説明

腹膜透析支援システム及び表示制御方法

【課題】残腎機能等の透析指標を容易に表示したり、栄養状態が評価でき、一瞥して視認可能に表示したり、血液透析と腹膜透析の併用療法を行っている患者の透析量の評価ができ、一瞥して視認可能に表示したり、時系列で患者の動向を把握し、将来の状態を一瞥して視認可能に表示することができる、腹膜透析支援システム及び表示制御方法の提供。
【解決手段】本願発明の腹膜透析支援システムにおける表示制御方法は、表示部に表示された1つの画面に、患者の臨床情報として、患者の生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA(体表面積)、V(体積)、至適透析指標である尿量,排液量,残腎Kt/V,PD Kt/V(腹膜透析によるKt/V),PET試験に基づくCr D/P(血清中のクレアチニン濃度Pと腹膜透析排液中のクレアチニン濃度Dとの比)、アドバイス情報を時系列で一覧表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析支援システム及び表示制御方法に関するもので、残腎機能等の透析指標を容易に表示したり、栄養状態が評価でき、一瞥して視認可能に表示したり、血液透析と腹膜透析の併用療法を行っている患者の透析量の評価ができ、一瞥して視認可能に表示したり、時系列で患者の動向を把握し、腹膜透析に関する将来の状態を一瞥して視認可能に表示することができる腹膜透析支援システム及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病や肝臓病などの慢性疾患の治療は長期間を要するが、現状では、主として掛かりつけ医に通院することで、患者の管理が行われている。きめ細かな管理を行おうとすれば通院回数が増えて患者の体力的負担が増し、患者の体力的負担を慮って通院回数を少なくすれば、きめ細かな管理ができず、治療の適切性を欠く場合も生じかねない。
【0003】
在宅での腹膜透析療法の患者の健康管理・支援するためのシステムとして、たとえば、リアルタイムでインターネット等の情報通信ネットワークを介して管理するものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−205031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、医療機関や監視センターが、患者の自宅、移動先等で腹膜透析療法を行う場合に発生したトラブルにほぼ実時間(リアルタイム)での対応が可能な腹膜透析支援システムであるが、残腎機能等の透析指標を容易に表示したり、栄養状態が評価でき、一瞥して視認可能に表示したり、血液透析と腹膜透析の併用療法を行っている患者の透析量の評価を、基幹病院の医者と掛かりつけ医院の医者の双方で一瞥して視認可能に表示したり、時系列で患者の動向を把握し、将来の状態を一瞥して視認可能に表示したりすることができるという腹膜透析支援システムではない。
【0005】
本願発明は、上記事情のもとでなされたものであって、残腎機能等の透析指標を容易に表示したり、栄養状態が評価でき、一瞥して視認可能に表示したり、血液透析と腹膜透析の併用療法を行っている患者の透析量の評価ができ、一瞥して視認可能に表示したり、時系列で患者の動向を把握し、将来の状態を一瞥して視認可能に表示することができる、腹膜透析支援システム及び表示制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本願発明の腹膜透析システムは、腹膜透析治療を遂行するために患者から臨床情報を取得し、臨床情報を掛かりつけ医の各端末装置で入力して、臨床情報を自動で評価した後、基幹病院の中央管理サーバへ送信し、基幹病院の中央管理サーバで評価した臨床情報を基幹病院の中央管理サーバから掛かりつけ医の端末装置へフィードバックするようにした、コンピュータにより制御される腹膜透析支援システムであって、掛かりつけ医の各端末装置と基幹病院の該中央管理サーバとは通信回線を介して接続可能であり、掛かりつけ医の端末装置は、制御部の制御により、制御プログラムにより、入力部で入力された患者の臨床情報に基づいて評価・判定部で自動評価し、至適透析指標を記号化し、数値と併せて標示部で一覧表示するようにし、更に自動評価データを中央管理サーバに送信し、基幹病院のコンピュータの端末装置においても至適透析指標を記号化し、数値と併せて該標示部に一覧表示するようにしたことを特徴とする。また、至適透析指標は、電話回線,専用回線,インターネット等の情報通信ネットワークを介して、中央管理サーバにアクセスすることで、患者の端末、掛かりつけ医の各端末装置、基幹病院の端末装置のいずれでもリアルタイムに表示部に表示可能としたことを特徴とする。また、電話回線,専用回線,インターネット等の情報通信回線を介して患者の端末、掛かりつけ医の各端末装置との間で双方向の音声及び/またはリアムタイムの実画像による通話を可能とすることを特徴とする。また、腹膜透析支援システムに使用する基幹病院の端末は、患者の臨床情報として、生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA、V、前記至適透析指標の指標、尿,血液,排液の情報、栄養の指標、アドバイス情報を操作部にて入力可能としたことを特徴とする。
【0007】
また、本願発明の腹膜透析支援システムにおける表示制御方法は、表示部に表示された1つの画面に、患者の臨床情報として、患者の生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA(体表面積)、V(体積)、至適透析指標である尿量,排液量,残腎Kt/V,PD Kt/V(腹膜透析によるKt/V),PET試験に基づくCr D/P(血清中のクレアチニン濃度Pと腹膜透析排液中のクレアチニン濃度Dとの比)、アドバイス情報を時系列で一覧表示することを特徴とする。表示された1つの画面に、栄養の指標を至適透析指標と対応させて時系列で一覧表示することを特徴とする。ここで、PET(peritoneal equilibration test)試験とは、全世界で用いられている一般的な腹膜機能評価方法であり、腹膜を介した血中から腹腔内へのクレアチニン(Cr)除去速度,腹腔内の透析液から血中へのグルコースの消失速度を測定し、腹膜機能を見る方法である。PET試験は、4つのカテゴリーに分けられる。即ち、クレアチニン,グルコースの腹膜での輸送が速く、血中のクレアチニンの腹膜透析液への除去、腹膜透析液中のグルコースの血中への再吸収が短時間のうちに起こるパターンを high transporter(H)、血中のクレアチニンの腹膜透析液への除去、腹膜透析液中のグルコースの血中への再吸収がやや短時間のうちに起こるパターンを high average transporter(HA)、血中のクレアチニンの腹膜透析液への除去、腹膜透析液中のグルコースの血中への再吸収がややゆっくり起こるパターンを low average transporter(LA)、血中のクレアチニンの腹膜透析液への除去、腹膜透析液中のグルコースの血中への再吸収がゆっくり起こるパターンをlow transporter(L)としている。また、PDCとは、personal dialysis capacity の略で、3ポアモデルを用いた腹膜機能の臨床評価方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ほぼリアルタイムで、至適透析の指標、栄養の指標が確認でき、基幹病院、掛かりつけ医が情報の共有化でき、腹膜透析治療方針に齟齬が発生しないという効果がある。掛かりつけ医の成長の一助となる。また、患者と情報の共有化ができ、高い満足度と信頼関係が構築できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明の実施例について図面を参照して説明するが、実施例に限定されるものでなく、適宜変更が可能である。図1は、本願発明に係る、コンピュータで制御される腹膜透析支援システム1の一実施形態の概念を示している。
【0010】
本願発明に係る腹膜透析支援システム1は、中央管理サーバ200と、この中央管理サーバ200に電話回線,専用回線,インターネット等の情報通信ネットワーク100を介して、掛かりつけ医の各コンピュータ端末装置10、接続可能な複数の患者端末30を含んでいる。中央管理サーバ200は、たとえば基幹病院のコンピュータ20等の高機能医療機関の内部に設置する場合もあるし、医療機関とは独立して設置する場合もある。患者端末30は、原則として患者の家庭内に設置されるが、携帯電話にその機能を持たせた携帯端末としてもよい。
【0011】
中央管理サーバ200を高機能医療機関である基幹病院20とは独立したものとする場合、図1に示すように、本願発明の腹膜透析支援システム1の中央管理サーバ200のデータを患者自身に知らせたり、腹膜透析の処方を迅速に変更させるために反映するため、中央管理サーバ200は、基幹病院のコンピュータ20や、患者の掛かりつけ医(クリニックにおける主治医や訪問看護師等)が所属する掛かりつけ医のコンピュータ端末10と情報通信ネットワーク100を介してリアルタイムに連係可能に構成される。
【0012】
図2は、腹膜透析支援システム1を構成する各装置の構成を示すブロック図である。まず、図2(a)において、患者端末(患者端末装置)30は、必要最小限の規模において、マイクロコンピュータを含むCPU(制御部)31とCPU31により実行されるシステム全体の制御プログラムや各種データを記憶するROM32、ワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶する記憶部としてのRAM33、NCU(ネットワークコントロールユニット)34、モデム35、EPROM36、LCD等からなり、CPU31に制御されて各種の表示を行う表示部37、キーボート等で構成される操作部38が設けられている。NCU34は、情報通信ネットワーク100に接続されて網制御を行う。モデム35は、受信データを復調し、送信データを変調する。EPROM37は、フラグなどを記憶する。
【0013】
図2(b)において、掛かりつけ医のコンピュータ端末(掛かりつけ医の端末装置)10は、必要最小限の規模において、マイクロコンピュータを含むCPU(制御部)11、CPU11により実行されるシステム全体の制御プログラムや各種データを記憶するROM12、ワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAM13、NCU14、モデム15、EPROM16、LCD等からなり、CPU11に制御されて図3、図4、図5、図6に示すような各種の表示画面を表示させる表示部17、キーボート等で構成される操作部18、評価・判定部19が設けられている。NCU14は、情報通信ネットワーク100に接続されて網制御を行う。モデム15は、受信データを復調し、送信データを変調する。EPROM16は、フラグなどを記憶する。
【0014】
図2(c)において、基幹病院のコンピュータ端末(基幹病院の端末装置)20は、必要最小限の規模において、マイクロコンピュータを含むCPU(制御部)21、CPU21により実行されるシステム全体の制御プログラムや各種データを記憶するROM22、ワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAM23、NCU24、モデム25、EPROM26、LCD等からなり、CPU21に制御されて図3、図4、図5、図6に示すような各種の表示画面を表示させる表示部27、キーボート等で構成され入力部としての機能も有する操作部28、入力された患者の臨床情報を評価・判定するための評価・判定部29が設けられている。NCU24は、情報通信ネットワーク100に接続されて網制御を行う。モデム25は、受信データを復調し、送信データを変調する。EPROM26は、フラグなどを記憶する。
【0015】
図2(d)において、中央管理サーバ200は、患者個人別臨床データファイル201、患者個人別統計データファイル202、データ解析用集団用データファイル203などを含む。
【0016】
図8は、本発明の腹膜透析支援システムの表示部17,表示部27,表示部37の表示画面に表示される入力画面及び入力されたデータが時系列に一瞥可能にした表示例である。上欄から順に、患者の生年月日(図では、1969/4/14と表示され、1969年4月14日生まれを意味する)、腹膜透析療法の導入年月日(図では、2006/1/10と表示され、2006年1月10日から腹膜透析(PD)療法が開始されたことを意味する)、氏名、性別、測定日、PD処方(腹膜透析処方:透析方法,透析液,総注液量mL)、身体情報(血圧,身長cm,体重kg,年齢,体表面積m,体積v)、至適透析の指標、栄養の指標、留置された腹膜透析用カテーテルの出口情報(サイナストラクト)、アドバイス情報が一覧表示される。こうして、各項目ごとに入力画面を選択することなく表示部17,27に表示された表示画面で、容易に、コンピュータ端末(掛かりつけ医の端末装置)10及び/または基幹病院のコンピュータ端末(基幹病院の端末装置)20で、キーボート等で構成され入力部としての機能も有する操作部18,28にて、腹膜透析療法の導入年月日、氏名、性別、測定日、PD処方、身体情報、至適透析の指標、栄養の指標、留置された腹膜透析用カテーテルの出口情報、アドバイス情報を入力し、表示部17,27に表示できる。
【0017】
至適透析の指標については、尿量mL,排液量mL,Kt/V,総Kt/V(腹膜透析PDのみ),総Kt/V(腹膜透析PDと血液透析HDとの併用),PETが、腹膜透析支援システムの表示部17,27の表示画面に表示され、キーボート等で構成され入力部としての機能も有する操作部18,28で入力され、その結果が表示部17,27の表示画面に表示される。総Kt/V(腹膜透析PDのみ),総Kt/V(腹膜透析PDと血液透析HDとの併用)については、入力された患者の臨床情報を評価・判定するための評価・判定部19,29で評価・判定された結果も記号(○,▲,◎)で併せて表示される。この場合、2.0≦Kt/Vの場合は◎、1.7≦Kt/V<2.0の場合は○、Kt/V<1.7の場合は▲で表示される。特に、総Kt/V(腹膜透析PDのみ)と総Kt/V(腹膜透析PDと血液透析HDとの併用)とを上下に別々に設けて、識別可能としている。
【0018】
栄養の指標については、塩分,肥満度,貧血度,蛋白量が、腹膜透析支援システムの表示部17,27の表示画面に表示され、操作部18,28で入力され、その結果が表示部17,27の表示画面に表示される。
【0019】
図3に示す表示・入力画面1000a、図4に示す表示・入力画面1000b、図5に示す表示・入力画面1000c、図6に示す全体のデータを一瞥できる画面1000d、図7に示すフローチャートに基づいて以下に詳述する。
【0020】
まず、基幹病院のコンピュータ端末(基幹病院の端末装置)20の操作部28での入力操作により、ROM22に記憶された制御プラムに基づいてマイクロコンピュータを含むCPU(制御部)21の制御により、図3に示すような表示画面1000aを表示部27に表示させる(ステップS1)。この表示画面1000aでは、はじめのデータの入力が行なわれる(ステップS2〜ステップS3)。この画面1000aにおいて、性別M(男性)は、カーソルを氏名の下の欄1001に合わせプルダウンメニューのM(男性),F(女性)から選択し、設定入力する。腹膜透析方法は、1003の欄にカーソルを合わせ、プルダウンメニユーから、「7PD」(1週間腹膜透析のみ)、「6PD+1HD」(1週間のうち6日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ)、「5PD+1HD」(1週間のうち5日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ、血液透析日とその翌日は腹膜透析を行わない)のいずれかが選択し、設定入力する。本実施例では、「6PD+1HD」を選択し、設定入力している。使用する腹膜透析液のメーカーもプルダウンメニユーから選択し、欄1004aに設定入力できようになっている。また、腹膜透析液の種類・数は、欄1004bに設定入力できようになっている。設定入力された腹膜透析液の総注液量mLは、自動で演算され、欄1004cに入力される。本実施例では、使用する腹膜透析液は、欄1004bに、1.5%2.5L×3、2.5%2.5L×1と入力・表示されている。これは、1日の使用量として、ブドウ糖濃度1.5%,腹膜透析液量2.5Lの腹膜透析液バッグを3バッグ使用し、ブドウ糖濃度2.5%,腹膜透析液量2.5Lの腹膜透析液バッグを1バッグ使用することが一瞥でき、容易に確認できる。
【0021】
身体情報である、身長(cm)、体重BW(kg)、年齢を欄1005に夫々入力する。なお、設定入力できない項目、BSA(体表面積m)、V(体液量L)はカラーで表示されている。BSAは、入力された身長cm、体重kgに基づいて、例えば式:
BSA=0.0007184×(身長(cm))0.725×(体重(BW)kg)0.425
でROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、RAM23に記憶され、欄1005に表示される。また、V(体液量(L))も、体重(BW)×0.60として自動的に演算され、RAM23に記憶され、表示部27で表示される表示画面における欄1005に表示される。
【0022】
上記項目が入力されると、カーソルを下にスクロールすることで、表示部27で表示される当該表示画面1000aを閉じることなく、図4に示すように、表示部27にすでに表示されている表示画面1000bに移行する。採取された尿のデータ(蓄尿)として、欄1010に至適透析の指標の1つである尿量(mL:1日の尿量)を、欄1011に尿UN(mg/dL:尿中の尿素濃度)、欄1012に尿Cr(mg/dL:尿中のクレアチニン濃度)、欄1013に尿タンパク(mg/dL:尿中のタンパク濃度)、欄1014に尿Na(mEq/L:尿中のNa濃度)を別途測定しておいて、操作部28でそれぞれ入力し、表示部27に表示する。採取された血清データ(血清)として、欄1015に血清UN(mg/dL:血清中の尿素濃度)、欄1016に血清Cr(mg/dL:血清中のクレアチニン濃度)、欄1017に血清Na(mEq/L:血清中のNa濃度)、β−2 m(mg/dL:β−2 マクログロブリン)を別途測定しておいて、操作部28でそれぞれ入力し、RAM23に記憶され、表示部27に表示する。また、腹膜透析液の排液量(mL)を別途測定し、欄1019〜1022に操作部28でそれぞれ入力する。腹膜透析液の1日の総排液量(mL)は、入力された腹膜透析液の排液量(mL)に基づいて、ROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で計算し、RAM23に記憶され、欄1023に表示する。また、腹膜透析液の排液の尿素濃度UN(mg/dL:排液[UN])を別途測定し、欄1024〜1027に操作部28でそれぞれ入力する。腹膜透析液の総排液UN(mg/dL:総排液[UN])尿素濃度)は、入力された腹膜透析液の尿素濃度UN(mg/dL:排液[UN])に基づいて、ROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で計算し、RAM23に記憶され、表示部27で表示する。
【0023】
こうして、採取された尿のデータ(蓄尿)、血清のデータ、腹膜透析液の排液のデータ、腹膜透析液の排液の尿素データがすべて入力されると、表示部27で1000bのように一覧表示され、併せて「以上で、残腎機能、総Kt/V、PETカテゴリーを自動演算・評価するための入力が完了いたしました。」旨の表示が表示部27に表示される。「残腎機能、総Kt/V、PETカテゴリーを自動演算・評価中」という表示を表示部27に行なった後、至適透析の指標の1つであるKt/Vについて、残腎Kt/V(尿が出ている場合の患者の腎臓の機能)、腹膜透析(PD)での機能 PD Kt/VをROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で演算する。
残腎Kt/Vは、式:
残腎Kt/V=([尿UN]/[血清UN]×[1日の尿量]×7日間)/体液量
でROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動演算され、RAM23に記憶され、入力される。
また、PD Kt/Vは、式:
PD Kt/V=([尿素濃度UN]/[血清UN]×[腹膜透析液の1日の総排液量]×7日間)/体液量
でROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動演算され、入力される。
男性の場合、式:
V(体液量)=2.447+(0.3362×BW)+(0.1074×身長)−(0.009516×年齢);
女性の場合、式:
V(体液量)=−2.097+(0.2466×BW)+(0.1069×身長)
でROM22に記憶された演算プログラムに基づいて演算される。
また、残腎Kt/VとPD Kt/Vとを併せた総Kt/VもROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、4段階評価がなされ、例えば、◎(良好)、○(まずまず)、△(境界領域)、▲(不良)のように一瞥しやすい記号で、図5の1000cに示すように総Kt/Vと併せてROM22に記憶された演算プログラムに基づいてRAM23に記憶され、表示部27に表示される。
【0024】
更に、下方にスクロールすることで、当該表示画面1000bを閉じることなく、図5に示すように、表示部27にすでに表示されている表示画面1000c、「栄養 入力/評価画面」に遷移する。BMI(Body Mass Index)は、図3の表示画面1000aで入力された、身長cm,体重kgにより、ROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。BMI評価も、標準、肥満度I、肥満度II等のようにROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。AMC(cm:上腕筋囲;男性の標準値 23.7cm,女性の標準値 20.3cm)は、測定されたAC(cm)及びTSF(cm:上腕三頭筋皮下脂肪厚)を操作部28で入力することで、RAM23に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、ROM22に記憶され、表示部27に表示される。Hb(g/dL:ヘモグロビン濃度)、Alb(g/dL:アルブミン濃度)は、別途測定しておいて、操作部28でそれぞれ入力し、RAM23に記憶され、表示部27に表示する。このデータに基づいて、栄養障害評価がROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動で演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。Transferrin(mg/dL:トランスフェリン)、preAlb(mg/dL:プレアルブミン)、WBC(/mm:白血球数)、Lymphocyte(%:リンホサイト)を操作部28で入力することで、TLC(/mm:総リンパ球数)、PNI(予後栄養指数)がROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。栄養予後評価が、○(まずまず)、△(境界領域)、▲(不良)の3段階で記号にて表示部27に表示される。また、UGR(mg/min:尿素産生速度)、CGR(mg/min:クレアチニン産生速度)、nPNA(g/kg/day:タンパク摂取量;蛋白摂取量に等しい値 標準値 1.1±0.1)、nLBN(%:筋肉量の指標;筋肉量を反映した値 標準値 59±2)がROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。塩分量(食塩喪失量=摂取量 g;標準値 7未満)も同じ表示画面で操作部28で入力することで、ROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、RAM23に記憶され、表示部27に表示される。
nPNAは、式:
nPNA=(6.49×UGR+0.294×V+タンパク喪失量)/体重(BW)で、UGR,性別,体液量(V)を操作部28で入力することでROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に演算され、RAM23に記憶される。
nLBNは、式:
nLBN=(0.029×CGR+7.384)/体重(BW)×100
で、CGR(mg/min:クレアチニン産生速度),体重(BW)を操作部28で入力することで自動的にROM22に記憶された演算プログラムに基づいて演算され、RAM23に記憶される。
【0025】
上記に説明した全部の項目の入力・表示を表示部27で確認し、操作部28で確認したことを入力すると、図6に示すような個人の腹膜透析療法に関してすべてのデータの全体を示す表示画面1000dに切り替わる(ステップS4)。本実施例では、1000gに示す列の値がこれらに相当する。この画面1000dでは、塩分量gが7gを越えると、自動的に、アドバイス欄に「塩分を減らしましょう」というアドバイスが表示される。また、画面の下に、備考として、〔除水量〕についてのコメント、〔(腹膜)透析量〕についての目標値(≧1.7)とコメント、〔PET〕についてのコメントと適正範囲、0.5〜0.81が表示される。また、この画面1000dでは、行1100に示すように、腹膜透析(PD)のみの場合の総Kt/Vと基準値(≧1.7)と4段階評価による記号(◎(良好)、○(まずまず)、△(境界領域)、▲(不良))表示が併せてなされ、行1101に示すように腹膜透析(PD)と血液透析(HD)併用の場合の総Kt/Vと基準値(≧1.7)と4段階評価による記号(◎(良好)、○(まずまず)、△(境界領域)、▲(不良))表示が併せてなされる。図3において、腹膜透析処方(腹膜透析方法)が「5PD+1HD」(1週間のうち5日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ、血液透析日とその翌日は腹膜透析を行わない)として更に操作部28で設定入力された場合、ROM22に記憶された演算プログラムに基づいて自動的に、行1101の下に欄が挿入される。
【0026】
図3〜6に示したデータ入力、リスト作成は、掛かりつけ医の端末装置10でも行なうことが可能である。この場合、自動評価されて表示された項目に対して、掛かりつけ医,看護師などが協議(カンフェランス)して評価を行い、図6の表示部17で表示される表示画面1000dのアドバイス欄に操作部18で入力する。こうして入力された事項は、操作部18での送信操作により、ROM12に記憶された演算プログラムに基づいてCPU11に制御され、NCU14、情報通信ネットワーク100、NCU24を介して基幹病院の端末装置20に送信される。
【0027】
基幹病院の端末装置20でCPU21の制御により、同様の画面が表示部28に表示され、PD(腹膜透析)処方(「7PD」(1週間腹膜透析のみ)、「6PD+1HD」(1週間のうち6日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ)、「5PD+1HD」(1週間のうち5日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ、血液透析日とその翌日は腹膜透析を行わない)のいずれか),腹膜透析液の種類(どのブドウ糖濃度のものかどの量か)、食事療法(塩分摂取量,タンパク摂取量)については変更の必要性があるか否か検討される。変更がない場合は、操作部28を操作して、掛かりつけ医の端末装置10への返信操作を行なうと、表示部17で表示され、掛かりつけ医,看護師(カンフェランス)が確認する。確認した結果は、その場で患者と確認して納得するか、NCU14、情報通信ネットワーク100、NCU34を経て患者の端末の表示部37にて確認できる。
【0028】
変更がある場合には、アドバイス欄にコメントを入力し、操作部28を操作して、掛かりつけ医の端末装置10への返信操作を行なうと、表示部17で表示され、掛かりつけ医,看護師(カンフェランス)が確認する。確認した結果は、その場で患者と確認して納得するか、NCU14、情報通信ネットワーク100、NCU34を経て患者の端末の表示部37にて確認できる。また、このデータは、中央管理サーバ200の患者個人別臨床データファイル201に送信され、更新される。
【0029】
こうして、ほぼリアルタイムで、至適透析の指標、栄養の指標が確認でき、基幹病院、掛かりつけ医が情報の共有化でき、腹膜透析治療方針に齟齬が発生しないという効果がある。掛かりつけ医の成長の一助となる。また、患者と情報の共有化ができ、高い満足度と信頼関係が構築できるという効果がある。
【0030】
再度図8に戻って、中央管理サーバ200の患者個人別臨床データファイル201に記憶されている、患者のPD(腹膜透析)処方、至適透析の指標、栄養の指標、アドバイスを表示部17,27に時系列に一覧表示する例である。列の左側ほど新しいデータとなっている。列1000gのデータは上述したものである。
【0031】
1201列の腹膜透析方法(PD処方)の「7PD」は、毎日腹膜透析を行なうことを意味し、透析液の「1.5%2.5L×4」は、ブドウ糖濃度1.5%、2500mLの腹膜透析液を4バッグを使用することを意味している。また、至適透析の指標の「PD」の行で、総Kt/Vが1.95、評価○となっている。また、尿量は1825mLであり、これらのデータからは、毎日腹膜透析を行い、ブドウ糖濃度1.5%、2500mLの腹膜透析液を4バッグを使用することで何ら問題ないことを示している。
【0032】
1202列の透析方法(PD処方)は、1201列と同じであるが、至適透析の指標の「PD」の行で、総Kt/Vが1.64、評価▲(不良)、排液の除水量が342mLとなっている。また、
【0033】
1203列の透析方法(PD処方)は、毎日腹膜透析を行なうことを意味(「7PD」)し、透析液の「1.5%2.5L×2,2.5%2.5L×2」は、ブドウ糖濃度1.5%、2500mLの腹膜透析液を2バッグ、ブドウ糖濃度2.5%、2500mLの腹膜透析液を2バッグを使用することを意味している。これは、前回(1202列)よりも腹膜透析機能を改善するために、使用する腹膜透析液の半分の量である5000mLのブドウ糖濃度を1.5%から2.5%にupしたことを意味する。また、至適透析の指標の尿量の行で前回(1202列)の1400mLから90mLに激減し、「PD」の行で、総Kt/Vが1.33、評価▲(不良)、排液の除水量が前回(1202列)の342mLから2022mLとなっている。これらの結果を踏まえて、アドバイス欄に、「・・・PDのみでは透析不足になる可能性大。」と、入力部で入力され、記憶され、表示部17,27,37で表示されている。
【0034】
1204列の腹膜透析方法(PD処方)は、毎日腹膜透析を行なうことを意味(「7PD」)し、透析液の「2.5%2.5L×4」は、ブドウ糖濃度2.5%、2500mLの腹膜透析液を4バッグ、を使用することを意味している。至適透析の指標の尿量の行で前回(1202列)の90mLから70mLに僅かに減り、「PD」の行で、総Kt/Vが1.35、評価▲(不良)となっている。また、至適透析の指標のPETの行で、Cr D/Pが0.62、PETカテゴリーの行で、4段階のカテゴリーのうちのLA(low average)と表示されており、腹膜透析が可能な腹膜機能であることを示している。アドバイス欄に、「・・・透析不足が原因と考えられた。」と入力・記憶され、表示されている。なお、Cr D/PのPETカテゴリーは、0.34〜0.5をlow(L)、0.5〜0.65をlow average(LA)、0.65〜0.81をhigh average(HA)、0.81〜1.03をhigh (H)として、4段階のカテゴリーに分けている。
【0035】
1205列の腹膜透析方法(PD処方)は、前回(1204列)の結果を踏まえて、透析方法を変更していることが表示されている。即ち、透析方法が、「6PD+1HD」(1週間のうち6日が腹膜透析のみで1日は血液透析のみ)に変更され、透析液を「1.5%2.5L×3,2.5%2.5L×1」と変更し、ブドウ糖濃度1.5%の腹膜透析液の量を増やすことで、腹膜機能のダメージを低減している。これは、1202列,1203列,1204列の総Kt/Vが1.7より小さく、評価がいずれも3回連続して▲(不良)となっているためである。こうして、総Kt/Vと評価が時系列に一瞥して確認できるため、きわめて容易に処方の変更ができる。また、患者にこの表を提示またはプリントアウトすることで、インフォームドコンセプトが容易に得られる。1205列では、至適透析の指標のPETの行で、Cr D/Pが0.55、PETカテゴリーの行で、LAと表示されており、腹膜透析が可能な腹膜機能であることを示している。総Kt/Vは2.21、評価は◎(良好)と自動的に表示されている。これは、血液透析と腹膜透析を併用した透析処方(PD処方)が極めて良好であることを示している。なお、PDCの結果を合わせて表示部に時系列に表示させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の腹膜透析支援システムの全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の腹膜透析支援システムの各端末のブロック図である。
【図3】本発明の腹膜透析支援システムにおける端末での入力画面を示す図である。
【図4】本発明の腹膜透析支援システムにおける端末での入力画面を示す図である。
【図5】本発明の腹膜透析支援システムにおける端末での入力画面を示す図である。
【図6】本発明の腹膜透析支援システムにおける端末での入力画面を示す図である。
【図7】本発明の腹膜透析支援システムにおける端末での入力のフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の腹膜透析支援システムにおける表示画面を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 腹膜透析支援システム、10 掛かりつけ医端末、11 CPU、12 ROM、13RAM、20 基幹病院端末、21 CPU、22 ROM、23 RAM、27 標示部、28 操作部、200 中央管理サーバ、201 患者個人別臨床データファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析治療を遂行するために患者から臨床情報を取得し、該臨床情報を掛かりつけ医の各端末装置で入力して、該臨床情報を自動で評価した後、基幹病院の中央管理サーバへ送信し、該基幹病院の該中央管理サーバで評価した該臨床情報を該基幹病院の該中央管理サーバから該掛かりつけ医の端末装置へフィードバックするようにした、コンピュータにより制御される腹膜透析支援システムであって、
該掛かりつけ医の該各端末装置と該基幹病院の該中央管理サーバとは通信回線を介して接続可能であり、
該掛かりつけ医の端末装置は、制御部の制御により、制御プログラムにより、入力部で入力された該患者の臨床情報に基づいて評価・判定部で自動評価し、至適透析指標を記号化し、数値と併せて表示部で一覧表示するようにし、更に自動評価データを前記中央管理サーバに送信し、該基幹病院のコンピュータの端末装置においても至適透析指標を記号化し、数値と併せて該表示部に一覧表示するようにしたことを特徴とする腹膜透析支援システム。
【請求項2】
前記至適透析指標は、Kt/Vの値を閾値と比較して、該Kt/Vの値と併せて4段階に記号化して該表示部に表示し、透析条件の変更を示唆することを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析支援システム。
【請求項3】
前記至適透析指標は、電話回線,専用回線,インターネット等の情報通信ネットワークを介して、前記中央管理サーバにアクセスすることで、前記患者の端末、該掛かりつけ医の該各端末装置、該基幹病院の端末装置のいずれでもリアルタイムに該表示部に表示可能としたことを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析支援システム。
【請求項4】
電話回線,専用回線,インターネット等の情報通信回線を介して前記患者の端末、該掛かりつけ医の該各端末装置との間で双方向の音声及び/またはリアムタイムの実画像による通話を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析支援システム。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の腹膜透析支援システムに使用する基幹病院の端末装置であって、前記患者の臨床情報として、生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA、V、前記至適透析指標の指標、尿,血液,排液の情報、栄養の指標、アドバイス情報を操作部にて入力可能としたことを特徴とする基幹病院の端末装置。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の腹膜透析支援システムにおける表示制御方法であって、該制御部の制御により、該表示部に表示された1つの画面に、患者の生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA(体表面積)、V(体積)、至適透析指標である尿量,排液量,残腎Kt/V,PD Kt/V(腹膜透析によるKt/V),PET試験に基づくCr D/P(血清中のクレアチニン濃度Pと腹膜透析排液中のクレアチニン濃度Dとの比)、アドバイス情報を時系列で該表示部に一覧表示することを特徴とする腹膜透析支援システムにおける表示制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の腹膜透析支援システムにおける表示制御方法であって、表示部に表示された1つの画面に、患者の臨床情報として、生年月日、腹膜透析導入年月日、氏名、性別、腹膜透析処方、身長、体重、年齢、BSA、V、前記至適透析指標の指標、尿,血液,排液の情報、栄養の指標を夫々対応させて、該表示部に時系列で一覧表示することを特徴とする腹膜透析支援システムにおける表示制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−110337(P2010−110337A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282661(P2008−282661)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】