腫瘍の治療のための細胞治療方法
【課題】腫瘍の治療のための細胞治療方法の提供。
【解決手段】ヒトHLAクラスIおよび規定された補助分子でトランスフェクトされた人工産物の抗原提示細胞(AAPC;キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))を、正常ドナーおよび癌患者双方からのCD8+T細胞を刺激するのに使用する。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞の表面上に高密度まで発現されたクラスI分子は空であり、特異的ペプチドを内因性に発現する腫瘍細胞を認識するポリクローナル応答の生成をもたらす複数のペプチドの効率的な添加を見込む。生成される応答は、ペプチドエピトープが規定される免疫原である場合に、確固、抗原特異的かつ再現可能である。本人工産物抗原発現系は、集団のかなり大多数の大部分の癌を治療するよう適合させることができる。
【解決手段】ヒトHLAクラスIおよび規定された補助分子でトランスフェクトされた人工産物の抗原提示細胞(AAPC;キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))を、正常ドナーおよび癌患者双方からのCD8+T細胞を刺激するのに使用する。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞の表面上に高密度まで発現されたクラスI分子は空であり、特異的ペプチドを内因性に発現する腫瘍細胞を認識するポリクローナル応答の生成をもたらす複数のペプチドの効率的な添加を見込む。生成される応答は、ペプチドエピトープが規定される免疫原である場合に、確固、抗原特異的かつ再現可能である。本人工産物抗原発現系は、集団のかなり大多数の大部分の癌を治療するよう適合させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
癌は、治療の領域でなされたかなりの進歩にもかかわらず大きな健康の問題であり続けている。化学療法、放射線治療、外科的介入および三者の組合せという標準的治療レジメンは、永続する治癒を生じさせることにしばしば失敗する。多くの場合、治療を受けた癌患者は、しばしば、いくらかの期間の後に疾患状態に戻り、病状をさらに悪化させることは、患者に対するこれらの治療レジメンの苛烈さである。
【0002】
癌治療の発展を複雑にする別の要因は、癌が単一の生物学的作用物質もしくは因子によってではなく、しかしむしろ作用物質および要因の組合せにより引き起こされることが見出されたことである。単一の原因物質もしくは事象が治療の焦点である大部分の医学的治療と異なり、癌治療は複数の生物学的因子を取り扱うことを必要とする。
【背景技術】
【0003】
近年、研究は患者自身の免疫系を利用する癌治療を開発することに向けられている。1つのこうしたアプローチは養子免疫療法である。養子免疫療法は、腫瘍もしくは癌細胞を治療する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成させるために患者自身の細胞を使用することを要する。しかしながら、この技術は、ヒト患者についての実現可能な臨床的治療レジメンとして十分に証明されないままである。CTLを免疫化するための適正なエピトープを同定するという問題を別として、従来技術は、複数の抗原に十分に標的を定めて癌を効果的に治療するためのAPCへの十分な数の異なるエピトープの提示方法を提供しない。本発明は、まだ対処されていない必要性を満足し、ならびに他の利益を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、10までもしくはそれ以上の異なるペプチドを同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)、nnACPの製造方法、癌の治療のための前記nnACPの使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】発明にかかる、抗原提示細胞もしくは標的細胞(この場合は腫瘍細胞)との細胞傷害性Tリンパ球としてもまた知られるCD8+細胞の間の相互作用のグラフィック描写である。
【図2(A−B)】発明にかかる、リンパ球に媒介される細胞増加症の機構の2図のグラフィック描写である。
【図3】発明にかかる、ヒト空クラスI分子を発現するショウジョウバエ(Drosophila)細胞上に複数のペプチドを添加するのに使用することができるペプチド結合体を同定するための競争アッセイで数種の異なるペプチドを試験した実験の結果を示す。
【図4(A)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図4(B)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図4(C)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図5(A)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図5(B)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図5(C)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図6(A)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図6(B)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図6(C)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図7(A−B)】発明にかかる、標準的刺激プロトコル後の単一ペプチドエピトープに対するCTL応答を導き出す、樹状細胞に対するショウジョウバエ(Drosophila)細胞の能力を比較する。
【図8】発明にかかる、成熟もしくは未熟いずれかの表現型を表す樹状細胞が、細胞に適用するのに規定されたペプチドを使用した場合に特異的CTL応答の導出においてショウジョウバエ(Drosophila)細胞ほど効率的でなかったことを示す。
【図9(A)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図9(B)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図9(C)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図10】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に組合せで添加された10種のペプチドに対し生成されたCTL活性を示す。
【図11】発明にかかる、ヒトHLA−A2.1クラスI分子でトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞上でのHER−2ペプチド(826、835、861および863)のペプチド結合能力を示す。
【図12】発明にかかる、MART−1特異的エフェクター細胞に対する抗ペプチドおよび抗腫瘍応答を立証する。T2細胞にはMART−1ペプチドもしくは陰性対照(HBc)を添加した。Malme3Mは黒色腫系統であり、Malme3は非腫瘍細胞系である。
【図13(A)】発明にかかる、2例の異なるドナーからのHER−2特異的CD8エフェクター細胞の四量体染色を示す。
【図13(B)】発明にかかる、2例の異なるドナーからのHER−2特異的CD8エフェクター細胞の四量体染色を示す。
【図14】発明にかかる、ペプチドの添加されたT2細胞で評価されたHER−2エフェクター細胞に対する抗ペプチド応答を示す。
【図15(A−B)】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の卵巣腫瘍細胞系(HTB−77)の高められた殺傷を立証する。
【図15(C−D)】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の卵巣腫瘍細胞系(HTB−77)の高められた殺傷を立証する。
【図16】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の乳癌細胞系(HTB−133)の高められた殺傷を示す。
【図17】発明にかかる、腫瘍細胞系HTB−77/A2.1の溶解を立証するのにIFNγ前処理が必要とされることを示す。
【図18(A−B)】発明にかかる、HLA−A2およびHER−2の表面発現が、2種の細胞系(HTB−77およびHTB−77/A2.1)でのIFNγ誘導により影響を及ぼされないことを立証するグラフである。
【図19】発明にかかる、どのタンパク質のmRNAレベルがIFNγでの誘導後にHTB−77/A2.1細胞中で上昇されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは、癌と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10の異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドはが長さ約6ないし12アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし10アミノ酸、かつ約10nMないし100μMの濃度範囲にあり;
b.癌を伴う被験体もしくは適するドナーからCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.馴化成長培地(CGM)もしくはIL−2、IL−7のようなサイトカインを含有する培地、好ましくはIL−2、または組合せのIL−2およびIL−7に前記CD8+細
胞を添加すること;
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球、あるいはCD−8枯渇末梢血単球を、約10ないし50μg/mlのペプチドと混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、約3,000ないし7,000ラドの範囲、好ましくは約5,000ラドの線量のような、懸濁物中のこれらの細胞の増殖を予防するのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること、あるいは、末梢血リンパ球懸濁物を、限定されるものでないがマイトマイシンCを挙げることができる細胞増殖抑制剤で処理してもよい;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10ng/mlないし10μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;
j.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約
6ないし7日間刺激すること;
k.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2お
よびIL−7で刺激すること;
l.場合によっては、CD8+懸濁物を適するCTL活性についてアッセイすること、な
らびに、場合によって、CTLの純度、無菌性(sterility)およびエンドトキシン含量についてアッセイすること;ならびに、
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは癌と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10のペプチドを同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが8ないし10アミノ酸であり;
b.癌を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2およびIL−7で
刺激すること;
l.適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてCD8+懸濁物
をアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは黒色腫と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10のペプチドを同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが8ないし10アミノ酸であり;
b.黒色腫を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの、前記nnAPCが提示することができる各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2およびIL−7で刺
激すること;
l.CD8+懸濁物を、適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量につ
いてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、nnAPCが以下のペプチド、チロシナーゼ369-377、チロシナ
ーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29お
よびPec6025-33を提示する、黒色腫の治療方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、感染したもしくは形質転換された細胞を排除する治療がCTLにより達成されることが立証されている、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadaquate)免疫応答をもたらす疾患もしくは疾患状態の治療方法である。
【0011】
本発明の別の態様は、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadaquate)免疫応答をもたらす疾患もしくは疾患状態の治療方法であって、CTLによる排除を受けやすいことが示されている感染したもしくは形質転換された細胞は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは前記疾患もしくは疾患状態と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10の異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが約6ないし12アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし10アミノ酸、かつ、約10nMないし100μMの濃度範囲にあり;
b.CD8+細胞を前記被験体もしくは適するドナーから収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.前記CD8+細胞を、CGMもしくはIL−2、IL−7のようなサイトカインを含
有する培地好ましくはIL−2、または組合せのIL−2およびIL−7に添加すること;
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球、あるいはCD−8枯渇末梢血単球を、約10ないし50μg/mlのペプチドと混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、約3,000ないし7,000ラドの範囲、好ましくは約5,000ラドの線量のような、所望の末梢血単球を除く懸濁物中の全部の成分を無効にする(sterilize)のに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10ng/mlないし10μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;
j.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を、
約6ないし7日間刺激すること;
k.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2
およびIL−7で刺激すること;
l.場合によっては、適するCTL活性についてCD8+懸濁物をアッセイすること、な
らびに、場合によってはCTLの純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る方法により治療する。
【0012】
本発明は、発現のためヒトクラスI HLA、結合および共刺激分子をコードするDNAでトランスフェクトされたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)細胞由来の天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を提供し、nnAPCは15までの異なるペプチド分子、好ましくは10のペプチド分子を提示することが可能である。
【0013】
本発明の別の態様は、被験体の治療を高める多様な所望の機能と関連するペプチドを提示するnnAPCを提供する。例えば、治療されている疾患もしくは疾患状態と関連するペプチドに加えて、nnAPCは、細胞−細胞接着を高めるもしくは付加的な細胞活性化
シグナルを伝達する、リンパ球機能抗原(LFA−1、LFA−2およびLFA−3)、細胞間接着分子1(ICAM−1)、T細胞共刺激因子(CD2、CD28、B7)のような補助分子(accessory molecule)と関連するペプチドを提示することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、いくつかの型の癌と関連するペプチドを提示するnnAPCを提供する。例えば、HER−2/neuのような乳癌関連ポリペプチドと関連するもしくはそれ由来のペプチドは、MART−1もしくはMAGEのような黒色腫関連ポリペプチドと関連するもしくはそれ由来のペプチドとともに提示されるかもしれない。
【0015】
本発明の別の態様は、10までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)の製造方法を提供し、前記方法は、段階:
a.キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)卵から昆虫細胞系を調製すること;あるいは、ヒトMHCクラスI分子および共刺激接着分子を発現させるための昆虫細胞系を調製すること;
b.前記昆虫細胞を、昆虫細胞を成長させるのに適する培地、好ましくはシュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させること;
c.pRmHa−1発現ベクターからpRmHa−3プラスミドを作成することであって、前記pRmHa−3プラスミドは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を包含し;
d.前記pRmHa−3プラスミドに、ヒトクラスI HLA A2.1、B7.1、B7.2、ICAM−1、β−2ミクログロブリンおよびLFA−3の相補DNAを挿入することであって、A2.1はいずれかのヒトクラスI DNA配列で置換することができ;
e.前記昆虫細胞を、phshneoプラスミド、および相補DNAを含有する前記pRmHa−3プラスミドでトランスフェクトすること;ならびに
f.前記昆虫細胞をCuSO4と接触させて前記昆虫細胞中のトランスフェクトされた遺
伝子の発現を誘導することによりnnAPCを創製すること
よりなる。
【0016】
本発明の昆虫細胞は、昆虫細胞を成長させるのに適する培地(下で「昆虫成長培地」と称される)中で成長させる。シュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地、グレース昆虫培地、およびTC−100昆虫培地のような、昆虫成長培地は、多数の供給元から商業的に入手可能である。あるいは、昆虫成長培地は当業者により調製することができる。典型的には、該培地は、無機塩(例えば、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウム)、アミノ酸、多様な炭水化物、ならびに化学種(Imogene Schneider,Exp.Zool.(1964)156(1):pg.91)のような、昆虫細胞の成長を促進かつ持続するのに必要な成分を包含することができる。あるいは、該培地は、ビタミン、ミネラル、および昆虫細胞の成長で補助する他の成分もまた包含することができる。
【0017】
以下は、本明細で使用される略語および定義の一覧である。
略語
APC 抗原提示細胞
CD8+ CD8+ T細胞
CTL 細胞傷害性Tリンパ球
E エフェクター
Fas CD95としてもまた知られる、T細胞上のエピトープ
ICAM 細胞間接着分子
IL インターロイキン
LAK リンホカイン活性化型キラー細胞
LFA リンパ球機能抗原
MHC 主要組織適合抗原複合体
nnAPC 天然に存在しない抗原提示細胞
NP 核タンパク質
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸緩衝生理的食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RPMI ロズウェル パーク メモリアル インスティテュート(Roswel
l Park Memorial Institute)
RWJPRI R.W.ジョンソン ファーマシューティカル リサーチ インスティ
テュート(The R.W.Johnson Pharmaceuti
cal Research Institute)
T 標的
TCP T細胞抗原受容体
TIL 腫瘍浸潤リンパ球
【0018】
以下は、多様なペプチドエピトープについて本明細で使用される略語の一覧である。個々のアミノ酸残基は、当業者により容易に既知かつ使用される一文字記号に従って同定される。
【0019】
【表1】
【0020】
ペプチドエピトープの略語
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ369−377」もしくは「チロシナーゼ369-377」はアミノ酸配列YMNGTMSQV(配列番号1)を指す。この定義内に、
配列YMNGTMSQV(配列番号1)のアミノ酸残基「N」を「D」に改変してYMDGTMSQV(配列番号2)のアミノ酸配列をもたらす翻訳後事象から生じる、配列YMDGTMSQV(配列番号2)のペプチドもまた包含される(Skipperら,J.Exp.Med.(1996)183:527−534)。
【0021】
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ207−216」もしくは「チロシナーゼ207-216」という用語はアミノ酸配列FLPWHRLFLL(配列番号3)を指す。
【0022】
本明細書で使用されるところの「gp100 209−217」もしくは「gp100209-217」という用語はアミノ酸配列ITDQVPFSV(配列番号4)を指す。
【0023】
本明細書で使用されるところの「gp100 154−162」もしくは「gp100154-162」という用語はアミノ酸配列KTWGQYWQV(配列番号5)を指す。
【0024】
本明細書で使用されるところの「MART−1 27−35」もしくは「MART−127-35」という用語はアミノ酸配列AAGIGILTV(配列番号6)を指す。
【0025】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu 789−797」もしくは「HER−2/neu789-797」という用語はアミノ酸配列CLTSTVQLV(配列番号7
)を指す。
【0026】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu 369−377」もしくは「HER−2/neu369-377」という用語はアミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号8
)を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「C−レクチン 8−16」もしくは「C−レクチン8-16」という用語はアミノ酸配列KMASRSMRL(配列番号9)を指す。
【0028】
本明細書で使用されるところの「Pec60 20−29」もしくは「Pec6020-29」という用語はアミノ酸配列ALALAALLVV(配列番号10)を指す。
【0029】
本明細書で使用されるところの「Pec60 25−33」もしくは「Pec6025-33」という用語はアミノ酸配列ALLVVDREV(配列番号11)を指す。
【0030】
本明細書で使用されるところの「CD8ペプチド 59−70」もしくは「CD8ペプチド59-70」という用語は、AAEGLDTQRFSG(配列番号12)のアミノ酸配列
を指す。
【0031】
用語および定義
本明細書で使用されるところの「養子免疫療法」という用語は、疾患もしくは疾患状態の治療のためのドナーもしくは自己のTリンパ球の投与を指し、ここで疾患もしくは疾患状態は、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadequate)免疫応答をもたらす。養子免疫療法は、感染したもしくは形質転換された細胞の排除がCTLにより達成されることが立証されているいかなる疾患もしくは疾患状態にも適切な治療である。例えば、疾患もしくは疾患状態は、限定されるものでないが、黒色腫、前立腺、乳房、結腸直腸、胃、咽頚部、膵、子宮頚、卵巣、骨、白血病および肺癌のような癌および/もしくは腫瘍;B型肝炎、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルスのようなウイルス感染症;結核、らいおよびリステリア症のような細菌感染症、ならびにマラリアのような寄生虫感染症を挙げることができる。
【0032】
本明細書で使用されるところの「B7.1」という用語は抗原提示細胞に関連する共刺激分子を指す。
【0033】
本明細書で使用されるところの「BCNU」という用語は1,3−ビス(2クロロエチル)−1−ニトロソ尿素としてもまた知られるカルムスチンを指す。
【0034】
本明細書で使用されるところの「BSE」という用語はウシ海綿状脳症を指す。
【0035】
本明細書で使用されるところの「CD」という用語は、抗原エピトープおよび機能によるグループ分けされる分化抗原クラスターすなわちTリンパ球(元は)、Bリンパ球、単球、マクロファージおよび顆粒球を指す。
【0036】
本明細書で使用されるところの「DTIC」という用語は、ダカルバジンすなわち5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドを指す。
【0037】
本明細書で使用されるところの「エクスビボ」もしくは「エクスビボ療法」という用語は、該改変された細胞により生じられる治療上の利益の長期のもしくは一定の送達により改善することができる病理学的状態を治療するのに該改変された細胞を使用することができるような、生物学的材料(典型的には細胞)を患者もしくは適するドナーのような適する代替供給源から得かつ改変する治療を指す。治療(treatment)は患者もしくは代替供給源のいずれかから得られた改変された生物学的材料の患者への再導入を包含する。エクスビボ療法の一利益は、治療からの望ましくない傍系の影響に患者を曝露することなく治療の利益を患者に提供する能力である。例えば、サイトカインはしばしば、患者のCTLの拡張を刺激するために癌もしくはウイルス感染症を伴う患者に投与される。しかしながら、サイトカインは患者において流感様の症状の発症をしばしば引き起こす。エクスビボ手順において、サイトカインは患者の身体の外側でCTLの拡張を刺激するのに使用され、そして患者はサイトカインの曝露および結果としての副作用を容赦される。あるいは、適する状況もしくは条件下で、適切な場合かつ被験体が利益を得ることができる場合、被験体を、低レベルの投薬量のγインターフェロン、αインターフェロンおよび/もしくはIL−2で同時に治療することができる。インターフェロンの期待される効果は、おそらく抗原特異的CTLによる溶解に対し腫瘍細胞を感作することであり、また、IL−2の効果は、おそらく抗原特異的CTLの持続性を高めることである。
【0038】
本明細書で使用されるところの「HEPES」という用語はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’2−エタンスルホン酸緩衝液を指す。
【0039】
本明細書で使用されるところの「HLA−A2.1」という用語は、およそ45%の白色人種で見出されるHLAクラスI分子を指す。
【0040】
本明細書で使用されるところの「MART−1」もしくは「T細胞−1により認識される黒色腫抗原」という用語は黒色腫関連抗原を指す。この抗原のアミノ酸および核酸配列、ならびに多様な特徴は、「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1999年11月30日公布の米国特許第5,994,523号明細書;「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and
Their Use in Diagnostic and Therapeutic
Methods)」と題された1999年2月23日公布の米国特許第5,874,560号明細書;ならびに「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,844,075号明細書に開示される。とりわけ、米国特許第5,994,523号明細書は、それぞれ配列番号1および配列番号2として図1にMART−1の完全長の核酸およびアミノ酸配列を開示する。前述の図1は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書で使用されるところの「MAGE」は黒色腫関連抗原を指す。この抗原のアミノ酸および核酸配列、ならびに多様な特徴は、「それと関連する複数の抗原についてアッセイすることによる乳癌および黒色腫の決定方法(Methods for Determining Breast Cancer and Melanoma by Assaying for a Plurality of Antigens Associated Therewith)」と題された2000年10月31日公布の米国特許第6,140,050号明細書;「MAGE−XP遺伝子のメッセンジャーRNAを検出することによる癌のスクリーニング方法(Method of Screening fo
r Cancer by Detecting Messenger RNA for a MAGE−XP Gene)」と題された1998年6月2日公布の米国特許第5,759,783号明細書;および「合成ペプチドエピトープを使用するヒトにおける抗腫瘍細胞傷害性Tリンパ球の誘導(Induction of Anti−Tumor Cytotoxic T Lymphocytes in Humans Using Synthetic Peptide Epitopes)」と題された1997年9月2日公布の米国特許第5,662,907号明細書に開示される。
【0042】
本明細書で使用されるところの「MPC−10」という用語は磁性粒子濃縮装置を指す。
【0043】
本明細書で使用されるところの「NK細胞」という用語はナチュラルキラー細胞を指す。
【0044】
本明細書で使用されるところの「OKT3」という用語は、オルソクローン(ORTHOCLONE)OKT3、ムロモナブ(muromonab)−CD3、抗CD3モノクローナル抗体を指す。
【0045】
本明細書で使用されるところの「TAP−1,2」という用語は、抗原プロセシング関連輸送タンパク−1,2を指す。
【0046】
本明細書で使用されるところの「Th細胞」という用語はヘルパーT細胞、CD4+を指す。
【0047】
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ」という用語は、黒色腫に関連するタンパク質を指す(Brichardら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495;Robbinsら、Cancer Res.(1994)54:3124−3126)。「P15およびチロシナーゼ黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(P15 and Tyrosinase Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,843,648号明細書は、図7、図AないしDにチロシナーゼに関連する抗原ペプチドおよび関連するポリ核酸を開示し、前述の図は引用することにより本明細書に組み込まれる。「異常細胞上のヒト白血球抗原A2(HLA−A2)分子およびチロシナーゼ由来ペプチドを含有する複合体の検出方法(Method for Detecting Complexes Containing Human Leukocyte Antigen A2 (HLA−A2) Molecules and a Tyrosinase Derived Peptide on Abnormal Cells)」と題された1996年1月30日公布の米国特許第5,487,974号明細書は、実施例9で表3にチロシナーゼおよび黒色腫と関連する付加的なペプチドを開示し、前述は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0048】
本明細書で使用されるところの「gp100」という用語は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)により認識される黒色腫抗原を指す。gp100を認識するTILはインビボの腫瘍拒絶と関連する(Bakkerら、J.Exp.Med.(1994)179:1005−1009;Kawakamiら、J.Immunol.(1995)154:3961−3968)。gp100に関連する抗原ペプチドは、「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their
Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1999年11月30日公布の米国特許第5,994,523号明細
書;「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and
Therapeutic Methods)」と題された1999年2月23日公布の米国特許第5,874,560号明細書;ならびに「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,844,075号明細書に開示される。とりわけ、米国特許第5,994,523号明細書は、図4および5にGP100に関係する核酸およびアミノ酸配列をそれぞれ開示する。配列番号27、33、34、35、36、37、38、39、40および41として同定されるものを包含する該アミノ酸配列由来の抗原ペプチドもまた開示される。前述の図4および5の全部、ならびに配列番号により同定されるペプチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書で使用されるところの「黒色腫」という用語は、限定されるものでないが黒色腫、転移性黒色腫、メラノサイトもしくはメラノサイト関連神経細胞いずれか由来の黒色腫、黒色肉腫、黒色癌腫、黒色上皮腫、黒色腫インシトゥ表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、侵襲型黒色腫もしくは家族性異型黒子・黒色腫(FAM−M)症候群を指す。哺乳動物におけるこうした黒色腫は、染色体異常、変性性の成長および発生障害、有糸分裂促進剤、紫外線放射(UV)、ウイルス感染症、遺伝子の不適切な組織発現、遺伝子の発現の変化、ならびに細胞上での提示もしくは発癌物質により引き起こされるかもしれない。前述の黒色腫は、本出願に記述される方法により診断、評価もしくは治療することができる。
【0050】
本明細書で使用されるところの「C−レクチン」という用語は、卵巣癌に関連することが見出されている配列のペプチドを指す。
【0051】
本明細書で使用されるところの「主要組織適合抗原複合体」もしくは「MHC」という用語は、ヒト白血球抗原(HLA)を包含する多様な種で記述される組織適合抗原系を包含することを意味される包括的呼称である。
【0052】
本明細書で使用されるところの「エピトープ」、「ペプチドエピトープ」、「抗原性ペプチド」および「免疫原性ペプチド」という用語は、哺乳動物において細胞性免疫応答を引き起こすことが可能な抗原由来のペプチドを指す。こうしたペプチドは、該ペプチドで免疫化された動物からの抗体ともまた反応性であるかもしれない。こうしたペプチドは長さが約5ないし20アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし15アミノ酸、および最も好ましくは長さが約9ないし10アミノ酸であってよい。
【0053】
本明細書で使用されるところの「Pec60」という用語は、卵巣および乳癌に関連することが見出されている配列のペプチドを指す。
【0054】
本明細書で使用されるところの「類似物」という用語は、とりわけ1個もしくはそれ以上の残基が機能的に類似の残基で保存的に置換されかつ本明細書に記述されるところの本発明の機能的局面を表す本明細書に示される、本発明の配列に実質的に同一のアミノ酸残基配列を有するいかなるポリペプチドも包含する。保存的置換の例は、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンのような1個の非極性(疎水性)残基の代わりに別のものの置換、アルギニンとリシンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間のような1個の極性(親水性)残基の代わりに別のものの置換、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンのような1個の塩基性残基の代わりに別のものの置換、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸もしくは別のもののような1個の酸性残基の置換を包含する。
【0055】
本明細書で使用されるところの「保存的置換」という用語は、誘導体化されない残基の代わりの化学的に誘導体化された残基の使用もまた包含する。
【0056】
本明細書で使用されるところの「化学的誘導体」という用語は、官能性側基の反応により化学的に誘導体化された1個もしくはそれ以上の残基を有する主題のポリペプチドを指す。こうした誘導体化された分子の例は、例えば、遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基もしくはホルミル基を形成するように誘導体化された分子を包含する。遊離カルボキシル基は、塩、メチルおよびエチルエステルもしくは他の型のエステルまたはヒドラジドを形成するように誘導体化してよい。遊離ヒドロキシル基はO−アシルもしくはO−アルキル誘導体を形成するように誘導体化してよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素はN−イン−ベンジルヒスチジン(im−benzylhistidine)を形成するように誘導体化してよい。20種の標準的アミノ酸の1種もしくはそれ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するタンパク質もしくはペプチドもまた化学的誘導体として包含される。例えば:4−ヒドロキシプロリンをプロリンの代わりに用いてよく;5−ヒドロキシリシンをリシンの代わりに用いてよく;3−メチルヒスチジンをヒスチジンの代わりに用いてよく;ホモセリンをセリンの代わりに用いてよく;そしてオルニチンをリシンの代わりに用いてよい。本発明のタンパク質もしくはポリペプチドは、欠くことのできない活性が維持される限りは、その配列が本発明の対応する核配列にコードされるポリペプチドの配列に関して1個もしくはそれ以上の付加および/もしくは欠失または残基を有するいかなるポリペプチドもまた包含する。
【0057】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu」という用語は、1種もしくはそれ以上の膜会合型の受容体様癌遺伝子タンパク質を発現もしくは過剰発現する癌遺伝子を指す。HER−2/neuの発現もしくは過剰発現に関連することが見出された癌は、ある種の乳房、胃、卵巣、結腸および唾液腺の癌などである。HER−2/neu癌遺伝子はチロシンタンパク質キナーゼファミリーの癌遺伝子の1メンバーであり、そして上皮増殖因子受容体(EGFR)と高程度の相同性を共有する。HER−2/neuは細胞の成長および/もしくは分化で役割を演じることが示されている。HER−2/neuは、本質的に正常な遺伝子産物の増大されたもしくは無秩序な発現から生じる量的機構により悪性病変を誘導するようである。「HER−2/neu癌遺伝子が関連する悪性病変の診断および治療のためのHER−2/neuタンパク質に対する免疫反応性(Immune Reactivity to HER−2/neu Protein for Diagnosis and Treatment of Malignancies in Which the HER−2/neu Oncogene is Associated)」と題された2000年6月13日公布の米国特許第6,075,122号明細書は、第12段第31行ないし第13段第7行で、CD8+ T細胞応答を導き出すペプチド
を開示し、配列番号により同定されるものは引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0058】
HER−2/neu(p185)はHER−2/neu癌遺伝子のタンパク質産物である。乳房、卵巣、結腸、肺および前立腺の癌を包含する多様な癌において、HER−2/neu遺伝子が増幅されそしてHer−2/neuタンパク質が過剰発現される。HER−2/neuは悪性の形質転換と関連する。それは、非浸潤性管癌の50%ないし60%、および全乳癌の20%ないし40%、ならびに卵巣、前立腺、結腸および肺で生じる腺癌のかなりの部分で見出される。HER−2/neuは、悪性の表現型のみならず、しかしまた全部の侵襲性乳癌の1/4で見出される悪性病変の攻撃性とも緊密に関連する。HER−2/neuの過剰発現は、乳房および卵巣双方の癌における乏しい予後と相関する。HER−2/neuは、長さがおよそ1255アミノ酸(aa)である185kdの相
対分子量をもつ膜貫通タンパク質である。それは、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対する40%の相同性をもつおよそ645aaの細胞外結合ドメイン(ECD)、高度に疎水性の膜貫通固定ドメイン(TMD)、およびEGFRに対する80%の相同性をもつおよそ580アミノ酸のカルボキシ末端細胞質ドメイン(CD)を有する。
【0059】
癌遺伝子に関する進行中の研究は、悪性病変細胞中で効果をもたらしかつ形質転換の原因であるかもしくはそれと関連する最低40種の癌遺伝子を同定した。癌遺伝子は、(癌遺伝子により発現されるタンパク質のような)それらの遺伝子産物の推定の機能もしくは位置に基づき、多様な群に分類されている。癌遺伝子は正常細胞の生理学のある局面に不可欠であると考えられる。
【0060】
癌は、治療の領域でなされたかなりの進歩にもかかわらず大きな健康の問題であり続けている。化学療法、放射線治療、外科的介入および三者の組合せという標準的治療レジメンは、永続する治癒を生じさせることにしばしば失敗する。多くの場合、治療を受けた癌患者は、しばしば、いくらかの期間の後に疾患状態に戻り、病状をさらに悪化させることは、患者に対するこれらの治療レジメンの苛烈さである。黒色腫の例において、転移性黒色腫の治癒は慣習的化学療法を使用して達成されていない。35%ないし50%の奏効率が、併用化学療法のダートマスレジメン(DTIC、シスプラチン、BCNUおよびタモキシフェン)で報告されているが、しかし、生存期間は6ないし10ヶ月に留まっている。高率の再発が、攻撃的な「高用量強度」化学療法、ならびに自己骨髄移植を伴う造血の多血症について報告されている。にもかかわらず、生存期間の中央値は短かった(およそ4ヶ月)。
【0061】
Rosenbergらは、多様な癌の治療として活性化されたリンパ球の注入を使用することを試みた。当初、リンホカイン活性化型キラー細胞(LAK)、および後にIL−2でエクスビボ活性化された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用したが、しかし、有効性の証拠は不確かである。事実、対照臨床試験は、患者へのIL−2の直接投与を上回るエクスビボ活性化された細胞の使用に対する利点を示すことに失敗した。従って、LAKおよびTIL療法の利益は重要でなく、かつ、副作用は、典型的には、多くの試験が早期に中断されたほどひどい。
【0062】
マウス腫瘍モデルにおける研究は、養子免疫療法すなわち腫瘍抗原(1種もしくは複数)に特異的なT細胞のインビボ免疫感作が最小限の毒性を伴い非常に有効であることを立証した。ヒト腫瘍の治療にこの戦略を適用するための大きな障害は、腫瘍細胞を細胞傷害性Tリンパ球(CTL)媒介性の破壊に対し感受性にする免疫原性抗原の同定である。黒色腫患者からの腫瘍反応性T細胞の単離は、CTLが向けられる腫瘍抗原(エピトープ)のいくつかの同定に至った。これらは、チロシナーゼ(Brichardら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495;Robbinsら,Cancer Res.(1994)54:3124−3126)、MART 1/Melan A(Kawakamiら、J.Exp.Med.(1994)180:347−352)、gp 100(Bakkerら、J.Exp.Med.(1994)179:1005−1009;およびKawakamiら、J.Immunol.(1995)154:3961−3968)、ならびにMAGE(Gauglerら、J.Exp.Med.(1994)179:921−930)を包含する。これらのうち、チロシナーゼおよびMART−1は黒色腫でほぼ普遍的に発現され、そして従って養子免疫療法についての論理的選択である。
【0063】
近年、およそ数年の生存の大きな改善が、免疫学的療法を受けている小さな割合の黒色腫患者で示されている。これは、「癌ワクチン」での能動的特異的免疫療法、ならびにIL−2、α−インターフェロンおよびγ−インターフェロンのようなサイトカインのよう
な免疫系の非特異的推進物質(booster)の使用を包含する。しかしながら、サイトカインの利益は、悪心および発熱のようなそれらの使用にしばしば付随する副作用により小さくされる。
【0064】
細胞溶解性T細胞(CD8+)はウイルス感染症に対する主要防御線である。CD8+リンパ球はウイルスにより感染した宿主細胞を特異的に認識しかつ殺す。理論的には、癌を包含する他の型の疾患と闘うのに免疫系を利用することが可能であるはずである。しかしながら、わずかなインビトロ/エクスビボ手順が、CTLを特異的に活性化するのに利用可能である。上に示された重要な黒色腫抗原の同定、および下述されるCTLの特異的インビトロ活性化方法は、今や、転移性黒色腫の養子免疫療法の概念の試験を可能にする。
【0065】
全てのナイーブなT細胞は、免疫応答を導き出すための活性化に2種のシグナルを必要とする。CD8+リンパ球(CTL)について、特異性を分け与える第一のシグナルは、
抗原提示細胞(APC)の表面上に存在するクラスI MHC(HLA)複合体に結合された抗原の免疫原性ペプチドフラグメント(エピトープ)のCD8+細胞への提示よりな
る。この複合体は、シグナルを細胞内で伝えるT細胞抗原受容体(TCR)により特異的に認識される。
【0066】
T細胞受容体への結合はT細胞の活性化を誘導するのに必要であるがしかし十分でなく、そして通常、細胞増殖もしくはサイトカイン分泌に至ることができない。完全な活性化は第二の共刺激シグナル(1種もしくは複数)を必要とし、これらのシグナルは活性化カスケードをさらに高めるようはたらく。抗原提示細胞上の共刺激分子のなかで、B7およびICAM−1のような細胞接着分子(インテグリン)が、T細胞上のそれぞれCD28およびLFA−1に結合することによりこの過程で補助する。CD8+細胞が、適切な共
刺激分子の相互作用の存在下でクラスI MHC分子により結合された免疫原性ペプチド(エピトープ)を担持する抗原提示細胞と相互作用する場合に、CD8+細胞は完全に活
性化された細胞溶解性T細胞となる。
【0067】
リンパ球に媒介される細胞殺傷は、T細胞活性化について上述された認識過程によって抗原を担持する標的(腫瘍)細胞へのCD8+ CTLの結合で開始する、一連の生物学
的事象を必要とする。
【0068】
上述されたところの、CD8+細胞と抗原提示細胞もしくは標的(腫瘍)細胞との間の
相互作用を図1に描く。該相互作用は、T細胞抗原受容体(TCR)への、APCもしくは標的細胞上のMHCクラスI分子と共同しての抗原の結合で開始する。リンパ球機能抗原(LFA−1、LFA−2およびLFA−3)、細胞間接着分子1(ICAM−1)、T細胞共刺激因子(CD2、CD28、B7)のような補助分子が、細胞−細胞接着を高めるか、もしくは付加的な細胞活性化シグナルを伝達する。
【0069】
細胞−細胞相互作用の後に、CTLは可溶性細胞溶解メディエーター(T細胞の細胞質顆粒中に貯蔵されるパーフォリンおよびグランザイム)ならびにCTL表面分子(Fasリガンド)の作用により標的細胞を殺す。細胞溶解性の攻撃後に、標的細胞は、壊死(膜の穿孔およびオルガネラ破壊)もしくはアポトーシス(クロマチン凝縮、DNA断片化および膜泡形成)により死ぬ。
【0070】
リンパ球に媒介される細胞溶解の機構を図2にグラフィカルに示す。図2の図Aにおいて、標的細胞に結合した後に、CTL中の細胞質顆粒が、細胞間空隙中へのパーフォリンおよびグランザイムを含有する顆粒の放出のため、標的細胞に迅速に向け直される。これらのタンパク質分解酵素が標的細胞の原形質膜に孔を形成し、ついには細胞壊死に至る。図Bにおいて、標的細胞に結合した後に、CTL上のFasリガンド発現のレベルが増大
する。Fasリガンドと、標的細胞上のFas受容体の相互作用がアポトーシスにつながる。CPP32のようなプロテアーゼ、およびIL−1b変換酵素(ICE)に関連する他者がアポトーシスの誘導に関係している。インビトロCD8+活性化に、天然に存在す
る抗原提示細胞、例えば樹状細胞、マクロファージ、自己腫瘍細胞を使用することが可能である。しかしながら、このアプローチ後の活性化の効率は低い。これは、天然のAPCのクラスI分子が、腫瘍エピトープ以外に多くの他の型のペプチドエピトープを含有するためである。ペプチドの大部分は正常の無害の細胞タンパク質由来であり、腫瘍に対して実際に有効であるとみられる活性の天然のAPCの数の希釈(dilution)をもたらす(Allisonら,Curr.Op.Immunol.(1995)7:682−686)。
【0071】
この問題に対するより直接的かつ効率的な一アプローチは、(癌のような)特定の疾患と闘うことに関連したそれらのエピトープもしくは(黒色腫特異的抗原のような)腫瘍特異的抗原のみでCD8+細胞を特異的に活性化することである。この目的のため、人工産
物の抗原提示細胞を、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)細胞中でMHC クラスI分子を発現させることにより創製する。ショウジョウバエ(Drosophila)は免疫系を有しないため、クラスI分子上にペプチドエピトープを添加することに関与するTAP−1,2ペプチド輸送タンパクが存在しない。結果として、クラスI分子は、空容器(empty vessel)としてショウジョウバエ(Drosophila)細胞表面上に出現する。これらのトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を、限定されるものでないが黒色腫特異的エピトープを挙げることができる癌もしくは腫瘍特異的エピトープのようなクラスI分子に結合する外因性ペプチドとともにインキュベートすることにより、すべてのクラスI分子を同一のペプチドで占有することが可能である。これらのショウジョウバエ(Drosophila)APC中に単一ペプチドを含有するクラスI分子の高密度発現は、抗原ペプチドに完全に特異的である細胞傷害性CD8+ T細胞のイ
ンビトロでの生成を可能にする。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞を調製するための方法および手順は、「ヒトクラスI MHCおよびβ2−ミクログロブリンを発現する昆虫細胞を使用する細胞傷害性T細胞のインビトロ活性化(In Vitro Activation of Cytotoxic T−Cells Using Insect Cells Expressing Human Class I MHC and β2−Microglobulin)」と題された1996年6月25日公布の米国特許第5,529,921号明細書、ならびに「MHC クラスI抗原およびβ2−ミクログロブリンをコードする遺伝子を発現しかつ空複合体を集成することが可能なショウジョウバエ細胞系、ならびに前記細胞系の作成方法(Drosophila Cell
Lines Expressing Genes Encoding MHC Class I Antigens And β2−Microglobulin and Capable of Assembling Empty Complexes and
Methods of Making Said Cell Lines)」と題された1994年5月24日公布の米国特許第5,314,813号明細書に教示される。とりわけ、米国特許第5,529,921号明細書は、第26段第56行ないし第28段第22行で、前駆細胞の培養物の多様な分離および/もしくは濃縮方法を開示する。
【0072】
加えて、この特徴は、高用量の多様なサイトカインでの免疫系のインビボ刺激に対する必要性を除外する。それによりサイトカインにより引き起こされる副作用をなしで済ませる治療をもたらす。あるいは、適する状況もしくは条件下で、適切な場合かつ被験体が利益を得ることができる場合、被験体を、低レベルの投薬量のα−インターフェロン、γ−インターフェロンおよび/もしくはIL−2で同時に治療することができる。
【0073】
サイトカインでのインビボ刺激に対する必要性を除外することは、患者の治療の質の向
上を提供する。患者へのサイトカインの投与を包含する治療レジメンは、しばしば、悪心、嘔吐および発熱のような流感様の症状を発症する患者をもたらす。これらの副反応は一般に生命を脅かさないが、とは言え既に弱らされた状態にある患者で起こるとりわけ重症の反応は、生命を危うくする状況をもたらす可能性がある。別の考慮は、それ以外は有益な治療レジメンの患者の受容性およびコンプライアンスに対してこうした副反応が有する有害な影響である。サイトカインでのインビボ刺激に対する必要性を除去することは、患者の快適さを向上させる治療レジメンをもたらし、また、彼もしくは彼女の患者が従うことがよりありそうである有効な治療方法を臨床家に提供する。
【0074】
腫瘍の養子免疫療法のための本方法の有用性は、APCとしてトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞、およびT細胞受容体(TCR)トランスジェニックマウスの2C系統からのCD8+細胞を使用してマウスで立証されている。
この系において、精製されたCD8+ 2C細胞は、共刺激分子B7−1およびICAM
−1もまた担持するMHCクラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ
(Drosophila)細胞により提示されるインビトロペプチドに高度に反応性である。プライミングされないCD8+ T細胞についての最小要件を規定するためのプローブとしてのトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞(Caiら、P.N.A.S.USA(1996)93:14736−14741)。あるいは、分離されないマウス脾細胞を精製された2C細胞の代わりに応答体(responder)として使用する場合は、共刺激分子に対する必要性は当てはまらない。この例において、脾集団中のCD8+細胞は活性化されたB細胞から「傍観者(bystander
)」共刺激を受領する。この知見を利用して、MHCクラスI(Ld)のトランスフェク
トされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞が、添加されたリンホカインの非存在下でインビトロで同系のP815肥満細胞腫の腫瘍特異的ペプチドに応答するように正常DBA/2マウス脾細胞を誘導することが可能であることを示すことが可能であった。P815肥満細胞腫を担持するDBA/2マウスへのこれらのCTLの注入は迅速な腫瘍退縮に至った(Sunら、Immunity(1996)4:555−564)。
【0075】
手順的には、正常DBA/2マウス脾細胞を、DBA/2由来P815肥満細胞腫細胞系からの腫瘍特異的エピトープP1A.35−43ペプチドで添加された、MHCクラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞と
ともにインビトロで培養した。5日後に培養物から収集されたリンパ球は、インビトロでP815腫瘍細胞に対する強い細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を表したが、しかし、図3、図Aに示されるとおり、P1A.35−43を発現しないP815の突然変異体細胞系P1024を溶解することに失敗した。これらのCTLを、3日前にP815細胞を以前に接種されたDBA/2マウスに注入した場合、腫瘍は第一週の間に妨害を受けずに成長したが、しかし、その後、図3、図Bに示されるとおり、次の週の間に排除された。図3、図Bに示されるとおり、CTLをウイルス核タンパク質ペプチドのような無関係の抗原に対してインビトロで免疫化した場合、特異性は、P815の成長に対するいずれかの影響の非存在により立証された。要約すれば、主要組織適合抗原複合体クラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞は、添加されたリンホカインの非存在下で、同系のP815肥満細胞腫の腫瘍特異的ペプチドにインビトロで応答するように正常DBA/2マウス脾細胞を誘導した。P815肥満細胞腫を担持するDBA/2マウスへのこれらのCTLの注入は迅速な腫瘍の退縮に至った(Wolfelら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495)。
【0076】
インビトロのヒト研究
健康被験体からのヒトCTLをチロシナーゼに対してインビトロで免疫化した。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞のみでの一次刺激後に、チロシナーゼを担持するJY細胞の特異的溶解が、試験された全部のCTLエフェクター対JY標的の比で明ら
かであった。健康被験体からのチロシナーゼ特異的CTLを、完全な刺激/再刺激プロトコルを使用して誘導し、そしてMalme 3M黒色腫細胞系を殺すそれらの能力について試験した。1もしくは2の可能な例外を伴い、Malme 3Mに対する特異的CTL活性が、全ドナーにおいて変動する程度まで誘導された。大部分については、対照のMalme 3腫瘍細胞に対する反応性は最小限であった。黒色腫患者からの細胞もまた、健康志願者由来のものに類似の活性および特異性のCTLを生成させるために、チロシナーゼエピトープに対してインビトロで免疫化した。
【0077】
インビトロで細胞傷害性Tリンパ球を生成させるためのいかなる天然のもしくは人工産物の抗原提示細胞(APC)系の使用も、これらの系が生成することが可能である抗原特異性により制限される。
【0078】
以下のAPC系を利用して、単一エピトープに対する抗原特異的CTLを生成させた。すなわち、1)規定されたペプチドを適用された(pulsed)ヒト樹状細胞(DC);2)リンパ芽球から得られかつペプチドを適用された末梢血単核細胞(PBMC);3)天然のペプチドが酸ストリッピングされ(acid−stripped)かつ目的のペプチドが添加されたリンパ芽球様細胞系(LCL);4)空のクラスI分子を発現するよう工作されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞;ならびにヒトクラスIおよび共刺激分子でトランスフェクトされたマウス3T3細胞(J.B.LatoucheとM.Sadelain,Nature Biotech(2000)18:405−409)。
【0079】
樹状細胞(DC)は、一次抗原細胞の提示におけるそれらの広範な応用のために、ヒトにおける一次抗原提示細胞系とみなされる。自己もしくは外来タンパク質はDC内でプロセシングされる。結果として生じるペプチドエピトープがHLA分子により提示され、そしてDCの表面に輸送される。しかしながら、DCがインビトロで一貫して生成されることができず、CTLが4種の異なるペプチドに対し方向を定めたことが見出された。これは、4種のペプチドのそれぞれに対応する活性を有するCTLを提供したとみられる。加えて、ペプチドの適用の時点でのDCの表現型(成熟もしくは未熟)は結果に影響しないこともまた見出された。
【0080】
あるいは、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞の刺激は、通常、10までの異なる型のペプチドに対し向けられるCTLをもたらした。これは、10種のペプチドのそれぞれに対し活性であるCTLを提供する。
【0081】
CTL応答を導き出すショウジョウバエ(Drosophila)細胞およびDCの能力を、最初に、単一ペプチドエピトープに対しそれぞれの標準的刺激プロトコルに従って評価した。DCおよびトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を比較するために。未熟DCを、IL−4およびGM−CSFの存在下で自己単球を1週間培養することにより生成させた。成熟DCは、回収の24時間前の培地へのTNFαの添加により、未熟DCから得た。DC(未熟および成熟)を回収し、ペプチドを適用し、そしてCD8細胞およびペプチドを適用されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞の刺激に使用された手順に従って、精製されたCD8細胞と混合した。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞は、図7に示されるとおり、チロシナーゼペプチドエピトープ689について評価される場合に、DCよりも一般により良好な刺激物質であることが見出された。さらに、未熟もしくは成熟いずれの表現型を表すDC(図8)も、規定されたペプチドを使用してAPCに適用した場合に、特異的CTL応答の導出においてショウジョウバエ(Drosophila)細胞ほど効率的でなかった。これは、免疫系中でDCにより演じられる支配的役割のため、とりわけ驚くべきことである。1ドナーでの比較試験を図9に示されるとおり実施した。特異的殺傷が、刺激物質としてハ
エ細胞を使用する場合に4種の異なるペプチドに対して生成された一方、未熟DCは無意味の特異的殺傷をもたらし、また、成熟DCは刺激に使用された4種のペプチドの1種のみに対する特異的殺傷をもたらした。
【0082】
細胞傷害性リンパ球の調製
抗CD8抗体での陽性選択により白血球成分分取(leukapheresis)サンプルから単離されたCD8+細胞を、ヒトクラスI分子(HLA−A2.1)、B7.1
、ICAM−1、LFA−3およびB7.2を発現するショウジョウバエ(Drosophila)細胞により提示される4種の異なる黒色腫関連ペプチドに対して刺激する。CD8+細胞を、IL−2およびIL−7の存在下にペプチドエピトープを添加された自己
単球で2回再刺激する。CTLをOKT3およびIL−2とともに非特異的に拡張する。CTL活性をMalme 3M細胞に対して測定し、また、CD8+ T細胞の純度をフ
ローサイトメトリーにより評価する。
【0083】
製造過程およびプロトコルは、優良実験室規範(Good Laboratory Practice)および優良製造規範(Good Manufacturing Practice)に従って行う。「優良実験室規範」および「優良製造規範」は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)により設定されている実験室および製造の実務の基準であり、かつ、当業者に容易に知られる。CTLは、正体(identity)、生存率、CTL活性、無菌性およびエンドトキシン含量についてモニターする。
【0084】
乳房および卵巣癌を治療するための本発明の方法における使用に適するペプチドエピトープの一覧を以下の表1に示す。以下の表1に列挙されるものに加えて広範なペプチドエピトープもまた、乳房および卵巣癌を治療するための本発明の方法での使用に適することができるが、但しこうしたペプチドはT細胞エピトープであることが、当業者に容易に明らかである。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
以下の実施例は本発明を具体的に説明する目的上提供されるが、しかし、本発明を該実施例の内容に制限しない。
【実施例】
【0088】
実施例1
ショウジョウバエ(Drosophila)抗原提示細胞の製造
シュナイダー(Schneider)S2細胞系を、発表された手順に従ってキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(オレゴン(Oregon)−R)卵から調製し、そしてアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)に寄託した(CRL 10974)。S2細胞は、10%ウシ胎児血清を補充された商業的シュナイダー(Schneider)ドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させる。
【0089】
S2細胞中でMHCクラスIおよび共刺激タンパク質を発現させるためのpRmHa−3プラスミドは、文献に記述されるとおり構築されたpRmHa−1発現ベクター由来であった。それは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を含有する。
【0090】
トランスフェクションのための相補DNAを以下のとおり調製した:
HLA−A2.1およびβ−2ミクログロブリン:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCR
B7.1:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCRICAM−1:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCR
B7.2:発表された配列由来のプライマーを使用するHL−60細胞(ATCC CCL−240)からの逆転写PCR
LFA−3:発表された配列由来のプライマーを使用するHL−60細胞(ATCC CCL−240)からの逆転写PCR
【0091】
相補DNAは個別にpRmHa−3ベクターに挿入した。S2細胞を、リン酸カルシウム沈殿法を使用して、HLA−A2.1、B7.1およびICAM−1プラスミドDNA、ならびにphshneoプラスミドの混合物でトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされた細胞を、ジェネチシンを含有するシュナイダー(Schneider)培地中で培養することにより選択した。使用24時間前に、トランスフェクトされた遺伝子の発現をCuSO4の添加により誘導した。発現のレベルは、抗HLA−A2.1、抗B
7.1および抗ICAM−1抗体を使用するフローサイトメトリーにより評価した。30%以上の細胞によるHLA発現が、CD8+リンパ球の効率的なインビトロ活性化に必要
である。
【0092】
ヒトCD8+細胞の単離
CD8+細胞は、ダイナビーズ[Dynabeads]TM単離手順(ダイナル(Dyn
al))を使用する陽性選択により白血球成分分取サンプルから単離する。抗ヒトCD8マウスモノクローナル抗体(ヒトγグロブリン[ガンマガード(Gammagard)(R)]1ml中50μg)を、1%ヒト血清アルブミン(バクスター−ハイランド(Bax
ter−Hyland))および0.2%クエン酸ナトリウムを補充されたダルベッコのPBS中の洗浄された細胞に添加する。穏やかな混合を伴う4℃で45分のインキュベーション後に、ヒツジ抗マウスIgGで被覆されたダイナル(Dynal)磁性ビーズ(ダイナビーズ[Dynabeads]TM)を含有する同一緩衝液中で、1:1のビーズ対細胞の比で洗浄かつ再懸濁する。細胞およびビーズを滅菌管に入れ、そして4℃で45分間穏やかに混合する。この時間の終了時に、抗体結合された細胞を、製造元の説明書(ダイナル(Dynal))に従ってMPC−1(R)分離装置を使用して磁気的に除去する。C
D8細胞−ビーズ複合体の解離を、CD8ペプチド59-70(AAEGLDTQRFSG;
配列番号12)の存在下37℃で45分間のインキュベーションにより達成する。遊離ビーズを磁気的に除去し、そしてCD8細胞を計数しかつフローサイトメトリーにより分析して純度を評価する。CD8+細胞の回収は典型的に80%より大きい。表1は、抗CD
8抗体での陽性選択による正常ヒトPBMC調製物からの14の別個のCD8+調製物の
細胞組成を要約する。
【0093】
【表4】
【0094】
精製されたヒトCD8+細胞のインビトロ免疫感作
一次刺激
トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞を、10%ウシ胎児血清およびCuSO4を補充されたシュナイダー(Schneider)培地
(106個の細胞/ml)中、27℃で24時間インキュベートする。細胞を回収し、洗
浄し、そして100μg/mlのヒトチロシナーゼ366-377を含有する昆虫X−プレス培
地(Insect X−press medium)(バイオウイタッカー(BioWhittaker))に再懸濁する。27℃で3時間のインキュベーション後に、S2細胞を、10%自己血清を補充されたRPMI培地(ギブコ(Gibco))中1:10の比でCD8+細胞と混合する。細胞混合物を37℃で4日間インキュベートし、その間にシ
ョウジョウバエ(Drosophila)細胞が死に絶える。第5日に、IL−2(20U/ml)およびIL−7(30U/ml)を添加して、チロシナーゼ特異的CTL集団を選択的に拡張する。
【0095】
再刺激
白血球成分分取の時点で得られた凍結自己CD8枯渇PBMCを融解し、洗浄し、そして10%自己血清(β2ミクログロブリンの供給源として)および20μg/mlのチロシナーゼ369-377を含有するRPMI培地中106個の細胞/mlで再懸濁する。γ線照射(5,000ラド)後に細胞を37℃で2時間インキュベートする。ダルベッコのPBSで洗浄することにより非接着細胞を除去する。10%自己血清および10μg/mlのチロシナーゼ369-377を含有するHepes緩衝RPMI培地中での90分間のインキュベ
ーションにより、接着性単球にチロシナーゼエピトープを添加する。上清を除去し、そしてショウジョウバエ(Drosophila)活性化されたCD8+細胞懸濁物(10%
自己血清を含むRPMI培地中3×106個の細胞/ml)を、1の接着性単球に対し1
0のCD8+細胞の比で添加する。37℃で3ないし4日の培養後に、IL−2(20U
/ml)およびIL−7(30U/ml)を、培地交換を伴い添加して、チロシナーゼ特異的CTL集団を選択的に拡張する。
【0096】
非特異的拡張
エフェクター細胞を、自己血清、抗CD3モノクローナル抗体(OKT(R)3)、IL
−2およびγ線照射された自己PBMCを補充されたRPMI培地中でそれらを培養することにより、非特異的に拡張する。
【0097】
活性および純度のアッセイ
CTLアッセイ
Malme 3M細胞を51Cr放出アッセイでの標的細胞として使用する。4%ウシ胎
児血清、1%HEPES緩衝液および0.25%ゲンタマイシンを含有するRPMI培地中の5×106個のMalme 3M細胞を、0.1mCiの51Crで37℃で1時間標
識する。細胞を4回洗浄し、かつ、10%ウシ胎児血清(ハイクローン(HyClone))を含むRPMI中105個の細胞/mlに希釈する。96穴マイクロタイタープレー
ト中で、100μlのエフェクターCTLおよび100μlのペプチド添加された51Cr標識Malme 3M標的細胞を、100:1、20:1および4:1(エフェクター:標的)の比で組合せる。K562細胞を20:1(K562:Malme 3M)の比で添加して、ナチュラルキラー細胞のバックグラウンド溶解を低下させる。非特異的溶解は非腫瘍性HLA−A2.1線維芽細胞系Malme 3を使用して評価する。51Crの自発的放出および最大放出を測定するための対照を二重で(in duplicate)包含する。37℃で6時間のインキュベーション後に、プレートを遠心分離し、そして上清を計数して51Cr放出を測定する。
【0098】
特異的溶解のパーセントは、以下の等式:
【0099】
【数1】
【0100】
を使用して計算する。
フローサイトメトリー。
【0101】
インビトロ活性化の前および後のCD8+細胞を、蛍光モノクローナル抗体およびFA
CS分析を使用して、細胞表面マーカーの数について分析した。健康なドナーからの細胞を使用する典型的な活性プロトコルからの結果を表2に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
活性および純度に加えて、CTL調製物を、無菌性およびエンドトキシン含量についてアッセイすることができる。
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
実施例2
黒色腫に対する細胞傷害性T細胞注入の試験
試験の目的
本実施例は、以下の因子:
1.インビトロ免疫感作後の再注入された自己CTLの安全性および忍容性;
2.制限希釈分析での全身循環の要因考慮(factoring)における注入されたCTLの動力学;
3.ラジオシントグラフィーによるCTLの全身の配置;
4.免疫組織学による生検された結節の細胞組成(CTL、TH、NK、B細胞);なら
びに
5.2ヶ月にわたる測定可能な傷害の退縮および応答の持続期間
に従って評価されるところの黒色腫の治療における細胞傷害性T細胞注入の有効性を教示する。
【0107】
患者集団
治療への適格性は、患者が測定可能もしくは評価可能であった組織学的に報告された切除不可能な悪性黒色腫およびHLA−A2表現型を有することを必要とした。治療前評価は、MRIもしくはCTスキャンによる脳の放射線学的評価、胸部および腹部のCT走査、ならびに、とりわけ皮膚およびリンパ節の身体検査を包含した。治療された患者の総数は15(9例の男性および6例の女性)であった。年齢は、58歳の平均を伴う33から75歳までの範囲にわたった。転移性疾患の平均持続期間は1.5年であった。アネルギーの状態が存在したかどうかを決定するための治療前皮膚試験を15例中14例の患者で実施し、14例中5例は評価された普遍的抗原の全7種について陰性と判定された。患者は、HLA−A2特異的モノクローナル抗体(BB7.2)を用いるFACS分析によりHLA−A2ハプロタイプについてスクリーニングした。サブタイプ分類(subtyping)はPCR分析により実施した。患者の1例を除く全部がHLA−A*0201で
あり、例外(患者08)はHLA−A*0205であった。
【0108】
エクスビボで生成された自己CTLでの治療
15例の患者を本臨床プロトコル下に治療した。全患者は、自己CTLの少なくとも単回注入を受領した。各患者に投与された周期の数および細胞の用量は表1に要約する。インビトロで生成された細胞の数は、アフェレーシス(aphaeresis)処置から単離されたPBMCの数、および各PBMC調製物中に存在するCD8+ T細胞の数のよ
うな患者関連の因子に依存した。インビトロで生成された細胞の全部をドナーに再注入したため、各患者に投与された用量は必然的に変動した。患者間の用量を正規化する試みにおいて、計算された「効力」得点を各用量について記録した。該値は、細胞の総数にペプチド添加された標的細胞で得られた溶解活性を掛けることにより得た。注入されたT細胞の用量は、4×107個の最小(患者08)から3.2×109個の最大(患者13)までの範囲にわたった。患者は各周期の終了時の彼らの臨床状態に基づいて第二、第三もしくは第四の治療周期に進入した。アフェレーシスサンプルから得られたPBMCの数は、とりわけその後の周期の開始が以前のものの終了に近かった場合に、付加的周期を受けている患者でより低い傾向があった。これは、前の周期の間に投与されたIFNα−2bによる持続性のリンパ球減少に帰される。単離されたナイーブなCD8+ T細胞の総数はP
BMC調製物のそれぞれ中のその割合に依存した。CD8+ T細胞のパーセントは患者
間で8%ないし31%の間で変動した。得られた拡張係数は最終的な細胞数にもまた寄与し、そして0.1から6.0倍の範囲にわたった。エクスビボでCTLを生成させるための手順は本明細および上の実施例1に教示される。
【0109】
IFNα−2bに対する応答におけるクラスIおよび黒色腫関連抗原のアップレギュレーション
インビボで黒色細胞腫を溶解する抗原特異的CTLの能力を高める試みにおいて、低用量のIFNα−2bを、CTL注入前連続5日間、および追加の4週間に週3回投与した。サイトカインに対するインビボ応答の一測定方法は、連続的時間点で得られる生検を特異的抗体での陽性染色についての免疫組織化学的分析により評価することである。連続的生検を、クラスIおよび抗原発現の双方の評価のため、複数の皮膚傷害を伴う1例の患者(患者04)で得た。生検は、クラスIおよびMART−1発現がいずれの治療前も弱く陽性であったことを示した(生検A)。10MU/m2の皮下注入の5日後に、これら2
種のマーカーの劇的な増大が示された(生検B)。チロシナーゼおよびgp100について、免疫組織化学的染色は治療前サンプルでそれぞれ陰性ないし弱く陽性であった(生検
A)。最初の5日のIFNα投与および13回の追加治療後に、これらの後者の抗原の発現が、染色された組織サンプル中で増大した(生検C)。
【0110】
エクスビボで生成されたCTLの抗原特異性
全患者からの生成されたCTLを、生検材料が系統を樹立するために利用可能であった場合、ペプチド添加されたT2標的、HLA−A2黒色腫細胞系(Malme3M)および自己黒色腫系統に対して、遊離日に評価した。細胞の各調製された用量をその細胞溶解活性について評価した。各ペプチド単独で、もしくは全4種のペプチドを同時にのいずれかを提示するペプチド添加されたT2細胞を使用して、各患者について生成されるCTL応答の特異性を決定した。内因性に発現された黒色腫関連抗原を担持する細胞を溶解する能力を、HLA−A2を合致された系統もしくは自己腫瘍系統で評価した。細胞溶解活性に加え、抗原特異性を、特異的ペプチド刺激に応答して作成される細胞内γインターフェロン産生の確立された検出方法で評価した。エクスビボプロトコルの終了時に生成されたCTLをこの方法により評価した。ペプチドのそれぞれに特異的な細胞の割合を個別に記録した。患者13からの各大量の(bulk)CD8培養物中の特異的細胞の数を、T細胞のその集団中で検出されるペプチド特異性のそれぞれを加えることにより計算した。特異的細胞の総数の増加を、各連続する治療周期で検出することができた。
【0111】
CTL治療後の腫瘍生検に浸潤するCD8およびCD4細胞の検出
治療の前、間および後の全患者からの生検サンプルが理想的であったと思われる。しかしながら、実験条件は制限された数の患者のみからの生検サンプルを見込んだ。腫瘍組織は試験に参入した15例の患者の5例から得た。2例の患者(患者08および13)において、生検サンプルは、T細胞療法後それぞれ5および6週で入手可能であった。組織サンプルの検査は、浸潤するCD8およびCD4双方の細胞の存在を示した。腫瘍サンプルの1つは、追跡検査の時点(T細胞の第二の注入後4週間)までに大きさが増大した、頭皮の後頭部領域の皮膚傷害から採取した。該生検は、リンパ球でひどく浸潤された組織の壊死を示した。他の生検は股関節置換手術の間に取り出された大腿骨頭部からであった。患者08からの皮膚傷害は一般的クラスIおよび特異的HLA−A2マーカー双方について強く陽性(4+)であった。チロシナーゼおよびgp100は弱く陽性(それぞれ1+および2+)であった一方、MART−1はこの同一のサンプルで陰性であった。患者13からの生検の領域もまた、より不均質な染色;HLA−A2.1分子の発現を欠く腫瘍細胞の明確な集団、およびMAAの1種もしくはそれ以上を伴い壊死性であった。しかしながら、無傷の組織領域は強いクラスI(4+)および黒色腫関連抗原の全部を示した。この後者のサンプルにおけるリンパ球浸潤は、腫瘍結節に深く浸潤するよりはむしろそれらを取り巻くようであった。しかしながら、腫瘍に直接関連した最高の割合の細胞はCD8細胞であった。これらの患者の双方からの治療前生検サンプルの欠如は、治療前の組織サンプル中の類似の型の浸潤する細胞の確認を予防した。
【0112】
T細胞療法後のCTスキャンは客観的応答を確認する
CTスキャンは治療前スクリーニング基準および治療後追跡検査の一部であった。患者10は治療前スキャン(99年6月23日)の5週間後に8×108個のCTLの単回注
入を受領した(99年7月27日)。注入1ヶ月後に胸部のCTスキャンを反復した場合(99年8月27日)に、肺傷害の大きさの劇的な減少が示された。同様に、患者14は、6.6×108個の細胞での第一の注入(99年10月5日)の3.5週間前に参入過
程の一部として胸部CTスキャンを受けた(99年9月10日)。11.5×108個の
細胞での第二の注入1ヶ月後の追跡CTスキャン(99年1月7日)は3個の別個の傷害の劇的な縮化を示した。患者13は前および後CTスキャンで測定されたような客観的応答もまた有した。傍気管腺症は周期I後に7.8cm2(試験前)から4.4cm2となり、そして周期II後に消失した。
【0113】
アネルギー状態の存在はCTLを生成させるもしくは臨床応答を予防する能力を排除しなかった
本プロトコル下で治療された患者の大部分は以前の医学的介入を受領していた。治療前皮膚試験を実施して、一団の7種の普遍的抗原に対するアネルギー応答が、エクスビボでCTLを生成させるかもしくは報告された臨床応答を予防するかのいずれかの不能と相関するかどうかを決定した。エクスビボでCTLを生成させる能力は、患者の治療前皮膚試験の結果と相関しなかった。患者03および04(双方とも混合型応答体(mixed responder))は、第二の周期の開始前に反復皮膚試験を受け、そしてアネルギーのままであったことは注目されるべきであろう。
【0114】
実施例3
乳房および卵巣腫瘍細胞を溶解することが可能なHER−2/neu特異的CTLの生成
われわれは、全部の形態の癌にこのアプローチを用いて標的を定めることができるかどうかを決定するために、他の腫瘍型にわれわれのCTL生成技術を適用することに興味をもった。HER−2/neuは、多くのヒトの癌、主として乳房、卵巣および結腸の腺癌において増幅かつ過剰発現されるEGFRに対する相同性をもつ癌原遺伝子である。それはしばしば攻撃的疾患と関連し、そして乏しい予後の指標である可能性がある。それはこれらの型の癌の可能な標的としていくつかの臨床試験で研究されている。
【0115】
1990年代早期に、HER−2/neu HLA−A2.1拘束性ペプチドエピトープが、コンピュータ補助ペプチド結合アルゴリズム、もしくは卵巣癌患者の腹水から単離されたCTLをマッピングすることのいずれかにより同定された(表3)。
【0116】
【表8】
【0117】
ペプチドの全部を合成し、同定番号(PRI#)を与え、そして、黒色腫関連のT細胞ペプチドエピトープについてわれわれが使用した同一の方法を利用してエクスビボでCTLを生成させる能力について評価した。CD8細胞を正常ドナーから単離して、既知のCTLペプチドエピトープを添加されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を用いてエクスビボでCTLを慣例に生成させる能力を決定した。ペプチド826、835、861および863はCTL生成の最高の頻度を有した(表4)。
【0118】
【表9】
【0119】
トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞は10種までの異なるペプチドエピトープを提示する独特の能力を有する(図10)一方、われわれは、これらのペプチドに対するCTLをエクスビボで生成することの頻度により4種のHER−2/neuペプチド、826、835、861および863を選択した。これら4種の異なるHER−2ペプチドは、トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞の表面上に提示されたHLA−A2.1分子への弱いないし中程度の結合体(binder)を表す。われわれは、黒色腫関連ペプチドでのわれわれの経験が、弱いクラスI結合体が実際にそれらが天然のT細胞エピトープを表す場合に腫瘍細胞を認識する強力なCTLを一般に生成することを示唆しているため、弱いA2結合体を包含する傾向がある。われわれが標的を定める腫瘍関連タンパク質の大多数は自己抗原であり、そしてそれ自体、ウイルスペプチドとともにみられるクラスI分子に対する高親和性を有することを期待することができる。低ないし中程度の結合体は、一般に、腫瘍細胞を非常に効率的に溶解するCTLを生成させる。これは、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に対する低親和性結合体である(図3)がそれでもなおペプチド添加された標的細胞(T2)もしくはより重要には黒色腫細胞(Malme3M)双方を溶解することが可能な強力なCTLを慣例に生成させるエピトープを表す(図12)MART−1ペプチドで立証された。
【0120】
HER−2/neuはEGF−Rファミリーの1メンバーでありかつ増殖因子受容体として機能する。HER−2タンパク質はヒトにおいて胎児の発生の間に発現される。成体では、該タンパク質は多くの正常組織の上皮細胞中で弱く検出可能である。正常細胞において、HER−2遺伝子は単一コピーとして存在する。該遺伝子の増幅および/もしくは関連タンパク質の過剰発現が、乳房、卵巣、子宮、胃を包含する多くのヒト癌、および肺の腺癌で同定されている。HER−2とEGF−R受容体との間の配列の差異を表5に示す。われわれが評価した4種のHER−2ペプチドの3種は、2種のタンパク質の間の3個もしくはそれ以上のアミノ酸変化を有する。単一のアミノ酸変化は2種のタンパク質を区別するのに十分である。
【0121】
【表10】
【0122】
CTLが4週間のエクスビボ刺激プロトコル後に生成された後、われわれは、免疫化ペプチドを用いて調製されたHLA−A2.1四量体分子を使用して、ペプチド特異的細胞が存在したかどうかを評価した。図13に立証されるとおり、ペプチド特異的CTLを生成させる能力はドナー依存性であった。図A(ドナー261)において、該ドナーはペプチド835に対する強いCTL応答を示した(37.55%)。図B(ドナー262)において、ペプチド特異的CTLを835および861双方の四量体分子で検出することができる(それぞれ3.6%および15.1%)。これは、該刺激プロトコルの終了時にペプチド特異的CTLを保証するための複数のペプチドの使用を支持する。本エクスビボプロトコルは、多特異性CTLを比較的容易に生成させることを可能にする。
【0123】
抗ペプチドおよび抗腫瘍応答
完全なエクスビボプロトコルの完了後に、生成されたCTLを抗原特異性について評価した。CTLを生成させるために、第0日にショウジョウバエ(Drosophila)細胞に4種のHER−2ペプチドの組合せを添加した。4週のエクスビボ刺激プロトコルの終了時に、大量のCD8培養物を抗原特異性について評価した。免疫化ペプチドのそれぞれを添加されたT2細胞を標的細胞として使用した。図14に典型的な応答を描く。大量の培養物は4種のHER−2ペプチドのそれぞれに対する特異性を含有する。抗腫瘍応答を卵巣腫瘍細胞系(ATCC;HTB−77)で評価した。標的細胞系がHLA−A2.1拘束性でない場合、われわれは+/−アッセイ系を有するように細胞系をトランスフ
ェクトした。HLA−A2.1をHTB−77系統にトランスフェクトした場合、CD8エフェクター細胞による高められた殺傷が示された(図15、図AないしD)。個々のペプチドを代表するHER−2特異的エフェクターを評価して、この腫瘍細胞系上でのペプチドエピトープのそれぞれの提示を確認した。
【0124】
HLA−A2.1でトランスフェクトされた乳房腺癌細胞系(ATCC;HTB−131)もまた、HER−2特異的ペプチドエフェクターでの腫瘍溶解を立証する能力について評価された。ペプチド861に特異的なCTLは、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合にこの腫瘍細胞系を溶解することができた(図16)。
【0125】
腫瘍細胞の溶解に必要とされるIFNγ処理
HTB−77/A2.1細胞系は、ペプチド特異的溶解を立証するためにIFNγでの前処理を必要とする。細胞を、51Cr放出アッセイの開始前24時間、500U/mlのIFNγ(25ng/mlの比活性)で処理した。図17で、IFNγの添加は、HLA−A2.1でトランスフェクトされた細胞系の高められた溶解をもたらした。HLA−A2.1およびHER−2双方の表面発現に対するこの用量のIFNγの影響を決定するために、FACS分析を実施して、誘導の24および48時間後双方のこれらの分子のレベルを測定した。図18、図AおよびBはFACS分析の結果を描く。図Aで、IFNγでの誘導後24および48時間に、HTB−77細胞の表面上でのHER−2分子の促進は存在しなかった。HLA−A2.1でトランスフェクトされた細胞では、HER−2もHLA−A2.1も、類似の処理プロトコル後に表面の発現レベルの増大を立証しなかった。示されたことは、mRNAレベルをマイクロアレイDNAチップ分析により評価した場合のTAP−1の発現、ならびにHLA−DMおよび−DR、カテプシンSおよびDならびにカスパーゼ5のレベルの増大であった(図19)。これは、IFNγの存在下でHTB−77/A2.1細胞の促進殺傷が存在する理由を説明するとみられる。この特定の分子のアップレギュレーションは、HER−2分子のより効率的なプロセシングをもたらして目的のペプチドのより良好な提示を可能にするとみられる。
【0126】
ペプチド
合成ペプチドはペプチド合成機(ギルソン カンパニー インク(Gilson Company,Inc.))を使用して標準的なFmoc化学により作成した。全部のペプチドはC−8カラムでの逆相HPLCにより>95%純度まで精製した。純度および正体は、電子スプレーイオン化を用いる質量分析計を使用して確立した。黒色腫関連ペプチドは:ペプチド819はMART−1特異的であり(AAGIGILTV 配列番号6)、817および853は双方がgp100ペプチドであり(それぞれITDQVPFSV 配列番号4およびKTWGQYWQV 配列番号5)、チロシナーゼ特異的ペプチドは689および792であり、792は、ペプチド689により表される天然の配列(YMNGTMSQV 配列番号1)の翻訳後修飾されたバージョン(YMDGTMSQV 配列番号2)を表したを包含した。ペプチド826(CLTSTVQLV 配列番号7)および835(KIFGSLAFL 配列番号8)は、p185タンパク質のそれぞれ細胞内および細胞外ドメインからのHER−2/neu配列を表した。Pec6020(ALALAALLVV 配列番号10)Pec6025(ALLVVDREV 配列番号11)は卵巣腫瘍系統で検出される粘液素タンパク質を表す重なり合う配列であった。C−レクチンもまた卵巣腫瘍細胞系で検出されるタンパク質であり、そしてその配列からのペプチド(C−レクチン8)はKMASRSMRL 配列番号9により表される。
【0127】
インビトロ細胞傷害性アッセイ
標準的51Cr放出アッセイを実施して、T2細胞に添加された黒色腫関連ペプチドエピトープのCTLエフェクター細胞認識を測定した。収穫物3×106個のT2細胞を、RPMI+10%FBS(培地)中で成長させた。0.1mCiの51Crを添加し、そして水浴中37℃でインキュベートした。標識された細胞を10mlの4%洗浄液(RPMI+4%FBS)およびペレットに添加し、追加の2回洗浄し、そして自発的対洗剤に溶解された細胞の放射活性を記録するために0.2×106個/mLの最終濃度に培地で再懸濁した。細胞に20μg/mLの適切なペプチド(1種もしくは複数)を30分間適用した。50μLを、10、2、0.4および0.08×106個/mLのCD8エフェクタ
ー細胞をそれぞれ含有する各96穴プレートに添加し、これを37℃で6時間インキュベートし、回転しそして上清について収集した。
【0128】
フローサイトメトリーおよび四量体染色
細胞を、FACS緩衝液(PBS中1%BSA、0.02%NaN3)中4℃で30分
間のインキュベーション、次いで同一緩衝液での洗浄により、FITCもしくはPE結合モノクローナル抗体で標識した。細胞を、データ獲得およびそれのセルクェスト(CellQuest)ソフトウェアを用いるFACScanフローサイトメーター(ベクトン ディッキンソン(Becton Dickinson))での分析前に0.5%ホルムアルデヒド中で固定した。非特異的染色は、標識精製された一次抗体に対する使用された同一の二次抗体、もしくは一次抗体を直接標識した場合はアイソタイプを合致された対照を用いて測定した。四量体染色は、陰性対照として配列SLYVTVATL 配列番号43をもつHLA−A2.1特異的HIVgag四量体分子(ベックマン コールター(Beckman Coulter))を用いて実施した。HER−2特異的四量体は、配列CLTSTVQLV(826 配列番号7)、KIFGSLAFL(835 配列番号8)もしくはVMAGVGFSPYV(861 配列番号16)ペプチドを用いて作成した。PE標識四量体HLA−A2.1ペプチド複合体を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトCD8a(BD ファーマジン(BD PharMagin))モノクローナル抗体とともに使用して、エピトープ特異的CD8+ T細胞を、包装挿入物に記述されたとおり染色した。サンプルをベクトン ディスケンソン(Becton Disckenson)FACScanでの二色フローサイトメトリーにより分析し、そしてゲートされた(gated)CD8+ T細胞を、四量体HLA−A2.1ペプチド複合体での染色について検査した。
【0129】
実施例4
本エクスビボ刺激プロトコルを用いる付加的な乳房および卵巣特異的CTLの生成
われわれは、多様な腫瘍起源の数種の腫瘍抗原の全部の既知のHLA−A2.1拘束性ペプチドエピトープに対するCTL応答を生成する能力を立証した。われわれの当初の研究は黒色腫に焦点を当て、ここで、われわれは、MART−1、gp100およびチロシナーゼの黒色腫関連タンパク質に特異的な4種の異なるペプチドエピトープに特異的なCTLで治療された患者における客観的臨床応答を立証することが可能であった[Richardsら,Amer.Soc.Clin.Oncol.,カリフォルニア州サンフランシスコ(2001年5月)]。
【0130】
広範な他の癌に存在する他の腫瘍抗原に対するCTLを生じさせる能力を拡大するため、われわれは、数種の異なる腫瘍型に共通の腫瘍抗原に対する発表されたおよび新規の配列を選択した。これらは、AES、MUC−1、CEA、FBP、C−レクチン、NY−ESO−1、Pec60、CA−125、MAGE−3、テロメラーゼおよびG250を包含する。表7はこれらの抗原、発現の頻度およびそれらを発現する癌を記述する。われわれのエクスビボ刺激プロトコルを用いてのこれらのペプチドへの応答の頻度を表6に列挙する。
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
以下に本発明の特徴と態様を列挙する。
【0134】
1. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAGCは、癌と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、前記ペプチド分子はそれぞれが長さ約6ないし12アミノ酸であり);
b.前記癌を伴う被験体もしくは適するドナーからCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.馴化成長培地(CGM)もしくはIL−2、IL−7よりなる群から選択されるサイトカインを含有する培地に前記CD8+細胞を添加すること(前記サイトカインは個別に
もしくは組合せで使用することができ);
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球を、約1ないし50μg/mlの、前記nnAPCが同時に提示することができる前記ペプチドの1種と混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、所望の末梢血単球を除く懸濁物中の全部の成分を無効にするのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;および
j.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0135】
2. 前記nnAPCが約10までのペプチド分子を提示することが可能である、1.記載の方法。
【0136】
3. 前記ペプチド分子が長さ約8ないし10アミノ酸である、1.記載の方法。
【0137】
4. 前記ペプチド分子が約10nMないし100μMの濃度範囲にある、1.記載の方法。
【0138】
5. 前記サイトカイン成分がIL−2である、1.記載の方法。
【0139】
6. 前記サイトカイン成分が、組合せのIL−2およびIL−7である、1.記載の方法。
【0140】
7. γ線放射の線量が約3,000ないし7,000ラドである、1.記載の方法。
【0141】
8. γ線放射の線量が約5,000ラドである、1.記載の方法。
【0142】
9. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは癌と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり);b.前記癌を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着
性末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2およびIL−7で
刺激すること;
l.適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてCD8+懸濁物
をアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0143】
10. 各ペプチドが長さ約8ないし10アミノ酸である、9.記載の方法。
【0144】
11. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは黒色腫と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さ8ないし10アミノ酸であり);
b.前記黒色腫を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの、前記nnAPCが提示することができる各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を約5,000ラドのγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2およびIL−7で刺
激すること;
l.CD8+懸濁物を、適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量につ
いてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0145】
12. 前記nnAPCが10のペプチドを提示する、11.記載の方法。
【0146】
13. 前記ペプチドが、チロシナーゼ369-377、チロシナーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29およびPec6025-33である、
12.記載の方法。
【0147】
14. ヒトクラスI HLA分子、結合分子および共刺激分子を発現する核酸でトランスフェクトされたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)細胞由来の天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)であって、前記核酸によりコードされる15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であるnnAPC。
【0148】
15. 前記nnAPCが、10までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能である、14.記載の天然に存在しない抗原提示細胞nnAPC。
【0149】
16. 前記nnAPCが、以下の10種のペプチド分子、チロシナーゼ369-377、チロ
シナーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29およびPec6025-33を同時に提示する、15.記載の天然に存在しない抗原提示細胞
nnAPC。
【0150】
17. 段階、
a.キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)卵から昆虫細胞系を調製すること;
b.前記昆虫細胞を、昆虫細胞を成長させるのに適する培地、好ましくはシュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させること;
c.pRmHa−1発現ベクターからpRmHa−3プラスミドを作成すること(前記pRmHa−3プラスミドは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を包含し);
d.前記pRmHa−3プラスミドに、ヒトクラスI HLA A2.1、B7.1、B7.2、ICAM−1、β−2ミクログロブリンおよびLFA−3の相補DNAを挿入すること(A2.1はいずれかのヒトクラスI DNA配列で置換することができ);
e.前記昆虫細胞を、phshneoプラスミド、および相補DNAを含有する前記pRmHa−3プラスミドでトランスフェクトすること;
f.前記昆虫細胞をCuSO4と接触させて前記昆虫細胞中のトランスフェクトされた遺
伝子の発現を誘導することによりnnAPCを創製すること
よりなる、15までのペプチド分子を同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)の製造方法。
【0151】
18. 前記nnAPCが10までのペプチドを提示することが可能である、17.記載の方法。
【0152】
19. 前記昆虫細胞系が、細胞を12日間成長させること、所望の細胞を同定することが可能であるペプチドをもつ前記所望の細胞を選択すること、ならびに前記所望の細胞をOKT3およびIL−2で拡張することにより調製される、17.記載の方法。
【0153】
20. 前記所望の細胞を同定することが可能な前記ペプチドが四量体である、19.記載の方法。
【0154】
21. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、1.記載の方法。
【0155】
22. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、9.記載の方法。
【0156】
23. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、17.記載の方法。
【技術分野】
【0001】
癌は、治療の領域でなされたかなりの進歩にもかかわらず大きな健康の問題であり続けている。化学療法、放射線治療、外科的介入および三者の組合せという標準的治療レジメンは、永続する治癒を生じさせることにしばしば失敗する。多くの場合、治療を受けた癌患者は、しばしば、いくらかの期間の後に疾患状態に戻り、病状をさらに悪化させることは、患者に対するこれらの治療レジメンの苛烈さである。
【0002】
癌治療の発展を複雑にする別の要因は、癌が単一の生物学的作用物質もしくは因子によってではなく、しかしむしろ作用物質および要因の組合せにより引き起こされることが見出されたことである。単一の原因物質もしくは事象が治療の焦点である大部分の医学的治療と異なり、癌治療は複数の生物学的因子を取り扱うことを必要とする。
【背景技術】
【0003】
近年、研究は患者自身の免疫系を利用する癌治療を開発することに向けられている。1つのこうしたアプローチは養子免疫療法である。養子免疫療法は、腫瘍もしくは癌細胞を治療する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成させるために患者自身の細胞を使用することを要する。しかしながら、この技術は、ヒト患者についての実現可能な臨床的治療レジメンとして十分に証明されないままである。CTLを免疫化するための適正なエピトープを同定するという問題を別として、従来技術は、複数の抗原に十分に標的を定めて癌を効果的に治療するためのAPCへの十分な数の異なるエピトープの提示方法を提供しない。本発明は、まだ対処されていない必要性を満足し、ならびに他の利益を提供する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、10までもしくはそれ以上の異なるペプチドを同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)、nnACPの製造方法、癌の治療のための前記nnACPの使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】発明にかかる、抗原提示細胞もしくは標的細胞(この場合は腫瘍細胞)との細胞傷害性Tリンパ球としてもまた知られるCD8+細胞の間の相互作用のグラフィック描写である。
【図2(A−B)】発明にかかる、リンパ球に媒介される細胞増加症の機構の2図のグラフィック描写である。
【図3】発明にかかる、ヒト空クラスI分子を発現するショウジョウバエ(Drosophila)細胞上に複数のペプチドを添加するのに使用することができるペプチド結合体を同定するための競争アッセイで数種の異なるペプチドを試験した実験の結果を示す。
【図4(A)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図4(B)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図4(C)】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に単一のエピトープとして添加された場合のCTLを生じさせる能力について3種の黒色腫ペプチドを試験した実験の結果を示す。単一ドナーにおいて、単独ないし3種の異なるショウジョウバエ(Drosophila)調製物を添加された場合のペプチドのそれぞれに対して、CTL活性が導き出された。応答の特異性を、高親和性結合体、対照HBcペプチドと比較した。
【図5(A)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図5(B)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図5(C)】発明にかかる、4種までの異なるペプチドを単一のショウジョウバエ(Drosophila)細胞に添加した実験の一連の結果を示す。表されたペプチドのそれぞれにおけるCTL活性が3週間の刺激プロトコル後にみられ、そしてこの図でグラフに描かれている。
【図6(A)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図6(B)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図6(C)】発明にかかる、3種の異なる一次インビトロ刺激プロトコル後のCTL活性を示す。
【図7(A−B)】発明にかかる、標準的刺激プロトコル後の単一ペプチドエピトープに対するCTL応答を導き出す、樹状細胞に対するショウジョウバエ(Drosophila)細胞の能力を比較する。
【図8】発明にかかる、成熟もしくは未熟いずれかの表現型を表す樹状細胞が、細胞に適用するのに規定されたペプチドを使用した場合に特異的CTL応答の導出においてショウジョウバエ(Drosophila)細胞ほど効率的でなかったことを示す。
【図9(A)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図9(B)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図9(C)】発明にかかる、4種のペプチドを提示する3種の異なるインビトロ刺激プロトコルに対して単一ドナーにより生成されたCTL活性を示す。
【図10】発明にかかる、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に組合せで添加された10種のペプチドに対し生成されたCTL活性を示す。
【図11】発明にかかる、ヒトHLA−A2.1クラスI分子でトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞上でのHER−2ペプチド(826、835、861および863)のペプチド結合能力を示す。
【図12】発明にかかる、MART−1特異的エフェクター細胞に対する抗ペプチドおよび抗腫瘍応答を立証する。T2細胞にはMART−1ペプチドもしくは陰性対照(HBc)を添加した。Malme3Mは黒色腫系統であり、Malme3は非腫瘍細胞系である。
【図13(A)】発明にかかる、2例の異なるドナーからのHER−2特異的CD8エフェクター細胞の四量体染色を示す。
【図13(B)】発明にかかる、2例の異なるドナーからのHER−2特異的CD8エフェクター細胞の四量体染色を示す。
【図14】発明にかかる、ペプチドの添加されたT2細胞で評価されたHER−2エフェクター細胞に対する抗ペプチド応答を示す。
【図15(A−B)】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の卵巣腫瘍細胞系(HTB−77)の高められた殺傷を立証する。
【図15(C−D)】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の卵巣腫瘍細胞系(HTB−77)の高められた殺傷を立証する。
【図16】発明にかかる、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合の乳癌細胞系(HTB−133)の高められた殺傷を示す。
【図17】発明にかかる、腫瘍細胞系HTB−77/A2.1の溶解を立証するのにIFNγ前処理が必要とされることを示す。
【図18(A−B)】発明にかかる、HLA−A2およびHER−2の表面発現が、2種の細胞系(HTB−77およびHTB−77/A2.1)でのIFNγ誘導により影響を及ぼされないことを立証するグラフである。
【図19】発明にかかる、どのタンパク質のmRNAレベルがIFNγでの誘導後にHTB−77/A2.1細胞中で上昇されるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは、癌と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10の異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドはが長さ約6ないし12アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし10アミノ酸、かつ約10nMないし100μMの濃度範囲にあり;
b.癌を伴う被験体もしくは適するドナーからCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.馴化成長培地(CGM)もしくはIL−2、IL−7のようなサイトカインを含有する培地、好ましくはIL−2、または組合せのIL−2およびIL−7に前記CD8+細
胞を添加すること;
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球、あるいはCD−8枯渇末梢血単球を、約10ないし50μg/mlのペプチドと混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、約3,000ないし7,000ラドの範囲、好ましくは約5,000ラドの線量のような、懸濁物中のこれらの細胞の増殖を予防するのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること、あるいは、末梢血リンパ球懸濁物を、限定されるものでないがマイトマイシンCを挙げることができる細胞増殖抑制剤で処理してもよい;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10ng/mlないし10μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;
j.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約
6ないし7日間刺激すること;
k.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2お
よびIL−7で刺激すること;
l.場合によっては、CD8+懸濁物を適するCTL活性についてアッセイすること、な
らびに、場合によって、CTLの純度、無菌性(sterility)およびエンドトキシン含量についてアッセイすること;ならびに、
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは癌と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10のペプチドを同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが8ないし10アミノ酸であり;
b.癌を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2およびIL−7で
刺激すること;
l.適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてCD8+懸濁物
をアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは黒色腫と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10のペプチドを同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが8ないし10アミノ酸であり;
b.黒色腫を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの、前記nnAPCが提示することができる各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2およびIL−7で刺
激すること;
l.CD8+懸濁物を、適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量につ
いてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、nnAPCが以下のペプチド、チロシナーゼ369-377、チロシナ
ーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29お
よびPec6025-33を提示する、黒色腫の治療方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、感染したもしくは形質転換された細胞を排除する治療がCTLにより達成されることが立証されている、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadaquate)免疫応答をもたらす疾患もしくは疾患状態の治療方法である。
【0011】
本発明の別の態様は、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadaquate)免疫応答をもたらす疾患もしくは疾患状態の治療方法であって、CTLによる排除を受けやすいことが示されている感染したもしくは形質転換された細胞は:
a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製することであって、前記nnAPCは前記疾患もしくは疾患状態と関連する約15までの異なるペプチド分子、好ましくは約10の異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さが約6ないし12アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし10アミノ酸、かつ、約10nMないし100μMの濃度範囲にあり;
b.CD8+細胞を前記被験体もしくは適するドナーから収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.前記CD8+細胞を、CGMもしくはIL−2、IL−7のようなサイトカインを含
有する培地好ましくはIL−2、または組合せのIL−2およびIL−7に添加すること;
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球、あるいはCD−8枯渇末梢血単球を、約10ないし50μg/mlのペプチドと混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、約3,000ないし7,000ラドの範囲、好ましくは約5,000ラドの線量のような、所望の末梢血単球を除く懸濁物中の全部の成分を無効にする(sterilize)のに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約10ng/mlないし10μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;
j.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を、
約6ないし7日間刺激すること;
k.場合によっては、CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2
およびIL−7で刺激すること;
l.場合によっては、適するCTL活性についてCD8+懸濁物をアッセイすること、な
らびに、場合によってはCTLの純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る方法により治療する。
【0012】
本発明は、発現のためヒトクラスI HLA、結合および共刺激分子をコードするDNAでトランスフェクトされたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)細胞由来の天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を提供し、nnAPCは15までの異なるペプチド分子、好ましくは10のペプチド分子を提示することが可能である。
【0013】
本発明の別の態様は、被験体の治療を高める多様な所望の機能と関連するペプチドを提示するnnAPCを提供する。例えば、治療されている疾患もしくは疾患状態と関連するペプチドに加えて、nnAPCは、細胞−細胞接着を高めるもしくは付加的な細胞活性化
シグナルを伝達する、リンパ球機能抗原(LFA−1、LFA−2およびLFA−3)、細胞間接着分子1(ICAM−1)、T細胞共刺激因子(CD2、CD28、B7)のような補助分子(accessory molecule)と関連するペプチドを提示することができる。
【0014】
本発明の別の態様は、いくつかの型の癌と関連するペプチドを提示するnnAPCを提供する。例えば、HER−2/neuのような乳癌関連ポリペプチドと関連するもしくはそれ由来のペプチドは、MART−1もしくはMAGEのような黒色腫関連ポリペプチドと関連するもしくはそれ由来のペプチドとともに提示されるかもしれない。
【0015】
本発明の別の態様は、10までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)の製造方法を提供し、前記方法は、段階:
a.キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)卵から昆虫細胞系を調製すること;あるいは、ヒトMHCクラスI分子および共刺激接着分子を発現させるための昆虫細胞系を調製すること;
b.前記昆虫細胞を、昆虫細胞を成長させるのに適する培地、好ましくはシュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させること;
c.pRmHa−1発現ベクターからpRmHa−3プラスミドを作成することであって、前記pRmHa−3プラスミドは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を包含し;
d.前記pRmHa−3プラスミドに、ヒトクラスI HLA A2.1、B7.1、B7.2、ICAM−1、β−2ミクログロブリンおよびLFA−3の相補DNAを挿入することであって、A2.1はいずれかのヒトクラスI DNA配列で置換することができ;
e.前記昆虫細胞を、phshneoプラスミド、および相補DNAを含有する前記pRmHa−3プラスミドでトランスフェクトすること;ならびに
f.前記昆虫細胞をCuSO4と接触させて前記昆虫細胞中のトランスフェクトされた遺
伝子の発現を誘導することによりnnAPCを創製すること
よりなる。
【0016】
本発明の昆虫細胞は、昆虫細胞を成長させるのに適する培地(下で「昆虫成長培地」と称される)中で成長させる。シュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地、グレース昆虫培地、およびTC−100昆虫培地のような、昆虫成長培地は、多数の供給元から商業的に入手可能である。あるいは、昆虫成長培地は当業者により調製することができる。典型的には、該培地は、無機塩(例えば、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびリン酸ナトリウム)、アミノ酸、多様な炭水化物、ならびに化学種(Imogene Schneider,Exp.Zool.(1964)156(1):pg.91)のような、昆虫細胞の成長を促進かつ持続するのに必要な成分を包含することができる。あるいは、該培地は、ビタミン、ミネラル、および昆虫細胞の成長で補助する他の成分もまた包含することができる。
【0017】
以下は、本明細で使用される略語および定義の一覧である。
略語
APC 抗原提示細胞
CD8+ CD8+ T細胞
CTL 細胞傷害性Tリンパ球
E エフェクター
Fas CD95としてもまた知られる、T細胞上のエピトープ
ICAM 細胞間接着分子
IL インターロイキン
LAK リンホカイン活性化型キラー細胞
LFA リンパ球機能抗原
MHC 主要組織適合抗原複合体
nnAPC 天然に存在しない抗原提示細胞
NP 核タンパク質
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸緩衝生理的食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RPMI ロズウェル パーク メモリアル インスティテュート(Roswel
l Park Memorial Institute)
RWJPRI R.W.ジョンソン ファーマシューティカル リサーチ インスティ
テュート(The R.W.Johnson Pharmaceuti
cal Research Institute)
T 標的
TCP T細胞抗原受容体
TIL 腫瘍浸潤リンパ球
【0018】
以下は、多様なペプチドエピトープについて本明細で使用される略語の一覧である。個々のアミノ酸残基は、当業者により容易に既知かつ使用される一文字記号に従って同定される。
【0019】
【表1】
【0020】
ペプチドエピトープの略語
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ369−377」もしくは「チロシナーゼ369-377」はアミノ酸配列YMNGTMSQV(配列番号1)を指す。この定義内に、
配列YMNGTMSQV(配列番号1)のアミノ酸残基「N」を「D」に改変してYMDGTMSQV(配列番号2)のアミノ酸配列をもたらす翻訳後事象から生じる、配列YMDGTMSQV(配列番号2)のペプチドもまた包含される(Skipperら,J.Exp.Med.(1996)183:527−534)。
【0021】
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ207−216」もしくは「チロシナーゼ207-216」という用語はアミノ酸配列FLPWHRLFLL(配列番号3)を指す。
【0022】
本明細書で使用されるところの「gp100 209−217」もしくは「gp100209-217」という用語はアミノ酸配列ITDQVPFSV(配列番号4)を指す。
【0023】
本明細書で使用されるところの「gp100 154−162」もしくは「gp100154-162」という用語はアミノ酸配列KTWGQYWQV(配列番号5)を指す。
【0024】
本明細書で使用されるところの「MART−1 27−35」もしくは「MART−127-35」という用語はアミノ酸配列AAGIGILTV(配列番号6)を指す。
【0025】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu 789−797」もしくは「HER−2/neu789-797」という用語はアミノ酸配列CLTSTVQLV(配列番号7
)を指す。
【0026】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu 369−377」もしくは「HER−2/neu369-377」という用語はアミノ酸配列KIFGSLAFL(配列番号8
)を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「C−レクチン 8−16」もしくは「C−レクチン8-16」という用語はアミノ酸配列KMASRSMRL(配列番号9)を指す。
【0028】
本明細書で使用されるところの「Pec60 20−29」もしくは「Pec6020-29」という用語はアミノ酸配列ALALAALLVV(配列番号10)を指す。
【0029】
本明細書で使用されるところの「Pec60 25−33」もしくは「Pec6025-33」という用語はアミノ酸配列ALLVVDREV(配列番号11)を指す。
【0030】
本明細書で使用されるところの「CD8ペプチド 59−70」もしくは「CD8ペプチド59-70」という用語は、AAEGLDTQRFSG(配列番号12)のアミノ酸配列
を指す。
【0031】
用語および定義
本明細書で使用されるところの「養子免疫療法」という用語は、疾患もしくは疾患状態の治療のためのドナーもしくは自己のTリンパ球の投与を指し、ここで疾患もしくは疾患状態は、クラスI HLA分子と通常は関連する不十分な(insufficient)もしくは不十分な(inadequate)免疫応答をもたらす。養子免疫療法は、感染したもしくは形質転換された細胞の排除がCTLにより達成されることが立証されているいかなる疾患もしくは疾患状態にも適切な治療である。例えば、疾患もしくは疾患状態は、限定されるものでないが、黒色腫、前立腺、乳房、結腸直腸、胃、咽頚部、膵、子宮頚、卵巣、骨、白血病および肺癌のような癌および/もしくは腫瘍;B型肝炎、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルスのようなウイルス感染症;結核、らいおよびリステリア症のような細菌感染症、ならびにマラリアのような寄生虫感染症を挙げることができる。
【0032】
本明細書で使用されるところの「B7.1」という用語は抗原提示細胞に関連する共刺激分子を指す。
【0033】
本明細書で使用されるところの「BCNU」という用語は1,3−ビス(2クロロエチル)−1−ニトロソ尿素としてもまた知られるカルムスチンを指す。
【0034】
本明細書で使用されるところの「BSE」という用語はウシ海綿状脳症を指す。
【0035】
本明細書で使用されるところの「CD」という用語は、抗原エピトープおよび機能によるグループ分けされる分化抗原クラスターすなわちTリンパ球(元は)、Bリンパ球、単球、マクロファージおよび顆粒球を指す。
【0036】
本明細書で使用されるところの「DTIC」という用語は、ダカルバジンすなわち5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドを指す。
【0037】
本明細書で使用されるところの「エクスビボ」もしくは「エクスビボ療法」という用語は、該改変された細胞により生じられる治療上の利益の長期のもしくは一定の送達により改善することができる病理学的状態を治療するのに該改変された細胞を使用することができるような、生物学的材料(典型的には細胞)を患者もしくは適するドナーのような適する代替供給源から得かつ改変する治療を指す。治療(treatment)は患者もしくは代替供給源のいずれかから得られた改変された生物学的材料の患者への再導入を包含する。エクスビボ療法の一利益は、治療からの望ましくない傍系の影響に患者を曝露することなく治療の利益を患者に提供する能力である。例えば、サイトカインはしばしば、患者のCTLの拡張を刺激するために癌もしくはウイルス感染症を伴う患者に投与される。しかしながら、サイトカインは患者において流感様の症状の発症をしばしば引き起こす。エクスビボ手順において、サイトカインは患者の身体の外側でCTLの拡張を刺激するのに使用され、そして患者はサイトカインの曝露および結果としての副作用を容赦される。あるいは、適する状況もしくは条件下で、適切な場合かつ被験体が利益を得ることができる場合、被験体を、低レベルの投薬量のγインターフェロン、αインターフェロンおよび/もしくはIL−2で同時に治療することができる。インターフェロンの期待される効果は、おそらく抗原特異的CTLによる溶解に対し腫瘍細胞を感作することであり、また、IL−2の効果は、おそらく抗原特異的CTLの持続性を高めることである。
【0038】
本明細書で使用されるところの「HEPES」という用語はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’2−エタンスルホン酸緩衝液を指す。
【0039】
本明細書で使用されるところの「HLA−A2.1」という用語は、およそ45%の白色人種で見出されるHLAクラスI分子を指す。
【0040】
本明細書で使用されるところの「MART−1」もしくは「T細胞−1により認識される黒色腫抗原」という用語は黒色腫関連抗原を指す。この抗原のアミノ酸および核酸配列、ならびに多様な特徴は、「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1999年11月30日公布の米国特許第5,994,523号明細書;「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and
Their Use in Diagnostic and Therapeutic
Methods)」と題された1999年2月23日公布の米国特許第5,874,560号明細書;ならびに「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,844,075号明細書に開示される。とりわけ、米国特許第5,994,523号明細書は、それぞれ配列番号1および配列番号2として図1にMART−1の完全長の核酸およびアミノ酸配列を開示する。前述の図1は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書で使用されるところの「MAGE」は黒色腫関連抗原を指す。この抗原のアミノ酸および核酸配列、ならびに多様な特徴は、「それと関連する複数の抗原についてアッセイすることによる乳癌および黒色腫の決定方法(Methods for Determining Breast Cancer and Melanoma by Assaying for a Plurality of Antigens Associated Therewith)」と題された2000年10月31日公布の米国特許第6,140,050号明細書;「MAGE−XP遺伝子のメッセンジャーRNAを検出することによる癌のスクリーニング方法(Method of Screening fo
r Cancer by Detecting Messenger RNA for a MAGE−XP Gene)」と題された1998年6月2日公布の米国特許第5,759,783号明細書;および「合成ペプチドエピトープを使用するヒトにおける抗腫瘍細胞傷害性Tリンパ球の誘導(Induction of Anti−Tumor Cytotoxic T Lymphocytes in Humans Using Synthetic Peptide Epitopes)」と題された1997年9月2日公布の米国特許第5,662,907号明細書に開示される。
【0042】
本明細書で使用されるところの「MPC−10」という用語は磁性粒子濃縮装置を指す。
【0043】
本明細書で使用されるところの「NK細胞」という用語はナチュラルキラー細胞を指す。
【0044】
本明細書で使用されるところの「OKT3」という用語は、オルソクローン(ORTHOCLONE)OKT3、ムロモナブ(muromonab)−CD3、抗CD3モノクローナル抗体を指す。
【0045】
本明細書で使用されるところの「TAP−1,2」という用語は、抗原プロセシング関連輸送タンパク−1,2を指す。
【0046】
本明細書で使用されるところの「Th細胞」という用語はヘルパーT細胞、CD4+を指す。
【0047】
本明細書で使用されるところの「チロシナーゼ」という用語は、黒色腫に関連するタンパク質を指す(Brichardら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495;Robbinsら、Cancer Res.(1994)54:3124−3126)。「P15およびチロシナーゼ黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(P15 and Tyrosinase Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,843,648号明細書は、図7、図AないしDにチロシナーゼに関連する抗原ペプチドおよび関連するポリ核酸を開示し、前述の図は引用することにより本明細書に組み込まれる。「異常細胞上のヒト白血球抗原A2(HLA−A2)分子およびチロシナーゼ由来ペプチドを含有する複合体の検出方法(Method for Detecting Complexes Containing Human Leukocyte Antigen A2 (HLA−A2) Molecules and a Tyrosinase Derived Peptide on Abnormal Cells)」と題された1996年1月30日公布の米国特許第5,487,974号明細書は、実施例9で表3にチロシナーゼおよび黒色腫と関連する付加的なペプチドを開示し、前述は引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0048】
本明細書で使用されるところの「gp100」という用語は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)により認識される黒色腫抗原を指す。gp100を認識するTILはインビボの腫瘍拒絶と関連する(Bakkerら、J.Exp.Med.(1994)179:1005−1009;Kawakamiら、J.Immunol.(1995)154:3961−3968)。gp100に関連する抗原ペプチドは、「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their
Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1999年11月30日公布の米国特許第5,994,523号明細
書;「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and
Therapeutic Methods)」と題された1999年2月23日公布の米国特許第5,874,560号明細書;ならびに「黒色腫抗原ならびに診断および治療法におけるそれらの使用(Melanoma Antigens and Their Use in Diagnostic and Therapeutic Methods)」と題された1998年12月1日公布の米国特許第5,844,075号明細書に開示される。とりわけ、米国特許第5,994,523号明細書は、図4および5にGP100に関係する核酸およびアミノ酸配列をそれぞれ開示する。配列番号27、33、34、35、36、37、38、39、40および41として同定されるものを包含する該アミノ酸配列由来の抗原ペプチドもまた開示される。前述の図4および5の全部、ならびに配列番号により同定されるペプチドは、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書で使用されるところの「黒色腫」という用語は、限定されるものでないが黒色腫、転移性黒色腫、メラノサイトもしくはメラノサイト関連神経細胞いずれか由来の黒色腫、黒色肉腫、黒色癌腫、黒色上皮腫、黒色腫インシトゥ表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、侵襲型黒色腫もしくは家族性異型黒子・黒色腫(FAM−M)症候群を指す。哺乳動物におけるこうした黒色腫は、染色体異常、変性性の成長および発生障害、有糸分裂促進剤、紫外線放射(UV)、ウイルス感染症、遺伝子の不適切な組織発現、遺伝子の発現の変化、ならびに細胞上での提示もしくは発癌物質により引き起こされるかもしれない。前述の黒色腫は、本出願に記述される方法により診断、評価もしくは治療することができる。
【0050】
本明細書で使用されるところの「C−レクチン」という用語は、卵巣癌に関連することが見出されている配列のペプチドを指す。
【0051】
本明細書で使用されるところの「主要組織適合抗原複合体」もしくは「MHC」という用語は、ヒト白血球抗原(HLA)を包含する多様な種で記述される組織適合抗原系を包含することを意味される包括的呼称である。
【0052】
本明細書で使用されるところの「エピトープ」、「ペプチドエピトープ」、「抗原性ペプチド」および「免疫原性ペプチド」という用語は、哺乳動物において細胞性免疫応答を引き起こすことが可能な抗原由来のペプチドを指す。こうしたペプチドは、該ペプチドで免疫化された動物からの抗体ともまた反応性であるかもしれない。こうしたペプチドは長さが約5ないし20アミノ酸、好ましくは長さが約8ないし15アミノ酸、および最も好ましくは長さが約9ないし10アミノ酸であってよい。
【0053】
本明細書で使用されるところの「Pec60」という用語は、卵巣および乳癌に関連することが見出されている配列のペプチドを指す。
【0054】
本明細書で使用されるところの「類似物」という用語は、とりわけ1個もしくはそれ以上の残基が機能的に類似の残基で保存的に置換されかつ本明細書に記述されるところの本発明の機能的局面を表す本明細書に示される、本発明の配列に実質的に同一のアミノ酸残基配列を有するいかなるポリペプチドも包含する。保存的置換の例は、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンのような1個の非極性(疎水性)残基の代わりに別のものの置換、アルギニンとリシンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間のような1個の極性(親水性)残基の代わりに別のものの置換、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンのような1個の塩基性残基の代わりに別のものの置換、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸もしくは別のもののような1個の酸性残基の置換を包含する。
【0055】
本明細書で使用されるところの「保存的置換」という用語は、誘導体化されない残基の代わりの化学的に誘導体化された残基の使用もまた包含する。
【0056】
本明細書で使用されるところの「化学的誘導体」という用語は、官能性側基の反応により化学的に誘導体化された1個もしくはそれ以上の残基を有する主題のポリペプチドを指す。こうした誘導体化された分子の例は、例えば、遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基もしくはホルミル基を形成するように誘導体化された分子を包含する。遊離カルボキシル基は、塩、メチルおよびエチルエステルもしくは他の型のエステルまたはヒドラジドを形成するように誘導体化してよい。遊離ヒドロキシル基はO−アシルもしくはO−アルキル誘導体を形成するように誘導体化してよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素はN−イン−ベンジルヒスチジン(im−benzylhistidine)を形成するように誘導体化してよい。20種の標準的アミノ酸の1種もしくはそれ以上の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するタンパク質もしくはペプチドもまた化学的誘導体として包含される。例えば:4−ヒドロキシプロリンをプロリンの代わりに用いてよく;5−ヒドロキシリシンをリシンの代わりに用いてよく;3−メチルヒスチジンをヒスチジンの代わりに用いてよく;ホモセリンをセリンの代わりに用いてよく;そしてオルニチンをリシンの代わりに用いてよい。本発明のタンパク質もしくはポリペプチドは、欠くことのできない活性が維持される限りは、その配列が本発明の対応する核配列にコードされるポリペプチドの配列に関して1個もしくはそれ以上の付加および/もしくは欠失または残基を有するいかなるポリペプチドもまた包含する。
【0057】
本明細書で使用されるところの「HER−2/neu」という用語は、1種もしくはそれ以上の膜会合型の受容体様癌遺伝子タンパク質を発現もしくは過剰発現する癌遺伝子を指す。HER−2/neuの発現もしくは過剰発現に関連することが見出された癌は、ある種の乳房、胃、卵巣、結腸および唾液腺の癌などである。HER−2/neu癌遺伝子はチロシンタンパク質キナーゼファミリーの癌遺伝子の1メンバーであり、そして上皮増殖因子受容体(EGFR)と高程度の相同性を共有する。HER−2/neuは細胞の成長および/もしくは分化で役割を演じることが示されている。HER−2/neuは、本質的に正常な遺伝子産物の増大されたもしくは無秩序な発現から生じる量的機構により悪性病変を誘導するようである。「HER−2/neu癌遺伝子が関連する悪性病変の診断および治療のためのHER−2/neuタンパク質に対する免疫反応性(Immune Reactivity to HER−2/neu Protein for Diagnosis and Treatment of Malignancies in Which the HER−2/neu Oncogene is Associated)」と題された2000年6月13日公布の米国特許第6,075,122号明細書は、第12段第31行ないし第13段第7行で、CD8+ T細胞応答を導き出すペプチド
を開示し、配列番号により同定されるものは引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0058】
HER−2/neu(p185)はHER−2/neu癌遺伝子のタンパク質産物である。乳房、卵巣、結腸、肺および前立腺の癌を包含する多様な癌において、HER−2/neu遺伝子が増幅されそしてHer−2/neuタンパク質が過剰発現される。HER−2/neuは悪性の形質転換と関連する。それは、非浸潤性管癌の50%ないし60%、および全乳癌の20%ないし40%、ならびに卵巣、前立腺、結腸および肺で生じる腺癌のかなりの部分で見出される。HER−2/neuは、悪性の表現型のみならず、しかしまた全部の侵襲性乳癌の1/4で見出される悪性病変の攻撃性とも緊密に関連する。HER−2/neuの過剰発現は、乳房および卵巣双方の癌における乏しい予後と相関する。HER−2/neuは、長さがおよそ1255アミノ酸(aa)である185kdの相
対分子量をもつ膜貫通タンパク質である。それは、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対する40%の相同性をもつおよそ645aaの細胞外結合ドメイン(ECD)、高度に疎水性の膜貫通固定ドメイン(TMD)、およびEGFRに対する80%の相同性をもつおよそ580アミノ酸のカルボキシ末端細胞質ドメイン(CD)を有する。
【0059】
癌遺伝子に関する進行中の研究は、悪性病変細胞中で効果をもたらしかつ形質転換の原因であるかもしくはそれと関連する最低40種の癌遺伝子を同定した。癌遺伝子は、(癌遺伝子により発現されるタンパク質のような)それらの遺伝子産物の推定の機能もしくは位置に基づき、多様な群に分類されている。癌遺伝子は正常細胞の生理学のある局面に不可欠であると考えられる。
【0060】
癌は、治療の領域でなされたかなりの進歩にもかかわらず大きな健康の問題であり続けている。化学療法、放射線治療、外科的介入および三者の組合せという標準的治療レジメンは、永続する治癒を生じさせることにしばしば失敗する。多くの場合、治療を受けた癌患者は、しばしば、いくらかの期間の後に疾患状態に戻り、病状をさらに悪化させることは、患者に対するこれらの治療レジメンの苛烈さである。黒色腫の例において、転移性黒色腫の治癒は慣習的化学療法を使用して達成されていない。35%ないし50%の奏効率が、併用化学療法のダートマスレジメン(DTIC、シスプラチン、BCNUおよびタモキシフェン)で報告されているが、しかし、生存期間は6ないし10ヶ月に留まっている。高率の再発が、攻撃的な「高用量強度」化学療法、ならびに自己骨髄移植を伴う造血の多血症について報告されている。にもかかわらず、生存期間の中央値は短かった(およそ4ヶ月)。
【0061】
Rosenbergらは、多様な癌の治療として活性化されたリンパ球の注入を使用することを試みた。当初、リンホカイン活性化型キラー細胞(LAK)、および後にIL−2でエクスビボ活性化された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用したが、しかし、有効性の証拠は不確かである。事実、対照臨床試験は、患者へのIL−2の直接投与を上回るエクスビボ活性化された細胞の使用に対する利点を示すことに失敗した。従って、LAKおよびTIL療法の利益は重要でなく、かつ、副作用は、典型的には、多くの試験が早期に中断されたほどひどい。
【0062】
マウス腫瘍モデルにおける研究は、養子免疫療法すなわち腫瘍抗原(1種もしくは複数)に特異的なT細胞のインビボ免疫感作が最小限の毒性を伴い非常に有効であることを立証した。ヒト腫瘍の治療にこの戦略を適用するための大きな障害は、腫瘍細胞を細胞傷害性Tリンパ球(CTL)媒介性の破壊に対し感受性にする免疫原性抗原の同定である。黒色腫患者からの腫瘍反応性T細胞の単離は、CTLが向けられる腫瘍抗原(エピトープ)のいくつかの同定に至った。これらは、チロシナーゼ(Brichardら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495;Robbinsら,Cancer Res.(1994)54:3124−3126)、MART 1/Melan A(Kawakamiら、J.Exp.Med.(1994)180:347−352)、gp 100(Bakkerら、J.Exp.Med.(1994)179:1005−1009;およびKawakamiら、J.Immunol.(1995)154:3961−3968)、ならびにMAGE(Gauglerら、J.Exp.Med.(1994)179:921−930)を包含する。これらのうち、チロシナーゼおよびMART−1は黒色腫でほぼ普遍的に発現され、そして従って養子免疫療法についての論理的選択である。
【0063】
近年、およそ数年の生存の大きな改善が、免疫学的療法を受けている小さな割合の黒色腫患者で示されている。これは、「癌ワクチン」での能動的特異的免疫療法、ならびにIL−2、α−インターフェロンおよびγ−インターフェロンのようなサイトカインのよう
な免疫系の非特異的推進物質(booster)の使用を包含する。しかしながら、サイトカインの利益は、悪心および発熱のようなそれらの使用にしばしば付随する副作用により小さくされる。
【0064】
細胞溶解性T細胞(CD8+)はウイルス感染症に対する主要防御線である。CD8+リンパ球はウイルスにより感染した宿主細胞を特異的に認識しかつ殺す。理論的には、癌を包含する他の型の疾患と闘うのに免疫系を利用することが可能であるはずである。しかしながら、わずかなインビトロ/エクスビボ手順が、CTLを特異的に活性化するのに利用可能である。上に示された重要な黒色腫抗原の同定、および下述されるCTLの特異的インビトロ活性化方法は、今や、転移性黒色腫の養子免疫療法の概念の試験を可能にする。
【0065】
全てのナイーブなT細胞は、免疫応答を導き出すための活性化に2種のシグナルを必要とする。CD8+リンパ球(CTL)について、特異性を分け与える第一のシグナルは、
抗原提示細胞(APC)の表面上に存在するクラスI MHC(HLA)複合体に結合された抗原の免疫原性ペプチドフラグメント(エピトープ)のCD8+細胞への提示よりな
る。この複合体は、シグナルを細胞内で伝えるT細胞抗原受容体(TCR)により特異的に認識される。
【0066】
T細胞受容体への結合はT細胞の活性化を誘導するのに必要であるがしかし十分でなく、そして通常、細胞増殖もしくはサイトカイン分泌に至ることができない。完全な活性化は第二の共刺激シグナル(1種もしくは複数)を必要とし、これらのシグナルは活性化カスケードをさらに高めるようはたらく。抗原提示細胞上の共刺激分子のなかで、B7およびICAM−1のような細胞接着分子(インテグリン)が、T細胞上のそれぞれCD28およびLFA−1に結合することによりこの過程で補助する。CD8+細胞が、適切な共
刺激分子の相互作用の存在下でクラスI MHC分子により結合された免疫原性ペプチド(エピトープ)を担持する抗原提示細胞と相互作用する場合に、CD8+細胞は完全に活
性化された細胞溶解性T細胞となる。
【0067】
リンパ球に媒介される細胞殺傷は、T細胞活性化について上述された認識過程によって抗原を担持する標的(腫瘍)細胞へのCD8+ CTLの結合で開始する、一連の生物学
的事象を必要とする。
【0068】
上述されたところの、CD8+細胞と抗原提示細胞もしくは標的(腫瘍)細胞との間の
相互作用を図1に描く。該相互作用は、T細胞抗原受容体(TCR)への、APCもしくは標的細胞上のMHCクラスI分子と共同しての抗原の結合で開始する。リンパ球機能抗原(LFA−1、LFA−2およびLFA−3)、細胞間接着分子1(ICAM−1)、T細胞共刺激因子(CD2、CD28、B7)のような補助分子が、細胞−細胞接着を高めるか、もしくは付加的な細胞活性化シグナルを伝達する。
【0069】
細胞−細胞相互作用の後に、CTLは可溶性細胞溶解メディエーター(T細胞の細胞質顆粒中に貯蔵されるパーフォリンおよびグランザイム)ならびにCTL表面分子(Fasリガンド)の作用により標的細胞を殺す。細胞溶解性の攻撃後に、標的細胞は、壊死(膜の穿孔およびオルガネラ破壊)もしくはアポトーシス(クロマチン凝縮、DNA断片化および膜泡形成)により死ぬ。
【0070】
リンパ球に媒介される細胞溶解の機構を図2にグラフィカルに示す。図2の図Aにおいて、標的細胞に結合した後に、CTL中の細胞質顆粒が、細胞間空隙中へのパーフォリンおよびグランザイムを含有する顆粒の放出のため、標的細胞に迅速に向け直される。これらのタンパク質分解酵素が標的細胞の原形質膜に孔を形成し、ついには細胞壊死に至る。図Bにおいて、標的細胞に結合した後に、CTL上のFasリガンド発現のレベルが増大
する。Fasリガンドと、標的細胞上のFas受容体の相互作用がアポトーシスにつながる。CPP32のようなプロテアーゼ、およびIL−1b変換酵素(ICE)に関連する他者がアポトーシスの誘導に関係している。インビトロCD8+活性化に、天然に存在す
る抗原提示細胞、例えば樹状細胞、マクロファージ、自己腫瘍細胞を使用することが可能である。しかしながら、このアプローチ後の活性化の効率は低い。これは、天然のAPCのクラスI分子が、腫瘍エピトープ以外に多くの他の型のペプチドエピトープを含有するためである。ペプチドの大部分は正常の無害の細胞タンパク質由来であり、腫瘍に対して実際に有効であるとみられる活性の天然のAPCの数の希釈(dilution)をもたらす(Allisonら,Curr.Op.Immunol.(1995)7:682−686)。
【0071】
この問題に対するより直接的かつ効率的な一アプローチは、(癌のような)特定の疾患と闘うことに関連したそれらのエピトープもしくは(黒色腫特異的抗原のような)腫瘍特異的抗原のみでCD8+細胞を特異的に活性化することである。この目的のため、人工産
物の抗原提示細胞を、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)細胞中でMHC クラスI分子を発現させることにより創製する。ショウジョウバエ(Drosophila)は免疫系を有しないため、クラスI分子上にペプチドエピトープを添加することに関与するTAP−1,2ペプチド輸送タンパクが存在しない。結果として、クラスI分子は、空容器(empty vessel)としてショウジョウバエ(Drosophila)細胞表面上に出現する。これらのトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を、限定されるものでないが黒色腫特異的エピトープを挙げることができる癌もしくは腫瘍特異的エピトープのようなクラスI分子に結合する外因性ペプチドとともにインキュベートすることにより、すべてのクラスI分子を同一のペプチドで占有することが可能である。これらのショウジョウバエ(Drosophila)APC中に単一ペプチドを含有するクラスI分子の高密度発現は、抗原ペプチドに完全に特異的である細胞傷害性CD8+ T細胞のイ
ンビトロでの生成を可能にする。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞を調製するための方法および手順は、「ヒトクラスI MHCおよびβ2−ミクログロブリンを発現する昆虫細胞を使用する細胞傷害性T細胞のインビトロ活性化(In Vitro Activation of Cytotoxic T−Cells Using Insect Cells Expressing Human Class I MHC and β2−Microglobulin)」と題された1996年6月25日公布の米国特許第5,529,921号明細書、ならびに「MHC クラスI抗原およびβ2−ミクログロブリンをコードする遺伝子を発現しかつ空複合体を集成することが可能なショウジョウバエ細胞系、ならびに前記細胞系の作成方法(Drosophila Cell
Lines Expressing Genes Encoding MHC Class I Antigens And β2−Microglobulin and Capable of Assembling Empty Complexes and
Methods of Making Said Cell Lines)」と題された1994年5月24日公布の米国特許第5,314,813号明細書に教示される。とりわけ、米国特許第5,529,921号明細書は、第26段第56行ないし第28段第22行で、前駆細胞の培養物の多様な分離および/もしくは濃縮方法を開示する。
【0072】
加えて、この特徴は、高用量の多様なサイトカインでの免疫系のインビボ刺激に対する必要性を除外する。それによりサイトカインにより引き起こされる副作用をなしで済ませる治療をもたらす。あるいは、適する状況もしくは条件下で、適切な場合かつ被験体が利益を得ることができる場合、被験体を、低レベルの投薬量のα−インターフェロン、γ−インターフェロンおよび/もしくはIL−2で同時に治療することができる。
【0073】
サイトカインでのインビボ刺激に対する必要性を除外することは、患者の治療の質の向
上を提供する。患者へのサイトカインの投与を包含する治療レジメンは、しばしば、悪心、嘔吐および発熱のような流感様の症状を発症する患者をもたらす。これらの副反応は一般に生命を脅かさないが、とは言え既に弱らされた状態にある患者で起こるとりわけ重症の反応は、生命を危うくする状況をもたらす可能性がある。別の考慮は、それ以外は有益な治療レジメンの患者の受容性およびコンプライアンスに対してこうした副反応が有する有害な影響である。サイトカインでのインビボ刺激に対する必要性を除去することは、患者の快適さを向上させる治療レジメンをもたらし、また、彼もしくは彼女の患者が従うことがよりありそうである有効な治療方法を臨床家に提供する。
【0074】
腫瘍の養子免疫療法のための本方法の有用性は、APCとしてトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞、およびT細胞受容体(TCR)トランスジェニックマウスの2C系統からのCD8+細胞を使用してマウスで立証されている。
この系において、精製されたCD8+ 2C細胞は、共刺激分子B7−1およびICAM
−1もまた担持するMHCクラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ
(Drosophila)細胞により提示されるインビトロペプチドに高度に反応性である。プライミングされないCD8+ T細胞についての最小要件を規定するためのプローブとしてのトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞(Caiら、P.N.A.S.USA(1996)93:14736−14741)。あるいは、分離されないマウス脾細胞を精製された2C細胞の代わりに応答体(responder)として使用する場合は、共刺激分子に対する必要性は当てはまらない。この例において、脾集団中のCD8+細胞は活性化されたB細胞から「傍観者(bystander
)」共刺激を受領する。この知見を利用して、MHCクラスI(Ld)のトランスフェク
トされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞が、添加されたリンホカインの非存在下でインビトロで同系のP815肥満細胞腫の腫瘍特異的ペプチドに応答するように正常DBA/2マウス脾細胞を誘導することが可能であることを示すことが可能であった。P815肥満細胞腫を担持するDBA/2マウスへのこれらのCTLの注入は迅速な腫瘍退縮に至った(Sunら、Immunity(1996)4:555−564)。
【0075】
手順的には、正常DBA/2マウス脾細胞を、DBA/2由来P815肥満細胞腫細胞系からの腫瘍特異的エピトープP1A.35−43ペプチドで添加された、MHCクラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞と
ともにインビトロで培養した。5日後に培養物から収集されたリンパ球は、インビトロでP815腫瘍細胞に対する強い細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を表したが、しかし、図3、図Aに示されるとおり、P1A.35−43を発現しないP815の突然変異体細胞系P1024を溶解することに失敗した。これらのCTLを、3日前にP815細胞を以前に接種されたDBA/2マウスに注入した場合、腫瘍は第一週の間に妨害を受けずに成長したが、しかし、その後、図3、図Bに示されるとおり、次の週の間に排除された。図3、図Bに示されるとおり、CTLをウイルス核タンパク質ペプチドのような無関係の抗原に対してインビトロで免疫化した場合、特異性は、P815の成長に対するいずれかの影響の非存在により立証された。要約すれば、主要組織適合抗原複合体クラスI(Ld)のトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞は、添加されたリンホカインの非存在下で、同系のP815肥満細胞腫の腫瘍特異的ペプチドにインビトロで応答するように正常DBA/2マウス脾細胞を誘導した。P815肥満細胞腫を担持するDBA/2マウスへのこれらのCTLの注入は迅速な腫瘍の退縮に至った(Wolfelら、J.Exp.Med.(1993)178:489−495)。
【0076】
インビトロのヒト研究
健康被験体からのヒトCTLをチロシナーゼに対してインビトロで免疫化した。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞のみでの一次刺激後に、チロシナーゼを担持するJY細胞の特異的溶解が、試験された全部のCTLエフェクター対JY標的の比で明ら
かであった。健康被験体からのチロシナーゼ特異的CTLを、完全な刺激/再刺激プロトコルを使用して誘導し、そしてMalme 3M黒色腫細胞系を殺すそれらの能力について試験した。1もしくは2の可能な例外を伴い、Malme 3Mに対する特異的CTL活性が、全ドナーにおいて変動する程度まで誘導された。大部分については、対照のMalme 3腫瘍細胞に対する反応性は最小限であった。黒色腫患者からの細胞もまた、健康志願者由来のものに類似の活性および特異性のCTLを生成させるために、チロシナーゼエピトープに対してインビトロで免疫化した。
【0077】
インビトロで細胞傷害性Tリンパ球を生成させるためのいかなる天然のもしくは人工産物の抗原提示細胞(APC)系の使用も、これらの系が生成することが可能である抗原特異性により制限される。
【0078】
以下のAPC系を利用して、単一エピトープに対する抗原特異的CTLを生成させた。すなわち、1)規定されたペプチドを適用された(pulsed)ヒト樹状細胞(DC);2)リンパ芽球から得られかつペプチドを適用された末梢血単核細胞(PBMC);3)天然のペプチドが酸ストリッピングされ(acid−stripped)かつ目的のペプチドが添加されたリンパ芽球様細胞系(LCL);4)空のクラスI分子を発現するよう工作されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞;ならびにヒトクラスIおよび共刺激分子でトランスフェクトされたマウス3T3細胞(J.B.LatoucheとM.Sadelain,Nature Biotech(2000)18:405−409)。
【0079】
樹状細胞(DC)は、一次抗原細胞の提示におけるそれらの広範な応用のために、ヒトにおける一次抗原提示細胞系とみなされる。自己もしくは外来タンパク質はDC内でプロセシングされる。結果として生じるペプチドエピトープがHLA分子により提示され、そしてDCの表面に輸送される。しかしながら、DCがインビトロで一貫して生成されることができず、CTLが4種の異なるペプチドに対し方向を定めたことが見出された。これは、4種のペプチドのそれぞれに対応する活性を有するCTLを提供したとみられる。加えて、ペプチドの適用の時点でのDCの表現型(成熟もしくは未熟)は結果に影響しないこともまた見出された。
【0080】
あるいは、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞の刺激は、通常、10までの異なる型のペプチドに対し向けられるCTLをもたらした。これは、10種のペプチドのそれぞれに対し活性であるCTLを提供する。
【0081】
CTL応答を導き出すショウジョウバエ(Drosophila)細胞およびDCの能力を、最初に、単一ペプチドエピトープに対しそれぞれの標準的刺激プロトコルに従って評価した。DCおよびトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を比較するために。未熟DCを、IL−4およびGM−CSFの存在下で自己単球を1週間培養することにより生成させた。成熟DCは、回収の24時間前の培地へのTNFαの添加により、未熟DCから得た。DC(未熟および成熟)を回収し、ペプチドを適用し、そしてCD8細胞およびペプチドを適用されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞の刺激に使用された手順に従って、精製されたCD8細胞と混合した。ショウジョウバエ(Drosophila)細胞は、図7に示されるとおり、チロシナーゼペプチドエピトープ689について評価される場合に、DCよりも一般により良好な刺激物質であることが見出された。さらに、未熟もしくは成熟いずれの表現型を表すDC(図8)も、規定されたペプチドを使用してAPCに適用した場合に、特異的CTL応答の導出においてショウジョウバエ(Drosophila)細胞ほど効率的でなかった。これは、免疫系中でDCにより演じられる支配的役割のため、とりわけ驚くべきことである。1ドナーでの比較試験を図9に示されるとおり実施した。特異的殺傷が、刺激物質としてハ
エ細胞を使用する場合に4種の異なるペプチドに対して生成された一方、未熟DCは無意味の特異的殺傷をもたらし、また、成熟DCは刺激に使用された4種のペプチドの1種のみに対する特異的殺傷をもたらした。
【0082】
細胞傷害性リンパ球の調製
抗CD8抗体での陽性選択により白血球成分分取(leukapheresis)サンプルから単離されたCD8+細胞を、ヒトクラスI分子(HLA−A2.1)、B7.1
、ICAM−1、LFA−3およびB7.2を発現するショウジョウバエ(Drosophila)細胞により提示される4種の異なる黒色腫関連ペプチドに対して刺激する。CD8+細胞を、IL−2およびIL−7の存在下にペプチドエピトープを添加された自己
単球で2回再刺激する。CTLをOKT3およびIL−2とともに非特異的に拡張する。CTL活性をMalme 3M細胞に対して測定し、また、CD8+ T細胞の純度をフ
ローサイトメトリーにより評価する。
【0083】
製造過程およびプロトコルは、優良実験室規範(Good Laboratory Practice)および優良製造規範(Good Manufacturing Practice)に従って行う。「優良実験室規範」および「優良製造規範」は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)により設定されている実験室および製造の実務の基準であり、かつ、当業者に容易に知られる。CTLは、正体(identity)、生存率、CTL活性、無菌性およびエンドトキシン含量についてモニターする。
【0084】
乳房および卵巣癌を治療するための本発明の方法における使用に適するペプチドエピトープの一覧を以下の表1に示す。以下の表1に列挙されるものに加えて広範なペプチドエピトープもまた、乳房および卵巣癌を治療するための本発明の方法での使用に適することができるが、但しこうしたペプチドはT細胞エピトープであることが、当業者に容易に明らかである。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
以下の実施例は本発明を具体的に説明する目的上提供されるが、しかし、本発明を該実施例の内容に制限しない。
【実施例】
【0088】
実施例1
ショウジョウバエ(Drosophila)抗原提示細胞の製造
シュナイダー(Schneider)S2細胞系を、発表された手順に従ってキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(オレゴン(Oregon)−R)卵から調製し、そしてアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)に寄託した(CRL 10974)。S2細胞は、10%ウシ胎児血清を補充された商業的シュナイダー(Schneider)ドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させる。
【0089】
S2細胞中でMHCクラスIおよび共刺激タンパク質を発現させるためのpRmHa−3プラスミドは、文献に記述されるとおり構築されたpRmHa−1発現ベクター由来であった。それは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を含有する。
【0090】
トランスフェクションのための相補DNAを以下のとおり調製した:
HLA−A2.1およびβ−2ミクログロブリン:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCR
B7.1:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCRICAM−1:発表された配列由来のプライマーを使用するK562細胞からの逆転写PCR
B7.2:発表された配列由来のプライマーを使用するHL−60細胞(ATCC CCL−240)からの逆転写PCR
LFA−3:発表された配列由来のプライマーを使用するHL−60細胞(ATCC CCL−240)からの逆転写PCR
【0091】
相補DNAは個別にpRmHa−3ベクターに挿入した。S2細胞を、リン酸カルシウム沈殿法を使用して、HLA−A2.1、B7.1およびICAM−1プラスミドDNA、ならびにphshneoプラスミドの混合物でトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされた細胞を、ジェネチシンを含有するシュナイダー(Schneider)培地中で培養することにより選択した。使用24時間前に、トランスフェクトされた遺伝子の発現をCuSO4の添加により誘導した。発現のレベルは、抗HLA−A2.1、抗B
7.1および抗ICAM−1抗体を使用するフローサイトメトリーにより評価した。30%以上の細胞によるHLA発現が、CD8+リンパ球の効率的なインビトロ活性化に必要
である。
【0092】
ヒトCD8+細胞の単離
CD8+細胞は、ダイナビーズ[Dynabeads]TM単離手順(ダイナル(Dyn
al))を使用する陽性選択により白血球成分分取サンプルから単離する。抗ヒトCD8マウスモノクローナル抗体(ヒトγグロブリン[ガンマガード(Gammagard)(R)]1ml中50μg)を、1%ヒト血清アルブミン(バクスター−ハイランド(Bax
ter−Hyland))および0.2%クエン酸ナトリウムを補充されたダルベッコのPBS中の洗浄された細胞に添加する。穏やかな混合を伴う4℃で45分のインキュベーション後に、ヒツジ抗マウスIgGで被覆されたダイナル(Dynal)磁性ビーズ(ダイナビーズ[Dynabeads]TM)を含有する同一緩衝液中で、1:1のビーズ対細胞の比で洗浄かつ再懸濁する。細胞およびビーズを滅菌管に入れ、そして4℃で45分間穏やかに混合する。この時間の終了時に、抗体結合された細胞を、製造元の説明書(ダイナル(Dynal))に従ってMPC−1(R)分離装置を使用して磁気的に除去する。C
D8細胞−ビーズ複合体の解離を、CD8ペプチド59-70(AAEGLDTQRFSG;
配列番号12)の存在下37℃で45分間のインキュベーションにより達成する。遊離ビーズを磁気的に除去し、そしてCD8細胞を計数しかつフローサイトメトリーにより分析して純度を評価する。CD8+細胞の回収は典型的に80%より大きい。表1は、抗CD
8抗体での陽性選択による正常ヒトPBMC調製物からの14の別個のCD8+調製物の
細胞組成を要約する。
【0093】
【表4】
【0094】
精製されたヒトCD8+細胞のインビトロ免疫感作
一次刺激
トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)S2細胞を、10%ウシ胎児血清およびCuSO4を補充されたシュナイダー(Schneider)培地
(106個の細胞/ml)中、27℃で24時間インキュベートする。細胞を回収し、洗
浄し、そして100μg/mlのヒトチロシナーゼ366-377を含有する昆虫X−プレス培
地(Insect X−press medium)(バイオウイタッカー(BioWhittaker))に再懸濁する。27℃で3時間のインキュベーション後に、S2細胞を、10%自己血清を補充されたRPMI培地(ギブコ(Gibco))中1:10の比でCD8+細胞と混合する。細胞混合物を37℃で4日間インキュベートし、その間にシ
ョウジョウバエ(Drosophila)細胞が死に絶える。第5日に、IL−2(20U/ml)およびIL−7(30U/ml)を添加して、チロシナーゼ特異的CTL集団を選択的に拡張する。
【0095】
再刺激
白血球成分分取の時点で得られた凍結自己CD8枯渇PBMCを融解し、洗浄し、そして10%自己血清(β2ミクログロブリンの供給源として)および20μg/mlのチロシナーゼ369-377を含有するRPMI培地中106個の細胞/mlで再懸濁する。γ線照射(5,000ラド)後に細胞を37℃で2時間インキュベートする。ダルベッコのPBSで洗浄することにより非接着細胞を除去する。10%自己血清および10μg/mlのチロシナーゼ369-377を含有するHepes緩衝RPMI培地中での90分間のインキュベ
ーションにより、接着性単球にチロシナーゼエピトープを添加する。上清を除去し、そしてショウジョウバエ(Drosophila)活性化されたCD8+細胞懸濁物(10%
自己血清を含むRPMI培地中3×106個の細胞/ml)を、1の接着性単球に対し1
0のCD8+細胞の比で添加する。37℃で3ないし4日の培養後に、IL−2(20U
/ml)およびIL−7(30U/ml)を、培地交換を伴い添加して、チロシナーゼ特異的CTL集団を選択的に拡張する。
【0096】
非特異的拡張
エフェクター細胞を、自己血清、抗CD3モノクローナル抗体(OKT(R)3)、IL
−2およびγ線照射された自己PBMCを補充されたRPMI培地中でそれらを培養することにより、非特異的に拡張する。
【0097】
活性および純度のアッセイ
CTLアッセイ
Malme 3M細胞を51Cr放出アッセイでの標的細胞として使用する。4%ウシ胎
児血清、1%HEPES緩衝液および0.25%ゲンタマイシンを含有するRPMI培地中の5×106個のMalme 3M細胞を、0.1mCiの51Crで37℃で1時間標
識する。細胞を4回洗浄し、かつ、10%ウシ胎児血清(ハイクローン(HyClone))を含むRPMI中105個の細胞/mlに希釈する。96穴マイクロタイタープレー
ト中で、100μlのエフェクターCTLおよび100μlのペプチド添加された51Cr標識Malme 3M標的細胞を、100:1、20:1および4:1(エフェクター:標的)の比で組合せる。K562細胞を20:1(K562:Malme 3M)の比で添加して、ナチュラルキラー細胞のバックグラウンド溶解を低下させる。非特異的溶解は非腫瘍性HLA−A2.1線維芽細胞系Malme 3を使用して評価する。51Crの自発的放出および最大放出を測定するための対照を二重で(in duplicate)包含する。37℃で6時間のインキュベーション後に、プレートを遠心分離し、そして上清を計数して51Cr放出を測定する。
【0098】
特異的溶解のパーセントは、以下の等式:
【0099】
【数1】
【0100】
を使用して計算する。
フローサイトメトリー。
【0101】
インビトロ活性化の前および後のCD8+細胞を、蛍光モノクローナル抗体およびFA
CS分析を使用して、細胞表面マーカーの数について分析した。健康なドナーからの細胞を使用する典型的な活性プロトコルからの結果を表2に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
活性および純度に加えて、CTL調製物を、無菌性およびエンドトキシン含量についてアッセイすることができる。
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
実施例2
黒色腫に対する細胞傷害性T細胞注入の試験
試験の目的
本実施例は、以下の因子:
1.インビトロ免疫感作後の再注入された自己CTLの安全性および忍容性;
2.制限希釈分析での全身循環の要因考慮(factoring)における注入されたCTLの動力学;
3.ラジオシントグラフィーによるCTLの全身の配置;
4.免疫組織学による生検された結節の細胞組成(CTL、TH、NK、B細胞);なら
びに
5.2ヶ月にわたる測定可能な傷害の退縮および応答の持続期間
に従って評価されるところの黒色腫の治療における細胞傷害性T細胞注入の有効性を教示する。
【0107】
患者集団
治療への適格性は、患者が測定可能もしくは評価可能であった組織学的に報告された切除不可能な悪性黒色腫およびHLA−A2表現型を有することを必要とした。治療前評価は、MRIもしくはCTスキャンによる脳の放射線学的評価、胸部および腹部のCT走査、ならびに、とりわけ皮膚およびリンパ節の身体検査を包含した。治療された患者の総数は15(9例の男性および6例の女性)であった。年齢は、58歳の平均を伴う33から75歳までの範囲にわたった。転移性疾患の平均持続期間は1.5年であった。アネルギーの状態が存在したかどうかを決定するための治療前皮膚試験を15例中14例の患者で実施し、14例中5例は評価された普遍的抗原の全7種について陰性と判定された。患者は、HLA−A2特異的モノクローナル抗体(BB7.2)を用いるFACS分析によりHLA−A2ハプロタイプについてスクリーニングした。サブタイプ分類(subtyping)はPCR分析により実施した。患者の1例を除く全部がHLA−A*0201で
あり、例外(患者08)はHLA−A*0205であった。
【0108】
エクスビボで生成された自己CTLでの治療
15例の患者を本臨床プロトコル下に治療した。全患者は、自己CTLの少なくとも単回注入を受領した。各患者に投与された周期の数および細胞の用量は表1に要約する。インビトロで生成された細胞の数は、アフェレーシス(aphaeresis)処置から単離されたPBMCの数、および各PBMC調製物中に存在するCD8+ T細胞の数のよ
うな患者関連の因子に依存した。インビトロで生成された細胞の全部をドナーに再注入したため、各患者に投与された用量は必然的に変動した。患者間の用量を正規化する試みにおいて、計算された「効力」得点を各用量について記録した。該値は、細胞の総数にペプチド添加された標的細胞で得られた溶解活性を掛けることにより得た。注入されたT細胞の用量は、4×107個の最小(患者08)から3.2×109個の最大(患者13)までの範囲にわたった。患者は各周期の終了時の彼らの臨床状態に基づいて第二、第三もしくは第四の治療周期に進入した。アフェレーシスサンプルから得られたPBMCの数は、とりわけその後の周期の開始が以前のものの終了に近かった場合に、付加的周期を受けている患者でより低い傾向があった。これは、前の周期の間に投与されたIFNα−2bによる持続性のリンパ球減少に帰される。単離されたナイーブなCD8+ T細胞の総数はP
BMC調製物のそれぞれ中のその割合に依存した。CD8+ T細胞のパーセントは患者
間で8%ないし31%の間で変動した。得られた拡張係数は最終的な細胞数にもまた寄与し、そして0.1から6.0倍の範囲にわたった。エクスビボでCTLを生成させるための手順は本明細および上の実施例1に教示される。
【0109】
IFNα−2bに対する応答におけるクラスIおよび黒色腫関連抗原のアップレギュレーション
インビボで黒色細胞腫を溶解する抗原特異的CTLの能力を高める試みにおいて、低用量のIFNα−2bを、CTL注入前連続5日間、および追加の4週間に週3回投与した。サイトカインに対するインビボ応答の一測定方法は、連続的時間点で得られる生検を特異的抗体での陽性染色についての免疫組織化学的分析により評価することである。連続的生検を、クラスIおよび抗原発現の双方の評価のため、複数の皮膚傷害を伴う1例の患者(患者04)で得た。生検は、クラスIおよびMART−1発現がいずれの治療前も弱く陽性であったことを示した(生検A)。10MU/m2の皮下注入の5日後に、これら2
種のマーカーの劇的な増大が示された(生検B)。チロシナーゼおよびgp100について、免疫組織化学的染色は治療前サンプルでそれぞれ陰性ないし弱く陽性であった(生検
A)。最初の5日のIFNα投与および13回の追加治療後に、これらの後者の抗原の発現が、染色された組織サンプル中で増大した(生検C)。
【0110】
エクスビボで生成されたCTLの抗原特異性
全患者からの生成されたCTLを、生検材料が系統を樹立するために利用可能であった場合、ペプチド添加されたT2標的、HLA−A2黒色腫細胞系(Malme3M)および自己黒色腫系統に対して、遊離日に評価した。細胞の各調製された用量をその細胞溶解活性について評価した。各ペプチド単独で、もしくは全4種のペプチドを同時にのいずれかを提示するペプチド添加されたT2細胞を使用して、各患者について生成されるCTL応答の特異性を決定した。内因性に発現された黒色腫関連抗原を担持する細胞を溶解する能力を、HLA−A2を合致された系統もしくは自己腫瘍系統で評価した。細胞溶解活性に加え、抗原特異性を、特異的ペプチド刺激に応答して作成される細胞内γインターフェロン産生の確立された検出方法で評価した。エクスビボプロトコルの終了時に生成されたCTLをこの方法により評価した。ペプチドのそれぞれに特異的な細胞の割合を個別に記録した。患者13からの各大量の(bulk)CD8培養物中の特異的細胞の数を、T細胞のその集団中で検出されるペプチド特異性のそれぞれを加えることにより計算した。特異的細胞の総数の増加を、各連続する治療周期で検出することができた。
【0111】
CTL治療後の腫瘍生検に浸潤するCD8およびCD4細胞の検出
治療の前、間および後の全患者からの生検サンプルが理想的であったと思われる。しかしながら、実験条件は制限された数の患者のみからの生検サンプルを見込んだ。腫瘍組織は試験に参入した15例の患者の5例から得た。2例の患者(患者08および13)において、生検サンプルは、T細胞療法後それぞれ5および6週で入手可能であった。組織サンプルの検査は、浸潤するCD8およびCD4双方の細胞の存在を示した。腫瘍サンプルの1つは、追跡検査の時点(T細胞の第二の注入後4週間)までに大きさが増大した、頭皮の後頭部領域の皮膚傷害から採取した。該生検は、リンパ球でひどく浸潤された組織の壊死を示した。他の生検は股関節置換手術の間に取り出された大腿骨頭部からであった。患者08からの皮膚傷害は一般的クラスIおよび特異的HLA−A2マーカー双方について強く陽性(4+)であった。チロシナーゼおよびgp100は弱く陽性(それぞれ1+および2+)であった一方、MART−1はこの同一のサンプルで陰性であった。患者13からの生検の領域もまた、より不均質な染色;HLA−A2.1分子の発現を欠く腫瘍細胞の明確な集団、およびMAAの1種もしくはそれ以上を伴い壊死性であった。しかしながら、無傷の組織領域は強いクラスI(4+)および黒色腫関連抗原の全部を示した。この後者のサンプルにおけるリンパ球浸潤は、腫瘍結節に深く浸潤するよりはむしろそれらを取り巻くようであった。しかしながら、腫瘍に直接関連した最高の割合の細胞はCD8細胞であった。これらの患者の双方からの治療前生検サンプルの欠如は、治療前の組織サンプル中の類似の型の浸潤する細胞の確認を予防した。
【0112】
T細胞療法後のCTスキャンは客観的応答を確認する
CTスキャンは治療前スクリーニング基準および治療後追跡検査の一部であった。患者10は治療前スキャン(99年6月23日)の5週間後に8×108個のCTLの単回注
入を受領した(99年7月27日)。注入1ヶ月後に胸部のCTスキャンを反復した場合(99年8月27日)に、肺傷害の大きさの劇的な減少が示された。同様に、患者14は、6.6×108個の細胞での第一の注入(99年10月5日)の3.5週間前に参入過
程の一部として胸部CTスキャンを受けた(99年9月10日)。11.5×108個の
細胞での第二の注入1ヶ月後の追跡CTスキャン(99年1月7日)は3個の別個の傷害の劇的な縮化を示した。患者13は前および後CTスキャンで測定されたような客観的応答もまた有した。傍気管腺症は周期I後に7.8cm2(試験前)から4.4cm2となり、そして周期II後に消失した。
【0113】
アネルギー状態の存在はCTLを生成させるもしくは臨床応答を予防する能力を排除しなかった
本プロトコル下で治療された患者の大部分は以前の医学的介入を受領していた。治療前皮膚試験を実施して、一団の7種の普遍的抗原に対するアネルギー応答が、エクスビボでCTLを生成させるかもしくは報告された臨床応答を予防するかのいずれかの不能と相関するかどうかを決定した。エクスビボでCTLを生成させる能力は、患者の治療前皮膚試験の結果と相関しなかった。患者03および04(双方とも混合型応答体(mixed responder))は、第二の周期の開始前に反復皮膚試験を受け、そしてアネルギーのままであったことは注目されるべきであろう。
【0114】
実施例3
乳房および卵巣腫瘍細胞を溶解することが可能なHER−2/neu特異的CTLの生成
われわれは、全部の形態の癌にこのアプローチを用いて標的を定めることができるかどうかを決定するために、他の腫瘍型にわれわれのCTL生成技術を適用することに興味をもった。HER−2/neuは、多くのヒトの癌、主として乳房、卵巣および結腸の腺癌において増幅かつ過剰発現されるEGFRに対する相同性をもつ癌原遺伝子である。それはしばしば攻撃的疾患と関連し、そして乏しい予後の指標である可能性がある。それはこれらの型の癌の可能な標的としていくつかの臨床試験で研究されている。
【0115】
1990年代早期に、HER−2/neu HLA−A2.1拘束性ペプチドエピトープが、コンピュータ補助ペプチド結合アルゴリズム、もしくは卵巣癌患者の腹水から単離されたCTLをマッピングすることのいずれかにより同定された(表3)。
【0116】
【表8】
【0117】
ペプチドの全部を合成し、同定番号(PRI#)を与え、そして、黒色腫関連のT細胞ペプチドエピトープについてわれわれが使用した同一の方法を利用してエクスビボでCTLを生成させる能力について評価した。CD8細胞を正常ドナーから単離して、既知のCTLペプチドエピトープを添加されたショウジョウバエ(Drosophila)細胞を用いてエクスビボでCTLを慣例に生成させる能力を決定した。ペプチド826、835、861および863はCTL生成の最高の頻度を有した(表4)。
【0118】
【表9】
【0119】
トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞は10種までの異なるペプチドエピトープを提示する独特の能力を有する(図10)一方、われわれは、これらのペプチドに対するCTLをエクスビボで生成することの頻度により4種のHER−2/neuペプチド、826、835、861および863を選択した。これら4種の異なるHER−2ペプチドは、トランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞の表面上に提示されたHLA−A2.1分子への弱いないし中程度の結合体(binder)を表す。われわれは、黒色腫関連ペプチドでのわれわれの経験が、弱いクラスI結合体が実際にそれらが天然のT細胞エピトープを表す場合に腫瘍細胞を認識する強力なCTLを一般に生成することを示唆しているため、弱いA2結合体を包含する傾向がある。われわれが標的を定める腫瘍関連タンパク質の大多数は自己抗原であり、そしてそれ自体、ウイルスペプチドとともにみられるクラスI分子に対する高親和性を有することを期待することができる。低ないし中程度の結合体は、一般に、腫瘍細胞を非常に効率的に溶解するCTLを生成させる。これは、ショウジョウバエ(Drosophila)細胞に対する低親和性結合体である(図3)がそれでもなおペプチド添加された標的細胞(T2)もしくはより重要には黒色腫細胞(Malme3M)双方を溶解することが可能な強力なCTLを慣例に生成させるエピトープを表す(図12)MART−1ペプチドで立証された。
【0120】
HER−2/neuはEGF−Rファミリーの1メンバーでありかつ増殖因子受容体として機能する。HER−2タンパク質はヒトにおいて胎児の発生の間に発現される。成体では、該タンパク質は多くの正常組織の上皮細胞中で弱く検出可能である。正常細胞において、HER−2遺伝子は単一コピーとして存在する。該遺伝子の増幅および/もしくは関連タンパク質の過剰発現が、乳房、卵巣、子宮、胃を包含する多くのヒト癌、および肺の腺癌で同定されている。HER−2とEGF−R受容体との間の配列の差異を表5に示す。われわれが評価した4種のHER−2ペプチドの3種は、2種のタンパク質の間の3個もしくはそれ以上のアミノ酸変化を有する。単一のアミノ酸変化は2種のタンパク質を区別するのに十分である。
【0121】
【表10】
【0122】
CTLが4週間のエクスビボ刺激プロトコル後に生成された後、われわれは、免疫化ペプチドを用いて調製されたHLA−A2.1四量体分子を使用して、ペプチド特異的細胞が存在したかどうかを評価した。図13に立証されるとおり、ペプチド特異的CTLを生成させる能力はドナー依存性であった。図A(ドナー261)において、該ドナーはペプチド835に対する強いCTL応答を示した(37.55%)。図B(ドナー262)において、ペプチド特異的CTLを835および861双方の四量体分子で検出することができる(それぞれ3.6%および15.1%)。これは、該刺激プロトコルの終了時にペプチド特異的CTLを保証するための複数のペプチドの使用を支持する。本エクスビボプロトコルは、多特異性CTLを比較的容易に生成させることを可能にする。
【0123】
抗ペプチドおよび抗腫瘍応答
完全なエクスビボプロトコルの完了後に、生成されたCTLを抗原特異性について評価した。CTLを生成させるために、第0日にショウジョウバエ(Drosophila)細胞に4種のHER−2ペプチドの組合せを添加した。4週のエクスビボ刺激プロトコルの終了時に、大量のCD8培養物を抗原特異性について評価した。免疫化ペプチドのそれぞれを添加されたT2細胞を標的細胞として使用した。図14に典型的な応答を描く。大量の培養物は4種のHER−2ペプチドのそれぞれに対する特異性を含有する。抗腫瘍応答を卵巣腫瘍細胞系(ATCC;HTB−77)で評価した。標的細胞系がHLA−A2.1拘束性でない場合、われわれは+/−アッセイ系を有するように細胞系をトランスフ
ェクトした。HLA−A2.1をHTB−77系統にトランスフェクトした場合、CD8エフェクター細胞による高められた殺傷が示された(図15、図AないしD)。個々のペプチドを代表するHER−2特異的エフェクターを評価して、この腫瘍細胞系上でのペプチドエピトープのそれぞれの提示を確認した。
【0124】
HLA−A2.1でトランスフェクトされた乳房腺癌細胞系(ATCC;HTB−131)もまた、HER−2特異的ペプチドエフェクターでの腫瘍溶解を立証する能力について評価された。ペプチド861に特異的なCTLは、HLA−A2.1でトランスフェクトされた場合にこの腫瘍細胞系を溶解することができた(図16)。
【0125】
腫瘍細胞の溶解に必要とされるIFNγ処理
HTB−77/A2.1細胞系は、ペプチド特異的溶解を立証するためにIFNγでの前処理を必要とする。細胞を、51Cr放出アッセイの開始前24時間、500U/mlのIFNγ(25ng/mlの比活性)で処理した。図17で、IFNγの添加は、HLA−A2.1でトランスフェクトされた細胞系の高められた溶解をもたらした。HLA−A2.1およびHER−2双方の表面発現に対するこの用量のIFNγの影響を決定するために、FACS分析を実施して、誘導の24および48時間後双方のこれらの分子のレベルを測定した。図18、図AおよびBはFACS分析の結果を描く。図Aで、IFNγでの誘導後24および48時間に、HTB−77細胞の表面上でのHER−2分子の促進は存在しなかった。HLA−A2.1でトランスフェクトされた細胞では、HER−2もHLA−A2.1も、類似の処理プロトコル後に表面の発現レベルの増大を立証しなかった。示されたことは、mRNAレベルをマイクロアレイDNAチップ分析により評価した場合のTAP−1の発現、ならびにHLA−DMおよび−DR、カテプシンSおよびDならびにカスパーゼ5のレベルの増大であった(図19)。これは、IFNγの存在下でHTB−77/A2.1細胞の促進殺傷が存在する理由を説明するとみられる。この特定の分子のアップレギュレーションは、HER−2分子のより効率的なプロセシングをもたらして目的のペプチドのより良好な提示を可能にするとみられる。
【0126】
ペプチド
合成ペプチドはペプチド合成機(ギルソン カンパニー インク(Gilson Company,Inc.))を使用して標準的なFmoc化学により作成した。全部のペプチドはC−8カラムでの逆相HPLCにより>95%純度まで精製した。純度および正体は、電子スプレーイオン化を用いる質量分析計を使用して確立した。黒色腫関連ペプチドは:ペプチド819はMART−1特異的であり(AAGIGILTV 配列番号6)、817および853は双方がgp100ペプチドであり(それぞれITDQVPFSV 配列番号4およびKTWGQYWQV 配列番号5)、チロシナーゼ特異的ペプチドは689および792であり、792は、ペプチド689により表される天然の配列(YMNGTMSQV 配列番号1)の翻訳後修飾されたバージョン(YMDGTMSQV 配列番号2)を表したを包含した。ペプチド826(CLTSTVQLV 配列番号7)および835(KIFGSLAFL 配列番号8)は、p185タンパク質のそれぞれ細胞内および細胞外ドメインからのHER−2/neu配列を表した。Pec6020(ALALAALLVV 配列番号10)Pec6025(ALLVVDREV 配列番号11)は卵巣腫瘍系統で検出される粘液素タンパク質を表す重なり合う配列であった。C−レクチンもまた卵巣腫瘍細胞系で検出されるタンパク質であり、そしてその配列からのペプチド(C−レクチン8)はKMASRSMRL 配列番号9により表される。
【0127】
インビトロ細胞傷害性アッセイ
標準的51Cr放出アッセイを実施して、T2細胞に添加された黒色腫関連ペプチドエピトープのCTLエフェクター細胞認識を測定した。収穫物3×106個のT2細胞を、RPMI+10%FBS(培地)中で成長させた。0.1mCiの51Crを添加し、そして水浴中37℃でインキュベートした。標識された細胞を10mlの4%洗浄液(RPMI+4%FBS)およびペレットに添加し、追加の2回洗浄し、そして自発的対洗剤に溶解された細胞の放射活性を記録するために0.2×106個/mLの最終濃度に培地で再懸濁した。細胞に20μg/mLの適切なペプチド(1種もしくは複数)を30分間適用した。50μLを、10、2、0.4および0.08×106個/mLのCD8エフェクタ
ー細胞をそれぞれ含有する各96穴プレートに添加し、これを37℃で6時間インキュベートし、回転しそして上清について収集した。
【0128】
フローサイトメトリーおよび四量体染色
細胞を、FACS緩衝液(PBS中1%BSA、0.02%NaN3)中4℃で30分
間のインキュベーション、次いで同一緩衝液での洗浄により、FITCもしくはPE結合モノクローナル抗体で標識した。細胞を、データ獲得およびそれのセルクェスト(CellQuest)ソフトウェアを用いるFACScanフローサイトメーター(ベクトン ディッキンソン(Becton Dickinson))での分析前に0.5%ホルムアルデヒド中で固定した。非特異的染色は、標識精製された一次抗体に対する使用された同一の二次抗体、もしくは一次抗体を直接標識した場合はアイソタイプを合致された対照を用いて測定した。四量体染色は、陰性対照として配列SLYVTVATL 配列番号43をもつHLA−A2.1特異的HIVgag四量体分子(ベックマン コールター(Beckman Coulter))を用いて実施した。HER−2特異的四量体は、配列CLTSTVQLV(826 配列番号7)、KIFGSLAFL(835 配列番号8)もしくはVMAGVGFSPYV(861 配列番号16)ペプチドを用いて作成した。PE標識四量体HLA−A2.1ペプチド複合体を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトCD8a(BD ファーマジン(BD PharMagin))モノクローナル抗体とともに使用して、エピトープ特異的CD8+ T細胞を、包装挿入物に記述されたとおり染色した。サンプルをベクトン ディスケンソン(Becton Disckenson)FACScanでの二色フローサイトメトリーにより分析し、そしてゲートされた(gated)CD8+ T細胞を、四量体HLA−A2.1ペプチド複合体での染色について検査した。
【0129】
実施例4
本エクスビボ刺激プロトコルを用いる付加的な乳房および卵巣特異的CTLの生成
われわれは、多様な腫瘍起源の数種の腫瘍抗原の全部の既知のHLA−A2.1拘束性ペプチドエピトープに対するCTL応答を生成する能力を立証した。われわれの当初の研究は黒色腫に焦点を当て、ここで、われわれは、MART−1、gp100およびチロシナーゼの黒色腫関連タンパク質に特異的な4種の異なるペプチドエピトープに特異的なCTLで治療された患者における客観的臨床応答を立証することが可能であった[Richardsら,Amer.Soc.Clin.Oncol.,カリフォルニア州サンフランシスコ(2001年5月)]。
【0130】
広範な他の癌に存在する他の腫瘍抗原に対するCTLを生じさせる能力を拡大するため、われわれは、数種の異なる腫瘍型に共通の腫瘍抗原に対する発表されたおよび新規の配列を選択した。これらは、AES、MUC−1、CEA、FBP、C−レクチン、NY−ESO−1、Pec60、CA−125、MAGE−3、テロメラーゼおよびG250を包含する。表7はこれらの抗原、発現の頻度およびそれらを発現する癌を記述する。われわれのエクスビボ刺激プロトコルを用いてのこれらのペプチドへの応答の頻度を表6に列挙する。
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
以下に本発明の特徴と態様を列挙する。
【0134】
1. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAGCは、癌と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、前記ペプチド分子はそれぞれが長さ約6ないし12アミノ酸であり);
b.前記癌を伴う被験体もしくは適するドナーからCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で刺激すること;
d.馴化成長培地(CGM)もしくはIL−2、IL−7よりなる群から選択されるサイトカインを含有する培地に前記CD8+細胞を添加すること(前記サイトカインは個別に
もしくは組合せで使用することができ);
e.前記被験体もしくは適するドナーから収集された懸濁されない末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球を、約1ないし50μg/mlの、前記nnAPCが同時に提示することができる前記ペプチドの1種と混合すること;
f.前記末梢血単球懸濁物を、所望の末梢血単球を除く懸濁物中の全部の成分を無効にするのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記各ペプチドを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着性末梢血単球と組み合わせること;および
j.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0135】
2. 前記nnAPCが約10までのペプチド分子を提示することが可能である、1.記載の方法。
【0136】
3. 前記ペプチド分子が長さ約8ないし10アミノ酸である、1.記載の方法。
【0137】
4. 前記ペプチド分子が約10nMないし100μMの濃度範囲にある、1.記載の方法。
【0138】
5. 前記サイトカイン成分がIL−2である、1.記載の方法。
【0139】
6. 前記サイトカイン成分が、組合せのIL−2およびIL−7である、1.記載の方法。
【0140】
7. γ線放射の線量が約3,000ないし7,000ラドである、1.記載の方法。
【0141】
8. γ線放射の線量が約5,000ラドである、1.記載の方法。
【0142】
9. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは癌と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり);b.前記癌を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を、約5,000ラドのγ線放射で照射すること;g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で、前記接着
性末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を、培地中のIL−2およびIL−7で
刺激すること;
l.適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量についてCD8+懸濁物
をアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0143】
10. 各ペプチドが長さ約8ないし10アミノ酸である、9.記載の方法。
【0144】
11. a.天然に存在しない抗原提示細胞系(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは黒色腫と関連する約15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であり、各ペプチドは長さ8ないし10アミノ酸であり);
b.前記黒色腫を伴う被験体からCD8+細胞を収集すること;
c.前記CD8+細胞を前記nnAPC細胞系で約6ないし7日間刺激すること;
d.前記CD8+細胞を培地中のIL−2およびIL−7で刺激すること;
e.前記被験体から収集された末梢血単球を、約20μg/mlの、前記nnAPCが提示することができる各ペプチドと混合すること;
f.前記CD8枯渇末梢血単球懸濁物を約5,000ラドのγ線放射で照射すること;
g.接着性末梢血単球を単離すること;
h.前記接着性末梢血単球に、約1μg/mlないし50μg/mlの前記エピトープを添加すること;
i.前記CD8+細胞を、1の末梢血単球に対し約10のCD8+細胞の比で前記接着性
末梢血単球と組み合わせること;
j.CD8+細胞および末梢血単球の前記組み合わせられた懸濁物を約6ないし7日間刺
激すること;
k.CD8+細胞および末梢血単球の前記懸濁物を培地中のIL−2およびIL−7で刺
激すること;
l.CD8+懸濁物を、適するCTL活性、純度、無菌性およびエンドトキシン含量につ
いてアッセイすること;ならびに
m.前記被験体にCD8+懸濁物を接種すること
を含んで成る、前記被験体の治療方法。
【0145】
12. 前記nnAPCが10のペプチドを提示する、11.記載の方法。
【0146】
13. 前記ペプチドが、チロシナーゼ369-377、チロシナーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29およびPec6025-33である、
12.記載の方法。
【0147】
14. ヒトクラスI HLA分子、結合分子および共刺激分子を発現する核酸でトランスフェクトされたキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)細胞由来の天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)であって、前記核酸によりコードされる15までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能であるnnAPC。
【0148】
15. 前記nnAPCが、10までの異なるペプチド分子を同時に提示することが可能である、14.記載の天然に存在しない抗原提示細胞nnAPC。
【0149】
16. 前記nnAPCが、以下の10種のペプチド分子、チロシナーゼ369-377、チロ
シナーゼ207-216、gp100209-217、gp100154-162、MART−127-35、HER−2/neu789-797、HER−2/neu369-377、C−レクチン8-16、Pec6020-29およびPec6025-33を同時に提示する、15.記載の天然に存在しない抗原提示細胞
nnAPC。
【0150】
17. 段階、
a.キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)卵から昆虫細胞系を調製すること;
b.前記昆虫細胞を、昆虫細胞を成長させるのに適する培地、好ましくはシュナイダー[Schneider]TMドロソフィラ(Drosophila)培地中で成長させること;
c.pRmHa−1発現ベクターからpRmHa−3プラスミドを作成すること(前記pRmHa−3プラスミドは、メタロチオネインプロモーター、金属応答コンセンサス配列、およびキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)から単離されたポリアデニル化シグナルを担持するアルコール脱水素酵素遺伝子を包含し);
d.前記pRmHa−3プラスミドに、ヒトクラスI HLA A2.1、B7.1、B7.2、ICAM−1、β−2ミクログロブリンおよびLFA−3の相補DNAを挿入すること(A2.1はいずれかのヒトクラスI DNA配列で置換することができ);
e.前記昆虫細胞を、phshneoプラスミド、および相補DNAを含有する前記pRmHa−3プラスミドでトランスフェクトすること;
f.前記昆虫細胞をCuSO4と接触させて前記昆虫細胞中のトランスフェクトされた遺
伝子の発現を誘導することによりnnAPCを創製すること
よりなる、15までのペプチド分子を同時に提示することが可能な天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)の製造方法。
【0151】
18. 前記nnAPCが10までのペプチドを提示することが可能である、17.記載の方法。
【0152】
19. 前記昆虫細胞系が、細胞を12日間成長させること、所望の細胞を同定することが可能であるペプチドをもつ前記所望の細胞を選択すること、ならびに前記所望の細胞をOKT3およびIL−2で拡張することにより調製される、17.記載の方法。
【0153】
20. 前記所望の細胞を同定することが可能な前記ペプチドが四量体である、19.記載の方法。
【0154】
21. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、1.記載の方法。
【0155】
22. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、9.記載の方法。
【0156】
23. 段階(a)の前記ペプチド分子が、配列番号1から42に示されるアミノ酸配列を有するペプチドから選択される、17.記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは、癌と関連する4から10の異なる抗原ペプチドを同時に提示し、そして前記抗原ペプチドはそれぞれが長さ6ないし12アミノ酸であり);
b.被験体もしくは適するドナーから収集されたCD8+T−細胞を前記nnAPCで刺激すること;
c.IL−2およびIL−7よりなる群から選択される1以上のサイトカインを含有する培地に前記刺激されたCD8+T−細胞を添加することにより、前記刺激されたCD8+T−細胞を増加させること;
d.前記被験体もしくは前記適するドナーから収集された末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球と、1ないし50μg/mlの前記4から10の抗原ペプチドの各々との、懸濁物を調整すること;
e.前記懸濁物を、前記懸濁物中の全ての成分を滅菌し且つ前記末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球の増殖を予防するのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;f.接着性末梢血単球もしくは接着性CD−8枯渇末梢血単球を単離すること;
g.前記接着性末梢血単球もしくは前記接着性CD−8枯渇末梢血単球に、1μg/mlないし50μg/mlの前記4から10の異なる抗原ペプチドの各々を添加すること;および
h.前記増加されたCD8+T−細胞を、1の前記ペプチドを添加された末梢血単球もしくは1の前記ペプチドを添加されたCD−8枯渇末梢血単球に対して10のCD8+T−細胞の比で、前記ペプチドを添加された接着性末梢血単球もしくは前記ペプチドを添加されたCD−8枯渇末梢血単球で再刺激し、それにより癌を伴う被験体の治療に用いるための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成すること;
を含んで成る、癌を伴う被験体の治療に用いるための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の製造方法。
【請求項2】
前記抗原ペプチドが、チロシナーゼ、gp100、MART−1、HER2/neu、AES、MUC−1、CEA、C−レクチン、NY−ESO−1、Pec60、CA−125、MAGE−3、テロメラーゼおよびG250から成る群から選択される癌関連抗原に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抗原ペプチドが、チロシナーゼ369−377YMNGTMSQV(配列番号1)、チロシナーゼ369−377YMDGTMSQV(配列番号2)、チロシナーゼ207−216FLPWELFLL(配列番号3)、gp100209−217ITDQVPFSV(配列番号4)、gp100154−162KTWGQYWQV(配列番号5)、およびMART−127−35AAGIGILTV(配列番号6)、HER−2/neu789−797CLTSTVQLV(配列番号7)、HER−2/neu369−377KIFGSLAFL(配列番号8)、HER−2/neu48−56HLYQGCQVV(配列番号13)、HER−2/neu650−658PLTSIISAV(配列番号15)、HER−2/neu773−782VMAGVGSPYV(配列番号16)、HER−2/neu971−979ELVSEFSRM(配列番号18)、AES128−135GPLTPLPV(配列番号19)、MUC−1950−958STAPVHNV(配列番号20)、CEA571−579YLSGANLNL(配列番号21)、L−レクチン8−16KMASRSMRL(配列番号9)、NY−ESO−1157−165CSLLMWITQC(配列番号24)、NY−ESO−1157−165VSLLMWITQV(配列番号25)、NY−ESO−1155−163QLSLLMWIT(配列番号26)、Pec6020−29ALALAALLVV(配列番号10)、Pec6025−33ALLVVDREV(配列番号11)、CA−125157−165YLETFREQV(配列番号27)、CA−125255−263VLLKLRRPV(配列番号28
)、CA−125337−345GLQSPKSPL(配列番号29)、CA−125546−554ELYIPSVDL(配列番号30)、CA−125898−906KALFAGPPV(配列番号31)、CA−125414−422FMWGNLTLA315(配列番号32)、MAGE−3271−279FLWGPRALV(配列番号33)、テロメラーゼ540−548ILAKFLHWL(配列番号34)、テロメラーゼ865−873RLVDDFLLV(配列番号35)およびG250245−262HLSTAFARV(配列番号36)から成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程aの前記4から10の異なる抗原ペプチドのそれぞれが10nMないし100μMの濃度範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のサイトカインがIL−2である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1以上のサイトカインが、IL−2およびIL−7の組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
γ線放射の線量が3,000ないし7,000ラドである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
γ線放射の線量が5,000ラドである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、乳がん、卵巣癌および黒色腫から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記癌が黒色腫であり、前記4から10の抗原ペプチドがチロシナーゼ369−377YMNGTMSQV(配列番号1)、チロシナーゼ369−377YMDGTMSQV(配列番号2)、チロシナーゼ3207−216FLPWELFLL(配列番号3)、gp100209−217ITDQVPFSV(配列番号4)、gp100154−162KTWGQYWQV(配列番号5)、MART−127−35AAGIGILTV(配列番号6)から成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項1】
a.天然に存在しない抗原提示細胞(nnAPC)を調製すること(前記nnAPCは、癌と関連する4から10の異なる抗原ペプチドを同時に提示し、そして前記抗原ペプチドはそれぞれが長さ6ないし12アミノ酸であり);
b.被験体もしくは適するドナーから収集されたCD8+T−細胞を前記nnAPCで刺激すること;
c.IL−2およびIL−7よりなる群から選択される1以上のサイトカインを含有する培地に前記刺激されたCD8+T−細胞を添加することにより、前記刺激されたCD8+T−細胞を増加させること;
d.前記被験体もしくは前記適するドナーから収集された末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球と、1ないし50μg/mlの前記4から10の抗原ペプチドの各々との、懸濁物を調整すること;
e.前記懸濁物を、前記懸濁物中の全ての成分を滅菌し且つ前記末梢血単球もしくはCD−8枯渇末梢血単球の増殖を予防するのに必要な十分な線量のγ線放射で照射すること;f.接着性末梢血単球もしくは接着性CD−8枯渇末梢血単球を単離すること;
g.前記接着性末梢血単球もしくは前記接着性CD−8枯渇末梢血単球に、1μg/mlないし50μg/mlの前記4から10の異なる抗原ペプチドの各々を添加すること;および
h.前記増加されたCD8+T−細胞を、1の前記ペプチドを添加された末梢血単球もしくは1の前記ペプチドを添加されたCD−8枯渇末梢血単球に対して10のCD8+T−細胞の比で、前記ペプチドを添加された接着性末梢血単球もしくは前記ペプチドを添加されたCD−8枯渇末梢血単球で再刺激し、それにより癌を伴う被験体の治療に用いるための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成すること;
を含んで成る、癌を伴う被験体の治療に用いるための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の製造方法。
【請求項2】
前記抗原ペプチドが、チロシナーゼ、gp100、MART−1、HER2/neu、AES、MUC−1、CEA、C−レクチン、NY−ESO−1、Pec60、CA−125、MAGE−3、テロメラーゼおよびG250から成る群から選択される癌関連抗原に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抗原ペプチドが、チロシナーゼ369−377YMNGTMSQV(配列番号1)、チロシナーゼ369−377YMDGTMSQV(配列番号2)、チロシナーゼ207−216FLPWELFLL(配列番号3)、gp100209−217ITDQVPFSV(配列番号4)、gp100154−162KTWGQYWQV(配列番号5)、およびMART−127−35AAGIGILTV(配列番号6)、HER−2/neu789−797CLTSTVQLV(配列番号7)、HER−2/neu369−377KIFGSLAFL(配列番号8)、HER−2/neu48−56HLYQGCQVV(配列番号13)、HER−2/neu650−658PLTSIISAV(配列番号15)、HER−2/neu773−782VMAGVGSPYV(配列番号16)、HER−2/neu971−979ELVSEFSRM(配列番号18)、AES128−135GPLTPLPV(配列番号19)、MUC−1950−958STAPVHNV(配列番号20)、CEA571−579YLSGANLNL(配列番号21)、L−レクチン8−16KMASRSMRL(配列番号9)、NY−ESO−1157−165CSLLMWITQC(配列番号24)、NY−ESO−1157−165VSLLMWITQV(配列番号25)、NY−ESO−1155−163QLSLLMWIT(配列番号26)、Pec6020−29ALALAALLVV(配列番号10)、Pec6025−33ALLVVDREV(配列番号11)、CA−125157−165YLETFREQV(配列番号27)、CA−125255−263VLLKLRRPV(配列番号28
)、CA−125337−345GLQSPKSPL(配列番号29)、CA−125546−554ELYIPSVDL(配列番号30)、CA−125898−906KALFAGPPV(配列番号31)、CA−125414−422FMWGNLTLA315(配列番号32)、MAGE−3271−279FLWGPRALV(配列番号33)、テロメラーゼ540−548ILAKFLHWL(配列番号34)、テロメラーゼ865−873RLVDDFLLV(配列番号35)およびG250245−262HLSTAFARV(配列番号36)から成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程aの前記4から10の異なる抗原ペプチドのそれぞれが10nMないし100μMの濃度範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記1以上のサイトカインがIL−2である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1以上のサイトカインが、IL−2およびIL−7の組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
γ線放射の線量が3,000ないし7,000ラドである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
γ線放射の線量が5,000ラドである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、乳がん、卵巣癌および黒色腫から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記癌が黒色腫であり、前記4から10の抗原ペプチドがチロシナーゼ369−377YMNGTMSQV(配列番号1)、チロシナーゼ369−377YMDGTMSQV(配列番号2)、チロシナーゼ3207−216FLPWELFLL(配列番号3)、gp100209−217ITDQVPFSV(配列番号4)、gp100154−162KTWGQYWQV(配列番号5)、MART−127−35AAGIGILTV(配列番号6)から成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【図1】
【図2(A−B)】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図6(C)】
【図7(A−B)】
【図8】
【図9(A)】
【図9(B)】
【図9(C)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(A)】
【図13(B)】
【図14】
【図15(A−B)】
【図15(C−D)】
【図16】
【図17】
【図18(A−B)】
【図19】
【図2(A−B)】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図5(C)】
【図6(A)】
【図6(B)】
【図6(C)】
【図7(A−B)】
【図8】
【図9(A)】
【図9(B)】
【図9(C)】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(A)】
【図13(B)】
【図14】
【図15(A−B)】
【図15(C−D)】
【図16】
【図17】
【図18(A−B)】
【図19】
【公開番号】特開2012−97117(P2012−97117A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20842(P2012−20842)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2010−54732(P2010−54732)の分割
【原出願日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【出願人】(598093026)オーソ−マクニール・フアーマシユーチカル・インコーポレーテツド (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2010−54732(P2010−54732)の分割
【原出願日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【出願人】(598093026)オーソ−マクニール・フアーマシユーチカル・インコーポレーテツド (25)
【Fターム(参考)】
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