説明

自動分析装置

【課題】
音波を用いた攪拌手段を備えた自動分析装置において、被攪拌液中に気泡が存在していても、攪拌効率が低下しない自動分析装置を提供すること。
【解決手段】
試薬と試料の混合液を収容する反応容器と、
複数の該反応容器を保持する反応容器保持手段と、
音波発生手段を備え、該反応容器に音波を照射する音波照射手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記音波照射手段から前記反応容器の1つに音波が照射されている時、音波が照射されている反応容器と他の反応容器の間に隔壁を挿入する隔壁挿入機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に音波を用いて試薬等と検体の攪拌を行う攪拌手段を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な自動分析装置の攪拌部は、試薬等と検体が入った反応容器に直接へら状の攪拌棒を入れて回転或いは往復運動することにより試薬等と検体を混合,攪拌する構造となっている。
【0003】
このような攪拌手段では、攪拌棒を介して異なる検体が混じりあい測定結果に影響を及ぼす(キャリーオーバーと称している)可能性があるため、攪拌終了毎に攪拌棒の洗浄が必要になる。このため、相応の洗浄時間を要し、また十分な洗浄を行うために大量の水を消費する。
【0004】
この問題を解決するため特許文献1では被攪拌液に超音波を照射して試薬等と検体に旋回流を発生させ混合,攪拌を行う方法が提案されている。この攪拌方法では、試薬等と検体の混合,攪拌を非接触で行え攪拌棒が不要なため前記のキャリーオーバーをなくすことができるとともに、攪拌棒の洗浄が不要なため測定に要する時間の短縮,洗浄水の節約ができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−035715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音波(超音波)は界面で反射,散乱する性質があるため、反応容器中の被攪拌液に何らかの原因で比較的大きな気泡が存在した場合、気泡と液体の界面で超音波が反射,散乱されるため攪拌効率の低下が懸念される。
【0007】
本発明の目的は、音波を用いた攪拌手段を備えた自動分析装置において、被攪拌液中に気泡が存在していても、攪拌効率が低下しない自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
試薬と試料の混合液を収容する反応容器と、複数の該反応容器を保持する反応容器保持手段と、音波発生手段を備え、該反応容器に音波を照射する音波照射手段と、を備えた自動分析装置において、前記音波照射手段から前記反応容器の1つに音波が照射されている時、音波が照射されている反応容器と他の反応容器の間に隔壁を挿入する隔壁挿入機構を備えた自動分析装置。
【0010】
試薬と試料の混合液を収容する反応容器としているが、反応容器は通常、混合液を定常的に収容しているのでなく、試薬と試料の反応を計測後、反応液が廃棄されてまた別の試薬,試料が添加されるという使われ方をする。音波発生手段は、被攪拌液に照射されることで被攪拌液に旋回流を発生させる程度の発振強度を備えたものであり、旋回流が生じれば可聴域の音波でも超音波でもかまわない。
【0011】
隔壁とは、音波を遮断/反射等する効果があるものであればどのようなものでも良い。一枚板からなる壁である必要は無く、例えば網状のものであっても良い。また形状も四角形状の壁である必要は無く、例えば半円状,三角形状などであっても良い。
【0012】
隔壁挿入機構は、隔壁の位置をモーターなどにより調整する機構である。この位置は、予め固定位置で設定してもよいし、その都度装置オペレーターが調整しても良い。使用する試薬の種類(すなわち分析項目)によって隔壁の挿入位置を変更する機構があっても良い。
【0013】
この隔壁挿入機構に前記音波発生手段が一体に設けられていても良い。表現の問題であるが、音波発生手段に隔壁が付随していると見ることもできる。
【0014】
また、隔壁挿入機構は前記音波発生手段の上下位置を変更する上下移動機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、音波を用いた攪拌手段を備えた自動分析装置において、被攪拌液中に気泡が存在していても、攪拌効率が低下しない自動分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施形態に関わる攪拌機構を適用した自動分析装置の概略構成図である。
【0017】
図1に示す自動分析装置は主として試薬ディスク1,試薬分注機構2,反応ディスク3,検体分注機構4,光度計5,検体ディスク6,攪拌機構7,機構駆動部8,超音波発生素子駆動部9,制御部10,記憶装置11,入力部12,表示部13を備える。
【0018】
試薬ディスク1は、検体と混合して反応させるための試薬が入れられた容器を円周上に架設し制御部10及び機構駆動部8により必要な位置に円周方向に移動する。試薬分注機構2は、試薬ディスク1に架設されている試薬容器中の試薬を分注し反応ディスク3に吐出する機構であり試薬を吸引するためのノズル,左右方向移動のためのモーター等の機構とノズルを上下方向に動かすモーター等の機構部で構成される。サンプルディスク6は、試験管等の容器に入った検体を架設し円周方向に回転し制御部10及び機構駆動部により円周方向に移動制御され検体分注機構4により検体を分注し反応ディスク3に吐出する。反応ディスク3は、機構駆動部8及び制御部10によりモーターで所定の位置に円周方向に回転制御され攪拌機構7により検体と試薬を混合させ光度計5により検体の成分を測定する。超音波発生素子駆動部9は、超音波発生素子を駆動および電圧の制御により超音波の強度を制御する部位であり検体の性質や量により超音波の照射時間や強度を制御する。
【0019】
記憶装置11は、駆動系制御に必要な情報や分析に必要な情報を記憶する装置であり図示していないコンピューターと情報の交換をする。入力部12は、オペレーターがパラメーター等を入力する部位でありキーボードなどの入力装置により入力される。表示部13は、分析項目や分析結果等の各種画面を表示する部位である。
【0020】
次に図2を用いて本発明の実施例を説明する。反応容器21は、透明な容器で図1の反応ディスク3に取付けられ試薬及び検体22を反応させるための容器である。反応槽23の中には反応槽水24が循環しており反応槽水24は一定の温度に制御され反応容器21中の試薬及び検体22の反応を促進する。
【0021】
超音波発生素子25は、ケース26に収納されており超音波を発生させるための素子であり圧電素子などが使われおり超音波を試薬及検体22に照射し攪拌を行う。ケース26は支持体27及び支持体30に取付けられる。図2はラックピニオンを用いた例である。支持体27は、X軸モーター29に取付けられたギヤ28によりラックピニオン式で左右方向に超音波発生素子25を移動させることができる。
【0022】
また、支持体30には、Y軸モーター32に取付けられたギヤ31によるラックピニオン式で超音波発生素子25を上下方向に移動させる。
【0023】
超音波発生素子25の左右或いは上下方向の移動距離は、図1の記憶装置11にあらかじめ記憶された情報或いは図示に無いコンピューターで計算された情報にもとづき制御部10で制御される。
【0024】
超音波発生素子25と反応容器21の距離は、超音波の強度に関係し近ければ試薬及び検体22に対する超音波の強度を増すことができる。
【0025】
図2は、発明の実施例2の略図であり上部から見た図である。41の反応容器は円周上に並んでいる。29のX軸モーターにより27の支持体は左右に移動する。42は、反射板である。43は試薬及び検体22の液中の気泡である。
【0026】
25の超音波発生素子から超音波を22の試薬及び検体に照射したときに22の気泡があると音波は気泡表面で反射し隣に隣接する反応容器41の方向に向かう。42の反射板は22の気泡で反射した超音波を反射させるものである。
【0027】
41の反応容器は、円周上を移動しているので移動中は、27の支持体は左側にあり、41の反応容器が停止して22の試薬及び検体を攪拌するときは29のモーターにより支持体は右に移動し25の超音波発生素子から超音波を照射し攪拌を行う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係わる攪拌機構を備えた自動分析装置の構成図。
【図2】実施例1の略図。
【図3】実施例2の略図。
【符号の説明】
【0029】
1…試薬ディスク、2…試薬分注機構、3…反応ディスク、4…検体分注機構、5…光度計、6…検体ディスク、7…攪拌機構、8…機構駆動部、9…超音波発生素子駆動部、10…制御部、11…記憶装置、12…入力部、13…表示部、21…反応容器、22…試薬等と検体、23…反応槽、24…反応槽水、25…超音波発生素子、26…ケース、27…支持体、28,31…ギヤ、29…X軸モーター、30…支持体、32…Y軸モーター、41…反応容器、42…反射板、43…気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬と試料の混合液を収容する反応容器と、
複数の該反応容器を保持する反応容器保持手段と、
音波発生手段を備え、該反応容器に音波を照射する音波照射手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記音波照射手段から前記反応容器の1つに音波が照射されている時、音波が照射されている反応容器と他の反応容器の間に隔壁を挿入する隔壁挿入機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記隔壁挿入機構に前記音波発生手段が一体に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記隔壁挿入機構は前記音波発生手段の上下位置を変更する上下移動機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−85805(P2007−85805A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273049(P2005−273049)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】