説明

腸内菌叢改善剤

【課題】 腸内環境の改善について安定した効果が得られる、腸内菌叢改善剤を提供する。具体的には、腸内に棲息する有用菌を増加させることによって、腸内環境を改善するための十分な効果を有する腸内菌叢改善剤を提供する。
【解決手段】 樹皮抽出物を有効成分とする腸内菌叢改善剤を調製した。さらに、樹皮抽出物と、ビフィズス菌及び乳酸菌から選ばれる1種または2種以上とを含有させた腸内菌叢改善剤を調製した。この腸内菌叢改善剤および本発明の腸内菌叢改善剤を含む食品は、腸内の有用菌を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松樹皮抽出物を有効成分とする腸内菌叢改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸内には100兆個以上の細菌が棲息しており、その種類は約100種類に及ぶ。これらの細菌群は、腸内菌叢を構成し、互いに共生または拮抗関係を保ちながら、摂取された食物または消化管分泌成分を栄養素として増殖し、便とともに細菌群が排泄される。これらの腸内細菌は、食物の消化吸収を高めたり、人体にとって有害な細菌の増殖を抑制し、感染を防ぐ効力をもつともいわれている。さらに、腸内細菌は、免疫、ガンおよびアレルギーとも深い関係があることが明らかになりつつある。
【0003】
近年、腸内環境を改善する成分を積極的に摂取し、腸内の有用菌数を増加させる食品が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。さらに生体に有用な微生物(有用菌)を食品として摂取することにより、腸内環境を改善するアプローチもある(例えば、特許文献4および5)。このような有用菌が多く腸内に存在する状態は、加齢と共に減少することも明らかとなってきており、有用菌の数を指標とした「腸年齢」という概念も打ち出されている。すなわち、腸内の有用菌を増加させることは、「腸年齢」を若返らせることであり、これによって、免疫力の低下等の体の健康状態を改善する一要因となり得る。
【特許文献1】特許2823640号公報
【特許文献2】特開平6−90733号公報
【特許文献3】特開平11−127815号公報
【特許文献4】特開2001−69943号公報
【特許文献5】特開2002−193817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載されているような、腸内環境を改善する成分を摂取しただけでは、腸内環境を改善する効果が十分でないという問題点があり、さらに、体質によっては胃腸の機能が不安定になるなど、その効果が一律に得られるようなものではないという問題点もあった。
【0005】
他方、有用菌を含む食品を摂取する場合は、有用菌自体の腸内での生育が難しく、仮に生育したとしても、強制的に摂取させた食品に含まれる外来の細菌種が増えるのみであり、腸内に元来棲息する有用菌を増加させる観点からは十分な効果が得られていないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、腸内環境の改善について安定した効果が得られる腸内菌叢改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った。その結果、松樹皮抽出物は、腸内に棲息する有用菌を増加させて、腸内環境を改善することを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の腸内菌叢改善剤は、松樹皮抽出物を有効成分とすることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の腸内菌叢改善剤は、さらに、ビフィズス菌及び乳酸菌から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の腸内菌叢改善剤は、有用菌(例えば、ビフィドバクテリウム・アドレッセンス、バチルス・コアグランスなど)を増加させる。つまり、本発明の腸内菌叢改善剤は、腸内環境の改善について安定した効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(松樹皮抽出物)
まず、本発明で用いる松樹皮抽出物について説明する。
【0012】
本発明に用いることができる松樹皮抽出物において、その抽出物の原料となる松樹皮としては、例えば、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮が挙げられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮から、抽出物を得るのが好ましい。
【0013】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮合型タンニンであるプロアントシアニジンをはじめとするポリフェノール類や有機酸、糖類などの生理活性成分が含有されている。特に重合度が2〜4の縮合重合体(2〜4量体)のプロアントシアニジンが豊富に含まれている。
【0014】
本明細書では、プロアントシアニジンの縮重合体のうち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2〜4の重合体を、OPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。
【0015】
OPCは、抗酸化物質であり、ガン・心臓病などの成人病の危険率を低下する効果があるとされている。また、OPCは、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果、コラーゲンの酸化や分解の阻害効果なども有する。
【0016】
さらにOPCは、抗酸化作用のほか、血管の強度、弾力性を回復させる効果;血中コレステロールおよびLDLを低下させる効果;高血圧症に対して血圧を低下させる効果;コレステロールが付着することを防止する効果;活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果;ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。
【0017】
本発明においては、OPCを20質量%以上含有する松樹皮抽出物が好ましく用いられる。より好ましくは、30質量%以上である。
【0018】
なお、樹皮抽出物中のプロアントシアニジンの含有量は、特に制限されないが、樹皮抽出物中のプロアントシアニジン含有量が高濃度となると、プロアントシアニジン自身の生理活性が低くなることがあるため、抽出物中のプロアントシアニジン含有量が95質量%未満、好ましくは90質量%未満であることが好ましい。
【0019】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮と溶媒とを用いて得られる。ここでいう溶媒としては、例えば、有機溶媒、水、極性溶媒などが挙げられる。抽出に水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。これらの水には、抽出効率を向上させる点から、塩化ナトリウムなどの塩を添加することが好ましい。
【0020】
抽出に用いる有機溶媒としては、食品または薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。
【0021】
なお、上記溶媒(水、有機溶媒など)は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。特に、単独で用いる場合は、水、熱水、および極性溶媒のエタノールやプロピレングリコールが好ましく用いられる。組み合わせて用いる場合は、含水エタノール、含水プロピレングリコールなどの、水と極性溶媒との混合溶媒が好ましく用いられる。
【0022】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0023】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0024】
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0025】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出流体に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0026】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0027】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外で行ってもよく、例えば、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などの方法で行ってもよい。
【0028】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0029】
(松樹皮抽出物の調製例)
本発明において、プロアントシアニジンを主成分として含む松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法によりに調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0030】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液とを合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0031】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、OPCを20質量%以上含み、かつカテキン類を5質量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0032】
また、食品、医薬品に用いるときの安全性の観点から、エタノールまたは水等を用いて、より好ましくは加温しながら松樹皮からプロアントシアニジンをはじめとする成分を抽出し、ポリフェノールに対して吸着性を示す樹脂(例えば、ダイアイオンHP−20、Sephadex−LH20、またはアンバーライト)などや限外ろ過膜を用いて、精製することが好ましい。このようにして、プロアントシアニジン、特にOPCを高含有した松樹皮抽出物を得ることができる。
【0033】
(腸内菌叢改善剤)
本発明において、「腸内菌叢改善剤」とは、摂取することによって、腸内において、有用菌を増加または活性化させる剤を指すものとする。そして、ここでいう有用菌とは、ヒトまたは動物の健康に、有益な効果をもたらす微生物のことである。代表的な有用菌としては、例えば、ビフィズス菌、乳酸菌などが挙げられる。
【0034】
ビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム属細菌の公知の菌株が挙げられる。ビフィズス菌の具体例としては、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis),ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B.bifidum)などの年齢に関係なくヒトの腸内に常在しているビフィズス菌や、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(B.pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(B.thermophirum)などが挙げられる。
【0035】
乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ストレプトコッカス属の菌が挙げられる。乳酸菌の具体例としては、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei),ラクトバチルス・アシドフィリス(L.acidophilus),ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum),エンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis),エンテロコッカス・フェーシウム(E.faecium),エンテロコッカス・ヒラエ(E.hirae),ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis),ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)などが挙げられる。
【0036】
なお、上記に示した菌以外でも、宿主(ヒトまたは動物)の健康に有益な微生物であれば、有用菌として用いてもよい。そのような有用菌としては、例えば、バチルス属の菌やクロストリジウム属の菌が挙げられる。バチルス属の菌としては、例えば、バチルス・トヨイ(Bacillus toyoi)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)、バチルス・サブチリス・バリエタス・ナットー(B.subtilis var.natto)、バチルス・リケニホルムス(B.licheniformis)、バチルス・サブチリス(B.subtilis)などが挙げられる。クロストリジウム属の菌としては、例えば、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)などが挙げられる。
【0037】
なお、本発明の腸内菌叢改善剤に、単独または数種の有用菌を添加して、新たな剤を調製してもよい。そのような剤を摂取すれば、腸内に棲息する有用菌だけでなく、添加された有用菌も増殖する。その結果、腸内菌叢を改善、すなわち腸内環境を改善することができる。
【0038】
上記有用菌の調製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の培地および培養方法で大量培養を行った後、その菌体懸濁液に公知の分散媒を加えて凍結乾燥する方法、あるいは特開平4−41434に開示されているような腸溶性物質をコーティングする方法などが挙げられる。そのうち、有用菌を添加する場合、コーティングされた有用菌、腸内への到達率が高い有用菌を用いることが好ましい。ここでいう腸内への到達率が高い有用菌としては、例えば、バチルス・コアグランス等の有胞子性乳酸菌、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベチカス、ラクトバチルス・デルブロイキ、ストレプトコッカス・サーモフィラス等が挙げられる。
【0039】
本発明の腸内菌叢改善剤の摂取量は、特に制限はない。例えば、腸内菌叢改善剤の摂取量は、松樹皮抽出物の1日あたりの摂取量で決定すればよい。具体的には、松樹皮抽出物の1日あたりの摂取量について、その下限値は、0.001g以上、好ましくは0.002g以上とするのが良く、その上限値は、3g以下、好ましくは1g以下とするのが良い。
【0040】
乳酸菌やビフィズス菌といった有用菌を本発明の腸内菌叢改善剤に添加する場合は、成人1日あたり、10〜1012個程度の菌数の有用菌を摂取できるように、有用菌を添加することが好ましい。さらに、これらの有用菌は、生菌であることが好ましい。そして、本発明における、有用菌と松樹皮抽出物との混合比(質量比)は、99:1〜1:99程度で混合することができる。
【0041】
なお、本発明の腸内菌叢改善剤は、単独で摂取してもよく、食品または医薬品に含有させて摂取しても良い。
【0042】
本発明の腸内菌叢改善剤を、食品または医薬品等に含有させる場合、または食品または医薬品等の形態にする場合、その配合割合は特に制限されない。例えば、松樹皮抽出物の含有量の下限値が0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上となるように、食品等に腸内菌叢改善剤を配合するのが良い。また、松樹皮抽出物の含有量の上限値が50質量%以下、好ましくは20質量%以下となるように、食品等に腸内菌叢改善剤を配合するのが良い。
【0043】
なお、本発明の腸内菌叢改善剤には、必要に応じて、次のような成分を添加してもよい。添加してもよい成分としては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、B群、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、キチン・キトサン、レシチン、松樹皮抽出物に含有されるプロアントシアニジンやカテキン類以外のポリフェノール類(アントシアニン類、ガロタンニン等の加水分解型タンニン、フラボノイド類、これらの誘導体や茶カテキンなど、他の植物由来のポリフェノール類等)、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(イソフラボン、ジンセサノイド、グリチルリチン酸等)、キサンチン誘導体(カフェイン等)、脂肪酸、アミノ酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、ムコ多糖類(ヒアルロン酸、コンドロイチン、デルマタン、ヘパラン、ヘパリン、ケタラン、これらの塩等)、アミノ糖(グルコサミン、アセチルグルコサミン、ガラクトサミン、アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、アセチルノイラミン酸、ヘキソサミン、それらの塩等)、食物繊維(難消化性デキストリン、アルギン酸、グアガム、ペクチン、グルコマンナン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、キノン類(コエンザイムQ10等)、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、麦若葉末等のイネ科植物の緑葉、ケール等のアブラナ科植物の緑葉、クワ科植物(桑等)、ツバキ科植物(茶等)の緑葉などが挙げられる。
【0044】
また、腸内菌叢改善剤を食品等に添加する場合、さらに調味料を添加してもよい。ここでいう調味料としては、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、および香料などが挙げられる。特に、糖の代謝を促進しえる成分または糖の吸収を抑制しえる成分を混合することが好ましい。
【0045】
また、有用菌にとって必要となる成分、例えばチアミン類、ピリドキシン類、アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン、セリン、プロリン、グリシン、アラニン、及びスレオニン等)、クエン酸、リンゴ酸等を配合してもよい。そしてさらに、これらをハードカプセル、ソフトカプセル等のカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤として成形されるか、または粉末、顆粒、ティーバッグなどにする。さらには、チーズやマーガリン、ヨーグルト、牛乳などに含有させた形態も可能である。これらは、その形状または好みに応じて、そのままか、あるいは水や湯、ジュース等と共にまたは成分を浸出して飲むことができる。
【0046】
また、上記の腸内菌叢改善剤は、健康飲料としても利用し得る。例えば、腸内菌叢改善剤を含有する飲料、例えば、植物発酵ジュース、野菜ジュース(例えば、人参ジュース)、植物抽出物、果汁などに、腸内菌叢改善剤を含有させることにより、機能性または栄養価の高い飲料を得ることができる。さらに、オリゴ糖や食物繊維を配合することによって、更に優れた腸内菌叢改善効果を得ることもできる。もちろん、種々の調味料、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、香料、色素などを加えて、好みの味に調整してもよい。
【0047】
また、腸内菌叢改善剤を寒天等に混合して、ゼリーとしてもよい。さらに、腸内菌叢改善剤を野菜ジュースなどと混合して、シャーベット、フローズンヨーグルトあるいはアイスクリームとすることも可能である。
【実施例】
【0048】
以下、調製例および試験例により、本発明を詳細に説明する。しかし、下記の例により、本発明を限定するものではない。
【0049】
(調製例1)
松樹皮より水及びエタノールを用いて得られた松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)1gと、乳酸菌(ストレプトコッカス・フェカリス)をコーティング処理して得られた粉末1g(生菌数5×1010個、セルバイオテック社)と、ラクチュロース18gと、難消化性デキストリン30gと、還元麦芽糖30gと、トレハロース20gとを混合し、食品1を調製した。そして、食品1を1gずつ分包した。
【0050】
(調製例2)
松樹皮抽出物を混合しないこと以外は、調製例1と同様の方法で各粉末を混合し、食品2を調製した。そして、食品2を1gずつ分包した。
【0051】
(試験例)
上記食品1または2を、10名の被験者に摂取していただいた。そして、食品摂取前および摂取後の便を採取して、便に存在する腸内有用菌の増加の割合を測定することによって、腸内環境改善効果を評価した。
【0052】
まず、各被験者の便をそれぞれ採取した後、上記食品1または2(1g)を、1日1回の割合で、各被験者に1週間摂取していただいた。そして、その摂取後に、再度、各被験者の便を採取し、食品摂取前後の便を採取した。
【0053】
次に、食品摂取前後の便(200mg)から、「QIAamp DNA Stool Mini Kit」(キアゲン社製)を用いて、便中に存在するDNAを抽出した。
【0054】
次に、抽出したDNA(150ng:OD280nmで測定して算出した値)を含む抽出物と200μMのプライマー0.5μLと精製水23μLとを混合して、さらに、PCRビーズ(ファルマシアバイオテック)を加えて試料を調製した。
【0055】
なお、プライマーは、特定の有用菌のDNAを増幅するために添加した。つまり、ビフィドバクテリウム・アドレッセンスのDNAについては、配列番号1および配列番号2に示すDNAを、バチルス・コアグランスのDNAについては、配列番号3および配列番号4のDNAを添加して、それぞれ増幅させた。
【0056】
各試料については、プログラムテンプコントロールシステムPC−708(ASPEC)を用いて、以下の条件でPCRを行った。PCRの条件は、ビフィドバクテリウム・アドレッセンスの場合、94℃で2分間加熱した後、94℃で20秒間、45℃で20秒間、および72℃で1分間の反応を1サイクルとして、20サイクル繰り返すように設定した。バチルス・コアグランスの場合、94℃で2分間加熱した後、94℃で20秒間、55℃で20秒間、および72℃で1分間の反応を1サイクルとして、20サイクル繰り返すように設定した。なお、この条件は、予め食品摂取前の便から抽出したDNAを用いて、その増幅がプラトーに達しないように設定した。
【0057】
PCR終了後、各PCR増幅物を、トリス、ホウ酸、およびEDTAを含むTBE緩衝液で希釈して作製した1%アガロースゲルを用いる電気泳動に供し、30分間泳動を行った。分子量マーカーとして「One Step Ladder 100(ニッポンジーン)」を用いた。電気泳動後、アガロースゲル中のDNAのバンドをエチジウムブロマイドで染色し、イメージアナライザー(Tyhoon:アマシャムバイオテク株式会社)を用いて、所定の分子量のバンドの発光強度を数値化した。なお、ビフィドバクテリウム・アドレッセンスのDNAは279bp、バチルス・コアグランスのDNAは269bpである。
【0058】
食品摂取前の便由来の試料から得られた検出バンドの発光強度を1とした場合の、同一被験者の食品摂取後の便由来の試料から得られたバンドの発光強度の相対値をそれぞれ算出し、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果から、食品1を摂取した群は、摂取前に比べ、有用菌であるビフィドバクテリウム・アドレッセンスおよびバチルス・コアグランスの遺伝子が約2〜2.6倍に増加した。また、食品2を摂取した群よりも、食品1を摂取した群では、有用菌であるビフィドバクテリウム・アドレッセンスおよびバチルス・コアグランスの遺伝子の量が増加していることが分かる。すなわち、本発明の腸内菌叢改善剤および本発明の腸内菌叢改善剤を含む食品は、腸内の有用菌を増加させている、または、腸内の有用菌の活性化を促進していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の腸内菌叢改善剤を摂取することによって、腸内に棲息する有用菌を増加または活性化させ、腸内菌叢を改善して、腸内環境を改善することができる。したがって、松樹皮抽出物を有効成分とする剤は、腸内菌叢改善剤としてだけでなく、腸内環境改善剤、便秘改善剤としての応用も可能であり、免疫賦活、有害微生物代謝産物および有害酵素の抑制、生活習慣病の予防、アレルギー体質の改善などにも効果が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物を有効成分とすることを特徴とする腸内菌叢改善剤。
【請求項2】
さらに、ビフィズス菌及び乳酸菌から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の腸内菌叢改善剤。

【公開番号】特開2007−308373(P2007−308373A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−165353(P2004−165353)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】