膵機能障害の治療または予防方法
本発明は、それを必要とする被験体において膵機能を改善する方法を提供し、本方法は、被験体にSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。本発明の方法は、膵機能障害によりもたらされる、または膵機能障害に関連する障害、例えば、膵臓の内分泌機能または外分泌機能の異常によりもたらされる障害の治療および/または予防および/または発症もしくは進行の遅延のために有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、それを必要とする被験体において膵機能を改善する方法に関する。本方法は、膵機能障害によりもたらされる、または膵機能障害と関連する障害、例えば、膵臓の内分泌機能または外分泌機能の異常によりもたらされる障害の治療および/または予防および/または発症もしくは進行の遅延のために使用できる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膵臓は、脊椎動物の消化器系および内分泌系における多機能性腺器官である。膵臓は、内分泌腺(インスリン、グルカゴンおよびソマトスタチンを含むいくつかのホルモンを産生する)および外分泌腺(小腸を通る消化酵素を含有する膵液を分泌する)の両方である。膵液中の酵素は、糜粥中で炭水化物、タンパク質および脂肪のさらなる分解において役に立つ。
【0003】
内分泌機能を有する膵臓部分は、ランゲルハンス島と呼ばれる多数の細胞クラスターから構成されている。この島には分泌により分類される4種の主要な細胞型がある。α細胞はグルカゴンを分泌し、β細胞はインスリンを分泌し、δ細胞はソマトスタチンを分泌し、PP細胞は膵臓ポリペプチドを分泌する。この島は、クラスターおよびコードに配置された内分泌細胞の密な集合体であり、毛細血管のネットワークもさらに含有する。この島の毛細血管に対しては、血管に直接接触する内分泌細胞の層が並んでおり、大部分の内分泌細胞は、細胞質突起または直接並置のどちらかにより、直接血管に接触している。
【0004】
血液中にホルモンを分泌する膵臓内分泌腺とは対照的に、膵臓外分泌腺は、消化酵素(例えば、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼおよびアミラーゼ)およびアルカリ性液を産生し、小腸のホルモンであるセクレチンおよびコレシストキニンに反応して、外分泌管系を介してこれらを小腸に分泌する。消化酵素は、膵臓外分泌腺の腺房細胞により産生され、分泌される。腺房中心細胞(centroacinar cell)と呼ばれる膵管と並んでいる特殊な細胞は、重炭酸塩および塩分に富んだ溶液を、小腸に分泌する。
【0005】
膵機能障害は、膵臓によって産生されるホルモンおよび/または酵素の産生過剰または産生不足をもたらし得る。膵機能障害に関連する、または膵機能障害により引き起こされる病態は、糖尿病(diabetes mellitus)、急性もしくは慢性の膵炎、膵臓の酵素欠乏症または膵腫瘍を含む。
【0006】
糖尿病(DM)は、すべての年齢群および集団にわたって、最も一般的な慢性の内分泌障害の1つであり、膵機能障害が原因で起こる。DMは、世界中で1億人を超える人々が患っている。米国だけでも、1200万人を超える被験体がDMであると診断され、毎年600,000例の新規の症例が診断されている。
【0007】
DMは、血糖の上昇をもたらす、炭水化物(例えばグルコース)の恒常性または代謝の異常を特徴とする障害群に対する診断用語である。これらの障害は、いくつかの相関のある代謝、血管および神経障害性の構成要素を含む。DMの様々な要素は、膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能が原因で起こる。例えば、一般的に高血糖を特徴とする代謝要素は、ホルモン、特にインスリン(すなわち内分泌機能)分泌の不在または著しい減少が原因で起こる、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝の変化、および/またはインスリン作用の無効を含む。外分泌レベルにおいて、膵臓は、食物の消化に関与する様々な酵素を産生する。例えば、膵臓はアミラーゼを産生し、DMにおいて、炭水化物を消化するために十分なレベルのこの酵素を分泌できず、膵臓の外分泌腺の機能不全、栄養失調および体重減少をもたらす恐れがある。したがって、膵臓の内分泌機能および外分泌機能の両方がDMの代謝要素に寄与している。DMの血管要素は、心血管、網膜および腎臓の合併症をもたらす血管の異常を含む。末梢系および自律神経系の異常もまた、DMの要素である。
【0008】
DMは、一般的に、インスリンの量または循環の減少、および/または被験体におけるインスリンに対する細胞の反応性の減少が原因で起こる。インスリンは、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝において必須である。インスリンは、筋肉細胞および脂肪細胞にグルコースを進入させることによって、および炭水化物貯蔵としての、グルコースのグリコーゲンへの転換(グリコーゲン生成)を刺激することによって、血糖値を低下させる。インスリンはさらに、肝臓グリコーゲンからの貯蔵グルコースの放出(グリコーゲン分解)を阻害し、脂肪のトリグリセリド、遊離の脂肪酸およびケトンへの分解を遅延させる。加えて、インスリンは、グルコース産生のためのタンパク質の分解(グルコース新生)を遅延させる。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島において、β細胞によって産生され、分泌される。
【0009】
糖尿病には、I型(インスリン依存性糖尿病またはIDDMとも称される)およびII型(非インスリン依存性糖尿病またはNIDDMとも称される)、妊娠糖尿病および糖尿病前症(またはグルコース代謝障害)を含むいくつかの型がある。これらのうち、糖尿病の最も一般的な2つの形態がI型およびII型糖尿病である。I型糖尿病(またはインスリン依存性糖尿病;IDDM)は、インスリンの完全な欠乏をもたらす、膵臓β細胞の不在、破壊または喪失が原因で起こる。II型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病;NIDDM)は、インスリン抵抗性を特徴とする異質な障害である。
【0010】
I型糖尿病
I型糖尿病の全発生率は、USだけでおよそ15例/100,000個体である。USにおいて、糖尿病の全症例のおよそ5から15パーセントがI型糖尿病であり、医師により、毎年約10,000の新規の症例が診断される。国際的にはI型糖尿病の発生率は、中国における約0.61症例/100,000個体から、サルジニアにおける約34.5症例/100,000およびフィンランドにおける40超症例/100,000と様々である。多くの国により、I型糖尿病の発生率がこの20年の間に2倍になっていることがさらに報告されている。
【0011】
I型糖尿病の急性臨床的発症は、高血糖、多尿、多渇、体重減少または視力障害などの単独または組み合わせた症状、それに続く数日または数週間後のケトアシドーシスを特徴とする。一般的に、疾患の急性の発症には、長い無症候性の発症前の期間が先行し、その間に、インスリン分泌β細胞は被験体の免疫系によって徐々に破壊されると考えられている。
【0012】
健康な個体において、膵臓は通常100万から150万の島(islet)を含み、島細胞のおよそ80パーセントがインスリン産生β細胞である。臨床的糖尿病の症状は、それらのβ細胞の10パーセント未満しか残存しないときに現れる。
【0013】
インスリンの供給と需要との間の不釣り合いは、膵臓β細胞の喪失が原因で起こり、グルコース、脂質およびタンパク質の代謝の異常をもたらす。インスリンの欠乏は、高血糖および高血糖性脱水症状、遊離脂肪酸レベルの上昇、血清中ケトンレベルの上昇、トリグリセリドレベルの増加、超低密度リポタンパク質(VLDL)レベルの増加、分枝鎖アミノ酸レベルの増加、タンパク質合成の減少ならびにケトアシドーシスをもたらし得る。I型糖尿病を有する被験体は、任意の1種または複数種の様々な血管系および神経系の合併症を患う可能性が高い。例えば、I型糖尿病の患者は、心臓発作を有する可能性が糖尿病でない患者より2倍高く、壊疽を患う可能性が5倍高く、完全な腎不全を有する可能性が17倍高く、視覚を失う可能性が25倍高い。
【0014】
I型糖尿病の治療/予防
現在、I型糖尿病は、外因性インスリンの投与、運動および食事管理によって治療される。これらの治療形態は、膵臓の損傷を直さない(すなわち、破壊されたβ−島細胞を補充しない)が、β島細胞によって産生される成長因子を補充する、またはこれらの因子の必要性の回避が試みられる。
【0015】
I型糖尿病を患う被験体の大部分は、何らかの形態のインスリン療法を必要とする。現時点において、このような療法は一般的に、血糖値および/またはインスリンレベルをモニターすること、および必要に応じて、組換えインスリンまたは精製インスリンを注射することを被験体に要求する。経鼻または経口投与可能なインスリンの新しい形態も、開発されている。しかし、この形態の療法は、被験体による継続モニタリングおよび被験体の一生の間、少なくとも1日1回のインスリン投与を必要とする。被験体がインスリン投与を怠る、またはインスリンを過剰に投与すると、例えば、高血糖、低血糖またはケトアシドーシスの発症の危険性があるであろう。
【0016】
I型糖尿病の治療に現在使用されるその他の化合物には、例えば、スルホニル尿素、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤またはチアゾリジンジオンが含まれる。しかし、これらの化合物もそれぞれ、重大な欠点を有する。例えば、スルホニル尿素は低血糖および高インスリン血症を引き起こし、ビグアニドは乳酸アシドーシスを引き起こし、α−グルコシダーゼ阻害剤は胃腸の副作用を引き起こし、チアゾリジンジオンは作用の発現が遅く、体重増加を伴い、頻繁な肝機能試験を必要とする。
【0017】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)も、糖尿病用の治療薬候補として特定されている。このペプチドは、膵臓の発生、β細胞の分化およびβ細胞機能の維持において重要な役割を果たす転写因子である膵十二指腸ホメオボックス因子−1(pancreatic and duodenal homeobox factor-1)(PDX−1)の発現を誘導する(Babuら、Mol Endocrinol.20巻:3133〜3145頁、2006年)。PDX−1は、GLUT2、グルコキナーゼおよびインスリンなどの、グルコースの感知および代謝の発現の誘導に関与する。GLP−1は、インスリンの発現の刺激に加えて、被験体において膵臓ベータ細胞の増殖を誘導できるので、治療薬としての可能性が示唆されている(Buteau、Diabetes and Metabolism、34巻:S73〜S77頁、2008年)。しかし、GLP−1の細胞内利用性を増加させる臨床的に利用可能な薬剤、例えば経口的に活性なジペプチジルペプチダーゼ−4(DPPIV)阻害剤または注射可能なGLP−1類似体の使用は、軽症型のII型糖尿病の治療に限定されている。これらの薬剤の比較的短い半減期、これらの頻繁な投与の必要性および重度のベータ細胞喪失の場合の効果の相対的な欠如によって、I型糖尿病または他のインスリン依存性の患者用のインスリン保持薬(insulin-sparing agent)としての使用は排除されている。経口的に利用可能なGLP−1類似体でさえ半減期は短く、毎日の高用量の投与を必要とする。
【0018】
他の治療の選択肢は、膵臓のランゲルハンス島の移植を含み、これにより、インスリン依存性が減少することが示されている(Shapiroら、New Eng.J.Med.、343巻:230〜238頁、2000年)。しかし、この治療の適用は、ドナー由来の一次ヒト島(primary human islet)の利用性が非常に限られていることによって制限され、移植の間の細胞の生存を確実にするためにドナーは心臓が鼓動していなければならない。(Burnsら、J.Endocrinology、103巻:437〜443頁、2004年)。
【0019】
幹細胞、例えば胚性幹細胞(ES)細胞もまた、治療に適切な量のインスリン産生細胞の産生のための適切な供給源として提唱されている。しかし、インスリン分泌β細胞は、2〜4×109β細胞/移植と予測される必要レベルでさえ、幹細胞から産生されなかった。このような細胞ベースの療法は、高インスリン血症または低血糖症を引き起こすポイントを拡大しないことを確実にするために、置き換えた細胞の増殖能力が厳密に調節されなければならず、移植細胞はレシピエントの免疫系によって破壊されることを避けなければならないという困難もさらに克服しなければならない。さらに、ES細胞ベースの療法の場合、奇形種の形成の危険性を避けるために、残存ES細胞を除去しなければならない。
【0020】
II型糖尿病
II型糖尿病は、糖尿病の症例のおよそ90〜95%を占め、米国だけで約193,000人/年が死亡している。II型糖尿病は、すべての死亡の7番目の主原因である。西洋社会において、II型糖尿病は、現在成人人口の6%が侵されており、予想される世界中の頻度は6%/年で成長している。特定の個人がII型糖尿病を発症しやすくする可能性のある特定の遺伝形質があるにもかかわらず、この疾患の発生率が現在増加している主な原因は、現在先進国において多い、座っていることの多いライフスタイル、食事および肥満の増加である。II型糖尿病は、ヒトの健康の重大な脅威の1つとして、現在国際的に認識されている。
【0021】
筋肉、脂肪および肝臓の細胞が、インスリンに正常に反応できない場合、II型糖尿病が発症している。この反応ができないこと(failure to respond)(インスリン抵抗性と呼ばれる)は、これらの細胞におけるインスリン受容体の数の減少、または細胞内のシグナル伝達経路の機能障害または両方による可能性がある。β細胞は、まず、それらのインスリン産出の増加により、このインスリン抵抗性を補う。時間とともに、これらの細胞は正常なグルコースレベルを維持するための十分なインスリンを産生できなくなり、II型糖尿病の進行を示す(Kahnら、Am.J.Med.108巻:2S〜8S頁)、2000年)。
【0022】
II型糖尿病の治療
II型糖尿病に対する従来の治療は非常に限定されており、合併症を最小にする、または遅延させるために血糖値を調節する試みに集中している。現在の治療は、インスリン抵抗性(メトホルミン、チアゾリジンジオン(「TZD」))またはβ細胞からのインスリン放出(スルホニル尿素、エクセナチド)のどちらかを標的としている。スルホニル尿素およびベータ細胞の極性をなくすことにより作用する他の化合物は、循環グルコースレベルとは独立してインスリン分泌を引き起こすので、低血糖の副作用を有する。現在の療法の他の副作用は、体重増加、療法に対する反応性の継時的喪失、胃腸の問題および浮腫を含む。
【0023】
現在承認されている薬剤の1つであるJanuvia(シタグリプチン)はインクレチンホルモンの血中レベルを増加させ、インクレチンホルモンは、インスリンの分泌を増加させ、グルカゴンの分泌を減少させることができ、あまり特徴付けられていない他の効果を有する。しかし、Januviaおよび他のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤もまた、他のホルモンおよびペプチドの組織中レベルに影響を与えることがあり、この広範囲の作用の長期的結果は完全には調査されていない。さらに、この化合物はインスリン抵抗性に関連する問題に対処しない。
【0024】
I型糖尿病と同様に、GLP−1は、インスリン分泌を誘導し、ベータ細胞の増殖を誘導し、グルコース耐性ベータ細胞において耐糖能(glucose tolerance)を回復するその能力のために、II型糖尿病に対する治療薬の可能性が示唆されている。しかし、上述のように、GLP−1およびそれらの類似体は、それらの非常に短い半減期が原因で、それらの治療薬の可能性は非常に限定されている。
【0025】
膵機能に関連する障害の治療もしくは予防もしくは発症もしくは進行の遅延の方法および/または膵機能の改善方法が当分野において必要であることが、前述より明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要旨
本発明までの研究において、本発明者らは、膵機能障害の発生および/または進行における間葉前駆細胞(MPC)の特定のサブセットの効果を決定することを探索した。本発明者らは、ストレプトゾトシン(STZ)をマウスに投与することによって膵機能障害が誘導された、認められたモデルを使用した。この化合物は、最終的に細胞死および膵機能障害をもたらす、膵島の炎症および免疫細胞の浸潤を誘導する。STZは、膵臓の内分泌機能(例えば、インスリン産生の減少)および膵臓の外分泌機能(例えば、アミラーゼ産生の減少)の両方において機能障害を引き起こす。このモデルは、グルコースの代謝障害、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病のモデルとしても認められる。
【0027】
本明細書に例示されるように、本発明者らは、STRO−1+細胞のSTZ処置マウスへの投与は、STRO−1+細胞を与えなかったSTZ処置マウスと比較して、血清中インスリンレベルを増加させ、血糖値を減少させることを実証した。本発明者らは、STRO−1+細胞による、被験体における、膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の誘導もしくは増加ならびに/または膵臓ベータ細胞および/もしくは島の数の増加(例えば、膵臓ベータ細胞の再生を促進する)をさらに実証した。本発明者らは、STRO−1+細胞が、ベータ細胞数の増加および/またはアルファ細胞数の減少によって、膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の比を回復することをさらに見出した。本発明者らは、STRO−1+細胞による処置が、被験体の膵臓において血管形成を誘導することをさらに見出した。これらのデータを合わせると、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから分泌された因子が、膵臓の再生を誘導もしくは促進する、および/または膵機能を改善することを示す。したがって、STRO−1+細胞またはその子孫細胞またはそれらに由来する因子は、膵臓のSTZの毒性作用を治療および/または予防および/または減少することができる。これらのデータは、STRO−1+細胞またはその子孫細胞またはそれらに由来する1種以上の因子は、膵機能障害の治療もしくは予防もしくは発症の遅延もしくは重症度の減少および/または膵機能の改善および/または膵臓またはそれらの細胞の再生の誘導および/またはグルコース代謝の改善(例えば、循環インスリンレベルを増加することによって)が可能であることを示すことになる。
【0028】
本発明者らの発見は、膵機能障害、例えば糖尿病の治療および/または予防および/または発症の遅延および/または進行の遅延のための方法に関する基盤を提供する。
【0029】
したがって、本発明は、それを必要とする被験体において、膵機能を改善する方法を提供し、本方法は、被験体にSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。
【0030】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において(例えば、膵機能障害を患う被験体において)、膵臓の再生を促進または誘導する方法を提供し、前記方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。例えば、この方法は、膵臓において新しいベータ細胞および/または微小血管の産生を誘導または促進する。
【0031】
本発明は、さらにまたは代替として、膵臓ベータ細胞および/または膵島(pancreaticislet)の再生を誘導または促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0032】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、血糖値を減少させる、および/または血中/血清インスリンレベルを増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0033】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞の数を減少させる、および/または膵島の数を増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0034】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体の膵臓において、膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現を増加させる、および/またはPDX−1発現細胞の数を増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0035】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体の膵臓において動脈形成(arteriogenesis)または血管形成(angiogenesis)を誘導または促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0036】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、膵臓ベータ細胞前駆体の数を増加させる、または膵臓ベータ細胞前駆体の増殖を誘導もしくは促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0037】
一例において、被験体は膵機能障害を患っている。
【0038】
一例において、膵機能障害は、膵臓の内分泌機能および/または膵臓の外分泌機能の機能障害に関連する、またはそれによってもたらされる。好ましくは、膵機能障害は、膵機能の低下(例えば、膵臓内分泌機能の低下または膵臓外分泌機能の低下)をもたらす、またはそれに関連する。
【0039】
本発明の一例において、膵機能障害は炭水化物代謝障害に関連する、またはそれを引き起こす。このような炭水化物代謝障害は、膵臓の内分泌機能障害および/または外分泌機能障害が原因で起こりうる。一例において、炭水化物代謝障害は、膵臓によるインスリン産生の減少が原因で起こる。別の例において、炭水化物代謝障害は、グルカゴンレベルの増加が原因で起こる(例えば、アルファ細胞の数の増加ならびに/あるいはグルカゴンの発現および/または産生および/または分泌の増加)。別の例において、炭水化物代謝障害は、膵臓によるアミラーゼ産生の減少が原因で起こる。当業者は、本明細書の記述をもとに、炭水化物代謝障害(または膵機能障害)が、必ずしも、単に膵機能によって特徴付けられるものではないことに気付くであろう。例えば、炭水化物代謝障害は、インスリン抵抗性および/または血管系要素および/または神経系要素によってもまた、特徴付けることができる。本発明の一例において、膵機能障害は糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)である。
【0040】
好ましくは、本発明の方法は、有効量または治療有効量もしくは予防有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。一例において、本方法は、被験体においてインスリン産生を誘導するために十分な、好ましくは少なくとも約1週間または2週間または3週間または4週間の間インスリン産生を誘導するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。
【0041】
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、直接被験体の血流に投与されるが、他の部位の投与も除外されない。好ましくは、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、全身に投与される。例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、大動脈内、心臓の心房内もしくは心室内または膵臓に連結する血管(例えば、腹部大動脈、上腸間膜動脈、膵十二指腸動脈または脾動脈)の中に静脈内投与、動脈内投与される。好ましい例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えばカテーテルを使用して、例えば、大腿動脈内または腹腔動脈内に動脈内投与される。
【0042】
代替的に、または追加で、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、被験体の膵臓またはそれらの一部に投与される。
【0043】
一例において、被験体に投与されるSTRO−1+細胞は、STRO−1briであり、および/または組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現する。特異的細胞表面マーカーまたはそれらの組み合わせによって特徴付けられるSTRO−1+細胞のさらなる集団を本明細書に記載する。この例に従って、子孫細胞および/または可溶性因子は、STRO−1を発現する細胞またはSTRO−1briである細胞および/またはTNAPを発現する細胞に由来し得る。このような子孫細胞は、STRO−1も発現し得る、またはSTRO−1briでもあり得る、および/またはTNAPも発現し得る。
【0044】
膵機能障害の治療または進行の遅延を対象とする本発明の例に従って、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、障害の診断後、例えば当分野において公知の標準的な方法を使用して投与されることが好ましい。膵機能障害の予防または発症の遅延を対象とするそれらの例では、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、障害の臨床診断前に、例えば、被験体が耐糖能障害および/または空腹時高血糖(fasting glycemia)を患ったとき、ならびに/あるいはI型糖尿病の場合、T細胞および/もしくはB細胞集団の増殖によって、および/または自己抗体の産生によって示されるような自己免疫反応(例えば、I型糖尿病の発症または進行において、膵臓β−島細胞に対する細胞障害性T細胞の増殖および/または1種以上の膵臓β−島細胞のマーカーに対する自己抗体の増加)の前に、またはこれと同時に投与される。
【0045】
好ましくは、任意の例に従った、本明細書に記載の方法は、膵機能障害の発症および/もしくは進行および/または血糖値および/または血中/血清中インスリンレベルおよび/またはベータ細胞の数および/またはアルファ細胞の数および/または膵島の数および/またはPDX−1発現細胞の数および/またはPDX−1発現の量および/または血管の数を、モニタリングするステップまたは検出するステップをさらに含む。例えば、本方法は、耐糖能を試験するステップおよび/または空腹時血糖を試験するステップおよび/または膵臓によって産生されるホルモンもしくは酵素のレベルを測定するステップ、および/または膵臓の試料を得て、β細胞の数および/もしくはアルファ細胞の数および/もしくは膵島の数および/もしくはPDX−1発現細胞の数および/もしくはPDX−1発現の量および/もしくは血管の数を決定するステップをさらに含む。このようなモニタリングは、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子のその後の投与が、必要または望ましいことを示すことができる。
【0046】
前の段落により当業者には明らかであろうように、任意の例に従った本明細書に記載の方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の単回投与に限定されると考えられるべきではない。本発明は、同一もしくは異なる部位のどちらかに、または同一もしくは異なる経路のどちらかを介した複数回投与を明確に包含する。本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の単回投与もさらに企図する。
【0047】
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、組成物、例えば、前記STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子ならびに担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される。適切な担体および/または賦形剤は、当業者には明らかとなろう、および/または本明細書に記載されよう。
【0048】
このような組成物は、炭水化物代謝障害の治療または予防に有用な追加の因子、例えば、インスリンもしくはアミラーゼおよび/または正常な膵機能に関連するペプチドもしくはポリペプチド(例えば、コレシストキニンオクタペプチドまたはソマトスタチンまたはグルカゴンまたはトリプシノーゲンまたはキモトリプシノーゲンまたはエラスターゼまたはカルボキシペプチダーゼまたは膵リパーゼ)を含み得る。代替的には、またはさらに、STRO−1+細胞またはその子孫細胞は遺伝子操作により、追加の因子、例えばインスリンもしくはアミラーゼおよび/または正常な膵機能に関連するペプチドもしくはポリペプチド(例えば、コレシストキニンオクタペプチドまたはソマトスタチンまたはグルカゴンまたはトリプシノーゲンまたはキモトリプシノーゲンまたはエラスターゼまたはカルボキシペプチダーゼまたは膵リパーゼ)を、発現および好ましくは分泌させることができる。
【0049】
本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物の、
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/もしくは膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進、
のための使用をさらに提供する。
【0050】
本発明は、医薬の製造における、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の、
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/もしくは膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進、
のための使用をさらに提供する。
【0051】
本発明は、広範囲の動物に適用可能である。例えば、被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたはヒツジなどの哺乳動物であり、好ましくは、被験体はヒトである。一例において、被験体はヒトである。別の例において、被験体は非ヒト哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1はSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける血糖値(BGL)に対するSTRO−1+細胞の効果を表すグラフ表示である。血糖値は、STZ療法後10日目に左心室にSTRO−1+細胞を注射した(CM)、またはビヒクルを注射した(CV)糖尿病マウスにおいて決定した。血糖値は、平均グルコース(mean glucose)(mM)+/−SEである。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図2】図2はSTZ処置10日後のベースラインと比較した、処置後7、14および21日目のSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける血糖値(BGL)に対するSTRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。血糖値は、左心室にビヒクルを注射した(CV)またはSTRO−1+細胞を注射した(CM)糖尿病マウスにおいて決定した。結果は、10日目の細胞療法の開始時に対するBGLの変化の%として表す。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図3】図3は細胞療法投与の21日後のSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおけるインスリンレベルに対するSTRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。血清中マウスインスリンレベルは、左心室にビヒクルを注射した(CV)またはSTRO−1+細胞を注射した(CM)、糖尿病マウスにおいて決定した。マウスインスリン値は、μg/L+/−SEである。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図4A】図4Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵臓の微小血管密度に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗平滑筋アクチン(SMA)により染色された微小血管の合計数を、膵臓切片のサイズ分布/断面積に基づき決定した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図4B】図4BはSTRO−1細胞を用いて処置したマウスの膵臓組織において、様々な直径の、マウス抗平滑筋アクチンIgG2a−FITCにより染色された微小血管を示す顕微鏡写真(200×)のコピーである。
【図5A】図5Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵臓のmRNAのプロファイルに対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。RNAは、ビヒクル群(CV)およびSTRO−1療法群(CM)の膵臓組織から抽出し、逆転写し、ベータ細胞の再生に関連する転写因子、Mafa、Ngn3、Pdx−1に関してPCR増幅した。RNAの合計含有量を、ハウスキーピング遺伝子のベータアクチンを基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8およびSTRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図5B】図5Bは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおけるPDX−1陽性細胞に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗PDX−1により染色された膵臓組織を、島面積のPDX−1陽性細胞/mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図5C】図5Cはマウス抗PDX−1(IgG2b)を用いて染色し、ヤギ抗マウスIgG2b−Alexa555コンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(400×)のコピーである。
【図6A】図6Aは細胞療法の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、島密度に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図6B】図6Bは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、平均島直径に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。
【図6C】図6Cは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、平均島面積に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。
【図7A】図7Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおいて、島の特徴に関する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗インスリンにより染色した膵臓組織を、インスリン陽性細胞/島面積mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図7B】図7Bはモルモット抗インスリンを用いて染色し、抗モルモットIgG−Rhodamineコンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(200×)のコピーである。処置群を、個々の顕微鏡写真の下に示す。
【図7C】図7Cは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗グルカゴンにより染色した膵臓組織を、グルカゴン陽性細胞/島面積mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図7D】図7Dはマウス抗グルカゴンを用いて染色し、ヤギ抗マウスIgG−FITCコンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(200×)のコピーである。処置群を、個々の顕微鏡写真の下に示す。
【図7E】図7Eは合計アルファ+ベータ細胞の割合としての島内ベータ細胞の数を示すグラフ表示である。表示したデータは、インスリン陽性細胞の数/島面積mm2およびグルカゴン陽性細胞の数/島面積mm2から計算した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【発明を実施するための形態】
【0053】
好ましい実施形態の詳細な説明
一般的技術および選択した定義
本明細書を通して、特に明記しない限り、または文脈が求めない限り、1つのステップ、組成物(composition of matter)、ステップの群または組成物の群は、1つおよび複数(すなわち1つ以上)のそれらのステップ、組成物、ステップの群または組成物の群を包含するものとして解釈するべきである。
【0054】
本明細書に記載の個々の実施形態または例は、特に明記されない限り各々およびすべての他の実施形態に必要な変更を加えて適用される。例えば、被験体における膵機能障害の治療および/または予防および/または発症の遅延および/または進行の遅延を対象とする、本明細書に記載の個々の実施形態または例は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、膵機能の改善および/または膵臓再生の誘導または促進のための方法に必要な変更を加えて適用される。
【0055】
膵機能障害の治療に関する本明細書に記載の個々の実施形態は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、炭水化物代謝障害の治療に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0056】
膵機能障害の治療に関する本明細書に記載の個々の実施形態は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、糖尿病、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病の治療に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0057】
当業者は、本明細書に記載の発明は、具体的に明記した以外の変更および改変が可能であることを理解するであろう。本発明がこのような変更および改変のすべてを含むことは理解されるべきである。本発明は、本明細書に言及された、または示されたステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを個別に、または集合的にさらに含み、前記ステップもしくは特徴のありとあらゆる組み合わせまたは任意の2つ以上をさらに含む。
【0058】
本発明の範囲は、本明細書に記載の具体的な実施形態に限定されるものではなく、これらは単なる例示目的を意図している。機能的に同等の生成物、組成物および方法は、本明細書に記載されたように、明確に本発明の範囲内である。
【0059】
本発明は、明記されない限り、分子生物学、微生物学、ウィルス学、組換えDNA技術、溶液中のペプチド合成、固相ペプチド合成および免疫学の従来技術を使用して、過度な実験を行うことなく実施される。このような手順は、例えばSambrook、Fritsch&Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、第2版(1989年)、Vols I、IIおよびDI全体;DNA Cloning:A Practical Approach、Vol.IおよびII(D.N.Glover編、1985年)、IRL Press、Oxford、テキスト全体;Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(M.J.Gait編、1984年)IRL Press、Oxford、テキスト全体および特にその中のGaitによる論文、1〜22頁;Atkinsonら、35〜81頁;Sproatら、83〜115頁;およびWuら、135〜151頁;4.Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1985年)IRL Press、Oxford、テキスト全体;Immobilized Cells and Enzymes:A Practical Approach(1986年)IRL Press、Oxford、テキスト全体;Perbal,B.、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press、Inc.)、シリーズ全体;Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website(Interactiva、Germany)中のJ.F.Ramalho Ortigao、「The Chemistry of Peptide Synthesis」;Sakakibara,D.、Teichman,J.、Lien,E.Land Fenichel,R.L.(1976年).Biochem.Biophys.Res.Commun.73 336〜342頁;Merrifield,R.B.(1963年).J.Am.Chem.Soc.85、2149〜2154頁;Barany,G.およびMerrifield,R.B.(1979年)のThe Peptides(Gross,E.およびMeienhofer,J.編)、vol.2、1〜284頁、Academic Press、New York.12.Wunsch,E.編(1974年)Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie(Muler,E.編)、vol.15、第4版、パート1および2、Thieme、Stuttgart;Bodanszky,M.(1984年)Principles of Peptide Synthesis、Springer-Verlag、Heidelberg;Bodanszky,M.&Bodanszky,A.(1984年)The Practice of Peptide Synthesis、Springer-Verlag、Heidelberg;Bodanszky,M.(1985年)Int.J.Peptide Protein Res.25、449〜474頁;Handbook of Experimental Immunology、Vol.I〜IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986年、Blackwell Scientific Publications);ならびにAnimal Cell Culture:Practical Approach、第3版(John R.W.Masters編、2000年)、ISBN0199637970のテキスト全体に記載されている。
【0060】
本明細書を通して、文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、表記のステップもしくは要素もしくは整数またはステップもしくは要素もしくは整数の群を含むことを意味し、任意の他のステップもしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除することを意味しないと理解される。
【0061】
本明細書において使用する場合、「に由来する」という用語は、特定の完全なもの(integer)は特定の供給源から得ることができるが、必ずしもその供給源から直接ではないことを示すと解釈されるべきである。STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞に由来する可溶性因子に関しては、この用語は1種以上の因子、例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞をin vitroで培養する間に産生されるタンパク質、ペプチド、炭水化物などを意味すると解釈されるべきである。
【0062】
本明細書において使用する場合、「膵機能の改善」という用語は、被験体における1つ以上の膵臓の機能が、本発明に従って治療されたことのない被験体における(好ましくは治療前の上記被験体における)同じ機能と比較して強化されることを意味すると解釈されるべきである。このような用語は、例えば、グルコースの代謝障害を患っている恐れのある、または患っている恐れのない被験体において、インスリン分泌のレベルが増加することまたはインスリン分泌の制御が改善することを包含する。この用語は、例えば、そのホルモンのレベルが増加した被験体において(例えば、グルカゴン分泌腫瘍の結果として)および/または低血糖を患う被験体において、グルカゴンの分泌が減少することをさらに包含する。
【0063】
本明細書において使用する場合、「膵機能障害(pancreatic dysfunction)」という用語は、被験体における1つまたは複数の膵臓の機能が、正常および/または健康な個体における同じ機能と異なる任意の病態を意味すると解釈されるべきである。例えば、「膵機能障害」という用語は、被験体における膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能が、正常および/または健康な個体と比較して強化される、または減少する病態を包含する。例えば、「膵機能障害」は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼまたはアミラーゼのレベルによって特徴付けられる、それらに関連し得る、またはそれらの異常(すなわち増加または減少)によって引き起こされ得る。「膵機能障害を治療する」という用語が、膵機能の正常化(例えば、1つまたは複数の膵機能の異常が、正常な、および/または健康な個体におけるそれらの機能とより近くなるように減少または強化されるような被験体の治療)を包含することは、前述から当業者には明らかであろう。例えば、このような治療は、インスリンおよび/またはベータ細胞および/または島のレベルが異常に減少した被験体において、インスリンレベルの増加および/または膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵島の数の増加をもたらし得る。このような治療は、例えば膵臓のグルカゴン分泌腫瘍の場合、例えば、グルカゴン分泌アルファ細胞の数の減少によって、および/またはグルカゴンの発現、産生および/もしくは分泌の減少によって、異常に増加したグルカゴンレベルを同等に減少させることができる。「膵機能障害の予防または遅延」という用語の意味は、前述に基づいて当業者には明らかであろう。
【0064】
膵機能障害は、例えば膵臓によって産生される消化酵素(例えば、リパーゼもしくはアミラーゼ)のレベルの減少の結果として、および/または膵液の産生の減少によって、栄養(例えば、炭水化物、脂質またはタンパク質)の吸収不良をもたらす病態に関連し得る、またはそれを引き起こす。このような病態には、膵炎、膵機能不全(pancreatic insufficiency)、後天性自己免疫不全症候群(acquired autoimmune deficiency syndrome)、がん、嚢胞性線維症またはゾリンジャー・エリソン症候群が含まれる。好ましい例において、この病態は、膵臓によって産生されるアミラーゼまたはリパーゼの減少が原因で起こる、またはそれに関連する。
【0065】
膵機能障害は、被験体による栄養素の使用または代謝の異常に関連する病態、例えば高血糖もしくは低血糖、血清中アミノ酸レベルの減少、タンパク質尿、壊死融解性移動性紅斑(necrolytic migratory erythema)をもたらす病態にさらに関連し得る、またはその原因であり得る。このような病態は、炭水化物代謝障害、例えば糖尿病を含む。他の病態は、例えば、腫瘍(例えば、高血糖の原因となりうるグルカゴン分泌腫瘍)を含む。例示的腫瘍は、グルカゴノーマを含む。
【0066】
本明細書において使用する場合、「炭水化物代謝障害」という用語は、被験体が、炭水化物の1種または複数種の形態を分解もしくは代謝または摂取もしくは使用できない、あるいは炭水化物の1種または複数種の形態を分解もしくは代謝または摂取もしくは使用する能力が減少した、一般的に、被験体の血流中のその/それらの炭水化物(複数可)のレベルの増加をもたらす任意の障害を意味すると解釈されるべきである。好ましくは、炭水化物代謝障害は、炭水化物の分解に関与するホルモンの膵臓による産生(例えば、アミラーゼの産生)を減少させることに関連する、またはそれが原因で起こる。さらに好ましくは、炭水化物代謝障害は、炭水化物の摂取に関与するホルモンの膵臓による産生(例えば、インスリンの産生)を減少させることに関連する、またはそれが原因で起こる。例示的炭水化物代謝障害には、I型糖尿病、II型糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、早期発症性II型糖尿病(EOD)、若年性非定型糖尿病(YOAD)、若年発症型成人糖尿病(MODY)、栄養障害関連糖尿病、妊娠性糖尿病、耐糖能障害(IGT)の病態、空腹時血糖異常の病態、代謝性アシドーシス、ケトーシス、X症候群、高血糖、低インスリン血症、インスリン抵抗性、アルファマンノース症、ベータマンノース症、フルクトース不耐症、フルコシド蓄積症、ガラクトース血症、リー病、ムコリピドーシス、ムコ多糖症または前述の任意の1つまたは複数の合併症が含まれる。好ましくは、炭水化物代謝障害は、糖尿病、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病である。
【0067】
好ましくは、糖尿病を患う被験体は、
− 7nmol/Lまたは126mg/dl以上の空腹時血糖、
− 糖尿病の症状を伴う、11.1nmol/Lまたは200mg/dl以上の随時血糖(一日の任意の時間に採取)
− 2時間の間隔で測定した、11.1nmol/Lまたは200mg/dl以上の経口耐糖能試験(OGTT)値、OGTTは、2または3時間の時間間隔で得る、
などの臨床的に容認された糖尿病マーカーを有する。
【0068】
本明細書において使用する場合、「有効量」という用語は、投与前のそれらの膵機能と比較して、および/もしくはSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子が投与されない被験体と比較して、STRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子が投与された被験体において膵機能を改善するために十分な量のSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、有効量のSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子は、基礎または安静時のグルコースレベル(血糖(glycemia))の減少、および/または耐糖能の改善、および/または血中インスリンレベルの増加、および/または血清中、もしくは膵臓中もしくは消化系におけるグルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼもしくはアミラーゼのレベルの増加を可能にする。有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えば、膵臓またはその領域の周辺または内部の血管系を増加することによって、膵臓またはその領域への血液供給の増加をさらに可能にする。当業者は、このような量は、例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または特定の被験体および/または膵機能障害の型もしくは重症度に依存して変動するであろうことに気が付くと思われる。したがって、この用語は、特定の量、例えば、細胞もしくは可溶性因子の重量もしくは数に本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は被験体において膵機能を改善するために十分な、任意の量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を包含する。膵機能を検出する方法、および/または膵機能を改善するために十分なSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子の量を決定する方法は、当業者には明らかである、および/または本明細書に記載されている。有効量は、必ずしも膵機能障害を治療または予防する必要はない。
【0069】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の1つまたは複数の症状を、その病態の臨床的診断として観察される、および容認されるレベルより低いレベルに減少させる、または阻害するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、治療有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、糖尿病の被験体において観察されるレベルから、発症前の被験体(例えば、耐糖能障害または安静時血糖の障害)または正常もしくは健康な被験体において観察されるレベルに、被験体において耐糖能を減少できる。
【0070】
本明細書において使用する場合、「予防有効量」という用語は、膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の1つまたは複数の検出可能な症状の発症を予防または阻害するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、予防有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、被験体が糖尿病と臨床的に診断される程度の障害になる被験体において、耐糖能を予防できる。
【0071】
本明細書において使用する場合、「治療(treat)」または「治療(treatment)」または「治療(treating)」という用語は、治療有効量の可溶性因子および/または細胞の投与ならびに膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の少なくとも1つの症状の減少または阻害を意味すると解釈されるべきである。
【0072】
本明細書において使用する場合、「予防(prevent)」または「予防(preventing)」または「予防(prevention)」という用語は、予防有効量の可溶性因子および/または細胞の投与ならびに膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の少なくとも1つの症状の発症の停止または妨害を意味すると解釈されるべきである。
【0073】
「膵機能障害の進行の遅延」は、治療が被験体において膵機能障害の重症度を減少させることを意味する。このような重症度の減少は、例えば、膵機能障害の1つまたは複数の合併症、例えば、栄養の吸収不良、低血糖、高血糖、ケトアシドーシス、網膜障害、白内障、高血圧、腎不全、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、神経障害(例えば、末梢神経障害または自立神経障害)または感染症の危険性の増加などの予防であり得る。代替的には、またはさらに、膵機能障害の重症度の減少は、本発明の方法を使用した治療を受けたことがない被験体と比較した、治療的処置(therapeutic treatment)(例えば、インスリン投与)の必要条件または被験体の治療的処置の規則性の減少を特徴とする。代替的には、またはさらに、「膵機能障害の進行の減少」は、膵機能障害の進行を減少させる化合物を用いた治療を受けたことがない糖尿病被験体と比較した、膵機能障害の1つまたは複数の検出可能な症状の発症における遅延である。
【0074】
本明細書において使用する場合、「可溶性因子」という用語は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞によって産生される、水溶性である任意の分子、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、炭水化物などを意味すると解釈されるべきである。このような可溶性因子は、細胞内にあってもよい、および/または細胞から分泌されていてもよい。このような可溶性因子は、複合混合物(例えば、上清)および/もしくはそれらの分画であってよく、および/または精製された因子であってよい。本発明の一例において、可溶性因子は上清である、または上清に含有される。したがって、1種または複数種の可溶性因子の投与を対象とする本明細書における任意の例は、上清の投与に必要な変更を加えた適用と解釈されるべきである。
【0075】
本明細書において使用する場合、「上清」という用語は、適切な培地、好ましくは液体培地において、間葉前駆細胞および/またはその子孫細胞のin vitro培養後に産生される非細胞性材料を指す。通常、上清は、適切な条件および時間の下で培地において細胞を培養し、その後、例えば遠心分離などの方法によって、細胞性材料を除去することによって作製される。上清は、投与前にさらなる精製ステップに供与されても、されなくてもよい。好ましい例において、上清は、105未満、より好ましくは104未満、より好ましくは103未満の生細胞を含み、さらにより好ましくは生細胞を含まない。
【0076】
本明細書において使用する場合、「正常または健康な個体」という用語は、当分野において公知の任意の方法、および/または本明細書に記載の任意の方法によって評価された膵機能障害を患っていない被験体を意味すると解釈されるべきである。
【0077】
STRO−1+細胞または子孫細胞、それらに由来する上清または1種もしくは複数種の可溶性因子
STRO−1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮および骨膜に見出される細胞であり、生殖細胞系、例えば、中胚葉および/または内胚葉および/または外胚葉に分化できる。
【0078】
一実施形態において、STRO−1+細胞は、限定するものではないが、脂肪、骨、軟骨、弾性、筋肉および線維結合の組織を含む多くの細胞型に分化できる多能性細胞(multipotential cell)である。これらの細胞が進入する特定の分化系列決定(lineage-commitment)および分化経路は、機械的影響および/または内因性生物活性因子、例えば成長因子、サイトカインおよび/または宿主組織により確立される局所的微小環境条件からの様々な影響に依存する。したがってSTRO−1+多能性細胞は、分裂し、時がたてば非可逆的に分化して表現型細胞を得るであろう、幹細胞または前駆細胞のどちらかである娘細胞を得る非造血祖先細胞である。
【0079】
好ましい例において、STRO−1+細胞は、被験体、例えば、治療される被験体または関係する被験体または無関係の被験体(同じ種または異なる種のどちらであっても)から得られた試料から濃縮される。「濃縮された(enriched)」、「濃縮(enrichment)」という用語またはそれらの変形は、1種の特定の細胞型の比率または多数の特定の細胞型の比率が、未処理集団と比較した場合増加している細胞集団を記載するために本明細書において使用する。
【0080】
好ましい例において、本発明において使用される細胞は、TNAP+、VCAM−1+、THY−1+、STRO−2+、CD45+、CD146+、3G5+またはそれらの任意の組み合わせからなる群から個別に、または集合的に選択される1種または複数種のマーカーを発現する。
【0081】
「個別に」は、本発明が、列挙したマーカーまたはマーカーの群を別々に包含することを意味し、個別のマーカーまたはマーカーの群が本明細書に別々に載せることができなくても、添付の特許請求の範囲は、このようなマーカーまたはマーカーの群を、別々に、かつ互いに分割可能に定義できることを意味する。
【0082】
「集合的に」は、本発明が、任意の数の、または組み合わせた列挙したマーカーまたはペプチドの群を包含することを意味し、このような数または組み合わせのマーカーまたはマーカーの群が、本明細書に具体的に載せられなくても、添付の特許請求の範囲がこのような組み合わせまたは従属する組み合わせ(sub-combination)を、別々に、かつ任意の他のマーカーの組み合わせまたはマーカーの群から分割可能に定義できることを意味する。
【0083】
好ましくは、STRO−1+細胞はSTRO−1bright(同義語STRO−1bri)である。好ましくは、STRO−1bright細胞は、さらに、TNAP+、VCAM−1+、THY−1+、STRO−2+および/またはCD146+の1つまたは複数である。
【0084】
一例において、間葉前駆細胞は、WO2004/85630に定義されるように、血管周囲の間葉前駆細胞である。
【0085】
所与のマーカーに対して「陽性」であると称される細胞は、マーカーが細胞表面に存在する程度に依存する、そのマーカーのレベルが低い(loまたはdim)か、または高い(bright、bri)かのどちらかを表し、ここでこの用語は、細胞の分類方法において使用される蛍光または他のマーカーの強度に関係し得る。lo(またはdimもしくはdull)およびbriの区別は、分類される特定の細胞集団に使用するマーカーに関連すると理解されるであろう。所与のマーカーに対して「陰性」と称される細胞は、必ずしも完全にその細胞に不在なわけではない。この用語は、マーカーがその細胞によって相対的に非常に低いレベルで発現されることを意味し、検出可能に標識された場合、マーカーは非常に低いシグナルを発生する、またはバックグラウンドのレベルを超えて検出できないことを意味する。
【0086】
本明細書において使用する場合、「bright」という用語は、検出可能に標識された場合、比較的高いシグナルを発生する細胞表面上のマーカーを指す。理論に縛られることを望むわけではないが、「bright」細胞は、試料中の他の細胞より多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO−1により認識される抗原)を発現することが提唱されている。例えば、FITC−コンジュゲートSTRO−1抗体を用いて標識した場合、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析によって決定して、STRO−1bri細胞は、非bright細胞(STRO−1dull/dim)より多くの蛍光シグナルを発生する。好ましくは、「bright」細胞は、開始試料中に含有される、最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例において、「bright」細胞は、開始試料中に含有される、最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%または少なくとも約2%を構成する。好ましい例において、STRO−1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわちSTRO−1―である細胞に対して2logの大きさ分高い発現のSTRO−1表面発現を有する。比較すると、STRO−1dimおよび/またはSTRO−1intermediate細胞は、2log未満の大きさ分高い、通常約1logまたは「バックグラウンド」より低い発現のSTRO−1表面発現を有する。
【0087】
本明細書において使用する場合、「TNAP」という用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼのすべてのアイソフォームを包含することを意図する。例えば、この用語は、肝臓のアイソフォーム(LAP)、骨のアイソフォーム(BAP)および腎臓のアイソフォーム(KAP)を包含する。好ましい例において、TNAPはBAPである。特に好ましい例において、本明細書において使用する場合、TNAPは、寄託番号PTA−7282で、ブダペスト条約の規定を下に、2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されるSTRO−3抗体に結合できる分子を指す。
【0088】
さらに、好ましい例において、STRO−1+細胞は、クローン原性CFU−Fを生じることができる。
【0089】
かなりの割合のSTRO−1+多能性細胞が、少なくとも2種の異なる生殖細胞系に分化できることが好ましい。多能性細胞が分化決定され得る(committed)系列の非限定例は、骨前駆体細胞、胆管上皮細胞および肝細胞に関して多能である肝細胞の祖先;乏突起膠細胞および星状細胞に進行するグリア細胞前駆体を発生できる神経制限細胞(neural restricted cells);ニューロンに進行する神経前駆体;心筋および心筋細胞の前駆体、グルコース反応性インスリン分泌膵臓ベータ細胞系を含む。他の細胞系は、限定するものではないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞および軟骨細胞ならびに以下の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋細胞および骨格筋細胞、精巣の祖先、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、含脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄基質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、ニューロン、星状細胞および乏突起膠細胞の細胞を含む。
【0090】
別の例において、STRO−1+細胞は、培養において造血細胞を発生できない。
【0091】
一例において、治療されるべき被験体から細胞を採取し、標準的技術を使用してin vitroで培養し、自己移植または同種異系の組成物として被験体に投与するための、上清または可溶性因子または増殖細胞を得るために使用する。代替の例において、確立されたヒト細胞系の1種または複数種の細胞を使用する。本発明の別の有用な例において、非ヒト動物(または患者がヒトでない場合、別の種から)の細胞を使用する。
【0092】
本発明は、in vitro培養により産生されたSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞(後者はさらに増殖細胞とも称される)から得られる、または由来する上清または可溶性因子の使用をさらに企図する。本発明の増殖細胞は、培養条件(培養培地中の刺激因子の数および/または型を含む)、継代数などに依存して広範囲の表現型を有し得る。特定の例において、子孫細胞は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9または約10継代後に、親集団から得る。しかし、子孫細胞は、任意の継代数後に親集団から得てもよい。
【0093】
子孫細胞は、任意の適切な培地における培養によって得ることができる。細胞培養に関して使用する場合、「培地」という用語は、細胞を取り囲む環境の成分を含む。培地は、固体、液体、気体または相および材料の混合物であってよい。培地は、液体成長培地および細胞成長を維持しない液体培地を含む。培地は、寒天、アガロース、ゼラチンおよびコラーゲンマトリックスなどのゼラチン状培地も含む。例示的気体培地は、ペトリ皿または他の固体もしくは半固体支持体上で成長する細胞が晒されている気相を含む。「培地」という用語は、それが細胞に接触していなくても、細胞培養における使用を意図する材料をさらに指す。言い換えれば、細菌培養のために調製された栄養豊富な液体は培地である。水または他の液体と混合した場合に細胞培養に適切となる粉末混合物は、「粉末培地」と呼ぶことができる。
【0094】
例において、本発明の方法に有用な子孫細胞は、STRO−3抗体によって標識された磁気ビーズを使用して骨髄からTNAP−STRO−1+細胞を単離し、その後、単離細胞を培養増殖することによって、得られる(適切な培養条件の例として、Gronthosら、Blood 85:929〜940頁、1995年を参照されたい)。
【0095】
一例において、このような増殖細胞(子孫)(好ましくは、少なくとも5継代後)は、TNAP−、CC9−、HLAクラスI+、HLAクラスII−、CD14−、CD19−、CD3−、CD11a−c−、CD31−、CD86−、CD34−および/またはCD80−であり得る。しかし、様々なマーカーの発現が変動し得る本明細書に記載の培養条件とは異なる培養条件下も可能である。さらに、これらの表現型の細胞は増殖細胞集団において優勢であり得るが、この表現型(複数可)を有さない細胞の小型の集団(例えば、ごくわずかなパーセントの増殖細胞は、CC9−であり得る)が存在することを意味するものではない。好ましい一例において、増殖細胞は、異なる細胞型に分化する能力もまた有する。
【0096】
一例において、上清もしくは可溶性因子または細胞それ自体を得るために使用する増殖細胞集団は、細胞の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%がCC9+である細胞を含む。
【0097】
別の例において、上清もしくは可溶性因子または細胞それ自体を得るために使用する増殖細胞集団は、細胞の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%がSTRO−1+である細胞を含む。
【0098】
さらなる例において、増殖細胞は、LFA−3、THY−1、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、P−セレクチン、L−セレクチン、3G5、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD90、CD29、CD18、CD61、インテグリンベータ6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF−R、EGF−R、IGF1−R、NGF−R、FGF−R、レプチン−R(STRO−2=レプチン−R)、RANKL、STRO−1brightおよびCD146またはこれらのマーカーの任意の組み合わせからなる群から集合的に、または個別に選択される、1種または複数種のマーカーを発現できる。
【0099】
一例において、子孫細胞は、WO2006/032092において多能性拡大STRO−1+多能性細胞の子孫(Multipotential Expanded STRO-1+ Multipotential cell)(MEMP)として定義および/または記載されている。子孫が由来し得るSTRO−1+多能性細胞の豊富な集団を調製するための方法は、WO01/04268およびWO2004/085630に記載されている。in vitro環境において、STRO−1+多能性細胞が絶対的に純粋な調製品として存在することはまれであり、一般的に、組織特異的単分化能細胞(TSCC)である他の細胞と共に存在すると思われる。WO01/04268は、このような細胞を、純度レベル約0.1%から90%で骨髄から回収することを述べている。子孫が由来するMPCを含む集団は、組織供給源から直接回収でき、または代替的に、ex vivoですでに拡大されている集団であってもよい。
【0100】
例えば、子孫は、回収された、拡大されていない、実質的に精製された、それらが存在する集団の合計細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80または95%を含むSTRO−1+多能性細胞の集団から得ることができる。このレベルは、例えば、TNAP、STRO−1bright、3G5+、VCAM−1、THY−1、CD146およびSTRO−2からなる群から、個別に、または集合的に選択される少なくとも1種のマーカーに対して陽性である細胞を選択することによって達成できる。
【0101】
MEMPSは、マーカーのSTRO−1briに対して陽性であり、マーカーのアルカリホスファターゼ(ALP)に対して陰性である点で、採取したばかりのSTRO−1+多能性細胞と識別可能である。対照的に、単離したばかりのSTRO−1+多能性細胞は、STRO−1briおよびALPの両方に対して陽性である。本発明の好ましい例において、投与された細胞の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が、STRO−1bri、ALP−の表現型を有する。さらに好ましい例において、MEMPSは、Ki67、CD44および/またはCD49c/CD29、VLA−3、α3β1の1つまたは複数のマーカーに対して陽性である。この上さらに好ましい例において、MEMPはTERT活性を示さず、および/またはマーカーのCD18に対して陰性である。
【0102】
STRO−1+細胞の出発集団は、WO01/04268またはWO2004/085630に提示される任意の1つまたは複数の組織型、すなわち、骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚に由来することができ、または、さらに広範囲には、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋、に由来することができる。
【0103】
本発明の実施において、任意の所与の細胞表面マーカーを担持する細胞の分離は、多数の異なる方法によってもたらされ得るが、好ましい方法は、結合剤(例えば、抗体またはそれらの抗原結合断片)と関連するマーカーとの結合、それに続く、高レベルの結合または低レベルの結合または結合なしのいずれかである結合を示すものの分離によることは理解されるであろう。最も簡便な結合剤は、抗体または抗体に基づく分子であり、特異性のために、モノクローナル抗体である、またはモノクローナル抗体に基づく分子が好ましい。抗体は、両方のステップに使用できるが、他の薬剤もまた使用でき、したがって、これらのマーカーに対するリガンドを、抗体を担持する細胞または抗体を欠いた細胞を濃縮するためにも使用できる。
【0104】
抗体またはリガンドは、固体支持体と結合して粗分離を可能にする。分離技術は、好ましくは回収される分画の生存力を最大に保有する。有効性の異なる様々な技術を用いて、比較的未精製の分離物を得ることができる。用いる特定の技術は、分離の有効性、付随する細胞障害性、実施の容易さおよび速度ならびに精巧な装置および/または技術能力の必要性に依存するであろう。分離手順は、限定するものではないが、抗体コーティング磁気ビーズを使用した磁気分離、アフィニティクロマトグラフィーおよび固体マトリックスに結合した抗体を用いた「パニング」を含み得る。正確な分離を提供する技術は、限定するものではないが、FACSを含む。FACSを実施する方法は、当業者には明らかであると思われる。
【0105】
本明細書に記載の個々のマーカーに対する抗体は市販されており(例えば、STRO−1に対するモノクローナル抗体は、R&D Systems、USAから購入可能である)、ATCCまたは他の寄託組織から利用可能であり、および/または当分野により認識された技術を使用して作製できる。
【0106】
STRO−1+細胞を単離する方法は、例えば、STRO−1の高レベル発現を認識する例えば磁気活性化細胞分類(MACS)を利用する、固相分類ステップである第1ステップを含むことが好ましい。特許明細書WO01/14268に記載のように、必要に応じて第2分類ステップを次に続けて、高レベルの前駆細胞発現をもたらすことができる。この第2分類ステップは、2種以上のマーカーの使用を含み得る。
【0107】
STRO−1+細胞を得る方法は、公知の技術を使用した第1の濃縮ステップの前に、細胞供給源の回収ステップも含み得る。したがって、組織を外科的に取り出すことになる。供給源組織を含む細胞は、その後、いわゆる単一細胞懸濁液に分離されるであろう。この分離は、物理的方法および/または酵素的方法によって達成され得る。
【0108】
一度適切なSTRO−1+細胞集団が得られたら、任意の適切な方法によって細胞を培養または拡大し、MEMPを得ることができる。
【0109】
一例において、細胞を、治療されるべき被験体から採取し、標準的技術を使用してin vitroで培養し、自己組成物または同種異系組成物として被験体に投与するための、上清または可溶性因子、または増殖細胞を得るために使用する。代替の例において、確立されたヒト細胞系の1種または複数種の細胞を、上清または可溶性因子を得るために使用する。本発明の別の有用な例において、非ヒト動物(または患者がヒトでない場合、別の種から)の細胞を、上清または可溶性因子を得るために使用する。
【0110】
本発明は、限定するものではないが、非ヒト霊長類細胞、有蹄類、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類、鳥類、および魚類の細胞を含む任意の非ヒト動物種由来の細胞を使用して実践できる。本発明を実践できる霊長類細胞は、限定するものではないが、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザルおよび任意の他の新世界ザルまたは旧世界ザルの細胞を含む。本発明を実施できる有蹄類細胞は、限定するものではないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、水牛およびバイソンを含む。本発明を実施できるげっ歯類細胞は、限定するものではないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびアレチネズミの細胞を含む。本発明を実施できるウサギ種の例は、家畜ウサギ、ジャックウサギ、野ウサギ、ワタオウサギ、カンジキウサギおよびナキウサギを含む。ニワトリ(Gallus gallus)は、本発明を実施できる鳥類の例である。
【0111】
本発明の方法に有用な細胞は、使用前、または上清もしくは可溶性因子を得る前に貯蔵できる。真核細胞、特に哺乳動物細胞の保存および貯蔵のための方法およびプロトコルは、当分野において公知である(例えば、Pollard,J.W.およびWalker,J.M.(1997年)Basic Cell Culture Protocols、第2版、Humana Press、Totowa,N.J.;Freshney,R.I.(2000年)Culture of Animal Cells、第4版、Wiley-Liss、Hoboken、N.J.を参照されたい)。単離幹細胞、例えば間葉幹細胞/祖先細胞またはそれらの子孫の生物学的活性を維持する任意の方法は、本発明に関連して利用できる。好ましい一例において、細胞は、凍結保存を使用することによって、維持し、貯蔵される。
【0112】
遺伝子改変細胞
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞は、例えば、目的となるタンパク質、例えば、治療効果および/または予防効果をもたらすタンパク質、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼもしくはアミラーゼまたは血管形成の強化と関係のあるまたはその原因となるポリペプチド、または細胞の膵臓細胞または血管細胞への分化と関連のあるポリペプチドを発現および/または分泌するように遺伝子改変される。
【0113】
細胞の遺伝子改変方法は、当業者には明らかであると思われる。例えば、細胞において発現される核酸を、細胞における発現を誘導するために動作可能にプロモーターに連結する。例えば、核酸を、被験体の様々な細胞において、プロモーター、例えばウィルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV−IEプロモーター)またはSV−40プロモーターと動作可能に連結する。さらに適切なプロモーターは当分野において公知であり、本発明の例に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0114】
好ましくは、核酸は、発現構築体の形態で提供される。本明細書において使用する場合、「発現構築体」という用語は、細胞において動作可能に連結される核酸(例えば、レポーター遺伝子および/または対選択可能なレポーター遺伝子(counter-selectable reporter gene))において発現する能力を有する核酸を指す。本発明に関連して、発現構築体は、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウィルスサブゲノム断片もしくはウィルスゲノム断片または発現可能なフォーマットにおいて異種DNAを維持および/または複製できる他の核酸を含むことができる、またはそれらであることは理解されるべきである。
【0115】
本発明の実践のために適切な発現構築体の構築方法は、当業者には明らかであると思われ、例えば、Ausubelら (Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience、ISBN 047 150338、1987年)またはSambrookら(Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、第3版2001年)に記載されている。例えば、発現構築体の個々の構成要素は、適切な鋳型核酸から、例えばPCR、続いて、適切な発現構築体、例えばプラスミドまたはファージミドなどへのクローニングを使用して増幅される。
【0116】
このような発現構築体に適したベクターは、当分野において公知であり、および/または本明細書に記載した。例えば、哺乳動物細胞における本発明の方法に適切な発現ベクターは、例えば、Invitrogenにより供給されるpcDNAベクタースイート(vector suite)のベクター、pCIベクタースイートのベクター(Promega)、pCMVベクタースイートのベクター(Clontech)、pMベクター(Clontech)、pSIベクター(Promega)、VP16ベクター(Clontech)またはpcDNAベクタースイートのベクター(Invitrogen)のベクターである。
【0117】
当業者は、さらなるベクターおよびこのようなベクターの供給業者、例えば、Invitrogen Corporation、ClontechまたはPromegaを承知しているであろう。
【0118】
単離核酸分子またはそれを含む遺伝子構築体を、発現のために細胞に導入する方法は、当業者には公知である。所与の生物に使用する技術は、公知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入する方法は、マイクロインジェクション、DEAE−デキストランによって仲介されるトランスフェクション、リポソームにより仲介される、例えば、リポフェクタミン(Gibco、MD、USA)および/またはセルフェクチン(Gibco、MD、USA)を使用することによるトランスフェクション、PEGにより仲介されるDNAの取り込み、エレクトロポレーションおよび例えば、とりわけDNAコーティングタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.、WI、USA)を使用することによる微粒子射突法(microparticle bombardment)を含む。
【0119】
代替的には、本発明の発現構築体は、ウィルスベクターである。適切なウィルスベクターは、当分野において公知であり、市販されている。核酸送達およびその核酸の宿主細胞ゲノムへの統合のための、従来のウィルスに基づく系は、例えば、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクターまたはアデノ関連ウィルスベクターを含む。代替的には、アデノウィルスベクターは、エピソーム性のままである核酸を宿主細胞に導入するために有用である。ウィルスベクターは、標的の細胞および組織における遺伝子導入の有効かつ多目的な方法である。加えて、高いトランスダクション効率が、多くの様々な細胞型および標的組織において観察されている。
【0120】
例えば、レトロウィルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列に対するパッキング能力を有するシス作用性の長鎖末端反復(LTR)を、一般的に含む。最小シス作用性LTRは、ベクターの複製およびパッキングに十分であり、その後、発現構築体を標的細胞に統合し、長期発現を提供するために使用される。広範囲に使用されるレトロウィルスベクターは、マウス白血病ウィルス(MuLV)、テナガザル白血病ウィルス(GaLV)、サル免疫不全ウィルス(SrV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)およびそれらの組み合わせに基づくベクターを含む(例えば、Buchscherら、J Virol.56:2731〜2739頁(1992年);Johannら、J.Virol.65:1635〜1640頁(1992年);Sommerfeltら、Virol.76:58〜59頁(1990年);Wilsonら、J.Virol.63:274〜2318頁(1989年);Millerら、J.Virol.65:2220〜2224頁(1991年);PCT/US94/05700;MillerおよびRosman BioTechniques 7:980〜990頁、1989年;Miller,A.D. Human Gene Therapy 7:5〜14頁、1990年;Scarpaら、Virology75:849〜852頁、1991年;Burnsら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:8033〜8037頁、1993年)。
【0121】
様々なアデノ関連ウィルス(AAV)ベクター系も、核酸送達のために開発されている。AAVベクターは、当分野において公知の技術を使用して容易に構築できる。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号;国際公開番号WO92/01070およびWO93/03769;Lebkowskiら、Molec.Cell.Biol.5:3988〜3996頁、1988年;Vincentら、(1990年)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter Current Opinion in Biotechnology 5:533〜539頁、1992年;Muzyczka.Current Topics in MicrobiolおよびImmunol.158:97〜129頁、1992年;Kotin、Human Gene Therapy 5:793〜801頁、1994年;ShellingおよびSmith Gene Therapy 7:165〜169頁、1994年;ならびにZhouら、J Exp.Med.179:1867〜1875頁、1994年を参照されたい。
【0122】
本発明の発現構築体を送達するために有用なさらなるウィルスベクターは、例えば、ワクチニアウィルスおよび鳥ポックスウィルスなどのポックファミリーのウィルスまたはアルファウィルスに由来するウィルスベクターまたはコンジュゲートウィルスベクター(例えば、Fisher-Hochら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 56:317~321頁、1989年に記載されたもの)を含む。
【0123】
細胞および可溶性因子の治療的/予防的可能性のアッセイ
膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行を遅延する、細胞または可溶性因子の能力の決定方法は、当業者に明らかとなろう。
【0124】
例えば、細胞または可溶性因子(例えば、因子の混合物または単一の因子または因子の分画(例えば、アフィニティ精製またはクロマトグラフィーに由来する))を、被験対象、例えば被験動物に、治療効果/予防効果を提供するために十分な時間および条件下で投与し、安静時もしくは基礎もしくは空腹時グルコースレベルを評価した、および/または耐糖能試験を実施した。このような試験は、市販のキットおよび/またはデバイスを使用して実施する。基礎グルコースレベルまたは空腹時グルコースレベルは、絶食後、例えば、約8時間から約14時間後に評価する。耐糖能試験では、被験体を約8から約14時間絶食させ、その後グルコース(例えば、約1.75グラムのグルコース/体重キログラム)を摂取させ、約2〜3時間後に血糖のレベルを評価する。世界保健機関(World Health Organization)によれば、空腹時血漿中グルコースは6.1mmol/l(100mg/dl)より低くなければならない。6.1および7.0mmol/l(100および126mg/dl)の間の空腹時レベルが境界(「空腹時高血糖障害(impaired fasting glycaemia)」)であり、空腹時レベルが繰り返し7.0mmol/l(126mg/dl)以上であると糖尿病と診断される。2時間グルコースレベルは、7.8mmol/l(140mg/dl)より低くなければならない。7.8mmol/l(140mg/dl)および11.1mmol/l(200mg/dl)の間のレベルは、耐糖能障害を示す。2時間で11.1mmol/l(200mg/dl)を超えるグルコースレベルは糖尿病の診断を確実にする。
【0125】
好ましくは、被験対象は膵機能障害を患っている。例えば、被験対象は、非肥満糖尿病(NOD)マウス(I型糖尿病のモデル)またはストレプトゾトシンを投与されたことのあるマウスもしくはラット(I型および/またはII型糖尿病のモデル;Lukicら、Developmental Immunol.6:119〜128頁、1998年およびArulmozhiら、Indian J.Pharmacol.、36:217〜221頁、2004年を参照されたい)、Goto Kakizaki(GK)ラット(II型糖尿病のモデル)、New Zealand Obese(NZO)マウス(II型糖尿病のモデル)である。I型糖尿病および/またはII型糖尿病の他のモデルは、例えば、ReesおよびAlcolado、Diabet.Med.22:359〜70頁、2005年に記載されている。
【0126】
未処置動物または処置前の被験動物と比較して、膵機能障害のこのようなモデルにおいて基礎グルコースレベルを減少させた、および/または耐糖能を改善した細胞および/または可溶性因子は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性が高いと考えられる。
【0127】
代替的に、またはさらに、インスリンレベルを、被験対象の循環において、例えば酵素結合免疫吸着法または蛍光結合免疫吸着法を使用して評価した。被験対象の循環においてインスリンレベルを増加させる細胞および/または可溶性因子は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性があると考えられる。
【0128】
血清中グルカゴンまたはソマトスタチンレベルを決定するキットおよびアッセイは、当分野において公知である、および/または例えば、Immuno−Biological Laboratories,IncまたはMillipore Corporation.から市販されている。
【0129】
代替的に、またはさらに、アミラーゼの血清中レベルを、Caraway、Am.J.Clin.Pathol.、32:97〜99頁、1959年に記載のように比色分析を使用して、またはRinderknechtおよびMarbach、Clin.Chem.Acta.、29:107〜110頁、1972年に記載のように蛍光分析を使用して決定する。血清中アミラーゼレベルを正常レベル(例えば、21〜101U/L)に維持する因子または細胞は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性が高いと考えられる。
【0130】
アミラーゼレベルは、膵臓の切片または例えば、経口十二指腸挿管によって得られる膵液においてもまた決定できる。これらの試料は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼのレベルを測定するための試料も提供する。例えば、Connonら、Digestive Diseases and Sciences、23:472〜475頁、1978年は、膵液中の膵リパーゼレベルを決定するためのアッセイを記載している。
【0131】
前項に記載のアッセイは、任意の例に従った本明細書に記載の治療を受ける被験体の継続的モニタリングにもまた適している。
【0132】
本発明は、膵機能障害の治療のための細胞または可溶性因子を特定または単離する方法をさらに提供することが、前述から当業者には明らかであると思われ、前記方法は、
(i)細胞または可溶性因子を、膵機能障害を患う被験対象に投与し、被験体の膵機能を評価するステップ、
(ii)(i)の被験体の膵機能と、細胞または可溶性因子を投与されたことがない、対照である膵機能障害を患う被験体の膵機能とを比較するステップ、
を含み、
対照である被験体と比較した、被験対象における膵機能の改善は、その細胞または可溶性因子が膵機能障害を治療したことを示す。
【0133】
本発明は、膵機能障害の予防または遅延のための細胞または可溶性因子を特定または単離する方法をも提供し、前記方法は、
(i)細胞または可溶性因子を被験対象に投与し、次いで被験対象において膵機能障害を誘導するステップ、
(ii)(i)の被験体の膵機能と、細胞または可溶性因子を投与されたことがない、対照である膵機能障害を患う被験体の膵機能とを比較するステップ、
を含み、
対照である被験体と比較した、被験対象における膵機能の改善は、細胞または可溶性因子が膵機能障害の発症を予防または遅延することを示す。
【0134】
細胞は、任意の例に従った、本明細書に記載の任意の細胞であってよい。
【0135】
細胞組成物
本発明の一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞は、組成物の形態で投与される。好ましくは、このような組成物は、医薬として許容可能な担体および/または賦形剤を含む。
【0136】
「担体」および「賦形剤」という用語は、貯蔵、投与および/または活性化合物の生物学的活性を容易にするために、当分野において従来から使用される組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mac Publishing Company(1980年)を参照されたい)。担体はさらに、活性化合物の任意の望ましくない副作用を減少できる。適切な担体は、例えば、安定である、例えば、担体中の他の成分と反応できない。一例において、担体は、治療に用いる投与量および濃度においてレシピエントにおいて有意な局所性または全身性の有害作用を生み出さない。
【0137】
本発明に適切な担体は、従来から使用されてきた担体、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、ラクトース、リンゲル溶液、緩衝溶液、ヒアルロン酸およびグリコールを含み、(等張の場合)特に溶液に好ましい液体担体である。適切な医薬担体および賦形剤は、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。
【0138】
別の例において、担体は、例えば、細胞を成長させる、または細胞を懸濁する培地組成物である。好ましくは、このような培地組成物は、投与された被験体において任意の有害作用を誘導しない。
【0139】
好ましい担体および賦形剤は、細胞の生存能力および/または膵機能障害を減少、予防または遅延する細胞の能力に有害な影響を与えない。
【0140】
一例において、担体または賦形剤は緩衝活性を提供し、細胞および/または可溶性因子を適切なpHに維持し、その結果生物学的活性を発揮する、例えば担体または賦形剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。PBSは、細胞および因子との相互作用が最小限であり、細胞および因子の急速な放出を可能にするので、PBSは魅力的な担体または賦形剤を表し、このような場合、本発明の組成物は血流または組織または組織を取り囲む、もしくは組織に隣接する領域に、例えば注射によって直接適用するための液体として作製され得る。
【0141】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞はさらに、レシピエントが適合可能であり、レシピエントに有害でない生成物に分解される足場に組み込む、または包埋することができる。これらの足場は、レシピエント被験体に移植される細胞のための支持体および保護を提供する。天然および/または合成の生分解性の足場は、このような足場の例である。
【0142】
様々な異なる足場が、本発明の実践において良好に使用できる。好ましい足場は、限定するものではないが、生物学的に分解可能な足場である。天然の生分解性の足場は、コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンの足場を含む。細胞移植の足場のために適切な合成材料は、広範囲の細胞成長および細胞機能を支持できなければならない。このような足場は吸収性であってもよい。適切な足場は、例えば、Vacantiら、J.Ped.Surg.23:3〜9頁1988年;Cimaら、Biotechnol.Bioeng.38:145頁 1991年;Vacantiら、Plast.Reconstr.Surg.88:753〜9頁 1991年に記載のようにポリグリコール酸の足場を含み、またはポリ酸無水物、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの合成ポリマーを含む。
【0143】
別の例において、細胞はゲルの足場において投与され得る(Upjohn CompanyによるGelfoamなど)。
【0144】
本発明にとって有用な細胞組成物は、単独または他の細胞との混合物として投与され得る。本発明の組成物と一緒に投与され得る細胞は、限定するものではないが、他の多能性細胞もしくは多分化能細胞または幹細胞あるいは骨髄細胞を含む。異なる型の細胞は、投与直前もしくは短時間前に本発明の組成物と混合でき、またはそれらは投与前に少しの間一緒に共培養できる。
【0145】
好ましくは、この組成物は、有効量または治療有効量もしくは予防有効量の細胞を含む。例えば、この組成物は、約1×105のSTRO−1+細胞/kgから約1×107のSTRO−1+細胞/kgまたは約1×106のSTRO−1+細胞/kgから約5×106のSTRO−1+細胞/kgを含む。投与されるべき細胞の正確な量は、患者の年齢、体重および性別ならびに膵機能障害の程度および重症度を含む、様々な要因に依存する。
【0146】
いくつかの例において、細胞は、被験体の循環内に細胞が出て行くことはできないが、細胞によって分泌された因子が循環内に進入できるチャンバー内に含有される。この手法において、細胞に被験体の循環内に因子を分泌させることによって、可溶性因子が被験体に投与され得る。このようなチャンバーは、被験体内の部位に同様に埋め込み、例えば、膵臓の中または近くに埋め込み、可溶性因子の局所レベルを増加させることができる。
【0147】
本発明のいくつかの例において、細胞組成物を用いた療法の開始前に、患者を免疫抑制することは、必要または望ましいとは言えない。したがって、同種異系またはたとえ異系であっても、STRO−1+細胞またはそれらの子孫の移植は、症例によっては忍容性であり得る。
【0148】
しかし、他の症例において、細胞療法を開始する前に患者を薬理学的に免疫抑制することは望ましい、または適切である場合がある。このことは、全身性または局所性免疫抑制剤の使用を介して達成でき、または細胞をカプセル化デバイス中で送達することによって達成できる。細胞は、細胞および治療因子によって必要とされる栄養および酸素に対しては透過性であるが、細胞は免疫液性因子および細胞に対して不透過性であるカプセル内にカプセル化できる。好ましくは、カプセル化材は低アレルギー性であり、標的組織中に容易にかつ安定に位置し、埋め込まれた構造に追加の保護を提供する。移植細胞に対する免疫応答を減少または除去するための、これらおよび他の方法は、当分野において公知である。代替として、細胞を遺伝子改変し、それらの免疫原性を減少できる。
【0149】
可溶性因子の組成物
本発明の一例において、STRO−1+細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子は、例えば、適切な担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される。好ましくは、担体または賦形剤は、可溶性因子または上清の生物学的作用に有害な影響を与えない。
【0150】
一例において、この組成物は、可溶性因子または上清の成分を安定化する組成物、例えばプロテアーゼ阻害剤を含む。好ましくは、プロテアーゼ阻害剤は、被験体に対して有害作用を有するほどの十分な量は含まれない。
【0151】
STRO−1細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子を含む組成物は、例えば培養培地または安定な担体または緩衝溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水中の、適切な懸濁液として調製され得る。適切な担体は、本明細書内の上に記述している。別の例において、STRO−1+細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子を含む懸濁液は、注射用の油性懸濁液である。適切な親油性の溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油または合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。注射に使用する懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランもまた含有できる。場合によって懸濁液は、適切な安定剤または化合物の溶解度を増加する薬剤をさらに含有し、高度に濃縮された溶液の調製を可能にすることができる。
【0152】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中の必要量の上清または可溶性因子と、上記の成分の1種または組み合わせとを、必要に応じて一緒に組み込み、その後ろ過滅菌することによって調製できる。
【0153】
一般的に、分散液は、上清または可溶性因子を、基礎分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめろ過滅菌された活性成分+任意のさらなる所望の成分の溶液から、それらの粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥である。本発明の代替の態様によれば、上清または可溶性因子は、その溶解度を強化する1種または複数種の追加の化合物と一緒に製剤化できる。
【0154】
他の例示的担体または賦形剤は、例えば、Hardmanら(2001年) GoodmanおよびGilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.;Gennaro(2000年)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、New York、N.Y.;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.に記載されている。
【0155】
治療用組成物は、通常製造および貯蔵条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の秩序構造(ordered structure)として製剤化できる。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合、所望の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましいと思われる。注射組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。さらに、可溶性因子は、徐放性製剤中で、例えば遅効性放出ポリマーを含む組成物中で投与され得る。活性化合物は、即時放出に対して化合物を保護するであろう担体と共に、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤に調製され得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポログリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)が使用できる。このような製剤の多くの調製方法が、特許権を取り、または一般的に当業者に公知である。
【0156】
上清または可溶性因子は、例えば可溶性因子の遅効性放出をもたらす適切なマトリックスを組み合わせて投与され得る。
【0157】
組成物のさらなる成分
STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、他の有益な薬剤または生体分子(成長因子、栄養素)と共に投与され得る。他の薬剤と共に投与される場合、それらは、単一の医薬組成物で、または別々の医薬組成物で、同時に、または他の薬剤と連続して(他の薬剤の投与前または投与後のどちらか)投与され得る。同時投与できる生物活性因子は、抗アポトーシス剤(例えば、EPO、EPOミメティボディ(mimetibody)、TPO、IGF−IおよびIGF−II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症剤(例えば、p38MAPK阻害剤、TGF−ベータ阻害剤、スタチン、IL−6およびIL−1阻害剤、PEMIROLAST、TRANILAST、REMICADE、SIROLIMUSおよびNSAID(非ステロイド系抗炎症剤;例えば、TEPOXALIN、TOLMETIN、SUPROFEN);免疫抑制剤/免疫調節剤(例えば、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス;mTOR阻害剤(例えば、SIROLIMUS、EVEROLIMUS);抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);抗体、例えばモノクローナル抗IL−2Rアルファ受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、ポリクローナル抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3));抗血栓剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤および血小板阻害剤);および抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、コエンザイムQ−10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン)ならびに局所麻酔剤を含む。
【0158】
一例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、膵機能障害の治療または予防のためのさらなる因子を含む。例えば、この組成物は、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、安息香酸誘導体、アルファグルコシダーゼ阻害剤、SGLT2阻害剤およびINGAPペプチド、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤、インスリン感作物質(例えば、PPARアゴニストまたはビグアニド)、インスリン,インスリン模倣体,グルカゴン受容体アンタゴニスト、GLP−I、GLP−I模倣体、GLP−I受容体アゴニスト、;GIP、GIP模倣体、GIP受容体アゴニスト、PACAP、PACAP模倣体、PACAP受容体3アゴニスト;コレステロール降下剤(例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、金属イオン封鎖剤、ニコチニルアルコール、ニコチン酸)、PPARα/γデュアルアゴニストまたは抗肥満化合物を含む。
【0159】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、祖先細胞の膵臓細胞への分化を誘導または強化する因子をさらに含む。例示的因子は、Wnt、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子またはTGFβを含む。
【0160】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、祖先細胞の血管細胞への分化を誘導または強化する因子をさらに含む。例示的因子は、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF;例えばPDGF−BB)およびFGFを含む。
【0161】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、組織特異的単分化能細胞(tissue specific committed cell)(TSCC)をさらに含む。この点において、国際特許出願番号PCT/AU2005/001445は、TSCCおよびSTRO−1+細胞の投与が、TSCCの増殖の強化をもたらし得ることを実証している。一例において、TSCCは膵臓細胞、例えば、β細胞または膵臓細胞、例えばランゲルハンス島の混合物である。このような組成物の被験体への投与は、例えば、ランゲルハンス島のβ細胞の産生増加をもたらし得る。別の例において、TSCCは、血管細胞である。このような組成物の被験体への投与は、例えば、膵臓に送達される栄養の増加をもたらす、例えば膵臓における血管構造の産生増加をもたらし得る。
【0162】
医療デバイス
本発明は、任意の例に従った本明細書に記載の方法に使用するためまたは方法に使用する際の医療デバイスをさらに提供する。例えば、本発明は、注射器またはカテーテルあるいはSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または本発明の組成物を含む他の適切な送達デバイスを提供する。場合によって、注射器またはカテーテルは、任意の例に従った本明細書に記載の方法に使用するための指示書と一緒に包装されている。
【0163】
別の例において、本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または本発明の組成物を含むインプラントを提供する。場合によって、インプラントは、任意の例に従った本明細書に記載の方法で使用するための指示書と一緒に包装されている。適切なインプラントは、例えば、本明細書に上記の足場およびSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を用いて形成できる。
【0164】
投与の様式
STRO−1+細胞に由来する上清もしくは可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、外科的埋め込み、注入、送達(カテーテルまたは注射器を用いて)でき、あるいは修復または増強の必要のある部位、例えば被験体の膵臓または血液系内に直接または間接的に投与することができる。
【0165】
好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、被験体の血流に送達される。例えば、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、非経口的に送達される。非経口投与の例示的経路は、限定するものではないが、腹腔内、心室内、脳室内、髄腔内を含む。好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、大動脈内、心臓の心室または心房内、膵臓に連結する血管内、例えば、腹大動脈、上腸管膜動脈、膵十二指腸動脈または脾動脈に動脈内送達される。別の例において、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、大腿動脈または腹腔動脈に投与される。
【0166】
心室または心房に細胞送達する場合、細胞を左心室または左心房に投与し、細胞が肺に急速に送達されることにより起こりうる合併症を避けることが好ましい。
【0167】
好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、送達部位に、例えば注射器を使用して、またはカテーテルもしくは中心線を介して注入される。
【0168】
治療用製剤の投与計画の選択は、実体(entity)の血清または組織の回転率、症状のレベルおよび実体の免疫原性を含むいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与計画は、副作用の許容可能なレベルと一致する患者に送達される治療化合物の量を最大にする。したがって、送達される製剤の量は、特定の実体および治療される病態の重症度に一部依存する。
【0169】
一例において、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、単回ボーラス投与として送達される。代替的には、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、連続注入によって、または、例えば1日、1週間の間隔で、もしくは1〜7回/週での投与によって投与される。好ましい用量プロトコルは、最大用量または重要な望ましくない副作用を避ける用量頻度に関与するものである。1週間の合計用量は、使用する化合物の型および活性に依存する。適切な用量の決定は、例えば、当分野において治療に影響を与えることが公知もしくは疑わしい、または治療に影響を与えることが予測されるパラメーターまたは因子を使用して、臨床医によってなされる。一般的に、用量は最適用量よりいくらか少ない量で開始し、そこから少量の増分で、任意の陰性の副作用に関して所望のまたは最適な効果が得られるまで増加する。重要な診断基準は、糖尿病の症状の基準を含む。
【0170】
膵機能障害の治療または進行の遅延を対象とする本発明の例に従って、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、当分野において公知の標準的方法および/または本明細書に記載の方法、例えば耐糖能を使用した、障害の診断後に投与されることが好ましい。
【0171】
膵機能障害の予防または発症の遅延を対象とするそれらの例では、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えば、耐糖能障害および/または空腹時高血糖障害を患う被験体の場合、障害の臨床診断前に投与されることが好ましく、ならびに/あるいはI型糖尿病の場合、例えば、T細胞および/またはB細胞の集団の拡大によって、および/または自己抗体(例えば、膵臓β島細胞に対する細胞障害性T細胞および/またはI型糖尿病の発症または進行における、1種または複数種の膵臓β島細胞マーカーに対する自己抗体の増加)の産生によって示される自己免疫反応の前、またはこれと同時に投与されることが好ましい。自己免疫反応の発症を決定または予測する方法は、当業者には明らかである、および/または本明細書に記載してある。例えば、膵臓β細胞に由来するまたは膵臓β細胞の表面に存在する抗原に対する自己抗体の検出は、被験体による前記細胞に対する免疫反応を示す。このような1つのアッセイは、被験体の血清中の島細胞の抗体を検出する。このアッセイは、島細胞を含む膵臓の切片を、被験対象由来の血清と接触させるステップを含む。膵臓β島細胞と結合できる、被験体由来の血清中の免疫グロブリンは、その後、ヒト免疫グロブリンと結合する二次標識抗体を使用して検出される。蛍光マーカーを使用する、島細胞抗体を検出するための適切な方法は、例えば、Bottazzoら、Lancet2:1279〜83頁、1974年に記載されている。代替的には、またはさらに、アッセイは、被験体中の特定の抗原に結合する自己抗体の検出のために使用される。例として、Brookingら(Clin Chim Acta 331:55〜59頁、2003年)は、GAD65に対する自己抗体の検出のための、ELISAに基づくアッセイを記載している。記載されたアッセイは、マイクロタイタープレート上の低濃度のGAD抗原を使用して、試料中の自己抗体を捕捉する。液相中のビオチン化GADを加え、自己抗体の二次結合部位により捕捉し、ビオチン化GAD65による非同位の検出可能なシグナルの発生を検出する。Nagata ら、Ann.New York Acad.Sci 1037:10〜15頁、2004年は、インスリン、IA−2およびGAD65に対する自己抗体の存在を検出するために有用なELISPOTアッセイを記載している。
【0172】
治療/予防をモニタリングするための方法
治療/予防をモニタリングするための方法は、本明細書の記載に基づき、当業者には明らかと思われる。例えば、血糖値および/またはインスリンレベルおよび/またはアミラーゼレベルは、当分野において公知の方法および/または本明細書に記載の方法を使用して評価される。
【0173】
別の例において、膵臓の試料(例えば生検)は処置後に得られ、ベータ細胞(例えば、インスリンを発現する細胞)および/またはアルファ細胞(例えば、グルカゴンを発現する細胞)および/または島および/またはPDX−1発現細胞の数が、例えば、免疫組織化学、免疫蛍光または核酸増幅のアッセイ、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られる(a sample of pancreas (e.g., a biopsy) is obtained following treatment and the number of beta cells (e.g., cells expressing insulin) and/or alpha cells (e.g., cells expressing glucagon) and/or islets and/or PDX-1 expressing cells, e.g., using immunohistochemistry, immunofluorescence or a nucleic acid amplification assay, e.g., polymerase chain reaction (PCR).)。このようなアッセイを本明細書に記載する。
【0174】
本発明を、以下の限定されない実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0175】
実施例1 STRO−1+細胞を用いた糖尿病マウスの処置
1.1 材料および方法
マウスにおけるストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病
7〜8週齢の雄免疫不全NOD/scidマウス(NOD.CB17−Prkdcscid/J;Animal Research Centre、Perth、Australia)に、35mg/kgのβ細胞毒素であるストレプトゾトシン(STZ;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を、4時間の朝の絶食後に1〜4日目の毎日、腹腔内(i.p.)注射した。STZを、クエン酸ナトリウム緩衝液、pH4.5に溶解し、調製15分以内に注射した。マウスは滅菌条件下に維持した。
【0176】
細胞の注入および処置群
バンクに保存されていた骨髄細胞由来の、免疫磁気的(immunomagnetically)に選択されたヒトSTRO−1+間質細胞を、基本的にGronthos および Zannetino(Methods Mol Biol.449:45〜57頁、2008年)に記載のように培養増殖させ、Angioblast Systems、USAより入手した。ProFreeze(商標)−CDM(Lonza、USA)において凍結保存された継代4の、STRO−1+間質細胞を解凍し、2.5×106細胞を、急速注入用に200μlのビヒクル/マウスにおいて構築した。STZ処置後10日目、NOD/scidマウスに、麻酔をかけたマウスの胸壁を介して左心室に(動脈経路)単回投与で注射した。対照マウスには、動脈経路または静脈経路を介して200μlのビヒクル(7.5%DMSOおよびアルファMEMを含有するProFreeze(商標)−CDM)を注射した。
【0177】
血糖およびインスリンに関するアッセイ
4時間の朝の絶食後にグルコメーター(glucometer)(Optimum Xceed(商標) Diabetes Monitoring System; Abbott Diagnostics、Victoria、Australia)を用いて尾静脈血において血糖をアッセイした。血中インスリンは、32日目にマウスを死亡させる前に、麻酔をかけたマウスの心臓内穿刺によって得た血液に関して、マウス特異的ELISAキット(Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA Mercodia、Uppsala、Sweden)を使用してアッセイした。
【0178】
組織試料の調製
動物を、頸椎脱臼により安楽死させ、膵臓を取り出し、対称的に切り出し、半分を10%中性ホルマリン中で固定し、他をTissue−Tek OCT Compound(Sakura Finetek、Torrance、CA)に包埋し、ドライアイス上で凍結し、−70℃において貯蔵した。膵臓は本試験において分析の大部分に特に使用したが他の組織、例えば肺、肝臓、心臓、脾臓、胃、腸/盲腸、膀胱、精巣および脳は、組織病理学のために回収した。
【0179】
膵臓組織の組織構造および免疫蛍光染色
膵臓の組織構造のために、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて染色した。顕微鏡用スライドグラスにのせたFFPE組織切片(5μm)を、脱パラフィンし、圧力なべでクエン酸緩衝液中で加熱することによって抗原検索に供した。抗原検索後、切片を10%正常ヤギ血清を用いて2時間ブロックし、あらかじめ試験し、抗原検索した組織においてマウス特異的分子を検出することが実証されている以下の抗体:モルモット抗インスリン(1:100;Millipore、USA)、マウス抗グルカゴン(10μg/ml;クローンK79bB10;AbCAM)、マウス抗PDX−1(10μg/ml;クローン267712;R&D Systems)を使用して、免疫蛍光検出のために使用した。2時間の一次抗体インキュベーション後、スライドを、0.1%正常ヤギ血清/PBSを用いて5分間、3回洗浄し、種特異的二次抗体(1:400;ヤギ抗マウスAlexa Fluor555;Molecular Probeまたはヤギ抗モルモットローダミン;Jackson Laboratoriesまたはヤギ抗マウスIgG1−FITC;AbCAM)と一緒に、室温においてさらに90分間インキュベートした。対照は、一次抗体を省いて含んだ。膵臓組織中の平滑筋アクチン(SMA)の染色を、マウス抗SMA−FITCmAb(2mg/ml;クローン1A4;AbCAM)を使用して、直接免疫蛍光により実施した。
【0180】
免疫染色の評価
スライドを、Zeiss Observer Z1顕微鏡(Germany)により視察し、画像を、AxioCam MRmを使用して撮影した。H&Eまたはインスリン、グルカゴン、PDX−1およびSMAに対する抗体を用いて染色し、蛍光プローブを用いて検出した膵臓切片の撮影した画像を、Axio Vision Rel 4.7ソフトウェアを用いて分析した。個々の実験動物由来の、それぞれ5mmのH&E切片を使用して、島の合計数を数え、島のサイズを分析し(面積および直径の測定)、画像分析により測定した、それぞれの合計断面積に対して正規化した。加えて、抗インスリン、グルカゴンまたはPDX−1抗体を用いて染色した、それぞれ抗原検索した5μmのFFPE切片の、陽性に染色された細胞の合計数を数え、それぞれ測定した合計断面積または合計島面積に対して正規化した。様々な直径の膵臓微小血管の分布を数え、画像分析により測定し、試験したそれらのそれぞれの断面積に対して正規化した。すべての画像を、対象倍率20〜40×で分析した。
【0181】
半定量的RT−PCRによるRNA分析
実験群の膵臓由来のRNA試料を、個々の凍結組織由来の合計100mmの切片からTrizol試薬中で抽出した。Trizol組織抽出物を、illustra RNAspin Mini RNA Isolation Kit(GE Healthcare、UK)を使用してRNAに関して精製した。全RNAを、分光光度的に定量化し、1μgを、oligo−dT(pdT12−18)およびMMLV逆転写酵素を用いて逆転写した。MafA、Ngn3およびPdx−1に関するネズミ遺伝子に対するプライマーを使用して、表1に明記した増幅条件下でTth Plus DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science)を使用してcDNA試料をPCR増幅した。ベータアクチン遺伝子を使用して、標的遺伝子発現を正規化した。PCR産物を、UV照明下で可視化したバンドの濃度分析により、Kodak ID3.5ソフトウェアを使用して定量化した。
【0182】
【表1】
【0183】
統計分析
P値のためにスチューデントT検定を使用した。
【0184】
1.2 結果
NOD/scidマウスにおけるストレプトゾトシン誘導性高血糖
NOD/scidマウスにおいて、4日間の1日1回のSTZ35mg/kg/日の腹腔内注射により、高血糖を誘導した。試験1日目に、すなわち1回目のSTZ注射の前に、全群の動物(N=80)に関する平均空腹時血糖値(BGL)は、7mM+/−1.5標準偏差(SD)であった。試験10日目(すなわち、STZクールの完了後5日目)に、動物が、未処理マウスにおける平均グルコースレベルより3SDを超えて大きいBGLを有した場合、動物は高血糖を発症したと思われる。この基準に従って、高血糖を得なかったマウスを、その後すべての分析から除外した。10日目に、高血糖の上記の基準を満たしたマウスは29匹であった。これらのマウスにおいて、10日目の平均BGLは、15.2mM+/−0.6であり、ベースラインより217%増加していた。
【0185】
糖尿病NOD/scidマウスにおける、STRO−1+間質細胞の動脈内注射の血糖値に対する効果
図1に示すように、動脈内経路により高血糖マウスに注射された、単回用量の2.5×106のSTRO−1+細胞は、細胞療法後3週間のクールの間ずっとBGLの減少をもたらした。
【0186】
図1は、ビヒクル単独の動脈内注射と比較して、STRO−1+細胞の単回動脈内注射が糖尿病マウスにおいてBGLの早期減少を誘導したことを示す。BGLの減少は、17日目ほどの早期で明らかであり、24日目において最大であり(平均35%の減少、平均BGLは12.7mM+/−1.2対19.6mM+/−2.1;p=0.012)、3週間の追跡期間の間ずっと持続した。
【0187】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、ベースラインに対して早期かつ持続性の血糖値の減少をもたらす
STRO−1+細胞の単回動脈内注射を受けたSTZ処置マウスは、全3週間の追跡期間の間ずっと、10日目のベースラインのレベルに対して、平均BGLの持続性減少を実証した。図2に示すように、動物のこの群は全試験期間を通してずっと、療法前のレベルを下回る平均BGLを有したが、培地処置対照は、進行性のBGLレベルの増加を実証した。STZ処置後10日目にSTRO−1+細胞の動脈内注射を受けた群は、それぞれ7、14および21日目のベースラインBGLに対して、−11%、−14%および−4%の平均BGL減少を実証した。対照的に、動脈内に培地単独を受けた対照群は、それぞれ7、14および21日目のベースラインBGLに対して+8%、+20%および+17%の平均BGLの増加を実証した。
【0188】
糖尿病NOD/scidマウスにおいて、ヒトSTRO−1+細胞の単回動脈内注射は、3週間後に、マウスインスリンの循環レベルの有意な増加をもたらす
図3に示すように、マウス特異的インスリンELISAにより、処置後21日目に測定した循環血清中インスリンレベルは、STRO−1+細胞を、3週間前に動脈内注射された糖尿病マウスが、ビヒクル処置糖尿病マウスと比較して有意に高い循環内因性インスリンレベルを有したことを実証した(0.79mg/L+/−0.11対0.57mg/L+/−0.02;p=0.009)。
【0189】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、膵臓の微小血管密度の増加をもたらす
膵臓組織を、平滑筋アクチンタンパク質に対する直接コンジュゲートモノクローナル抗体(mAb)を用いて染色し、STRO−1+細胞療法が損傷した膵臓において動脈形成(arteriogenesis)を誘導するかどうかを決定した。免疫染色後、全切片をスキャンし、微小血管の合計数を数え、合計断面積に対して正規化した。血管数を数え、<20μm、20〜100μmおよび>100μmの3種の異なる血管径に、サイズに基づき分類した。図4は、STRO−1+細胞療法群において、直径<20μmの平滑筋アクチン陽性微小血管の数が、ビヒクル群と比較して176%増加した(299.8+/−52対169.1+/−18.5;p=0.01)ことを示す。したがって、STRO−1+細胞を用いた療法は、損傷した膵臓内で内径の小さい細動脈の反応を誘導する。
【0190】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、PDX−1転写因子の膵臓における発現の増大をもたらす
ヒトSTRO−1+細胞療法が、糖尿病NOD/scidマウスの内因性ベータ細胞において再生反応を誘導できるかどうかを評価するために、膵臓の発生およびベータ細胞の産生に関連する、PDX−1、MafAおよびNgn3転写因子のmRNAの発現レベルを試験した(Zhouら、Nature 455:627〜632頁、2008年)。図5Aに示すように、STRO−1+細胞療法群において、転写因子PDX−1に関する平均膵臓mRNAレベルが、ビヒクル群と比較して2.5倍増加した(p=0.01)。転写因子MafAおよびNgn3に関する膵臓mRNAレベルも増加が認められたが、有意には達しなかった。
【0191】
PDX転写因子のタンパク質レベルの増加が、STRO−1+細胞療法に曝露された膵島により発現されたことを確認するために、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置された糖尿病NOD/scidマウスおよび動脈内STRO−1+細胞を用いて処置された糖尿病NOD/scidマウスに由来する島切片を、抗PDX−1 mAbを用いて、免疫組織化学的に試験した。図5Bに示すように、ストレプトゾトシン処置は、PDX−1タンパク質陽性であった島細胞の平均数に、健康な非糖尿病マウスと比較して59%の減少をもたらした(37.1+/−12平均陽性細胞/島対15.1+/−4.8平均陽性細胞/島、p=0.03)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射は、PDX−1タンパク質陽性である島細胞の数を平均で71%増加させ(25.7+/−2.2平均陽性細胞/島、p=0.049)、非糖尿病動物と比較してPDX−1タンパク質陽性細胞の平均減少はわずか31%となった(p=NS)。図5Cの蛍光顕微鏡写真は、非糖尿病であった代表的NOD/scid動物由来の膵島か、または糖尿病であり、STRO−1+細胞を用いて処置された代表的NOD/scid動物由来の膵島のいずれもが、同様の数のPDX−1陽性細胞を実証したことを示す。対照的に、糖尿病であり、対照培地を与えられた代表的NOD/scid動物由来の膵島は、PDX−1タンパク質陽性である細胞の数の有意な減少を実証している。
【0192】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、膵島数の増加をもたらす
STRO−1+細胞を用いた処置の全膵島数に対する効果をさらに評価した。図6Aに示すように、3週間前にSTRO−1+細胞の単回動脈内注射を受けた動物は、犠牲にした時点で培地単独を注射された対照と比較して膵島数が2倍を超えて多かった(0.78+/−0.07対0.38+/−0.07島/mm2、p=0.0012)ことを実証した。合計島数の増加の他に、処置群、図6Bおよび6Cの間に、平均島直径または島面積において有意な変化は認められなかった。
【0193】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、内因性ベータ細胞数の増加、アルファ細胞の減少および島内の正常なベータ/アルファ細胞比の再確立をもたらす
抗マウスインスリンmAb染色を使用して、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞を用いて動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウスの膵臓切片中の島内のベータ細胞数を定量化した。図7Aに示すように、ストレプトゾトシン処置により、健康な非糖尿病マウスと比較して島内のベータ細胞数が21%減少した(6726+/−450/mm2島面積対5289+/−387/mm2、p=0.04)。対照を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射はベータ細胞数を平均8%増加させ(5709+/−690/mm2)、非糖尿病動物と比較してベータ細胞の平均減少はわずか15%となった(p=NS)。図Bの蛍光顕微鏡写真において、代表的非糖尿病対照動物の島内ベータ細胞は、島の中心領域に典型的に密集して固まったインスリン陽性蛍光細胞の局在化を実証している。しかし、代表的STZ処置マウスにおいて、ベータ細胞は豊富とは言えず、島内で分離したパターンを表す。STRO−1+細胞を用いて処置した代表的マウスのベータ細胞は、より豊富で分離の少ない、中間パターンの蛍光を実証している。
【0194】
抗グルカゴンmAb染色を使用して、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞を用いて動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウスの膵臓切片中の島内のアルファ細胞数を定量化した。図7Cに示すように、ストレプトゾトシン処置により、健康な非糖尿病マウスと比較して島内のアルファ細胞数が470%増加した(1046+/−46/mm2島面積対4954+/−632/mm2、p=0.003)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射はアルファ細胞数を平均44%減少させ(2764+/−274/mm2、p=0.008)、非糖尿病動物と比較してアルファ細胞の平均増加はわずか164%となった(p=0.002)。図7Dの蛍光顕微鏡写真において、代表的非糖尿病対照動物の正常な島内アルファ細胞は、整然と円周方向に配置されたグルカゴン染色細胞として特定できる。しかし、代表的STZ処置マウスにおいて、アルファ細胞はより豊富であり、島内の至るところで拡散パターンを表している。STRO−1+細胞を用いて処置した代表的マウスの島内のアルファ細胞は、より蛍光が周辺にあるパターンを実証し、島の中心にはあまり豊富ではない。
【0195】
図7Eは、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞で動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウス由来の膵臓切片の島内のアルファ細胞に対するベータ細胞の割合を表す。ストレプトゾトシン処置は、健康な非糖尿病マウスと比較した島内のアルファおよびベータ細胞の合計に対するベータ細胞数のパーセントにおいて、40%の減少をもたらした、(86+/−0.9%対52+/−2.6%、p=0.00002)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射は、アルファ細胞に対するベータ細胞の割合を平均29%増加させた(52+/−2.6%対67+/−3.9%、p=0.005)。したがって、ストレプトゾトシンによって糖尿病がもたらされたNOD/scidマウスのSTRO−1+細胞処置は、膵島内のアルファ細胞に対するベータ細胞のより正常な比率の再確立をもたらした。
【0196】
考察
本試験は、ストレプトゾトシンにより糖尿病としたNOD/scidマウスにおいて、ヒトSTRO−1+細胞の単回投与が、ベータ細胞の持続性再生および高血糖の逆行を誘導するために有効であったことの初めての証拠を提供する。糖尿病のストレプトゾトシン(STZ)誘導性実験モデルは、PDX−1遺伝子のノックダウン後に見られる糖尿病表現型と同様の糖尿病表現型をもたらし、インスリン産生ベータ細胞数が減少し、グルカゴン産生アルファ細胞が増加し、GLUT2 mRNAおよびタンパク質の発現が減少した(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年;およびWangら、Diabetes 47:50〜6頁、1998年)。STRO−1+細胞の単回投与は、持続性PDX−1の活性化、内因性ベータ細胞数の増加、グルカゴン発現アルファ細胞の減少およびインスリン産生の強化をもたらした。
【0197】
STRO−1+細胞の単回投与後のSTZ処置NOD/scid糖尿病マウスにおける、PDX−1発現の持続性誘導および膵臓のベータ細胞およびアルファ細胞の間の恒常性の再確立は、同じネズミモデルにおける、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の長期過剰発現を誘導するための遺伝子療法の投与後に報告された特徴と著しく類似する(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年)。GLP−1は、膵臓に遊走する腸由来のペプチドであり、PDX−1およびGLUT2を活性化し、インスリン分泌の増加をもたらす。その発見は、ベータ細胞におけるGLP−1活性の増加をもたらす2種の新しいクラスの薬剤:(a)長期作用性受容体アゴニストであるか、またはGLP−1の天然のアンタゴニストであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)による分解に対して抵抗性であるかのどちらかであるGLP−1類似体、および(2)内因性GLP−1活性の増加をもたらす経口活性DPPIVアンタゴニストの開発をもたらした。
【0198】
しかし、これらの薬剤の臨床使用は、軽症のII型糖尿病の治療に限られている。それらの比較的短い半減期、頻繁な投与の必要性および重症のベータ細胞の損失の場合に効力が比較的弱いことにより、I型糖尿病または他のインスリン依存患者に対するインスリン保持薬としての、それらの使用は除外される。実際、DPPIVアンタゴニストは、内因性GLP−1レベルの増加にもかかわらず、STZ処置マウスにおいて確立された糖尿病を逆行できず(Kimら、Diabetes 50:1562〜1570頁、2001年)、低用量STZと同時の持続投与および部分的ベータ細胞の損失の状況で、高血糖の改善だけが可能である(Muら、Diabetes 55:1695〜1704頁、2006年)。同様に、GLP−1アゴニストは、STZの前、またはSTZと同時に与えられた場合だけ有効であり、持続投与が求められる(Tourrellら、Diabetes 50:1562〜1570頁、2001年;Liら、J Biol Chem 278:471〜478頁、2003年;Gezginci-OktayogluおよびBolkent、Biochem Cell Biol 87:641〜651頁、2009年)。総合して、これらのデータは、DPPIV阻害剤およびGLP−1類似体が、有意なベータ細胞集団がまた存在する場合、ベータ細胞の再生を容易にするためにだけ有効であることを示唆している。
【0199】
対照的に、本試験は、STRO−1+細胞の単回注射でさえ、ベータ細胞集団がほとんど存在していない場合でも、持続性のベータ細胞の再生を誘導できることを示唆している。このことは、高用量のSTZのクールの完了5日後、完全にベータ細胞を損失したモデルに投与した場合、確立された高血糖を逆行させる細胞の能力により証拠づけられる。同様の結果は、遺伝子療法を使用する、GLP−1の持続性の過剰発現によってのみ達成できる(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年)。STRO−1+療法の長続きする有力な効果は、この型の細胞療法が、インスリン依存性糖尿病において、DPPIV阻害剤またはGLP−1類似体にはできない、持続性のグルコース調節およびインスリン保持効果を提供できることを示している。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、それを必要とする被験体において膵機能を改善する方法に関する。本方法は、膵機能障害によりもたらされる、または膵機能障害と関連する障害、例えば、膵臓の内分泌機能または外分泌機能の異常によりもたらされる障害の治療および/または予防および/または発症もしくは進行の遅延のために使用できる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膵臓は、脊椎動物の消化器系および内分泌系における多機能性腺器官である。膵臓は、内分泌腺(インスリン、グルカゴンおよびソマトスタチンを含むいくつかのホルモンを産生する)および外分泌腺(小腸を通る消化酵素を含有する膵液を分泌する)の両方である。膵液中の酵素は、糜粥中で炭水化物、タンパク質および脂肪のさらなる分解において役に立つ。
【0003】
内分泌機能を有する膵臓部分は、ランゲルハンス島と呼ばれる多数の細胞クラスターから構成されている。この島には分泌により分類される4種の主要な細胞型がある。α細胞はグルカゴンを分泌し、β細胞はインスリンを分泌し、δ細胞はソマトスタチンを分泌し、PP細胞は膵臓ポリペプチドを分泌する。この島は、クラスターおよびコードに配置された内分泌細胞の密な集合体であり、毛細血管のネットワークもさらに含有する。この島の毛細血管に対しては、血管に直接接触する内分泌細胞の層が並んでおり、大部分の内分泌細胞は、細胞質突起または直接並置のどちらかにより、直接血管に接触している。
【0004】
血液中にホルモンを分泌する膵臓内分泌腺とは対照的に、膵臓外分泌腺は、消化酵素(例えば、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼおよびアミラーゼ)およびアルカリ性液を産生し、小腸のホルモンであるセクレチンおよびコレシストキニンに反応して、外分泌管系を介してこれらを小腸に分泌する。消化酵素は、膵臓外分泌腺の腺房細胞により産生され、分泌される。腺房中心細胞(centroacinar cell)と呼ばれる膵管と並んでいる特殊な細胞は、重炭酸塩および塩分に富んだ溶液を、小腸に分泌する。
【0005】
膵機能障害は、膵臓によって産生されるホルモンおよび/または酵素の産生過剰または産生不足をもたらし得る。膵機能障害に関連する、または膵機能障害により引き起こされる病態は、糖尿病(diabetes mellitus)、急性もしくは慢性の膵炎、膵臓の酵素欠乏症または膵腫瘍を含む。
【0006】
糖尿病(DM)は、すべての年齢群および集団にわたって、最も一般的な慢性の内分泌障害の1つであり、膵機能障害が原因で起こる。DMは、世界中で1億人を超える人々が患っている。米国だけでも、1200万人を超える被験体がDMであると診断され、毎年600,000例の新規の症例が診断されている。
【0007】
DMは、血糖の上昇をもたらす、炭水化物(例えばグルコース)の恒常性または代謝の異常を特徴とする障害群に対する診断用語である。これらの障害は、いくつかの相関のある代謝、血管および神経障害性の構成要素を含む。DMの様々な要素は、膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能が原因で起こる。例えば、一般的に高血糖を特徴とする代謝要素は、ホルモン、特にインスリン(すなわち内分泌機能)分泌の不在または著しい減少が原因で起こる、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝の変化、および/またはインスリン作用の無効を含む。外分泌レベルにおいて、膵臓は、食物の消化に関与する様々な酵素を産生する。例えば、膵臓はアミラーゼを産生し、DMにおいて、炭水化物を消化するために十分なレベルのこの酵素を分泌できず、膵臓の外分泌腺の機能不全、栄養失調および体重減少をもたらす恐れがある。したがって、膵臓の内分泌機能および外分泌機能の両方がDMの代謝要素に寄与している。DMの血管要素は、心血管、網膜および腎臓の合併症をもたらす血管の異常を含む。末梢系および自律神経系の異常もまた、DMの要素である。
【0008】
DMは、一般的に、インスリンの量または循環の減少、および/または被験体におけるインスリンに対する細胞の反応性の減少が原因で起こる。インスリンは、炭水化物、脂肪およびタンパク質の代謝において必須である。インスリンは、筋肉細胞および脂肪細胞にグルコースを進入させることによって、および炭水化物貯蔵としての、グルコースのグリコーゲンへの転換(グリコーゲン生成)を刺激することによって、血糖値を低下させる。インスリンはさらに、肝臓グリコーゲンからの貯蔵グルコースの放出(グリコーゲン分解)を阻害し、脂肪のトリグリセリド、遊離の脂肪酸およびケトンへの分解を遅延させる。加えて、インスリンは、グルコース産生のためのタンパク質の分解(グルコース新生)を遅延させる。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島において、β細胞によって産生され、分泌される。
【0009】
糖尿病には、I型(インスリン依存性糖尿病またはIDDMとも称される)およびII型(非インスリン依存性糖尿病またはNIDDMとも称される)、妊娠糖尿病および糖尿病前症(またはグルコース代謝障害)を含むいくつかの型がある。これらのうち、糖尿病の最も一般的な2つの形態がI型およびII型糖尿病である。I型糖尿病(またはインスリン依存性糖尿病;IDDM)は、インスリンの完全な欠乏をもたらす、膵臓β細胞の不在、破壊または喪失が原因で起こる。II型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病;NIDDM)は、インスリン抵抗性を特徴とする異質な障害である。
【0010】
I型糖尿病
I型糖尿病の全発生率は、USだけでおよそ15例/100,000個体である。USにおいて、糖尿病の全症例のおよそ5から15パーセントがI型糖尿病であり、医師により、毎年約10,000の新規の症例が診断される。国際的にはI型糖尿病の発生率は、中国における約0.61症例/100,000個体から、サルジニアにおける約34.5症例/100,000およびフィンランドにおける40超症例/100,000と様々である。多くの国により、I型糖尿病の発生率がこの20年の間に2倍になっていることがさらに報告されている。
【0011】
I型糖尿病の急性臨床的発症は、高血糖、多尿、多渇、体重減少または視力障害などの単独または組み合わせた症状、それに続く数日または数週間後のケトアシドーシスを特徴とする。一般的に、疾患の急性の発症には、長い無症候性の発症前の期間が先行し、その間に、インスリン分泌β細胞は被験体の免疫系によって徐々に破壊されると考えられている。
【0012】
健康な個体において、膵臓は通常100万から150万の島(islet)を含み、島細胞のおよそ80パーセントがインスリン産生β細胞である。臨床的糖尿病の症状は、それらのβ細胞の10パーセント未満しか残存しないときに現れる。
【0013】
インスリンの供給と需要との間の不釣り合いは、膵臓β細胞の喪失が原因で起こり、グルコース、脂質およびタンパク質の代謝の異常をもたらす。インスリンの欠乏は、高血糖および高血糖性脱水症状、遊離脂肪酸レベルの上昇、血清中ケトンレベルの上昇、トリグリセリドレベルの増加、超低密度リポタンパク質(VLDL)レベルの増加、分枝鎖アミノ酸レベルの増加、タンパク質合成の減少ならびにケトアシドーシスをもたらし得る。I型糖尿病を有する被験体は、任意の1種または複数種の様々な血管系および神経系の合併症を患う可能性が高い。例えば、I型糖尿病の患者は、心臓発作を有する可能性が糖尿病でない患者より2倍高く、壊疽を患う可能性が5倍高く、完全な腎不全を有する可能性が17倍高く、視覚を失う可能性が25倍高い。
【0014】
I型糖尿病の治療/予防
現在、I型糖尿病は、外因性インスリンの投与、運動および食事管理によって治療される。これらの治療形態は、膵臓の損傷を直さない(すなわち、破壊されたβ−島細胞を補充しない)が、β島細胞によって産生される成長因子を補充する、またはこれらの因子の必要性の回避が試みられる。
【0015】
I型糖尿病を患う被験体の大部分は、何らかの形態のインスリン療法を必要とする。現時点において、このような療法は一般的に、血糖値および/またはインスリンレベルをモニターすること、および必要に応じて、組換えインスリンまたは精製インスリンを注射することを被験体に要求する。経鼻または経口投与可能なインスリンの新しい形態も、開発されている。しかし、この形態の療法は、被験体による継続モニタリングおよび被験体の一生の間、少なくとも1日1回のインスリン投与を必要とする。被験体がインスリン投与を怠る、またはインスリンを過剰に投与すると、例えば、高血糖、低血糖またはケトアシドーシスの発症の危険性があるであろう。
【0016】
I型糖尿病の治療に現在使用されるその他の化合物には、例えば、スルホニル尿素、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤またはチアゾリジンジオンが含まれる。しかし、これらの化合物もそれぞれ、重大な欠点を有する。例えば、スルホニル尿素は低血糖および高インスリン血症を引き起こし、ビグアニドは乳酸アシドーシスを引き起こし、α−グルコシダーゼ阻害剤は胃腸の副作用を引き起こし、チアゾリジンジオンは作用の発現が遅く、体重増加を伴い、頻繁な肝機能試験を必要とする。
【0017】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)も、糖尿病用の治療薬候補として特定されている。このペプチドは、膵臓の発生、β細胞の分化およびβ細胞機能の維持において重要な役割を果たす転写因子である膵十二指腸ホメオボックス因子−1(pancreatic and duodenal homeobox factor-1)(PDX−1)の発現を誘導する(Babuら、Mol Endocrinol.20巻:3133〜3145頁、2006年)。PDX−1は、GLUT2、グルコキナーゼおよびインスリンなどの、グルコースの感知および代謝の発現の誘導に関与する。GLP−1は、インスリンの発現の刺激に加えて、被験体において膵臓ベータ細胞の増殖を誘導できるので、治療薬としての可能性が示唆されている(Buteau、Diabetes and Metabolism、34巻:S73〜S77頁、2008年)。しかし、GLP−1の細胞内利用性を増加させる臨床的に利用可能な薬剤、例えば経口的に活性なジペプチジルペプチダーゼ−4(DPPIV)阻害剤または注射可能なGLP−1類似体の使用は、軽症型のII型糖尿病の治療に限定されている。これらの薬剤の比較的短い半減期、これらの頻繁な投与の必要性および重度のベータ細胞喪失の場合の効果の相対的な欠如によって、I型糖尿病または他のインスリン依存性の患者用のインスリン保持薬(insulin-sparing agent)としての使用は排除されている。経口的に利用可能なGLP−1類似体でさえ半減期は短く、毎日の高用量の投与を必要とする。
【0018】
他の治療の選択肢は、膵臓のランゲルハンス島の移植を含み、これにより、インスリン依存性が減少することが示されている(Shapiroら、New Eng.J.Med.、343巻:230〜238頁、2000年)。しかし、この治療の適用は、ドナー由来の一次ヒト島(primary human islet)の利用性が非常に限られていることによって制限され、移植の間の細胞の生存を確実にするためにドナーは心臓が鼓動していなければならない。(Burnsら、J.Endocrinology、103巻:437〜443頁、2004年)。
【0019】
幹細胞、例えば胚性幹細胞(ES)細胞もまた、治療に適切な量のインスリン産生細胞の産生のための適切な供給源として提唱されている。しかし、インスリン分泌β細胞は、2〜4×109β細胞/移植と予測される必要レベルでさえ、幹細胞から産生されなかった。このような細胞ベースの療法は、高インスリン血症または低血糖症を引き起こすポイントを拡大しないことを確実にするために、置き換えた細胞の増殖能力が厳密に調節されなければならず、移植細胞はレシピエントの免疫系によって破壊されることを避けなければならないという困難もさらに克服しなければならない。さらに、ES細胞ベースの療法の場合、奇形種の形成の危険性を避けるために、残存ES細胞を除去しなければならない。
【0020】
II型糖尿病
II型糖尿病は、糖尿病の症例のおよそ90〜95%を占め、米国だけで約193,000人/年が死亡している。II型糖尿病は、すべての死亡の7番目の主原因である。西洋社会において、II型糖尿病は、現在成人人口の6%が侵されており、予想される世界中の頻度は6%/年で成長している。特定の個人がII型糖尿病を発症しやすくする可能性のある特定の遺伝形質があるにもかかわらず、この疾患の発生率が現在増加している主な原因は、現在先進国において多い、座っていることの多いライフスタイル、食事および肥満の増加である。II型糖尿病は、ヒトの健康の重大な脅威の1つとして、現在国際的に認識されている。
【0021】
筋肉、脂肪および肝臓の細胞が、インスリンに正常に反応できない場合、II型糖尿病が発症している。この反応ができないこと(failure to respond)(インスリン抵抗性と呼ばれる)は、これらの細胞におけるインスリン受容体の数の減少、または細胞内のシグナル伝達経路の機能障害または両方による可能性がある。β細胞は、まず、それらのインスリン産出の増加により、このインスリン抵抗性を補う。時間とともに、これらの細胞は正常なグルコースレベルを維持するための十分なインスリンを産生できなくなり、II型糖尿病の進行を示す(Kahnら、Am.J.Med.108巻:2S〜8S頁)、2000年)。
【0022】
II型糖尿病の治療
II型糖尿病に対する従来の治療は非常に限定されており、合併症を最小にする、または遅延させるために血糖値を調節する試みに集中している。現在の治療は、インスリン抵抗性(メトホルミン、チアゾリジンジオン(「TZD」))またはβ細胞からのインスリン放出(スルホニル尿素、エクセナチド)のどちらかを標的としている。スルホニル尿素およびベータ細胞の極性をなくすことにより作用する他の化合物は、循環グルコースレベルとは独立してインスリン分泌を引き起こすので、低血糖の副作用を有する。現在の療法の他の副作用は、体重増加、療法に対する反応性の継時的喪失、胃腸の問題および浮腫を含む。
【0023】
現在承認されている薬剤の1つであるJanuvia(シタグリプチン)はインクレチンホルモンの血中レベルを増加させ、インクレチンホルモンは、インスリンの分泌を増加させ、グルカゴンの分泌を減少させることができ、あまり特徴付けられていない他の効果を有する。しかし、Januviaおよび他のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤もまた、他のホルモンおよびペプチドの組織中レベルに影響を与えることがあり、この広範囲の作用の長期的結果は完全には調査されていない。さらに、この化合物はインスリン抵抗性に関連する問題に対処しない。
【0024】
I型糖尿病と同様に、GLP−1は、インスリン分泌を誘導し、ベータ細胞の増殖を誘導し、グルコース耐性ベータ細胞において耐糖能(glucose tolerance)を回復するその能力のために、II型糖尿病に対する治療薬の可能性が示唆されている。しかし、上述のように、GLP−1およびそれらの類似体は、それらの非常に短い半減期が原因で、それらの治療薬の可能性は非常に限定されている。
【0025】
膵機能に関連する障害の治療もしくは予防もしくは発症もしくは進行の遅延の方法および/または膵機能の改善方法が当分野において必要であることが、前述より明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要旨
本発明までの研究において、本発明者らは、膵機能障害の発生および/または進行における間葉前駆細胞(MPC)の特定のサブセットの効果を決定することを探索した。本発明者らは、ストレプトゾトシン(STZ)をマウスに投与することによって膵機能障害が誘導された、認められたモデルを使用した。この化合物は、最終的に細胞死および膵機能障害をもたらす、膵島の炎症および免疫細胞の浸潤を誘導する。STZは、膵臓の内分泌機能(例えば、インスリン産生の減少)および膵臓の外分泌機能(例えば、アミラーゼ産生の減少)の両方において機能障害を引き起こす。このモデルは、グルコースの代謝障害、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病のモデルとしても認められる。
【0027】
本明細書に例示されるように、本発明者らは、STRO−1+細胞のSTZ処置マウスへの投与は、STRO−1+細胞を与えなかったSTZ処置マウスと比較して、血清中インスリンレベルを増加させ、血糖値を減少させることを実証した。本発明者らは、STRO−1+細胞による、被験体における、膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の誘導もしくは増加ならびに/または膵臓ベータ細胞および/もしくは島の数の増加(例えば、膵臓ベータ細胞の再生を促進する)をさらに実証した。本発明者らは、STRO−1+細胞が、ベータ細胞数の増加および/またはアルファ細胞数の減少によって、膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の比を回復することをさらに見出した。本発明者らは、STRO−1+細胞による処置が、被験体の膵臓において血管形成を誘導することをさらに見出した。これらのデータを合わせると、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから分泌された因子が、膵臓の再生を誘導もしくは促進する、および/または膵機能を改善することを示す。したがって、STRO−1+細胞またはその子孫細胞またはそれらに由来する因子は、膵臓のSTZの毒性作用を治療および/または予防および/または減少することができる。これらのデータは、STRO−1+細胞またはその子孫細胞またはそれらに由来する1種以上の因子は、膵機能障害の治療もしくは予防もしくは発症の遅延もしくは重症度の減少および/または膵機能の改善および/または膵臓またはそれらの細胞の再生の誘導および/またはグルコース代謝の改善(例えば、循環インスリンレベルを増加することによって)が可能であることを示すことになる。
【0028】
本発明者らの発見は、膵機能障害、例えば糖尿病の治療および/または予防および/または発症の遅延および/または進行の遅延のための方法に関する基盤を提供する。
【0029】
したがって、本発明は、それを必要とする被験体において、膵機能を改善する方法を提供し、本方法は、被験体にSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。
【0030】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において(例えば、膵機能障害を患う被験体において)、膵臓の再生を促進または誘導する方法を提供し、前記方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。例えば、この方法は、膵臓において新しいベータ細胞および/または微小血管の産生を誘導または促進する。
【0031】
本発明は、さらにまたは代替として、膵臓ベータ細胞および/または膵島(pancreaticislet)の再生を誘導または促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0032】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、血糖値を減少させる、および/または血中/血清インスリンレベルを増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0033】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞の数を減少させる、および/または膵島の数を増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0034】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体の膵臓において、膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現を増加させる、および/またはPDX−1発現細胞の数を増加させる方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0035】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体の膵臓において動脈形成(arteriogenesis)または血管形成(angiogenesis)を誘導または促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0036】
本発明は、さらにまたは代替として、被験体において、膵臓ベータ細胞前駆体の数を増加させる、または膵臓ベータ細胞前駆体の増殖を誘導もしくは促進する方法を提供し、この方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を被験体に投与するステップを含む。
【0037】
一例において、被験体は膵機能障害を患っている。
【0038】
一例において、膵機能障害は、膵臓の内分泌機能および/または膵臓の外分泌機能の機能障害に関連する、またはそれによってもたらされる。好ましくは、膵機能障害は、膵機能の低下(例えば、膵臓内分泌機能の低下または膵臓外分泌機能の低下)をもたらす、またはそれに関連する。
【0039】
本発明の一例において、膵機能障害は炭水化物代謝障害に関連する、またはそれを引き起こす。このような炭水化物代謝障害は、膵臓の内分泌機能障害および/または外分泌機能障害が原因で起こりうる。一例において、炭水化物代謝障害は、膵臓によるインスリン産生の減少が原因で起こる。別の例において、炭水化物代謝障害は、グルカゴンレベルの増加が原因で起こる(例えば、アルファ細胞の数の増加ならびに/あるいはグルカゴンの発現および/または産生および/または分泌の増加)。別の例において、炭水化物代謝障害は、膵臓によるアミラーゼ産生の減少が原因で起こる。当業者は、本明細書の記述をもとに、炭水化物代謝障害(または膵機能障害)が、必ずしも、単に膵機能によって特徴付けられるものではないことに気付くであろう。例えば、炭水化物代謝障害は、インスリン抵抗性および/または血管系要素および/または神経系要素によってもまた、特徴付けることができる。本発明の一例において、膵機能障害は糖尿病(例えば、I型糖尿病またはII型糖尿病)である。
【0040】
好ましくは、本発明の方法は、有効量または治療有効量もしくは予防有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。一例において、本方法は、被験体においてインスリン産生を誘導するために十分な、好ましくは少なくとも約1週間または2週間または3週間または4週間の間インスリン産生を誘導するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む。
【0041】
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、直接被験体の血流に投与されるが、他の部位の投与も除外されない。好ましくは、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、全身に投与される。例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、大動脈内、心臓の心房内もしくは心室内または膵臓に連結する血管(例えば、腹部大動脈、上腸間膜動脈、膵十二指腸動脈または脾動脈)の中に静脈内投与、動脈内投与される。好ましい例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えばカテーテルを使用して、例えば、大腿動脈内または腹腔動脈内に動脈内投与される。
【0042】
代替的に、または追加で、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、被験体の膵臓またはそれらの一部に投与される。
【0043】
一例において、被験体に投与されるSTRO−1+細胞は、STRO−1briであり、および/または組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現する。特異的細胞表面マーカーまたはそれらの組み合わせによって特徴付けられるSTRO−1+細胞のさらなる集団を本明細書に記載する。この例に従って、子孫細胞および/または可溶性因子は、STRO−1を発現する細胞またはSTRO−1briである細胞および/またはTNAPを発現する細胞に由来し得る。このような子孫細胞は、STRO−1も発現し得る、またはSTRO−1briでもあり得る、および/またはTNAPも発現し得る。
【0044】
膵機能障害の治療または進行の遅延を対象とする本発明の例に従って、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、障害の診断後、例えば当分野において公知の標準的な方法を使用して投与されることが好ましい。膵機能障害の予防または発症の遅延を対象とするそれらの例では、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、障害の臨床診断前に、例えば、被験体が耐糖能障害および/または空腹時高血糖(fasting glycemia)を患ったとき、ならびに/あるいはI型糖尿病の場合、T細胞および/もしくはB細胞集団の増殖によって、および/または自己抗体の産生によって示されるような自己免疫反応(例えば、I型糖尿病の発症または進行において、膵臓β−島細胞に対する細胞障害性T細胞の増殖および/または1種以上の膵臓β−島細胞のマーカーに対する自己抗体の増加)の前に、またはこれと同時に投与される。
【0045】
好ましくは、任意の例に従った、本明細書に記載の方法は、膵機能障害の発症および/もしくは進行および/または血糖値および/または血中/血清中インスリンレベルおよび/またはベータ細胞の数および/またはアルファ細胞の数および/または膵島の数および/またはPDX−1発現細胞の数および/またはPDX−1発現の量および/または血管の数を、モニタリングするステップまたは検出するステップをさらに含む。例えば、本方法は、耐糖能を試験するステップおよび/または空腹時血糖を試験するステップおよび/または膵臓によって産生されるホルモンもしくは酵素のレベルを測定するステップ、および/または膵臓の試料を得て、β細胞の数および/もしくはアルファ細胞の数および/もしくは膵島の数および/もしくはPDX−1発現細胞の数および/もしくはPDX−1発現の量および/もしくは血管の数を決定するステップをさらに含む。このようなモニタリングは、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子のその後の投与が、必要または望ましいことを示すことができる。
【0046】
前の段落により当業者には明らかであろうように、任意の例に従った本明細書に記載の方法は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の単回投与に限定されると考えられるべきではない。本発明は、同一もしくは異なる部位のどちらかに、または同一もしくは異なる経路のどちらかを介した複数回投与を明確に包含する。本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の単回投与もさらに企図する。
【0047】
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、組成物、例えば、前記STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子ならびに担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される。適切な担体および/または賦形剤は、当業者には明らかとなろう、および/または本明細書に記載されよう。
【0048】
このような組成物は、炭水化物代謝障害の治療または予防に有用な追加の因子、例えば、インスリンもしくはアミラーゼおよび/または正常な膵機能に関連するペプチドもしくはポリペプチド(例えば、コレシストキニンオクタペプチドまたはソマトスタチンまたはグルカゴンまたはトリプシノーゲンまたはキモトリプシノーゲンまたはエラスターゼまたはカルボキシペプチダーゼまたは膵リパーゼ)を含み得る。代替的には、またはさらに、STRO−1+細胞またはその子孫細胞は遺伝子操作により、追加の因子、例えばインスリンもしくはアミラーゼおよび/または正常な膵機能に関連するペプチドもしくはポリペプチド(例えば、コレシストキニンオクタペプチドまたはソマトスタチンまたはグルカゴンまたはトリプシノーゲンまたはキモトリプシノーゲンまたはエラスターゼまたはカルボキシペプチダーゼまたは膵リパーゼ)を、発現および好ましくは分泌させることができる。
【0049】
本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物の、
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/もしくは膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進、
のための使用をさらに提供する。
【0050】
本発明は、医薬の製造における、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の、
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/もしくは膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進、
のための使用をさらに提供する。
【0051】
本発明は、広範囲の動物に適用可能である。例えば、被験体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたはヒツジなどの哺乳動物であり、好ましくは、被験体はヒトである。一例において、被験体はヒトである。別の例において、被験体は非ヒト哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1はSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける血糖値(BGL)に対するSTRO−1+細胞の効果を表すグラフ表示である。血糖値は、STZ療法後10日目に左心室にSTRO−1+細胞を注射した(CM)、またはビヒクルを注射した(CV)糖尿病マウスにおいて決定した。血糖値は、平均グルコース(mean glucose)(mM)+/−SEである。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図2】図2はSTZ処置10日後のベースラインと比較した、処置後7、14および21日目のSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける血糖値(BGL)に対するSTRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。血糖値は、左心室にビヒクルを注射した(CV)またはSTRO−1+細胞を注射した(CM)糖尿病マウスにおいて決定した。結果は、10日目の細胞療法の開始時に対するBGLの変化の%として表す。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図3】図3は細胞療法投与の21日後のSTZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおけるインスリンレベルに対するSTRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。血清中マウスインスリンレベルは、左心室にビヒクルを注射した(CV)またはSTRO−1+細胞を注射した(CM)、糖尿病マウスにおいて決定した。マウスインスリン値は、μg/L+/−SEである。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図4A】図4Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵臓の微小血管密度に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗平滑筋アクチン(SMA)により染色された微小血管の合計数を、膵臓切片のサイズ分布/断面積に基づき決定した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図4B】図4BはSTRO−1細胞を用いて処置したマウスの膵臓組織において、様々な直径の、マウス抗平滑筋アクチンIgG2a−FITCにより染色された微小血管を示す顕微鏡写真(200×)のコピーである。
【図5A】図5Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵臓のmRNAのプロファイルに対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。RNAは、ビヒクル群(CV)およびSTRO−1療法群(CM)の膵臓組織から抽出し、逆転写し、ベータ細胞の再生に関連する転写因子、Mafa、Ngn3、Pdx−1に関してPCR増幅した。RNAの合計含有量を、ハウスキーピング遺伝子のベータアクチンを基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8およびSTRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図5B】図5Bは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおけるPDX−1陽性細胞に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗PDX−1により染色された膵臓組織を、島面積のPDX−1陽性細胞/mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図5C】図5Cはマウス抗PDX−1(IgG2b)を用いて染色し、ヤギ抗マウスIgG2b−Alexa555コンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(400×)のコピーである。
【図6A】図6Aは細胞療法の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、島密度に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図6B】図6Bは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、平均島直径に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。
【図6C】図6Cは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける膵島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。H&Eにより染色した膵臓組織を、平均島面積に関して分析し、試験した断面積を基準にして正規化した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8であり、STRO−1療法はN=6であった。
【図7A】図7Aは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおいて、島の特徴に関する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗インスリンにより染色した膵臓組織を、インスリン陽性細胞/島面積mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図7B】図7Bはモルモット抗インスリンを用いて染色し、抗モルモットIgG−Rhodamineコンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(200×)のコピーである。処置群を、個々の顕微鏡写真の下に示す。
【図7C】図7Cは細胞療法投与の21日後の、STZ誘導性糖尿病NOD/scidマウスにおける島の特徴に対する動脈内STRO−1+細胞の効果を示すグラフ表示である。抗グルカゴンにより染色した膵臓組織を、グルカゴン陽性細胞/島面積mm2に関して分析した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【図7D】図7Dはマウス抗グルカゴンを用いて染色し、ヤギ抗マウスIgG−FITCコンジュゲートを用いて検出した、抗原検索し、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片を示す、一連の顕微鏡写真(200×)のコピーである。処置群を、個々の顕微鏡写真の下に示す。
【図7E】図7Eは合計アルファ+ベータ細胞の割合としての島内ベータ細胞の数を示すグラフ表示である。表示したデータは、インスリン陽性細胞の数/島面積mm2およびグルカゴン陽性細胞の数/島面積mm2から計算した。データは平均+/−semで表し、動物は、ビヒクル群はN=8、STRO−1療法はN=6および未処理対照(STZなし)はN=3であった。スチューデントt検定を実施し、p<0.05において有意であった。
【発明を実施するための形態】
【0053】
好ましい実施形態の詳細な説明
一般的技術および選択した定義
本明細書を通して、特に明記しない限り、または文脈が求めない限り、1つのステップ、組成物(composition of matter)、ステップの群または組成物の群は、1つおよび複数(すなわち1つ以上)のそれらのステップ、組成物、ステップの群または組成物の群を包含するものとして解釈するべきである。
【0054】
本明細書に記載の個々の実施形態または例は、特に明記されない限り各々およびすべての他の実施形態に必要な変更を加えて適用される。例えば、被験体における膵機能障害の治療および/または予防および/または発症の遅延および/または進行の遅延を対象とする、本明細書に記載の個々の実施形態または例は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、膵機能の改善および/または膵臓再生の誘導または促進のための方法に必要な変更を加えて適用される。
【0055】
膵機能障害の治療に関する本明細書に記載の個々の実施形態は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、炭水化物代謝障害の治療に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0056】
膵機能障害の治療に関する本明細書に記載の個々の実施形態は、それらの実施形態が本明細書に明確に列挙されたかのように、糖尿病、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病の治療に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0057】
当業者は、本明細書に記載の発明は、具体的に明記した以外の変更および改変が可能であることを理解するであろう。本発明がこのような変更および改変のすべてを含むことは理解されるべきである。本発明は、本明細書に言及された、または示されたステップ、特徴、組成物および化合物のすべてを個別に、または集合的にさらに含み、前記ステップもしくは特徴のありとあらゆる組み合わせまたは任意の2つ以上をさらに含む。
【0058】
本発明の範囲は、本明細書に記載の具体的な実施形態に限定されるものではなく、これらは単なる例示目的を意図している。機能的に同等の生成物、組成物および方法は、本明細書に記載されたように、明確に本発明の範囲内である。
【0059】
本発明は、明記されない限り、分子生物学、微生物学、ウィルス学、組換えDNA技術、溶液中のペプチド合成、固相ペプチド合成および免疫学の従来技術を使用して、過度な実験を行うことなく実施される。このような手順は、例えばSambrook、Fritsch&Maniatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、第2版(1989年)、Vols I、IIおよびDI全体;DNA Cloning:A Practical Approach、Vol.IおよびII(D.N.Glover編、1985年)、IRL Press、Oxford、テキスト全体;Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(M.J.Gait編、1984年)IRL Press、Oxford、テキスト全体および特にその中のGaitによる論文、1〜22頁;Atkinsonら、35〜81頁;Sproatら、83〜115頁;およびWuら、135〜151頁;4.Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1985年)IRL Press、Oxford、テキスト全体;Immobilized Cells and Enzymes:A Practical Approach(1986年)IRL Press、Oxford、テキスト全体;Perbal,B.、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press、Inc.)、シリーズ全体;Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website(Interactiva、Germany)中のJ.F.Ramalho Ortigao、「The Chemistry of Peptide Synthesis」;Sakakibara,D.、Teichman,J.、Lien,E.Land Fenichel,R.L.(1976年).Biochem.Biophys.Res.Commun.73 336〜342頁;Merrifield,R.B.(1963年).J.Am.Chem.Soc.85、2149〜2154頁;Barany,G.およびMerrifield,R.B.(1979年)のThe Peptides(Gross,E.およびMeienhofer,J.編)、vol.2、1〜284頁、Academic Press、New York.12.Wunsch,E.編(1974年)Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie(Muler,E.編)、vol.15、第4版、パート1および2、Thieme、Stuttgart;Bodanszky,M.(1984年)Principles of Peptide Synthesis、Springer-Verlag、Heidelberg;Bodanszky,M.&Bodanszky,A.(1984年)The Practice of Peptide Synthesis、Springer-Verlag、Heidelberg;Bodanszky,M.(1985年)Int.J.Peptide Protein Res.25、449〜474頁;Handbook of Experimental Immunology、Vol.I〜IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986年、Blackwell Scientific Publications);ならびにAnimal Cell Culture:Practical Approach、第3版(John R.W.Masters編、2000年)、ISBN0199637970のテキスト全体に記載されている。
【0060】
本明細書を通して、文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、表記のステップもしくは要素もしくは整数またはステップもしくは要素もしくは整数の群を含むことを意味し、任意の他のステップもしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除することを意味しないと理解される。
【0061】
本明細書において使用する場合、「に由来する」という用語は、特定の完全なもの(integer)は特定の供給源から得ることができるが、必ずしもその供給源から直接ではないことを示すと解釈されるべきである。STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞に由来する可溶性因子に関しては、この用語は1種以上の因子、例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞をin vitroで培養する間に産生されるタンパク質、ペプチド、炭水化物などを意味すると解釈されるべきである。
【0062】
本明細書において使用する場合、「膵機能の改善」という用語は、被験体における1つ以上の膵臓の機能が、本発明に従って治療されたことのない被験体における(好ましくは治療前の上記被験体における)同じ機能と比較して強化されることを意味すると解釈されるべきである。このような用語は、例えば、グルコースの代謝障害を患っている恐れのある、または患っている恐れのない被験体において、インスリン分泌のレベルが増加することまたはインスリン分泌の制御が改善することを包含する。この用語は、例えば、そのホルモンのレベルが増加した被験体において(例えば、グルカゴン分泌腫瘍の結果として)および/または低血糖を患う被験体において、グルカゴンの分泌が減少することをさらに包含する。
【0063】
本明細書において使用する場合、「膵機能障害(pancreatic dysfunction)」という用語は、被験体における1つまたは複数の膵臓の機能が、正常および/または健康な個体における同じ機能と異なる任意の病態を意味すると解釈されるべきである。例えば、「膵機能障害」という用語は、被験体における膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能が、正常および/または健康な個体と比較して強化される、または減少する病態を包含する。例えば、「膵機能障害」は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼまたはアミラーゼのレベルによって特徴付けられる、それらに関連し得る、またはそれらの異常(すなわち増加または減少)によって引き起こされ得る。「膵機能障害を治療する」という用語が、膵機能の正常化(例えば、1つまたは複数の膵機能の異常が、正常な、および/または健康な個体におけるそれらの機能とより近くなるように減少または強化されるような被験体の治療)を包含することは、前述から当業者には明らかであろう。例えば、このような治療は、インスリンおよび/またはベータ細胞および/または島のレベルが異常に減少した被験体において、インスリンレベルの増加および/または膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵島の数の増加をもたらし得る。このような治療は、例えば膵臓のグルカゴン分泌腫瘍の場合、例えば、グルカゴン分泌アルファ細胞の数の減少によって、および/またはグルカゴンの発現、産生および/もしくは分泌の減少によって、異常に増加したグルカゴンレベルを同等に減少させることができる。「膵機能障害の予防または遅延」という用語の意味は、前述に基づいて当業者には明らかであろう。
【0064】
膵機能障害は、例えば膵臓によって産生される消化酵素(例えば、リパーゼもしくはアミラーゼ)のレベルの減少の結果として、および/または膵液の産生の減少によって、栄養(例えば、炭水化物、脂質またはタンパク質)の吸収不良をもたらす病態に関連し得る、またはそれを引き起こす。このような病態には、膵炎、膵機能不全(pancreatic insufficiency)、後天性自己免疫不全症候群(acquired autoimmune deficiency syndrome)、がん、嚢胞性線維症またはゾリンジャー・エリソン症候群が含まれる。好ましい例において、この病態は、膵臓によって産生されるアミラーゼまたはリパーゼの減少が原因で起こる、またはそれに関連する。
【0065】
膵機能障害は、被験体による栄養素の使用または代謝の異常に関連する病態、例えば高血糖もしくは低血糖、血清中アミノ酸レベルの減少、タンパク質尿、壊死融解性移動性紅斑(necrolytic migratory erythema)をもたらす病態にさらに関連し得る、またはその原因であり得る。このような病態は、炭水化物代謝障害、例えば糖尿病を含む。他の病態は、例えば、腫瘍(例えば、高血糖の原因となりうるグルカゴン分泌腫瘍)を含む。例示的腫瘍は、グルカゴノーマを含む。
【0066】
本明細書において使用する場合、「炭水化物代謝障害」という用語は、被験体が、炭水化物の1種または複数種の形態を分解もしくは代謝または摂取もしくは使用できない、あるいは炭水化物の1種または複数種の形態を分解もしくは代謝または摂取もしくは使用する能力が減少した、一般的に、被験体の血流中のその/それらの炭水化物(複数可)のレベルの増加をもたらす任意の障害を意味すると解釈されるべきである。好ましくは、炭水化物代謝障害は、炭水化物の分解に関与するホルモンの膵臓による産生(例えば、アミラーゼの産生)を減少させることに関連する、またはそれが原因で起こる。さらに好ましくは、炭水化物代謝障害は、炭水化物の摂取に関与するホルモンの膵臓による産生(例えば、インスリンの産生)を減少させることに関連する、またはそれが原因で起こる。例示的炭水化物代謝障害には、I型糖尿病、II型糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、早期発症性II型糖尿病(EOD)、若年性非定型糖尿病(YOAD)、若年発症型成人糖尿病(MODY)、栄養障害関連糖尿病、妊娠性糖尿病、耐糖能障害(IGT)の病態、空腹時血糖異常の病態、代謝性アシドーシス、ケトーシス、X症候群、高血糖、低インスリン血症、インスリン抵抗性、アルファマンノース症、ベータマンノース症、フルクトース不耐症、フルコシド蓄積症、ガラクトース血症、リー病、ムコリピドーシス、ムコ多糖症または前述の任意の1つまたは複数の合併症が含まれる。好ましくは、炭水化物代謝障害は、糖尿病、例えばI型糖尿病またはII型糖尿病である。
【0067】
好ましくは、糖尿病を患う被験体は、
− 7nmol/Lまたは126mg/dl以上の空腹時血糖、
− 糖尿病の症状を伴う、11.1nmol/Lまたは200mg/dl以上の随時血糖(一日の任意の時間に採取)
− 2時間の間隔で測定した、11.1nmol/Lまたは200mg/dl以上の経口耐糖能試験(OGTT)値、OGTTは、2または3時間の時間間隔で得る、
などの臨床的に容認された糖尿病マーカーを有する。
【0068】
本明細書において使用する場合、「有効量」という用語は、投与前のそれらの膵機能と比較して、および/もしくはSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子が投与されない被験体と比較して、STRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子が投与された被験体において膵機能を改善するために十分な量のSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、有効量のSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子は、基礎または安静時のグルコースレベル(血糖(glycemia))の減少、および/または耐糖能の改善、および/または血中インスリンレベルの増加、および/または血清中、もしくは膵臓中もしくは消化系におけるグルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼもしくはアミラーゼのレベルの増加を可能にする。有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えば、膵臓またはその領域の周辺または内部の血管系を増加することによって、膵臓またはその領域への血液供給の増加をさらに可能にする。当業者は、このような量は、例えば、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または特定の被験体および/または膵機能障害の型もしくは重症度に依存して変動するであろうことに気が付くと思われる。したがって、この用語は、特定の量、例えば、細胞もしくは可溶性因子の重量もしくは数に本発明を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は被験体において膵機能を改善するために十分な、任意の量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を包含する。膵機能を検出する方法、および/または膵機能を改善するために十分なSTRO−1+細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはそれらに由来する可溶性因子の量を決定する方法は、当業者には明らかである、および/または本明細書に記載されている。有効量は、必ずしも膵機能障害を治療または予防する必要はない。
【0069】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の1つまたは複数の症状を、その病態の臨床的診断として観察される、および容認されるレベルより低いレベルに減少させる、または阻害するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、治療有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、糖尿病の被験体において観察されるレベルから、発症前の被験体(例えば、耐糖能障害または安静時血糖の障害)または正常もしくは健康な被験体において観察されるレベルに、被験体において耐糖能を減少できる。
【0070】
本明細書において使用する場合、「予防有効量」という用語は、膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の1つまたは複数の検出可能な症状の発症を予防または阻害するために十分な量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を意味すると解釈されるべきである。例えば、予防有効量のSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、被験体が糖尿病と臨床的に診断される程度の障害になる被験体において、耐糖能を予防できる。
【0071】
本明細書において使用する場合、「治療(treat)」または「治療(treatment)」または「治療(treating)」という用語は、治療有効量の可溶性因子および/または細胞の投与ならびに膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の少なくとも1つの症状の減少または阻害を意味すると解釈されるべきである。
【0072】
本明細書において使用する場合、「予防(prevent)」または「予防(preventing)」または「予防(prevention)」という用語は、予防有効量の可溶性因子および/または細胞の投与ならびに膵機能障害に関連する、またはそれが原因である臨床的病態の少なくとも1つの症状の発症の停止または妨害を意味すると解釈されるべきである。
【0073】
「膵機能障害の進行の遅延」は、治療が被験体において膵機能障害の重症度を減少させることを意味する。このような重症度の減少は、例えば、膵機能障害の1つまたは複数の合併症、例えば、栄養の吸収不良、低血糖、高血糖、ケトアシドーシス、網膜障害、白内障、高血圧、腎不全、冠状動脈疾患、末梢血管疾患、神経障害(例えば、末梢神経障害または自立神経障害)または感染症の危険性の増加などの予防であり得る。代替的には、またはさらに、膵機能障害の重症度の減少は、本発明の方法を使用した治療を受けたことがない被験体と比較した、治療的処置(therapeutic treatment)(例えば、インスリン投与)の必要条件または被験体の治療的処置の規則性の減少を特徴とする。代替的には、またはさらに、「膵機能障害の進行の減少」は、膵機能障害の進行を減少させる化合物を用いた治療を受けたことがない糖尿病被験体と比較した、膵機能障害の1つまたは複数の検出可能な症状の発症における遅延である。
【0074】
本明細書において使用する場合、「可溶性因子」という用語は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞によって産生される、水溶性である任意の分子、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、炭水化物などを意味すると解釈されるべきである。このような可溶性因子は、細胞内にあってもよい、および/または細胞から分泌されていてもよい。このような可溶性因子は、複合混合物(例えば、上清)および/もしくはそれらの分画であってよく、および/または精製された因子であってよい。本発明の一例において、可溶性因子は上清である、または上清に含有される。したがって、1種または複数種の可溶性因子の投与を対象とする本明細書における任意の例は、上清の投与に必要な変更を加えた適用と解釈されるべきである。
【0075】
本明細書において使用する場合、「上清」という用語は、適切な培地、好ましくは液体培地において、間葉前駆細胞および/またはその子孫細胞のin vitro培養後に産生される非細胞性材料を指す。通常、上清は、適切な条件および時間の下で培地において細胞を培養し、その後、例えば遠心分離などの方法によって、細胞性材料を除去することによって作製される。上清は、投与前にさらなる精製ステップに供与されても、されなくてもよい。好ましい例において、上清は、105未満、より好ましくは104未満、より好ましくは103未満の生細胞を含み、さらにより好ましくは生細胞を含まない。
【0076】
本明細書において使用する場合、「正常または健康な個体」という用語は、当分野において公知の任意の方法、および/または本明細書に記載の任意の方法によって評価された膵機能障害を患っていない被験体を意味すると解釈されるべきである。
【0077】
STRO−1+細胞または子孫細胞、それらに由来する上清または1種もしくは複数種の可溶性因子
STRO−1+細胞は、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靭帯、腱、骨格筋、真皮および骨膜に見出される細胞であり、生殖細胞系、例えば、中胚葉および/または内胚葉および/または外胚葉に分化できる。
【0078】
一実施形態において、STRO−1+細胞は、限定するものではないが、脂肪、骨、軟骨、弾性、筋肉および線維結合の組織を含む多くの細胞型に分化できる多能性細胞(multipotential cell)である。これらの細胞が進入する特定の分化系列決定(lineage-commitment)および分化経路は、機械的影響および/または内因性生物活性因子、例えば成長因子、サイトカインおよび/または宿主組織により確立される局所的微小環境条件からの様々な影響に依存する。したがってSTRO−1+多能性細胞は、分裂し、時がたてば非可逆的に分化して表現型細胞を得るであろう、幹細胞または前駆細胞のどちらかである娘細胞を得る非造血祖先細胞である。
【0079】
好ましい例において、STRO−1+細胞は、被験体、例えば、治療される被験体または関係する被験体または無関係の被験体(同じ種または異なる種のどちらであっても)から得られた試料から濃縮される。「濃縮された(enriched)」、「濃縮(enrichment)」という用語またはそれらの変形は、1種の特定の細胞型の比率または多数の特定の細胞型の比率が、未処理集団と比較した場合増加している細胞集団を記載するために本明細書において使用する。
【0080】
好ましい例において、本発明において使用される細胞は、TNAP+、VCAM−1+、THY−1+、STRO−2+、CD45+、CD146+、3G5+またはそれらの任意の組み合わせからなる群から個別に、または集合的に選択される1種または複数種のマーカーを発現する。
【0081】
「個別に」は、本発明が、列挙したマーカーまたはマーカーの群を別々に包含することを意味し、個別のマーカーまたはマーカーの群が本明細書に別々に載せることができなくても、添付の特許請求の範囲は、このようなマーカーまたはマーカーの群を、別々に、かつ互いに分割可能に定義できることを意味する。
【0082】
「集合的に」は、本発明が、任意の数の、または組み合わせた列挙したマーカーまたはペプチドの群を包含することを意味し、このような数または組み合わせのマーカーまたはマーカーの群が、本明細書に具体的に載せられなくても、添付の特許請求の範囲がこのような組み合わせまたは従属する組み合わせ(sub-combination)を、別々に、かつ任意の他のマーカーの組み合わせまたはマーカーの群から分割可能に定義できることを意味する。
【0083】
好ましくは、STRO−1+細胞はSTRO−1bright(同義語STRO−1bri)である。好ましくは、STRO−1bright細胞は、さらに、TNAP+、VCAM−1+、THY−1+、STRO−2+および/またはCD146+の1つまたは複数である。
【0084】
一例において、間葉前駆細胞は、WO2004/85630に定義されるように、血管周囲の間葉前駆細胞である。
【0085】
所与のマーカーに対して「陽性」であると称される細胞は、マーカーが細胞表面に存在する程度に依存する、そのマーカーのレベルが低い(loまたはdim)か、または高い(bright、bri)かのどちらかを表し、ここでこの用語は、細胞の分類方法において使用される蛍光または他のマーカーの強度に関係し得る。lo(またはdimもしくはdull)およびbriの区別は、分類される特定の細胞集団に使用するマーカーに関連すると理解されるであろう。所与のマーカーに対して「陰性」と称される細胞は、必ずしも完全にその細胞に不在なわけではない。この用語は、マーカーがその細胞によって相対的に非常に低いレベルで発現されることを意味し、検出可能に標識された場合、マーカーは非常に低いシグナルを発生する、またはバックグラウンドのレベルを超えて検出できないことを意味する。
【0086】
本明細書において使用する場合、「bright」という用語は、検出可能に標識された場合、比較的高いシグナルを発生する細胞表面上のマーカーを指す。理論に縛られることを望むわけではないが、「bright」細胞は、試料中の他の細胞より多くの標的マーカータンパク質(例えば、STRO−1により認識される抗原)を発現することが提唱されている。例えば、FITC−コンジュゲートSTRO−1抗体を用いて標識した場合、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析によって決定して、STRO−1bri細胞は、非bright細胞(STRO−1dull/dim)より多くの蛍光シグナルを発生する。好ましくは、「bright」細胞は、開始試料中に含有される、最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の例において、「bright」細胞は、開始試料中に含有される、最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%または少なくとも約2%を構成する。好ましい例において、STRO−1bright細胞は、「バックグラウンド」、すなわちSTRO−1―である細胞に対して2logの大きさ分高い発現のSTRO−1表面発現を有する。比較すると、STRO−1dimおよび/またはSTRO−1intermediate細胞は、2log未満の大きさ分高い、通常約1logまたは「バックグラウンド」より低い発現のSTRO−1表面発現を有する。
【0087】
本明細書において使用する場合、「TNAP」という用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼのすべてのアイソフォームを包含することを意図する。例えば、この用語は、肝臓のアイソフォーム(LAP)、骨のアイソフォーム(BAP)および腎臓のアイソフォーム(KAP)を包含する。好ましい例において、TNAPはBAPである。特に好ましい例において、本明細書において使用する場合、TNAPは、寄託番号PTA−7282で、ブダペスト条約の規定を下に、2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞系によって産生されるSTRO−3抗体に結合できる分子を指す。
【0088】
さらに、好ましい例において、STRO−1+細胞は、クローン原性CFU−Fを生じることができる。
【0089】
かなりの割合のSTRO−1+多能性細胞が、少なくとも2種の異なる生殖細胞系に分化できることが好ましい。多能性細胞が分化決定され得る(committed)系列の非限定例は、骨前駆体細胞、胆管上皮細胞および肝細胞に関して多能である肝細胞の祖先;乏突起膠細胞および星状細胞に進行するグリア細胞前駆体を発生できる神経制限細胞(neural restricted cells);ニューロンに進行する神経前駆体;心筋および心筋細胞の前駆体、グルコース反応性インスリン分泌膵臓ベータ細胞系を含む。他の細胞系は、限定するものではないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞および軟骨細胞ならびに以下の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋細胞および骨格筋細胞、精巣の祖先、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、含脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄基質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、ニューロン、星状細胞および乏突起膠細胞の細胞を含む。
【0090】
別の例において、STRO−1+細胞は、培養において造血細胞を発生できない。
【0091】
一例において、治療されるべき被験体から細胞を採取し、標準的技術を使用してin vitroで培養し、自己移植または同種異系の組成物として被験体に投与するための、上清または可溶性因子または増殖細胞を得るために使用する。代替の例において、確立されたヒト細胞系の1種または複数種の細胞を使用する。本発明の別の有用な例において、非ヒト動物(または患者がヒトでない場合、別の種から)の細胞を使用する。
【0092】
本発明は、in vitro培養により産生されたSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞(後者はさらに増殖細胞とも称される)から得られる、または由来する上清または可溶性因子の使用をさらに企図する。本発明の増殖細胞は、培養条件(培養培地中の刺激因子の数および/または型を含む)、継代数などに依存して広範囲の表現型を有し得る。特定の例において、子孫細胞は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9または約10継代後に、親集団から得る。しかし、子孫細胞は、任意の継代数後に親集団から得てもよい。
【0093】
子孫細胞は、任意の適切な培地における培養によって得ることができる。細胞培養に関して使用する場合、「培地」という用語は、細胞を取り囲む環境の成分を含む。培地は、固体、液体、気体または相および材料の混合物であってよい。培地は、液体成長培地および細胞成長を維持しない液体培地を含む。培地は、寒天、アガロース、ゼラチンおよびコラーゲンマトリックスなどのゼラチン状培地も含む。例示的気体培地は、ペトリ皿または他の固体もしくは半固体支持体上で成長する細胞が晒されている気相を含む。「培地」という用語は、それが細胞に接触していなくても、細胞培養における使用を意図する材料をさらに指す。言い換えれば、細菌培養のために調製された栄養豊富な液体は培地である。水または他の液体と混合した場合に細胞培養に適切となる粉末混合物は、「粉末培地」と呼ぶことができる。
【0094】
例において、本発明の方法に有用な子孫細胞は、STRO−3抗体によって標識された磁気ビーズを使用して骨髄からTNAP−STRO−1+細胞を単離し、その後、単離細胞を培養増殖することによって、得られる(適切な培養条件の例として、Gronthosら、Blood 85:929〜940頁、1995年を参照されたい)。
【0095】
一例において、このような増殖細胞(子孫)(好ましくは、少なくとも5継代後)は、TNAP−、CC9−、HLAクラスI+、HLAクラスII−、CD14−、CD19−、CD3−、CD11a−c−、CD31−、CD86−、CD34−および/またはCD80−であり得る。しかし、様々なマーカーの発現が変動し得る本明細書に記載の培養条件とは異なる培養条件下も可能である。さらに、これらの表現型の細胞は増殖細胞集団において優勢であり得るが、この表現型(複数可)を有さない細胞の小型の集団(例えば、ごくわずかなパーセントの増殖細胞は、CC9−であり得る)が存在することを意味するものではない。好ましい一例において、増殖細胞は、異なる細胞型に分化する能力もまた有する。
【0096】
一例において、上清もしくは可溶性因子または細胞それ自体を得るために使用する増殖細胞集団は、細胞の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%がCC9+である細胞を含む。
【0097】
別の例において、上清もしくは可溶性因子または細胞それ自体を得るために使用する増殖細胞集団は、細胞の少なくとも40%、より好ましくは少なくとも45%がSTRO−1+である細胞を含む。
【0098】
さらなる例において、増殖細胞は、LFA−3、THY−1、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、P−セレクチン、L−セレクチン、3G5、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD90、CD29、CD18、CD61、インテグリンベータ6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF−R、EGF−R、IGF1−R、NGF−R、FGF−R、レプチン−R(STRO−2=レプチン−R)、RANKL、STRO−1brightおよびCD146またはこれらのマーカーの任意の組み合わせからなる群から集合的に、または個別に選択される、1種または複数種のマーカーを発現できる。
【0099】
一例において、子孫細胞は、WO2006/032092において多能性拡大STRO−1+多能性細胞の子孫(Multipotential Expanded STRO-1+ Multipotential cell)(MEMP)として定義および/または記載されている。子孫が由来し得るSTRO−1+多能性細胞の豊富な集団を調製するための方法は、WO01/04268およびWO2004/085630に記載されている。in vitro環境において、STRO−1+多能性細胞が絶対的に純粋な調製品として存在することはまれであり、一般的に、組織特異的単分化能細胞(TSCC)である他の細胞と共に存在すると思われる。WO01/04268は、このような細胞を、純度レベル約0.1%から90%で骨髄から回収することを述べている。子孫が由来するMPCを含む集団は、組織供給源から直接回収でき、または代替的に、ex vivoですでに拡大されている集団であってもよい。
【0100】
例えば、子孫は、回収された、拡大されていない、実質的に精製された、それらが存在する集団の合計細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80または95%を含むSTRO−1+多能性細胞の集団から得ることができる。このレベルは、例えば、TNAP、STRO−1bright、3G5+、VCAM−1、THY−1、CD146およびSTRO−2からなる群から、個別に、または集合的に選択される少なくとも1種のマーカーに対して陽性である細胞を選択することによって達成できる。
【0101】
MEMPSは、マーカーのSTRO−1briに対して陽性であり、マーカーのアルカリホスファターゼ(ALP)に対して陰性である点で、採取したばかりのSTRO−1+多能性細胞と識別可能である。対照的に、単離したばかりのSTRO−1+多能性細胞は、STRO−1briおよびALPの両方に対して陽性である。本発明の好ましい例において、投与された細胞の少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が、STRO−1bri、ALP−の表現型を有する。さらに好ましい例において、MEMPSは、Ki67、CD44および/またはCD49c/CD29、VLA−3、α3β1の1つまたは複数のマーカーに対して陽性である。この上さらに好ましい例において、MEMPはTERT活性を示さず、および/またはマーカーのCD18に対して陰性である。
【0102】
STRO−1+細胞の出発集団は、WO01/04268またはWO2004/085630に提示される任意の1つまたは複数の組織型、すなわち、骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚に由来することができ、または、さらに広範囲には、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋、に由来することができる。
【0103】
本発明の実施において、任意の所与の細胞表面マーカーを担持する細胞の分離は、多数の異なる方法によってもたらされ得るが、好ましい方法は、結合剤(例えば、抗体またはそれらの抗原結合断片)と関連するマーカーとの結合、それに続く、高レベルの結合または低レベルの結合または結合なしのいずれかである結合を示すものの分離によることは理解されるであろう。最も簡便な結合剤は、抗体または抗体に基づく分子であり、特異性のために、モノクローナル抗体である、またはモノクローナル抗体に基づく分子が好ましい。抗体は、両方のステップに使用できるが、他の薬剤もまた使用でき、したがって、これらのマーカーに対するリガンドを、抗体を担持する細胞または抗体を欠いた細胞を濃縮するためにも使用できる。
【0104】
抗体またはリガンドは、固体支持体と結合して粗分離を可能にする。分離技術は、好ましくは回収される分画の生存力を最大に保有する。有効性の異なる様々な技術を用いて、比較的未精製の分離物を得ることができる。用いる特定の技術は、分離の有効性、付随する細胞障害性、実施の容易さおよび速度ならびに精巧な装置および/または技術能力の必要性に依存するであろう。分離手順は、限定するものではないが、抗体コーティング磁気ビーズを使用した磁気分離、アフィニティクロマトグラフィーおよび固体マトリックスに結合した抗体を用いた「パニング」を含み得る。正確な分離を提供する技術は、限定するものではないが、FACSを含む。FACSを実施する方法は、当業者には明らかであると思われる。
【0105】
本明細書に記載の個々のマーカーに対する抗体は市販されており(例えば、STRO−1に対するモノクローナル抗体は、R&D Systems、USAから購入可能である)、ATCCまたは他の寄託組織から利用可能であり、および/または当分野により認識された技術を使用して作製できる。
【0106】
STRO−1+細胞を単離する方法は、例えば、STRO−1の高レベル発現を認識する例えば磁気活性化細胞分類(MACS)を利用する、固相分類ステップである第1ステップを含むことが好ましい。特許明細書WO01/14268に記載のように、必要に応じて第2分類ステップを次に続けて、高レベルの前駆細胞発現をもたらすことができる。この第2分類ステップは、2種以上のマーカーの使用を含み得る。
【0107】
STRO−1+細胞を得る方法は、公知の技術を使用した第1の濃縮ステップの前に、細胞供給源の回収ステップも含み得る。したがって、組織を外科的に取り出すことになる。供給源組織を含む細胞は、その後、いわゆる単一細胞懸濁液に分離されるであろう。この分離は、物理的方法および/または酵素的方法によって達成され得る。
【0108】
一度適切なSTRO−1+細胞集団が得られたら、任意の適切な方法によって細胞を培養または拡大し、MEMPを得ることができる。
【0109】
一例において、細胞を、治療されるべき被験体から採取し、標準的技術を使用してin vitroで培養し、自己組成物または同種異系組成物として被験体に投与するための、上清または可溶性因子、または増殖細胞を得るために使用する。代替の例において、確立されたヒト細胞系の1種または複数種の細胞を、上清または可溶性因子を得るために使用する。本発明の別の有用な例において、非ヒト動物(または患者がヒトでない場合、別の種から)の細胞を、上清または可溶性因子を得るために使用する。
【0110】
本発明は、限定するものではないが、非ヒト霊長類細胞、有蹄類、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類、鳥類、および魚類の細胞を含む任意の非ヒト動物種由来の細胞を使用して実践できる。本発明を実践できる霊長類細胞は、限定するものではないが、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザルおよび任意の他の新世界ザルまたは旧世界ザルの細胞を含む。本発明を実施できる有蹄類細胞は、限定するものではないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、水牛およびバイソンを含む。本発明を実施できるげっ歯類細胞は、限定するものではないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびアレチネズミの細胞を含む。本発明を実施できるウサギ種の例は、家畜ウサギ、ジャックウサギ、野ウサギ、ワタオウサギ、カンジキウサギおよびナキウサギを含む。ニワトリ(Gallus gallus)は、本発明を実施できる鳥類の例である。
【0111】
本発明の方法に有用な細胞は、使用前、または上清もしくは可溶性因子を得る前に貯蔵できる。真核細胞、特に哺乳動物細胞の保存および貯蔵のための方法およびプロトコルは、当分野において公知である(例えば、Pollard,J.W.およびWalker,J.M.(1997年)Basic Cell Culture Protocols、第2版、Humana Press、Totowa,N.J.;Freshney,R.I.(2000年)Culture of Animal Cells、第4版、Wiley-Liss、Hoboken、N.J.を参照されたい)。単離幹細胞、例えば間葉幹細胞/祖先細胞またはそれらの子孫の生物学的活性を維持する任意の方法は、本発明に関連して利用できる。好ましい一例において、細胞は、凍結保存を使用することによって、維持し、貯蔵される。
【0112】
遺伝子改変細胞
一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞は、例えば、目的となるタンパク質、例えば、治療効果および/または予防効果をもたらすタンパク質、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼもしくはアミラーゼまたは血管形成の強化と関係のあるまたはその原因となるポリペプチド、または細胞の膵臓細胞または血管細胞への分化と関連のあるポリペプチドを発現および/または分泌するように遺伝子改変される。
【0113】
細胞の遺伝子改変方法は、当業者には明らかであると思われる。例えば、細胞において発現される核酸を、細胞における発現を誘導するために動作可能にプロモーターに連結する。例えば、核酸を、被験体の様々な細胞において、プロモーター、例えばウィルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV−IEプロモーター)またはSV−40プロモーターと動作可能に連結する。さらに適切なプロモーターは当分野において公知であり、本発明の例に必要な変更を加えて適用されると解釈されるべきである。
【0114】
好ましくは、核酸は、発現構築体の形態で提供される。本明細書において使用する場合、「発現構築体」という用語は、細胞において動作可能に連結される核酸(例えば、レポーター遺伝子および/または対選択可能なレポーター遺伝子(counter-selectable reporter gene))において発現する能力を有する核酸を指す。本発明に関連して、発現構築体は、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウィルスサブゲノム断片もしくはウィルスゲノム断片または発現可能なフォーマットにおいて異種DNAを維持および/または複製できる他の核酸を含むことができる、またはそれらであることは理解されるべきである。
【0115】
本発明の実践のために適切な発現構築体の構築方法は、当業者には明らかであると思われ、例えば、Ausubelら (Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience、ISBN 047 150338、1987年)またはSambrookら(Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、第3版2001年)に記載されている。例えば、発現構築体の個々の構成要素は、適切な鋳型核酸から、例えばPCR、続いて、適切な発現構築体、例えばプラスミドまたはファージミドなどへのクローニングを使用して増幅される。
【0116】
このような発現構築体に適したベクターは、当分野において公知であり、および/または本明細書に記載した。例えば、哺乳動物細胞における本発明の方法に適切な発現ベクターは、例えば、Invitrogenにより供給されるpcDNAベクタースイート(vector suite)のベクター、pCIベクタースイートのベクター(Promega)、pCMVベクタースイートのベクター(Clontech)、pMベクター(Clontech)、pSIベクター(Promega)、VP16ベクター(Clontech)またはpcDNAベクタースイートのベクター(Invitrogen)のベクターである。
【0117】
当業者は、さらなるベクターおよびこのようなベクターの供給業者、例えば、Invitrogen Corporation、ClontechまたはPromegaを承知しているであろう。
【0118】
単離核酸分子またはそれを含む遺伝子構築体を、発現のために細胞に導入する方法は、当業者には公知である。所与の生物に使用する技術は、公知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入する方法は、マイクロインジェクション、DEAE−デキストランによって仲介されるトランスフェクション、リポソームにより仲介される、例えば、リポフェクタミン(Gibco、MD、USA)および/またはセルフェクチン(Gibco、MD、USA)を使用することによるトランスフェクション、PEGにより仲介されるDNAの取り込み、エレクトロポレーションおよび例えば、とりわけDNAコーティングタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.、WI、USA)を使用することによる微粒子射突法(microparticle bombardment)を含む。
【0119】
代替的には、本発明の発現構築体は、ウィルスベクターである。適切なウィルスベクターは、当分野において公知であり、市販されている。核酸送達およびその核酸の宿主細胞ゲノムへの統合のための、従来のウィルスに基づく系は、例えば、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクターまたはアデノ関連ウィルスベクターを含む。代替的には、アデノウィルスベクターは、エピソーム性のままである核酸を宿主細胞に導入するために有用である。ウィルスベクターは、標的の細胞および組織における遺伝子導入の有効かつ多目的な方法である。加えて、高いトランスダクション効率が、多くの様々な細胞型および標的組織において観察されている。
【0120】
例えば、レトロウィルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列に対するパッキング能力を有するシス作用性の長鎖末端反復(LTR)を、一般的に含む。最小シス作用性LTRは、ベクターの複製およびパッキングに十分であり、その後、発現構築体を標的細胞に統合し、長期発現を提供するために使用される。広範囲に使用されるレトロウィルスベクターは、マウス白血病ウィルス(MuLV)、テナガザル白血病ウィルス(GaLV)、サル免疫不全ウィルス(SrV)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)およびそれらの組み合わせに基づくベクターを含む(例えば、Buchscherら、J Virol.56:2731〜2739頁(1992年);Johannら、J.Virol.65:1635〜1640頁(1992年);Sommerfeltら、Virol.76:58〜59頁(1990年);Wilsonら、J.Virol.63:274〜2318頁(1989年);Millerら、J.Virol.65:2220〜2224頁(1991年);PCT/US94/05700;MillerおよびRosman BioTechniques 7:980〜990頁、1989年;Miller,A.D. Human Gene Therapy 7:5〜14頁、1990年;Scarpaら、Virology75:849〜852頁、1991年;Burnsら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:8033〜8037頁、1993年)。
【0121】
様々なアデノ関連ウィルス(AAV)ベクター系も、核酸送達のために開発されている。AAVベクターは、当分野において公知の技術を使用して容易に構築できる。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号;国際公開番号WO92/01070およびWO93/03769;Lebkowskiら、Molec.Cell.Biol.5:3988〜3996頁、1988年;Vincentら、(1990年)Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter Current Opinion in Biotechnology 5:533〜539頁、1992年;Muzyczka.Current Topics in MicrobiolおよびImmunol.158:97〜129頁、1992年;Kotin、Human Gene Therapy 5:793〜801頁、1994年;ShellingおよびSmith Gene Therapy 7:165〜169頁、1994年;ならびにZhouら、J Exp.Med.179:1867〜1875頁、1994年を参照されたい。
【0122】
本発明の発現構築体を送達するために有用なさらなるウィルスベクターは、例えば、ワクチニアウィルスおよび鳥ポックスウィルスなどのポックファミリーのウィルスまたはアルファウィルスに由来するウィルスベクターまたはコンジュゲートウィルスベクター(例えば、Fisher-Hochら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 56:317~321頁、1989年に記載されたもの)を含む。
【0123】
細胞および可溶性因子の治療的/予防的可能性のアッセイ
膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行を遅延する、細胞または可溶性因子の能力の決定方法は、当業者に明らかとなろう。
【0124】
例えば、細胞または可溶性因子(例えば、因子の混合物または単一の因子または因子の分画(例えば、アフィニティ精製またはクロマトグラフィーに由来する))を、被験対象、例えば被験動物に、治療効果/予防効果を提供するために十分な時間および条件下で投与し、安静時もしくは基礎もしくは空腹時グルコースレベルを評価した、および/または耐糖能試験を実施した。このような試験は、市販のキットおよび/またはデバイスを使用して実施する。基礎グルコースレベルまたは空腹時グルコースレベルは、絶食後、例えば、約8時間から約14時間後に評価する。耐糖能試験では、被験体を約8から約14時間絶食させ、その後グルコース(例えば、約1.75グラムのグルコース/体重キログラム)を摂取させ、約2〜3時間後に血糖のレベルを評価する。世界保健機関(World Health Organization)によれば、空腹時血漿中グルコースは6.1mmol/l(100mg/dl)より低くなければならない。6.1および7.0mmol/l(100および126mg/dl)の間の空腹時レベルが境界(「空腹時高血糖障害(impaired fasting glycaemia)」)であり、空腹時レベルが繰り返し7.0mmol/l(126mg/dl)以上であると糖尿病と診断される。2時間グルコースレベルは、7.8mmol/l(140mg/dl)より低くなければならない。7.8mmol/l(140mg/dl)および11.1mmol/l(200mg/dl)の間のレベルは、耐糖能障害を示す。2時間で11.1mmol/l(200mg/dl)を超えるグルコースレベルは糖尿病の診断を確実にする。
【0125】
好ましくは、被験対象は膵機能障害を患っている。例えば、被験対象は、非肥満糖尿病(NOD)マウス(I型糖尿病のモデル)またはストレプトゾトシンを投与されたことのあるマウスもしくはラット(I型および/またはII型糖尿病のモデル;Lukicら、Developmental Immunol.6:119〜128頁、1998年およびArulmozhiら、Indian J.Pharmacol.、36:217〜221頁、2004年を参照されたい)、Goto Kakizaki(GK)ラット(II型糖尿病のモデル)、New Zealand Obese(NZO)マウス(II型糖尿病のモデル)である。I型糖尿病および/またはII型糖尿病の他のモデルは、例えば、ReesおよびAlcolado、Diabet.Med.22:359〜70頁、2005年に記載されている。
【0126】
未処置動物または処置前の被験動物と比較して、膵機能障害のこのようなモデルにおいて基礎グルコースレベルを減少させた、および/または耐糖能を改善した細胞および/または可溶性因子は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性が高いと考えられる。
【0127】
代替的に、またはさらに、インスリンレベルを、被験対象の循環において、例えば酵素結合免疫吸着法または蛍光結合免疫吸着法を使用して評価した。被験対象の循環においてインスリンレベルを増加させる細胞および/または可溶性因子は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性があると考えられる。
【0128】
血清中グルカゴンまたはソマトスタチンレベルを決定するキットおよびアッセイは、当分野において公知である、および/または例えば、Immuno−Biological Laboratories,IncまたはMillipore Corporation.から市販されている。
【0129】
代替的に、またはさらに、アミラーゼの血清中レベルを、Caraway、Am.J.Clin.Pathol.、32:97〜99頁、1959年に記載のように比色分析を使用して、またはRinderknechtおよびMarbach、Clin.Chem.Acta.、29:107〜110頁、1972年に記載のように蛍光分析を使用して決定する。血清中アミラーゼレベルを正常レベル(例えば、21〜101U/L)に維持する因子または細胞は、膵機能障害の治療または予防または発症もしくは進行の遅延を行う可能性が高いと考えられる。
【0130】
アミラーゼレベルは、膵臓の切片または例えば、経口十二指腸挿管によって得られる膵液においてもまた決定できる。これらの試料は、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼのレベルを測定するための試料も提供する。例えば、Connonら、Digestive Diseases and Sciences、23:472〜475頁、1978年は、膵液中の膵リパーゼレベルを決定するためのアッセイを記載している。
【0131】
前項に記載のアッセイは、任意の例に従った本明細書に記載の治療を受ける被験体の継続的モニタリングにもまた適している。
【0132】
本発明は、膵機能障害の治療のための細胞または可溶性因子を特定または単離する方法をさらに提供することが、前述から当業者には明らかであると思われ、前記方法は、
(i)細胞または可溶性因子を、膵機能障害を患う被験対象に投与し、被験体の膵機能を評価するステップ、
(ii)(i)の被験体の膵機能と、細胞または可溶性因子を投与されたことがない、対照である膵機能障害を患う被験体の膵機能とを比較するステップ、
を含み、
対照である被験体と比較した、被験対象における膵機能の改善は、その細胞または可溶性因子が膵機能障害を治療したことを示す。
【0133】
本発明は、膵機能障害の予防または遅延のための細胞または可溶性因子を特定または単離する方法をも提供し、前記方法は、
(i)細胞または可溶性因子を被験対象に投与し、次いで被験対象において膵機能障害を誘導するステップ、
(ii)(i)の被験体の膵機能と、細胞または可溶性因子を投与されたことがない、対照である膵機能障害を患う被験体の膵機能とを比較するステップ、
を含み、
対照である被験体と比較した、被験対象における膵機能の改善は、細胞または可溶性因子が膵機能障害の発症を予防または遅延することを示す。
【0134】
細胞は、任意の例に従った、本明細書に記載の任意の細胞であってよい。
【0135】
細胞組成物
本発明の一例において、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞は、組成物の形態で投与される。好ましくは、このような組成物は、医薬として許容可能な担体および/または賦形剤を含む。
【0136】
「担体」および「賦形剤」という用語は、貯蔵、投与および/または活性化合物の生物学的活性を容易にするために、当分野において従来から使用される組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mac Publishing Company(1980年)を参照されたい)。担体はさらに、活性化合物の任意の望ましくない副作用を減少できる。適切な担体は、例えば、安定である、例えば、担体中の他の成分と反応できない。一例において、担体は、治療に用いる投与量および濃度においてレシピエントにおいて有意な局所性または全身性の有害作用を生み出さない。
【0137】
本発明に適切な担体は、従来から使用されてきた担体、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、ラクトース、リンゲル溶液、緩衝溶液、ヒアルロン酸およびグリコールを含み、(等張の場合)特に溶液に好ましい液体担体である。適切な医薬担体および賦形剤は、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。
【0138】
別の例において、担体は、例えば、細胞を成長させる、または細胞を懸濁する培地組成物である。好ましくは、このような培地組成物は、投与された被験体において任意の有害作用を誘導しない。
【0139】
好ましい担体および賦形剤は、細胞の生存能力および/または膵機能障害を減少、予防または遅延する細胞の能力に有害な影響を与えない。
【0140】
一例において、担体または賦形剤は緩衝活性を提供し、細胞および/または可溶性因子を適切なpHに維持し、その結果生物学的活性を発揮する、例えば担体または賦形剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。PBSは、細胞および因子との相互作用が最小限であり、細胞および因子の急速な放出を可能にするので、PBSは魅力的な担体または賦形剤を表し、このような場合、本発明の組成物は血流または組織または組織を取り囲む、もしくは組織に隣接する領域に、例えば注射によって直接適用するための液体として作製され得る。
【0141】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞はさらに、レシピエントが適合可能であり、レシピエントに有害でない生成物に分解される足場に組み込む、または包埋することができる。これらの足場は、レシピエント被験体に移植される細胞のための支持体および保護を提供する。天然および/または合成の生分解性の足場は、このような足場の例である。
【0142】
様々な異なる足場が、本発明の実践において良好に使用できる。好ましい足場は、限定するものではないが、生物学的に分解可能な足場である。天然の生分解性の足場は、コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンの足場を含む。細胞移植の足場のために適切な合成材料は、広範囲の細胞成長および細胞機能を支持できなければならない。このような足場は吸収性であってもよい。適切な足場は、例えば、Vacantiら、J.Ped.Surg.23:3〜9頁1988年;Cimaら、Biotechnol.Bioeng.38:145頁 1991年;Vacantiら、Plast.Reconstr.Surg.88:753〜9頁 1991年に記載のようにポリグリコール酸の足場を含み、またはポリ酸無水物、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの合成ポリマーを含む。
【0143】
別の例において、細胞はゲルの足場において投与され得る(Upjohn CompanyによるGelfoamなど)。
【0144】
本発明にとって有用な細胞組成物は、単独または他の細胞との混合物として投与され得る。本発明の組成物と一緒に投与され得る細胞は、限定するものではないが、他の多能性細胞もしくは多分化能細胞または幹細胞あるいは骨髄細胞を含む。異なる型の細胞は、投与直前もしくは短時間前に本発明の組成物と混合でき、またはそれらは投与前に少しの間一緒に共培養できる。
【0145】
好ましくは、この組成物は、有効量または治療有効量もしくは予防有効量の細胞を含む。例えば、この組成物は、約1×105のSTRO−1+細胞/kgから約1×107のSTRO−1+細胞/kgまたは約1×106のSTRO−1+細胞/kgから約5×106のSTRO−1+細胞/kgを含む。投与されるべき細胞の正確な量は、患者の年齢、体重および性別ならびに膵機能障害の程度および重症度を含む、様々な要因に依存する。
【0146】
いくつかの例において、細胞は、被験体の循環内に細胞が出て行くことはできないが、細胞によって分泌された因子が循環内に進入できるチャンバー内に含有される。この手法において、細胞に被験体の循環内に因子を分泌させることによって、可溶性因子が被験体に投与され得る。このようなチャンバーは、被験体内の部位に同様に埋め込み、例えば、膵臓の中または近くに埋め込み、可溶性因子の局所レベルを増加させることができる。
【0147】
本発明のいくつかの例において、細胞組成物を用いた療法の開始前に、患者を免疫抑制することは、必要または望ましいとは言えない。したがって、同種異系またはたとえ異系であっても、STRO−1+細胞またはそれらの子孫の移植は、症例によっては忍容性であり得る。
【0148】
しかし、他の症例において、細胞療法を開始する前に患者を薬理学的に免疫抑制することは望ましい、または適切である場合がある。このことは、全身性または局所性免疫抑制剤の使用を介して達成でき、または細胞をカプセル化デバイス中で送達することによって達成できる。細胞は、細胞および治療因子によって必要とされる栄養および酸素に対しては透過性であるが、細胞は免疫液性因子および細胞に対して不透過性であるカプセル内にカプセル化できる。好ましくは、カプセル化材は低アレルギー性であり、標的組織中に容易にかつ安定に位置し、埋め込まれた構造に追加の保護を提供する。移植細胞に対する免疫応答を減少または除去するための、これらおよび他の方法は、当分野において公知である。代替として、細胞を遺伝子改変し、それらの免疫原性を減少できる。
【0149】
可溶性因子の組成物
本発明の一例において、STRO−1+細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子は、例えば、適切な担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される。好ましくは、担体または賦形剤は、可溶性因子または上清の生物学的作用に有害な影響を与えない。
【0150】
一例において、この組成物は、可溶性因子または上清の成分を安定化する組成物、例えばプロテアーゼ阻害剤を含む。好ましくは、プロテアーゼ阻害剤は、被験体に対して有害作用を有するほどの十分な量は含まれない。
【0151】
STRO−1細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子を含む組成物は、例えば培養培地または安定な担体または緩衝溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水中の、適切な懸濁液として調製され得る。適切な担体は、本明細書内の上に記述している。別の例において、STRO−1+細胞に由来するおよび/または子孫細胞に由来する上清または可溶性因子を含む懸濁液は、注射用の油性懸濁液である。適切な親油性の溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油または合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを含む。注射に使用する懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランもまた含有できる。場合によって懸濁液は、適切な安定剤または化合物の溶解度を増加する薬剤をさらに含有し、高度に濃縮された溶液の調製を可能にすることができる。
【0152】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中の必要量の上清または可溶性因子と、上記の成分の1種または組み合わせとを、必要に応じて一緒に組み込み、その後ろ過滅菌することによって調製できる。
【0153】
一般的に、分散液は、上清または可溶性因子を、基礎分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめろ過滅菌された活性成分+任意のさらなる所望の成分の溶液から、それらの粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥である。本発明の代替の態様によれば、上清または可溶性因子は、その溶解度を強化する1種または複数種の追加の化合物と一緒に製剤化できる。
【0154】
他の例示的担体または賦形剤は、例えば、Hardmanら(2001年) GoodmanおよびGilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.;Gennaro(2000年)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、New York、N.Y.;Avisら(編)(1993年)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990年)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000年)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker、Inc.、New York、N.Y.に記載されている。
【0155】
治療用組成物は、通常製造および貯蔵条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の秩序構造(ordered structure)として製剤化できる。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合、所望の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを含むことが好ましいと思われる。注射組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。さらに、可溶性因子は、徐放性製剤中で、例えば遅効性放出ポリマーを含む組成物中で投与され得る。活性化合物は、即時放出に対して化合物を保護するであろう担体と共に、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤に調製され得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポログリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)が使用できる。このような製剤の多くの調製方法が、特許権を取り、または一般的に当業者に公知である。
【0156】
上清または可溶性因子は、例えば可溶性因子の遅効性放出をもたらす適切なマトリックスを組み合わせて投与され得る。
【0157】
組成物のさらなる成分
STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、他の有益な薬剤または生体分子(成長因子、栄養素)と共に投与され得る。他の薬剤と共に投与される場合、それらは、単一の医薬組成物で、または別々の医薬組成物で、同時に、または他の薬剤と連続して(他の薬剤の投与前または投与後のどちらか)投与され得る。同時投与できる生物活性因子は、抗アポトーシス剤(例えば、EPO、EPOミメティボディ(mimetibody)、TPO、IGF−IおよびIGF−II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症剤(例えば、p38MAPK阻害剤、TGF−ベータ阻害剤、スタチン、IL−6およびIL−1阻害剤、PEMIROLAST、TRANILAST、REMICADE、SIROLIMUSおよびNSAID(非ステロイド系抗炎症剤;例えば、TEPOXALIN、TOLMETIN、SUPROFEN);免疫抑制剤/免疫調節剤(例えば、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス;mTOR阻害剤(例えば、SIROLIMUS、EVEROLIMUS);抗増殖剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);抗体、例えばモノクローナル抗IL−2Rアルファ受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、ポリクローナル抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3));抗血栓剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤および血小板阻害剤);および抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、コエンザイムQ−10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン)ならびに局所麻酔剤を含む。
【0158】
一例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、膵機能障害の治療または予防のためのさらなる因子を含む。例えば、この組成物は、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、安息香酸誘導体、アルファグルコシダーゼ阻害剤、SGLT2阻害剤およびINGAPペプチド、ジペプチジルペプチダーゼ−IV阻害剤、インスリン感作物質(例えば、PPARアゴニストまたはビグアニド)、インスリン,インスリン模倣体,グルカゴン受容体アンタゴニスト、GLP−I、GLP−I模倣体、GLP−I受容体アゴニスト、;GIP、GIP模倣体、GIP受容体アゴニスト、PACAP、PACAP模倣体、PACAP受容体3アゴニスト;コレステロール降下剤(例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、金属イオン封鎖剤、ニコチニルアルコール、ニコチン酸)、PPARα/γデュアルアゴニストまたは抗肥満化合物を含む。
【0159】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、祖先細胞の膵臓細胞への分化を誘導または強化する因子をさらに含む。例示的因子は、Wnt、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子またはTGFβを含む。
【0160】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、祖先細胞の血管細胞への分化を誘導または強化する因子をさらに含む。例示的因子は、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来成長因子(PDGF;例えばPDGF−BB)およびFGFを含む。
【0161】
別の例において、任意の例に従った本明細書に記載の組成物は、組織特異的単分化能細胞(tissue specific committed cell)(TSCC)をさらに含む。この点において、国際特許出願番号PCT/AU2005/001445は、TSCCおよびSTRO−1+細胞の投与が、TSCCの増殖の強化をもたらし得ることを実証している。一例において、TSCCは膵臓細胞、例えば、β細胞または膵臓細胞、例えばランゲルハンス島の混合物である。このような組成物の被験体への投与は、例えば、ランゲルハンス島のβ細胞の産生増加をもたらし得る。別の例において、TSCCは、血管細胞である。このような組成物の被験体への投与は、例えば、膵臓に送達される栄養の増加をもたらす、例えば膵臓における血管構造の産生増加をもたらし得る。
【0162】
医療デバイス
本発明は、任意の例に従った本明細書に記載の方法に使用するためまたは方法に使用する際の医療デバイスをさらに提供する。例えば、本発明は、注射器またはカテーテルあるいはSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または本発明の組成物を含む他の適切な送達デバイスを提供する。場合によって、注射器またはカテーテルは、任意の例に従った本明細書に記載の方法に使用するための指示書と一緒に包装されている。
【0163】
別の例において、本発明は、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子および/または本発明の組成物を含むインプラントを提供する。場合によって、インプラントは、任意の例に従った本明細書に記載の方法で使用するための指示書と一緒に包装されている。適切なインプラントは、例えば、本明細書に上記の足場およびSTRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を用いて形成できる。
【0164】
投与の様式
STRO−1+細胞に由来する上清もしくは可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、外科的埋め込み、注入、送達(カテーテルまたは注射器を用いて)でき、あるいは修復または増強の必要のある部位、例えば被験体の膵臓または血液系内に直接または間接的に投与することができる。
【0165】
好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、被験体の血流に送達される。例えば、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、非経口的に送達される。非経口投与の例示的経路は、限定するものではないが、腹腔内、心室内、脳室内、髄腔内を含む。好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、大動脈内、心臓の心室または心房内、膵臓に連結する血管内、例えば、腹大動脈、上腸管膜動脈、膵十二指腸動脈または脾動脈に動脈内送達される。別の例において、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、大腿動脈または腹腔動脈に投与される。
【0166】
心室または心房に細胞送達する場合、細胞を左心室または左心房に投与し、細胞が肺に急速に送達されることにより起こりうる合併症を避けることが好ましい。
【0167】
好ましくは、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、送達部位に、例えば注射器を使用して、またはカテーテルもしくは中心線を介して注入される。
【0168】
治療用製剤の投与計画の選択は、実体(entity)の血清または組織の回転率、症状のレベルおよび実体の免疫原性を含むいくつかの因子に依存する。好ましくは、投与計画は、副作用の許容可能なレベルと一致する患者に送達される治療化合物の量を最大にする。したがって、送達される製剤の量は、特定の実体および治療される病態の重症度に一部依存する。
【0169】
一例において、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、単回ボーラス投与として送達される。代替的には、STRO−1+細胞に由来する上清または可溶性因子、STRO−1+細胞またはそれらの子孫は、連続注入によって、または、例えば1日、1週間の間隔で、もしくは1〜7回/週での投与によって投与される。好ましい用量プロトコルは、最大用量または重要な望ましくない副作用を避ける用量頻度に関与するものである。1週間の合計用量は、使用する化合物の型および活性に依存する。適切な用量の決定は、例えば、当分野において治療に影響を与えることが公知もしくは疑わしい、または治療に影響を与えることが予測されるパラメーターまたは因子を使用して、臨床医によってなされる。一般的に、用量は最適用量よりいくらか少ない量で開始し、そこから少量の増分で、任意の陰性の副作用に関して所望のまたは最適な効果が得られるまで増加する。重要な診断基準は、糖尿病の症状の基準を含む。
【0170】
膵機能障害の治療または進行の遅延を対象とする本発明の例に従って、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、当分野において公知の標準的方法および/または本明細書に記載の方法、例えば耐糖能を使用した、障害の診断後に投与されることが好ましい。
【0171】
膵機能障害の予防または発症の遅延を対象とするそれらの例では、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子は、例えば、耐糖能障害および/または空腹時高血糖障害を患う被験体の場合、障害の臨床診断前に投与されることが好ましく、ならびに/あるいはI型糖尿病の場合、例えば、T細胞および/またはB細胞の集団の拡大によって、および/または自己抗体(例えば、膵臓β島細胞に対する細胞障害性T細胞および/またはI型糖尿病の発症または進行における、1種または複数種の膵臓β島細胞マーカーに対する自己抗体の増加)の産生によって示される自己免疫反応の前、またはこれと同時に投与されることが好ましい。自己免疫反応の発症を決定または予測する方法は、当業者には明らかである、および/または本明細書に記載してある。例えば、膵臓β細胞に由来するまたは膵臓β細胞の表面に存在する抗原に対する自己抗体の検出は、被験体による前記細胞に対する免疫反応を示す。このような1つのアッセイは、被験体の血清中の島細胞の抗体を検出する。このアッセイは、島細胞を含む膵臓の切片を、被験対象由来の血清と接触させるステップを含む。膵臓β島細胞と結合できる、被験体由来の血清中の免疫グロブリンは、その後、ヒト免疫グロブリンと結合する二次標識抗体を使用して検出される。蛍光マーカーを使用する、島細胞抗体を検出するための適切な方法は、例えば、Bottazzoら、Lancet2:1279〜83頁、1974年に記載されている。代替的には、またはさらに、アッセイは、被験体中の特定の抗原に結合する自己抗体の検出のために使用される。例として、Brookingら(Clin Chim Acta 331:55〜59頁、2003年)は、GAD65に対する自己抗体の検出のための、ELISAに基づくアッセイを記載している。記載されたアッセイは、マイクロタイタープレート上の低濃度のGAD抗原を使用して、試料中の自己抗体を捕捉する。液相中のビオチン化GADを加え、自己抗体の二次結合部位により捕捉し、ビオチン化GAD65による非同位の検出可能なシグナルの発生を検出する。Nagata ら、Ann.New York Acad.Sci 1037:10〜15頁、2004年は、インスリン、IA−2およびGAD65に対する自己抗体の存在を検出するために有用なELISPOTアッセイを記載している。
【0172】
治療/予防をモニタリングするための方法
治療/予防をモニタリングするための方法は、本明細書の記載に基づき、当業者には明らかと思われる。例えば、血糖値および/またはインスリンレベルおよび/またはアミラーゼレベルは、当分野において公知の方法および/または本明細書に記載の方法を使用して評価される。
【0173】
別の例において、膵臓の試料(例えば生検)は処置後に得られ、ベータ細胞(例えば、インスリンを発現する細胞)および/またはアルファ細胞(例えば、グルカゴンを発現する細胞)および/または島および/またはPDX−1発現細胞の数が、例えば、免疫組織化学、免疫蛍光または核酸増幅のアッセイ、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られる(a sample of pancreas (e.g., a biopsy) is obtained following treatment and the number of beta cells (e.g., cells expressing insulin) and/or alpha cells (e.g., cells expressing glucagon) and/or islets and/or PDX-1 expressing cells, e.g., using immunohistochemistry, immunofluorescence or a nucleic acid amplification assay, e.g., polymerase chain reaction (PCR).)。このようなアッセイを本明細書に記載する。
【0174】
本発明を、以下の限定されない実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0175】
実施例1 STRO−1+細胞を用いた糖尿病マウスの処置
1.1 材料および方法
マウスにおけるストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病
7〜8週齢の雄免疫不全NOD/scidマウス(NOD.CB17−Prkdcscid/J;Animal Research Centre、Perth、Australia)に、35mg/kgのβ細胞毒素であるストレプトゾトシン(STZ;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を、4時間の朝の絶食後に1〜4日目の毎日、腹腔内(i.p.)注射した。STZを、クエン酸ナトリウム緩衝液、pH4.5に溶解し、調製15分以内に注射した。マウスは滅菌条件下に維持した。
【0176】
細胞の注入および処置群
バンクに保存されていた骨髄細胞由来の、免疫磁気的(immunomagnetically)に選択されたヒトSTRO−1+間質細胞を、基本的にGronthos および Zannetino(Methods Mol Biol.449:45〜57頁、2008年)に記載のように培養増殖させ、Angioblast Systems、USAより入手した。ProFreeze(商標)−CDM(Lonza、USA)において凍結保存された継代4の、STRO−1+間質細胞を解凍し、2.5×106細胞を、急速注入用に200μlのビヒクル/マウスにおいて構築した。STZ処置後10日目、NOD/scidマウスに、麻酔をかけたマウスの胸壁を介して左心室に(動脈経路)単回投与で注射した。対照マウスには、動脈経路または静脈経路を介して200μlのビヒクル(7.5%DMSOおよびアルファMEMを含有するProFreeze(商標)−CDM)を注射した。
【0177】
血糖およびインスリンに関するアッセイ
4時間の朝の絶食後にグルコメーター(glucometer)(Optimum Xceed(商標) Diabetes Monitoring System; Abbott Diagnostics、Victoria、Australia)を用いて尾静脈血において血糖をアッセイした。血中インスリンは、32日目にマウスを死亡させる前に、麻酔をかけたマウスの心臓内穿刺によって得た血液に関して、マウス特異的ELISAキット(Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA Mercodia、Uppsala、Sweden)を使用してアッセイした。
【0178】
組織試料の調製
動物を、頸椎脱臼により安楽死させ、膵臓を取り出し、対称的に切り出し、半分を10%中性ホルマリン中で固定し、他をTissue−Tek OCT Compound(Sakura Finetek、Torrance、CA)に包埋し、ドライアイス上で凍結し、−70℃において貯蔵した。膵臓は本試験において分析の大部分に特に使用したが他の組織、例えば肺、肝臓、心臓、脾臓、胃、腸/盲腸、膀胱、精巣および脳は、組織病理学のために回収した。
【0179】
膵臓組織の組織構造および免疫蛍光染色
膵臓の組織構造のために、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した(FFPE)切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて染色した。顕微鏡用スライドグラスにのせたFFPE組織切片(5μm)を、脱パラフィンし、圧力なべでクエン酸緩衝液中で加熱することによって抗原検索に供した。抗原検索後、切片を10%正常ヤギ血清を用いて2時間ブロックし、あらかじめ試験し、抗原検索した組織においてマウス特異的分子を検出することが実証されている以下の抗体:モルモット抗インスリン(1:100;Millipore、USA)、マウス抗グルカゴン(10μg/ml;クローンK79bB10;AbCAM)、マウス抗PDX−1(10μg/ml;クローン267712;R&D Systems)を使用して、免疫蛍光検出のために使用した。2時間の一次抗体インキュベーション後、スライドを、0.1%正常ヤギ血清/PBSを用いて5分間、3回洗浄し、種特異的二次抗体(1:400;ヤギ抗マウスAlexa Fluor555;Molecular Probeまたはヤギ抗モルモットローダミン;Jackson Laboratoriesまたはヤギ抗マウスIgG1−FITC;AbCAM)と一緒に、室温においてさらに90分間インキュベートした。対照は、一次抗体を省いて含んだ。膵臓組織中の平滑筋アクチン(SMA)の染色を、マウス抗SMA−FITCmAb(2mg/ml;クローン1A4;AbCAM)を使用して、直接免疫蛍光により実施した。
【0180】
免疫染色の評価
スライドを、Zeiss Observer Z1顕微鏡(Germany)により視察し、画像を、AxioCam MRmを使用して撮影した。H&Eまたはインスリン、グルカゴン、PDX−1およびSMAに対する抗体を用いて染色し、蛍光プローブを用いて検出した膵臓切片の撮影した画像を、Axio Vision Rel 4.7ソフトウェアを用いて分析した。個々の実験動物由来の、それぞれ5mmのH&E切片を使用して、島の合計数を数え、島のサイズを分析し(面積および直径の測定)、画像分析により測定した、それぞれの合計断面積に対して正規化した。加えて、抗インスリン、グルカゴンまたはPDX−1抗体を用いて染色した、それぞれ抗原検索した5μmのFFPE切片の、陽性に染色された細胞の合計数を数え、それぞれ測定した合計断面積または合計島面積に対して正規化した。様々な直径の膵臓微小血管の分布を数え、画像分析により測定し、試験したそれらのそれぞれの断面積に対して正規化した。すべての画像を、対象倍率20〜40×で分析した。
【0181】
半定量的RT−PCRによるRNA分析
実験群の膵臓由来のRNA試料を、個々の凍結組織由来の合計100mmの切片からTrizol試薬中で抽出した。Trizol組織抽出物を、illustra RNAspin Mini RNA Isolation Kit(GE Healthcare、UK)を使用してRNAに関して精製した。全RNAを、分光光度的に定量化し、1μgを、oligo−dT(pdT12−18)およびMMLV逆転写酵素を用いて逆転写した。MafA、Ngn3およびPdx−1に関するネズミ遺伝子に対するプライマーを使用して、表1に明記した増幅条件下でTth Plus DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science)を使用してcDNA試料をPCR増幅した。ベータアクチン遺伝子を使用して、標的遺伝子発現を正規化した。PCR産物を、UV照明下で可視化したバンドの濃度分析により、Kodak ID3.5ソフトウェアを使用して定量化した。
【0182】
【表1】
【0183】
統計分析
P値のためにスチューデントT検定を使用した。
【0184】
1.2 結果
NOD/scidマウスにおけるストレプトゾトシン誘導性高血糖
NOD/scidマウスにおいて、4日間の1日1回のSTZ35mg/kg/日の腹腔内注射により、高血糖を誘導した。試験1日目に、すなわち1回目のSTZ注射の前に、全群の動物(N=80)に関する平均空腹時血糖値(BGL)は、7mM+/−1.5標準偏差(SD)であった。試験10日目(すなわち、STZクールの完了後5日目)に、動物が、未処理マウスにおける平均グルコースレベルより3SDを超えて大きいBGLを有した場合、動物は高血糖を発症したと思われる。この基準に従って、高血糖を得なかったマウスを、その後すべての分析から除外した。10日目に、高血糖の上記の基準を満たしたマウスは29匹であった。これらのマウスにおいて、10日目の平均BGLは、15.2mM+/−0.6であり、ベースラインより217%増加していた。
【0185】
糖尿病NOD/scidマウスにおける、STRO−1+間質細胞の動脈内注射の血糖値に対する効果
図1に示すように、動脈内経路により高血糖マウスに注射された、単回用量の2.5×106のSTRO−1+細胞は、細胞療法後3週間のクールの間ずっとBGLの減少をもたらした。
【0186】
図1は、ビヒクル単独の動脈内注射と比較して、STRO−1+細胞の単回動脈内注射が糖尿病マウスにおいてBGLの早期減少を誘導したことを示す。BGLの減少は、17日目ほどの早期で明らかであり、24日目において最大であり(平均35%の減少、平均BGLは12.7mM+/−1.2対19.6mM+/−2.1;p=0.012)、3週間の追跡期間の間ずっと持続した。
【0187】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、ベースラインに対して早期かつ持続性の血糖値の減少をもたらす
STRO−1+細胞の単回動脈内注射を受けたSTZ処置マウスは、全3週間の追跡期間の間ずっと、10日目のベースラインのレベルに対して、平均BGLの持続性減少を実証した。図2に示すように、動物のこの群は全試験期間を通してずっと、療法前のレベルを下回る平均BGLを有したが、培地処置対照は、進行性のBGLレベルの増加を実証した。STZ処置後10日目にSTRO−1+細胞の動脈内注射を受けた群は、それぞれ7、14および21日目のベースラインBGLに対して、−11%、−14%および−4%の平均BGL減少を実証した。対照的に、動脈内に培地単独を受けた対照群は、それぞれ7、14および21日目のベースラインBGLに対して+8%、+20%および+17%の平均BGLの増加を実証した。
【0188】
糖尿病NOD/scidマウスにおいて、ヒトSTRO−1+細胞の単回動脈内注射は、3週間後に、マウスインスリンの循環レベルの有意な増加をもたらす
図3に示すように、マウス特異的インスリンELISAにより、処置後21日目に測定した循環血清中インスリンレベルは、STRO−1+細胞を、3週間前に動脈内注射された糖尿病マウスが、ビヒクル処置糖尿病マウスと比較して有意に高い循環内因性インスリンレベルを有したことを実証した(0.79mg/L+/−0.11対0.57mg/L+/−0.02;p=0.009)。
【0189】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、膵臓の微小血管密度の増加をもたらす
膵臓組織を、平滑筋アクチンタンパク質に対する直接コンジュゲートモノクローナル抗体(mAb)を用いて染色し、STRO−1+細胞療法が損傷した膵臓において動脈形成(arteriogenesis)を誘導するかどうかを決定した。免疫染色後、全切片をスキャンし、微小血管の合計数を数え、合計断面積に対して正規化した。血管数を数え、<20μm、20〜100μmおよび>100μmの3種の異なる血管径に、サイズに基づき分類した。図4は、STRO−1+細胞療法群において、直径<20μmの平滑筋アクチン陽性微小血管の数が、ビヒクル群と比較して176%増加した(299.8+/−52対169.1+/−18.5;p=0.01)ことを示す。したがって、STRO−1+細胞を用いた療法は、損傷した膵臓内で内径の小さい細動脈の反応を誘導する。
【0190】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、PDX−1転写因子の膵臓における発現の増大をもたらす
ヒトSTRO−1+細胞療法が、糖尿病NOD/scidマウスの内因性ベータ細胞において再生反応を誘導できるかどうかを評価するために、膵臓の発生およびベータ細胞の産生に関連する、PDX−1、MafAおよびNgn3転写因子のmRNAの発現レベルを試験した(Zhouら、Nature 455:627〜632頁、2008年)。図5Aに示すように、STRO−1+細胞療法群において、転写因子PDX−1に関する平均膵臓mRNAレベルが、ビヒクル群と比較して2.5倍増加した(p=0.01)。転写因子MafAおよびNgn3に関する膵臓mRNAレベルも増加が認められたが、有意には達しなかった。
【0191】
PDX転写因子のタンパク質レベルの増加が、STRO−1+細胞療法に曝露された膵島により発現されたことを確認するために、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置された糖尿病NOD/scidマウスおよび動脈内STRO−1+細胞を用いて処置された糖尿病NOD/scidマウスに由来する島切片を、抗PDX−1 mAbを用いて、免疫組織化学的に試験した。図5Bに示すように、ストレプトゾトシン処置は、PDX−1タンパク質陽性であった島細胞の平均数に、健康な非糖尿病マウスと比較して59%の減少をもたらした(37.1+/−12平均陽性細胞/島対15.1+/−4.8平均陽性細胞/島、p=0.03)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射は、PDX−1タンパク質陽性である島細胞の数を平均で71%増加させ(25.7+/−2.2平均陽性細胞/島、p=0.049)、非糖尿病動物と比較してPDX−1タンパク質陽性細胞の平均減少はわずか31%となった(p=NS)。図5Cの蛍光顕微鏡写真は、非糖尿病であった代表的NOD/scid動物由来の膵島か、または糖尿病であり、STRO−1+細胞を用いて処置された代表的NOD/scid動物由来の膵島のいずれもが、同様の数のPDX−1陽性細胞を実証したことを示す。対照的に、糖尿病であり、対照培地を与えられた代表的NOD/scid動物由来の膵島は、PDX−1タンパク質陽性である細胞の数の有意な減少を実証している。
【0192】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、膵島数の増加をもたらす
STRO−1+細胞を用いた処置の全膵島数に対する効果をさらに評価した。図6Aに示すように、3週間前にSTRO−1+細胞の単回動脈内注射を受けた動物は、犠牲にした時点で培地単独を注射された対照と比較して膵島数が2倍を超えて多かった(0.78+/−0.07対0.38+/−0.07島/mm2、p=0.0012)ことを実証した。合計島数の増加の他に、処置群、図6Bおよび6Cの間に、平均島直径または島面積において有意な変化は認められなかった。
【0193】
STRO−1+細胞の単回動脈内注射は、糖尿病NOD/scidマウスにおいて、内因性ベータ細胞数の増加、アルファ細胞の減少および島内の正常なベータ/アルファ細胞比の再確立をもたらす
抗マウスインスリンmAb染色を使用して、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞を用いて動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウスの膵臓切片中の島内のベータ細胞数を定量化した。図7Aに示すように、ストレプトゾトシン処置により、健康な非糖尿病マウスと比較して島内のベータ細胞数が21%減少した(6726+/−450/mm2島面積対5289+/−387/mm2、p=0.04)。対照を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射はベータ細胞数を平均8%増加させ(5709+/−690/mm2)、非糖尿病動物と比較してベータ細胞の平均減少はわずか15%となった(p=NS)。図Bの蛍光顕微鏡写真において、代表的非糖尿病対照動物の島内ベータ細胞は、島の中心領域に典型的に密集して固まったインスリン陽性蛍光細胞の局在化を実証している。しかし、代表的STZ処置マウスにおいて、ベータ細胞は豊富とは言えず、島内で分離したパターンを表す。STRO−1+細胞を用いて処置した代表的マウスのベータ細胞は、より豊富で分離の少ない、中間パターンの蛍光を実証している。
【0194】
抗グルカゴンmAb染色を使用して、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞を用いて動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウスの膵臓切片中の島内のアルファ細胞数を定量化した。図7Cに示すように、ストレプトゾトシン処置により、健康な非糖尿病マウスと比較して島内のアルファ細胞数が470%増加した(1046+/−46/mm2島面積対4954+/−632/mm2、p=0.003)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射はアルファ細胞数を平均44%減少させ(2764+/−274/mm2、p=0.008)、非糖尿病動物と比較してアルファ細胞の平均増加はわずか164%となった(p=0.002)。図7Dの蛍光顕微鏡写真において、代表的非糖尿病対照動物の正常な島内アルファ細胞は、整然と円周方向に配置されたグルカゴン染色細胞として特定できる。しかし、代表的STZ処置マウスにおいて、アルファ細胞はより豊富であり、島内の至るところで拡散パターンを表している。STRO−1+細胞を用いて処置した代表的マウスの島内のアルファ細胞は、より蛍光が周辺にあるパターンを実証し、島の中心にはあまり豊富ではない。
【0195】
図7Eは、健康な非糖尿病NOD/scidマウス、対照培地を用いて処置した糖尿病NOD/scidマウスおよびSTRO−1+細胞で動脈内処置した糖尿病NOD/scidマウス由来の膵臓切片の島内のアルファ細胞に対するベータ細胞の割合を表す。ストレプトゾトシン処置は、健康な非糖尿病マウスと比較した島内のアルファおよびベータ細胞の合計に対するベータ細胞数のパーセントにおいて、40%の減少をもたらした、(86+/−0.9%対52+/−2.6%、p=0.00002)。対照培地を与えられたストレプトゾトシン処置動物と比較して、STRO−1+細胞の動脈内注射は、アルファ細胞に対するベータ細胞の割合を平均29%増加させた(52+/−2.6%対67+/−3.9%、p=0.005)。したがって、ストレプトゾトシンによって糖尿病がもたらされたNOD/scidマウスのSTRO−1+細胞処置は、膵島内のアルファ細胞に対するベータ細胞のより正常な比率の再確立をもたらした。
【0196】
考察
本試験は、ストレプトゾトシンにより糖尿病としたNOD/scidマウスにおいて、ヒトSTRO−1+細胞の単回投与が、ベータ細胞の持続性再生および高血糖の逆行を誘導するために有効であったことの初めての証拠を提供する。糖尿病のストレプトゾトシン(STZ)誘導性実験モデルは、PDX−1遺伝子のノックダウン後に見られる糖尿病表現型と同様の糖尿病表現型をもたらし、インスリン産生ベータ細胞数が減少し、グルカゴン産生アルファ細胞が増加し、GLUT2 mRNAおよびタンパク質の発現が減少した(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年;およびWangら、Diabetes 47:50〜6頁、1998年)。STRO−1+細胞の単回投与は、持続性PDX−1の活性化、内因性ベータ細胞数の増加、グルカゴン発現アルファ細胞の減少およびインスリン産生の強化をもたらした。
【0197】
STRO−1+細胞の単回投与後のSTZ処置NOD/scid糖尿病マウスにおける、PDX−1発現の持続性誘導および膵臓のベータ細胞およびアルファ細胞の間の恒常性の再確立は、同じネズミモデルにおける、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の長期過剰発現を誘導するための遺伝子療法の投与後に報告された特徴と著しく類似する(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年)。GLP−1は、膵臓に遊走する腸由来のペプチドであり、PDX−1およびGLUT2を活性化し、インスリン分泌の増加をもたらす。その発見は、ベータ細胞におけるGLP−1活性の増加をもたらす2種の新しいクラスの薬剤:(a)長期作用性受容体アゴニストであるか、またはGLP−1の天然のアンタゴニストであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)による分解に対して抵抗性であるかのどちらかであるGLP−1類似体、および(2)内因性GLP−1活性の増加をもたらす経口活性DPPIVアンタゴニストの開発をもたらした。
【0198】
しかし、これらの薬剤の臨床使用は、軽症のII型糖尿病の治療に限られている。それらの比較的短い半減期、頻繁な投与の必要性および重症のベータ細胞の損失の場合に効力が比較的弱いことにより、I型糖尿病または他のインスリン依存患者に対するインスリン保持薬としての、それらの使用は除外される。実際、DPPIVアンタゴニストは、内因性GLP−1レベルの増加にもかかわらず、STZ処置マウスにおいて確立された糖尿病を逆行できず(Kimら、Diabetes 50:1562〜1570頁、2001年)、低用量STZと同時の持続投与および部分的ベータ細胞の損失の状況で、高血糖の改善だけが可能である(Muら、Diabetes 55:1695〜1704頁、2006年)。同様に、GLP−1アゴニストは、STZの前、またはSTZと同時に与えられた場合だけ有効であり、持続投与が求められる(Tourrellら、Diabetes 50:1562〜1570頁、2001年;Liら、J Biol Chem 278:471〜478頁、2003年;Gezginci-OktayogluおよびBolkent、Biochem Cell Biol 87:641〜651頁、2009年)。総合して、これらのデータは、DPPIV阻害剤およびGLP−1類似体が、有意なベータ細胞集団がまた存在する場合、ベータ細胞の再生を容易にするためにだけ有効であることを示唆している。
【0199】
対照的に、本試験は、STRO−1+細胞の単回注射でさえ、ベータ細胞集団がほとんど存在していない場合でも、持続性のベータ細胞の再生を誘導できることを示唆している。このことは、高用量のSTZのクールの完了5日後、完全にベータ細胞を損失したモデルに投与した場合、確立された高血糖を逆行させる細胞の能力により証拠づけられる。同様の結果は、遺伝子療法を使用する、GLP−1の持続性の過剰発現によってのみ達成できる(Liuら、Mol Ther 15:86〜93頁、2007年)。STRO−1+療法の長続きする有力な効果は、この型の細胞療法が、インスリン依存性糖尿病において、DPPIV阻害剤またはGLP−1類似体にはできない、持続性のグルコース調節およびインスリン保持効果を提供できることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする被験体において膵機能を改善する方法であって、被験体に、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体において、血糖値を減少させる、および/または血中/血清中インスリンレベルを増加させる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体において、膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞の数を減少させる、および/または膵島の数を増加させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現を増加させる、および/または被験体の膵臓におけるPDX−1発現細胞の数を増加させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体の膵臓において、動脈形成または血管形成を誘導または促進する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
被験体が、膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能に関連する膵機能障害を患う、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
膵機能障害が、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼまたはアミラーゼのレベルの異常に関連する、またはそれらを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グルカゴンレベルの異常が、グルカゴン分泌腫瘍によって引き起こされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
膵機能障害が、栄養の吸収不良に関連する、またはそれを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
膵機能障害が、膵炎、膵機能不全、後天性自己免疫不全症候群、がん、嚢胞性線維症またはゾリンジャー・エリソン症候群に関連する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
膵機能障害が、低血糖もしくは高血糖、血清中アミノ酸レベルの減少、タンパク質尿、または壊死融解性移動性紅斑をもたらす、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
膵機能障害が、炭水化物代謝障害に関連する、またはそれを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
炭水化物代謝障害が、膵臓によるインスリン産生の減少、または膵臓によるアミラーゼ産生の減少によって引き起こされる、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
炭水化物代謝障害が糖尿病である、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、被験体の血流に直接投与される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、動脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被験体に投与されるSTRO−1+細胞が、STRO−1briである、および/または組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現する、および/または子孫細胞および/もしくは可溶性因子が、STRO−1briであるSTRO−1+細胞および/もしくはTNAPを発現するSTRO−1+細胞に由来する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が障害の診断後に投与される、膵機能障害の治療または進行の遅延のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
膵機能障害の発症および/もしくは進行および/または血糖値および/または血中/血清中インスリンレベルおよび/またはベータ細胞の数および/またはアルファ細胞の数および/または膵島の数および/またはPDX−1発現細胞の数および/またはPDX−1発現の量および/または血管の数をモニタリングまたは検出するステップをさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、前記STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子ならびに担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、祖先細胞の血管細胞への分化を誘導もしくは強化する因子をさらに含む、または組成物が組織特異的単分化能細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物。
【請求項24】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物の使用。
【請求項25】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の、医薬品の製造における使用。
【請求項1】
それを必要とする被験体において膵機能を改善する方法であって、被験体に、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体において、血糖値を減少させる、および/または血中/血清中インスリンレベルを増加させる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体において、膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数を増加させる、および/または膵臓アルファ細胞の数を減少させる、および/または膵島の数を増加させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現を増加させる、および/または被験体の膵臓におけるPDX−1発現細胞の数を増加させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の投与が、被験体の膵臓において、動脈形成または血管形成を誘導または促進する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
被験体が、膵臓の内分泌機能および/または外分泌機能に関連する膵機能障害を患う、請求項1または6に記載の方法。
【請求項8】
膵機能障害が、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチド、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、膵リパーゼまたはアミラーゼのレベルの異常に関連する、またはそれらを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グルカゴンレベルの異常が、グルカゴン分泌腫瘍によって引き起こされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
膵機能障害が、栄養の吸収不良に関連する、またはそれを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
膵機能障害が、膵炎、膵機能不全、後天性自己免疫不全症候群、がん、嚢胞性線維症またはゾリンジャー・エリソン症候群に関連する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
膵機能障害が、低血糖もしくは高血糖、血清中アミノ酸レベルの減少、タンパク質尿、または壊死融解性移動性紅斑をもたらす、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
膵機能障害が、炭水化物代謝障害に関連する、またはそれを引き起こす、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
炭水化物代謝障害が、膵臓によるインスリン産生の減少、または膵臓によるアミラーゼ産生の減少によって引き起こされる、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
炭水化物代謝障害が糖尿病である、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、被験体の血流に直接投与される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、動脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被験体に投与されるSTRO−1+細胞が、STRO−1briである、および/または組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現する、および/または子孫細胞および/もしくは可溶性因子が、STRO−1briであるSTRO−1+細胞および/もしくはTNAPを発現するSTRO−1+細胞に由来する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が障害の診断後に投与される、膵機能障害の治療または進行の遅延のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
膵機能障害の発症および/もしくは進行および/または血糖値および/または血中/血清中インスリンレベルおよび/またはベータ細胞の数および/またはアルファ細胞の数および/または膵島の数および/またはPDX−1発現細胞の数および/またはPDX−1発現の量および/または血管の数をモニタリングまたは検出するステップをさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子が、前記STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子ならびに担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で投与される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、祖先細胞の血管細胞への分化を誘導もしくは強化する因子をさらに含む、または組成物が組織特異的単分化能細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物。
【請求項24】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子あるいはそれらを含む組成物の使用。
【請求項25】
(i)膵機能障害の治療;および/または
(ii)膵機能の改善;および/または
(iii)膵臓ベータ細胞および/または膵島の再生の誘導または促進;および/または
(iv)血糖値の減少および/または血中/血清中インスリンレベルの増加;および/または
(v)膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞に対する膵臓ベータ細胞の数の増加および/または膵臓アルファ細胞の数の減少および/または膵島の数の増加;および/または
(vi)膵十二指腸ホメオボックス因子−1(PDX−1)の発現の増加および/または膵臓におけるPDX−1発現細胞の数の増加;および/または
(vii)膵臓における動脈形成または血管形成の誘導または促進
のための、STRO−1+細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらに由来する可溶性因子の、医薬品の製造における使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【公表番号】特表2012−509283(P2012−509283A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536703(P2011−536703)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001511
【国際公開番号】WO2010/057260
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511002548)アンジオブラスト システムズ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001511
【国際公開番号】WO2010/057260
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511002548)アンジオブラスト システムズ,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】
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