説明

自力歩行訓練器

【課題】狭いスペースで訓練でき、かつ安定して訓練者を支持する安価な歩行訓練器とする。
【解決手段】 乳幼児の歩行器のように、訓練者Aが入って歩行する歩行体10に訓練者の支持アーム30を設け、この支持アーム30でもって支持体45を介して立った状態の訓練者を支え、その支持体の吊り上げ力をロープ40を介し錘50により得る。訓練者は、歩行体に支えられながら歩行し、その際、支持体で体重が支えられ、歩行に伴う上下動に対してはロープ40を介して錘50が昇降して、その上下動に関係なく、訓練者を一定の吊り上げ力で支える。錘50の重量は動滑車47を介してロープ40に伝えるため、訓練者を支える力を与える錘は、その半分の重量で良い。このため、錘を軽くすることができて、介護者等の負担は軽くなる。支持アームをねじジャッキ33によって揺動する。この上方への揺動により、訓練者の立ち上がり力を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自力歩行して歩行訓練するための自力歩行訓練器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩行訓練は、高齢者や足腰の不自由な人、手術後の患者などのリハビリにおいて多く採用されており、自力で立って歩行できない人の歩行訓練具として、籠状の歩行器の上部から吊り具を吊り下げ、その吊り具でもって訓練者を立った状態に支え、その状態において、歩行器を移動させながら、その移動に伴って自力で歩行して訓練するものがある(特許文献1 要約参照)。
【特許文献1】特開2002−35065号公報
【0003】
また、乳幼児の歩行器のように、肘掛けアームを有するとともに、その枠状歩行器に逆L字状の上下方向のアームを設け、そのアームの先端から吊り具を吊り下げ、その吊り具でもって訓練者を立った状態に支え、その状態において、歩行器を移動させながら、その移動に伴って自力で歩行して訓練するものもある(特許文献2 要約参照)。
この訓練器は、前記吊り具の吊り上げ力をモータによって制御して、訓練者の歩行に伴う吊り具の上下動を吸収して安定した訓練者の支持を行うようになっている。
【特許文献2】特開2004−329278号公報
【0004】
さらに、歩行器の上方への吊り力を錘の吊り下げによって得ているものもある(特許文献3 図1の符号331参照)。この歩行器は、アクチュエータによって訓練者の歩行に伴う上半身の上下動に基づく負担を軽減するようにしている(同公報段落0055参照)。
【特許文献3】特開2006−239150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の訓練器は、安価なものと言えるが、訓練者の歩行に伴う吊り具の上下動を吸収する手段がないため、訓練者が歩行器に安定して支持されず、訓練者の負担が大きいものとなっている。
上記特許文献2に記載の訓練器は、その訓練者の歩行に伴う吊り具の上下動を吸収する手段を有するが、そのモータの制御が煩雑であり、安定した上下動の吸収をしようとすると、勢い、その制御コストが高いものとなる。
上記特許文献3の歩行器も、天井に沿って移動するなどの大がかりなものとなっている。
【0006】
この発明は、以上の状況に鑑み、狭いスペースで訓練でき、かつ安定して訓練者を支持する安価な歩行訓練器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、まず、乳幼児の歩行器のように、訓練者が入って歩行する歩行体に訓練者の支持体を吊り下げた支持アームを設け、この支持アームでもって前記支持体を介して立った状態の訓練者を支えるとともに、その支持体の吊り上げ力をロープを介して前記支持アームに吊り下げられた錘でもって得ることとしたのである。
このようにすれば,訓練者は、歩行体とともに、その歩行体に支えられながら歩行でき、その際、支持体で体重が支えられ、歩行に伴う上下動に対してはロープを介して錘が昇降して、その上下動に関係なく、訓練者を一定の吊り上げ力で支える。
【0008】
つぎに、この発明は、上記錘の重量を動滑車を介して上記ロープに伝えるようにしたのである。
動滑車を使用すれば、少なくとも、錘の自重の2倍の吊上げ力を上記支持体に与えることができる。このため、錘を軽くすることができて、介護者等の負担を軽くすることができる。
動滑車の数は、任意であるが、動滑車の数に応じて、支持体の昇降ストロークに対する錘の昇降ストロークが決定されるため、錘の昇降できるスペース等を考慮してその動滑車の数を適宜に決定する。
【0009】
この発明の具体的な構成としては、車輪を有する移動自在な歩行体と、その歩行体から上方に伸びた支持アームと、この支持アームの先端から垂れ下がり、支持アームに沿って下向きに導かれたその長さ方向に移動自在な昇降ロープと、その昇降ロープの先端に固定された訓練者支持体と、その昇降ロープの前記下向き端に固定された動滑車と、前記歩行体に一端が固定され、他端が前記動滑車に架けられた後に錘に固定された荷重調整ロープとから成る構成を採用することができる。
この自走歩行訓練器は、歩行体内に訓練者が入り、訓練者支持体を介して支持アームによって訓練者を支え、その状態で、訓練者は歩行体とともに自力歩行する。
【0010】
上記歩行体は、種々の構成が考えられるが、例えば、上記車輪を有するU字状の基台と、その上方に位置する水平なU字状の肘掛けアームと、その基台のU字状の付け根に立設されて前記肘掛けアームのU字状の付け根を支持する支え杆とからなって、その支え杆に上記支持アームが連結された構成を採用することができる。
この構成の歩行体は、上記基台と肘掛けアームにそのU字状の開口から歩行体に訓練者が入ることとなる。このとき、肘掛けアームが、支え杆に対して上方に揺動可能となっておれば、その肘掛けアームを上方に退去させた状態で、訓練者は歩行体に入ることができて、肘掛けアームが邪魔とならずに、その動作は円滑なものとし得る。
【0011】
上記支持アームも、種々の構成が考えられるが、例えば、その下端でもって上記歩行体に前後に揺動自在に設けられた縦アームと、その縦アームの先端から上記肘掛けアーム上の肘掛けに向かって設けられた横アームとから成り、前記縦アームと歩行体の間に伸縮可能なアクチュエータを設けて、そのアクチュエータによって前記縦アームの揺動角度を調節するとともに任意の角度で不動可能にした構成を採用することができる。
このようにすれば、例えば、車椅子に乗った訓練者が歩行体に入り、その状態で、支持体を介して支持アームでもって訓練者を支え、アクチュエータを伸張させて支持アームを上方に揺動させれば、その揺動につれて、訓練者は立ち上がりを補助されつつ立つことができる。すなわち、立った状態で、歩行体に入る必要はない。
【0012】
このとき、上記縦アームに横アームを上下に揺動自在に設ければ、縦アームに対して横アームを上下に動かすことができるため、訓練者支持体でもって訓練者を吊る際、その訓練者支持体を上下に動かしてその動作を行うことができる。このため、その動作が円滑となる。
また、上記縦アームに上記横アームの所要以上の下方への揺動を阻止する受けを設けて、必要以上の横アームの下動を阻止して、横アーム及び訓練者支持体が訓練者に当る等の不都合を無くすことが好ましい。
【0013】
アクチュエータとしては、支持アームを揺動させる伸縮するものであれば、ねじジャッキ、油圧又は空気シリンダ等と任意である。ねじジャッキは、支持アームの任意の揺動位置で自動ロックできる利点がある。
また、訓練者に応じて支持体による最適な吊上げ力(体重の支え補助力)は異なるため、上記錘を取換え自在として、その錘の取換えによって吊上げ力を調整できるようにすることが好ましい。その錘の交換は、実施形態の袋への錘の数によって調整したり、ウエイトリフテイングのバーベルのウエイト調整の構造としたりと任意である。
さらに、上記昇降ロープにはその長さ方向への所要以上の移動を支持アームへの当接によって阻止するストッパを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように構成して、訓練者は、歩行体とともに、その歩行体に支えられながら歩行できるようにしたので、訓練効果の向上を図ることができる。また、動滑車を介した錘による体重補助のため、小さな錘でもって、歩行に伴う訓練者の上下動に関係なく、円滑に訓練者を一定の吊り上げ力で支え得る(一定の体重補助力を確保する)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の一実施形態を図1〜図10に示し、この実施形態の自力歩行訓練器Kは、図1に示すように、移動自在な枠状の歩行体10と、その歩行体10から上方に伸びる支持アーム30と、この支持アーム30の先端から垂れ下がった昇降ロープ40と、その昇降ロープ40の先端に固定される訓練者支持体45と、その昇降ロープ40の他端に固定された動滑車47と、歩行体10に一端が固定され、他端が動滑車47に架けられた後に錘50に固定された荷重調整ロープ41とから成る。
【0016】
上記歩行体10は、車輪12(12a、12b、12c)を有するU字状の基台11と、その上方に位置する水平なU字状の肘掛けアーム20と、その基台11のU字状の付け根に立設されて前記肘掛けアーム20のU字状の付け根を支持する支え杆13とからなっている。この歩行体10は、基台11、肘掛けアーム20のU字状の付け根側(図1において、手前側)が前側となる。
【0017】
上記車輪12の内、前後の車輪12b、12cはキャスターからなって、走向方向がその全周囲に可変なものであり、中央の主車輪12aはその走向方向が前後方向に固定されている。その主車輪12aと前後の車輪12b、12cの接地点(高さ)は、前者12aが後者12b、12cより少し低くなっている(主車輪12aが前後車輪12b、12cに比べて基台11に対し少し地面側に突出している)。このため、歩行体10が前方に動く際(図11d参照)、主車輪12aを支点として歩行体10がほんの少し前に傾き(前屈み)となって、前輪12bと主車輪12aとでもって動く。一方、歩行体10が後方に動く際には(図11e参照)、主車輪12aを支点として歩行体10がほんの少し後に傾き(後屈み)となって、後輪12cと主車輪12aとでもって動く。
【0018】
また、主車輪12aは支持金具15に支持され、この支持金具15は、その両端でもって基台11側面の任意の孔11aに嵌め込み可能となっているとともに中央の摘みねじ16を各孔11aにねじ込むことによって固定される。このため、主車輪12aの位置は前後に調整可能であり、その調整によって、主車輪12aは、常時、この自力歩行訓練器Kの重心を通る垂線上に位置される。
このようになっていることにより、この自力歩行訓練器Kは、前方又は後方への歩行に伴う、主車輪12aの重心線上での前後の傾きによって、前後に安定して動くため、訓練者Aに不安を与えることがない。
【0019】
上記支え杆13は、図6に示すように、基台11に固定の基杆13aと、その基杆13aに抜き差し自在に嵌められる支杆13bとから成り、基杆13aに支杆13bを嵌めて、その両杆13a、13bに摘みねじ17をねじ込むことによって固定する(一体化する)。
歩行体10(基台11)の前部は棚18となっており、この棚18に制御器C及び電池B等が設置されている。
【0020】
上記肘掛けアーム20は、その付け根に前方及び下方に突出する二股支杆21、22をそれぞれ有しており(図5参照)、図7に示すように、その下向き支杆22が上記支え杆13の支杆13bに嵌られるチャンネル部材23の突出材24にそれを介在するように嵌られて軸25によって回転自在となる(図5参照)。
そのチャンネル部材23は、図8、図9に示すように、立った上記支え杆13の支杆13bに自身を撓ませながら(図9aから同b)嵌める。嵌めた後、そのチャンネル部材23及び支杆13bに摘みねじ26をねじ込むことによって固定する(一体化する)。
【0021】
このようにして、支え杆13(支杆13b)に肘掛けアーム20を取付けると、肘掛けアーム20は、水平状態から起立状態への起伏が可能なものとなり、その水平状態では、前向き(前方)の二股支杆21が上記チャンネル部材23の上端に当接する(図5a参照)ことによってその水平状態が維持され(位置決めされ)、起立状態では、チャンネル部材23の突出材24に設けたストッパ27に下方に突出する二股支杆22の下面が当接することによってそれ以上の起立(後方への回転)が阻止される(図5b参照)。そのとき、肘掛けアーム20は鉛直に対し少し前側に倒れた起立状態となる。
【0022】
また、チャンネル部材23は開放口の一側に内側に向く爪片23aを有しており、このチャンネル部材23を上記支え杆13の支杆13bに嵌めた際、その爪片23aによって前記開放口からの支杆13bの抜け出し、すなわち、チャンネル部材23が支え杆13から外れることを防止している。チャンネル部材23を支え杆13から外すには、その爪片23aを支杆13bから外れるように回転させて行う(図9bから同9a)。
【0023】
上記肘掛けアーム20はその両側に肘掛け28を有する。この肘掛け28は、図10に示すように、その下面に支杆28aを有し、この支杆28aが支管29aに出し入れ自在に挿し入れられており、その任意の挿し入れ位置において、摘みねじ28bをねじ込むことによってその位置が固定される。すなわち、支管28aに対して肘掛け28がその軸方向(上下方向)の任意の位置に固定される。
また、その支管29aの上部側方には支杆29bが固定され、この支杆29bは肘掛けアーム20にその軸方向(横方向)に出し入れ自在に挿し入れられており、その任意の挿し入れ位置において、摘みねじ28bをねじ込むことによってその位置が固定される。すなわち、肘掛けアーム20に対して肘掛け28がその軸方向(横方向)の任意の位置に固定される。
【0024】
これらの構成によって、肘掛け28は肘掛けアーム20に対して上下方向及び前後方向の位置が調整自在となっている。支管29a及び支杆29bにその長さ方向に所要間隔で孔を形成し、その孔に摘みねじ28bをねじ込んだり、挿し込んだりすることができる。この場合、その孔の位置が肘掛け28の調整位置となる。挿し込みの場合は、支管29a及び肘掛けアーム20側にねじ孔を形成する。
【0025】
支持アーム30は、歩行体10の支え杆13の上端に前後方向に回転自在(揺動自在)に転結した上下方向の縦アーム31と、この縦アーム31の先端から後方に向かって(肘掛けアーム20上の肘掛け28に向かって)上下に揺動自在に設けられた横アーム32とから成る(図1,図2、図4、図6参照)。
その縦アーム31と支え杆13(歩行体10)の間に電動ねじジャッキからなるアクチュエータ33が設けられ、このアクチュエータ33は、電池Bから電源が供給されており(電線省略)、操作器Sによってその伸縮が操作され、かつその任意の伸縮位置で停止される。このため、このアクチュエータ33の伸縮によって縦アーム31の揺動角度が調節されるとともに任意の角度で停止される。その停止状態は、ねじジャッキ33によってロックされる。
なお、ねじジャッキ33に電磁ブレーキを付設して、ねじジャッキ33への通電時(ねじジャッキ33の駆動時)、その電磁ブレーキが開放し(OFFし)、非通電となると、電磁ブレーキが作動してねじジャッキ33をロックするようにすれば、ロック状態が確実となる。
【0026】
縦アーム31の上部には横アーム32の所要以上の下方への揺動を阻止するゴム製受け(ダンパ)34が設けられている。その阻止角度(揺動角度)は、アーム31、32の強度、訓練者支持体45の下降位置等を考慮して適宜に設定する。また、このアクチュエータ33による縦アーム31の揺動範囲は、例えば、訓練者Aが床に座った状態から立った状態において補助できる高さに後記訓練者支持体45が位置し得るように設定する。
【0027】
上記支持アーム30の横アーム32には昇降ロープ40がその先端から後端に走向自在(移動自在)に貫通しており、この昇降ロープ40の一端(先端)に上記訓練者支持体45が取付けられている。この訓練者支持体45に訓練者Aを支持した吊り具Dを固定して、その支持体45を上昇させることによって、吊り具Dを介して訓練者Aに上方への吊り力を付与して、立とうとする訓練者Aの体重を支える。
訓練者支持体45と吊り具Dは、紐等のタグ(図示せず)を引くことによって訓練者支持体45から吊り具Dを円滑に外し得るようにして、緊急時、この自力歩行訓練器Kから訓練者Aを速やかに開放できるようにする。そのタグは赤色などとして目立つものとする。
【0028】
昇降ロープ40の横アーム32の後端から下向きに伸びる他端には動滑車47が固定されている。この動滑車47には支え杆13に一端が固定された荷重調整ロープ41が掛け回され、その荷重調整ロープ41は支え杆13の滑車42を経てその下端にフック43を有している(図6参照)。このフック43に錘袋(錘)50が吊り下げられる。この錘50の自重は、動滑車47を介していることから、荷重調整ロープ41、昇降ロープ40を介して支持体45に2倍の力として伝わる。このため、支持体45に加わる負荷に対して半分の重さの錘50によってその負荷を支え得る。
【0029】
錘袋50には、鉄アレイ、ウエイトリフテイングのバーベルウエイト等の重量の設定された錘を適宜にいれて、所要の重さ(重量)とする。例えば、訓練者Aの体重補助として20kgの吊上げ力を支持体45に加える場合には、10kgの錘50とする。
昇降ロープ40の先端(訓練者支持体45側)及び後端(動滑車47側)にゴム等からなるストッパ60a、60b(総称符号:60)が設けられており、このストッパ60によって各部材の衝突を緩衝してその損傷等を防止するとともに、訓練者Aの転倒時等の怪我を防止する。例えば、図11d、図11eの歩行訓練時、何らかの理由によって、訓練者Aが自力で立っていることができずに転倒しても、動滑車47側のゴムストッパ60aが横アーム32に当接して、訓練者支持体45をそれ以上下降させず、例えば、最大10cm程下降させるだけで、それ以後、訓練者Aはこの訓練器Kによって支持される。また、訓練者支持体45への負荷、例えば、吊り具Dを外しても、昇降ロープ40先端のゴムストッパ60bが横アーム32に当接してそれ以上の上昇を阻止する。
【0030】
この自力歩行訓練器Kは以上の構成であり、この自力歩行訓練器Kによって、車椅子Eの使用者(訓練者)Aが自力歩行訓練を行う場合、図11aに示すように、肘掛けアーム20を上方に起立させた(上方に退去させた)状態において、訓練者Aは、歩行体10にそのU字状の開口から(後方から)車椅子Eに乗った状態で入り込む(同図鎖線から実線の状態)。
【0031】
つぎに、図11bに示すように、肘掛けアーム20を降ろして水平状態とする。この状態から、同図鎖線から実線で示すように、アクチュエータ33を駆動させて支持アーム30を下降させ(縦アーム31を下方に揺動し)、支持体45に訓練者Aが着用した吊り具Dの吊り片dをフック等でもって固定する。
この状態から、図11cの鎖線から実線に示すように、アクチュエータ33を駆動させて支持アーム30を徐々に上昇させて(縦アーム31を上方に揺動して)、その揺動に伴う支持体45の上昇を助けとして、訓練者Aは立ち上がる。このアクチュエータ33の作動は操作器Sを介護者(セラピスト)又は訓練者A自らが行う。このとき、錘50は、訓練者Aの体重、体力等に応じた重量のものを適宜に設定する。また、肘掛け28は上下動及び前後動させて最適な高さ及び前後方向の位置とする。
【0032】
錘50によって自己の体重の支えを補助された訓練者Aは、図11dの状態において、歩行器Kを押しながら、自力で歩行器Kとともに歩くことによって移動する。この移動によって、脚力の向上を図る訓練をする。
この錘50による体重を支えた歩行(免荷歩行)は、プール内における歩行と同様なものとなり、廃用性の筋力低下や麻痺のため、歩行が困難になった訓練者Aの心身の自立を促進できる。また、手術後の免荷による歩行によって、早期の歩行訓練が可能となる。さらに、歩行介助者の負担軽減や転倒防止のための見張り介助の軽減も図ることができる。
【0033】
訓練が終われば、歩行体10内に車椅子を入れた状態において、上記と逆の動作、すなわち、アクチュエータ33を作動させて支持アーム30の横アーム32を下降させて支持体45を下降させ、訓練者Aをゆっくり車椅子に座らせる(図11c→図11b)。このとき、肘掛けアーム20は水平状態でも、起立させた状態でも良い。
この後、訓練者Aは、自力又は介護者によって車椅子Eを動かしてこの訓練器Kから出る(図11aの実線から鎖線)。
【0034】
この自力歩行訓練器Kによる訓練は、図11eに示すように、訓練器Kに対する歩行方向を逆にして行うこともできる。この場合は、視野を妨げない利点がある。
この自力歩行訓練器Kは、図11dに示す前方への訓練歩行及び同図eに示す後方への訓練歩行の何れにおいても、車輪12a、12b又は12a、12cが接地した4輪着床の歩行となり、その歩行が安定していると共に、小回りが効く。このため、狭いスペースにおいても、訓練者Aの歩行に安定かつ円滑に追従する。
【0035】
上記の自力歩行訓練器Kは、支え杆13の基杆13aと支杆13bの切り離し(図6参照)、支え杆13の支杆13bと肘掛けアーム20のチャンネル部材23との切り離し(図8参照)によって、基台11部分、肘掛けアーム20部分及び支持アーム30部分に3分割でき、それらは、ほぼ平らな部材となるため、梱包が容易であり、また、運搬も容易である。
上記実施形態は、図1において、左方を前側、右方を後側としたが、右方を前側、左方を後側とすること(考えること)もできる。また、車椅子の使用者の場合であったが、松葉杖を使用した人等の各種の歩行訓練者にこの訓練器Kを使用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態の斜視図
【図2】同実施形態の側面図
【図3】同実施形態の正面図
【図4】同実施形態の要部拡大斜視図
【図5】同実施形態の要部斜視図であって、(a)は肘掛けアームの水平状態、(b)は同起立状態
【図6】同実施形態の要部の組立て説明用斜視図
【図7】同実施形態の要部の組立て説明用斜視図
【図8】同実施形態の要部の組立て説明用斜視図
【図9】同実施形態の要部の組立て作用図
【図10】同実施形態の要部拡大側面図
【図11a】同実施形態の作用図
【図11b】同実施形態の作用図
【図11c】同実施形態の作用図
【図11d】同実施形態の作用図
【図11e】同実施形態の作用図
【符号の説明】
【0037】
A 訓練者
B 電池
C 制御器
D 訓練者吊り具
E 車椅子
K 自力歩行訓練器
10 歩行体
11 U字状基台
12、12a、12b、12c 車輪
13 支え杆
20 U字状肘掛けアーム
21、22 U字状肘掛けアームの二股支杆
28 肘掛け
30 支持アーム
31 支持アームの縦アーム
32 支持アームの横アーム
33 アクチュエータ(ねじジャッキ)
34 横アーム受け
40 昇降ロープ
41 荷重調整ロープ
45 訓練者支持体
47 動滑車
50 錘
60、60a、60b ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(12)を有する移動自在な歩行体(10)と、その歩行体(10)から上方に伸びた支持アーム(30)と、この支持アーム(30)の先端から垂れ下がり、支持アーム(30)に沿って下向きに導かれたその長さ方向に移動自在な昇降ロープ(40)と、その昇降ロープ(40)の先端に固定される訓練者支持体(45)と、その昇降ロープ(40)の前記下向き端に固定された動滑車(47)と、前記歩行体(10)に一端が固定され、他端が前記動滑車(47)に架けられた後に錘(50)に固定された荷重調整ロープ(41)とから成り、前記歩行体(10)内に訓練者(A)が入り、前記訓練者支持体(45)を介して前記支持アーム(30)によって訓練者(A)を支え、その状態で、訓練者(A)は歩行体(10)とともに歩行する自力歩行訓練器。
【請求項2】
上記歩行体(10)は、上記車輪(12)を有するU字状の基台(11)と、その上方に位置する水平なU字状の肘掛けアーム(20)と、その基台(11)のU字状の付け根に立設されて前記肘掛けアーム(20)のU字状の付け根を支持する支え杆(13)とからなって、その支え杆(13)に上記支持アーム(30)が連結されたものであり、前記肘掛けアーム(20)は、支え杆(13)に対して上方に揺動可能で、その肘掛けアーム(20)の上方への退去時に、前記基台(11)と肘掛けアーム(20)にそのU字状の開口から前記歩行体(10)に訓練者(A)が入るようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自力歩行訓練器。
【請求項3】
上記支持アーム(30)は、その下端でもって上記歩行体(10)に前後に揺動自在に設けられた縦アーム(31)と、その縦アーム(31)の先端から上記肘掛けアーム(20)上の肘掛け(28)に向かって設けられた横アーム(32)とから成り、前記縦アーム(31)と歩行体(10)の間に伸縮可能なアクチュエータ(33)を設けて、そのアクチュエータ(33)によって前記縦アーム(31)の揺動角度を調節するとともに任意の角度で不動可能にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自力歩行訓練器。
【請求項4】
上記縦アーム(31)に上記横アーム(32)を上下に揺動自在に設け、その横アーム(32)の所要以上の下方への揺動を阻止する受け(34)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の自力歩行訓練器。
【請求項5】
上記アクチュエータをねじジャッキ(33)としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の自力歩行訓練器。
【請求項6】
上記錘(50)を取換え自在としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の自力歩行訓練器。
【請求項7】
上記昇降ロープ(40)にその長さ方向への所要以上の移動を上記支持アーム(30)への当接によって阻止するストッパ(60)を設けたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の自力歩行訓練器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図11e】
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【公開番号】特開2009−66194(P2009−66194A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237834(P2007−237834)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507307444)近鉄スマイルサプライ株式会社 (1)