膜電極接合体及びその製造方法、並びに、燃料電池及びその製造方法
【課題】発電性能の低下をさらに抑えることができる燃料電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させた後、電極用金属触媒粒子が分散された高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる。
【解決手段】高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させた後、電極用金属触媒粒子が分散された高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスとして、純水素、化石燃料等からの改質水素、あるいは、メタノール及びエタノールなどの液体燃料を用い、酸化剤ガスとして空気(酸素)などを用いる燃料電池及びその製造方法に関し、特に当該燃料電池に用いる膜電極接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、一般的には複数の単電池(セル)を積層させて構成されている。固体高分子形燃料電池の単電池は、膜電極接合体(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEAの両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータとを有している。
【0004】
MEAは、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(イオン交換樹脂膜)と、当該高分子電解質膜の両面に形成された一対の電極層とを備えている。一対の電極層は、高分子電解質膜の両面に形成された触媒層と、当該触媒層上に形成され、ガスの通気性と電子伝導性とを併せ持つガス拡散層とを有している。
【0005】
ここで、触媒層は、一般に、白金(Pt)系貴金属などの電極反応用の触媒金属を担持したカーボン粉末を適当な有機溶剤に分散させたものに、電解質溶液を適量添加してペースト状にし、これをプロトン伝導性物質である高分子電解質膜に設けて形成されている。また、ガス拡散層には、一般に、電極反応(電気化学的反応)により生じた生成水を管理するために撥水層が設けられたり、ガス拡散層自体に撥水処理が施されたりしている。
【0006】
また、上記一対のセパレータには、ガス拡散層と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路溝と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路溝とが設けられている。当該各ガス流路溝を通じて上記一対の電極層にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0007】
燃料電池における電極反応は、触媒金属とガス拡散層と高分子電解質膜とが接する部分、すなわち三相界面に原料ガスが供給されることで起こる。しかしながら、三相界面の設計は非常に困難な技術であることから、従来の燃料電池においては、三相界面が形成されずに、白金等の高価な貴金属で構成される触媒金属の一部が利用されない恐れがある。また、原料ガスの供給が三相界面付近まで充分に至らずに、三相界面付近に担持された高価な触媒金属が有効に利用されない恐れもある。従って、このような状況下において、触媒金属の使用量の低減を図ることは、電流供給の低下に繋がることになり、燃料電池の発電性能を低下させることになる。
【0008】
一方、カーボン粉末に担持された触媒金属の触媒活性を向上させるためには、触媒金属の総表面積を大きくすることが有効である。このため、触媒金属として、数nm程度の小さな粒径の金属触媒粒子が多数使用されることが好ましい。しかしながら、従来の燃料電池においては、燃料電池の起動停止により生じる電位変動により、金属触媒粒子がシンタリングして、金属触媒粒子の粒径が数10nmまで大きくなる恐れがある。この場合、触媒金属の総表面積が小さくなるため、触媒活性は低下し、結果として燃料電池の発電性能が低下することになる。
【0009】
上記課題を改善する方法として、例えば、特許文献1(特開2005−203332号公報)と特許文献2(特開2004−59428号公報)に開示された技術がある。
特許文献1には、触媒金属を担持し且つ周囲に電解質溶液層が付与されたカーボンナノチューブ(以下、CNTという)を高分子電解質膜に垂直に転写し、当該CNTの先端をセパレータに接着した構造を有する燃料電池が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、炭素布又は炭素紙などの炭素基板(ガス拡散層)上に触媒金属を分散した後、400℃〜900℃の温度環境下でメタンなどの炭素ソース気体を炭素基板に供給し、CNTを炭素基板上で直接成長させた構造を有する燃料電池が開示されている。
【0011】
特許文献1及び2の燃料電池によれば、触媒金属を担持する担体としてCNTを用いることにより、被担持面の総表面積を大きくすることができ、且つ、三相界面付近まで原料ガスを充分に供給することができる。
【特許文献1】特開2005−203332号公報
【特許文献2】特開2004−59428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の技術では、電極層の形成のために、CNTの生成、CNTによる触媒金属の担持、CNTの外周部への電解質溶液の付与、CNTの高分子電解質膜上への転写、及びCNTの先端とセパレータとの接着という多数の工程を経る必要がある。このため、電極層の形成コストが高くなる。また、上記特許文献1の技術では、上記金属触媒粒子のシンタリングの問題を充分に解決することはできず、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができない。
【0013】
一方、特許文献2の技術では、炭素基板上でCNTを直接成長させるため、特許文献1の技術に比べて、電極層の形成工程を単純化(少なく)することができる。
しかしながら、特許文献2の技術では、CNTの生成のために400℃〜900℃の温度環境が必要であるため、CNTを炭素製の部材以外には直接形成することができない。すなわち、撥水層が形成された又は撥水処理が施されたガス拡散層、及び高分子電解質膜などには、CNTを直接形成することができない。このため、生成水又は加湿水の管理が困難となり、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下が生じ、燃料電池の発電性能が低下するという問題点がある。
【0014】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、発電性能の低下を特許文献1及び2よりさらに抑えることができる燃料電池及びその製造方法、並びに当該燃料電池が備える膜電極接合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、高分子電解質膜上に1nm〜50nmの金属触媒粒子を分散した後、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着すると、金属触媒粒子からCNTが直接成長することを見出した。すなわち、特許文献2のようにCNTの生成のために炭素製の部材を必要とすることなく、CNTを生成する技術を見出した。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成されている。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、上記ガス拡散層には、撥水層が形成されている又は撥水処理が施されている、第3又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0021】
本発明の第6態様によれば、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子は、Co、Ni、Fe、Pt、Au、Cu、Ag、W、Pd、V、Rh、Ir、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、第2又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、上記カーボンナノチューブの少なくとも一部が、2つ以上の上記電極用金属触媒粒子と接している、第1〜6のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、上記電極用金属触媒粒子は、Pt、Ru、Co、Ni、Ta、W、Ti、Mo、Pd、Mn、V、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、第1〜7のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0024】
本発明の第9態様によれば、上記電極用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、第1又は3態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0025】
本発明の第10態様によれば、上記電極用金属触媒粒子及び上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、第2又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0026】
本発明の第11態様によれば、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を備えた燃料電池を提供する。
【0027】
本発明の第12態様によれば、高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0028】
本発明の第13態様によれば、高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として使われる粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記高分子電解質膜上に分散させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第14態様によれば、ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の第15態様によれば、ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させた上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記ガス拡散層上に分散させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の第16態様によれば、第12〜15のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体の製造方法を含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池によれば、高分子電解質膜上に分散された粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されるようにしているので、生成水又は加湿水の管理が容易となり、特許文献2の燃料電池よりも発電性能の低下を抑えることができる。また、電極用金属触媒粒子からカーボンナノチューブが直接形成されることで、当該カーボンナノチューブにより、上記金属触媒粒子のシンタリングを抑えて、特許文献1の燃料電池よりも発電性能の低下を抑えることが可能となる。
【0033】
なお、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池において、電極用金属触媒粒子は、高分子電解質膜上に分散されることに代えて、ガス拡散層上に分散されてもよい。また、カーボンナノチューブは、電極用金属触媒粒子に代えて、高分子電解質膜上又はガス拡散層上に分散されたカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子から直接形成されてもよい。これらの場合でも同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、高分子電解質膜上に、粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させた後、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させるようにしている。これにより、特許文献1に比べて、電極層の形成工程を単純化することができ、電極層の形成コストを低くすることができる。また、電極用金属触媒粒子から直接生成したカーボンナノチューブにより、金属触媒粒子を固定して上記シンタリングを抑えることが可能になる。これにより、長時間安定して燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
【0035】
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、炭素製の部材以外の部材にカーボンナノチューブを直接生成できるので、特許文献2と比べて、生成水又は加湿水の管理が容易となる。これにより、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下を抑えて、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、三相界面が比較的容易に形成できるため、金属触媒粒子を有効に利用でき、金属触媒粒子の使用量の低減が可能となる。
【0036】
なお、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法において、電極用金属触媒粒子を、高分子電解質膜上に分散させることに代えて、ガス拡散層上に分散させてもよい。また、カーボンナノチューブは、電極用金属触媒粒子から直接生成させることに代えて、高分子電解質膜上又はガス拡散層上に分散させたカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子から直接生成させるようにしてもよい。これらの場合でも同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる燃料電池について説明する。本第1実施形態にかかる燃料電池は、発電運転に用いる燃料として水素ガス及び空気(酸素)を用いる固体高分子形燃料電池(PEFC)である。但し、本発明は、下記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の基本構成を模式的に示す断面図である。
本第1実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0040】
本第1実施形態にかかる燃料電池は、図1に示すように、膜電極接合体1(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA1の両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータ2,2とを有する単電池(セル)を備えている。なお、本第1実施形態にかかる燃料電池は、この単電池を複数個積層して構成されてもよい。
【0041】
MEA1は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、当該高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層12,12とを備えている。一対の電極層12,12は、高分子電解質膜11の両面に形成された触媒層13と、当該触媒層13上に形成され、ガスの通気性と電子伝導性とを併せ持つガス拡散層14とを有している。ここで、ガス拡散層14には、電極反応(電気化学的反応)により生じた生成水を管理するために撥水層が設けられている。なお、これに代えて、ガス拡散層14自体に撥水処理が施されてもよい。
【0042】
また、一対のセパレータ2,2のうちの一方には、ガス拡散層14と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路溝2aが設けられている。一対のセパレータ2,2のうちの他方には、ガス拡散層14と当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路溝2bが設けられている。当該各ガス流路溝2a,2bを通じて一対の電極層12,12にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0043】
図2は、触媒層13の構造を模式的に示す側面図であり、図3は、高分子電解質膜11上に触媒層13を形成した状態を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、触媒層13は、高分子電解質膜11上に、触媒金属として電極用金属触媒粒子31が分散され、当該電極用金属触媒粒子31の少なくとも一部からカーボンナノチューブ41(以下、CNTという)が形成された構造を有する。
【0044】
電極用金属触媒粒子31は、燃料電池の触媒として作用する元素で構成されている。例えば、電極用金属触媒粒子31は、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている。
【0045】
電極用金属触媒粒子31の粒径は、1nm〜50nmの範囲内で設定されている。電極用金属触媒粒子31の粒径が1nmより小さくなると、電極用金属触媒粒子31の作製が困難になる。一方、電極用金属触媒粒子31の粒径が50nmより大きくなると、電極用金属触媒粒子31の電極反応面積が小さくなり、燃料電池の発電性能が低下することになる。なお、より好ましくは、電極用金属触媒粒子31の粒径は、1nm〜10nmとする。これにより、燃料電池の発電性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0046】
電極用金属触媒粒子31を高分子電解質膜11上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0047】
CNT41は、高分子電解質膜11上に分散された電極用金属触媒粒子31から直接成長(生成)するように形成されている。このようなCNT41は、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを電極用金属触媒粒子31に蒸着することで形成することができる。
【0048】
図4は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて触媒層13の一部を撮影したTEM写真である。図4のTEM写真において、略黒丸部分は、電極用金属触媒粒子31を示している。
【0049】
図4のTEM写真から分かるように、CNT41は、主に多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという)の構造を有している。また、CNT41は、高分子電解質膜11の面に対して垂直方向ではなく、高分子電解質膜11の面に対して平行な面方向に、ランダムに形成されている。このように形成されたCNT41は、互いに隣接する電極用金属触媒粒子31,31同士を電気的に接続して、面方向の導電性能を向上させることができる。これにより、抵抗分極の成分を低減することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0050】
なお、特許文献2の燃料電池では、上述したように、400℃以上の高温の温度環境下において、CVD法などを利用してCNTを生成するため、高分子電解質膜上に直接、CNTを形成することができない。
【0051】
これに対して、本第1実施形態によれば、CNT41が、0〜200℃の低温の温度環境下において、電極用金属触媒粒子31を種にして成長することを利用するため、高分子電解質膜11上にCNT41を直接形成することができる。従って、電極層12の形成工程を単純化(少なく)することができ、低コスト化を実現することができる。また、炭素製の部材以外の部材にCNT41を直接形成できるので、特許文献2と比べて、生成水又は加湿水の管理が容易となる。これにより、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下を抑えて、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
【0052】
また、本第1実施形態によれば、三相界面を比較的容易に形成することができるため、白金等の高価な貴金属で構成される電極用金属触媒粒子31を有効に利用することができ、電極用金属触媒粒子31の使用量の低減が可能となる。
【0053】
また、本第1実施形態によれば、CNT41が電極用金属触媒粒子31を種にして成長するため、電極用金属触媒粒子31はCNT41によって固定される。これにより、燃料電池の起動停止による電位変動の際、電極用金属触媒粒子31のシンタリングを抑えることができ、長時間安定して燃料電池の発電性能を維持することができる。
【0054】
《第2実施形態》
図5を用いて、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池について説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0055】
本第2実施形態の燃料電池が、上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、CNT成長用金属触媒粒子32がさらに分散され、CNT41が電極用金属触媒粒子31に代えてCNT成長用金属触媒粒子32から成長している点で異なる。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略しながら、主に相違点について説明する。
【0056】
CNT成長用金属触媒粒子32は、CNT41の触媒として作用する元素で構成されている。例えば、CNT成長用金属触媒32は、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Au(金)、Cu(銅)、Ag(銀)、W(タングステン)、Pd(パラジウム)、V(バナジウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている。
【0057】
CNT成長用金属触媒粒子32の粒径は、1nm〜50nmの範囲内で設定されている。CNT成長用金属触媒粒子32の粒径が1nmより小さくなると、CNT成長用金属触媒粒子32の作製が困難になる。一方、CNT成長用金属触媒粒子32の粒径が50nmより大きくなると、CNT41の直径が大きくなり、結晶性のよいCNT41を得ることができなくなる。なお、より好ましくは、CNT成長用金属触媒粒子32の粒径は、1nm〜10nmとする。
【0058】
CNT成長用金属触媒粒子32を高分子電解質膜11上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0059】
CNT41は、高分子電解質膜11上に分散されたCNT成長用金属触媒粒子32から直接成長するように形成されている。このようなCNT41は、上記第1実施形態と同様に、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンをCNT成長用金属触媒粒子32に蒸着することで形成することができる。
【0060】
本第2実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31に加えて、CNT成長用金属触媒粒子32を備えているので、CNT成長用金属触媒粒子32の材質として、CNT41の成長を促す材質を選択することで、より確実にCNT41を形成することができる。
【0061】
《第3実施形態》
図6及び図7を用いて、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池について説明する。図6は、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。図7は、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池において、ガス拡散層上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【0062】
本第3実施形態の燃料電池が上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11に代えてガス拡散層14上に電極用金属触媒粒子31が分散されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0063】
なお、電極用金属触媒粒子31をガス拡散層14上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0064】
ここで、上記第1実施形態の燃料電池において、高分子電解質膜11上に電極用金属触媒粒子31を多量に分散した場合には、電極用金属触媒粒子31同士が凝集して膜状になる恐れがある。この場合、触媒金属の総表面積が減少することになり、ガス拡散を阻害するなどして、燃料電池の発電性能が低下する恐れがある。
【0065】
これに対して、本第3実施形態にかかる燃料電池によれば、ガス拡散層14の表面が多孔質であるため、ガス拡散層14上に電極用金属触媒粒子31を多量に分散しても、電極用金属触媒粒子31が凝集して膜状になることを抑えることができる。従って、上記第1実施形態の燃料電池に比べて、電極用金属触媒粒子31を多量に分散することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0066】
《第4実施形態》
図8を用いて、本発明の第4実施形態にかかる燃料電池について説明する。図8は、本発明の第4実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0067】
本第4実施形態の燃料電池が上記第2実施形態の燃料電池と異なる点は、電極用金属触媒粒子31とCNT成長用金属触媒粒子32とが、高分子電解質膜11上に分散されることに代えて、ガス拡散層14上に分散されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0068】
本第4実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31に加えて、CNT成長用金属触媒粒子32を備えているので、CNT成長用金属触媒粒子32の材質として、CNT41の成長を促す材質を選択することで、より確実にCNT41を形成することができる。
また、本第4実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31とCNT成長用金属触媒粒子32とをガス拡散層14上に分散するようにしているので、上記第1実施形態の燃料電池に比べて、電極用金属触媒粒子31を多量に分散することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0069】
《第5実施形態》
図9を用いて、本発明の第5実施形態にかかる燃料電池について説明する。図9は、本発明の第5実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0070】
本第5実施形態の燃料電池が上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aが、複数積層されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0071】
本第5実施形態にかかる燃料電池によれば、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを複数積層して触媒層13を構成するようにしているので、電極用金属触媒粒子31同士が凝集して膜状になることなく、電極用金属触媒粒子31の使用量を増やすことができる。従って、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0072】
なお、本第5実施例においては、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを高分子電解質膜11上に複数積層したが、図10に示すようにガス拡散層14上に複数積層してもよい。
また、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを、高分子電解質膜11上とガス拡散層14上の両方に少なくとも1層以上形成したのち、互いの層13aを接合することで、層13aが複数積層されるようにしてもよい。
【0073】
《第6実施形態》
図11を用いて、本発明の第6実施形態にかかる燃料電池について説明する。図11は、本発明の第6実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0074】
本第6実施形態の燃料電池が上記第2実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、電極用金属触媒粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bが、複数積層されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0075】
本第6実施形態にかかる燃料電池によれば、電極用金属触媒粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bを複数積層して触媒層13を構成するようにしているので、電極用金属触媒粒子31及びCNT成長用金属触媒粒子32同士が凝集して膜状になることなく、電極用金属触媒粒子31及びCNT成長用金属触媒粒子32の使用量を増やすことができる。従って、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0076】
なお、本第6実施形態においては、電極用金属粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bを高分子電解質膜11上に複数積層したが、図12に示すようにガス拡散層14上に複数積層してもよい。
また、電極用金属粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32が分散された層13bを、高分子電解質膜11上とガス拡散層14上の両方に少なくとも1層以上形成したのち、互いの層13bを接合することで、層13bが複数積層されるようにしてもよい。
【0077】
次に、本発明の第1〜第6実施例にかかる燃料電池の製造方法、及びそれらの燃料電池の発電性能等について具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
まず、本発明の第1〜第6実施例にかかる燃料電池の製造方法について説明する。
【0079】
《第1実施例》
本第1実施例にかかる燃料電池は、図2に示す触媒層の構造を有している。
【0080】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
高分子電解質膜11に120mm×120mmの開口部を持つマスクを被せて、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を高分子電解質膜11上に形成した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を用いた。また、マスクとして、厚さ50μmのPETフィルムを用いた。本第1実施例では、このマスクを高分子電解質膜11上にラミネートすることで、開口部以外へのPt粒子の付着を防止した。
【0081】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Ptターゲット、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、10回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、2〜8nmであった。
【0082】
(CNT形成工程)
Pt粒子31の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Pt粒子31を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、10回のアーク放電によりカーボンを蒸着することで、CNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径4〜8nm、長さ100〜400nmのMWCNTであった。
【0083】
(MEA作製工程)
Pt粒子31及びCNT41の形成後、高分子電解質膜11からマスクを取り外し、高分子電解質膜11のPt粒子31及びCNT41の形成面(成膜面)をアノード面として、当該アノード面に撥水層付きガス拡散層14を形成した。一方、高分子電解質膜11のPt粒子31及びCNT41の形成面とは反対側の面をカソード面として、当該カソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
【0084】
次いで、上記のようにして作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第1実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0085】
《第2実施例》
本第2実施例にかかる燃料電池は、図2に示す触媒層の電極構造を有している。
【0086】
本第2実施例にかかる燃料電池では、電極用金属触媒粒子形成工程において、電極用金属触媒粒子31として、PtとCoとの合金(Pt:50wt%、Co:50wt%)を使用した。それ以外の点については、上記第1実施例にかかる燃料電池と同様にして、本第2実施例にかかる燃料電池を作製した。
【0087】
《第3実施例》
本第3実施例にかかる燃料電池は、図5に示す触媒層の電極構造を有している。
【0088】
(CNT成長用金属触媒粒子形成工程)
高分子電解質膜11に120mm×120mmの開口部を持つマスクを被せて、真空アーク蒸着法により、CNT成長用金属触媒粒子としてCo粒子32を高分子電解質膜11上に形成した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を用いた。また、マスクとして、厚さ50μmのPETフィルムを用いた。本第3実施例では、このマスクを高分子電解質膜11上にラミネートすることで、開口部以外へのCo粒子32の付着を防止した。
【0089】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Coターゲット、真空度2.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、10回のアーク放電によりCo粒子32を形成した。このとき形成されたCo粒子32の粒径は、5〜10nmであった。
【0090】
(CNT形成工程)
Co粒子32の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Co粒子32を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、10回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径6〜9nm、長さ300〜600nmのMWCNTであった。
【0091】
(電極用触媒粒子形成工程)
CNT41の形成後、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を高分子電解質膜11上に形成した。
Pt粒子31の形成には、Co粒子32及びCNT41を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたPtターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、真空度3.5×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件とし、10回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、2〜5nmであった。
【0092】
(MEA作製工程)
Co粒子32とCNT41とPt粒子31の形成後、高分子電解質膜11からマスクを取り外し、高分子電解質膜11のCo粒子32、CNT41、及びPt粒子31の形成面(成膜面)をアノード面として、撥水層付きガス拡散層14を形成した。一方、高分子電解質膜11のCo粒子32、CNT41、及びPt粒子31の形成面とは反対側の面をカソード面として、当該カソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
【0093】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2の圧力となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第3実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0094】
《第4実施例》
本第4実施例にかかる燃料電池は、図6に示す触媒層の電極構造を有している。
【0095】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
撥水層付きガス拡散層14の撥水層面に、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を形成した。
ここでは、撥水層付きガス拡散層14として、外径寸法が120mm角、厚さ50μmのカーボンペーパーに撥水層が形成されたE−TEC製GDLを用いた。
【0096】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Ptターゲット、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、50回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、10〜30nmであった。
【0097】
(CNT形成工程)
Pt粒子31の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Pt粒子31を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、50回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径15〜26nm、長さ200〜400nmのMWCNTであった。
【0098】
(MEA作製工程)
Pt粒子31及びCNT41を形成した撥水層付きガス拡散層14を、高分子電解質膜11のアノード面に形成し、当該高分子電解質膜11のカソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を使用した。
【0099】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第4実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0100】
《第5実施例》
本第5実施例にかかる燃料電池は、図6に示す触媒層の電極構造を有している。
【0101】
本第5実施例にかかる燃料電池では、電極用金属触媒粒子形成工程において、電極用金属触媒粒子31として、PtとCoとの合金(Pt:50wt%、Co:50wt%)を使用した。それ以外の点については、上記第4実施例にかかる燃料電池と同様にして、本第5実施例にかかる燃料電池を作製した。
【0102】
《第6実施例》
本第6実施例にかかる燃料電池は、図8に示す触媒層の電極構造を有している。
【0103】
(CNT成長用金属触媒形成工程)
撥水層付きガス拡散層14の撥水層面に、真空アーク蒸着法により、CNT成長用金属触媒粒子としてCo粒子32を形成した。
ここでは、撥水層付きガス拡散層14として、外径寸法が120mm角、厚さ50μmのカーボンペーパーに撥水層が形成されたE−TEC製GDLを用いた。
【0104】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Coターゲット、真空度3.6×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、20回のアーク放電によりCo粒子32を形成した。このとき形成されたCo粒子32の粒径は、6〜12nmであった。
【0105】
(CNT形成工程)
Co粒子32の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Co粒子32を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、20回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径8〜12nm、長さ200〜500nmのMWCNTであった。
【0106】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
CNT41の形成後、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を形成した。
Pt粒子31の形成には、Co粒子32及びCNT41を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたPtターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件とし、50回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、20〜40nmであった。
【0107】
(MEA作製工程)
Co粒子32、CNT41、及びPt粒子31を形成した撥水層付きガス拡散層14を、高分子電解質膜11のアノード面に形成し、当該高分子電解質膜11のカソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を使用した。
【0108】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第6実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0109】
《燃料電池の評価》
次に、上記のようにして作製した第1〜第6実施例にかかる燃料電池を用いて、発電試験を行った。このとき、発電試験の条件としては、セル温度70℃、アノード露点70℃、カソード露点70℃、水素利用率70%、酸素利用率50%とし、OCV(Open circuit voltage:負荷をかけていないときの電池電圧)と、電流密度0.1A/cm2で運転したときの運転時電圧とを計測した。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
ここで、触媒層をスプレー方式又はダイ塗工方式などにより形成した従来の一般的な燃料電池において、白金量は約0.5mg/cm2であり、OCVは0.97〜1.00Vであり、電流密度0.1A/cm2で運転したときの運転時電圧は0.80〜0.85Vである。
【0112】
従って、上記表1より、第1〜6実施例の燃料電池では、従来の燃料電池と比べて、白金量を大幅に減らすことができることが分かる。なお、上記表1では、第1〜第3実施例の燃料電池よりも従来の燃料電池の方が、運転時電圧が高くなっている。しかしながら、運転時電圧は白金量を増加させることにより高くすることができるので、第1〜第3実施例の燃料電池の白金量を増加させることで、従来の燃料電池の方よりも運転時電圧を高くすることができる。このとき、第1〜第3実施例の燃料電池における白金量は、従来の見料電池における白金量よりも多くする必要はない。すなわち、第1〜第6実施例の燃料電池は、従来の燃料電池に比べて高い発電性能を有している。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明にかかる燃料電池は、CNTを0〜200℃の温度で形成することができるため、撥水層を有する又は撥水処理が施されたガス拡散層、あるいは高分子電解質膜に、CNTを直接形成することができ、これにより、電極層の形成工程を単純化でき且つ発電性能の低下を抑えることができるので、例えば、コージェネレーションシステム又は自動車などに用いられる燃料電池として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の基本構成を模式的に示す断面である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池において、高分子電解質膜上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の触媒層の一部を拡大して示すTEM写真である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる燃料電池において、ガス拡散層上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図10】本発明の第5実施形態の変形例にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図11】本発明の第6実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図12】本発明の第6実施形態の変形例にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 膜電極接合体
2 セパレータ
11 高分子電解質膜
12 電極層
13 触媒層
14 ガス拡散層
31 電極用電極触媒粒子
32 カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子
41 カーボンナノチューブ(CNT)
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスとして、純水素、化石燃料等からの改質水素、あるいは、メタノール及びエタノールなどの液体燃料を用い、酸化剤ガスとして空気(酸素)などを用いる燃料電池及びその製造方法に関し、特に当該燃料電池に用いる膜電極接合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0003】
固体高分子形燃料電池は、一般的には複数の単電池(セル)を積層させて構成されている。固体高分子形燃料電池の単電池は、膜電極接合体(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEAの両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータとを有している。
【0004】
MEAは、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(イオン交換樹脂膜)と、当該高分子電解質膜の両面に形成された一対の電極層とを備えている。一対の電極層は、高分子電解質膜の両面に形成された触媒層と、当該触媒層上に形成され、ガスの通気性と電子伝導性とを併せ持つガス拡散層とを有している。
【0005】
ここで、触媒層は、一般に、白金(Pt)系貴金属などの電極反応用の触媒金属を担持したカーボン粉末を適当な有機溶剤に分散させたものに、電解質溶液を適量添加してペースト状にし、これをプロトン伝導性物質である高分子電解質膜に設けて形成されている。また、ガス拡散層には、一般に、電極反応(電気化学的反応)により生じた生成水を管理するために撥水層が設けられたり、ガス拡散層自体に撥水処理が施されたりしている。
【0006】
また、上記一対のセパレータには、ガス拡散層と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路溝と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路溝とが設けられている。当該各ガス流路溝を通じて上記一対の電極層にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0007】
燃料電池における電極反応は、触媒金属とガス拡散層と高分子電解質膜とが接する部分、すなわち三相界面に原料ガスが供給されることで起こる。しかしながら、三相界面の設計は非常に困難な技術であることから、従来の燃料電池においては、三相界面が形成されずに、白金等の高価な貴金属で構成される触媒金属の一部が利用されない恐れがある。また、原料ガスの供給が三相界面付近まで充分に至らずに、三相界面付近に担持された高価な触媒金属が有効に利用されない恐れもある。従って、このような状況下において、触媒金属の使用量の低減を図ることは、電流供給の低下に繋がることになり、燃料電池の発電性能を低下させることになる。
【0008】
一方、カーボン粉末に担持された触媒金属の触媒活性を向上させるためには、触媒金属の総表面積を大きくすることが有効である。このため、触媒金属として、数nm程度の小さな粒径の金属触媒粒子が多数使用されることが好ましい。しかしながら、従来の燃料電池においては、燃料電池の起動停止により生じる電位変動により、金属触媒粒子がシンタリングして、金属触媒粒子の粒径が数10nmまで大きくなる恐れがある。この場合、触媒金属の総表面積が小さくなるため、触媒活性は低下し、結果として燃料電池の発電性能が低下することになる。
【0009】
上記課題を改善する方法として、例えば、特許文献1(特開2005−203332号公報)と特許文献2(特開2004−59428号公報)に開示された技術がある。
特許文献1には、触媒金属を担持し且つ周囲に電解質溶液層が付与されたカーボンナノチューブ(以下、CNTという)を高分子電解質膜に垂直に転写し、当該CNTの先端をセパレータに接着した構造を有する燃料電池が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、炭素布又は炭素紙などの炭素基板(ガス拡散層)上に触媒金属を分散した後、400℃〜900℃の温度環境下でメタンなどの炭素ソース気体を炭素基板に供給し、CNTを炭素基板上で直接成長させた構造を有する燃料電池が開示されている。
【0011】
特許文献1及び2の燃料電池によれば、触媒金属を担持する担体としてCNTを用いることにより、被担持面の総表面積を大きくすることができ、且つ、三相界面付近まで原料ガスを充分に供給することができる。
【特許文献1】特開2005−203332号公報
【特許文献2】特開2004−59428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の技術では、電極層の形成のために、CNTの生成、CNTによる触媒金属の担持、CNTの外周部への電解質溶液の付与、CNTの高分子電解質膜上への転写、及びCNTの先端とセパレータとの接着という多数の工程を経る必要がある。このため、電極層の形成コストが高くなる。また、上記特許文献1の技術では、上記金属触媒粒子のシンタリングの問題を充分に解決することはできず、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができない。
【0013】
一方、特許文献2の技術では、炭素基板上でCNTを直接成長させるため、特許文献1の技術に比べて、電極層の形成工程を単純化(少なく)することができる。
しかしながら、特許文献2の技術では、CNTの生成のために400℃〜900℃の温度環境が必要であるため、CNTを炭素製の部材以外には直接形成することができない。すなわち、撥水層が形成された又は撥水処理が施されたガス拡散層、及び高分子電解質膜などには、CNTを直接形成することができない。このため、生成水又は加湿水の管理が困難となり、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下が生じ、燃料電池の発電性能が低下するという問題点がある。
【0014】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、発電性能の低下を特許文献1及び2よりさらに抑えることができる燃料電池及びその製造方法、並びに当該燃料電池が備える膜電極接合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、高分子電解質膜上に1nm〜50nmの金属触媒粒子を分散した後、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着すると、金属触媒粒子からCNTが直接成長することを見出した。すなわち、特許文献2のようにCNTの生成のために炭素製の部材を必要とすることなく、CNTを生成する技術を見出した。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成されている。
本発明の第1態様によれば、高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0017】
本発明の第2態様によれば、高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0018】
本発明の第3態様によれば、ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体を提供する。
【0020】
本発明の第5態様によれば、上記ガス拡散層には、撥水層が形成されている又は撥水処理が施されている、第3又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0021】
本発明の第6態様によれば、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子は、Co、Ni、Fe、Pt、Au、Cu、Ag、W、Pd、V、Rh、Ir、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、第2又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0022】
本発明の第7態様によれば、上記カーボンナノチューブの少なくとも一部が、2つ以上の上記電極用金属触媒粒子と接している、第1〜6のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0023】
本発明の第8態様によれば、上記電極用金属触媒粒子は、Pt、Ru、Co、Ni、Ta、W、Ti、Mo、Pd、Mn、V、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、第1〜7のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0024】
本発明の第9態様によれば、上記電極用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、第1又は3態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0025】
本発明の第10態様によれば、上記電極用金属触媒粒子及び上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、第2又は4態様に記載の膜電極接合体を提供する。
【0026】
本発明の第11態様によれば、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体を備えた燃料電池を提供する。
【0027】
本発明の第12態様によれば、高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0028】
本発明の第13態様によれば、高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として使われる粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記高分子電解質膜上に分散させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第14態様によれば、ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の第15態様によれば、ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させた上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記ガス拡散層上に分散させる、
ことを含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の第16態様によれば、第12〜15のいずれか1つの態様に記載の膜電極接合体の製造方法を含む、燃料電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池によれば、高分子電解質膜上に分散された粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されるようにしているので、生成水又は加湿水の管理が容易となり、特許文献2の燃料電池よりも発電性能の低下を抑えることができる。また、電極用金属触媒粒子からカーボンナノチューブが直接形成されることで、当該カーボンナノチューブにより、上記金属触媒粒子のシンタリングを抑えて、特許文献1の燃料電池よりも発電性能の低下を抑えることが可能となる。
【0033】
なお、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池において、電極用金属触媒粒子は、高分子電解質膜上に分散されることに代えて、ガス拡散層上に分散されてもよい。また、カーボンナノチューブは、電極用金属触媒粒子に代えて、高分子電解質膜上又はガス拡散層上に分散されたカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子から直接形成されてもよい。これらの場合でも同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、高分子電解質膜上に、粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させた後、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させるようにしている。これにより、特許文献1に比べて、電極層の形成工程を単純化することができ、電極層の形成コストを低くすることができる。また、電極用金属触媒粒子から直接生成したカーボンナノチューブにより、金属触媒粒子を固定して上記シンタリングを抑えることが可能になる。これにより、長時間安定して燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
【0035】
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、炭素製の部材以外の部材にカーボンナノチューブを直接生成できるので、特許文献2と比べて、生成水又は加湿水の管理が容易となる。これにより、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下を抑えて、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
また、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法によれば、三相界面が比較的容易に形成できるため、金属触媒粒子を有効に利用でき、金属触媒粒子の使用量の低減が可能となる。
【0036】
なお、本発明にかかる膜電極接合体、及び当該膜電極接合体を備える燃料電池の製造方法において、電極用金属触媒粒子を、高分子電解質膜上に分散させることに代えて、ガス拡散層上に分散させてもよい。また、カーボンナノチューブは、電極用金属触媒粒子から直接生成させることに代えて、高分子電解質膜上又はガス拡散層上に分散させたカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子から直接生成させるようにしてもよい。これらの場合でも同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる燃料電池について説明する。本第1実施形態にかかる燃料電池は、発電運転に用いる燃料として水素ガス及び空気(酸素)を用いる固体高分子形燃料電池(PEFC)である。但し、本発明は、下記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の基本構成を模式的に示す断面図である。
本第1実施形態にかかる燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを電気化学的に反応させることにより、電力と熱とを同時に発生させる装置である。
【0040】
本第1実施形態にかかる燃料電池は、図1に示すように、膜電極接合体1(以下、MEA:Membrane-Electrode-Assemblyという)と、MEA1の両面に配置された一対の板状の導電性のセパレータ2,2とを有する単電池(セル)を備えている。なお、本第1実施形態にかかる燃料電池は、この単電池を複数個積層して構成されてもよい。
【0041】
MEA1は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜11と、当該高分子電解質膜11の両面に形成された一対の電極層12,12とを備えている。一対の電極層12,12は、高分子電解質膜11の両面に形成された触媒層13と、当該触媒層13上に形成され、ガスの通気性と電子伝導性とを併せ持つガス拡散層14とを有している。ここで、ガス拡散層14には、電極反応(電気化学的反応)により生じた生成水を管理するために撥水層が設けられている。なお、これに代えて、ガス拡散層14自体に撥水処理が施されてもよい。
【0042】
また、一対のセパレータ2,2のうちの一方には、ガス拡散層14と当接する主面に、燃料ガスを流すための燃料ガス流路溝2aが設けられている。一対のセパレータ2,2のうちの他方には、ガス拡散層14と当接する主面に、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路溝2bが設けられている。当該各ガス流路溝2a,2bを通じて一対の電極層12,12にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されることで、電気化学反応が起こり、電力と熱とが発生する。
【0043】
図2は、触媒層13の構造を模式的に示す側面図であり、図3は、高分子電解質膜11上に触媒層13を形成した状態を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、触媒層13は、高分子電解質膜11上に、触媒金属として電極用金属触媒粒子31が分散され、当該電極用金属触媒粒子31の少なくとも一部からカーボンナノチューブ41(以下、CNTという)が形成された構造を有する。
【0044】
電極用金属触媒粒子31は、燃料電池の触媒として作用する元素で構成されている。例えば、電極用金属触媒粒子31は、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている。
【0045】
電極用金属触媒粒子31の粒径は、1nm〜50nmの範囲内で設定されている。電極用金属触媒粒子31の粒径が1nmより小さくなると、電極用金属触媒粒子31の作製が困難になる。一方、電極用金属触媒粒子31の粒径が50nmより大きくなると、電極用金属触媒粒子31の電極反応面積が小さくなり、燃料電池の発電性能が低下することになる。なお、より好ましくは、電極用金属触媒粒子31の粒径は、1nm〜10nmとする。これにより、燃料電池の発電性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0046】
電極用金属触媒粒子31を高分子電解質膜11上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0047】
CNT41は、高分子電解質膜11上に分散された電極用金属触媒粒子31から直接成長(生成)するように形成されている。このようなCNT41は、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを電極用金属触媒粒子31に蒸着することで形成することができる。
【0048】
図4は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて触媒層13の一部を撮影したTEM写真である。図4のTEM写真において、略黒丸部分は、電極用金属触媒粒子31を示している。
【0049】
図4のTEM写真から分かるように、CNT41は、主に多層カーボンナノチューブ(以下、MWCNTという)の構造を有している。また、CNT41は、高分子電解質膜11の面に対して垂直方向ではなく、高分子電解質膜11の面に対して平行な面方向に、ランダムに形成されている。このように形成されたCNT41は、互いに隣接する電極用金属触媒粒子31,31同士を電気的に接続して、面方向の導電性能を向上させることができる。これにより、抵抗分極の成分を低減することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0050】
なお、特許文献2の燃料電池では、上述したように、400℃以上の高温の温度環境下において、CVD法などを利用してCNTを生成するため、高分子電解質膜上に直接、CNTを形成することができない。
【0051】
これに対して、本第1実施形態によれば、CNT41が、0〜200℃の低温の温度環境下において、電極用金属触媒粒子31を種にして成長することを利用するため、高分子電解質膜11上にCNT41を直接形成することができる。従って、電極層12の形成工程を単純化(少なく)することができ、低コスト化を実現することができる。また、炭素製の部材以外の部材にCNT41を直接形成できるので、特許文献2と比べて、生成水又は加湿水の管理が容易となる。これにより、フラッディングによるガス拡散性能の低下、又はドライアップによる高分子電解質膜のプロトン導電性能の低下を抑えて、燃料電池の発電性能の低下を抑えることができる。
【0052】
また、本第1実施形態によれば、三相界面を比較的容易に形成することができるため、白金等の高価な貴金属で構成される電極用金属触媒粒子31を有効に利用することができ、電極用金属触媒粒子31の使用量の低減が可能となる。
【0053】
また、本第1実施形態によれば、CNT41が電極用金属触媒粒子31を種にして成長するため、電極用金属触媒粒子31はCNT41によって固定される。これにより、燃料電池の起動停止による電位変動の際、電極用金属触媒粒子31のシンタリングを抑えることができ、長時間安定して燃料電池の発電性能を維持することができる。
【0054】
《第2実施形態》
図5を用いて、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池について説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0055】
本第2実施形態の燃料電池が、上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、CNT成長用金属触媒粒子32がさらに分散され、CNT41が電極用金属触媒粒子31に代えてCNT成長用金属触媒粒子32から成長している点で異なる。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略しながら、主に相違点について説明する。
【0056】
CNT成長用金属触媒粒子32は、CNT41の触媒として作用する元素で構成されている。例えば、CNT成長用金属触媒32は、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Au(金)、Cu(銅)、Ag(銀)、W(タングステン)、Pd(パラジウム)、V(バナジウム)、Rh(ロジウム)、Ir(イリジウム)、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている。
【0057】
CNT成長用金属触媒粒子32の粒径は、1nm〜50nmの範囲内で設定されている。CNT成長用金属触媒粒子32の粒径が1nmより小さくなると、CNT成長用金属触媒粒子32の作製が困難になる。一方、CNT成長用金属触媒粒子32の粒径が50nmより大きくなると、CNT41の直径が大きくなり、結晶性のよいCNT41を得ることができなくなる。なお、より好ましくは、CNT成長用金属触媒粒子32の粒径は、1nm〜10nmとする。
【0058】
CNT成長用金属触媒粒子32を高分子電解質膜11上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0059】
CNT41は、高分子電解質膜11上に分散されたCNT成長用金属触媒粒子32から直接成長するように形成されている。このようなCNT41は、上記第1実施形態と同様に、0〜200℃の温度環境下で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンをCNT成長用金属触媒粒子32に蒸着することで形成することができる。
【0060】
本第2実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31に加えて、CNT成長用金属触媒粒子32を備えているので、CNT成長用金属触媒粒子32の材質として、CNT41の成長を促す材質を選択することで、より確実にCNT41を形成することができる。
【0061】
《第3実施形態》
図6及び図7を用いて、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池について説明する。図6は、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。図7は、本発明の第3実施形態にかかる燃料電池において、ガス拡散層上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【0062】
本第3実施形態の燃料電池が上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11に代えてガス拡散層14上に電極用金属触媒粒子31が分散されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0063】
なお、電極用金属触媒粒子31をガス拡散層14上へ分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、真空アーク蒸着法、スパッタリング、又はCVD法などを利用することができる。
【0064】
ここで、上記第1実施形態の燃料電池において、高分子電解質膜11上に電極用金属触媒粒子31を多量に分散した場合には、電極用金属触媒粒子31同士が凝集して膜状になる恐れがある。この場合、触媒金属の総表面積が減少することになり、ガス拡散を阻害するなどして、燃料電池の発電性能が低下する恐れがある。
【0065】
これに対して、本第3実施形態にかかる燃料電池によれば、ガス拡散層14の表面が多孔質であるため、ガス拡散層14上に電極用金属触媒粒子31を多量に分散しても、電極用金属触媒粒子31が凝集して膜状になることを抑えることができる。従って、上記第1実施形態の燃料電池に比べて、電極用金属触媒粒子31を多量に分散することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0066】
《第4実施形態》
図8を用いて、本発明の第4実施形態にかかる燃料電池について説明する。図8は、本発明の第4実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0067】
本第4実施形態の燃料電池が上記第2実施形態の燃料電池と異なる点は、電極用金属触媒粒子31とCNT成長用金属触媒粒子32とが、高分子電解質膜11上に分散されることに代えて、ガス拡散層14上に分散されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0068】
本第4実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31に加えて、CNT成長用金属触媒粒子32を備えているので、CNT成長用金属触媒粒子32の材質として、CNT41の成長を促す材質を選択することで、より確実にCNT41を形成することができる。
また、本第4実施形態によれば、電極用金属触媒粒子31とCNT成長用金属触媒粒子32とをガス拡散層14上に分散するようにしているので、上記第1実施形態の燃料電池に比べて、電極用金属触媒粒子31を多量に分散することができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0069】
《第5実施形態》
図9を用いて、本発明の第5実施形態にかかる燃料電池について説明する。図9は、本発明の第5実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0070】
本第5実施形態の燃料電池が上記第1実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aが、複数積層されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0071】
本第5実施形態にかかる燃料電池によれば、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを複数積層して触媒層13を構成するようにしているので、電極用金属触媒粒子31同士が凝集して膜状になることなく、電極用金属触媒粒子31の使用量を増やすことができる。従って、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0072】
なお、本第5実施例においては、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを高分子電解質膜11上に複数積層したが、図10に示すようにガス拡散層14上に複数積層してもよい。
また、CNT41付きの電極用金属触媒粒子31が分散された層13aを、高分子電解質膜11上とガス拡散層14上の両方に少なくとも1層以上形成したのち、互いの層13aを接合することで、層13aが複数積層されるようにしてもよい。
【0073】
《第6実施形態》
図11を用いて、本発明の第6実施形態にかかる燃料電池について説明する。図11は、本発明の第6実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【0074】
本第6実施形態の燃料電池が上記第2実施形態の燃料電池と異なる点は、高分子電解質膜11上に、電極用金属触媒粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bが、複数積層されている点である。それ以外の点は、同様であるので、重複する説明は省略する。
【0075】
本第6実施形態にかかる燃料電池によれば、電極用金属触媒粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bを複数積層して触媒層13を構成するようにしているので、電極用金属触媒粒子31及びCNT成長用金属触媒粒子32同士が凝集して膜状になることなく、電極用金属触媒粒子31及びCNT成長用金属触媒粒子32の使用量を増やすことができる。従って、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
【0076】
なお、本第6実施形態においては、電極用金属粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32とが分散された層13bを高分子電解質膜11上に複数積層したが、図12に示すようにガス拡散層14上に複数積層してもよい。
また、電極用金属粒子31とCNT41付きのCNT成長用金属触媒粒子32が分散された層13bを、高分子電解質膜11上とガス拡散層14上の両方に少なくとも1層以上形成したのち、互いの層13bを接合することで、層13bが複数積層されるようにしてもよい。
【0077】
次に、本発明の第1〜第6実施例にかかる燃料電池の製造方法、及びそれらの燃料電池の発電性能等について具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
まず、本発明の第1〜第6実施例にかかる燃料電池の製造方法について説明する。
【0079】
《第1実施例》
本第1実施例にかかる燃料電池は、図2に示す触媒層の構造を有している。
【0080】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
高分子電解質膜11に120mm×120mmの開口部を持つマスクを被せて、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を高分子電解質膜11上に形成した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を用いた。また、マスクとして、厚さ50μmのPETフィルムを用いた。本第1実施例では、このマスクを高分子電解質膜11上にラミネートすることで、開口部以外へのPt粒子の付着を防止した。
【0081】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Ptターゲット、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、10回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、2〜8nmであった。
【0082】
(CNT形成工程)
Pt粒子31の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Pt粒子31を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、10回のアーク放電によりカーボンを蒸着することで、CNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径4〜8nm、長さ100〜400nmのMWCNTであった。
【0083】
(MEA作製工程)
Pt粒子31及びCNT41の形成後、高分子電解質膜11からマスクを取り外し、高分子電解質膜11のPt粒子31及びCNT41の形成面(成膜面)をアノード面として、当該アノード面に撥水層付きガス拡散層14を形成した。一方、高分子電解質膜11のPt粒子31及びCNT41の形成面とは反対側の面をカソード面として、当該カソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
【0084】
次いで、上記のようにして作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第1実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0085】
《第2実施例》
本第2実施例にかかる燃料電池は、図2に示す触媒層の電極構造を有している。
【0086】
本第2実施例にかかる燃料電池では、電極用金属触媒粒子形成工程において、電極用金属触媒粒子31として、PtとCoとの合金(Pt:50wt%、Co:50wt%)を使用した。それ以外の点については、上記第1実施例にかかる燃料電池と同様にして、本第2実施例にかかる燃料電池を作製した。
【0087】
《第3実施例》
本第3実施例にかかる燃料電池は、図5に示す触媒層の電極構造を有している。
【0088】
(CNT成長用金属触媒粒子形成工程)
高分子電解質膜11に120mm×120mmの開口部を持つマスクを被せて、真空アーク蒸着法により、CNT成長用金属触媒粒子としてCo粒子32を高分子電解質膜11上に形成した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を用いた。また、マスクとして、厚さ50μmのPETフィルムを用いた。本第3実施例では、このマスクを高分子電解質膜11上にラミネートすることで、開口部以外へのCo粒子32の付着を防止した。
【0089】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Coターゲット、真空度2.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、10回のアーク放電によりCo粒子32を形成した。このとき形成されたCo粒子32の粒径は、5〜10nmであった。
【0090】
(CNT形成工程)
Co粒子32の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Co粒子32を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、10回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径6〜9nm、長さ300〜600nmのMWCNTであった。
【0091】
(電極用触媒粒子形成工程)
CNT41の形成後、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を高分子電解質膜11上に形成した。
Pt粒子31の形成には、Co粒子32及びCNT41を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたPtターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、真空度3.5×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件とし、10回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、2〜5nmであった。
【0092】
(MEA作製工程)
Co粒子32とCNT41とPt粒子31の形成後、高分子電解質膜11からマスクを取り外し、高分子電解質膜11のCo粒子32、CNT41、及びPt粒子31の形成面(成膜面)をアノード面として、撥水層付きガス拡散層14を形成した。一方、高分子電解質膜11のCo粒子32、CNT41、及びPt粒子31の形成面とは反対側の面をカソード面として、当該カソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
【0093】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2の圧力となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第3実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0094】
《第4実施例》
本第4実施例にかかる燃料電池は、図6に示す触媒層の電極構造を有している。
【0095】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
撥水層付きガス拡散層14の撥水層面に、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を形成した。
ここでは、撥水層付きガス拡散層14として、外径寸法が120mm角、厚さ50μmのカーボンペーパーに撥水層が形成されたE−TEC製GDLを用いた。
【0096】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Ptターゲット、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、50回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、10〜30nmであった。
【0097】
(CNT形成工程)
Pt粒子31の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Pt粒子31を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、50回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径15〜26nm、長さ200〜400nmのMWCNTであった。
【0098】
(MEA作製工程)
Pt粒子31及びCNT41を形成した撥水層付きガス拡散層14を、高分子電解質膜11のアノード面に形成し、当該高分子電解質膜11のカソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を使用した。
【0099】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第4実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0100】
《第5実施例》
本第5実施例にかかる燃料電池は、図6に示す触媒層の電極構造を有している。
【0101】
本第5実施例にかかる燃料電池では、電極用金属触媒粒子形成工程において、電極用金属触媒粒子31として、PtとCoとの合金(Pt:50wt%、Co:50wt%)を使用した。それ以外の点については、上記第4実施例にかかる燃料電池と同様にして、本第5実施例にかかる燃料電池を作製した。
【0102】
《第6実施例》
本第6実施例にかかる燃料電池は、図8に示す触媒層の電極構造を有している。
【0103】
(CNT成長用金属触媒形成工程)
撥水層付きガス拡散層14の撥水層面に、真空アーク蒸着法により、CNT成長用金属触媒粒子としてCo粒子32を形成した。
ここでは、撥水層付きガス拡散層14として、外径寸法が120mm角、厚さ50μmのカーボンペーパーに撥水層が形成されたE−TEC製GDLを用いた。
【0104】
また、真空アーク蒸着には、アルバック製アークプラズマガンを使用し、Coターゲット、真空度3.6×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件で、20回のアーク放電によりCo粒子32を形成した。このとき形成されたCo粒子32の粒径は、6〜12nmであった。
【0105】
(CNT形成工程)
Co粒子32の形成後、真空アーク蒸着法により、CNT41を形成した。
CNT41の形成には、Co粒子32を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたカーボンターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、常温環境下、Arガス雰囲気下、圧力5Pa、電圧100V、コンデンサ8,800μFとし、20回のアーク放電によりカーボンを蒸着することでCNT41を形成した。このとき形成されたCNT41は、直径8〜12nm、長さ200〜500nmのMWCNTであった。
【0106】
(電極用金属触媒粒子形成工程)
CNT41の形成後、真空アーク蒸着法により、電極用金属触媒粒子としてPt粒子31を形成した。
Pt粒子31の形成には、Co粒子32及びCNT41を形成したのと同じ真空チャンバー内に設置されたPtターゲットのアークプラズマガン(アルバック製)を使用した。このときのアークプラズマガンの使用環境及び使用条件は、真空度3.0×10−4Pa、印加電圧100V、コンデンサ8,800μF、水平磁場偏向条件とし、50回のアーク放電によりPt粒子31を形成した。このとき形成されたPt粒子31の粒径は、20〜40nmであった。
【0107】
(MEA作製工程)
Co粒子32、CNT41、及びPt粒子31を形成した撥水層付きガス拡散層14を、高分子電解質膜11のアノード面に形成し、当該高分子電解質膜11のカソード面に触媒層13及び撥水層付きガス拡散層14(E−TEC製GDE)を形成した。これにより、MEA1を作製した。
ここでは、高分子電解質膜11として、外径寸法が140mm角、厚さ50μmのパーフルオロカーボンスルホン酸膜(DUPONT Nafion117(登録商標))を使用した。
【0108】
次いで、上記のように作製したMEA1を一対のセパレータ2,2で挟みこみ、電極層12に加わる圧力が10kgf/cm2となるようにボルト等で締結した。
このようにして、本第6実施例にかかる燃料電池を製造した。
【0109】
《燃料電池の評価》
次に、上記のようにして作製した第1〜第6実施例にかかる燃料電池を用いて、発電試験を行った。このとき、発電試験の条件としては、セル温度70℃、アノード露点70℃、カソード露点70℃、水素利用率70%、酸素利用率50%とし、OCV(Open circuit voltage:負荷をかけていないときの電池電圧)と、電流密度0.1A/cm2で運転したときの運転時電圧とを計測した。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】
【0111】
ここで、触媒層をスプレー方式又はダイ塗工方式などにより形成した従来の一般的な燃料電池において、白金量は約0.5mg/cm2であり、OCVは0.97〜1.00Vであり、電流密度0.1A/cm2で運転したときの運転時電圧は0.80〜0.85Vである。
【0112】
従って、上記表1より、第1〜6実施例の燃料電池では、従来の燃料電池と比べて、白金量を大幅に減らすことができることが分かる。なお、上記表1では、第1〜第3実施例の燃料電池よりも従来の燃料電池の方が、運転時電圧が高くなっている。しかしながら、運転時電圧は白金量を増加させることにより高くすることができるので、第1〜第3実施例の燃料電池の白金量を増加させることで、従来の燃料電池の方よりも運転時電圧を高くすることができる。このとき、第1〜第3実施例の燃料電池における白金量は、従来の見料電池における白金量よりも多くする必要はない。すなわち、第1〜第6実施例の燃料電池は、従来の燃料電池に比べて高い発電性能を有している。
【0113】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明にかかる燃料電池は、CNTを0〜200℃の温度で形成することができるため、撥水層を有する又は撥水処理が施されたガス拡散層、あるいは高分子電解質膜に、CNTを直接形成することができ、これにより、電極層の形成工程を単純化でき且つ発電性能の低下を抑えることができるので、例えば、コージェネレーションシステム又は自動車などに用いられる燃料電池として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の基本構成を模式的に示す断面である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池において、高分子電解質膜上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる燃料電池の触媒層の一部を拡大して示すTEM写真である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる燃料電池において、ガス拡散層上に触媒層を形成した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図10】本発明の第5実施形態の変形例にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図11】本発明の第6実施形態にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【図12】本発明の第6実施形態の変形例にかかる燃料電池の触媒層の構造を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 膜電極接合体
2 セパレータ
11 高分子電解質膜
12 電極層
13 触媒層
14 ガス拡散層
31 電極用電極触媒粒子
32 カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子
41 カーボンナノチューブ(CNT)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項2】
高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項3】
ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項4】
ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項5】
上記ガス拡散層には、撥水層が形成されている又は撥水処理が施されている、請求項3又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子は、Co、Ni、Fe、Pt、Au、Cu、Ag、W、Pd、V、Rh、Ir、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、請求項2又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
上記カーボンナノチューブの少なくとも一部が、2つ以上の上記電極用金属触媒粒子と接している、請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
【請求項8】
上記電極用金属触媒粒子は、Pt、Ru、Co、Ni、Ta、W、Ti、Mo、Pd、Mn、V、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
【請求項9】
上記電極用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、請求項1又は3に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
上記電極用金属触媒粒子及び上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、請求項2又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の膜電極接合体を備えた燃料電池。
【請求項12】
高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項13】
高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として使われる粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記高分子電解質膜上に分散させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項14】
ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項15】
ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させた上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記ガス拡散層上に分散させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1つに記載の膜電極接合体の製造方法を含む、燃料電池の製造方法。
【請求項1】
高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項2】
高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項3】
ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子が分散されており、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項4】
ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒金属として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子と、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子とが分散されており、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブが直接形成されている、膜電極接合体。
【請求項5】
上記ガス拡散層には、撥水層が形成されている又は撥水処理が施されている、請求項3又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子は、Co、Ni、Fe、Pt、Au、Cu、Ag、W、Pd、V、Rh、Ir、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、請求項2又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
上記カーボンナノチューブの少なくとも一部が、2つ以上の上記電極用金属触媒粒子と接している、請求項1〜6のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
【請求項8】
上記電極用金属触媒粒子は、Pt、Ru、Co、Ni、Ta、W、Ti、Mo、Pd、Mn、V、及びそれらの合金よりなる群から選択されたいずれか1つ、又はそれらの混合物で構成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の膜電極接合体。
【請求項9】
上記電極用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、請求項1又は3に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
上記電極用金属触媒粒子及び上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された層が少なくとも2層以上積層されている、請求項2又は4に記載の膜電極接合体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の膜電極接合体を備えた燃料電池。
【請求項12】
高分子電解質膜上に、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項13】
高分子電解質膜上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として使われる粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを直接生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記高分子電解質膜上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記高分子電解質膜上に分散させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項14】
ガス拡散層上に、燃料電池の電極用触媒として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を分散させ、
上記電極用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項15】
ガス拡散層上に、カーボンナノチューブ成長用触媒として粒径1nm〜50nmのカーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子を分散させた上記ガス拡散層上に、温度0〜200℃で、且つ不活性ガス雰囲気下又は還元ガス雰囲気下において、真空アーク蒸着法によりカーボンを蒸着させることで、上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子の少なくとも一部からカーボンナノチューブを生成させ、
上記カーボンナノチューブ成長用金属触媒粒子が分散された上記ガス拡散層上に、真空アーク蒸着法により、燃料電池の電極用触媒金属として粒径1nm〜50nmの電極用金属触媒粒子を蒸着させることで、上記電極用金属触媒粒子を上記ガス拡散層上に分散させる、
ことを含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1つに記載の膜電極接合体の製造方法を含む、燃料電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−301824(P2009−301824A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154014(P2008−154014)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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