説明

自動分析装置及び自動分析方法

【課題】
本発明は、オペレータが生理食塩水をラックまたはディスクにセットすることなくキャリブレーションを実施できオペレータの負担を軽減できる、または装置立上げから試薬ブランクまでを自動的に実施することができ、直ちに測定を開始できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、元検体を希釈するための前処理液と前記元検体とを混合させた前処理検体を作成し、前記前処理検体と試薬を反応させ、前記前処理検体と前記試薬との反応液を分析することにより前記元検体中の特定成分を測定する自動分析する装置または方法において、前記前処理液をブランク標準液として使用しキャリブレーションを実施し、その後前記測定を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液、尿等の生体試料を定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試料と試薬を混合しその反応液の色の変化を検出して生体試料中の分析対象成分の分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置でのキャリブレーションは一般に、分析対象成分(分析項目)ごとに、対象成分を含まないブランク標準液と予め対象成分の濃度が分かっている一つもしくは複数の標準液にて実施される。またキャリブレーションは、試薬交換後、精度管理不良時およびメンテナンス後などに実施される。このキャリブレーションのブランク標準液として、生理食塩水や装置内でシステム水として使用されているイオン交換水が主に用いられる。ブランク標準液としてイオン交換水を用いる場合は、装置内のシステム水を使用するため、オペレータは予めサンプルカップにイオン交換水を準備する必要はない。しかし、ラテックス凝集比濁法、ラテックス免疫比濁法および免疫比濁法の分析法で測定される項目では、イオン交換水をブランク標準液として使用できない場合があり、特許文献1に示すようにオペレータはサンプルカップに分取した生理食塩水を予めラックまたはディスクにセットした後にキャリブレーションを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−343351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置を立上げ後、試薬交換後、精度管理不良時およびメンテナンス後にブランク標準液として生理食塩水を用いキャリブレーションを実行する際、オペレータは自ら生理食塩水を他の標準液と共にラックまたはディスクにセットしなければならず作業が煩雑である。
【0005】
生理食塩水の吸光度のみを再測定し、前回のキャリブレーションで作成された検量線を補正する試薬ブランクを実施する時も、生理食塩水をセットしなければならず自動的にキャリブレーションを実行することはできない。
【0006】
従って、本発明の第1の目的は、オペレータが生理食塩水をラックまたはディスクにセットすることなくキャリブレーションを実施でき、オペレータの負担を軽減できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、装置立上げから試薬ブランクまでを自動的に実施することができ、直ちに測定を開始できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、元検体を希釈するための前処理液と前記元検体とを混合させた前処理検体を作成し、前記前処理検体と試薬を反応させ、前記前処理検体と前記試薬との反応液を分析することにより前記元検体中の特定成分を測定する自動分析する装置または方法において、前記前処理液をブランク標準液として使用しキャリブレーションを実施し、その後前記測定を行うことを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記ブランク標準液として、前記前処理液またはシステム水のどちらか一方を分析項目ごとに選択し、前記選択結果の結果に基づいて前記キャリブレーションを実施することを第2の特徴とする。
【0009】
さらに、本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記選択は前記ブランク標準液として前記分析項目を前記前処理液と前記システム水のグループに分けて表示することを第3の特徴とする。
また、本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、第2の特徴に加え、前記選択は前記ブランク標準液として前記分析項目ごとに前記前処理液または前記システム水を指定し表示することを第4の特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、キャリブレーション異常時、精度管理結果不良時、装置立上げ時、装置メンテナンス後、または同一項目を分析する複数の前記試薬がセットされている場合に分析に使用する前記試薬が移り変わった直後に、前記キャリブレーションが自動的に行なわれることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリブレーションのブランク標準液として前処理液を使用することで、オペレータ自らがブランク標準液をラックまたはディスクに毎回セットすることなくキャリブレーションを実施でき、オペレータの負担を軽減できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することができる。
また、本発明によれば、装置立上げから試薬ブランクまでを自動的に実施することができ、直ちに測定を開始できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態おけるラック型の自走分析装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態おけるディスク型の自動分析装置を示す図である。
【図3】本発明の実施形態おけるブランク標準液設定画面の一例を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態おけるブランク標準液設定画面の他の例を示す図で、ブランク標準液として前処理液を使用する例を示す。
【図4B】本発明の実施形態おけるブランク標準液設定画面の他の例を示す図で、ブランク標準液としてシステム水を使用する例を示す。
【図5】本発明の実施形態における再キャリブレーションの流れの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるキャリブレーション異常(エラー)の種類により再キャリブレーションの実行要否を選択するための再キャリブレーション条件設定画面を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における精度管理結果不良時、再度精度管理に基づいてキャリブレーションを実施する流れの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態における装置立上げ時に、キャリブレーションの設定と自動的に行うメンテナンス時の設定をするための装置立上げ設定画面の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における分析に使用する試薬が変更された直後にキャリブレーションを実行する流れを説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態におけるメンテナンス後の自動キャリブレーションを実施するためのメンテナンス画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず自動分析装置の概要について図1を用いて説明する。
自動分析装置100は、検体架設部2、前処理部20、反応部30、制御部40及び表示装置50を有する。検体架設部2では、検体容器1に分取された血清や尿等の検体が検体架設部2にセットされ、前処理部20の位置まで搬送される。以下このような検体搬送タイプをラック型と呼ぶ。破線示す前処理部20では、元検体分注機構3によって検体容器1から前処理容器4へ検体が分注される。前処理容器4は、前処理ディスク5の円周上に配置されており、元検体分注機構3によって検体が分注された前処理容器4は、前処理ディスク5が回転することにより前処理液分注位置まで移動し、前処理液分注機構6によって前処理液が吐出される。ここで分注される前処理液には、元検体を希釈するための生理食塩水や、HbA1c測定時に使用する溶血剤などが含まれる。さらに前処理ディスク5が回転することにより前処理液が吐出された前処理容器4は攪拌位置まで移動し、前処理検体攪拌機構7の攪拌棒が回転することにより攪拌される。攪拌された前処理検体は、前処理液ディスク5の回転により前処理検体分注位置まで移動し、前処理部での処理が終了する。なお、前処理液は装置内のボトル(図示せず)に保有されている。
【0014】
反応部(検体架設部、前処理部以外の部分)30では、前処理検体分注機構8によって分注され反応容器9へ吐出される。反応容器9は、反応部にある反応ディスク10の円周上に配置されており、反応ディスク10が回転することにより、前処理検体が分注された反応容器9は試薬添加位置まで移動し、試薬ディスク11にセットされた試薬容器12から試薬分注機構13によって試薬が添加される。試薬が添加された反応容器9は、反応ディスク10が回転することにより、攪拌位置まで移動し反応容器攪拌機構14が回転することにより攪拌される。反応液が入った反応容器9は、反応ディスク10の回転により周回毎に光度計15の光軸上を通過し、その都度吸光度が測定される。測定された吸光度から、反応液中の目的成分の濃度が算出され結果が表示装置50等に出力される。
【0015】
なお使用後の前処理容器4および反応容器9は、前処理容器用洗浄機構16および反応容器用洗浄機構17によって洗浄され、次の測定に使用される。また、上記に示した各動作の制御及び濃度算出等を制御部40によって行われる。
【0016】
図2は、図1の検体架設部2の代わりに検体容器1が検体ディスク2Dにセットされたディスク型の自動分析装置200を示す。ディスク型の自動分析装置では検体容器1が検体ディスク2Dにセットされた時に、元検体分注機構3によって検体容器2から前処理容器4へ検体が分注され、その後図1に示す自動分析装置と同様の動作で進行する。
【0017】
以降、前処理液分注機構6により吐出される前処理液は生理食塩水として説明する。
初めに本発明の一実施形態である前処理液をブランク標準液として使用するフローについて説明する。
前処理液は前処理液分注機構6により検体が分注されていない空の前処理容器4へ分注される。前処理ディスク5が回転することにより、前処理液が分注された前処理容器4は前処理検体分注位置まで移動する。この際、前処理容器は検体のない前処理液のみであるので、前処理液の攪拌は実行されなくても良い。前処理容器4の前処理液は前処理検体分注機構8によって反応容器9へ吐出され、反応ディスク10が回転することにより反応容器中の前処理液は試薬添加位置まで移動する。ここで試薬ディスク11にセットされた試薬が試薬分注機構13により反応容器9へ添加され、反応ディスク10が回転することにより攪拌位置まで移動し反応容器攪拌機構14により攪拌される。反応液が入った反応容器9は周回毎に光度計15の光軸上を通過するので、その吸光度変化を測定することで前処理液をブランク液としても用いることが可能となる。
【0018】
次に、本実施形態の他の特徴である、ブランク標準液にシステム水もしくは前処理液どちらか一方を分析項目ごとに選択してキャリブレーションを実行する分析項目選択手段の一例を図3を用いて説明する。なお、システム水は、図1で説明した前処理液同様装置内もしくは外のボトル(図示せず)に保有され、前処理検体分注機構8から供給される。
図3は分析項目選択手段おけるブランク標準液設定画面で、予め分析項目に応じてシステム水もしくは前処理液どちらをブランク標準液として使用するかを登録する。画面左側のシステム水欄にはブランク標準液としてシステム水を使用する分析項目を登録し、前処理液を用いる場合は右側の前処理液欄に分析項目を登録する。図3では、ブランク標準液にシステム水を使用する分析項目としてAST、LD、UNを、前処理液を使用する分析項目としてIgA、IgG、FDPをそれぞれのグループに分けて登録している。修正がある場合は、修正分析項目を選び、システム水欄と前処理液欄の中央にある矢印のうち移行する方向の矢印を選択することで行なう。分析項目選択手段は表示画面を出力する表示装置と登録、変更を制御する制御部とを有する。この構成は図4に示す他の例でも同様である。
【0019】
ブランク標準液としてシステム水が用いられる場合、前処理検体分注機構8から反応容器9へ吐出されたシステム水と試薬分注機構13より分注された試薬が反応し、その反応液の吸光度変化が前述した前処理液をブランク標準液として使用するフローと同様に従い測定される。
一方、ブランク標準液として前処理液が用いられる場合、前処理液分注機構6により前処理容器4へ吐出された前処理液はさらに前処理検体分注機構8により反応容器9へ分注され、前述した前処理液をブランク標準液として使用するフローに従い反応液の吸光度変化が測定される。
その結果、各分析項目のキャリブレーションが図3のブランク標準液設定画面に従い実行される。勿論、ブランク標準液設定画面でなく他の方法で依頼してもよい。
【0020】
以上の説明により、システム水および前処理液のどちらがブランク標準液として使用されても、共に装置内にボトルに存在するので、オペレータがラック内のサンプルカップまたはディスクに予めブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションが実行できる。
さらに、ブランク標準液にシステム水もしくは前処理液どちらか一方を分析項目ごとに選択してキャリブレーションを実行する別の例について図4を用いて説明する。
【0021】
図4は分析項目選択手段の他の例を示し、分析項目ごとにどの標準液を使用するか設定するための標準液設定画面である。本標準液設定画面は、分析項目選択箇所およびキャリブレータコード設定箇所(各標準液としてどのキャリブレータコードの標準液を使用するか設定する箇所)で構成されている。分析項目選択箇所で選択した分析項目の標準液として使用する標準液を、標準液(1)〜(6)のキャリブレータコード設定箇所で設定する。
【0022】
図4では、試薬ブランク(濃度がゼロ)の予め設定されているシステム水のキャリブレータコードは98、前処理液のキャリブレータコードは99として、図4Aでは、分析項目IgAの標準液(1)に前処理液が選択されている例を、図4Bでは、分析項目ASTの標準液(1)にシステム水が選択されている例を示している。標準液(1)のキャリブレータコードにシステム水と前処理液それぞれに割り振られたコード番号を入力することで、分析項目ごとにブランク標準液の種類が設定され、サンプルカップに予めブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションが実行される。なお、図4では対象成分の濃度を有する標準液にて実施されるキャリブレータコードは、試薬ブランクの場合と区別し易くするために、1桁の数字を割り振っている。
【0023】
図1のラック型の自動分析装置100では、キャリブレーション専用ラックを図1の検体架設部2にセットし、キャリブレーションを開始する。この時、ブランク標準液用のサンプルカップは検体架設部2に置かなくても良い。試薬ブランクのみの時は、対象成分の濃度が分かっている標準液が不必要なため、サンプルカップを有する専用ラックをセットしなくてもキャリブレーションが実行される。
一方、図2のディスク型の自動分析装置200では、図2の検体ディスク1に標準液を分注したサンプルカップをセットし、キャリブレーションを開始する。この時、ラック型と同じ理由でブランク標準液用のサンプルカップは検体ディスク1に置かなくても良い。
【0024】
次に、キャリブレーション異常時の、再キャリブレーションの流れの一例について図5および図6を用いて説明する。
図5は本実施形態における再キャリブレーションの流れの一例を示す図であり、図6はキャリブレーション異常(エラー)の種類により再キャリブレーションの実行要否を選択するための再キャリブレーション条件設定画面の一例を示す図である。キャリブレーション異常が発生した場合、再キャリブレーション要否判断により再キャリブレーションの有無が決定される。再キャリブレーション要否判断は、図6の再キャリブレーション条件設定画面にて決定される。再キャリブレーション条件設定画面には、キャリブレーション異常が発生した場合、再度キャリブレーションを実行するエラー名を登録しておく。図6では、2回測定したブランク標準液の吸光度の平均値が予め設定した吸光度範囲から外れていることを意味する第一標準液吸光度異常、キャリブレーションで求めたKファクタ値(検量線の勾配)が前回値と±20%以上の差があることを意味するキャリブレーション異常が登録されている例を示している。再キャリブレーションボックス欄にチェックを入れることで、上記で登録されたキャリブレーションエラーが発生した場合のみ、キャリブレーションが再実行される。第一標準液吸光度異常のように、試薬ブランクのみ再実行する時、自動的に試薬ブランクが開始される。他の標準液も使用し再キャリブレーションを実行する時は、上記した通り、キャリブレーションラックまたは検体ディスクにブランク標準液以外の標準液(対象成分の既知濃度を有する標準液)を分注したサンプルカップを載せた後、キャリブレーションを開始する。また検体ディスクが保冷されている時、前回のキャリブレーションで用いた標準液を使用することも可能であり、複数の標準液を用いたキャリブレーションも、自動的に開始される。逆に登録されていないエラー名であれば、再キャリブレーションは実行されない。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、ブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションを実行できる。
特に、試薬ブランクのみの時や前回のキャリブレーションで用いたブランク標準液以外の標準液を使用する場合は全く準備が要らずその効果は大きい。
また、本実施形態によれば、図3または図4の設定画面に従い行なうことで、各分析項目に対し適切なブランク標準液で自動的にキャリブレーションを実行できる。
さらに、前記キャリブレーションをラック型およびディスク型とは関係なく、ブランク標準液用のサンプルカップを準備する必要はなく行なうことができる。
【0026】
次に、精度管理結果不良時、再度精度管理に基づいてキャリブレーションを実施する流れの一例について図7を用いて説明する。精度管理は、キャリブレーション結果が異常なしと判断された場合、精度管理試験が実施され、図4(a) に示す標準液(2)、または(3)に示すように所定の濃度を有するコントロール試料に対して行われる。そして、精度管理は得られた濃度が許容範囲内にあるかを管理する。許容範囲外にあれば精度管理結果不良と判断し、再度図5に示す破線内の処理をし、再度精度管理の判断を行う。キャリブレーション異常と判断された時、精度管理試験は実行されない。その結果、精度管理結果不良・良に関らずその結果がオペレータに通知される。ブランク標準液の種類は図3または4の設定画面に従う。
【0027】
精度管理結果不良時のキャリブレーションにおいても、ブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションを実行できる。
また、図3または図4の設定画面に従い行なうことで、各分析項目に対し適切なブランク標準液で自動的にキャリブレーションを実行できる。
【0028】
次に、装置立上げ後キャリブレーションを実行する一例ついて図8を用いて説明する。
図8は装置立上げ時にキャリブレーションの設定と自動的に行うメンテナンス時の設定を行うための装置立上げ設定画面の一例を示す図である。装置立上げ設定画面において各曜日の装置立上げ時刻を入力する。そして立上げ動作のスクロールにより、別に設定された一括動作の種類を選択する。ここで一括動作の動作1として、反応槽水交換、前処理液プライム、セル洗浄プライム、セルブランクというメンテナンスが、動作2として、反応槽水交換、前処理液プライム、セル洗浄プライム、ピペッタエアパージ、光度計チェック、セルブランクが登録されているとする。この場合、月曜日に装置立上げ時に実行される内容は以下の通りとなる。まずAM7時に電源がONになり、次いで反応槽水交換、前処理液プライム、セル洗浄プライムおよびセルブランクが順次実行される。その後に、キャリブレーションボックス欄にチェックがあるので、別にキャリブレーション依頼がされている分析項目において、キャリブレーションが開始される。また木曜日に装置立上げ時に実行される内容は、AM7時に電源がONになり、次いで反応槽水交換、前処理液プライム、セル洗浄プライム、ピペッタエアパージ、光度計チェックおよびセルブランクとなり、これらが順次実行される。その後に、図5に示した方法でキャリブレーション依頼がされている分析項目のキャリブレーションが同様に実施される。
【0029】
図8に示した実施形態によれば、装置立上げ時においても、予めにキャリブレーション依頼がされている分析項目を定めて置くことにより、ブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションを実行できる。
また、前記キャリブレーションをラック型およびディスク型とは関係なく、ブランク標準液用のサンプルカップを準備する必要はなく行なうことができる。
さらに、図8に示した実施形態によれば、図3または図4の設定画面に従い行なうことで、各分析項目に対し適切なブランク標準液で自動的にキャリブレーションを実行できる。
【0030】
次に分析に使用する試薬が変更された直後にキャリブレーションを実行する流れの一例について図9を用いて説明する。
本実施例では2種類の異なる試薬を用いてある分析項目を測定する例を示している。2種類の異なる試薬をそれぞれセットする2台の試薬ディスク11A,11Bがある。各試薬ディスクには同一分析項目を測定するための2つ以上の同一試薬の試薬容器12がセットしてあるとする。本実施例では同一分析項目を測定するための試薬容器12は各試薬ディスクに2つセットされており、現在検査に使用している試薬容器を12A-1、12B-1、試薬容器12A-1、12B-1の後に使用される待機用の試薬容器を12A-2、12B-2とする。分析途中に例えば試薬容器12A-1の試薬量が予め設定した量以下となると、試薬容器変更となる試薬容器12A-2に対して検量線補正のためのキャリブレーションが試薬容器12A-2の使用開始直前に実行される。試薬ブランクのみ依頼された分析項目は、ラック型およびディスク型ともにブランク標準液用のサンプルカップを準備することなく試薬容器12A-2使用開始前、自動的に試薬ブランクが実行される。使用するブランク標準液の種類は図3または4の設定画面に従う。キャリブレーション異常なしと判断されれば、新しい試薬容器12-A2を用いて分析が再開される。キャリブレーション異常と判断された場合は、それをオペレータに通知して、試薬容器12A-2を用いての分析は行われない。
【0031】
以上説明したように、試薬変更直後のキャリブレーションにおいても、ブランク標準液を準備することなく自動的にキャリブレーションを実行できる。
特に、試薬ブランクのみ依頼された分析項目は、ラック型およびディスク型ともにブランク標準液用のサンプルカップを準備することなく行なうことができる。
また、図3または図4の設定画面に従い行なうことで、各分析項目に対し適切なブランク標準液で自動的にキャリブレーションを実行できる。
【0032】
最後に、メンテナンス後の自動キャリブレーションの一例ついて図10を用いて説明する。
図10のメンテナンス設定画面のメンテナンス項目にはセル洗浄プライム、反応槽交換、セルブランクなどが表示されている。複数のメンテナンスを順次自動的に実施したい場合は、各メンテナンス項目を自由に組み合わせることにより本画面例のように動作1、動作2、動作3の動作パターンを登録する。一例として、セル洗浄プライム後にピペッタエアパージ、セルブランク、キャリブレーションを順次自動的に実行する方法について説明する。動作3として、予めセル洗浄プライム、ピペッタエアパージ、セルブランクが登録されており、キャリブレーション欄にチェックがあるとする。この場合、動作3を選択し実行ボタンを押すと、セル洗浄プライム、ピペッタエアパージ、セルブランクが順次自動的に実行される。そして最後に、別にキャリブレーション依頼がされた分析項目のキャリブレーションが自動的に開始される。
【0033】
メンテナンス後においても、予めキャリブレーション依頼がされている分析項目を定めて置くことにより、予めブランク標準液用のサンプルカップを図1の検体架設部や図2の検体ディスクにセットする必要はなく、自動的にキャリブレーションを実行できる。
また、メンテナンス後においても、図3または図4の設定画面に従い行なうことで、各分析項目に対し適切なブランク標準液で自動的にキャリブレーションを実行できる。
【0034】
以上、実施形態の説明によれば、装置立上げから試薬ブランクまでを自動的に実施することができ、直ちに測定を開始できる自動分析装置及び自動分析方法を提供することができる。
【0035】
以上、前処理液分注機構6により吐出される前処理液を生理食塩水として説明してきたが、溶血剤など生理食塩水以外の前処理液も使用することは可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:検体容器 2:検体架設部
2D:検体ディスク 3:元検体分注機構
4:前処理容器 5:前処理ディスク
6:前処理液分注機構 7:前処理検体攪拌機構
8:前処理検体分注機構 9:反応容器
10:反応ディスク 11,11A,11B:試薬ディスク
12:試薬容器
12A-1、12B-1:現在分析に使用している試薬容器
12A-2、12B-2:待機中の試薬容器
13:試薬分注機構 14:反応容器攪拌機構
15:光度計 16:前処理容器用洗浄機構
17:反応容器用洗浄機構 20:前処理部
30:反応部 40:制御部
50:表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元検体を希釈するための前処理液と、前記元検体と前記前処理液とを混合させた前処理検体を作成する前処理容器を複数配置した前処理ディスクと、前記前処理検体と試薬を反応させる反応容器を複数配置した反応ディスクとを有し、前記前処理検体と前記試薬との反応液を分析することにより前記元検体中の特定成分を測定する自動分析装置において、
前記前処理液をブランク標準液として使用しキャリブレーションを実施する手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記ブランク標準液として、前記前処理液またはシステム水のどちらか一方を分析項目ごとに選択できる分析項目選択手段を有し、分析項目選択手段の結果に基づいて前記キャリブレーションを実施することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記分析項目選択手段は前記ブランク標準液として前記分析項目を前記前処理液と前記システム水のグループに分けて表示する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分析項目選択手段は前記ブランク標準液として前記分析項目ごとに前記ブランク標準液として前記前処理液または前記システム水を指定し表示する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
キャリブレーション異常時、精度管理結果不良時、装置立上げ時、装置メンテナンス後、または同一項目を分析する複数の前記試薬がセットされている場合に分析に使用する前記試薬が移り変わった直後に、前記キャリブレーションが自動的に行なわれることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項6】
元検体を希釈するための前処理液と前記元検体とを混合させた前処理検体を作成し、前記前処理検体と試薬を反応させ、前記前処理検体と前記試薬との反応液を分析することにより前記元検体中の特定成分を測定する自動分析方法において、
前記前処理液をブランク標準液として使用しキャリブレーションを実施し、その後前記測定を行うことを特徴とする自動分析方法。
【請求項7】
前記ブランク標準液として、前記前処理液またはシステム水のどちらか一方を分析項目ごとに選択し、前記選択結果の結果に基づいて前記キャリブレーションを実施することを特徴とする請求項6に記載の自動分析方法。
【請求項8】
前記選択は前記ブランク標準液として前記分析項目を前記前処理液と前記システム水のグループに分けて表示することを特徴とする請求項7に記載の自動分析方法。
【請求項9】
前記選択は前記ブランク標準液として前記分析項目ごとに前記前処理液または前記システム水を指定し表示することを特徴とする請求項7に記載の自動分析方法。
【請求項10】
キャリブレーション異常時、精度管理結果不良時、装置立上げ時、装置メンテナンス後、または同一項目を分析する複数の前記試薬がセットされている場合に分析に使用する前記試薬が移り変わった直後に、前記キャリブレーションが自動的に行なわれることを特徴とする請求項6または7に記載の自動分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−226889(P2011−226889A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96137(P2010−96137)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】