説明

腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤

【課題】腫瘍の放射線療法における腫瘍に対する放射線の治療効果を相乗的に増大させることができる放射線治療増強剤を提供すること。
【解決手段】NK4若しくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAを含有することを特徴とする腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK4もしくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNA(デオキシリボ核酸)もしくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNA(以下、NK4またはそのDNA等と略記する)等を含有する腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、癌の治療は、外科的療法、化学療法、放射線療法または遺伝子療法等を用いることにより行われている。
【0003】
外科的療法により癌の治療を行う場合には、生体内の原発腫瘍を早期に発見できれば癌を取り除くことは可能であることもあるが、膵臓癌や肺癌のような転移しやすい癌では、生体内の原発腫瘍の大きさが小さくても、発見されたときにはすでに目に見えないほどの小さな転移癌を形成していることが多く、これらを外科的療法により取り除くことは困難である。
【0004】
抗癌剤を用いる化学療法により癌の治療を行う場合には、生体内の腫瘍を殺傷または縮小することが可能であることもあるが、治療後に癌が再発することも多く、また治療後に生き残った癌の転移が起こることも多い。さらに、抗癌剤を用いる化学療法は、癌細胞だけではなく正常細胞をも殺す治療法であり、患者が激しい副作用を伴うと共に、患者の生活の質や免疫力を低下させることになる。
【0005】
また、近年、遺伝子を生体内に導入する技術の進歩に伴い、遺伝子療法という新しい治療分野が確立されようとしており、すでに癌治療を目的とした遺伝子治療が多数行われている。例えば、癌の遺伝子療法に用いられている遺伝子としてNK4タンパク質をコードする遺伝子等が挙げられる。NK4タンパク質をコードする遺伝子を生体内に導入することにより、生体内において腫瘍の浸潤抑制作用、成長抑制作用、転移抑制作用およびアポトーシス誘導作用、ならびに血管新生抑制作用を奏することが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
さらに、放射線療法により生体内の癌の治療を行う場合に、癌への放射線の照射と共に特定の有効成分を投与すれば、放射線による治療効果が増大することが知られている。
【0007】
例えば、癌への放射線の照射と共に、
【化1】

で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する放射線効果増強剤を投与すれば、腫瘍、特に悪性腫瘍の中でも胃腸管腫瘍、腎臓癌、前立腺癌および悪性リンパ腫からなる群より選択される少なくとも1種の腫瘍において、放射線による治療効果が相乗的に上昇することが知られている(特許文献2参照)。
【0008】
また、腫瘍を有する低酸素性細胞への放射線の照射と共に、下記式で示される8−ニトロキサンチン誘導体
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有しても良い炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基を示し、R及びRの少なくとも一方は、置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有しても良い炭素数1〜6のアルケニル基若しくはアルキニル基である)、またはそれを有効成分として含有する医薬を投与すれば、腫瘍への放射線効果が増大することが知られている(特許文献3参照)。
【0009】
さらに、癌への放射線の照射と共に、DNA相同組換え修復阻害作用を有する化合物を有効成分とする放射線増感剤を投与すれば、放射線の治療効果が相乗的に上昇することが知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2003−250549号公報
【特許文献2】特開2005−75741号公報
【特許文献3】特開2004−75563号公報
【特許文献4】特開2004−269364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、腫瘍の放射線療法において、腫瘍に対する放射線の治療効果が相乗的に増大し得る放射線治療増強剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、腫瘍の放射線療法において、NK4またはそのDNA等を含有することを特徴とする放射線治療増強剤を併用することにより、腫瘍に対する放射線の治療効果を相乗的に増大させ得ることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)NK4もしくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAを含有することを特徴とする腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤、
(2)NK4が下記(a)、(b)および(c)のいずれかのタンパク質であることを特徴とする前記(1)に記載の放射線治療増強剤;
(a)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質、
(3)NK4をコードするDNAが下記(a)および(b)のいずれかのDNAであることを特徴とする前記(1)に記載の放射線治療増強剤;
(a)配列番号3または配列番号4で表される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号3または配列番号4で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるDNAであって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(4)NK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAが、ベクターまたはリポソームに含有されていることを特徴とする前記(1)または(3)に記載の放射線治療増強剤、
(5)ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(HIV)、センダイウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスおよびSV40から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(4)に記載の放射線治療増強剤、
(6)ベクターが、さらにリポソームに含有されていることを特徴とする前記(4)または(5)に記載の放射線治療増強剤、
(7)腫瘍が、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、食道癌、肝臓癌、口腔癌、結腸癌、大腸癌、肉腫、骨肉腫、グリオーマおよびメラノーマから選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の放射線治療増強剤、
(8)放射線が、X線、ガンマ線、電子線、陽子線、ヘリウム線、炭素イオン線、ネオンイオン線、アルゴンイオン線、シリコンイオン線、負パイ中間視線または中性子線であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の放射線治療増強剤、
(9)腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤を製造するための、NK4若しくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAの使用、および
(10)哺乳動物に対する腫瘍の放射線療法において、NK4若しくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAを含有する放射線治療増強剤を投与することを特徴とする腫瘍の治療方法、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、腫瘍の放射線療法における放射線の治療効果を顕著に増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るNK4とは、例えば、肝実質細胞増殖因子(HGF)のα鎖のN末端ヘアピンドメインと4つのクリングルドメインを有し、c−Met/HGF受容体に結合し、HGFのアンタゴニストとして作用するタンパク質[Date.K et al., FEBS Lett, 420, 1−6(1997)、Date.K et al., Oncogene, 17, 3045−3054(1998)参照]等をいい、公知の方法により製造することができる。
【0015】
HGFとは、例えば、マイトゲン活性、モートゲン活性、モルフォゲン活性及び血管新生作用を有し、癌細胞をとりまく間質細胞との総合作用により、腫瘍の浸潤または転移を誘発するタンパク質等である[Nakamura.T et al.,Cancer Res.,57,3305−3313(1997)、Jiang.W.G et al.,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,29,209−248(1999)参照]。また、HGFとは、例えば、c−Met/HGF受容体に結合し、チロシンリン酸化により腫瘍の浸潤または転移を誘発するタンパク質等である[Jiang.W.G et al.,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,29,209−248(1999)参照]。
【0016】
また、本発明に係るNK4またはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質の塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸または硫酸等)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸等)との塩等が挙げられ、公知の方法により製造することができる。
【0017】
本発明に係るNK4としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列または配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質等が挙げられる。
また、本発明に係るNK4としては、例えば、配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質等が挙げられる。ここで、「複数のアミノ酸」とは、特に限定されないが、例えば、50個のアミノ酸、好ましくは30個のアミノ酸、さらに好ましくは10個のアミノ酸、最も好ましくは5個のアミノ酸をいう。
【0018】
かかる配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、Molecular Cloning、A laboratory Manual Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Products in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315(1985)、Nucleic Acids Resarch, 13, 4431(1985)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 488(1985)等に記載されている部位特異的変異導入法等に従って、NK4をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより製造することができる。
【0019】
また、本発明に係るNK4としては、例えば、配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列と少なくとも約70%以上の相同性を有するアミノ酸配列、好ましくは約80%以上の相同性を有するアミノ酸配列、より好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質等が挙げられる。
【0020】
本発明における「NK4と実質的に同質の活性」とは、例えば、生体内における腫瘍の浸潤抑制作用、成長抑制作用、転移抑制作用およびアポトーシス誘導作用、並びに生体内における血管新生抑制作用等をいう。
【0021】
癌腫瘍の転移の機構としては、まず上皮組織で原発腫瘍が発生し、癌細胞が原発腫瘍から離脱して、上皮組織を区切っている基底膜を破り、周囲の組織へ浸潤し、血管やリンパ管に侵入し血液やリンパ液の流れによって遠隔の組織に運ばれ、再び血管やリンパ管から血管新生を伴いながら組織に浸潤または成長するという機構が一例として挙げられる。したがって、生体内における腫瘍の転移抑制作用とは、例えば、該機構のいずれかのプロセスを阻止または抑制すること等をいう。
【0022】
本発明に係るNK4をコードするDNAとしては、特に限定されないが、例えば、配列番号:3で表される塩基配列または配列番号:4で表される塩基配列からなるDNA等が挙げられる。配列番号:4で表される塩基配列は、配列番号:3で表される塩基配列において391番目から405番目の塩基が欠失している配列である。
【0023】
本発明に係るNK4としては、配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列からなるDNAの他に、例えば、配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるDNAであって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA等が挙げられる。
【0024】
配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるDNAは、配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列の部分配列からなるDNAをプローブとして、例えば、ウエスタンブロット・ハイブリダイゼーション法、サウスウエスタン・ハイブリダイゼーション法、ドットブロット・ハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット・ハイブリダイゼーション法、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法またはサザンブロット・ハイブリダイゼーション法等に従うことにより得られる。より具体的には、これらハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University(1995)等に記載されている自体公知の方法に従って行うことができる。
【0025】
配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるDNAとしては、具体的には、例えば、配列番号:3又は配列番号:4で表される塩基配列からなるDNAと少なくとも約70%以上の相同性を有するDNA、好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA、より好ましくは約90%以上の相同性を有するDNA、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するDNA等を挙げることができる。
【0026】
本発明に係るNK4をコードするDNAまたはそのフラグメントは、公知の方法により製造することができ、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、NK4をコードするDNAまたはそのフラグメントの塩基配列に基づいたプライマーを調整し、ヒトの組織又は細胞に含まれるNK4またはそのフラグメントのmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーから選択したNK4またはそのフラグメントのcDNAを鋳型として、PCR法[PCR Protocols, Academic Press (1990)]を用いて、DNAの増幅を行うことによりNK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを製造することができる。ライブラリーに用いるベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミドまたはファージミド等のいずれのベクターであってもよい。また、NK4をコードするDNAまたはそのフラグメントの塩基配列情報を基にして、公知の化学合成法により、NK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを製造することもできる。化学合成法としては、例えば、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機 model 392(パーキン・エルマー株式会社製)等のDNA合成機を用いて化学合成する方法が挙げられる。
【0027】
本発明に係るNK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを含有するベクターは、公知の方法により、NK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを適当なベクターに連結することにより構築することができ、例えば、Molecular Cloning、Cold Spring harbor Laboratory、A laboratory manual(1989)等に記載された手段に従って構築することができる。
【0028】
本発明に用いることができるベクターとしては、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター等が挙げられる。プラスミドベクターとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pCR4、pCR2.1、pBR322、pBR325、pUC12若しくはpUC13等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5若しくはpC194等)、酵母由来プラスミド(例えば、pSH19若しくはpSH15等)等が挙げられる。また、ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(HIV)、センダイウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスまたはSV40等が挙げられ、より好ましくは、アデノ随伴ウイルス(AAV)またはアデノウイルスが挙げられる。
【0029】
本発明に係るNK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを含有するリポソームあるいはNK4をコードするDNAまたはそのフラグメントを含むベクターを含有するリポソームは、公知の方法により製造することができる。該リポソームの製造に使用されるリン脂質としては、例えば、レシチン若しくはリゾレシチン等のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン若しくはホスファチジルグリセロール等の酸性リン脂質またはホスファチジルエタノールアミン若しくはスフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。本発明に用いることができるリポソームの形態としては、例えば、膜融合リポソーム、HVJ―膜融合リポソーム[Kaneda. Y et al., Biol. Chem, 264, 12126-12129(1989)、Kato. K et al., Biol. Chem, 266, 3361-3364(1991)、Tomita. N et al., Biochem. Biophys. Res., 186, 129-134, (1992)、Tomota. N et al., Cric. Res., 73, 898-905(1993)]または陽イオン性リポソーム(特表平2000−510151、特表平2000−516630)等が挙げられる。
【0030】
NK4をコードするDNAまたはそのフラグメントあるいはそれらを含有するベクターを含有するリポソームを動物細胞等へ導入する方法としては、例えば、リポソーム法、HVJ−リポソーム法、陽イオン性リポソーム法、リポフェクチン法またはリポフェクトアミン法等が挙げられる。
【0031】
本発明に係るNK4またはそのDNA等を含有するベクターあるいはそれらを含有するリポソームは安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌまたはサル等)に対して投与することができる。
【0032】
本発明に係る放射線治療増強剤は、種々の製剤形態(例えば、液剤、固形剤またはカプセル剤等)とすることができ、その製剤形態としては、例えば、注射剤または経口剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、軟若しくは硬カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤またはシロップ剤等)等を挙げることができる。本発明に係る放射線治療増強剤は、自体公知の方法に従ってこれら種々の製剤形態として製造することができる。
【0033】
例えば、本発明に係る放射線治療増強剤を注射剤として製造する場合には、例えば、NK4またはそのDNA等を含有するベクターあるいはそれらを含有するリポソームを適切な溶媒(例えば、滅菌水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、緩衝液または生理食塩水等)に溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより製造することができる。
【0034】
さらに、本発明に係る放射線治療増強剤を製造する場合には、製剤の種類に応じて、所望により種々の添加物を放射線治療増強剤に添加することができる。種々の添加物としては、例えば、安定化剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、溶解補助剤、界面活性剤、崩壊抑制剤、酸化防止剤、無痛化剤または等張化剤等が挙げられる。
【0035】
より具体的に、安定化剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストランまたはエチレングリコール等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸またはリン酸カリウム等が挙げられる。
【0036】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウム)、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、精製タルク、ホウ酸末またはポリエチレングリコール等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0037】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム液、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースまたはポリビニルピロリドン等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、アラビアゴムまたはポリソルベート80等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウムまたはステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。崩壊抑制剤としては、例えば、白糖、ステアリン、カカオバターまたは水素添加油等が挙げられる。
【0038】
なお、本発明に係る放射線治療増強剤を液状製剤として保存する場合は、凍結保存又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。本発明に係る放射線治療増強剤を凍結乾燥剤とした場合は、用事に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用することができる。
【0039】
種々の製剤中におけるNK4またはそのDNA等を含有するベクターあるいはそれらを含有するリポソームの含有割合は、特に制限はないが、例えば、約0.01〜5.0W/V%、より好ましくは約0.1〜1.0W/V%、最も好ましくは0.5W/V%である。
【0040】
本発明に係る放射線治療増強剤を患者等に投与する場合におけるNK4若しくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質若しくはその塩、またはそれらを含有するベクター、あるいはそれらを含有するリポソームの投与量は、投与部位、投与回数、所望治療期間または患者の年齢若しくは体重等により適宜調整することができるが、通常、患者(体重約60kg)に対して、約1〜300mg、より好ましくは約1〜100mg、最も好ましくは約50mgである。
【0041】
本発明に係る放射線治療増強剤を患者等に投与する場合におけるNK4をコードするDNAもしくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAまたはそれらを含有するベクター、あるいはそれらを含有するリポソームの投与量は、投与部位、投与回数、所望治療期間または患者の年齢若しくは体重等により適宜調整することができるが、通常、患者(体重約60kg)に対して、約1×10〜1×1012pfu、より好ましくは約1.5×10〜1×1010pfu、最も好ましくは約1×10pfuである。
【0042】
本発明に係る放射線治療増強剤を注射剤として患者等に投与する場合は、適宜に投与経路を選択して投与することができる。例えば、腫瘍が存在する組織に直接投与若しくは局所投与することもできるし、また静脈、動脈、皮下、筋肉内または腹腔内等に投与することもできる。また、核磁気共鳴撮像又はコンピューター断層撮影等の当該技術分野で利用できる任意の機器を使用して腫瘍を撮影して、例えば、定位注射により直接投与することもできる。
【0043】
腫瘍の放射線療法において、本発明に係る放射線治療増強剤と併用することにより、哺乳動物(患者等)への放射線の治療効果を増大させることができる放射線としては、例えば、X線、ガンマ線、電子線、陽子線、ヘリウム線、炭素イオン線、ネオンイオン線、アルゴンイオン線、シリコンイオン線、負パイ中間子線、中性子線、UVまたはマイクロ波等が挙げられる。
【0044】
腫瘍の放射線療法において、本発明に係る放射線治療増強剤を患者等に投与する回数は、特に制限されず、例えば、1回〜10回であり、好ましくは2回である。また、腫瘍の放射線療法において、本発明に係る放射線治療増強剤を患者等に投与する時期は、患者に放射線を照射する前若しくは後、または照射するのと同時のいずれの時期であってもよく、最も好ましくは、放射線を照射する前と後である。
【0045】
腫瘍の放射線療法における放射線の照射方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、まず、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴映像診断装置)などの画像診断技術により、患者における腫瘍の位置、大きさおよびその周辺の状況等を把握し、そして重粒子加速器ハイマック(HIMAC)等を用いて、腫瘍に対し直接的に、分割照射(例えば、1日に数分間、1〜2ヶ月間にわたって複数回)を行う方法等である。このとき、照射温度は特に制限されないが、最も好ましくは室温である。
【0046】
放射線の初期エネルギーは、患者等の腫瘍の大きさ、状態若しくは部位またはその周辺の状況等に応じて適宜選択することができるが、通常、約100〜500MeV/nであり、好ましくは約200〜300MeV/nであり、最も好ましくは約290MeV/nである。また、患者等への放射線の照射量は、患者等の腫瘍の大きさ、状態若しくは部位またはその周辺の状況等に応じて適宜選択することができるが、通常、約0.1〜100Gyであり、好ましくは約1〜10Gyであり、最も好ましくは約5Gyであり、また、患者等への放射線の照射割合は、通常、約0.05〜50Gy/分であり、好ましくは約0.5〜10Gy/分であり、最も好ましくは約3Gy/分である。さらに、放射線が組織に対して与えるエネルギー(linear energy transfer:LET)は、患者の腫瘍の大きさ、状態または部位等に応じて適宜選択することができるが、通常、約50〜70keV/μmであり、好ましくは約50〜60keV/μmであり、最も好ましくは約50keV/μmである。
【0047】
本発明に係る放射線治療増強剤を放射線と併用することができる腫瘍としては、例えば、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、食道癌、肝臓癌、口腔癌、結腸癌、大腸癌、子宮癌、胆管癌、膵島細胞癌、副腎皮質癌、膀胱癌、精巣癌、睾丸腫瘍、甲状腺癌、皮膚癌、悪性カルチノイド腫瘍、悪性黒色腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫、メラノーマまたはグリオーマ等が挙げられるが、なかでも卵巣癌、膵臓癌、胃癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、食道癌、肝臓癌、口腔癌、結腸癌、大腸癌、肉腫、メラノーマまたはグリオーマが好ましく、特に、卵巣癌、膵臓癌、胃癌または胆嚢癌が好ましい。
【0048】
また、本発明に係る放射線治療増強剤は、他の抗腫瘍剤等と組み合わせて腫瘍の治療に用いることができる。他の抗腫瘍剤としては、例えば、アルキル化剤、各種代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、その他の抗腫瘍剤、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、細胞接着阻害剤、マトリックス・メタロプロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ビタミン、抗菌性抗生物質または化学療法剤等が挙げられる。
【0049】
より具体的に、アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN−オキシド若しくはクロラムブチル等のアルキル化剤、カルボコン若しくはチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤、ディブロモマンニトール若しくはディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、ストレプトゾシン、クロロゾトシン若しくはラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ブスルファン、トシル酸インプロスルファンまたはダカルバジン等が挙げられる。
【0050】
各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン若しくはチオイノシン等のプリン代謝拮抗剤、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン若しくはエノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤、メトトレキサート若しくはトリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
【0051】
抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、THP−アドリアマイシン、4’−エピドキソルビシン若しくはエピルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質抗腫瘍剤、クロモマイシンA3またはアクチノマイシンD等が挙げられる。
【0052】
その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、タモキシフェン、カンプトテシン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア、ウベニメクスまたはクレスチン等が挙げられる。
【0053】
抗腫瘍性植物成分としては、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン若しくはビンブラスチン等のビンカアルカロイド類またはエトポシド若しくはテニポシド等のエピポドフィロトキシン類が挙げられる。
【0054】
BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子またはインドメタシン等が挙げられる。
細胞接着阻害剤としては、例えば、RGD配列を有する物質等が挙げられる。
マトリックス・メタロプロテアーゼ阻害剤としては、例えば、マリマスタットまたはバチマスタット等が挙げられる。
【0055】
ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノンまたはメドロキシプロゲステロン等が挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンCまたはビタミンA等が挙げられる。
また、本発明に係る放射線治療増強剤は、外科的療法と組み合わせて用いることもできる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]放射線照射と放射線治療増強剤投与の併用実験
被験体として、50Balb/c nu/nu 無胸腺雄性マウス(6〜8週令、CLEA、Japan)を使用した。無胸腺雄性マウスを無作為に8匹選び、処置を行わない群(以下、コントロール群という)および処置を行う群(以下、処置群という)に4匹ずつになるように分けた。処置群のマウスの右の大腿へ腫瘍(約3×10細胞)を接種し、その2週間後の各マウスの腫瘍の体積は約400〜800mmに達した。NK4の抗腫瘍効果は、1日目にコントロール群および処置群のマウスの腫瘍内にNK4を注射した後の腫瘍増殖の差異によって評価した。
【0057】
まず、1日目、処置群のマウスの腫瘍内に、27規格の皮下注射針(テルモ製)を用いて、NK4(1×10pfu)を注射した。2日目、NK4を注射後24時間経た後に、炭素イオンを選択した重粒子加速器ハイマック(HIMAC)(三菱重工、東芝電器、住友重工および日立製作所による共同制作)を用いて、処置群のマウスの腫瘍に放射線(5Gy)を照射した。処置群のマウスの腫瘍に放射線を照射している間は、ペントバルビタールカルシウム(pentobarbiturate)を腹膜内注射することによって処置群のマウスに麻酔をかけた。3日目、放射線の照射後24時間経た後に、処置群のマウスの腫瘍内に、再びNK4(1×10pfu)を注射した。
【0058】
次に、コントロール群および処置群のマウスの腫瘍の体積(mm)を、21日間にわたって7回、測径両脚器(ミツトヨ製)を用いて測定した。腫瘍の体積は、(長さ×幅)/2に従って計算し、そしてコントロール群および処置群のマウスの腫瘍の平均(±標準偏差)mmとして表1に示した。
【0059】
なお、放射線の照射条件は、以下のとおりとした。
重炭素イオン線の初期エネルギーは、290MeV/nとした。腫瘍に与える放射線のエネルギーを変化させるために、様々な厚みを有するアクリル樹脂(水等価厚係数=1.16mm)[バイナリーフィルター(BF)]を備えたLusite吸収器を使用することによって、重炭素イオン線を高LET(linear energy transfer)放射線として使用した。LET値は、50keV/μmとなるように設定した。放射線の照射量の割合は約3Gy/分とし、照射は室温で行った。
【0060】
[比較例1]HIMACによる単独照射実験
被験体として、50Balb/c nu/nu 無胸腺雄性マウス(6〜8週令、CLEA、Japan)を使用し、無胸腺雄性マウスを無作為に4匹選んだ。そしてマウスの右の大腿へ腫瘍(約3×10細胞)を接種し、その2週間後の各マウスの腫瘍の体積は約400〜800mmに達した。
【0061】
その後、炭素イオンを選択したHIMACを用いて、マウスの腫瘍に放射線(5Gy)を照射した。マウスの腫瘍に放射線を照射している間は、ペントバルビタールカルシウム(pentobarbiturate)を腹膜内注射することによって処置群のマウスに麻酔をかけた。なお、放射線の照射条件は、実施例1と同じとした。
【0062】
次に、マウスの腫瘍の体積(mm)を、21日間にわたって7回、測径両脚器を用いて測定した。腫瘍の体積は、(長さ×幅)/2に従って計算し、そしてマウスの腫瘍の平均(±標準偏差)mmとして表1に示した。
【0063】
[比較例2]NK4の単独投与実験
被験体として、50Balb/c nu/nu 無胸腺雄性マウス(6〜8週令、CLEA、Japan)を使用し、無胸腺雄性マウスを無作為に4匹選んだ。そしてマウスの右の大腿へ腫瘍(約3×10細胞)を接種し、その2週間後の各マウスの腫瘍の体積は約400〜800mmに達した。その後、マウスの腫瘍内に、27規格の皮下注射針を用いて、NK4(1×10pfu)を注射した。
【0064】
次に、マウスの腫瘍の体積(mm)を、21日間にわたって7回、測径両脚器を用いて測定した。腫瘍の体積は、(長さ×幅)/2に従って計算し、そしてマウスの腫瘍の平均(±標準偏差)mmとして表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
結果として、腫瘍に対して、NK4投与とHIMACによる放射線照射を併用した場合には、NK4投与単独およびHIMACによる放射線照射単独で用いた場合よりも、明らかに腫瘍の体積の増加率が減少していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、腫瘍の放射線療法における放射線の治療効果を顕著に増大させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK4若しくはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントを含むタンパク質またはその塩、あるいはNK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAを含有することを特徴とする腫瘍の放射線療法における放射線治療増強剤。
【請求項2】
NK4が下記(a)、(b)および(c)のいずれかのタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療増強剤;
(a)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加または置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号1または配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質。
【請求項3】
NK4をコードするDNAが下記(a)および(b)のいずれかのDNAであることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療増強剤;
(a)配列番号3または配列番号4で表される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号3または配列番号4で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるDNAであって、かつNK4と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
NK4をコードするDNAまたはNK4と実質的に同質の活性を有するNK4のフラグメントをコードするDNAを含むDNAが、ベクターまたはリポソームに含有されていることを特徴とする請求項1または3に記載の放射線治療増強剤。
【請求項5】
ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(HIV)、センダイウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルスおよびSV40から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の放射線治療増強剤。
【請求項6】
ベクターが、さらにリポソームに含有されていることを特徴とする請求項4または5に記載の放射線治療増強剤。
【請求項7】
腫瘍が、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、食道癌、肝臓癌、口腔癌、結腸癌、大腸癌、肉腫、骨肉腫、グリオーマおよびメラノーマから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線治療増強剤。
【請求項8】
放射線が、X線、ガンマ線、電子線、陽子線、ヘリウム線、炭素イオン線、ネオンイオン線、アルゴンイオン線、シリコンイオン線、負パイ中間視線または中性子線であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線治療増強剤。

【公開番号】特開2007−210957(P2007−210957A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33474(P2006−33474)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【出願人】(502068908)クリングルファーマ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】