;レーンC:10μg/mLのC225の存在下でEGFによりEGFRを刺激したもの。
【図9】樹立されたDU145異種移植片のC225による成長抑制を示す。マトリゲルに加えたDU145細胞100万個をヌードマウス(オス、nu/nu)に接種した。腫瘍が平均容積約100mm3 (20日目)に到達した後、動物を無作為抽出し(1群当たり10匹)、PBS(対照)またはC225(0.5mg/用量、10x)のいずれかで処理した。動物を35日間治療し、さらに3週間追跡した。腫瘍のない、または小さな腫瘍を抱えたマウスについてはさらに3ヵ月間維持した。有意性(図3Aに星印で示されている)はスチューデントのT検定により判定し、p値<0.5で有意性があると認められた。A:平均腫瘍容積;B:PBS群における腫瘍の成長特性;C:C225処理群における腫瘍の成長特性。
【図10】腫瘍の消失および生存に関するC225の効果である。本検討中における腫瘍の完全な消失は緩解指数(RI)で規定した。本研究中の動物の死亡は治療の失敗と見なし、本分析に含めた。A:緩解指数;B:生存曲線。図10の白丸および黒丸は図9と同じ意味である。
【図11】キメラC225および再形成ヒトH225抗体のカッパー(κ)軽鎖の発現用に使用したpKN100哺乳類発現ベクターの概略図である。
【図12】キメラC225および再形成ヒトH225抗体の重鎖の発現用に使用したpG1D105哺乳類発現ベクターの概略図である。
【図13】M225抗体のカッパー軽鎖可変部のDNA配列(配列番号:4)およびペプチド配列(配列番号:5)である。この情報を得たPCRクローン類は縮重プライマーMKV4(配列番号:6)(7)を使用して増幅して得た。
【図14】M225抗体の重鎖可変部のDNA配列(配列番号:7)およびペプチド配列(配列番号:8)である。この情報を得たPCRクローン類は縮重プライマーMHV6(配列番号:9)(7)を使用して増幅して得た。
【図15】C225抗体のカッパー軽鎖可変部のDNA配列(配列番号:10)およびペプチド配列(配列番号:11)である。
【図16】C225抗体の重鎖可変部のDNA配列(配列番号:12)およびペプチド配列(配列番号:13)である。
【図17】L7’CL抗体(28)のカッパー軽鎖からの修飾リーダー配列を持つC225抗体のカッパー軽鎖可変部のDNA配列(配列番号:14)およびペプチド配列(配列番号:15)である。
【図18】A431細胞表面に発現された上皮成長因子レセプターに対するキメラC225および再形成ヒトH225(225RKA /225RHA )の結合親和力を測定するための細胞ELISAの結果の典型的な例である。
【図19】再形成ヒトH225抗体のカッパー軽鎖可変部の第1バージョン(225RKA )のDNA配列(配列番号:16)およびペプチド配列(配列番号:17)である。
【図20】再形成ヒトH225抗体の重鎖可変部の第1バージョン(225RHA )のDNA配列(配列番号:18)およびペプチド配列(配列番号:19)である。
【図21】再形成ヒトH225抗体のカッパー軽鎖可変部の2つのバージョン(225RKA および225RKB )のアミノ酸配列(配列番号:20)、(配列番号:21)、(配列番号:22)、(配列番号:23)である。残基はカバット[Kabat]ら(20)にしたがって番号付けした。再形成ヒト・フレームワーク中に保存されているマウス・フレームワーク残基は太字で示した。
【図22】再形成ヒトH225抗体の重鎖可変部の5つのバージョン(225RHA 、225RHB 、225RHC 、225RHD 、225RHE )のアミノ酸配列(配列番号:24)、(配列番号:25)、(配列番号:26)、(配列番号:27)、(配列番号:28)、(配列番号:29)、(配列番号:30)である。残基はカバット[Kabat]ら(20)にしたがって番号付けした。再形成ヒト・フレームワーク中に保存されているマウス・フレームワーク残基は太字で示した。
【図22−1】再形成ヒトH225抗体の重鎖可変部の5つのバージョン(225RHA 、225RHB 、225RHC 、225RHD 、225RHE )のアミノ酸配列(配列番号:24)、(配列番号:25)、(配列番号:26)、(配列番号:27)、(配列番号:28)、(配列番号:29)、(配列番号:30)である。残基はカバット[Kabat]ら(20)にしたがって番号付けした。再形成ヒト・フレームワーク中に保存されているマウス・フレームワーク残基は太字で示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の不変部および可変軽鎖が欠失したポリペプチドであって、NYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSで表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドであって、NYGVHで表されるアミノ酸配列およびGVIWSGGNTDYNTPFTSRまたはVIWSGGNTDYNTPFTSで表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項3】
NYGVHまたはGVIWSGGNTDYNTPFTSRで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項4】
NYGVHまたはVIWSGGNTDYNTPFTSで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項5】
エフェクター分子に接合されたものである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
エフェクター分子が腫瘍の成長を抑制するものである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
エフェクター分子が細胞毒性を有するものである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
エフェクター分子がドキソルビシンである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項9】
エフェクター分子がシスプラチンである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項10】
エフェクター分子がタキソールである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項11】
エフェクター分子がシグナル導入インヒビターである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項12】
エフェクター分子がrasインヒビターである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項13】
エフェクター分子が細胞サイクルインヒビターである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項14】
抗体の不変部および可変軽鎖が欠失したポリペプチドをコードするDNAであって、当該ポリペプチドがNYGVH、GVIWSGGNTDYNTPFTSR、またはVIWSGGNTDYNTPFTSで表されるアミノ酸配列を含むものであるDNA。
【請求項15】
NYGVHで表されるアミノ酸配列およびGVIWSGGNTDYNTPFTSRまたはVIWSGGNTDYNTPFTSで表されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項16】
エフェクター分子に接合されたものである、請求項14に記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項17】
エフェクター分子が腫瘍の成長を抑制するものである、請求項16に記載のポリペプチドをコードするDNA。
【請求項18】
ヒト抗体の不変部及びエフェクター分子に接合したモノクローナル抗体225の超可変部を有する分子。
【請求項19】
エフェクター分子が細胞毒性剤である、請求項18に記載の分子。
【請求項20】
細胞毒性剤がドキソルビシンである、請求項19に記載の分子。
【請求項21】
細胞毒性剤がタキソールである、請求項19に記載の分子。
【請求項22】
細胞毒性剤がシスプラチンである、請求項19に記載の分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図22−1】
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【公開番号】特開2006−246896(P2006−246896A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120814(P2006−120814)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【分割の表示】特願平9−502046の分割
【原出願日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【出願人】(591066546)イムクローン システムズ インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】IMCLONE SYSTEMS INCORPORATED
【Fターム(参考)】