説明

腹水中のメソテリン及び/又は巨核球増強因子を検出するための方法、キット、試薬及び装置

【課題】使用済み腹膜透析液のような患者の腹水中の巨核球増強因子に関するアミノ酸配列を有するペプチドを検出し、かつ、定量するための方法及びキットを提供する。前記方法及びキットは、患者の腹腔を裏打ちする中皮の生物学的状態を監視するためと、他の無症候患者で中皮の病状の発生を予測するためと、治療法の危険性及び適合性を評価するためとに用いられる。
【解決手段】体液又は腹水中のMPFレベルを測定するために少なくとも1種類のMPF特異的な結合物質に患者の腹水を曝露するステップを含むことを特徴とする、腹膜透析を受けている患者の腹膜の健康状態を評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される一部の実施態様は、腹水中のメソテリン断片を検出するための方法、キット、試薬及び装置に関する。特に、一部の実施態様は、メソテリン、巨核球増強因子(MPF)又はこれら両方の減少を例えば標準試料と比較する検出によって、腹腔及び腹水の状態と、腹膜の細胞のインテグリティー(integrity)との監視に関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析(PD)は腎不全治療の一般的な治療法である。腎臓が十分に血液を濾過できない患者は、過剰な塩、尿酸その他の老廃物を除去するために透析液を腹腔に注射する。前記腹膜を介する浸透によって、溶質は前記血液と前記透析液との間で交換される。適切な時間経過後に、前記透析液は前記腹膜から除去され、廃棄される。このようにして前記血液は平衡化され、尿酸のような最終的な代謝産物が前記血液中に無限に蓄積することを防止する。
【0003】
PDの代替的な治療は血液透析(HD)である。PDは、患者の残存する腎機能を維持する点でHDよりも優れており、HDよりは軽い貧血症を伴うことが知られる。結果として、PDは(主に心血管イベントの危険性が低いために)治療直後の2年間生存率が高い。しかし長期的には、PDは、腹膜の過剰透過(hypertransport)、腹膜肥大症、非細菌性腹膜炎及び被嚢性腹膜硬化症(EPS)をもたらす可能性がある。腹膜肥大症とは、著しい脈管化と、その結果としての血液と透析液との間で非常に効率的な溶質交換−すなわち過剰透過とを伴う、炎症様の腹膜中皮の肥厚をいう。残念ながら、腹膜肥大症は、慢性痛及び排泄困難から死に及ぶまでの範囲の大腸の閉塞性症状にしばしば進行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
本明細書で議論される一部の局面では、開示される装置、試薬、方法及びキットは、例えば、腎不全の治療を受けている患者の腹腔の状態を評価するための巨核球増強因子(MPF)、メソテリン(MSLN)又はこれら両方の減少を有効に検出する。前記MPF及びMSLNレベルは、本明細書で説明される実施例の装置、試薬、方法及びキットその他、本明細書の利益によって当業者によって選択されるであろう、適切な装置、試薬、方法及びキットを用いて血清及び腹水を含むが、これらに限られない体液中で測定される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある局面では、腹腔の状態及び/又は腎不全の治療を受けている患者の腹膜を評価する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMPFレベルを測定するために少なくとも1種類の前記MPF特異的な結合物質に前記患者の腹水を曝露するステップを含む。
【0006】
1つの実施態様では、前記方法は、腹水中のMPFの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MPFレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。もう1つの実施態様では、前記方法は、腹水中の前記MPFレベルにもとづいて前記患者の治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MPFレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MPFレベルが、例えば、前記標準試料の一定の/規定された割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。一部の実施態様では、前記MPFレベルが、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0007】
一部の実施態様では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、結合タンパク質は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアント(variant)に結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0008】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0009】
他の実施態様では、MPFレベルは、該MPFを検出可能な標識を含むMPFの第2の結合物質に接触することによって測定される場合があり、例えば、MPFの領域に結合する第2の結合物質は第1の結合物質と異なる。追加の実施態様では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に結合される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0010】
一部の実施態様では、MPFレベルは、腎不全治療が開始された後、1、2、3、4、5、6ヶ月、1年、2年又は10年までか、あるいはそれ以上の期間測定される。
【0011】
一部の実施態様では、方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMPFレベルを測定するステップをさらに含む。一部の実施例では、前記MPFレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0012】
追加の局面では、腎不全治療を受けている患者の腹腔及び/又は腹膜の状態を評価する方法が開示される。一部の実施例では、前記方法は、該腹水中のMSLNレベルを測定するために少なくとも1種類の前記MSLN特異的な結合物質に前記患者の腹水を曝露するステップを含む。
【0013】
一部の実施態様では、前記方法は、腹水中のMSLNの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MSLNレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。他の実施態様では、前記方法は、腹水中の前記MSLNレベルにもとづいて前記患者の治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MSLNレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、前記MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料の一定の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0014】
一部の実施態様では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、結合タンパク質は、MSLNに結合する、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0015】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0016】
一部の実施態様では、前記MSLNレベルは、該MSLNを検出可能な標識を含むMSLNの第2の結合物質に接触することによって測定される場合があり、例えば、MSLN領域に結合する第2の結合物質は第1の結合物質と異なる。追加の実施態様では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に結合される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0017】
一部の実施態様では、前記方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMSLNレベルを測定するステップをさらに含む。一部の実施例では、前記MSLNレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0018】
他の実施態様では、方法は、腹水中のMSLNレベルにもとづいて患者の治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MSLNレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、前記MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料の一定の割合未満になるか、あるいは前記標準試料以下に減少する場合には、選択される前記治療は血液透析となる。
【0019】
もう1つの局面では、患者の体液中のMPFの検出方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、MPFの第1のエピトープに結合する、少なくとも1種類の抗体又はその抗原結合断片に前記患者の体液を接触させるステップと、前記第1のエピトープと異なるMPFの第2のエピトープに結合する検出可能な標識を含む、第2の抗体又はその抗原結合断片に前記体液を接触させるステップと、前記第1及び第2の抗体又は抗体断片を用いて前記体液中の前記MPFレベルを検出するステップとを含む。前記検出可能な標識は、例えば、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。
【0020】
一部の実施態様では、方法は、体液中の(とりわけ、腹水中の)MPFの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に腹水中で検出される、患者の前記MPFレベルと比較するステップを含む。
【0021】
もう1つの実施態様では、方法は、腹水中のMPFレベルにもとづいて患者の治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MPFレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MPFレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。一部の実施態様では、前記MPFレベルが、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一以下に減少する場合には、選択される前記治療は血液透析となる。
【0022】
一部の実施態様では、抗体又はその抗原結合断片は、MPFに結合し、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0023】
一部の実施態様では、方法は、前記検体から前記MPFを除去する第1の抗体及び検出可能な標識を含む第2の結合抗体に腹水の検体中のMPFを接触させるステップを含む。一部の実施例では、前記方法は、検出可能な標識で標識されるMPFに前記腹水を曝露するステップをさらに含む場合がある。一部の実施態様では、前記方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMPFレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一定の実施態様では、前記MPFレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0024】
もう1つの局面では、患者の体液中のMSLNを検出する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、MSLNの第1のエピトープに結合する少なくとも1つの抗体又はその抗原結合断片に前記患者の体液を接触させるステップと、前記第1のエピトープと異なるMSLNの第2のエピトープに結合する検出可能な標識を含む、第2の抗体又はその抗原結合断片に前記体液を接触させるステップと、前記第1及び第2の抗体又は抗体断片を用いて前記体液中の前記MSLNレベルを検出するステップとを含む。
【0025】
一部の実施態様では、方法は、体液中のMSLNの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MSLNレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。他の実施態様では、前記方法は、前記腹水中の前記MSLNレベルにもとづいて前記患者の治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MSLNレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、前記MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0026】
一部の実施態様では、抗体又はその抗原結合断片は、MSLNに結合し、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0027】
一部の実施態様では、方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMSLNレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一部の実施態様では、前記MSLNレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0028】
もう1つの局面では、体液中の(とりわけ、腹水中の)MPFレベルの検出に使用するためのキットが提供され、該キットはMPFのエピトープに結合する第1の結合物質を含む。
【0029】
一部の実施態様では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、結合タンパク質は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0030】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記キットは前記結合物質に結合する物質を含み、前記結合物質に結合する前記物質は標識される。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、前記抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。一部の実施態様では、前記キットは、説明書、例えば、腹腔及び/又は腹膜の状態を測定するための取扱説明書を含む場合がある。
【0031】
ある実施態様では、キットは、MPFの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質よりも異なるエピトープに効率的に結合する抗体又はその抗原結合断片をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記第2の結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となってもかまわない。一部の実施例では、前記第2の結合物質は、検出可能な標識を含む。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記キットは、前記第1の結合物質又は前記第2の結合物質か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MPFは組換えMPFである。一部の実施例では、前記キットは検出可能な標識を含むMPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0032】
もう1つの局面では、体液中の(とりわけ、腹水中の)MSLNレベルの検出に用いるためのキットが提供され、該キットはMSLNのエピトープに結合する第1の結合物質を含む。
【0033】
一部の実施例では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、結合タンパク質は、MSLNに結合する、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0034】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記キットは、前記結合物質に結合する物質をさらに含み、例えば、前記結合物質に結合する前記物質は標識される。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、前記抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。一部の実施態様では、前記キットは、説明書、例えば、腹腔及び/又は腹膜の状態を測定するための取扱説明書を含む場合がある。
【0035】
ある実施態様では、キットは、MSLNの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質よりも異なるエピトープ又は部位に効率的に結合する、抗体又はその抗原結合断片をさらに含む場合がある。一部の実施態様では、前記第2の結合物質は検出可能な標識を含む。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記キットは、前記第1の結合物質又は前記第2の結合物質か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MSLNを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MSLNは組換えMSLNである。一部の実施例では、前記キットは検出可能な標識を含むMSLNを含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0036】
追加の局面では、体液中の(とりわけ、腹水中の)MPF又はMSLNレベルの検出に用いるためのキットが提供される。一部の実施例では、前記キットは、MPFに効率的に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片と、例えば、前記第1の抗体又はその抗原結合断片と異なるエピトープでMSLNに効率的に結合する第2の抗体又はその抗原結合断片とを含む。
【0037】
一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0038】
一部の実施例では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、MSLNに結合する、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0039】
一部の実施態様では、キットは、前記第1及び第2の抗体の取扱説明書を含む場合がある。一部の実施例では、前記第1及び第2の抗体の1つは検出可能な標識を含む。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、前記第1の抗体又は前記第2の抗体か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識を含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。ある実施態様では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MPFは組換えMPFである。他の実施例では、前記キットは1組の標準MSLNを含む。一部の実施例では、前記標準MSLNは組換えMSLNである。追加の実施例では、前記キットは、検出可能な標識を含むMPFか、検出可能な標識を含むMSLNか、あるいはこれら両方を含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0040】
もう1つの局面では、透析が必要な患者の腹膜透析の継続を評価する方法が説明され、前記方法は、前記患者由来の腹膜透析液、例えば使用済みの腹水を少なくとも1種類の結合物質、例えば、MPF又はMSLNに特異的な抗体又はその抗原結合断片に接触させるステップと、MPF又はMSLNレベルを腹膜透析液中で測定するステップと、前記MPF又はMSLNの測定レベルにもとづいてか、あるいは標準試料、例えば、初期に測定されるMPF及び/又はMSLNレベル、例えば、腹膜透析治療の開始時か、あるいは腹膜透析治療の開始後1、2又は3ヶ月での個人のMPF又はMSLNの初期レベルと比較して前記MPF又はMSLNの測定レベルの減少にもとづいて、腹膜透析又は血液透析を提供するかどうかを評価するステップとを含む。
【0041】
一部の実施態様では、MPF特異的な抗体又はその抗原結合断片は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0042】
一部の実施例では、MSLN特異的な前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はその一部分を含む。
【0043】
一部の実施態様では、方法は、MPF又はMSLNの測定レベルが、標準試料と比較して、約20%、30%、40%、50%となるか、あるいはより低くなる場合に、腹膜透析治療を中止するステップをさらに含む。一部の実施例では、血液透析は前記腹膜透析治療の中止後に実施される。一部の実施態様では、前記方法は、検出可能な標識を含むもう1種類の抗体を用いて前記MPF又はMSLNレベルを検出するステップを含む。
【0044】
追加の局面では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列は、MPFに結合する抗原結合部位を提供する、前記重鎖(HC)の免疫グロブリン可変ドメイン配列及び前記軽鎖(LC)の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは抗体20−10に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは抗体20−10に由来する3個のCDRsを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0045】
追加の局面では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列は、MPFに結合する抗原結合部位を提供する、前記重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは抗体41−28に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは抗体41−28に由来する3個のCDRsを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体41−28の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0046】
追加の局面では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列は、MSLNに結合する抗原結合部位を提供する、前記重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは抗体IC14−30に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは抗体IC14−30に由来する3個のCDRsを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0047】
もう1つの局面では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列は、MSLNに結合する抗原結合部位を提供する、前記重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは抗体11−25に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは抗体11−25に由来する3個のCDRsを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体11−25の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0048】
もう1つの局面では、透析治療を選択する方法が提供される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMPFレベルが、例えば標準試料の一定の割合より高くなる場合に腹膜透析を選択するステップと、前記腹水中の前記MPFレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に血液透析を選択するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料値は、腹膜透析治療の開始時か、あるいは該開始から1、2又は3ヶ月以内に測定される初期MPF値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば前記MPFレベルが、前記標準試料値の約50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止され、血液透析が開始される場合がある。
【0049】
追加の局面では、透析治療を選択する方法が提供される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMSLNレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に腹膜透析を選択するステップと、前記腹水中の前記MSLNレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に血液透析を選択するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料は、腹膜透析治療の開始時か、あるいは該開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MSLN値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば前記MSLNレベルが、前記標準試料値の約50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止され、血液透析が開始される場合がある。
【0050】
もう1つの局面では、継続性腹膜透析治療の適合性を評価する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMPFレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に腹膜透析を継続するステップと、前記腹水中の前記MPFレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に腹膜透析を中止するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料は、腹膜透析治療の開始時か、あるいは該腹膜透析治療の開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MPF値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば前記MPFレベルが、前記標準試料値の約50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に腹膜透析は中止される場合がある。一部の実施例では、血液透析は、腹膜透析が中止される場合に開始される場合がある。
【0051】
追加の局面では、継続性腹膜透析治療の適合性を評価する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMSLNレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に腹膜透析を継続するステップと、前記腹水中の前記MPFレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に腹膜透析を中止するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料は、透析治療の開始時か、あるいは透析治療の開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MSLN値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば前記MSLNレベルが、前記標準試料値の約50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止される場合がある。一部の実施例では、血液透析は、腹膜透析が中止される場合に開始される場合がある。
【0052】
これらと、その他の局面、特徴、実施例及び実施態様とは、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
一部の実施態様は、添付図に関して以下に説明される。
【図1】MPF(既知のバリアントについて、スイス−プロット Q13421、32番目ないし295番目の残基を参照せよ。)のアミノ酸配列(配列番号1)と、メソテリン(既知のバリアントについて、スイス−プロット Q13421、296番目ないし606番目の残基を参照せよ。)のアミノ酸配列(配列番号2)。
【図2】抗MPFクローン20−10の重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)。
【図3】抗MPFクローン20−10の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)。
【図4】抗MPFクローン41−28の重鎖のアミノ酸配列(配列番号7)。
【図5】抗MPFクローン41−28の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)。
【図6】抗MSLNクローンIC14−30の重鎖のアミノ酸配列(配列番号9)。
【図7】抗MSLNクローンIC14−30の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号10)。
【図8】抗MSLNクローン11−25の重鎖のアミノ酸配列(配列番号11)。
【図9】抗MSLNクローン11−25の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号12)。
【図10A】MPFを検出するために用いられるアッセイの機能的感受性試験の結果。
【図10B】メソテリン(MSLN)を検出するために用いられるアッセイの機能的感受性試験の結果。
【図11】38人の健康な日本人の血清中で検出される前記メソテリン及びMPFの濃度分布。
【図12】慢性腎不全の治療として腹膜透析を受けている患者個人の使用済み腹膜透析液中に蓄積される、MPF(図12A)及びメソテリン(12B)の91日間にわたる変動。
【図13】急性細菌性腹膜炎の発症前後に患者の前記腹膜透析液中に蓄積される、MPF、メソテリンその他のマーカーのレベルを示すグラフ。
【図14】MPF及びメソテリンが腹膜透析を長期間実施された患者の透析液中に蓄積しない場合の平均を示す棒グラフ。
【図15】使用済み透析液中のメソテリン及びMPFの両方の蓄積は、腹膜透析治療の治療結果(継続又は放棄)に関する予測因子となることを示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
以下に説明される、一部の実施例、実施態様、特徴及び局面は、標準試料、例えば、患者の健康状態を評価するために腹膜透析の開始時か、あるいは前記腹膜透析の開始から1、2又は3ヶ月以内に腹水中に存在するMPF又はMSLNレベル、例えば、腹腔及び/又は腹膜の状態から、巨核球増強因子(MPF)、メソテリン(MSLN)又はこれら両方のレベルの減少を検出する。現行のアッセイは、癌その他の疾患状態の指標としてのMPFの増加を検出するために設計される−例えば、Iwahori, K.ら(Lung Cancer 2008,印刷中)を参照せよ。増加を測定する現行の方法と異なり、MPF、MSLN又はこれら両方の前記レベルの減少は、腎不全のような疾患に対する特定の治療の適合性を測定するために用いられる場合があることが突如発見された。前記治療は、腹膜透析又は血液透析の場合がある。ある実施例では、MPF又はMSLNの減少は、細胞学的インテグリティー又は前記腹腔の全体の状態を監視するために用いられる場合がある。追加の使用と、MPF、MSLN又はこれら両方の減少の徴候とは、以下により詳細に議論される。
【0055】
中皮膜は、前記腹腔、胸腔及び心腔のようなさまざまな体腔を裏打ちする。腹膜肥大は、腹水の異常な量と、前記中皮、前記腹膜を保護的に覆う細胞の単層の消失の結果とによって生じる力学的ストレスに対する炎症性応答として考えられる場合がある。PDが中止された後でさえも腹膜肥大が進行するとき、必要とされる初期診断マーカーは、腹膜肥大の発症前及び過剰透過が顕在化する前に中皮細胞の前記消失を示す場合がある。
【0056】
中皮細胞の裏打ちの健康状態を示すために使用済み透析液中で測定可能である既知の診断マーカーの1つは、CA125である。CA125は腹膜透析中に前記腹膜から剥離する腹膜中皮細胞の全てではないが、多くの表面上に存在することが観察された(Kamidaら、ポスター P−268,50th symposium of the Japanese Kidney Society)。たとえ、溶質輸送マーカーとの組み合わせでのその使用が科学文献で物議をかもす議論がされたとしても、使用済み透析液中のCA125濃度は大きく変動し、診療において有用であることは未だに証明されていない(例えば、Krediet, Kidney International 55: 341−356; Otsukaら, Clin. Exp. Nephrol 9:315−319; Breborowiczら、Nephron Clin. Pract. 100:c46−c51を参照せよ。)。
【0057】
初期段階でPDの有効な利益(すなわち、残存する腎機能の保護、軽い貧血症及び心血管イベントの低い危険性)をもたらし、長期間の危険性(すなわち、腹膜肥大及びEPSによる大腸閉塞)を回避するためのHD治療へ変更するためにPD患者に対する適切な時点を提供する、診療での診断マーカーは、今日、全く存在しない。
【0058】
中皮細胞は、メソテリン前駆体タンパク質を合成することが知られる。前記前駆体タンパク質は、細胞外間隙に分泌される、短いN−末端断片(31kDa)、MPFと、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカーを介して細胞膜に結合されたままとなる、長いC−末端断片、メソテリンとを産生する、フリンプロテアーゼによって効率的に開裂されると考えられる。
【0059】
メソテリンは、中皮細胞と、中皮腫と、ある扁平上皮癌と、卵巣癌と、膵臓癌と、肺癌との細胞表面上で観察され(Changら、1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 136−140;米国特許第6,083,502号公報明細書)、前記癌に対する治療用抗体のための標的として調査中である(例えば、Morphotek社による米国臨床試験第NCT00325494号)。それどころか、MPFは前記細胞表面上で決して観察されない。むしろ、MPFは、膵癌の細胞株、HPC−Y5の培養上清で最初に同定された(Kojimaら、J. Biol. Chem. 270: 21984−21990;さらに、日本国特許第3490125号公報明細書)。この報告は、MPFだけでなく、完全長メソテリン前駆体タンパク質が、完全長メソテリン前駆体cDNAをトランスフェクションしたCOS細胞の前記培養上清で検出されたことを示し、メソテリン前駆体が前記細胞から分泌されず、前記細胞表面上に到達する前にMPF及びメソテリンに完全に開裂されることを示す。
【0060】
Schollerら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 11531−11536、さらに、米国特許第6770445号公報明細書)は、メソテリン前駆体mRNAを発現している癌細胞の前記細胞表面と、組換えメソテリン融合タンパク質とに結合できる多くのマウスモノクローナル抗体の産生を報告した。この組換えタンパク質は、メソテリン前駆体タンパク質の前記MPF(N−末端)部分を含まず、前記抗体がタンパク質分解性開裂後の成熟メソテリン(C−末端)部分にのみ結合することを示す。SchollerらはサンドウィッチELISAを構築し、メソテリン又は関連ペプチドの存在を証明するために前記抗体のうち2種類、クローンOV659及び4H3を用い、前記関連ペプチドは、(可溶性メソテリン−関連ペプチドにちなんで)SMRと名付けられた。SMRは、(例えば、ホスホリパーゼCによって触媒される)前記GPIアンカーの酵素性開裂による前記細胞表面からの放出を含む、多くの供給源から生じると考えられる。
【0061】
対照的に、前記メソテリン前駆体ペプチドからMPFを開裂させる原因であるフリンプロテアーゼはヒト細胞で偏在的に発現し、トランスゴルジ網で主に配置されるために、MPFは前記タンパク質が前記細胞表面に到達する前に前記前駆体タンパク質から開裂されると思われる(例えば、Nakayama、Biochem. J. 327: 625−635)。したがって、メソテリン前駆体タンパク質は通常は血流中に入らず、むしろMPF及びメソテリンの前記開裂産物は、別個独立のメカニズムによって細胞から放出された後に、別々に前記血流に入ることが明らかである。さらに、メソテリンがミュラー上皮細胞の細胞表面上で見出され、かつ、前記血流中に部分的に開裂される巨大糖タンパク質のCA125に結合することが示されたように、MPF及びメソテリンは一端前記血液に入った後には異なる薬物動態を示すことが明らかである。実際に、Iwahoriら(Lung Cancer 2008,印刷中)は、NCI−H226、メソテリン前駆体mRNAを発現することが知られるヒト肺癌細胞株の培養上清中の70ng/mLのMPFと、メソテリン前駆体のcDNA発現ベクターを用いてトランスフェクションされたHEK 293T細胞の上清中の20ng/mLとを測定した。同一の培養上清は、4ng/mL及び2.8ng/mLのメソテリンのそれぞれのみを含み、約80−95%のメソテリンが、用いられた培養条件下で前記細胞に結合したままであることを示唆する。対照的に、Iwahoriらは、健康な日本人が該日本人の血清中には、9.0 +/− 2.9ng/mLのMPF及び61.4 +/− 21.4ng/mLのメソテリンが存在することを発見し、該発見は、メソテリンがMPFよりも前記血流中でより安定(約50−100倍)となる場合があることを示唆する。まとめると、長年の十分かつ矛盾のない証拠が存在し、メソテリン及びMPFは、分泌、隔離及び分解の異なるメカニズムに関する明確なバイオマーカーであることを示す。
【0062】
特許出願第WO2005072341号公報明細書は、腹水中のメソテリンの存在を証明するために、SchollerらのクローンOV659及び4H3と同一の抗体を用いる。前記特許は、中皮腫は腹水の蓄積及び腹水中でのメソテリンの蓄積をもたらすという概念的な理解を議論する。したがって、腹水中のメソテリンの高濃度測定値は、腹水の前記蓄積原因が非悪性原因というよりはむしろ癌であるということを示す場合がある。メソテリンは腹水中で検出できるということを証明するために、出願人は天然の病的原因のために腹水の蓄積がある患者を見出すことが困難なために、その代わりに約5−65ng/mLのメソテリンが使用済み腹膜透析液中で検出される場合があることを示した。
【0063】
透析液は腎不全の腹膜透析治療で一般的に用いられる。人工緩衝液は所定期間ヒト腹膜中に注射され、そのうえ再度排出される。特許出願第WO2005072341号公報明細書は、前記腹膜の中皮細胞が腹水中にメソテリンを放出可能であることを示唆する。したがって、メソテリン濃度は前記中皮細胞の状態の指標であり、増加は前記中皮細胞の悪性増殖を示唆する。概念的に、悪性腫瘍は、ネクローシス及びタンパク質分解の発生のために細胞が死ぬ低いpHの低酸素領域をしばしば生じるために、悪性状態は細胞表面から前記腹水中へのメソテリンの分泌を特にもたらす場合がある。
【0064】
これらの論文、特許文献及び特許は、低下されるMPF又はMSLN濃度の診断的有用性か、いずれかの非腫瘍性疾患の診断のためのMPF又はMSLNの使用か、血液以外の体液中でのMPFの測定かを考慮していない。メソテリン及びMPFは癌の診断マーカーとして注目を浴びていたが、これらのマーカーは、PD治療の監視、特に、将来の合併症の危険性の評価か、PD治療を中止してHD治療を選択するための腎不全患者に対する最適な時点の決定かについて考慮されていなかった。MPFは、使用済み腹膜透析液のような腹水又は胸水中に検出可能な量で存在することが証明されていなかった。さらに、初期レベルからのMPF及びMSLNの減少は、特定の状態の指標として前記出願のいずれにも用いられていない。
【0065】
本明細書で開示される、方法、キット、試薬及び装置の一部の実施態様は、MPF、MSLN又はこれら両方を有利に検出し、特に、治療の開始時に典型的に測定されるか、あるいは決定されるレベルである、参照レベルからのMPF、MSLN又はこれら両方の減少を検出する。一部の実施態様では、MPF、MSLN又はこれら両方の前記レベルは、例えば、腹膜透析を受けている患者の腹腔の健康状態を含む、健康状態を評価するために用いられる場合がある。前記方法を実施するために形成されるキットが説明される。
【0066】
本明細書で開示される一部の実施態様は、体液又は腹水の検体を用いて実施される場合がある、診断アッセイに関する。一部の実施例では、液体検体は、前記腹腔の中皮の裏打ちの細胞学的インテグリティーを監視するために前記腹腔から得られる場合がある。限定的でない実施例として、前記アッセイは、腹膜透析治療に由来する腹膜の合併症の危険性を評価するために使用済み腹膜透析液を用いて実施される場合がある。
【0067】
一部の実施態様では、ヒト患者で前記中皮の前記細胞学的インテグリティーの監視の非侵襲的方法は、本明細書で説明される前記方法及び物質を用いて実施される場合がある。ある実施例では、前記方法は、前記患者から得られた使用済み透析液中のMSLN又はMPFか、これらのタンパク質分解性断片かの発生を評価するステップを含む。例えば、前記使用済み透析液中で測定される、MSLN又はMPFか、あるいはこれらの断片の量と、PD治療期間にわたって前記使用済み透析液中の前記ペプチドの蓄積の減少とは、前記患者が腹膜肥大症及び関連合併症を発症する場合がある危険性の指標として用いられる場合がある。
【0068】
一部の実施態様では、MSLN又はMPFか、あるいはこれらの断片は、例えば、前記MSLN又はMPFのペプチドに特異的に結合する第1の抗体のような結合物質に前記使用済み透析液(又は遠心分離か、あるいは濾過済み透析液)を曝露することによって前記患者の使用済み透析液中で評価される場合がある。第1の抗体に結合する前記MSLN又はMPFのペプチドかどうかを決定することによって、前記患者の中皮液中のMSLN又はMPFのペプチドの存在又はレベルが評価される場合がある。例えば、第1の抗体は、ロボット装置での自動分析のために適用される類型のプラスチックのマルチ−ウェルプレートのような基質に結合される場合がある。前記MSLN又はMPFと、第1の抗体との結合は、例えば、前記MSLN又はMPFのペプチドに特異的に結合する第2の抗体に第1の抗体を接触するステップと、前記第1及び第2の抗体の共局在を評価するステップとによって評価される場合がある。一部の実施例では、さらに以下で議論されるように、前記第2の抗体は、酵素、放射性核種、フルオロフォア及び発色団その他の検出可能な標識からなるグループから選択される化合物で検出可能に標識される場合がある。MPF、MSLN又はこれらの断片のレベルは、治療期間中監視される場合があり、前記MPF又はMSLNレベルが閾値レベル以下に低下するとき、治療は中止又は変更されてもかまわないが、前記閾値は、絶対的なレベルか、あるいは同一患者の過去のMPF又はMSLNレベルに関する減少のいずれか、好ましくは、腹膜透析治療の開始から3ヶ月以内に測定される前記MPF又はMSLNレベルとして定義される場合がある。
【0069】
ある実施態様では、患者から得た使用済み透析液にこれらと結合する抗MSLN又は抗MPFのペプチド「捕捉」抗体を含むプレートを接触するステップを含む方法が実施される場合がある。前記使用済み透析液は、任意に、例えば、10分間、20分間、30分間又は1時間その他の選択される時間のような期間、プレートでインキュベートされる場合がある。前記プレートは、前記捕捉抗体によって結合されるエピトープとは別のMSLN又はMPFのペプチドのそれぞれの前記エピトープに結合するビオチン化された第2の抗体と接触される場合がある。ストレプトアビジン連結酵素は、発色性基質(例えば、西洋ワサビのペルオキシダーゼの発色性基質である、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB))の存在下でその検出を可能にするために前記ビオチン化された抗体に結合される場合がある。もちろん、前記第2の抗体は、その代わりに、蛍光的に標識されるか、放射性標識されるか、あるいはその逆で、以下により詳細に議論されるように検出可能に標識される場合がある。
【0070】
もう1つの実施態様では、中皮の細胞学的インテグリティーを監視する方法が提供される。ある実施例では前記方法は、第1の抗体をこれらの標識化リガンドに曝露するステップと、前記第1の抗体を前記中皮液に接触させるステップとを含む。前記中皮液に接触させられた前記第1の抗体に結合する標識化リガンドの量と、前記中皮液に接触させられていない前記第1抗体と同等量に結合する標識化リガンドの量とを比較することによって、前記第1抗体に結合された前記中皮液に由来するMSLN又はMPFがどれくらいの量なのかを評価される場合がある。
【0071】
本明細書で開示されるアッセイ及びキットの一部の実施態様では、前記MPF又はMSLNのペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1又は配列番号2の少なくとも10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、120個、140個、160個、180個又は200個の連続する残基か、スイス−プロットのアクセッション番号Q13421に列挙される既知のバリアントかを含むことが、必ずしも必要ではないが、所望される。代替的に、前記MPF又はMSLNのペプチドは、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基の一部分を含む場合があり、該アミノ酸の一部分は、(MPFの)配列番号1又は(MSLNの)配列番号2か、スイス−プロットのアクセッション番号Q13421に列挙される既知のバリアントかに少なくと90%(又は95%)一致する。
【0072】
一部の実施例では、本明細書に開示されるキット、装置及び方法は、例えば、炎症及び増殖過程の指標と、血液及び透析液間の溶質輸送の指標と、患者の適切な血液透析の指標と、腹膜の細胞学的インテグリティー又は損傷の追加の指標とを用いる、腹腔の状態を(例えば、使用済み透析液か、血清か、あるいは超音波のような画像技術を用いて)評価するための既知か、今後開発されるキット及び方法かを組み合わせて用いるられる場合がある。患者の腹水中のMSLN又はMPFか、これらの断片かの発生の評価は、患者の血清中のMSLN又はMPFか、これらの断片かの評価を組み合わせて同様に実施される場合がある。
【0073】
実質的に同一のキット及び方法は、細菌性又は非細菌性腹膜炎か、被嚢性腹膜硬化症(EPS)かの徴候がある患者のような徴候を示す患者の腹膜の病状を特徴付けるために用いられる場合がある。実質的に同一の前記キット及び方法は、例えば、新規の透析液の生体適合性を評価するために、in vivo又はin vitroで腹膜中皮の前記細胞学的インテグリティーを有する投与透析液のいずれかの効果を監視するために用いられる場合がある。透析液中のMSLN又はMPFか、これらの断片かの蓄積の急速な変動、特に減少は、前記透析液は患者が十分に耐えられないという効能を証明する場合がある一方で、透析液中のMSLN又はMPFか、これらの断片かの蓄積の緩慢な変動は、腹膜の合併症の危険性がない緩衝液の効能を提供する場合がある。したがって、前記キット、装置及び方法は、腹膜透析液に添加される新規薬剤の治療効果及び安全性を評価するために用いられる場合がある。
【0074】
これらと、その他の実施態様、特徴、局面及び実施例とは、下記の定義に関して以下により詳細に説明される。
【0075】
巨核球増強因子(「MPF」)は、約31kDaの分子量を有し、かつ、(i)配列番号1の少なくとも10個の連続する残基か、(ii)少なくとも20個の連続するアミノ酸残基の一部分かのいずれかを含むアミノ酸配列を含む、ポリペプチドをいい、該アミノ酸残基の一部分は、図1に示す配列番号1の20個の連続する残基か、スイス−プロットのアクセッション番号Q13421に列挙される既知のこれらのバリアントかに少なくとも90%(好ましくは、少なくとも95%又は100%)一致する。MPFはN−グリコシル化される場合があり、いくつかの既知の小さな配列変化が知られる(スイス−プロットのアクセッション番号Q13421を参照せよ。)。
【0076】
メソテリン(「MSLN」)は、約40kDaの分子量を有し、かつ、(i)配列番号2の少なくとも10個の連続するアミノ酸又はスイス−プロットのアクセッション番号Q13421に列挙される既知の前記バリアントか、(ii)少なくとも20個の連続するアミノ酸残基の一部分かのいずれかを含むアミノ酸配列を有する、ポリペプチドをいい、該アミノ酸残基の一部分は、図1に示す配列番号2の20個の連続する残基か、スイス−プロットのアクセッション番号Q13421に列挙される既知の前記バリアントかに少なくとも90%(好ましくは、少なくとも95%又は100%)一致する。メソテリンのバリアントは、検出される8個のアミノ酸、PQAPRRPL(配列番号21)のバリアントと、C末端側のVQGGRGGQARAGGRAGGVEVGALSHPSLCRGPLGDALPPRTWTCSHRPGTAPSLHPGLRAPLPC(配列番号23)が、MQEALS(配列番号22)及び疎水性GPIリンカーモチーフ(GTPCLLGPGPVLTVLALLLASTLA)(配列番号24)に置換されているバリアントとを含むが、これらに限られないことが知られる。前記メソテリンは、翻訳後修飾としてのグリコホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー及び多くのN−結合型糖鎖を含む場合がある。前記GPIアンカーはメソテリンを細胞膜に結合させるが、可溶型のメソテリンを提供するためのホスホリパーゼによって開裂される場合がある。
【0077】
MPF/メソテリン前駆体は、フリンプロテアーゼによる開裂後にMPF及びMSLNを提供する約70kDaのタンパク質である。
【0078】
本明細書で用いられるところの「体液」という用語は、抽出、単離又はサンプリングされる場合があり、身体中の天然の液体(例えば、血液、リンパ液、尿など)を含む体液を含むことを意図する。体液は、前記血液と平衡化され(あるいはその逆に天然の体液と混合され)、このように前記身体に由来する多量の液体及び溶質が溶解された流動性人工溶液を含むことを意図する。例えば、一部の実施態様では、腹水は体液とみなされる場合がある。例えば、腹水は、腹腔中に腹膜透析液の注入がしばしば原因で個人の前記腹腔中で見出される液体である。
【0079】
「腎不全」という用語は、腎障害か、腎疾患か、腎不全か、腎癌か、事故による少なくとも1個の腎臓の欠失か、外科的除去又は遺伝性疾患か、1つ又は両方の腎臓が適切に作用していないその他の状態かを含むことを意図する。
【0080】
「抗体」という用語は、少なくとも1個の免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質をいう。例えば、抗体は、(VHとして本明細書で省略される)重鎖(H)可変領域と、(VLとして本明細書で省略される)軽鎖(L)可変領域とを含む場合がある。もう1つの例は、抗体は、2個の重鎖(H)可変領域と、2個の軽鎖(L)可変領域とを含む。「抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片(例えば、単鎖抗体と、Fab及びsFab断片と、F(ab’)と、Fd断片と、Fv断片と、scFvと、ドメイン抗体(dAb)断片(de Wildtら、Eur J Immunol. 1996; 26(3):629−39.)と)及び完全抗体を含む。抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(及びこれらのサブタイプ)の構造的特徴を有する場合がある。抗体は、いずれの供給源に由来してもかまわないが、霊長類(ヒト及びヒトでない霊長類)の抗体と、霊長類化される抗体とが好ましい。ポリクローナル及びモノクローナル抗体のいずれか又は両方は、本明細書で説明されるアッセイ及びキットで用いられる場合がある。
【0081】
前記VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれるより保存される領域に散在される「相補性決定領域」(「CDRs」)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化される場合がある。フレームワーク領域及びCDRsの範囲は正確に定義された(Kabat, E.A.ら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH出版 No. 91−3242と、Chothia, C.ら、 (1987) J. Mol. Biol. 196:901−917を参照せよ。また、www.hgmp.mrc.ac.ukを参照せよ。)。Kabatの定義は本明細書で用いられる。VH及びVLのそれぞれは、次の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシル末端まで配置される、3個のCDRs及び4個のFRsから典型的に構成される。
【0082】
本明細書で用いられるところの「免疫グロブリン可変ドメイン配列」は、1個又は2個以上のCDR領域が抗原結合部位に適する構造中に位置されるように免疫グロブリン可変ドメインの構造を形成する場合があるアミノ酸配列をいう。例えば、前記配列は、天然の可変ドメインのアミノ酸配列の全て又は一部分を含む場合がある。例えば、前記配列は、1種類、2種類又は3種類以上のN−又はC−末端のアミノ酸、内部のアミノ酸を省略する場合か、1種類又は2種類以上の挿入又は追加の末端のアミノ酸を含む場合か、他の変更を含む場合かがある。ある実施態様では、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、抗原結合部位を形成するためのもう1個の免疫グロブリン可変ドメイン配列、例えば、MPF又はMSLNタンパク質、例えば、腹水中のMPF又はMSLNと優先的に相互作用する構造に関連する場合がある。
【0083】
前記抗体のVH又はVL鎖は、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖のそれぞれを形成するための重鎖又は軽鎖の定常領域の全て又は一部分をさらに含む場合がある。ある実施態様では、前記抗体は、2種類の免疫グロブリン重鎖及び2種類の免疫グロブリン軽鎖の4量体であって、該免疫グロブリン重鎖及び軽鎖は、例えば、ジスルフィド結合によって相互に連結させられる。IgGsで、前記重鎖の定常領域は、3個の免疫グロブリンドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。前記軽鎖の定常領域は、CL領域を含む。前記重鎖及び軽鎖の前記可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含む。前記抗体の前記定常領域は、免疫系のさまざまな細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主の組織又は因子への該抗体の結合を典型的に仲介する。前記免疫グロブリンの前記軽鎖は、カッパー又はラムダ型となる場合がある。ある実施態様では、前記抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体−依存性細胞障害及び/又は補体−仲介性細胞障害に対して機能的となる場合がある。
【0084】
抗体の1箇所又は2箇所以上の領域は、ヒト又は事実上ヒトの領域である。例えば、1箇所又は2箇所以上の前記可変領域は、ヒト又は事実上ヒトの可変領域である。例えば、1箇所又は2箇所以上の前記CDRsは、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2及びLC CDR3に由来するヒトのCDRsである。前記軽鎖のCDRsのそれぞれはヒトのCDRsである。HC CDR3はヒトのHC CDR3である。1箇所又は2箇所以上の前記フレームワーク領域は、例えば、前記HC又はLCのFR1、FR2、FR3及びFR4に由来するヒトのフレームワーク領域である。例えば、前記Fc領域はヒトのFc領域である。ある実施態様では、全ての前記フレームワーク領域は、例えば、ヒトの体細胞(例えば、免疫グロブリンを産生する造血細胞又は非造血細胞)に由来するヒトのフレームワーク領域である。ある実施態様では、前記ヒトの配列は、例えば、生殖系列の核酸によってエンコードされる生殖系列の配列である。ある実施態様では、選択される抗体の前記フレームワーク(FR)残基は、最も類似の霊長類の生殖系列遺伝子、特に前記ヒト生殖系列遺伝子中の対応する残基のアミノ酸型に変わってもかまわない。1箇所又は2箇所以上の前記定常領域は、ヒト又は事実上ヒトの領域である。例えば、免疫グロブリン可変領域、前記定常領域、前記定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CL1)又は完全抗体の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%は、ヒト又は事実上ヒトの領域である。
【0085】
抗体の全て又は一部分は、免疫グロブリン遺伝子又はそのセグメントによってエンコードされる場合がある。模範的なヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパー、ラムダ、アルファ(IgA1及びIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン及びミューの定常領域遺伝子と、多くの免疫グロブリン可変領域遺伝子とを含む。完全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDa又は約214個のアミノ酸)は、NH−末端(約110個のアミノ酸)の可変領域遺伝子と、COOH−末端のカッパー又はラムダの定常領域遺伝子とによってエンコードされる。完全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDa又は約446個のアミノ酸)は、(約116個のアミノ酸)の可変領域遺伝子と、他の前記定常領域遺伝子の1種類、例えば、(約330個のアミノ酸をエンコードしている)ガンマとによって同様にエンコードされる。ヒトHCの長さは、HC CDR3は、約3個のアミノ酸残基から35個を超えるアミノ酸残基まで変化するためにかなり変化する。
【0086】
完全長抗体の「抗原−結合断片」という用語は、興味のある標的に特異的に結合する能力がある、完全長抗体の1種類又は2種類以上の断片をいう。完全長抗体の「抗原−結合断片」という用語に含まれる結合断片の例は、(i)Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価の断片と、(ii)F(ab’)断片、蝶番領域でジスルフィド結合によって連結される2個のFab断片を含む2価の断片と、(iii)前記VH及びCH1ドメインからなるFd断片と、(iv)抗体の単腕の前記VL及びVHドメインからなるFv断片と、(v)VHドメインからなる、dAb断片(Wardら、(1989) Nature 341:544−546)と、(vi)機能性を保持する単離化相補性決定領域(CDRs)とを含むが、これらに限られない。さらに、Fv断片、VL及びVHの2種類のドメインは、別々の遺伝子によってコードされるけれども、単鎖Fv(scFv)として知られる1価の分子を形成するための前記VL及びVH領域対で単一のタンパク質鎖としてこれらを製造することができる、合成リンカーによる組換え方法を用いてこれらは結合される場合がある。例えば、米国特許第5,260,203号公報明細書、第4,946,778号公報明細書及び第4,881,175公報明細書と、Birdら、(1988) Science 242:423−426及びHustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883とを参照せよ。
【0087】
抗体断片は、当業者に知られる従来技術を含む適切な技術のいずれかを用いて獲得される場合がある。「単一特異的抗体」という用語は、特定の標的、例えば、エピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す抗体をいう。本明細書で用いられるところの「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」を含むこの用語は、生産される前記抗体がどのようなものかにかかわりなく、単一の分子組成物の抗体又はこれらの断片の準備をいう。
【0088】
「事実上ヒト」免疫グロブリン可変領域は、該免疫グロブリン可変領域が正常なヒトで免疫原性応答を誘発しないような十分に多くのヒトのフレームワークアミノ酸位置を含む免疫グロブリン可変領域である。「事実上ヒト」抗体は、該抗体が正常なヒトで免疫原性応答を誘発しないような十分に多くのヒトのアミノ酸位置を含む抗体である。
【0089】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、該免疫グロブリン可変領域が正常なヒトで免疫原性応答を誘発しないような十分に多くのヒトのフレームワークアミノ酸位置を含むように改変される免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンの説明は、例えば、米国特許第6,407,213号公報明細書及び米国特許第5,693,762号公報明細書を含む。
【0090】
本明細書で用いられる「結合親和性」は、見かけの結合定数又はKaをいう。前記Kaは、解離定数(K)の逆数である。結合タンパク質は、例えば、特定の標的分子、例えば、MPF、メソテリン又はこれらの断片に対して、少なくとも10、10、10、10、10、1010及び1011−1の結合親和性を有する場合がある。第2の標的と比較して第1の標的への結合タンパク質の高結合親和性は、前記第2の標的に結合するための前記Ka(又はKの数値)と比較して、前記第1の標的に結合するためのより高いKa(又はKのより小さな数値)として示される場合がある。前記の場合には、前記結合タンパク質は、前記第2の標的(例えば、第2の構造又はその模倣の同一のタンパク質か、あるいは第2のタンパク質)と比較して、前記第1の標的(例えば、第1の構造又はその模倣のタンパク質)に対して特異性を有する。結合親和性(例えば、特異性その他の比較に関して)の違いは、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000又は10倍である。
【0091】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴又は(例えば、蛍光アッセイ、電子スピン共鳴又は核磁気共鳴を用いる)分光法を含む、さまざまな方法によって測定される場合がある。評価する結合親和性の模範的な状態は、TRIS−緩衝液(pH 7.5で、50mM トリス、150mM NaCl、5mM CaCl)である。これらの技術は、結合タンパク質(又は標的)として作用する濃度のような、結合した及び遊離の結合タンパク質の濃度を測定するために用いられる場合がある。結合した結合タンパク質の濃度(「結合した」)は、遊離の結合タンパク質(「遊離」)の濃度と、前記標的上の前記結合タンパク質に対する結合部位の濃度とに関連させられ、以下の方程式では(N)は、標的分子ごとの結合部位の数である。

「結合した」 = N・「遊離」/((1/Ka) + 「遊離」)

例えば、ELISA又はFACS解析のような方法を用いて測定される親和性の定量的測定値を得るか、例えば、機能的アッセイ(例えば、in vitro又はin vivoアッセイ)での活性によって、親和性の定性的測定値を得るか、あるいは、親和性の推定値を得るために十分であり、前記定量的測定値は、Kaに比例し、そのために高親和性が、例えば2倍高いかどうかを測定するような比較のために用いられる場合がしばしばあるために、Kaの正確な測定は常に必要ではない。
【0092】
「単離される組成物」は、該単離される組成物を得ることが可能な天然試料の少なくとも1種類の成分を少なくとも90%の状態で取り出される、組成物をいう。人工的に又は天然に生産される組成物は、興味のある種類の、種類又は集団が、重量−重量基準で、少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98又は99%の純度である場合に、「少なくともある純度の組成物」となる。
【0093】
「エピトープ」は、結合タンパク質(例えば、Fab又は完全長抗体のような抗体)によって結合される標的化合物上の部位をいう。前記標的化合物がタンパク質である場合には、前記部位は、アミノ酸成分から全体的に構成されるか、タンパク質のアミノ酸の化学修飾(例えば、グリコシル原子団)から全体的に構成されるか、あるいはこれらの組み合わせから構成される。重複しているエピトープは、少なくとも1種類の共通のアミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基その他の分子特徴を含む。
【0094】
(本明細書で互換的に用いられるところの用語である)2種類の配列間の「相同性」又は「配列の同一性」の計算は、下記のように実施される場合がある。前記配列は、最適に比較する目的でアライメントされる(例えば、隙間は、最適にアライメントするために第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の1種類か、あるいはこれら両方で埋められ、非相同配列は比較する目的で無視される。)。前記最適なアライメンは、例えば、ブロッサム62スコアリングマトリクスのGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムで、12個のギャップペナルティー、拡大された4個のギャップペナルティー及び5個のフレームシフトギャップペナルティーを用いて、最良のスコアとして測定される。その際に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置で前記アミノ酸残基又はヌクレオチドは比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置として同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められるとき、その時、分子はその位置で同一である(本明細書で用いられるアミノ酸又は核酸の「同一性」は、アミノ酸又は核酸の「相同性」と同等である。)。前記2種類の配列間の同一性の百分率は、前記配列によって共有される同一の位置の数の相関的要素である。
【0095】
好ましい実施態様では、比較する目的のためにアライメンされる参照配列の長さは、該参照配列の長さの、少なくとも30%と、好ましくは少なくとも40%と、より好ましくは少なくとも50%と、さらにより好ましくは少なくとも60%と、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%とである。例えば、前記参照配列は、免疫グロブリン可変ドメイン配列の長さとなる場合がある。
【0096】
本明細書で用いられるところの「実質的に同一」(又は「実質的に相同」)という用語は、第1のアミノ酸又は核酸配列という意味として本明細書で用いられ、前記第1のアミノ酸又は核酸配列は、前記第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列が、類似の活性、例えば、結合活性、結合選択又は生物活性を有する(又はタンパク質をエンコードする)ような第2のアミノ酸又は核酸配列に対して、十分に多くの同一又は同等の(例えば類似の側鎖を持つ、例えばアミノ酸置換が保存される)アミノ酸残基又はヌクレオチドを含む。抗体の場合には、第2の抗体は同一の特異性を有し、同一の抗原に関して、少なくとも50%、少なくとも25%又は少なくとも10%の親和性を有する。
【0097】
本明細書で開示される配列に対して、類似又は相同の配列(例えば、少なくとも約85%の配列同一性)は、本出願の一部分である。ある実施態様では、前記配列の同一性は、約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%となるか、あるいはより高くなる。さらに、核酸セグメントが、相補鎖に対して選択的なハイブリダイゼーション条件(例えば高いストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下でハイブリダイゼーションするときに、実質的な同一性が存在する。前記核酸は、細胞全体中か、細胞可溶化物中か、部分的に精製される又は実質的に純粋な形状中かに存在する場合がある。
【0098】
クローン41−28は、Iwahoriら、Lung Cancer 2008によって報告されるようなMPFに特異的IgG1カッパーのアイソタイプのマウスモノクローナル抗体クローン41−28をいい、クローン41−28のCDRは、図4及び5に示される。この抗体は、抗体41−28として本明細書のある実施例で言及される。
【0099】
クローン20−10は、Iwahoriら、Lung Cancer 2008によって報告されるようなMPF特異的なIgG1カッパーのアイソタイプのマウスモノクローナル抗体20−10をいい、クローン20−10のCDRは、図2及び3に示される。この抗体は、抗体20−10として本明細書のある実施例で言及される。
【0100】
クローン11−25は、Iwahoriら、Lung Cancer 2008によって報告されるようなメソテリン特異的なIgG2bカッパーのアイソタイプのマウスモノクローナル抗体クローン11−25をいい、クローン11−25のCDRは、図8及び9に示される。この抗体は、抗体11−25として本明細書のある実施例で言及される。
【0101】
クローンIC14−30は、メソテリン特異的なIgG1カッパーのアイソタイプのマウスモノクローナル抗体クローンIC14−30をいい、クローンIC14−30のCDRは、図6及び7に示される。この抗体は、抗体IC14−30として本明細書の一部の実施例で言及される。
【0102】
抗体又はペプチドに関して、「標識化」という用語は、抗体又はペプチドに対する検出可能な基質のカップリングすること(例えば、物理的に結合すること)による前記ペプチド又は抗体の直接標識と、直接的に標識されるもう1種類の試薬でそれをカップリングすることによる前記ペプチド又は抗体の間接標識とを含む。間接標識の例は、蛍光標識された第2の抗体と、蛍光的に標識されるストレプトアビジンで検出可能なビオチンで末端−標識されるペプチドとを用いる、第1の抗体の検出を含む。
【0103】
「取扱説明書」は、本明細書で説明されるキットの使用方法か、細胞学的状態、病理学的状態又はこれら両方か、腹腔か、継続性腹膜透析治療に由来する合併症の危険性かに関係がある使用済み腹膜透析液中のMPF又はメソテリンの発生を解釈するための情報か、治療変更勧告かを伝達するために用いられる場合がある文献、記録、図表その他の表現媒体のいずれかである。本発明のキットの前記取扱説明書は、例えば、本発明のキットを含む容器に添付されるか、あるいは前記キットを含む容器とともに輸送される。代替的に前記取扱説明書は、該取扱説明書及び前記キットが受取人によって協同的に用いられる本発明の前記容器から別々に輸送されるか、利用される場合がある。
【0104】
「透析液(dialysis fluid)」又は「透析液(dialysis buffer)」又は「透析液(dialysis solution)」という用語は、慢性腎不全後の血液を平衡化し、かつ、解毒するために、しばしば外科的に挿入されるアクセスチュービング(access tubing)を通して患者の腹腔内に一般に注入される水溶液を同義的にいう。「使用済み」透析液は、透析液を挿入後の時間(しばしば数時間)に適切な量を患者の腹腔から患者が排出した前記透析液をいう。したがって使用済み透析液は、前記患者の機能不全の腎臓が除去できなかった尿毒症毒素を含む、前記患者の血流及び腹腔に由来する多くの溶質を含み、それらの溶質の濃度は前記患者の治療状態に関する診断的判断のために測定される場合がある。
【0105】
MPF又はMSLN結合タンパク質は、本明細書で説明される結合タンパク質に関してタンパク質機能に実質的な影響を及ぼさない(例えば、少なくとも1個、2個又は4個、及び/又は、15個、10個、5個又は3個未満の)変異(例えば、保存性又は非必須アミノ酸置換)を有する場合がある。特定の置換が許容されるかどうかは、例えば、(例えば、前記変異が保存性であるかを評価するか、あるいはBowieら、(1990) Science 247:1306−1310の方法によって)結合活性が予測され得るような生物学的特徴が逆に影響しないかどうかである。
【0106】
「保存性アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、従来技術で定義された。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)と、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)と、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)と、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)と、ベータ−分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)と、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)とを有するアミノ酸を含む。多くのフレームワーク及びCDRのアミノ酸残基は、1種類又は2種類以上の保存性置換を含む場合がある。
【0107】
タンパク質のモチーフ配列は、アミノ酸が変更される位置を含む場合がある。例えば、かかる文脈中の記号「X」は、アミノ酸のいずれか(例えば、20個の天然アミノ酸のいずれか又は19個の非システインアミノ酸のいずれか)を一般的にいう。他の許容されるアミノ酸は、括弧及び斜線を用いる例として示される。例えば、「(A/W/F/N/Q)」は、アラニン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン及びグルタミンが、その特定の位置で許容されることを意味する。
【0108】
「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を消滅しない又はより好ましくは、実質的に変更せずに結合物質、例えば、抗体の野生型配列から変更されてもかまわない残基であるが、「必須」アミノ酸残基の変更は活性の実質的な消失をもたらす。
【0109】
統計学的な重要性は、基準点で偏差及び分散を評価するために一般的に用いられる多くの異なる方法によって決定される。実施例の統計検定は、ステューデントT−検定、マンホイットニーの非パラメトリックU検定及びウィルコクソン非パラメトリック統計検定を含むが、これらに限られない。ある統計学的な有意関係は、0.05又は0.02未満のP値を有する。特定の結合タンパク質は、例えば、特異性又は結合で統計学的に重要である(例えば、0.05又は0.02未満のP値)違いを示す場合がある。「誘導」、「抑制」、「増強」、「上昇」、「増加」、「減少」又はそのようなものの用語は、例えば、2種類の状態間の区別可能な定性的又は定量的な違いを示し、違い、例えば2種類の状態間の統計学的に有意な違い、例えば初期レベルから現在レベルまでのMPF又はMSLNの減少をいう場合がある。
【0110】
本明細書で説明される技術の一部の実施態様は、健康状態及び/又は健康リスクを評価するためにMSLN及び/又はMPFレベルを監視することに関する。例えば、MSLN及びMPFは、腹膜透析患者の腹膜透析液のそれらの蓄積能力で段階的な低下を示す。これらのバイオマーカーの蓄積の低下は、腹膜透析治療の中止を示す合併症の治療をもらす場合があり、腹膜硬化症、大腸閉塞、慢性痛及び死亡のような重篤な合併症をもたらす場合がある腹膜の生理的な変動に関連する。本明細書で議論されるように、腹膜透析液中のこれらのマーカーのそれぞれの低蓄積は、腹膜透析の中止に必要な統計学的に有意な予測因子である。
【0111】
MPF又はMSLNの濃度又は発生の減少は、細菌性腹膜炎のような慢性及び急性障害の両方で腹腔を裏打ちしている中皮膜の細胞学的インテグリティーの悪化指標を提供する場合がある。MPF及びMSLNの量は、前記病状の効果的な治療後に反跳する。したがって、腹膜透析液中のMPF又はメソテリンの蓄積は、急性障害又は慢性腹膜透析後の腹膜の回復を監視し、かつ、新規の透析液の生体適合性を評価するか、前記腹膜の健康状態及びインテグリティーを保護するか、あるいは改善するために、又は、腹膜透析治療に由来する合併症の発症を遅らせるために、患者の透析液に添加されるか、あるいはその逆で患者に投与される治療剤の治療効果を評価するかのために用いられる場合がある。
【0112】
MPFは、マウス骨髄細胞のin vitro培養系で巨核球のコロニー形成が増大されるヒト膵腫瘍細胞株、HPC−Y5の培養上清で最初に同定された(Yamaguchi Nら、J. Biol. Chem. 269(2):805−8 (1994))。cDNAのクローニングは、フリンプロテアーゼ開裂部位によって分離される、メソテリン及びMPFの配列を含む、メソテリン前駆体ペプチドの完全コーディング配列の発見をもたらした(Kojima Tら、J. Biol. Chem. 270(37):21984−90 (1995))。メソテリンは、その後に、CAK1抗体、卵巣癌細胞に結合することが知られる抗体に対する同種抗原となることが同定され、腹腔、胸腔及び心腔(cardiac body cavities)を裏打ちしている中皮細胞でのその発現から名付けられた(Chang Kら、Proc Natl Acad Sci U S A. 93(1):136−40 (1996))。さまざまな研究は、メソテリン及びMPFが、ヒトの血清中で検出され、卵巣癌及びある種の肺癌のような中皮に関連する由来のさまざまな癌で上昇されることをその後に証明した。Fujirebio Diagnosticsは、メソテリンを測定することによって中皮腫の診断に用いられる、血液試験、Mesomark(登録商標)を商業化した。http://www.fdi.com/mesomark/world/home.html
【0113】
患者のメソテリン又はMPFの増加は癌診断のための診断学的価値となることが周知であるが、本明細書で説明される実施態様は、初期レベルと比較して、MSLN又はMPFレベルの減少を効果的に監視し、腹膜透析期間中の腹膜の健康悪化の減少に関連する。
【0114】
大腸その他の器官の閉塞をもたらす腹膜の炎症性の肥厚のような重篤な合併症の危険性は、腹膜透析継続期間を増大する。患者は、十年をおおいに途過する腹膜透析治療をめったに実施できない。それにもかかわらず、最初の2年間、腹膜透析は、血液透析と比較して、心血管イベント及び死亡の危険性が低い。本明細書で証明されるように、腹膜透析液中のMSLN及びMPFの蓄積は、数年にわたる治療で重大な減少を示し(図14)、観察される患者の多くで3ヶ月間を超える明らかな減少を示した(図13)。重要なことに、5年間又はより長い期間の透析治療中の患者で、使用済み透析液中のメソテリン及びMPFの両方の濃度の減少は、腹膜透析を中止しなければないない患者が該患者の使用済み透析液中のメソテリン及びMPFの両方で統計学的に低い濃度となるような治療に関する予測となる(図15)。さらに、メソテリン及びMPFレベルの重度な減少は、急性腹膜炎(前記腹膜の細菌性感染の罹患)で検出され、しばしば前記感染の急性期で検出不能なレベルとなる(図13)。これらの結果は、透析液の物理化学的な消耗に感受性となることが知られる、腹膜の健康状態の生物学的指標となる、メソテリン及びMPFと一致する。中皮細胞は、腹膜透析治療によって、解離され、洗い流されることが知られ(例えば、Kamidaら、poster P−268, 5th symposium of the Japanese Kidney Societyを参照せよ。)、経時的に線維芽細胞によって腹膜透析期間中に徐々に置換される。透析液中のメソテリン及びMPFの蓄積の減少は、危険な炎症性の合併症をもたらす線維化過程の簡便な指標である。
【0115】
さらに、メソテリン及びMPFは、中皮細胞以外の非腫瘍性細胞のいずれかで発現することは知られていない。前記腹膜が、重要ではない追加の供給源となる胸膜及び心膜を有する身体で最も大きな中皮であるとき、MSLN又はMPFのヒトの血清濃度、特に、前記濃度の減少は、透析期間中の腹膜の健康悪化の生物学的指標となることは明らかである。これは、使用済み透析液が腹膜透析治療の開始前に利用できないために特に顕著である。したがって、前記患者の個々の減少が測定される場合があるために、血清のMSLN又はMPFは、使用済み透析液又は血清のメソテリン又はMPFかの先の測定が比較される、患者の個々の基線の測定で有用である。さらに、血清のメソテリン又はMPFは、如何に良く患者が腹膜透析治療に耐えるようにするかを治療前に決定するための有用な指標となる場合があり、したがって、治療の選択で有益な指針となる。
【0116】
MPF及びMSLNレベルの測定及び使用
一部の実施態様に従って、体液中のMSLN又はMPFレベルを評価するための方法が提供される。一部の実施例では、前記方法は、患者の腹腔の細胞学的状態及び生物学的インテグリティーを診断するのに用いられる場合がある。他の実施態様では、前記方法は、初期レベルと比較して、例えば、血清、使用済み透析液又はそのようなものの体液中の前記MPF又はMSLNレベルの減少を測定するのに用いられる場合がある。
【0117】
一部の実施態様では、前記方法は、哺乳類の被験体、例えば、腎不全患者から得られる使用済み腹膜透析液中のMPF又はメソテリンの発生を評価するステップを含む場合がある。MPF又はメソテリンレベルの減少は、腹膜の裏打ちの前記細胞学的状態及び生物学的インテグリティーの悪化、つまり治療合併症の危険性の増加指標として用いられる場合がある。特定百分率までの前記レベルの減少後に、腹膜透析治療は中止される場合があり、血液透析が開始される場合がある。周期的に、腹水中の前記MPF又はメソテリンレベルは、腹膜透析の再開するのに安全かどうかを決定するために評価される場合がある。
【0118】
一部の実施例では、腹水中のMPF又はMSLNの初期レベルを測定するために好ましい場合がある。前記初期レベルは、誕生直後、1日、1週間、1ヶ月、1年、10年、25年、50年、75年、100年又はいずれかの期間中を含む、妊娠後の時点のいずれかで得られる場合がある。一部の実施例では、腹膜透析が開始された後に、できるだけ早期に腹水中のMPF又はMSLNの初期レベルを測定するのに好ましい。前記初期レベルは用いられ、MPF又はMSLNが、腹膜透析を中止することが賢明である前記時点まで減少したかどうかを評価するために後のレベルと比較される場合がある。
【0119】
正確な初期レベルは患者間で変動する場合があり、一部の実施態様では、絶対量の存在よりもむしろ前記MPF又はMSLNの変動が、健康状態の評価に用いられる。一部の実施例では、初期レベルと比較して、前記MPFレベルが、少なくとも40%まで減少する、約80%までよりいっそう減少するとき、腹膜透析は中止される場合がある。ある実施例では、閾値レベルの変動は、腹膜透析が継続されるべきかどうかを評価するために用いられる場合がある。ある実施例では、前記閾値レベルの変動は、初期レベルの、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1又は20分の1であるとき、その際に腹膜透析は中止される場合がある。急性レベルが、(前記レベルは前記閾値以上のままで、初期値と比較しての減少は相対的に小さい)サブ閾値レベルの変動を示す場合、その際に腹膜透析は継続される場合がある。前記急性レベルは、(前記レベルが閾値以下に低下し、初期値と比較しての減少は相対的に大きくなる)閾値レベルの変動以上を示す場合、その際に腹膜透析は中止され、血液透析が開始される場合がある。
【0120】
抗体、例えば、抗メソテリン又は抗MPFペプチド抗体が患者から得られる使用済み腹膜透析液に接触される実施態様では、該使用済み腹膜透析液は、それを天然に発現される状態で用いられる場合があり、使用前に部分的に精製されるか、浄化されるか、濾過されるか、あるいは濃縮される場合がある。例えば、使用済み腹膜透析液は、中皮液を抗体に接触させる前に、そこから沈殿物のいずれかを実質的に除去するための標準的な方法を用いて遠心分離される場合がある。代替的に、前記使用済み腹膜透析液は、その量を低下させるか、あるいは大きな混入物を除去するために濾過されるか、あるいは限外濾過される場合がある。前記使用済み腹膜透析液中に発生するメソテリン及びMPFペプチドは、10,000−50,000ダルトンの範囲の分子量を有するグリコシル化ペプチドとなることが期待される場合があるために、適切な濾過/限外濾過の選択は、その検出前に前記メソテリン又はMPFペプチドが存在しないことが好ましい。実施例を通して、相対的に大きな径の濾過、例えば、250,000ないし1,000,000ダルトンの分子量を有する球状粒子の通過を許容するものは、使用済み腹膜透析液から粒子状物質を除去するために用いられる場合があり、約5,000ダルトン以上の大きさの分子量を有するタンパク質の通過を排除する膜を備える限外濾過装置は、濾液を濃縮するために用いられる場合がある。この実施例では、メソテリン又はMPFの発生は、限外濾過装置中の未透過物で評価される場合がある。
【0121】
本明細書で開示される多くの方法(例えば、免疫学的方法)は相対的に感受性であるために、使用済み透析液の濃縮は、患者の使用済み腹膜透析液中のMPF又はメソテリンペプチドの発生を検出するためにしばしば不必要である。その代わりに、使用済み腹膜透析液は、興味のある濃度範囲で最適な定量的読出しを得るために適切な希釈液で希釈される場合がある。使用済み腹膜透析液の浄化が所望される状況で前記使用済み腹膜透析液中に存在する、メソテリン又はMPFペプチドを、結合させるか、あるいは捕らえる濾材となる可能性は存在しないために遠心分離は好ましい場合がある。
【0122】
一部の実施態様では、多くの異なる方法は、患者の使用済み透析液中のMFP又はメソテリンレベルを評価するために用いられる場合がある。特に、それぞれのペプチドの1つが存在するか、あるいは存在しないかを評価するために用いられる場合があるいずれかの方法は適している。ある実施態様では、前記患者の腹水中のMPF又はメソテリンペプチドのレベルは、該腹水を該MPF又はメソテリンペプチドに特異的に結合する抗体に曝露することによって評価される場合がある。前記曝露は、前記腹水に対する抗体の選択量を添加によって達成される場合がある。ある実施例では、結合する第2の抗体は、前記MPF又はメソテリンペプチドが第1の抗体に結合したかどうかを評価するために前記腹水に添加される場合がある。前記2つの抗体は、非競合的なやり方で同一抗原に結合するよりもむしろ、同一のエピトープに結合するために競合しないことが好ましい。
【0123】
使用済み腹膜透析液その他の患者の体液中のMSLN又はMPFの発生を評価する好ましい方法の1つは、「サンドウィッチELISA」アッセイとして一般的に知られる手続である。(ELISAは、酵素結合免疫吸着アッセイの略称である。)この技術では、抗体は、ガラスビーズ又はプラスチックのマルチ−ウェルアッセイプレートの底面のような基質に結合される。この抗体は、「捕捉」抗体と命名される。未精製の、浄化される、又は、精製される、患者からの使用済み腹膜透析液又はそれぞれの体液検体は、条件(例えば、塩及び界面活性剤の低濃度、かつ、非タンパク質変性条件)下で基質に接触される場合があり、そのために前記使用済み腹膜透析液又は体液検体中に存在する、メソテリン又はMPFのいずれかは前記捕捉抗体に特異的に結合する場合がある。前記基質は、残留する使用済み腹膜透析液又は体液を除去するために、前記補足抗体か、あるいはメソテリン又はMPFペプチドを含まない液体で任意にすすがれる。前記基質は、その際に前記捕捉抗体が結合するエピトープとは独立のエピトープでメソテリン又はMPFペプチドに特異的に結合する第2抗体に接触させられる場合がある。前記第2の抗体は、リガンド又は該リガンドのレセプターに検出可能に標識されるか、あるいは連結される。どちらでも、前記第2の抗体の結合は、該第2の抗体を含まない液体で前記基質をすすぐステップの後に検出される(かつ、任意に定量される)。前記第2の抗体の検出は、前記使用済み腹膜透析液又は体液中のMPF又はMSLNそれぞれのペプチドの存在を示す。前記第2の抗体量が定量される場合には、その際に前記使用済み腹膜透析液又は体液中の前記MPF又はメソテリンペプチド量は、例えば、MPF又はMSLNの既知量を含む、対照検体又は標準を用いて実施される測定で検出される第2の抗体量の比較によって定量される場合がある。
【0124】
他の実施態様では、競合アッセイは、前記使用済み腹膜透析液又は体液中のMSLN又はMPFの存在及び/又はレベルを評価するために用いられる場合がある。このアッセイのある実施態様では、前記メソテリン又はMPFペプチドに特異的に結合する抗体は基質に固定される場合がある。未精製の、浄化される、精製される、又は、希釈される、使用済み腹膜透析液又は体液は、(好ましくは数分間又は数時間)前記基質に接触され、そのために前記使用済み腹膜透析液又は体液中に存在するメソテリン又はMPFペプチドのいずれかは、前記抗体に結合する。前記抗体に特異的に結合する標識化リガンド(例えば、MPF又はメソテリンペプチドの標識される形)は、その際に(好ましくは数分間又は数時間)前記基質に接触される。前記基質に結合される標識化リガンド量は、前記標識又は標識化リガンドを含まない液体で該基質をすすぐステップの後に評価される。前記基質に結合させる標識量は、患者の使用済み腹膜透析液又は体液に接触されない、別の方法で同様に処理される基質に結合させる標識量と比較される。2つの結合される標識量の違いは、前記基質に結合されるMPF又はメソテリンペプチド量を示し、前記基質に適用される前記使用済み腹膜透析液又は体液検体中に存在するMPF又はメソテリンペプチド量を示す。
【0125】
免疫学的競合アッセイが用いられるとき、前記基質に結合される抗体の標識化リガンドは、患者の体液及び使用済み腹膜透析液中の既知の又は存在することが期待される前記MFP又はメソテリンペプチドとほとんど同一であることができるだけ好ましい。例えば、前記リガンドと、前記MPF又はメソテリンペプチドとは、前記抗体によって結合される領域中の同一のアミノ酸配列を持つか、あるいは含むべきである。同様に、前記患者の使用済み腹膜透析液又は体液中に発生する場合がある前記MPF又はメソテリンペプチドは、グリコシル化されることが期待され、その際に前記リガンドは、同一の方法、同一の位置及び/又は同一の程度でグリコシル化される場合がある。この方法で、前記リガンドと、前記MPF又はメソテリン分析物とに対する親和性の違いは最小限化される場合があり、前記競合アッセイの精度は改善される場合がある。
【0126】
一部の実施例では、ホモジニアスアッセイは、体液中のMSLN又はMPFの存在及びレベルを評価するために用いられる場合がある。ホモジニアスアッセイでは、該アッセイの全ての成分が添加された後には、追加の液体処置は必要とされない。例えば、蛍光共鳴エネルギー移転(FRET)は、ホモジニアスアッセイとして用いられる場合がある(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号公報明細書;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号公報明細書を参照せよ。)。第2の分子が第1の分子に近接する場合に、その放出される蛍光エネルギーが前記第2の分子上の蛍光標識(受容体)によって吸収される場合があるように前記第1の分子上のフルオロフォア標識(供与体)は選択される。前記蛍光標識が移転されるエネルギーを吸収するとき、前記第2の分子上の蛍光標識は蛍光を発する。前記標識間のエネルギー移転の効率は、前記分子を分離している距離に関係するために該分子間の空間的関係が評価される場合がある。前記受容体標識が競合するリガンド上に存在する場合に、その際に全体の蛍光強度は、MPF又はMSLNの存在下で低下される場合がある。MPF又はMSLNが全く存在しない場合に、前記アッセイでの前記受容体分子標識の蛍光放出は最大となるべきである。FRETによる監視のために形成される結合イベントは、例えば蛍光光度計を用いる標準蛍光定量検出の平均を通じて便利に測定される場合がある。第1又は第2の結合分子の量の滴定によって、結合曲線は、平衡結合定数を推定するために及び/又は体液中のMPF又はMSLNレベルを測定するために作成される場合がある。経時的な患者のバイオマーカーレベルの変動の監視に役立つ正確な定量結果を提供することが知られるある特定のFRET技術は、クリプテート(cryptates)と称される有機複合体中に入れられるユーロピウム及びテルビウムのようなランタノイドを含む長期放出半減期のフルオロファアを用いる、均一時間分解蛍光(homogeneous time resolved fluorescence)(HTRF)及びTR−FRET、FRET技術を含むが、これらに限られない。さまざまなバイオバーカーの診断HTRFアッセイが、Cisbio、バニョル/セズ、フランスから許可を受けているベルリンーヘニングスドルフ、ドイツのBRAHMS AGによって販売され、本質的に類似のアッセイは、使用済み腹膜透析液又は体液検体中のMSLN又はMPFの定量を実行可能にする。
【0127】
ホモジニアスアッセイのもう1つの例は、ALPHASCREEN(商標)(Packard Bioscience、コネチカット州メリデン)である。ALPHASCREEN(商標)は2つの標識化ビーズを使用する。レーザーによって励起されるとき、あるビーズは一重項酸素を発生する。一重項酸素が第1のビーズから拡散し、それと衝突するとき、他のビーズは光信号を発生する。2つのビーズが近接するとき、前記信号が単に発生する。あるビーズは、ディスプレイライブラリーメンバー(display library member)、他のものないし標的に付着される場合がある。信号は、結合の程度を決定するために測定される。一部の実施例では、ビーズに付着される競合性リガンドは、使用済み腹膜透析液又は体液中のMPF又はMSLNレベルを評価するために用いられる場合があり、MPF又はMSLNの存在を示す全体の信号が減少する。定量が所望される場合には、標準は、所望される濃度範囲を超えて実施される場合があり、使用済み腹膜透析液又は体液検体中のMPF又はMSLNがどのくらいかを測定するために用いられる。
【0128】
一部の実施例では、表面プラズモン共鳴(SPR)は、体液中のMPF又はMSLNレベルを測定するために用いられる場合がある。SPR又は生体分子相互作用解析(BIA)は、相互作用物を全く標識することなく、実時間に生体分子特異的相互作用を検出する。BIAチップの(結合イベントを示す)結合表面での全体としての変化は、前記表面に近接する光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)をもたらす。屈折の変化は、生体分子間で実時間反応の指標として測定される検出可能な信号を発生する。SPRを用いる方法は、例えば、米国特許第5,641,640と;Raether、1988, Surface Plasmons Springer Verlagと; Sjolander及びUrbaniczky、1991, Anal. Chem. 63:2338−2345と; Szaboら、1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699−705と、BIAcore International AB(ウプサラ、スウェーデン)によって提供されるオンライン供給源とに説明される。BIAcore Flexchipは標識を用いることなく、実時間、動態、親和性又は特異性における相互作用を比較又は位置付けのために用いられる場合がある。SPRからの情報は、使用済み腹膜透析液又は体液中の動態パラメーターと、MPF又はMSLNレベルとの正確かつ定量的な測定を提供するために用いられる場合がある。
【0129】
一部の実施例では、細胞アッセイは、MPF及び/又はMSLNの存在及び/又はレベルを測定するために実施される場合がある。例えば、結合タンパク質は、前記細胞表面上に興味のある標的を一過的又は安定的に発現し、かつ、提示する、細胞に結合するための能力が選別される場合がある。例えば、MPF又はMSLN結合タンパク質は蛍光的に標識される場合があり、拮抗性抗体の存在又は不存在下でのMPF又はMSLNへの結合は、フローサイトメトリー、例えば、蛍光標示式細胞分取器を用いる蛍光強度の変化によって検出される場合がある。一部の実施例では、MSLN又はMPFに結合することが知られる細胞、ビーズその他の検出可能なプローブの細胞表面上に分子を提示する該細胞、ビーズその他の検出可能なプローブは、使用済み腹膜透析液又は体液検体に接触される場合がある。MSLN又はMPFに結合することが知られる前記分子は、本明細書で開示される抗体か、MSLN又はMPFに特異的な他の抗体か、前記抗体又はリガンドの天然リガンド分子又は断片、例えば、メソテリンに特異的に結合することが知られているCA125の少なくとも1種類の粘液性の繰返しドメインを含む、CA125又はCA125の断片かを含む(Rumpら、J Biol Chem. 5;279(10):9190−8 (2004))。前記検体に前記細胞又はプローブを適切に接触するステップ後に、前記検体中に存在するMSLN又はMPFの量は、MPF又はMSLNを第1の結合分子に非競合的に結合する標識化分子に前記プローブを接触するステップか、あるいは代替的に、前記結合分子に結合するMSLN又はMPFと競合する場合がある標識化ペプチドに前記プローブを接触するステップかによって標準検体と比較して定量される場合がある。
【0130】
一部の実施態様では、シンチレーション近接アッセイは、前記使用済み腹膜透析液又は体液検体中のMPF又はMSLNの存在及び/又はレベルを評価するために用いられる場合がある。シンチレーション近接アッセイでは、光の放出を促進させる発光剤(scintillant)を含むビーズが用いられる。興味のある放射性標識分子が前記ビーズの表面に結合したとき、この促進イベントが単に生じる。前記分子が結合するとき、その際に光は放出され、標準シンチレーションカウンターその他の適切な光学装置を用いて検出される場合がある。一部の実施例では、放射性標識されるMPF又はMSLNは、MPF又はMSLNに対する結合タンパク質を含むビーズに添加される場合がある。非標識化MPF又はMSLNを含む体液は添加される場合があり、蛍光の減少は、検体中のMPF又はMSLNレベルを測定するために用いられる場合がある。標準曲線は、体液検体中のMPF又はMSLNの測定を促進するためにさまざまな標準濃度を用いて作成される場合がある。
【0131】
一部の実施態様では、上記されるアッセイ以外のアッセイは、用いられるか、あるいは上記される前記アッセイに付加して用いられる場合がある。例えば、凝集/比濁アッセイか、層流/層速試験か、抗体チップその他の複合アッセイか、例えば、カーボンナノチューブアッセイのようなナノ物質を含むアッセイかが実施される場合がある。
【0132】
一部の実施例では、腎不全治療を受けている患者の腹腔及び/又は腹膜の状態をアッセイする方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、前記腹水中のMPFレベルを測定するために患者の腹水を少なくとも1種類のMPF特異的な結合物質に曝露するステップを含む。
【0133】
ある実施態様では、前記方法は、例えば、腹水中のMPFの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MPFレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。もう1つの実施態様では、前記方法は、前記腹水のMPFレベルにもとづいて前記患者のための治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MPFレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MPFレベルが、例えば、前記標準試料の一定の/規定された割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。一部の実施態様では、前記MPFレベルが、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0134】
一部の実施態様では、結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗体結合断片)から選択される。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0135】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0136】
他の実施態様では、MPFレベルは、検出可能な標識を含むMPFの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質と異なるMFPの領域に結合する第2の結合物質に該MPFを接触することによって測定される場合がある。追加の実施態様では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は、前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0137】
一部の実施態様では、MPFレベルは、腎不全治療が開始された後、1、2、3、4、5、6ヶ月、1年、2年又は10年までか、あるいはそれ以上の期間測定される。
【0138】
一部の実施態様では、方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMPFレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記MPFレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0139】
他の実施例では、腎不全治療を受けている患者の腹腔及び/又は腹膜の状態を評価する方法は開示される。一部の実施例では、前記方法は、前記患者の腹水を該腹水中のMSLNレベルを測定するために少なくとも1種類のMSLN特異的な結合物質に曝露するステップを含む。
【0140】
一部の実施態様では、方法は、腹水中のMSLNの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MSLNレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。他の実施態様では、前記方法は、前記腹水中の前記MSLNレベルにもとづいて前記患者のための治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施態様では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MSLNレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料の一定の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0141】
一部の実施例では、結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、結合タンパク質は、MSLNに結合する、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0142】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0143】
他の実施態様では、MSLNレベルは、検出可能な標識を含むMSLNの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質と異なるMSLNの領域に結合する第2の結合物質に前記MSLNを接触することによって測定される場合がある。追加の実施態様では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は、前記結合物質に直接的に結合する。他の実施態様では、前記標識は前記結合物質に結合する物質に結合する場合がある。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。
【0144】
一部の実施態様では、方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMSLNレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記MSLNレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0145】
他の実施態様では、方法は、前記腹水中の前記MSLNレベルにもとづいて前記患者のための治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施態様では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MSLNレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0146】
もう1つの実施例では、患者の体液中のMPFを検出する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、MPFの第1のエピトープに結合する、少なくとも1種類の抗体又はその抗原結合断片に前記患者の体液を接触させるステップと、前記第1のエピトープと異なるMPFの第2のエピトープに結合する検出可能な標識を含む、第2の抗体又はその抗原結合断片に前記体液を接触させるステップと、前記第1及び第2の抗体又は抗体断片を用いて前記体液中の前記MPFレベルを検出するステップとを含む。前記検出可能な標識は、例えば、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。
【0147】
一部の実施態様では、方法は、体液中の(とりわけ、腹水中の)MPFの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MPFレベルと比較するステップを含む場合がある。
【0148】
もう1つの実施態様では、方法は、前記腹水中の前記MPFレベルにもとづいて前記患者のための治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MPFレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MPFレベルが、例えば、標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。一部の実施態様では、前記MPFレベルは、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0149】
一部の実施態様では、抗体又はその抗原結合断片はMPFに結合し、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0150】
一部の実施態様では、方法は、腹水の検体中のMPFを該検体に由来する該MPFを除去する第1の抗体と、検出可能な標識を含む第2の結合抗体とに接触するステップを含む。一部の実施例では、前記方法は、前記腹水を検出可能な標識で標識されるMPFに曝露するステップをさらに含む場合がある。一部の実施態様では、前記方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中の前記MPFレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記MPFレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0151】
追加の実施例では、患者の体液中のMSLNを検出する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、MSLNの第1のエピトープに結合する、少なくとも1種類の抗体又はその抗原結合断片に前記患者の体液を接触させるステップと、前記第1のエピトープと異なるMSLNの第2のエピトープに結合する検出可能な標識を含む、第2の抗体又はその抗原結合断片に前記体液を接触させるステップと、前記第1及び第2の抗体又は抗体断片を用いて前記体液中の前記MSLNレベルを検出するステップとを含む。
【0152】
ある実施態様では、方法は、例えば、腹水中のMSLNの測定レベルを標準試料、例えば、透析治療の開始より前又は同時に血液中で検出されるか、あるいは腎不全の透析治療の開始時又は開始から1、2、3ヶ月以内に前記腹水中で検出される、患者の前記MSLNレベルと比較するステップをさらに含む場合がある。他の実施態様では、前記方法は、前記腹水のMSLNレベルにもとづいて前記患者のための治療を選択するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、選択される前記治療は腹膜透析となってもかまわない。一部の実施態様では、前記MSLNレベルが閾値レベルよりもより大きい場合、例えば、前記MPFレベルが、例えば、前記標準試料の一定の割合と統計的に同一か、あるいはより大きくなる場合、選択される前記治療は腹膜透析となる。他の実施態様では、MSLNレベルの減少が、統計的に前記標準試料と同一の割合未満になるか、あるいは前記標準試料と同一の割合以下に減少する場合、選択される前記治療は血液透析となる。
【0153】
一部の実施例では、抗体又はその抗原結合断片はMSLNに結合し、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0154】
一部の実施態様では、方法は、腎不全治療、例えば、腹膜透析中に1回以上体液中のMSLNレベルを測定するステップをさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記MSLNレベルは、毎週、毎月、3ヶ月毎、6ヶ月毎又は1年毎に測定される場合がある。
【0155】
一部の実施態様では、透析を必要とする患者の腹膜透析の継続を評価するアッセイが説明され、該アッセイは、前記患者に由来する腹膜透析液、例えば、使用済み腹水を少なくとも1種類の結合物質、例えば、MPF又はMSLNに特異的な抗体又はその抗原結合断片に接触するステップと、前記腹水中のMPF又はMSLNレベルを決定するステップと、MPF又はMSLNの測定レベルにもとづいてか、あるいは標準試料、例えば、より早期で測定されるMPF及び/又はMSLNレベル、例えば、腹膜透析治療の開始時又は腹膜透析が開始された後、1、2、3ヶ月の個人の初期MPF又はMSLNレベルと比較してのMPF又はMSLNの測定レベルの減少にもとづいて腹膜透析又は血液透析を提供するかどうかを評価するステップとを含む。
【0156】
一部の実施態様では、MPF特異的な抗体又はその抗原結合断片は、MPFに結合し、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、MPF特異的な前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0157】
一部の実施例では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、MSLN特異的な抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0158】
一部の実施態様では、方法は、MPF又はMSLNの測定レベルが、標準試料と比較して、約20%、30%、40%、50%となるか、あるいはより低くなる場合に、腹膜透析治療を中止するステップをさらに含む。一部の実施例では、血液透析は前記腹膜透析治療の中止後に実施される。一部の実施例では、前記方法は、検出可能な標識を含むもう1種類の抗体を用いて前記MPF又はMSLNレベルを検出するステップを含む。
【0159】
もう1つの実施態様では、透析治療の選択方法が提供される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMPFレベルが、例えば、標準試料の一定の割合以上になる場合に、腹膜透析を選択するステップと、前記腹水中の前記MPFレベルが標準試料の一定の割合以下に場合に、血液透析を選択するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料値は、腹膜透析治療の開始時か、あるいは該開始から1、2又は3ヶ月以内に測定される初期MPF値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば、前記MPFレベルが、前記標準試料値の50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止され、血液透析が開始される場合がある。
【0160】
追加の局面では、透析治療を選択する方法が提供される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMSLNレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に、腹膜透析を選択するステップと、前記腹水中の前記MSLNレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に、血液透析を選択するステップとを含む。一部の実施例では、前記標準試料は、透析治療の開始時か、あるいは該開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MSLN値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば、前記MSLNレベルが、前記標準試料の50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止され、血液透析が開始される場合がある。
【0161】
もう1つの局面では、継続性腹膜透析治療の適合性を評価する方法が説明される。一部の実施例では、前記方法は、腹水中のMPFレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に、腹膜透析を継続するステップと、前記腹水中の前記MPFレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に、腹膜透析を中止するステップとを含む。一定の実施例では、前記標準試料は、透析治療の開始時か、あるいは該透析治療の開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MPF値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば、前記MPFレベルが、前記標準試料値の50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止される場合がある。一定の実施例では、血液透析は、腹膜透析が中止される場合に、開始される場合がある。
【0162】
追加の実施態様では、継続性腹膜透析治療の適合性を評価する方法が説明される。一定の実施例では、前記方法は、腹水中のMSLNレベルが標準試料の一定の割合より高くなる場合に腹膜透析を継続するステップと、前記腹水中の前記MSLNレベルが標準試料の一定の割合より低くなる場合に腹膜透析を中止するステップとを含む。一定の実施例では、前記標準試料は、透析治療の開始時か、あるいは該透析治療の開始から1、2、3ヶ月以内に測定される初期MSLN値からの変動の少なくとも一部分にもとづく場合がある。例えば、前記MSLNレベルが、前記標準試料値の50%、40%、30%、20%となるか、あるいは未満となる場合に、腹膜透析は中止される場合がある。ある実施例では、血液透析は、腹膜透析が中止される場合に、開始される場合がある。
【0163】
キット
一定の実施態様では、体液中検体中のMPF又はMSLNの存在及び/又はレベルを検出するために形成されるキットが提供される。前記キットは、単一又は複数の抗体と、標準と、緩衝液と、試薬と、そのようなものとを含む多くの異なる方法で形成される場合がある。実施例の機器構成は以下に説明される。
【0164】
一定の実施例では、患者から得られる腹水中のMSLN、MPF又はこれらの断片の存在及び/又はレベルを評価するためのキットが提供される。一定の実施例では、前記キットは、メソテリン又はMPFペプチドか、これらの断片かに結合する第1の結合タンパク質(例えば、抗体)と、腹水を第1の物質に接触するステップを説明する取扱説明書とを含む。前記キットのフォーマットは重要ではなく、すなわち多くの標準フォーマットは、ELISA、ラテックスビーズ凝集及び表面プラズモン共鳴のフォーマットとして用いられる場合がある。前記キットは、陽性対照としての使用するメソテリン又はMPFペプチドを含む場合がある。当然に、前記キットは、腹腔内の中皮膜又は組織又は器官の病状の他の既知マーカーを評価するための試薬と、透析液の交換の性能を評価するための試薬とを含む場合がある。
【0165】
他の実施例では、哺乳類(例えば、ヒト患者)から得られる使用済み腹膜透析液検体中のメソテリン又はMPFペプチドの存在及び/又はレベルの検出キットが提供される。前記キットは、前記メソテリン又はMPFペプチドに結合する第1の物質(例えば、結合タンパク質)と、該物質へのペプチドそれぞれの結合を評価する第2の物質と、前記第1の物質及び第2の物質を使用するための取扱説明書とを含む。実施態様の前記キットは、例えば、患者が前記腹膜の病状を生じさせる危険性を増加させるかを決定するために用いられる場合がある。例えば、前記キットは、使用済み腹膜透析液検体中のメソテリン又はMPFペプチド量を決定可能な標識化合物又は物質を含む場合がある。キットは、以前に、例えば、腹膜透析治療の開始より前又は直後に、例えば、同一の患者の血液又は使用済み腹膜透析液中の分析物それぞれの測定によって確立される初期レベルと比較して、メソテリン又はMPFペプチド量が正常レベル以下であるか、あるいはある因子によって減少された場合に、試験される患者が患っているか、あるいは病状を生じさせる危険性があるのかどうかを評価するための説明書をを含む場合がある。
【0166】
キットが抗体を含む実施態様では、該キットは、例えば、(1)メソテリン又はMPFペプチドに特異的に結合する(例えば、固体支持体に結合される)第1の抗体と、任意に、(2)(例えば、前記第1の抗体が結合するエピトープと異なるエピトープで)同一ペプチドか、あるいは前記第1の抗体のいずれかに特異的に結合し、検出可能な物質でコンジュゲート化される第2の異なる抗体とを含む場合がある。代替的に、前記キットは、前記第1の抗体及び該第1の抗体の標識化リガンドを含む場合がある。前記第1の抗体を患者の使用済み腹膜透析液検体への接触後に、前記標識化リガンドと前記第1の抗体との結合は、本明細書で説明される競合型アッセイで評価される場合がある。
【0167】
一部の実施例では、キットは、使用済み腹膜透析液又は血清中の発生を評価するための試薬及び/又は説明書と、患者のもう1つの体液中の前記患者の病状の発生を示すもう1種類のマーカーとをさらに含む場合があり、該マーカーは、尿毒症毒素又は尿毒症毒素の指標と、炎症応答を示すマーカーと、腹膜を介する溶質交換と、細菌性及び真菌性感染のマーカーと、カリウム、カルシウム、クレアチニン、CPRのような腎不全のために平衡化が妨げられる場合があるイオン及び有機低分子と、ブドウ糖のような腹膜透析液の特定成分によってか、あるいは糖尿病のような慢性腎不全関連疾患によって与えられる、ブドウ糖分解産物、最終糖化産物その他の損傷マーカーとを含むが、これらに限られない。
【0168】
一部の実施態様では、(本明細書で説明される方法及び)キットは、ヒト患者又は実験動物の使用済み腹膜透析液中のメソテリン又はMPFペプチドの発生を評価するために単独で用いられる場合があり、前記発生が、腹膜中皮の健康状態及び細胞学的インテグリティーを示す。所望する場合には、病理学的又は生化学的状態の多くは、患者の使用済み腹膜透析液中で1種類以上のマーカーを使用することによって腹腔の状態についてより大きな信頼性を与えるするために検出される場合がある。追加のマーカーのいずれかは、使用済み腹膜透析液中か、血液中か、あるいは他の体液中又はこのような液体の多くで正常に見い出される、メソテリン、MPF、CA125その他のマーカーを含むが、これらに限られない場合がある。本明細書で説明される前記キット及び方法は、腹膜の内視鏡検査、生検又は超音波画像診断のような腹膜の健康を評価するための病理学的又は物理学的方法に関する説明書を含む場合がある。使用済み腹膜透析液中のメソテリン又はMPFペプチドの発生を評価するために本明細書で説明される前記キット及び方法は、血清中の同一又は他のメソテリン又はMPFを検出するためのキット及び方法を組み合わせて用いられる場合がある。
【0169】
患者から得られる使用済み腹膜透析液中のMSLN又はMPFの発生を評価するための本明細書で説明される前記キット及び方法は、前記患者が、腹腔の構成に病状を生じる可能性を評価するために用いられる場合がある。患者の使用済み腹膜透析液中のメソテリン又はMPFペプチドの蓄積の明白な減少の検出は、前記患者が使用済み腹膜透析液中のMSLN又はMPFの蓄積がほとんど減少しない別の同一患者よりも初期腹膜透析治療に由来する合併症を発生させる可能性が高いことを示す。最初期の病状に罹患していることと、病状に罹患する可能性が高まっていることとの違いは、実質的に区別できない場合があると認識される。それでもなお、これらの過程のそれぞれの結果は、患者の健康状態の悪化につながる病状の進行である。この理由のために、本明細書で開示される前記キット及び方法を用いてこれらの状態のいずれかを評価することは有用である。
【0170】
一部の実施例では、キットは、例えば、所定の治療計画の効率を測定するための臨床試験の手続の一部として腎不全患者の血清又は使用済み腹膜透析液中のメソテリン又はMPFレベルを診断的に又は予後的に監視するために用いられる場合がある、メソテリン又はMPFに特異的な抗体を含む場合がある。
【0171】
他の実施態様では、本明細書で説明されるキット及び方法は、物質(例えば、作動薬、拮抗薬、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子その他の治療上の候補)が、腹膜透析治療に由来する腹膜合併症を緩和、抑制、回復又は阻害するために患者に投与するかどうかを決定するために用いられる場合がある。例えば、前記方法は、特定の腹膜透析液か、腹膜透析の実施前に腹膜透析液に添加される物質又は同様の物質か、体系的に(経口、静注、腹腔その他の方法で)患者に投与される物質又は同様の物質かが、腹膜透析治療の期間中に腹膜中皮の悪化を妨げるか、腹膜透析治療の期間中又は腹膜透析が中止された後に前記悪化を回復させるかどうかを決定するために用いられる場合がある。前記キットは、例えば、長期間の腹膜透析治療後に頻出する苦痛かつ危険な腹膜性合併症の回避を助長する場合がある。
【0172】
前記キットで用いられる抗体の検出は、検出可能な物質に前記抗体をカップリングすることによって促進される場合がある。検出可能な物質の例は、さまざまな酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、常磁性物質及び放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子団複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む。適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドオルフィコエリスリンを含む。発光物質の例はルミノールを含む。生物発光物資の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含む。適切な放射性物資は、I、S又はHを含む。実施例の常磁性標識は、スピン標識、常磁性金属、不対電子を有するその他の種類を含むが、これらに限られない。前記構成は、前記キットを提供する場合か、あるいは別々に得られる場合がある。一部の実施例では、1種類又は2種類以上の抗体は、最終消費者が前記キットの構成を即座に使用できるように前標識される場合がある。
【0173】
標準アッセイ装置の使用は、本明細書で説明される方法を自動化できる。例えば、多くの異なる標準アッセイ容器は、24−、48−、96−及び386−ウェルプラスチックプレートが知られる。これらの容器が、相対的に短時間で多くの検体のハイスループットスクリーニングを可能にする、ロボット装置に装着するために改変される場合には、検体の自動解析は達成される場合がある。コンピューター制御のアッセイでそれらの使用のために改変される自動アッセイ装置及び容器は従来技術であり、本明細書で説明される前記キット及び方法に関する本開示の利益が与えられる当業者によって容易に改変されるであろう。
【0174】
一部の実施例では、キットの構成は、最終消費者による使用を促進するためのカートリッジ、他の形状のバイアル中に前包装される場合がある。例えば、1種類又は2種類以上の抗体は、前記カートリッジは、抗体をウェルプレートに噴出するためのマルチプルステムピペットに結合される場合があるためにカートリッジの形状中に包装される場合がある。一部の実施例では、前記カートリッジは、抗体が8ウェルのウェルプレート中に1回のステップで入れられる場合があるために、実質的に同一の量の抗体をそれぞれに含む8本のチューブを有する場合がある。当然に、2本、4本、8本、12本、16本又はより多くの本数を含むが、これらに限られないチューブの他の本数が、カートリッジ中に含まれる場合もある。一部の実施例では、各チューブの内容物の堆積がマイクロタイタープレートの異なるウェル中で標準の異なる濃度を提供するようなやり方で、前包装される標準を含むカートリッジは含まれる場合がある。この前包装は、ピペッティングの誤作動及び標準の全体汚染を減少させる場合がある。
【0175】
もう1つの実施態様では、MPFのエピトープに結合する第1の結合物質を含む、体液中の(とりわけ、腹水中の)MPFレベルの検出で用いられるキットが提供される。
【0176】
一部の実施態様では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、MPFに結合する、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0177】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記キットは前記結合物質に結合する物質を含み、該結合物質に結合する該物質が標識される。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。一部の実施態様では、前記キットは、説明書、例えば、腹腔及び/又は腹膜の状態を測定するための取扱説明書を含む場合がある。
【0178】
ある実施態様では、キットは、MPFの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質よりも異なるエピトープに効率的に結合する抗体又はその抗原結合断片をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記第2の結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となってもかまわない。一部の実施例では、前記第2の結合物質は、検出可能な標識を含む。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記キットは、前記第1の結合物質又は前記第2の結合物質か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MPFは組換えMPFである。一部の実施例では、前記キットは検出可能な標識を含むMPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0179】
追加の実施態様では、MSLNのエピトープに結合する第1の結合物質を含む、体液中の(とりわけ、腹水中の)MSLNレベルの検出で用いられるキットが提供される。
【0180】
一部の実施例では、前記結合物質は、低分子及びタンパク質(例えば、リガンド、抗体又はその抗原結合断片)から選択される。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、MSLNに結合する、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む、抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記結合タンパク質は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域をさらに含む。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0181】
一部の実施態様では、前記結合物質は、例えば、検出可能な標識で直接的又は間接的に標識される場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素であってもかまわない。一部の実施態様では、前記検出可能な標識は前記結合物質に直接的に結合される。他の実施態様では、前記キットは前記結合物質に結合する物質をさらに含み、例えば、該結合物質に結合する該物質は標識される。例えば、ある実施態様では、前記結合物質は、抗体又はその抗原結合断片となる場合があり、該抗体又は抗原結合断片は、該抗体又はその抗原結合断片に結合する標識物質に接触される場合がある。前記物質の限定的でない実施例は、抗イディオタイプ抗体である。一部の実施態様では、前記キットは、説明書、例えば、腹腔及び/又は腹膜の状態を測定するための取扱説明書を含む場合がある。
【0182】
ある実施態様では、キットは、MSLNの第2の結合物質、例えば、第1の結合物質よりも異なるエピトープ又は部位に効率的に結合する抗体又はその抗原結合断片をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記第2の結合物質は検出可能な標識を含む。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。一部の実施態様では、前記キットは、前記第1の結合物質又は前記第2の結合物質か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識をさらに含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MSLNを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MSLNは組換えMSLNである。一部の実施例では、前記キットは検出可能な標識を含むMSLNを含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0183】
もう1つの局面では、体液の(とりわけ、腹水中の)前記MPF又はMSLNレベルを検出するためのキットが提供される。ある実施例では、前記キットは、MPFに効率的に結合する第1の抗体又はその抗原結合断片と、例えば、前記第1の抗体又はその抗原結合断片と異なるエピトープでMSLNに効率的に結合する第2の抗体又はその抗原結合断片とを含む。
【0184】
一部の実施態様は、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、MPFに結合し、例えば、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、(図2に示す)抗体20−10又は(図4に示す)抗体41−28の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図3に示す)抗体20−10又は(図5に示す)抗体41−28の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体は、抗体20−10又は抗体41−28の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記第1の抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又は定常領域の一部分を含む。
【0185】
一部の実施例では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、MSLNに結合し、例えば、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸か、あるいはそのバリアントに結合する。一部の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で説明される抗体又は抗原結合断片である。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、(図6に示す)抗体IC14−30又は(図8に示す)抗体11−25の3個の重鎖(HC)の相補性決定領域(CDRs)と、(図7に示す)抗体IC14−30又は(図9に示す)抗体11−25の3個の軽鎖(LC)の相補性決定領域(CDRs)とを含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30又は抗体11−25の前記重鎖及び/又は軽鎖に由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。一部の実施態様では、前記第2の抗体又はその抗原結合断片は、定常領域又は定常領域の一部分、例えば、本明細書で説明される定常領域又はこの一部分を含む。
【0186】
一部の実施態様では、キットは、前記第1及び第2の抗体の取扱説明書を含む場合がある。一部の実施例では、前記第1及び第2の抗体の1つは検出可能な標識を含む。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。他の実施例では、前記キットは、前記第1の抗体又は前記第2の抗体か、あるいはこれら両方に結合できる検出可能な標識を含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。ある実施態様では、前記キットは、標準曲線を作成するのに用いる1組の標準MPFを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MPFは組換えMPFである。他の実施例では、前記キットは1組の標準MSLNを含む場合がある。一部の実施例では、前記標準MSLNは組換えMSLNである。追加の実施例では、前記キットは、検出可能な標識を含むMPFか、検出可能な標識を含むMSLNか、これら両方かを含む場合がある。一部の実施例では、前記検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識、発光標識、常磁性標識又は酵素である。
【0187】
抗体及び抗原の生産
本明細書で開示される一部の実施態様は、MPF又はMSLNに結合し、少なくとも1個の免疫グロブリン可変領域を含むタンパク質に関する。例えば、前記MPF又はMSLNの結合タンパク質は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列と、軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列とを含む場合がある。実施例のMPF又はMSLNの結合タンパク質の多くは、本明細書で説明され、かつ、図示される。
【0188】
一部の実施例では、前記MPF又はMSLNの結合タンパク質は、単離されるタンパク質となる場合がある(例えば、他のタンパク質は、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%存在しない。)。
【0189】
一部の実施例では、前記MPF又はMSLNの結合タンパク質は、抗体となる場合がある。例えば、MPF又はMSLN抗体は、単一のポリペプチド(例えば、scFv)又は異なるポリペプチド(例えば、IgG又はFab)に含まれる、これらのHC及びLC可変ドメイン配列を有する場合がある。
【0190】
さまざまなMPF及びメソテリン抗体は当業者に知られる。例えば、クローン20−10と、クローン41−28との組み合わせは高感度にMPFを検出することが知られ、クローンMNと、クローン11−25との組み合わせは高感度にメソテリンを検出することが知られる(Iwahori Kら、T. Megakaryocyte potentiating factor as a tumor marker of malignant pleural mesothelioma: Evaluation in comparison with mesothelin. Lung Cancer, 2008,印刷中)。
【0191】
本明細書で説明される一部の実施態様では、クローンIC14−30とクローン11−25との組み合わせは高感度にメソテリンを検出する場合がある。したがって、例えば、クローンIC14−30は基質に結合され、適切な抗体結合条件下で患者の使用済み透析液中に存在するメソテリンペプチドに結合するための「捕捉」抗体として用いられる場合があり、クローン11−25は直接的に標識され、前記「捕捉」抗体を前記患者の使用済み透析液に接触後に、前記「捕捉」抗体に接触される場合がある。
【0192】
同様に、クローン20−10は、基質に結合され、適切な抗体結合条件下で患者の使用済み透析液中に存在するMPFペプチドに結合するための「捕捉」抗体として用いられる場合があり、クローン41−28は直接的に標識され、前記「捕捉」抗体を前記患者の使用済み透析液に接触後に、前記「捕捉」抗体に接触される場合がある。
【0193】
直接的に標識される抗体の前記「捕捉」抗体との結合は、前記メソテリン又はMPFペプチドが前記患者の使用済み透析液中に存在することを示す。前記「捕捉」抗体と共局在される検出可能な標識量の解析は、存在する前記ペプチドレベルを提供する。
【0194】
MPF及びメソテリンのいくつかのバリアント、特に、スプライスバリアント及びスイス−プロットの登録番号Q13421(2008年5月18日に最後に改変された、登録第64版)で要約される多型が存在することが知られる。これらの配列から、図1及び2に示される配列(配列番号1及び2のそれぞれ)は、メソテリン及びMPFペプチドの有用な一部分を示すことが明らかである。これらの配列のいずれかの全部又は一部分(例えば、10個、20個、50個又は200個の連続する残基)に対して産生される抗体は、患者の使用済み腹膜透析液中に生じるものを含む、広範囲のメソテリン又はMPFペプチドに特異的に結合することが期待される場合がある。
【0195】
抗体の生産方法は周知であり、ただ手短に本明細書で要約される。免疫原は、ウサギ、ヒツジ、マウスその他の哺乳類又は脊椎動物のような適切な(例えば、免疫適格性)被験体に免疫することによって抗体を調製するために典型的に用いられる。適切な免疫原調製は、例えば、組換え発現又は化学合成ポリペプチドを含む場合がある。前記調製は、フロイントの完全又は不完全アジュバンドか、類似の免疫賦活性物質かのようなアジュバンドをさらに含む場合がある。メソテリン又はMPFか、これらの断片かは、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の調製のために標準技術を用いて抗体を産生するための免疫原として用いられる場合がある。メソテリン又はMPFの断片が免疫原として用いられるとき、配列番号1−2のいずれかのアミノ酸配列か、メソテリン又はMPFのもう1つのバリアントのアミノ酸配列かの少なくとも10個(好ましくは、12個、15個、20個、50個、100個か、20個又はそれ以上か)のアミノ酸残基を含むことが好ましい。
【0196】
本明細書で説明される前記キット及び方法で有用な抗体を産生するための適切なメソテリン又はMPFペプチドは、配列番号1−2か、あるいはスイスプロット登録番号Q13421で説明される既知のバリアントからなるグループから選択される配列の20個の連続する残基と少なくとも90%(好ましくは、少なくとも95%又は100%)同一である少なくとも20個の連続するアミノ酸残基の一部分を含む。
【0197】
前記MPF又はMSLNは、前記抗体産生で使用するMPF又はMSLNの適当量を提供するために組換え発現される場合がある。例えば、組換えMPFタンパク質は、例えば、Iwahoriらの論文(Lung Cancer 2008)中で説明される、Taq DNAポリメラーゼ(その他の適切なポリメラーゼ)と、適切なプライマー(例えば、5’−CGGAATTCGCCGCCACCATGGCCTTGCCAACGGCTCGACCCCTGTTG−3’(配列番号25)及び5’−GCTCTAGAGATGGTTCCGTTCAGGCTGCCGCCAGGATGG−3’(配列番号26))とを用いてヒトメソテリン(Genbankアクセッション番号NM_005823)の転写バリアント1をエンコードしているcDNAに由来するアミノ酸1−288番目のコーディング部分を増幅することによって生産される場合がある。単位複製配列は、哺乳類発現プラスミドpcDNA3.1/myc−His(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)のEcoRI/XbaI部位に挿入され、リポフェクション(Lipofectamine2000; Invitrogen)によってHEK 293T細胞にトランスフェクションされる場合がある。培養上清は、製造業者の説明書に従ってTALON樹脂に適用される場合がある(Clontech、カリフォルニア州マウンテンビュー)。精製MPFタンパク質は、4リットルのPBSを用いる透析によって得られ、本明細書で説明される方法、キット及び装置の免疫原又は標準として用いられるまで−80°Cで保存される場合がある。
【0198】
同様に、MSLNは、プライマー(例えば、5’−AAATTTCCCAAGCTTGTGGAGAAGACAGCCTGTCCTTCAGGCAAG−3’(配列番号27)及び5’−AAGGAAAAAAGCGGCCGCGCCCTGTAGCCCCAGCCCCAGCGTGTCCAG−3’(配列番号28))を用いて、MPFに関して議論される同一のcDNAに由来するアミノ酸297−580番目のコーディング部分を増幅することによって生産される場合がある。増幅DNAは、発現ベクター pSecTag2B(Invitrogen)のHindIII/NotI部位に挿入される場合がある。プラスミドDNAはHEK293T細胞にトランスフェクションされる場合があり、組換えMSLNは培養上清中で生産され、組換えMPFに関して説明されるように精製される場合がある。組換えMSLNは、本明細書で説明される方法、キット、装置で免疫原又は標準として用いられる場合がある。
【0199】
ポリクローナル抗体は、免疫原として本発明のポリペプチドで適切な被験体に免疫することによって上記のように調製されてもかまわない。免疫される被験体の前記抗体の力価は、不動化ポリペプチドを用いる酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のような標準技術によって経時的に監視される場合がある。所望の場合には、前記抗体分子は、前記被験体から(具体的には、該被験体の血液又は血清から)獲得されるか、あるいは単離され、かつ、IgG分画を得るためのタンパク質Aクロマトグラフィーのような周知の技術によってさらに精製される場合がある。
【0200】
免疫後の適切な時間、例えば、特異的抗体の力価が最大のとき、抗体産生細胞は前記被験体から得られ、Kohler及びMilstein(1975)Nature 256: 495−497によって最初に説明されるハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol. Today 4: 72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Coleら(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss出版社、77−96頁)又はトリオーマ技術のような標準技術によってモノクローナル抗体を調製するために用いられる場合がある。ハイブリドーマを生産するための前記技術は周知である(Current Protocols in Immunology (1994) Coliganら(編) John Wiley & Sons出版社、ニューヨーク州ニューヨークを一般的に参照せよ。)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、興味のあるポリペプチドに結合する抗体の前記ハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすること、例えば、標準的ELISAアッセイを用いることによって検出される。
【0201】
ある実施態様では、モノクローナル抗体は、特定の時間、例えば、0日目、7日目、14日目及び16日目に適切な免疫原(例えば、MPF又はMSLNのいずれか)で4−6週齢BALB/cマウスを免疫することによってMPF及びMSLNに対して調製される場合がある。最後の注射後から18日目に、脾臓のリンパ球は収集され、50%ポリエチレングリコール4000溶液(Wako、日本国大阪)中でP3U1メラノーマ細胞と融合される場合がある。融合細胞は、15%ウシ胎児血清、抗生物質及びHAT溶液(Invitrogen)を含むRPMI−1640培養液を用いて96ウェルプレート上に播種される。37°C、5% CO、飽和水蒸気下で10日間の培養後に、培養上清は収集され、例えば、ELISAアッセイを用いて免疫抗原に結合するためのそれらの能力をスクリーニングされる場合がある。陽性ハイブリドーマコロニーは増殖され、限界希釈によってサブクローン化される場合がある。
【0202】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製するための代替的手段として、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、興味のある前記ポリペプチドを用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、哺乳類細胞ディスプレイライブラリー、細菌細胞ディスプレイライブラリー又は類似のもの)によって同定され、単離される場合がある。ファージディスプレイライブラリーを生産及びスクリーニングするためのキットは商業的に入手できる(例えば、Pharmacia社 Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01及びStratagene社 SURFZAP Phage Display Kit、カタログ番号240612)。追加的に、抗体ディスプレイライブラリーの生産及びスクリーニングで使用の余地のある方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223, 409号公報明細書、PCT出願第WO 92/18619号公報明細書、PCT出願第WO 91/17271号公報明細書、PCT出願第WO 92/20791号公報明細書、PCT出願第WO 92/15679号公報明細書、PCT出願第WO 93/01288号公報明細書、PCT出願第WO 92/01047号公報明細書、PCT出願第WO 92/09690号公報明細書、PCT出願第WO 90/02809号公報明細書、Fuchsら(1991) Bio/Technology 9: 1370−1372、Hayら(1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3: 81−85、Huseら(1989) Science 246: 1275−1281、Griffithsら (1993) EMBO J. 12: 725−734で見出される場合がある。
【0203】
標準的な組換えDNA技術を用いて作られる場合がある、ヒト及び非ヒトの両方の一部分を含む、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗体が生産され、用いられる場合がある。前記キメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当業者に知られる組換えDNA技術、例えば、PCT出願第WO 87/02671号公報明細書と、欧州特許出願第184,187号公報明細書と、欧州特許出願第171,496号公報明細書と、欧州特許出願第173,494号公報明細書と、PCT出願第WO 86/01533号公報明細書と、米国特許第4,816,567号公報明細書と、欧州特許出願第125,023号公報明細書と、Betterら(1988) Science 240: 1041−1043と、Liuら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 : 3439−3443と、Liuら(1987) J. Immunol. 139: 3521−3526と、Sunら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 : 214− 218と、Nishimuraら(1987) Cancer Res. 47: 999−1005と、Woodら(1985) Nature 314: 446− 449と、Shawら(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80 : 1553−1559)と、Morrison(1985) Science 229: 1202−1207と、Oiら(1986) Bio/Techniques 4: 214と、U. S. Patent 5,225,539と、Jonesら(1986) Nature 321: 552−525と、Verhoeyanら(1988) Science 239: 1534と、Beidlerら(1988) J. Immunol. 141: 4053−4060とで説明される方法を用いることによって生産される場合がある。
【0204】
追加の実施態様では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列がMPFに結合する抗原結合部位を提供する、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは、抗体20−10に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは、抗体20−10に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体20−10の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0205】
もう1つの実施態様では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列がMPFに結合する抗原結合部位を提供する、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは、抗体41−28に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは、抗体41−28に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体41−28の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0206】
追加の実施態様では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列がMSLNに結合する抗原結合部位を提供する、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは、抗体IC14−30に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは、抗体IC14−30に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体IC14−30の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0207】
もう1つの実施態様では、HC及びLCの免疫グロブリン可変ドメイン配列がMSLNに結合する抗原結合部位を提供する、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む、抗体又はその抗原結合断片が提供される。ある実施態様では、前記HCは、抗体11−25に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記LCは、抗体11−25に由来する3個のCDRsを含む。ある実施態様では、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体11−25の前記HC及び/又はLCに由来する1個又は2個以上のフレームワーク領域を含む。
【0208】
ある特定の実施例は、本明細書で説明される技術の新規性、特徴、局面及び実施態様のいくつかをさらに図示するために以下により詳細に説明される。
【実施例1】
【0209】
実施例1 組換えMPFタンパク質の生産
組換えMPFタンパク質は、5’−CGGAATTCGCCGCCACCATGGCCTTGCCAACGGCTCGACCCCTGTTG−3’(配列番号25)と、5’−GCTCTAGAGATGGTCCGTTCAGGCTGCCGCCAGGATGG−3’(配列番号26)というプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によってヒトメソテリン前駆体タンパク質(Genbankアクセッション番号NM_005823)の転写バリアント1をエンコードするcDNAに由来するアミノ酸1−288番目のコーディング部分を増幅することによって作成された。増幅DNAは、哺乳類発現プラスミドpcDNA3.1/myc−His(Invitrogen)のEcoRI/XbaI部位に挿入され、HEK293T細胞にトランスフェクションされた。MPFタンパク質は、トランスフェクションされた細胞の培養上清からTALON樹脂を用いて精製された。このようにして得られる精製MPFタンパク質はPBSで2回透析され、使用時まで−80°Cで保存された。
【実施例2】
【0210】
実施例2 組換えメソテリンタンパク質の生産
組換えメソテリンタンパク質は、5’−AAATTTCCCAAGCTTGTGGAGAAGACAGCCTGTCCTTCAGGCAAG−3’(配列番号27)と、5’−AAGGAAAAAAGCGGCCGCGCCCTGTAGCCCCAGCCCCAGCGTGTCCAG−3’(配列番号28)というプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によってヒトメソテリン前駆体タンパク質(Genbankアクセッション番号NM_005823)の転写バリアント1をエンコードするcDNAに由来するアミノ酸297−580番目のコーディング部分を増幅することによって作成された。増幅DNAは、発現ベクターpSecTag2B(Invitrogen)のHindIII/NotI部位に挿入された。クローンNM005823によってエンコードされるタンパク質のアミノ酸297−580番目は、Schollerら(Proc Natl Acad Sci U S A. 1999;96(20):11531−6)によって説明されるヒトメソテリンのアイソフォーム1及び3に共通の配列である点に留意すべきである。前記メソテリン発現プラスミドは、HEK293T細胞にトランスフェクションされた。メソテリンタンパク質は、トランスフェクションされた細胞の培養上清からTALON樹脂を用いて精製された。このようにして得られる精製メソテリンタンパク質はPBSで2回透析され、使用時まで−80°Cで保存された。
【実施例3】
【0211】
実施例3 MPF抗体の生産
MPFに対するモノクローナル抗体(mAbs)を生産するために、4ないし6週齢のBALB/cマウスは、精製組換えMPFタンパク質を0日目、7日目、14日目及び16日目に腹腔内注射(10マイクログラム/注射)して免疫された。4回目の免疫後18日目に脾臓のリンパ球は採取され、50%ポリエチレングリコール4000溶液を用いてP3U1メラノーマ細胞と融合された。前記融合細胞は、15% ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン及びHAT溶液(Invitrogen)を含む、RPMI−1640培地を用いて96ウェルプレート上に播種された。37°C、5% CO、飽和水蒸気下で10日間の培養後に培養上清は収集され、組換えMPFタンパク質を用いる間接ELISAによって免疫原に結合する能力がスクリーニングされた。選択された陽性ハイブリドーマコロニーは増殖され、限界希釈によってサブクローン化された。サブクローン化ハイブリドーマは培養され、サブクローン化抗体のアイソタイプはRocheのアイソストリップキットを用いて決定された。抗体精製はタンパク質A親和性クロマトグラフィーによって実施された。得られたクローン間の免疫原競合アッセイ後に、クローン20−10及びクローン41−28(両方ともIgG1カッパー)は、MPFのELISA検出のためのELISAを構築するために選択された。クローン41−28は、GE HealthcareのECLタンパク質ビオチネーションモジュールを用いてビオチン化された。
【実施例4】
【0212】
実施例4 メソテリン抗体の生産
メソテリンに対するモノクローナル抗体(mAbs)を生産するために、4ないし6週齢のBALB/cマウスは、精製組換えメソテリンタンパク質を0日目、7日目、14日目及び16日目に腹腔内注射(10マイクログラム/注射)して免疫された。4回目の免疫後18日目に脾臓のリンパ球は採取され、50%ポリエチレングリコール4000溶液を用いてP3U1メラノーマ細胞と融合された。前記融合細胞は、15% ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシン及びHAT溶液(Invitrogen)を含む、RPMI−1640培地を用いて96ウェルプレート上に播種された。37°C、5% CO、飽和水蒸気下で10日間の培養後に培養上清は採取され、組換えメソテリンタンパク質を用いる間接ELISAによって免疫原に結合する能力がスクリーニングされた。選択された陽性ハイブリドーマコロニーは増殖され、限界希釈によってサブクローン化された。サブクローン化ハイブリドーマは培養され、サブクローン化抗体のアイソタイプはRocheのアイソストリップキットを用いて決定された。抗体精製はタンパク質A親和性クロマトグラフィーによって実施された。得られたクローン間の免疫原競合アッセイ後に、クローン11−25(IgG2bカッパー)及びクローンIC14−30(IgG1カッパー)は、MPFのELISA検出のためのELISAを構築するために選択された。クローン11−25は、GE HealthcareのECLタンパク質ビオチネーションモジュールを用いてビオチン化された。
【実施例5】
【0213】
実施例5 MPF抗体の特徴付け
抗MPFモノクローナル抗体、20−10及び41−28のCDR領域の核酸配列を決定するために、全量RNAは、実施例3に従って生産される20−10及び41−28のそれぞれを産生するハイブリドーマから採取された。採取される前記全量RNA中のメッセンジャーRNAは、(Invitrogenから購入される)オリゴ(dT)12−18プライマーを用いて相補性DNAに逆転写された。このDNAから、免疫グロブリン可変領域のヌクレオチド配列は、20−10の重鎖のための5’−ATGGGATGGAGCGGGGTCTTTCTCTT−3’(配列番号31)及び5’−CAGTGGATAGACAGATGGGGG−3’(配列番号32)プライマーと、20−10の軽鎖のための5’−ATGAGTGTGCTCACTCAGGTCCTGGCGTTG−3’(配列番号33)及び5’−ACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’(配列番号34)プライマーと、41−28の重鎖のための5’−ATGGCTTGGGTGTGGACCTTGCTATTCCTG−3’(配列番号35)及び5’−CAGTGGATAGACAGATGGGGG−3’(配列番号36)プライマーと、41−28の軽鎖のための5’−ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTG−3’(配列番号37)及び5’−ACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’(配列番号38)プライマーとを用いるPCR技術によって増幅された。増幅cDNAは、pBluescript II KS(+)プラスミド(Stratagene)のEcoRV部位に挿入された。次に、VH及びVL領域の配列は遺伝子配列決定装置(3130/3100−Avant(登録商標)Genetic Analyzer Capillary Arrays、Applied Biosystems)によって解析された。FR1、2、3及び4と、CDR1、2及び3との領域の決定は、IgG blast(NCBI データベース)及びSEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、1巻、第5版、1991;NIH出版第91−3242頁(Elvin A. Kabatら)を用いて実施された。
【実施例6】
【0214】
実施例6 MSLN抗体の特徴付け
抗MSLNモノクローナル抗体、IC14−30及び11−25のCDR領域の核酸配列を決定するために、全量RNAは、実施例4に従って生産されるIC14−30及び11−25のそれぞれを産生するハイブリドーマから採取された。採取される前記全量RNA中のメッセンジャーRNAは、(Invitrogenから購入される)オリゴ(dT)12−18プライマーを用いて相補性DNAに逆転写された。このDNAから、免疫グロブリン可変領域配列のヌクレオチド配列は、IC14−30の重鎖のための5’−ATGAAATGCAGCTGGGGCATCTTCTTC−3’(配列番号41)及び5’−CAGTGGATAGACAGATGGGGG−3’(配列番号42)プライマーと、IC14−30の軽鎖のための5’−ATGGGCTTCAAGATGGAGTCACAGATCCAGG−3’(配列番号43)及び5’−ACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’(配列番号44)プライマーと、11−25の重鎖のための5’−ATGGCTGTCTTGGGGCTGCTCTTCTGC−3’(配列番号45)及び5’−CAGTGGATAGACTGATGGGGG−3’(配列番号46)プライマーと、11−25の軽鎖のための5’−ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTG−3’(配列番号47)及び5’−ACTGGATGGTGGGAAGATGG−3’(配列番号48)プライマーとを用いるPCR技術によって増幅された。増幅cDNAは、pBluescript II KS(+)プラスミド(Stratagene)のEcoRV部位に挿入された。次に、VH及びVL領域の配列は遺伝子配列決定装置(3130/3100−Avant(登録商標)Genetic Analyzer Capillary Arrays、Applied Biosystems)によって解析された。FR1、2、3及び4と、CDR1、2及び3との領域の決定は、IgG blast(NCBI データベース)及びSEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、1巻、第5版、1991;NIH出版第91−3242頁(Elvin A. Kabatら)を用いて実施された。
【実施例7】
【0215】
実施例7 検体中のMPFを評価するためのサンドウィッチELISAアッセイ
使用済み腹膜透析液検体中のMPFペプチドを検出するために用いられる典型的なアッセイが、ここで説明される。アッセイは、4°Cで一晩、前もって炭酸塩−炭酸水素塩緩衝液中で1ミリリットルあたり5マイクログラムの濃度の捕捉抗体(印刷中のIwahoriら、Lung Cancer、2008で説明されるモノクローナル抗体クローン20−10)100マイクロリットルで被覆された96ウェル透明、平底マイクロタイタープレート(Nunc)で実施された。各ウェルは、その際に、室温で2時間1.0% BSAを含む200マイクロリットルのリン酸緩衝生理食塩水を充填することによってブロッキングされ、その後に前記BSA懸濁液は前記ウェルから除去された。
【0216】
標準液は、組換えMPFタンパク質を1ミリリットルあたり2、1、0.5、0.25、0.125、0.0624及び0.0313ナノグラムに希釈することによって調製された。標準希釈及び検出抗体のために用いられる検体希釈液は、リン酸緩衝生理食塩水の1%(W/V)BSA懸濁液であった。
【0217】
前記アッセイを実施するために、標準希釈液、対照、使用済み腹膜透析液検体又は希釈済みの使用済み腹膜透析液検体のそれぞれ50マイクロリッターは、各ウェルに添加された。典型的に、使用済み腹膜透析液検体は、検体希釈液で40倍に希釈された。プレートは室温で1時間インキュベーションされ、その後にウェルは、0.05%(v/v)Tween20界面活性剤を含むトリス緩衝生理食塩水で洗浄された。西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化モノクローナル抗体41−28の1ミリリットルあたり0.25マイクログラムの懸濁液100マイクロリットルが各ウェルに添加された。前記プレートは室温で1時間インキュベーションされ、その後にウェルは、0.013%(v/v)Tween20界面活性剤を含むトリス緩衝生理食塩水で洗浄された。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB;西洋ワサビペルオキシダーゼのための非発色性基質)100マイクロリットルは、信号を発生させるために各ウェルに添加された。前記プレートは、前記ペルオキシダーゼ反応を停止するためのTMB停止液(0.36規定の硫酸)100マイクロリットルを添加する前に、室温で30分間インキュベーションされた。TMBに対する前記ペルオキシダーゼの作用によって発生された青色は、450ナノメーターの吸光度を測定するためのプレート読み取り装置を用いて評価された。MPF ELISAの感度は、標準濃度の3倍希釈系列を測定するステップと、別個の8ウェル中の各濃度を測定するステップとよって決定された。各濃度のOD平均値及び標準偏差値は決定された。定量測定値の下限は、前記標準偏差値が平均値の10%となることが期待される濃度以下として決定され、(図10Aで示す)40倍希釈の検体で1ミリリットルあたり2.28ナノグラムと同等である、1ミリリットルあたり57ピコグラムとなることが発見された。
【実施例8】
【0218】
実施例8 検体中のメソテリンを評価するためのサンドウィッチELISAアッセイ
使用済み腹膜透析液検体中のメソテリンペプチドを検出するために用いられる典型的なアッセイが、ここで説明される。アッセイは、4°Cで一晩、前もって炭酸塩−炭酸水素塩緩衝液中で1ミリリットルあたり5マイクログラムの濃度の捕捉抗体(モノクローナル抗体クローンIC14−30)100マイクロリットルで被覆された96ウェル透明、平底マイクロタイタープレート(Nunc)で実施された。各ウェルは、その際に、室温で2時間1.0% BSAを含む200マイクロリットルのリン酸緩衝生理食塩水を充填することによってブロッキングされ、その後に前記BSA懸濁液は前記ウェルから除去された。
【0219】
標準液は、組換えメソテリンタンパク質を1ミリリットルあたり25、12.5、6.25、3.125、1.5625、0.78125及び0.390626ナノグラムに希釈することによって調製された。標準希釈及び検出抗体のために用いられる検体希釈液は、PBSの1%(W/V)BSA懸濁液であった。
【0220】
前記アッセイを実施するために、標準希釈液、対照、使用済み腹膜透析液検体又は希釈済みの使用済み腹膜透析液検体のそれぞれ100マイクロリッターは、各ウェルに添加された。典型的に、使用済み腹膜透析液検体は、検体希釈液で5倍に希釈された。プレートは室温で1時間インキュベーションされ、その後にウェルは、0.013%(v/v)Tween20界面活性剤を含むトリス緩衝生理食塩水で洗浄された。ビオチン化モノクローナル抗体11−25の1ミリリットルあたり0.3マイクログラムの懸濁液100マイクロリットルは、各ウェルに添加された。室温で1時間前記プレートのインキュベーションするステップと、その後のTween20界面活性剤を含むトリス緩衝生理食塩水で各ウェルの洗浄するステップとの後に、1:20000希釈の(DAKOから得られる)ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ100マイクロリットルが各ウェルに添加され、前記プレートは室温で1時間インキュベーションされた。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB;西洋ワサビペルオキシダーゼのための非発色性基質)100マイクロリットルは、信号を発生させるために各ウェルに添加された。前記プレートは、前記ペルオキシダーゼ反応を停止するためのTMB停止液(0.36規定の硫酸)100マイクロリットルを添加する前に、室温で30分間インキュベーションされた。TMBに対する前記ペルオキシダーゼの作用によって発生された青色は、450ナノメーターの吸光度を測定するためのプレート読み取り装置を用いて評価された。MSLNのELISAの感度は、標準濃度の2倍希釈系列を測定するステップと、別個の8ウェル中の各濃度を測定するステップとよって決定された。各濃度のOD平均値及び標準偏差値は決定された。定量測定値の下限は、前記標準偏差値が平均値の10%となることが期待される濃度以下として決定され、(図10Bで示す)5倍希釈の検体で1ミリリットルあたり13.3ナノグラムと同等である、1ミリリットルあたり2.26ナノグラムとなることが発見された。検出限界は、平均値+2の標準偏差値が次に高濃度の平均値−2の標準偏差値よりも低い、最低濃度として決定される。前記検出限界は、1ミリリットルあたり0.78ナノグラムとなることが発見された。
【実施例9】
【0221】
実施例9 健康な人の血清中のMPFペプチド及びメソテリンペプチドの検出
MPF及びメソテリンの両方が、38人の健康な日本人から採取される血清中で定量された。インフォームドコンセントが得られ、血液は健康な志願者から取り出され、凝固可能であり、固体は遠心分離によって除去される。血清中のMPFを定量するために用いられるELISAは実施例7で説明され、血清中のMSLNを定量するために用いられるELISAは、実施例7で説明されるような同一の検出抗体以外の異なる捕捉抗体を用いるIwahoriら(Lung Cancer,2008)によって説明されるものである。結果は図11に示される。
【0222】
たいていの健康な人では、血清中の両方のタンパク質は検出可能な量である。相関関係は、R = 0.31(ピアソン相関係数)となることが決定された。このデータは、2つのバイオマーカーが健康な人の血流中で検出可能であり、双方のバイオマーカーが明らかに区別でき、かつ、診断上等価ではないことを示す。
【実施例10】
【0223】
実施例10 患者個人の腹膜透析液中のMPFペプチド及びメソテリンペプチドの蓄積の経時的減少
腹膜透析は、末期の腎不全のための治療の1手段であり、失われた腎機能の置換術として役立つ。
【0224】
310個の透析検体は、(患者あたり1ないし32回の採取の範囲の)インフォームドコンセントが得られた84人の患者から異なる日に得られた。診療所を訪れる前夜、患者は腹腔に2000mLの腹膜透析液が注射された。注射後9−10時間に診療所で前記腹膜透析液は除去され、検体は解析するために利用され、残余は廃棄された。検体は、使用されるまで−40°C以下で保存された。
【0225】
検体は、実施例7及び8で説明されるように希釈された(MPFを測定するために1% BSAを含むPBSで1:40となるように希釈され、MSLNを測定するために1% BSAを含むPBSで1:5となるように希釈された。)。透析液は陰性対照として用いられた。検体の希釈液のそれぞれ100マイクロリットルは、実施例1で説明されるアッセイで試験された。図14に示す結果は、MPFが腹膜透析液中のマーカーとして有用であることを示す。
【0226】
監視される84人の患者中43人は観察期間前又は期間中に腹膜炎の徴候を全く知らず、それらの患者中22人の使用済み腹膜透析液検体は、3ヶ月間隔(91−98日間)にわたって得られた。これらの患者は、この試験の開始から154−3884日間腹膜透析が既に実施された。図12は、患者個人の使用済み腹膜透析液中のメソテリン及びMPFの両方の濃度の低下を示す。MSLN及びMPFの両方の低下は、非常に有意であった(独立ステューデントT検定で測定されるとき、p<0.001である。)。さらに、腹膜透析の短期履歴のこれらの22人の患者は、両方のマーカーが全体として高いレベルとなりがちであることが明らかである(図14に類似するが、データは示されない)。
【実施例11】
【0227】
実施例11 急性炎症性障害での腹膜透析液中のMPFペプチド及びメソテリンペプチドの蓄積
実施例10で説明される方法で、使用済み透析液中のMPF及びメソテリンは、多くの患者で細菌性又は真菌性感染が原因の腹膜炎の進行後に結果として生じ、前記腹膜透析液中の白血球細胞数及びマトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP−2)濃度を含む、炎症性マーカーと比較された。
【0228】
図13で示すように、典型的な患者の使用済み腹膜透析液中のMPF及びメソテリン濃度は炎症時に急速に低下するが、ある場合には、炎症性感染が沈静化した後に感染前レベルに回復する。
【実施例12】
【0229】
実施例12 長期腹膜透析患者での腹膜透析液中のMPFペプチド及びメソテリンペプチドの蓄積の低下
この試験中の検体は、長期間の腹膜透析治療の期間に応じて4つのグループにグループ化された。
グループ1:1年未満のグループ
CAPD治療期間240+/−81日間(平均値+/−標準偏差値)、59+/−12歳の高齢の20人の患者
グループ2:1−3年のグループ
CAPD治療期間584+/−168日間、63+/−13歳の高齢の34人の患者
グループ3:3−5年のグループ
CAPD治療期間1385+/−225日間、67+/−12歳の高齢の12人の患者
グループ4:5年より長いグループ
CAPD治療期間2557+/−633日間、64+/−9歳の高齢の18人の患者
【0230】
MPF及びメソテリンレベルは、実施例10で説明されるように測定される。図14で示すように、腹膜透析液中のメソテリン及びMPFの平均蓄積量は、治療継続期間にともなって着実に低下する。前記低下は、グループ1と、MSLN及びMPFの両方のいずれかのグループとの間、及び、グループ2と、MSLNのグループ4との間で統計学的に有意であった(P<0.01、マンホイットニーのU検定)。
【実施例13】
【0231】
実施例13 使用済み透析液中のメソテリン及びMPFによる治療法の生存期間の予測
治療成果の遡及解析では、5年よりも長い腹膜透析を受けた18人の患者(実施例10のグループ4)は、観察末期で未だに腹膜透析治療中の患者(患者数12、検体数33)と、腹膜透析治療を中止しなければならない患者(患者数6、検体数47)とに分類される。
【0232】
MPF及びメソテリンレベルは、実施例10で説明されるように決定される。図15で示すようにメソテリン及びMPFの両方は、継続性腹膜透析治療グループと比較して、腹膜透析治療を中止しなければならなかった患者からの検体での低下が有意であった(P<0.005)。これらのデータは、使用済み透析液中のメソテリン及びMPFの両方の蓄積が治療成果の予測指標となることを示す。結果として、これらのマーカーは、慢性痛及び器官障害を含む腹膜の重篤かつ不可逆的損傷を回避するために患者にとってちょうどよい時期に腹膜透析を中止するための有用な手引きを提供する。全ての特許、特許出願の公報及び本明細書で引用される文献は、全体として引用により本明細書に取り込まれる。追加的に、明細書で議論される一部の文献の引用は以下に列挙され、引用により本明細書に取り込まれる。
【0233】
本明細書で説明される実施例の構成を導入するとき、「1つ」、「その」及び「前記」という記載は、1種類又は2種類以上の構成が存在することを意味する。「含む」、「含む」及び「有する」という用語は制限がなく、列挙される構成よりも他の追加の構成が存在する場合があることを意味する。実施例のさまざまな構成要素は、他の実施例のさまざまな構成要素に交換されるか、あるいは置換される場合があると本明細書の利益が与えられる当業者によって認識されるであろう。引用により本明細書に取り込まれる特許又は文献という用語の意味が本明細書で用いられる用語の意味と矛盾する場合には、本明細書での用語の意味が基準となることを意図される。
【0234】
一部の局面、実施例及び実施態様は上記に説明されるが、開示される実施例の局面、実施例及び実施態様の追加、置換、改変及び変更は可能であると本明細書の利益が与えられる当業者によって認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液又は腹水中のMPFレベルを測定するために少なくとも1種類のMPF特異的な結合物質に患者の腹水を曝露するステップを含むことを特徴とする、腹膜透析を受けている患者の腹膜の健康状態を評価する方法。
【請求項2】
前記結合物質は、図2−5に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の腹水を、該腹水中のMSLNレベルを測定するために少なくとも1種類のMSLN特異的な結合物質に曝露するステップを含むことを特徴とする、腹膜透析を受けている患者の腹膜の健康状態を評価する方法。
【請求項4】
前記結合物質は、図6−9に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含む、抗体又はその抗原結合断片であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
図2−5に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含む第1の抗体と、体液又は腹水中のMPFレベルを検出するための前記抗体の取扱説明書とを含むことを特徴とする、体液又は腹水中のMPFレベルの検出で使用するためのキット。
【請求項6】
図6−9に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含む第1の抗体と、体液又は腹膜中のMSLNレベルを検出するための前記抗体の取扱説明書とを含むことを特徴とする、体液中のMPFレベルの検出で使用するためのキット。
【請求項7】
少なくとも1種類のMPF又はMSLNに特異的な抗体に患者に由来する使用済み腹膜透析液を曝露するステップと、前記使用済み腹膜透析液中の前記MPF又はMSLNレベルを測定するステップと、腹膜透析治療の開始時のMPF又はMSLNの初期レベルと比較して前記MPF又はMSLNの測定レベルの減少にもとづいて腹膜透析又は血液透析を提供するかどうかを評価するステップとを含むことを特徴とする、腎不全患者のための腹膜透析の継続を評価するアッセイ。
【請求項8】
前記MPFに特異的な抗体は、図2−5に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含むことを特徴とする、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項9】
前記MSLNに特異的な抗体は、図6−9に示す少なくとも1個のHC及び少なくとも1個のLCの相補性決定領域(CDRs)を含むことを特徴とする、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項10】
前記MPFに特異的な抗体は、配列番号1に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸に効率的に結合することを特徴とする、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項11】
前記MSLNに特異的な抗体は、配列番号2に示す少なくとも20個の連続するアミノ酸に効率的に結合することを特徴とする、請求項7に記載のアッセイ。
【請求項12】
前記方法は、前記MPF又はMSLNの測定レベルが前記初期レベルと比較して40%未満となる場合に、腹膜透析治療を中止するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のアッセイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−14691(P2010−14691A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−295672(P2008−295672)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔刊行物名〕 日本透析医学会雑誌 41巻 〔発行人〕 社団法人日本透析医学会 西沢良記 〔発行日〕 2008年5月20日
【出願人】(390004097)株式会社医学生物学研究所 (41)
【Fターム(参考)】