説明

自動分析装置

【課題】単一の搬送手段を用いて試料容器と反応容器を混在した状態で搬送する自動測定装置において、試料容器と反応容器の最大架設数を増やし装置の小型化を図る。
【解決手段】試料容器及び反応容器を両者が混在した状態で載置して搬送する搬送手段、搬送手段に載置された反応容器を受け入れて載置する中間搬送手段、中間搬送手段から反応容器を受け入れて所定の温度に維持する反応手段、搬送手段に載置された反応容器を中間搬送手段へ移送する第1反応容器移送手段、中間搬送手段に載置された反応容器を反応手段へ移送する第2反応容器移送手段、及び、搬送手段に載置された試料容器中の試料を吸引し中間搬送手段に載置された反応容器に分注する分注手段とから構成される、自動分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば試料に対して所定の試薬を混合し、所定の時間反応を生じさせる分析装置に関するものである。本発明は、具体的には血清、血漿又は尿等の生体試料に含まれる微量成分を当該成分に対する抗体や抗原を用いて測定する免疫分析装置等に特に好適に適用され、従来のものと比較して、より小型かつ処理能力が向上した分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体試料の臨床検査等は、操作者の技量が検査結果に及ぼす影響を排除し、また多くの試料を短時間で処理するために求められる処理スピードを考慮すると、自動分析装置で行うべきものである。一般に、生化学用の自動分析装置では、検査すべき生体試料を収容する複数の試料容器を準備する設備と、試料と反応させる試薬を準備する設備と、試料と試薬とを反応させるための反応容器を準備する設備と、反応容器のなかに所定量の試料及び試薬を分注する設備と、試料と試薬が分注された反応容器を一定時間所定の条件下に置く設備と、反応後の測定を実施する設備と、これらの設備間で試料容器及び/又は反応容器を搬送する設備とからなる。このように、自動分析装置には多くの設備が必要であるため、処理スピードの向上等の要請に応えると装置が大型化し、各設備の構成や操作性は複雑化する傾向がある。
【0003】
前記のような要請がある一方で、処理スピード等の向上よりも、むしろ、設置面積の低減や各設備の構成・操作性の簡略化の要請もある。生体試料についての免疫分析を自動的に行う自動免疫分析装置を具体例として説明すると、このような要請に対しては従来、試料容器と反応容器をそれぞれ異なる搬送ラインに手動で並べ、測定結果の出力までを自動でおこなう卓上型の自動免疫分析装置が提案されている(特許文献1)。この装置では、試料容器と反応容器を搬送するラインはともにエンドレスのコンベア式スネークチェーンで構成されているが、試料容器の搬送ラインと反応容器の搬送ラインの一部領域では、両者は同期しつつ並行して間欠移動するよう制御される。また更に、特許文献1の装置と比較して、各設備の構成・操作性、及び、設置面積等をより一層簡略化・小型化した装置として、単一の搬送ラインを用いて試料容器と反応容器を混在した状態で搬送する装置が提案されている(特許文献2)。
【0004】
ところで、自動分析装置は、装置の稼働中、常に操作者の監視が必要というものではなく、特に問題がなければ操作者は装置から離れ、他の仕事に従事することが可能である。しかし、自動分析装置では、容器に付着した先の試料や反応溶液を短時間に洗浄することがむずかしいことから、一度使用した反応容器は再利用することなく廃棄するのが普通である。このため、特許文献1又は2の装置では、操作者不在の場合、環状の搬送軌道に最初に載せられた試料容器や反応容器の総数(最大架設数)が処理数の上限となり、上限を超える測定を実施しようとすれば、最初に載せた試料容器や反応容器の処理が終わる前に処理を終えた容器を取り出して新たな容器を載置しなければならない。最大架設数を増やせれば操作者が他の仕事に従事できる時間を延ばすことができるが、そのためには環状軌道を大きくする等の必要があり、装置の大型化という課題を生じる。
【0005】
【特許文献1】特許第2884604号公報
【特許文献2】特許第3991495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、試料容器と反応容器を混在した状態で搬送する単一の搬送手段とともに、搬送手段に載置された反応容器を中間的な搬送手段に移送した上で搬送手段に載置された試料容器から試料を分注するという構成を採用することにより、小型でありながら、装置に載置できる試料容器・反応容器の最大架設数を向上した自動分析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために完成された本発明は、試料容器及び反応容器を両者が混在した状態で載置して搬送する搬送手段、搬送手段に載置された反応容器を受け入れて載置する中間搬送手段、中間搬送手段から反応容器を受け入れて所定の温度に維持する反応手段、搬送手段に載置された反応容器を中間搬送手段へ移送する第1反応容器移送手段、中間搬送手段に載置された反応容器を反応手段へ移送する第2反応容器移送手段、及び、搬送手段に載置された試料容器中の試料を吸引し中間搬送手段に載置された反応容器に分注する分注手段とから構成され、ここで前記各手段は、以下のような特徴を有する、自動分析装置である。
(1)前記搬送手段は、当該手段に載置された容器を順次地点A及びBに搬送することが可能であり、
(2)前記中間搬送手段は、第1反応容器移送手段によって搬送手段から搬送された反応容器を地点Cにて受け入れること、及び、受け入れた反応容器を地点Cと地点Dの間で搬送することが可能であり、
(3)前記反応手段は、第2反応容器移送手段によって中間搬送手段から搬送された反応容器を地点Eにて受け入れることが可能であり、
(4)前記第1反応容器移送手段は、前記地点Aに搬送された反応容器を地点Cに移送することが可能であり、前記第2反応容器移送手段は地点Cに搬送された反応容器を地点Eに移送することが可能であり、そして、
(5)前記分注手段は、前記地点Bでそこに搬送された試料容器中の試料を吸引し、地点Dでそこに搬送された反応容器に分注することが可能である。
【0008】
以下、免疫分析のための自動免疫分析装置を例にして、本発明を説明する。
【0009】
図1は、本発明の自動免疫分析装置の模式図である。搬送手段1は、ステッピングモーター等の制御が容易な駆動装置等によって構成される環状軌道(無限軌道)であり、試料容器6と反応容器7を両者が混在した状態で載置して矢印方向に搬送し、容器毎に、順次、地点A及びBに搬送する。本例での反応容器には、分析項目に対応した固相化抗体と酵素標識抗体が予め凍結乾燥状態で封入されている。また本例の試料容器には、例えば血液、血清、血漿、尿といった生体試料や、それらを定量するための標準試料、そして、分析装置の精度管理用の試料が収容されている。なお前記のように、反応容器に予め試薬が封入されている場合には、搬送手段1により反応容器が地点Aに搬送される前か、又は、第1反応容器移送手段により反応容器が地点Aから地点Cに移送された後であって地点Dにおいて試料の分注が行われる前に、容器の封入を破開するためのブレーカを配置する。
【0010】
本例では、試料容器及び反応容器を担持する市販の容器ラック8を搬送する構成であるが、これ以外にも例えば、試料容器又は反応容器を載置可能な凹部を有するトレイをスネークチェーンで環状に連結し、スプロケットで駆動する方式や、前記トレイを1つずつ通すだけの幅をもった溝形の環状経路の底部にベルトコンベアを設け、トレイを1つずつ搬送する方式等、従来公知の構成を採用することができる。本例では概ね長方形の搬送軌道9を描くように搬送されるが、搬送軌道は円や多角形、又は不定形であっても良い。また本例では、概ね長方形の搬送軌道9のうちの短辺部分では容器ラックを短辺方向に搬送し、搬送軌道9のうちの長辺部分では容器ラックの長辺方向に搬送するような構成とすることで、搬送軌道上の最大架設数を向上している。更に本例では、搬送手段はそこに載置され搬送される容器に関する情報を取得するためのセンサー10を具備する。センサーは、容器ラックに容器が載置されているか否か、容器が存在する場合の当該容器の種別(試料容器か反応容器か)、等をセンシングすることが例示できるが、反応容器中に、予め所定の反応のための試薬の一部又は全部が封入されているような場合、当該反応容器がいかなる反応用の容器であるのかという種別についても、予め容器側にラベルを添付しておき、当該センサーでセンシングして、その結果に応じて後述する分注手段による試料の分注量を変更する等ということも可能になる。なお、後述するように、本発明は位置Aに搬送された反応容器を中間搬送手段に移送するため、それ以前の地点にて容器種別等の情報を取得する必要があり、センサーを設ける場合、地点Aに至る以前の地点に設けることが好ましい。もちろん、搬送手段1によって搬送される容器の種別について、例えば独立した市販の容器ラックの先端の先頭に必ず試料容器を載置する等といったルールを設けてあれば、容器の種別をセンシングするセンサーを設ける必要はない。
【0011】
搬送手段1は、一平面上で容器を搬送するものであることが設備の簡略化等の面で好ましい。しかし、例えばその搬送途中にZ軸方向に容器を搬送する手段を配置することにより、平行な二平面以上で容器を搬送するように構成することも可能であり、この場合には空間の効率的な利用により、搬送軌道上の最大架設数を更に向上できる。
【0012】
搬送手段1に載置された反応容器7は、搬送手段のセンサーにより認識され、地点Aに到達後、後述する移送手段14により地点Cに移送され地点Cにて中間搬送手段2に受け入れられて載置される。図1の例では、試料容器6に続いて5個の反応容器が載置されているが、これら5個の反応容器のそれぞれは、搬送手段1により地点Aに搬送された段階で移送手段14により中間搬送手段2に移送される。中間搬送手段2は、地点Cで反応容器を受け入れるとともに、受け入れた反応容器を地点Dに搬送する。この地点Dでは、後述する分注手段15により、地点Bに搬送された試料容器から吸引された試料の所定量が分注される。このように、搬送手段上の任意の場所に試料容器を載置し、それに続いて1又は複数の反応容器を載置した場合、先頭に位置する試料容器(1個)とそれに続く反応容器の合計個数が位置AからBに至る部分に載置可能な容器数以下となる限り、先頭の試料容器から吸引した試料を後続する反応容器に分注して分析することができる。位置AからBに至る部分にどれくらいの数の容器を載置可能に構成するかは、1つの試料について実施が予想される分析の回数、即ち、1つの試料に対して消費され得る反応容器数(例えば、1つの試料について同一の分析をX回繰り返す場合や異なるX回の分析を行う場合には、X)を考慮して決定することが例示できる。また例えば、市販の容器ラックに載置可能な容器の数に基づいてAB間に載置し得る容器の数を決定することも可能である。図1の装置では、市販の容器ラックに載置可能な容器の数(6個)に基づき、AB間には合計で6個の容器を載置可能にしてある。従って、反応容器7がすべて同じ試薬を収容しているならば、5回の繰り返し分析が可能であり、すべて異なる分析に対応した試薬を収容しているならば、同一試料に対して5回の異なる分析を実施することができる。なお、多数の容器をAB間に載置するには、AからBに至るまでの搬送軌道を図に示した例とは異なるものに変更すれば良い。
【0013】
中間搬送手段2は、それが担持する反応容器を地点CとDとの間で搬送するものであることから、搬送手段1とは異なり、環状軌道とするよりもむしろ本例に示したように所定数の反応容器を担持し、それを直線軌道上で往復搬送する構成とすることが設備の簡略化の面でも好ましい。中間搬送手段2を所定数の反応容器を担持し得る構成とする場合、当該所定数としては、搬送手段1における位置AからBに至る部分に載置可能な容器の数と同数にすることが特に好ましい。なお、搬送手段1から中間搬送手段2に対しては、反応容器7の移送に加え、搬送手段に載置された試料容器から吸引された試料の分注操作が行われるため、これら手段は同一平面上に配置することが好ましい。しかし、例えばZ軸方向に反応容器を搬送可能な手段を後述する第1反応容器移送手段として採用すれば、搬送手段1による搬送軌道が属する平面と平行な平面上で反応容器を往復搬送するように構成することも可能である。更に、図面に示した構成のように、搬送手段における地点AからBへの容器の搬送経路と前記中間搬送手段における地点CとDの間での反応容器の搬送経路をいずれも直線とし、かつ、両者を平行としておくことにより、第1反応容器移送手段や分注手段の移送経路をも単純化することができ、分析装置の設備を一層簡略にできる。いずれの場合にも、搬送手段1と中間搬送手段2おいて、容器を載置した場合の隣り合う容器間の間隔をほぼ同一にしておき、かつ、当該間隔分ずつ両搬送手段で容器を間欠搬送することが、装置を制御する上で特に好ましい。間欠搬送の速度に特別の制限はなく、例えば10〜100秒ごとに前記間隔分ずつ搬送することが例示できる。もっとも、常に同じ速度、間隔で搬送する必要はなく、例えば試料容器が地点Bに搬送された場合には、分注手段による分注の操作を確実に実施する上で必要な時間搬送を停止すること等が例示できる。
【0014】
中間搬送手段2は、反応容器に分注された試料を分析のための試薬と混合し、均一化を図るために、撹拌手段を具備することが好ましい。撹拌手段としては、例えば反応容器の上部から撹拌パドルを反応容器中に差し込んで撹拌するパドル装置や、中間搬送手段下部に偏心カムを取り付けておき、その回転によって加振するカム装置、水平面内の振動のためのガイド部材を介してモータと係合した振動伝達板を中間搬送手段に取り付ける等、従来公知のものが例示できるが、反応液と非接触での撹拌が可能なものが特に好ましい。
【0015】
反応手段3は、後述する第2反応容器移送手段によって中間搬送手段から移送された反応容器を地点Eで受け入れ、これを所定の温度に維持し、一定温度条件下での免疫反応等所定の反応を進めるものである。本例における反応手段3は、同心円上に反応容器担持用の孔が設けられ、ステッピングモーター等の不図示の駆動手段で回転駆動される円板であるが、これに限定されるものではなく、例えば搬送手段1と同様に環状経路であっても良い。また免疫分析装置として構成された本例の装置では、いわゆるB/F分離のための装置(不図示)、標識酵素の作用を受けて蛍光物質に変化する酵素基質を分注する装置(不図示)、反応を促進するための撹拌装置等(不図示)とともに、蛍光を測定するための装置11が、円周上に担持された反応容器に対してそれぞれB/F分離、基質分注及び蛍光測定を実施し得るように配置されている。
【0016】
反応手段3における反応容器を所定の温度に維持するための温調装置は、例えば前記円板自体を所定温度に維持することや、反応手段3を、反応容器の受け入れ地点E等を除いて筐体で覆い、当該筐体の内部温度をヒーター等で温調する等が例示できる。また必要によっては、反応手段には反応を促進するための撹拌装置を付加することもできる。例えば反応容器中に微小の磁性物質を投入しておき、反応手段3においては磁石手段を用い、反応容器中で磁性物質を移動させる構成を例示することができる。
【0017】
反応手段3が載置可能な反応容器の数は、搬送手段1の搬送能力、分注手段15の分注処理能力、反応手段3に配置された測定装置11の処理能力等に加えて、分析のための反応に要する時間を勘案して適宜決定される。載置すべき反応容器の数が小さい場合、反応手段3自体は小型化することが可能であるが、反応手段3のために大きなスペースが必要な場合、反応手段3を搬送手段1及び中間搬送手段2を設置する平面と平行な平面上に設置することが例示できる。このように反応手段3と搬送手段1等を空間的に階層化すれば、装置を小型化して設置面積を小さくすることが可能となる。
【0018】
搬送手段1の地点Aから中間搬送手段2の地点Cへの反応容器の移送は第1容器移送手段14により、中間搬送手段2の地点Cから反応手段3の地点Eへの反応容器の移送は第2反応容器移送手段により行われる。第1反応容器移送手段が移送する反応容器は試料が分注される以前のものであるが、第2反応容器移送手段が移送する反応容器は試料分注後のものである。このため、第1と比較して、第2反応容器移送手段は、より高い精度で容器を移送し得るものが好ましいが、高い精度で容器を移送し得る手段を採用する場合、第1と第2の反応容器移送手段を単一の手段で兼用できる。このように単一の手段を第1及び第2反応容器移送手段として使用することにより、装置構成を一層簡略化することができる。具体的に、高い精度で容器を移送し得る手段としては、例えば反応容器がフランジを有する容器である場合には、従来公知であるような、フランジ部と係合する挟持部(チャックヘッド)等の挟持装置とこれを移動する装置を採用することが例示できる。
【0019】
第1反応容器移送手段による反応容器の移送は搬送手段1から中間搬送手段2への一方的な移送であるのに対し、第2反応容器移送手段による反応容器の移送は、中間搬送手段2から反応手段3への移送に加え、場合によっては反応手段3から中間搬送手段2への移送を加えた、中間搬送手段2と反応手段3との間の移送である。反応手段3から中間搬送手段2への反応容器の移送が行われる場合としては、例えば、試料を反応容器に分注した後、所定温度条件下で第1の反応を行った後、更に試薬を分注し、後述する中間搬送手段が具備する撹拌手段による撹拌を行って所定温度条件下で第2の反応を行う必要がある場合があげられる。ここで、第1及び第2の反応は、多段免疫反応の各ステップに対応するものであってもよい。また例えば、全血試料を溶血したり血清試料中のタンパク質をアルカリ変性する処理を中間搬送手段上でおこなった後、反応容器を反応手段3に移して一定時間温置処理する工程を第1の反応とみなし、その工程後に反応容器を中間搬送手段2に戻して中和剤を分注し攪拌操作をともなう中和処理をほどこす工程を第2の反応とみなすことができる。
【0020】
上記した第1反応容器移送手段と第2反応容器移送手段は、単一の手段で兼用する場合であっても、またそれぞれ異なる手段で構成する場合であっても、その移送経路が直線となり、かつ、地点AとCの移送経路と地点CとEの移送経路が直線となるようにすることが、装置構成を単純化するために特に好ましい。
【0021】
搬送手段1に載置された試料容器中の試料は、中間搬送手段2に移送・載置された反応容器7に分注手段15によって分注される。試料を希釈する必要がある場合には、希釈液を供給する構成を採用し、分注手段が地点Bで試料を吸引する前又は吸引した後に、希釈液を吸引するようにしても良い。分注手段15それ自体は、ポンプに接続されたノズル軸と、当該ノズル軸を試料吸引地点Bから試料分注地点Dに移動する装置で構成されるが、これらは従来公知のものを採用することができる。ところで、分析にあたって試料間の汚染を避けるには、試料毎に異なるノズルチップを使用すべきであり、本発明の装置でも試料毎にノズルチップを交換する分注手段を採用することが好ましい。この場合、分注手段に対して交換用のノズルチップを供給するため、分注手段が移動する地点Bから地点Dの途中に交換用ノズル12を搬送する装置を追加するとともに、使用後のノズルチップを廃棄するための廃棄箱を分注手段の移送経路内に配置することが例示できる。このような構成を採用する場合には、分注手段にはノズルチップの有無を検出するセンサを取り付け、ノズルチップが装着されていない状態で分注動作が生じないようにすることが好ましい。また分注手段の移動に関しては、地点Bにて試料を吸引した後、分注地点Dに移動させる際に、ノズルチップの先端外部に付着した試料の液だれが生じる可能性に備え、ノズルチップをいったん分注手段の移送経路直下から待避させることが例示できる。
【0022】
分注手段は、必要な場合には、反応手段3に受け入れられた反応容器に対し、反応手段上の地点Fにて試薬を分注可能に構成することができる。例えば、当初は分析のために必要な試薬の一部のみしか反応容器7には分注されておらず、まず温調状態で所定の反応を行った後に、追加的に残りの試薬を分注する必要のある場合(例えば、いわゆる2ステップ免疫分析をおこなう場合、標識試薬を追加的に分注することになる)等が例示できる。このような場合、追加的に分注する試薬を吸引するために、分注手段の移送経路である地点Bから地点Dの途中又は地点Dから地点Fの途中に追加分注すべき試薬を保持する容器13を配置し、又は、当該位置に試薬を保持する容器を搬送する手段を追加することが例示できる。なお図1の装置では、交換用のノズルチップ12と追加試薬を保持する容器13を一体的に搬送して供給する構成を例示したが、これらは別個に搬送する構成としても良い。
【0023】
上記の、地点Fにて追加的に試薬を分注するための手段は、分注手段15とは別個に設けることも可能である。しかしながら、装置のメンテナンス利便性を向上し、装置構成を簡略するためには、不要な駆動系を排除して単純化すべく、分注手段15を地点Fまで移動する構成が特に好ましい。
【0024】
分注手段の地点BからDへの移送経路は、移動のための装置を単純化するためにも、直線であることが好ましい。また必要に応じて地点Dから地点Fに分注手段を移動する場合には、当該移送経路は、地点BからDへの移送経路の延長線上に、一本の直線となるように構成することが、装置構成の単純化のために特に好ましい。
【0025】
次に、本発明の装置による分析について、図2から図9に基づき説明する。以下の説明において、タクトタイムとは、搬送手段により容器を間欠的に搬送する時間間隔をいい、連続的に装置を駆動した場合は測定結果が次々に得られるが、その測定結果の得られる時間間隔と一致するものである。タクトタイムは装置の同期的動作の単位と見なすことができ、動作の経過をタクト1、タクト2などと表現することができる。タクトタイムは、10〜100秒から選択された特定の時間に設定されることが多く、一タクトの間に一以上の部位で一以上の処理工程を進行させることができる。
【0026】
図2は、容器ラック8に試料容器S及び反応容器R1〜R5をこの順に進行方向から載置した場合について説明したものである。図中、試料が収容された試料容器は黒丸(●)で、試薬が入っていてもよい反応容器は白丸(○)で表わされている。また、容器ラック又は中間搬送手段上の容器保持部は白四角(□)で表わされている。
【0027】
図2の時点をタクト1とする。このとき容器ラック8上の試料容器Sは、位置Aに達した状態にある。また、中間搬送手段2の先頭の反応容器保持部は、位置Cに達した状態にある。図3は、図2の時点から1タクト進んだタクト2の状態を示す。ここでは、間欠移動する容器ラック8が1ピッチ移動し、反応容器R1が位置Aに移動する。同一タクト内で引き続き、第1反応容器移送手段が反応容器R1を位置Aから位置Cまで軌道4に沿って移送し、そこで反応容器R1を中間搬送手段2上に載置する。
【0028】
図4は、図3の時点から1タクト進んだタクト3の状態を示す。ここでは、間欠移動する容器ラック8がさらに1ピッチ移動し、反応容器R2が位置Aに移動する。容器ラックの移動に同期して、中間搬送手段2も1ピッチ右方に移動する。同一タクト内で引き続き、第1反応容器移送手段が反応容器R2を位置Aから位置Cまで軌道4に沿って移送する。この結果、中間搬送手段には、反応容器R1とR2とが並んだ状態で載置される。図5は、図4の時点から1タクト進んだタクト4の状態を示す。ここでは、間欠移動する容器ラック8がさらに1ピッチ移動し、反応容器R3が位置Aに移動する。容器ラックの移動に同期して、中間搬送ユニット2も1ピッチ右方に移動する。同一タクト内で引き続き、第1反応容器移送手段が反応容器R3を位置Aから位置Cまで軌道4に沿って移送する。この結果、中間搬送手段には、反応容器R1、R2及びR3が並んだ状態で載置される。
【0029】
図6は、図5の時点から1タクト進んだタクト5の状態を示す。ここでは、間欠移動する容器ラック8がさらに1ピッチ移動し、反応容器R4が位置Aに移動する。容器ラックの移動に同期して、中間搬送手段2も1ピッチ右方に移動する。同一タクト内で引き続き、第1反応容器移送手段が反応容器R4を位置Aから位置Cまで軌道4に沿って移送する。この結果、中間搬送手段には、反応容器R1、R2、R3及びR4が並んだ状態で載置される。
【0030】
図7は、図6の時点から1タクト進んだタクト6の初期状態(タクト6−1)を示す。ここでは、間欠移動する容器ラック8がさらに1ピッチ移動し、試料容器が位置Bに達し、反応容器R5が位置Aに移動する。容器ラックの移動に同期して、中間搬送手段2も1ピッチ右方に移動する。同一タクト内で引き続き、第1反応容器移送手段が反応容器R5を位置Aから位置Cまで軌道4に沿って移送する。この結果、中間搬送手段には、反応容器R1、R2、R3、R4及びR5が並んだ状態で載置される。図8は、タクト6の中期状態(タクト6−2)を示す。ここでは、中間搬送手段が移動して、反応容器R1は位置Dに到達する。同一タクト内で、分注手段は位置Bにある試料容器から試料を吸引し、軌道5に沿って位置Dまで移動して、位置Dに位置する反応容器R1に試料を分注する。図中、試料が分注された試料容器は二重丸(◎)で表している。
【0031】
図9は、タクト6の後期状態(タクト6−3)を示す。ここでは、中間搬送手段が移動して、試料の入った反応容器R1を位置Cに戻す。同一タクト内で、第2反応容器移送手段は試料の入った反応容器R1を位置E(不図示)に移送し、反応手段上に載置する。反応手段では、一定時間、所定温度に制御され、分析のための抗原抗体反応が進行し、必要な洗浄工程を経て蛍光測定が行われ、分析結果が出力される。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、循環軌道による単一搬送手段を用いて試料容器と反応容器を混在した状態で循環搬送する構成であるため、試料容器と反応容器を別個の搬送手段で搬送するよりも簡略化された、より小型の装置を提供することができる。また搬送手段から反応容器をピックアップする位置と中間搬送手段の受け入れ位置を固定することにより、中間搬送手段の搬送軌道を直線軌道とすることが可能となり、反応容器の移送のための装置を単純化し、かつ、精密化することが可能である。加えて、搬送手段に載置された試料容器から試料を吸引する位置と中間搬送手段に載置された反応容器に試料を分注する位置を固定することにより、分注手段の移送軌道を直線軌道とすることが可能となり、分注手段の移動のための装置を単純化し、かつ、精密化することが可能である。
【0033】
本発明では、搬送手段上の任意の場所に試料容器を載置し、それに続いて1又は複数の反応容器を載置した場合、先頭に位置する試料容器(1個)とそれに続く反応容器の合計個数が位置AからBに至る部分に載置可能な容器数以下となる限り、先頭の試料容器から吸引した試料を後続する反応容器に分注して分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る自動分析装置の構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図3】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図5】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図6】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図7】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図8】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【図9】本発明に係る自動分析装置の各構成の駆動状態を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 搬送手段
2 中間搬送手段
3 反応手段
4 第1及び第2反応容器移送手段の軌道
5 分注手段の軌道
6 試料容器
7 反応容器
8 容器ラック
9 循環軌道
10 センサ
11 検出器
12 ピペットチップのラック
13 試薬のラック
14 第1及び第2反応容器移送手段
15 分注手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器及び反応容器を両者が混在した状態で載置して搬送する搬送手段、搬送手段に載置された反応容器を受け入れて載置する中間搬送手段、中間搬送手段から反応容器を受け入れて所定の温度に維持する反応手段、搬送手段に載置された反応容器を中間搬送手段へ移送する第1反応容器移送手段、中間搬送手段に載置された反応容器を反応手段へ移送する第2反応容器移送手段、及び、搬送手段に載置された試料容器中の試料を吸引し中間搬送手段に載置された反応容器に分注する分注手段とから構成され、ここで前記各手段は、以下のような特徴を有する、自動分析装置。
(1)前記搬送手段は、当該手段に載置された容器を順次地点A及びBに搬送することが可能であり、
(2)前記中間搬送手段は、第1反応容器移送手段によって搬送手段から搬送された反応容器を地点Cにて受け入れること、及び、受け入れた反応容器を地点Cと地点Dの間で搬送することが可能であり、
(3)前記反応手段は、第2反応容器移送手段によって中間搬送手段から搬送された反応容器を地点Eにて受け入れることが可能であり、
(4)前記第1反応容器移送手段は、前記地点Aに搬送された反応容器を地点Cに移送することが可能であり、前記第2反応容器移送手段は地点Cに搬送された反応容器を地点Eに移送することが可能であり、そして、
(5)前記分注手段は、前記地点Bでそこに搬送された試料容器中の試料を吸引し、地点Dでそこに搬送された反応容器に分注することが可能である。
【請求項2】
前記搬送手段における地点AからBへの容器の搬送経路と前記中間搬送手段における地点CとDの間での反応容器の搬送経路がいずれも直線で、かつ、平行であることを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項3】
前記反応容器移送手段における地点AからCへの反応容器の移送経路と地点CからEへの反応容器の移送経路が一本の直線であり、前記分注手段の地点BからDへの移送経路が直線であり、両者は平行であることを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、当該手段に載置され搬送される容器に関する情報を取得するためのセンサーを具備することを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項5】
前記中間搬送手段は、位置Dにおいて分注手段により試料が分注された反応容器について撹拌を行う撹拌手段を具備することを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項6】
前記反応手段は、受け入れた反応容器を地点Fに搬送することが可能であり、地点BとDとの間及び/又は地点DとFとの間に、試薬を入れた試薬容器を配置することを特徴とする、請求項1の装置。
【請求項7】
前記分注手段は、前記試薬容器中の試薬を吸引し、地点Fに搬送された反応容器に分注することが可能であることを特徴とする、請求項6の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151670(P2010−151670A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331173(P2008−331173)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】