説明

腹膜透析機器管理システム及び腹膜透析機器管理方法

【課題】腹膜透析機器に透析液容器を接続等するときに患者が直面している具体的な状況に応じたきめ細かい対応をする腹膜透析機器管理システム等を提供すること。
【解決手段】腹膜透析機器10と、腹膜透析機器と通信可能に接続されている腹膜透析機器管理装置50と、を有し、腹膜透析機器に用いられる透析用セットのセット時刻に関するセット時刻情報56aを有し、セット時刻に透析液容器が、腹膜透析機器にセットされたか否かを判断する接続判断部59を有し、セットされていないと判断されたときに、警報情報を、当該腹膜透析機器の出力装置14又は当該腹膜透析機器の出力装置及び当該腹膜透析機器と関連する端末90の出力装置93に出力する構成となっている腹膜透析機器管理システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、腎臓病等に用いる腹膜透析機器を管理する腹膜透析機器管理システム及び腹膜透析機器管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腎臓病患者等が自宅で透析を行う際に用いる方法として、腹膜透析方法がある。また、この腹膜透析方法には、患者等が自己で透析液を交換するCAPD(continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:連続携行式腹膜透析)と、装置が自動的に透析液を交換するAPD(Automated Peritoneal Dialysis:自動腹膜透析)がある。
腹膜透析方法(PD)は、治療が週に3回程度、1回で4時間程度の間欠的な血液透析方法(HD)に比べ、毎日透析が実施されるため、高齢者の患者に優しく適した透析療法である。しかしながら、これまでPD療法は「在宅治療」として位置づけられていたため、液交換の現場は「自宅」、液交換の操作は「患者又は患者家族」に限定され、さらに厳格な「自己管理」が必要であることが、高齢者のPD療法普及の妨げになっている。
【0003】
CAPDの場合は、例えば、患者等が自己の身体に装着している腹膜カテーテルに新しく腹腔内に注入する透析液を収容した透析液バッグと、既に腹腔内に収容されている透析液を排出する際に使用する空のバッグを接続し、腹腔内の透析液の入れ換えを行う方法である。
一方、APDの場合は、自動腹膜透析装置に、新しい透析液が収容されている透析液バッグと回路等を装着することで、この装置が自動的に腹腔内の透析液の入れ換えを行う方法である。
しかし、腎臓病等の患者等は、高齢者等、特に独居高齢者等が多く、このような高齢者等の場合、自宅または透析操作を行う場所でCAPDやAPDで透析をする際、透析液バッグ等を交換することが困難となる場合がある。このため、特許文献1に示すように、その操作方法を表示する自動腹膜透析装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―49497公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような装置の表示を参照しても、高齢者等の患者等にとって、透析液バッグ等の透析液容器の交換が困難な場合がある。また、高齢者等によっては、交換の時刻等を正確に把握できないという問題もあった。さらに、患者が独居の場合は、透析液容器の交換の失敗は、そのまま透析療法の不具合等につながりかねないという問題もあった。また、高齢者等は、自宅や自宅以外で介護等を受ける人が多く、透析操作を実施する者、監視する者が透析操作を熟知していない場合等は、不具合等を回避できないという問題もあった。
【0006】
そこで、腹膜透析機器に透析液容器を接続等するときに、透析操作を実施する者(患者自身や家族等)や監視する者(ヘルパー等)が透析操作を熟知していない場合でも不具合等を回避でき、高齢者等の患者等が直面している具体的な状況に応じたきめ細かい対応をすることができる腹膜透析機器管理システム及び腹膜透析機器管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、本発明にあっては、腹膜透析を行うときに使用する腹膜透析機器と、前記腹膜透析機器と通信可能に接続されている腹膜透析機器管理装置と、を有する腹膜透析機器管理システムであって、前記腹膜透析機器に用いられる透析用セットの前記腹膜透析機器へのセット時刻に関するセット時刻情報を有し、前記セット時刻に前記透析液容器が、前記腹膜透析機器にセットされたか否かを判断する接続判断部を有し、前記接続判断部で、前記腹膜透析機器へセットされていないと判断されたときに、警報情報を、当該前記腹膜透析機器の出力装置又は当該前記腹膜透析機器の出力装置及び当該前記腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成となっていることを特徴とする腹膜透析機器管理システムにより達成される。
なお、前記セット後において、操作上の不具合があると判断されたときに、警報情報を、当該前記腹膜透析機器の出力装置又は当該前記腹膜透析機器の出力装置及び当該前記腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成としても良い。
【0008】
前記構成によれば、セット時刻に透析液容器が、腹膜透析機器にセットされたか否かを判断する接続判断部で、透析用セットの前記腹膜透析機器へのセットがされていないと判断されたときに、警報情報が、当該腹膜透析機器の出力装置に出力される構成となっている。
このため、例えば、独居老人等の患者で、自己では透析時刻を管理できない場合でも、「警報情報」が自己の腹膜透析機器の出力装置に出力されるので、患者は、透析時刻が到来したことを認識することができる。また、セット後において、操作上の不具合があると判断されたときに、警報情報を、当該腹膜透析機器の出力装置又は当該腹膜透析機器の出力装置及び当該腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成とする場合は、セット後においても操作上の不具合を感知して「警報情報」が出力されるので、操作上の不具合があることを認識することができる。
【0009】
また、前記構成では、警報情報を当該腹膜透析機器の出力装置及び当該腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成ともなっている。
このため、「警報情報」を認識したにもかかわらず、独居高齢者等の患者が、腹膜透析機器に透析用セットができなかった場合でも、速やかに、「警報情報」を当該腹膜透析機器と関連する端末である例えば、家族端末や担当医師端末等の出力装置である例えば、ディスプレイに出力させることができる。このため、当該患者の介護者、ヘルパー等が速やかに事後の対応をすることができる。
このように、前記構成では、腹膜透析機器に透析液容器を操作等するに当たり、高齢者等の患者等が直面している具体的な状況に応じたきめ細かい対応をすることができる構成となっている。
【0010】
好ましくは、当該前記セット時刻において使用すべき前記透析液容器に関する透析液容器関連情報を有し、前記判断部で透析用セットが前記腹膜透析機器にセットされたと判断したときに、前記腹膜透析機器にセットされた透析用セットの前記透析液容器に関する透析容器識別情報を取得し、前記透析液容器関連情報に基づいて、前記透析容器識別情報の適否を判断する透析情報判断部を有する構成となっていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、腹膜透析機器にセットされた透析用セットに連通する透析液容器に関する透析容器識別情報を取得し、透析液容器関連情報に基づいて、透析容器識別情報の適否を判断する透析情報判断部を有する構成となっている。
このため、患者が腹膜透析機器にセットした透析液容器が、当該セット時刻において使用すべき正しい透析液容器であるか否かを判断することができる。
【0012】
好ましくは、当該前記セット時刻において使用すべき前記腹膜透析機器の選択情報を有し、前記選択情報に基づいて、前記腹膜透析機器の適否も判断する構成となっていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、当該セット時刻において使用すべき腹膜透析機器の選択情報を有し、選択情報に基づいて、腹膜透析機器の適否も判断する構成となっている。このため、患者が透析用セットに連通する透析液容器がセットされた腹膜透析機器が、当該セット時刻において使用すべき正しい腹膜透析機器であるか否かを判断することができる。
【0014】
好ましくは、前記腹膜透析機器に対する操作エラー情報を取得する構成となっていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記腹膜透析機器には、患者等が自己の動作によって、腹腔内の透析液を交換するときに使用する自己交換腹膜透析機器と、腹腔内の透析液を自動的に交換することができる自動腹膜透析機器が含まれることを特徴とする。
【0016】
上記目的は、本発明にあっては、腹膜透析を行うときに使用する腹膜透析機器の腹膜透析機器管理方法であって、前記腹膜透析機器に用いられる透析用セットの前記腹膜透析機器へのセット時刻に関するセット時刻情報を有し、制御部が、前記セット時刻に前記透析液容器が、前記腹膜透析機器にセットされたか否かを判断し、前記腹膜透析機器へセットされていないと判断されたときに、警報情報を、当該前記腹膜透析機器の出力装置又は当該前記腹膜透析機器の出力装置及び当該前記腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成となっていることを特徴とする腹膜透析機器管理方法により達成される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、腹膜透析機器を接続等するときに、高齢者等の患者等が直面している具体的な状況に応じて、腹膜透析機器を操作する患者自身や患者以外で腹膜透析機器の操作が熟知できていない透析操作実施者(家族,ヘルパー等の介護者等)に対してきめ細かい対応をすることができる腹膜透析機器管理システム及び腹膜透析機器管理方法を提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】腹膜透析機器管理システムを示す概略図である。
【図2】図1の透析液バッグ端末の主な構成等を示す概略ブロック図である。
【図3】図1のCAPD機器及びAPD機器の主な構成等を示す概略ブロック図である。
【図4】図1の管理サーバの主な構成等を示す概略ブロック図である。
【図5】患者家族サイト端末及び医療サイト端末の主な構成等を示す概略ブロック図である。
【図6】患者の透析プラン等を事前に管理サーバに登録する工程を示す概略フローチャートである。
【図7】腹膜透析監視工程を示す概略フローチャートである。
【図8】腹膜透析監視工程を示す他の概略フローチャートである。
【図9】個人データ記憶部に記憶される患者の個人データを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1は、腹膜透析機器管理システム1を示す概略図である。図1に示すように、腹膜透析機器管理システム1は、腎臓病等で透析をする、例えば、独居高齢者等が患者サイト(例えば自宅)で使用する腹膜透析機器を有している。
ところで、腹膜透析には、患者が自分で腹腔内の透析液を交換するCAPD(continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:連続携行式腹膜透析)と、装置が自動的に透析液を交換するAPD(Automated Peritoneal Dialysis:自動腹膜透析)がある。
CAPDでは、患者の腹膜と連結され、患者側に配置された腹膜カテーテルに対して、例えば、2つのバッグを接続する「ツインバッグシステム」(自己交換腹膜透析機器の一例)がある。
【0021】
この「ツインバッグシステム」は、透析液の入った透析液容器である例えば、透析液バッグと、排液用の空バッグを一体化したものである。そして、透析液バッグを患者の腹腔より高い位置に置き、排液用バッグを低い位置に置くことで、既に腹腔内にある古い透析液を排液用バッグに出しながら新しい透析液を腹腔内に注液することができる構成となっている。
本実施の形態では、この「ツインバッグシステム」で用いられるツインバッグ腹膜透析機器(自己交換腹膜透析機器の一例であり、以下「CAPD機器」と称す。)を用いて、患者が患者サイト(主として患者の自宅)で腹膜透析を行うことを例に説明する。
【0022】
一方、APDに用いられる機器として、自動腹膜透析機器があり、本実施の形態では、自動腹膜透析装置30(以下「APD機器」と称す。)を用いて、患者が患者サイト(主として自宅)で腹膜透析を行うことを例に説明する。
また、本実施の形態の腹膜透析機器管理システム1では、これら患者サイトに配置されているCAPD機器10及びAPD機器30と中継局4を介してインターネット網5で通信可能な腹膜透析機器管理装置である例えば、管理サーバ50を有している。
したがって、本実施の形態では、管理サーバ50は、CAPD機器10及びAPD機器30を監視可能な構成となっている。
【0023】
また、腹膜透析機器管理システム1には、患者が、自己の腹腔内に収容されている透析液を交換するために、CAPD機器10やAPD機器30、透析液バッグ(透析液容器)2、それに連通し透析液(または透析液の排液)が通るチューブ、ポンピングを含む透析用セットが用いられる。ポンピング部は、加温部と一体になって形成され、CAPD機器10に着脱可能になったカセット(不図示)に設けられることもある。CAPD機器10を用いる場合には、通常、このカセットを所定の手順でCAPD機器10にセットして使用する。
そして、透析液バッグ2には、透析液バッグ2の透析液データ等の情報を管理すると共に、CAPD機器10やAPD機器30と通信等をすることができる透析液バッグ端末70が配置されている(図1参照)。
【0024】
また、図1に示すように、管理サーバ50は、インターネット網5を介して、患者と同居していない患者家族サイトの端末である患者家族サイト端末90や患者の担当医師、担当医療従事者がいる医療サイト(例えば病院,診療所,医院等)の医療サイト端末100(当該腹膜透析機器と関連する端末の一例)と通信可能となっている。
このため、管理サーバ50は、患者の家族や担当医師(担当医療従事者も含む)に連絡等を行うことができる構成となっている。
【0025】
図1に示すCAPD機器10、APD機器30、管理サーバ50、透析液バッグ端末70、患者家族サイト端末90及び医療サイト端末100は、コンピュータ等を有している。このため、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有し、このCPUは各動作フローでの処理・判断を行ない、これらは、例えば、バスを介して接続されている。
【0026】
図2は、図1の透析液バッグ端末70の主な構成等を示す概略ブロック図である。
図2に示すように、透析液バッグ端末70は、透析液バッグ端末制御部71を有し、通信チップ72や透析液内容データ記憶部73等を制御している。
この通信チップ71は、無線通信チップであり、後述するCAPD機器10(APD30)のCAPD機器側読取装置11(APD機器側読取装置31)が近づくと、これらCAPD読取装置11(APD読取装置31)の電波で、電子回路が駆動し、これらCAPD読取装置11(APD読取装置31)と通信が可能となる構成となっている。
また、透析液内容データ記憶部73には、当該透析液バッグ2内に収容されている透析液の種類及び内容のデータが記憶されている。
【0027】
図3は、図1のCAPD機器10及びAPD機器30の主な構成等を示す概略ブロック図である。図3に示すCAPD機器10及びAPD機器30の主な構成は共通するため、他方を括弧内で示す。
図3では、CAPD機器10(APD30)は、CAPD機器制御部12(APD機器制御部32)を有すると共に、上述したCAPD機器側読取装置11(APD機器側読取装置31)、図1の管理サーバ50等と通信するためのCAPD機器側通信装置13(APD機器側通信装置33)、CAPD機器側アラーム装置14(APD機器側アラーム装置34)及びCAPD機器側計時装置15(APD機器側計時装置35)を有する。
そして、CAPD機器制御部12(APD機器制御部32)が、これらCAPD(APD)機器側読取装置11(APD機器側読取装置31)等を制御する構成となっている。
また、CAPD機器制御部12(APD機器制御部32)は、図3に示す他の記憶部や処理部等も制御するが、これらについては後述する。
【0028】
図4は、図1の管理サーバ50の主な構成等を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、管理サーバ50は、管理サーバ側制御部51を有すると共に、CAPD機器10及びAPD機器30等と通信するための管理サーバ側通信装置52、各種データを表示する管理サーバ側表示装置53、管理サーバ側計時装置54及び管理サーバ側入力装置55を有している。
そして、管理サーバ側制御部51が、これら管理サーバ側通信装置52等を制御する構成となっている。
また、管理サーバ側制御部51は、図4に示す他の記憶部や処理部等も制御する構成となっているが、これらについては後述する。
【0029】
図5は、患者家族サイト端末90及び医療サイト端末100の主な構成等を示す概略ブロック図である。
図5に示す患者家族サイト端末90と医療サイト端末100の主な構成は共通するため、他方を括弧内で示す。
図5に示すように、患者家族サイト端末90(医療サイト端末100)は、患者家族サイト端末側制御部91(医療サイト端末側制御部101)を有すると共に、図1の管理サーバ50等と通信するための患者家族サイト端末側通信装置92(医療サイト端末側通信装置102)及び各種データを表示する患者家族サイト端末側表示装置93(医療サイト端末側表示装置103)等を有している。
そして、患者家族サイト端末側制御部91(医療サイト端末側制御部101)が、患者家族サイト端末側通信装置92(医療サイト端末側通信装置102)及び患者家族サイト端末側表示装置93(医療サイト端末側表示装置103)等を制御する構成となっている。
【0030】
図6乃至図8は、本実施の形態にかかる腹膜透析機器管理システム1の主な動作等を示す概略フローチャートである。
以下、図6等にフローチャートに沿って、腹膜透析機器管理システム1の動作等を説明すると共に、図1乃至図5等の構成等も併せて説明する。
【0031】
本実施の形態では、病院の担当医師の処方どおりに腹膜透析を患者サイトで行う、独居高齢者である患者を例に説明する。この患者は、家族と同居していないため、腹膜透析を自分一人で行っている。また、家族は同居していないが、図1に示すように、管理サーバ50を介して患者家族サイト端末90と通信可能であり、担当医師も医療サイト端末100で管理サーバ50と通信可能となっている。
【0032】
先ず、図6の事前登録工程が実行される。
図6は、患者の透析プラン(治療パターン、初期排液量、注液量、貯留時間、最終注液量、最終濃度変更、透析時間、総透析液量、総除水量、サイクル数、初期注液量、タイダール量、タイダール除水量)等を事前に管理サーバに登録する工程を示す概略フローチャートである。
図6のステップST(以下「ST」と称す。)1に示すように、上述の独居高齢者である患者は、所定のデータを図1の管理サーバ50に登録する。
具体的には、図4の個人データ記憶部56に記憶される。図9は、個人データ記憶部56に記憶される上述の患者の個人データ56aを示す概略説明図である。
【0033】
図9に示すように、患者は、当該患者の識別番号、自宅で使用する透析機器識別番号を登録する。透析機器識別番号は、例えば、患者が図1のCAPD機器10とAPD機器30を使用する場合は、それぞれの識別番号が登録される。これらの識別番号は、管理サーバ50が、CAPD機器10やAPD機器30との間で通信をする際の識別データとなる。
【0034】
また、個人データ記憶部56には、図9に示すように、図1の患者家族サイト端末90の連絡先データである例えば、連絡先Eメール番号や、図1の担当医師の医療サイト端末100の連絡先である例えば、担当医Eメール番号が登録される。
【0035】
次いで、ST2で、追加のデータが図1の医療サイト端末100から登録される。
具体的には、上述の患者の透析の処方である例えば、透析液容器関連情報である例えば、透析プラン(透析機器(腹膜透析機器の選択情報の一例)及び透析開始時刻(セット時刻情報の一例))が登録される。例えば、図9の例では、午前0時及び午前6時に、APD機器30で腹膜透析をし、その後、午後12時及び午後6時にCAPD機器10で腹膜透析を行うこととしている。透析プラン(治療パターン、初期排液量、注液量、貯留時間、最終注液量、最終濃度変更、透析時間、総透析液量、総除水量、サイクル数、初期注液量、タイダール量、タイダール除水量)は、当該患者の腹膜透析を行うために得られたデータ、たとえば、至適透析指標である尿量,排液量,残腎Kt/V,PD Kt/V(腹膜透析によるKt/V),PET試験に基づくCr D/P(血清中のクレアチニン濃度Pと腹膜透析排液中のクレアチニン濃度Dとの比)に基づき、変更が可能であり、変更の可能/不可能は担当医師があらかじめプログラムすることができる。
これは、患者が寝ているときは、自動腹膜透析装置であるAPD機器30で、自動的に腹膜透析を行うと共に、患者が起きているときは、ツインバッグ腹膜透析機器であるCAPD10で腹膜透析を行うものである。
【0036】
また、個人データ記憶部56には、透析プランで使用される透析機器で使用される、すなわち、当該透析機器(CAPD機器10やAPD機器30)にセット(接続等)すべき透析液バッグ2の種類データ及び容量データが登録される。
また、透析液に関しては、その在庫管理のため、患者が現在自宅で保持している透析液バッグ2の数も登録される。
なお、この透析液バッグ2の在庫については、患者、医師又は家族等が登録することできる構成となっている。
【0037】
以上で、事前登録工程が終了する。次いで、図7及び図8の腹膜透析監視工程が開始される。図7及び図8は、腹膜透析監視工程を示す概略フローチャートである。
【0038】
先ず、ST11で、図4の管理サーバ10の管理サーバ側計時装置54が現在時刻データを取得して、図4の現在時刻データ記憶部57に記憶する。
次いで、ST12へ進む。ST12では、図4の透析プラン検索処理部(プログラム)58が動作し、図4の個人データ記憶部56内の図9の個人データ56aの「透析プラン」の「開始時刻」を参照し、該当する時刻データがあるか否かを判断する。
【0039】
次いで、ST12で、該当する時刻データが存在した場合は、ST13へ進む。ST13では、図9の該当する透析プランの開始時刻に対応する透析プランの透析機器の透析機器識別番号、例えば、1234−1(CAPD機器10)に対して、問い合わせ信号を送信する。
具体的には、図4の管理サーバ側通信装置52を介して、図1のCAPD機器10へ送信される。
【0040】
次いで、ST14へ進む。ST14では、問い合わせ信号を受信したCAPD機器10の図3のCAPD機器側読取装置11が動作する。
すなわち、当該時刻は,上述の患者にとって、透析液バッグ2を交換する時刻であり、患者が気づいていれば、図1の透析液バッグ2を含む透析用セットをCAPD機器10にセットさせる予定となっている。
したがって、CAPD機器10は、CAPD機器側読取装置11を起動させることで、透析液バッグ2の透析液バッグ端末70の通信チップ72を介して、図2の透析容器識別情報である例えば、透析液内容データを取得するように試みることになる。これが、ST15である。なお、透析液バッグ端末70は、透析用セットの任意の適所に設けられている。
【0041】
ST15では、図3のCAPD機器側通信状態判断処理部(プログラム)16が動作し、CAPD機器側読取装置11が、透析液バッグ端末70の通信チップ72との通信が成功し、透析液の種類及び容量データを取得したか否かが判断される。
すなわち、通信ができれば、透析液バッグ2を含む透析用セットがCAPD機器10にセットされたことになり、通信が不可の場合は、透析液バッグ2を含む透析用セットがCAPD機器10にセットされていないと判断することができる。
したがって、CAPD機器側通信状態判断処理部(プログラム)16が接続判断部の一例となっている。
【0042】
ST15で、CAPD機器側読取装置11と透析液バッグ端末70の通信チップ72との通信が成功しない場合は、ST16へ進む。ST16では、所定時間が経過したか否かを判断する。
ST16で,所定時間が経過した場合、すなわち、所定時間経過しても、CAPD機器10に、透析液バッグ2を含む透析用セットがCAPD機器10にセットされない場合は、CAPD機器10は、患者が自分で透析を行えない状態にあると判断し、ST17へ進む。
【0043】
ST17では、CAPD機器10は、図3の出力装置である例えば、CAPD機器側アラーム装置14を動作させ、警報音等を出力し、患者に注意を喚起すると共に、透析液バッグ2を含む透析用セットがCAPD機器10に未セット(透析液交換不可)状態である旨の「警報」データを、管理サーバ50へ送信する。
したがって、患者が一人住まいのため,単に透析時刻を忘れた場合は、この警報音等を聞くことで、透析液バッグ2の交換時刻であることに気が付き、透析液バッグ2を含む透析用セットをCAPD機器10に装着する動作を行うことができる。このため、一人住まい(独居)であっても、透析時刻を忘れずに透析液の交換ができるように促すことができる。
【0044】
次いで、ST18では、図4のアラーム表示実行処理部(プログラム)59が動作し、管理サーバ50が、受信した「警報」データに基づき、図9の個人データ56aの「警報履歴」に警報の事実を登録すると共に、図9の個人データ56aの「連絡先Eメール番号」及び「担当医Eメール番号」を参照し、これらのEメールアドレスへ「警報データ」を送信する。
【0045】
次いで、ST19では、患者家族サイト端末90及び医療サイト端末100が、それぞれ患者家族サイト端末側通信装置92及び医療サイト端末側通信装置102を用いて、「警報データ」を受信し、出力装置である例えば、患者家族サイト端末側表示装置93及び医療サイト端末側表示装置103に表示する。
これにより、上述の独居高齢者等の患者の家族や担当医師は、患者が透析液の交換ができない状態にあることを迅速に知ることができ、直ちに適切な対応をすることができる。
このように、本実施の形態では、CAPD機器10等に透析液バッグ2を含む透析用セット2をCAPD機器10にセット等するに当たり、老人等の患者等が直面している具体的な状況に応じたきめ細かい対応を、患者家族も含めて、行なうことができる構成となっている。
【0046】
一方、ST15で、CAPD機器側読取装置11と透析液バッグ端末70の通信チップ72との通信が成功した場合は、ST20へ進む。
ST20では、CAPD機器10は、透析液バッグ端末70から受信した、当該透析液の種類及び容量データを図3に示すCAPD機器側読取データ記憶部17に記憶する。
次いで、ST21へ進む。ST21では、図3のCAPD機器側通信装置13が、CAPD機器側読取データ記憶部17内の当該透析液の種類及び容量データを管理サーバ50へ送信する。
【0047】
次いで、ST22で、管理サーバ50は,図4の透析液バッグ等判断処理部(プログラム)60が動作し、図9の個人データ56aの「透析液」の「種類」及び「容量」を参照し、受信した「当該透析液の種類及び容量データ」と比較し、「当該透析液の種類及び容量データ」が正しいか否か(個人データ56aと一致するか否か)を判断する。
したがって、透析液バッグ等判断処理部(プログラム)60は、透析情報判断部の一例となっている。
【0048】
ST22で、「当該透析液の種類及び容量データ」が、個人データ56aと相違する、すなわち、正しくないと判断された場合は、ST23へ進む。ST23では、管理サーバ50が、当該CAPD機器10へ「警報」を送信し、当該CAPD機器側アラーム装置14が「警報」を出力する。
このため、本実施の形態では、患者は自己が透析液バッグ2を含む透析用セットが、自己の透析液プランと合致していない場合は、その事実を直ちに知ることができる。
【0049】
一方、ST22で、「当該透析液の種類及び容量データ」が、個人データ56aと合致する、すなわち、正しい判断された場合は、ST24へ進む。
ST24では、図4の操作開始時刻処理部(プログラム)61が動作し、図9の個人データ56aの操作開始時刻に現在時刻を登録する。
【0050】
次いで、ST24−1で患者の操作に不具合があるか否かが透析操作不具合内容処理部(プログラム)63が動作して判断され、不具合がない場合には、ST25へ進む。患者の操作に不具合がある場合には、不具合回数演算処理部(プログラム)64が動作して演算・記憶され、ST29で「警報」を出力する。
患者の操作に不具合がない場合には、CAPD機器10の動作を続けさせ、ST25では、透析液の交換が終了したか否かが判断される。具体的には、CAPD機器10等に配置された流量センサ等で、透析液バッグ2からの透析液の流れを検知しなくなったか否かで判断する。
【0051】
ST25で、CAPD機器10から透析液の交換が終了したと判断された場合、その旨の信号が管理サーバ50へ送信される。
そして、管理サーバ50は、当該信号の受信時刻を図9の「透析終了時刻」として登録し、併せて、図4の透析操作時間演算処理部(プログラム)62が動作して、透析操作時間を演算し、図9の個人データ56aに「透析操作時間」として登録する。
これにより、管理サーバは、患者の透析液交換時間のデータを得ることができるので、その後の監視体制や製品開発等のデータとして活用することができる。
【0052】
次いで、ST27へ進む。ST27では、図3のCAPD機器側操作エラー判断処理部(プログラム)18が動作し、CAPD機器10における透析液バッグ2交換操作に操作エラーがあったか否かが判断される。
ST28で、操作エラーがあった場合は、そのデータは管理サーバ50へ送信され、図9の個人データ56aに「操作エラー」として登録される。
【0053】
このため,管理サーバ50は、患者が操作エラーし易いデータ等を得ることができ、その後の監視体制や製品開発の資料とすることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、CAPD機器10を例として説明したが、これに限らず、同様にAPD機器30で動作させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・腹膜透析機器管理システム、2・・・透析液バッグ、4・・・中継局、5・・・インターネット網、10・・・CAPD機器、11・・・CAPD機器側読取装置、12・・・CAPD機器制御部、13・・・CAPD機器側通信装置、14・・・CAPD機器側アラーム装置、15・・・CAPD機器側計時装置、16・・・CAPD機器側通信状態判断処理部(プログラム)、17・・・CAPD機器側読取データ記憶部、18・・・CAPD機器側操作エラー判断処理部(プログラム)、30・・・APD機器、31・・・APD機器側読取装置、32・・・APD機器制御部、33・・・APD機器側通信装置、34・・・APD機器側アラーム装置、35・・・APD機器側計時装置、50・・・管理サーバ、51・・・管理サーバ側制御部、52・・・管理サーバ側通信装置、53・・・管理サーバ側表示装置、54・・・管理サーバ側計時装置、55・・・管理サーバ側入力装置、56・・・個人データ記憶部、56a・・・個人データ、57・・・現在時刻データ記憶部、58・・・透析プラン検索処理部(プログラム)、59・・・アラーム表示実行処理部(プログラム)、60・・・透析液バッグ等判断処理部(プログラム)、61・・・操作開始時刻処理部(プログラム)、62・・・透析操作時間演算処理部(プログラム)、70・・・透析液バッグ端末、71・・・透析液バッグ端末制御部、72・・・通信チップ、73・・・透析液内容データ記憶部、90・・・患者家族サイト端末、91・・・患者家族サイト端末制御部、92・・・患者家族サイト端末側通信装置、93・・・患者家族サイト端末側表示装置、100・・・医療サイト端末、101・・・医療サイト端末制御部、102・・・医療サイト端末側通信装置、103・・・医療サイト端末側表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析を行うときに使用する腹膜透析機器と、
前記腹膜透析機器と通信可能に接続されている腹膜透析機器管理装置と、を有する腹膜透析機器管理システムであって、
前記腹膜透析機器に用いられる透析用セットの前記腹膜透析機器へのセット時刻に関するセット時刻情報を有し、
前記セット時刻に前記透析液容器が、前記腹膜透析機器にセットされたか否かを判断する判断部を有し、前記判断部で、前記腹膜透析機器へセットされていないと判断されたときに、警報情報を、当該前記腹膜透析機器の出力装置又は当該前記腹膜透析機器の出力装置及び当該前記腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成となっていることを特徴とする腹膜透析機器管理システム。
【請求項2】
当該前記セット時刻において使用すべき前記透析液容器に関する透析液容器関連情報を有し、前記判断部で前記透析用セットが前記腹膜透析機器にセットされたと判断したときに、前記腹膜透析機器にセットされた透析用セットの前記透析液容器に関する透析容器識別情報を取得し、
前記透析液容器関連情報に基づいて、前記透析容器識別情報の適否を判断する透析情報判断部を有する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の腹膜透析機器管理システム。
【請求項3】
当該前記セット時刻において使用すべき前記腹膜透析機器の選択情報を有し、前記選択情報に基づいて、前記腹膜透析機器の適否も判断する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腹膜透析機器管理システム。
【請求項4】
前記腹膜透析機器に対する操作エラー情報を取得する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の腹膜透析機器管理システム。
【請求項5】
前記腹膜透析機器には、患者等が自己の動作によって、腹腔内の透析液を交換するときに使用する自己交換腹膜透析機器と、腹腔内の透析液を自動的に交換することができる自動腹膜透析機器が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の腹膜透析機器管理システム。
【請求項6】
腹膜透析を行うときに使用する腹膜透析機器の腹膜透析機器管理方法であって、
前記腹膜透析機器に用いられる透析用セットの前記腹膜透析機器へのセット時刻に関するセット時刻情報を有し、
制御部が、前記セット時刻に前記透析用セットが、前記腹膜透析機器にセットされたか否かを判断し、前記腹膜透析機器へセットされていないと判断されたときに、警報情報を、当該前記腹膜透析機器の出力装置又は当該前記腹膜透析機器の出力装置及び当該前記腹膜透析機器と関連する端末の出力装置に出力する構成となっていることを特徴とする腹膜透析機器管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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