説明

膝関節痛緩和剤

【課題】 理学療法や外科的手術を行うことなく、経口摂取により膝関節痛の緩和が期待できる膝関節痛緩和剤を提供する。
【解決手段】 平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする経口用の膝関節痛緩和剤。さらには、この膝関節痛緩和剤を含有する経口用医薬品組成物または食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸またはその塩を含有する膝関節痛緩和剤、およびその膝関節痛緩和剤を含有する経口用医薬組成物、食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢や肥満が要因で、膝関節痛を訴える人が増加している。膝関節痛の原因は様々であるが、中でも膝の関節のクッションとなっている軟骨が磨り減り、膝に炎症が起き、進行すると関節が変形する変形性膝関節疾患が深刻となっている。
【0003】
変形性膝関節疾患は、初期は立ち上がったときなど膝を使う動作の初めに痛みが生じ、これが進行すると、平地を歩いたり夜間就寝中にも痛みが現れ、生活や日常の活動に大きな制約をうけることとなる。
【0004】
変形性膝関節疾患の治療には、炎症の痛みを抑えるため消炎鎮痛剤を摂取したり、関節内にヒアルロン酸ナトリウムを注入する方法がとられる。また、筋力強化や温熱療法等の理学療法的処置がとられる。しかし、このような保存的治療では緩解が見込めない場合は、骨切術や人工関節置換手術等外科的処置がとられる。いずれも患者にとって、精神的、身体的負担は大きい。
【0005】
そこで、医薬品や食品の経口摂取により、変形性膝関節疾患の疼痛が緩解もしくは軽減できることが期待されている。特許文献1(USP6607745)にはヒアルロン酸またはその塩、またはその分解物を、0.1〜400μg/kg体重経口接触することにより、変形性膝関節疾患に伴う関節痛やその他の苦痛を緩和する方法が記載されている。しかし、有効なヒアルロン酸またはその塩の分子量や、該ヒアルロン酸またはその塩を摂取したときの治療成績については明示されていない。
【0006】
【特許文献1】United States Patent:6607745
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、背景技術の課題を解決しようとするものであり、変形性膝関節疾患に代表される膝関節痛を緩和する経口用の膝関節痛緩和剤およびこの膝関節痛緩和剤を含有する経口用医薬品組成物と食品組成物を提供すること、ならびに膝関節痛を緩和する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の分子量帯のヒアルロン酸またはその塩を所定量、膝関節痛を訴える被験者に経口摂取させることにより、医学的指標をもって自覚症状の変化を観察したところ、痛みやこわばりが4週間で有意に低下した。さらには、日常生活の状態やふだんの活動、健康状態においても改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、特定の分子量帯のヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする経口用の膝関節痛緩和剤、およびこれを含有する経口用医薬品組成物、食品組成物、ならびに該ヒアルロン酸またはその塩を所定量経口摂取することによる膝関節痛の緩和方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経口用の膝関節痛緩和剤によれば、特定の分子量帯のヒアルロン酸またはその塩を有効成分とし、これを医薬品組成物もしくは食品組成物として含有せしめ、これを所定量経口摂取することにより、膝関節痛を緩和でき、日常生活や活動を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の膝関節痛緩和剤は、平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を含有する。ここで、ヒアルロン酸とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの2糖を反復構成単位とする多糖類に分類される高分子化合物である。ヒアルロン酸の平均分子量は、小さすぎるまたは大きすぎると発明の効果が得られ難くなり、好ましくは60万〜150万、より好ましくは60万〜120万である。
【0012】
また、本発明で使用するヒアルロン酸の平均分子量は、分子量の大小に応じてサンプル採取量が異なるが、基本的には下記の方法により求めた値として定義される。
【0013】
即ち、ヒアルロン酸の分子量が80万〜160万程度の場合には約0.05g、ヒアルロン酸の分子量が60万〜80万程度の場合には約0.1gのヒアルロン酸を精密に量り、0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mlとした溶液及びこの溶液8ml、12ml並びに16mlを正確に量り、それぞれに0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mlとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液及び0.2mol/l濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十四改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度計測法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(1))、各濃度における還元粘度を算出する(式(2))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100ml)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(3))に代入し、平均分子量を算出する。
【0014】
【数1】

【0015】
ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。ヒアルロン酸の塩の製造は、公知の方法により行うことができる。
【0016】
本発明の膝関節痛緩和剤の使用形態には、特に制限はなく、粉末状、顆粒状、高濃度液状、低濃度液状等の使用形態とすることができる。ヒアルロン酸またはその塩の分子量の安定性を鑑み、液状より乾燥形態が好ましい。また、膝関節痛緩和剤のヒアルロン酸またはその塩の配合量は、使用形態と医薬品組成物または食品組成物への添加量に応じて適宜決定することができる。
【0017】
なお、膝関節痛緩和剤には、必要に応じて、増量剤、結合剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、香料、甘味料、酸味料、賦形剤等を配合することができる。また、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンE等のビタミン類、核酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン等の栄養成分、鉄、亜鉛等のミネラル成分等の各種栄養成分を配合することもできる。
【0018】
本発明で使用するヒアルロン酸は、市販品を使用することができるが、以下の製造法1および2に従って製造することもできる。
【0019】
<製造法1(鶏冠からの抽出)>
まず、鶏冠に加熱処理を施す。これは、鶏冠に含まれる蛋白質を熱変性させたり、酵素を失活させるためである。加熱処理は如何なる方法をとってもよいが、熱水中に鶏冠を浸漬する方法をとると効率よく行なうことができる。加熱温度や時間は、鶏冠中の蛋白質が熱変性したり、酵素が失活する範囲内であれば、特に制限がなく、熱水による加熱法を採用する場合は、60〜100℃の熱水中に原料を20〜90分間浸漬するとよい。
【0020】
なお、凍結した鶏冠を用いる場合には、鶏冠をそのまま加熱してもよいが、凍結鶏冠を流水中等に入れ緩慢解凍した後、加熱処理を施したほうが一定の品位のものが得られやすく好ましい。
【0021】
次に、加熱処理した鶏冠をペースト化する。このペースト化によりヒアルロン酸の収率が向上する。ペースト化に先立ち、加熱処理後の鶏冠を細断機により薄く切断したり、または肉挽き用チョッパー等で細断しておくと、ペースト化がしやすくなる。ペースト化の一例を示せば、鶏冠に対して約1〜5倍量の清水を加え、ホモゲナイザーにて10〜60分間ホモゲナイズを行なえば、鶏冠は破砕・微粒子化され、ペーストに仕上げることができる。なお、ペースト化には、ホモゲナイザーの他に、高速撹拌機や擂潰機を用いてもよい。
【0022】
次に、ペースト化した鶏冠に、塩酸、硫酸等の酸剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤等を添加し酸処理又はアルカリ処理してヒアルロン酸を低分子化し、処理後のヒアルロン酸の平均分子量が60万〜160万、好ましくは60万〜120万となるように調整する。調整方法としては、酸剤あるいはアルカリ剤の濃度、添加量及び処理時間等を適宜組み合わせて、処理後のヒアルロン酸が所望の分子量となるようにすればよいが、アルカリ処理による方法がヒアルロン酸の分子量をコントロールし易く好ましい。アルカリ処理による一例を示せば、ペースト化した鶏冠に、鶏冠に対し10〜30%濃度のアルカリ水溶液を約1〜5%添加し、25〜70℃で約15〜90分間処理を行なった後、塩酸等で中和し、分子量を調整する。
【0023】
次に、分子量を調整した原料に蛋白分解酵素を添加して、プロテアーゼ処理する。使用する蛋白分解酵素は、市販しているものであれば種類を問わず使用することができ、例えば、ペプシン、トリプシン、パパイン、プロメリン等が挙げられる。蛋白分解酵素の添加量は、鶏冠に対して0.01〜1%が適当である。また、プロテアーゼ処理の温度と時間は、35〜65℃で1〜10時間の範囲が適当である。
【0024】
最後に、得られたプロテアーゼ処理物からヒアルロン酸を分取して、粗製のヒアルロン酸を得た後、このヒアルロン酸を精製することにより純度90%以上、平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸が得られる。
【0025】
ここで、ヒアルロン酸の分取・精製は、常法に従って行うことができる。例えば、まず、プロテアーゼ処理した原料を濾過して固形物を除去して、粗製のヒアルロン酸を含有した濾液を得る。なお、濾過に先立ち、脱臭・脱色や一部の蛋白分解物を除去する目的で、プロテアーゼ処理物に活性炭を添加し処理してもよい。そして得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで本発明で使用するヒアルロン酸を得ることができる。
【0026】
<製造法2(微生物発酵法)>
ヒアルロン酸産出ストレプトコッカス属の微生物(Streptococcus
Zooepidemicus)の培養液に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで本発明で使用できるヒアルロン酸(平均分子量60〜160万)を得ることができる。
【0027】
なお、本発明において使用するヒアルロン酸の純度は、食品で使用できるレベルであればよく、好ましくは90%以上であればよい。その純度は乾物換算で100%よりヒアルロン酸以外の不純物を除いた値として定義される。ここで、不純物としては、蛋白分解物、脂肪分(粗脂肪)、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。具体的に鶏冠を原料とするヒアルロン酸の純度は、以下式(4)で求めることができる。
【0028】
【数2】

【0029】
式(4)中、蛋白分解物(%)はLowry法により求めた値であり、粗脂肪(%)は新・食品分析法(光琳(株)発行)「第1章一般成分および関連成分、1−4脂質、1−4−2エーテル抽出法」により求めた値であり、また、コンドロイチン硫酸(%)は、以下に説明する方法により得た値である。
【0030】
まず、ヒアルロン酸を乾燥し、その50mgを精密に量り、精製水を加えて溶かし、正確に100mlとして試験溶液とし、その試験溶液4mlを試験管にとり、0.5mol/l濃度の硫酸1mlを加えて混和し、水浴中で10分間加熱し、その後冷却して得られた溶液に0.04mol/l濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2ml加えて混和し、室温で1時間放置し、層長10mm、波長660nmにおける吸光度を測定する。
【0031】
次に、得られた吸光度データをコンドロイチン硫酸の検量線に適用して精製ヒアルロン酸中のコンドロイチン硫酸量(%)を求める。ここで、その検量線は、クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(SG(Special Grade)、生化学工業株式会社製)を乾燥(減圧、五酸化リン、60℃、5時間)させたものを精密に量り、精製水を加えて溶かし、1ml中に10μg、20μg、30μg、40μgのコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩を含む溶液をそれぞれ調製し、それぞれの溶液4mlについて、0.5ml/l濃度の硫酸1mlを加えて混和後、0.04mol/l濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2ml加えて混和し、室温で1時間放置後同様に吸光度を測定し、その吸光度を縦軸に、対応するコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩溶液(μg/ml)を横軸にプロットすることによって作成したものである。
【0032】
以上説明した本発明の経口用の膝関節痛緩和剤は、膝関節痛緩和を目的とした経口用医薬品組成物または食品組成物に好ましく適用することができる。即ち、この医薬品組成物は散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤といった乾燥状形態、液剤、シロップ剤、懸濁剤といった液状形態をとることができる。また、食品組成物においては、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤に準じたサプリメントの形態、または飲料、菓子、栄養補給目的のブロック状食品、ゼリー状食品、調味料等様々な加工食品に配合することができる。本発明の効果を期待するには、毎日継続して摂る必要があるため、医薬品組成物の形態か、食品組成物の形態であれば医薬品の形態に準じたサプリメントが好ましい。また、加工食品であっては、ヒアルロン酸またはその塩の分子量の安定性の観点より、加熱工程を経るものや、酸性、アルカリ性を呈するpHのものは避けた方が好ましい。
【0033】
この経口用医薬品組成物や食品組成物に含有されるヒアルロン酸またはその塩の量は、特に限定するものではないが、後述する治療成績より、ヒアルロン酸またはその塩相当量として、1日120mg乃至240mgの摂取で良好な成績が得られていることを鑑みて、日々この程度の量を無理なく継続できるように設計されたもであることが好ましい。具体的には、例えばソフトカプセルの形態とする場合、1粒当り40〜120mgとすることにより、1日の摂取量はソフトカプセル1〜6粒となり、合理的である。食品組成物として配合する場合、1食当りの配合量が低すぎると、所定量摂取するためには毎日大量摂食する必要があり、患者には酷である。また、配合する食品が嗜好性の高いものであると、毎日の摂取量が定まらず、効果に支障をきたす可能性がある。
【0034】
また、本発明の経口用の膝関節痛緩和剤もしくはこれを含有する経口用医薬品組成物、食品組成物の摂取量は、膝関節痛緩和の有効性より、後述する実施例にて1日一人当たり120mgもしくは240mgの摂取で著効を示していることより、摂取する人の体重や疼痛の度合いより、60〜300mg摂取することが好ましい。
【0035】
以上説明した経口用医薬品組成物または食品組成物は、平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする膝関節痛緩和剤を、適当な濃度となるように常法に従って配合することにより製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
【0037】
<試験概要>
以下、詳細に示す通り、平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日240mgを経口投与し、摂取前、摂取4週間後、8週間後の経過をJKOM膝関節痛アンケートおよび変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)に従い調査した。
【0038】
1.被験品および摂取量
製造方法2に準じ平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸を得、これを1粒当り48mgとなるようソフトカプセルを調製した。このソフトカプセル5粒(ヒアルロン酸として240mg)を毎日の摂取量とした。
【0039】
2.被験者および被験者数
同意取得時の年齢が50歳以上、70歳以下の日本人男性および女性で、膝関節痛を安静時および運動時に自覚している者15名を被験者とした。ただし、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアが低い者であり、Kellgren-Lawrenceによる変形性膝関節症の病気分類(変形性膝関節症のX線による評価方法の一つであり、関節部位の症状の進行度によって0〜4のgradeに分類される)でのgradeがどちらか一方の脚でgrade1〜3の者を選択した。
【0040】
3.評価方法および評価結果
以下の方法に従い、摂取前、摂取4週間後、8週間後に評価を行った。
3.1.JKOM膝関節痛アンケート調査
JKOM膝関節痛アンケート調査の判定基準1:膝の痛みの程度(VAS:ビジュアルアナログスケール)および判定基準2〜5の合計値の変化により評価を行った。

<判定基準1:膝の痛みの程度>
「痛みなし」を1、「これまでに経験した最も激しい痛み」を40としたときに、痛みの程度を40段階のスコアで集計する。

<判定基準2〜5の合計値>
表1により、2〜5の4項目25個の質問の合計点(100点満点)を算出する。



【0041】
【表1】

3.2.JKOM膝関節痛アンケート調査結果
表2の通り、判定基準1(膝の痛みの程度)および判定基準2〜5の合計値のいずれも、摂取8週間後は、危険率1%未満で有意に低下した。

【0042】
【表2】

3.3.変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査
表3に示す、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)による4項目のスコアの合計値の変化により、評価を行った。

【0043】
【表3】

3.4.変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査結果

表4の通り、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるスコアの合計値は、摂取8週間後、危険率1%未満で有意に低下した。

【0044】
【表4】

【0045】
このように、平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日240mgを経口投与した結果、8週間後のJKOM膝関節痛評価および変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアの合計値はいずれも危険率1%未満で有意に改善した。
よって、平均分子量60万〜120万のヒアルロン酸を有効成分とするサプリメントを経口摂取することにより、膝関節痛が緩和できることが確認できた。
【0046】
さらに、製造方法2に準じ製した、平均分子量80万〜160万のヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある別の男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日120mgを経口投与した結果、8週間後のJKOM膝関節痛評価のスコア合計値は危険率1%未満で有意に改善した。
本試験においては変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査は実施しなかったが、前試験同様に平均分子量80万〜160万のヒアルロン酸においても、膝関節痛緩和効果があることが確認できた。

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の経口用の膝関節痛緩和剤は、平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を主成分として含有し、膝関節痛を主訴する患者に1日120〜240mgを8週間経口摂取させることにより、膝関節痛が緩和し、その結果、JKOM膝関節痛評価および変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアの合計値がいずれも危険率1%未満で有意に改善した。よって、この膝関節痛緩和剤およびこれを含有する経口用医薬品組成物、食品組成物は膝関節痛の緩和に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする経口用の膝関節痛緩和剤。
【請求項2】
膝関節痛が変形性膝関節疾患によるものである、請求項1記載の膝関節痛緩和剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膝関節痛緩和剤を含有する経口用医薬品組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の膝関節痛緩和剤を含有する食品組成物。
【請求項5】
平均分子量60万〜160万のヒアルロン酸またはその塩を、1日60〜300mgを経口摂取することにより、膝関節痛を緩和する方法。


【公開番号】特開2009−102278(P2009−102278A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277171(P2007−277171)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】