説明

膝関節サポーター

【課題】 着用者の膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、スポーツ時の着用者の動作を補助することができる膝関節サポーターを提供する。
【解決手段】 膝関節サポーター10は、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3に連結して着用者の大腿及び下腿の外側に沿って略直線状に編成される第1の支持部4と、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3に連結して着用者の大腿及び下腿の内側に沿って略直線状に編成される第2の支持部5と、着用者の膝蓋骨107に対応する部分の下方で交差する略X字形状に編成される第1の交差部6と、を備え、筒状編地の周方向Hにおける第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向Lにおける第1の支持部4、第2の支持部5及び第1の交差部6の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の体表に密着して膝関節を補助する膝関節サポーターに関し、特に、着用者の膝関節の安定性を向上して、スポーツ時の着用者の動作を補助し、疲労を軽減することができるテーピング機能を具備する膝関節サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサポータは、伸縮性素材からなる筒状の本体と、これに一体的に設けられ、本体よりも低伸縮性素材からなるサポート部分とを有する。サポート部は、本体を人体に対して固定するアンカー部と、膝と係合する係合部と、アンカー部と係合部とを連結することにより肢軸に対する膝の体幹側への変位を抑制する連結部とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−106404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサポータは、過度の内旋や外反による膝の故障を有効に防止、保護し得るサポータであり、脚の外側面に沿って係合部とアンカー部とを直線的に連結するように連結部が設けられているが、脚の内側面には連結部が設けられていない。このため、従来のサポータは、脚の外側面及び内側面に掛かる連結部による押圧力のバランスに欠けるものであり、膝関節の安定性を向上するものではなく、着用者の疲労を減少するものではない。
【0005】
特に、従来のサポータは、本体よりも低伸縮性の素材からなるサポート部分(アンカー部、係合部、連結部)が、本体に裏打ち逢着されるために、筒状の本体を構成した後に、サポート部分を縫合する工程が必要であり、製造工程が複雑であるという課題がある。
【0006】
また、従来のサポータは、着用者の膝に対して内側面から外側面に向けて強い押圧力を与えるものではないため、脚の外側面側から膝に外力を受けた場合に、外力を緩和する膝部の内側面から外側面に向けての反発力が得られず、内側側副靭帯の損傷を抑制するために十分ではないという課題がある。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、着用者の膝関節の安定性を向上して、着用者の疲労を減少すると共に、スポーツ(特に、バスケットボール)時の着用者の動作を補助することができる膝関節サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る膝関節サポーターにおいては、筒状編地の一端を周回して編成され、着用者の大腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、筒状編地の他端を周回して編成され、着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、第1のアンカー部及び第2のアンカー部に連結して着用者の大腿及び下腿の外側に沿って略直線状に編成され、着用者の外側広筋及び大腿二頭筋を支持する第1の支持部と、第1のアンカー部及び第2のアンカー部に連結して着用者の大腿及び下腿の内側に沿って略直線状に編成され、着用者の内側広筋及び半膜様筋を支持する第2の支持部と、着用者の膝蓋骨に対応する部分の下方で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を第1の支持部にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を第2の支持部にそれぞれ連結して、当該着用者の膝蓋骨を支持する第1の交差部と、を備え、筒状編地の周方向における第1のアンカー部及び第2のアンカー部の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における第1の支持部、第2の支持部及び第1の交差部の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きいものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る膝関節サポーターにおいては、第1の支持部により着用者の外側広筋及び大腿二頭筋を支持し、第2の支持部により着用者の内側広筋及び半膜様筋を支持して、着用者の大腿四頭筋を支持すると共に、第1の交差部により着用者の膝蓋骨を支持することで、膝関節サポーターの着用者の膝が必要以上に左右にぶれずに安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る膝関節サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図1(a)に示す膝関節サポーターの背面図であり、(c)は図1(a)に示す膝関節サポーターの左側面図であり、(d)は図1(a)に示す膝関節サポーターの平面図であり、(e)は図1(a)に示す膝関節サポーターの底面図である。
【図2】(a)は図1に示す足関節サポーターの見方を変えた正面図であり、(b)は図2(a)に示す足関節サポーターの背面図であり、(c)は図2(a)に示す足関節サポーターの左側面図であり、(e)は図2(a)に示す足関節サポーターの平面図であり、(f)は図2(a)に示す足関節サポーターの底面図である。
【図3】(a)は図1に示す膝関節サポーターを左脚に着用した状態を示す正面図であり、(b)は図1に示す膝関節サポーターを左脚に着用した状態を示す背面図であり、(c)は図1に示す膝関節サポーターを左脚に着用した状態を示す左側面図である。
【図4】(a)は大腿部の筋肉の名称を説明するための前方の人体図であり、(b)は大腿部の筋肉の名称を説明するための左後外側方の人体図であり、(c)は大腿部の中間広筋を説明するための下肢前方の人体図であり、(d)は下腿部の筋肉の名称を説明するための後方の人体図である。
【図5】(a)は第1の実施形態に係る他の足関節サポーターの見方を変えた正面図であり、(b)は図5(a)に示す足関節サポーターの背面図であり、(c)は図5(a)に示す足関節サポーターの左側面図であり、(e)は図5(a)に示す足関節サポーターの平面図であり、(f)は図5(a)に示す足関節サポーターの底面図である。
【図6】(a)は第1の実施形態に係るさらに他の足関節サポーターの見方を変えた正面図であり、(b)は図6(a)に示す足関節サポーターの背面図であり、(c)は図6(a)に示す足関節サポーターの左側面図であり、(e)は図6(a)に示す足関節サポーターの平面図であり、(f)は図6(a)に示す足関節サポーターの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
図1乃至図3において、膝関節サポーター10は、靴下編機(例えば、ロナティ社製の編み機種(針数:200本))により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の膝関節を補助するサポーターである。
【0012】
膝関節サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編や鹿の子編などで編成されてなる伸縮性のある編地であるベース生地部1に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係るベース生地部1は、1×1鹿の子により編成してなる編地(以下、鹿の子編地と称す)である。
【0013】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に、平編とタック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)とが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、ベース生地部1には、平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0014】
また、膝関節サポーター10は、筒状編地の一端(上端10a)を周回して編成され、着用者の大腿に膝関節サポーター10を締着させる第1のアンカー部2と、筒状編地の他端(下端10b)を周回して編成され、着用者の下腿に膝関節サポーター10を締着させる第2のアンカー部3とを備える。
【0015】
第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3は、膝関節サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の張力をFH1とし、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第1のアンカー部2の張力をFH2とし、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第2のアンカー部3の張力をFH3とした場合に、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の周方向Hに強い締付力を持つような、FH2≒FH3>FH1という大小関係を有する。
【0016】
具体的な編地として、第1のアンカー部2は、膝関節サポーター10の上端10aで膝関節サポーター10の内側に鹿の子編地を折り返して、ベース生地部1並びに後述する第1の支持部4及び第2の支持部5との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重の鹿の子編地(以下、二重鹿の子編地と称す)にすることにより、鹿の子編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0017】
また、第2のアンカー部3は、膝関節サポーター10の下端10bで膝関節サポーター10の内側にリブ編地を折り返して、ベース生地部1並びに後述する第1の支持部4及び第2の支持部5との境界で他の糸(例えば、ウーリーナイロン糸)で縫製した二重のリブ編地(以下、二重リブ編地と称す)にすることにより、鹿の子編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
なお、リブ編地とは、たて方向に表目のウェールと裏目のウェールとが交互に並ぶ編み目で、本実施形態においては、1ウェール毎に表目と裏目とを配列した1×1の編地である。
【0018】
このように、第1のアンカー部2は、着用者の大腿を周回して編成され、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の大腿に膝関節サポーター10を固定し、膝関節の屈曲時における膝関節サポーター10の上端10aのずり下がりを抑制することができる。また、第1のアンカー部2は、後述する第1の支持部4及び第2の支持部5が連結され、後述する第1の支持部4及び第2の支持部5並びに第1の交差部6及び第2の交差部7のアンカーとしても機能する。
【0019】
また、第2のアンカー部3は、着用者の下腿を周回して編成され、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の下腿に膝関節サポーター10を固定し、膝関節の屈曲時における膝関節サポーター10の下端10bのずり上がりを抑制することができる。また、第2のアンカー部3は、後述する第1の支持部4及び第2の支持部5が連結され、後述する第1の支持部4及び第2の支持部5並びに第1の交差部6及び第2の交差部7のアンカーとしても機能する。
【0020】
なお、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3による着用者の大腿及び下腿に対する締付力を強くしすぎると、大腿及び下腿における血流阻害を生じさせ、着用者に不快感を起こさせる。特に、この不快感は、下腿に比べ、大腿において顕著である。
【0021】
このため、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、第2のアンカー部3に対して、着用者の体表に接触する第1のアンカー部2の面積を広げ、第1のアンカー部2による体表にかかる圧力を分散させると共に、第1のアンカー部2の一部において度目を調整(例えば、第2のアンカー部3に対して締付力を10%程度小さく)することで、着用者に与える不快感を緩和している。すなわち、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、膝関節サポーター10の周方向Hに適度な締付力を持つように、FH3>FH2>FH1という大小関係を有することが好ましい。
【0022】
第1の支持部4は、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3に連結して着用者の大腿及び下腿の外側(人体を左右均等に二分する垂直面(正中矢状面)から遠い位置)に沿って略直線状に編成され、着用者の外側広筋101(図4(a)参照)及び大腿二頭筋102(図4(b)参照)を支持する。また、第1の支持部4は、着用者の大腿側における第1のアンカー部2で係止されており、着用者の下腿側における第2のアンカー部3で係止されている。
【0023】
第2の支持部5は、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3に連結して着用者の大腿及び下腿の内側(正中矢状面から近い位置)に沿って略直線状に編成され、着用者の内側広筋103(図4(a)参照)及び半膜様筋104(図4(b)参照)を支持する。また、第2の支持部5は、着用者の大腿側における第1のアンカー部2で係止されており、着用者の下腿側における第2のアンカー部3で係止されている。
【0024】
第1の支持部4及び第2の支持部5は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の張力をFL1とし、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4の張力をFL4とし、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2の支持部5の張力をFL5とした場合に、第1の支持部4及び第2の支持部5がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4=FL5>FL1という大小関係を有する。
【0025】
また、第1の支持部4及び第2の支持部5は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第1の支持部4の張力をFH4とし、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第2の支持部5の張力をFH5とした場合に、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL4=FL5>FH4=FH4という大小関係を有する。
【0026】
具体的には、第1の支持部4及び第2の支持部5を、2×1タック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)にすることにより、鹿の子編地のベース生地部1に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0027】
なお、タック編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地である。なお、本実施形態においては、度目とのバランスを考慮して、タックする回数を2回としているが、この回数に限られるものではない。
【0028】
また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4及び第2の支持部5の伸縮を適度に抑えており、第1の支持部4及び第2の支持部5とベース生地部1並びに後述する第1の交差部6及び第2の交差部7との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0029】
このように、第1の支持部4及び第2の支持部5は、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3にそれぞれ連結し、膝関節サポーター10の長さ方向Lに沿って略直線状に編成され、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、以下の作用効果を奏する。
【0030】
第1の支持部4及び第2の支持部5は、第1の支持部4が着用者の外側広筋101及び大腿二頭筋102を大腿の外側から支持し、第2の支持部5が着用者の内側広筋103及び半膜様筋104を大腿の内側から支持することにより、大腿四頭筋(大腿直筋105(図4(a)参照)、外側広筋101、中間広筋106(図4(c)参照)、内側広筋103)の動きと一体化させ、膝の左右の振れを抑制する副木のような役割を果すことができる。
【0031】
また、第1の支持部4及び第2の支持部5は、膝関節サポーター10の着用者の膝に対して内側から外側に向けて強い押圧力を与えることで、膝関節サポーター10の外側面側から膝に外力を受けた場合に、外力を緩和する内側面から外側面に向けての反発力を生じさせることができ、外力により膝が内側に入り込まず、内側側副靭帯の損傷を抑制することができる。
【0032】
また、第1の支持部4及び第2の支持部5は、膝関節サポーター10の着用者の大腿及び下腿の外側を支持することで、第1の支持部4及び第2の支持部5による内側に掛かる押圧力とのバランスを取り、着用者の安定した起立状態を維持することができる。特に、第1の支持部4及び第2の支持部5によって、着用者の膝関節を挟持することで、着用者の膝が必要以上に左右にぶれずに安定性を確保することができる。
【0033】
第1の交差部6は、着用者の膝蓋骨107(図7(a)参照)に対応する部分の下方で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を第1の支持部4にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を第2の支持部5にそれぞれ連結して、当該着用者の膝蓋骨107を支持する。また、第1の交差部6は、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、着用者の大腿側における第1のアンカー部2で係止されており、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、着用者の下腿側における第2のアンカー部3で係止されている。
【0034】
この第1の交差部6は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の交差部6の張力をFL6とした場合に、第1の交差部6がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL6>FL1という大小関係を有する。
【0035】
また、第1の交差部6は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第1の交差部6の張力をFH6とした場合に、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL6>FH6という大小関係を有する。
【0036】
特に、第1の交差部6は、交点6aの編地と交点6a以外の他の編地6bからなり、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点6aの編地の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地6bの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点6aの張力をFL6aとし、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地6bの張力をFL6bとした場合に、第1の交差部6の交点6aが他の編地6bと比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL6a>FL6bという大小関係を有する。
【0037】
また、第1の交差部6の交点6aは、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の周方向Hにおける交点6aの張力をFH6aとした場合に、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL6a>FH6aという大小関係を有する。
【0038】
具体的には、第1の交差部6の交点6aをタック編・添え糸編地にし、他の編地6bを1×1鹿の子編と添え糸編とを併用した編地(以下、鹿の子編・添え糸編地と称す)にする。これにより、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の交差部6の伸縮抵抗を大きくすることができると共に、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地6bの伸縮抵抗に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点6aの伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0039】
なお、鹿の子編・添え糸編地では、鹿の子編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の交差部6の伸縮を適度に抑えており、第1の交差部6の他の編地6bとベース生地部1、第1の支持部4、第2の支持部5及び第1の交差部6の交点6aとの境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。また、タック編・添え糸編地である第1の交差部6の交点6aは、第1の交差部6の他の編地6bとの境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0040】
このように、第1の交差部6は、着用者の膝蓋骨107に対応する部分の下方で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を第1の支持部4にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を第2の支持部5にそれぞれ連結して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、以下の作用効果を奏する。
【0041】
第1の交差部6は、第1のアンカー部2に連結する第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、着用者の膝蓋骨107を下腿側から支え、第1の支持部4及び第2の支持部5と共に、大腿四頭筋の動きと一体化させ、膝の左右の振れを抑制することができる。
【0042】
特に、第1の交差部6は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点6aの伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地6bの伸縮抵抗より大きく編成されていることにより、第1の交差部6の編地を強化して、着用者の膝蓋骨107を下腿側から引き上げる作用効果を高めることができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る第1の交差部6は、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、第1のアンカー部2に背面側で連結し、交点6aに与える力を後上方に作用させることで、着用者の膝蓋骨107を下腿側から引き上げる作用効果をさらに高めている。しかしながら、第1の交差部6は、図5(c)に示すように、第1のアンカー部2に連結することなく、第1の支持部4及び第2の支持部5のみに連結する(交点6aに与える力を上方に作用させる)構成であってもよい。
【0044】
第2の交差部7は、着用者の腓腹筋108(図4(d)参照)に対応する部分で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を第1の支持部4にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を第2の支持部5にそれぞれ連結して、当該着用者の腓腹筋108及びヒラメ筋109(図4(d)参照)を支持する。また、第2の交差部7は、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、着用者の大腿側における第1のアンカー部2で係止されており、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、着用者の下腿側における第2のアンカー部3で係止されている。
【0045】
この第2の交差部7は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2の交差部7の張力をFL7とした場合に、第2の交差部7がベース生地部1と比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL7>FL1という大小関係を有する。
【0046】
また、第2の交差部7は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の周方向Hにおける第2の交差部7の張力をFH7とした場合に、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL7>FH7という大小関係を有する。
【0047】
特に、第2の交差部7は、交点7aの編地と交点7a以外の他の編地7bからなり、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点7aの編地の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地7bの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点7aの張力をFL7aとし、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地7bの張力をFL7bとした場合に、第2の交差部7の交点7aが他の編地7bと比較して、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL7a>FL7bという大小関係を有する。
【0048】
また、第2の交差部7の交点7aは、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きく編成されている。すなわち、膝関節サポーター10の周方向Hにおける交点7aの張力をFH7aとした場合に、膝関節サポーター10の長さ方向Lに強い締付力を持つような、FL7a>FH7aという大小関係を有する。
【0049】
具体的には、第2の交差部7の交点7aをタック編・添え糸編地にし、他の編地7bを鹿の子編・添え糸編地にする。これにより、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2の交差部7の伸縮抵抗を大きくすることができると共に、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地7bの伸縮抵抗に対して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点7aの伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0050】
なお、タック編・添え糸編地である第2の交差部2の交点7aは、第2の交差部7の他の編地7bとの境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。また、鹿の子編・添え糸編地である第2の交差部7の他の編地7bは、ベース生地部1、第1の支持部4、第2の支持部5及び第2の交差部7の交点7aとの境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0051】
このように、第2の交差部7は、着用者の腓腹筋108に対応する部分で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を第1の支持部4にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を第2の支持部5にそれぞれ連結して、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、以下の作用効果を奏する。
【0052】
第2の交差部7は、着用者の腓腹筋108及びヒラメ筋109を膝関節サポーター10の周方向Hに締め付け、腓腹筋108及びヒラメ筋109の左右の振れや歪みを抑制して、着用者の歩行を補助すると共に、着用者の体力の損失を防ぎ、疲労を軽減することができる。
【0053】
特に、第2の交差部7は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける交点7aの伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける他の編地7bの伸縮抵抗より大きく編成されていることにより、第2の交差部7の編地を強化して、着用者の腓腹筋108及びヒラメ筋109を膝関節サポーター10の周方向Hに締め付ける作用効果を高めることができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、前述した各部位の編地により、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の支持部4及び第2の支持部5の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の交差部6の交点6a及び第2の交差部7の交点7aの伸縮抵抗と等しい。また、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1の交差部6の他の編地6b及び第2の交差部7の他の編地7bの伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の伸縮抵抗より大きい。また、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の伸縮抵抗より大きい。また、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の伸縮抵抗が、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きい。
【0055】
したがって、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける張力Fにおいて、次式(1)に示す大小関係を満たすものである。ただし、次式(1)において、FL2は膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第1のアンカー部2の張力であり、FL3は膝関節サポーター10の長さ方向Lにおける第2のアンカー部3の張力である。
【0056】
〔数1〕
L6a=FL7a=FL4=FL5>FL6b=FL7b>FL3>FL2>FL1 ・・・(1)
【0057】
なお、本実施形態においては、鹿の子編、リブ編及びタック編に用いられる地編糸として、糸の番手が30/−であり、綿とポリエステルからなる混紡糸(例えば、三山株式会社製「リッチハウス」)である表糸と、糸の番手が30/75であり、ポリウレタン弾性糸を軸に長繊維をカバーリングした加工糸(FTY:Filament Twisted Yarn)である裏糸と、ポリウレタンの芯糸にポリエステルの巻き糸を巻きつけたカバーリング・ヤーン(例えば、オペロンテックス株式会社製「ST8700」)であるゴム糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0058】
例えば、表糸としては、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、膝関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸としては、抗菌、防臭又は消臭素材を、膝関節サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。
【0059】
また、タック編・添え糸編地(第1の支持部4、第2の支持部5、第1の交差部6の交点6a、第2の交差部7の交点7a)及び鹿の子編・添え糸編地(第1の交差部6の他の編地6b、第2の交差部7の他の編地7b)におけるウーリーナイロン糸(柄糸)は、太さ100デニールの編み本数2本からなる。
【0060】
なお、本実施形態に係る膝関節サポーター10は、図2(c)に示すように、第1の交差部6における第2のアンカー部3側の二つの端部に向かう編地が、第1の支持部4及び第2の支持部5を介して、第2の交差部7における第1のアンカー部2側の二つの端部に向かう編地にそれぞれ連続する構成である。
【0061】
しかしながら、膝関節サポーター10は、図6(c)に示すように、第1の交差部6における第2のアンカー部3側の二つの端部に向かう編地が、第1の支持部4及び第2の支持部5を介することなく、第2の交差部7における第1のアンカー部2側の二つの端部に向かう編地にそれぞれ連続する構成であってもよい。
【0062】
この場合には、第1の交差部6と第2の交差部7とが一体となり、第1の交差部6の交点6a及び第2の交差部7の交点7aをアンカーとして互いに引き合うことで、第1の交差部6により膝蓋骨107を支持する作用効果を高めると共に、第2の交差部7により腓腹筋108及びヒラメ筋109を支持する作用効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ベース生地部
2 第1のアンカー部
3 第2のアンカー部
4 第1の支持部
5 第2の支持部
6 第1の交差部
6a 交点
6b 他の編地
7 第2の交差部
7a 交点
7b 他の編地
10 膝関節サポーター
10a 上端
10b 下端
101 外側広筋
102 大腿二頭筋
103 内側広筋
104 半膜様筋
105 大腿直筋
106 中間広筋
107 膝蓋骨
108 腓腹筋
109 ヒラメ筋
H 周方向
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状編地からなり、着用者の体表に密着して膝関節を補助する膝関節サポーターにおいて、
前記筒状編地の一端を周回して編成され、前記着用者の大腿に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状編地の他端を周回して編成され、前記着用者の下腿に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、
前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部に連結して前記着用者の大腿及び下腿の外側に沿って略直線状に編成され、前記着用者の外側広筋及び大腿二頭筋を支持する第1の支持部と、
前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部に連結して前記着用者の大腿及び下腿の内側に沿って略直線状に編成され、前記着用者の内側広筋及び半膜様筋を支持する第2の支持部と、
前記着用者の膝蓋骨に対応する部分の下方で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を前記第1の支持部にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を前記第2の支持部にそれぞれ連結して、当該着用者の膝蓋骨を支持する第1の交差部と、
を備え、
前記筒状編地の周方向における前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、
前記筒状編地の長さ方向における前記第1の支持部、第2の支持部及び第1の交差部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の膝関節サポーターにおいて、
前記着用者の腓腹筋に対応する部分で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の編地における二つの端部を前記第1の支持部にそれぞれ連結し、当該略X字形状の編地における他の二つの端部を前記第2の支持部にそれぞれ連結して、当該着用者の腓腹筋及びヒラメ筋を支持する第2の交差部を備え、
前記筒状編地の長さ方向における前記第2の交差部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項3】
前記請求項2に記載の膝関節サポーターにおいて、
前記第1の交差部における前記第2のアンカー部側の二つの端部に向かう編地が、前記第2の交差部における前記第1のアンカー部側の二つの端部に向かう編地にそれぞれ連続することを特徴とする膝関節サポーター。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の膝関節サポーターにおいて、
前記第1の交差部が、交点の編地と交点以外の他の編地からなり、
前記筒状編地の長さ方向における前記交点の編地の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記他の編地の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする膝関節サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104138(P2013−104138A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247453(P2011−247453)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【Fターム(参考)】