説明

膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物の同定法

【課題】膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物のスクリーニング及び膜貫通型タンパク質などのタンパク質がオリゴマーを形成可能か否かを判定する方法。
【解決手段】少なくとも1種類の膜貫通型タンパク質と相互作用する候補化合物をスクリーニング方法は、先ず、細胞に、少なくとも1つの核局在配列(NLS)および検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を細胞内で発現させ、次いで、細胞に候補化合物を接触させ、さらに、細胞内における検出用部分の分布を検出することによって細胞内における発現タンパク質の分布を決定する。第1のタンパク質と第2のタンパク質がオリゴマーを形成可能か否かを判定は、細胞の核内および核の近傍で検出用部分を検出するか、または対照細胞に対して、細胞表面での検出用部分のレベルの低下を検出することによって、第2のタンパク質と第2のタンパク質が相互作用を知り、オリゴマーを形成可能か否かを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関して化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明はさらに、二量体を形成するか、またはオリゴマーを形成して、2個もしくはこれ以上のタンパク質のグループを作る能力に関して膜貫通型タンパク質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
以後の説明では、本明細書の最後に挙げた、全体が参照として本明細書に組み入れられる引用文献を参照する。
【0003】
膜貫通型タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体、輸送体、チロシンキナーゼ受容体、サイトカイン受容体、およびLDL受容体を含む、いくつかの主なクラスに分類されている。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、構造および配列の相同性に基づいて複数のファミリーにグループ分けすることができる。ファミリー1(ファミリーAまたはロドプシン様ファミリーとも呼ばれる)は、現時点で最大のサブグループであり、カテコールアミン、ドーパミン、およびノルアドレナリン、ペプチド(オピオイド、ソマトスタチン、およびバソプレッシンなど)、糖タンパク質ホルモン(甲状腺刺激ホルモン刺激ホルモンなど)、ならびに全種類の匂い分子などの低分子量分子に対する受容体を含む(Georgeら、2002)。ファミリー2またはファミリーBは、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、およびセクレチンなどに対する受容体を含む。これらのGPCRは、ジスルフィド結合を形成する可能性のある、複数のシステインを含む長いアミノ末端を特徴とする。ファミリー3またはファミリーCは、代謝共役型(metabotropic)グルタミン酸受容体、Ca2+感知受容体、およびガンマアミノ酪酸(GABA)B受容体などの受容体を含む。これらの受容体も、複雑なアミノ末端を有することを特徴とする。すべてのGPCRは、7回膜貫通らせんを共通してもつが、さまざまなGPCRファミリー間に配列上の相同性はない。
【0004】
GPCRは、シグナル伝達の細胞表面メディエーターの最大の既知のグループであり、体内のあらゆる細胞に存在する。GPCRの作用は、脳、心臓、腎臓、肺、免疫系、および内分泌系が関与する機能のような、あらゆる生理機能を調節する。過去10年間にわたる多大な努力で、既知のリガンドに対する複数の受容体サブタイプを含む、多数の新しいGPCR、および「オーファン」受容体またはoGPCRと呼ばれる、内在性リガンドが未同定の受容体が多数同定されている(Leeら、2001;Leeら、2002;Baileyら、2001)。
【0005】
GPCRは、今日臨床的に使用されている、さまざまな疾患に対する多数の薬剤の優れた標的となっており、今日の薬剤市場の50%がこのような分子を標的とすると推定されている。既知のGPCRのなかで、約335種類の受容体が薬剤開発の標的と目されており、このうちリガンドが既知のものは195種類であり、残りの140種類は、リガンドの同定が待たれるoGPCRである。さまざまな方法が進歩していることで、新しい受容体発見のペースは加速しているが、リガンドおよび薬剤の発見のペースは大きく後れをとっている。従来の小規模な薬学的スクリーニングアッセイ法が当初、数多くのGPCRに対するリガンドおよび薬剤の発見に用いられてきたが、新しいアッセイ法の手順は引き続き求められている。
【0006】
GPCRは、細胞表面受容体の80%以上を占めるために、実質的な供給源となっており、また新薬開発のためのタンパク質標的の極めて重要なグループを構成する。GPCRと相互作用する薬剤は、高度に選択的であると考えられるが、これは相互作用が、受容体がもっぱら存在する細胞表面および組織に限定されるためである。GPCRの相次ぐ発見と、GPCRが薬剤の重要な標的であることがわかってきたことから、GPCRと相互作用する化合物を検出およびスクリーニングする優れた方法を考案しようという強い関心が薬学領域で生まれている。したがって、改善されたアッセイ法を得ることは、薬剤のスクリーニングおよび発見をさらに速やかに行うという目的に鑑みて急務である。薬剤開発過程の基本的な初期段階である、試験化合物と受容体間の相互作用を検出する能力を最適化することが求められている。
【0007】
あらゆるGPCRの特性解析を加速する、改善されたリガンド同定法では、リガンドの生理学的機能が決定され、新薬発見の可能性が現実化する。たとえ同定済みのGPCRに関しても、発見対象となる、選択性の極めて高い、サブタイプ特異的な薬剤は不足しており、また製薬企業は、決定済みの標的薬剤が多く存在するにもかかわらず、有望なリード化合物の不足に直面している。上位20社の製薬企業による承認薬のリストは、1999〜2001年の期間に、これに先立つ3年間と比べてかなり縮小している(Smith、2002)。したがって、内在性リガンドだけでなく、受容体と相互作用する新規化合物を、自動化が容易な迅速かつ効率的に検討して同定することを可能とする、改善された多目的のアッセイ系が真に必要とされている。
【0008】
oGPCRを活性化させるのに必要なシグナル伝達経路は予測できないので、(アデニリルシクラーゼ、PLC、cGMP、ホスホジエステラーゼの活性などの)エフェクター系が受容体に用いられる、事前の予測に依存しない相互作用化合物を対象とするアッセイ系が求められる。GPCRやoGPCRのリガンドを見つけることは重要な課題であるが、GPCRのリガンドもエフェクター系も多様なので、いくつかの既存のリガンド同定アッセイ法の使い勝手は制限される場合があり、薬剤開発の新たなアプローチが求められる。
【0009】
最近になって、組織抽出物、大規模リガンドライブラリー、および関心のもたれる特異的なリガンドを検討する優れたアッセイ系を用いるいくつかの方法で、いくつかのoGPCRに対する内在性リガンドの発見に成功している。このような方法は集合的に「逆向き薬理学(Reverse Pharmacology)」と呼ばれる(Howardら、2001)。作動物質化合物に応じて誘導される細胞活性の検討には、さまざまな方法が用いられており、例えば蛍光イメージングプレートリーダーアッセイ法(FLIPR、Molecular Devices社、カリフォルニア州サニーベール)、ならびにBarakら、(1997)の方法、およびGPCR刺激時のアレスチンの細胞表面への転位(translocation)を画像化するためのβ-アレスチン-緑色蛍光融合タンパク質の使用に関して開示された米国特許第5,891,646号および6,110,693号の方法などがある。
【0010】
こうした方法の短所として以下のような点が挙げられる:(1)受容体が可視化されるわけではないこと;(2)タンパク質の転位(translocation)に複雑な計算解析技術が必要なこと;(3)拮抗物質のスクリーニングに作動物質の事前の同定が必要なこと;ならびに(4)シグナルの発生に特異的なGタンパク質共役が必要なこと。
【0011】
リガンド結合と、GPCRによるシグナル伝達の機構は従来から、単量体受容体が同過程に関与するという仮定に基づきモデル化されており、またGPCRの単量体モデルが広く受け入れられている。しかし、1990年代の半ば以降、一部のGPCRがオリゴマーを形成するという多数の報告があり(Georgeらの総説、2002)、今日では、オリゴマーの形成がGPCRの構造および生物学的性質の固有の側面であることが認識されている。また一部の受容体サブタイプはヘテロオリゴマーを形成し、このような受容体には、均一な受容体集団とは異なる機能上の特徴がある。現時点で、GPCRのオリゴマー形成に関する研究では、二量体と、これより大きな複合体は区別されておらず、「二量体」という表現は、「オリゴマー」や「マルチマー」という表現と互換的に用いられている。機能性GPCRのオリゴマーがどの程度大きいかということを示す決定的なデータはない。ヘテロオリゴマー形成による新しい特性の出現が、GPCRの機能の多様性を生じる機構を示唆することは重要である。GPCRのホモオリゴマー形成は普遍的な現象として受け入れられており、また一部のGPCRは、ヘテロオリゴマー受容体複合体として集合することがわかっている(Georgeら、2002)。例えば、GABA-B1受容体およびGABA-B2受容体は個別には機能せず、同時に発現された場合に初めて機能性の受容体となる(Whiteら、1998)。ヘテロオリゴマー受容体複合体の集合は、新たな受容体-リガンド結合、シグナル伝達、または細胞内輸送の特性を招く場合がある。例えば、ミューおよびデルタオピオイド受容体を同時にトランスフェクトすると、個々の受容体の場合とは異なる機能的特性をもつオリゴマーが形成される(Georgeら、2000)。ミューおよびデルタオピオイド受容体は相互作用してオリゴマーを形成し、新たな薬学的特性およびGタンパク質共役特性が得られた。ミューおよびデルタオピオイド受容体を同時発現させたところ、選択性の高い作動物質(DAMGO、DPDPE、およびモルヒネ)の力価が低下してその順番は変わったが、内在性リガンドであるエンドモルフィン-1およびLeu-エンケファリンは親和性が高まったことから、新たなリガンド結合ポケットが形成されたことが示唆される(Georgeら、2000)。個別に発現されたミューおよびデルタ受容体とは対照的に、同時発現された受容体は、おそらく異なるサブタイプのGタンパク質との相互作用のために、百日咳毒素に不応性のシグナル伝達を示した。したがって、GPCRの特定のペアがヘテロオリゴマーを形成可能か否かを判定する手段を得ることは、潜在的な標的薬剤を同定するという観点から非常に有用な可能性がある。
【0012】
多くの報告でヘテロオリゴマーは、免疫沈降法で共沈する能力に注目して暫定的に同定されている。しかし、2つのGPCRが同時に免疫沈殿を生じることを示す際には、2つの解釈がありうる。1つは、受容体どうしが直接物理的に相互作用するという解釈であり、もう1つは両受容体が、共通の第3の1つのタンパク質(または複数のタンパク質)と接触して相互作用するという解釈である。受容体オリゴマーを検出する別のアプローチは、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いるエネルギー移動アッセイ法の開発である。これらの方法では、フルオロフォアで標識された2つの受容体分子間の、100オングストローム未満の距離におけるエネルギー移動を検出するが、受容体の構造変化がデノボのオリゴマー形成と高い信頼性で識別可能か否かは不明である。
【0013】
輸送体(transporter)とは、分子、イオン、および他の化合物を、細胞の内外に動かすタンパク質ポンプのことであり、事実上すべての細胞に存在する。輸送体は、構造、配列相同性、および輸送対象分子を元に、ファミリーに分類することができる。別個の輸送体が、モノアミン神経伝達物質(ドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン、およびGABAなど)に対して、アミノ酸(グリシン、タウリン、プロリン、およびグルタミン酸など)に対して、小胞モノアミン、アセチルコリン、およびGABA/グリシンに対して、糖類(グルコースおよび二糖類など)に対して、有機陽イオンおよび有機陰イオンに対して、オリゴペプチドおよびペプチドに対して、脂肪酸、胆汁酸、ヌクレオシドに対して、水に対して、またクレアチンに対して存在する。薬剤、毒素、および抗生物質などの大きな分子を細胞から運び出すポンプには例えば、P-糖タンパク質(多剤耐性タンパク質)ファミリーがある。機能が未だ不明な複数の関連輸送体もある(Massonら、1999)。このような輸送体は、一般に12個の膜貫通ドメインを有する、ポリペプチドからなる膜タンパク質である。グルタミン酸およびアスパラギン酸の輸送体は、成分が6〜10個のTMドメインを有し、他の輸送体と相同性のない別個のファミリーに属する(Massonら、1999)。アミノ末端およびカルボキシ末端はいずれも、膜の細胞内側に位置する。
【0014】
うつ病、パーキンソン病、統合失調症、薬剤依存症、トゥレット症候群、および注意欠陥障害を始めとする、多数の神経疾患および精神疾患にはモノアミン輸送体が関与すると考えられている。ドーパミン輸送体(DAT)は、コカインやメチルフェニデートなどの覚醒剤の主な標的である。同輸送体は、今日の臨床使用における、さまざまな疾患に関する多数の薬剤の優れた標的であり、特にフルオキセチン、セルトラリン(sertraline)、および他の関連する選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含む抗うつ剤である。分子レベルの方法上の進歩に伴い、既知の輸送体が同定されているが、リガンドおよび薬剤の発見のペースは遅い。従来の薬学的スクリーニングアッセイ法が、いくつかの輸送体に対するリガンドや薬剤の発見に用いられているが、新しいアッセイ法が緊急に求められている。あらゆる輸送体の特性解析を加速するようにリガンド同定法が改善されれば、さらに詳細に生理機能が決定され、新薬開発の可能性が現実のものとなるだろう。同定済みの輸送体に関しても、選択性の高い特異的な薬剤の発見は進んでいない。
【0015】
チロシンキナーゼ受容体ファミリー成分は、1つのリガンド結合ドメインを細胞外に有し、1つの膜貫通ドメインを有し、およびシグナル伝達に関するチロシンキナーゼ活性がある細胞内ドメインを有するという、構造上の類似性を特徴とする。受容体チロシンキナーゼにはいくつかのサブファミリーがあり、上皮成長因子(EGF)受容体(HER1またはerbB1とも呼ばれる)は、HER2、HER3、およびHER4も含むこのようなサブファミリーの4つの成分の1つである。EGF-Rの主要なリガンドはEGF、TGF-α、ヘパリン結合EGF、amphiregulin、betacellulin、およびepiregulinである(Shawverら、2002)。EGF-Rが活性化すると、これをきっかけとして別のEGF-R単量体、またはHERサブファミリーの別の成分のいずれかと二量体を形成する。リガンド結合およびシグナル伝達の著しい多様性は、ファミリー成分間のヘテロ二量体の形成によって生じる(YardenおよびSliwkowski、2001)。EGF-Rは、さまざまな組織で広く発現されており、細胞成長や組織修復などの重要な機能に関与する。EGF-Rの過剰発現は、頭頚部癌、肺癌、咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、腎癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、および神経膠腫などの多くのタイプの癌でみられ、予後不良と相関する(Nicholsonら、2001)。したがって、EGF-Rを標的とする薬剤の発見、およびこのような薬剤の同定を容易にする方法には大きな関心が寄せられており、また必要とされている。
【0016】
受容体チロシンキナーゼの他のサブファミリーには例えば、血管内皮因子の受容体(4種類)、および線維芽細胞増殖因子の受容体(4種類)がある。これらは血管形成に重要な役割を果たし、また発癌の特徴となる血管にみられる制御不能の増殖に重要な意味をもつ(HanahanおよびFolkman、1996)。
【0017】
サイトカイン受容体は膜を貫通するタンパク質であり、細胞外のリガンド結合ドメイン、固有のキナーゼ活性を有するおよび細胞内ドメイン、または細胞内キナーゼと相互作用可能なアダプター領域を含む。サイトカイン受容体は、構造の複雑さを元にサブクラスに分けられる。「単純な」サイトカイン受容体とは、成長ホルモン、エリスロポイエチン、およびインターロイキンに対する受容体を指し、また「複雑な」サイトカイン受容体には、腫瘍壊死因子受容体ファミリー、4回らせん(4-helical)サイトカイン受容体ファミリー、インスリン/インスリン様受容体ファミリー、および顆粒球コロニー刺激受容体などがある(Grotzinger、2002)。
【0018】
インスリン受容体およびインスリン様増殖因子(IGF)受容体ファミリーは、代謝、生殖、および成長(Nakaeら、2001)を制御する。9種類の異なるインスリン様ペプチドの存在が知られており、またインスリンおよびインスリン様成長因子と相互作用するIR、IGF-1R、およびIGF-2Rの3種類の既知の受容体のほか、オーファン成分のIR関連受容体が存在する。各受容体は細胞表面でホモ二量体として、またはヘテロ二量体として存在する。IRサブファミリーは、EGF-Rファミリーとも関連する。
【0019】
IRは1本鎖のmRNAから作られ、切断されて二量体化して、形質膜へ転位される。各単量体成分は、1つの膜貫通ドメインを含む。完全な受容体は、ジスルフィド結合で連結された2つのαサブユニットと2つのβサブユニットからなる。βサブユニットは1つのTM領域と細胞内領域を含む。この受容体は、複数の細胞内基質のリン酸化を触媒するチロシンキナーゼである。
【0020】
低密度リポタンパク質(LDL)受容体ファミリーは貨物輸送体(cargo tranporter)として作用し、リポタンパク質およびプロテアーゼのレベルを調節する(Stricklandら、2002)。このファミリーには9種類の認識された成分があり、どの成分も細胞外領域、1つの膜貫通ドメイン領域、および細胞質内の尾部を含む、構造上の類似性を共通してもつ。LDL受容体は、リポタンパク質のクリアランスに重要な役割を果たし、LDL受容体をコードする遺伝子上の欠損は、血流中のLDLの蓄積を招く場合がある。
【0021】
タンパク質の核への輸送を誘導可能なことが明らかとなった、最初に特性が明らかにされたモチーフの例には、SV40ラージT抗原タンパク質に含まれるアミノ酸配列(PKKKRKV)がある。核局在配列(NLS)モチーフは、NLSに結合するインポーチンα-β受容体複合体によって認識される(Gorlichら、1996)。インポーチンα-β受容体は、NLS含有タンパク質を認識する細胞質内に存在するタンパク質であり、このようなタンパク質を核膜の孔に運搬してドッキングさせる。続いて複合体全体が、核エンベロープに含まれる核膜孔複合体にドッキングされる(Weisら、1998、Schlenstedtら、1996)。核エンベロープは、核への輸送の過程に関与する孔を含む境界である(Weisら、1998)。
【0022】
GPCRが核に局在するという報告は非常に少なく、まれである。1例は、GPCRを核内へ導く機能をもつ内在性NLSを含むGPCRアンジオテンシン1型(AT1)受容体(Luら、1998)であり、このNLS配列がAT1受容体の核への選択的輸送に関与することの証拠となっている。Luら、およびChenら(2000)は、AT1受容体が作動物質に応答して核内における量を増やすことを報告している。副甲状腺ホルモン受容体が核に局在するという報告がある(Watsonら、2000)。しかし、GPCRのスーパーファミリーが、受容体の核内転位に関与する内在性NLSを含むことは、ほとんどない。
【0023】
したがって、GPCRや輸送体などの膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物を同定する、新しくて、より簡便な方法が必要であることには変わりはない。膜貫通型タンパク質のオリゴマー形成を検出する、改善されて、不明瞭な部分の少ない方法が必要なことも変わりはない。
【発明の概要】
【0024】
発明者らは、(内在性の機能性NLSを含まない)膜貫通型タンパク質に核局在配列(NLS)を組み込むと、タンパク質が細胞表面から細胞核内へ、時間依存的でリガンド非依存的に運ばれることを報告した。こうした膜貫通型タンパク質の細胞表面を出発点とする輸送を可視化するために、このようなタンパク質に、さまざまな手段による可視化用の検出用部分をもたせる。NLSを合成的に組み込ませた多様なタンパク質ファミリーに由来する膜タンパク質は、基本的な条件下で、細胞表面から核へ、また核に向かって再分布することがわかっている。
【0025】
この過程を利用して、膜貫通型タンパク質の細胞膜からのリガンド非依存的な輸送を、候補化合物が調節可能か否かを判定することで、膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物を同定することができる。
【0026】
現在では、この過程に基づく方法で、タンパク質分子がオリゴマーを形成可能か否かを判定することも可能となっている。
【0027】
1つの態様では、本発明は、以下の段階を含む、少なくとも1つの膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関して候補化合物をスクリーニングする方法を提供する:
細胞を、少なくとも1つの核局在配列(NLS)および検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列でトランスフェクトし、コードされたタンパク質の細胞内発現を可能とする段階;
細胞に候補化合物を接触させる段階;ならびに
発現されたタンパク質の細胞内における分布を、細胞内における検出用部分の分布を検出することで決定する段階(候補化合物を接触させなかった対照細胞における検出用部分の分布に対して、細胞内における検出用部分の分布の変化が検出されることは、対象化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する)。
【0028】
この方法の別の態様では、細胞に、少なくとも1つの膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかっている化合物を接触させてから、細胞に候補化合物を接触させる(膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかっている化合物を接触させたが候補化合物を接触させなかった対照細胞における検出用部分の分布に対して、細胞内における検出用部分の分布の変化が検出されることは、候補化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する)。
【0029】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、少なくとも1つの膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関して候補化合物をスクリーニングする方法を提供する:
細胞に、NLS含有膜貫通型タンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をトランスフェクトして、コードされたタンパク質の細胞内発現を可能とする段階;
細胞に候補化合物を接触させる段階;ならびに
細胞の細胞膜画分を単離し、同画分に、膜貫通型タンパク質の標識リガンドを接触させ、同画分に対するリガンドの結合レベルを決定することで、細胞膜上に残存するNLS含有膜貫通型タンパク質のレベルを決定する段階(候補化合物を接触させなかった対照細胞における細胞膜におけるレベルに対して、細胞膜における膜貫通型タンパク質のレベルの変化が検出されることは、対象化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する)。
【0030】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つのNLSおよび検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をトランスフェクトした、単離された細胞を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、以下の段階を含む、第1のタンパク質と第2のタンパク質がオリゴマーを形成可能か否かを判定する方法を提供する:
細胞に、NLSを含む第1のタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列、および検出用部分を含む第2のタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列でトランスフェクトすることで、コードされた第1および第2のタンパク質の細胞内発現を可能とする段階;ならびに
細胞内における検出用部分の分布を決定する段階(細胞の核内または核の近傍で検出用部分が検出されること、または対照細胞に対して細胞表面における検出用部分のレベルの低下が検出されることは、第1のタンパク質と第2のタンパク質が相互作用することを意味する)。
【0032】
本発明のいくつかの態様を、以下の添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】典型的なGPCRであるドーパミンD1受容体(NLSを含むように修飾されている)の構造の略図を示す。
【図2】ドーパミンD1受容体-NLSをトランスフェクトし、さまざまな濃度のブタクラモール(butaclamol)で処理したHEK細胞の表面における蛍光(相対蛍光単位)を示す。
【図3】HA-ドーパミンD1受容体-NLSをトランスフェクトし、さまざまな濃度のSCH 23390で単独で、またはSKF 81297(100 nM)とともに処理したHEK細胞の細胞表面蛍光を示す。
【図4】HA-ドーパミンD1受容体-NLSをトランスフェクトし、0.5 μMのSCH 23390で単独で、またはさまざまな濃度のSKF 81297とともに処理したHEK細胞の細胞表面蛍光を示す。
【図5】ドーパミンD1受容体-NLSをトランスフェクトし、ブタクラモール(黒三角)で処理したHEK細胞、または対照となる非処理細胞(黒四角)の細胞膜画分に結合した状態の3H-SCH 23390の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、一つの態様では、候補化合物を対象とした、膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関する新規で簡便なスクリーニング法を提供する。
【0035】
本明細書で用いるように、候補化合物および膜貫通型タンパク質が「相互作用する」という表現は、化合物が膜貫通型タンパク質のリガンドであり、またタンパク質に結合するか、または本明細書に記載されるような膜貫通型タンパク質の、細胞膜からの輸送を調節可能であることを意味する。
【0036】
膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物を同定することが、薬剤開発のリード化合物を同定する過程における第1の重要な段階である。
【0037】
最初にGPCRを対象として発明者らは、有核の真核細胞に、合成的に組み入れられたNLSを含むGPCR、または天然のNLSを含むGPCRをコードするヌクレオチド配列をトランスフェクトすると、細胞が同ヌクレオチド配列を発現可能となり、発現されたGPCRが最初に細胞膜へ移動し、次に細胞核へ移行することを明らかにした。この過程は、リガンドの活性化に依存せず、関与する膜貫通型タンパク質の種類に依存して約6〜約72時間を要する(平均24〜48時間)。これは、NLSを含まないGPCRを細胞内で発現させた状況とは対照的であり、発現されたGPCRはほとんどが細胞表面に残り、少量は細胞質内に存在するが、核では検出可能量が存在しない。
【0038】
また発明者らは、発現されたNLS含有GPCRの、細胞膜から核または核付近への移行または輸送が、トランスフェクトされた細胞を、GPCRと相互作用する化合物で処理することによって調節可能であることも明らかにした。したがって、GPCRと相互作用する能力に関する候補化合物のスクリーニングは、発現されたGPCRの、細胞膜から核への輸送の調節を検出することで実施することができる。
【0039】
発明者らはさらに、以上の観察が、膜貫通型タンパク質全般に広く応用可能であり、GPCRに限定されないことを明らかにした。
【0040】
本明細書で用いる「膜貫通型タンパク質」という表現は、細胞膜中に存在し、細胞膜を貫通する少なくとも1つのドメインを有する1本鎖のタンパク質を意味する。
【0041】
発明者らは、複数のファミリーのGPCRグループに由来する、輸送体グループに由来する、サイトカイン受容体グループに由来する、チロシンキナーゼグループに由来する、また低密度リポタンパク質受容体グループに由来する、さまざまな膜貫通型タンパク質が、NLSのグループを含むようにして有核細胞で発現された場合に、すべてが、発現タンパク質の細胞膜における初期の蓄積を示した後に、発現タンパク質の、細胞膜から細胞核内に向かう、リガンドの活性化非依存的な輸送が続くことを明らかにしている。
【0042】
本発明の方法の応用範囲が広いことは、以下の方法で用いられる例示的な膜貫通型タンパク質に代表される膜貫通型タンパク質の構造の非常に大きな多様性から明らかである;細胞表面から離れて核へ至るタンパク質の転位を導く、膜貫通型タンパク質へのNLSの挿入は、1個の膜貫通(TM)ドメイン、7個のTMドメイン、および12個のTMドメインを有し、配列の相同性がないか、あってもわずかな膜タンパク質に関して有効であることが示されている。
【0043】
本発明の方法が、膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物の同定に広く応用可能であることがわかっている。
【0044】
膜貫通型タンパク質と相互作用する化合物は、移行の阻害、移行の加速、および他の化合物による調節に対する干渉を始めとする、さまざまな方法による、その細胞膜から核への移行を調節することがわかっている。任意の相互作用化合物が、潜在的な薬剤候補として関心を集めている。
【0045】
発現された膜貫通型タンパク質の移行の調節は、対照細胞と、候補化合物で処理した細胞の細胞内における膜貫通型タンパク質の分布を比較することで判定される。
【0046】
一つの態様では、この方法は、候補化合物を、GPCRと相互作用して、その輸送を調節する能力に関してスクリーニングする簡便なツールを提供する。GPCRと特異的に相互作用する化合物は、細胞表面から核へのGPCRの移行を阻害したり阻止したりする場合があり、GPCRに対する拮抗物質の場合がある。他の化合物は、対照細胞に対して、GPCRの核への移行を加速する場合があり、またGPCRに対する作動物質である場合がある。
【0047】
試験化合物に対する曝露を適宜行うことで、細胞内における、発現された膜貫通型タンパク質の分布の判定を可能とするためには、発現される膜貫通型タンパク質に、細胞内で検出可能な検出用部分をもたせる必要がある。検出用部分は、細胞内における発現および輸送を介して、膜貫通型タンパク質と結合した状態で留まる任意の部分である可能性があり、また直接的または間接的に検出されて、細胞内における分布が決定され、候補化合物の曝露に起因する分布の変化が判定される場合がある。
【0048】
第1の態様では、細胞に、検出用のペプチドまたはポリペプチドを含む検出用部分に連結された少なくとも1つのNLSを含む膜貫通型タンパク質を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をトランスフェクトする。本明細書で用いる「ペプチド」という表現は、2〜20アミノ酸残基の配列、好ましくは約5〜約15アミノ酸残基の配列を意味する。また「ポリペプチド」という表現は、任意の長さの完全長のタンパク質を含む、20個を上回るアミノ酸残基の配列を意味する。検出用のペプチドまたはポリペプチドは、直接検出可能な場合もあれば、反応させて検出可能なシグナルを生じさせることができる場合もある。検出用ペプチドは例えば、例えば膜貫通型タンパク質のアミノ末端で発現される抗原ペプチド、すなわちエピトープの場合がある。細胞内における膜貫通型タンパク質の分布の検出は、エピトープに特異的な検出用抗体でエピトープを検出することで可能となる。いくつかの適切なエピトープ抗体系が市販されている。例には、HA(Roche Diagnostics)、FLAG(Sigma Chemical社)、c-myc(Santa Cruz)、ヒスチジンヘキサマー(BD Biosciences Clontech)、GST(ABR Affinity BioReagents)、V5(Abcam)、およびXpress(Invitrogen)エピトープ/抗体系などがある。
【0049】
こうしたエピトープをコードするヌクレオチド配列は、エピトープに特異的な抗体とともに購入可能である。このような抗体は、検出用標識(例えばフルオレセインイソチオシアネート;FITC)を有する場合があるほか、当業者であれば理解するように、検出用標識を有する第2の抗体を使用することで、そのものが検出可能な場合がある。本発明のこの態様は、例えば、抗体で処理した細胞プレートを高処理能スクリーニングを可能とする自動プレートリーダーで調べることで、自動化または半自動化された方法に特に応用可能である。
【0050】
検出可能なポリペプチドは、市販されている緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および/またはシアン蛍光タンパク質(CFP)などの光学的に検出可能なポリペプチドの場合があるほか、これらのタンパク質の任意の修飾型の異型(variant)である場合がある。検出可能なポリペプチドは、反応により光の放出や色の変化などの、検出可能なエンドポイントを生じるルシフェラーゼやβ-ガラクトシダーゼなどの酵素の場合もある。このようなポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えばClontech社から容易に入手可能であり、またNLS含有膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列に、好ましくは同タンパク質のC末端に連結させる。
【0051】
別の態様では、検出用部分は、膜貫通型タンパク質そのもののアミノ酸配列の一部、好ましくは、同タンパク質の細胞外領域の一部を含む抗原ペプチドである。上述したように、細胞内における膜貫通型タンパク質の分布は、エピトープに特異的な検出用抗体を用いて決定される。適切な抗体は市販されている(例えば、ヒトD1ドーパミン受容体のアミノ末端のアミノ酸9〜21に対する抗D1抗体)ほか、従来の方法で調製することができる。
【0052】
別の態様では、既知のリガンドで膜貫通型タンパク質に応用可能なように、少なくとも1つのNLSを含む膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列を細胞にトランスフェクトする。この細胞に候補化合物を接触させ、上記の手順でインキュベートする。次に細胞を回収し、細胞膜画分を単離し、膜貫通型タンパク質の検出可能に標識されたリガンド(例えば放射標識リガンド)を接触させる。処理細胞の膜画分に結合した状態の標識リガンドの量を、候補化合物を接触させなかった対照細胞の膜画分に結合した状態の量に対して決定することで、細胞表面に残存する膜貫通型タンパク質を定量し、候補化合物と膜貫通型タンパク質の相互作用の有無を示すことができる。
【0053】
膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ゲンバンク(http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez)などの公的データベースから、または商用データベースから得られる。適切なコンストラクトを、本明細書の実施例に記載された従来の方法で合成することができるほか、市販品を入手することもできる。
【0054】
「NLS含有膜貫通型タンパク質」は、野生型配列のNLSを含む膜貫通型タンパク質、およびアミノ酸配列がNLSを含むように修飾された膜貫通型タンパク質を含む。
【0055】
従来のNLSは、NLSを含むタンパク質の核内における局在を促す短いペプチド配列である(例えばNLSを列挙した表1、およびJansら、2000を参照)。3つの主なクラスのNLSがある。このうち2つは、一続きの塩基性アミノ酸からなる、一続きの塩基性アミノ酸からなるSV40ラージ腫瘍抗原のPKKKRKVに代表される1つの(monopartite)NLSであり、もう1つは、10〜22残基(場合によっては最大数百残基)のアミノ酸で隔てられた2続きの塩基性アミノ酸を含む2つの(bipartite)NLSである。他のタイプのNLSの例には、酵母タンパク質Mata2のNLS(荷電性/極性の残基が非極性残基の連続内に含まれる)や、プロト癌遺伝子c-mycのNLS(PAAKRVKLD;塩基性残基に隣接するプロリン残基およびアスパラギン酸残基が核への移行に必要とされる)などがある。すべてのクラスのNLSが、α-βインポーチンに特異的に認識される。
【0056】
任意のNLSを本発明の方法に使用することができる。選択されたNLSをコードするヌクレオチド配列は、NLSのアミノ酸配列に由来する場合があり、また合成して、膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列中に、本明細書に記載されているような従来の方法で組み入れることができる。NLSの挿入位置には、膜貫通型タンパク質の任意の細胞内ループ内、または細胞内末端の多種多様な位置が適している。タンパク質の細胞内ドメイン内にNLSを挿入することが好ましい。例えばGPCRの場合、NLSを任意の細胞内ループまたは細胞内のカルボキシ端に配置することができる。12 TM輸送体の場合は、NLSを、細胞内のアミノ末端またはカルボキシ末端、または任意の細胞内ループに配置することができる。
【0057】
本発明の方法で使用するために、NLSを膜貫通型タンパク質に挿入する場合、挿入の効率を、NLSを含む膜貫通型タンパク質が細胞膜から細胞核へ実質的に24〜48時間以内に移行すること、また膜貫通型タンパク質のリガンドが転位に干渉することを確認することでスクリーニングすることができる。
【0058】
NLSを含む膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、検出用のペプチドまたはポリペプチドをコードする配列に従来の方法で連結する。
【0059】
検出用部分を含む、または検出用部分が連結された、選択されたNLS含有膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、適切なプロモーターを含むベクター系に同配列をクローニングすることで、文献(例えば「Current Protocols in Molecular Biology」、1987)に記載された従来の手法で有核細胞にトランスフェクトする。適切なベクターには、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含むpEGF-N1(Clontech)、およびベクターpcDNAなどがある。
【0060】
トランスフェクトされたヌクレオチド配列を発現可能で、またNLSが膜貫通型タンパク質の細胞膜からの移行を促進する任意の細胞を使用することができる。適切な細胞には、細菌細胞を含む原核細胞、および真核細胞などがある。適切な真核細胞には、単離された哺乳類細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、線虫細胞、および真菌細胞などがある。適切な哺乳類細胞には、ヒト細胞系列、齧歯類細胞系列、ハムスター細胞系列、非ヒト霊長類細胞系列などがある。
【0061】
一つの態様では、細胞に、いくつかのヌクレオチド配列をトランスフェクトする(個々の配列は、異なるNLS含有膜貫通型タンパク質、および異なる検出用部分をコードする)。膜貫通型タンパク質の細胞膜からの輸送に対する試験化合物の干渉は、検出用部分の細胞表面からの動きが妨げられることを指標に、対象化合物と特定の膜貫通型タンパク質との相互作用に関連づけることができる。
【0062】
別の態様では、高処理能の初期スクリーニングの場合、細胞に、数多くのヌクレオチド配列(個々の配列は、異なるNLS含有膜貫通型タンパク質および検出用部分を含み、検出用部分の一部は複数の膜貫通型タンパク質で共通である)をトランスフェクトする。仮に初期スクリーニングで、候補化合物が1つまたは複数の膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかったら、同化合物を対象に、膜貫通型タンパク質をほとんど発現しないか、または1種類だけを発現する細胞を用いて、特異的に相互作用する膜貫通型タンパク質が同定されるまで再スクリーニングを行う。
【0063】
複数の膜貫通型タンパク質をトランスフェクトした細胞では、本明細書に記載されたタンパク質の対の間でオリゴマー形成がみられる場合があり、これは候補化合物の作用の解釈に影響する場合がある。引き続いて、1種類のみの膜貫通型タンパク質をトランスフェクトした細胞を用いる、化合物の再スクリーニングを行うことで、化合物と特定のタンパク質との相互作用の有無を明らかにすることができる。
【0064】
あるいは、多重トランスフェクトした細胞の場合、相互にオリゴマーを形成しないことが明らかとなった膜貫通型タンパク質を選択することができる。
【0065】
相互作用化合物の同定
本発明の一つの態様では、有核細胞に、NLSおよび検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列をトランスフェクトし、適切な時間インキュベートし、NLS-膜貫通型タンパク質の発現と、細胞膜における同タンパク質の蓄積開始を可能とする。例えばGPCRや輸送体に関しては、約6〜24時間が適している。当業者であれば、他の膜貫通型タンパク質に関する適切なインキュベーション時間を、細胞膜におけるタンパク質の蓄積を観察することで容易に決定することができる。発現された膜貫通型タンパク質のすべてが、候補化合物の添加時に細胞膜に至る必要はない。次に試験細胞に、膜貫通型タンパク質との相互作用の検討対象となる候補化合物を、NLS-膜貫通型タンパク質の実質的な部分、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、またさらにより好ましくは少なくとも90%の、化合物処理を行わなかった対照細胞では細胞膜から離れて核内もしくは核の近傍へ向かう転位を可能とするのに十分な時間接触させる。
【0066】
膜貫通型タンパク質の種類によっては、この期間は約6時間〜約72時間となる場合があり、調査対象の大半の膜貫通型タンパク質に関しては、約24〜約48時間の期間が適切である。当業者であれば、対照細胞を観察することで、適切な時間を容易に決定することができる。
【0067】
試験化合物は最初に、一般に約1〜10マイクロモル濃度の濃度を検討する。
【0068】
次に試験細胞および対照細胞を調べて、検出用部分の分布を決定することで、NLS-膜貫通型タンパク質の分布を決定する。検出用部分の分布は、さまざまな方法で決定することができる。例えば、検出用部分が、光学的に検出可能なタンパク質の場合は、細胞を直接顕微鏡で観察して調べ、核内のタンパク質の量を試験細胞と対照細胞間で比較するとよい。別の態様では、対照細胞および試験細胞の膜に残存した検出用のタンパク質またはペプチドの量を比較する。それぞれ細胞内における検出用部分の位置を示す、30〜100個の細胞を含む複数の顕微鏡視野(5〜10)を決定し、各位置について細胞数をカウントする。次に、細胞表面が標識された細胞、および核が標識された細胞の占めるパーセンテージと、全視野の合計を、処理細胞および対照細胞に関して算出する。
【0069】
別の例では、検出用部分が抗原性エピトープの場合、エピトープに特異的な抗体を含む検出用抗体系を上述の手順で細胞に接触させる。例えば、エピトープに特異的な第1の抗体に続いて、第1の抗体に特異的な蛍光標識された第2の抗体を用いることで蛍光シグナルを蛍光光度計で定量する。
【0070】
対照細胞が、細胞膜から移行した膜貫通型タンパク質の実質的な部分(好ましくは少なくとも50%)を示し、また試験細胞が、対照細胞に対して膜貫通型タンパク質の細胞膜における保持を示す場合は、試験化合物と膜貫通型タンパク質が相互作用することがわかる。好ましい態様では、細胞膜におけるタンパク質のレベルが、試験細胞と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、またより好ましくは少なくとも20%高い場合に、相互作用の存在が示される。
【0071】
相互作用化合物の曝露時に、細胞膜に残る検出用部分が占める割合は、化合物の濃度および力価に関連する。例えば、既知の強力なGPCR拮抗物質をマイクロモル濃度で使用すると、典型的には約50〜100%のタンパク質が細胞表面に残り、0〜15%が核内に存在し、残りが細胞質内に存在した。低ナノモル濃度の同拮抗物質の場合は、細胞表面に20〜40%のタンパク質が保持され、残りのタンパク質は細胞質内および核内に存在した。非処理の対照細胞では、0〜15%のタンパク質が細胞表面で検出可能であり、残りは細胞質内および核内に存在した。
【0072】
膜貫通型タンパク質のリガンドが既知である、この方法の別法では、発現されたNLS含有膜貫通型タンパク質(検出用部分を含まない)を用いて、試験化合物の処理後の、細胞内におけるタンパク質の分布を、細胞膜画分を単離することで、また検出用に標識されたリガンドを上述のように用いて、膜貫通型タンパク質成分を決定することで決定する。
【0073】
本発明の別の態様では、同様の方法で、NLS-膜貫通型タンパク質と相互作用して、細胞表面から離れて核内もしくは核方向へ向かう転位を促進する化合物を同定する。細胞をトランスフェクトしてインキュベートすることで、NLS-膜貫通型タンパク質の発現と、細胞表面におけるその蓄積が可能となる。好ましくは細胞を、発現される膜貫通型タンパク質の少なくとも約70〜90%が細胞表面に蓄積するまでインキュベートする。多くの膜貫通型タンパク質の場合、トランスフェクションから約12〜約24時間が適している。
【0074】
次に試験細胞に候補化合物を接触させ、個々の試験細胞および対照細胞を、リアルタイムで直ちに最長4時間観察することで、検出用部分の分布を観察する。対照細胞と比較して、試験細胞の核内における検出用部分の蓄積が増加することは、試験化合物が膜貫通型タンパク質の転位を促進したことを意味する。好ましい態様では、相互作用の存在は、試験細胞が核内蓄積の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、またより好ましくは少なくとも20%の増加を示す場合に示される。
【0075】
本発明の別の態様は、化合物そのものはNLS含有膜貫通型タンパク質の細胞膜からの転位を妨げないが、それにもかかわらず膜貫通型タンパク質と相互作用化合物の相互作用を干渉可能な化合物を同定する方法である。
【0076】
上述の第1のスクリーニング法で陰性結果を示した化合物を、既知の相互作用化合物と競合する能力に関して、別の方法で検討することができる。
【0077】
この方法では、細胞を上記手順でトランスフェクトし、適切な時間インキュベートすることで、細胞表面における膜貫通型タンパク質の発現および蓄積を、例えば約24〜約48時間で可能とする。
【0078】
次に、試験細胞および対照細胞に、膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかっている化合物、すなわち既知のリガンドか、または上記の方法で同定された相互作用化合物のいずれかを、約24〜約48時間接触させる。次に試験細胞に候補化合物を接触させ、試験細胞および対照細胞を1時間後に、また1回もしくは複数の時点で最長24時間まで観察し、細胞内におけるNLS-膜貫通型タンパク質の分布を上記の手順で決定する。対照細胞では、既知の相互作用化合物が、膜貫通型タンパク質を細胞膜に保持させる。仮に候補化合物が相互作用化合物と競合するようであれば、試験細胞は、細胞表面における膜貫通型タンパク質の減少、およびタンパク質の細胞表面からの転位の上昇を示す。好ましい態様では、試験細胞が少なくとも10%、好ましくは15%、またより好ましくは20%の低下を示す際に、相互作用の存在が明らかになる。
【0079】
別の態様では、NLS含有膜貫通型タンパク質を内因的に発現する細胞を、同タンパク質と相互作用して、細胞膜からの輸送を阻害する(したがって同タンパク質が細胞膜に保持される)ことがわかっている第1の化合物と併せて使用することができる。このような系に候補化合物を接触させると、仮に同化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用し、第1の化合物と競合するのであれば、タンパク質の細胞膜からの輸送の上昇が観察される。
【0080】
膜貫通型タンパク質と他のタンパク質との相互作用の同定
GPCR、輸送体、チロシンキナーゼ受容体、インスリンに対するサイトカイン受容体、インスリン様成長因子、上皮成長因子、および血管内皮成長因子を含む、いくつかの膜貫通型タンパク質は、ホモオリゴマー形成能およびヘテロオリゴマー形成能をもつ(例えば、GeorgeらのGPCRに関する総説、2002を参照)。本明細書で用いる、タンパク質の「オリゴマー形成」という表現は、2個もしくはこれ以上のタンパク質分子が会合することを意味する。
【0081】
受容体AおよびBを想定すると、細胞表面は二量体AA、BB、およびABを含む場合があり、またこれらは3種類の異なる機能性複合体、ひいては3種類の異なる標的薬剤となると考えられる。したがって、どの膜貫通型タンパク質が相互に、または他のタンパク質とオリゴマーを形成して相互作用可能であるかということを見極めることは重要である。
【0082】
他の態様では、本発明は、2種類の膜貫通型タンパク質がオリゴマーを形成可能か否か、または膜貫通型タンパク質および非膜貫通型タンパク質がオリゴマーを形成可能か否かを判定する方法を提供する。
【0083】
一つの態様では、NLSを含む第1の膜貫通型タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列と、NLSを含まないものの、検出用部分を有するか、または検出用部分が結合された第2の膜貫通型タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を有核細胞に同時にトランスフェクトする。このようなヌクレオチド配列は、上記手順で作製する。適切な時間が経過した後に、コードされたタンパク質の発現、細胞膜における蓄積、およびこれに続く、細胞膜から核へ、もしくは核方向へのNLS含有タンパク質の転位が可能となり、細胞内における検出用部分の分布を、例えば、核内における検出用部分の増加、または細胞表面における検出用部分の減少を見極めることで決定する。
【0084】
細胞を二重にトランスフェクトした場合、また第1および第2の膜貫通型タンパク質が同じ場合(一方の膜貫通型タンパク質が挿入NLSを含み、もう一方が含まないことを除く)、NLS含有タンパク質のみをトランスフェクトした細胞における移行と比較して、NLS含有膜貫通型タンパク質の、細胞核への輸送が遅れることがわかっている。この場合、タンパク質の核への転位の過程は、約24〜48時間を要する場合がある。したがって、この方法では、細胞を約24〜48時間インキュベートした後に、細胞内におけるタンパク質の分布を調べる。
【0085】
検出用部分の、細胞表面から核または核方向への転位は、第1の膜貫通型タンパク質が、第2の膜貫通型タンパク質を細胞表面から引き離すことを意味し、第1のタンパク質と第2のタンパク質がオリゴマーを形成することがわかる。検出用部分が細胞表面に保持されることは、タンパク質どうしが相互作用していないことを意味する。
【0086】
第1および第2の膜貫通型タンパク質が同じタンパク質の場合、この方法で、タンパク質のホモ二量体化能力を見極めることができる。第1および第2の膜貫通型タンパク質が異なる場合、この方法で、2種類の異なるタンパク質のヘテロ二量体化能力を見極めることが可能であり、2種類の膜貫通型タンパク質間の相互作用の特異性を決定することができる。
【0087】
この方法は、リガンド活性化の非存在下で、またはいずれかのタンパク質のリガンド存在下で実施することができる。
【0088】
この方法で、異なるクラスのGPCR内およびGPCR間でオリゴマーが形成されること、また他のクラスの膜貫通型タンパク質内およびタンパク質間でオリゴマーが形成されることが明らかにされている。
【0089】
また相互作用は、GPCRと非GPCR膜貫通型タンパク質間で、例えばD5ドーパミン受容体とGABA-A受容体間で、また膜貫通型タンパク質と非膜貫通型タンパク質間で検出されている。
【0090】
したがって本発明は一般に、1種類のNLS含有タンパク質と、検出用シグナルを有する他のタンパク質を細胞に同時にトランスフェクトする、上述の方法で2つのタンパク質間のオリゴマー形成を検出する方法を提供する。
【0091】
NLSを含む第1の膜貫通型タンパク質と、この第1のタンパク質とオリゴマーを形成することが本発明の方法でわかっている、異なるグループに由来する膜貫通型タンパク質などの第2の検出可能に標識されたタンパク質による細胞の同時トランスフェクションで、第1または第2のタンパク質のいずれかとの相互作用に関する候補化合物のスクリーニングに使用可能な細胞が得られる。いずれかのタンパク質と相互作用する化合物は、オリゴマー形成、またはオリゴマーを形成したタンパク質の細胞膜からの転位に影響を及ぼす。タンパク質のペアの1つの成分と相互作用する、またはオリゴマーと相互作用して、細胞表面における検出用タンパク質の保持を招いたり、検出用タンパク質の細胞表面からの転位を加速させたりする化合物を、この方法で同定することができる。
【0092】
別の態様では、NLS含有膜貫通型タンパク質を内因的に発現している細胞を、検出用部分を有するがNLSを欠く第2の膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列でトランスフェクトする。これら2種類のタンパク質のオリゴマー形成は、細胞膜から離れて核内もしくは核方向へ向かう検出用部分が輸送されることによって明らかとなる。
【0093】
別の態様では、NLSを含む膜タンパク質を用いて、新しい相互作用タンパク質を同定することができる。この方法では、NLS含有膜貫通型タンパク質を細胞で発現させることで、核への転位を可能とする。次に核を回収し、新しく現れたタンパク質バンドをクーマシー(Coomassie)染色で、または銀染色で調べた後に、質量分析で同定する。対照として、NLSを含まない膜タンパク質を発現する細胞に由来する核を用いる。
【0094】
核内転位の検出におけるFRETの利用
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)(Haileyら、2002)を利用する、本発明の別の局面では、有核細胞に、第1の光学的に検出可能なタンパク質を連結させた第1のNLS含有膜貫通型タンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列と、第2の光学的に検出可能なタンパク質に連結させた第2の非NLS含有膜貫通型タンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を同時にトランスフェクトする(両分子が接近すると、第1の光学的に検出可能なタンパク質の発光によって蛍光が活性化される)。例えば第1のタンパク質にGFPを連結し、GFPのレーザー活性化発光スペクトルによって活性化可能な他の任意の第2の光学的に検出可能な部分に連結することができる。第2の光学的に検出可能な部分は、GFPによる活性化後に、異なる波長で光を放出する。オリゴマーが2つの膜貫通型タンパク質間で形成される場合、2つの標識は相互に近接しているのでFRET相互作用を検出することができる。このような物理的相互作用を、ドナーの選択的な蛍光活性化、およびFRET法、または光退色(photobreaching)FRET、FRAP、またはFLIMなどのこれに類する方法によるアクセプターによる発光の検出によって検出する。FRET相互作用がないことは、オリゴマーが形成されていないことを意味する。
【0095】
2つの蛍光分子間(例えばスペクトル対としてGFPとDsRed2、またはCFPとYFP)のFRETを共焦点顕微鏡で観察することで、核への転位を示す定量可能なシグナルが得られる。FRETには、ドナー分子およびアクセプター分子の発光スペクトルと励起スペクトル間の重複が必要であり、また100オングストローム以下(10〜100オングストローム)で近接することが必要であり、こうなることでFRETは、細胞内における特異的な密接なタンパク質-タンパク質相互作用を調べるための高度に適切な系となる。上記の蛍光タンパク質は、優れたスペクトルパートナーである。核内に残存するフルオロフォアは、第2のフルオロフォアを結合させた膜貫通型タンパク質が核へ移行する際にFRETの発生を可能とする場合がある。このため、FRETプレートリーダーによる読み出しが容易となる。この方法は、2種類の膜貫通型タンパク質間の相互作用の検出、または膜貫通型タンパク質と他のタンパク質間の相互作用の検出に有用であり、自動化により適したシグナルの読み値を提供する。
【0096】
この方法は、GPCRの作動物質および拮抗物質のスクリーニング手順にも使用できる。拮抗物質のスクリーニング法では、非処理細胞と比較時の、核へ移行したGPCR-NLS-GFPと、処理細胞の核内のフルオロフォア間におけるFRETシグナルの減少が、拮抗物質による作用の存在を示すと考えられる。作動物質のスクリーニング法では、非処理細胞と比較して、核へ移行したGPCR-NLS-GFPと、処理細胞の核内のフルオロフォア間におけるFRETシグナルの増加が、作動物質による作用を示すと考えられる。別の態様では、二重にトランスフェクトした細胞を、作動物質で処理してから、オリゴマー形成の証拠を調べることができる。(オリゴマー形成は、作動物質の存在下で促進される場合があるため)。受容体:受容体の相互作用を測定する際は、GPCR-NLS-GFPを第2のGPCR-DsREDと同時発現させる。仮に、このような受容体が相互作用し、ともに核へ輸送されるのであれば、核内でFRETシグナルが検出されることになる。仮に受容体が相互作用しないのであれば、核内でFRETシグナルは生じない。FRETは、GPCRに導入されたエピトープ、または天然のエピトープを認識する2種類のフルオロフォア結合抗体間で測定することもできる。
【実施例】
【0097】
実施例を説明目的で記載する。実施例には、本発明の範囲を制限する意図はない。
【0098】
本明細書において、参照されるが明示的に記載されない化学、分子生物学、タンパクおよびペプチドの生化学、および免疫学の方法、ならびに実施例は文献で報告されており、当業者に周知である。
【0099】
材料および方法
緑色蛍光タンパク質:オワンクラゲ(Aequoria victoria)の緑色蛍光タンパク質(Prasherら、1992)をコードするDNA配列はClontech(米国)から入手した。
【0100】
赤色蛍光タンパク質:赤色蛍光タンパク質(Matzら、1999)をコードするDNA配列のpDsRed2およびpDsRed2-nucはClontech(米国)から入手した。このコンストラクトは、イソギンチャクモドキ(Discosoma sp.)に由来するタンパク質をコードする。
【0101】
COS細胞およびHEK細胞は、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection;Washington, D.C.)から入手した。細胞の培地は、トロント大学のラボラトリーサービスに調製を依頼した。
【0102】
拮抗物質化合物および作動物質化合物は、Sigma Chemical Company(米国)などの様々な業者から入手した。
【0103】
エピトープタグの免疫検出用の抗体は、以下の業者から入手した。抗HAモノクローナル抗体はRoche Diagnostics(米国)から入手した。抗FLAGモノクローナル抗体はSigma Chemical Company(米国)から入手した。抗c-mycモノクローナル抗体はSanta Cruz(米国)から入手した。
【0104】
受容体結合アッセイ法に使用する放射リガンド3H-SCH 23390はNEN Perkin Elmer(米国)から入手した。
【0105】
DNAコンストラクトの作製
GPCRまたは輸送体をコードするヌクレオチド配列は、国立科学図書館(National Library of Science)が設立したゲンバンクのウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez)から得た。選択された膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、選択した検出用シグナルタンパク質をコードするヌクレオチド配列に結合させた。このコンストラクトをベクター系pEGFP(Clontech)、またはpDsRed2-N1ベクターもしくはベクターpcDNA3にクローン化した。
【0106】
1a.近位カルボキシ端(ヘリックス8)にNLSを有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-GFPおよびD1-NLS-GFP)の構築
以下の実験条件によるPCR法で、ベクターpcDNA3中にヒトD1ドーパミン受容体をコードするDNAを対象にPCRを行った。反応混合物は、水(32マイクロリットル)、10×Pfu緩衝液(Stratagene)(5マイクロリットル)、dNTP(2'-デオキシヌクレオシド5'-三リン酸、10 mM)(5マイクロリットル)、DMSO(5マイクロリットル)、オリゴヌクレオチドプライマー(100 ng)(各1マイクロリットル)、DNAテンプレート(100 ng)、Pfu酵素(5ユニット)を含むものとした。総容積は50マイクロリットルとした。PCR条件は、94℃で2分間を1サイクル、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を30〜35サイクル、また続いて72℃で5分間を1サイクルとした。
【0107】
D1ドーパミン受容体をコードするDNAの増幅用プライマーセット:

【0108】
HD1-P1プライマーにEcoRI制限酵素切断部位を導入し、HD1-P2プライマーにKpnI制限酵素切断部位を導入した。停止コドンを含まないPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0109】
ヒトAT1受容体に由来するNLS配列KKFKRを、D1ドーパミン受容体のTM7の基部(ヘリックス8)をコードするDNAに、DFRKAをコードする天然の配列を置き換えるようにPCRで挿入した。
【0110】
D1-NLSをコードするDNAの構築用プライマーセット:

【0111】
D1-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpの産物を得た。D1-GFPをコードするDNAを用いて、HD1-P2プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続くPCRを、HD1-P1プライマーおよびHD1-P2プライマーを用いて、テンプレートとしてPCR#1の産物およびPCR#2の産物を用いて実施し、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、D1-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0112】
後述する他のすべてのコンストラクトを、D1ドーパミン受容体の場合と同じ、上述のPCR法および実験条件で作製した。ただし、後述する特定のプライマーを使用した。
【0113】
1b.NLSを含み、REPを融合させたヒトドーパミンD1受容体(D1-NLS-RFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒトD1受容体の細胞内カルボキシ端のヘリックス8セグメントに、以下の手順でPCR法で挿入した。pcDNA3ベクター中にヒトD1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-NLSRプライマーによる第1のPCRで1 kbの産物を得た。HD1-P2プライマーおよびHD1-NLSFプライマーによる第2のPCRを行い、300 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーおよびHD1-P2プライマーによる最終PCRを行い、1.3 kbの産物を得た。
【0114】
D1-NLSをベクターpDsRed(Clontech)のEcoRI〜KpnIにサブクローン化し、RFPと融合した。
【0115】
プライマーの配列:

【0116】
1c.赤血球凝集素(HA)エピトープタグをアミノ末端に有するドーパミンD1受容体の構築
HA-Tagは以下の通りである:
ヌクレオチド配列:

HAのアミノ酸配列:

【0117】
HAエピトープタグを、D1-pcDNA3をテンプレートとして、また以下のプライマーを用いてヒトD1受容体のアミノ末端に挿入した:

結果として得られた増幅後のcDNA(1.3 kb)を、pcDNA3ベクターのBamHI〜NotIにサブクローン化した。

【0118】
1d.HAエピトープおよびNLSを近位カルボキシ端(ヘリックス8)に有するヒトドーパミンD1受容体(D1HA-NLS)の構築
D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、D1-NLS(ヘリックス8)をコードするDNAのPCRによる増幅用プライマーセット。D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpのDNAを得た。D1-HAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、Sp6プライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpのDNAを得た。T7プライマーとSp6プライマーを用いて、またPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いたPCR(PCR#3)で1300 bpのDNAを得た。

【0119】
結果として得られたD1HA-NLS(ヘリックス8)のPCR産物の末端を平滑化してpcDNA3のEcoRVに挿入した。正しい方向のクローンの配列を決定した。

【0120】
1e.NLSを細胞内ループ3に有し、GFPを融合させたドーパミンD1受容体(D1-NLS-IC3-GFP)の構築
D1-NLS-IC3-GFPの構築用プライマーセット:

【0121】
pcDNA3中のD1をテンプレートを用いる:
PCR#1:HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC3プライマー
PCR#2:HD1-P2プライマーとD1-NLSF-IC3プライマー(500 bp)
PCR#3:PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレート(1.3 kb)として使用し、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーを使用する。
結果として得られた、D1-NLS-IC3をコードするDNA断片を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnIにサブクローン化した。

【0122】
NLS配列KKFKRを、D1受容体のICループ3セグメントに、pcDNA3中のD1をテンプレートとして用いて、配列MFSKRを置き換えるように挿入した。
【0123】
pcDNA3中のD1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC3プライマーによるPCR(PCR#1)で800 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1をコードするDNAを用いた、HD1-P2プライマーとHD1-NLSF-IC3プライマーによるPCR(PCR#2)で500 bpの産物を得た。続いてPCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによるPCRで1300 bpの産物を得た。結果として得られた、D1-NLSをコードするコンストラクトを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0124】
1f.NLSを細胞内ループ2に有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS-IC2-GFP)の構築
D1NLS-IC2をコードするDNAの構築用プライマーセット

【0125】
pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1NLSR-IC2プライマーによるPCR(PCR#1)で500 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P2プライマーおよびD1-NLSF-IC2によるPCR(PCR#2)で800 bpの産物を得た。続いてPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用い、HD1-P1プライマーとプライマーHD1-P2を用いたPCRで1300 bpの産物を得た。
【0126】
結果として得られた、D1-NLS-IC2-GFPをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI部位にサブクローン化した。

【0127】
1g.細胞内ループ1内にNLSを有し、GFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS-IC1-GFP)の構築
D1-NLS-IC1をコードするDNA構築用のプライマーセット:

【0128】
pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとD1-NLSR-IC1プライマーによるPCR(PCR#1)で300 bpの産物を得た。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P2プライマーとD1NLSF-IC1プライマーによるPCR(PCR#2)で1000 bpの産物を得た。続くPCRを、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーを用いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施して1300 bpの産物を得た。
【0129】
結果として得られた、D1-NLS-IC1をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI部位にサブクローン化した。

【0130】
1h.2種類のNLSを近位カルボキシ端に有し、GFPを融合させたヒトドーパミンD1受容体(D1-NLS2-GFP)の構築
PCR法で、NLS配列PKKKRKVを、D1受容体中の天然の配列ADFRKAFと置き換える形で導入した。pcDNA3中にD1ドーパミン受容体をコードするDNAを対象に、HD1-P1プライマーとHD1-NLS2RプライマーによるPCR(PCR#1)で1 kbの産物を得た。pcDNA3中のD1を用いた、HD1-P2プライマーとHD1-NLS2Fプライマーによる別のPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとした、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによる第3のPCRで1.3 kbの産物を得て、これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnIにサブクローン化した。

【0131】
2.GFPを融合させたドーパミンD2受容体およびD2-NLSドーパミン受容体(D2-GFPおよびD2-NLS-GFP)の構築
D2ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNAの増幅用プライマーセット:

【0132】
HD2-P1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、HD2-P2プライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD2-PCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0133】
D2-NLS-GFP構築用のプライマーセット:

【0134】
NLS配列KKFKRをD2受容体のTM7セグメントの基部に、配列IEFRKと置き換えるように、D2-GFPのDNAコンストラクトをテンプレートとして用いて挿入した。
【0135】
D2-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD2-P1プライマーとHD2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1300 bpの産物を得た。D2-GFPをコードするDNAを用いた、HD2-P2プライマーとHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。次に、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD2-P1プライマーとHD2-P2プライマーによるPCRで1400 bpの産物を得た。結果として得られた、D2-NLSをコードするコンストラクトを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0136】
3.GFPを融合させた、D3およびD5ドーパミン受容体をコードするDNA(D3-GFPおよびD5-GFP)の構築
D3ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:

【0137】
HD3-HindプライマーにはHindIII制限酵素切断部位が含まれ、HD3-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD3-PCR産物を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0138】
D5ドーパミン受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:

【0139】
HD5-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないD5-PCR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0140】
4.GFPを融合させた、Histamine1受容体およびHistamine1-NLS受容体(H1-GFPおよびH1-NLS-GFP)の構築
H1ヒスタミン受容体をコードする、ヒトゲノムDNAに由来するDNAの増幅用プライマーセット:

【0141】
このH1-PCR産物を、続くPCR実験のテンプレートとして用いた。
【0142】
H1-GFPコンストラクトをコードするDNA増幅用のプライマーセット:

【0143】
H1-PSTプライマーにはPstI制限酵素切断部位が含まれ、H1-APAプライマーにはApaI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まない、このH1-PCR産物を、ベクターpEGFPのPstI〜ApaI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0144】
H1-NLS-GFPをコードするDNA増幅用のプライマーセット:

【0145】
NLS配列KKFKRを、H1受容体のTM7セグメントをコードするDNAに配列ENFKKを置き換えるように、H1-GFPをテンプレートとしたPCR法で挿入した。HI-PSTプライマーとH1-NLSRプライマーによるPCRで1500 bpの産物を得た。結果として得られた、H1-NLSをコードする断片を、ベクターpEGFPのPstI〜ApaI切断部位にサブクローン化した。
【0146】
5.GFPを融合させた、システイニルロイコトリエン受容体1およびCysLT1 NLS(CysLT1-GFPおよびCysLT1-NLS-GFP)の構築
CysLT1受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:

【0147】
LT1-EcoRIプライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、LT1-KpnIプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないCysLT1-PCRのDNA産物を、ベクターPGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0148】
CysLT1-NLS-GFPをコードするDNA増幅用のプライマーセット:

【0149】
NLS配列KKFKRを、CysLT1のTM7セグメントをコードするDNAに、テンプレートとしてCysLT1-GFPをコードするDNAを用いたPCR法で、配列GNFRKと置き換えるように挿入した。CysLT1-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LT1-EcoRIプライマーとLT1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で900 bpの断片を得た。CysLT1-GFPをコードするDNAを用いた、LT1-KpnIプライマーとLT1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの断片を得た。続くPCRを、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用い、LT1-EcoRIプライマーとLT1-KpnIプライマーを用いて実施し、1000 bpの産物を得た。結果として得られた、CysLT1-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0150】
6.GFPを融合させたシステイニルロイコトリエン受容体CysLT2およびCysLT2-NLS(CysLT2-GFPおよびCysLT2-NLS-GFP)の構築
CysLT2受容体をコードする、pcDNA3中のDNA増幅用のプライマーセット:

【0151】
LT2-EcoRIプライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、LT2-KpnIプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないCysLT2産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0152】
CysLT2-NLS-GFPの増幅用のプライマーセット:

【0153】
NLS配列KKFKRを、CysLT2のTM7セグメントに、配列ENFKDを置き換えるようにPCR法で挿入した。CysLT2-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LT2-EcoRIプライマーとLT2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で900 bpの断片を得た。LT2-KpnIプライマーとLT2-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で200 bpの断片を得た。続くPCRを、LT2-EcoRIプライマーとLT2-KpnIプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1100 bpの産物を得た。結果として得られた、CysLT2-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0154】
7.GFPを融合させた、M1ムスカリン受容体およびムスカリンNLS受容体(M1-GFPおよびM1-NLS-GFP)の構築
ヒトゲノムDNA由来のムスカリン受容体(M1)をコードするDNA増幅用のプライマーセット:

【0155】
MR1-EGFP用のプライマーセット:

【0156】
M1-PSTプライマーにはPstI制限酵素切断部位が含まれ、M1-BAMHプライマーにはBamHI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないM1 PCR産物を、ベクターpEGFPのPstI〜BamHI切断部位に、EGFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0157】
M1-NLS EGFP用のプライマーセット:

【0158】
NLS配列KKFKRを、M1のTM7セグメントに、MR1テンプレートを用い他PCR法で、配列KAFRDと置き換えるように挿入した。MR1をコードするDNAをテンプレートとして用いた、M1-PSTプライマーとM1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1200 bpの産物を得た。MR1をコードするDNAを用いた、M1-BAMHプライマーとM1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続くPCRを、M1-PSTプライマーとM1-BAMHプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1300 bpの産物を得た。MR1-NLSをコードする同断片を、ベクターpEGFPのPstI〜BamHI切断部位にサブクローン化した。
【0159】
8.GFPを融合させた、セロトニン受容体(5HT1B)およびセロトニンNLS受容体(5HT1B-GFPおよび5HT1B-NLS-GFP)の構築
5HT1B受容体をコードするpcDNA3プラスミドから、5HT1B受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:

【0160】
5HT1B-E1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれ、5HT1B-KPNプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まない5HT1B-PCR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0161】
5HT1B-NLS EGFP用のプライマーセット:

【0162】
NLS配列KKFKRを、5HT1BのTM7セグメントに、5HT1B-EGFPテンプレートとして用いたPCRで、配列EDFKQを置き換えるように挿入した。5HT1B-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、5HT1B-E1プライマーとHD1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#1)で1100 bpの産物を得た。5HT1B-EGFPをコードするDNAを用いた、5HT1B-KPNプライマーとHD1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続くPCRを、5HT1B-E1プライマーと5HT1B-KPNプライマーを用いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いて実施し、1200 bpの産物を得た。結果として得られた、5HT1B-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0163】
9.GFPを融合させた、β2-アドレナリン受容体(β2-AR)およびβ2-AR-NLS1受容体(β2-AR-GFPおよびβ2AR-NLS1-GFP)の構築
pcDNA3から、β2-AR受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:

【0164】
β2-KpnプライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないβ2-AR産物を、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0165】
NLS配列KKFKRを、β2-ARのTM7セグメントに、β2-AR-EGFPテンプレートを用いたPCRで、配列PDFRIを置き換えるように挿入した。β2-AR-EGFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1100 bpの産物を得た。β2-AR-EGFPをコードするDNAと、β2-KpnプライマーとB2-NLSFプライマーを用いたPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続いて、PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRを行い、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、β2-NLSをコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0166】
10.2種類のNLSを有し、GFPを融合させたβ2-アドレナリン受容体(β2-NLS2-GFP)の構築
pcDNA3から、β2-NLS2受容体をコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:

【0167】
β2-AR-GFPをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2D1-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1000 bpの産物を得た。β2-AR-GFPをコードするDNAを用いた、β2-KpnプライマーとB2D1-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で300 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRを行い、1300 bpの産物を得た。結果として得られた、β2-NLS2をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0168】
NLS配列AFSAKKFKRを、β2-ARのTM7セグメントに、β2-GFPテンプレートを用いたPCRで、配列CRSPDFRIAを置き換えるように挿入した。
【0169】
結果として得られた、β2-NLS2をコードするDNAを、ベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位にサブクローン化した。
【0170】
11.2種類のNLSを有し、GFPを融合させたβ2-アドレナリン受容体(β2-NLS3-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、β2-ARのカルボキシ端の近位セグメントの別の位置に挿入した。pcDNA3ベクター中にβ2ARをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとB2-NLS3RプライマーによるPCRで1000 bpの産物を得た。β2-KpnプライマーとB2-NLS3FプライマーによるPCRで300 bpの産物を得た。PCR#1の産物およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとβ2-KpnプライマーによるPCRで1300 bpの産物(β2AR-NLS3)を得た。これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化した。
【0171】
β2-NLS3-GFP用のプライマーセット:

【0172】
12.GFPを融合させたドーパミン輸送体(DAT-GFP)の構築
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードする完全長のcDNAを、pcDNA3中のDATをテンプレートとした、T7プライマーとDT-1プライマー

によるPCRで増幅した。停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI制限酵素切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0173】
13a.NLSを含み、REPを融合させたヒトドーパミン輸送体(DAT-NLS-RFP)の構築
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードするcDNAを、1718プライマーとhDAT-NLSFプライマーによるPCRで増幅し、100 bpの断片を得た。ヒトドーパミン輸送体(hDAT)をコードするcDNAも、T7プライマーとhDAT-NLSRプライマーによるPCRで増幅し、1.7 kbの断片を得た。これら2つのPCR断片をテンプレートとして用いた、T7プライマーと1718プライマーによるPCRで1.8 kbの断片を得た。

【0174】
このPCR産物をベクターpRFPのEcoRI〜KpnI切断部位に、RFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0175】
TM12の下流にNLS配列KKFKRをコードする、結果として得られたPCR断片は以下の通りである:

【0176】
13b.NLSを有し、GFPを融合させたヒトドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒトDATの膜貫通12セグメントの下流の近位カルボキシ端に挿入した。pcDNA3中にヒトDATのcDNAをコードするDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとhDAT-NLSRプライマーによる第1のPCRで1.7 kbの産物を得た。1718プライマーとhDAT-NLSFプライマーによる第2のPCRで100 bpの産物を得た。次にPCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーと1718プライマーによる最終PCRで1.8 kbの産物(DAT-NLS)を得た。これをベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化してGFPと融合した。
【0177】
プライマーの配列:

【0178】
14.GFPを融合させたヒトセロトニン輸送体(SERT-GFP)の構築
完全長のヒトSERTのcDNAを、SERTのcDNAを含むpcDNA3から、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:

【0179】
停止コドンを含まないこのPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0180】
15.GFPを融合させたヒト低密度リポタンパク質受容体(LDL-R-GFP)の構築
LDLをコードする完全長のcDNAを対象に、LDLR-HINDプライマーとLDLR-KPNプライマーによるPCRを行った:

【0181】
停止コドンを含まない、このPCR産物(2600 bp)を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0182】
16.NLSを有し、GFPを融合させたヒト低密度リポタンパク質受容体(LDLR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、LDL受容体をコードするDNAに、天然のRLKNIをコードする配列を置き換えるようにPCRで挿入した。
【0183】
LDL-NLSをコードするDNAを構築するためのプライマーセット:

【0184】
pcDV1中のLDLのcDNAをコードするヒトDNAをテンプレートとして用いた、LDLR-HINDプライマーとLDL-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で2450 bpの産物を得た。LDLをコードするDNAをテンプレートとして用いた、LDLR-KPNプライマーとLDL-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で150 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとした、LDLR-HINDプライマーとLDLR-KPNプライマーによるPCRを行い、2600 bpの産物を得た。
【0185】
結果として得られたPCRは、以下のようにNLS配列KKFKR変異を含む:

【0186】
停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0187】
17.GFPを融合させた上皮成長因子受容体(EGFR-GFP)の構築
Prkfベクター中のヒトEGFRの完全長のcDNAを、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:

【0188】
停止コドンを含まない、このPCR産物(3600 bp)を、ベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0189】
18.NLSを有し、GFPを融合させたヒトセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、SERTをコードするDNAに、GTFKEをコードする天然の配列と置き換えるようにPCRで挿入した。
【0190】
SERT-NLSをコードするDNAを増幅するためのプライマーセット:

【0191】
pcDNA3中のヒトSERT-cDNAをテンプレートとして用いた、SERT-HINDプライマーとSERT-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で1800 bpの産物を得た。SERTをコードするDNAをテンプレートとして用いた、SERT-KPNプライマーとSERT-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で100 bpの産物を得た。続いて、PCR#1の産物およびPCR#2をテンプレートとして用いた、SERT-HINDプライマーとSERT-KPNプライマーによるPCRを行い、1900 bpの産物を得た。
【0192】
結果として得られたPCR産物は、以下のようにSERTのTM12の下流にNLS配列KKFKR変異をコードしていた:

【0193】
停止コドンを含まない、このPCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜KpnI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0194】
19.NLSを含むか、または含まない、GFPを融合させた代謝共役型グルタミン酸-4-受容体(mGluR4-GFPおよびmGluR4-NLS-GFP)の構築
mGluR4をコードするDNAを、以下のプライマーセットを用いてラットのcDNAから単離した:

【0195】
GLUR4-HINDプライマーにはHindIII制限酵素切断部位が含まれ、GLUR4-ECORIプライマーにはEcoRI切断部位が含まれるようにした。停止コドンを含まないmGluR4-PCR産物を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜EcoRI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0196】
NLS KKFKRを、mGluR4をコードするDNAに導入し、天然の配列KRKRSと置き換えた。
【0197】
NLSをラットのmGluR4-EGFPに導入するためのDNAを増幅するためのプライマーセット:

【0198】
GluR4をコードするラットDNAをテンプレートとして用いた、GLUR4-HINDプライマーとGLUR4-NLSRプライマーによるPCR(PCR#1)で2600 bpの産物を得た。GluR4をコードするDNAを用いた、GLUR4-ECORIプライマーとGLUR4-NLSFプライマーによるPCR(PCR#2)で160 bpの産物を得た。続いて、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、GLUR4-HINDプライマーとGLUR4-ECORIプライマーによるPCRで2760 bpの産物を得た。
【0199】
結果として得られたPCRは、NLS配列KKFKR変異を以下のように含んでいた:

【0200】
このPCR産物をベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜EcoRI切断部位に、GFPタンパク質の開始コドンとフレームを合わせて一方向的にサブクローン化した。
【0201】
20.GFPを融合させたヒトインスリン受容体(IR-GFP)の構築
プラスミドpRK5中のIRの完全長のcDNAを、以下の2種類のPCRプライマーを用いて単離した:

停止コドンを含まない、このPCR産物(4.2 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のHindIII〜ApaI切断部位に一方向的にサブクローン化して、GFPタンパク質と融合させた。
【0202】
21.NLSを有し、GFPを融合させたヒトインスリン受容体(IR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRをヒトインスリン受容体に導入し、配列LYASSと置き換えた。
【0203】
pRK5ベクター中のヒトインスリン受容体のcDNAをテンプレートとして用いた、HIR-HINDプライマーとHIR-NLSRプライマーによる第1のPCR#1で2.9 kbの産物を得た。またHIR-APAプライマーとHIR-NLSFプライマーによる第2のPCR#2で1.3 kbの産物を得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HIR-HINDプライマーとHIR-APAプライマーによる第3のPCR#3で断片(4.2 kb)を得た。停止コドンを含まないこの断片を、ベクターpEGFPのHindIII〜ApaI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPタンパク質と融合させた。
HIR-NLS用のプライマー:

【0204】
22.GFPを融合させたヒトエリスロポイエチン受容体(EPO-GFP)の構築
ヒトエリスロポイエチン受容体(EPO)をコードする、pc3.1ベクター中のcDNAをテンプレートとしたPCRで、完全長のcDNAを以下のプライマーにより単離した:

停止コドンを含まない、このPCR産物(1.6 kb)を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化して、GFPタンパク質を融合させた。
【0205】
23.NLSを有し、GFPを融合させたヒトエリスロポイエチン受容体(EPO-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、EPO受容体をコードするDNAにPCRで挿入し、天然の配列RRALKと置き換えた。
【0206】
pc3.1中のヒトEPO-cDNAをテンプレートとして用いた、T7プライマーとEPO-NLSRプライマーによる第1のPCR#1で900 bpの産物を得た。EPO-KPNプライマーとEPO-NLSFプライマーによる第2のPCR#2で700 bpの産物を得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、T7プライマーとEPO-KPNプライマーによる第3のPCR#3で1.6 kbの断片を得た。停止コドンを含まないこのPCR産物(1.6 kb)を、ベクターpEGFPのHindIII〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPタンパク質を融合させた。
プライマーの配列:

【0207】
24.GFPを融合させたヒト上皮成長因子受容体(EGFR-GFP)の構築
pRK5ベクター中のヒト上皮成長因子受容体のcDNAをテンプレートとして用いて、完全長のcDNAを、以下の2種類のプライマーによるPCRで単離した:

停止コドンを含まないこのPCR産物(3.6 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化し、GFPタンパク質を融合させた。
【0208】
25.NLSを有し、GFPを融合させたヒト上皮成長因子受容体(EGFR-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、ヒト上皮成長因子受容体の配列に、以下の手順によるPCR法で挿入した。pRK5中のヒトEGFRのcDNAをテンプレートとして用いた、HER-XHOプライマーとEGF-NLSRプライマーによる第1のPCRで2.1 kbの産物を得た。HER-KPNプライマーとEGF-NLSFプライマーによる第2のPCRで1.5 kbの産物を得た後に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HER-XHOプライマーとHER-KPNプライマーによる最終PCRを行い、3.6 kbの産物(EGFR-NLS)を得た。これをベクターpEGFP(Clontech)のXhoI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、GFPを融合させた。
プライマーの配列:

【0209】
26.2つのNLSを含み、RFPを融合させたヒトD1ドーパミン受容体(D1-NLS(Helix 8 and C-tail)-RFP)の構築
第2のNLS配列KKKRKを、ヒトD1-NLS-Helix 8のカルボキシ端セグメントに、以下の手順によるPCR法で挿入した。pDsRedベクター中のヒトD1-NLS-Helix 8をコードするDNAをテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-NLSCRプライマーによる第1のPCRで1.2 kbの産物を得た。またHD1-P2プライマーとHD1-NLSCFプライマーによる第2のPCRで100 bpの産物を結果として得た。次に、PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、HD1-P1プライマーとHD1-P2プライマーによる最終PCRを行い、1.3 kbの産物(D1-NLS-Helix 8 and C-tail)を得た。これをpDsRedベクターのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、DsRedタンパク質を融合させた。
プライマーの配列:

【0210】
27.GFPを融合させたMuオピオイド受容体(Mu-GFP)の構築
pcDNA3ベクター中にMuオピオイド受容体をコードするDNAをテンプレートとして用いた、以下の2種類のプライマーによるPCRを行った:

RATMU-1プライマーにはEcoRI制限酵素切断部位が含まれるようにした。RATMU-2プライマーにはKpnI制限酵素切断部位が含まれるようにした。
【0211】
次に、停止コドンを含まないPCR産物(1.2 kb)を、ベクターpEGFP(Clontech)のEcoRI〜KpnI切断部位に一方向的にサブクローン化することで、GFPを融合させた。
【0212】
28.NLSを含み、GFPを融合させたMuオピオイド受容体(Mu-NLS-GFP)の構築
NLS配列KKFKRを、Muオピオイド受容体の近位カルボキシ端セグメント(ヘリックス8)に、以下の手順によるPCRで挿入した。pcDNA3中のラットMuをコードするDNAをテンプレートとして用いた、RATMU1プライマーとMU-NLSRプライマーによる第1のPCRで1000 bpの産物を得た。そして第2のPCRを、RATMU-2プライマーとMU-NLSFプライマーを用いて実施し、200 bpの産物を得た。PCR#1およびPCR#2の産物をテンプレートとして用いた、RATMU1プライマーとRATMU2プライマーによる最終PCRで1200 bpの産物(Mu-NLS)を得た。これをベクターpEGFPのEcoRI〜KpnI切断部位にサブクローン化し、GFPを融合させた。
プライマーの配列:

【0213】
細胞培養とトランスフェクション
COS-7サル腎細胞およびHEK293Tヒト胚性腎細胞(American Type Culture Collection、Manassa、VA)は、単層培養として37℃で5% CO2雰囲気中で、10%ウシ胎仔血清および抗生物質を添加した最小必須培地で維持した。細胞膜の回収では、100 mmの細胞プレートを、70〜80%のコンフルエンシーで、リポフェクタミン試薬(Life Technologies、Rockville、MD)を用いて一過的にトランスフェクトした。共焦点顕微鏡による観察用には、60 mmの細胞プレートを、10〜20%のコンフルエンシーで、リポフェクタミン試薬を用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後に溶液を除去し、新鮮な培地を添加し、トランスフェクションの24時間後に、新鮮な培地に再び交換した。
【0214】
トランスフェクション用培地を、抗生物質を含まない120マイクロリットルの培地、および/またはウシ胎仔血清(FBS)、および15マイクロリットルのリポフェクタミンを14 mlのチューブ内に混合して調製した。所望の融合タンパク質をコードする2マイクログラムのDNAコンストラクトと120マイクロリットルの培地を混合し、これを14 mlのチューブに移し、緩やかに混合して室温で25分間インキュベートした。さらに4 mlの培地を添加して混合した。複数の膜貫通型タンパク質をトランスフェクトする場合は、cDNAを混合して同時にトランスフェクトする。成長用培地を細胞プレートから除去し、14 mlのチューブ内のトランスフェクション混合物と交換した。細胞をトランスフェクション混合物と5〜6時間インキュベートした後に、同混合物を除去し、FBSおよび抗生物質を含む通常の成長培地と交換した。2日目に通常の成長培地と交換して細胞をインキュベートした。
【0215】
試験化合物による処理
細胞表面からの転位の遅延を決定するためのプロトコル
試験化合物を、1ミリモル濃度のストック溶液中に調製し、成長培地で希釈し、最終濃度を10ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度として細胞プレートに添加した。新鮮な化合物含有培地を、トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で細胞に添加した。
【0216】
細胞表面からの転位の促進を決定するためのプロトコル
試験化合物を、1ミリモル濃度のストック溶液中に調製し、37℃で成長培地で希釈し、最終濃度を10マイクロモル濃度として細胞に添加した。細胞培養物を顕微鏡で観察し、1個の細胞に焦点をあて、検出用標識タンパク質の、表面における発現の存在を検出した。成長用培地を化合物含有培地と交換し、細胞を顕微鏡で、化合物を添加してから5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、および35分後に、検出用部分の分布の変化をリアルタイムで観察した。
【0217】
顕微鏡による観察
LSM510 Zeiss共焦点レーザー顕微鏡で細胞を可視化した。GFPは、アルゴンレーザー(励起波長、488 nm)で励起して可視化し、DsRedは、ヘリウムネオンレーザー(励起波長、543 nm)による励起して可視化した。共焦点像をディスクに記録して評価した。各実験において、複数の視野の細胞(各30〜90個の細胞を含むn=6〜8)をカウントし、細胞表面、細胞質内、および核内におけるシグナルの局在を評価した。
【0218】
蛍光細胞測定
96ウェルプレートをポリ-L-オルニチン(PBS中に1/10)でコーティングし、1時間インキュベートした。50,000個の細胞を各ウェルに添加し、エピトープタグを付加した受容体をコードするcDNAを、リポフェクタミン(Invitrogen、米国)を用いてトランスフェクトした。培地(MEM)を12時間毎に交換し、さまざまな濃度の試験薬剤または培地を含むようにした。48時間後に細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、氷上で30分間インキュベートした。次に細胞を、エピトープに対する一次抗体とともにインキュベートした後に、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)を結合させた二次抗体とインキュベートし、遮光下で保存した。過剰な抗体を洗浄して除き、Cytofluor 4000(PerSpective Biosystems、米国)でプレートを読み取ってシグナルを検出した。FITCを、488 nmの光で励起させて活性化させ、530 nmの放射波長におけるシグナルを読み取った。
【0219】
放射リガンドの結合
D1-NLSをコードするDNAで細胞をトランスフェクトし、さまざまな濃度の拮抗物質剤で処理するか、または非処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロン(polytron)でホモジナイズした。膜画分を遠心して回収した後に、35%ショ糖溶液に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重い膜画分を回収した。上清を再び遠心(4℃、35,000 rpm、60分)して軽い膜画分を回収した。これらの膜を対象に、[3H]-SCH 23390を用いる放射リガンド結合アッセイ法を行い、10マイクロモル濃度の(+)ブタクラモールを用いて特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベートした後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0220】
培養細胞からの核の単離
10 mlのPBSで細胞を3回洗浄し、培養ディッシュから丁寧にかきとる。細胞をプールし、軽く遠心する(4℃、500 g、5分)。ペレット状の細胞を溶解緩衝液(Tris-HCl 10 mM、pH 7.4、NaCl 10 mM、MgCl2 3 mM)、および阻害剤カクテル(0.5%ロイペプチン、1%ダイズトリプシン、1%ベンズアミジン)に5000万個の細胞/mlの密度で再懸濁する。滅菌処理したガラス製のTeflon pestle B(タイトクリアランス20〜50 mm;Bellco Glass)を用いて、100回の上下運動でホモジナイズする。
【0221】
軽く遠心(4℃、700 g、10分)した後に、上清を遠心(4℃、10000 g、15分)してミトコンドリアを除去し、遠心(4℃、120000 g、60分)して形質膜を除去する。
【0222】
核ペレットを、溶解緩衝液(阻害剤を含む)および0.1%のNP-40に再懸濁し、氷上で5分間維持した後に遠心する(4℃、700 g、10分)。上清を捨て、洗浄工程を15 mlの溶解緩衝液で3回繰返す。核ペレットを、2 mlの溶解緩衝液に再懸濁し、MgCl2(1 mM)を含む4.5 mlの2.0 Mおよび1.6 Mの不連続ショ糖層に重層して遠心(4℃、100,000g、60分)して作製した不連続なショ糖勾配上にロードする。チューブの底のペレットを回収する(ペレットには純粋な核が含まれる)。
【0223】
実施例1:赤色蛍光タンパク質を融合させたドーパミンD1受容体(D1-RFP)、またはNLSを含み、赤色蛍光タンパク質を融合させた同受容体(D1-NLS-RFP)
NLSを含まないドーパミンD1受容体の配列を、TM7ドメインの基部のアミノ酸DFRKAがNLS配列KKFKR(ヒトAT1受容体のNLSに対応する)と置き換わるように上記の方法で修飾した(図1参照)。DNAコンストラクトは、D1ドーパミン受容体融合タンパク質であるD1-RFPおよびD1-NLS-RFPをコードするように作製した。COS細胞に、D1-NLS-RFPまたはD1-RFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間および48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡(100倍)で観察した。細胞数を8〜10個の顕微鏡視野を対象にマニュアルでカウントし、異なる細胞内区画で標識されたパーセンテージを算出した。
【0224】
24時間および48時間の時点で、D1-RFPをトランスフェクトした細胞には、大多数の細胞で細胞表面における発現が認められたが、D1-NLS-RFPをトランスフェクトした細胞には、細胞表面における受容体発現はほとんど認められず、核内における局在は24時間後に60%の細胞で、また48時間後に80%の細胞で認められた。
【0225】
実施例2:NLSを含むドーパミンD1受容体融合タンパク質(D1-NLS-RFP)の拮抗物質処理
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするコンストラクト、および野生型のD1(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をドーパミンD1受容体拮抗物質SCH 23390(最終濃度10マイクロモル濃度)で処理した。またトランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を拮抗物質(+)ブタクラモール(最終濃度10 μM)で処理した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。
【0226】
48時間後の時点で、大半の対照細胞では、核でD1-NLS-RFPが検出可能であった。これとは対照的に、大半の拮抗物質処理細胞の蛍光は細胞表面でしか認められず、42%は蛍光が表面上および核内の両方で認められた。
【0227】
実施例3:NLSを含むD1受容体(D1-NLS)と同時発現させたドーパミンD1受容体(D1-GFP)
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)、および/またはD1-GFP(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞をさらに、DsRed-NUCをコードするプラスミド(1マイクログラム)でトランスフェクトして、核における局在を検証した。
【0228】
細胞にさらに、D1-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0229】
D1-GFPの単独発現により、90%の細胞で細胞表面が標識されており、また10%の細胞で、核および細胞表面の両方が標識されていたことがわかった。GPCRをコードする任意のDNAのトランスフェクションでは、最大10%の細胞で、核内における局在が認められる可能性がある。
【0230】
D1-GFPおよびD1-NLSを発現する細胞では、35%の細胞で、核および細胞表面の両方が標識されており、70%は細胞表面だけで受容体の発現が認められた。この実験は、D1-GFPが、D1-NLSとD1-GFPのオリゴマー形成によってD1-NLSともに輸送されたことを意味していた。
【0231】
実施例4:用量反応試験で拮抗物質で処理した、NLSを含むドーパミンD1受容体(D1-NLS-GFP)
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびD1-WTをコードするDNA(6マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。これらの細胞を、SCH-23390(10マイクロモル濃度)、または(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)で、トランスフェクションの6時間後に処理した。拮抗物質を含む培地を、トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後に交換した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。
【0232】
48時間のSCH-23390処理により、58%の細胞でD1-NLS-GFPの細胞表面における発現が認められ、10%未満の細胞で核における受容体発現が認められ、また32%の細胞で細胞表面と核内の両方における受容体発現が認められた。
【0233】
48時間の(+)ブタクラモール処理により、62%の細胞でD1-NLS-GFP受容体の細胞表面における発現が認められ、10%で核における受容体発現が認められ、また28%の細胞で細胞表面と核内における受容体発現が認められた。
【0234】
48時間後の時点における対照細胞では、約65%でD1-NLS-GFP受容体の核における発現が認められ、35%で細胞質内における受容体発現が認められた。D1-NLS-GFP受容体の発現は、対照細胞の細胞表面では認められなかった。
【0235】
NLSを受容体配列に組み入れたことで、細胞表面からのD1-NLS-GFP受容体の極めて効率のよい除去、および核内局在がもたらされた。
【0236】
同様の試験をさまざまな用量のSCH-23390または(+)ブタクラモールで行った。結果を表2と表3に示す。32%〜35%の対照細胞で、細胞質における受容体の存在が認められた。
【0237】
(表2)

【0238】
(表3)

【0239】
NLSを受容体配列に組み入れたことで、D1ドーパミン受容体の細胞表面からの極めて効率のよい除去、および核内における局在がもたらされた。D1に選択的な拮抗物質による処理は、このような受容体転位を用量反応的に妨げた。
【0240】
実施例4a:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS-GFP)の発現と作動物質処理
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、D1作動物質SKF-81297(10マイクロモル濃度)とともに48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を、SKF-81297(最終濃度10マイクロモル濃度)を含む新鮮な培地で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0241】
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、作動物質pergolide(10マイクロモル濃度)とともに48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を、SKF-81297(最終濃度10マイクロモル濃度)を含む新鮮な培地で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0242】
対照のHEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、後の処理は行わなかった。
【0243】
非処理細胞では48時間後に、細胞表面で受容体は検出されなかった。SKF-81297で処理した細胞では、59%の細胞で細胞表面における受容体の発現が認められた。perglolideで処理した細胞では、表面における受容体の発現は59%の細胞で認められた。したがって、作動物質で長期処理すると、修飾型D1受容体の核への輸送が妨げられることがわかった。
【0244】
実施例5:野生型D1受容体と同時発現させた、NLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS-RFP)
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(1マイクログラム)と、天然のドーパミンD1受容体をコードするDNA配列(D1-WT、7マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、24時間または48時間インキュベートした。
【0245】
24時間後の時点で、D1-NLS-RFPは細胞表面でのみ検出されたが、48時間後の時点では、80%の細胞でD1-NLS-RFPが核内に検出された。野生型受容体は、ホモオリゴマーの形成により、D1-NLS-RFPの核への移動を遅らせた。
【0246】
実施例6:D1-GFPと同時発現させた、NLSが組み入れられたD1ドーパミン受容体(D1-NLS-RFP)
COS細胞に、D1-NLS-RFPをコードするコンストラクト(4マイクログラム)、およびドーパミンD1-GFP(4マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0247】
D1-GFPは細胞表面で検出され、黄色の蛍光が核内で検出された。後者は、D1-NLS-RFPとD1-GFPの両方が核内に共存することを意味し、D1-NLS-RFPとD1-GFPがオリゴマーを形成して、D1-GFPが核内に入ることがわかる。
【0248】
実施例6a:NLSが第3細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC3-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC3-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0249】
D1-IC3-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、受容体が85%の細胞の核で検出された。したがって第3細胞内ループへNLSを挿入すると、受容体の核への輸送が可能となる。
【0250】
実施例6b:NLSが第1細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0251】
D1-IC1-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、受容体が85%の細胞の核で検出された。したがって第1細胞内ループへNLSを挿入すると、受容体の核への輸送が可能となる。
【0252】
実施例6c:拮抗物質ブタクラモールまたはSCH-23390が、NLSが第1細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC1-NLS-GFP)の輸送に及ぼす作用
HEK細胞に、D1-IC1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、ブタクラモール(最終濃度1マイクロモル濃度)またはSCH-23390(1マイクロモル濃度)のいずれかで48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0253】
ブタクラモールで処理した細胞の場合、82%が受容体を細胞表面または細胞質内に有していた。18%の細胞は、受容体を核内に有していた。したがって、ブタクラモール処理は、D1-IC1-NLS-GFPの核への輸送を低下させた。
【0254】
SCH-23390で処理した細胞の場合、77%の細胞が受容体を細胞表面または細胞質内に有していた。23%の細胞は、受容体を核内に有していた。したがってSCH-23390処理は、受容体の核への輸送を低下させた。
【0255】
非処理細胞の場合、76%で受容体が核および細胞質で発現されていた。
【0256】
実施例6d:拮抗物質SCH-23390が、NLSが第3細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC3-NLS-GFP)の輸送に及ぼす作用
HEK細胞に、D1-IC3-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、4通りの異なる濃度のSCH-23390(10マイクロモル濃度、1マイクロモル濃度、500ナノモル濃度、および100ナノモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0257】
D1-IC3-NLS-GFPをトランスフェクトした86%の細胞が受容体を核内に有し、受容体を表面上に有していた細胞はなかった。SCH-23390で処理した細胞の場合、84%が受容体を核内に有しており、15%の細胞が受容体を表面上に有していた。GPCRの同位置にNLSを挿入することで、受容体は核へ効率的に移行するが、薬剤には応答しない。
【0258】
実施例6e:NLSが第2細胞内細胞質ループに挿入されたD1ドーパミン受容体(D1-IC2-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、D1-IC2-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0259】
D1-IC2-NLS-GFPをトランスフェクトした細胞では、同受容体が51%の細胞の核で検出された。
【0260】
実施例6f:スタッガードトランスフェクション(staggered transfection)による、ドーパミンD1受容体がホモ二量体を形成する能力
HEK細胞に、D1-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間のインキュベーション後に、細胞に、D1-NLS-GFPをコードする第2のDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。対照細胞にD1-RFPコンストラクト(2マイクログラム)だけをトランスフェクトした。この細胞を、第2のトランスフェクション後に48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0261】
D1-RFPのみをトランスフェクトした細胞の90%では、受容体が細胞表面で発現されており、6%の細胞では、受容体が核内で発現されていた。これとは対照的に、両方の型の受容体を発現する97%の細胞は、両受容体(赤色+緑色=黄色の蛍光)を核内で発現していた。したがって、NLSを含まないD1受容体は、NLSを含むD1受容体と相互作用して、核へ輸送された。
【0262】
実施例7:ドーパミンD5受容体(D5-GFP)
ドーパミンD5受容体-GFP(D5-GFP)をコードするコンストラクトを調製し、COS細胞のトランスフェクトに使用した(4マイクログラム)。
【0263】
ドーパミンD5-GFPをトランスフェクトした細胞は、48時間後の時点で、受容体の細胞質における局在が主に認められ、細胞表面における局在はわずかな細胞でしか認められず、また核における局在は認められなかった。
【0264】
実施例8:D5ドーパミン受容体(D5-GFP)と同時発現させた、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)
HEK細胞に、2種類のDNAコンストラクト(D1-NLSをコードするもの(7マイクログラム)と、D5-GFPをコードするもの(1.5マイクログラム))をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。
【0265】
D1-NLSおよびD5-GFPをトランスフェクトした約70%の細胞で、細胞表面におけるD5-GFPの発現が認められ、20%の細胞では、表面と細胞質の両方におけるD5-GFPの発現が認められ、また10%では、D5-GFPの核内発現が認められた。D1-NLSを同時発現させたD5ドーパミン受容体の核への転位はみられなかったことから、D1受容体とD5受容体がオリゴマーを形成しなかったことがわかる。
【0266】
実施例9:2つのNLSモチーフを含むD1ドーパミン受容体(D1-2NLS-RFP)の拮抗物質処理
D1-NLS-RFPをコードするコンストラクトを修飾することでDNAコンストラクト(D1-2NLS-RFP)を作製し、第2のNLSを、ドーパミンD1受容体のカルボキシ端に、野生型のD1ドーパミン受容体KKEEA配列を、NLSのKKKRKと置き換えるように導入した。
【0267】
HEK細胞に、このコンストラクトをコードするDNA(D1-2NLS-RFP)をトランスフェクトし、上述の手順で間隔をおいて拮抗物質SCH-23390(10 μM)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。
【0268】
D1-2NLS-RFPをトランスフェクトしたCOS細胞とHEK細胞の両方において、同受容体は、24時間後の時点で100%の細胞で核内に位置していたことから、第2のNLSが存在すると核への転位が促進されることがわかる。
【0269】
48時間後の時点で、拮抗物質で処理しなかった90%の細胞では、核内に蛍光が認められ、細胞表面で蛍光が認められた細胞はなかった。拮抗物質で処理した細胞では、51%の細胞で細胞表面における標識が認められ49%の細胞では核に標識が認められた。
【0270】
第2のNLSを組み入れたことで、受容体の核への輸送がより効率的となり、またこの輸送は、拮抗物質処理でさらに遅れた。
【0271】
実施例10:D2ドーパミン受容体(D2-GFP)
HEK細胞に、D2-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDsRed-NUCをコードするDNAコンストラクト(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0272】
D2-GFPを発現する約90%の細胞で細胞表面における発現が認められ、10%で核または細胞質における発現が認められた。内在性NLSをもたないD2ドーパミン受容体は、もっぱら細胞表面で発現している。
【0273】
実施例11a:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)およびドーパミンD2(D2-GFP)
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(7マイクログラム)、およびD2-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞にさらにDs-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0274】
D1-NLSおよびD2-GFPをトランスフェクトした細胞では、33%の細胞でD2-GFPの核における発現が認められたことから、D1-NLSとD2-GFPの両方の核への輸送が、D1受容体とD2受容体のオリゴマー形成によることがわかる。67%の細胞では、D2-GFP受容体が細胞表面だけで、または表面および細胞質で認められた。
【0275】
実施例11b:D2ドーパミン受容体D2ショート(D2S)がドーパミン受容体D2ロング(D2L)と二量体を形成する能力
HEK細胞に、D2S-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD2L-NLSをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0276】
D2S-GFP受容体は、29%の細胞の核内で可視化された。これは、D2SがD2Lと二量体を形成し、核へ輸送されたことを意味していた。
【0277】
実施例11c:ドーパミン受容体D2Sがドーパミン受容体D2Lと二量体を形成する能力
HEK細胞に、D2S-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD2L-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0278】
40%の細胞では、核内に黄色の蛍光(赤色+緑色のオーバーレイ)が認められたことから、D2L-NLSとD2S-RFPが二量体を形成し、これが核へ輸送されることがわかる。
【0279】
実施例12:NLSが挿入されたD2ドーパミン受容体(D2-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、D2-NLS-GFPをコードするDNAをトランスフェクトし、この細胞をD2ドーパミン受容体拮抗物質である(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)、またはラクロプリド(raclopride)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞を拮抗物質で処理した。細胞を薬剤処理後に48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0280】
拮抗物質の非存在下では、D2-NLS-GFPを発現する細胞では、核の標識が70%の細胞で認められ、細胞質の標識は20%の細胞で認められ、また細胞質および細胞表面の標識は10%の細胞で認められた。(+)ブタクラモール処理では、核の標識は5%の細胞でしか認められず、5%の細胞で細胞質の標識が認められ、90%の細胞で細胞表面の標識が認められた。ラクロプリド処理では、5%の細胞で核の標識が認められ、15%の細胞で細胞質の標識が認められ、80%の細胞で細胞表面の標識が認められた。D2受容体の両拮抗物質とも、受容体の細胞表面から離れて核へ至る転位を妨げた。
【0281】
実施例13:β2-アドレナリン受容体-GFP(β2-AR-GFP)
ヒトβ2-アドレナリン受容体とGFPを含む融合タンパク質(β2-AR-GFP)をコードするDNAコンストラクトを作製した。β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を細胞にトランスフェクトし、24時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0282】
β2-AR-GFPを発現する細胞では、42%の細胞で受容体の発現が細胞質のみで認められ、また58%の細胞で細胞質および細胞表面における受容体発現が認められた。受容体の核内における局在は認められなかった。
【0283】
実施例14:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)
ヒトβ2-AR-NLS3-GFPを含む融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトを作製した。HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするDNA(1マイクログラム)をトランスフェクトし、細胞を48時間インキュベートした。
【0284】
β2-AR-NLS3-GFPをトランスフェクトした45%の細胞で受容体の核内における局在が認められ、また55%の細胞で表面および細胞質における発現が認められた。β2-ARにNLSを組み入れたことで、受容体の核への転位が誘導された。
【0285】
実施例15:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードするDNA(1マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするDNA(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を間隔をおいて、アドレナリン受容体の拮抗物質であるアテノロール(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。
【0286】
対照細胞には拮抗物質を加えなかった。対照細胞では、60%で核における受容体発現が認められ、21%で細胞表面における受容体発現が認められ、19%で細胞質における受容体発現が認められた。
【0287】
拮抗物質アテノロールで処理した細胞では、70%で細胞表面における受容体発現が認められ、14%で核における受容体発現が認められ、また16%で細胞質における受容体発現が認められた。拮抗物質アテノロールによる処理は、β2-AR-NLS3-GFPの核への輸送を妨げ、受容体を細胞表面に保持した。
【0288】
実施例16:β2-アドレナリン受容体(β2-AR-GFP)と、NLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の同時発現
HEK細胞に、β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)、およびD1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。
【0289】
約40%の細胞で、核におけるβ2-AR-GFP受容体の発現がみられ、NLSを含まないβ2-ARが核へ輸送されたことがわかった。これは、β2-AR受容体と、NLSを含むD1ドーパミン受容体がオリゴマーが形成したことを意味していた。45%の細胞でβ2-AR-GFPが細胞質に認められ、また15%で細胞質および細胞表面で認められた。
【0290】
実施例17:β2-アドレナリン受容体(β2-AR-GFP)、およびNLSが組み入れられたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の拮抗物質処理
HEK細胞に、β2-AR-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)、およびD1-NLSをコードするDNAコンストラクト(3マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を、アドレナリン拮抗物質であるプロプラノロール(5マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0291】
25%の対照細胞でβ2-AR-GFPの核内発現が認められ、また75%の細胞で細胞質および細胞表面で標識が認められた。
【0292】
プロプラノロール処理細胞では、β2-AR-GFPの核内発現は10%で認められ、また90%の細胞では細胞質および表面に標識が認められた。β2-AR-GFPとD1-NLS間のヘテロオリゴマーの形成は、β2-AR-GFPの核への輸送を招いた。この輸送は、アドレナリン受容体に対する拮抗物質の存在により減じた。
【0293】
実施例18:NLSが組み入れられたβ2-アドレナリン受容体(β2-AR-NLS3-GFP)
HEK細胞に、β2-AR-NLS3-GFPをコードする、NLSを含むDNAコンストラクト(8マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。さらにこの細胞に、Ds-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトして、核における局在を検証した。
【0294】
80%の細胞でβ2-AR-NLS3-GFP受容体が核内に認められた。NLSの効率は改善され、結果として、核における受容体の局在が増した。
【0295】
実施例19:NLSが組み入れられたセロトニン1B受容体(5HT1B-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、セロトニン5HT1B-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。この細胞にDs-red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。細胞を、セロトニン受容体拮抗物質であるメチセルジド(methysergide)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0296】
拮抗物質で処理しなかった対照細胞では、55%で受容体の核内局在が認められ、20%で受容体が細胞表面に局在していた。48時間後の時点で、メチセルジド処理細胞では、25%の細胞で受容体が核内に認められ、また62%の細胞で細胞表面における局在が認められた。
【0297】
セロトニン5HT1B受容体は、NLSの挿入によって、細胞表面から核へ効率的に転位した。セロトニン拮抗物質メチセルジドによる処理は受容体の転位を妨げた。
【0298】
実施例20:NLSが組み入れられたシステイニルロイコトリエン受容体-2(CysLT2-NLS-GFP)
HEK細胞に、CysLT2-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(8マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。この細胞にさらにDs-RED-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0299】
Cys-LT2-NLS-GFPを発現する83%の細胞で受容体の核内発現が認められ、細胞表面で受容体を発現している細胞は認められなかった。この結果は、Cys-LT2-NLS-GFP受容体が核内に局在することを意味する。
【0300】
実施例21:NLSが組み入れられたシステイニルロイコトリエン受容体-2(Cys-LT2-NLS-GFP)の拮抗物質処理
Cys-LT2-NLS-GFPをコードするDNA(3マイクログラム)を用いてHEK細胞をトランスフェクトした。これらの細胞を、システイニルロイコトリエン受容体拮抗物質であるモンテルカスト(montelukast)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0301】
拮抗物質の非存在下では、Cys-LT2-NLS-GFPを発現する70%の細胞で、受容体の核内局在が認められ、30%の細胞で細胞質における局在が認められ、細胞表面に受容体が認められた細胞はなかった。拮抗物質で処理した細胞に関しては、10%のみが受容体の核内局在を示し、90%では受容体は細胞表面で発現していた。したがって、システイニルロイコトリエン受容体拮抗物質であるモンテルカストは、細胞表面から離れて核内に至るCys-LT2-NLS-GFP受容体の輸送を妨げた。
【0302】
実施例22:NLSが組み入れられたMuオピオイド受容体(muオピオイド-NLS-GFP)
HEK細胞に、muオピオイド-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。さらにこの細胞にDs-Red-NUC(1マイクログラム)をトランスフェクトして、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0303】
muオピオイド-NLS-GFPをトランスフェクトした65%の細胞で、核における受容体の発現がみられた。15%の細胞に細胞表面における受容体の局在がみられ、20%の細胞では受容体が細胞質で標識されていた。したがってNLSの挿入は、Muオピオイド受容体の核への輸送を可能とした。
【0304】
実施例23:NLSが組み入れられたMuオピオイド受容体(mu-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、muオピオイド-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、Muオピオイドの拮抗物質であるナロキソン(naloxone)(10マイクロモル濃度)、またはナルトレキソン(naltrexone)(10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質を加えなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0305】
非処理時には、62%の細胞でMu-NLS-GFPが核内に認められ、20%の細胞で、受容体が細胞表面で検出可能であった。ナロキソン処理により、21%の細胞で、受容体の核内発現が認められ、66%の細胞で、受容体が細胞表面に認められた。ナルトレキソン処理により、22%の細胞で受容体の核内発現が認められ、58%の細胞で、受容体が細胞表面に認められた。したがって、Muオピオイド拮抗物質であるナロキソンおよびナルトレキソンは、細胞表面から離れて核に至る受容体の転位を低下させた。
【0306】
実施例24:NLSが組み入れられたムスカリンM1受容体(M1-NLS-GFP)の拮抗物質処理
HEK細胞に、M1-NLS-GFPをコードするDNA(1マイクログラム)、およびDs-Red-NUC(1マイクログラム)をコードするDNAを48時間かけてトランスフェクトした。これらの細胞を、臭化イプラトロピウム(iprotropium bromide;10マイクロモル濃度)で処理した。トランスフェクション後の6時間、22時間、30時間、および42時間の時点で、拮抗物質を含む培地を交換した。対照細胞には拮抗物質処理を行わなかった。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0307】
臭化イプラトロピウム処理により、72%の細胞で細胞表面における受容体の発現が認められ、17%で細胞質内のみにおける受容体の発現が認められ、11%の細胞で受容体の核内発現が認められた。
【0308】
対照細胞に関しては、64%で核内における受容体の発現が認められ、23%で細胞表面における受容体の発現が認められ、13%の細胞で細胞質における受容体の発現が認められた。
【0309】
ムスカリン拮抗物質による処理は、細胞表面から離れて核へ至るM1-NLS-GFPの輸送を妨げた。
【0310】
実施例25:NLSが組み入れられたヒスタミンH1受容体(H1-NLS-GFP)
HEK細胞に、ヒスタミンH1-NLS-GFP受容体をコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDs-Red-NUCをコードするコンストラクト(1マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。
【0311】
約65%の細胞で、核内における受容体の発現が認められ、35%の細胞で、表面と細胞質の両方における受容体の発現が認められた。H1ヒスタミン受容体へのNLSの挿入は、表面を離れて核へ至る受容体の転位を招いた。
【0312】
実施例26:NLSが挿入されたH1ヒスタミン受容体(H1-NLS-GFP)の輸送に拮抗物質プロメタジン(promethazine)が及ぼす作用
HEK細胞に、H1-NLS-GFP(2マイクログラム)、およびDsRED-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。この細胞をプロメタジン(10マイクロモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUCで可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0313】
プロメタジン処理細胞では、88%の細胞で受容体が細胞表面に認められ、10%の細胞で受容体が核内に認められた。非処理細胞では、85%で核および細胞質における受容体の発現が認められた。したがって、プロメタジン処理は、H1-NLS-GFPの核への輸送を低下させた。
【0314】
実施例26:アンジオテンシンAT1受容体(AT1R)
DNAコンストラクト(AT1R-RFP)を、NLS含有ヒトアンジオテンシンAT1受容体とDsRed2(RFP)を含む融合タンパク質をコードするように作製した。
【0315】
COS細胞にDNAコンストラクトAT1R-RFP(4マイクログラム)をトランスフェクトし、37℃で48時間インキュベートした。
【0316】
細胞を共焦点顕微鏡で観察したところ、受容体は、細胞の核内にもっぱら位置することがわかった。これはAT1Rが、基本的に作動物質に依存せずに核内へ転位することを意味する。
【0317】
実施例27:ドーパミン受容体(D1-NLS-GFP)の作動物質による短時間処理
HEK細胞に、D1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびD1-WTをコードするDNAコンストラクト(4マイクログラム)をトランスフェクトし、細胞を24時間インキュベートした。この細胞を、ドーパミンD1作動物質であるSKF 81297(10マイクロモル濃度)で35分間処理した。1つのグループの細胞を、共焦点顕微鏡でリアルタイムで可視化した。
【0318】
核内における受容体発現の上昇が認められ、最大の上昇は20分の時点で認められた。これは、作動物質の作用が短期間に発揮されることを意味する。
【0319】
実施例28:NLSを有し、GFPおよびRFPを融合させたドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFPおよびDAT-NLS-RFP)
HEK細胞に、DAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を48時間かけてトランスフェクトした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)を用いて共焦点顕微鏡で可視化した。
【0320】
48時間の時点で、DAT-GFPが、86%の細胞の表面または細胞質内で検出された。14%の細胞では、輸送体は核内に存在した。
【0321】
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間後に共焦点顕微鏡で可視化した。DAT-NLS-RFPは、85%の細胞の核内で検出された。18%の細胞では、輸送体は、表面または細胞質のいずれかに存在していた。
【0322】
次にHEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間後に共焦点顕微鏡で可視化した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。DAT-NLS-GFPは、77%の細胞の核内で検出された。
【0323】
実施例29:DAT-GFPとDAT-NLS-RFPの共輸送
【0324】
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、およびDAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0325】
56%の細胞の核で黄色の蛍光が検出された。これは、DAT-NLS-RFPとDAT-GFPが核内に共存することを意味し、DAT-NLS-RFPとDAT-GFPがオリゴマーを形成することが確認されたことになる。
【0326】
実施例30:DAT-NLS-RFPの核への輸送にコカインが及ぼす作用
HEK細胞に、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をコカインまたはアンフェタミン(最終濃度10マイクロモル濃度)で処理するか、処理せずにおいた。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0327】
非処理のHEK細胞では、77%の細胞でDAT-NLS-RFPの核内発現が認められた。
【0328】
コカイン処理により、75%の細胞で細胞表面または細胞質におけるDAT-NLS-RFPの発現が認められ、25%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。コカイン処理は、DAT-NLS-RFPの核への輸送を低下させた。
【0329】
アンフェタミン処理により、34%の細胞で細胞表面/細胞質における発現が認められ、66%の細胞で核/細胞質における輸送体の発現が認められた。アンフェタミン処理(DATを標的とせず、小胞モノアミン輸送体、VMATを標的とする)には、核へのDAT-NLS-RFPの輸送に対する阻害作用はなかった。
【0330】
実施例31:NLSを有するドーパミン輸送体(DAT-NLS-GFP)の発現と拮抗物質処理
HEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をGBR-12909(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0331】
HEK細胞に、DAT-NLS-GFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をマジンドール(mazindol)(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0332】
対照HEK細胞にDAT-NLS-GFPをトランスフェクトし、48時間インキュベートし、薬剤処理は行わなかった。
【0333】
DAT-NLS-GFPをトランスフェクトした、非処理のHEK細胞では、77%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められ、23%で細胞質内にのみにおける発現が認められ、細胞表面で発現が認められた細胞はなかった。
【0334】
GBR-12909処理により、62%の細胞で細胞表面および細胞質内で輸送体の発現が認められ、38%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。GBR-12909処理は、細胞表面から離れて核に至る、DAT-NLS-GFPの転位を低下させた。
【0335】
マジンドール処理により、61%の細胞で細胞表面および細胞質における輸送体の発現が認められ、39%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。マジンドール処理は、細胞表面および核に至るDAT-NLS-GFPの転位を低下させた。
【0336】
実施例32:DAT-GFPおよびDAT-NLS-RFPのスタッガード発現を用いる、ドーパミン輸送体がホモオリゴマーを形成する能力
HEK細胞に、DAT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、この24時間後にDAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(0.5、1、および2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。対照として、細胞にDAT-GFPのみをトランスフェクトした。第2のトランスフェクション後に、細胞を48時間インキュベートした。総インキュベーション時間は72時間とした。
【0337】
DAT-GFPのみをトランスフェクトした85%の細胞は、輸送体を細胞質に含んでおり、7%は核内に含んでいた。スタッガード実験(比率1:0.5)では、97%の細胞で核内に黄色(=赤色+緑色)の蛍光が認められた。スタッガード実験(比率1:1)では、94%の細胞で核内に黄色の蛍光が認められた。スタッガード実験(比率1:2)では、94%の細胞で核内に黄色の蛍光が認められた。したがってDAT-GFPは、DAT-NLS-RFPと相互作用して二量体を形成し、これを核へ輸送することができる。
【0338】
実施例33:代謝共役型グルタミン酸-4-受容体(mGluR4-GFP)の発現
HEK細胞に、mGluR4-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0339】
89%の受容体が細胞表面で発現していた。したがってmGluR4受容体は、大半が細胞表面に位置していた。
【0340】
実施例34:NLSが挿入された代謝共役型グルタミン酸-4受容体(mGluR4-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、mGluR4-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。さらにこの細胞にDs-Red-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトし、核における局在を検証した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0341】
mGluR4-NLS-GFPを発現する60%の細胞は、核における受容体の発現を示した。
【0342】
したがって、mGluR4受容体へのNLSの挿入は、受容体の核内における局在を増加させた。
【0343】
実施例35:NLSを含む、または含まないムスカリンM1受容体(M1-GFPおよびM1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、M1-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)、またはM1-NLS-GFPをコードするコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0344】
M1-GFPによるトランスフェクション後に、67%の細胞で、受容体の発現が細胞表面または細胞質内で認められた。
【0345】
M1-NLS-GFPのトランスフェクションの結果、92%の細胞で、核における受容体の発現が認められたことから、NLSが受容体を核へ導いたことがわかる。
【0346】
実施例36:H1ヒスタミン受容体(H1-GFP)の発現
HEK細胞に、H1-GFPをコードするDNAコンストラクト(1.5マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0347】
97%の細胞で、受容体が細胞表面に発現していた。したがって、この非修飾型受容体は核へ輸送されなかった。
【0348】
実施例37:NLSが挿入されたシステイニルロイコトリエン受容体(CysLT1-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、CysLT1-NLS-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0349】
対照となる非処理細胞に関しては、細胞表面で受容体の発現がみられた細胞はなく、100%の細胞で核内発現がみられた。この結果は、受容体が細胞表面から離れて確実に除去されたことを意味する。
【0350】
実施例38:GFPを融合させたセロトニン輸送体(SERT-GFP)の発現
HEK細胞に、SERT-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。91%の細胞が、細胞表面および細胞質で輸送体を発現していた。
【0351】
実施例39:フルオキセチン処理による、NLSが挿入されたセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、SERT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、フルオキセチン(最終濃度1マイクロモル濃度)で48時間処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をフルオキセチン(最終濃度1マイクロモル濃度)で処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0352】
SERT-NLS-GFPを発現する非処理細胞では、輸送体を細胞表面で発現していた細胞はなく、26%で細胞質内で輸送体が発現されており、60%の細胞で核および細胞質における輸送体の発現が認められた。
【0353】
フルオキセチン処理により、68%の細胞で、SERT-NLS-GFP輸送体の細胞表面および細胞質における発現が認められ、27%の細胞で、核および細胞質における輸送体の発現が認められた。したがって、フルオキセチン処理は、SERT-NLS-GFPの、細胞表面から離れて核に至る輸送を抑制した。
【0354】
実施例40:2種類の異なる細胞表面膜タンパク質(D2-GFPとDAT-NLS-RFP)の相互作用能力の評価
HEK細胞に、D2-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)と、DAT-NLS-RFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、48時間インキュベートした。また対照として細胞を、D2-GFP単独、またDAT-NLS-RFP単独で別個にトランスフェクトした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0355】
DAT-NLS-RFPをトランスフェクトした85%の細胞は、核内に輸送体を含んでいた。D2-GFPをトランスフェクトした97%の細胞が、細胞表面に受容体を含んでおり、4%の細胞が、核内に受容体を含んでいた。同時にトランスフェクトした細胞の86%が、黄色(赤色+緑色)の蛍光を核内で示した。これは、D2とDATの両タンパク質が核内に存在することを意味し、同時発現されたタンパク質が二量体を形成することがわかる。
【0356】
実施例41:膜タンパク質と非膜タンパク質(D1-NLSとβ-アレスチン1-GFP)が複合体中で会合する能力、および相互作用する能力の評価
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)と、β-アレスチン1-GFPをコードするDNAコンストラクト(2マイクログラム)を同時にトランスフェクトし、48時間インキュベートした。さらに細胞に、β-アレスチン1-GFPのみをトランスフェクトした。これらの細胞を共焦点顕微鏡で調べた。
【0357】
β-アレスチン1-GFPのみをトランスフェクトした100%の細胞で、蛍光タンパク質が細胞質で発現していた。これらの細胞の15%では、核でも蛍光が認められた。両タンパク質を同時にトランスフェクトした89%の細胞では、蛍光タンパク質が核内で発現されており、このうち16%では細胞質で発現されていた。したがって、GPCRと非膜タンパク質との相互作用は、NLSを含まないβ-アレスチンタンパク質の核への輸送を可能とした。
【0358】
実施例42:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の拮抗物質処理時の発現、および蛍光定量法による検出
マルチウェルプレートのウェルをポリ-L-オルニチンでコーティングし、50,000個の細胞を各ウェルにプレーティングした。次にこの細胞に、HAエピトープタグを付加したD1-NLS受容体をコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(10ナノモル濃度〜10マイクロモル濃度)で48時間以上処理した。続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体を、ラット抗HA抗体で検出し、次にFITC結合ヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法(Cytofluor)で検出した。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である(図2)。ブタクラモールは、受容体を細胞表面に用量依存的に保持する作用を示したことから、同拮抗物質が細胞表面からの受容体の輸送を低下させることがわかる。したがって、蛍光定量法で、細胞表面に保持された受容体を検出することができる。
【0359】
実施例43:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の発現、および作動物質による拮抗物質の用量反応作用の遮断、ならびに蛍光定量法による検出
マルチウェルプレートのウェルをポリ-L-オルニチンでコーティングし、50,000個の細胞を各ウェルにプレーティングした。この細胞に、HAエピトープタグを付加したD1-NLS受容体をコードするDNAをトランスフェクトし、作動物質SKF 81297(1マイクロモル濃度)を添加または非添加して、拮抗物質SCH 23390(1ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度)で48時間処理した。これに続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体を、ラット抗HA抗体で検出し、次にFITCを結合させたヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法で検出した(Cytofluor)。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である。SCH 23390には、受容体を細胞表面に保持する用量依存的な作用を示したので、同拮抗物質が細胞表面からの受容体の輸送を低下させることがわかる。作動物質を同時に添加すると、拮抗物質の作用は低下した(図3)。したがって、作動物質の作用は、拮抗物質の作用を遮断することで検出可能であり、また蛍光定量法で作動物質の作用を定量することができる。
【0360】
実施例43b:NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(HA-D1-NLS)の発現、および作動物質による拮抗物質の用量反応作用の遮断、ならびに蛍光定量法による検出
HEK細胞に、1個のウェルあたり50,000個の細胞となるように、ポリ-L-オルニチンでコーティングしたマルチウェルプレート上でHA-D1-NLSをトランスフェクトした。この細胞を、拮抗物質SCH 23390(0.5マイクロモル濃度)で48時間かけて処理した。作動物質SKF 81297(100ナノモル濃度〜1マイクロモル濃度)とSCH 23390を、インキュベーションの最後の1時間共存させた。続いて、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、細胞表面の受容体をラット抗HA抗体で、次にFITCを結合させたヤギ抗ラット抗体で検出した。蛍光シグナルを蛍光定量法で検出した(Cytofluor)。結果は、1回の実験条件につき5個のウェルの平均である。
【0361】
SCH 23390による処理は、HA-D1-NLSを細胞表面に保持した(図4のバー1とバー6)。作動物質の短期添加は、SCH 23390の作用による用量依存的な遮断を招いた。インキュベーションの最後の1時間(作動物質の非存在下)で、細胞からSCH 23390を除去したところ、HA-D1-NLS受容体が細胞表面から33%失われた(図4のバー5とバー6)。一方で、SCH 23390の存在が続いている間における、100ナノモル濃度の作動物質SKF 81297の添加により、受容体は細胞表面から66%失われ(図4のバー4とバー6)、1マイクロモル濃度のSKF 81297の添加により、受容体は最大78%が失われた(図4のバー2とバー6)。
【0362】
拮抗物質SCH 23390の作用は、細胞表面における受容体の保持を招いた。これは、同拮抗物質が、細胞表面からの受容体の輸送を低下させたことを意味する。作動物質の同時添加は、拮抗物質の作用を低下させ、細胞表面からの受容体の除去を用量反応的に加速させた。したがって相互作用化合物は、NLS含有受容体を細胞表面に保持する化合物の作用の遮断により検出することが可能であり、この作用を蛍光定量法で定量することができる。
【0363】
実施例44:10マイクロモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0364】
膜画分を対象に、[3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0365】
D1-NLSの拮抗物質処理は、細胞表面から離れて核に至る転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した(図5)。
【0366】
実施例45:500ナノモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(500ナノモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0367】
この膜を対象に、[3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。結果を表4および表5に示す。
【0368】
(表4)対照の形質膜画分

【0369】
(表5)ブタクラモール処理した形質膜画分

NSB:非特異的結合 SB:特異的結合
(+)ブタクラモールによるD1-NLSの拮抗物質処理は、核への転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した。
【0370】
実施例46:100ナノモル濃度の(+)ブタクラモール処理による、NLSが挿入されたドーパミンD1受容体(D1-NLS)の発現、ならびに放射リガンド結合による検出
HEK細胞に、D1-NLSをコードするDNAをトランスフェクトし、(+)ブタクラモール(100ナノモル濃度)で処理するか、または未処理のままとした。48時間後に細胞を洗浄し、回収し、溶解し、ポリトロンでホモジナイズした。膜画分を遠心して回収後、35%ショ糖溶液上に重層し、遠心(4℃、30,000 rpm、90分)して重膜画分を回収した。
【0371】
この膜を対象に、[3H]-SCH 23390と(+)ブタクラモール(10マイクロモル濃度)を用いて放射リガンド結合アッセイ法を行い、特異的結合を決定した。室温で2時間インキュベート後に速やかに濾過し、シンチレーションカウンターで定量した。
【0372】
(+)ブタクラモール(100ナノモル濃度)による拮抗物質処理は、D1-NLSの核への転位を妨げ、細胞表面に保持された受容体を放射リガンド結合アッセイ法で定量した。ブタクラモール処理を行わない場合は、0.03 pmol/mgの受容体タンパク質が細胞表面の膜で検出され、またブタクラモール処理時には、0.09 pmol/mgの受容体タンパク質が細胞表面の膜で検出された。
【0373】
実施例47:上皮成長因子受容体(チロシンキナーゼ受容体)EGFR-GFPおよびEGFR-NLS-GFPの発現
HEK細胞に、EGFR-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトした。HEK細胞に、EGFR-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)もトランスフェクトし、24時間インキュベートした。
【0374】
EGFR-GFPは73%の細胞の細胞表面で発現されており、また12%の細胞で受容体は核内に認められた。EGFR-NLS-GFPは、91%の細胞で核内で発現されており、細胞表面で受容体を発現させていた細胞はなかった。EGF受容体の配列にNLSを組み入れることで、細胞表面から離れて核内に至る、確実な転位が誘導された。
【0375】
実施例48:低密度リポタンパク質受容体(LDL-GFP)の発現
HEK細胞に、LDL-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、24時間インキュベートした。この受容体は、67%の細胞で細胞表面で、また8%の細胞で核内に発現されていた。
【0376】
LDL受容体は、大半の細胞で細胞表面で発現され、多くの細胞では核内に受容体を含んでいない。
【0377】
実施例49:NLSを有するLDL受容体(LDL-NLS-GFP)の発現
HEK細胞に、LDL-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)、およびDsRED-NUCをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、48時間インキュベートした。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0378】
LDL-NLS-GFPは、22%の細胞では核で、また67%では細胞表面で発現していた。LDL受容体へNLSを組み入れたことで、受容体の核内への転位が誘導された。
【0379】
実施例50:エリスロポイエチン受容体(サイトカイン受容体)EPO-GFPおよびEPO-NLS-GFPの発現
HEK細胞に、EPO-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトした。HEK細胞にEPO-GPF(2マイクログラム)をトランスフェクトした。さらにこの細胞にDsRED-NUC(2マイクログラム)をトランスフェクトした。これらの細胞を48時間インキュベートし、共焦点顕微鏡で観察した。
【0380】
EPO-NLS-GFPは、72%の細胞で核に位置しており、細胞表面に位置していた細胞は認められなかった。EPO-GFPは、79%の細胞で細胞表面に位置しており、28%の細胞で核における受容体の発現が認められた。EPO受容体の配列にNLSを組み入れたことで、細胞表面から離れて核内に至る転位が誘導された。
【0381】
実施例51:NLSを有するセロトニン輸送体(SERT-NLS-GFP)の発現とセルトラリン処理
HEK細胞に、SERT-NLS-GFPをコードするDNA(2マイクログラムのDNA)をトランスフェクトし、セルトラリン(最終濃度500ナノモル濃度)で48時間処理した。トランスフェクションの6時間後、22時間後、30時間後、および42時間後の時点で、細胞をセルトラリンで処理した。これらの細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0382】
SERT-NLS-GFPを発現する非処理細胞では、細胞表面に輸送体を発現していた細胞はなく、75%の細胞で、輸送体は核および細胞質で発現していた。
【0383】
セルトラリン処理により、69%の細胞で、SERT-NLS-GFP輸送体の細胞表面および細胞質における発現が認められ、また21%の細胞で、核および細胞質における輸送体の発現が認められた。したがって、セルトラリン処理により、細胞表面から離れて核に至るSERT-NLS-GFPの輸送が阻害された。
【0384】
実施例52:2種類のNLSを有するD1ドーパミン受容体(D1-NLS2-GFP)の発現と拮抗物質処理
HEK細胞に、D1-NLS2-GFPをコードするDNA(2マイクログラム)をトランスフェクトし、(+)ブタクラモールまたはSCH 23390(1マイクロモル濃度)で48時間処理した。核をDsRED-NUC(2マイクログラム)で可視化した。細胞を共焦点顕微鏡で観察した。
【0385】
ブタクラモール処理により、81%の細胞で、受容体が細胞表面または細胞質内で認められ、また19%の細胞で、核における受容体の発現が認められた。SCH 23390処理により、78%の細胞で、受容体が細胞表面または細胞質内で認められ、また22%の細胞で、核における受容体の発現が認められた。
【0386】
非処理細胞では、89%の細胞で、核および細胞質における受容体の発現が認められた。
【0387】
したがって、ドーパミンD1拮抗物質処理により、表面を離れ核に輸送されるD1-NLS2-GFP受容体の転位が妨げられた。
【0388】
本発明は、本明細書に記載された態様の特徴に制限されず、特許請求の範囲に含まれる、あらゆる変更および修正を含む。
【0389】
参考文献:

【0390】
(表1)核局在配列の例(Jansら、2002を改変)


RAG-1=組換え活性化Gタンパク質1、RCP=赤色細胞タンパク質、RB=網膜芽腫タンパク質、STAT=signal transducer and activator of transcription(TF);CBP80=キャップ結合タンパク質、LEF=リンパ球エンハンサー因子、EBNA=エプスタイン-バーウイルス核抗原、IN=HIV-1インテグラーゼ、tTG=組織トランスグルタミナーゼ、ICP=感染細胞タンパク質(infected cell protein)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、少なくとも1種類の膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関して候補化合物をスクリーニングする方法:
細胞に、少なくとも1つの核局在配列(NLS)および検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をトランスフェクトして、コードされたタンパク質の、細胞内における発現を可能とする段階;
細胞に候補化合物を接触させる段階;ならびに
細胞内における検出用部分の分布を検出することで、細胞内における発現されたタンパク質の分布を決定する段階;
ここで、候補化合物を接触させなかった対照細胞における検出用部分の分布に対して、細胞内における検出用部分の分布の変化が検出されることは、化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する。
【請求項2】
検出用部分が、膜貫通型タンパク質の抗原部分のアミノ酸配列を含む検出用ペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヌクレオチド配列が、少なくとも1つのNLSおよび検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含む融合タンパク質をコードする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含まず、膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列がNLSをコードするように修飾されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオチド配列が、表1から選択されるNLSをコードするように修飾されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヌクレオチド配列が、KKFKR、PKKKRKV、およびAFSAKKFKRからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするように修飾されている、請求項5記載の方法。
【請求項8】
細胞が真核細胞または原核細胞である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
細胞が、哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞、および真菌細胞からなる群より選択される真核細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
有核細胞が、HEK細胞、COS細胞、およびCHO細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
検出用部分が抗原ペプチドであり、細胞内における抗原ペプチドの分布が、抗原ペプチドに特異的な抗体を含む抗体ベースの検出系に対する結合を可能とすることで決定される、請求項3記載の方法。
【請求項12】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的な第1の抗体、および検出用標識を有し、第1の抗体に特異的な第2の抗体を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的で、検出用標識を有する第1の抗体を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
検出用標識が、光学的に検出可能な標識である、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
検出用標識が、発光標識または蛍光標識である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
検出用部分が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、およびこれらの修飾型異型からなる群より選択されるポリペプチドである、請求項3記載の方法。
【請求項17】
膜貫通型タンパク質が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、輸送体、サイトカイン受容体、チロシンキナーゼ受容体、および低密度リポタンパク質(LDL)受容体からなる群より選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
膜貫通型タンパク質がGPCRである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
GPCRが、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、ドーパミンD3受容体、ドーパミンD5受容体、ヒスタミン1受容体、システイニルロイコトリエン受容体1、システイニルロイコトリエン受容体2、オピオイド受容体、ムスカリン受容体、セロトニン受容体、β2-アドレナリン受容体、および代謝共役型グルタミン酸4受容体からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
膜貫通型タンパク質が輸送体である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
輸送体が、ドーパミン輸送体およびセロトニン輸送体からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
膜貫通型タンパク質がサイトカイン受容体である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
サイトカイン受容体が、エリスロポイエチン受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
膜貫通型タンパク質がチロシンキナーゼ受容体である、請求項17記載の方法。
【請求項25】
チロシンキナーゼ受容体が、上皮成長因子受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
膜貫通型タンパク質が低密度リポタンパク質受容体である、請求項17記載の方法。
【請求項27】
細胞に複数のヌクレオチド配列をトランスフェクトする方法であって、個々の配列が、少なくとも1つのNLSを含む、さまざまな膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
個々のヌクレオチド配列が、さまざまな検出用部分を含むタンパク質をコードする、請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの検出用部分が、少なくとも2種類のコードされたタンパク質で共通である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
細胞に、少なくとも1種類の膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかっている化合物を接触させてから、細胞に候補化合物を接触させる、請求項1記載の方法であって、
ここで、膜貫通型タンパク質と相互作用することがわかっている化合物を接触させたが候補化合物を接触させなかった対照細胞における検出用部分の分布に対して、細胞内における検出用部分の分布の変化が検出されることは、候補化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する、方法。
【請求項31】
細胞内における検出用部分の分布の変化の検出が、細胞膜に結合した検出用部分のレベルの変化の検出を含む、請求項1〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞膜に結合した検出用部分のレベルの低下の検出を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞膜に結合した検出用部分のレベルの上昇の検出を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
細胞内における検出用部分の分布の変化の検出が、細胞の核内における検出用部分のレベルの変化の検出を含む、請求項1〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞の核内における検出用部分のレベルの低下の検出を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞の核内における検出用部分のレベルの上昇の検出を含む、請求項31記載の方法。
【請求項37】
以下の段階を含む、少なくとも1つの膜貫通型タンパク質と相互作用する能力に関して候補化合物をスクリーニングする方法:
細胞に、NLS含有膜貫通型タンパク質をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列をトランスフェクトすることで、コードされたタンパク質の細胞内における発現を可能とする段階;
細胞に候補化合物を接触させる段階;ならびに
細胞膜に残存したNLS含有膜貫通型タンパク質のレベルを、細胞の膜画分を単離し、同画分に膜貫通型タンパク質の標識リガンドを接触させ、同画分とリガンドの結合のレベルを決定することで決定する段階;
ここで、候補化合物を接触させなかった対照細胞の細胞膜におけるレベルに対して、細胞膜における膜貫通型タンパク質のレベルの変化が検出されることは、化合物が膜貫通型タンパク質と相互作用することを意味する。
【請求項38】
標識リガンドが放射標識リガンドである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含む、請求項37〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含まず、膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列がNLSをコードするように修飾されている、請求項37〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
ヌクレオチド配列が、表1から選択されるNLSをコードするように修飾されている、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ヌクレオチド配列が、KKFKR、PKKKRKV、およびAFSAKKFKRからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするように修飾されている、請求項40記載の方法。
【請求項43】
細胞が真核細胞または原核細胞である、請求項37〜42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
細胞が、哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞、および真菌細胞からなる群より選択される真核細胞である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
細胞が、HEK細胞、COS細胞、およびCHO細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
膜貫通型タンパク質が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、輸送体、サイトカイン受容体、チロシンキナーゼ受容体、および低密度リポタンパク質(LDL)受容体からなる群より選択される、請求項37〜45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
膜貫通型タンパク質がGPCRである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
GPCRが、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、ドーパミンD3受容体、ドーパミンD5受容体、ヒスタミン1受容体、システイニルロイコトリエン受容体1、システイニルロイコトリエン受容体2、オピオイド受容体、ムスカリン受容体、セロトニン受容体、β2-アドレナリン受容体、および代謝共役型グルタミン酸4受容体からなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
膜貫通型タンパク質が輸送体である、請求項46記載の方法。
【請求項50】
輸送体が、ドーパミン輸送体およびセロトニン輸送体からなる群より選択される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
膜貫通型タンパク質がサイトカイン受容体である、請求項46記載の方法。
【請求項52】
サイトカイン受容体が、エリスロポイエチン受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
膜貫通型タンパク質がチロシンキナーゼ受容体である、請求項46記載の方法。
【請求項54】
チロシンキナーゼ受容体が、上皮成長因子受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
膜貫通型タンパク質が低密度リポタンパク質受容体である、請求項46記載の方法。
【請求項56】
細胞に複数のヌクレオチド配列をトランスフェクトする方法であって、個々の配列が、少なくとも1つのNLSを含む、さまざまな膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項37〜55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
個々のヌクレオチド配列が、さまざまな検出用部分を含むタンパク質をコードする、請求項56記載の方法。
【請求項58】
少なくとも1つの検出用部分が、少なくとも2種類のコードされたタンパク質に共通である、請求項56記載の方法。
【請求項59】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞膜に結合した検出用部分のレベルの低下の検出を含む、請求項37〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
検出用部分の分布の変化の検出が、細胞膜に結合した検出用部分のレベルの上昇の検出を含む、請求項37〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
少なくとも1つのNLSおよび検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする、少なくとも1種類のヌクレオチド配列がトランスフェクトされた、単離された細胞。
【請求項62】
検出用部分が、膜貫通型タンパク質の抗原部分のアミノ酸配列を含む検出用ペプチドである、請求項61記載の細胞。
【請求項63】
ヌクレオチド配列が、少なくとも1つのNLSおよび検出用部分を含む膜貫通型タンパク質を含む融合タンパク質をコードする、請求項61記載の細胞。
【請求項64】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含む、請求項61〜63のいずれか一項記載の細胞。
【請求項65】
野生型の膜貫通型タンパク質がNLSを含まず、膜貫通型タンパク質をコードするヌクレオチド配列がNLSをコードするように修飾されている、請求項61〜63のいずれか一項記載の細胞。
【請求項66】
ヌクレオチド配列が、表1から選択されるNLSをコードするように修飾されている、請求項65記載の細胞。
【請求項67】
ヌクレオチド配列が、KKFKR、PKKKRKV、およびAFSAKKFKRからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするように修飾されている、請求項65記載の細胞。
【請求項68】
検出用部分が抗原ペプチドであり、細胞内における抗原ペプチドの分布が、抗原ペプチドに特異的な抗体を含む抗体ベースの検出系に対する結合を可能とすることで決定される、請求項63記載の細胞。
【請求項69】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的な第1の抗体、および検出用標識を有し、第1の抗体に特異的な第2の抗体を含む、請求項68記載の細胞。
【請求項70】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的で、検出用標識を有する第1の抗体を含む、請求項68記載の細胞。
【請求項71】
検出用標識が、光学的に検出可能な標識である、請求項68または69記載の細胞。
【請求項72】
検出用標識が、発光標識または蛍光標識である、請求項68または69記載の細胞。
【請求項73】
検出用部分が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、およびこれらの修飾型異型からなる群より選択されるポリペプチドである、請求項63記載の細胞。
【請求項74】
膜貫通型タンパク質が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、輸送体、サイトカイン受容体、チロシンキナーゼ受容体、および低密度リポタンパク質(LDL)受容体からなる群より選択される、請求項61〜73のいずれか一項記載の細胞。
【請求項75】
膜貫通型タンパク質がGPCRである、請求項74記載の細胞。
【請求項76】
GPCRが、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、ドーパミンD3受容体、ドーパミンD5受容体、ヒスタミン1受容体、システイニルロイコトリエン受容体1、システイニルロイコトリエン受容体2、オピオイド受容体、ムスカリン受容体、セロトニン受容体、β2-アドレナリン受容体、および代謝共役型グルタミン酸4受容体からなる群より選択される、請求項75記載の細胞。
【請求項77】
膜貫通型タンパク質が輸送体である、請求項74記載の細胞。
【請求項78】
輸送体が、ドーパミン輸送体およびセロトニン輸送体からなる群より選択される、請求項77記載の細胞。
【請求項79】
膜貫通型タンパク質がサイトカイン受容体である、請求項74記載の細胞。
【請求項80】
サイトカイン受容体が、エリスロポイエチン受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項79記載の細胞。
【請求項81】
膜貫通型タンパク質がチロシンキナーゼ受容体である、請求項74記載の細胞。
【請求項82】
チロシンキナーゼ受容体が、上皮成長因子受容体およびインスリン受容体からなる群より選択される、請求項81記載の細胞。
【請求項83】
膜貫通型タンパク質が低密度リポタンパク質受容体である、請求項74記載の細胞。
【請求項84】
個々の配列が少なくとも1つのNLSを含むさまざまな膜貫通型タンパク質を含むタンパク質をコードする、複数のヌクレオチド配列でトランスフェクトされた、請求項61〜83のいずれか一項記載の細胞。
【請求項85】
個々のヌクレオチド配列が、さまざまな検出用部分を含むタンパク質をコードする、請求項84記載の細胞。
【請求項86】
少なくとも1つの検出用部分が、少なくとも2種類のコードされたタンパク質に共通である、請求項84記載の細胞。
【請求項87】
真核細胞または原核細胞である、請求項61〜86のいずれか一項記載の細胞。
【請求項88】
哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞、および真菌細胞からなる群より選択される真核細胞である、請求項87記載の細胞。
【請求項89】
HEK細胞、COS細胞、およびCHO細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項88記載の細胞。
【請求項90】
神経細胞である、請求項88記載の細胞。
【請求項91】
請求項1〜60のいずれか一項記載の方法で、膜貫通型タンパク質と相互作用可能であるものとして同定される化合物。
【請求項92】
以下の段階を含む、第1のタンパク質と第2のタンパク質がオリゴマーを形成可能か否かを判定する方法:
細胞に、NLSを含む第1のタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列、および検出用部分を含む第2のタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列をトランスフェクトすることで、コードされた第1のタンパク質と第2のタンパク質の、細胞内における発現を可能とする段階;ならびに
細胞内における、検出用部分の分布を決定する段階;
ここで、細胞の核内および核の近傍で検出用部分が検出されること、または対照細胞に対して、細胞表面での検出用部分のレベルの低下が検出されることは、第1のタンパク質と第2のタンパク質が相互作用することを意味する。
【請求項93】
第1のタンパク質および第2のタンパク質が、異なる膜貫通型タンパク質である、請求項92記載の方法。
【請求項94】
第1のタンパク質および第2のタンパク質が、同じ膜貫通型タンパク質である、請求項92記載の方法。
【請求項95】
第1のタンパク質および第2のタンパク質の1つが膜貫通型タンパク質であり、もう1つが非膜貫通型タンパク質である、請求項92記載の方法。
【請求項96】
第1のタンパク質および第2のタンパク質がGPCRである、請求項92〜94のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
検出用部分が、第2のタンパク質の抗原部分のアミノ酸配列を含む検出用ペプチドである、請求項92〜96のいずれか一項記載の方法。
【請求項98】
第2のヌクレオチド配列が、第2のタンパク質および検出用部分を含む融合タンパク質をコードする、請求項92記載の方法。
【請求項99】
野生型の第1のタンパク質がNLSを含む、請求項92〜94のいずれか一項記載の方法。
【請求項100】
野生型の第1のタンパク質がNLSを含まず、第1のタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列がNLSをコードするように修飾されている、請求項92〜94のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
第1のヌクレオチド配列が、表1から選択されるNLSをコードするように修飾されている、請求項100記載の方法。
【請求項102】
第1のヌクレオチド配列が、KKFKR、PKKKRKV、およびAFSAKKFKRからなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするように修飾されている、請求項100記載の方法。
【請求項103】
細胞が真核細胞または原核細胞である、請求項92〜102のいずれか一項記載の方法。
【請求項104】
細胞が、哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、植物細胞、および真菌細胞からなる群より選択される真核細胞である、請求項103記載の方法。
【請求項105】
細胞が、HEK細胞、COS細胞、およびCHO細胞からなる群より選択される哺乳類細胞である、請求項104記載の方法。
【請求項106】
検出用部分が抗原ペプチドであり、また細胞内における抗原ペプチドの分布が、抗原ペプチドに特異的な抗体を含む抗体ベースの検出系に対する結合を可能とすることで決定される、請求項92記載の方法。
【請求項107】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的な第1の抗体、および検出用標識を有し、第1の抗体に特異的な第2の抗体を含む、請求項106記載の方法。
【請求項108】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的で、検出用標識を有する第1の抗体を含む、請求項106記載の方法。
【請求項109】
抗体ベースの検出系が、抗原ペプチドに特異的で、検出用標識を有する第1の抗体を含む、請求項108記載の方法。
【請求項110】
検出用標識が、光学的に検出可能な標識、または蛍光標識である、請求項109記載の方法。
【請求項111】
検出用標識が、発光標識または蛍光標識である、請求項110記載の方法。
【請求項112】
検出用部分が、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、およびこれらの修飾型異型からなる群より選択されるポリペプチドである、請求項92記載の方法。
【請求項113】
第1のタンパク質と第2のタンパク質が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、輸送体、サイトカイン受容体、チロシンキナーゼ受容体、および低密度リポタンパク質(LDL)受容体からなる群より選択される膜貫通型タンパク質である、請求項93〜112のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が、ドーパミンD1受容体、ドーパミンD2受容体、ドーパミンD3受容体、ドーパミンD5受容体、ヒスタミン1受容体、システイニルロイコトリエン受容体1、システイニルロイコトリエン受容体2、オピオイド受容体、ムスカリン受容体、セロトニン受容体、β2-アドレナリン受容体、および代謝共役型グルタミン酸4受容体からなる群より選択されるGPCRである、請求項113記載の方法。
【請求項115】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が輸送体である、請求項113記載の方法。
【請求項116】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が、ドーパミン輸送体およびセロトニン輸送体からなる群より選択される輸送体である、請求項115記載の方法。
【請求項117】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質がサイトカイン受容体である、請求項113記載の方法。
【請求項118】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が、エリスロポイエチン受容体およびインスリン受容体からなる群より選択されるサイトカイン受容体である、請求項117記載の方法。
【請求項119】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質がチロシンキナーゼ受容体である、請求項113記載の方法。
【請求項120】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が、上皮成長因子受容体およびインスリン受容体からなる群より選択されるチロシンキナーゼ受容体である、請求項119記載の方法。
【請求項121】
少なくとも1つの膜貫通型タンパク質が低密度リポタンパク質受容体である、請求項113記載の方法。
【請求項122】
第1のヌクレオチド配列が、第2のタンパク質の検出用部分とは異なる検出用部分をさらに含む第1のタンパク質をコードする、請求項92記載の方法であって、ここで、第1のタンパク質の検出用部分と第2のタンパク質の検出用部分の間のエネルギー移動相互作用が検出されることは、第1のタンパク質と第2のタンパク質がオリゴマーを形成することを意味する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112955(P2010−112955A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267007(P2009−267007)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2003−584728(P2003−584728)の分割
【原出願日】平成15年4月11日(2003.4.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508334100)パトバイオス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】