説明

膜ろ過装置

【課題】逆洗用の配管内における水の滞留を防止し、微粒子カウンタの誤判定及び判断遅延を防止すること。
【解決手段】膜ろ過装置100は、被処理水をろ過する膜モジュール101の透過水側と貯留槽106とを連通する第1の配管105と逆洗ラインを形成する第2の配管108との間に第3の配管113で連通し、第2の配管108途中に設けられた逆洗用ポンプ109を貯留槽106よりも高い位置に配置し、第2の配管108の一端を貯留槽106内のろ過水の水位以下に挿入した。逆洗処理からろ過処理へ切替える場合、逆洗用ポンプ109を停止させ、第2のバルブ110を閉じると共に第1のバルブ107を開き、第2の配管108内の逆洗用のろ過水を自重及びろ過用ポンプの送水によりにより貯留槽106へ排出することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼水等の表流水又は地下水等をろ過処理する膜モジュールを透過水側から原水側に向けて洗浄水を供給して洗浄(以下、逆洗という)可能であって膜異常検知装置を備えた膜ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道原水である湖沼水等の表流水又は地下水等(環境水)に混入した塩素耐性原虫であるクリプトスポリジウム等を除去するために膜ろ過装置が用いられている。膜ろ過装置においてクリプトスポリジウム等を除去する膜モジュールは定期的に洗浄される。従来、膜モジュールの透過水側から原水側に向けてろ過水を供給して膜モジュールの付着物を剥離・除去する逆洗方式を採用した膜ろ過装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3を参照して、従来の逆洗方式を採用した膜ろ過装置について説明する。
水道原水をろ過する場合は、水道原水が供給用配管301を介して膜モジュール302へ送られる。膜モジュール302でろ過処理されたろ過水は、第1の配管305経由で貯留槽307へ送られる一方、第1の配管305から分岐した連結管303を介して微粒子カウンタ304に送られる。微粒子カウンタ304では微粒子数をカウントして水質をチェックする。
【0004】
膜モジュール302を洗浄する場合は、膜モジュール302の透過水側から原水側に向けてろ過水を供給する。そのために、第1のバルブ306を閉じて第2のバルブ310を開き、逆洗用ポンプ309を駆動させ、貯留槽307に貯留されているろ過水を第2の配管(逆洗用配管)308経由で微粒子カウンタ304を通して膜モジュール302の透過水側に供給する。このように、貯留槽307の処理水を逆洗ライン(308)から膜モジュール302に送ることで膜モジュール302の洗浄を行う。
【0005】
膜モジュール302の洗浄から水道原水のろ過処理に切替える場合は、第2の配管308に設けられた第2のバルブ310を閉じる。
【特許文献1】特開2006−272136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の膜ろ過装置では、逆洗処理からろ過処理へ切替えるために第2の配管308の第2のバルブ310を閉じた際に、第2の配管308内にろ過水が滞留した状態となっていた。そのため、第2の配管308内において微粒子が酸化や凝集によって成長することがあった。これらの微粒子は、逆洗時に膜モジュール302の透過水側に付着し、ろ過再開時に膜モジュール302から剥離し、ノイズとして微粒子カウンタ304によって異常値が計測される現象を引き越す原因となる。このため、実際は、膜モジュール302に異常はなくても、微粒子カウンタ304が膜モジュール302に異常があるという数値を示し誤判定を招く恐れがある。
【0007】
また、微粒子カウンタ304が示すべき値は100個/mL以下である必要があるが、一旦微粒子カウンタ304の値が上がると、正常な数値に戻るまで時間を要するため、その期間にろ過処理されたろ過水は次段へ送ることができない。このため、微粒子カウンタ304の値が正常な数値に戻るまでろ過水の供給ができない状態であるが、この時、ろ過処理自身は停止しないので、ろ過水は膜モジュールよりも上流(上段)の例えば原水ライン(原水タンク)に戻すか、あるいは捨水する必要がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、逆洗処理からろ過処理への切替え時に逆洗用配管内からろ過水を完全に排出でき、ろ過処理開始直後の誤判定を防止すると共に微粒子カウンタの数値を正常数値に維持できて判定遅延の無い膜ろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の膜ろ過装置は、被処理水をろ過処理する膜モジュールと、前記膜モジュールでろ過処理された処理水を貯留する貯留槽と、前記膜モジュールの透過水側と前記貯留槽とを連通する第1の配管と、前記第1の配管の途中に設けられた第1のバルブと、一端が前記貯留槽内の透過水の水位以下に挿入され、他端が前記第1の配管の前記第1のバルブと前記膜モジュールとの間に連結された第2の配管と、前記第2の配管の途中に設けられた第2のバルブと、前記貯留槽の水位よりも高い位置に配置され前記第2のバルブよりも貯留槽側の第2の配管途中に設置された逆洗用ポンプと、一端が前記第1の配管の前記第1のバルブよりも貯留槽側に連結され他端が前記第2の配管の前記逆洗用ポンプよりも貯留槽側に連結された第3の配管とを具備したことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、逆洗用ポンプを貯留槽の水位よりも高い位置に配置すると共に、第1の配管の第1のバルブよりも貯留槽側の所定ポイントと第2の配管の逆洗用ポンプよりも貯留槽側の所定ポイントとを第3の配管で連結したので、ろ過処理再開時に第1のバルブを開いた際に第2の配管内の処理水が貯留槽へ排出され、ろ過処理時に第2の配管内に処理水が滞留することを防止できる。これにより、第2の配管内に滞留した水により微粒子が酸化や凝集によって成長することがなくなり、逆洗時に膜モジュールの透過水側に微粒子が付着してろ過再開時に当該微粒子が膜モジュールから剥離して、微粒子カウンタによって計測されることもなくなる。また、第2の配管中に滞留した逆洗用の処理水はろ過処理へ切替わった時に自重及び処理水の流れで排出されるが、第2の配管の一端を貯留槽内の透過水の水位以下に挿入しているので、第2の配管内に空気が入り込むのを防止でき、次回の逆洗工程でポンプが起動した際に逆洗用の処理水を吸上げることができる。
【0011】
また本発明は、上記膜ろ過装置において、前記膜モジュールでろ過処理を行う場合、前記第1のバルブを開くと共に前記第2のバルブを閉じて前記膜モジュールの原水側へ被処理水を供給し、当該膜モジュールの透過水側から排出される処理水を前記第1の配管を通して前記貯留槽へ送ると共に、前記第1の配管を流れる処理水の一部を前記第3の配管経由で前記第2の配管へ送り込み当該第2の配管から前記貯留槽へ送り、前記膜モジュールの逆洗処理を行う場合、前記第1のバルブを閉じると共に前記第2のバルブを開いて前記逆洗用ポンプを駆動し、前記貯留槽から吸い上げた処理水を前記第2の配管を経由して前記第1の配管へ送り込んで前記膜モジュールの透過水側に供給し、前記逆洗処理からろ過処理へ切替える場合、前記逆洗用ポンプを停止させ、前記第2のバルブを閉じると共に前記第1のバルブを開き、前記第2の配管内の処理水を前記貯留槽へ排出することを特徴とする。
【0012】
このように、第1のバルブおよび第2のバルブを操作することにより、逆洗処理からろ過処理へ切替える際に第2の配管から処理水を完全に排出することができ、しかもろ過処理時には第1の配管を流れる処理水の一部を第3の配管経由で第2の配管へ送り込み当該第2の配管から貯留槽へ送るので、第3の配管内に処理水が滞留する心配もない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、逆洗処理からろ過処理への切替え時に逆洗用配管内から処理水を完全に排出でき、ろ過処理再開直後の誤判定を防止すると共に微粒子カウンタの数値を正常数値に維持できて判定遅延を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施の形態にかかる膜ろ過装置の概略的な構成図である。
本実施の形態の膜ろ過装置100は、浄水場等で横置型の中空糸膜により水道原水をろ過処理するものとする。膜ろ過装置100には、横置型の中空糸膜で構成される膜モジュール101が設けられている。膜モジュール101は、原水側に供給配管102の一端が連結されていて、当該供給配管102から水道原水が供給される。膜モジュール101において被処理水としての水道原水をろ過処理して得られた処理水としてのろ過水は透過水側から排出される。膜モジュール101の透過水側には第1の配管105の一端が連結されており、第1の配管105の他端は処理水を貯留する貯留槽106に挿入されている。第1の配管105の途中に第1のバルブ107が設けられている。ろ過処理時には、膜モジュール101でろ過処理されたろ過水は第1の配管105を通り貯留槽106へ流入するようにしている。第1の配管105には連結配管103を介して微粒子カウンタ104が設けられている。微粒子カウンタ104は、膜モジュール101へ供給される原水(初期)粒子濃度を連続監視すると共に、膜モジュール101の破断時に膜モジュール101の透過水側への原水漏洩の影響で変化する膜処理水粒子濃度を連続監視する。この微粒子カウンタ104は、原水(初期)粒子濃度及び原水漏洩を連続監視するために0.5μm以上の微粒子計測が可能なものを用いている。
【0015】
また、第1の配管105における第1のバルブ107の上流側から分岐して貯留槽106に至る逆洗用配管である第2の配管108が設けられている。第2の配管108の配管端部が貯留槽106の上部よりろ過水の水位以下に挿入されている。第2の配管108には、第1の配管105との連結部近傍に第2のバルブ110が設けられている。また、第2の配管108には、貯留槽106の水位よりも高い位置であって、第2のバルブ110よりも貯留槽106側の位置に逆洗用ポンプ109が設置されている。
【0016】
また、第1の配管105と第2の配管108とを配管途中で連通する第3の配管113が設けられている。第3の配管113の一端は、第1の配管105における第1のバルブ107の下流側(第1のバルブ107と貯留槽106との間であり連結ポイントを符号111で示す)に連結されている。また、第3の配管113の他端は、第2の配管108において逆洗用ポンプ109よりも貯留槽106側(連結ポイントを符号112で示す)に連結されている。すなわち、本実施の形態では、第1のバルブ107を開き、第2のバルブ110を閉じた状態では、第2の配管108内に残っていた処理水が貯留槽106へ排出可能な状態となるように配管構造を工夫している。
【0017】
次に、以上のように構成された膜ろ過装置100の動作については説明する。
ろ過処理を開始する場合、第1のバルブ107を開き、第2のバルブ110を閉じる。そして、不図示の供給ポンプを駆動して供給配管102から膜モジュール101の原水側へ水道原水を送る。膜モジュール101において水道原水をろ過処理して得られたろ過水は膜モジュール101の透過水側から排出され、その一部が連結配管103を介して微粒子カウンタ104へ送られ粒子濃度がチェックされる。また、膜モジュール101の透過水側から排出されるろ過水は第1の配管105を通って貯留槽106に流入して貯留される。また、第1の配管105に送られたろ過水の一部は、第3の配管113を経由して第2の配管108に流れ込む。第3の配管113から第2の配管108に流入したろ過水は水圧によって押し出されて貯留槽106へ流れ込む。微粒子カウンタ104では、取り込まれたろ過水の微粒子数をカウントして原水(初期)粒子濃度及び原水漏洩を連続監視する。
【0018】
ろ過処理から逆洗処理に切替える場合、第1のバルブ107を閉じて、第2のバルブ110を開く。逆洗用ポンプ109を駆動することにより、貯留槽106に貯留されているろ過水を第2の配管108を通して引き上げ、第1の配管105との連結部から第1の配管105に送り込む。第1のバルブ107は閉じているため、第1の配管105に送られた逆洗用のろ過水は、膜モジュール101の透過水側から原水側に向けて供給される。これにより、膜モジュール101の透過水側から原水側に向けて逆洗用のろ過水が供給されるので、膜の原水側に付着している付着物が剥離され除去されると共に膜モジュール内の粒子が膜モジュール外へ押し流されて除去される。
【0019】
逆洗終了後に逆洗処理からろ過処理に切替える。そのため、逆洗用ポンプ109を停止させると共に第2のバルブ110を閉じ、さらに第1のバルブ107を開ける。第2のバルブ110を閉じた第2の配管108は、第3の配管113を介して、第1のバルブ107が開けられた第1の配管105と連通している。このため、第2のバルブ110を閉じた際に第2の配管108内に充填されていた逆洗用のろ過水は、第1のバルブ107を開けた際に自重及びろ過用ポンプの送水により第2の配管108から貯留槽106へ排出される。したがって、第2の配管108において第2のバルブ110よりも下方にあった逆洗用のろ過水は完全に第2の配管108外へ排出されることとなる。また、第2の配管108の一端を貯留槽106内のろ過水の水位以下に挿入しているので、第2の配管108内に空気が入り込むのを防止でき、次回の逆洗工程で逆洗用ポンプ109が起動した際に逆洗用のろ過水を吸上げることができる。
【0020】
このように、本実施の形態によれば、逆洗終了後に第2の配管108に逆洗用のろ過水が滞留されないため、第2の配管108に逆洗用のろ過水が滞留して配管内が汚染される恐れが無く、逆洗時に膜モジュール101の透過水側に配管内で成長した微粒子が付着することもなくなる。よって、ろ過再開時に膜モジュール101の透過水側から剥離した微粒子を計測した微粒子カウンタ104が異常値を示して原水漏洩等と誤判定することを防止できる。また、配管内で成長した微粒子が剥離して微粒子カウンタ104の値が上がることが無いので、正常な数値に戻るまで待たなければならなかった従来のタイムロスを削減できる。
【0021】
以下、上記膜ろ過装置100を用いて、逆洗処理における水の滞留防止を検証した結果を説明する。
図2は、ろ過再開時に処理水中の0.5μm以上の微粒子数を微粒子カウンタ104で計測した結果を示す。微粒子カウンタ104による異常検知は、微粒子数100個/mL以上を異常と判断する。
【0022】
従来装置では第2の配管308に逆洗用のろ過水が滞留して配管内が汚染されていたため、ろ過再開時の処理水中の微粒子数が1時間以上経過しても100個以下に安定しなかった。このため、微粒子カウンタ104が異常検知と誤判定したり、判別遅延したりしていた。
【0023】
本膜ろ過装置100では、第2の配管108での逆洗用のろ過水の滞留が解消されたため、ろ過再開時のろ過水中の微粒子数が30分以内に100個以下に安定していることが判る。その結果、微粒子カウンタ104の誤判定及び判別遅延の問題を解消することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、逆洗ラインから供給される逆洗用のろ過水を膜モジュールの透過水側から原水側に向けて供給して逆洗を行う膜ろ過装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる膜ろ過装置の構成図
【図2】上記一実施の形態の膜ろ過装置と従来の膜ろ過装置との逆洗後の微粒子数を比較した検証結果を示す図
【図3】従来の膜ろ過装置の構成図
【符号の説明】
【0026】
100…膜ろ過装置、101…膜モジュール、104…微粒子カウンタ、105…第1の配管、106…貯留槽、107…第1のバルブ、108…第2の配管、109…逆洗用ポンプ、110…第2のバルブ、113…第3の配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水をろ過処理する膜モジュールと、前記膜モジュールでろ過処理された処理水を貯留する貯留槽と、前記膜モジュールの透過水側と前記貯留槽とを連通する第1の配管と、前記第1の配管の途中に設けられた第1のバルブと、一端が前記貯留槽内の透過水の水位以下に挿入され他端が前記第1の配管の前記第1のバルブと前記膜モジュールとの間に連結された第2の配管と、前記第2の配管の途中に設けられた第2のバルブと、前記貯留槽の水位よりも高い位置に配置され前記第2のバルブよりも貯留槽側の第2の配管途中に設置された逆洗用ポンプと、一端が前記第1の配管の前記第1のバルブよりも貯留槽側に連結され他端が前記第2の配管の前記逆洗用ポンプよりも貯留槽側に連結された第3の配管と、を具備したことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項2】
前記膜モジュールでろ過処理を行う場合、前記第1のバルブを開くと共に前記第2のバルブを閉じて前記膜モジュールの原水側へ被処理水を供給し、当該膜モジュールの透過水側から排出される処理水を前記第1の配管を通して前記貯留槽へ送ると共に、前記第1の配管を流れる処理水の一部を前記第3の配管経由で前記第2の配管へ送り込み当該第2の配管から前記貯留槽へ送り、
前記膜モジュールの逆洗処理を行う場合、前記第1のバルブを閉じると共に前記第2のバルブを開いて前記逆洗用ポンプを駆動し、前記貯留槽から吸い上げた処理水を前記第2の配管を経由して前記第1の配管へ送り込んで前記膜モジュールの透過水側に供給し、
前記逆洗処理からろ過処理へ切替える場合、前記逆洗用ポンプを停止させ、前記第2のバルブを閉じると共に前記第1のバルブを開き、前記第2の配管内の処理水を前記貯留槽へ排出することを特徴とする請求項1記載の膜ろ過装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−585(P2009−585A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161014(P2007−161014)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】