説明

膜上で生細胞を検出するための、NOG、HMP、塩化ルビジウム及び/又は塩化リチウムを含む細胞透過処理のための組成物

【課題】食品又は薬品のための生産鎖に侵入する、液体及び気体媒質の微生物品質管理に適用される細胞透過処理のための新規組成物。
【解決手段】オクチル−β−D−グルコピラノシド(NOG)と、ポリリン酸ナトリウム(HMP)、及び塩化リチウム又は塩化ルビジウムから選択される塩との組み合わせを含む、微生物の壁の透過処理のための組成物であって、膜上に沈殿、培養して微笑コロニーを形成させた生細胞を前記組成物を用て細胞の計数及び同定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(NOG)と、ポリリン酸ナトリウム(HMP)とならびに塩化ルビジウム及び/又は塩化リチウムから選択される塩と、の組み合わせを含み、細胞の生存能力を維持しながら蛍光性マーカーを用いて細胞を標識することを可能にする、細胞透過処理のための新規組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、ろ過膜上で液体又は気体試料に含有される生細胞を検出及び/又は同定するための方法にも関する。
【0003】
本発明は、とりわけ、例えば食品又は薬品のための生産鎖に侵入する、液体及び気体媒質の微生物品質管理に適用される。
【背景技術】
【0004】
この分野において、汚染物質は、大量の水又は気体中で希釈された、様々な細胞形態で、特にグラム陽性又はグラム陰性細菌の形態で存在し得る。
【0005】
しかし、これらの細胞を単純に検出することでは十分ではなく、それらを正確に同定すること及びこれらの媒質中でそれらが生細胞であり、その使用前に空気又は水に対して行われ得る処理の結果として死滅した細胞ではないことを確実にすることも必要である。例えば、塩素又はオゾンでの水の処理によって、媒質中に死んだ細胞が残され得、それは視覚的に検出され得る(結果として汚染源とはならない。)。
【0006】
ろ過膜上の液体又は気体媒質中で制限時間内に生細胞の存在を検出するために多くの検出方法が先行技術において記載されている。これらの方法は一般に、
ろ過膜を通じて前記液体又は気体媒質をろ過する段階と;
栄養培地と接触させて、数時間、前記膜を温置する(その間に、裸眼では見えない微小コロニーを形成させるように、ろ過により膜上に維持される細胞が分裂する。)段階と;及び
様々な発光又は蛍光技術により、微小コロニーを形成する細胞クローンを検出する段階と、
を含む。
【0007】
このような方法は、例えば、明細書WO01/59157に記載されている。この方法は、「Millflex Rapid」(Millipore)の名称により知られる、生細胞の検出のためのユニバーサルキットの開発の主題である。この方法において、細胞を検出する段階は、そのアデノシン三リン酸(ATP)含量を放出させるために、ろ過され、ろ過膜上で温置される細胞を溶解することからなる。放出されたATPは、生細胞(ATP−バイオ発光)を同定し、定量するためのマーカーとして使用され、これは、化学発光反応を生じさせることができる酵素(ルシフェラーゼ)に対する基質となる。この化学発光反応は、光シグナルを生じ、これは、ビデオインターフェース(CCDカメラ)を通じて捕捉され、次いで、合成画像の形態で保存される。この合成画像により、寒天培地中でペトリ皿で行われる従来の計数と同様に、インシトゥで微生物が発生した膜の部位を視覚化することが可能になる。
【0008】
ATPは全ての生きている生物において豊富に存在する分子であるため、この技術は、生細胞を普遍的に検出するという長所がある。そのため、この技術によって、試験される試料に存在する多くの汚染物の信頼できる指標を得ることが可能となる。
【0009】
一方、ATPの抽出には、細胞溶解、従って細胞を死滅させることが必要であり、このため、その性質を調べるために、即ちその種を調べるために、続いて微生物を培養することができない。
【0010】
従って、混入に関して得られる情報は、定量的であり、定性的なものではない。
【0011】
膜上の細胞を検出するための別の方法は、特許出願FR2289984に記載されている。この方法において、ろ過膜に維持された細胞を検出する段階は、特異的なハイブリッド形成プローブを用いて行われる。ポリエチレンイミン(PEI)及びエタノールを組み合わせる透過処理組成物を用いることによって、細胞壁が検出プローブにとって浸透可能になり、次に、これらのプローブが細胞の内側に入ったら、そのプローブは、細胞内側に存在するゲノムRNA又はDNA配列と特異的にハイブリッド形成させられる。これらのプローブは、一般にポリヌクレオチドであり、混入物の1以上の種を標的とするように核酸と特異的にハイブリッド形成することができるように選択される。蛍光又は発光剤で標識されているプローブは、洗浄段階後、細胞を膜上で見出すことを可能にするカメラを用いて、検出される。
【0012】
より特異的ではあるが、この検出方法によって、生細胞と死んだ細胞とを明確に区別することはできない。実際に、プローブのハイブリッド形成は、生細胞と死んだ細胞の両方で起こり得、従って、偽陽性となる。さらに、透過処理組成物は一般に、細胞壁の完全性を維持することができるにしても、その様々な段階での方法によって、特に、セルロース膜上での細胞の固定段階ゆえに、細胞を生きた状態に維持することができない。
【0013】
明細書WO2004/050902は、膜上での検出の別の系を記載するが、この系によって微生物混入血液試料の存在を検出することが可能となる。この方法は、微生物の溶解を引き起こすことを回避するように設計されている。この系の具体的な性質は、微生物の検出が、ろ過前の微生物への標識剤の浸透により行われ、一方、微生物が液体培地中に依然として存在するという事実にある。この点で、膜上でろ過され、細胞が検出される前に、試験されるべき液体試料は、標識剤及び透過処理試薬を含む透過処理溶液中で希釈される。
【0014】
使用される標識剤は、小さい分子、特に、シアニン誘導体、ヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ又は臭化エチジウムなどのDNA挿入化合物である。これらの化合物は、比較的容易に、ポリエチレンイミン(PEI)、ジギトニン、ノネンシン、ポリミクシン又は塩化ベンザルコニウムなどの当業者にとって公知の透過処理試薬の作用を介して、微生物の壁を横切って浸透する。これらの挿入剤は、即ち試料に含有される生細胞によって独占的に、DNAの転写又は複製中に核酸の内側に結合させられる。
【0015】
この方法によって、細胞の生存能を維持しながら生細胞を普遍的に標識することができるようになる。しかし、膜上でのろ過前に細胞が液体媒質中で標識されるということから、得られる最終的な計数結果に関して不明瞭な点が出てくる。実際に、細胞の標識中に液相中で細胞が分裂する場合、膜上で検出される細胞数は、最初に存在する細胞数の2倍となり得る。さらに、透過処理及び標識組成物による液体試料の希釈により、最終的な結果に非常に大きな誤差が持ち込まれ、その誤差範囲は、検出を首尾よく行うために必要とされる液体操作に関連する偶発的な混入の可能性により大きくなる。
【0016】
さらに、この状況において、標識細胞をろ過し、膜上で個々に、即ち細胞ごとに検出する。その結果は、細胞それぞれに対し、低い検出シグナルである。この問題は、とりわけ、蛍光マーカーが使用される場合に起こる。実際に、使用される膜(通常はPVDF又はセルロース製)は、それ自身、細胞由来の弱い蛍光シグナルを隠蔽する、ある程度の蛍光を生じる。
【0017】
いわゆる「蛍光性」マーカーが、過去数年にわたり開発されてきた。これらのマーカーは、酵素によってそれらが前もって活性化された場合に蛍光領域でのみ放射するという特徴を有する。これらの複合体分子は、通常、光エネルギーを吸収し、特徴的な蛍光放射スペクトルの形態でこのエネルギーを復元することができるフルオロフォア基及び、それ自身を顕在化することから前記フルオロフォアの蛍光を隠蔽又は妨害することができる別の基を含む。酵素は、第一のものの蛍光を検出することができるように、この第二の基を修飾する効果を有する。
【0018】
これらの蛍光マーカーは、例えばWO98/55861に記載のようなサイトメトリーによる生細胞のカウントに特に有用であることが分かっている。しかし、この明細書が強調するように、蛍光性物質で標識された細胞の場合、蛍光シグナルは、膜上で個別に検出するには弱すぎることが多く、これは、DNA挿入剤(蛍光性である。)を用いて上記で直面する問題と同様である。
【0019】
WO96/14431は、微生物を検出するための、とりわけ、コリフォーム細菌の検出のための技術を記載しており、蛍光性マーカー:β−グルクロニダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼを活性化する可能性がある酵素をこれらのグラム陰性細菌が産生する能力に基づく。使用される、対応する蛍光性基質は、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gal)、4−トリメチルフルオロメチル−ウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(TFMU−gal)及び4−トリメチルフルオロメチルウンベリフェリル−β−D−グルコロニド(TFMUG)である。この技術は、上述の方法と同じ原理に基づき、この場合、コリフォーム細菌が存在する液体又は気体試料を最初にろ過し、次に、細菌をろ過膜上で温置し、上記の蛍光性基質を用いて、形成される微小コロニーを検出する。
【0020】
しかし、この技術にはある種の欠点がある。
【0021】
これらの欠点の第一は、この検出法がβ−グルクロニダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼを合成するある種のグラム陰性細菌(コリフォーム)にのみ適用可能であることである。
【0022】
第二の欠点は、細胞により産生されるβ−グルクロニダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの定量が、通常、検出可能シグナルを得るには低すぎることである。従って、満足のいく感度を得るために、イソプロピル−β−チオガラクトシド(IPTG)などの、β−グルクロニダーゼ及びβ−ガラクトシダーゼの発現の合成誘導剤で細胞を処理する必要がある。
【0023】
検出シグナルの強度が直接依存する別の欠点は、蛍光性マーカーの細胞への浸透に関する。この浸透が困難であるのは、マーカーの大きさ及びその蛍光性マーカーが流出機構により細胞から放出される傾向を有するという事実による。
【0024】
細胞へのマーカーの浸透を促進するために、先行技術は、リゾチームと組み合わせて抗生物質ポリミキシンB及びコリスチンなどの細胞透過処理試薬を使用し、40℃で細胞を温置することを教示する。しかし、この透過処理は、コリフォーム細菌に対しては十分であることを証明し得る一方、探索される病原体である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などのグラム陽性細菌に対しては満足するには程遠い。さらに、透過処理試薬としてのポリミキシンB及びコリスチンなどの抗生剤の使用によって、細菌の生存能を維持することができない(Petersen J.P.ら(2006)J.Antimicrobial.Chem.57:573−576)。
【0025】
従って、上述の方法は、コリフォーム細菌の検出に限定されているだけでなく、細胞を生きたままにしておくこともできない。
【0026】
結果として、先行技術の方法によって、様々な種由来(生細胞の普遍的検出)の媒質中の細胞数を評価するのに有用な定量的情報及び存在する前記種の特徴を調べることを可能にする定性的情報の二重の要件を十分に満たすことはできない。
【0027】
従って、依然として、広いスペクトルを有する、即ち、より脆弱なものに対して攻撃的過ぎることなく、様々なタイプの多くの細胞種を透過処理できるようにする、透過処理組成物を得ることができることが必要である。
【0028】
例えば、ペプチドグリカン(ペプチド及び多糖鎖からなるポリマー)からなる厚い外層がある一重膜を有するグラム陽性微生物は、その壁がより脆弱な二重膜(ここでは、ペプチドグリカンがより少なく、より分散している。)からなるグラム陰性細菌と同じ構成を呈さず、結果として、同時にこれらの2種類の微生物の透過処理を行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】国際公開第01/59157号パンフレット
【特許文献2】仏国特許出願第2289984号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/050902号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/55861号パンフレット
【特許文献5】国際公開第96/14431号パンフレット
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】Petersen J.P.他、J.Antimicrobial.Chem.57、2006年、p.573−576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、特に、総じて生細胞の蛍光標識化に関するグラム陽性及びグラム陰性細菌の透過処理に関して、上述の既存の検出系の問題に取り組むことである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
驚くべきことに、発明者らは、NOG、HMP及び塩化ルビジウム及び/又は塩化リチウムの組み合わせによって、膜上で、グラム陽性及び陰性細菌の満足できる透過性を得ることができるようになることに気付いた。
【0033】
この透過処理には、検出細胞の生存能を維持でき、従って、特にその特徴を調べる目的のために、検出細胞を続いて培養することができるという有利な点がある。
【0034】
本発明は、有効量で、NOG(既知の透過処理試薬である。)とHMP(強力な界面活性剤であり、これは、細胞壁における保護作用よりむしろ破壊的作用を有すると予想される。)を組み合わせることの重要性を強調する。
【0035】
本発明はまた、塩化ルビジウム及び塩化リチウムの使用によって、NOG及びHMPの組み合わせを含む透過処理組成物の効率を十分に向上させることができるということも強調する。
【0036】
本発明の主題である透過処理組成物によって、とりわけ、蛍光性化合物又はプローブによる膜上での細胞の標識のための方法の使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による蛍光標識細胞の検出の原理。
【図2】表1でまとめた組成物1から7を用いて得られた検出結果の図面での説明。y軸は、使用した各組成物に対して得られた平均蛍光強度を指す。x軸は、前記組成物(それぞれをE.コリ及びS.アウレウスに対して試験)を並置する。LiRb、NOG、HMP、LiRb/NOG、Chl/HMP、NOG/HMPという表現及び組成物1から7に対応する処方はそれぞれ表1でまとめる。
【図3】組成物11及び12での細胞(E.コリ、ATCC8739)の透過処理後に5/6−CFDAで標識することによって蛍光を生じた微小コロニーの写真。 A:塩化ルビジウムを含まない組成物11で透過処理した細胞のコロニー。 B:塩化ルビジウムを含む本発明による組成物12で透過処理した細胞のコロニー。 これらの写真において、組成物12によって、組成物11よりも細胞をより明確に検出できるようになることが明らかである。
【図4】組成物11及び12で処理されたコロニー周囲の蛍光強度の位相的分布。 A:塩化ルビジウムを含有しない本発明による組成物11で透過処理した細胞のコロニー。 B:塩化ルビジウムを含む組成物12で透過処理した細胞のコロニー。 この分析から、塩化ルビジウムを含む本発明による組成物12を使用した場合に、蛍光がより強くなり、局在化が促進されることが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の第一の態様は、その細胞へのマクロ分子の浸透を引き起こすのに有用な細胞透過処理のための組成物からなる。
【0039】
マクロ分子は、一般に分子量が1000ダルトンを超え、殆どの場合、5000ダルトンを超える、タンパク質、核酸、多糖類など、いくつかの同様又は異なる化学基の共有結合による集合の結果得られる複合分子である。
【0040】
本明細書において、細胞は、膜により境界が定められる細胞質を含み、核酸の形態で遺伝物質を含有する、小サイズの生物学的存在として定義される。
【0041】
「微生物」という用語は、本発明の目的に対して、藻類、単細胞性菌類、原生動物、真菌、細菌又は配偶子などの、顕微鏡的サイズである、即ち0.5から5ミクロンの間のサイズである、代謝能及び再生能を有する細胞に関する。
【0042】
探索される微生物は、とりわけ、シュードモナス属(Pseudomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、レジオネラ属(Legionella)、サルモネラ属(Salmonella)、リステリア属(Listeria)、バチルス属(Bacillus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア属(Yersinia)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、ミコバクテリア属(Mycobacterium)、赤痢菌属(Shigella)、クロストリジウム属(Clostridium)、カンピロバクター属(Campylobacter)又はエアロモナス属(Aeromonas)の病原性のグラム陽性又は陰性細菌;ジアルジア属(Giardia)、エントアメーバ属(Entamoeba)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、シクロスポラ属(Cyclospora)の原生動物;マイコプラズマ属(Mycoplasma)及びウレアプラスマ属(Ureaplasma)のマイコプラズマ;サッカロミセス属(Saccharomyces)、アスペルギルス属(Aspergillus)、カンジダ属(Candida)又はペニシリウム属(Penicillium)の菌である。
【0043】
本発明の目的は、とりわけ、細胞の生存能を維持しながら、いわゆる蛍光性マーカーの細胞への浸透を引き起こすことである。
【0044】
本発明の目的に対して、細胞の生存能は、細胞を栄養培地に移した後の細胞の分裂能によって調べる。
【0045】
本発明の目的に対して、蛍光性マーカーは、光エネルギーを吸収し、特徴的な蛍光発光スペクトルの形態でこのエネルギーを保持することができるフルオロフォア基を含む巨大分子である。フルオロフォア基は、特異的酵素の作用による巨大分子の立体構造の変化によって、予想される波長での蛍光発光が調節されるように、巨大分子中に位置する。一般に、この活性化を起こすことができる酵素は、巨大分子中の特定の結合に向けられたエステラーゼ活性を有する。従って、これは、特定の酵素の存在下でのみ検出することができる蛍光マーカーである。この酵素は細胞中に存在し、標識されるためには細胞が生きていることが必要であることを意味する。
【0046】
2種類の蛍光性マーカー:蛍光性化合物及び蛍光性プローブを本発明により区別することができる。
【0047】
蛍光性化合物は、上記で定義されるような蛍光性マーカーである。これらによって、これらが浸透するあらゆる生細胞を検出することが可能になる(ただし、それらの活性化を可能にする酵素がそこに存在する場合。)。これらの蛍光性化合物は、好ましくは、FDA(フルオロセインジアセテート)、6−CFDA(6−カルボキシフルオレセインジアセテート)、5−CFDA、5/6−CFDA、5−マレイミドFDA、フルオレセインジラウレート、フルオレセインジブチレート、5(6)2’,7’−ジクロロ−CFDA、5(6)−スルホ−FDA、5(6)2’,7’−ジクロロ−FDA、5,6−CFDA−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、フルオレセインジプロピオネート、ジ−β−D−ガラクトシドフルオレセイン、3−o−メチルフルオレセインホスフェート、2’,7’−ビス(カルボキシエチル)−5(6)−カルボキシ−フルオレセインのペンタアセトキシエステル(BCECF/AM)、アジドフルオレセインジアセテート、クロロメチルフルオレセインジアセテート、エオシンジアセテート、カルボキシエオシンジアセテート、4−メチルウンベリフェリルアセテート、4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトシド、4−メチルウンベリフェリルα−D−マンノピラノシド、4−メチルウンベリフェリルノナノエート、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、メチル−1−ウンベリフェリルグルコロミド、アラニン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシン−7−アミノ−4−メチルクマリン、プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、バリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシル−L−プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、1,4−ジアセトキシ−2,3−ジシアノベンゼン(ABD)、ヒドロエチジン、レゾルフィンアセテートから選択される。
【0048】
これらの化合物は当業者にとって周知である(Manafi、M.、「Fluorogenic and chromogenic enzyme substrates inculture media and identification tests」(1996)Journal of Food Microbiology 31:45−58)。
【0049】
蛍光性プローブは、蛍光性化合物(好ましくは上記で列挙されるもののうち1つ)と、細胞中に含有される核酸のハイブリッド形成によって特異的な検出を可能にするプローブとを組み合わせた化合物である。最も一般的な特異的プローブは、微生物のDNA又はRNA中に含有されるものと相補的な配列を形成する通常10から40ヌクレオチドの間の長さを有するオリゴヌクレオチド断片を含む。このタイプのプローブに対する好ましい標的RNAは細胞の16S RNAであり、これは、通常、一般に探索される病原微生物に特異的な配列を含む。
【0050】
PNA(ペプチド核酸)タイプのプローブもまた、このタイプの検出において有利なプローブを構成し得るが、これは、これらが、細胞中に存在する分解酵素に対して感受性が低いペプチド骨格を有するからである(Arghyaら、「Peptide nucleic acid(PNA):its medical and biotechnical applications and promise for the future」The FASEB Journal.14、2000年、p.1041−1060)。
【0051】
一般に、蛍光性プローブは、プローブがその標的と特異的にハイブリッド形成するということ又は、あるいは、プローブが細胞ゲノムにその複製中に組み入れられているということに蛍光発光が依存するように設計される。これらのプローブは、消光剤(いわゆる、ハイブリッド形成又は細胞のゲノムへのプローブの組み入れがない場合に第一のフルオロフォアの蛍光を吸収する第二のフルオロフォア基)を含むことが多い。このようなプローブ(BeaconTMプローブなど)は当業者にとって公知である(Salvatore A.E.ら「Real time assays with molecular beacons and other fluorescent nucleic acid hybridization probes」(2005)European journal of internal medicine)。
【0052】
特に膜上での微生物に関して、細胞を検出するための蛍光性マーカーの使用には、上記で想起されるいくつかの欠点(特に、細胞壁に永久的に損傷を与えることなく、十分な数で、これらの分子(通常、サイズが大きい。)の浸透を引き起こすことが困難であること)がある。
【0053】
本発明は、次のもの:
N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(NOG)の少なくとも0.01%の最終濃度(重量体積)と;
ポリリン酸ナトリウム(HMP)の少なくとも0.01%の最終濃度(重量体積)と;及び
塩化ルビジウム及び/又は塩化リチウムの少なくとも1mmol/Lの最終濃度(モル/L)
を含む組成物を提供することによって、この問題を克服することに成功している。
【0054】
本願の実験部分で与えられる様々な実験から、NOG、HMP及び塩化リチウム又は塩化ルビジウムを組み合わせると、その結果、蛍光性マーカーによって、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の両方の微生物の広いスペクトルを検出することを可能にする透過処理組成物が得られることが明らかである。
【0055】
この組成物は、検出段階後に細胞を培養することができるように、細胞を死滅させることなく蛍光性マーカーを浸透させるという驚くべき効果を有する。
【0056】
N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(C1428)(CAS:29836−26−8)は、先行技術においてグラム陰性細菌で透過処理効果を有することが知られる膜タンパク質可溶化剤である。しかし、下記の結果が示すように、グラム陽性細菌を透過処理するのには適切ではないと考えられる。
【0057】
好ましくは、NOGの最終濃度は、約0.03から0.2%の間であり、より好ましくは、約0.05から0.2%(組成物の総重量)の間である。
【0058】
ポリリン酸ナトリウム(HMP)は、一般組成(NaPO(CAS50813−16−6)のポリメタリン酸ナトリウム(CAS50813−16−6)に基づく塩の混合物である。これらの塩は、モノ−オルトホスフェートを融解させ、次いで急冷することにより調製される。この結果得られるものは、トリメタリン酸ナトリウム及びオルトリン酸ナトリウムの形態で加水分解される、水によく溶ける結晶性構造(Calgon S)である。HMPは、分散剤及び界面活性剤として使用される。時として、この能力において、これは、細胞透過処理のための組成物に入り得る。しかし、これを含有する組成物は、細胞に対して攻撃的であり、これにより細胞の生存能を維持することはできない。下記の結果が示すように、HMP単独の使用は、グラム陰性細菌の透過処理に関して十分ではない。
【0059】
HMPの最終濃度は、通常、0.1重量%から2重量%の間であり、より一般的には約0.5重量%から1.5重量%の間であり、好ましくは1%を超える。
【0060】
塩化リチウム(LiCl)及び塩化ルビジウム(RbCl)は、一般に塩化ナトリウム(NaCl)(非常に安価であり、この使用はより広く普及している。)と同じ特性を有するので、微生物学においてあまり使用されない塩である。
【0061】
しかし、驚くべきことに、塩化リチウム及び塩化ルビジウムによって、本発明に関連して、及び非常に様々な割合で、特に膜上で微小コロニーを標識する場合、蛍光性化合物の検出を促進することができる。これらの塩の使用によって、特に蛍光検出器により妨害されるシグナルをより明確にすることができる。この効果は図3で与えられる合成画像で認知可能であるが、これは、細胞壁がより脆弱になるという事実に関連して、微小コロニー周辺の蛍光性マーカーの拡散度がより低いことによるものであり得る。図4で示されるように、微小コロニーのレベルでの蛍光分布プロファイルの比較により、標識された細胞のレベルで蛍光強度がより高くなり、局在化が促進されることが明らかである。
【0062】
好ましくは、塩化ルビジウムの最終濃度は、約1から20mmol/Lの間である。適切であれば、塩化ルビジウムの最終濃度は、約10から15mmol/Lの間である。
【0063】
好ましくは、塩化リチウムの最終濃度は、約0.5から2mol/Lの間であり、より好ましくは、約1から2mol/Lの間である。
【0064】
記載の実験において最適であることが証明された2種類の塩の混合物として、本発明の好ましい態様による透過処理組成物は、混合物の形態で、塩化リチウム及び塩化ルビジウムを含む。この混合物中の塩化リチウムと塩化ルビジウムとの間の比は、好ましくは、10から1000の間、好ましくは、50から200の間である。
【0065】
これらの化合物:NOG、HMP及び塩化リチウム及び塩化ルビジウムから選択される塩の組み合わせが、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の両方の壁を透過処理するのに特に適切である理由は正確には分からない。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によると、上記で定義されるような透過処理組成物は、水溶液中又はMOPS、MESもしくはHEPES緩衝液中である。実際に、組成物がPBS型(リン酸緩衝食塩水)の緩衝液を含有しないことは有利である。PBS型の緩衝溶液は、本発明による好ましい蛍光性マーカーである、CFDA又はFDAなどの多くの蛍光性化合物の多くと適合しなかったことが分かった。
【0067】
本発明による組成物は、上記で定義されるような少なくとも1つの蛍光性マーカーを含み得る。しかし、蛍光性マーカーはまた個別に保存され得、例えばいわゆる標識溶液に組み込まれ、透過処理細胞の検出時に直接適用され得る。
【0068】
本発明は、特に、細胞の計数及び/又は同定のための方法において、上記で定義されるような透過処理組成物の使用に関する。
【0069】
前記組成物は、特にグラム陽性及びグラム陰性微生物両方において、特に様々なタイプの細胞を同時に探索しようとする場合、(蛍光による?)蛍光の生細胞の検出に対して特に有利である。
【0070】
従って、本発明の主題は、とりわけ、次の段階:
a)1以上の生細胞を膜上に沈殿させる段階;
b)膜上に沈殿させた細胞を請求項1から請求項9の何れか1項に記載の透過処理組成物に接触させる段階;
c)同時又は連続的に、微生物の壁を横断できる1以上の蛍光性マーカーに、透過処理された細胞を接触させる段階;
d)細菌の内側に浸透したマーカーを蛍光により検出する段階
を含むことを特徴とする、膜上での生細胞の計数及び/又は同定のための方法である。
【0071】
一般に、段階a)での細胞は、膜を通じた液体又は気体媒質のろ過により膜上に沈殿しており、この膜において細胞が最初に見られる。
【0072】
液体又は気体媒質という表現は、本明細書において、平均孔径が通常0.1から1.5のミクロン、好ましくは0.15から0.8ミクロン、より好ましくは0.2から0.6ミクロンの膜の両側で圧力差をかけることによりろ過され得る何らかの流体を意味するものと理解されたい。このような流動体は、滅菌製品の製造に入る純粋な溶液だけでなく、飲料水、飲料、医学的体液(血清、尿、羊水など)などの複合溶液からなり得る。
【0073】
本方法は、従って、動物又は患者から得られた液体試料の分析のための診断分野において適用があり得る。
【0074】
「膜」という表現は、本願において、2つの面があり、その平均孔径が既知である合成支持体を指す。
【0075】
本発明に関連して使用される膜は、通常、高い表面/体積比及び好ましくは10から200ミクロンの間の一定の厚さを有する。
【0076】
このような膜は、単層又は多層の形態であり得る。これは、通常、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(ビニリデン)フルオリド(PVDF)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、アセチルセルロース及びニトロセルロースから選択される1以上の材料からなる。
【0077】
この材料は、好ましくは、使用される溶媒(特に本方法の様々な段階で使用され得るアルコール及びアルデヒド)と適合するように選択される。
【0078】
微生物が検出される膜は、好ましくは、主に、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)又はNylon(R)からなる。より好ましくは、これは、Milliflexという商標及び参照番号MXHVWP124又はRMHVMFX24のもとMillipore(R)から市販されているタイプのPVDF膜フィルターである。ろ過は、行われる場合、例えば、「Milliflex(R)」の名称により知られるMillipore(R)ろ過モジュールにより行い得る。
【0079】
微生物をろ過し、膜上に保持したら、段階a)と段階b)との間に、その方法において、適切な培地と接触させて微生物を培養する任意段階が含まれ得る。この培地は、好ましくは寒天培地であり、この上にろ過後に膜を置く。任意であるこの段階によって、最初にろ過した各微生物のコロニーを得ることが可能となり、検出される細胞の数が増加する。
【0080】
本発明によると、次に、上述のような本発明による透過処理組成物に微生物を段階b)において接触させる。この段階は、好ましくは、膜の表面に薄膜を形成する少量の溶液中で行われる。あるいは、本透過処理組成物は、例えば、含浸パッド又は寒天など、膜が置かれる固体支持体中に含有され得、これによって、膜の表面での液体の移動、及び、従って微生物の混合の可能性が限定される。これは、約5から60分間、20℃から45℃の間の温度で行われる。
【0081】
段階c)において、場合によって、蛍光性マーカーが透過処理組成物に組み込まれる。あるいは、透過処理細胞を続いて前記マーカーに接触させる(即ち、前記マーカーを含む標識溶液と細胞を接触させることによる。)。次に、透過処理組成物を希釈する又は標識溶液で置き換える。
【0082】
蛍光性マーカーが特異的プローブからなる場合、標的化方式で、プローブの選択に依存して、いくつかのタイプの細胞又は微生物を検出することが可能である。
【0083】
標準的条件下で行われる蛍光センサーを用いて、蛍光の測定によって、検出の段階d)を行う。蛍光は通常、画像処理ソフトウェアを用いて、暗チャンバー中でCCDカメラにより捕捉され、これによって、画像処理ソフトウェアを用いて、蛍光性化合物により発光される光エネルギーを測定することが可能になる。
【0084】
本発明による方法は、膜上で直接細胞(細胞は生きている。)検出を行うことができるようになるという点で有利である。従って、この方法によって、検出段階d)の終了時に、適切な培地中で、特に、試験した微生物の特徴をより詳細に調べるために、検出細胞を培養することが可能となる。このようにして、存在する細胞種を検証することができる。
【0085】
本発明の別の態様は、細胞の検出及び/又は計数のために上述の方法を行うことを可能にするキットからなる。このようなキットは、通常、上記で定義されるような細胞壁の透過処理のための組成物及び、場合によって、蛍光性マーカー又はろ過膜などのさらなる成分を含む。
【0086】
好ましくは、ろ過膜は、主にセルロース、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)又はポリエーテルスルホンからなる膜である。
【0087】
続く実施例は、本発明を説明するものであり、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【実施例】
【0088】
1.1様々な透過処理組成物を用いて行われる蛍光検出
E.コリ(グラム陰性細菌)ATCC8739及びS.アウレウス(グラム陽性細菌)ATCC6538又はB.サブチリス(グラム陽性細菌)ATCC6633の試験株を、コレクションから得た凍結乾燥株から調製され、−80℃で凍結されたクライオチューブ(Dutscher、参照番号028049)中で保存した。
【0089】
クライオチューブの製造については、チューブの調製日に、TSブロス(Biomerieux、参照番号41146)の100mLボトルに接種し、35−37℃で温置する。増殖については、分光光度計(Eppendorf、Biophotometer、参照番号6131000.012)を用いて、一定間隔で600nmでのOD測定を行う。ODが0.5に到達したら増殖を停止させる。各クライオチューブに、凍結保護剤(Sigma、グリセロール入りの細胞凍結、参照番号C6039)600μL及び培養液600μLを入れる。このチューブを混合し、次いで−80℃に置く。
【0090】
10−5及び10−6希釈液を平板接種することにより、ブロス及び非凍結クライオチューブの計数を行う。ペプトン水の9mLボトル(Biomerieux、参照番号42111)中でこれらの希釈液を調製する。TSA寒天(Biomerieux、参照番号43011)上で、スクレーパーを用いて、各希釈液の100μLを平板接種し、35℃で24時間温置する。この操作を3回繰り返す。翌日、クライオチューブを凍結融解し、同様にして計数する。APIギャラリー(Biomerieux)によって、調製したクライオチューブの同定及び純度の確認を行うことができる。
【0091】
全ての試験について、ペプトン水のチューブ(Biomerieux、参照番号42111)中に細菌株を希釈する。所望の希釈が得られるまで、ペプトン水のチューブの9mLに対して、使用した株のクライオチューブの1mLを添加することにより、連続希釈を行う。試料あたり平均30個の細菌を得るために、濃度を調整した。寒天培地上での従来のカウント試験によって、ペトリ皿上でこの濃度を確認した。
【0092】
0.45μmの気孔率を有するセルロースエステル又はPVDF膜付きのMilliflex漏斗(Millipore、参照番号MXHVWP124)においてMilliflex Plus Vacuumポンプ(Millipore、参照番号MXP PLUS01)を用いてろ過を行う。生理食塩水0.9%NaCl(B.Braun、参照番号0066570E)の50−100mLに細菌を添加する。
【0093】
微生物が微小コロニーを形成するのに必要な時間、32.5℃±2.5℃の恒温器中で、固体培地、Milliflex Trypcase−soy agar(Millipore、参照番号MXSM CTS48)又はR2A(Millipore、参照番号MXSM CRA 48)のカセット上で膜を温置する。
【0094】
温置後、寒天培地から膜を離し、室温又は35℃で30分間、密封された支持体(Millipore液体培地用のカセットの吸収パッド、参照番号MXLM CO120)上で透過処理溶液2mLと接触させる。
【0095】
次の透過処理溶液を試験した:
組成物1
NaAc 50mM
LiCl 1.13M
RbCl 10mM

組成物2
NaAc 50mM
NOG 0.10%

組成物3
NaAc 50mM
HMP 1%

組成物4
NaAc 50mM
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
NOG 0.10%

組成物5
NaAc 50mM
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
HMP 1%

組成物6
NaAc 50mM
NOG 0.10%
HMP 1%

組成物7
NaAc 50mM
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
NOG 0.10%
HMP 1%

組成物8
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
NOG 0.10%
HMP 1%
HEPES緩衝液 20mM
組成物9
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
NOG 0.10%
HMP 1%
MOPS緩衝液 0.1M
組成物10
LiCl 1.13M
RbCl 10mM
NOG 0.10%
HMP 1%

組成物11
NaAc 50mM
NaCl 1.13M
NOG 0.10%
HMP 1%

組成物12
NaAc 50mM
RbCl 10mM
NOG 0.10%
HMP 1%

【0096】
100μg/mLの最終濃度にするために、DMSOで希釈したユニバーサル蛍光性マーカー(即ち5/6−カルボキシフルオレセインジアセテート(CFDA)(Sigma 21879−100MG)を透過処理組成物に添加する。35℃で30分間、マーカー基質と膜を接触させておく。次に、標識溶液から膜を取り出し、520から530nmの間で発光される蛍光を測定するために、カメラを備えたイルミネーターに置く。
【0097】
下記表1から3でまとめられた蛍光強度の結果は、Sherlock画像分析ソフトウェア(Insosys Inc.)を用いてCCDカメラにより捕捉され、最も近いピクセルに記録された光エネルギー(発光)に対応する。示される値は、0から255の間のスケールでの絶対的な測光値(測定発光とバックグラウンドノイズとの間の発光比)である。
【0098】
このソフトウェアは、値0が細胞非存在下での膜のみの蛍光に対応するように、パラメータ化される。測定の誤差の範囲は、±1.5と推定される。言及される様々な透過処理組成物は、上記で詳述する組成物1から7に相当する。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
1.2結果の解釈
組成物1から7で得られた比較の結果(図2及び図3)から、同じ透過処理組成物(本発明による組成物7)におけるHMP、NOG及び塩化ルビジウム及び/又はリチウムの組み合わせによって、E.コリ(グラム陰性)及びS.アウレウス(グラム陽性)の両方を十分に検出することができるようになることが示される。
【0104】
組成物8、9及び10で得られる結果から、リン酸塩、MOPS、MES又はHEPESなしの緩衝液が、まさに水のように、本発明による組成物に非常に適切であり、先行技術において使用されるPBS緩衝液に取って代わり得ることが示される。
【0105】
図3及び4において説明されるように、組成物11及び12の使用から、蛍光の強度及び局在化における塩化ルビジウムの正の効果が示唆される。図3(写真)から、本発明による組成物12で細胞を処理した場合、標識がより明確になることが示される。この効果は、裸眼で見ることができる(蛍光をよりよく視覚化することができるろ紙によって)。図4は、標識化微小コロニーのレベルで局在化測定が行われた場合に得られる蛍光強度差を与える。
【0106】
上記表4で報告される回収結果(これは、無処理の同じ細胞で比較した、本発明による組成物7を用いる細胞処理終了時の、生存能のある細菌数に対応する。)から、使用した微生物(グラム+及びグラム−)に関して細胞の生存能が維持されることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(NOG)の少なくとも0.01%の最終濃度(重量体積)と;
ポリリン酸ナトリウム(HMP)の少なくとも0.01%の最終濃度(重量体積)と;及び
塩化ルビジウム及び/又は塩化リチウムの少なくとも1mmol/Lの最終濃度(モル/L)と;
を含むことを特徴とする、細胞の生存能力を維持しながらその細胞への蛍光マーカーの浸透を引き起こすのに有用な細胞透過処理のための組成物。
【請求項2】
塩化リチウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩化ルビジウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
塩化リチウムと塩化ルビジウムとの混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中のHMPの最終濃度が0.1重量%から2重量%の間であることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
最終組成物中のHMPの濃度が1重量%を超えることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
NOGの最終濃度が0.03重量%から0.2重量%の間であることを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
塩化ルビジウムの最終濃度が1から20mmol/Lの間であることを特徴とする、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
塩化リチウムの最終濃度が0.5から2mmol/Lの間であることを特徴とする、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
水溶液中又はMOPS、MESもしくはHEPES緩衝液中であることを特徴とする、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
PBS緩衝液(リン酸緩衝溶液)を含まないことを特徴とする、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの蛍光性マーカーをさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
蛍光性マーカーが蛍光性プローブであることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
蛍光性マーカーが蛍光性化合物であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
蛍光性化合物が、FDA、6−CFDA、5−CFDA、5/6−CFDA、5−マレイミドFDA、フルオレセインジラウレート、フルオレセイン二酪酸、5(6)2’,7’−ジクロロ−CFDA、5(6)−スルホ−FDA、5(6)2’,7’−ジクロロ−FDA、5,6−CFDA−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、フルオレセインジプロピオネート、ジ−β−D−ガラクトシドフルオレセイン、3−o−メチルフルオレセインホスフェート、2’,7’−ビス(カルボキシエチル)−5(6)−カルボキシ−フルオレセインのペンタアセトキシエステル(BCECF/AM)、2’,7’−ビス(カルボキシエチル)−5(6)−フルオレセインのペンタアセトキシエステル(BCECF/AM)、アジドフルオレセインジアセテート、クロロメチルフルオレセインジアセテート、エオシンジアセテート、カルボキシエオシンジアセテート、4−メチルウンベリフェリルアセテート、4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトシド、4−メチルウンベリフェリルα−D−マンノピラノシド、4−メチルウンベリフェリルノナノエート、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、メチル−1−ウンベリフェリルグルコロミド、アラニン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシン−7−アミノ−4−メチルクマリン、プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、バリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシル−L−プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、1,4−ジアセトキシ−2,3−ジシアノベンゼン(ABD)、ヒドロエチジン、レゾルフィンアセテートから選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
蛍光性化合物がCFDA又はFDA又はその誘導体であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
細胞の計数及び/又は同定のための方法における、請求項1から請求項16の何れか1項に記載の透過処理組成物の使用。
【請求項18】
生細胞の蛍光検出のための、請求項1から請求項16の何れか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
グラム陽性又はグラム陰性細菌の計数及び/又は同定のための方法における、請求項1から請求項16の何れか1項に記載の透過処理組成物の使用。
【請求項20】
a)1以上の生細胞を膜上に沈殿させる段階;
b)膜上に沈殿させた細胞を請求項1から請求項9の何れか1項に記載の透過処理組成物と接触させる段階;
c)同時又は連続的に、微生物の壁を横断できる1以上の蛍光性マーカーに、透過処理された細胞を接触させる段階;
d)微生物の内側に浸透したマーカーを蛍光により検出する段階
を含むことを特徴とする、膜上での生細胞の計数及び/又は同定のための方法。
【請求項21】
膜を通じた液体又は気体媒質のろ過により、段階a)における細胞が膜上に沈殿させられ、そこで細胞が最初に見られることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
段階a)と段階b)との間に、段階a)で沈殿させられた細胞が段階b)で細胞の微小コロニーの形態で存在するように、膜上で微生物の培養が行われることを特徴とする、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
段階c)で使用される蛍光性マーカーが蛍光性プローブであることを特徴とする、請求項21から請求項22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記蛍光性プローブが、好ましくはオリゴヌクレオチド型又はPNA型の、ハイブリッド形成プローブであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
段階c)で使用される蛍光性マーカーが蛍光性化合物であることを特徴とする、請求項20から請求項23の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
段階b)で使用される前記蛍光性化合物が、FDA、6−CFDA、5−CFDA、5−マレイミドFDA、フルオレセインジラウレート、フルオレセインジブチレート、5(6)2’,7’−ジクロロ−CFDA、5(6)−スルホ−FDA、5(6)2’,7’−ジクロロ−FDA、5,6−CFDA−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、フルオレセインジプロピオネート、ジ−β−D−ガラクトシドフルオレセイン、3−O−メチルフルオレセインホスフェート、2’,7’−ビス(カルボキシエチル)−5(6)−カルボキシフルオレセインのペンタアセトキシエステル(BCECF/AM)、2’,7’−ビス(カルボキシエチル)−5(6)−フルオレセインのペンタアセトキシエステル(BCECF/AM)、アジドフルオレセインジアセテート、クロロメチルフルオレセインジアセテート、エオシンジアセテート、カルボキシエオシンジアセテート、1−メチルウンベリフェリルグルコロミド、4−メチルウンベリフェリルアセテート、4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトシド、4−メチルウンベリフェリルα−D−マンノピラノシド、4−メチルウンベリフェリルノナノエート、4−メチルウンベリフェリルホスフェート、アラニン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシン−7−アミノ−4−メチルクマリン、プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、バリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、グリシル−L−プロリン−7−アミノ−4−メチルクマリン、1,4−ジアセトキシ−2,3−ジシアノベンゼン(ABD)、ヒドロエチジン、レゾルフィンアセテートから選択されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
蛍光性化合物がCFDAもしくはFDA又はその誘導体であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
段階b)における検出が、蛍光センサーを用いて行われることを特徴とする、請求項20から請求項27の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
細胞の検出が膜上で直接行われ、細胞が生きていることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞が沈殿させられる膜が主にセルロース、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)又はポリエーテルスルホンからなることを特徴とする、請求項20から請求項29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
細胞が沈殿させられる膜が0.1から1.5ミクロンの間、好ましくは0.2から0.6ミクロンの間の平均孔径を有することを特徴とする、請求項20から請求項30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
検出される細胞が検出段階d)の終了時に培養されることを特徴とする、請求項20から請求項31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
a)少なくとも1つの蛍光性マーカーと、及び
b)請求項1から請求項11の何れか1項に記載の細胞壁の透過処理のための組成物と、
を含むことを特徴とする、細胞の検出及び/又は計数のためのキット。
【請求項34】
a)ろ過膜と、及び
b)請求項1から請求項16の何れか1項に記載の細胞壁の透過処理のための組成物と、
を含むことを特徴とする、細胞の検出及び/又は計数のためのキット。
【請求項35】
ろ過膜が、主にセルロース、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)又はポリエーテルスルホンからなる膜であることを特徴とする、請求項33又は請求項34に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247352(P2009−247352A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−84383(P2009−84383)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】