膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法
【課題】ハンドリングが容易な膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体中間体を用いた膜−電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材シート2と、基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケット3と、開口内において基材シート上に形成された導電性多孔質基材4と、を備える、膜−電極接合体中間体。
【解決手段】基材シート2と、基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケット3と、開口内において基材シート上に形成された導電性多孔質基材4と、を備える、膜−電極接合体中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
【0003】
この固体高分子形燃料電池は、一般に、電解質膜の両面に触媒層及び導電性多孔質基材を順に積層し、この触媒層及び導電性多孔質基材から成る電極の周囲を囲むようにガスケットを設け、これらをセパレータで挟んだ構造を有している。本明細書では、電解質膜の両面に電極を形成したものだけでなく、これにガスケットを設けたものも膜−電極接合体と称する。このガスケットを有する膜−電極接合体の製造方法として、例えば、特許文献1には、基材シートの片面に電解質膜及び電極を形成しこれらの周囲にガスケットを配置した基材シート付き膜−電極半接合体を2つ作製し、この基材シート付き膜−電極半接合体から基材シートを剥離した後、2つの膜−電極半接合体の電解質膜側の面同士を対向させて接合するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−216789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような膜−電極接合体の製造方法においては、膜−電極半接合体同士の接合に際し、基材シート付き膜−電極半接合体から基材シートを剥離する必要がある。しかし、従来電解質膜も触媒層もガスケットも薄い膜厚のものが使用されるため、基材シートの剥離から膜−電極半接合体同士の接合までの間、特に電解質膜は強度が弱く、破れる可能性があり、膜−電極半接合体のハンドリングが困難になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ハンドリングが容易な膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る膜−電極接合体中間体は、上記課題を解決するためになされたものであり、基材シートと、前記基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケットと、前記開口内において前記基材シート上に形成された導電性多孔質基材と、を備えている。
【0008】
上記膜−電極接合体中間体は、通常、ガスケットの開口内において導電性多孔質基材上に触媒層を形成して使用する。この触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を用いて膜−電極接合体を製造する場合、触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を2つ準備し、少なくとも一方の膜−電極接合体中間体において触媒層上に電解質膜を配置する。そして、2つの膜−電極接合体中間体の基材シートと反対側の面同士を対向させこれらを互いに接着した後、2つの膜−電極接合体中間体の導電性多孔質基材及びガスケットから基材シートを剥離することで、膜−電極接合体を製造する。このように、本発明の膜−電極接合体中間体は、もう一方の膜−電極接合体中間体に接着する間も基材シートによって支持されており、膜−電極接合体の完成直前で基材シートが剥離されるため、膜−電極接合体の全製造工程を通じてハンドリングが容易である。
【0009】
また、上記膜−電極接合体中間体は、ガスケットの開口内において導電性多孔質基材上に予め触媒層を形成しておくことができる。
【0010】
また、上記膜−電極接合体中間体は、触媒層上に電解質膜を形成することができる。この電解質膜の面積は、特に限定されず、ガスケットの開口面積より大きくても小さくてもよく、開口面積と略同一であってもよいが、ガスリーク防止の観点からは開口面積よりも大きいことが好ましい。また、導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜の厚さの合計は、ガスケットの厚さより大きくても小さくてもよく、また、ガスケットの厚さと略同一であってもよい。
【0011】
また、上記膜−電極接合体中間体は、導電性多孔質基材と触媒層との間に撥水層が形成されていてもよい。この構成によれば、導電性多孔質基材に撥水性を付与することができ、導電性多孔質基材のガス透過性及びガス拡散性を維持することができる。
【0012】
本発明に係る膜−電極接合体の製造方法は、導電性多孔質基材上に触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を2つ準備する工程と、少なくとも一方の前記膜−電極接合体中間体において、触媒層上に電解質膜を形成する工程と、前記2つの膜−電極接合体中間体における基材シートと反対側の面同士を対向させた状態で前記2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する工程と、前記接着された2つの膜−電極接合体中間体から前記基材シートを剥離する工程と、を備えている。
【0013】
上記膜−電極接合体の製造方法によれば、2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する間も膜−電極接合体中間体を基材シートによって支持し続けることができるため、膜−電極接合体中間体のハンドリングが容易である。
【0014】
また、上記製造方法においては、膜−電極接合体中間体の導電性多孔質基材は塗布により形成することができる。この方法によれば、ガスケットと導電性多孔質基材との間に隙間が生じないように導電性多孔質基材を形成することができる。なお、本発明において、「塗布」とは、特に限定されるものではないが、例えば、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ダイコーティング、又はナイフコーティング、インクジェット、ディスペンサー等の種々の方法を意味している。
【0015】
導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜のうちの少なくとも一つを塗布により形成する場合、ガスケット上にマスクを形成した状態で導電性多孔質基材や触媒層、電解質膜を形成することが好ましい。この方法によれば、ガスケットに導電性多孔質基材や触媒層、電解質膜が付着しないようガスケットを保護することができる。また、導電性多孔質基材や、触媒層、電解質膜の厚さは導電性多孔質基材や、触媒層、電解質膜用の材料中の分散媒の揮発によって最終的に塗布厚さよりも小さくなるが、この方法によれば、マスクの厚さ分だけガスケットの厚さを超えて材料を塗布することができるため、例えば、乾燥後の導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜の厚さの合計とガスケットの厚さとを合わせることができ、また、乾燥後の導電性多孔質基材とガスケットの厚さ、乾燥後の導電性多孔質基材及び触媒層の厚さの合計とガスケットの厚さとを合わせることもできる。
【0016】
また、上記製造方法において、膜−電極接合体中間体における導電性多孔質基材と触媒層との間に撥水層を形成してもよい。この方法によれば、導電性多孔質基材に撥水性を付与することができ、導電性多孔質基材のガス透過性及びガス拡散性を維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上述したような製造方法のいずれかにより製造した膜−電極接合体と、前記膜−電極接合体の各導電性多孔質基材及びガスケット上に設置されたセパレータと、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハンドリングが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体中間体の(a)正面断面図、及び(b)平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体中間体の製造方法を示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体の製造方法を示す正面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る固体高分子形燃料電池の正面断面図である。
【図5】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の製造方法を示す正面断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図7】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図8】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図9】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図10】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図11】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図12】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の組み合わせを示す正面断面図である。
【図13】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の組み合わせを示す正面断面図である。
【図14】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の平面図である。
【図15】(本発明の比較例に係る膜−電極接合体の製造方法を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る膜−電極接合体中間体1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、基材シート2と、基材シート2上に形成されたガスケット3と、ガスケット3の開口31内において基材シート2上に順に積層された導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6と、を備えている。この導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6の厚さの合計はガスケット3の厚さと略同一となっている。なお、本明細書では、導電性多孔質基材4と触媒層5とを合わせたものを電極と称する。
【0022】
基材シート2の厚さは、取り扱い性の観点から、通常10〜1000μmであり、好ましくは50〜500μmである。基材シート2の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。中でも、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0023】
ガスケット3の厚さは、通常20〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。ガスケット3の材料としては、熱プレスに耐えうる強度を保ち、且つ燃料及び酸化剤を外部に漏出させない程度のガスバリア性を有しているものがよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートやテフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート等が挙げられる。
【0024】
導電性多孔質基材4の厚さは、通常20〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。導電性多孔質基材4の材料としては、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層に供給するため多孔構造とする必要があり、例えば、導電性炭素繊維、樹脂を含んでいることが好ましい。また、導電性炭素粒子を含んでいてもよい。導電性炭素繊維としては、例えば気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノウォール、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊維径は限定的でなく、平均が50nm〜20μm、好ましくは100nm〜15μm程度とすればよい。繊維長も限定的でなく、平均が1μm〜1mm、好ましくは5〜600μm程度とすればよい。アスペクト比は、およそ10〜500である。なお、導電性炭素繊維の繊維径、繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定した画像等により測定できる。樹脂としては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、イオン伝導性高分子樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン‐アクリル共重合体樹脂、スチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン‐アクリル共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル‐アクリル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、また六フッ化プロピレン‐フッ化ビニリデン共重合体樹脂、三フッ化塩化エチレン‐フッ化ビニリデン共重合体樹脂などのフッ素ゴム、シリコンゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。導電性炭素粒子は、導電性を有する炭素材であれば特に限定されず、公知又は市販のものを使用できる。例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のカーボンブラック;黒鉛;活性炭等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上で用いることができる。これらの導電性炭素粒子を含有するシート状の導電性多孔質層および導電性多孔質基材を作製することによりガス拡散層の導電性を向上させることができる。 カーボンブラックの平均粒子径(算術平均粒子径)は限定的でなく、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20nm〜80nm程度とすればよい。またカーボンブラックの凝集体を使用する場合は、10〜600nm、好ましくは50〜500nm、黒鉛や活性炭を使用する場合は、500nm〜40μm、好ましくは1μm〜35μm程度とすれば良い。この導電性炭素粒子の平均粒子径は、例えば、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定できる。
【0025】
触媒層5の厚さは、通常0.1〜200μmであり、好ましくは0.5〜20μmである。触媒層5は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒及びアノード触媒)とすることができる。具体的には、触媒粒子を担持させた炭素粒子と、イオン伝導性高分子電解質とを含有する。イオン伝導性高分子電解質としては、後述する電解質膜6に使用されるものと同じ材料を使用することができる。触媒粒子としては、燃料電池におけるアノード及びカソード反応を促進する物質であれば、特に限定されない。例えば、白金や白金化合物であり、白金以外の金属としては例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄、銀等が挙げられる。白金化合物としては、上記白金以外の金属から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。炭素粒子は、導電性を有しているものであれば特に限定されず、公知又は市販のものを広く使用できる。例えば、カーボンブラックや、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等を1種又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を挙げることができる。炭素粒子の算術平均粒子径は、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20〜80nm程度であり、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定することができる。
【0026】
電解質膜6の厚さは、通常1〜200μmであり、好ましくは10〜100μmである。電解質膜6は、例えば、イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を触媒層5上に塗布し、乾燥することにより形成される。イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このようなイオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)等が挙げられる。
【0027】
次に、上述した膜−電極接合体中間体1、これを用いた膜−電極接合体10、及び固体高分子形燃料電池100の製造方法について説明する。
【0028】
まず、膜−電極接合体中間体1の製造方法について説明すると、図2(a)に示すように、基材シート2上にガスケット3を粘着剤で張り合わせる、または熱プレス、ヒートロールで物理的に張り合わせることによって設置する。粘着剤の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。次に、ガスケット3の開口31内において、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ダイコーティング、又はナイフコーティング、インクジェット、ディスペンサー等の公知の方法により、導電性多孔質基材用ペーストを基材シート2上に100〜300μmの厚さとなるように塗布する。この導電性多孔質基材用ペーストは上述した導電性多孔質基材4の材料を適当な分散媒に混合したものであり、分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水やメチルエチルケトン(MEK)、アセトン、トルエン、キシレンといった有機溶剤やメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、又はプロピレングリコールといった炭素数1〜5程度の1〜3価のアルコール等が1種単独又は2種以上混合して使用される。導電性多孔質基材用ペーストの配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、体積比で分散媒60〜40%に対して導電性多孔質基材4の材料40〜60%とすることができる。導電性多孔質基材用ペーストを塗布した後、この導電性多孔質基材用ペーストを70〜120℃下で10〜60分間かけて乾燥させると、導電性多孔質基材用ペースト中の分散媒が揮発し、図2(b)に示すように、基材シート2上に20〜200μmの厚さの導電性多孔質基材4が形成される。
【0029】
次に、上述した触媒層5の材料を導電性多孔質基材用ペーストと同様の分散媒に混合することで触媒用ペーストを作製する。この触媒用ペーストを上述したような公知の方法により開口31内において導電性多孔質基材4上に塗布し、50〜120℃下で10〜90分間かけて乾燥させると、図2(c)に示すように、導電性多孔質基材4上に触媒層5が形成される。
【0030】
その後、上述したイオン伝導性高分子電解質含有溶液を開口31内において触媒層5上に上述したような公知の方法で塗布し、50〜120℃下で5〜30分間かけて乾燥させることにより、図2(d)に示すように、触媒層5上に電解質膜6が形成され、膜−電極接合体中間体1が完成する。
【0031】
次に、上述した膜−電極接合体中間体1を用いた膜−電極接合体10及び固体高分子形燃料電池100の製造方法について説明する。まず、膜−電極接合体中間体1を2つ準備し、図3(a)に示すように、少なくとも一方の膜−電極接合体中間体1におけるガスケット3の上面に接着層7を塗布する。この接着層7は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を含む公知又は市販の接着剤をガスケット3上に公知の方法によって塗布することにより形成する。接着層7の厚さは、特に限定されるものではないが、2つの膜−電極接合体中間体1同士を接着した際に膜−電極接合体中間体1のガスケット3間に隙間が生じないようなものであることが好ましく、通常0.1〜20μm、好ましくは0.1〜5μmである。
【0032】
各膜−電極接合体中間体1に接着層7を形成した後、図3(b)及び図3(c)に示すように、基材シート2と反対側の面、すなわち、接着層7側の面同士が対向するよう2つの膜−電極接合体中間体1を配置し、各膜−電極接合体中間体1の基材シート2側から熱プレスを施して接着層7同士を接着する。熱プレス条件については、接着剤の硬化条件に応じて、プレス温度、時間を決定する。このとき電解質膜6同士は互いに押し付けられて密着する。そして、接着層7が十分固まった後に、上下の基材シート2を剥離することにより、図3(d)に示すような膜−電極接合体10が完成する。
【0033】
このようにして製造した膜−電極接合体10の上下面にガス流路81が形成されたセパレータ8を配置し、このセパレータ8と導電性多孔質基材4とが電気的に接続するようにセパレータ8で膜−電極接合体10を挟持する(図4)。これにより、固体高分子形燃料電池100が完成する。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、膜−電極接合体10の完成直前に膜−電極接合体中間体1の基材シート2を剥離すればよく、膜−電極接合体中間体1が膜−電極接合体10の全製造工程を通じて基材シート2によって支持されているため、膜−電極接合体中間体1のハンドリングが容易である。また、本実施形態においては、膜−電極接合体中間体1の導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6を塗布により形成することで、ガスケット3と導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6との間に隙間が生じるのを防止することもできる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、導電性多孔質基材4の厚さは、ガスケット3の厚さよりも小さくなっていたが、ガスケット3の厚さとほぼ同じにすることもできる。導電性多孔質基材4の厚さをガスケット3の厚さとほぼ同じとするためには、図5に示すように、ガスケット3上に第1のマスク9を形成した状態で導電性多孔質基材4を形成すればよい。すなわち、第1のマスク9の内側において導電性多孔質基材用ペースト41を分散媒の揮発による縮小分を考慮した厚さで塗布し、これを乾燥させれば、ガスケット3の厚さとほぼ同じ厚さの導電性多孔質基材4が形成される。ガスケット3上の第1のマスク9は導電性多孔質基材4を形成した後にガスケット3から剥離すればよい。第1のマスク9としては、ガスケット3から剥離可能であれば特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂等公知又は市販のものを用いることができる。また、シリコーンゴム等のゴム材料も用いることができる。第1のマスク9の厚さは、導電性多孔質基材用ペーストの配合割合や導電性多孔質基材4の厚さにもよるが、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μmである。
【0036】
また、上記実施形態において、導電性多孔質基材4は、導電性多孔質基材用ペーストを基材シート2に塗布することによって形成されていたが、例えば、公知のカーボンペーパーやカーボンクロス等を基材シート2に載置することによって形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態において、導電性多孔質基材4の上には触媒層5が直接形成されていたがこれに限定されず、導電性多孔質基材4と触媒層5との間に撥水層を形成することもできる。撥水層の厚さは、通常0.5〜50μm、好ましくは5〜30μmである。撥水層の材料としては、少なくとも導電性炭素粒子、導電性炭素繊維などの炭素材料及び樹脂を含有したものが挙げられるが、撥水層用ペーストの作成のためにこれらの炭素材料及び樹脂にさらに公知のアルコールや分散媒を添加したものでもよい。導電性炭素粒子は、導電性を有する炭素材であれば特に限定されず、公知又は市販のものを使用でき、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のカーボンブラック;黒鉛;活性炭等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの平均粒子径(算術平均粒子径)は限定的でなく、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20nm〜80nm程度とすればよい。撥水層で使用される導電性炭素繊維は、例えば気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊維径は限定的でなく、平均が50〜400nm、好ましくは100〜250nm程度とすればよい。繊維長も限定的でなく、平均が5〜50μm、好ましくは10〜20μm程度とすればよい。アスペクト比は、およそ10〜500である。なお、導電性炭素繊維の繊維径、繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定した画像等により測定できる。樹脂としては、撥水性を付与するフッ素系樹脂を使用することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。このようなフッ素系樹脂を含有することにより、撥水層に撥水性を付与できる。配合割合は、撥水層では、例えば、導電性炭素粒子100重量部に対して、フッ素系樹脂5〜200重量部(好ましくは10〜150重量部)程度、導電性炭素繊維5〜200重量部(好ましくは10〜150重量部)程度、水5〜500重量部(好ましくは10〜400重量部)とすればよい。
【0038】
また、上記実施形態において、電解質膜6は、イオン伝導性高分子電解質含有溶液を触媒層5に塗布することで形成されていたが、例えば、予めシート状に形成された電解質膜を触媒層5上に配置し、熱プレス等で触媒層5に接着することで形成されていてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、各膜−電極接合体中間体1に1つの電解質膜6が形成されていたが、例えば、図6の膜−電極接合体中間体11のように、電解質膜6の上にさらに電解質膜61を形成することもできる。この電解質膜61の面積は、ガスケット3の開口の面積より大きくても小さくてもよく、また、開口31の面積と略同一であってもよいが、ガスリーク防止の観点からは開口31の面積よりも一回り大きいことが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1においては、電極及び電解質膜6の厚さの合計とガスケット3の厚さとが略同一となっていたがこれに限定されるものではなく、図7の膜−電極接合体中間体12のように、電極及び電解質膜6の厚さの合計がガスケット3の厚さよりも大きくなっていてもよい。この場合、膜−電極接合体中間体12の電解質膜6を以下のようにして形成することができる。すなわち、予めガスケット3上に第2のマスク91を形成しておき、この状態で第2のマスク91の内側にイオン伝導性高分子電解質含有溶液を塗布し乾燥させた後、第2のマスク91を剥離することにより、電解質膜6を形成することができる。第2のマスク91は、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂等公知又は市販のものを用いることができる。第2のマスク91の厚さは、電極及び触媒層5を合わせた厚さにもよるが、通常1〜50μm、好ましくは5〜20μmである。なお、第2のマスク91とガスケット3との間にはこれらを粘着するための粘着層が設けられていてもよく、この粘着層は基材シート2とガスケット3とを粘着するための上述の粘着剤と同様の材料で形成することができる。
【0041】
また、図8の膜−電極接合体中間体13のように、電極及び電解質膜6の厚さがガスケット3の厚さより小さくなっていてもよい。この膜−電極接合体中間体13を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体13の電解質膜6がもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜に接着すればよく、例えば、もう一方の膜−電極接合体中間体を図7に示すような電極及び電解質膜の厚さの合計がガスケットの厚さよりも大きいものとすればよい。
【0042】
また、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1では電解質膜6の面積はガスケット3の開口31の面積とほぼ同じであったがこれに限定されるものではなく、図9の膜−電極接合体中間体14のように、電解質膜6の面積が開口31の面積よりも大きくなっていてもよい。この膜−電極接合体中間体14における電極の厚さは、電解質膜6を公知又は市販の枚葉品で形成する場合はガスケット3の厚さと略同一であることが好ましいが、電解質膜6を塗布により形成する場合はガスケット3の厚さと同一でなくてもよい。
【0043】
また、図10の膜−電極接合体中間体15のように、電解質膜6の面積を開口31の面積よりも小さくしてもよい。この膜−電極接合体中間体15を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体15の触媒層5全面をもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜で覆うよう、もう一方の膜−電極接合体中間体を図9に示すような電解質膜の面積がガスケット開口の面積以上のものとすればよい。
【0044】
また、図11の膜−電極接合体中間体16のように、触媒層5上に電解質6を形成しなくてもよい。この膜−電極接合体中間体16を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体16の触媒層5全面をもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜で覆うよう、もう一方の膜−電極接合体中間体を電解質膜が形成され且つ電解質膜の面積がガスケットの開口の面積以上のものとすればよい。
【0045】
上記実施形態の膜−電極接合体10は、2つの膜−電極接合体中間体1を用いて製造されていたがこれに限定されるものではなく、例えば、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1、及び上述したような膜−電極接合体中間体11〜16の異種又は同種の組み合わせによって製造することができる。なお、この膜−電極接合体中間体の組み合わせは、膜−電極接合体中間体同士を接着した際に、各膜−電極接合体中間体の触媒層5の表面全体が電解質膜6によって覆われるような組み合わせとする必要がある。例えば、膜−電極接合体中間体12と膜−電極接合体中間体16とを組み合わせる場合、図12に示すように、膜−電極接合体中間体12における電極及び電解質膜6の厚さがガスケット3の厚さよりも大きいことにより、膜−電極接合体中間体12と電極接合体中間体16とが接着した際、電極接合体中間体12の電解質膜6は膜−電極接合体中間体16の触媒層5まで到達し、膜−電極接合体中間体16の触媒層5は表面全体が膜−電極接合体中間体12の電解質膜6によって覆われる。
【0046】
その他、膜−電極接合体中間体11同士(図13)や、膜−電極接合体中間体11と膜−電極接合体中間体1等、種々の膜−電極接合体中間体を組み合わせることができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、2つの膜−電極接合体中間体1の双方においてガスケット3上に接着層7を形成していたが、膜−電極接合体中間体1同士が接着可能であればよく、片方の膜−電極接合体中間体1にのみ接着層7を設けることもできる。
【0048】
また、上記実施形態においては、膜−電極接合体中間体1を一つずつ製造していたが、図14に示すように、複数の膜−電極接合体中間体を連結した状態で同時に製造することもできる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例)
図3(d)に示すような膜−電極接合体10を、以下の要領で製造した。
【0051】
まず、以下の要領で触媒層形成用ペースト組成物、導電性多孔質基材層用ペースト組成物、及び撥水層用ペースト組成物を作成した。
【0052】
白金触媒担持炭素粒子4g(田中貴金属工業(株)製、「TEC10E50E」)、イオン伝導性高分子電解質膜溶液40g(Nafion5wt%溶液:「DE−520」デュポン社製)、蒸留水12g、n−ブタノール20g及びt−ブタノール20gを配合し、分散機にて攪拌混合することにより、アノード触媒層形成用ペースト組成物及びカソード触媒層形成用ペースト組成物を得た。
【0053】
導電性炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製、「S−2404」)を100g、スチレン-アクリル酸共重合体樹脂(昭和電工(株)製「AP-2675」を50g、分散剤(花王(株)製「エマルゲンA-60」)25g、イオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion5wt%溶液:「DE−520」デュポン社製)60g、水100gを分散させることにより導電性多孔質基材層用ペースト組成物を調合した。
【0054】
次に、基材シート2として用いるPETフィルム上に、開口31を有する厚さ200μmシリコンゴムシート(アズワン(株)製)をガスケット3として配置し、基材シート2とガスケット3とを熱プレスして張り合わせた。これをシートAと呼ぶ。このシートA上に開口31を有する厚さ300μmシリコンゴムシート(アズワン(株)製)をマスクとして配置し、ガスケット3とマスクとを熱プレスして張り合わせた。これをシートBと呼ぶ。そして、上記シートBの開口31内にアプリケーターを用いて約150μmの厚みとなるように上述した導電性多孔質基材用ペースト組成物を塗布し、95℃で30分乾燥した。これを中間体Aとする。
【0055】
続いて、この中間体A上において開口31内にアプリケーターを用いて上記触媒層形成用ペースト組成物を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより触媒層5を形成した。なお、触媒層形成用ペースト組成物の塗工量は、アノード触媒層、カソード触媒層共に白金担持量が0.5mg/cm2程度となるようにした。これを中間体Bとする。
【0056】
その後、この中間体B上において開口31内にアプリケーターを用いてイオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion20wt%溶液:「DE2020」和光純薬工業(株)製)を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより電解質膜6を形成した。電解質膜6の厚さは約30μmとなるようにした。続いてマスクを剥離した。これを中間体C(膜−電極接合体中間体1)とする。
【0057】
このように形成した中間体Cのガスケット上に接着層7としてコニシ製(アロンアルファ プラスチック用)を塗布した。これともう一つの中間体Cとを張り合わせて、熱プレスした。プレス条件は120℃、5MPa、120秒とした。熱プレス後に接着層が固まったことを確認した後、基材シート2のPETを剥離することにより膜−電極接合体10を得た。得られた膜−電極接合体10は、各中間体が最後まで基材シート2に支持されていたため、電解質膜等に損傷がなかった。
【0058】
(比較例)
上記実施例と同様の触媒層形成用ペースト組成物を使用して、以下の要領で膜−電極接合体を作製した。図15(a)に示すように、まず、基材シート201として用いるPETフィルム上にアプリケーターを用いてイオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion20wt%溶液:「DE2020」和光純薬工業(株)製)を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより電解質膜202を形成した。電解質膜202の厚さは約30μmとなるようにした。この電解質膜202上にアプリケーターを用いて上記触媒層形成用ペースト組成物を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより触媒層203を作製した。なお、触媒層形成用ペースト組成物の塗工量は、白金担持量が0.5mg/cm2程度となるようにした。これを中間体D(触媒層−電解質膜半積層体20)とする(図15(a))。この中間体Dを2つ張り合わせて触媒層−電解質膜積層体を作製するため、中間体Dから基材シート201を剥離したところ(図15(b))、中間体Dが破れる、折れ曲がるなどして、うまく剥離できないという欠点があった。また、触媒層−電解質膜積層体の触媒層203側に導電性多孔質層204(東レ製、カーボンペーパー)を接合して膜−電極接合体200とした
【符号の説明】
【0059】
1 膜−電極接合体中間体
2 基材シート
3 ガスケット
31 開口
4 導電性多孔質基材
5 触媒層
6 電解質膜
8 セパレータ
9 第1のマスク
10 膜−電極接合体
100 固体高分子形燃料電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質の両面に電極が配置され、水素と酸素の電気化学反応により発電する電池であり、発電時に発生するのは水のみである。このように従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないために次世代のクリーンエネルギーシステムとして普及が見込まれている。その中でも特に固体高分子形燃料電池は、作動温度が低く、電解質の抵抗が少ないことに加え、活性の高い触媒を用いるので小型でも高出力を得ることができ、家庭用コージェネレーションシステム等として早期の実用化が見込まれている。
【0003】
この固体高分子形燃料電池は、一般に、電解質膜の両面に触媒層及び導電性多孔質基材を順に積層し、この触媒層及び導電性多孔質基材から成る電極の周囲を囲むようにガスケットを設け、これらをセパレータで挟んだ構造を有している。本明細書では、電解質膜の両面に電極を形成したものだけでなく、これにガスケットを設けたものも膜−電極接合体と称する。このガスケットを有する膜−電極接合体の製造方法として、例えば、特許文献1には、基材シートの片面に電解質膜及び電極を形成しこれらの周囲にガスケットを配置した基材シート付き膜−電極半接合体を2つ作製し、この基材シート付き膜−電極半接合体から基材シートを剥離した後、2つの膜−電極半接合体の電解質膜側の面同士を対向させて接合するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−216789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような膜−電極接合体の製造方法においては、膜−電極半接合体同士の接合に際し、基材シート付き膜−電極半接合体から基材シートを剥離する必要がある。しかし、従来電解質膜も触媒層もガスケットも薄い膜厚のものが使用されるため、基材シートの剥離から膜−電極半接合体同士の接合までの間、特に電解質膜は強度が弱く、破れる可能性があり、膜−電極半接合体のハンドリングが困難になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ハンドリングが容易な膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る膜−電極接合体中間体は、上記課題を解決するためになされたものであり、基材シートと、前記基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケットと、前記開口内において前記基材シート上に形成された導電性多孔質基材と、を備えている。
【0008】
上記膜−電極接合体中間体は、通常、ガスケットの開口内において導電性多孔質基材上に触媒層を形成して使用する。この触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を用いて膜−電極接合体を製造する場合、触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を2つ準備し、少なくとも一方の膜−電極接合体中間体において触媒層上に電解質膜を配置する。そして、2つの膜−電極接合体中間体の基材シートと反対側の面同士を対向させこれらを互いに接着した後、2つの膜−電極接合体中間体の導電性多孔質基材及びガスケットから基材シートを剥離することで、膜−電極接合体を製造する。このように、本発明の膜−電極接合体中間体は、もう一方の膜−電極接合体中間体に接着する間も基材シートによって支持されており、膜−電極接合体の完成直前で基材シートが剥離されるため、膜−電極接合体の全製造工程を通じてハンドリングが容易である。
【0009】
また、上記膜−電極接合体中間体は、ガスケットの開口内において導電性多孔質基材上に予め触媒層を形成しておくことができる。
【0010】
また、上記膜−電極接合体中間体は、触媒層上に電解質膜を形成することができる。この電解質膜の面積は、特に限定されず、ガスケットの開口面積より大きくても小さくてもよく、開口面積と略同一であってもよいが、ガスリーク防止の観点からは開口面積よりも大きいことが好ましい。また、導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜の厚さの合計は、ガスケットの厚さより大きくても小さくてもよく、また、ガスケットの厚さと略同一であってもよい。
【0011】
また、上記膜−電極接合体中間体は、導電性多孔質基材と触媒層との間に撥水層が形成されていてもよい。この構成によれば、導電性多孔質基材に撥水性を付与することができ、導電性多孔質基材のガス透過性及びガス拡散性を維持することができる。
【0012】
本発明に係る膜−電極接合体の製造方法は、導電性多孔質基材上に触媒層が形成された膜−電極接合体中間体を2つ準備する工程と、少なくとも一方の前記膜−電極接合体中間体において、触媒層上に電解質膜を形成する工程と、前記2つの膜−電極接合体中間体における基材シートと反対側の面同士を対向させた状態で前記2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する工程と、前記接着された2つの膜−電極接合体中間体から前記基材シートを剥離する工程と、を備えている。
【0013】
上記膜−電極接合体の製造方法によれば、2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する間も膜−電極接合体中間体を基材シートによって支持し続けることができるため、膜−電極接合体中間体のハンドリングが容易である。
【0014】
また、上記製造方法においては、膜−電極接合体中間体の導電性多孔質基材は塗布により形成することができる。この方法によれば、ガスケットと導電性多孔質基材との間に隙間が生じないように導電性多孔質基材を形成することができる。なお、本発明において、「塗布」とは、特に限定されるものではないが、例えば、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ダイコーティング、又はナイフコーティング、インクジェット、ディスペンサー等の種々の方法を意味している。
【0015】
導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜のうちの少なくとも一つを塗布により形成する場合、ガスケット上にマスクを形成した状態で導電性多孔質基材や触媒層、電解質膜を形成することが好ましい。この方法によれば、ガスケットに導電性多孔質基材や触媒層、電解質膜が付着しないようガスケットを保護することができる。また、導電性多孔質基材や、触媒層、電解質膜の厚さは導電性多孔質基材や、触媒層、電解質膜用の材料中の分散媒の揮発によって最終的に塗布厚さよりも小さくなるが、この方法によれば、マスクの厚さ分だけガスケットの厚さを超えて材料を塗布することができるため、例えば、乾燥後の導電性多孔質基材、触媒層、及び電解質膜の厚さの合計とガスケットの厚さとを合わせることができ、また、乾燥後の導電性多孔質基材とガスケットの厚さ、乾燥後の導電性多孔質基材及び触媒層の厚さの合計とガスケットの厚さとを合わせることもできる。
【0016】
また、上記製造方法において、膜−電極接合体中間体における導電性多孔質基材と触媒層との間に撥水層を形成してもよい。この方法によれば、導電性多孔質基材に撥水性を付与することができ、導電性多孔質基材のガス透過性及びガス拡散性を維持することができる。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子形燃料電池は、上述したような製造方法のいずれかにより製造した膜−電極接合体と、前記膜−電極接合体の各導電性多孔質基材及びガスケット上に設置されたセパレータと、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハンドリングが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体中間体の(a)正面断面図、及び(b)平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体中間体の製造方法を示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る膜−電極接合体の製造方法を示す正面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る固体高分子形燃料電池の正面断面図である。
【図5】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の製造方法を示す正面断面図である。
【図6】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図7】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図8】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図9】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図10】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図11】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の正面断面図である。
【図12】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の組み合わせを示す正面断面図である。
【図13】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の組み合わせを示す正面断面図である。
【図14】上記実施形態の変形例に係る膜−電極接合体中間体の平面図である。
【図15】(本発明の比較例に係る膜−電極接合体の製造方法を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る膜−電極接合体中間体及び固体高分子形燃料電池、並びに膜−電極接合体の製造方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る膜−電極接合体中間体1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、基材シート2と、基材シート2上に形成されたガスケット3と、ガスケット3の開口31内において基材シート2上に順に積層された導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6と、を備えている。この導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6の厚さの合計はガスケット3の厚さと略同一となっている。なお、本明細書では、導電性多孔質基材4と触媒層5とを合わせたものを電極と称する。
【0022】
基材シート2の厚さは、取り扱い性の観点から、通常10〜1000μmであり、好ましくは50〜500μmである。基材シート2の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。中でも、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0023】
ガスケット3の厚さは、通常20〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。ガスケット3の材料としては、熱プレスに耐えうる強度を保ち、且つ燃料及び酸化剤を外部に漏出させない程度のガスバリア性を有しているものがよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートやテフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート等が挙げられる。
【0024】
導電性多孔質基材4の厚さは、通常20〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。導電性多孔質基材4の材料としては、燃料である燃料ガス及び酸化剤ガスを効率よく触媒層に供給するため多孔構造とする必要があり、例えば、導電性炭素繊維、樹脂を含んでいることが好ましい。また、導電性炭素粒子を含んでいてもよい。導電性炭素繊維としては、例えば気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノウォール、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊維径は限定的でなく、平均が50nm〜20μm、好ましくは100nm〜15μm程度とすればよい。繊維長も限定的でなく、平均が1μm〜1mm、好ましくは5〜600μm程度とすればよい。アスペクト比は、およそ10〜500である。なお、導電性炭素繊維の繊維径、繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により測定した画像等により測定できる。樹脂としては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、イオン伝導性高分子樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン‐アクリル共重合体樹脂、スチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン‐アクリル共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル‐アクリル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、また六フッ化プロピレン‐フッ化ビニリデン共重合体樹脂、三フッ化塩化エチレン‐フッ化ビニリデン共重合体樹脂などのフッ素ゴム、シリコンゴム、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。導電性炭素粒子は、導電性を有する炭素材であれば特に限定されず、公知又は市販のものを使用できる。例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のカーボンブラック;黒鉛;活性炭等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上で用いることができる。これらの導電性炭素粒子を含有するシート状の導電性多孔質層および導電性多孔質基材を作製することによりガス拡散層の導電性を向上させることができる。 カーボンブラックの平均粒子径(算術平均粒子径)は限定的でなく、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20nm〜80nm程度とすればよい。またカーボンブラックの凝集体を使用する場合は、10〜600nm、好ましくは50〜500nm、黒鉛や活性炭を使用する場合は、500nm〜40μm、好ましくは1μm〜35μm程度とすれば良い。この導電性炭素粒子の平均粒子径は、例えば、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定できる。
【0025】
触媒層5の厚さは、通常0.1〜200μmであり、好ましくは0.5〜20μmである。触媒層5は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒及びアノード触媒)とすることができる。具体的には、触媒粒子を担持させた炭素粒子と、イオン伝導性高分子電解質とを含有する。イオン伝導性高分子電解質としては、後述する電解質膜6に使用されるものと同じ材料を使用することができる。触媒粒子としては、燃料電池におけるアノード及びカソード反応を促進する物質であれば、特に限定されない。例えば、白金や白金化合物であり、白金以外の金属としては例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄、銀等が挙げられる。白金化合物としては、上記白金以外の金属から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。炭素粒子は、導電性を有しているものであれば特に限定されず、公知又は市販のものを広く使用できる。例えば、カーボンブラックや、黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等を1種又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を挙げることができる。炭素粒子の算術平均粒子径は、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20〜80nm程度であり、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定することができる。
【0026】
電解質膜6の厚さは、通常1〜200μmであり、好ましくは10〜100μmである。電解質膜6は、例えば、イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を触媒層5上に塗布し、乾燥することにより形成される。イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このようなイオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)等が挙げられる。
【0027】
次に、上述した膜−電極接合体中間体1、これを用いた膜−電極接合体10、及び固体高分子形燃料電池100の製造方法について説明する。
【0028】
まず、膜−電極接合体中間体1の製造方法について説明すると、図2(a)に示すように、基材シート2上にガスケット3を粘着剤で張り合わせる、または熱プレス、ヒートロールで物理的に張り合わせることによって設置する。粘着剤の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。次に、ガスケット3の開口31内において、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ダイコーティング、又はナイフコーティング、インクジェット、ディスペンサー等の公知の方法により、導電性多孔質基材用ペーストを基材シート2上に100〜300μmの厚さとなるように塗布する。この導電性多孔質基材用ペーストは上述した導電性多孔質基材4の材料を適当な分散媒に混合したものであり、分散媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水やメチルエチルケトン(MEK)、アセトン、トルエン、キシレンといった有機溶剤やメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、又はプロピレングリコールといった炭素数1〜5程度の1〜3価のアルコール等が1種単独又は2種以上混合して使用される。導電性多孔質基材用ペーストの配合割合は、特に限定されるものではないが、例えば、体積比で分散媒60〜40%に対して導電性多孔質基材4の材料40〜60%とすることができる。導電性多孔質基材用ペーストを塗布した後、この導電性多孔質基材用ペーストを70〜120℃下で10〜60分間かけて乾燥させると、導電性多孔質基材用ペースト中の分散媒が揮発し、図2(b)に示すように、基材シート2上に20〜200μmの厚さの導電性多孔質基材4が形成される。
【0029】
次に、上述した触媒層5の材料を導電性多孔質基材用ペーストと同様の分散媒に混合することで触媒用ペーストを作製する。この触媒用ペーストを上述したような公知の方法により開口31内において導電性多孔質基材4上に塗布し、50〜120℃下で10〜90分間かけて乾燥させると、図2(c)に示すように、導電性多孔質基材4上に触媒層5が形成される。
【0030】
その後、上述したイオン伝導性高分子電解質含有溶液を開口31内において触媒層5上に上述したような公知の方法で塗布し、50〜120℃下で5〜30分間かけて乾燥させることにより、図2(d)に示すように、触媒層5上に電解質膜6が形成され、膜−電極接合体中間体1が完成する。
【0031】
次に、上述した膜−電極接合体中間体1を用いた膜−電極接合体10及び固体高分子形燃料電池100の製造方法について説明する。まず、膜−電極接合体中間体1を2つ準備し、図3(a)に示すように、少なくとも一方の膜−電極接合体中間体1におけるガスケット3の上面に接着層7を塗布する。この接着層7は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を含む公知又は市販の接着剤をガスケット3上に公知の方法によって塗布することにより形成する。接着層7の厚さは、特に限定されるものではないが、2つの膜−電極接合体中間体1同士を接着した際に膜−電極接合体中間体1のガスケット3間に隙間が生じないようなものであることが好ましく、通常0.1〜20μm、好ましくは0.1〜5μmである。
【0032】
各膜−電極接合体中間体1に接着層7を形成した後、図3(b)及び図3(c)に示すように、基材シート2と反対側の面、すなわち、接着層7側の面同士が対向するよう2つの膜−電極接合体中間体1を配置し、各膜−電極接合体中間体1の基材シート2側から熱プレスを施して接着層7同士を接着する。熱プレス条件については、接着剤の硬化条件に応じて、プレス温度、時間を決定する。このとき電解質膜6同士は互いに押し付けられて密着する。そして、接着層7が十分固まった後に、上下の基材シート2を剥離することにより、図3(d)に示すような膜−電極接合体10が完成する。
【0033】
このようにして製造した膜−電極接合体10の上下面にガス流路81が形成されたセパレータ8を配置し、このセパレータ8と導電性多孔質基材4とが電気的に接続するようにセパレータ8で膜−電極接合体10を挟持する(図4)。これにより、固体高分子形燃料電池100が完成する。
【0034】
以上のように、本実施形態においては、膜−電極接合体10の完成直前に膜−電極接合体中間体1の基材シート2を剥離すればよく、膜−電極接合体中間体1が膜−電極接合体10の全製造工程を通じて基材シート2によって支持されているため、膜−電極接合体中間体1のハンドリングが容易である。また、本実施形態においては、膜−電極接合体中間体1の導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6を塗布により形成することで、ガスケット3と導電性多孔質基材4、触媒層5、及び電解質膜6との間に隙間が生じるのを防止することもできる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、導電性多孔質基材4の厚さは、ガスケット3の厚さよりも小さくなっていたが、ガスケット3の厚さとほぼ同じにすることもできる。導電性多孔質基材4の厚さをガスケット3の厚さとほぼ同じとするためには、図5に示すように、ガスケット3上に第1のマスク9を形成した状態で導電性多孔質基材4を形成すればよい。すなわち、第1のマスク9の内側において導電性多孔質基材用ペースト41を分散媒の揮発による縮小分を考慮した厚さで塗布し、これを乾燥させれば、ガスケット3の厚さとほぼ同じ厚さの導電性多孔質基材4が形成される。ガスケット3上の第1のマスク9は導電性多孔質基材4を形成した後にガスケット3から剥離すればよい。第1のマスク9としては、ガスケット3から剥離可能であれば特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂等公知又は市販のものを用いることができる。また、シリコーンゴム等のゴム材料も用いることができる。第1のマスク9の厚さは、導電性多孔質基材用ペーストの配合割合や導電性多孔質基材4の厚さにもよるが、通常10〜500μm、好ましくは20〜300μmである。
【0036】
また、上記実施形態において、導電性多孔質基材4は、導電性多孔質基材用ペーストを基材シート2に塗布することによって形成されていたが、例えば、公知のカーボンペーパーやカーボンクロス等を基材シート2に載置することによって形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態において、導電性多孔質基材4の上には触媒層5が直接形成されていたがこれに限定されず、導電性多孔質基材4と触媒層5との間に撥水層を形成することもできる。撥水層の厚さは、通常0.5〜50μm、好ましくは5〜30μmである。撥水層の材料としては、少なくとも導電性炭素粒子、導電性炭素繊維などの炭素材料及び樹脂を含有したものが挙げられるが、撥水層用ペーストの作成のためにこれらの炭素材料及び樹脂にさらに公知のアルコールや分散媒を添加したものでもよい。導電性炭素粒子は、導電性を有する炭素材であれば特に限定されず、公知又は市販のものを使用でき、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等のカーボンブラック;黒鉛;活性炭等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの平均粒子径(算術平均粒子径)は限定的でなく、通常5nm〜200nm程度、好ましくは20nm〜80nm程度とすればよい。撥水層で使用される導電性炭素繊維は、例えば気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー、カーボンナノウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。繊維径は限定的でなく、平均が50〜400nm、好ましくは100〜250nm程度とすればよい。繊維長も限定的でなく、平均が5〜50μm、好ましくは10〜20μm程度とすればよい。アスペクト比は、およそ10〜500である。なお、導電性炭素繊維の繊維径、繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定した画像等により測定できる。樹脂としては、撥水性を付与するフッ素系樹脂を使用することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。このようなフッ素系樹脂を含有することにより、撥水層に撥水性を付与できる。配合割合は、撥水層では、例えば、導電性炭素粒子100重量部に対して、フッ素系樹脂5〜200重量部(好ましくは10〜150重量部)程度、導電性炭素繊維5〜200重量部(好ましくは10〜150重量部)程度、水5〜500重量部(好ましくは10〜400重量部)とすればよい。
【0038】
また、上記実施形態において、電解質膜6は、イオン伝導性高分子電解質含有溶液を触媒層5に塗布することで形成されていたが、例えば、予めシート状に形成された電解質膜を触媒層5上に配置し、熱プレス等で触媒層5に接着することで形成されていてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、各膜−電極接合体中間体1に1つの電解質膜6が形成されていたが、例えば、図6の膜−電極接合体中間体11のように、電解質膜6の上にさらに電解質膜61を形成することもできる。この電解質膜61の面積は、ガスケット3の開口の面積より大きくても小さくてもよく、また、開口31の面積と略同一であってもよいが、ガスリーク防止の観点からは開口31の面積よりも一回り大きいことが好ましい。
【0040】
また、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1においては、電極及び電解質膜6の厚さの合計とガスケット3の厚さとが略同一となっていたがこれに限定されるものではなく、図7の膜−電極接合体中間体12のように、電極及び電解質膜6の厚さの合計がガスケット3の厚さよりも大きくなっていてもよい。この場合、膜−電極接合体中間体12の電解質膜6を以下のようにして形成することができる。すなわち、予めガスケット3上に第2のマスク91を形成しておき、この状態で第2のマスク91の内側にイオン伝導性高分子電解質含有溶液を塗布し乾燥させた後、第2のマスク91を剥離することにより、電解質膜6を形成することができる。第2のマスク91は、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパラバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂等公知又は市販のものを用いることができる。第2のマスク91の厚さは、電極及び触媒層5を合わせた厚さにもよるが、通常1〜50μm、好ましくは5〜20μmである。なお、第2のマスク91とガスケット3との間にはこれらを粘着するための粘着層が設けられていてもよく、この粘着層は基材シート2とガスケット3とを粘着するための上述の粘着剤と同様の材料で形成することができる。
【0041】
また、図8の膜−電極接合体中間体13のように、電極及び電解質膜6の厚さがガスケット3の厚さより小さくなっていてもよい。この膜−電極接合体中間体13を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体13の電解質膜6がもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜に接着すればよく、例えば、もう一方の膜−電極接合体中間体を図7に示すような電極及び電解質膜の厚さの合計がガスケットの厚さよりも大きいものとすればよい。
【0042】
また、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1では電解質膜6の面積はガスケット3の開口31の面積とほぼ同じであったがこれに限定されるものではなく、図9の膜−電極接合体中間体14のように、電解質膜6の面積が開口31の面積よりも大きくなっていてもよい。この膜−電極接合体中間体14における電極の厚さは、電解質膜6を公知又は市販の枚葉品で形成する場合はガスケット3の厚さと略同一であることが好ましいが、電解質膜6を塗布により形成する場合はガスケット3の厚さと同一でなくてもよい。
【0043】
また、図10の膜−電極接合体中間体15のように、電解質膜6の面積を開口31の面積よりも小さくしてもよい。この膜−電極接合体中間体15を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体15の触媒層5全面をもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜で覆うよう、もう一方の膜−電極接合体中間体を図9に示すような電解質膜の面積がガスケット開口の面積以上のものとすればよい。
【0044】
また、図11の膜−電極接合体中間体16のように、触媒層5上に電解質6を形成しなくてもよい。この膜−電極接合体中間体16を用いて膜−電極接合体を製造する場合、膜−電極接合体中間体16の触媒層5全面をもう一方の膜−電極接合体中間体の電解質膜で覆うよう、もう一方の膜−電極接合体中間体を電解質膜が形成され且つ電解質膜の面積がガスケットの開口の面積以上のものとすればよい。
【0045】
上記実施形態の膜−電極接合体10は、2つの膜−電極接合体中間体1を用いて製造されていたがこれに限定されるものではなく、例えば、上記実施形態の膜−電極接合体中間体1、及び上述したような膜−電極接合体中間体11〜16の異種又は同種の組み合わせによって製造することができる。なお、この膜−電極接合体中間体の組み合わせは、膜−電極接合体中間体同士を接着した際に、各膜−電極接合体中間体の触媒層5の表面全体が電解質膜6によって覆われるような組み合わせとする必要がある。例えば、膜−電極接合体中間体12と膜−電極接合体中間体16とを組み合わせる場合、図12に示すように、膜−電極接合体中間体12における電極及び電解質膜6の厚さがガスケット3の厚さよりも大きいことにより、膜−電極接合体中間体12と電極接合体中間体16とが接着した際、電極接合体中間体12の電解質膜6は膜−電極接合体中間体16の触媒層5まで到達し、膜−電極接合体中間体16の触媒層5は表面全体が膜−電極接合体中間体12の電解質膜6によって覆われる。
【0046】
その他、膜−電極接合体中間体11同士(図13)や、膜−電極接合体中間体11と膜−電極接合体中間体1等、種々の膜−電極接合体中間体を組み合わせることができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、2つの膜−電極接合体中間体1の双方においてガスケット3上に接着層7を形成していたが、膜−電極接合体中間体1同士が接着可能であればよく、片方の膜−電極接合体中間体1にのみ接着層7を設けることもできる。
【0048】
また、上記実施形態においては、膜−電極接合体中間体1を一つずつ製造していたが、図14に示すように、複数の膜−電極接合体中間体を連結した状態で同時に製造することもできる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例)
図3(d)に示すような膜−電極接合体10を、以下の要領で製造した。
【0051】
まず、以下の要領で触媒層形成用ペースト組成物、導電性多孔質基材層用ペースト組成物、及び撥水層用ペースト組成物を作成した。
【0052】
白金触媒担持炭素粒子4g(田中貴金属工業(株)製、「TEC10E50E」)、イオン伝導性高分子電解質膜溶液40g(Nafion5wt%溶液:「DE−520」デュポン社製)、蒸留水12g、n−ブタノール20g及びt−ブタノール20gを配合し、分散機にて攪拌混合することにより、アノード触媒層形成用ペースト組成物及びカソード触媒層形成用ペースト組成物を得た。
【0053】
導電性炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製、「S−2404」)を100g、スチレン-アクリル酸共重合体樹脂(昭和電工(株)製「AP-2675」を50g、分散剤(花王(株)製「エマルゲンA-60」)25g、イオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion5wt%溶液:「DE−520」デュポン社製)60g、水100gを分散させることにより導電性多孔質基材層用ペースト組成物を調合した。
【0054】
次に、基材シート2として用いるPETフィルム上に、開口31を有する厚さ200μmシリコンゴムシート(アズワン(株)製)をガスケット3として配置し、基材シート2とガスケット3とを熱プレスして張り合わせた。これをシートAと呼ぶ。このシートA上に開口31を有する厚さ300μmシリコンゴムシート(アズワン(株)製)をマスクとして配置し、ガスケット3とマスクとを熱プレスして張り合わせた。これをシートBと呼ぶ。そして、上記シートBの開口31内にアプリケーターを用いて約150μmの厚みとなるように上述した導電性多孔質基材用ペースト組成物を塗布し、95℃で30分乾燥した。これを中間体Aとする。
【0055】
続いて、この中間体A上において開口31内にアプリケーターを用いて上記触媒層形成用ペースト組成物を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより触媒層5を形成した。なお、触媒層形成用ペースト組成物の塗工量は、アノード触媒層、カソード触媒層共に白金担持量が0.5mg/cm2程度となるようにした。これを中間体Bとする。
【0056】
その後、この中間体B上において開口31内にアプリケーターを用いてイオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion20wt%溶液:「DE2020」和光純薬工業(株)製)を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより電解質膜6を形成した。電解質膜6の厚さは約30μmとなるようにした。続いてマスクを剥離した。これを中間体C(膜−電極接合体中間体1)とする。
【0057】
このように形成した中間体Cのガスケット上に接着層7としてコニシ製(アロンアルファ プラスチック用)を塗布した。これともう一つの中間体Cとを張り合わせて、熱プレスした。プレス条件は120℃、5MPa、120秒とした。熱プレス後に接着層が固まったことを確認した後、基材シート2のPETを剥離することにより膜−電極接合体10を得た。得られた膜−電極接合体10は、各中間体が最後まで基材シート2に支持されていたため、電解質膜等に損傷がなかった。
【0058】
(比較例)
上記実施例と同様の触媒層形成用ペースト組成物を使用して、以下の要領で膜−電極接合体を作製した。図15(a)に示すように、まず、基材シート201として用いるPETフィルム上にアプリケーターを用いてイオン伝導性高分子電解質膜溶液(Nafion20wt%溶液:「DE2020」和光純薬工業(株)製)を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより電解質膜202を形成した。電解質膜202の厚さは約30μmとなるようにした。この電解質膜202上にアプリケーターを用いて上記触媒層形成用ペースト組成物を塗工し、95℃で30分乾燥させることにより触媒層203を作製した。なお、触媒層形成用ペースト組成物の塗工量は、白金担持量が0.5mg/cm2程度となるようにした。これを中間体D(触媒層−電解質膜半積層体20)とする(図15(a))。この中間体Dを2つ張り合わせて触媒層−電解質膜積層体を作製するため、中間体Dから基材シート201を剥離したところ(図15(b))、中間体Dが破れる、折れ曲がるなどして、うまく剥離できないという欠点があった。また、触媒層−電解質膜積層体の触媒層203側に導電性多孔質層204(東レ製、カーボンペーパー)を接合して膜−電極接合体200とした
【符号の説明】
【0059】
1 膜−電極接合体中間体
2 基材シート
3 ガスケット
31 開口
4 導電性多孔質基材
5 触媒層
6 電解質膜
8 セパレータ
9 第1のマスク
10 膜−電極接合体
100 固体高分子形燃料電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケットと、
前記開口内において前記基材シート上に形成された導電性多孔質基材と、
を備える、膜−電極接合体中間体。
【請求項2】
前記開口内において前記導電性多孔質基材上に形成された触媒層をさらに備える、請求項1に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項3】
前記触媒層上に形成された電解質膜をさらに備える、請求項2に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項4】
前記導電性多孔質基材と前記触媒層との間に撥水層が形成されている、請求項2又は3に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項5】
請求項2に記載の膜−電極接合体中間体を2つ準備する工程と、
少なくとも一方の前記膜−電極接合体中間体において、触媒層上に電解質膜を形成する工程と、
前記2つの膜−電極接合体中間体における基材シートと反対側の面同士を対向させた状態で前記2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する工程と、
前記接着された2つの膜−電極接合体中間体から前記基材シートを剥離する工程と、
を備える、膜−電極接合体の製造方法。
【請求項6】
前記膜−電極接合体中間体は、前記導電性多孔質基材が塗布により形成される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記膜−電極接合体中間体は、前記ガスケット上にマスクが形成された状態で前記導電性多孔質基材が形成される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記膜−電極接合体中間体は、前記導電性多孔質基材と前記触媒層との間に撥水層が形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法により製造された膜−電極接合体と、
前記膜−電極接合体の各導電性多孔質基材及びガスケット上に設置されたセパレータと、
を備える、固体高分子形燃料電池。
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの一方面上に設けられ、開口が形成されている枠状のガスケットと、
前記開口内において前記基材シート上に形成された導電性多孔質基材と、
を備える、膜−電極接合体中間体。
【請求項2】
前記開口内において前記導電性多孔質基材上に形成された触媒層をさらに備える、請求項1に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項3】
前記触媒層上に形成された電解質膜をさらに備える、請求項2に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項4】
前記導電性多孔質基材と前記触媒層との間に撥水層が形成されている、請求項2又は3に記載の膜−電極接合体中間体。
【請求項5】
請求項2に記載の膜−電極接合体中間体を2つ準備する工程と、
少なくとも一方の前記膜−電極接合体中間体において、触媒層上に電解質膜を形成する工程と、
前記2つの膜−電極接合体中間体における基材シートと反対側の面同士を対向させた状態で前記2つの膜−電極接合体中間体同士を接着する工程と、
前記接着された2つの膜−電極接合体中間体から前記基材シートを剥離する工程と、
を備える、膜−電極接合体の製造方法。
【請求項6】
前記膜−電極接合体中間体は、前記導電性多孔質基材が塗布により形成される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記膜−電極接合体中間体は、前記ガスケット上にマスクが形成された状態で前記導電性多孔質基材が形成される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記膜−電極接合体中間体は、前記導電性多孔質基材と前記触媒層との間に撥水層が形成されている、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法により製造された膜−電極接合体と、
前記膜−電極接合体の各導電性多孔質基材及びガスケット上に設置されたセパレータと、
を備える、固体高分子形燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−74285(P2012−74285A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218762(P2010−218762)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]