説明

臓器の生存力を維持及び/又は回復する装置及び方法

【課題】臓器の生存力をモニタし、維持し、及び/又は回復し、また保存及び/又は搬送のために器官を貯蔵する臓器灌流装置及び方法の提供。
【解決手段】臓器搬送及び/又は保存のために低体温臓器フラッシングした後に、低体温及び/又は正常体温の温度で臓器を灌流する。臓器を定常状態での露出又は低体温灌流での露出の前又は後に実施することができる。臓器の生存力は、臓器を薬液を正常体温の温度で灌流して高エネルギヌクレオチド(例えば、ATP)レベルを回復させることによって回復する。灌流にあたり、臓器灌流圧力は、臓器内に配置した導管の端部に配置したセンサに応答して加圧薬液リザーバ10によって制御する。薬液は低圧力ヘッドを有する中継タンクから臓器に供給して、内皮の毛細血管層や全体的臓器組織へのダメージを防止又は減少させる。臓器の生存力は、好適には、薬液の灌流液特性をモニタすることによって自動的にモニタする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1998年9月29日に出願した米国特許出願09/162,128号一部継続出願であるである2000年3月29日出願の米国特許出願09/537,180号の一部継続出願であり、この内容を参考のため、組み込んで説明する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、1個又はそれ以上の臓器の灌流、臓器生存力のモニタ、維持及び/又は回復、及び/又は臓器の搬送及び/又は保存のための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
マシン灌流によって臓器を保存することは、コンピュータ制御により又はコンピュータ制御をせずに低体温温度で、結晶体灌流液によってまた酸素を添加せずに行っていた。例えば、参考までに挙げると、米国特許第5,149,321号、同第5,395,314号、同第5,584,804号、同第5,709,654号、同第5,752,929号、及びクラッツ氏らの米国特許出願第08/484,601号に記載のものがある。低体温温度は、臓器の代謝を低下させ、エネルギの必要条件を低下させ、高エネルギリン酸塩留保分の涸渇及び乳酸の蓄積を遅延させ、また、血液供給の停止に関連する形態学的及び機能的低下を遅らせる。エネルギを発生する約20゜Cの温度以下では、酸素はミトコンドリアによって有効に利用されないようにすることができ、低温度におけるカタラーゼ/スーパーオキシドジスムターゼ生成、並びにアスコルビン酸及びグルタチオンの再生の減少は遊離基形成を高める。低い温度でのマシン灌流中に灌流液から酸素を除去することは臓器移植結果を改善するのに役立つと、幾つかの研究者によって検証されている。
【0004】
潜在的な酸素ダメージを減少することは、灌流液に酸化防止剤を添加することによっても達成される。特に、長い時間温血欠乏状態さらされた後の臓器ダメージを減少するのに有効であることがわかっている。他の数多くの添加物も、マシン灌流の結果を改善することが報告されている。
【0005】
理想的な臓器は、温血欠乏時間をほぼゼロに制限することによってもたらされる。不幸にして、よくあることだが、特に、心臓停止ドナーから摘出した多くの臓器は、温血欠乏時間が長引いた期間(即ち、45分又はそれ以上)後に入手される。これらの臓器を低温度でマシン灌流すると大きな改善をもたらすことが分かった(Transpl Int 1996 Daemen)。更に、従来技術は、臓器の低温マシン灌流はローラポンプ又はダイヤフラムポンプによって低圧力で行うのが好ましいことを教示している(Transpl Int 1996 Yland)。種々の制御回路及びポンプ構成を使用し、この目的を達成し、また臓器のマシン灌流を行ってきた。例えば、サドリ(Sadri)氏の特許文献1及び2(米国特許第5,338,662号及び同第5,494,822号)、バウワー(Bauer)氏らの特許文献3(米国特許第4,745,759号)、ファーイ(Fahy)氏らの特許文献4及び5(米国特許第5,217,860号及び同第5,472,876号)、マーチンデール(Martindale)氏らの特許文献6(米国特許第5,051,352号)、クラーク(Clark)氏らの特許文献7(米国特許第3,995,444号)、グリュエンベルク(Gruenberg)氏の特許文献8(米国特許第4,629,686号)、ソーン(Thorne)氏らの特許文献9及び10(米国特許第3,738,914号及び同第3,892,628号)、バッチ(Bacchi)氏らの特許文献11及び12(米国特許第5,285,657号及び同第5,476,763号)、マッギー(McGhee)氏らの特許文献13(米国特許第5,157,930号)、杉町(Sugimachi)氏らの特許文献14(米国特許第5,141,847号)の明細書に記載されている。しかし、若干の状況では、このようなマシン臓器灌流のポンプを使用することは、臓器の過加圧の危険性が増大し、また臓器灌流装置を誤作動させる。高い圧力による灌流(例えば、約60mmHg以上)は臓器の脈管内膜を洗い流し、一般的に臓器組織を損傷し、特に、低体温温度では、臓器は臓器自体を保護する神経的又は内分泌的接続がない場合に高圧で脈管を膨張させることによってこのことが生ずる。
【0006】
更に、マシン灌流した臓器の生存力の評価に使用される技術は、臓器の使用を制限する重要な要因になっている。マシン灌流中に、臓器抵抗(即ち、圧力/流れ)の測定を増やすることは有用な指標ではあるが、多くの測定値は、最悪のケースのみを実証しているだけである。
【0007】
温血欠乏時間又はマシン灌流自体によってダメージを受けた臓器の低温マシン灌流中、臓器は、細胞内の及び内皮の組織成分並びに薄膜の成分を溶出する。長年にわたり、灌流液内に種々の偏在性細胞内酵素例えば、乳酸性デヒドロゲナーゼ(LDH)、アルカリ性ホスファターゼが存在することを、臓器ダメージの生体マーカーとして使用してきた。近年、低温度マシン灌流灌流液内におけるアルファ・グルタチオーネ‐S‐トランスフェラーゼ(a‐GST)、及び、パイ・グルタチオーネ‐S‐トランスフェラーゼ(p‐GST)の存在を測定することが、移植前に心臓停止ドナーの腎臓摘出の機能的成果を予想する上での満足のいく指標となることが分かった(Transpl Int 1997 Daemen)。
【0008】
従来技術は、更に、低体温温度での長い期間の保存後に臓器の生理学的機能を回復又は維持をする必要性について論議されてきた。特に、ウィックマン‐コフェルト(Wikman-Coffelt)氏の特許文献15(米国特許第5,066,578号)の明細書は、多量のピルビン酸塩を含有する臓器保存溶液について記載している。ウィックマン‐コフェルト氏は、臓器をピルビン酸塩であふれさせることによりグリコシドをバイパスさせ、ピルビン酸塩を生成するためのアデノシン三燐塩(ATP)を利用する細胞エネルギサイクルにおけるステップをバイパスさせ、またATPを生成する酸化促進燐酸化のためピルビン酸塩がミトコンドリアに利用可能になることを示唆している。ウィックマン‐コフェルト氏は、ピルビン酸塩を含有する第1保存溶液を温間温度にして臓器を灌流又は洗浄し、臓器の血管から血液又は他のかすを除去し、血管を拡張し、流れを増大し、細胞にきれいなサブストレートの形式のエネルギ供給源即ち、ピルビン酸塩で充填することを示唆している。ウィックマン‐コフェルト氏は、ピルビン酸塩は、浮腫、虚血、カルシウム過多、アシドーシス(酸毒症)を防止するとともに、細胞膜に加わる活動電位を保持するのにも役立つと示唆している。次に、ピルビン酸塩及び僅かな割合のエタノールを含有する第2灌流溶液により臓器を灌流し、これにより、臓器が活動するのを停止させ、血管を拡張させ、十分な脈管流を可能にし、細胞にピルビン酸塩を充填し続け、また臓器のエネルギ状態を保存する。最後に、臓器は多量の第1溶液に漬けて24時間又はそれ以上、4゜C〜10゜Cの温度で保存する。
【0009】
しかし、ミトコンドリアは、細胞のエネルギ源であり、機能するために多量の酸素を必要とする。臓器は十分なピルビン酸塩レベルを有し、臓器に付加的にピルビン酸塩を供給することは、ミトコンドリアを機能させるに十分な酸素をミトコンドリアに供給しない場合に臓器の十分な生理学的機能を回復及び/又は維持することには役立たない。更に、短時間、臓器をピルビン酸塩であふれさせることは、実際、臓器の脈管内膜を破壊しやすい。
【0010】
ブラシル(Brasile)氏らの特許文献16(米国特許第5,599,659号)の明細書にも、組織、外植片、臓器、内皮細胞を温間保存するための保存溶液について記載している。ブラシル氏らは、冷間臓器保存の欠点を示唆し、代案として温間保存技術を提案している。ブラシル氏らは、溶液は、タンパク源及びコロイドとしての血清アルブミン、生存力及び細胞機能を強化するための栄養素、酸化力のあるリン酸化支援のためのピルビン酸塩及びアデノシン、付着因子としてのトランスフェリン、代謝支援のインスリン及び砂糖、遊離基毒素を除去する並びに不浸透性付与源としてのグルタチオーネ、不浸透性付与源、除去剤、細胞付着及び成長因子の増強剤としてのシクロデキストリン、毛細血管代謝支援の高Mg++、成長因子の増強及び止血のために主コンドロイチン硫酸塩及びヘパリン硫酸塩よりなるムコ多糖体、冷却、不浸透性、固有の脈管成長促進源としての商標名「ENDO GRO」を補充しているため、溶液は、組織における脈管内膜の培養のための媒体として、また温間保存技術を使用する移植のための臓器用溶液として使用する向上した能力を有すると示唆している。更に、ブラシル氏らは、12時間にも及ぶ30゜Cの温度での温間臓器灌流、又は保存溶液内で25゜Cの温度での臓器保存を示唆している。
【0011】
しかし、ミトコンドリアがエネルギを発生するよう機能するのに十分な酸素を供給しない場合、このような化学薬品で臓器を満たすことは、虚血障害を停止又は回復させるのには不十分である。20゜C以上の温度では臓器の酸素要求量は相当大きく、適度な流れの単純な結晶体によっては満たされない。更に、どのタイプの溶液を使用したらよいかを決定する前に臓器生存力を評価することは必要なことである。
【0012】
オーウェン(Owen)氏の特許文献17(国際特許公開88/05261号)のパンフレットには、エマルジョン液体又は生理電解質を供給する臓器室を有する臓器灌流システムが記載されており、この臓器室が灌流システムに搬送される。臓器室は、臓器を保持する合成サックを有する。灌流液は動脈に挿入したカテーテルから臓器に流入する。灌流液は、2個の独立した液体源によって供給され、各液体源は2個のリザーバを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,338,662号明細書
【特許文献2】米国特許第5,494,822号明細書
【特許文献3】米国特許第4,745,759号明細書
【特許文献4】米国特許第5,217,860号明細書
【特許文献5】米国特許第5,472,876号明細書
【特許文献6】米国特許第5,051,352号明細書
【特許文献7】米国特許第3,995,444号明細書
【特許文献8】米国特許第4,629,686号明細書
【特許文献9】米国特許第3,738,914号明細書
【特許文献10】米国特許第3,892,628号明細書
【特許文献11】米国特許第5,285,657号明細書
【特許文献12】米国特許第5,476,763号明細書
【特許文献13】米国特許第5,157,930号明細書
【特許文献14】米国特許第5,141,847号明細書
【特許文献15】米国特許第5,066,578号明細書
【特許文献16】米国特許第5,599,659号明細書
【特許文献17】国際公開第88/05261号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の開示
本発明は、灌流中に臓器へのダメージを回避するとともに、臓器生存力のモニタ、維持及び/又は回復、並びに保存及び/又は搬送のための臓器保管することに焦点を当てるものである。本発明は、臓器を灌流して臓器生存力をモニタ、維持及び/又は回復するための、及び/又は臓器を搬送及び/又は保存するための装置及び方法に関するものである。特に、本発明臓器灌流装置及び方法は、臓器を低体温温度で灌流する(低体温灌流モード)及び/又は好適には、低体温フラッシュ洗浄のような臓器フラッシュ洗浄に続いて臓器搬送及び/又は保存のための低体温温度での静的臓器保存及び/又は静的臓器灌流の後に平常体温温度で灌流する(平常体温灌流モード)ことによって、臓器生存力をモニタ、維持及び/又は回復する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
臓器生存力の回復は、温血欠乏時間及び/又は低酸素によって減少したエネルギヌクレオチド(例えば、アデノシン三燐酸(ATP))レベル、臓器内の酵素レベルを高く回復させることによって、また、酸素添加架橋ヘモグロビンベースの重炭酸塩薬液のような酸素添加薬液で、平常体温又は平常体温に近い温度で臓器を灌流することによって達成される。酸素添加薬液で灌流する前に、臓器を薬液でフラッシュ洗浄する。このような灌流は、平常体温又は低体温のいずれかの温度で、好適には、低体温温度で行うことができる。低体温フラッシュ洗浄、静的保存、及び低体温灌流のためは、薬液は、ほとんど又は全く酸素を含まないのが好ましく、好適には、分子的酸化防止剤(例えば、2‐アスコルビン酸トコフェノール)及び酵素的酸化防止剤(例えば、カタラーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD))の双方を含有するものとする。平常体温灌流及び/又は低体温灌流、好適には、低体温灌流は、体内並びに体外で行うことができる。このような灌流は、臓器搬送、臓器保存及び臓器移植の準備として虚血障害を抑止する。
【0016】
平常体温処置は、臓器が静的な低体温温度状態及び/又は灌流を受けた後に採用するのが好ましい。初期に低体温にさらされることは、例えば、摘出後に臓器を搬送及び/又は保存する間に起こる。更に、この平常体温処置は、最終的に低体温状況下で保存及び/又は搬送されることになる臓器に対して行うのにも適している。換言すれば、冷間保存及び/又は冷間搬送の前にこの平常体温処置を施す。
【0017】
平常体温灌流モードにおいて、全体的臓器灌流圧力は、臓器に配置した導管の端部に設けたセンサに応答して制御される空気加圧薬液リザーバによって供給するのが好ましく、ステップモータ/カムバルブ又はピンチバルブと組み合わせて使用して灌流圧力を微調整し、過加圧を防止し、及び/又は緊急時に流れを遮断することができるようにする。代案として、臓器は、適正のポンプ制御及び/又は、特に、例えば、システム誤動作による臓器の過加圧を防止する十分なフェールセーフのコントローラとともにローラポンプ又は蠕動ポンプのようなポンプから直接灌流されるようにすることができる。実質的に過加圧を排除することにより脈管内膜や一般的に臓器組織へのダメージを防止及び/又は減少する。臓器生存力は、好適には、臓器抵抗(圧力/流れ)、及び/又は臓器を灌流した後に捕集した薬液におけるpH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、乳酸塩、グルコース、塩基過剰レベル及びイオン化カルシウムレベルをモニタすることによって平常体温灌流モードで自動的にモニタするのが好ましい。
【0018】
臓器生存力指数は、上述のような脈管抵抗、pH等の種々の測定因子を考慮して得られる。指数は臓器固有のものとし、種々の臓器に適用可能なものとする。指数は、モニタされるパラメータを診断サマリーに編集し、臓器治療の決定及び臓器移植すべきか否かの決定に使用する。指数は自動的生成され、医師に提供される。
【0019】
平常体温灌流は低体温灌流の前及び/又は後に行うことができる。低体温灌流モードでは、臓器は、ほぼ酸素を含有しない薬液、好適には、酸化防止剤で増量した単純な結晶体溶液で間欠的に又は一定の低い流速で灌流する。低体温灌流は、更に、並びにドナーから臓器を摘出する前の体内で、並びに体外で行うことができる。低体温灌流は臓器の代謝率を減少し、臓器を長期間保存することができるようになる。薬液は、臓器の過加圧を回避するよう低圧力の中間タンクからの圧力によって臓器に供給するのが好ましい。代案として、適当であれば、重力を使用して薬液を中間タンクから臓器に供給することができる。更に、代案として、臓器は、適正のポンプ制御及び/又は、特に、例えば、システム誤動作による臓器の過加圧を防止する十分なフェールセーフのコントローラとともにローラポンプ又は蠕動ポンプのようなポンプから直接灌流されるようにすることができる。特に、脈管狭窄によって臓器が自身を保護する能力が低い場合に低体温温度状態である場合に、実質的に過加圧を排除することにより脈管内膜や一般的に臓器組織へのダメージを防止及び/又は減少する。臓器生存力は、好適には、回復プロセス中、臓器抵抗(圧力/流れ)、及び/又は臓器を灌流した後に捕集した薬液におけるpH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、乳酸塩、グルコース、塩基過剰レベル及びイオン化カルシウムレベルをモニタすることによって平常体温灌流モードで自動的にモニタするのが好ましい。
【0020】
本発明の実施例は、灌流モード間の選択及び制御パラメータの選択によって1個又はそれ以上の臓器を自動制御灌流のための制御システムを有する。自動灌流はシステムにおける感知した条件に基づいて、又は手動で入力したパラメータに基づいて行われるようにすることができる。システムは予めプログラムするか、又は使用中にプログラムすることもできる。デフォルト値及び生存力チェックを使用する。
【0021】
灌流装置は種々の臓器、例えば、腎臓に使用することができ、また、より複雑な臓器例えば、肝脈管及び肝門脈管のような多数の脈管構造を有する肝臓に適用することができる。
【0022】
臓器診断装置は、更に、臓器生存力指数のような診断データを生成するのに設ける。臓器診断装置は、臓器灌流装置と同様、センサ、温度コントローラを有し、またカセットインターフェイスを有し、灌流システムにおける流入液体及び流出液体の分析を行う。典型的には、臓器診断装置は、シングルパスでインライン灌流しながら診断データを生成する簡素化した灌流装置とすることができる。
【0023】
本発明は、更に、臓器の灌流、保存、分析及び/又は搬送のため装置間で容易にかつ安全に臓器を移動することができる臓器カセットを提供する。臓器カセットは、無菌状況が途切れるとこなく、搬送器、灌流装置及び臓器診断装置間での移行中も含めて、搬送、回収、分析、保管中に効率のよい熱伝達を生ずる構成とする。
【0024】
本発明は、更に、長距離にわたり臓器を搬送する臓器搬送器をも提供する。臓器搬送器は種々の臓器、例えば、腎臓に使用することができ、また、より複雑な臓器例えば、肝脈管及び肝門脈管のような多数の脈管構造を有する肝臓に適用することができる。臓器搬送器は、臓器灌流装置と同様、センサ、温度コントローラを有し、またカセットインターフェイスを有する。
【0025】
灌流装置、搬送器、カセット、及び臓器診断装置はネットワーク化し、保存している又は搬送している臓器の位置及び治療パラメータ及び診断パラメータの遠隔地での管理、追跡、モニタすることができるようにする。情報システムを使用して臓器搬送及び臓器保存の履歴データを編集し、またドナー及び移植者に関する院内データとユナイテッド・ネットワーク・フォー・オーガン・シェアリング(UNOS)のデータとをクロスレファレンスすることができるようにする。このシステムは、更に、成果データを提供し、灌流パラメータ及び移植結果のリサーチを容易にする。
【0026】
本発明の特徴を全体的に理解するため図面を参照する。図面において、同一の参照符号は全体にわたり同一の素子を示すのに使用する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による臓器灌流装置の説明図である。
【図2】図1に示す装置の線図的ダイヤグラム図である。
【図3】図1に示す装置の電子装置のブロック図である。
【図4】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の第1ポンプモジュールの分解図である。
【図5】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の濾過モジュールの分解図である。
【図6】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の酸素添加モジュールの分解図である。
【図7】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の除泡モジュールの分解図である。
【図8】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の第2ポンプモジュールの分解図である。
【図9】図4〜図8のモジュールを示す分解斜視図である。
【図10】本発明によるポンプ、濾過、酸素添加、及び/又は除泡用複合装置の組み合わせモジュールの前方から見た斜視図である。
【図11A】本発明による臓器カセットの実施例の斜視図である。
【図11B】本発明による臓器カセットの実施例の斜視図である。
【図11C】本発明による臓器カセットの実施例の斜視図である。
【図11D】本発明による臓器カセットの実施例の斜視図である。
【図12】複数個の臓器に同時に灌流する臓器灌流装置の線図的ダイヤグラムである。
【図13】A〜Bは、本発明によるステップモータ/カムバルブを示す線図的側面図である。
【図14】A〜Fは、本発明他のステップモータ/カムバルブを示す線図的説明図である。
【図15】本発明による制御システムの線図的ブロック図である。
【図16】本発明によるありうる処理ステップのダイヤグラム図である。
【図17】本発明による臓器カセットの一実施形態の斜視図である。
【図17A】図17の一部の断面図である。
【図18】本発明による臓器チェアの一実施形態の斜視図である。
【図18A】図18の一部断面とする側面図である。
【図19】本発明による臓器搬送器の外部の斜視図である。
【図20】図19に示す臓器搬送器の断面図である。
【図21】図19に示す臓器搬送器のブロック図である。
【図22】図19に示す臓器搬送器の動作状態を示す説明図である。
【図23】図19に示す臓器搬送器の他の断面図である。
【図24】本発明臓器灌流及び移植システムので構造及び情報伝達計画の説明図である。
【図25】本発明による灌流ポンプのモータ制御を示す説明図である。
【図25A】本発明による灌流ポンプのモータ制御を示す説明図である。
【図26】本発明による肝臓灌流装置の説明図である。
【図27】図26による灌流装置に使用する蠕動ポンプの斜視図である。
【図28】本発明による臓器診断システムの斜視図である。
【図29】図28による臓器診断システムに使用する臓器評価機器の斜視図である。
【図30】図28による臓器診断システムに使用するインライン灌流システムの説明図である。
【図31】図28による臓器診断システムのための論理回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明臓器灌流装置1を示す。図2は図1の装置を線図的に示す。装置1は少なくとも部分的にマイクロプロセッサにより制御し、また空気圧的に動作させる。装置1のセンサ、バルブ、熱電気ユニット、及びポンプに接続するマイクロプロセッサ150を図3に線図的に示す。マイクロプロセッサ150及び装置1は、データ共有するためコンピュータネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク又はインターネットに接続した構成に、また、好適には、接続することができるようにする。
【0029】
臓器灌流装置1は、1個又はそれ以上の臓器を、平常体温及び低体温の双方の温度(以下、「平常体温灌流モード」及び「低体温灌流モード」と称する)で同時に灌流できるものとする。すべての薬液接触表面は、使用する薬液に対して共存できる材料で形成するか又は被覆するのが好ましい。図1に示すように、装置1にはハウジング2を設け、ハウジング2には、好適には半透明な前面カバー4と、及びリザーバアクセスドア3とを設ける。装置には、灌流をモニタしまた制御する1個又はそれ以上の制御及びディスプレイ領域5a,5b,5c,5dを設ける。
【0030】
図2に線図的に示すように、ハウジング2内にリザーバ10を包囲し、このリザーバ10は3個のリザーバタンク15a,15b,17を設ける。2個のリザーバタンク15a,15bは標準的な1リットルのバッグとし、各バッグにはそれぞれ加圧カフ16a,16bを設ける。圧力源20を設けて加圧カフ16a,16bを加圧する。圧力源20は空気動作にするとよく、オンボードのコンプレッサユニット21とし、図2に示すように、少なくとも10LPMの速度でガス導管26,26a,26bを介してカフを外部から動作させる。しかし、本発明はオンボードコンプレッサユニットを使用することに限定するものではなく、適当な任意の圧力源を使用することもでき、例えば、圧縮ガス(例えば、空気、CO、酸素、窒素等)タンク(図示せず)とし、好適には、内圧が100psi以上である1.5リットルのタンク容積とする。代案として、内部加圧リザーバタンク(図示せず)を使用することもできる。図示の実施例におけるリザーバタンク15a,15b,17は、ボトル又は他の適当な剛性リザーバとし、重力で灌流を行うか、又は圧縮ガスによって加圧することができるようにする。
【0031】
ガスバルブ22〜23をガス導管26に設け、オンボードコンプレッサユニット21により供給される圧力を制御することができるようにする。逆止弁24a,24bをそれぞれガス導管26a,26bに設ける。圧力センサP5,P6をそれぞれガス導管26a,26bに設け、図3に示すようにセンサの状態をマイクロプロセッサ150に伝送する。灌流、診断及び/又は搬送器装置には、特定装置における灌流液圧力及び流れをモニタし、測定装置における欠陥を検出し、例えば、臓器維持のための適当なレベル以上に増加した圧力を検出するセンサを設ける。ガスバルブGV及びGVを設け、カフ16a,16bから圧力を釈放できるようにする。ガスバルブGV及びGVのうちの一方又は双方は大気中に通気する。導管18a,18bを介してリザーバタンク15a,15bに連通するガスバルブGVを設け、導管18を介してリザーバタンク15a,15bから空気を逃がすようにする。導管18,18a,18b,26,26a及び/又は26bにはフィルタ及び/又はチェック弁を設け、生物学的物質が導管に侵入したり、流路に沿ってさらに奥深く侵入したりするのを防止する。チェック弁及び/又はフィルタを使用し、生物学的物質が一つの臓器灌流導管セットから漏れたり、多臓器灌流構成における後続の臓器の導管セットに転移するのを防止する。更に、チェック弁及び/又はフィルタを使用してバクテリアやウィルスのような生物学的物質が、使用後の灌流装置に残存するような場合に、その後の灌流装置使用時に臓器から臓器に転移するのを防止する。チェック弁及び/又はフィルタはガスライン及び/又は通気ラインにおける逆流に関連する汚染問題を防止する。弁は例えば、逆流を防止する逆止弁として構成することができる。第3リザーバタンク17は、ガスバルブGVを介して一方の加圧カフから釈放される圧力によって加圧するようにすると好適である。
【0032】
薬液は合成物とすると好ましく、また、例えば、簡単な結晶体溶液とすることができ、又は適当な酸素キャリヤで増補することができる。酸素キャリヤは、例えば、洗浄殺菌した赤血球、架橋ヘモグロビン、濾過ヘモグロビン、又はフルオロカーボンを主成分とするエマルジョンとすることができる。更に、薬液は、生理学的環境における過酸化や遊離基によるダメージを減少することが知られている酸化防止剤、及び組織を保護するのに役立つと知られている特別な薬剤を含有することもできる。以下に詳細に説明するように、酸素添加した(例えば、架橋ヘモグロビンを主成分とする重炭酸塩)溶液が平常体温モードでは好ましく、一方酸素添加しない(例えば、好ましくは酸化防止剤で増補した簡単な結晶体による)溶液が低体温モードでは好ましい。平常体温モード及び低体温モードの双方で使用する特別な薬液は、臓器の毛細血管層を洗い流したり、ダメージを与えたりするのを減少又は防止するよう調剤する。低体温灌流モード並びにフラッシュ保存及び/又は静的保存に関して好ましい溶液としては、2000年7月28日出願の米国特許出願第09/628,311号に記載の溶液があることを参考までに述べる。本発明のための灌流溶液に使用する添加物の例としては、ハッサナイン氏(Hassanein)の米国特許第6,046,046号明細書に記載のものがあることを参考までに述べる。勿論、当業者で既知の他の適当な溶液及び材料を使用することもできる。
【0033】
灌流溶液は、例えば、封止可能なパッケージでありかつ好適には、平常体温灌流用の第1灌流溶液を収容する少なくとも1個の第1容器、及び低体温灌流用の異なる第2灌流溶液を収容する少なくとも1個の第2容器を有する図2に示すボックス10のような灌流溶液キット内に設ける。第1灌流溶液は、少なくとも一つの酸素キャリヤを含有するか、又は酸素を添加するか、又は架橋ヘモグロビン及び滅菌した赤血球よりなるグループから選択するかのうちの少なくとも一つを行うものとして構成する。第2灌流溶液は、酸素を添加しないか、少なくとも1個の酸化防止剤を含有するか、又は少なくとも1個の血管拡張剤を含有するかのうちの少なくとも一つを行うものとして構成する。更に、溶液は、好適には、溶解しているピルビン酸塩が5mMしか含まないようにする。また、第1及び第2の容器は、灌流液リザーバのような灌流マシンに接続して動作する構成にし、灌流マシンの灌流導管に流体連通するようにする。更に、第1及び第2の容器は圧縮可能にして、圧力を容器内の灌流溶液に付与できるようにする。更にまた、第1及び第2の容器の少なくとも一方には、収容した灌流溶液を容器から流出させる第1開口と、圧縮ガスを容器に流入させる第2開口とを設ける。パッケージは、灌流マシンに接続して動作する構成のカセットとし、カセット内の第1及び第2の容器が灌流マシンの灌流導管又は灌流導管に流体連通できるようにする。
【0034】
他の実施例においては、灌流溶液キットは、第1温度における低体温灌流用の第1灌流溶液を収容する少なくとも1個の第1容器と、第1の温度よりも低い第2温度における低体温灌流用の異なる第2灌流溶液を収容する少なくとも1個の第2容器とを有するものとして構成する。このキットにおいて、第1灌流溶液は少なくとも一つの結晶体を含有し、また少なくとも一つの血管拡張剤を含有するものとする。第2灌流溶液は、酸素キャリヤを増量したものとし、酸素キャリヤは、ヘモグロビン及び滅菌赤血球からなるグループから選択したものとする。更に、第2灌流溶液は、所要に応じて、少なくとも1個の酸化防止剤又は遊離基除去剤を含有するものとする。好適には、第2灌流溶液は、溶解しているピルビン酸塩が5mMしか含まないようにする。上述したように、第1及び第2の容器は、灌流液リザーバのような灌流マシンに接続して動作する構成にし、灌流マシンの灌流導管に流体連通するようにする。更に、第1及び第2の容器は圧縮可能にして、圧力を容器内の灌流溶液に付与できるようにする。更にまた、第1及び第2の容器の少なくとも一方には、収容した灌流溶液を容器から流出させる第1開口と、圧縮ガスを容器に流入させる第2開口とを設ける。パッケージは、灌流マシンに接続して動作する構成のカセットとし、カセット内の第1及び第2の容器が灌流マシンの灌流導管又は灌流導管に流体連通できるようにする。
【0035】
リザーバ10内の薬液は、リザーバ10に対して熱伝導連通する熱電気ユニット30aによって所定温度にするのが好ましい。温度センサT3はリザーバ10内の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、熱電気ユニット30aを調整してリザーバ10内を所定温度に維持するか、又は手動調整のための制御及びディスプレイ領域5aに温度を表示するかの少なくとも一つを行うようにする。代案として、又はそれに付加して、臓器灌流装置を搬送することが好ましい場合には、低体温灌流液リザーバ内の薬液は、本願と同時に出願中の米国特許出願第09/039,443号に記載したような極低温流体熱交換器を使用して冷却することができ、この米国特許出願は参考までに述べた。
【0036】
臓器室40を設け、この臓器室40には、図2に示すように、灌流すべき臓器を保持するカセット65を支持するか、又は図12に示すように、複数個のカセット65,65,65を、好ましくは互いに隣接配置して支持する。カセット65の種々の実施例を図11A〜11Dに示す。カセット65は、軽量かつ耐久性がある材料により形成し、カセット65の可搬性の高いものとする。この材料は臓器を目視点検できるよう透明にすることもできる。
【0037】
好適には、カセット65は、側壁67a、底壁67b及び臓器支持面66を有し、この臓器支持面66は液体が透過できる多孔質又はメッシュ材料で形成するのが好ましい。カセット65には、更に、頂面67dを設けることができ、この頂面には導管のための開口63を設ける(例えば、図11D参照)。開口63にはシール63a(例えば、隔壁シール又はOリングシール)を設け、また随意にプラグ(図示せず)を設けて、臓器の汚染を防止し、滅菌環境を維持するようにする。更に、カセット65には閉鎖可能な通気孔61を設ける(例えば、図11D参照)。カセット65には更に、臓器に接続する又は臓器槽から薬液を排除するための導管を設け、また例えば、導管50c,81,82,91及び/又は132に接続する接続装置64を設ける(例えば、図11D参照)。カセット65及び特に、臓器支持体、開口、導管及び/又は接続部は、灌流すべき臓器のタイプ及び/又は寸法に適合するように仕上げる。支持側壁67aの外側端縁67cは、臓器室40に配置するカセット65を支持するのに使用することができる。カセットには、更に、把手部分68を設け、例えば、図11C及び図11Dに示すようにカセット65を容易に掴むことができるようにする。各カセット65には、更に、ステップモータ/カムバルブ75を設け(例えば、図11Cに示すように把手部分68に)、以下に詳細に説明するように、内部に配置した臓器60内に灌流させる薬液の圧力を調整することができるようにする。代案として、これら実施例において、圧力は各臓器毎に個別の空気室のような空気室、又は回転ねじバルブ又はヘリカルねじバルブのような適当な可変バルブによって制御することができるようにする。
【0038】
図17はカセット65の他の実施例を示す。図17において、カセット65は導管セット400とともに示す。導管セット400は、灌流装置1、又は臓器搬送器、又は臓器診断装置に接続することができ、また、カセット65の内部の無菌性を損なうことなくカセット65を種々の装置間で移動することができるようにする。好適には、カセット65を、浸透や刺激のある衝撃に耐えることができる十分耐久性のある材料で形成する。カセット65には蓋を設け、好適には、2個の蓋、即ち、内側蓋410と外側蓋420とを設ける。蓋410,420は着脱自在、又はカセット65の本体にヒンジ又は他の方法で連結する。留め金のクラスプ405によりカセット65の頂部に蓋410,420を固定する機構とする。クラスプ405は、安全性と安定性をもたらすロック機能を有する構成とすることもできる。バイオプシー(生体組織検査)ポート430を内側蓋410、又は内側蓋410及び外側蓋420の双方に設けることができる。バイオプシーポート430によって臓器にアクセスして、臓器に対する障害を最小にして付加的な診断を行うことができるようになる。カセット65には、更に、オーバーフロー溝440(図17A参照)を設ける。オーバーフロー溝440はカセット65の頂部に存在するチャンネルである。蓋410,420をカセット65に取り付けるとき、オーバーフロー溝440は、内部シールが漏れているか否かを判定するのを容易にする領域をなす。灌流液はカセット65に対して流入及び流出させ、止めコック又は着脱自在の栓を介してカセット65から排出することができる。
【0039】
カセット65及び/又は蓋410,420は、光学的にクリアな材料によって構成し、カセット65の内部を見通し、臓器をモニタすることができ、また、臓器のビデオ画像や写真を撮ることができるようにする。灌流装置1又はカセット65はビデオカメラ又は静止画カメラ、デジタル機器、又は他の機器に接続し、臓器の推移及び状態を記録することができるようにする。撮影した画像は、ローカルエリアネットワーク又はインターネットのようなコンピュータネットワークを介して利用可能にし、付加的データ分析やリモートモニタリングを行うことができるようにする。カセット65には、更に、例えば、バーコード、磁気手段、無線手段、又は他の手段により、装置内でのカセットの位置、及び/又は臓器識別のための信号を灌流装置又は搬送器に伝送するタグを設ける。カセット65は無菌梱包し、剥ぎ取り開放パウチで梱包するように一回使用使い捨てカセットとして梱包又は市販する。カセット65を収納する一回使用パッケージにも導管セット400を設けることができる。
【0040】
カセット65には、更に、図18及び18Aに示すように臓器チェア1800を設けることができる。臓器チェア1800は着脱自在とし、カセット65内に臓器のための支持面をなす。着脱自在の臓器チェア1800を使用すると、臓器にカニューレを挿入することができ、またドナーから臓器を取り出してカセット65に配置する前に冷却状態で固定することができる。臓器チェア1800は再利用可能又は一回使用のものとすることができる。臓器チェア1800は、臓器タイプ、例えば、腎臓、心臓又は肝臓のそれぞれに対応する特別な構成とする。臓器チェア1800は、臓器に適合する形状に設計するが、人体測定学的に見て臓器寸法のすべての範囲に適合するよう設計する。
【0041】
好適には、臓器チェア1800には少なくとも部分的に孔を形成し、臓器チェア1800から液体が透過することができるようにする。臓器チェア1800における開孔は臓器をキャッチすることができる寸法にし、又は、例えば、布、織物、ナイロン、プラスチック等で構成した付加的なフィルタ層を設け、直径が少なくとも15ミクロンの臓器残骸をキャッチできるようにする。更に、灌流槽から直接取り込む液体が流れる導管に個別のフィルタを使用し、所定寸法、例えば、直径が少なくとも10〜15ミクロンの臓器残骸が灌流導管に進入するのを阻止できるようにする。
【0042】
臓器チェア1800は、静脈流出血流サンプラー1810を設ける構成とすることもできる。臓器チェア1800は静脈流出血流を漏斗状にまとめて静脈流出血流サンプラー1810に送出する。静脈流出血流サンプラー1810は、臓器の静脈流出血流を捕集するための容易に利用可能な源泉をなすものである。このように静脈流出血流を捕集することにより、血管にカニューレを挿入することなく臓器から漏れる灌流液の分析を行うことができ、また臓器に対して流入しまた流出する灌流液を差異的に分析することにより高い感度で臓器の生存力を測定することができる。代案として、静脈流出血流は、血管にカニューレを挿入することによって直接捕集することができるが、この方法は血管又は臓器にダメージを与える危険性が増大する。臓器チェア1800をカセット65内で昇降させて、静脈流出血流サンプラー1810に対するサンプリングを容易にする。代案として、臓器槽の十分な液量をカセット65から排出し、静脈流出血流サンプラー1810に到達できるようにするか、又は流出血流が臓器槽内の灌流液の残りと混合する前に静脈流出血流を捕集するようにする。
【0043】
臓器チェア1800は、更に、カニューレ1820を設ける構成とすると好適であり、腎臓動脈のような灌流処置を行っている動脈にカニューレを取り付けるようにする。カニューレ1820は再使用可能にするか、又は一回使用に適合するものとし、好適には、カセット65、臓器チェア1800及び導管セット400と一緒に無菌パッケージ内に設けるようにする。カニューレ1820にはカニューレクランプ1830を設け、カニューレ1820を、灌流処置を行っている動脈の周りに取り付け、また、好適には、漏れのない灌流を行うことができるようにする。直接挿入式のフランジ付きカニューレを使用し、しかし、動脈の周りのクランプをし、ダメージを受け易い動脈の内面に接触しないようにするのが好ましい。カニューレ1820は、更に、付帯的な動脈に接続するための付加的分岐接続部を有する構成にすることもできる。複数個のカニューレ及びカニューレクランプの寸法は種々の動脈寸法に適合するものとし、又は調整可能なカニューレ及びカニューレクランプを使用して上述の寸法の動脈に適合できるようにする。カニューレクランプ1830はクラムシェル形状とするか、又は2部分構成の設計とする。カニューレクランプ1830は、カニューレクランプ1830を適切な圧力に締め付ける一体の又は個別の手段を設けた構成にし、漏れのない灌流処置を行うことができるようにする。更に、カニューレ1820にスナップ1840を設け、カニューレ1820を閉鎖状態に保持することができるようにする。カニューレ1820には、更に、通気手段1850を設け、カニューレ1820から気泡を除去することができるようにする。
【0044】
臓器チェア1800には、カニューレ1820における突出部1870に対応する戻り止め領域1860を設けると好適である。臓器チェア1800に形成したこのような戻り止め又はトラック又は溝により、カニューレ1820を数個の位置に位置決めすることができ、灌流処置を行う動脈に対して種々の張力を付与することができる。このことにより、各動脈に対して理想的な最小張力を与えることができる。カニューレクランプ1830により灌流導管を灌流処置する動脈に固定する。カニューレ1820は調整自在に臓器チェア1800に固定し、臓器寸法及び動脈長さの変動に適合するよう灌流処置動脈の位置決めをし、動脈の伸張、ねじれ、曲がり、よれを防止する。臓器チェア1800、カニューレ1820、及び付加的なストラップ又は幅広ベルトの組み合わせによって臓器を搬送し、またカセットと外科手術現場との間で臓器を搬送するための安全なプラットフォームとすることができる。
【0045】
臓器チェア1800、カニューレ1820、及び/又はカニューレクランプ1830は、光学的にクリアな実施例で構成し、臓器及び灌流状態をモニタし易くする。
【0046】
カセット65は、臓器灌流装置1から取り外し、可搬式搬送器装置における他の臓器灌流装置、例えば、普通のクーラー又は可搬容器に搬送できる構成とし、このような可搬式搬送器装置としては、本願と同時に出願した米国特許出願第09/161,919号、又は米国特許第5,586,438号明細書に記載のものがあり、これら特許出願及び特許は参考のため述べた。
【0047】
これら実施例において、搬送時には、臓器は臓器支持面66に配置し、カセット65は、例えば、図11Aに示すように好適には、無菌バッグ69内に閉塞するのが好ましい。臓器を薬液で灌流するとき、流出する薬液をバッグ69内に収集し、臓器槽を形成する。代案として、カセット65に流体密の下方部分を形成することができ、この下方部分に流出薬液を収集するか、流出する薬液を臓器室40内に収集して臓器槽を形成するようにする。いずれの実施例においても、カセットを臓器室40に挿入する前に、バッグ69を取り外すのが好ましい。更に、複数個の臓器に対して灌流処置を行う場合、臓器室は各臓器毎に設ける。代案として、カセット65は図17の二重蓋付きカセットとし、可搬式臓器搬送器内に収納して運搬する。
【0048】
図19には、本発明による搬送器1900の実施形態における外部の状態を示す。図19の搬送器1900は、直立状態をとり易くした安定のよい底部と、搬送器1900を持ち運ぶための把手1910を設ける。搬送器1900には肩掛けストラップ及び/又はホイールを装着し、搬送器1900を運び易くする。制御パネル1920を設けると好適である。制御パネル1920は特性を表示するものとし、例えば、これに限定するものではないが、注入圧力、電源オン/オフ、エラー又は故障状態、流量、流れ抵抗、注入温度、槽温度、ポンプ送給時間、バッテリチャージ、温度輪郭(最大及び最小)カバー開閉、履歴ログ又はグラフ、他の状態詳細及びメッセージを表示し、これらがデータ蓄積及び/又は分析のための遠隔位置に転送可能にすると好適である。搬送器1900における流れセンサ及び圧力センサ又は変換器を使用し、ポンプ圧力及び臓器の血管抵抗等の種々の臓器特性を計算し、これら特性をコンピュータメモリに記憶し、例えば、血管抵抗履歴の分析を行ったり、上昇した圧力のような装置内における欠陥を検出したりすることができるようにする。
【0049】
搬送器1900にラッチ1930を設け、ユーザーが開放動作を確実に行い、搬送中に搬送器1900が不慮に開放する危険性を回避する。ラッチ1930は頂部1940を搬送器1900における所定位置に保持する。頂部1940又はこの部分は、光学的にクリアな材料により構成し、カセット及び臓器灌流状態を観察できるようにする。搬送器1900にはカバー開放検出器を設け、カバーの開閉をモニタ及び表示する。搬送器1900は種々の厚さの絶縁外部を有する構成とし、搬送の程度及び距離に応じてユーザーが搬送器1900を変化させることができるようにする。実施例においては、隔室1950を設け、チャートのような患者及び臓器データ、検査器具、他のバッテリ、携帯コンピュータ装置及び/又は搬送器1900に使用する他のアクセサリを収納できるようにする。搬送器1900には、UNOSラベル及び/又は識別表示及び返送情報のための手段を有する構成とする。
【0050】
図20には搬送器1900の縦断面を示す。搬送器1900は、カセット65とポンプ2010とを有する。カセット65は、導管セット400をカセット65から取り外すことなく搬送器1900内に出し入れできるようにし、臓器の無菌性を維持できるようにする。搬送器1900におけるセンサは、搬送器1900におけるカセット65の有無を検出することができ、センサに基づいて、カセット65に一体に設けたバーコード、無線周波数、又は他のスマートタグから臓器識別情報を読み取ることができるようにする。このことにより、臓器の自動識別及び追跡を行い、管理履歴をモニタしまた管理することを容易にする。全地球測位システムを搬送器1900及び/又はカセット65に付加して臓器の追跡調査を容易にする。搬送器1900は、ローカルエリアネットワークとの有線接続によって、又は無線通信によって移動中でもコンピュータネットワークにインターフェイス接続できるようにする。このインターフェイスによれば、灌流パラメータ、血管抵抗、及び臓器識別情報、搬送者、及びカセット位置をリアルタイムに追跡並びに表示することができ、又は他の分析のための捕捉を行うことができる。
【0051】
搬送器1900には、更に、フィルタ2020を設け、直径が0.05〜15ミクロン又はそれより大きい寸法の範囲の沈降物及び他の粒子物質を灌流液から除去し、装置又は臓器が詰まるのを防止する。搬送器1900には、更に、バッテリ2030を設け、搬送器1900の底部、又はポンプ2010の下方、又はバッテリ2030の交換が容易である他の位置にバッテリを配置する。バッテリ2030は、搬送器1900の外側で又は搬送器1900に収納したままで再充電可能にするか、及び/又は好適には、電源を入れたままで交換可能にする。バッテリ2030は急速充填可能にすると好適であり、完全放電しないものとする。搬送器1900には、更に、付加的な保管スペース2040を底部に設け、電源コード、バッテリ及び他のアクセサリを収納可能にする。搬送器1900には、また、自動車又は飛行機のような乗り物のDC接続のための、及び/又はAC接続のための電源部分を設ける。
【0052】
図21には搬送器1900のブロック図を示す。図21の搬送器1900は主に低体温灌流を行うことを意図するものであり、また例えば、−25゜C〜60゜Cの範囲における任意の温度、例えば、約0゜C〜8゜C、好適には、約4゜Cの温度で動作させる。温度は、使用する特定液体に基づいて調整し、特別な搬送詳細条件、例えば、搬送時間の長さに適合させる。極低温材料を使用する実施例においては、臓器凍結を防止する設計にすべきである。臓器を包囲する灌流槽の温度は温度変換器2115によってモニタする。搬送器1900にフィルタ2020を設け、直径が0.05〜15ミクロン又はそれより大きい寸法の範囲の沈降物及び他の粒子物質を灌流液から除去し、装置又は臓器が詰まるのを防止する。フィルタ2020をポンプ2010の下流域に使用することにより、不慮のポンプ残滓を捕捉し、またポンプ2010の圧力急変を減衰することができる。
【0053】
搬送器1900内における灌流液の流れをポンプ2010によって制御し、このポンプ2010は蠕動ポンプ又はローラポンプとするとよい。ポンプ2010は、好ましくは灌流液に接触させず、無菌性を維持する補助となるようにする。更に、導管セット400は、導管回路を開放せずにポンプ2010に取り付ける。ポンプ2010はコンピュータ又はマイクロコンピュータによって制御する。コンピュータはポンプ2010の角速度を能動的に調整し、ポンプ2010の自然の脈動を低レベルに低下させ、従って、脈動のない流れにすることができるようにする。更に、コンピュータ制御によって合成した圧力パルス輪郭にし、正弦波的、又は生理学的、又は他の形状の輪郭にすることができる。平均流量及び平均圧力は、パルス幅変調又は振幅変調によってパルス反復率に無関係となるようにすることができる。パルスパラメータのうちの若干又はすべてに対する制御はユーザーが制御パネル1920から又はネットワークから行うことができる。パルス制御は臓器に固有のものとすることができる。肝臓の場合、単独のポンプにより、連続的な流れを入口となる血管に、例えば、1〜3リットル/分の割合で供給するとともに、肝動脈に、例えば、100〜300ml/分の割合で脈動的流れを供給する。ポンプコントローラに対するシャント(分流)弁の同期により、2個の流れの圧力調整を互いに独立したものとすることができる。
【0054】
臓器への灌流液の流れを流れセンサ2125によってモニタする。圧力変換器2120を設け、導管における灌流液の圧力をモニタする。圧力変換器2120を使用して、ポンプ圧力及び/又は注入圧力をモニタする。圧力変換器2120は臓器のすぐ上流域に配置すると、臓器注入圧力をモニタすることができる。搬送器1900には気泡検出器2125を設け、灌流液が気泡トラップ2130に流入する前に気泡を検出する。気泡検出器2125のような気泡検出器を使用して、例えば、注入ライン及び/又はポンプ出力ラインにおける気泡を検出できるようにする。気泡トラップ2130は灌流液から気泡を除去し、気泡を洗浄チューブに逃がす。気泡トラップ2130は使い捨て可能にし、導管セット400に一体に構成する。気泡トラップ2130から流出する灌流液は注入弁2140又は洗浄弁2150のいずれかを経て流れ続けることができる。好適には、洗浄弁2150及び注入弁2140は、一方の弁が開いたとき、他方の弁が開くよう択一的にオン/オフ動作する。注入弁2140は平素閉鎖しているが、センサ及びモニタが搬送器1900内のすべての灌流パラメータが適正であることをリポートする場合には、注入弁2140は開いて臓器灌流を行うことができる。障害が発生した場合、例えば、臓器の適正レベルを越える上昇した灌流圧力を生じたとき、注入弁2140は閉鎖状態に切り替わり、洗浄弁2150を開き、臓器を包囲する灌流槽に向かうよう液体の流れを転向させる。このことにより、フェールセーフ機構を生じ、自動的に灌流液の流れを転向させ、電源障害、又はコンピュータ若しくは電子回路誤動作における臓器灌流を行わないようにする。参照符号P2 を付した圧力変換器2120は、コンピュータ及びソフトウェア制御に加えて、洗浄弁2150及び注入弁2140に接続し、圧力異常が生じた場合に弁に対して障害メッセージを即座に伝送できるようにする。実施例によっては、転向した液体を他の容器又は隔室に個別に収集する。
【0055】
図22は、搬送器1900の種々の動作状態を示す。例えば、制御パネル1920に設けた制御部を使用し、ユーザーは、例えば、灌流、アイドル、洗浄、及びポンプのプライム(呼び水差し)のような動作を選択する。図22は搬送器1900のそのときの状態に基づく種々のオプションを示す。アイドル、プライム、灌流、及びエラー処理のラベルは、搬送器1900の状態を示し、対応の動作中に制御パネル1920に表示するのが好ましい。例えば搬送器1900が洗浄動作にあるときは、洗浄動作インジケータ、例えばLEDディスプレイが点灯するようにする。搬送器1900の種々の動作を結ぶ矢印は、手動及び自動のアクションを示し、これらのアクションによって搬送器1900が動作状態間の遷移を生ずる。手動アクションは、ユーザーが例えば、ボタンを押したり、ノブ若しくはダイヤルを回したりすることによる行為を必要とする。図22は、ボタンや他のインジケータを押すことを例示し、例えば、ストップボタンを押すことにより(ストップを押す)灌流動作をアイドル動作に移行する。アイドル動作から灌流動作に直接移行するには、ユーザーは灌流ボタンを押す(灌流を押す)。
【0056】
自動動作は、時間の経過及び/又は搬送器1900内の内部モニタによって制御される。このような自動動作を図22に示し、例えば、プライム動作をアイドル動作に結びつける。洗浄ボタンを押す前に搬送器の内部プログラムのパラメータに従ってプライム動作が完了した場合、搬送器1900はアイドル動作に復帰する。他の自動動作は、灌流動作中に障害又はエラーを生じた場合、例えば、臓器の過剰圧力が発生した場合に生ずる。エラー又は障害が発生したとき、搬送器1900はエラー処理動作に移行し、障害又はエラーの程度若しくは度合いを判定する。障害又はエラーが僅かなもの、又は修正可能のエラーであると判定した場合、搬送器1900は洗浄動作に移行する。このとき搬送器1900はシステムパラメータを調整して障害又はエラーを処理した場合、搬送器1900はアイドル動作に移行する。エラー又は障害が甚大であると判定した場合、搬送器1900は直接アイドル動作に移行する。
【0057】
図23は、搬送器1900の他の断面を示す。搬送器1900は、金属製又は好適には、浸透及び衝撃に対する耐久性のある十分な強度のプラスチック製若しくは合成樹脂製の外側エンクロージャ2310を有する。搬送器1900には、絶縁層2320、好適には、例えば、グラスウール又は膨張ポリスチレンで形成した断熱層を設ける。絶縁層2320は0.5インチ〜5インチ(12.7mm〜127mm)の範囲の種々の厚さ、好適には、1〜3インチ(25.4〜76.2mm)の厚さ、例えば、2インチ(50.8mm)とする。搬送器1900は冷却剤2110、例えば、氷と水の槽、又は起寒剤によって冷却する。起寒剤を使用する実施例においては、臓器凍結を防止する設計とすべきである。氷と水の混合は、初期的に1対1の割合にするのが好ましいが、氷と水の実施例では、槽が凍結しないものとする。搬送器1900は種々の量、好適には、10〜12リットルの冷却剤を保留することができる構成とする。氷と水の槽は、安価でありかつ臓器を凍結させるほど冷たくならないので好ましい。冷却剤2110は最低6〜12時間持続するのが好ましく、より好適には、冷却剤を交換することなく最低30〜50時間持続するものとする。冷却剤のレベルは、搬送器1900の透明領域から見通せるようにするか、センサによって自動的に検出及びモニタすることができるものとする。冷却剤2110は、灌流を停止したり、搬送器1900からカセット65を取り出すことなく交換できる。冷却剤2110は搬送器1900の液密の隔室2115内に保持する。隔室2115は搬送器1900を傾けたり、反転させたりする場合に冷却剤が漏れるのを防止する。灌流リザーバ及びカセット65の壁から冷却剤2110に熱が伝達され、所要温度範囲に制御できるようにする。冷却剤2110はフェールセーフの冷却機構であり、これは電源障害又は電気的若しくはコンピュータ誤動作の場合にも搬送器1900が自動的に冷却保存をするよう修復するからである。搬送器1900は、更に、ヒータを設ける構成にし、灌流温度を上昇できるようにする。
【0058】
搬送器1900はバッテリ又はプラグ2330から供給される電源によって動作する。電子モジュール2335を搬送器1900に設ける。電子モジュール2335は通気対流2370によって冷却し、また更にファンによって冷却する。好適には、電子モジュール2335を灌流チューブから離して位置決めし、灌流液が電子モジュール2335を濡らさないようにし、また電子モジュール2335からの外部熱が灌流液に伝達するのを回避する。
【0059】
搬送器1900にポンプ2010を設け、圧力を灌流導管2360に供給し、灌流液2340を臓器2350に送給する。搬送器1900を使用して種々の臓器、例えば、腎臓、心臓、肝臓、小腸、及び肺臓を灌流する。搬送器1900及びカセット65は、種々の量、例えば、3〜5リットルの灌流液を収容する。好適には、約1リットルの低体温灌流液2340を使用して臓器2350を灌流する。臓器2350は種々の臓器とすることができ、腎臓、心臓、肺臓、肝臓又は小腸には限定されない。
【0060】
カセット65及び搬送器1900は効率のよい熱伝導を可能にする構成とするのが好ましい。カセット65及び搬送器1900の配置素子は、カセット65を搬送器1900内に配置したとき搬送のために固定できる構成とするのが好ましい。
【0061】
図24は、臓器移植前、移植中及び移植後に有益な全体的通信及びデータ転送に役立つ種々のデータ構造及び情報関連を示す。灌流装置、搬送器、カセット、及び臓器診断装置をネットワーク接続し、リモート管理、保管する又は搬送する臓器の場所、治療パラメータ及び診断パラメータの追跡及びモニタリングを行うことができるようにする。情報システムを使用し、臓器搬送及び保管の履歴データをコンパイルし、また病院、並びにドナー及び被移植者に関するUNOSに関するクロスレファレンスを行えるようにする。このシステムは、更に、経過データを供給し、灌流パラメータ及び移植経過に関して容易に情報収集ができるようにする。例えば、ドナーに関する情報は、ドナーから臓器を回収した場所で入力する。情報は灌流、診断及び搬送器装置から直接回収し、臓器状態及び場所をモニタする。種々のタイプの情報はサブの記録又はサブのディレクトリにグループ分けし、データ管理及びデータ転送に役立てる。すべてのサブの記録を組み合わせてすべての移植記録を形成し、追跡調査及びモニタリングのために、医師、科学者、又は他の組織の人々によって頒布したり、検索可能にしたりする。
【0062】
好適な実施例の搬送器1900は、自動的に灌流処理データの多く又はすべてのログを記録し、内部データベースに蓄積する。各カセット65に対して無線周波数化又はバーコードラベル化したタグ等により、搬送器1900は、各臓器毎に一意に決まるデータを参照する。搬送器1900が引き渡しポートに到着したとき、搬送器1900はデータをメインのデータベースコンピュータにLANによってアップロードすることができる。搬送器1900は、更に、LANに接続したときはいつでもリアルタイムに状態を示すことができる。搬送器1900には無線通信をセットアップできる構成にし、搬送中にリアルタイムのデータ転送を行えるようにする。灌流装置1もLANに接続できるようにし、灌流装置は一般的に固定的であるため、データのアップロードは連続的かつリアルタイムに行うことができる。データはUNOSとクロスリファレンスし、臓器識別、ドナー条件、ドナーのロジスティクス、被移植者のロジスティクス、及び被移植者の経過に関するUNOSデータを利用できるようにする。データはインターネット上で表示及びアクセスでき、いかなる場所からでも容易にモニタリングできるようにする。
【0063】
灌流、診断及び/又は搬送器装置内で、臓器槽は、図2に示すように、臓器室40に熱伝導接触する第2熱電気ユニット30bによって所定温度に冷却するのが好ましい。臓器灌流装置を搬送すべき場合に、代案として、又は好適には、リザーバ10内の薬液を、熱伝導装置例えば、氷と水の槽又は本願と同時に出願中の米国特許出願第09/039,443号に記載のような起寒媒体熱交換器装置により冷却することができる。臓器室40内の温度センサT2により臓器60の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、及び/又は手動調整のための制御及び表示領域5Cに温度表示する。
【0064】
薬液はバッグ15aから臓器室40に配置した臓器60に直接供給し、又はバッグ15bから導管50d,50e,50cからそれぞれ弁LV及びLVを開いて供給する。すべての導管を使い捨て可能、容易に交換可能、相互交換可能にする。更に、すべての導管は使用する薬液と共存できる材料によって形成するか、又は被覆するのが好ましく、より好適には、血栓を生じない材料で形成又は被覆する。導管50cの端部を臓器60に挿入する。導管は従来の方法例えば、縫合により臓器に接続する。導管にリップを設け、臓器に接続し易くする。代案として、臓器チェア1800との接続の有無に係わらず、上述のカニューレ1820を使用する。しかし、灌流すべき臓器タイプに基づいて特定の方法及び接続を行う。
【0065】
マイクロプロセッサ150は、圧力センサP1からの信号に応答して圧力源20を制御し、臓器60に供給される薬液の圧力を制御する。マイクロプロセッサ150は、随意の手動調整のために、制御及び表示部5aに圧力を表示する。薬液の流れのモニタF1を導管50cに設け、臓器60に流入する薬液の流れをモニタし、例えば、臓器に漏れがあればいかなる漏れも表示するようにする。
【0066】
代案として、薬液をリザーバタンク17から導管51を介して中間タンク70に供給し、この中間タンク70は約5〜40mmHgの圧力ヘッドを有するものとする。この後、薬液は重力又は好適には、圧力によって、弁LVを動作させて中間タンク70から導管50cに沿って臓器60に供給する。レベルセンサ71を中間タンク70に設けて圧力ヘッドを維持する。複数個の臓器室40及び臓器60を設ける場合、図2に示すのと同様の適当な導管を使用して臓器60をリザーバ10に並列的に接続する。例えば、図12参照。システム障害に場合に過剰加圧状態を回避するよう構成した空気的加圧及び重力による供給を行う流体ポンプを使用することにより、臓器にダメージを与える一般的な組織及び臓器の毛細血管層にダメージを与える洗い流しを減少又は阻止する。このように、このシステムにおける臓器灌流を行い、例えば、流体静力学的灌流(重力又は圧力供給の流れ)又は蠕動(ローラ)ポンプから臓器に流れを生ぜしめる蠕動灌流によって灌流を行うことができる。
【0067】
気泡検出システムを組み込んで灌流液内の気泡を感知する。窪みセンサ及びセンサボードを使用すると好適である。センサ出力によって除泡システムを作動させ、例えば、ソレノイド弁を開放し、臓器に導入される前に灌流液の流れから気泡を排除する。このシステムにおけるセンサ及び検出器のすべてとともに、気泡検出器は、このシステムにおいて、システムの特定のパラメータ又は設計特性に基づいて有効である任意のポイントに配置する。例えば、気泡検出器及び除泡システムBDを、図1に示すようにカムバルブ205と圧力センサP1との間に配置する。
【0068】
ステップモータ/カムバルブ205又は回転ねじバルブのような他の適当な可変バルブを導管50cに配置し、薬液を脈動的に臓器60に供給し、臓器に供給される薬液の圧力を減少し、及び/又は灌流液圧力が所定値を越えた場合に臓器60に流入する薬液の流れを停止したりする。代案として、転向装置又は分流ラインを灌流装置に設け、過剰圧力のような障害が生じたとき、例えば、1個のバルブ又は一連のバルブを開閉することにより流体の流れを転向させる。ステップモータ/カムバルブの特別な実施例を、図13A,13B及び図14A〜14Fに示す。図13A,13Bはステップモータ/回転型カムバルブを示す。
【0069】
図13Aは装置の頂面図である。導管、例えば、導管50cを支持体203とカム200との間に介在させる。カム200をロッド201によってステップモータ202に連結する。図13Bは装置の側面図である。点線はカム200の回転スパンを示す。図13Bにおいて、カム200は非閉塞位置を示す。この状態から180゜回転すると、カム200は導管50cを全体的に閉塞し、非閉塞位置と完全閉塞位置との間で変動する。このステップモータ/カムバルブは、例えば、図14A〜図14Fに示す実施例に比べると比較的迅速であるが、強力なステップモータを必要とする。
【0070】
図14A〜図14Fは、本発明による他のステップモータ/カムバルブ210を示す。図14Aは装置の側面図であり、図14Cは頂面図である。導管、例えば、導管50Cをカム220と支持体223との間に介在させる。カム220をステップモータ222に支持体221a〜221d及び螺旋ねじ225を介して連結し、この螺旋ねじ225はプレート222aを介してステップモータ222に連結する。図14Bは支持体221a及びプレート222aの正面図を示す。 図14Dに示すように、支持体221dが螺旋ねじ225の中心の左方にある場合、導管50cは閉塞されない。しかし、螺旋ねじ225がステップモータ222によって回転するにつれて、支持体221dはカム220が導管50cを部分的に閉塞する位置又は完全に閉塞する位置に向かって右方に移動する。このような装置は図13A,13Bの装置より緩慢であるが、エネルギ効率がよい。
【0071】
臓器60から流出してバッグ69(カセット65又は臓器室40)の底部で収集される薬液は、ポンプ80によって導管81を経て濾過のため排出され、フィルタユニット82を通過し、また臓器槽に帰還し、又はポンプ90によって排出されて導管91を循環する。ポンプ80,90は、普通のローラポンプ又は蠕動ポンプとすることができる。しかし、他のポンプを使用してもよい。
【0072】
図25はポンプ及びパルスコントローラ2500の簡単な説明図であり、ポンプ及びパルスコントローラ2500と図1に示す灌流装置との相互作用を示す。ポンプ及びパルスコントローラ2500は、圧力センサPから圧力センサデータ入力及びタコメータデータ入力2520を受ける。タコメータは実際の波形の位相角度を設定するのに使用する。ポンプ及びパルスコントローラ2500はこの情報をモータ駆動の出力2530に変換し、この出力によってポンプ2540を動作させる。図25Aはポンプ及びパルスコントローラ2500が行う種々の動作モードを示し、またポンプ及びパルスコントローラ2500がどのようにして灌流液の流れから脈動圧力波形を排除するか、またどのようにして灌流液の流量を調整するとともに圧力パルス速度を一定に維持するかを示す。
【0073】
一定速度で駆動される蠕動ポンプにより、関連の導管内に一定の圧力波形を生ずる。図25Aは第1動作モードで蠕動ポンプに加わる一定駆動速度から生ずる波形を示す。いわゆる能動連続と称する第2動作モードは、ポンプの圧力波形に対向するモータ駆動波形を適用することによりどのようにして圧力パルス波形を排除又は相殺するかを示す。いわゆる能動的波形振幅変調と称する第3動作モードでは、ポンプ圧力パルス波形をモータ駆動波形によって相殺し、また選択した波形に元の圧力パルス波形振幅と比べると新しい振幅を付加する。いわゆる能動的波形パルス幅変調と称する第4動作モードでは、ポンプ圧力パルス波形をモータ駆動波形によって相殺し、また選択した波形に、元の圧力パルス波形の幅に比べると新しいパルス幅を付加する。他の動作モードにおいて、新しい周波数の波形を相殺した波形に付加することにより周波数変調する。
【0074】
マイクロプロセッサ150(図3参照)と通信するレベルセンサL2により、流出する薬液の所定レベルを臓器室40内に維持する。図2に示すように、導管91に配置した温度センサT1により導管91に沿って臓器槽からポンプ排出される薬液の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、この温度をモニタする。導管91に沿って配置した圧力センサP2によりこの導管内の圧力をマイクロプロセッサ150に中継し、導管91内の流体圧力が所定限界を越えた場合に、システムを遮断するか、アラームを発生してシステムが遮断したことをオペレータに気付かせ、例えば、フィルタ等をクリーニングするようにする。
【0075】
導管91に沿って薬液をポンプ送給するとき、フィルタユニット95(例えば25μ、8μ、2μ、0.8μ、0.2μ及び/又は0.1μのフィルタ)を通過させ、また、COスクラバー(こすり落とし手段)/O薄膜100、酸素添加装置110例えば、JOSTRA(商標名)の酸素添加装置を通過させると好適である。COスクラバー/O薄膜100は、エンクロージャ内で親水性(例えば、Hypol)の被覆を施した疎水性微細多孔質薄膜とすると好適である。真空源(図示せず)を使用し、バルブVVを動作させることにより親水性被覆に対向する側に低い真空を加える。約100mmHgの流体静力学的圧力が薄膜に流体を通過させるようにするのに好適である。機械的な逃がし弁(図示せず)により、このレベルを達成するから逸脱する圧力を防止する。固定化した炭素無水物を親水性被覆に設けることができる。このようにすることによって、重炭酸塩をCOに転換し、また真空通気によって相当量を除去することができるようになる。しかし、重炭酸塩を排除する能力を有する腎臓のような臓器では、特定の場合の除いてこのことは不必要である。
【0076】
酸素添加装置110は2段階の酸素添加装置とするとよく、この酸素添加装置には親水性被覆した低多孔性酸素透過薄膜を設けるのが好ましい。薬液の一部は酸素添加装置の周りに分流して導管111を通過し、この導管111内に生存力センサV1を配置し、この生存力センサによって、液体の特性、例えば、臓器抵抗(圧力/流れ)、pH、pO、pCO 、LDH、T/GST、Tプロテイン、乳酸塩、グルコース、臓器の生存力を示す塩基過剰のイオン化カルシウムレベルを感知する。生存力センサV1はマイクロプロセッサ150と通信し、臓器の生存力を自動的又は手動で判定する。2個のガス、好適には、100%酸素及び95/5%酸素/二酸化炭素混合ガスのうちの一方を、転向した薬液のpHレベルに基づいて薄膜の反対側に配置する。代案として、他のポンプ(図示せず)を設け、臓器室40から流出する薬液を汲み出し、臓器槽に帰還させる前に生存力センサに通過させるか、ポンプ80を使用する導管81に生存力センサを配置する。実施例によっては、流体特性を図28〜図31に示す個別の診断装置及び/又は分析装置内で分析する。
【0077】
例えば、臓器抵抗(圧力/流れ)、pH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、乳酸塩、グルコース、塩基過剰レベル及びイオン化カルシウムレベル等の感知した液体特性を使用して臓器の生存力を分析及び決定する。特性は個別に分析するか、又は複数個の特性を分析して種々の因子の作用を形成する。特性は臓器の静脈流出血液を捕集し、その化学的性質を流入灌流液と比較することによって測定する。静脈流出血液を直接捕集して測定するか、又は臓器槽を測定してある期間にわたり比較のため液体特性のおおよその見積もりを得る。
【0078】
実施例によっては、臓器生存力指数を、上述の測定した種々の因子、例えば、上述の血管抵抗、pH等を考慮しつつ得る。指数は、臓器に固有のものであったり、種々の臓器に適用できるものであったりする。指数はモニタしたパラメータを診断サマリーにまとめ、この診断サマリーを臓器治療判定、及び臓器移植の可否を決定するのに使用する。指標は自動的に生成され、医師に提供される。指標は灌流装置、搬送器装置、カセット及び/又は臓器診断装置に接続したコンピュータによって生成するのが好ましい。付加的な情報、例えば、ドナー固有情報を灌流装置、搬送器装置、カセット及び/又は臓器診断装置の側の単独のコンピュータに入力するか、灌流装置等にリンクしたリモートコンピュータに入力する。実施例によっては、指標はコンピュータネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク又はインターネットを介して入手可能にし、迅速比較、リモート分析、及びデータ記憶を行うことができるようにする。
【0079】
臓器生存力指数は、pH、pO、pCO、LDH、T/GST、Tプロテイン、乳酸塩、グルコース、塩基過剰レベル及びイオン化カルシウムレベルに基づいて、血管抵抗並びに灌流液の化学的特性の各特性の測定値及び平常の範囲を示す。例えば、約5゜Cでの平常pHは7.00〜8.00、好適には7.25〜7.75であり、より好ましくは7.50〜7.60であり、塩基過剰レベルは−10〜−40であり、好適には−15〜−30であり、より好ましくは−20〜−25である。平常範囲の外側の測定値は、例えば、アスタリスク又は他の適当な表記によって視覚的に、又は聴覚的に、又は機械的に感知できる信号によって表す。特性は、医師に対して、代謝、グルコース消費量、乳酸の生成、酸素消費量の安定性のような臓器代謝に関する所見を与える。
【0080】
指標は、ドナーの年齢、性別、血液型のような識別情報、及び任意の拡張した基準、臓器採取日付及び時間、温血欠乏時間、冷血欠乏時間、血管抵抗のような臓器情報、ポンプが動作する流量及び経過時間、ポンプ圧力のような装置情報、UNOS番号及び担当医師のような他の識別情報をも与える。指標は、更に、所要に応じて温度補正をも示す。
【0081】
再び図2を参照して説明すると、ポンプ90、フィルタユニット95、COスクラバー/O薄膜100、及び/又は酸素添加装置110の代わりに、灌流装置1における薬液及び灌流液の流れ及び/又は処理として、同時に出願した同時係属中の米国特許出願第09/039,318号(参考までに本明細書に述べた)に詳細に説明したモジュール型ポンプ、フィルタ装置、酸素添加装置及び/又は除泡装置を使用することができる。図4〜図10に示すように、装置5001は積層可能なモジュールにより構成する。装置5001は、システムから液体をポンプ送給し、並びに液体に対して酸素添加し、濾過し、及び/又は除泡することができる。モジュールのそれぞれは、複数個の積層可能な支持部材により形成し、必要な構成部材を有するコンパクトな装置を形成するよう容易に結合可能である。濾過、酸素添加及び/又は脱気薄膜を支持部材間に配置する。
【0082】
図4〜図8に、図9〜図10に示すポンプ送給、濾過、酸素添加及び/又は除泡装置5001のような組み合わせ機能装置を形成する積層した種々のモジュールを示す。これら図面に示すように、機能組み合わせのポンプ送給、濾過、酸素添加及び/又は除泡装置5001は、1個又はそれ以上のモジュールを形成するようグループ分けできる複数個の積層可能な支持部材により形成するのが好ましい。
【0083】
複数個の積層可能な支持部材間に、特別なユーザーの要求に応じて、濾過、酸素添加及び/又は除泡薄膜を介在させることができる。濾過、酸素添加及び/又は除泡薄膜は、市場で知られているように親水性化、例えば、エトキシル基によって接ぎ合わせ、タンパク質欠乏を回避し、例えば、血液に対するような生体適合性を高め、凝固性向を減少するようにした市販のマクロ網状疎水性ポリマー薄膜とするのが好ましい。濾過薄膜は、親水性化し、15〜35μ、より好ましくは20〜30μの範囲の孔寸法を有する多孔質を有し、液体の細胞成分又は分子成分を濾過することな液体内の残滓は濾過するのが好ましい。除泡薄膜及び酸素添加薄膜は、液体‐ガス界面を維持するよう処理した親水性表面を有する薄膜とする。除泡薄膜及び酸素添加薄膜は15μ、より好ましくは10μ以下の孔寸法の多孔質とするのが好ましい。
【0084】
モジュールは、図4に分解して示す第1ポンプモジュール5010と、図5に分解して示す濾過モジュール5020と、図6に分解して示す酸素添加モジュール5030と、図7に分解して示す除泡モジュール5040と、図8に分解して示す第2ポンプモジュール5050とを有する。ポンプモジュールはそれぞれポンプ流体源に接続し、手動又はマイクロプロセッサによって動作させる。支持部材は同様の形状にするのが好ましい。例えば、支持部材はそれぞれプレート状の形状にするが、他の形状でもよい。図10に示すように、支持部材はねじ又はボルト5065によって着脱自在に連結するのが好ましいが、装置を組み立てる他の締め付け具でもよい。
【0085】
第1ポンプモジュール5010は、好適には、第1(端部)支持部材5011と、切欠き中心領域5012Cを有する第2支持部材5012と、ダイヤフラム5013と、第3支持部材5014とを有する。このモジュールの支持部材及び他のモジュールの支持部材は、好適には、薄くしかもほぼ平坦(プレート状)であるのが好ましく、適当な剛性と、生体適合性を有する任意の適当な材料により構成することができる。例えば、種々の樹脂及び金属が容認できる。好適な材料としては、アクリル/ポリカーボネート樹脂がある。
【0086】
第1(端部)支持部材5011は固体とするのが好ましく、ポンプモジュール5010のための支持体をなすものとする。第1(端部)支持部材5011は、空気のようなポンプ流体を収容するためのドーム状のキャビティを有するものとして構成するとよい。導管5011tを設け、ポンプ流体がポンプモジュール5010に流入できるようにする。ダイヤフラム5013を任意の適当な弾性の、また好適には生体適合性を有する材料により形成し、好適には、ポリウレタンにより形成する。第3支持部材5014は、ドーム状の流体キャビティ5014dと、例えば、血液又は人工的な灌流液のような流体をポンプモジュール5010のキャビティ5014d内に導入する導管5014tとを有する。第1ポンプモジュール又は他の任意のモジュールは、更にセンサ等のためのポート5014pを設ける。更に、血液適合性の逆止弁を使用してポンプモジュール5010に一方向の流れを生ぜしめるのが好ましい。
【0087】
フィルタモジュール5020は、好ましくは、キャビティ5014dの境界を形成するフィルタ薄膜5021mと、切除中心領域5022cを有する第1支持部材5022と、除泡薄膜5022mと、第2支持部材5023及び第3支持部材5024とを有する。フィルタ薄膜5021mは、例えば、血液に対する生体適合性を向上しかつ凝集性向を減少するよう変更した(装置における他の支持体、フィルタ及び薄膜も同様に変更する)25μの微細網状フィルタ薄膜とするとよい。除泡薄膜5022mは、生体適合性を高めるよう変更して、少なくとも100mmHgの逆流水の差圧を加えてCO除去を行う表面を有する0.2〜3μの微細網状除泡薄膜とすると好適である。
【0088】
第1支持体5022は、液体がフィルタ薄膜5021を経て除泡薄膜5022mに沿って通過した後に液体を酸素添加モジュール5030又は適用可能であれば他の隣接モジュールに送り込む導管5022tを設ける。フィルタモジュール5020の第2支持部材5023は、ドーム状の流体キャビティ5023dと、このキャビティ5023dに真空を加えて除泡薄膜5022mを通過する液体からガスを除去する導管5023tを設ける。第3支持部材5024は、中実固体とし、フィルタモジュール5020のための支持体をなすようにする。第3支持部材5024は、更に、以下に説明するように酸素添加モジュール5030の除泡薄膜5031mを通過する液体からガスを除去するために真空を加える導管5024tを設けることもできる。フィルタモジュール5020又は他の任意のモジュールは、センサ等のためのポート5023pを設ける。
【0089】
酸素添加モジュール5030は、除泡薄膜5031mと、第1支持部材5032と、フィルタ薄膜5033mと、酸素添加薄膜5034mと、切除中心領域3034cを有する第2支持部材5034と、第3支持部材5035と、第4支持部材5036とを有する。除泡薄膜5031mは、少なくとも100mmHgの逆流水差圧が加わる生体適合性を高めるよう変更した表面を有する0.2〜3μの微細網状除泡薄膜とすると好適である。
【0090】
第1支持部材5032はドーム状の流体キャビティ5032dを有する。ドーム状流体キャビティ5032dの表面は流体のための曲がりくねった流路を形成し、液体の酸素添加及び除泡効果を高める。フィルタ薄膜5033mは、生体適合性を高めるよう変更した25μの微細網状フィルタ薄膜とすると好適である。酸素添加薄膜5034mは、少なくとも100mmHgの逆流水差圧が加わる生体適合性を高めるよう変更した表面を有する0.2〜1μの微細網状除泡薄膜とすると好適である。
【0091】
第2支持部材5034は、酸素添加モジュール5030から流出する流体を除泡モジュール5040又は適用できれば他の隣接のモジュールに転送するための導管5034tを設ける。第3支持部材5035はドーム状キャビティ5035dと、外部の酸素供給源からの酸素を受け取る導管5035tを有する。第4支持部材5036は中実体とし、酸素添加モジュール5030の支持を行う。
【0092】
除泡モジュール5040は、第1支持部材5041と、フィルタ薄膜5042mと、除泡薄膜5043mと、切除中心領域5043cを設けた第1支持部材5043と、第3支持部材5044とを有する。第1支持部材5041はドーム状の流体キャビティ5041dを有する。
【0093】
フィルタ薄膜5042mは、生体適合性を高めるよう変更した25μの微細網状フィルタ薄膜とすると好適である。除泡薄膜5043は、少なくとも100mmHgの逆流水差圧が加わる生体適合性を高めるよう変更した表面を有する0.2〜3μの微細網状除泡薄膜とすると好適である。第2支持部材5043は、除泡モジュール5040から流出した流体をポンプモジュール5050、又は適用できれば他の隣接モジュールに転送する導管5043tを有する。第3支持部材5044は、ドーム状キャビティ5044dと、除泡薄膜5043mから流出した流体からガスを除去する真空を加える導管5044tとを有する。
【0094】
第2ポンプモジュール5050は第1ポンプモジュール5010に対応する。好適には、この第2ポンプモジュールには、第1支持部材5051と、ダイヤフラム5052と、切除中心領域5053cを有する第2支持部材5053と、第3(端部)支持部材5054とを設ける。第1支持部材5051は、ドーム状の流体キャビティ5051dと、ポンプモジュールから流体を流出させる導管5051tとを有する。ダイヤフラム5052はポリウレタン製のブラダ(嚢体)とすると好適である。
【0095】
第3支持部材5054は中実体とし、ポンプモジュール5050の支持を行うものとするとよい。支持部材5054は、ポンプ流体を受け入れるドーム状キャビティ(図示せず)を有するようにすると好適である。導管5054tは、ポンプモジュール5050に空気のようなポンプ流体を導入するために設ける。好適には、逆止弁の作用により、ポンプモジュール5050を経て一方向の流れを生ずるようにする。
【0096】
作用にあたり、導管5014tから第1ポンプモジュール5010に流入させた血液及び/又は薬液を、フィルタ薄膜5021mを経て除泡薄膜5022mに沿って通過させる。僅かな真空を導管5023tに加えて除泡薄膜5022mからガスを除去する。次に、血液及び/又は薬液を、内部導管5022tを経て酸素添加モジュール5030に移動させ、除泡薄膜5031m、フィルタ薄膜5033m及び酸素添加薄膜5034mを通過させる。酸素添加モジュール5030の第3支持部材のドーム状キャビティ5035dに導管5035tから酸素を流入させ、血液及び/又は薬液が酸素添加薄膜5034mに沿って移動するときこの再装置添加薄膜5034mから血液及び/又は薬液に酸素を導入する。
【0097】
酸素添加モジュール5030によって酸素を添加された後、血液及び/又は薬液は、内部導管5034tから除泡モジュール5040に移動する。血液及び/又は薬液は、フィルタ薄膜5042mを経て除泡薄膜5043mに沿って通過する。僅かな真空力を導管5044tから加え、除泡薄膜5043mを通過する血液及び/又は薬液からガスを除去する。除泡モジュール5040を通過した後、血液及び/又は薬液は導管5041tを経て第2ポンプモジュール5050に移動し、導管5051tを経て第2ポンプモジュール5050から流出する。
【0098】
酸素添加装置110を通過した後、又は代案として、組み合わせのポンプ、酸素添加、濾過及び/又は除泡装置5001を通過した後、循環薬液を、導管92a又は92b上の対応するバルブLV、LVを動作させて導管92a又は92bを使用せずにリザーバ15a又は15bに選択的に指向させるか、又はバルブLVを動作させることにより酸素を補充するための酸素室40に指向させるかする。圧力センサP3、P4は使用されていないバッグ15a又は15bに帰還する薬液の圧力をモニタする。機械的安全弁MVを導管91に設け、この導管での流れを手動で緊急遮断することができるようにする。更に、導管96及び手動弁MVを設け、使用後に装置をドレンし、臓器から流出する灌流液を循環させる(再循環モード)ことなく、廃棄させる単独通過モードで動作できるようにする。
【0099】
重炭酸塩リザーバ130、シリンジポンプ131及び導管132、真空バルブVV及び導管121a,122を経て真空(図示せず)に連通する排出除去ユニット120を、臓器室40に隣接して連通させるよう設ける。
【0100】
本発明は、複雑な脈管構造を有する臓器、例えば、肝臓に適用する灌流装置を提供する。例えば、図26に示す灌流装置2600を肝臓に使用する。灌流装置2600は、ローラポンプ又は蠕動ポンプとするのが好ましい単独のポンプ2610を有する。導管は、2個又はそれ以上の方向に分岐し、例えば、3個の導管のうちの導管(門脈導管2625)が肝臓の門脈血管側に指向し、1個の導管(肝動脈導管2626)の側に指向する。灌流装置2600の門脈側は、より多くの数の導管を有するものとすることができ、これは肝臓の門脈側は肝動脈側よりも3〜10倍の流量を使用するからである。図27にはポンプ2610と、門脈導管2625及び肝動脈導管2626分岐する配管の斜視図を示す。
【0101】
灌流装置2600の門脈側及び肝動脈側の双方に、フィルタ2630、気泡トラップ2640、圧力変換器2650、温度変換器2660、及び流量センサ2670を設ける。温度変換器2660を液体帰還導管2620にも設ける。臓器は、上述したように、例えば、氷及び水の槽2680、又は極低温流体によって冷却する。極低温輪郭を使用する実施例においては、臓器凍結を防止する設計とする。
【0102】
複数個のポンプを使用することができる。しかし、複数個のポンプは装置のサイズ及びコストを増大たせるのが一般的である。双方の脈管システムのために単独のポンプ2610を使用することは、肝臓を灌流するのに使用することができる種々のモードを行うことになる。各気泡トラップ2640の後で導管を2方向に分岐させる。肝動脈側では、肝動脈側注入バルブ2685により肝臓の肝動脈側への流れを制御し、また肝動脈側洗浄バルブ2686により臓器槽に流入する流れを制御する。門脈側では、門脈側注入バルブ2695により肝臓の門脈側への流れを制御し、また門脈側洗浄バルブ2696により臓器槽への流れを制御する。好適には、注入バルブ及び洗浄バルブの各対は、オン・オフ動作又は択一動作するようにするのが好ましい。換言すれば、例えば、門脈側を注入にセットするときは、門脈側洗浄バルブ2696は閉鎖するようにする。灌流装置2600の種々の動作モードを以下の表で示す。
【0103】
【表1】

【0104】
上述の表に示す動作モードは肝臓に注入するオプションを示す。第1モードは門脈専用モードであり、門脈側注入バルブ2695を開き、門脈側洗浄バルブ2696を閉じる。更に、門脈専用モードにおいては、肝動脈側注入バルブ2685を閉じ、門脈側煎じ上バルブ2686を開く。門脈専用モードにおいては、門脈圧力を優勢にし、このことは門脈側の圧力変換器2650によって圧力を制御する。このモードでは肝動脈注入は行わない。
【0105】
門脈優先モードにおいては、門脈側バルブ及び肝動脈側バルブは注入を行うようセットする。門脈側圧力が優勢であり、従って、肝動脈側は門脈側に対して従属的である。交互モードにおいては、門脈側バルブは注入を行うようセットし、肝動脈側バルブは注入セッティングと洗浄セッティングとの間で切り替わるようにする。交互モードでは、肝動脈側バルブが注入を行うようセットされたとき、肝動脈側の圧力が優勢になる。このタイプの圧力制御の交互作用により門脈側に波状の流れを付与し、また肝動脈側にパルス状の流れを付与する。
【0106】
本発明によれば、更に、図28に示す臓器診断装置2800を提供する。臓器診断装置2800はコンピュータ2810及び分析器2820を有する。
【0107】
コンピュータ2810及び分析器2820の双方に臓器評価機器2830を接続する(図29にも示す)。臓器診断装置2800は、装置及び臓器の状態を示す適当なディスプレイを設けると好適である。臓器評価機器2830は、灌流液室2840と臓器室2850を有する。分析器2820及び臓器評価機器2380を転送ライン2860によって接続する。臓器診断装置2800は臓器の分析を行い、また迅速にしかも灌流装置1及び/又は搬送器装置1900から転送するのが好ましい無菌カセット内に収容したまま臓器生存力指標を生成する。臓器生存力指標は、シングルパスの灌流及びインライン自動分析でプログラムされた流れ及び温度によって生成されるようにするのが好ましい。分析はマルチパスシステムで行うこともできるが、シングルパスシステムの有利な点は、限られた数のセンサで構成することができ、分析を行うに十分な灌流だけで済む点である。シングルパス灌流によれば、更に、既知の所定の化学的性質を有する灌流液で臓器への流入を行うことができる。このことにより、送給すべき灌流液のタイプ及び内容物に関する融通性が増大し、処理する特定の分析に対応するよう調整及び修正ができる。
【0108】
図29は臓器評価機器2830の斜視図を示す。臓器評価機器2830は灌流液室2840及び臓器室2850を有する。臓器室2850は隔離し、また着脱自在の又はヒンジ連結した蓋2910を有する。臓器室2850は、好ましくはカセット65を開放せず、又はカセット65の内部の無菌性を損なうことなくカセット65を収納する構成とするのが好適である。カセット65及び臓器室2850は効率のよい熱伝達が可能となるよう嵌合又は整合する構成とするのが好ましい。カセット65及び臓器室2850の配置構成素子は、カセット65を臓器室2850内に配置したとき、分析を行うよう素子が固定されるように構成する。ポート2950を設け、転送ライン2860に接続できるようにする。
【0109】
図30は臓器診断装置2800のシングルパス流体系を示す。初期灌流液3000を室3010内に収容する。室3010は加熱及び冷却システムによって温度管理するのが好ましい。流体系内の液体の流れを流れセンサ3020によってモニタし、ピンチバルブ3030及びポンプ3040に信号を送ることによって制御する。この液体系には気泡トラップ3050と、圧力変換器3060と、及び温度変換器3070を設ける。熱交換器3080により、臓器灌流を行うに先立って、流体系内の液体に対する温度管理、加熱及び冷却を行う。臓器はカセット65内で灌流する。臓器槽内の液体を収集し、又は静脈流出流を捕集して分析する。液体を収集し、転送ライン2860を経て分析器2820に転送する。転送ライン2860には、更に、個別の加熱及び冷却ユニットを設ける。液体を分析した後、この液体は廃棄用容器3090に収集する。
【0110】
図31には臓器診断装置2800の論理回路を示す。コンピュータは、制御パラメータを発生し、分析器から分析結果及びデータを受け取る。論理回路は、センサからマイクロコントローラへの入力と、ハードウェア素子、例えば、灌流クーラー、灌流ヒータ、ピンチバルブ、ポンプ、転送ラインヒータ/クーラー、及びディスプレイへの出力を示す。
【0111】
本発明方法は、臓器の生存力を維持し、モニタし及び/又は修復し、及び/又は臓器を搬送又は保存するよう臓器を灌流する上述のような装置を使用するのが好ましい。臓器の生存力を維持することは臓器移植を成功させる上での重要な要素である。移植用の臓器は、ドナーの疾病又は負傷により、又はドナー体内から臓器採取、又は臓器保管、又は搬送を通じて非移植者体内に至るまでの長い期間にわたり酸素不足(虚血状態)になることがよくある。本発明による灌流、搬送器装置は、灌流を調整し、細胞代謝を管理し、臓器に立て虚血ダメージを修復し、再灌流障害を回避できるようにするため、移植すべき臓器の化学的性質を検出する能力を有する。虚血障害の一つの特別な結果として、アポトーシス即ち、プログラムされている細胞死がある。灌流、診断及び/又は搬送器装置によって特別な装置の条件管理の下で臓器に投与される特別な薬剤及び添加剤は、アポトーシスを阻止し、減少し、及び/又は回復させることができる。
【0112】
本発明の好適な方法においては、生体の外部で、機械的、物理的、化学的又は遺伝子的な操作及び/又は修正によって臓器又は組織を処置したり、ダメージを処置したり、又は臓器又は組織の性状を向上させたりする。臓器又は組織サンプルを第1人体から取り出し、第1人体の生体外部で、修正し、処置し、及び/又は分析し、また第1人体に戻したり、第2人体に移植する。この装置の利点は、生体外部処置のために臓器が利用できる時間を増大し、例えば、何時間も(例えば、2,4,6,8,10,12時間又はそれ以上の時間)、又は何日も(例えば、2,4,6,8,10,12日又はそれ以上の日数)、又は何週間も(例えば、1,2,4,6,8週間又はそれ以上の週数)にわたり利用可能にする。好適な実施例においては、本発明灌流、診断及び/又は搬送器装置を使用して、臓器又は組織に特別な溶液又は化学成分を供給し、又は臓器又は組織に特別な溶液又は化学成分でフラッシング又は洗浄を含む特別な処置を行うことができる。生体外処置は、移植すべき組織又は臓器に対して行うか、又は患者から取り出した組織又は臓器に対して行って所定の手順を行った後患者に戻すようにする。生体外処置は、これに限定するものではないが、虚血及び/又はアポキシア(apoxia)の期間を引き延ばすように組織又は臓器を処置する。生体外処置は、例えば、臓器切開及び縫合行為を伴う、例えば、壊死組織を切除するような外科手術的処置を行う。生体内で組織又は臓器に対して行う外科的又は他の処置技術も、生体外で組織又は臓器に行うことができる。このような体外処置の利点は、例えば、放射線療法又は化学療法を加えて臓器表面に又は臓器内に存在する腫瘍を処置し、患者の他の部分が治療中に部外照射又は化学療法を受けないようにすることができる。本発明灌流及び搬送器装置は、更に、医師に対して、特別な技術を組織又は臓器に施す前、その間及び/又はその後に組織又は臓器を維持する時間を引き延ばしてくれる。
【0113】
臓器の脈管構造に溜まった粒子片は、臓器の適正な灌流を阻害し、又は移植前後に臓器を機能不全にする。本発明灌流、診断、搬送器装置によれば、例えば、ストレプトキナーゼのような適量の血栓溶解剤でフラッシング又は洗浄することを含む体外技術を施して形成されていた血栓を溶解し、又は臓器内血栓形成を阻害し、臓器脈管構造を開放状態にすることができる。
【0114】
臓器移植に対する他の関心としては、臓器拒絶反応を抑制する薬物の投与量がある。臓器移植において、他の体外処置として、移植の前、最中、及び/又は後に、被移植者の移植臓器に対する許容度を向上するため、被移植者の免疫システムが活性化するのを回避したり、又は臓器拒絶反応を減少したり、被移植者の免疫システムを抑制する必要性を制限又は回避したりするよう、臓器を修飾することがある。臓器の修飾としては、例えば、被移植者の体に移植される臓器を自己由来であると認識させるように促す。本発明の灌流、診断及び/又は搬送器装置は化学成分、天然又は人工の抗体、抗毒素等の物質を臓器に送り込み、臓器がこのような物質を吸収又は代謝を促進し、臓器が拒絶されない可能性を増大する。これら物質は、異種刺激性の細胞(樹状突起細胞、滞留性白血球、抗原提示細胞等)の化膿を阻止、鎮静、涸渇、及び/又は回避することにより臓器を遮蔽し、被移植者の免疫システムが異種刺激性細胞を認識しない、若しくは自己由来であると認識させる。臓器は移植直前に処置するか、又は移植の数時間前、数日前、数週間前に予め処置する。
【0115】
修飾又は修飾しない免疫グロブリンのような物質、ステロイド及び/又はポリエチレングリコール(PEG)とグルタチオンのような酸化防止剤とを含有する溶液を臓器又は組織に供給して臓器を遮蔽するか、又は冷凍保存、及び/又は臓器又は組織の移植中の脈管内膜における過形成の開始を処置する。これら溶液を臓器又は組織に対して本発明による灌流、診断及び/又は搬送器装置によって供給する。このような溶液及び方法に関しては、参考までに述べると、例えば、米国特許出願第09/499,520号に記載のものがある。
【0116】
本発明による灌流、診断、及び搬送器装置は、上述の技術及び方法に関連して及び/又は他の技術及び方法に関連して使用して臓器又は組織に対する研究・調査を行うことができる。種々の装置は、体外処置のために臓器が耐えうる時間を引き延ばすことができ、例えば、何時間(1,2,3,4,5,6,7,8,10,12時間又はそれ以上の時間数)も、又は何日(例えば、2,4,6,8,10,12日又はそれ以上の日数)も、又は何週間(例えば、1,2,3,4,5,6,7,8週又はそれ以上の週数)も引き延ばすことができる。臓器を保存及び/又は維持する期間にわたり、種々の薬物研究・調査及び開発を臓器に関して行うことができる。臓器又は組織は生理学的パラメータを基にして維持及び/又は分析するため、臓器は、体外で臓器又は組織に対して施す種々の処置及び/又は物質の効果を試験する。灌流、診断及び/又は搬送器装置を使用して血液又は合成血液物質を臓器に灌流するとともに、臓器及び臓器流出液をモニタして、臓器の条件を分析する及び/又は種々の処置の臓器に対する効果を測定する。
【0117】
本発明の好適な方法は、臓器を被移植者の体に移植する前に臓器の生存力を維持するため、以下の3つのコンセプトに傾注する。即ち、細胞ミトコンドリアを処置して予虚血(pre-ischemia)エネルギレベル及び酵素レベルを維持及び/又は回復すること、一般的組織ダメージが臓器に広がらないよう防止すること、及び臓器の血管内膜の洗い流しや脈管内膜にダメージが生じないように防止することである。
【0118】
ミトコンドリアは細胞のエネルギ源である。ミトコンドリアは機能を発揮するため大量の酸素を必要とする。酸素がないと、エネルギを生み出す能力が減少又は阻害される。更に、20゜C以下の温度では、ミトコンドリアは酸素を使用してエネルギを生ずることができない。臓器に富酸素薬液を平常体温温度で灌流させると、ミトコンドリアは十分な酸素量を供給され、酸素不足によって減少する臓器の保有高エネルギヌクレオチドの予虚血レベル即ち、ATPレベルを、遊離基排除体から臓器細胞を保護する酵素レベルとともに維持及び/又は回復する。米国特許第5,066,578号明細書に記載されているような富ピルビン酸塩溶液は、臓器の予虚血エネルギレベルを維持及び/又は回復することはできず、短期間ATPレベルを僅かに上昇させるだけしか機能しない。即ち、臓器は元々高いピルビン酸塩レベルをもっているからである。臓器に余分なピルビン酸塩を供給しても、ミトコンドリアにエネルギを発生させるに十分な酸素を供給しない限り、臓器の予虚血エネルギレベルを回復及び/又は維持するのを促進しない。従って、平常体温灌流液はピルビン酸塩を含有するが、少ししか含まない又は全く含まなくてもよい。例えば、ピルビン酸塩を6mM以下、例えば、5mM、4mM、又はまったくなくてもよい。米国特許第5,599,659号明細書に記載のような他の既知の灌流溶液も、予虚血エネルギレベル及び酵素レベルを回復及び/又は維持するに十分な酸素を含有することはできない。
【0119】
臓器に富酸素の第1薬液を平常体温又は平常体温に近似する温度(平常体温モード)で灌流させることによって予虚血エネルギレベルを維持及び/又は回復した後、臓器に第2薬液を低体温温度(低体温モード)で灌流させる。低体温温度は、臓器の代謝を緩慢にさせ、臓器を被移植者の体に導入する前に保存及び/又は搬送する間のエネルギを保持する。低体温モードで使用する薬液は、酸素がほとんどない、又は全く含有せず、約20゜C以下でエネルギを発生するミトコンドリアによって利用されない。この薬液は、酸化防止剤及び他の組織保護剤、例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、水溶性ビタミンE、カタラーゼ、又はスーパーオキシドジスムターゼ(超酸化物不均化酵素)を含有し、高遊離基形成を阻止し、この高遊離基は、カタラーゼ/スーパーオキシドジスムターゼの減少に起因して低温度で形成される。更に、種々の薬物及び薬剤、例えば、ホルモン、ビタミン、滋養剤、抗生物質等を適正な何らかの溶液に添加することができる。更に、血管拡張剤、例えば、ペプチドを薬液に添加して損傷状態でも流れを維持するようにする。
【0120】
平常体温温度で富酸素の第1薬液で平常体温灌流を行う前に、酸素がほとんどない又は全く含有しないが酸化防止剤を含有する薬液で臓器をフラッシュ洗浄する。フラッシュ洗浄は低体温で行うのが一般的であるが、所要に応じて平常体温又は平常体温に近い温度で行うこともできる。フラッシュ洗浄に続いて、1回又はそれ以上の回数の低体温灌流、平常体温灌流、及び/又は静的保存を、必要な順序で及び/又は好ましい順序で行う。場合によっては、平常体温灌流は不要な場合もある。
【0121】
事前の低体温フラッシュ洗浄の有無にかかわらず、平常温度灌流は、既に静的条件又は灌流条件の下で低体温温度さらしておいた臓器、並びに平常温度臓器に対して行うことができる。
【0122】
臓器を平常体温又はそれに近い温度で灌流し、保存のための低体温温度で灌流する前後に臓器の生存力を維持、モニタ、及び/又は回復し、次いで低体温灌流せずに、又は好ましくは低体温灌流をしつつ搬送する。平常体温灌流は、ドナーの体から臓器を摘出する前に、体内で行うこともできる。更に、保存及び/又は搬送の準備として低体温温度で灌流する前に、臓器を平常体温温度で灌流し、臓器の生存力を維持、モニタ及び/又は回復させておくこともできる。この後、臓器を、低体温温度に維持しつつ被移植者の体に移植するか、又は先ず平常体温灌流を施して保存及び/又は搬送による作用から復元する補助を行っておく。後者の場合、平常体温温度で移植するか、又は好ましくは、低体温温度移植のために再び低体温灌流を行う。移植後、臓器は、随意に、体内で平常体温温度での灌流を再び行うか、又は被移植者の血液循環を温暖化することができる。
【0123】
単に実施例としてであり、これに限定するものではないが、図16には本発明によるありうべき処理ステップ事例の図表を示す。この図面は、種々のありうべき処理ステップを示す。臓器ドナーの臓器エクスプラントから被移植者のインプラントを経て多重臓器リカバリ(MOR)の種々のありうべき処理ステップを示し、ありうるWIT(温血欠乏時間)及び低酸素ダメージ評価が含まれる。幾つかのシナリオの事例を以下に説明する。
【0124】
例えば、本発明の一つの実施例において、心臓が動悸を打っている状態でドナーから臓器を摘出することがある。摘出に続いて、例えば、任意の適当な溶液又はこれに限定しないがVIASPAN(デュポンから市販されている保存溶液の登録商標名)を含む材料、他の結晶体溶液、デキストラン、HES(ヒドロキシエチル澱粉)、2000年7月28日に出願された米国特許出願09/628,311号明細書(参考までに述べた)に記載の溶液、等で臓器をフラッシュ洗浄することができる。臓器は、このとき静的に例えば、氷の温度(例えば、約1〜10゜C)で保存することができる。
【0125】
他の実施例においては、臓器に最小のWIT及び最小の脈管閉塞しかない場合、異なる手順を使用することができる。この場合、臓器はやはり、心臓が動悸を打っている状態で摘出し、これに続いて好適には、低体温温度でフラッシュ洗浄を行う。臓器を搬送する必要があれば、臓器を適当な搬送器に収納し、例えば、氷温で保存することができる。臓器への流れはセット圧力を最大にすることによって制御することができ、プリセットの圧力最小値と圧力最大値によりパルス波形を制御する。臓器を長期間保存する必要がある場合には、例えば、24時間以上保存する必要がある場合、臓器はMORに配置することができる。MORにおいて、適当な灌流液を使用し、例えば、結晶体溶液、デキストラン等を好適には、低体温温度で使用することができる。好適には、低体温温度は約4゜〜10゜Cであるが、必要に応じてより高い又はより低い温度を使用することもできる。好適には、灌流溶液に特別なマーカーを含有させダメージ判定できるようにするが、ダメージ判定は他の既知の手法で行うこともできる。必要であれば、搬送現場に搬送するよう臓器を搬送器に戻すことができる。
【0126】
上述の手法の変更例として、最小WIT及び最小の脈管閉塞しかない臓器を、動悸を打たない心臓条件の下で摘出することができる。この場合、臓器を、好適には、低体温温度でフラッシュ洗浄し、必要であれば例えば、氷温で適当な搬送器で搬送するため保存する。上述したように、臓器への流れは設定圧力最大値によって制御することができ、プリセットの圧力最大値及び圧力最小値によってパルス波形を制御する。臓器をMORに配置し、長期保存及び/又はダメージ判定を行えるようにする。MORにおいては、適当な灌流液、例えば、結晶体溶液、デキストラン等を例えば、低体温温度で使用することができる。好適には、低体温温度は4〜10゜Cであるが、必要に応じてより高い又はより低い温度を使用することもできる。好適には、灌流溶液に特別なマーカーを含有させダメージ判定できるようにするが、ダメージ判定は他の既知の手法で行うこともできる。低体温灌流に続いて、好適には、平常体温温度で第2灌流を使用することができる。この処置のために任意の適当な灌流溶液を使用することができ、この溶液は必要に応じて、酸素添加媒体、滋養剤、及び/又は成長因子を含有させる。好適には、平常体温温度は12〜24゜Cであるが、必要に応じてそれより高い又は低い温度を使用することもできる。平常体温灌流を適当な期間例えば、約1〜24時間導入することができる。平常体温灌流からの再生に続いて、例えば、結晶体溶液、デキストラン等の適当な溶液を、好適には、低体温温度で低体温灌流に戻すとよい。所要に応じて、搬送現場に搬送するよう臓器を搬送器に戻すことができる。
【0127】
臓器が高いWITを有する場合及び/又は脈管閉塞を起こしている可能性若しくは実際に起こしている場合、上述のプロセスを変更して行う。例えば、臓器を心臓停止状況の下で摘出する場合、臓器を上述のようにフラッシュ洗浄することができる。更に、遊離基除去剤を、所要に応じてフラッシュ洗浄溶液に添加することができる。上述したように、臓器を適当な搬送器内に搬送用に、例えば、氷温温度で保管することができ、臓器への流れは、設定した圧力最大値によって制御し、またプリセットした圧力最小値と圧力最大値とによりパルス波形を制御する。臓器は、長期保存及び/又はダメージ判定のいずれかのためにMOR内に配置する。MORにおいては、例えば、結晶体溶液、デキストラン等の適当な灌流液を、好適には、低体温温度で使用する。好適には、低体温温度は約4〜10゜Cであるが、必要に応じてそれより低い又は高い温度を使用することもできる。好適には、ダメージ評価を行うことができるよう灌流溶液に特別なマーカーを含有させるが、ダメージ評価は他の既知の手法によっても行うことができる。低体温灌流に続いて、第2灌流を、好適には、平常体温温度で使用する。任意の適当な灌流溶液をこのプロセスに使用し、例えば、所要に応じて酸素添加剤、滋養剤及び/又は成長因子を含有する溶液を灌流溶液として使用する。好適には、平常体温温度は約12〜24゜Cであるが、必要に応じてそれより高い又は低い温度とすることもできる。平常体温灌流は、例えば、約1時間〜24時間の任意の適当な期間にわたり導入することができる。所要に応じ、特に、脈管閉塞があると測定又は判定された場合、他の灌流を例えば、24〜37゜Cのより高い平常体温温度で導入することができる。この他の灌流は、脈管閉塞を遅らせる所要の材料を含有する適当な溶液を使用して導入することができる。このような材料としては、例えば、ストレプトキナーゼのような閉塞除去剤がある。平常体温灌流に続いて、好適には、低体温灌流に戻し、例えば、結晶体溶液、デキストラン等の適当な溶液を好適には、低体温温度で灌流する。必要であれば、臓器を搬送器に戻して移植場所に搬送する。
【0128】
本発明による臓器カセットによれば、臓器を臓器移植者に、及び/又は臓器灌流、診断、及び/又は搬送器装置例えば、上述の搬送器1900又は米国特許出願第09/161,919号明細書に記載の携帯容器との間で容易に搬送することができる。臓器カセットには、臓器灌流、搬送器又は診断装置の導管をカセット内に導入し、カセット内に配置した臓器に接続する開口を設けたり、又は臓器灌流、搬送器又は診断装置からの導管に接続できるようにした導管及び接続装置を設けたり、及び/又は臓器保管、分析及び/又は搬送器のための臓器保護環境を生ずるバルブを設けたりし、臓器灌流、搬送器又は診断装置の導管にゾを接続したり臓器に挿入し易くしたりする。更に、臓器カセットには、カセットを運び易くする把手を設け、また臓器を視認モニタできる透明材料で形成する。
【0129】
搬送器1900及び/又はカセット65に、オプションとして、全地球的測位システム(GPS)(図示せず)を設け、臓器の位置を追跡することができるようにする。装置には、更に、データログ記録装置及び/又はトランスミッタ(図示せず)を設け、装置の位置又は他の位置における臓器をモニタできるようにする。
【0130】
本発明方法を、以下に図2に示す装置の動作を説明する。しかし、他の装置を使用して本発明方法を実施することもできる。
【0131】
上述したように、上述の装置は2つのモード、即ち、平常体温灌流モードと低体温灌流モードで動作することができる。先ず、平常体温灌流モードを説明し、次に、低体温灌流モードを説明する。できるだけ説明の繰り返しは省く。
【0132】
平常体温又はそれに近い温度での灌流モードにおいて、臓器は、好適には、1/2〜6時間、より好ましくは1/2〜4時間、最も好適には、1/2〜1時間にわたり、薬液リザーバ10に熱伝導する熱交換器に配置した熱電ユニット30aによって約10゜C〜38゜Cの範囲、好適には、12゜〜35゜C、最も好適には、12゜C〜24゜C若しくは18゜C〜24゜C(例えば、室温22〜23゜C)の温度に維持した薬液により灌流する。
【0133】
上述したように、このモードでは、薬液は酸素添加した架橋ヘモグロビンをベースとする重炭酸塩溶液とするのが好ましい。架橋ヘモグロビンをベースとした薬液は、灌流容積あたり、例えば、単純なウィスコンシン大学(UW)式グルコネート型灌流液よりも150倍もの酸素量を臓器に供給することができる。このことにより、平常体温灌流は、1〜2時間で、涸渇したATPレベルを部分的又は全体的に回復することができる。しかし、本発明は、このような保存溶液に限定されるものではない。他の保存溶液、例えば、参考までに掲げると、米国特許第5,149,321号、同第5,234,405号及び同第5,395,314号、並びに2000年7月28日に出願した出願中の米国特許出願第08/484,601号、同09/628,311に記載の保存溶液でもよい。
【0134】
平常体温灌流モードでは、薬液は臓器室40ないに配置した臓器に、バッグ15a,15bのうちの一方又は他方から導管50a、50b,50c又は50d,50e,50cを介してそれぞれ直接に供給する。臓器は、約3〜5ml/g/分の範囲内の流量で灌流するのが好ましい。灌流センサP1は灌流圧力をマイクロプロセッサ150に中継し、圧力源20によって供給された圧力を変化し、灌流圧力を制御及び/又は制御及び表示領域5aに圧力を表示して手動調整を行うことができるようにする。圧力は約10〜100mmHg、好適には、50〜90mmHgの範囲内になるよう、圧力源20と加圧帯15a,15bと、またステップモータ/カムバルブ65によって、制御するのが好ましい。コンプレッサ及び加圧帯は、大きな圧力制御を行う。オペレータによっても制御する又は圧力センサP1からの信号に応答するマイクロプロセッサ150によって制御するステップモータ/カムバルブ65(又は他の可変バルブ若しくは圧力調整器)にり、更に、圧力を減少及び微調整するか、及び/又は臓器60に流入する流れにパルス波形を付与する。灌流圧力が所定限界を越える場合、ステップモータ/カムバルブ65を動作させて臓器60への流体の流入を遮断する。
【0135】
特定温度における特別な圧力、流量、及び灌流時間の長さは灌流すべき特定の容器に依存する。例えば、心臓及び腎臓は、約10〜100mmHgの圧力で、約3〜5ml/g/分の流量を、約2〜4時間にわたり平常体温温度で灌流し、臓器の予虚血エネルギレベルを回復及び/又は維持することによって臓器の生存力を回復及び/又は維持し、また好適には、保存及び/又は搬送のために、約10〜30mmHgの圧力で、約1〜2ml/g/分の流量で、約72時間〜7日間にわたり、低体温温度で灌流する。しかし、これら基準は、特別な臓器、ドナーの人体及び/又は被移植者人体及び/又は特別な臓器の大きさの条件に基づいて変化する。当業者であれば、上述のガイダンスを考慮して過度の実験をすることなく適当な条件を選択することができる。
【0136】
流出薬液は臓器室40の底部で捕集し、第2熱電ユニット30bによって上述の温度範囲内に維持する。温度センサT2により臓器温度をマイクロプロセッサ150に中継し、マイクロプロセッサにより、熱電ユニット30aを制御して薬液及び臓器槽の温度を調整し、臓器を所要の温度に維持し、及び/又は制御及び表示領域5cに温度を表示し、手動調整できるようにする。
【0137】
捕集した流出薬液をポンプ80によって導管81を介してフィルタユニット82に送給し、臓器槽に帰還させる。このことにより、外科手術的屑及び/又は細胞屑を流出薬液から濾過し、濾過した薬液を臓器60のための浴として帰還させる。臓器室40に存在する流出薬液のレベルが所定レベル(好適には、流出薬液内に臓器60が十分浸漬されるレベル)になったことをレベルセンサL2が感知したとき、流出薬液をポンプ90によって導管91を経て送り出す。温度センサT1は臓器槽の温度をマイクロプロセッサ150に中継し、熱電ユニット30bを制御し、薬液の温度を調整し、臓器60を所定温度に維持したり、及び/又は手動調整及びモニタのために制御表示領域5cに温度を表示したりする。
【0138】
上述したように、薬液はシングルパスモードで廃棄側に指向させるか、又は臓器及び/又は槽に循環させる(循環モード)。
【0139】
導管91に沿って、循環薬液をフィルタユニット95に通過させる。架橋ヘモグロビン薬液を使用することによって、サブミクロンフィルタを使用することができ、大きな外科手術による屑及び細胞屑、並びにバクテリアを除去する。このことにより、抗生レベルを最小にし、腎臓ダメージのような臓器ダメージを回避することができる。
【0140】
次に、循環薬液をCO除去体/O薄膜100にポンプ送給する。薬液を、親水性被覆(例えば、ハイポール)を施した多孔質の疎水性薄膜通過させ、バルブVVを動作させることによって反対側に低い真空を加え、循環する薬液からCOを除去する。
【0141】
これに続いて、薬液の一部を酸素添加装置110(例えば、商標名JOSTRAの酸素添加器)に流入させ、一部を導管111によってその周囲に転流させ、pH,pO,pCO,LDH,T/GST及びプロテインセンサV1を通過させる。このポイントにおいて、2つのガス、好適には、100%酸素ガス及び95/5%の酸素/二酸化炭素の混合ガスを薄膜の両側に、転流した薬液のpHのレベルに基づいてそれぞれ加える。ガスは200mmHg、好適には、50〜100mmHgの圧力で、好適には、マイクロメータガスバルブGVを経て加える。架橋ヘモグロビンベースの重炭酸塩薬液は、約40mmHgのpCOを必要とし、7.25〜7.45の好適なpH範囲の中間ポイント(7.35)にするよう調整する。
【0142】
酸素添加装置から流出する薬液が好適なpH範囲(例えば、7.25〜7.45)内である場合、100%酸素を酸素交換室に送給し、このときバルブLVは開かずにおき、リザーバ10の使用していないバッグ15a又は15b内に帰還できるようにする。帰還する灌流液のpHが範囲外の酸性側である場合には、100%酸素をガス交換室に送給し、このときバルブLVを開いて、灌流液が酸素室に帰還できるようにする。シリンジポンプ131の動作により、例えば、重炭酸塩リザーバ130から1ccの重炭酸塩溶液を導管132から臓器槽に送給する。高ヘモグロビンを含有する薬液により大きな緩衝能力を生ずる。重炭酸塩を添加することによって緩衝能力を向上し、また可逆的pH制御メカニズムを生ずる。
【0143】
帰還する灌流液pHが範囲外のアルカリ側(例えば、7.25より大きい)場合95/5%の酸素/二酸化炭素混合ガスをガス交換室に送給し、このときバルブLVは開かずにおき、リザーバ10の使用していないバッグ15a又は15b内に帰還できるようにする。使用していないバッグ15a又は15bは、バルブGVにより(例えば、過剰の酸素があった場合)脱気することができる。使用しているバッグ15a又は15bが約250ml又はそれより少ない量の薬液しか内部に残存していない場合、対応の加圧帯16a,16bにより、対応のガスバルブGV,GVを経て通気することができる。使用していないバッグ15a又は15bの対応の加圧帯16a又は16bには、圧縮ガス源20からガスを供給し、薬液を臓器に送給して臓器の灌流を継続する。
【0144】
低体温モードでは、臓器は冷却した薬液で灌流し、好適には、約1゜C〜15゜Cの範囲の温度で、より好適には、4゜C〜10゜C、最も好適には、約10゜Cの温度で灌流する。薬液は、酸素添加しない結晶体灌流液とし、好適には、酸化防止剤及び、例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、水溶性ビタミンE、カタラーゼ、又はスーパーオキシドジスムターゼのような他の組織保護剤を補充する。
【0145】
臓器に直接薬液を供給する代わりに、薬液をリザーバタンク17から導管51を経て中間タンク70に供給し、この中間タンク70の圧力ヘッドは、好適には、約5〜40mmHg、より好適には、10〜50mmHg、最も好適には、20mmHgとする。薬液は、次に、重力で、又は中間タンク70からの圧力で臓器60に導管50cに沿ってバルブLVを動作させことにより供給する。中間タンク70内のレベルセンサ71を使用して、リザーバタンク17からの供給を制御し、所定圧力ヘッドを維持する。薬液を重力、又は低体温モードの圧力で臓器に供給するため、低い灌流圧力で導入し、臓器のデリケートな微細脈管のダメージを軽減する。実際、臓器を灌流する圧力は、最大で40mmHgの圧力ヘッドに制限する。
【0146】
ステップモータ/カムバルブ205(又は他の可変バルブ又は圧力調整器)を導管50cに配置し、薬液を臓器60に脈動的に供給し、臓器60に供給される薬液圧力を減少し、上述したように、薬液の臓器60内への流入を制御又は停止するようにする。
【0147】
更に、低体温モードでは、臓器60は、滋養剤に対する要求度が低いため、薬液は、間欠的に(例えば、約100ml/分の流速で2時間毎に)、又は長期間にわたり少ない連続流(例えば、約100m/分)で臓器に供給する。間欠的な灌流は、シングルパスモードで又は循環モードで実施することができる。ポンプ80、フィルタユニット82、及び導管81を、pH,pO,pCO,LDH,T/GST及びプロテインセンサとともに使用し臓器槽を濾過する。しかし、臓器は、低体温温度では酸素を使用することができないので、酸素添加装置は使用しない。所要に応じ、適量の酸素は濾過した部屋の空気又は他の適当なソースから得られる。
【0148】
灌流液の流れ、及び温度調整の双方は自動的に制御する。このような自動制御は作動中の灌流条件に迅速かつ信頼性の高く応答することができる。自動流れ制御はシステムから測定したパラメータ、例えば、灌流流速、臓器から流出する灌流液pH、臓器入口圧力、又は予め選択した流速のようなシーケンス、又は灌流モード間での切り替えに基づく。好適には、流れ制御は臓器に流入する灌流液の圧力をモニタすることに基づいてもよい。自動流れ制御の利点は、適正な酸素添加量pH管理を維持するとともに、連続流、又は制御した間欠流で動作させることができる。熱電装置(TED)の温度制御は、臓器カセット又は臓器容器及び灌流液リザーバの温度を調整することができる。温度制御は、例えば、灌流溶液内又は臓器内部のサーミスタプローブ又はTED内のセンサによって得られる温度測定値に基づく。
【0149】
自動制御は、好適には、操作が容易なメニューアイコン及びディスプレイを使用する対話式制御プログラムによって行う。パラメータは、ユーザーによって選択するよう予め記憶しておくか、又はシステムの動作中にユーザーがプログラムする。制御プログラムは、プログラム化した汎用コンピュータによって実施するとよい。しかし、専用コンピュータ、プログラム化マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ、周辺集積回路、ASIC又は他の集積回路、デジタル信号プロセッサ、離散素子回路のような有線電子又は論理回路、PLD、PLA、FPGA又はPALのようなプログラマブル論理装置等上にコントローラを実現することができる。一般的に、本明細書中に記載した制御プロセスを実施することができる有限状態マシンとして実現可能な任意の装置を使用する。制御プログラムはROMを使用して実現する。しかし、PROM、EPROM、EEPROM、CD‐ROM又はDVD‐ROMのような光学的ROMディスク、ディスクドライブ等を使用して実現することもできる。所要に応じて、静的又は動的RAMを使用する制御プログラムを採用することもできる。更に、フロッピー(登録商標)ディスク及びそのディスクドライブ、書き込み可能な光学的ディスク及びそのディスクドライブ、ハードドライブ、フラッシュメモリ等を使用することもできる。
【0150】
動作にあたり、図15に示すように、1個又はそれ以上の臓器の制御灌流を行う基本ステップとして、先ず臓器データを入力するステップがある。臓器データは少なくとも臓器のタイプ及び質量がある。次に、プログラムは、ユーザーに灌流モードの一つのタイプ又はそれ以上のタイプを選択するよう促す。灌流モードのタイプは、上述したように、低体温灌流、平常体温灌流、平常体温灌流及び低体温灌流の双方を使用する逐次灌流がある。平常体温灌流及び低体温灌流の双方を使用するときは、異なる温度の薬液をユーザーは選択することができる。システムは、特定臓器に適切な予め記憶した値に基づくデフォルト値を有すること勿論である。ユーザーは、更に、間欠灌流、シングルパス灌流、及び循環灌流を選択することもできる。選択した灌流タイプに基づいて、有酸素又は無酸素の薬液が特定される。
【0151】
次に、各選択した灌流モードの流れ制御のタイプを設定する。流れ制御セレクタは、灌流流速、灌流液pH、臓器流入圧力、及び時間シーケンスのうちの少なくとも一つに基づく流れ制御を選択する。好適な実施例においては、流れ制御は臓器への灌流入口において検出した圧力に基づく。次に、薬液の流れは、選択した灌流モード及び流れ制御に基づく。
【0152】
動作中、システム、臓器及び灌流液が遭遇する状況を、検出及びモニタする。検出した動作状況を予め記憶した条件と比較する。次に、比較を基に臓器の生存力を表す信号を発生する。種々の検出器、センサ、及びモニタ装置について上述したが、少なくとも圧力センサ、pH検出器、酸素センサ及び流量計がある。
【0153】
制御装置としては、灌流液及び臓器のうちの少なくとも一方の温度を制御する温度コントローラがある。温度コントローラは、TEDを制御することによって
薬液リザーバ及び臓器容器の温度を制御することができる。上述したように、温度センサはコントローラに接続してモニタ及び制御を容易にする。
【0154】
制御装置は任意の時間に手動で調整し、又はデフォルト設定に従うようにセットする。制御装置は、オペレータが臓器の生存力を低下させるようなパラメータ設定を防止する論理回路を有する。上述したように、制御装置は、逐次的な低体温灌流及び/又は平常体温灌流のための手動モード、並びに逐次的な低体温灌流及び/又は平常体温灌流のためのコンピュータ制御モードで動作することができる。
【0155】
上述の装置及び方法を、子供又は小さい臓器、並びに大きな又は大人の臓器に対して使用することができ、必要に応じてカセットや、圧力及び流速を変更することができる。上述したように、臓器カセットは、特定臓器の形状及び寸法に適合する形状にすることができる。本発明装置及び方法を使用して、人工血液、例えば、人工胎盤細胞培養物質を供給し、臓器の成長/クローン生成を促すようにすることもできる。
【0156】
特別な実施例に関して本発明を説明してきたが、多くの代案、変更、改変も、当業者であれば明らかであろう。従って、上述の好適な実施例は単に例示的なものであり、これらに限定されるのもではない。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器の灌流、保存、診断及び搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持する形状の臓器支持面であって、前記ハウジングが、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つによって収容される形状とし、ハウジング内に導管を挿通して臓器に接続することができるようにした開口を設け、またハウジングの底部を液体密にした臓器支持面とを具えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ハウジングに支持したバルブを設け、このバルブに接続して動作する導管を通過する薬液の圧力を制御するよう前記バルブを構成した請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記バルブを可変バルブとした請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記バルブは、カムバルブ、回転ねじバルブ、及び螺旋ねじバルブで動作するステップモータのグループから選択したものとした請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記開口を、シール又はプラグによって閉鎖するものとした請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記可搬性のハウジングの外側表面に把手を設けた請求項1記載の装置。
【請求項7】
臓器灌流装置、臓器搬送器装置、臓器診断装置のうちの少なくとも一つに挿入したときこのような装置を支持する構成にした支持体を設けた請求項1記載の装置。
【請求項8】
第1蓋を設けた請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記第1蓋を着脱自在にした請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第1蓋をヒンジによって前記可搬性のハウジングに取り付けた請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記第1蓋の内部に、更に、第2蓋を設けた請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジングの底部は、灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす構成とし、更に、前記可搬性ハウジングの前記第1蓋と第2蓋との間の頂部部分にチャンネルを設け、このチャンネル内に臓器槽からオーバーフローした液体を捕集及び検出するようにした請求項11記載の装置。
【請求項13】
更に、前記第1蓋、前記第2蓋、又は前記第1蓋及び第2蓋の双方、又はハウジングに、臓器からの液体サンプル及び組織サンプルを採取するポートを設けた請求項11記載の装置。
【請求項14】
前記第1蓋及び第2蓋を透明にした請求項11記載の装置。
【請求項15】
更に、臓器に接続して臓器を灌流することができる導管と、
臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び前記臓器診断装置のうちの少なくとも一つの配管に前記導管を接続できる構成の少なくとも1個の接続装置と
を設けた請求項1記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1個の接続装置を、前記可搬式ハウジングを開放することなく、前記臓器灌流装置、前記臓器搬送器装置、及び前記臓器診断装置の導管から接続又は離脱することにより、記可搬性のハウジングを、前記臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置に対して前後に移動可能にした請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記ハウジングの底部は、灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす構成とし、更に、前記可搬性ハウジングに遮断コック又は着脱自在のプラグを設け、前記臓器槽からの薬液をドレンできるようにした請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記ハウジングの底部は、灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす構成とし、更に、前記臓器槽から薬液を除去する他の導管を設けた請求項15記載の装置。
【請求項19】
前記他の導管にフィルタを設け、直径10ミクロンの屑が前記他の導管を通過するのを防止するようにした請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記臓器支持面をメッシュ又は多孔質材料により形成した請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記臓器支持面を前記可搬性のハウジングから着脱自在にした請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記臓器支持面に、直径15ミクロンの屑が通過するのを防止する孔を少なくとも部分的に形成した請求項1記載の装置。
【請求項23】
前記臓器支持面に、臓器からの流出液を導出するチャンネルを設け、前記流出液からサンプル採取することができるようにした請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記ハウジングの底部は、灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす構成とし、前記臓器支持面は、前記可搬性ハウジング内及び前記臓器槽内で昇降可能にした請求項1記載の装置。
【請求項25】
前記臓器支持面又は前記ハウジングに、更に、灌流される臓器の脈管に取り付けることができるチューブを設けた請求項1記載の装置。
【請求項26】
前記チューブは、灌流される脈管の周りにこのチューブを固定するクランプを有するものとして構成した請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記チューブは、灌流される脈管に取り付けるための他の分岐部分を有するものとした請求項25記載の装置。
【請求項28】
前記クランプは、前記灌流される脈管にダメージを与えないようかつ臓器の灌流からの漏れがないようクランプを加えて圧力を制御する機構を有するものとして構成した請求項26記載の装置。
【請求項29】
前記チューブはこのチューブから空気を除去する通気口を有するものとした請求項25記載の装置。
【請求項30】
前記臓器支持面又は前記ハウジングは戻り止め、トラック又は溝を有し、前記チューブの突出領域に相互作用して前記臓器の支持面の戻り止め、トラック又は溝における種々の位置でカニューレを固定できるようにした請求項25記載の装置。
【請求項31】
前記臓器支持面は、更に、臓器支持面に臓器を固定するストラップ又はベルトを有するものとした請求項25記載の装置。
【請求項32】
前記可搬性ハウジングに撮像装置に関連させ、臓器及び/又は臓器灌流の状態又は経過を記録するようにした請求項1記載の装置。
【請求項33】
前記装置は、バーコード、磁気タグ、無線周波数タグ、トランスミッタ、又は全地球的測位システムのうちの少なくとも一つを有するものとして構成し、装置の位置及び識別のうちの少なくとも一つをモニタすることができるようにした請求項1記載の装置。
【請求項34】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも2つによって収容できる構成とした請求項1記載の装置。
【請求項35】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置によって収容できる構成とした請求項1記載の装置。
【請求項36】
前記可搬性ハウジングは、更に、閉鎖可能な通気口を有するものとした請求項1記載の装置。
【請求項37】
シール可能なキットにおいて、
可搬性ハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持するとともに、臓器から流出する薬液が通過できる形状の臓器支持面であって、前記ハウジングが、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つによって収容される形状とし、ハウジング内に導管を挿通して臓器に接続することができるようにした開口を設け、またハウジングの底部を液体密にしかつ灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす臓器支持面と、
臓器に接続して臓器を灌流することができる導管と、及び
臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つに前記導管を接続することができる少なくとも1個の接続装置と
を具えたことを特徴とするキット。
【請求項38】
前記ハウジングは少なくとも1個の蓋を有するものとした請求項37記載のキット。
【請求項39】
前記可搬性ハウジング及び少なくとも1個の蓋のうちの少なくとも一方を透明にした請求項38記載のキット。
【請求項40】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも2つによって収容できる構成とした請求項37記載のキット。
【請求項41】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置によって収容できる構成とした請求項37記載のキット。
【請求項42】
前記可搬性ハウジングは、閉鎖可能な通気口を有するものとした請求項37記載のキット。
【請求項43】
前記キットは滅菌した請求項37記載のキット。
【請求項44】
臓器の灌流、保存、診断及び搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性ハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持するとともに、臓器から流出する薬液が通過できる形状の臓器支持面であって、前記ハウジングが、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つによって収容される形状とし、ハウジング内に導管を挿通して臓器に接続することができるようにした開口を設け、またハウジングの底部を液体密にしかつ灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす臓器支持面と、
臓器に接続して臓器を灌流することができる導管と、及び
臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つに前記導管を接続することができる少なくとも1個の接続装置と
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項45】
更に、第1カバーを設けた請求項44記載の装置。
【請求項46】
前記第1カバーを着脱自在にした請求項45記載の装置。
【請求項47】
前記第1カバーをヒンジによって前記可搬性ハウジングに取り付けた請求項45記載の装置。
【請求項48】
前記第1カバーの内部に第2カバーを設けた請求項45記載の装置。
【請求項49】
前記可搬性ハウジングにおける前記第1カバーと前記第2カバーとの間の頂部部分にチャンネルを設け、前記臓器槽からオーバーフローした液体を捕集及び検出できるようにした請求項48記載の装置。
【請求項50】
前記第1カバー、又は前記第2カバー、又は前記第1カバー及び第2カバーの双方にポートを設け、臓器から液体サンプル又は組織サンプルを採取できるようにした請求項48記載の装置。
【請求項51】
前記第1カバー及び第2カバーを透明にした請求項48記載の装置。
【請求項52】
直径少なくとも15ミクロンの臓器屑が流出するのを防止する孔群を、前記臓器支持面に、少なくとも部分的に設けた請求項44記載の装置。
【請求項53】
前記臓器支持面は静脈流のサンプル採取を行うよう臓器の静脈流出流を導く形状にした請求項44記載の装置。
【請求項54】
前記臓器支持面は、前記可搬性ハウジング及び前記臓器槽内で昇降自在にした請求項44記載の装置。
【請求項55】
前記臓器支持面又は前記ハウジングは、臓器の灌流される動脈に取り付けることができるカニューレを有するものとして構成した請求項44記載の装置。
【請求項56】
前記カニューレは、このカニューレを灌流される動脈の周りに固定するカニューレクランプを有するものとした請求項55記載の装置。
【請求項57】
前記カニューレは、副次動脈に取り付ける付加的分岐部を有するものとした請求項55記載の装置。
【請求項58】
前記カニューレクランプは、このカニューレクランプが灌流される動脈に加える圧力を、臓器へのダメージを回避しかつ臓器の漏れのない灌流を行うことができるよう制御する締め付け機構を有するものとした請求項55記載の装置。
【請求項59】
前記カニューレは、このカニューレから空気を除去する通気口を有するものとして構成した請求項56記載の装置。
【請求項60】
前記臓器支持面又は前記ハウジングは、前記カニューレの突出領域に相互作用する戻り止め、トラック又は溝を有し、前記臓器支持面又は前記ハウジングの前記戻り止め、トラック又は溝の種々の位置で前記カニューレを固定できるようにした請求項55記載の装置。
【請求項61】
前記臓器支持面には、更に、この臓器支持面に臓器を固定するストラップ又はベルトを設けた請求項55記載の装置。
【請求項62】
前記可搬性ハウジングには、ビデオカメラ又はスチルカメラを関連させて設け、臓器及び/又は臓器灌流の状態又は経過を記録するようにした請求項14記載の装置。
【請求項63】
前記装置は、バーコード、磁気タグ、無線周波数タグ、トランスミッタ、又は全地球的測位システムのうちの少なくとも一つを有するものとして構成し、装置の位置及び識別のうちの少なくとも一つをモニタすることができるようにした請求項14記載の装置。
【請求項64】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも2つによって収容できる構成とした請求項44記載の装置。
【請求項65】
前記可搬性ハウジングは、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置によって収容できる構成とした請求項44記載の装置。
【請求項66】
前記可搬性ハウジングは、更に、閉鎖可能な通気口を有するものとした請求項44記載の装置。
【請求項67】
更に、臓器に接続して臓器を灌流することができる導管と、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置のうちの少なくとも一つに前記導管を接続することができる少なくとも1個の接続装置と設けた請求項44記載の装置。
【請求項68】
前記少なくとも1個の接続装置を、前記可搬式ハウジングを開放することなく、前記臓器灌流装置、前記臓器搬送器装置、及び前記臓器診断装置の導管から接続又は離脱することにより、記可搬性のハウジングを、前記臓器灌流装置、臓器搬送器装置、及び臓器診断装置に対して前後に移動可能にした請求項67記載の装置。
【請求項69】
更に、前記可搬性ハウジングに遮断コック又は着脱自在のプラグを設け、前記臓器槽からの薬液をドレンできるようにした請求項67記載の装置。
【請求項70】
更に、前記臓器槽から薬液を除去する他の導管を設けた請求項67記載の装置。
【請求項71】
前記他の導管にフィルタを設け、直径10〜15ミクロンの屑が前記他の導管を通過するのを防止するようにした請求項70記載の装置。
【請求項72】
前記臓器支持面をメッシュ又は多孔質材料により形成した請求項44記載の装置。
【請求項73】
前記臓器支持面を前記可搬性のハウジングから着脱自在にした請求項44記載の装置。
【請求項74】
前記臓器支持面を、ほぼ椅子の形状に構成した請求項1記載の装置。
【請求項75】
前記臓器支持面を、腎臓、心臓、及び肝臓のうちの少なくとも一つに類似の形状にした請求項1記載の装置。
【請求項76】
前記臓器支持面を調整可能にした請求項75記載の装置。
【請求項77】
前記付加的分岐は複数個の寸法で分岐するものとした請求項27記載の装置。
【請求項78】
前記導管は臓器支持面に調整自在に取り付けることができる構成とした請求項25記載の装置。
【請求項79】
前記ハウジングの底部は、灌流される臓器を通過する薬液を捕集して臓器槽をなす構成とし、更に、前記可搬性ハウジングに遮断コック又は着脱自在のプラグを設け、前記臓器槽からの薬液をドレンできるようにした請求項1記載の装置。
【請求項80】
少なくとも一つの臓器を薬液で灌流するよう制御する方法において、以下のステップ即ち、
臓器データを入力するステップ、
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択するステップ、
各選択した灌流モードのための流れ制御のタイプを選択するステップ、
選択した灌流モード及び流れ制御のタイプに基づいて薬液の流れを制御するステップ、
灌流中に薬液及び臓器が遭遇する動作条件を検出するステップ、
検出した動作条件を、予め記憶した動作条件と比較し、この比較に基づいて臓器の生存力を表す信号を発生するステップ、
比較器によって発生した信号に基づいて臓器の生存力に関連するメッセージを発生する及び/又は生存力の調整を自動的に行うステップ
のうちの一つ又はそれ以上を具えることを特徴とする臓器灌流制御方法。
【請求項81】
流れ制御のタイプを選択するステップは、各選択した灌流モードに対して有酸素灌流と無酸素灌流との間の選択することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項82】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択するステップは、低体温灌流、平常体温灌流、及び低体温灌流と低体温灌流の逐次灌流のうちの少なくとも一つを選択することを含む請求項80記載の方法。
【請求項83】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択するステップは、異なる温度の複数個の薬液を選択することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項84】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択するステップは、間欠灌流、シングルパス灌流、及び循環灌流のうちの少なくとも一つを選択することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項85】
流れ制御のタイプを選択するステップは、灌流流速、灌流pH、臓器入口圧力及び時間シーケンスのうちの少なくとも一つに基づく流れ制御を選択することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項86】
動作条件を検出するステップは、圧力、pH及び酸素レベルを検出することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項87】
更に、灌流液及び臓器のうちの少なくとも一方の温度を温度コントローラにより制御する温度制御ステップを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項88】
前記温度制御ステップは、臓器容器及び灌流リザーバのうちの少なくとも一方の温度を調整することを含む請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記温度制御ステップは、臓器、臓器容器及び灌流リザーバのうちの少なくとも一方の温度を感知し、温度読み取りを温度コントローラに出力することを含むものとした請求項87記載の方法。
【請求項90】
灌流モード及び流れ制御タイプを選択するステップにおいて、臓器タイプに基づくデフォルト設定値を設定することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項91】
複数個の臓器の灌流を制御するステップを有する請求項80記載の方法。
【請求項92】
臓器データを入力するステップは、臓器タイプ及び臓器質量に関連するデータを入力することを含むものとした請求項80記載の方法。
【請求項93】
少なくとも1個の臓器を薬液で灌流する灌流システムによって使用する制御プログラムを記憶する記録媒体であって、前記制御プログラムは、以下の命令、即ち、
臓器データを入力する命令、
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択する命令、
各選択した灌流モードのための流れ制御のタイプを選択する命令、
選択した灌流モード及び流れ制御のタイプに基づいて薬液の流れを制御する命令、
灌流中に薬液及び臓器が遭遇する動作条件を検出する命令、
検出した動作条件を、予め記憶した動作条件と比較し、この比較に基づいて臓器の生存力を表す信号を発生する命令、
比較器によって発生した信号に基づいて臓器の生存力に関連するメッセージを発生する及び/又は生存力の調整を自動的に行う命令
のうちの一つ又はそれ以上を具えることを特徴とする記録媒体。
【請求項94】
流れ制御のタイプを選択する命令は、各選択した灌流モードに対して有酸素灌流と無酸素灌流との間の選択を行う命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項95】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択する命令は、低体温灌流、平常体温灌流、及び低体温灌流と低体温灌流の逐次灌流のうちの少なくとも一つを選択する命令を含む請求項93記載の記録媒体。
【請求項96】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択する命令は、異なる温度の複数個の薬液を選択する命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項97】
灌流モードのうちの一つ又はそれ以上のタイプを選択する命令は、間欠灌流、シングルパス灌流、及び循環灌流のうちの少なくとも一つを選択する命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項98】
流れ制御のタイプを選択する命令は、灌流流速、灌流pH、臓器入口圧力及び時間シーケンスのうちの少なくとも一つに基づく流れ制御を選択する命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項99】
動作条件を検出する命令は、圧力、pH及び酸素レベルを検出することを含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項100】
更に、灌流液及び臓器のうちの少なくとも一方の温度を温度コントローラにより制御する温度制御命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項101】
前記温度制御命令は、臓器容器及び灌流リザーバのうちの少なくとも一方の温度を調整する命令を含む請求項100記載の記録媒体。
【請求項102】
前記温度制御命令は、臓器、臓器容器及び灌流リザーバのうちの少なくとも一方の温度を感知し、温度読み取りを温度コントローラに出力する命令を含むものとした請求項100記載の記録媒体。
【請求項103】
灌流モード及び流れ制御タイプを選択する命令において、臓器タイプに基づくデフォルト設定値を設定する命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項104】
複数個の臓器の灌流を制御する命令を有する請求項93記載の記録媒体。
【請求項105】
臓器データを入力する命令は、臓器タイプ及び臓器質量に関連するデータを入力する命令を含むものとした請求項93記載の記録媒体。
【請求項106】
虚血期間又は低酸素期間にさらされる少なくとも1個の臓器の生存力を維持及び回復することの少なくとも一方を行う方法において、
前記少なくとも1個の臓器に、異化変化を減少又は停止させる第1低体温温度で第1薬液で灌流及びフラッシュ洗浄のうちの一方を行うステップを有することを特徴とする方法。
【請求項107】
前記灌流ステップに先立って、前記臓器が予低体温状態にすることなしに、前記虚血期間又は低酸素期間にさらされるものとした請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記灌流ステップ又はフラッシュ洗浄ステップは、遊離基活性、細胞消滅酵素分解、及び脈管透過性からなるグループから選択した異化変化を減少又は停止させることを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項109】
少なくとも1個の臓器を第1薬液でフラッシュ洗浄するステップと、
前記少なくとも1個の臓器を第1薬液で灌流するステップを
含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項110】
前記フラッシュ洗浄は前記灌流に先立って行う請求項109記載の方法。
【請求項111】
前記フラッシュ洗浄を前記灌流に続いて行う請求項109記載の方法。
【請求項112】
前記第1薬液は、酸化防止剤、アポトーシス防止剤、及び脈管透過性減少剤よりなるグループから選択した少なくとも一つの薬剤を有するものとした請求項106記載の方法。
【請求項113】
第1低体温温度で一定期間にわたり連続的に第1薬液で前記臓器を灌流してATP回復を行い、虚血又は低酸素で生ずる異化プロセスを減少する請求項106記載の方法。
【請求項114】
前記第1薬液は、臓器の脈管内皮ダメージを回避するよう調整するものとした請求項106記載の方法。
【請求項115】
前記第1薬液は、生存力測定のための少なくとも一つのマーカーを有するものとした請求項106記載の方法。
【請求項116】
前記第1薬液は、有効な緩衝作用を生ずる酸化防止剤を有するものとした請求項106記載の方法。
【請求項117】
前記第1温度を、2〜10゜Cとした請求項106記載の方法。
【請求項118】
前記第1温度にし、約5〜約60mmHgの範囲内の圧力で少なくとも間欠的に前記臓器を灌流する請求項106記載の方法。
【請求項119】
前記第1温度にし、約5〜約60mmHgの範囲内の圧力で連続的に前記臓器を灌流する請求項106記載の方法。
【請求項120】
60mmHg以上の圧力を生ずることができない灌流圧力源を使用して前記第1温度で臓器を灌流する請求項106記載の方法。
【請求項121】
前記灌流ステップ中、臓器の生存力をモニタするステップを含む請求項106記載の方法。
【請求項122】
臓器生存力を示す液体特性を感知するセンサ、及び感知したデータを表示する少なくとも1個のディスプレイによって前記臓器の生存力をモニタし、感知したデータを評価のためにマイクロプロセッサに中継するものとした請求項121記載の方法。
【請求項123】
毛細血管床条件を示す液体特性を感知するセンサと、感知したデータを表示する少なくとも1個のディスプレイと、感知したデータを評価のためにマイクロプロセッサに伝送するリレーとにより毛細血管床をモニタする請求項121記載の方法。
【請求項124】
1個以上の臓器を灌流する請求項106記載の方法。
【請求項125】
各臓器を、空気圧作用の薬液リザーバを使用して第1温度にして第1薬液により灌流し、前記薬液リザーバは、各臓器に挿入する導管に配置した圧力センサに応答して制御するものとした請求項124記載の方法。
【請求項126】
各臓器に挿入した導管に配置した圧力センサに応答して制御する個別の空気圧薬液リザーバを使用して各臓器を灌流する請求項125記載の方法。
【請求項127】
更に、各臓器のための個別の臓器槽において臓器を通過する薬液を捕集するステップ、各臓器槽からの薬液を除去するステップと、薬液を濾過するステップと、薬液を各臓器槽に帰還させるステップとを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項128】
更に、臓器を経て各臓器槽を通過する薬液を捕集するステップと、捕集した薬液から臓器の生存力を表す特性を感知して臓器生存力が保持されたか及び回復したかの少なくとも一方を測定できるようにするステップとを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項129】
更に、臓器を経て各臓器槽を通過する薬液を捕集するステップと、薬液を濾過するステップと、脱気するステップと、薬液に酸素を添加するステップと、次に薬液の感知したpHレベルに基づいて各臓器槽又は薬液リザーバのいずれかに薬液を帰還させるステップとを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項130】
更に、前記灌流を第2温度の第2薬液灌流に切り替えるステップを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項131】
前記第2薬液は、酸素キャリヤ、遊離基除去剤、下垂体成長因子抽出媒体及び細胞培養媒体を有するものとした請求項130記載の方法。
【請求項132】
前記第2薬液は、少なくとも一つの生存力マーカーを有するものとした請求項130記載の方法。
【請求項133】
更に、第2温度の第2薬液を、間欠的灌流及び連続的灌流の少なくとも一方で臓器を灌流するステップを含むものとした請求項106記載の方法。
【請求項134】
前記第2薬液は、酸素キャリヤを含有するものとした請求項133記載の方法。
【請求項135】
前記第2薬液は、溶解酸素を含む単純な結晶体溶液とした請求項134記載の方法。
【請求項136】
前記第2薬液は、酸化防止剤及び遊離基除去剤のうちの少なくとも一方を含有するものとした請求項135記載の方法。
【請求項137】
第2温度を、約10〜約24゜Cの範囲とした請求項133記載の方法。
【請求項138】
第2温度での灌流中に、臓器生存力をモニタするステップを含むものとした請求項133記載の方法。
【請求項139】
臓器生存力及び毛細血管床の少なくとも一方の条件を表す液体特性を感知し、感知したデータを表示する少なくとも1個のディスプレイと、感知したデータをマイクロプロセッサに伝送して評価させるリレーとによって、各臓器の生存力をモニタする請求項138記載の方法。
【請求項140】
約40〜100mmHgの範囲の圧力で第2温度にして臓器を灌流する請求項133記載の方法。
【請求項141】
100mmHg以上の圧力にならないよう構成した加圧薬液リザーバを使用し、第2温度にして臓器を灌流する請求項133記載の方法。
【請求項142】
空気圧力ヘッドの薬液リザーバを使用し、第2温度の第2薬液で臓器を灌流する請求項133記載の方法。
【請求項143】
更に、空気制御又は各臓器に挿入した導管に配置した圧力センサに応答して制御されるよう各臓器用に設けたステップモータ作動のカムバルブを使用し、薬液に、減少した灌流圧力及びパルス波形を付与するステップを含むものとした請求項142記載の方法。
【請求項144】
更に、臓器を第1薬液で灌流し、次いで臓器保存及び臓器搬送のうちの少なくとも一方を行う請求項106記載の方法。
【請求項145】
更に、臓器を哺乳動物に移植するとともに、臓器を第1温度に維持するステップを含む請求項144記載の方法。
【請求項146】
更に、臓器灌流後に臓器カセット内に収容して臓器保存及び臓器搬送のうちの少なくとも一方を行い、前記臓器カセットは、可搬性のハウジングと、臓器を支持するとともに臓器から流出する薬液を通過できる構成にした臓器支持面とを有し、前記可搬性のハウジングは、導管を挿通して臓器に接続できるようにした開口を有するものとした請求項106記載の方法。
【請求項147】
第1温度で第1薬液を臓器に灌流するに先立って、臓器カセット内に収容して臓器保存及び臓器搬送のうちの少なくとも一方を行い、前記臓器カセットは可搬性のハウジングと、臓器支持面と、臓器を灌流することができるよう臓器に接続可能な導管とを有するものとした請求項106記載の方法。
【請求項148】
ほとんど又は全く酸素を含有していない薬液で臓器を灌流する請求項106記載の方法。
【請求項149】
ほとんど又は全く酸素を含有しない薬液は、酸化防止剤、アポトーシス防止剤、及び脈管透過性減少剤よりなるグループから選択した少なくとも一つの薬剤を有するものとした請求項148記載の方法。
【請求項150】
約4゜C〜約10゜Cの温度でほとんど、又は全く酸素を含有しない薬液により臓器を灌流する請求項148記載の方法。
【請求項151】
ほとんど又は全く酸素を含まない薬液で灌流中に、たかだか10゜Cの温度で臓器を維持することができる可搬性の容器、及び使い捨てカセットのうちの少なくとも一方に臓器を配置する請求項148記載の方法。
【請求項152】
少なくとも1個の臓器を第1温度の第1薬液で灌流するに先立って、臓器を低体温温度に維持する請求項106記載の方法。
【請求項153】
臓器の保存及び搬送のうちの少なくとも一方のために、たかだか10゜Cの温度で臓器を維持することができる可搬性の容器に臓器を配置することを含む請求項106記載の方法。
【請求項154】
臓器の保存及び搬送のうちの少なくとも一方のために、可搬性の灌流ユニットに臓器を配置することを含む請求項106記載の方法。
【請求項155】
臓器の保存及び搬送のうちの少なくとも一方のために、使い捨てカセットに臓器を配置することを含む請求項106記載の方法。
【請求項156】
第1温度の第1薬液で臓器を灌流中に、たかだか10゜Cの温度で臓器を維持することができる可搬性の容器、及び使い捨てカセットのうちの少なくとも一方に臓器を配置する請求項106記載の方法。
【請求項157】
虚血期間又は低酸素期間にさらされる少なくとも1個の臓器の生存力を維持及び回復することの少なくとも一方を行う方法において、
前記少なくとも1個の臓器に、異化変化を減少又は停止させる第1低体温温度で第1薬液で灌流するステップと、また
臓器保存及び臓器搬送の少なくとも一方のため、第2温度の第2薬液で臓器を灌流するステップと
よりなることを特徴とする方法。
【請求項158】
前記第1薬液は結晶体溶液とし、第2薬液は酸素キャリヤを含有するものとした請求項157記載の方法。
【請求項159】
前記第1薬液は、酸化防止剤を添加した単純な結晶体溶液とし、前記第2薬液は、酸素添加されたヘモグロビンをベースとする溶液とした請求項158記載の方法。
【請求項160】
第1温度を4〜10゜Cとし、第2温度を10〜24゜Cとした請求項157記載の方法。
【請求項161】
第1温度の第1薬液で臓器を灌流する間に、また第2温度の第2薬液で臓器を灌流する間に、臓器の生存力をモニタする請求項157記載の方法。
【請求項162】
臓器灌流方法において
圧力源に連通する少なくとも1個の薬液リザーバ及びこの薬液リザーバに接続しかつ臓器に接続可能な流路を使用して前記臓器を灌流し、前記薬液リザーバ及び流路は、前記圧力源によって前記薬液リザーバに加わる圧力を変化させることにより少なくとも部分的に制御される灌流圧力で臓器を灌流する構成とし、前記薬液リザーバは、可撓性の容器とし、前記圧力源は前記容器周りに配置した加圧帯を有するものとして構成したことを特徴とする方法。
【請求項163】
前記圧力源は65mmHgを越える圧力を生ずることができないものとした請求項162記載の方法。
【請求項164】
少なくとも1個の薬液リザーバ、この薬液リザーバに接続しかつ臓器に接続可能な流路と、前記流路に配置した可変バルブとを使用して臓器灌流を行い、前記灌流圧力を前記可変バルブによって少なくとも部分的に制御したことを特徴とする臓器灌流方法。
【請求項165】
前記可変バルブは、ステップモータ作動カムバルブ、回転ねじバルブ、及び螺旋ねじバルブよりなるグループから選択した請求項164記載の方法。
【請求項166】
臓器を灌流する方法において、圧力ヘッドタンクに連通する少なくとも1個の薬液リザーバと、前記圧力ヘッドタンク及び臓器に接続する流路を使用して臓器を灌流し、前記圧力ヘッドタンク及び流路は、圧力ヘッドによって少なくとも部分的に制御する灌流圧力で臓器を灌流する構成としたことを特徴とする方法。
【請求項167】
薬液で臓器を灌流し、
臓器に流入し、臓器を通過し、臓器から流出するうちの少なくとも一つの薬液を捕集し、
捕集した薬液を、臓器生存力を表す液体特性を感知するセンサに通過させ、
前記感知した液体特性に基づく生存力を臓器が維持するか否かを測定する
ことよりなることを特徴とする臓器灌流方法。
【請求項168】
前記感知した液体特性は、pH,pO,pCO,LDH,T/GST及びTプロテイン及び蛍光タグ付け共重合体を含むものとした請求項167記載の方法。
【請求項169】
臓器の生存力をモニタすることができるようにするため、臓器位置とは異なる位置に前記感知した液体特性を記録及び/又は伝送することを含む請求項167記載の方法。
【請求項170】
臓器を搬送及び保存する方法において、順次に以下のステップを行う、即ち、
a.温血欠乏からのダメージを修復するためき適度な低体温温度で臓器を灌流するステップ、
b.前記ステップaの適度な低体温温度よりも低い温度の低体温温度で臓器を灌流するステップ、
c.前記ステップbの低体温温度よりも高い温度の適度な低体温温度で臓器搬送及び臓器保存の少なくとも一方を行うステップと、
d.ステップcの低体温搬送及び保存からのダメージを修復する適度な低体温温度で臓器を灌流するステップ
を行うことを特徴とする方法。
【請求項171】
前記適度な低体温灌流ステップa、dは、酸素添加灌流液で行い、前記低体温灌流ステップbは酸素を添加しない灌流液で行う請求項201記載の方法。
【請求項172】
前記ステップcは、臓器を搬送することを含み、更に、
e.前記ステップd後に低体温温度で臓器を灌流するステップ
を含む請求項201記載の方法。
【請求項173】
更に、
f.前記ステップe後に低体温温度で臓器を保存するステップ
を含むものとした請求項203記載の方法。
【請求項174】
前記ステップe後に臓器を移植するステップを含むものとした請求項203記載の方法。
【請求項175】
ステップcは保存施設に臓器を搬送することを含み、更にまた、
e.低体温温度で臓器を灌流し、また前記ステップdの後で、前記保存施設に低体温温度で臓器を保存するステップを含む
請求項201記載の方法。
【請求項176】
更に、
f.ステップeの低体温温度によるダメージを修復するため、平常体温温度で臓器を灌流するステップと、
g.低体温温度で臓器を灌流するステップと、
h.低体温温度で移植施設に臓器を搬送するステップと
を含むものとした請求項206記載の方法。
【請求項177】
更に、ステップhの後に臓器を移植するステップを含む請求項207記載の方法。
【請求項178】
更に、
f.ステップhの低体温搬送からのダメージを修復するため平常体温温度で臓器を灌流するステップと、
g.低体温温度で臓器を灌流するステップと、
h.前記臓器を移植するステップと
を含むものとした請求項207記載の方法。
【請求項179】
少なくとも1個の臓器を灌流する装置において、
少なくとも1個の薬液リザーバと、
前記薬液リザーバに接続し、かつ臓器に接続可能な流路と、
前記薬液リザーバに熱伝導連通する第1熱交換器と、
第1低体温温度及びこの第1低体温温度よりも低い第2低体温温度の薬液で臓器を灌流することができるよう第1熱交換器を制御するコントローラと
を具えたことを特徴とする装置。
【請求項180】
第1温度での低体温灌流のための第1灌流溶液を保持する少なくとも1個の第1容器と、前記第1温度よりも低い第2温度での低体温灌流のための第2の異なる灌流溶液を保持する少なくとも1個の第2容器とを収容するシール可能なパッケージよりなることを特徴とする灌流溶液キット。
【請求項181】
前記第1灌流溶液は少なくとも結晶体を含有するものとした請求項180記載のキット。
【請求項182】
前記第1灌流溶液は結晶体とし、前記第2灌流溶液は酸素キャリヤを増量したものとした請求項181記載のキット。
【請求項183】
前記酸素キャリヤは、ヘモグロビン及び滅菌した赤血球よるなるグループから選択した請求項182記載のキット。
【請求項184】
前記酸素キャリヤをヘモグロビンとした請求項182記載のキット。
【請求項185】
前記第2灌流溶液を酸化防止剤及び遊離基除去剤のうちの少なくとも一方を含むものとした請求項180記載のキット。
【請求項186】
前記溶液は、5mM以下しかピルビン酸塩を含有しないものとした請求項180記載のキット。
【請求項187】
前記第1灌流溶液は少なくとも一つの血管拡張剤を含有するものとした請求項180記載のキット。
【請求項188】
前記第1容器及び前記第2容器は、灌流溶液リザーバとして灌流装置に接続し得る形状にし、前記灌流装置の灌流導管に液体連通させる請求項180記載のキット。
【請求項189】
前記第1容器及び前記第2容器のうちの少なくとも一方を圧縮可能にし、内部の灌流溶液に圧力を加えることができるようにした請求項188記載のキット。
【請求項190】
前記第1容器及び前記第2容器のうちの少なくとも一方に、収容した灌流溶液が容器から流出できる第1開口と、圧縮したガスが容器に流入できる第2開口を設けた請求項188記載のキット。
【請求項191】
前記パッケージは、前記第1容器及び第2容器の接続する灌流装置に接続して使用できる形状のカセットとし、このカセット内で前記第1及び第2の容器が前記灌流装置の灌流導管に流体連通するようにした請求項188記載のキット。
【請求項192】
前記薬液を血液とした請求項80記載の方法。
【請求項193】
少なくとも1個の臓器の生存力を維持するため、少なくとも1個の臓器の薬液により灌流を制御するシステムにおいて、
臓器データを入力する入力装置、
灌流モードのタイプのうちの一つ又はそれ以上を選択する灌流セレクタ、
各選択した灌流モードを制御する制御タイプを選択する制御セレクタ、
選択した灌流モード及び流れ制御に基づく薬液の流れを制御する流れコントローラ、
灌流中に、薬液及び臓器が遭遇する動作条件を検出する少なくとも1個の検出器、
検出した動作条件を予め記憶した動作条件と比較し、この比較に基づく臓器生存力を表す信号を発生する比較器、
前記比較器により発生した信号に基づいて臓器生存力に関するメッセージを発生する及び/又は生存力を自動的に調整するインジケータ
のうちの少なくとも一つを具えたことを特徴とする灌流制御システム。
【請求項194】
可搬性ハウジングを保持する携行可能な搬送器において、
前記搬送器を直立させ易い形状の底部と、
頂部と、
ポンプと、
電源と、
少なくとも1個の臓器を収容しる形状の可搬性ハウジングを保持する隔室と
を具えたことを特徴とする搬送器。
【請求項195】
更に、導管セットを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項196】
更に、前記頂部を前記底部に固定するラッチを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項197】
更に、前記頂部を前記底部に固定する少なくとも1個のラッチを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項198】
更に、肩掛けストラップ及び搬送を容易にするホイールの少なくとも一方を設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項199】
更に、搬送器の特性を表示する制御パネルを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項200】
前記特性は、灌流圧力、パワーオン・オフ、エラー条件、流速、流れ抵抗、灌流温度、臓器槽温度、ポンプ送給時間、バッテリチャージ量、温度プロファイル、頂部部分の状態、履歴ログ若しくは履歴グラのうちの少なくとも1個とした請求項199記載の搬送器。
【請求項201】
前記頂部部分の少なくとも一部を光学的に見通せるものとした請求項194記載の搬送器。
【請求項202】
更に、頂部部分の開閉状態をモニタするセンサを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項203】
頂部部分及び底部部分の外側は、可変の厚さを有するものとした請求項194記載の搬送器。
【請求項204】
前記搬送器は、バーコード、磁気タグ、無線周波数タグ、トランスミッタ、又は全地球的測位システムのうちの少なくとも一つを有し、搬送器の位置及び識別のうちの少なくとも一つをモニタできるようにした請求項194記載の搬送器。
【請求項205】
搬送中に有線又は無線で通信できる構成にした請求項194記載の搬送器。
【請求項206】
少なくとも1個の臓器を低体温灌流することができる構成とした請求項194記載の搬送器。
【請求項207】
更に、灌流液及び少なくとも1個の臓器のうちの一方の温度を、冷却剤及び温度コントローラにより制御する温度制御手段を素子請求項206記載の搬送器。
【請求項208】
前記温度制御手段は、臓器容器及び灌流液リザーバのうちの少なくとも一方の温度を制御する手段を有するものとして構成した請求項207記載の搬送器。
【請求項209】
更に、臓器、臓器容器、及び灌流液リザーバのうちの少なくとも一つの温度を感知し、また感知温度の読み取りを温度コントローラに出力する感知手段を設けた請求項208記載の搬送器。
【請求項210】
更に、灌流モード及び流れ制御の各選択ステップに使用するため臓器に基づくデフォルト設定を設けた請求項209記載の搬送器。
【請求項211】
更に、複数個の臓器の灌流を制御する手段を設けた請求項210記載の搬送器。
【請求項212】
前記温度を−25〜60゜Cの範囲とした請求項207記載の搬送器。
【請求項213】
搬送器のデフォルト構成システムにより電源障害の差異に冷却保存できる構成とした請求項194記載の搬送器。
【請求項214】
前記ポンプの流速をコンピュータ又はマイクロコントローラによって制御する請求項194記載の搬送器。
【請求項215】
更に、ポンプの圧力をモニタする圧力変換器を設けた請求項214記載の搬送器。
【請求項216】
更に、冷却剤のレベルを視認できるよう搬送器に光学的にクリアを領域を設けた請求項207記載の搬送器。
【請求項217】
冷却剤のレベルを自動的にモニタ及び制御できるモニタを設けた請求項207記載の搬送器。
【請求項218】
前記冷却剤は6〜12時間持続するものとした請求項207記載の搬送器。
【請求項219】
前記冷却剤は30〜50時間持続するものとした請求項218記載の搬送器。
【請求項220】
前記冷却剤は灌流を停止させることなく交換可能にした請求項219記載の搬送器。
【請求項221】
更に、冷却剤を保持する液密の隔室を設けた請求項207記載の搬送器。
【請求項222】
可搬性のハウジングを開放することなくハウジングを搬送器に整合させることができるようにした請求項194記載の搬送器。
【請求項223】
電源障害の際に、冷却保存が効くようにした請求項194記載の搬送器。
【請求項224】
ポンプをローラポンプとした請求項194記載の搬送器。
【請求項225】
更に、臓器を連続的にモニタするモニタを設けた請求項194記載の搬送器。
【請求項226】
更に、ディスプレイを設けた請求項225記載の搬送器。
【請求項227】
ローカルエリアネットワークに接続する構成とした請求項194記載の搬送器。
【請求項228】
更に、モデムを設けた請求項227記載の搬送器。
【請求項229】
搬送器の動作を制御する方法において、
搬送器に設け、この搬送器の動作を選択する制御セットを使用し、
選択した動作を表示し、
搬送器の動作は、ポンプ呼び水開始、洗浄、誤動作処理、灌流及びアイドリングとしたことを特徴とする搬送器動作制御方法。
【請求項230】
前記制御は手動とした請求項229記載の方法。
【請求項231】
前記制御は、ボタン、ノブ、ダイヤル、及び無線レシーバのうちの少なくとも一つで行うものとした請求項230記載の方法。
【請求項232】
前記制御を自動で行う請求項229記載の方法。
【請求項233】
自動動作を搬送器の内部のモニタで制御する請求項232記載の方法。
【請求項234】
前記選択した動作は制御パネル上に表示するようにした請求項229記載の方法。
【請求項235】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
ポンプと、
パルスコントローラと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構造の臓器支持面と
を具え、前記ポンプ及びパルスコントローラは、流れデータ、及び回転計データのうちの少なくとも一つを圧力センサから受け取り、これらデータを出力してポンプを駆動するようにしたことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項236】
前記ポンプ及びパルスコントローラにより、灌流流れから圧力パルス波形を減少するようにした請求項235記載の装置。
【請求項237】
前記ポンプ及びパルスコントローラにより、導管及び/又は臓器における圧力波形を一定に維持する請求項236記載の装置。
【請求項238】
前記ポンプ及びパルスコントローラにより、臓器に送り込まれる圧力波形を所定波形となるよう合成する請求項236記載の装置。
【請求項239】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
ポンプと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構造の臓器支持面と
を具え、前記ポンプを、臓器の第1領域に導入する少なくとも1個の導管に接続し、また臓器の第2領域に導入する他の少なくとも1個の導管に接続した
ことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項240】
臓器の第1領域に導入する導管の数は、臓器の第2領域に導入する導管の数とことなるものとした請求項239記載の装置。
【請求項241】
前記可搬性のハウジングの一方の側に、フィルタ、気泡トラップ、圧力変換器、温度変換器、及び流れセンサのうちの一つ又はそれ以上を設け、また、前記可搬性のハウジングの他方の側にもフィルタ、気泡トラップ、圧力変換器、温度変換器、及び流れセンサのうちの一つ又はそれ以上を設けた請求項239記載の装置。
【請求項242】
臓器評価システムにおいて、
臓器支持体及び少なくとも1個の臓器パラメータセンサと、
臓器灌流装置と
を具え、評価中に臓器状態を維持しつつ臓器パラメータを評価するようにしたことを特徴とする臓器評価システム。
【請求項243】
臓器評価方法において、
臓器を保持し、
臓器パラメータを感知し、また
臓器を保持している時間中に臓器を診断する
ことよりなることを特徴とする臓器評価方法。
【請求項244】
臓器評価システムにおいて、
コンピュータと、
分析器と、
前記コンピュータ及び分析器に有線又は無線で通信する臓器評価機器と、
灌流室と、及び
臓器を収容する構成の臓器室と
を具えたことを特徴とする臓器評価システム。
【請求項245】
更に、システム及び臓器の状態を示すディスプレイを設けた請求項244記載のシステム。
【請求項246】
前記臓器室を絶縁した請求項244記載のシステム。
【請求項247】
前記臓器室に、更に、蓋を設けた請求項244記載のシステム。
【請求項248】
臓器の生存力を分析する方法において、
臓器パラメータを検出し、
臓器パラメータをコンパイルし、及び
コンパイルした臓器パラメータに基づいて臓器生存力の指数を生成する
ことよりなることを特徴とする臓器生存力分析方法。
【請求項249】
臓器又は組織を改善する方法において、
人体から臓器又は組織を摘出し、
臓器又は組織を改質し、及び
改質した臓器又は組織を人体に移植する
ことよりなることを特徴とする臓器又は組織改善方法。
【請求項250】
第1人体から臓器を摘出し、またこの臓器を第2人体に移植する請求項249記載の方法。
【請求項251】
第1人体から臓器を摘出し、またこの臓器を同一の人体に移植する請求項249記載の方法。
【請求項252】
前記改質ステップは、臓器又は組織に放射線を照射するか、又は化学療法を施すことを含むものとした請求項250記載の方法。
【請求項253】
前記改質ステップは、臓器又は組織に少なくとも一つの化学化合物を投与することを含むものとした請求項250記載の方法。
【請求項254】
前記化学化合物は、修正した又は無修正の免疫グロブリン、ステロイド、ポリエチレングリコール、及び酸化防止剤のうちの少なくとも一つを投与することを含むものとした請求項250記載の方法。
【請求項255】
臓器又は組織には、数週間にわたり前記改質処置を施す請求項249記載の方法。
【請求項256】
前記改質ステップは、温血欠乏ダメージを修復することを含むものとした請求項249記載の方法。
【請求項257】
前記改質ステップは、予摘出ダメージを修復することを含むものとした請求項249記載の方法。
【請求項258】
前記改質ステップは、外科的処置を含むものとした請求項249記載の方法。
【請求項259】
前記改質ステップは、血栓溶解処置を含むものとした請求項249記載の方法。
【請求項260】
前記改質ステップは、抗アポトーシス処置を含むものとした請求項249記載の方法。
【請求項261】
少なくとも1個の臓器を生存力を測定する方法において、
少なくとも1個の臓器をフラッシュ洗浄し、
少なくとも1個の臓器を少なくとも1個の搬送器内に低温度で保存し、
少なくとも1個の臓器の生存力を評価し、
生存しうる臓器を移植地点に搬送する
ことを特徴とする方法。
【請求項262】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構成の臓器支持面であって、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、臓器評価装置のうちの少なくとも1個によって前記可搬性のハウジングを収容しうるようにし、ハウジングを通過する導管を臓器に接続し、かつハウジングの底部を液密にした臓器支持面と、
ハウジングのための第1蓋及び第2蓋と
を具えることを特徴とする臓器保持装置。
【請求項263】
第1蓋と第2蓋との間の領域によりオーバーフローチャンネルを画成する請求項262記載の装置。
【請求項264】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
オーバーフロー溝を画成する可搬性のハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構成の臓器支持面であって、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、臓器評価装置のうちの少なくとも1個によって前記可搬性のハウジングを収容しうるようにし、ハウジングを通過する導管を臓器に接続し、かつハウジングの底部を液密にした臓器支持面と
を具えたことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項265】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構成の臓器支持面であって、臓器灌流装置、臓器搬送器装置、臓器評価装置のうちの少なくとも1個によって前記可搬性のハウジングを収容しうるようにし、ハウジングを通過する導管を臓器に接続し、かつハウジングの底部を液密にした臓器支持面と、
第1及び第2の蓋であって、少なくとも一方の蓋には、生体組織検査用ポートを設けた第1蓋及び第2蓋と
を具えることを特徴とする臓器保持装置。
【請求項266】
臓器を遠隔モニタする方法において、
臓器の搬送及び保存中に臓器に関連する情報を遠隔モニタする遠隔モニタステップを有することを特徴とする方法。
【請求項267】
前記遠隔モニタステップは、臓器の位置及び生存力パラメータのうちの少なくとも一方をモニタするものとした請求項266記載の方法。
【請求項268】
前記遠隔モニタステップは、コンピュータネットワークに接続したシステムによって行う請求項267記載の方法。
【請求項269】
更に、前記情報を臓器の予定移植者に転送する請求項268記載の方法。
【請求項270】
前記遠隔モニタステップは、臓器の搬送中に連続的に行う請求項266記載の方法。
【請求項271】
臓器を担持する搬送器において、情報伝送装置を設けたことを特徴とする搬送器。
【請求項272】
前記情報伝送装置に接続した全地球測位システムを設けた請求項271記載の搬送器。
【請求項273】
更に、前記情報伝送装置に接続した臓器パラメータセンサを設けた請求項271記載の搬送器。
【請求項274】
前記情報伝送装置により、搬送器からのデータを遠隔位置に伝送する請求項271記載の搬送器。
【請求項275】
前記データは、ビデオイメージデータ及び画像イメージデータの少なくとも一方とした請求項274記載の搬送器。
【請求項276】
臓器搬送装置において、
搬送器及び可搬性ハウジングを具え、熱伝導効率が高くなるよう前記可搬性のハウジング及び搬送器を互いに嵌合したことを特徴とする臓器搬送装置。
【請求項277】
チューブのセットを含むシール可能パッケージを具え、チューブのセットは、臓器を臓器灌流装置に接続するものとして構成したことを特徴とするキット。
【請求項278】
前記チューブのセットは、可搬性ハウジングを臓器に接続するチューブを含むものとした請求項277記載のキット。
【請求項279】
前記チューブのセットは、前記可搬性ハウジングを前記臓器灌流装置に接続チューブを含むものとした請求項278記載のキット。
【請求項280】
更に、チューブを臓器に接続する間に臓器を確実に保持する構成にした臓器支持体を設けた請求項277記載のキット。
【請求項281】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
前記ハウジング内に臓器を支持する構成でありかつ着脱自在の臓器支持面と
を具えたことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項282】
前記臓器支持面を、椅子の形状にした請求項281記載の装置。
【請求項283】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
可搬性のハウジングと、
このハウジングを識別するようハウジングに組み込んだ信号発生装置と
を具えたことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項284】
可搬性の臓器搬送器において、
前記搬送器を直立状態にし易くする底部部分と、
頂部部分と、
ポンプと、
電源と、
臓器のための可搬性ハウジングを保持する隔室と、及び
冷却剤を保持する他の隔室と
を具えたことを特徴とする臓器搬送器。
【請求項285】
冷却剤を氷とした請求項284記載の臓器搬送器。
【請求項286】
前記冷却剤は、前記可搬性のハウジングを搬送器から取り外すことなく交換できるものとした請求項284記載の臓器搬送器。
【請求項287】
可搬性の臓器搬送器において、
前記搬送器を直立状態にし易くする底部部分と、
頂部部分と、
液体を臓器に流入させるポンプと、
電源と、
臓器のための可搬性ハウジングを保持する隔室と、及び
前記臓器からの液体の流れを転流させる転流システムと
を具えたことを特徴とする臓器搬送器。
【請求項288】
前記転流システムは、電源障害中又は高圧力状況中に液体の流れを転流させるものとした請求項287記載の臓器搬送器。
【請求項289】
更にまた、気泡検出器を設けた請求項287記載の臓器搬送器。
【請求項290】
可搬性の臓器搬送器において、
前記搬送器を直立状態にし易くする底部部分と、
頂部部分と、
液体を臓器に流入させるポンプと、
電源と、
臓器のための可搬性ハウジングを保持する隔室と、及び
前記可搬性のハウジングに接続可能なチューブセットと
を具えたことを特徴とする臓器搬送器。
【請求項291】
前記可搬性のハウジング及びチューブセットは、臓器を露出させることなく搬送器から取り外すことができるようにした請求項290記載の臓器搬送器。
【請求項292】
可搬性の臓器搬送器において、
前記搬送器を直立状態にし易くする底部部分と、
頂部部分と、
ポンプと、
搬送器の電力を消失することなく交換可能な電源と
を具えたことを特徴とする臓器搬送器。
【請求項293】
可搬性の臓器搬送器において、
前記搬送器を直立状態にし易くする底部部分と、
頂部部分と、
液体を臓器に流入させるポンプと、
電源と、
付属品を保持する隔室と
を具えたことを特徴とする臓器搬送器。
【請求項294】
前記隔室は医薬チャートを保持する構成とした請求項293記載の臓器搬送器。
【請求項295】
臓器の灌流、保存、評価、搬送のうちの少なくとも一つを行うため臓器を保持する装置において、
装置内に臓器のための可搬性ハウジングが存在するか否かを検出するセンサを設けたことを特徴とする臓器保持装置。
【請求項296】
臓器搬送器装置として構成した請求項295記載の装置。
【請求項297】
臓器移植、又は臓器埋め込みにおける因子を分析する方法において、
被移植者における臓器移植の結果を比較し、また搬送及び/又は保存中お臓器履歴を比較することよりなることを特徴とする分析方法。
【請求項298】
上述の方法、装置、製品、サブステップ及び副次部分の個別の及び組み合わせたもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図17A】
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【図18】
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【図18A】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図25A】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−92113(P2012−92113A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−256852(P2011−256852)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2002−529870(P2002−529870)の分割
【原出願日】平成13年8月27日(2001.8.27)
【出願人】(301063452)オーガン リカヴァリー システムズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】