説明

腰部固定ベルト

【課題】腰部の痛みや、長時間の労働などによる腰部疲れ軽減のために腰部に巻き付ける固定帯において、装着時の身体からの発汗による水分を吸水する機能を待たせた腰部固定ベルトを提供する。
【解決手段】全体が表布と裏布で構成され、長さ方向の両端部に雌雄の係止手段が設けられ、長さ方向の一部に伸縮部が設けられた腰部固定ベルトにおいて、その長さ全体の各部位において表布と裏布の間に急速吸水材が挟持されたことを特徴とする腰部固定ベルト構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰部の痛みや、長時間の労働などによる腰部疲れ軽減のために腰部に巻き付ける固定帯において、装着時の身体からの発汗による水分を急速吸水・蒸発散する機能を待たせた腰部固定ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働環境の変化に伴い、長距離トラックやタクシーの運転手にみられる長時間の運転姿勢に伴う腰痛、過激な運動による頸椎損傷による腰痛、オフィス事務に伴う所謂冷房病と言われる腰痛など、大勢の人々が様々な原因による腰痛に悩まされている。
その対策として、軽度の腰痛には古来からの腹巻き着用や、腰椎損傷などの重傷の腰痛には医療用コルセットの装着による痛みの軽減や機能回復目的など、腰部を固定する衣類等に依存しているのが現状である。
【0003】
先行事例を見ると、特にスポーツ用として運動に対する支障を最小限にするため、薄手の通気性伸縮素材を主体に構成し、ボーン折れ防止のための保護ボーンを背部に装着する腰部保護用衣類が提案されている(特許文献1)
また、腰痛の予防、治療に適するとして帯形状の本体とその背部に脊柱を中心として左右対称にステーを配置する構造の腰部固定帯が提案されている。(特許文献2)
また、腰部を温めかつ細菌の繁殖を抑制するため、遠赤外線を放射する特殊セラミックスと銀イオンを有する無機系抗菌剤を含有する高性能特殊セラミックスを練り込んだ繊維と通常繊維との混紡のメッシュ生地を用いた腰部保護帯が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特許第2702668号 公開広報
【特許文献2】 特開2009−240738号 公開広報
【特許文献3】 実用新案登録第3067244号 公開広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、何れの先行事例をはじめ多くの市場製品は、腰痛の軽減や治療に主眼を置いているために、薄く、軽く、機能しやすい構造となっていることは認められるものの、装着時の身体からの発汗によるあせもや皮膚疾患等に対する方策や構造となっていないことが明らかである。
通気性の素材を用いる提案も多く見られるが、素材の通気性が抜群であってもこれら腰部固定帯などは肌に近い位置に装着されるため、外装衣服によって該通気性が遮られ、逆に通気性素材に汗などが多量に保持されることになり、あせもや皮膚障害をもたらす二次障害への対策が不十分と言わざるを得ないのが現状である。
特に医療用コルセットなどは、腰部固定が主体であるために用いられる素材も堅固なものであることが条件であり、装着者は時には床ずれに近い二次障害を発することも珍しくないのが実情である。
本件発明においては、腰部固定帯などの装着者の悩み解決のために身体からの発汗を一時的に急速吸水・蒸発散させる機能を織り込んだ腰部固定ベルトを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、全体が主に表布と裏布で構成され、長さ方向の両端部に雌雄の係止手段が設けられ、長さ方向の一部に伸縮部が設けられた腰部固定ベルトにおいて、その長さ全体の部位において表布と裏布の間に急速吸水材が挟持されたことを特徴とする腰部固定ベルトとした。
本腰部固定ベルトに用いる急速吸水材は、繊維の体積の10倍におよぶ水分を急速に吸水する素材を、表布(装着時に身体の外側となる部位:以下同じ)と裏布(装着時に身体の肌側がとなる部位:以下同じ)の間に挟持させることで、発汗が伴っても身体表面の水分残留を極力縮小し、装着者の装着部肌面が常に濡れ状態となる危険性を大幅に軽減できる構造としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記伸縮材が設けられる伸縮部以外の全部位の周長部に、表布と裏布に挟持させた非伸縮性の伸び止め芯材を縫合することを特徴とする請求項1に記載の腰部固定ベルト構造とした。
このことは、腰部固定ベルトに用いる表布、裏布、伸縮材、急速吸水材で構成される腰部固定ベルトにおいて、伸縮部のみが伸張するのではなく素材全体が伸張し、腰部固定ベルト装着後に伸縮材以外の素材が伸びることによる、腰部固定ベルトの緊張度が弛緩するのを防止するための構造としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、伸縮部に設けられる伸縮材と急速吸水材が、長さ方向における周長部において表布と裏布とに縫合されず開放状態であること、更に、前記急速吸水材が隣接する取り付け部位において、長さ方向の一方が表布、裏布、急速吸水材と一体縫合され、他端が開放状態にありかつ複数の細い伸縮部材で固着する構造を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の何れかに記載の腰部固定ベルトとしている。
請求項1における腰部固定ベルトにおいて、表布と裏布を伸縮性の優れた素材を用いかつ伸縮性を発揮できる縫合技術をもってすれば、身体装着時十分に呼吸しやすい伸縮性に優れた製品を創出することは可能であるが、より一層、締付け感と伸縮素材の機能を十分に発揮させるには、長さ方向における周長部位において伸縮材と急速吸水材は表布及び裏布と縫合せず開放状態とし、伸縮部の伸縮度を最大限活用させる構造とした。
また、伸縮部に挟持する急速吸水材は伸縮性が低く、伸縮部を十分な伸縮性を発揮させるには、長さ方向において急速吸水材の一端は開放状態が好ましいのであり、洗濯等によって偏りを防止するため、該解放状態の端部は複数の細い伸縮部材で固着することにより、現在の急速給水材の伸縮に対して非伸縮性であることの難点を解消する構造としている。
【発明の効果】
【0009】
本件発明の腰部固定ベルトを装着することにより、主に高温環境や勤労過多、軽度・重度の運動により発汗に伴う汗水分を表布と裏布に挟持させた急速吸水材が吸収し、外部に適宜蒸発散による放出する働きが機能し、肌と腰部固定ベルトの摩擦による肌荒れ、肌ずれなどの二次障害の発生を防止でき、快適な肌環境を保持することが可能となる。
また、医療用や介護用のコルセットの内側に施用することで発汗による肌荒れや床ずれに似た症状の大幅な緩和が期待できるため、損傷した腰部の機能回復への手助けにも貢献できるし、医療用コルセットに本件発明の腰部固定ベルトの仕様・機能を応用展開することによって新たなコルセットの創出にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 請求項1に係る実施例1の腰部固定ベルト平面図(表面・裏面)
【図2】 請求項1に係る実施例1の腰部固定ベルト部材・部位別展開図
【図3】 請求項1に係る実施例2の腰部固定ベルト平面図(表面・裏面)
【図4】 請求項1に係る実施例3の腰部固定ベルト平面図(表面・裏面)
【図5】 請求項1に係る実施例4の腰部固定ベルト平面図(表面・裏面)
【図6】 請求項1に係る実施例4の腰部固定ベルト平面図(展開・緊縮手順)
【図7】 請求項2に係る腰部固定ベルトの心材縫合平面図
【図8】 請求項3に係る腰部固定ベルトの部材・部位別展開図
【図9】 図8における円で囲んだAカ所の拡大詳細図
【図10】 図8における円で囲んだBカ所の拡大詳細図
【発明を実施するために形態】
【0011】
請求項1に記載した本件発明の腰部固定ベルトについて図1〜図6を用いて実施例1〜実施例4として具体的に説明する。
【実施例1】
本件発明の実施例1に関する腰部固定ベルト1を図1〜図2を用いて説明する。
図1の(表面)は装着者の外側に相当し(裏面)は装着者の内側(肌側)に相当する構造である。
本件発明の腰部固定ベルト1は、厚み方向ではその全長に亘って肌側を形成する裏布2と外側を形成する表布3と、該裏布2と該表布3に狭持される急速吸水材5で構成し、さらに伸縮部7には平板状ゴム製などの伸縮材4が挟持される構造とし、長さ方向においては両端に係止部6と中央部には腰部背側当接部8と、該腰部背側当接部8と係止部6の中間部に伸縮部7とが連接して設けられる。
なお、本件発明においての急速吸水材には、本件発明の出願時点においてベルオアシス(帝人ファイバー株式会社の登録商標)が最も好ましい素材であるが、本件発明においてはベルオアシスに限定するものではなく本件発明の目的を達するための同等機能素材を全て包摂するものであり、以下の実施例においても同様とする。
【0012】
腰部背側当接部8が腰部固定ベルト1の略中央部に設けられているので、その腰部背側当接部8を装着者が自身の背に当接させたうえ、係止部6を身体の両側より引き寄せ、装着者の腹部位置において重ね会わせて、表布3と裏布2に縫合などにより一方の係止部6と他方の係止部6により係止・装着し、腰部背側当接部8と係止部6の中間部に設けた伸縮部7の伸縮しようとする引っ張り力により装着者の腰部を包み込むように補強固定する役目を果たすようにした腰部固定ベルト1を創出した。
【0013】
図2は本件発明の腰部固定ベルト1における構造の厚み方向に分解展開したものであり、本件発明の腰部固定ベルト1は、係止材61を除き、伸縮部7が4層(イ)(ロ)(ハ)(ニ)で構成され、係止部6及び腰部背側当接部8が3層(イ)(ロ)(ニ)の構造となっている。この順序で重ね会わせて各連接部位が縫合などにより固定され腰部固定ベルト1を形成する。
以下に前記3層及び4層の各部位を詳細に説明する。
【0014】
図2の(イ)の1層目は本件発明の腰部固定ベルト1の装着者における最も肌側に位置する層となる裏布2であり、長さ方向の全体を機能ごとに5分割して構成しており、両端の係止部6と腰部背側当接部8その中間部に設けられる平板状ゴム製などの伸縮部7とを連接して形成され、裏布2の素材は良好な通気性と吸汗速乾性を有し若干の伸縮機能を有する布が最適である。
【0015】
次いで(ロ)の2層目は急速吸水材5で構成される吸水層であり裏布2と表布3と同様に、長さ方向に全体に5分割で構成される。
次いで(ハ)の3層目は平板状ゴム性などの伸縮材4で構成される伸縮層であり腰部背側当接部8と係止部6の中間に位置される。
次いで(ニ)の4層目は表布3として裏布2と相対するように全体を機能ごとに5分割して構成されており、両端の係止部6と腰部背側当接部8その中間部に設けられる平板状ゴム製などの伸縮部7とを連接して形成され、その素材は裏布2と同様に良好な通気性と吸汗速乾性を有し若干の伸縮機能を有する布が最適である。
【0016】
また、本件発明の腰部固定ベルト1には装着者が腰部に装着した場合に重ね会わせた後に係止するため、両端の係止部6における一方の裏布2面には雄機能を有する係止材61が二の字なるように二本を長さ方向に並行に縫合などによって固着され、他方の表布3には係止材61と係止可能な雌機能を有する係止素材(パイル生地相当素材)62によって構成し、装着者が身体の前面で係止する構造となっている。
【0017】
実施例1において、伸縮部7は腰部背側当接部8と係止部6の中間部2カ所設けることしているが、伸縮部7は本件発明に制約されず何れか1カ所のみ設けても何ら差し支えなく、その位置に関しても本件発明の目的が達せられる構造であれば、その構成と構造に関して全てを包摂するものとする。
【実施例2】
【0018】
本件発明の実施例2に関する腰部固定ベルト1について図3を用いて説明する。
本実施例2は前記実施例1の応用展開した腰部固定ベルトである。
図3の(表面)は装着者の外側に相当し、(裏面)は装着者の肌側に相当する構造である。
本実施例の腰部固定ベルト1は、全体の厚み方向では肌側を形成する裏布2と外側を形成する表布3と急速吸水材5で全体を構成し、伸縮部7には更に平板状ゴム製などの伸縮材4が挟持され、長さ方向においては両端に係止部6とその中間部には伸縮部7と腰部背側当接部8と腰部横腹側当接部9とが連接して設けられる。
【0019】
腰部背側当接部8が腰部固定ベルト1の一方側に設けられ、該腰部背側当接部8の略反対側に相当する位置に伸縮部7が設けられているので、該腰部背側当接部8を装着者が自身の背に当接させたうえ、腰部固定ベルト1の余長の長い方の係止部6をたぐり寄せ腰部横腹側当接部9を装着者の横腹側に当接後、腰部の横部位に位置する係止部6に他方の係止部6とを重ね会わせて、一方の係止部6の裏布2に縫合した係止材61を他方の表布3の係止素材62により係止して身体に装着し、腰部横腹側当接部9と係止部6の中間部に設けた伸縮部7の伸縮しようとする引っ張り力により装着者の腰部位を包み込むように補強・固定する役目を果たすようにした。
【0020】
本実施例2の腰部固定ベルト1の構造の厚み方向の構成に関しては、伸縮部7が1カ所に設けられている構造が特徴でありその構成を除けば実施例1に相当する構成と同様範囲であることに鑑み詳細の図示及び説明を省略する。
なお、伸縮部7を腰部横腹側当接部9と係止部6の中間部に設けることしているが伸縮部7は本実施例の図示に制約されず左右何れかに設けても何ら差し支えなく、その位置に関しても本件発明の目的が達せられる構造であれば、その構成と構造に関して全てを包摂するものとする。
【実施例3】
【0021】
本件発明の実施例3に関する腰部固定ベルト1について図4を用いて説明する。
本実施例3は前記実施例1の構成をベースに、より高機能化を図った腰部固定ベルト1である。
本実施例の腰部固定ベルト1は、厚み方向では実施例1同様にその全長に亘って肌側を形成する裏布2と外側を形成する表布3と、該裏布2と該表布3に狭持される急速吸水材5で構成し、さらに伸縮部7には平板状ゴム製などの伸縮材4が挟持される構造とし、長さ方向においては両端に係止部6と中央部には立体裁断された裏布2及び表布3並びに速乾吸水材5で構成する立体裁断腰部背側当接部81、82と、該立体裁断腰部背側当接部8と係止部6の中間部に伸縮部7とが連接して設けられる。
【0022】
立体裁断腰部背側当接部81、82が腰部固定ベルト1の略中央部に設けられているので、該立体裁断腰部背側当接部81、82を装着者が自身の背に当接させたうえ、係止部6を身体の両側より引き寄せ、装着者の腹部位置において重ね会わせて、裏布2と表布3に縫合などにより一方の係止部6の裏布2面に固着した雄機能を有する係止材61と他方の係止部6の前記係止材61と係止可能な雌機能を有する係止素材62により身体に係止・装着し、立体裁断腰部背側当接部81、82と係止部6の中間部に設けた伸縮部7の伸縮しようとする引っ張り力により装着者の腰部を包み込むように補強固定する役目を果たすようにした腰部固定ベルト1を創出した。
【0023】
本実施例3の腰部固定ベルト1の構造の厚み方向の構成に関しては、実施例1に相当する構成と同様範囲であることに鑑み詳細の図示及び説明を省略する。
なお、前記立体裁断腰部背側当接部81、82は本実施例の図示に制約されず複数の立体裁断布を用いても単体の立体裁断布を用いても本件発明においては何ら差し支えない。
【0024】
本実施例3において、伸縮部7を立体裁断腰部背側当接部81、82と係止部6の中間部に設けることとしているが伸縮部7は本実施例の図示に制約されず左右何れかに設けても何ら差し支えなく、その位置に関しても本件発明の目的が達せられる構造であれば、その構成と構造に関して全てを包摂するものとする。
【0025】
本実施例の腰部固定ベルト1の最大の特徴は、立体裁断腰部背側当接部81、82に立体裁断された部材を用いることにより、装着者が本実施例の腰部固定ベルト1を装着した場合、背骨下部から腰椎と骨盤上部にいたる範囲まで、略同じ緊縮度を確保できるため、上部は腹圧の醸成、中間部は腰椎を下部は骨盤の固定に寄与するなど腰部全域に亘っての保温、圧迫、固定などの効用を発揮できることにある。
【実施例4】
【0026】
本件発明の実施例4に関する腰部固定ベルト1について図5〜図6を用いて説明する。本実施例4は前記実施例3をベースに、より緊張度を高める機能を有する腰部固定ベルト1である。
本実施例の腰部固定ベルト1は、厚み方向では実施例1同様にその全長に亘って肌側を形成する裏布2と外側を形成する表布3と、該裏布2と該表布3に狭持される急速吸水材5で構成し、さらに伸縮部7には平板状ゴム製などの伸縮材4が挟持される構造とし、長さ方向においては図5に示すとおり両端に係止部6と中央部には立体裁断された裏布2及び表布3並びに速乾吸水材5で構成する立体裁断腰部背側当接部81、82と、該立体裁断腰部背側当接部81、82と係止部6の中間部に伸縮部7とが連接して設けられ、更に、係止部6の、立体裁断腰部背側当接部81寄りに緊縮ベルト10を固着し、立体裁断腰部背側当接部81の係止部6寄りにWカン(「2個の環」以下同じ)11を縫合などにより固着し、該緊縮ベルト10の端部には係止材61が固着されている構造としている。
【0027】
本実施例4の腰部固定ベルト1の構造の厚み方向の構成に関しては、実施例1に相当する構成と同様範囲であることに鑑み詳細の図示及び説明を省略する。
なお、本実施例4において、伸縮部7を立体裁断腰部背側当接部81と係止部6の中間部に設けることとしているが伸縮部7は本実施例の図示に制約されず左右何れかに設けても何ら差し支えなく、その位置に関しても本件発明の目的が達せられる構造であれば、その構成と構造に関して全てを包摂するものとする。
【0028】
本実施例の腰部固定ベルト1の最大の特徴は、図6の(イ)(ロ)(ハ)に示したように立体裁断腰部背側当接部81と係止部6の中間にWカン11を通じて緊縮ベルト10を折り返してその端部を係止部6に係止材61により固定させることで、装着者が本実施例の腰部固定ベルト1を装着した後に、装着者の意図に基づき適宜な緊縮度を自由に調節・確保できるようにしたことであり、常に緊縮度の微調整やハード性を求める着用利用者に最適な機能を持たせる構造・機能としたことである。
【0029】
請求項2について、図7を用いて説明する。
本件請求項1の腰部固定ベルト1の構成・構造によると、腰部を席巻した場合の緊張を伸縮部7と裏布2及び表布3の伸縮機能を合わせて活用することとしているが、通常の布地自体には伸縮機能が殆ど存在しないものの、裏布2や表布3に用いる素材によっては、腰部固定後に身体の動きに連動して裏布2や表布3が伸びきり状態に至り伸縮部7の伸縮度を超越する伸張り伸縮の回復が見込めず、腰部固定状態が弛緩することなどの欠点が発生する。
【0030】
このことを未然に改善し、裏布2や表布3の素材の選択制の自由度を高めるための構造を創世した。
図5では、本件発明の腰部固定ベルト1の周長部において、伸縮部7を除いてその他の部位に伸張度が極めて小さい非伸縮性の伸び止め芯材11を裏布2と急速吸水材5及び表布3と共に縫合する構造とした。
この構造とすることにより、装着者が本件発明の腰部固定ベルト1を装着した場合の緊張度は、常に伸縮部7に用いた平板状ゴムなどの伸縮材4の一定の緊張度合いによって腰部固定がなされ、時間経過と共に弛緩する弱点を克服できるうえ、装着者の呼吸の変動による息苦しさも惹起しない機能を有することとなる。
【0031】
請求項3について図8〜図10を用いて説明する。
本件発明の腰部固定ベルト1は、急速吸水材5を本件発明の腰部固定ベルト1の全長に亘って裏布2と表布3とに挟持させ、装着者の腰部固定ベルト1の装着に伴って発生する発汗による汗や水分を急速吸水し、表布3の表面より蒸発散せしめることを最大の目的としている。
しかしながら、高吸水・高吸湿繊維であるベルオアシスに代表される急速吸水材5の繊維製品は一般的に伸張度が極端に小さいのが通常であり、殆ど伸び代を有していない非伸縮性であるのが現状である。
従って、本件発明の腰部固定ベルト1における、伸縮部7位置において裏布2、急速吸水材5、伸縮材4、表布3を一体縫合した場合、腰部固定ベルト1の周長部は伸縮部7においても他の部位同様に伸張度が極めて小さくなる可能性を否定できないものとなる。
【0032】
その弱点を回避するための第1点なる構造は、図8のA及び図9に示すとおり、伸縮部7に用いる平板状ゴムなどの伸縮材4を該腰部固定ベルト1の周長部において裏布2と表布3と一体縫合せずに解放状態とする構造とした。
また、第2点なる構造は、図8のB及び図10に示すとおり、伸縮部7における急速吸水材5の非伸縮性を回避するため、長さ方向において急速吸水材5の一端は裏布2、伸縮材4、表材3と一体縫合して固着するものの、他端は一体縫合せずに解放状態にして伸縮部7の伸縮機能を発揮させる構造とする。なお、急速吸水材5の解放端は細長伸縮材13を用いて隣接する部位に縫合等により固着する構造としことにより、急速吸水材5が裏布2と表布3の狭持間で自由移動しない構造としている。
【0033】
この構造により非伸縮性の急速吸水材5の機能に制約を受けることなく伸縮部7に設けた平板状ゴムなどの伸縮材4の機能が優先的に働き、伸縮度をより大きくかつ柔軟度が発揮され、併せて急速吸水材5の3方向(周長部と隣接部との一端)が開放状態の自由端となり、洗濯などにより該自由端が裏布2、伸縮材4、表布3に挟持された状態から逸脱して、急速吸水材5が伸縮部7の一部に偏る弱点を引き起こす弱点を克服させた腰部固定ベルト1を創出できたのである。
【0034】
なお、前記実施例1から実施例4に共通する構造として、腰部背側当接部8及び立体裁断腰部背側当接部81、82の表布3の外面に、袋状の収納部(図示せず)を縫合等によって固着して設けることも本件発明に含めるものとする。
当該収納部には、腰部、特に腰部背側当接部8を保温・加温するまたは湿布環境を整えるために懐炉等を収納するに至便である。
なお、素材としては編み目素材が良好であるが、本件発明ではその形状・大きさ・素材等に関して制約を設けるものでなく、本件発明の目的を達成することが可能な範囲を全て包摂するものとする。
【0035】
次に、前記実施例1から実施例4に共通する構造として、裏布2及び表布3に用いる素材に関してもニット編みの吸汗速乾素材が最適であるが、本件発明の目的を達せられる素材であれば本件発明に何ら制約を設けるものではなく、本件発明においてはその機能に該当する繊維・素材全てを包摂するものとする。
【0036】
更に、前記実施例1から実施例4に共通する構造として、伸縮部7に用いる裏布2と表布3に関しては横糸方向に連成することにより伸縮部7の伸縮度を大きく利用できる利点があり、一方その他部位である係止部6、腰部背側当接部8、腰部横腹側当接部9に用いる裏布2と表布3に関しては縦糸方向に連成することで伸縮度を小さくできてかつ引っ張り強度を大きく取れる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本件発明の腰部固定ベルト1は、単独で腰部の損傷保護や、痛み緩和、腰部の柔軟な固定向けに有効であり、最大の特徴は発汗などによる水分を急速吸水材5により十二分に吸水し、表布3の外表面より外部へ蒸発散放出する機能を持たせたことで、腰部固定ベルト1の装着による二次障害となっていたあせも、皮膚ただれ、床ずれに似た症状を殆ど発症しないという腰部固定ベルト1を創出するに至ったのである。
この機能は、腰部を損傷した場合の医療用や高齢者の腰部弱体化の介護用のコルセットの下部(肌側)に装着することによって、コルセット装着による皮膚障害を相当なレベルで改善できるものであり、医療や介護の効果をより高められる補助具としての役割を担える装備と位置づけられる。
【0038】
また、更なる技術改良は伴えば、前記コルセットに本件発明の構造を付加又は装備させた医療具を新たに創出することも可能である。
本件発明の腰部固定ベルト1を複数用意することで、適宜な交換でいつでも快適な肌環境を継続して維持できることは、装着者にとって快適な保養や医療・介護生活が担保されるものと推量する。
【符号の説明】
【0039】
1 本件発明の腰部固定ベルト
2 裏布
3 表布
4 伸縮材
5 急速吸水材
6 係止部
7 伸縮部
8 腰部背側当接部
9 腰部横腹側当接部
10 緊縮ベルト
11 Wカン
12 伸び止め芯材
13 細長伸縮材
61 係止材
62 係止素材
81、82 立体裁断腰部背側当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が表布と裏布で構成され、長さ方向の両端部に雌雄の係止手段が設けられ、長さ方向の一部に伸縮部が設けられた腰部固定ベルトにおいて、その長さ全体部位の表布と裏布の間に急速吸水材が挟持されたことを特徴とする腰部固定ベルト
【請求項2】
前記伸縮部が設けられる以外の全部位の周長部に、表布と裏布に挟持させた非伸縮性の伸び止め芯材を縫合することを特徴とする請求項1に記載の腰部固定ベルト
【請求項3】
前記急速吸水材が、腰部固定ベルトの伸縮部の周長部において表布と裏布とに縫合されず開放状態とし、かつ前記急速吸水材が隣接する取り付け部位において、長さ方向の一方が表布、裏布、急速吸水材と一体縫合され、他端が複数の細い伸縮部材で固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の腰部固定ベルト

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−81750(P2013−81750A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68259(P2012−68259)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【出願人】(311012734)有限会社 山本縫製工場 (2)
【Fターム(参考)】