説明

膝用サポータ

【課題】装着時に膝頭が受ける力を低減し、スムーズな膝の屈伸を可能にする。
【解決手段】本発明の膝用サポータは、膝当て部12を備えて膝関節に巻回装着される膝用サポータ10であって、膝当て部12が、概「く」字形状の第1および第2の布部材14、16を、装着時に膝頭位置に配置される間隙34を形成した状態で重ねることにより構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節に巻回装着される膝用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節に巻回装着される膝用サポータは、膝の屈伸を補助するまたは膝を保温する、若しくは膝関節を防護するなどを目的としたものである。膝用サポータとして、例えば特許文献1に記載のものがある。これは、膝頭(膝蓋骨)に覆い被さる膝当て部材の該膝頭の中心に対応する位置に穴が形成されているものである。穴は、膝用サポータを装着したときに膝当て部材によって膝蓋骨が大腿骨に向かって強く押され、それにより膝の屈伸時に大腿骨に沿って移動する膝蓋骨が該大腿骨に強く押し当たり、その結果膝のスムーズな屈伸を阻害しないように、装着により膝蓋骨が受ける力を低減する効果を期待して膝当て部材に設けられている。また、副次的に、穴を膝頭に合わせて膝用サポータを膝関節に巻回することにより、サポータが正しく装着されるという効果がある。
【特許文献1】特開2004−162183公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、穴の大きさや形状が略一定で膝頭の大きさは人によって異なるため、人によっては膝用サポータを装着するとスムーズな膝の屈伸が妨げられる場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、どのような大きさの膝頭の人でも、スムーズな膝の屈伸を可能にする膝用サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る膝用サポータは、
膝当て部を備えて膝関節に巻回される膝用サポータであって、
膝当て部が、概「く」字形状の第1および第2の布を、装着時に膝頭に配置される間隙を形成した状態で重ねることにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、膝頭は、装着時、重ねた状態の概ね「く」字形状の第1および第2の布部材の間隙に位置する。第1の布部材と第2の布部材で形成される間隙は、膝頭の大きさに合わせてその形状を変形することができるため、どのような大きさの膝頭の人でも、装着により膝頭(膝蓋骨)が受ける力が低減される。その結果、どのような大きさの膝頭の人であっても、装着時のスムーズな膝の屈伸が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態を説明する前に確認すると、本明細書において、膝関節に対して「正面」、「内面」、「外面」、「背面」という用語が使用される。「正面」は膝関節において膝頭側の面(いわゆる、膝)を言い、「内面」は反対の脚の膝関節と対向する内側の面を言い、「外面」は「内面」と対向する側の面を言い、「背面」は膝裏側の面を言う。本発明の膝用サポータは、これらの4つの面を覆うように膝関節に巻回装着される。厳密には、本発明の膝用サポータは、膝関節とともに、膝関節に隣接する太腿の部分および脛の部分にも巻回される。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る膝用サポータを示している。図において符号10で示される膝用サポータは、複数の伸縮性を備える布部材で構成されており、具体的には、膝当て部12を構成するための膝当て部材14、16と、装着時に膝当て部材14を膝関節正面に押し当てて維持するためのバンド部材18と、膝当て部材14、16の位置関係を維持する維持部材20、22と、装着時のずり落ちを防止するずれ防止部材24とから構成される。なお、維持部材20、22以外の布部材は、メッシュ状の布部材である。
【0009】
膝当て部12は、装着時に膝頭周辺を含む膝関節正面に配置される膝用サポータ10の部分である。
【0010】
膝当て部材14は、展開した膝用サポータ10を表側(装着時に外側になる側)から見た図2に示すように、概ね「く」字形状の布部材である(膝当て部材14は、請求の範囲に記載の第1の布部材に対応する。)。
【0011】
また、膝当て部材14は、その両端に面ファスナ26W、26Xを有し、頂点部に面ファスナ26Yを有する。この3つの面ファスナ26W、26X、26Yは、バンド部材18と係合するためのものである(バンド部材18は、請求の範囲に記載の第1のバンド部材に対応する。)。
【0012】
バンド部材18は、装着時、膝当て部材14の3つの面ファスナ26W、26X、26Yと係合して該膝当て部材14を膝関節正面に押し当てて維持するものである。バンド部材18は、2つのストリップ18aと18bを、一端同士が重なりつつ他端同士が離れた状態を維持して一端同士を縫合することにより構成されている。あたかも、バンド部材18は、概ね「く」字形状の布部材である。
【0013】
バンド部材18は、頂点部(2つのストリップ18a、18bそれぞれの一端が重なる部分)に、装着時に膝当て部材14の頂点部に配置されている面ファスナ26Yと係合する面ファスナ28Yを有する。また、バンド部材18は、両端(2つのストリップ18a、18bそれぞれの離れ合う他端)に、装着時に膝当て部材14の両端の26W、26Xと係合する面ファスナ28W、28Xとを有する。
【0014】
膝当て部材16は、概ね菱形形状の輪形の布部材である。別の観点から言えば、膝当て部材16は、概ね「く」字形状の膝当て部分16a(膝当て部分16aは、請求の範囲に記載の第2の布部材に対応する。)と、膝当て部分16aの両端から1点に向かって伸びる概ね「く」字形状のバンド部分16bを有する(バンド部分16bは、請求の範囲に記載の第2のバンド部材に対応する。)。バンド部分16bは、ストリップ部16b’と16b”を有する。
【0015】
また、膝当て部材16は、膝当て部分16aの頂点部に面ファスナ30Zを有し、バンド部分16bの頂点部(2つのストリップ部16b’と16b”それぞれの一端が重なる部分)に装着時に面ファスナ30Zと係合する面ファスナ32Zを有する。
【0016】
維持部材20、22は、膝当て部材14、16の位置関係を維持する布部材である。
【0017】
維持部材20、22の役割を説明するために、面ファスナ26Wと28Wが係合し、また面ファスナ26Xと28Xが係合し、一方、面ファスナ26Yと28Yが係合せず、また面ファスナ30Zと32Zが係合していない状態を考える。この状態は、2つの輪形の布部材、すなわち、膝当て部材14とベルト部材18からなる輪形の複合物と、輪形の膝当て部材16が連環した状態である。この連環状態を後述する所定の連環状態で維持するために、2つの維持部材20、22は、膝当て部材14、16に縫合されて該膝当て部材14、16の位置関係を維持している。
【0018】
所定の連環状態は、膝当て部材14と膝当て部材16の膝当て部分16aが、装着時に膝頭位置に配置される間隙34を形成しつつ掛かり合わされて重ねられることにより膝当て部12を構成する状態である。間隙34は、上述した従来の膝用サポータの膝当て部材に設けられた穴に相当する。ここで言う「掛かり合わされる」とは、「く」字形状の2つの部材(部分)が、一方の部材の一片が他方の部材の一片の上に位置するとともに、一方の他片が他方の他片の下に位置するような状態にされることを言う。
【0019】
維持部材20、22は、展開した膝用サポータ10を裏側(装着時に内側になる側)から見た図3に示すように帯状の布部材である。一方の維持部材20は、図2に示すように、両端が膝当て部材14の両端に縫合されるとともに、中央部が膝当て部材16の膝当て部分16aの頂点部に縫合されている。他方の維持部材22は、両端が膝当て部材16の膝当て部分16aの両端に縫合されるとともに、中央部が膝当て部材14の頂点部に縫合されている。
【0020】
また、維持部材20、22は、装着時、膝用サポータ10の装着状態を示す図4のように、膝関節内面と外面それぞれに配置される(図においては、維持部材20が膝関節内面に配置されている状態が示されている。)。膝用サポータ10の膝の屈伸を補助する機能をより高めるために、膝関節内面と外面それぞれに配置される維持部材20、22の内部に、図3に示すようにコイルボーン36を設けてもよい。コイルボーン36は、金属のコイルを板状にプレスしたもので、撓むことにより肘の屈伸を補助する。代わりとして、金属や樹脂などの可撓性の板部材を使用してもよい。
【0021】
ずれ防止部材24は、図4に示すように装着時に膝頭上方の太腿部分に掛かり膝用サポータ10のずり落ちを防止するためのものである。ずれ防止部材24は、図3に示すように、帯状の布部材であって、両端それぞれが維持部材20、22の一端に縫合されている。
【0022】
なお、ずれ防止部材24以外に装着時のずれを防止する構成として、膝関節背面においてバンド部材18のストリップ18a、18bと膝当て部材16のバンド部分16bのストリップ部16b’、16b”のずれを防止するものがある。
【0023】
図2に示すように、概ね「く」字形状のバンド部材18と概ね「く」字形状の膝当て部材16のバンド部分16bは掛かり合わされて重ねられており、その2箇所の交差部分で縫合されている。図には、バンド部材18のストリップ18aと膝当て部材16のバンド部分16bのストリップ部16b’の交差部分を縫合するための縫い目38aが示されている。また、バンド部材18のストリップ18bと膝当て部材16のバンド部分16bのストリップ部16b”の交差部分を縫合するための縫い目38bが示されている。
【0024】
これにより、装着時における膝関節背面を示す図5に示すように、ストリップ18aとストリップ部16b’の交差が維持される。すなわち、縫合により、ストリップ18aが、ストリップ部16b’上をずれ動くことが防止される。また、ストリップ部16ab”が、ストリップ18b上をずれ動くことが防止される。
【0025】
ここからは、膝用サポータ10の装着方法を説明しつつ、本発明の効果を説明していく。
【0026】
まず、膝用サポータ10は、装着前、使用者により、図1や図2に示すような、面ファスナ26Yと28Yが係合するのみで他の面ファスナ同士は係合していない状態にされる。
【0027】
次に、図6に示すように、使用者により、膝用サポータ10の2つの膝当て部材14と16(16a)の間に形成された間隙34が使用者の膝関節の膝頭に合わせられる。このとき、膝当て部材14と16が伸縮性を備える布部材であるため、その間隙34が使用者の膝頭の大きさや形状に合わせて変形する。その結果、使用者の膝頭が間隙34に収容される。
【0028】
続いて、図7に示すように、使用者により、面ファスナ32Zが引っ張られた状態で対応する面ファスナ30Zに係合される。これにより、膝用サポータ10は使用者の膝関節に巻回される。
【0029】
さらに、図4に示すように、使用者により、面ファスナ28Wが引っ張られた状態で対応する面ファスナ26Wに係合されるとともに、面ファスナ28Xが引っ張られた状態で対応する面ファスナ26Xに係合される。これにより、膝用サポータ10は、使用者の膝関節に隣接する太腿部分および脛部分に巻回される。
【0030】
最後に、図8に示すように、使用者により、面ファスナ28Yが対応する面ファスナ26Yからはずされ(係合が解除され)、はずした面ファスナ28Yが適度に引っ張られた状態で再び面ファスナ26Yに係合されることにより、膝用サポータ10の締め付け力(いわゆる、フィット感)が調整される。
【0031】
上述するように膝用サポータ10が膝関節に装着されると、膝頭には膝当て部材14と16から巻回方向の挟持力(力は白抜き矢印40で示されている。)40が作用する。
【0032】
このことを、図2を参照しつつ説明すると、面ファスナ28Wと28Xが引っ張った状態で対応する面ファスナ26Wと26Xに係合されると、膝当て部材14が膝頭に向かって引かれる。また、面ファスナ32Zが引っ張った状態で対応する面ファスナ30Zに係合されると、膝当て部材16が膝頭に向かって引かれる。これにより、膝頭に膝用サポータ10の巻回方向の挟持力40が作用する。これにより、膝用サポータ10は、膝頭を基準として正しい位置に装着されるとともに、膝頭(膝蓋骨)を巻回方向に関して固定する。そのため、膝の屈伸時、膝蓋骨は巻回方向にぐらつくことなく大腿骨に沿って移動できる。その結果、膝蓋骨や大腿骨などを含む膝関節への負担が少ない膝の屈伸が可能になる。
【0033】
本実施形態によれば、膝頭は、装着時、掛かり合わされて重ねられた状態の概ね「く」字形状の膝当て部材14および膝当て部材16の膝当て部分16aの間隙34に位置する。膝当て部材14と膝当て部材16の膝当て部分16aで形成される間隙34は、膝頭の大きさに合わせてその形状を変形することができるため、どのような大きさの膝頭の人でも、装着により膝頭(膝蓋骨)が受ける力が低減される。その結果、どのような大きさの膝頭の人であっても、装着時のスムーズな膝の屈伸が可能になる。
【0034】
以上、一実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
例えば、あらゆる大きさの膝頭に対応するために上述の実施形態の膝用サポータを構成する複数の布部材は伸縮性を備えるが、多様な大きさの膝頭それぞれに対応した複数のサイズの膝用サポータを用意するのであれば複数の布部材は伸縮性を備える必要はない。しかしながら、膝関節に対するフィット感を高めるために、膝用サポータを構成する複数の布部材は伸縮性を備えるのが好ましい。特に、膝頭を挟持することを考えると、膝頭を挟持する2つの膝当て部材(上述の実施形態においては、膝当て部材14と膝当て部材16の膝当て部分16a)の少なくとも1つは伸縮性を備えるのが好ましい。
【0036】
また、上述の実施形態の膝用サポータは、メッシュ状の布部材を使用しているが、これに限定されない。例えば、保温性を高めるために、非メッシュ状の保温性の高い布部材を使用してもよい。
【0037】
さらに、上述の実施形態の膝用サポータの膝当て部は、概ね「く」字形状の2つの布部材が掛かり合わされて重ねられることにより構成される、すなわち一方が部分的に他方の上に重なるようにして構成されているが、これとは異なり、一方が他方の上に完全に重なるようにして両者の間に間隙を形成するようにしてもよい。しかしながら、装着時のフィット感を考慮すると、膝当て部を構成する概ね「く」字形状の2つの布部材は、装着時に一方が部分的に他方を膝関節に押し当てることを可能とするために、掛かり合わされて重ねられる方が好ましい。
【0038】
最後に、本明細書において、膝当て部を構成する2つの布部材は、概ね「く」字形状であるが、これに限定されず、例えば、横「U」字形状、横「V」字形状であってもよい。広義には、重ねられることにより膝頭が位置する間隙を形成できる形状であれば、膝当て部を構成する2つの布部材はどのような形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る膝用サポータの斜視図である。
【図2】膝用サポータの表側を示す図である。
【図3】膝用サポータの裏側を示す図である。
【図4】装着された状態の膝用サポータを示す図である。
【図5】装着された状態の膝用サポータを膝関節背面側から見た図である。
【図6】間隙が膝頭に合わせられた状態の膝用サポータの装着方法を示す図である。
【図7】膝関節に巻回された状態の膝用サポータの装着方法を示す図である。
【図8】装着された状態の膝用サポータを膝関節正面側から見た図である。
【符号の説明】
【0040】
10:膝用サポータ
12:膝当て部
14:膝当て部材
16:膝当て部材
34:間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝当て部を備えて膝関節に巻回装着される膝用サポータであって、
膝当て部が、概「く」字形状の第1および第2の布部材を、装着時に膝頭に配置される間隙を形成した状態で重ねることにより構成されることを特徴とする膝用サポータ。
【請求項2】
第1および第2の布部材が掛かり合わされて重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の膝用サポータ。
【請求項3】
装着時に第1の布部材の両端と頂点部とに係合して該第1の布部材を膝関節に押し当てるための概「く」字形状の第1のバンド部材と、
装着時に第2の布部材の両端と頂点部とに係合して該第2の布部材を膝関節に押し当てるための概「く」字形状の第2のバンド部材とを有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の膝用サポータ。
【請求項4】
第1および第2のバンド部材が掛かり合わされて重ねられていることを特徴とする請求項3に記載の膝用サポータ。
【請求項5】
第1の布部材と第2の布部材の少なくとも一方が伸縮性を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の膝用サポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−267952(P2007−267952A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97148(P2006−97148)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(592074289)株式会社京都繊維工業 (6)
【Fターム(参考)】