説明

腹膜透析のためのシステムおよび方法

【課題】家庭でも使用され得る、新たな透析液バッグを保管する必要のない構造の簡単な透析システムを提供する。
【解決手段】透析療法、特に連続流透析療法に関するシステムおよび方法を提供する。本発明は単一閉鎖流路を備え、透析液を含む最少量の治療流体は、前記閉鎖流路に沿って供給され、連続的に循環して浄化され、その結果、治療上効果的な量の溶質、過剰な水分およびその他は、処置時に前記閉鎖流体ループに接続された患者から除去することができる。本発明は、概して、患者に結合されて、単一閉鎖流路を画定する流体回路を備え、透析液は、全体の処置時にこの流体回路に沿って循環し、再利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本願は、2002年7月19日に出願された米国仮特許出願第60/397,045号「Systems And Methods For Peritoneal Dialysis」の利益を主張し、この特許の内容全体は、本明細書中に参考として援用する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、概して、腹膜透析を行なうためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、連続流腹膜透析を行なうためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疾病、発作またはその他の原因により、人の腎臓系は不全になる可能性がある。何らかの原因による腎不全では、いくつかの生理的障害がある。水分、無機物および日常の代謝負荷のバランスは、腎不全の場合は不可能になる。腎不全では、有毒な窒素代謝の最終生成物(たとえば、尿素、クレアチニン、尿酸およびその他)が血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0004】
腎機能障害および腎機能低下は、透析で処置されてきた。透析は、さもなければ正常に機能する腎臓により除去されていたはずの老廃物、毒素および過剰な水分を人体から除去する。腎機能補充のための透析治療は、この治療が救命処置であるというため、多くの人にとって重大である。機能不全腎を有する人は、少なくとも腎臓の濾過機能を補充しなければ、生存し続けることはできないであろう。
【0005】
血液透析および腹膜透析は、腎機能の損失を治療するために一般に使用されている2種類の透析療法である。血液透析処置は、老廃物、毒素および過剰な水分を直接患者の血液から除去する。患者は、血液透析機械に接続され、患者の血液はこの機械を通してポンピングされる。たとえば、ニードルまたはカテーテルは、患者の静脈および動脈内に挿入され、血液透析機械との間で血流を接続する。血液が血液透析機械内の透析装置を通過すると、透析装置は、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血液から除去し、血液を返して患者の体内に逆に注入する。多量、たとえば約90〜120リットルの透析液は、殆どの血液透析機械により、1回の血液透析療法で血液を透析するために使用される。その後、使用済み透析液は廃棄される。血液透析処置は数時間持続し、一般に、処置センターにおいて毎週約3回実施される。
【0006】
もう1つのタイプの血液透析療法は、再生式血液透析である。この療法は、透析液を再生するためのカートリッジを備える血液透析システムを使用する。こうしたカートリッジは、オクラホマ州、オクラホマ市のSorb TechnologyがREDYTMの名称で製造している。このシステムでは、事前に透析液流体の流路を適切に浄化しなければ、血液透析機械を別の患者に使用することはできない。また、透析液流体の流路は、閉鎖システムではない。これに関して、透析液流体流路は大気に対して開放しているため、空中に浮遊する病原体がシステム中の流体に接触し、システム中における細菌の成長を促進する可能性がある。したがって、こうした透析システムの汚染は問題である。したがって、REDYTMカートリッジを出る透析液流体は、腹膜透析に適さない。
【0007】
腹膜透析は、無菌の透析溶液つまり「透析液(dialysate)」を使用し、これは、患者の腹腔内に、患者の腹膜に接触して注入される。老廃物、毒素および過剰な水分は、患者の血流から腹膜を通過して透析液中に至る。血流から透析液中への老廃物、毒素および過剰な水分の移送は、透析液中の浸透圧剤が膜全体に浸透圧格差を生じる時に、滞留期間における拡散および浸透により行なわれる。使用済みの透析液は、後に患者の腹腔から排出されて、老廃物、毒素および過剰な水分が患者から除去される。
【0008】
様々なタイプの腹膜透析療法があり、連続的な歩行可能腹膜透析(「CAPD」)および自動化腹膜透析が挙げられる。CAPDは、手動の透析処置であり、患者はカテーテルを新たな透析液のバッグに接続し、手動で新たな透析液をカテーテルから患者の腹腔内に注入する。患者は、カテーテルを新たな透析液バッグから取り外して、透析液を腹腔内に滞留させて、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血流から透析液溶液中に移送することができる。滞留期間の終わりに、患者は、使用済みの透析液を排水し、手動透析手順を繰り返す。溶液および排水バッグ用の「Y」コネクタを有する管類の集合が使用可能であり、これは、患者が行なわなければならない接続回数を減少させることができる。管類の集合は、事前に取り付けられるバッグ、たとえば空のバッグおよび透析液を充填されたバッグを備えることができる。
【0009】
CAPDでは、患者は、排水、充填および滞留サイクルを数回、日中、たとえば1日当たり約4回行なう。排水、充填および滞留を含む各々の処置サイクルは、約4時間を要する。患者が行なう手動腹膜透析は、非常に多量の時間および努力を患者に要求する。この手順は、患者の生活水準(quality of life)を改善するために、改善および治療強化の余地がある。
【0010】
自動化腹膜透析が、透析処置が排水、充填および滞留サイクルを含むという点で、連続的な歩行可能腹膜透析に類似する。しかし、透析機械は、3〜4回のサイクルの腹膜透析処置を一般的に夜間に、患者の睡眠中に自動的に実施する。
【0011】
自動化腹膜透析の場合、自動化透析機械は埋め込みカテーテルに流動的に接続される。自動化透析機械は、新たな透析液源またはバッグ、および流体排水管にも流動的に接続される。透析機械は、使用済み透析液を腹腔からカテーテルを通して排水管にポンピングする。透析機械は次に、新たな透析液を透析液源からカテーテルを通して患者の腹腔内にポンピングする。自動化機械は、透析液が腹腔内に滞留することを可能にし、その結果、老廃物、毒素および過剰な水分を患者の血流から透析液溶液中に移送することができる。コンピュータは、患者が透析機械に接続された時に、たとえば患者の睡眠中に、透析処置が自動的に行なわれるように自動化透析機械を制御する。つまり、透析システムは、流体を腹腔内に自動的かつ連続的にポンピングし、流体を滞留させて、腹腔からポンピングし、この手順を繰り返す。
【0012】
数回の排水、充填および滞留サイクルは、処置時に行なわれる。また、比較的少量の「最後の充填」は、一般に、自動化透析処置の終わりに使用され、日中、患者が透析機械から外された時に患者の腹腔内に留まる。自動化腹膜透析は、日中に排水、滞留および充填ステップを手動で行なう必要から患者を解放する。自動化透析は、患者の透析処置を改善し、CAPDに比べて患者のクオリティオブライフを確実に改善することができる。
【0013】
「連続流動」腹膜透析(「CFPD」)システムは、1970年代以降考えられてきた。これらのシステムは、一般に、流体の流入および流体の流出を有する。つまり、透析液はカテーテルの内腔中に流入して腹膜を貫流し、別のカテーテルの内腔から排水ラインに流出する。「使用済み」の透析液(老廃物を含む透析液)は、排水バッグ内に収集され、廃棄されるか、または家庭用もしくはその他の排水管中に送り込まれる。公知のCFPDシステムは、一般に、ある量の透析液を1回使用した後、その透析液を廃棄する。これに関して、連続流を1回使用するかまたは1回通過させるシステムで、処置を行なうために必要な透析液の量は多量になり、日常的に使用するコストは非常に高価になる。たとえば、透析液の量は、1回通過CFPDシステムの場合、120リットルを超える可能性がある。
【0014】
別のタイプのCFPDシステムは、米国特許第3,707,967号(特許文献1)に開示されている。このシステムでは、透析液が患者の腹膜を通過した後、再構成デバイスを使用して、老廃物を透析液から除去する必要がある。特に、再構成デバイスは、尿素を使用して酵素的に尿素をアンモニアに転換する尿素除去カラムを備える。次に、アンモニアは、腹腔内に再導入される前に透析液から除去され、患者の健康および安全が図られる。しかし、アンモニアの除去は問題が多く、絶対に安全な対策であると実証されない。さらに、透析液からのアンモニアの除去をモニターするために、追加のセンサを使用しなければならない。これは、治療の複雑さを増し、その結果、治療に関連するコストを増加させる。
【0015】
CFPDは、概して、その他の形式の腹膜透析療法と比べて効果的であることが公知であり、こうした腹膜透析療法としては、たとえば、処置時に新たな透析液を複数回交換する必要があるCAPDおよびAPDなど、より伝統的な形式の腹膜透析療法が挙げられる。上記のとおり、数回の排水、充填および滞留サイクルは、一般に、CAPDおよびAPDの際に行なわれる。より伝統的な形式の腹膜透析療法の変更に関する一実施例は、米国特許第4,618,343号(特許文献2)に開示されている。CAPDの場合のように、患者の腹腔に無菌透析液を充填することを可能にする装置が開示されている。滞留期間後、透析液は、患者の血液からの代謝老廃物を保持する。代謝老廃物を含む透析液の一部は、腹腔からポンピングされて透析装置を通過し、代謝老廃物が透析液から除去される。次に、透析液は、逆に腹腔内にポンピングされて再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,707,967号
【特許文献2】米国特許第4,618,343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、改善された透析システムを提供する必要性が存在する。特に、使用済み透析液を再利用することが可能な閉ループ透析システムを提供する必要性が存在する。このシステムは、患者が、家庭内でこの手順を行うことを可能にし、過度な量の新たな透析液バッグを保管する必要性をなくす。このシステムは、患者が睡眠中の夜間に、この手順の大部分を実施することができるように、さらに自動化するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
本発明は、腹膜透析を提供するためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、単一閉鎖流路を使用する連続流腹膜透析であって、透析液は、患者の腹膜腔に流入して還流し、腹膜腔から流出するように循環させ、処置時に、許容可能なレベル溶質および過剰な水分、または限外濾過液を患者から除去することが可能な連続流腹膜透析に関する。
【0019】
本発明は、概して、患者に結合されて、単一閉鎖流路を画定する流体回路を備え、透析液は、全体の処置時にこの流体回路に沿って循環し、再利用することが可能である。好ましくは、透析液は、連続的に流路に沿って循環する。これに関して、効果的な処置に必要な透析液の量は、最適に最小限にすることができる。一実施態様では、本発明は、6リットル以下の透析液を処置時に使用する。こうした量の再利用可能な透析液では、多くて10時間、好ましくは約8時間以下、より好ましくは約7時間以下の期間全体にわたって、効果的な処置を行なうことができる。
【0020】
再利用の前に、透析液は、閉鎖流路に沿って循環する時に浄化される。一実施態様では、本発明は、閉鎖流路に結合された浄化デバイスを備える。浄化デバイスは、処置時に患者から透析液まで通過する尿毒性毒素またはその他の代謝老廃物の生成物を含む許容可能なレベルの溶質を除去することが可能である。透析液から除去される溶質の量は、処置時に透析液を再利用した後に、溶質および限外濾過液を患者から効果的に除去することが可能な十分なレベルに拡散勾配を維持する必要がある。
【0021】
これに関して、透析液は、必ずしも、再利用の前に最初の新たな状態に浄化または再生する必要はない。むしろ、浄化後の透析液は、患者から除去されたある濃度の溶質、特に尿素を維持する。一実施態様では、浄化デバイスは、炭素などの吸着材料を使用して、溶質の大部分を透析液から非選択的に除去する。こうした溶質としては、たとえばクレアチニン、尿酸、中分子量成分、尿素の少なくとも一部分、およびその他の類似する低分子量成分およびその他が挙げられる。好ましくは、浄化デバイスは、尿素、リン酸塩および/またはその他の類似溶質を選択的に除去する結合材料を含む。
【0022】
浄化後でも、透析液が、たとえば、患者から除去された尿素の一部分を保持する場合、透析液は、閉鎖流路に沿って循環し、DOQI基準などの治療レベル基準であるか、またはこうした基準を超える溶質を患者から除去することができる。透析液を含む治療流体の使用可能な容積は、全体の処置時に制御可能に最小限にして、循環および浄化し、臨床上許容可能なレベルの溶質の浄化を達成することができる。さらに、本発明のシステムおよび方法は、たとえばAPDを含む公知の治療法と比較して、より良好な浄化レベルを達成することができる。
【0023】
使用可能な容積の治療流体は、多くの要素、たとえば閉鎖流路内に供給される透析液の量、閉鎖流路に追加される限外濾過液の量、および透析液の拡散特性を強化するために、閉鎖流路に追加することが可能な追加のその他の溶液の量により影響される可能性がある。一実施態様では、治療容積は、処置時に患者から閉鎖流路内に通過する限外濾過液のほかに、閉鎖流路に供給される透析液の量により、制御可能に調節される。限外濾過液の量を補償するために、閉鎖流路の容積容量は、処置時に可変調節可能である。これに関して、限外濾過液を流体回路に追加すると、実際上、追加の容積がループに接触した状態を保つことにより、除去する溶質の容量が増加する。一実施態様では、約1.5リットル以下の限外濾過液が治療時に使用される。
【0024】
追加のその他の溶液は、制御された量で閉鎖流路に追加されて、治療時における溶質の除去の効果をさらに強化することができる。一実施態様では、デキストロースなどの浸透圧剤を含む溶液は、最初の透析液源および追加される限外濾過液源のほかに、閉鎖流路に追加することができる。好ましくは、約3リットル以下の追加の浸透圧剤溶液が追加される。デキストロースベースの溶液は、再利用前に透析液の拡散特性を補充するために使用することができる。一実施態様では、デキストロースベースの溶液は、最初の透析液源中のデキストロースまたはその他の浸透圧剤の量と比較して、濃縮された量のデキストロースを含む。
【0025】
さらに、効果的な処置に必要な使用可能な量の治療流体は、浄化効率を高めることにより最小限にすることができる。一実施態様では、本発明は、上記のとおり、特定タイプの溶質を透析液から選択的に除去することが可能な結合剤または反応性材料を使用することができる。結合材料は、炭素処置後でも、透析液中に保持される尿素、リン酸塩または除去することが望ましいその他の代謝老廃物生成物を除去するために使用することができる。好ましくは、非選択的および選択的浄化剤を使用して、約70%以上の尿素およびその他の類似成分を透析液から除去することができる。
【0026】
本発明の別の利点は、透析療法を提供するための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の利点は、連続流腹膜透析のための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の利点は、連続流腹膜透析時における透析液の最適な使用を提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の利点は、連続流腹膜透析時における透析液を最適に使用しつつ、処置時間を最小限にすることである。
【0030】
本発明のさらに別の利点は、家庭の環境で、患者が安全かつ便利に管理することが可能な透析療法を行なうための改善されたシステムおよび方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらに別の利点は、使用済みの透析液を効果的に浄化することが可能な腹膜透析の改善されたシステムおよび方法であって、透析液が循環して処置時に再利用することができ、効果的な処置に必要な透析液の量を最小限にすることが可能なシステムおよび方法を提供することである。
【0032】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の「発明の詳細」および図面に記載され、これらから明らかとなる。
より特定すれば、本願発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
患者の腹膜腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
上記カテーテルと連通し、その結果、腹膜腔内に流入して貫流し、腹膜腔から流出するように流体を循環させることが可能な閉鎖流路を画定する流体回路と、
上記流体回路に結合された透析液の供給源と、
上記透析液を上記流体回路内にポンピングし、上記閉鎖流路に沿って上記透析液を処置期間中循環させて、治療上効果的な量の溶質および限外濾過液を患者から除去するためのサイクラーと、
上記流体回路に結合された浄化デバイスであって、尿素の少なくとも一部分を含む上記透析液から、ある量の上記溶質を除去することが可能な浄化デバイスと、
上記流体回路に結合された排出流路であって、上記流体回路が、処置期間後に上記流体を排出することが可能な排出流路とを備えるシステム。
(項目2)
上記処置期間が約8時間以下を含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
上記システムが約6リットル以下の透析液を使用して患者を治療する、項目1に記載のシステム。
(項目4)
上記浄化デバイスが、上記透析液から溶質を非選択的に除去する、項目1に記載のシステム。
(項目5)
上記浄化デバイスが、炭素、活性炭、およびこれらの組合せから成る群から選択した吸着材料を含む、項目4に記載のシステム。
(項目6)
上記浄化デバイスが、尿素を選択的に除去できる材料を含まない、項目5に記載のシステム。
(項目7)
上記透析液が、上記閉鎖流路に沿って連続的に循環する、項目1に記載のシステム。
(項目8)
上記透析液の供給源が、約4時間以下の連続的な処置期間中、上記流体回路の閉鎖流路内に別個に供給され、上記閉鎖流路に沿って循環することが可能な第1供給源および第2供給源を含む、項目7に記載のシステム。
(項目9)
腹膜透析を患者に提供するシステムであって、
患者の腹膜腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
上記カテーテルと連通し、その結果、上記腹膜腔内に流入して貫流し、腹膜腔から流出するように治療流体を循環させることが可能な閉鎖流路を画定する流体回路と、
上記流体回路に結合された、上記透析液を含む治療流体の第1供給源と、
処置期間中に上記透析液を前紀流体回路内にポンピングし、上記閉鎖流路に沿って上記透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および限外濾過液を患者から除去するためのサイクラーと、
上記流体回路に結合された浸透圧剤溶液を含む治療流体の第2供給源であって、上記サイクラーが、処置期間中に、上記第2供給源の流体を上記流体回路内にポンピングすることができる第2供給源と、
上記流体回路に結合された浄化デバイスであって、治療流体が上記閉鎖流路に沿って循環する時に、尿素の少なくとも一部分を含む上記溶質を上記治療流体から除去することが可能な浄化デバイスと、
上記流体回路に結合された槽であって、上記槽が、容積容量の可変増加を上記流体回路に提供し、上記システムが、処置時における上記流体回路内の流体容積の増加を補償することを可能にする槽と、
上記流体回路に結合され、処置期間後に、上記流体回路の流体を排水することを可能にする排出流路とを備えるシステム。
(項目10)
上記処置期間が約8時間以下を含む、項目9に記載のシステム。
(項目11)
上記第1供給源が約6リットル以下の透析液を含む、項目9に記載のシステム。
(項目12)
上記第2供給源が、約3リットル以下の上記浸透圧剤溶液を含む、項目9に記載のシステム。
(項目13)
上記浸透圧剤溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択される、項目12に記載のシステム。
(項目14)
上記浸透圧剤溶液が、約4.25%以上のデキストロース、および上記流体回路を循環する流体の既存レベルより高い濃度の1つまたは複数の電解質を含む、項目9に記載のシステム。
(項目15)
上記第2供給源が、約11以下の上記浸透圧剤溶液を含む、項目14に記載のシステム。(項目16)
上記浄化デバイスが、上記治療流体から溶質を非選択的に除去することが可能である、項目9に記載のシステム。
(項目17)
上記浄化デバイスが、尿素の少なくとも一部分を上記透析液から選択的に除去することが可能な材料に加えて、炭素、活性炭、およびこれらの組合せから成る群から選択される吸着材料を含む、項目16に記載のシステム。
(項目18)
腹膜透析を患者に提供するシステムであって、
患者の腹膜腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
上記カテーテルと連通し、その結果、腹膜腔内に流入して貫流し、腹膜腔から流出するように治療流体を循環させることが可能な閉鎖流路を画定する流体回路と、
上記流体回路に結合された、透析液を含む治療流体の第1供給源と、
処置期間中に上記透析液を上記流体回路内にポンピングし、上記閉鎖流路に沿って上記透析液を循環させて、治療上効果的な量の溶質および限外濾過液を患者から除去するためのサイクラーと、
上記流体回路に結合された浸透圧剤溶液を含む治療流体の第2供給源であって、上記サイクラーが、処置期間中に、第2供給源を上記流体回路内にポンピングする第2供給源と、
上記流体回路に結合された浄化デバイスであって、上記治療流体が上記閉鎖流路に沿って循環する時に、治療上効果的な尿素の部分を含む上記溶質を上記治療流体から除去することが可能な浄化デバイスと、
上記流体回路に結合された排出流路であって、上記流体回路が、上記流体の第2供給源および上記限外濾過液による上記流体回路内の治療流体容積の増加を補償するのに効果的な量の治療流体を排水することを可能にする排出流路とを備えるシステム。
(項目19)
上記処置期間が約8時間以下を含む、項目18に記載のシステム。
(項目20)
上記第1供給源が約6リットル以下の上記透析液を含む、項目18に記載のシステム。
(項目21)
上記第2供給源が約3リットル以下の上記浸透圧剤溶液を含む、項目18に記載のシステム。
(項目22)
上記浸透圧剤溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択される、項目21に記載のシステム。
(項目23)
上記浸透圧剤溶液が、約4.25%以上のデキストロース、および上記治療流体中における電解質のレベルより高い濃度の1つまたは複数の電解質を含む、項目18に記載のシステム。
(項目24)
上記第2供給源が約1リットル以下の上記浸透圧剤溶液を含む、項目23に記載のシステム。
(項目25)
上記浄化デバイスが、上記治療流体から溶質を非選択的に除去することが可能である、項目18に記載のシステム。
(項目26)
上記浄化デバイスが、尿素の少なくとも一部分を上記透析液から選択的に除去することが可能な材料に加えて、炭素、活性炭、およびこれらの組合せから成る群から選択される吸着材料を含む、項目25に記載のシステム。
(項目27)
上記浄化デバイスが、リン酸塩の少なくとも一部分を上記治療流体から選択的に除去することができる材料をさらに含む、項目26に記載のシステム。
(項目28)
腹膜透析を患者に提供するためのシステムであって、
患者の腹膜腔と連通する流入内腔および流出内腔を有するカテーテルと、
上記カテーテルと連通し、その結果、患者の腹膜腔内に流入して貫流し、腹膜腔から流出するように流体を循環させることが可能な閉鎖流路を画定する流体回路と、
上記流体回路に結合された透析液の供給源と、
透析液を上記流体回路内にポンピングし、上記閉鎖流路に沿って上記透析液を処置期間中循環させて、治療上効果的な量の溶質および限外濾過液を患者から除去するためのサイクラーと、
上記流体回路に結合された浄化デバイスであって、尿素の少なくとも一部分を含む上記透析液から、ある量の上記溶質を除去することが可能な浄化デバイスと、
上記流体回路に結合された、流体を排水することを可能にする排出流路であって、上記システムが、尿素の場合、約2.1〜約2.6を含む浄化レベルを得ることが可能である排出流路とを含むシステム。
(項目29)
上記浄化レベルが、クレアチニンの場合、約72l/wk〜約90l/wkをさらに含む、項目28に記載のシステム。
(項目30)
上記浄化レベルが、リン酸塩の場合、約3.5g/wkをさらに含む、項目28に記載のシステム。
(項目31)
上記浄化レベルが、β2ミクログロブリンリンの場合、約600mg/wkをさらに含む、項目28に記載のシステム。
(項目32)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜腔内のカテーテルと連通させて結合し、それにより閉鎖流路を画定し、上記流路に沿って、流体が循環して溶質および限外濾過液を患者から除去することを可能とするステップと、
透析液を含む流体源を上記流体回路に供給するステップと、
上記透析液を上記閉鎖流路に沿って循環させるステップと、
上記流体回路の容積容量を増加して、上記流体回路内の流体容積の増加を補償するステップと、
上記流体が上記閉鎖流路に沿って循環する時に、上記流体からある量の溶質を除去するステップと、
処置後に、上記流体回路の流体を排水するステップとを含む方法。
(項目29)
約8時間以下の期間にわたって患者を治療するステップをさらに含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
処置時に約6リットル以下の上記透析液が供給される、項目28に記載の方法。
(項目31)
処置時に約1.5リットル以下の上記限外濾過液が上記流体回路に追加される、項目28に記載の方法。
(項目32)
炭素を含む吸着材料を使用して、上記溶質を上記透析液から非選択的に除去する、項目28に記載の方法。
(項目33)
尿素の少なくとも一部分が上記透析液から選択的に除去される、項目32に記載の方法。(項目34)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜腔内のカテーテルと連通させて結合し、それにより閉鎖流路を画定し、治療流体が、上記閉鎖流路に沿って循環して溶質および限外濾過液を患者から除去することを可能とするステップと、
透析液を含む第1治療流体源を上記流体回路に供給するステップと、
浸透圧剤溶液を含む第2治療流体源を上記流体回路に供給するステップと、
上記治療流体を上記閉鎖流路に沿って循環させるステップと、
上記流体回路の容積容量を増加して、上記限外濾過液および上記浸透圧剤溶液による流体容積の増加を補償するステップと、
上記治療流体が循環する時に、尿素の治療上効果的な部分を上記治療流体から除去するステップと、
処置後に、上記流体回路の流体を排水するステップとを含む方法。
(項目35)
約8時間以下の期間にわたって患者を治療するステップをさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
処置時に約6リットル以下の上記透析液が上記流体回路に追加される、項目34に記載の方法。
(項目37)
処置時に約1.5リットル以下の上記限外濾過液が上記流体回路に追加される、項目34に記載の方法。
(項目38)
処置時に約3リットル以下の上記浸透圧剤溶液が上記流体回路に追加され、上記浸透圧剤溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択される、項目34に記載の方法。
(項目39)
処置時に約1リットル以下の上記浸透圧剤溶液が上記流体回路に追加され、上記浸透圧剤溶液が約4.25%以上のデキストロースを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
尿素の少なくとも一部分を上記治療流体から選択的に除去することが可能な材料に加えて、炭素を含む吸着材料を使用して、溶質を治療流体から非選択的に除去する、項目34に記載の方法。
(項目41)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜腔内のカテーテルと連通させて結合し、それにより閉鎖流路を画定し、治療流体が、上記閉鎖流路に沿って循環して溶質および限外濾過液を患者から除去することを可能とするステップと、
透析液を含む第1治療流体源を上記流体回路に供給するステップと、
浸透圧剤溶液を含む第2治療流体源を上記流体回路に供給するステップと、
上記透析液および上記浸透圧剤溶液を上記閉鎖流路に沿って循環させるステップと、
治療上効果的な量の溶質および限外濾過液を、治療上効果的な尿素の部分を含む上記治療流体から除去するステップと、
上記治療流体および上記限外濾過液の第2供給源による流体容積の増加を補償するのに効果的な量だけ、上記流体回路の流体を排水するステップとを含む方法。
(項目42)
約8時間以下にわたって患者を治療するステップをさらに含む、項目41に記載の方法。(項目43)
処置時に約6リットル以下の上記透析液が上記流体回路に追加される、項目41に記載の方法。
(項目44)
処置時に約1.5リットル以下の上記限外濾過液が上記流体回路に追加される、項目41に記載の方法。
(項目45)
処置時に約6リットル以下の上記浸透圧剤溶液が追加される、項目41に記載の方法。
(項目46)
上記浸透圧剤溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択される、項目45に記載のシステム。
(項目47)
上記浸透圧剤溶液が、約4.25%以上のデキストロース、および上記治療流体中における電解質のレベルを超えて増加した、ある濃度の1つまたは複数の電解質を含む、項目41に記載のシステム。
(項目48)
処置時に約1リットル以下の上記浸透圧剤溶液が上記流体回路に追加される、項目47に記載の方法。
(項目49)
上記治療流体が上記閉鎖流路に沿って循環する時に、尿素の少なくとも一部分を上記治療流体から選択的に除去することが可能な材料に加えて、炭素を含む吸着材料を使用して、溶質を治療流体から非選択的に除去する、項目41に記載の方法。
(項目50)
リン酸塩の少なくとも一部分を上記治療流体から選択的に除去する物質を使用する、項目49に記載のシステム。
(項目51)
透析療法時に使用する透析液の量を減少させる方法であって、
流体回路を患者の腹膜腔内のカテーテルと連通させて結合し、それにより閉鎖流路を画定し、治療流体が、上記閉鎖流路に沿って循環して溶質および限外濾過液を患者から除去することを可能とするステップと、
約6リットル以下の上記透析液を含む流体源を上記流体回路に供給するステップと、
上記透析液を上記閉鎖流路に沿って循環させるステップと、
上記流体回路の容積容量を増加して、上記限外濾過液を患者から除去することによる上記流体回路中における流体容積の増加を補償するステップと、
上記治療流体が連続的に循環する時に、ある量の溶質を上記治療流体から除去するステップとを含む方法。
(項目52)
処置時に約1.5リットル以下の上記限外濾過液を上記流体回路に追加する、項目51に記載の方法。
(項目53)
炭素、活性炭およびこれらの組合せから成る群から選択した吸着材料を使用して、溶質を上記透析液から非選択的に除去する、項目51に記載の方法。
(項目54)
尿素を含む酵素を使用せずに、尿素の少なくとも一部分を上記治療流体から選択的に除去する、項目53に記載の方法。
(項目55)
上記透析液の拡散特性を強化することが可能な溶液が、処置時に上記流体回路に追加される、項目51に記載の方法。
(項目56)
上記溶液が、2.5%のデキストロースベースの溶液、3.5%のデキストロースベースの溶液、4.25%のデキストロースベースの溶液、4.25%を超えるデキストロースベースの溶液、およびこれらの組合せから成る群から選択した浸透圧剤を含む、項目54に記載のシステム。
(項目57)
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
流体回路を患者の腹膜腔内のカテーテルと連通させて結合し、それにより閉鎖流路を画定し、流体が、上記閉鎖流路に沿って循環して溶質および限外濾過液を患者から除去することを可能とするステップと、
上記透析液を含む治療流体源を上記流体回路に供給するステップと、
上記透析液を上記閉鎖流路に沿って循環させるステップと、
処置後に、上記流体回路から流体を排水するステップと、
尿素の場合、約2.1〜約2.6を含む浄化レベルを得るステップとを含む方法。
(項目58)
クレアチニンの場合、約72l/wk〜約90l/wkの浄化レベルがさらに得られる、項目57に記載のシステム。
(項目59)
リン酸塩の場合、約3.5g/wkの浄化レベルがさらに得られる、項目57に記載のシステム。
(項目60)
β2ミクログロブリンリンの場合、約600mg/wkの浄化レベルがさらに得られる、項目57に記載のシステム。
(項目61)
尿素を含む酵素を使用せずに、尿素の少なくとも一部分が、上記治療流体から選択的に除去される、項目57に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施態様による透析システムの略図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施態様による透析システムの略図を示す。
【図3】図3は、本発明のさらに他の実施態様による透析システムの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明は、概して、単一閉鎖流路を使用し、最小容積の治療流体は、この閉鎖流路に沿って循環し、その結果、治療流体は、閉鎖流路に接続された患者の腹膜腔内に流入して貫流し、腹膜腔から流出して、処置時に溶質、過剰な水分およびその他を患者から効果的に除去することができる。一実施態様では、治療流体の使用可能な容積は、約6リットル以下の最初の透析液源を含むことができる。治療流体の使用可能な容積は、閉鎖流路に沿って循環し、臨床上許容可能な溶質除去基準、たとえば腎財団(National Kidney Foundation)のDOQIレベルで、またはこのレベルを超えて患者から溶質を除去すると考えられる。
【0035】
たとえば、治療レベルの浄化は、尿素、クレアチニン、リン酸塩、β2ミクログロブリン、その他、およびこれらの組合せに対して行なうことができる。こうした浄化レベルとしては、たとえば、尿素の場合は約2.1/週〜約2.6/週;クレアチニンの場合は、約72リットル(l)/週(wk)〜約90l/wk;リン酸塩の場合は約3.5グラム(g)/週(wk);β2ミクログロブリンの場合は、約600ミリグラム(mg)/週(wk)、その他、およびこれらの組合せが挙げられる。たとえば、尿素浄化レベルは、Kt/Vの計算に基づくことができる。これに関して、Kt/Vは、尿素浄化に対応する無時限指数として先行技術で一般に認識される。
【0036】
本明細書で使用する場合、「連続流」という用語またはその他の類似の用語は、透析液を含む治療流体が、処置時に患者の腹膜に絶えず同時に流入し、腹膜から流出することを意味する。これに関して、CAPDおよびAPDなどの代表的な腹膜透析療法に関連する腹膜内における透析液の滞留期間は、効果的に除去される
好ましくは、治療流体は、処置時に連続的に循環される。しかし、本発明の流量は、処置時における連続流のほかに、適切なレベルの断続的、不連続、バッチ、干満、および/またはその他類似の流体の流れを含むことが可能である点を認識するべきである。たとえば、本発明は、処置、治療の短時間の休止時間または中断、および/またはその他の類似する適切な状態の前に、ポンプチャンバ、流体ループ、患者および/またはその他の充填時などに、短時間の断続的な流体の流れを提供することができる。これに関して、本発明は、必要に応じて、多様かつ多数の適切な透析療法を提供するように制御することができる。一実施態様では、腹膜腔に流入し、腹膜腔から流出する連続流は、好ましくは主な治療処置時に生じるため、たとえば、最後のバッグにおける滞留は、連続流の特徴を損なわない。
【0037】
本明細書で使用する場合、「治療流体」という用語、またはその他の類似の用語は、透析療法を行なう時に使用可能な任意の適切な流体または溶液を意味する。治療流体としては、たとえば、治療の際に使用されていない新たな透析液溶液源、治療時に患者から除去された溶質および代謝老廃物およびその他などの老廃物を含む透析液、吸着材料またはその他により浄化された清潔な透析液源、処置時に、患者から通過して、透析液と混合される限外濾過液源、透析液に添加された時に、透析液の拡散特性を強化するのに十分な量の浸透圧剤を含む溶液、その他の適切な溶液、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0038】
本発明は、概して、患者に結合されて、それにより、効果的な量の新たな透析液を内部に最初に追加することが可能な単一閉鎖流路を画定する流体回路を備える。次に、透析液は、好ましくは連続的に循環し、閉鎖流路に沿って浄化されて継続的に再利用され、溶質、過剰な水分およびその他を患者から除去することが可能である。
【0039】
透析液は、必ずしも、再利用前に、元の新たな状態に浄化または再生する必要はないと考えられる。むしろ、透析液は、浄化後、治療時に患者から除去されたある濃度の溶質を保持する場合がある。これは特に、尿素またはその他の類似溶質の除去に関連する。
【0040】
これに関して、尿素は、一般に、尿素をアンモニアなどの副産物に転換する酵素的プロセスを使用して除去される。次に、副産物を除去することができる。しかし、患者の健康および安全の観点から、この種の浄化プロセスは、患者内に流入して貫流し、患者から流出して再循環する前に、副産物、特にアンモニアを確実に効果的に除去するために、必ずしも追加の構成部品、たとえばセンサまたはその他を必要としない。尿素またはその他の類似溶質が、透析液から完全には除去されないか、または一般に許容可能なレベルまで除去されてから再利用される場合でも、効果的かつ臨床上許容可能なレベルの溶質除去は、処置時における透析液の再利用後に行うことができる。
【0041】
再利用前に透析液中に保持される溶質の濃度を補償するため、本発明は、処置全体における治療流体の使用可能な容積を制御可能に最小限にし、循環させて浄化することができる。治療流体の使用可能な容積は、パラメーターの数、たとえば閉鎖流路内にポンピングされる最初の透析液源の量、閉鎖流路に追加される限外濾過液の量、浸透圧剤を含む追加のその他の溶液の量、および/または透析液の拡散特性を強化するためのその他の適切な成分、並びに以下に詳細に記載するその他の類似パラメーターに基づいて制御可能に調節することができる。
【0042】
効果的な処置に必要な治療流体の使用可能な容積は、浄化プロセスの効率によっても影響を受ける可能性がある。以下に記載のとおり、炭素またはその他の類似材料は、透析液が閉鎖流路に沿って循環する時に、透析液を浄化するために使用することができる。浄化効率は、炭素またはその他の類似材料の非選択的除去能力と組んで、溶質を選択的に除去することが可能な材料を使用して高めることができる。これは、たとえば尿素をアンモニアに転換するなど、反応副産物を生成する酵素転換プロセスを使用せずに行なうことができ、したがって、再利用前に溶液から副産物を除去する必要性を効果的になくすことが可能である。
【0043】
本発明の透析システムおよび方法は、既存の透析システムおよび治療と比べて、たとえば臨床上の利益、経済的利益、およびクオリティオブライフに関する利益などの利益を提供すると考えられる。本発明は、臨床上の利益を有すると考えられ、たとえば血圧調節の改善、流体容積調節の改善、腎財団(National Kidney Foundation)のDOQI基準などの公知の臨床基準で評価した治療性能の改善、浄化効率の向上、グルコース吸収の低下、グルコースのプロファイリングおよび限外濾過液の管理、カテーテルの流路形成の減少および/またはその他が挙げられる。
【0044】
また、本発明は、経済的利益、たとえば治療コストの削減を提供することも考えられる。さらに、本発明は、クオリティオブライフに関する利益を有すると考えられ、たとえば、透析デバイスから解放されている覚醒時間の増加、患者が利用する機会の改善、複雑さの減少、薬品の自己管理の減少、治療訓練の減少、家庭用の水のインフラストラクチャを有する必要性の解消、患者が操作および管理しなければならない流体の量の減少、並びに患者を透析センターおよび/またはその他に運ぶ必要性の解消が挙げられる。
【0045】
本発明の連続流透析システムおよび方法は、断続的な透析療法と比較して、より密接に連続的な腎機能をシミュレートおよび置換すると考えられる。その結果、これは、患者のライフスタイルに対する影響が最低限な状態で、臨床転帰の改善に役立つ。本発明の効果および利便性は、比較的制限のない腎臓置換療法を患者に提供する。これは、従来の透析デバイスおよび療法により経験する制限から患者をさらに解放することを可能にする。本発明は、透析療法を早期に比較的容易に開始することを可能にし、つまり、このシステムは、医師が、患者のライフスタイルに対する影響が最低限な状態で、治療をモニターすることを可能にするからである。
【0046】
本発明の連続流透析システムおよび方法は、上記のとおり最小限の容積の治療流体を使用して、最小限の時間枠内で、溶質を患者から効果的に除去するための様々な異なる構成部品および構成を備えることができる。図1に示すように、本発明は、腹膜透析を受ける患者14内に挿入可能なカテーテル12と連通する流体回路10を備える。これは単一閉鎖流路16を画定し、透析液は、この閉鎖流路に沿って、好ましくは連続的に供給および循環され、透析液が患者の腹膜腔に流入して貫流し、腹膜腔から流出する時に、過剰な水分、並びに毒素および代謝老廃物およびその他を含む溶質を患者から除去することができる。
【0047】
(カテーテル)
任意の適切なカテーテル、または医学的に許容可能なその他の刺入デバイスを使用することができる。好ましい一実施態様では、2重内腔カテーテルを使用できる。二重内腔カテーテルは、治療流体を、患者の腹腔内に流入して貫流し、腹腔から流出することを可能にする流路に沿って循環させることを提供する。このため、二重内腔カテーテルは、患者内に埋め込まれる。本発明の透析システムに使用するカテーテルの一実施例は、2000年10月12日に出願された米国特許出願第09/689,508号「Peritoneal Dialysis Catheter」に開示されており、この特許の開示事項は、参考として本明細書に援用する。しかし、2個の単一内腔カテーテルは、腹膜を通じた流体の循環のための流入口および流出口が存在する限り、1個の単一内腔カテーテルが同様に使用できる点に注意するべきである。
【0048】
(透析液)
新たな、または最初の透析液源は、患者の透析に効果的に使用可能な任意の適切な量およびタイプの溶液を含むことができる。上記のとおり、本発明は、最小限の容積の治療流体を使用しつつ、臨床上許容可能な溶質除去レベルに適合するか、および/またはこのレベルを超えることができる。一実施態様では、治療時に使用する透析液の容積は、約6リットル以下である。透析液の容積の下限は、閉鎖流路に沿って循環する時の透析液の浄化効率が増加すると、約5リットルまたはそれ以下という低い容積レベルに達する。
【0049】
透析液は、様々な適切な方法で閉鎖流路内に供給することができる。一実施態様では、新たな透析液源全体の容積は、治療の開始時に閉鎖流体ループ内に供給される。これは、任意の適切なポンピング機構により行なうことができる。全体の容積は、1個または複数の適切な溶液容器18、たとえば、約6リットルの容量である従来の透析溶液バッグなどに収用して、こうしたバッグなどから供給することができる。別法によると、透析液は、オンライン透析液生成システムから生成および供給することができる。一実施態様では、透析液は、全体的な治療時に、任意の適切な流量および/または量で断続的および/または連続的に供給することができる。
【0050】
透析液溶液は、任意の適切なタイプの透析液溶液を含むことができる。一実施態様では、新たな透析液溶液源は、任意の適切な量のデキストロースまたはその他の浸透圧剤を含む。効果的な治療に必要なデキストロースの量は、患者ごとに異なる点を認識するべきである。これに関して、浸透圧剤の量は、患者の特定の必要性を満たす上で異なり、臨床上許容可能なレベル、たとえば約1.5重量%、約2.5重量%、約3.5重量%、約4.25重量%以上を含むことができる。透析液は、たとえばカルシウム、ナトリウム、カリウム、類似の成分、およびこれらの組合せを含む浸透圧剤のほかに、任意の適切な量およびタイプの電解質を含むことができる。
【0051】
(カートリッジ)
図1に示すように、本発明は、任意の適切なタイプのデバイス20であって、治療流体が閉鎖流路に沿って循環する時に、治療流体を効果的に浄化するための任意の適切な量およびタイプの材料を使用するデバイス20を備えることができる。これは、治療流体を再利用して、効果的なレベルmp溶質、過剰な水分およびその他を治療時に患者から除去することを促進する。一実施態様では、浄化デバイスは、治療時に患者から除去された溶質を治療流体から非選択的に除去可能な材料を含む。好ましくは、この材料は、任意の適切な吸着材料、たとえば、任意の許容可能な方法でカートリッジなどの適切な筐体内に収用された炭素、活性炭および/またはその他の類似材料を含む。上記のとおり、溶質を透析液から非選択的に除去する方法は、それ自体で使用して透析液を浄化することができ、透析液の再利用後、溶質および過剰な水分を患者から効果的に除去することができると考えられる。
【0052】
一実施態様では、本発明は、溶質を透析液から非選択的に除去することが可能なタイプの材料のほかに、その他の材料を含むことができる。追加のその他の材料としては、たとえば、一定の溶質またはその他を溶液から選択的に除去することができる材料が挙げられる。一実施態様では、追加の材料として、尿素を選択的に除去することが可能な結合材、リン酸塩および/またはその他を選択的に除去することができる結合材料が挙げられる。
【0053】
結合材料は、概して、以下に詳細に記載するとおり、尿素などの溶質を化学的に結合して、これらを透析液またはその他の適切な流体媒体から除去する。このプロセスは、酵素的プロセスと比べて、反応副産物などの有害物質の放出を生じない。たとえば、ウレアーゼは、尿素を酵素的にアンモニアに転換すると周知されている。しかし、アンモニアは次に、腹膜腔内に再導入する前に、患者の健康および安全を確保するために透析液から除去しなければならない。結合材料を使用すると、結合剤のプロセスの結果として、透析液をさらに処理せずに、透析液を腹膜腔内に再導入することができる。上記のとおり、溶質、特に尿素を選択的に除去することが可能な材料の使用は、本発明のシステムの浄化効率を強化するために用いることができ、効果的な治療を行なうために必要な治療容積は減少するであろう。
【0054】
溶質を溶液から選択的に除去することが可能な材料、たとえば結合材料としては、様々な適切かつ異なる材料、たとえば、溶液中の尿素、クレアチニン、その他の類似代謝老廃物および/またはその他などの窒素含有化合物を除去することが可能なポリマー材料が挙げられる。全体として、こうしたタイプの材料は、尿素またはその他の類似溶質と化学的に結合する1つまたは複数の官能基を含む。
【0055】
たとえば、参考として本明細書に各々援用する米国特許第3,933,753号および第4,012,317号には、尿素を化学的に結合するように機能することが可能なフェニルグリオキサールを含むアルケルニル芳香族ポリマーが開示されている。全体として、フェニルグリオキサールポリマー材料は、米国特許第3,933,753号および第4,012,317号に開示されているように、ニトロベンゼン中で行なわれるアセチル化、次にアセチル基のハロゲン化、およびジメルチルスルホキシドによる処置により製造される。尿素などの溶質を溶液から選択的に除去可能なポリマー材料のもう1つの実施例としては、参考として本明細書に援用する米国特許第4,897,200号に開示されているように、通常ニンヒドリンとして周知されているカルボニル基が3個の官能基を含むポリマー材料が挙げられる。しかし、本発明は、尿素などの溶質を溶液から選択的に除去するために、任意の適切なタイプの材料またはこれらの組合せを含むことができる点を認識するべきである。
【0056】
本発明の浄化カートリッジは、溶質を透析液から除去することが可能な材料のほかに、多数の構成部品を備えることができる。たとえば、浄化カートリッジは、ナトリウム、カリウムまたはその他などの電解質のすべてまたは一部分を透析液溶液から除去する能力を有する。この場合、溶液中の追加の電解質源は、浄化後に透析液の補充を必要とする。カートリッジは、使用する浄化材料に応じて、重炭酸塩またはその他をシステム内に放出するように構成しても良い。これは、透析液のpH調節を容易にすることができる。必要な場合、カートリッジは、タンパク質、粒子状物質または類似の成分がカートリッジから透析液中に浸出または流出するのを防止するため、フィルタを備えると良い。
【0057】
(処置条件)
処置時に、透析液を含む治療流体は、好ましくは連続的に循環し、閉鎖流路に沿って浄化され、患者の効果的な処置を提供するために継続的に再利用することができる。治療流体は、任意の許容可能な流量で循環させることができる。一実施態様では、閉鎖流体ループの流量は、毎分約300ml、好ましくは毎分約100ml以下まで変動可能である。こうした流量では、本発明は、8時間以下、好ましくは7時間以下にわたって、効果的な処置を患者に提供することができる。一実施態様では、本発明のシステムおよび方法は夜間に行なわれる。好ましくは、本発明の処置療法は、適切な量の透析液が患者内に滞留する終日滞留期間と組み合わされる。一実施態様では、終日滞留は、約2リットル以下の透析液を含む。この容積は、患者の特定の必要性に応じて患者ごとに異なる可能性がある点を認識するべきである。
【0058】
本発明の腹膜透析は、様々な適切な方法で行なうことができる。一実施態様では、新たな透析液源全体の容積は、処置の開始時に流体回路内に供給される。これに関して、患者の腹膜腔には、約3リットルの新たな透析液溶液源が充填され、透析液の残余部分は、透析液が処置時に循環される前に、流体回路内にポンピングされる。患者の腹膜腔内における透析液の最初の充填容積は、患者ごとに異なる点を認識するべきである。
【0059】
あるいは、処置期間は、多数の処置サイクルにわたって実施することができる。一実施態様では、処置期間は、別個の2つの処置サイクルを含むことができる。各サイクルでは、新たな透析液源の任意の適切な部分が、最初に流体回路内に供給されて、約4時間以下の効果的な処置サイクル期間にわたって循環される。最初のサイクル後、透析液を含む治療流体全体の容積は、処置時に流体回路に追加された任意の量の限外濾過液または追加の溶液と並行して、流体回路から排水される。排水後、透析液の残余部分は流体回路内に供給され、処置が完了するまで循環される。
【0060】
(サイクラー)
一実施態様では、新たな透析液源は、サイクラー(図示しない)として先行技術で一般に周知されているデバイスを使用して、流体回路内にポンピングされ、流体回路に沿って循環し、各々の処置サイクル後に流体回路から排出することができる。本明細書で使用する場合、「サイクラー」という用語、またはその他の類似用語は、任意の適切な方法で1個または複数の流路に結合されて、流量を自動的に制御できる1個または複数の圧力駆動式ダイアフラム型可変容量ポンプを意味する。サイクラーは、供給される液体の容量を、ポンピング行程前後におけるポンピングチャンバの容積の差として決定することができる。ポンピングチャンバは、一般に、可撓性ダイアフラムにより分割された2個の部分であって、一方の側に空気、他方に流体を有する部分を備える。空気圧が増加すると、液体がチャンバから押し出され、空気側の容積が膨張する。
【0061】
サイクラーは、適切に設計された任意の流体回路に結合される任意の適切な数およびタイプの構成部品、たとえばポンプおよびバルブを備え、閉鎖流路16内に流入し、閉鎖流路16から流出する治療流体の効率的かつ効果的な自動制御を提供する。たとえば、自動化腹膜透析を行なう時に一般に適用されるサイクラー、およびその適切な変更を使用することができる。
【0062】
サイクラーの実施例は、米国特許出願「Peritoneal Dialysis Systems and Methods Employing a Liquid Distiribution and Pumping Cassette That Emulates Gravity Flow」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/027,328号、米国特許第5,350,357号;「Liquid Pumping Mechanisms for Peritoneal Dialysis Systems Employing Fluid Pressure」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/027,485号、米国米国特許第5、431,626号;「Peritoneal Dialysis Systems and Methods
Employing Pneumatic Pressure and Temperature−Corrected Liquid Volume Measurements」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/026,458号、米国特許第5,474,683号;「Improved User Interface and Monitoring Functions for Automated Peritoneal Dialysis」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/025,531号、米国特許第5,438,510号;並びに「Improved User Interface for Automated Peritoneal Dialysis Systems」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/025,547号、米国特許第5,324,422号;および「Peritoneal Dialysis Cycler」、1993年3月3日に出願、出願番号第08/006,426号、米国特許第D351,470号に開示されており、これらすべての特許の開示事項は、参考として本明細書に援用する。サイクラーは、任意の適切な方法で連続流システムに結合することができ、こうした方法としては、任意の適切な使い捨て式カートリッジであって、自動化腹膜透析および/またはその変更を行なう時に一般に使用されるように、患者と流体回路との間に流体界面として使用して、患者を流体回路に迅速かつ容易に結合することができるカートリッジを使用するなどの方法がある。
【0063】
処置後、治療流体は、流体回路から、流体回路に結合される排出流路22を通って除去される。治療流体は、流体排出流路に結合された適切なポンプ機構を使用するなど、任意の適切な方法で排出することができる。排出される治療流体は廃棄するか、または別法によると、再生してから使用することができる。
【0064】
(追加の浸透圧剤)
次に、図2を参照すると、本発明は、処置時に流体回路に追加することが可能な透析液および限外濾過液のほかに、流体源28を備えることができる。追加の流体源は、デキストロースなどの浸透圧剤を含む水性溶液などの1種類以上の溶液を、処置時における治療流体の拡散特性を補充するのに十分な量だけ含むことができる。浸透圧剤の量としては、適切な量の約2.5重量%、約3.5重量%、約4.25重量%以上およびこれらの組合せなどの適切な量が挙げられる。追加の溶液源は、許容可能なレベルおよびタイプの成分、たとえば、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、その他、およびこれらの組合せを含む電解質も含むことができる。一実施態様では、流体回路に追加される浸透圧剤溶液の量は約3リットル以下、好ましくは約2リットル以下である。浸透圧剤溶液は、適切な方法でモニターしつつ、閉鎖流路内に連続的に供給するか、または断続的に供給することができる。
【0065】
効果的な処置を促進するために必要な浸透圧剤溶液の量およびタイプは、患者ごとに異なる可能性があることを認識するべきである。一実施態様では、既存の治療流体と比べて比較的高レベルの浸透圧剤および電解質を含む溶液を、約1リットル以下などの任意の適切な容積量で流体回路に供給することができる。一実施態様では、浸透圧剤および電解質の溶液濃縮物は、約4.25重量%以上のデキストロース、および治療溶液中における既存レベルより高度の濃縮レベルの電解質を含むことができ、したがって、治療溶液中のレベルは、再利用の前に、最適かつ生理的に許容可能なレベルになるように調節することができる。
【0066】
一実施態様では、溶液濃縮物の構成要素は、流体回路内に個々に注入することができる。その構成要素としては、たとえば、デキストロース、重炭酸塩、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、類似の成分、およびこれらの組合せなどの浸透圧剤を含有する透析液溶液中に一般に含まれるタイプの成分が挙げられる。流体回路内に供給される個々の成分の量は、任意の適切な方法で調節および制御することができる。
【0067】
たとえば、感知デバイス(図示しない)は、本発明のシステムに結合することができ、処置時における特定レベルの構成要素をオンラインおよびリアルタイムでモニターするために使用することができる。このセンサは、各々の構成部品の注入デバイス(図示しない)と通信して、流体回路内に流入する構成要素の流れを調節するように構成することができる。これは、患者から除去される限外濾過液のレベルをモニターするために使用することも可能である。より多くの限外濾過液が望ましい場合、このセンサは、ポンプと通信して、デキストロースの流量を増加し、ひいては患者から除去される限外濾過液を増加するように構成することができる。一実施態様では、治療時に追加される個々の構成要素の量は、構成要素の各々に対応するカスタマイズされた治療プロファイルに基づいて調節することができる。
【0068】
一実施態様では、治療溶液の使用可能な容積は、新たな透析液の最初の量、限外濾過液の量、および/またはその他の追加の溶液、たとえば、上記のようにデキストロースベースの溶液を含むことができる。流体回路の容積容量は、可変的に増加するのではなく、処置時に比較的一定に維持することができる。これに関して、ある量の治療流体は、デキストロースベースの溶液の注入、および流体回路内への限外濾過液の搬送に近い速度で流体回路から排出される。好ましくは、流体回路の容積容量は、治療溶液の浄化効率が増加すると、こうして一定にすることができる。これに関して、治療流体の使用可能な容積の可変増加は、効果的な処置に必要ではない。
【0069】
(槽)
一実施態様では、本発明は、流体回路に結合された槽24を備える。これは、流体回路の容積容量の可変増加を処置時に提供することができる。これに関して、患者から流体回路に通過する限外濾過液は、透析液と混合され、効果的な処置に使用可能な治療流体の容積を増加することができる。
【0070】
上記のとおり、透析液に対する限外濾過液の追加は、実際、流体ループと接触する追加の容積を維持することにより、溶質を除去する容量を増加する。これは、浄化プロセスを促進し、ひいては処置のために必要な新たな透析液の容積を効果的に最小限にする。本明細書で使用する場合、「限外濾過液」という用語、またはその他の類似する用語は、透析液が患者を透析するために作用する時に、患者から除去される過剰な水分を意味する。槽は、任意の適切な方法で流体回路の容積を可変増加するように動作可能なポンプに結合された任意の適切な容器などの任意の適切な構成部品を備えることができる。容器は、任意の適切なタイプの容器を備えることができ、流体ループからの流体の一部分は、治療時に容器内に、および容器から効果的にポンピングすることができる。好ましくは、アキュムレータ容器は可撓性ではない。これに関して、流体ループ内にポンピングされる流体は、ポンプにより押されるように設計する。したがって、アキュムレータまたは可変槽として動作する可撓性容器を備えた流体回路を貫流する流量を制御または調節することは困難である。
【0071】
図3に示すように、本発明は、腹膜透析を受ける患者34内に挿入する可能なカテーテル32と連通する流体回路30を備える。その結果、単一閉鎖流路36が画定される。透析液源は、流体回路30に結合された容器38内に設けられる。この容器から、透析液は、患者内に流入して貫流し、患者から流出して通過する時に、流体回路内にポンピングされ、流体回路に沿って循環して、代謝老廃物および/または限外濾過液を患者から除去することができる。浄化デバイス40は、流体回路にも結合され、上記のとおり、透析液が流体回路30に沿って循環する時に、透析液を浄化することができる。
【0072】
治療の開始時には、透析液の少なくとも一部分は、流体回路30内にポンピングされて、患者の腹膜腔を充填する。透析液の残余の部分がある場合、この残余部分は、治療の後の段階で流体回路内にポンピングすることができる。治療が続行すると、流体回路に沿って循環した治療流体の一部分は、たとえば、患者から除去された限外濾過液が流体回路に追加されるか、および/または浸透圧剤溶液(図示しない)が、上記のとおり、流体回路30に追加されたことにより治療流体の容積が増加すると、容器38内にポンピングすることができる。容器38の少なくとも一部分は、連続的な方法または断続的に治療流体と共に充填することができる。容器38の少なくとも一部分には、治療流体を連続に、または断続的に充填することができる。容器38内の治療流体の少なくとも一部分は、その後、逆に流体回路30内にポンピングすることができる。任意の適切な量の治療流体は、任意の適切な間隔で容器に供給されるか、または容器から引き出され、使用可能な治療流体の容積を調節することができる。これは、治療流体の一部分が容器内にポンピングされるか、または容器からポンピングされ、流体回路30内の治療流体の残余部分が、流体回路30に沿って循環し続けることを可能にする。
【0073】
治療流体の任意の適切な容積は、容器内または容器からポンピングされ、治療時における治療流体の容積の変化を補償することが可能であることを認識するべきである。容器38内への流体の流れ、または容器38からの流体の流れ、および流体回路に沿って循環する流体の流れは、任意の適切な流量に、任意の適切なタイプおよび数のポンプにより制御することができる。これらのポンプは、サイクラーを介してシステムに結合するか、または1個もしくは複数のポンプを別個にシステムに結合することができる。一実施態様では、容器内への流体の流れ、または容器からの流体の流れは、毎分約75mlの流量に制御可能であり、流体回路に沿って循環する流体の流れは、図3に示すように、毎分約250mlに制御可能である。
【0074】
本発明のシステムおよび方法は、任意の適切な数およびタイプの構成部品を使用して、クオリティオブライフ、経済、処置効率、およびその他の類似の処置条件を強化することにより、患者の効率的な処置を促進することができることを認識するべきである。たとえば、本発明は、任意の数および許容可能なタイプのポンプであって、透析液を含む治療溶液が、効率的に、患者に接続された閉鎖流体ループ内に供給されてループ内で循環し、ループから排水されるように、任意の適切な方法で構成されたポンプを使用することができる。
【0075】
(モニター)
一実施態様では、本発明の透析システムは、空気、水分およびその他の環境汚染物質が閉鎖流体ループに入るのを防止するための閉鎖無菌システムである。これに関して、本発明は、システム内の汚染物質のレベルをモニターするための様々な異なる構成部品を備えることができる。たとえば、本発明は、酸素および二酸化炭素を含む大気ガスをモニターするための気体センサを備えることができる。汚染を検出する場合、本発明は、本発明のシステムから気体を除去し、気体を大気に排出するために任意の適切なデバイスを備えることができる。
【0076】
一実施態様では、温度センサは、閉鎖流体ループに沿って所望の場所に設けることができる。温度センサは、加熱器に対応する流体温度を制御するために使用できる様々な流体温度をモニターする。赤外加熱器およびプレート加熱器など、2個以上の加熱器を設ける場合、一実施態様におけるシステムは、各加熱器に別個の温度センサを備えるため、各加熱器を個々に制御することができる。
【0077】
本発明は、一実施態様では、その他の様々なパラメーターをモニターするために、その他の様々なセンサも備える。たとえば、流体圧力センサは、閉鎖流路に沿った特定の位置における個々の流体圧力を指示する信号を送信する制御装置に電気的に結合するか、さもなければこうした制御装置と通信することができる。制御装置は、圧力センサからの信号に基づいて、流体ポンプおよびバルブを作動させ、患者に入って貫通し、患者から出て行くループ内に所望の流体圧力および流量を取得して維持することができる。
【0078】
一実施態様では、圧力センサは、非侵襲的圧力センサである。こうした圧力センサは、医療用流体または透析液に物理的に接触しない(おそらく、汚染されない)。当然、その他の流量測定装置、たとえば流量センサ、圧力ゲージ、流量計、圧力調整器、オリフィスプレート、質量流量計、容量センサ、または当業者が周知しているその他の適切な流量測定デバイスを適切な個数だけ設けて、流体回路に適応させることができる。
【0079】
一実施態様では、ポンプチャンバ(図示しない)などのチャンバを通ってポンピングされる流体の容積を測定する流量測定または容積感知デバイスが設けられる。容量流体センサの一実施例は、「Capacitance Fluid Volume Measurement」という表題の特許出願第10/054,487号に詳細に開示されており、この特許出願は、参考として本明細書に援用する。
【0080】
2個のコンデンサプレート間の静電容量Cは、関数C=k×(S/d)に従って変化し、ここで、kは誘電定数、Sは個々のプレートの表面積、dはプレート間の距離である。プレート間の静電容量は、関数1/(R×V)に従って比例的に変化し、ここで、Rは既知の抵抗、Vはコンデンサプレートを横断して測定された電圧である。
【0081】
静電容量センサの一実施態様では、センサは、サイクラーポンプチャンバと協働して動作する。一実施態様におけるサイクラーポンプチャンバは、一定および既知の容積を画定するシェルまたは壁部、並びにシェル間で動作する1対の可撓性膜とを備え、この膜は、膨張して流体を充填され、収縮して流体を排出する。静電容量センサは、ポンプチャンバの対向側部上に配置されたコンデンサプレートを備える。チャンバまたは流体ポンプ内の流体の容積が変化すると(つまり、ポンプチャンバが充填されるか、または空になると)、静電容量プレート間で変化する流体の誘電特性が変化する。たとえば、透析液および空気の結合誘電定数は、チャンバの一定容積のシェル内で、透析液が空気と置換すると(または空気が透析液と置換すると)変化する。全体的な誘電定数の変化は、2個の静電容量プレート間における静電容量の変化に影響し、電圧の対応する変化は、電圧感知デバイスにより感知することができる。制御装置は、電圧感知デバイスにより電圧の変化をモニターし、静電容量の変化と、チャンバを通ってポンピングされる流体の量とを相互に関連付ける(センサの校正後)。
【0082】
もう1つの実施態様では、チャンバまたはポンプチャンバの容積は、たとえば、チャンバの一方または両方のシェルの移動により変化することができる。この実施態様では、コンデンサプレート間の静電容量は、プレート間の距離dが変化するか、および/または1個または複数のプレートの表面積Sが変化すると変化し、この場合、一方の流体のみがコンデンサプレート間に存在するため、誘電定数kは変化しない。測定デバイスのさらに他の別法による実施態様では、コンデンサプレート間の静電容量Cは、誘電定数k、距離dおよび表面積Sの変化何らかの組合せ、または3つの変化すべてに基づいて変化する。
【0083】
制御装置は、複数のチャンバの充填および排水サイクルによる静電容量の変化から電圧信号の振幅を収集し、ある長さの時間またはある回数のポンプサイクルにわたってポンピングされた医療流体全体の容積を計算する。静電容量センサは、実時間に基づいて、非侵襲的な方法でポンプチャンバに流入するか、またはポンプチャンバから流出する医療流体、たとえば透析液をモニターする。
【0084】
静電容量センサは、透析システムが、患者に提供される流体の容積を望ましい量および流量に維持することを可能にする。患者に対する流量を望ましいレベルに維持することは、腹膜透析療法には特に有利である。
【0085】
患者に提供される流体を適切な生理的レベルに維持することも望ましい。生理的な制御、たとえば流体のパラメーターの感知および/または調節は、透析システム内の様々な場所で行なうことができる。このため、システムは、生理的レベルの多くの異なるタイプのセンサを何らかの組合せで備えることができる。たとえば、システムは、1個または複数のpHセンサを備えることができる。一実装例では、図1に関連して以下で説明するカートリッジは、流体を調節して、所望の生理的レベルに維持するpHセンサを備えることができる。
【0086】
(加熱器)
本発明は、流体を患者に供給するのに望ましい温度まで閉鎖流体ループ内の流体を加熱するように適応的に動作することが可能な流体加熱器を備えることができる。これに関して、最初にシステムに充填する時の透析液の温度は、流体を低い周囲温度で保管した場合は非常に低く、たとえば5℃〜10℃からである可能性がある。一実施態様では、流体加熱器は、流体を所望の温度まで加熱するインライン加熱器(連続流加熱器)であり、流体は、連続的に加熱器を通過して流動する。その他の実施態様では、インライン加熱器以外の加熱器、たとえば、バルク加熱器、二重加熱器、およびその他を使用することができる。
【0087】
一実施態様では、流体加熱器は、赤外加熱器およびプレート加熱器を含む二重加熱器(図示しない)である。こうした二重加熱器の一実施例は、「Medical Fluid Heater Using Radiant Energy」という表題の特許出願第10/051,609号に開示されており、この出願は、参考として本明細書に援用する。赤外加熱器およびプレート加熱器は共に、連続的に加熱器を通過して流れる医療流体を加熱するインライン加熱器である。放射エネルギーまたは赤外加熱器は、患者ループ内の流体に方向付けられて、こうした流体により吸収される赤外エネルギーを放射し、それにより流体を加熱する。放射エネルギーまたは赤外加熱器は、短時間で、比較的多量の低温流体を所望の温度まで加熱することができる一次加熱器または高能力加熱器である。
【0088】
プレート加熱器は、赤外加熱器に対して比較的低い加熱能力を有する二次加熱器または保守加熱器である。プレート加熱器は電気抵抗を使用して、プレートの温度を上昇させ、その結果プレート付近を流動する流体を加熱する。
【0089】
高能力および低能力の加熱器の両方を備える加熱器は、様々な流体加熱要件に適応する効率的な加熱器構造を提供する。たとえば、放射または赤外加熱器は、最初のシステム充填時、または透析処置時に著しい熱損失があった場合に、透析システムに供給される低温透析液(熱エネルギー需要が高度)を迅速に加熱する際に特に有用である。初期のシステム充填時における透析液の温度は、流体を低い周囲温度で保存する場合は非常に低く、たとえば5℃〜10℃である。
【0090】
プレート加熱器は、たとえば、透析処置時における通常量の熱損失のために、患者に供給される流体の所望の温度(熱エネルギー需要より低い)を維持する上で特に有用である。赤外加熱器は、少量の流体曝露空間における高度の熱需要に備え、プレート加熱器は保守熱需要に備え、赤外加熱器または放射加熱器に比べて、比較的少量の投入エネルギーを要する。さらに、赤外加熱器およびプレート加熱器を一緒に使用して流体を加熱する場合、加熱器の加熱容量は増加する。
【0091】
赤外加熱器およびプレート加熱器は、互いに対して様々な構成で配列することができる。一実施態様における加熱器は、流体が加熱器の側を連続的に通過するように(たとえば、先ず放射加熱器もしくは赤外加熱器、次にプレート加熱器、またはこの逆)配列される。一実施態様では、流体は、各加熱器の側を同時に(両方の加熱器を同時に)通過する。加熱器を通過する流体流路は、両方の加熱器に共通の流路であるか、または各加熱器に個々の流路を備えて良い。放射または赤外、電気抵抗加熱器のほかに、その他のタイプの加熱、たとえば対流、マイクロ波、赤外(「IR」)または誘導加熱を使用しても良い。
【0092】
加熱器は、多くの異なる構成部品を備えることができる。たとえば、加熱器は、任意の適切な材料から、任意の適切なフィルタサイズで製造されたフィルタを備えることができる。フィルタは、任意の適切な材料から製造され、任意の適切なフィルタサイズを有することができる。一実施態様では、フィルタのサイズは、約0.3μ、好ましくは0.22μである。これは、フィルタサイズが約0.3μの場合、約0.3μである溶液中の溶質を除去することができ、フィルタサイズが約0.22μの場合、サイズが約0.22μ以上である溶液中の溶質を除去することができることを意味する。このフィルタは、様々な方法で動作し、本発明の透析システムの性能を強化することができる。
【0093】
たとえば、このフィルタをUV汚染除去技術またはその他の代わりに使用すると、治療流体を殺菌した後に、治療流体を患者内に流入して貫流させ、患者から流出させることができる。これは、処置の結果としての患者の感染、たとえば、治療時に汚染物に接触することにより感染する可能性がある腹膜炎などを効果的になくすか、または少なくとも大幅に減少させることができる。
【0094】
1個または複数のフィルタは、任意の適切な位置において流体回路に結合できる点を認識するべきである。患者の流入側では、フィルタは、上記のように患者内に流入する前に、透析液を殺菌するために動作することができる。1個または複数のフィルタは、排出流路にも結合する。この位置では、フィルタは、排出する前に、治療流体から栄養物を除去するために使用することができる。次に、フィルタは、たとえば、適切な溶液を逆流させて浄化し、濾過された栄養物を取り出して再利用し、患者内に再導入することができる。フィルタは、その濾過効率を強化するために、任意の適切な方法で構成することができる。
【0095】
本発明の流路、流体回路、流体ループ、および/またはその他は、任意の適切な方法で相互に接続された1本または複数の流体ラインから製造することができる点を認識するべきである。流体ラインは、可撓性の無菌および不活性プラスチック、たとえばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルおよび/またはこれらの組合せを含む任意の適切な材料を含むことができる。一般に、流体ラインは、ラインを通る流体の流れを目視観察できるように透明である。
【0096】
本明細書で説明されている本発明の好ましい実施態様に対する様々な変更および改良は、当業者に明らかであることを理解するべきである。このような変更および改良は、本発明の意図および範囲を逸脱することなく、その意図された利益を損なうことなく成され得る。したがって、このような変更および改良は、添付の特許請求の範囲により網羅することを意図している。
【符号の説明】
【0097】
20、40 浄化デバイス
24 槽
30 流体回路
38 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示される透析システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−88000(P2011−88000A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25478(P2011−25478)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【分割の表示】特願2009−159184(P2009−159184)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】