自動分析装置
【課題】試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供する。
【解決手段】試料容器17から検査項目の標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引して反応容器3に吐出する分注を行うサンプル分注ポンプ16bと、サンプル分注プローブ16を移動するサンプル分注アーム10と、標準試料の液性の設定する分析条件設定画面43とを備え、サンプル分注ポンプ16bは、分析条件設定画面43で設定された低粘度の液性を有する標準試料を、サンプル分注プローブ16内に基準の液性を有する試料を吸引する速度よりも遅い第1の吸引速度で吸引する。
【解決手段】試料容器17から検査項目の標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引して反応容器3に吐出する分注を行うサンプル分注ポンプ16bと、サンプル分注プローブ16を移動するサンプル分注アーム10と、標準試料の液性の設定する分析条件設定画面43とを備え、サンプル分注ポンプ16bは、分析条件設定画面43で設定された低粘度の液性を有する標準試料を、サンプル分注プローブ16内に基準の液性を有する試料を吸引する速度よりも遅い第1の吸引速度で吸引する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に、ヒトから採取した血清などの試料を分注して、その試料に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、血清等の被検体から採取された被検試料及び各検査項目に該当する試薬の混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の光分析器を用いて光学的に測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素の活性等の分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、検査可能な多数の検査項目の中から、検査対象となる検査項目を設定した被検試料の分析が行われる。そして、被検試料は、サンプル分注プローブを用いてサンプラに収納された試料容器から反応容器に分注される。また、試薬は、試薬分注プローブを用いて試薬庫に収納された試薬容器から被検試料が分注された反応容器に分注される。更に、反応容器に分注された被検試料及び試薬の混合液は、撹拌子を用いて撹拌された後、光分析器を用いて測定される。そして、サンプル分注プローブ、試薬分注プローブ、及び撹拌子の各分析ユニットは、被検試料の分注終了毎、試薬の分注終了毎、及び混合液の撹拌終了毎に洗浄される。また、反応容器は混合液の測定終了毎に洗浄される。
【0004】
ところで、自動分析装置では、被検試料以外にも各検査項目の標準試料や各検査項目の管理を行うための管理試料の分注が行われ、被検試料、標準試料、及び管理試料の各試料を分注するユニットは、サンプル分注プローブ、吸引及び吐出を行うためのサンプル分注ポンプ、及びサンプル分注プローブとサンプル分注ポンプ間を連通するチューブにより構成される。
【0005】
サンプル分注ポンプは、各ユニット内に封入された水などの圧力伝達媒体を介して、各試料を収容した試料容器等の容器からサンプル分注プローブ内に吸引し、吸引した各試料を反応容器内に吐出する分注を行う。そして、各試料の分注では、サンプル分注プローブ内に空気、測定に使用しないダミーの試料(ダミー用試料)、測定に使用する試料(測定用試料)の順に吸引した後、吸引した測定用試料を吐出する。
【0006】
そして、サンプル分注プローブ内に吸引した空気及びダミー用試料は、測定用試料を圧力伝達媒体から隔離し、圧力伝達媒体の混入や圧力伝達媒体への拡散により測定用試料が希釈されて検査対象の成分濃度が低下するのを低減するために設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−162401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、検査対象の成分を水で溶解して調製された水溶液の標準試料と、血清等の被検試料では、測定用試料に含まれる検査対象の成分の濃度の低下の程度が異なる。このため、例えば測定用の標準試料に含まれる検査対象の成分濃度が測定用の被検試料の場合よりも低下すると、相対的にその被検試料の分析データが高値を示して問題となる。
【0008】
また、高蛋白血症などの症状を抱えた被検体の血清では、健常者の血清よりも高粘度であるため設定した分注量よりも反応容器内に吐出される量が低下する問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記試料の液体としての性質を設定する液性設定手段と、前記液性設定手段により設定された性質の試料を収容した試料容器から分注プローブ内に吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う分注手段とを備え、前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された液性の試料の分注動作を、その液性に応じて可変するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各試料の液体の性質を設定することにより、設定された試料の性質に応じて、その試料を分注するときの分注動作を可変することができる。これにより、各試料を精度よく分注することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図11を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料、被検試料、及び各検査項目の管理を行うための管理試料を測定して、標準信号、被検信号、及び管理信号を生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0014】
また、分析部24で生成された標準信号、被検信号、及び管理信号を処理して各検査項目の検量データ、分析データ、及び管理データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データ、分析データ、及び管理データを出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力操作等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0015】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ5と、各試料に含まれる検査項目の成分に反応する第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aを有する試薬庫1と、第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aを有する試薬庫2と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0016】
また、ディスクサンプラ5に保持された試料容器17内の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注ポンプ16bと、各試料の分注終了毎にサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽16aと、各試料の分注を行うためにサンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0017】
また、試薬庫1に収納された試薬容器6内の第1試薬を第1試薬分注プローブ14内に吸引して各試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注ポンプ14bと、第1試薬の分注終了毎に第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽14aと、第1試薬の分注を行うために第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。
【0018】
また、反応容器3内に分注された各試料及び第1試薬からなる第1混合液を撹拌するための第1撹拌子18と、第1混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽18aと、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20とを備えている。
【0019】
また、試薬庫2に収納された試薬容器7内の第2試薬を第2試薬分注プローブ15内に吸引して各試料及び第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注ポンプ15bと、第2試薬の分注終了毎に第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽15aと、第2試薬の分注を行うために第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。
【0020】
また、反応容器3内に分注された各試料、第1試薬、及び第2試薬からなる第2混合液を撹拌するための第2撹拌子19と、第2混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を洗浄する洗浄槽19aと、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、反応容器3内の第1混合液や第2混合液を光学的に測定する測光ユニット13と、反応容器3内の測定を終えた第1混合液や第2混合液を吸引した後に、反応容器3内を洗浄する洗浄ユニット12とを備えている。
【0021】
そして、測光ユニット13は、回転移動する反応容器3内の標準試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した標準信号を生成する。また、反応容器3内の被検試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した被検信号を生成する。更に、反応容器3内の管理試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した管理信号を生成する。そして生成した標準信号、被検信号、及び管理信号をデータ処理部30に出力する。また、測定後の反応容器3は、洗浄された後、再び測定に使用される。
【0022】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構部26、及びこの機構部26を制御して分析部24の各分析ユニットを作動させる制御部27を備えている。そして、機構部26は、分析部24のディスクサンプラ5、試薬庫1の試薬ラック1a、及び試薬庫2の試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。
【0023】
また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構、洗浄ユニット12を上下移動する機構、並びにサンプル分注ポンプ16b、第1試薬分注ポンプ14b、及び第2試薬分注ポンプ15bを夫々吸引及び吐出駆動する機構等を備えている。
【0024】
図1のデータ処理部30は、分析部24の測光ユニット13から出力された標準信号、被検信号、及び管理信号を処理して各検査項目の検量データ、分析データ、及び管理データの各データの生成を行う演算部31と、演算部31で生成された各データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0025】
演算部31は、測光ユニット13から出力された標準信号及び予め設定された標準試料の標準値から、各検査項目の成分の濃度値や活性値と標準信号の関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0026】
また、測光ユニット13から出力された被検信号に対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。次いで読み出した検量データを用いてその被検信号から濃度値や活性値として表される分析データを生成し、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0027】
更に、測光ユニット13から出力された管理信号に対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。次いで読み出した検量データを用いてその管理信号から濃度値や活性値として表される管理データを生成する。また、生成した複数の管理データを検査項目毎に統計処理して平均値、標準偏差等の精度管理データを生成する。そして、生成した管理データや精度管理データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0028】
データ記憶部32は、ハードディスクなどを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。更に、演算部31から出力された各検査項目の管理データや精度管理データを管理試料毎に保存する。
【0029】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データ、分析データ、管理データ、及び精度管理データの各データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された各データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0030】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された各データを表示する。また、自動分析装置100で検査可能とする検査項目の分析条件を設定する分析条件設定画面、被検試料毎に被検体の検査を行うための検査項目等の被検体情報を設定する検査項目設定画面、管理試料毎に管理値等の管理情報を設定する管理試料設定画面等を表示する。
【0031】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析条件の設定、被検試料毎の被検体情報の設定、管理試料毎の管理情報の設定等を行うための入力操作を行う。
【0032】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50から入力されたコマンド信号、各検査項目の分析条件、被検体情報、管理情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0033】
次に、図1乃至図7を参照して、分析部24で標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を分注する分注動作の概略を説明する。図3は、分析部24の各試料を分注する位置を示す図である。図4は、サンプル分注ポンプ16bによりサンプル分注プローブ16内に各試料を吸引する原理を説明するための図である。図5は、表示部42に表示された分析条件設定画面の一例を示す図である。図6は、表示部42表示された検査項目設定画面の一例を示す図である。図7は、表示部42に表示された管理試料設定画面の一例を示す図である。
【0034】
図3において、分析部24のサンプル分注アーム10は、回動軸を中心として上停止位置における高さで矢印R1及びR2方向に回動して、各試料の分注を行うためにサンプル分注プローブ16を破線で示した円形の軌道に沿って水平移動する。そして、ディスクサンプラ5に収納された試料容器17内の標準試料を吸引する位置である標準試料吸引位置T1、試料容器17内の被検試料を吸引する位置である被検試料吸引位置T2、及び試料容器17内の管理試料を吸引する位置である管理試料吸引位置T3と、ディスクサンプラ5の各試料吸引位置で吸引した試料を反応容器3内に吐出する位置であるサンプル吐出位置T4との各位置の上方の上停止位置で停止する。そして、停止した各上停止位置で各試料の吸引や吐出を行うためにサンプル分注プローブ16を上下移動する。
【0035】
ここで、サンプル分注ポンプ16bは、標準試料吸引位置T1に停止した試料容器17内の標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。また、被検試料吸引位置T2に停止した試料容器17内の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。更に、管理吸引位置T3に停止した試料容器17内の管理試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。
【0036】
図4は、サンプル分注ポンプ16bによりサンプル分注プローブ16内に各試料を吸引する原理を説明するための図である。サンプル分注ポンプ16bとサンプル分注プローブ16はチューブで接続されている。また、サンプル分注ポンプ16b、チューブ、及びサンプル分注プローブ16内には、サンプル分注ポンプ16bの吸引動作によるサンプル分注プローブ16内への各試料の吸引及び吐出動作によるサンプル分注プローブ16からの各試料の吐出が可能なように、水等の液体の圧力伝達媒体が封入されている。
【0037】
このように液体の圧力伝達媒体を利用した場合、サンプル分注プローブ16内に各試料を吸引したとき、サンプル分注プローブ16の内壁に残留する圧力伝達媒体の試料への混入や試料の圧力伝達媒体への拡散等により、吸引した試料が希釈されて各検査項目の分析対象成分の濃度が低下する問題がある。
【0038】
この問題を避けるために、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及び測定対象外の試料として予め設定された量の試料(ダミー用試料)を吸引した後に、測定対象の試料(測定用試料)を吸引する。
【0039】
しかしながら、実験結果によれば、例えば検査対象の成分を水で溶解して調製した水溶液の標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引した場合の測定対象の標準試料(測定用標準試料)は、この試料よりも高い粘度を有する血清等の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引した場合の測定対象の被検試料(測定用の被検試料)よりも希釈される問題がある。また、健常者の血清よりも高粘度有する高蛋白血症などの症状を抱えた被検体の血清は、サンプル分注プローブ16内に吸引する量が低下して、反応容器内に吐出する量が設定した分注量よりも低下する問題がある。
【0040】
この液体の性質に関る問題を解決するために、サンプル分注プローブ16を試料容器17の吸引位置まで移動する速度、移動した後に試料容器17内の各試料の吸引を開始するまでの待ち時間、試料容器17内の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引する速度、吸引した各試料をサンプル分注プローブ16から反応容器3へ吐出する速度、各試料を吐出した後にサンプル分注プローブ16の移動を開始するまでの待ち時間等の分注動作を、各試料の粘度、発泡度、表面張力等の液体の性質(液性)に応じて可変できるように制御することにより、各試料を精度よく分注することができる。
【0041】
ここで、試料の大半を占める例えば健常者の血清と同じ又はこの血清に近い液性を有する試料(基準試料)を分注するときの分注動作を基準動作とする。そして、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する例えば水溶液の標準試料の場合、サンプル分注プローブ16内に吸引する速度を、基準動作の吸引速度よりも遅い速度(第1の吸引速度)で吸引することにより、測定用の標準試料に含まれる成分の濃度の低下を低減することができる。また、基準動作の吸引速度では反応容器内に吐出する量が低下する高粘度を有する試料の場合、サンプル分注プローブ16内に吸引する速度を、基準動作の吸引速度よりも遅い速度(第2の吸引速度)で吸引することにより、吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する量の低下を防ぐことができる。
【0042】
図5は、表示部42に表示された分析条件設定画面の一例を示した図である。この分注条件設定画面43は、検査項目を設定するための「項目」の欄、この「項目」の欄に設定された検査項目を分析するために反応容器3内に吐出する各試料の量(分注量)を設定するための「試料の量」の欄、及び「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料の分注に関る情報を設定するための「標準試料」の欄等により構成される。そして、各欄に分析条件を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された各分析条件の情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0043】
「項目」の欄に、検査項目を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス431内に検査項目である例えば「項目A」が表示される。
【0044】
「試料」の欄に、各試料の分注で、サンプル分注プローブ16内に吸引した各試料の内の反応容器3内に吐出する分注量として例えば3μLを設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス432内に「3.0」が表示される。
【0045】
「標準試料」の欄は、「項目」の欄に設定された検査項目の検量データを生成するための標準試料に含まれる検査項目成分の濃度値や活性値で表される標準値を設定する「値」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料の液性を設定する「液性」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料を分注する回数を設定する「数」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定する「位置」の欄とにより構成される。
【0046】
そして、「値」の欄に標準値を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス433内に標準試料の標準値である例えば「9.5」が表示され、「液性」の欄に標準試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス434内に水溶液の標準試料の液性である例えば「低粘度」が表示される。また、「数」の欄に標準試料の分注回数を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス435内に分注回数である「3」が表示され、「位置」の欄に収納位置を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス436内に収納位置である「S1」が表示される。
【0047】
このように、「低粘度」を設定することにより、基準試料よりも低い粘度を有する標準試料をサンプル分注プローブ16内に第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、測定用標準試料の希釈を低減することが可能となり、標準試料を精度よく分注できる。
【0048】
なお、基準試料の粘度よりも高い粘度を有する標準試料に対して「高粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に高粘度の標準試料を第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する標準試料の分注量の低下を防ぐことが可能となり、高粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0049】
また、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する標準試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の標準試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの標準試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0050】
更に、基準試料に同じ又は近い液性を有する例えば健常者の血清をベースにして調整された標準試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0051】
以上のように、標準試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で標準試料を分注することが可能となり、標準試料を精度よく分注することができる。
【0052】
図6は、表示部42に表示された検査項目設定画面の一例を示した図である。この検査項目設定画面44は、被検体を識別する識別情報を設定するための「被検体ID」の欄と、「被検体ID」の欄に設定された識別情報の被検体から採取された被検試料の液性を設定するための「液性」の欄と、「被検体ID」の欄に設定された識別情報で識別される被検試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定するための「位置」の欄とにより構成される。
【0053】
また、表示部42の分析条件設定画面で分析条件が設定された検査項目の内、「被検体ID」の欄に設定された識別情報の被検体の検査を行うための検査項目を設定する「項目」の欄により構成される。そして、各欄に検査対象の被検体に関る被検体情報を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された被検体情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0054】
「被検体ID」の欄に、検査を行う被検体の識別情報を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス441内に識別情報である例えば「1」が表示される。
【0055】
「液性」の欄に、被検試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス442内に被検試料の液性が表示される。ここには、図5に示した分析条件設定画面43の「標準試料」の欄における「液性」の欄への設定と同様に、「低粘度」、「高粘度」、「高発泡度」、「基準」等を設定することができる。
【0056】
そして、「被検体ID」の欄に設定された識別情報を有する被検体の総蛋白質の分析データが前回の検査で例えば高蛋白血症により異常高値であると、その血清が高粘度である可能性があるため、「高粘度」を設定する入力操作により、ダイアログボックス442内に「高粘度」が表示される。
【0057】
このように、高粘度を有する可能性がある被検試料に対して「高粘度」を設定することにより、その被検試料をサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する被検試料の分注量の低下を未然に防ぐことができ、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0058】
なお、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する被検試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の被検試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの被検試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0059】
また、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する例えば尿などの被検試料に対して「低粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に低粘度の被検試料を、第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、低粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0060】
更に、基準試料に同じ又は近い液性を有する被検試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0061】
以上のように、被検試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で被検試料を分注することが可能となり、被検試料を精度よく分注することができる。
【0062】
「位置」の欄に収納位置を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス443内に収納位置である「P1」が表示される。
【0063】
「項目」の欄に、分析条件設定画面43の「項目」の欄に設定された検査項目である「項目A」や、表示部42の他の分析条件設定画面で設定された検査項目である例えば「項目B」及び「項目C」等が表示される。そして、この欄に表示された検査項目の中から分析を行う検査項目を選択設定する入力操作が行われると、選択された検査項目である例えば「項目A」が識別して表示される。
【0064】
図7は、表示部42に表示された管理試料設定画面の一例を示した図である。この管理試料設定画面45は、管理試料を識別する識別情報を設定するための「管理ID」の欄と、「管理ID」の欄に設定された識別情報で識別される管理試料の液性を設定するための「液性」の欄と、「管理ID」の欄に設定された管理試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定するための「位置」の欄とにより構成される。
【0065】
また、表示部42の分析条件設定画面で分析条件が設定された検査項目の内、「管理ID」の欄に設定された管理試料で管理可能な検査項目を設定するための「項目」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の管理データの許容範囲を設定するための「範囲」の欄とにより構成される。そして、各欄に管理情報を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された管理情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0066】
「管理ID」の欄に各検査項目の管理に使用する管理試料の識別情報を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス451内に識別情報である例えば「CNT1」が表示される。
【0067】
「液性」の欄に、管理試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス452内に管理試料の液性が表示される。ここには、図5に示した分析条件設定画面43の「標準試料」の欄における「液性」の欄と同様に、「低粘度」、「高粘度」、「高発泡度」、「基準」等を設定することができる。そして、「管理ID」の欄に設定された管理試料が例えば基準試料の液性を有する場合の入力操作により、ダイアログボックス452内に「基準」が表示される。
【0068】
このように、基準試料に同じ又は近い液性を有する管理試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0069】
なお、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する管理試料に対して「低粘度」を設定することにより、低粘度の管理試料をサンプル分注プローブ16内に第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、測定用の管理試料の希釈を低減することが可能となり、低粘度の管理試料を精度よく分注できる。
【0070】
また、基準試料の粘度よりも高い粘度を有する管理試料に対して「高粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に高粘度の管理試料を第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する管理試料の分注量の低下を防ぐことが可能となり、高粘度の管理試料を精度よく分注することができる。
【0071】
また、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する管理試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の管理試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの管理試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の管理試料を精度よく分注することができる。
【0072】
以上のように、管理試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で管理試料を分注することが可能となり、管理試料を精度よく分注することができる。
【0073】
「位置」の欄に収納位置を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス453内に収納位置である「C1」が表示される。
【0074】
「項目」の欄に、表示部42の分析条件設定画面43で設定された検査項目及び他の分析条件設定画面で設定された検査項目の中から「管理試料」の欄に設定された管理試料で管理する検査項目を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45a1内に例えば「項目A」が表示され、ダイアログボックス45a2内に「項目B」が表示される。また、入力操作が行われない各ダイアログボックス45a3乃至45an内は空白になる。
【0075】
「範囲」の欄に、「項目」の欄に設定された「項目A」の管理データの許容範囲を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45b1内に許容範囲である例えば「10.0±0.2」が表示され、「項目B」の管理データの許容範囲を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45b2内に「7.7±0.2」が表示される。また、入力操作が行われない各ダイアログボックス45b3乃至45bn内は空白になる。
【0076】
以下、図1乃至図11を参照して、分析部24で標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を分注する動作の一例を説明する。図8は、各試料を同じ工程で分注する試料分注工程を示す図である。図9及び図10は、図8に示した試料分注工程の詳細を示すフローチャートである。図11は、各試料の分注におけるサンプル分注プローブ16内の試料を示す図である。
【0077】
図8において、試料分注工程S1は、標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を1回目に分注する第1の試料分注工程S10と、複数回分注するときのn回目(2以上の整数)に分注する第nの試料分注工程S30とにより構成される。そして、システム制御部60からの指示に基づいて、分析制御部25の制御部27による機構部26の各機構の制御により、反応ディスク5、サンプル分注アーム10、及びサンプル分注ポンプ16b等の各分析ユニットを作動させて各試料の分注を行う。
【0078】
図9は、試料分注工程S1の第1の試料分注工程S10を示したフローチャートである。この第1の試料分注工程S10は、サンプル分注アーム10の動作により実行されるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20、及びサンプル分注ポンプ16bの動作により実行されるステップ12,S14,S18により構成される。また、ステップS12,S14,S18におけるサンプル分注ポンプ16bの動作に対応するサンプル分注プローブ16内を図11(a)乃至(c)に示す。ここでは、図5の分析条件設定画面43で設定された検査項目の標準試料の分注を一例として説明する。
【0079】
サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションから標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS11)。
【0080】
サンプル分注プローブ16の移動に並行して、サンプル分注ポンプ16bは、図11(a)に示すように、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気を吸引する(ステップS12)。
【0081】
サンプル分注プローブ16内への空気の吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を下へ移動して、標準試料吸引位置T1に停止した試料容器17内の標準試料の吸引が可能な吸引高で停止する(ステップS13)。
【0082】
1回目の標準試料の分注における吸引では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(b)に示すように、ダミー用標準試料及び分析条件設定画面43における「試料の量」の欄に設定した分注量の測定用標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引する。このとき、ダミー用標準試料及び測定用標準試料、又は測定用標準試料のみを「液性」の欄に設定した「低粘度」に対応する第1の吸引速度で吸引する(ステップS14)。
【0083】
なお、図6に示した検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料の分注における吸引では、そのダミー用被検試料及び測定用被検試料、又は測定用被検試料のみをサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引する。また、図7に示した管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料の分注における吸引では、そのダミー用管理試料及び測定用管理試料をサンプル分注プローブ16内に基準動作の吸引速度で吸引する。
【0084】
1回目の標準試料の分注における吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS15)。
【0085】
標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動した後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS16)。
【0086】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動した後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に標準試料を吐出するための試料吐出高へ移動する(ステップS17)。
【0087】
1回目の標準試料の分注における吐出では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(c)に示すように、サンプル分注プローブ16内の分注量の測定用標準試料を反応容器3内に基準動作の吐出速度で吐出する(ステップS18)。
【0088】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料の分注における吐出では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料の分注における吐出では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。
【0089】
このように、1回目の分注における吸引で、所定量の空気及びダミー用標準試料を吸引すると共に、ダミー用標準試料及び測定用標準試料、又は測定用標準試料のみを第1の吸引速度でサンプル分注プローブ16内に吸引することにより、1回目の分注における測定用標準試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。これにより、低粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0090】
また、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した被検試料の分注における吸引で、所定量の空気及びダミー用被検試料を吸引すると共に、そのダミー用被検試料及び測定用被検試料、又は測定用被検試料のみを「液性」の欄に設定した「高粘度」に対応する第2の吸引速度でサンプル分注プローブ16内に吸引することにより、高粘度被検試料の吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用被検試料の量の低下を防ぐことができる。これにより、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0091】
なお、低粘度及び高粘度の測定用試料を、基準動作の吐出速度よりも高速で吐出させるように実施してもよい。これにより、迅速に分注を行うことができる。
【0092】
1回目の標準試料の分注における吐出後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吐出高からサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS19)。
【0093】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションへ移動する(ステップS20)。
【0094】
図10は、試料分注工程S1の第nの試料分注工程S30を示したフローチャートである。この第nの試料分注工程S30は、サンプル分注アーム10の動作により実行されるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39、及びサンプル分注ポンプ16bの動作により実行されるステップ33,S37により構成される。また、ステップS33のサンプル分注ポンプ16bの動作に対応するサンプル分注プローブ16内を図11(d)に示す。
【0095】
サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションから標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS31)。
【0096】
標準試料吸引位置T1の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を下へ移動して試料吸引高で停止する(ステップS32)。
【0097】
n回目の標準試料の分注における吸引では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(d)に示すように、サンプル分注プローブ16内に1回目の分注で吸引した空気及びダミー用標準試料を残した状態で、分注量の測定用標準試料を第1の吸引速度で吸引する(ステップS33)。
【0098】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料のn回目の分注における吸引では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料のn回目の分注における吸引では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16内に基準動作の吸引速度で吸引する。
【0099】
n回目の標準試料の分注における吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吸引高から標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS34)。
【0100】
標準試料吸引位置T1の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS35)。
【0101】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内の試料吐出高へ移動する(ステップS36)。
【0102】
n回目の標準試料の分注における吐出では、サンプル分注ポンプ16bは、サンプル分注プローブ16内の測定用標準試料を基準速度で反応容器3内に吐出する(ステップS37)。
【0103】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料のn回目の分注における吐出では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料のn回目の分注における吐出では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。
【0104】
このように、1回目の分注のときに吸引した空気及びダミー用標準試料を、この標準試料の分注が終わるまでサンプル分注プローブ16内に残した状態で測定用標準試料を第1の吸引速度で吸引することにより、標準試料の浪費を防ぐと共に、n回目の測定用標準試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。これにより、低粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0105】
また、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定したn回目の被検試料の分注で、1回目の分注のときに吸引した空気及びダミー用被検試料を、この被検試料の分注が終わるまでサンプル分注プローブ16内に残した状態で測定用被検試料を第1の吸引速度で吸引することにより、被検試料の浪費を防ぐと共に、n回目の測定用被検試料の吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用被検試料の量の低下を防ぐことができる。これにより、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0106】
n回目の標準試料の分注における吐出後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吐出高からサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS38)。
【0107】
サンプル吐出位置T4の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションへ移動する(ステップS39)。
【0108】
そして、同じ標準試料の分注終了後に、サンプル分注プローブ16内の空気及びダミー用標準試料を排出した後、サンプル分注プローブ16の洗浄が行われる。洗浄後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションに移動して、次の標準試料又は被検試料の分注に備えて待機する。
【0109】
以上述べた本発明の実施例によれば、各試料の液性を設定し、設定した液性に応じてその試料の分注動作を可変することができる。
【0110】
そして、低粘度を有する試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引すると共に、ダミー用試料及び測定用試料、又は測定用試料のみを第1の吸引速度で吸引する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で、測定用試料を第1の吸引速度で吸引する。これにより、測定用試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。
【0111】
また、高粘度を有する試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引すると共に、ダミー用試料及び測定用試料、又は測定用試料のみを第2の吸引速度で吸引する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で、測定用試料を第2の吸引速度で吸引する。これにより、サンプル分注プローブ16内へ高粘度試料を吸引する量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用試料の量の低下を防ぐことができる。
【0112】
更に、高発泡度の試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引し、吸引した測定用試料を基準動作の速度よりも遅い速度で反応容器3内に吐出する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で測定用試料を吸引し、吸引した測定用試料を基準動作の速度よりも遅い速度で反応容器3内に吐出する。これにより、反応容器3内に吐出したときの測定用試料の泡立ちを抑えることができる。
【0113】
以上により、各試料を精度よく分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る分析部の各試料を分注する位置を示す図。
【図4】本発明の実施例に係るサンプル分注ポンプによりサンプル分注プローブ内に各試料を吸引する原理を説明するための図。
【図5】本発明の実施例に係る表示部に表示された分析条件設定画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る表示部に表示された検査項目設定画面の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る表示部に表示された管理試料設定画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る試料分注工程の構成を示す図。
【図9】図8に示した試料分注工程の第1の試料分注工程を示すフローチャート。
【図10】図8に示した試料分注工程のnの試料分注工程を示すフローチャート。
【図11】本発明の実施例に係る試料の分注におけるサンプル分注プローブ内の試料を示す図。
【符号の説明】
【0115】
T1 標準試料吸引位置
T2 被検試料吸引位置
T3 管理試料吸引位置
T4 サンプル吐出位置
3 反応容器
4 反応ディスク
5 ディスクサンプラ
10 サンプル分注アーム
16 サンプル分注プローブ
16b サンプル分注ポンプ
17 試料容器
24 分析部
25 分析制御部
26 機構部
27 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に、ヒトから採取した血清などの試料を分注して、その試料に含まれる成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、血清等の被検体から採取された被検試料及び各検査項目に該当する試薬の混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計等の光分析器を用いて光学的に測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素の活性等の分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、検査可能な多数の検査項目の中から、検査対象となる検査項目を設定した被検試料の分析が行われる。そして、被検試料は、サンプル分注プローブを用いてサンプラに収納された試料容器から反応容器に分注される。また、試薬は、試薬分注プローブを用いて試薬庫に収納された試薬容器から被検試料が分注された反応容器に分注される。更に、反応容器に分注された被検試料及び試薬の混合液は、撹拌子を用いて撹拌された後、光分析器を用いて測定される。そして、サンプル分注プローブ、試薬分注プローブ、及び撹拌子の各分析ユニットは、被検試料の分注終了毎、試薬の分注終了毎、及び混合液の撹拌終了毎に洗浄される。また、反応容器は混合液の測定終了毎に洗浄される。
【0004】
ところで、自動分析装置では、被検試料以外にも各検査項目の標準試料や各検査項目の管理を行うための管理試料の分注が行われ、被検試料、標準試料、及び管理試料の各試料を分注するユニットは、サンプル分注プローブ、吸引及び吐出を行うためのサンプル分注ポンプ、及びサンプル分注プローブとサンプル分注ポンプ間を連通するチューブにより構成される。
【0005】
サンプル分注ポンプは、各ユニット内に封入された水などの圧力伝達媒体を介して、各試料を収容した試料容器等の容器からサンプル分注プローブ内に吸引し、吸引した各試料を反応容器内に吐出する分注を行う。そして、各試料の分注では、サンプル分注プローブ内に空気、測定に使用しないダミーの試料(ダミー用試料)、測定に使用する試料(測定用試料)の順に吸引した後、吸引した測定用試料を吐出する。
【0006】
そして、サンプル分注プローブ内に吸引した空気及びダミー用試料は、測定用試料を圧力伝達媒体から隔離し、圧力伝達媒体の混入や圧力伝達媒体への拡散により測定用試料が希釈されて検査対象の成分濃度が低下するのを低減するために設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−162401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、検査対象の成分を水で溶解して調製された水溶液の標準試料と、血清等の被検試料では、測定用試料に含まれる検査対象の成分の濃度の低下の程度が異なる。このため、例えば測定用の標準試料に含まれる検査対象の成分濃度が測定用の被検試料の場合よりも低下すると、相対的にその被検試料の分析データが高値を示して問題となる。
【0008】
また、高蛋白血症などの症状を抱えた被検体の血清では、健常者の血清よりも高粘度であるため設定した分注量よりも反応容器内に吐出される量が低下する問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、試料を精度よく分注することができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記試料の液体としての性質を設定する液性設定手段と、前記液性設定手段により設定された性質の試料を収容した試料容器から分注プローブ内に吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う分注手段とを備え、前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された液性の試料の分注動作を、その液性に応じて可変するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各試料の液体の性質を設定することにより、設定された試料の性質に応じて、その試料を分注するときの分注動作を可変することができる。これにより、各試料を精度よく分注することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図11を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料、被検試料、及び各検査項目の管理を行うための管理試料を測定して、標準信号、被検信号、及び管理信号を生成する分析部24と、分析部24の測定に関る各分析ユニットの制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0014】
また、分析部24で生成された標準信号、被検信号、及び管理信号を処理して各検査項目の検量データ、分析データ、及び管理データの生成を行うデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データ、分析データ、及び管理データを出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力操作等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0015】
図2は、分析部24の構成を示した斜視図である。この分析部24は、標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を収容した試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ5と、各試料に含まれる検査項目の成分に反応する第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aを有する試薬庫1と、第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aを有する試薬庫2と、円周上に配置された複数の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0016】
また、ディスクサンプラ5に保持された試料容器17内の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注ポンプ16bと、各試料の分注終了毎にサンプル分注プローブ16を洗浄する洗浄槽16aと、各試料の分注を行うためにサンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0017】
また、試薬庫1に収納された試薬容器6内の第1試薬を第1試薬分注プローブ14内に吸引して各試料が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注ポンプ14bと、第1試薬の分注終了毎に第1試薬分注プローブ14を洗浄する洗浄槽14aと、第1試薬の分注を行うために第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8とを備えている。
【0018】
また、反応容器3内に分注された各試料及び第1試薬からなる第1混合液を撹拌するための第1撹拌子18と、第1混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を洗浄する洗浄槽18aと、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20とを備えている。
【0019】
また、試薬庫2に収納された試薬容器7内の第2試薬を第2試薬分注プローブ15内に吸引して各試料及び第1試薬が分注された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注ポンプ15bと、第2試薬の分注終了毎に第2試薬分注プローブ15を洗浄する洗浄槽15aと、第2試薬の分注を行うために第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9とを備えている。
【0020】
また、反応容器3内に分注された各試料、第1試薬、及び第2試薬からなる第2混合液を撹拌するための第2撹拌子19と、第2混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を洗浄する洗浄槽19aと、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、反応容器3内の第1混合液や第2混合液を光学的に測定する測光ユニット13と、反応容器3内の測定を終えた第1混合液や第2混合液を吸引した後に、反応容器3内を洗浄する洗浄ユニット12とを備えている。
【0021】
そして、測光ユニット13は、回転移動する反応容器3内の標準試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した標準信号を生成する。また、反応容器3内の被検試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した被検信号を生成する。更に、反応容器3内の管理試料を含む第1混合液や第2混合液に光を照射し、その混合液内を透過した各検査項目の波長光を検出して電気信号に変換した管理信号を生成する。そして生成した標準信号、被検信号、及び管理信号をデータ処理部30に出力する。また、測定後の反応容器3は、洗浄された後、再び測定に使用される。
【0022】
分析制御部25は、分析部24の各分析ユニットを駆動する機構部26、及びこの機構部26を制御して分析部24の各分析ユニットを作動させる制御部27を備えている。そして、機構部26は、分析部24のディスクサンプラ5、試薬庫1の試薬ラック1a、及び試薬庫2の試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。
【0023】
また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構、洗浄ユニット12を上下移動する機構、並びにサンプル分注ポンプ16b、第1試薬分注ポンプ14b、及び第2試薬分注ポンプ15bを夫々吸引及び吐出駆動する機構等を備えている。
【0024】
図1のデータ処理部30は、分析部24の測光ユニット13から出力された標準信号、被検信号、及び管理信号を処理して各検査項目の検量データ、分析データ、及び管理データの各データの生成を行う演算部31と、演算部31で生成された各データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0025】
演算部31は、測光ユニット13から出力された標準信号及び予め設定された標準試料の標準値から、各検査項目の成分の濃度値や活性値と標準信号の関係を表す検量データを生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0026】
また、測光ユニット13から出力された被検信号に対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。次いで読み出した検量データを用いてその被検信号から濃度値や活性値として表される分析データを生成し、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0027】
更に、測光ユニット13から出力された管理信号に対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。次いで読み出した検量データを用いてその管理信号から濃度値や活性値として表される管理データを生成する。また、生成した複数の管理データを検査項目毎に統計処理して平均値、標準偏差等の精度管理データを生成する。そして、生成した管理データや精度管理データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0028】
データ記憶部32は、ハードディスクなどを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。更に、演算部31から出力された各検査項目の管理データや精度管理データを管理試料毎に保存する。
【0029】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データ、分析データ、管理データ、及び精度管理データの各データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された各データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0030】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された各データを表示する。また、自動分析装置100で検査可能とする検査項目の分析条件を設定する分析条件設定画面、被検試料毎に被検体の検査を行うための検査項目等の被検体情報を設定する検査項目設定画面、管理試料毎に管理値等の管理情報を設定する管理試料設定画面等を表示する。
【0031】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析条件の設定、被検試料毎の被検体情報の設定、管理試料毎の管理情報の設定等を行うための入力操作を行う。
【0032】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50から入力されたコマンド信号、各検査項目の分析条件、被検体情報、管理情報等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0033】
次に、図1乃至図7を参照して、分析部24で標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を分注する分注動作の概略を説明する。図3は、分析部24の各試料を分注する位置を示す図である。図4は、サンプル分注ポンプ16bによりサンプル分注プローブ16内に各試料を吸引する原理を説明するための図である。図5は、表示部42に表示された分析条件設定画面の一例を示す図である。図6は、表示部42表示された検査項目設定画面の一例を示す図である。図7は、表示部42に表示された管理試料設定画面の一例を示す図である。
【0034】
図3において、分析部24のサンプル分注アーム10は、回動軸を中心として上停止位置における高さで矢印R1及びR2方向に回動して、各試料の分注を行うためにサンプル分注プローブ16を破線で示した円形の軌道に沿って水平移動する。そして、ディスクサンプラ5に収納された試料容器17内の標準試料を吸引する位置である標準試料吸引位置T1、試料容器17内の被検試料を吸引する位置である被検試料吸引位置T2、及び試料容器17内の管理試料を吸引する位置である管理試料吸引位置T3と、ディスクサンプラ5の各試料吸引位置で吸引した試料を反応容器3内に吐出する位置であるサンプル吐出位置T4との各位置の上方の上停止位置で停止する。そして、停止した各上停止位置で各試料の吸引や吐出を行うためにサンプル分注プローブ16を上下移動する。
【0035】
ここで、サンプル分注ポンプ16bは、標準試料吸引位置T1に停止した試料容器17内の標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。また、被検試料吸引位置T2に停止した試料容器17内の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。更に、管理吸引位置T3に停止した試料容器17内の管理試料をサンプル分注プローブ16内に吸引してサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に吐出する。
【0036】
図4は、サンプル分注ポンプ16bによりサンプル分注プローブ16内に各試料を吸引する原理を説明するための図である。サンプル分注ポンプ16bとサンプル分注プローブ16はチューブで接続されている。また、サンプル分注ポンプ16b、チューブ、及びサンプル分注プローブ16内には、サンプル分注ポンプ16bの吸引動作によるサンプル分注プローブ16内への各試料の吸引及び吐出動作によるサンプル分注プローブ16からの各試料の吐出が可能なように、水等の液体の圧力伝達媒体が封入されている。
【0037】
このように液体の圧力伝達媒体を利用した場合、サンプル分注プローブ16内に各試料を吸引したとき、サンプル分注プローブ16の内壁に残留する圧力伝達媒体の試料への混入や試料の圧力伝達媒体への拡散等により、吸引した試料が希釈されて各検査項目の分析対象成分の濃度が低下する問題がある。
【0038】
この問題を避けるために、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及び測定対象外の試料として予め設定された量の試料(ダミー用試料)を吸引した後に、測定対象の試料(測定用試料)を吸引する。
【0039】
しかしながら、実験結果によれば、例えば検査対象の成分を水で溶解して調製した水溶液の標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引した場合の測定対象の標準試料(測定用標準試料)は、この試料よりも高い粘度を有する血清等の被検試料をサンプル分注プローブ16内に吸引した場合の測定対象の被検試料(測定用の被検試料)よりも希釈される問題がある。また、健常者の血清よりも高粘度有する高蛋白血症などの症状を抱えた被検体の血清は、サンプル分注プローブ16内に吸引する量が低下して、反応容器内に吐出する量が設定した分注量よりも低下する問題がある。
【0040】
この液体の性質に関る問題を解決するために、サンプル分注プローブ16を試料容器17の吸引位置まで移動する速度、移動した後に試料容器17内の各試料の吸引を開始するまでの待ち時間、試料容器17内の各試料をサンプル分注プローブ16内に吸引する速度、吸引した各試料をサンプル分注プローブ16から反応容器3へ吐出する速度、各試料を吐出した後にサンプル分注プローブ16の移動を開始するまでの待ち時間等の分注動作を、各試料の粘度、発泡度、表面張力等の液体の性質(液性)に応じて可変できるように制御することにより、各試料を精度よく分注することができる。
【0041】
ここで、試料の大半を占める例えば健常者の血清と同じ又はこの血清に近い液性を有する試料(基準試料)を分注するときの分注動作を基準動作とする。そして、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する例えば水溶液の標準試料の場合、サンプル分注プローブ16内に吸引する速度を、基準動作の吸引速度よりも遅い速度(第1の吸引速度)で吸引することにより、測定用の標準試料に含まれる成分の濃度の低下を低減することができる。また、基準動作の吸引速度では反応容器内に吐出する量が低下する高粘度を有する試料の場合、サンプル分注プローブ16内に吸引する速度を、基準動作の吸引速度よりも遅い速度(第2の吸引速度)で吸引することにより、吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する量の低下を防ぐことができる。
【0042】
図5は、表示部42に表示された分析条件設定画面の一例を示した図である。この分注条件設定画面43は、検査項目を設定するための「項目」の欄、この「項目」の欄に設定された検査項目を分析するために反応容器3内に吐出する各試料の量(分注量)を設定するための「試料の量」の欄、及び「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料の分注に関る情報を設定するための「標準試料」の欄等により構成される。そして、各欄に分析条件を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された各分析条件の情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0043】
「項目」の欄に、検査項目を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス431内に検査項目である例えば「項目A」が表示される。
【0044】
「試料」の欄に、各試料の分注で、サンプル分注プローブ16内に吸引した各試料の内の反応容器3内に吐出する分注量として例えば3μLを設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス432内に「3.0」が表示される。
【0045】
「標準試料」の欄は、「項目」の欄に設定された検査項目の検量データを生成するための標準試料に含まれる検査項目成分の濃度値や活性値で表される標準値を設定する「値」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料の液性を設定する「液性」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料を分注する回数を設定する「数」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の標準試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定する「位置」の欄とにより構成される。
【0046】
そして、「値」の欄に標準値を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス433内に標準試料の標準値である例えば「9.5」が表示され、「液性」の欄に標準試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス434内に水溶液の標準試料の液性である例えば「低粘度」が表示される。また、「数」の欄に標準試料の分注回数を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス435内に分注回数である「3」が表示され、「位置」の欄に収納位置を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス436内に収納位置である「S1」が表示される。
【0047】
このように、「低粘度」を設定することにより、基準試料よりも低い粘度を有する標準試料をサンプル分注プローブ16内に第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、測定用標準試料の希釈を低減することが可能となり、標準試料を精度よく分注できる。
【0048】
なお、基準試料の粘度よりも高い粘度を有する標準試料に対して「高粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に高粘度の標準試料を第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する標準試料の分注量の低下を防ぐことが可能となり、高粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0049】
また、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する標準試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の標準試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの標準試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0050】
更に、基準試料に同じ又は近い液性を有する例えば健常者の血清をベースにして調整された標準試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0051】
以上のように、標準試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で標準試料を分注することが可能となり、標準試料を精度よく分注することができる。
【0052】
図6は、表示部42に表示された検査項目設定画面の一例を示した図である。この検査項目設定画面44は、被検体を識別する識別情報を設定するための「被検体ID」の欄と、「被検体ID」の欄に設定された識別情報の被検体から採取された被検試料の液性を設定するための「液性」の欄と、「被検体ID」の欄に設定された識別情報で識別される被検試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定するための「位置」の欄とにより構成される。
【0053】
また、表示部42の分析条件設定画面で分析条件が設定された検査項目の内、「被検体ID」の欄に設定された識別情報の被検体の検査を行うための検査項目を設定する「項目」の欄により構成される。そして、各欄に検査対象の被検体に関る被検体情報を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された被検体情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0054】
「被検体ID」の欄に、検査を行う被検体の識別情報を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス441内に識別情報である例えば「1」が表示される。
【0055】
「液性」の欄に、被検試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス442内に被検試料の液性が表示される。ここには、図5に示した分析条件設定画面43の「標準試料」の欄における「液性」の欄への設定と同様に、「低粘度」、「高粘度」、「高発泡度」、「基準」等を設定することができる。
【0056】
そして、「被検体ID」の欄に設定された識別情報を有する被検体の総蛋白質の分析データが前回の検査で例えば高蛋白血症により異常高値であると、その血清が高粘度である可能性があるため、「高粘度」を設定する入力操作により、ダイアログボックス442内に「高粘度」が表示される。
【0057】
このように、高粘度を有する可能性がある被検試料に対して「高粘度」を設定することにより、その被検試料をサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する被検試料の分注量の低下を未然に防ぐことができ、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0058】
なお、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する被検試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の被検試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの被検試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0059】
また、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する例えば尿などの被検試料に対して「低粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に低粘度の被検試料を、第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、低粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0060】
更に、基準試料に同じ又は近い液性を有する被検試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0061】
以上のように、被検試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で被検試料を分注することが可能となり、被検試料を精度よく分注することができる。
【0062】
「位置」の欄に収納位置を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス443内に収納位置である「P1」が表示される。
【0063】
「項目」の欄に、分析条件設定画面43の「項目」の欄に設定された検査項目である「項目A」や、表示部42の他の分析条件設定画面で設定された検査項目である例えば「項目B」及び「項目C」等が表示される。そして、この欄に表示された検査項目の中から分析を行う検査項目を選択設定する入力操作が行われると、選択された検査項目である例えば「項目A」が識別して表示される。
【0064】
図7は、表示部42に表示された管理試料設定画面の一例を示した図である。この管理試料設定画面45は、管理試料を識別する識別情報を設定するための「管理ID」の欄と、「管理ID」の欄に設定された識別情報で識別される管理試料の液性を設定するための「液性」の欄と、「管理ID」の欄に設定された管理試料を収容した試料容器17を収納するディスクサンプラ5の収納位置を設定するための「位置」の欄とにより構成される。
【0065】
また、表示部42の分析条件設定画面で分析条件が設定された検査項目の内、「管理ID」の欄に設定された管理試料で管理可能な検査項目を設定するための「項目」の欄と、「項目」の欄に設定された検査項目の管理データの許容範囲を設定するための「範囲」の欄とにより構成される。そして、各欄に管理情報を設定する操作部50からの入力操作により、各欄に設定された管理情報がシステム制御部60の記憶回路に保存されると共に表示部42に表示される。
【0066】
「管理ID」の欄に各検査項目の管理に使用する管理試料の識別情報を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス451内に識別情報である例えば「CNT1」が表示される。
【0067】
「液性」の欄に、管理試料の液性を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス452内に管理試料の液性が表示される。ここには、図5に示した分析条件設定画面43の「標準試料」の欄における「液性」の欄と同様に、「低粘度」、「高粘度」、「高発泡度」、「基準」等を設定することができる。そして、「管理ID」の欄に設定された管理試料が例えば基準試料の液性を有する場合の入力操作により、ダイアログボックス452内に「基準」が表示される。
【0068】
このように、基準試料に同じ又は近い液性を有する管理試料に対して「基準」を設定することにより、基準動作で分注することができる。これにより、迅速に精度よく分注を行うことができる。
【0069】
なお、基準試料の粘度よりも低い粘度を有する管理試料に対して「低粘度」を設定することにより、低粘度の管理試料をサンプル分注プローブ16内に第1の吸引速度で吸引することができる。これにより、測定用の管理試料の希釈を低減することが可能となり、低粘度の管理試料を精度よく分注できる。
【0070】
また、基準試料の粘度よりも高い粘度を有する管理試料に対して「高粘度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に高粘度の管理試料を第2の吸引速度で吸引することができる。これにより、反応容器3内へ吐出する管理試料の分注量の低下を防ぐことが可能となり、高粘度の管理試料を精度よく分注することができる。
【0071】
また、基準試料の発泡度よりも高い発泡度を有する管理試料に対して「高発泡度」を設定することにより、サンプル分注プローブ16内に吸引した高発泡度の管理試料を、基準動作の吐出速度よりも遅い速度でサンプル分注プローブ16から吐出することができる。これにより、反応容器3内に吐出したときの管理試料の泡立ちを抑えることが可能となり、高発泡度の管理試料を精度よく分注することができる。
【0072】
以上のように、管理試料の液性を設定することにより、設定した液性に応じた分注動作で管理試料を分注することが可能となり、管理試料を精度よく分注することができる。
【0073】
「位置」の欄に収納位置を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス453内に収納位置である「C1」が表示される。
【0074】
「項目」の欄に、表示部42の分析条件設定画面43で設定された検査項目及び他の分析条件設定画面で設定された検査項目の中から「管理試料」の欄に設定された管理試料で管理する検査項目を選択設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45a1内に例えば「項目A」が表示され、ダイアログボックス45a2内に「項目B」が表示される。また、入力操作が行われない各ダイアログボックス45a3乃至45an内は空白になる。
【0075】
「範囲」の欄に、「項目」の欄に設定された「項目A」の管理データの許容範囲を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45b1内に許容範囲である例えば「10.0±0.2」が表示され、「項目B」の管理データの許容範囲を設定する入力操作が行われると、ダイアログボックス45b2内に「7.7±0.2」が表示される。また、入力操作が行われない各ダイアログボックス45b3乃至45bn内は空白になる。
【0076】
以下、図1乃至図11を参照して、分析部24で標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を分注する動作の一例を説明する。図8は、各試料を同じ工程で分注する試料分注工程を示す図である。図9及び図10は、図8に示した試料分注工程の詳細を示すフローチャートである。図11は、各試料の分注におけるサンプル分注プローブ16内の試料を示す図である。
【0077】
図8において、試料分注工程S1は、標準試料、被検試料、及び管理試料の各試料を1回目に分注する第1の試料分注工程S10と、複数回分注するときのn回目(2以上の整数)に分注する第nの試料分注工程S30とにより構成される。そして、システム制御部60からの指示に基づいて、分析制御部25の制御部27による機構部26の各機構の制御により、反応ディスク5、サンプル分注アーム10、及びサンプル分注ポンプ16b等の各分析ユニットを作動させて各試料の分注を行う。
【0078】
図9は、試料分注工程S1の第1の試料分注工程S10を示したフローチャートである。この第1の試料分注工程S10は、サンプル分注アーム10の動作により実行されるステップS11,S13,S15,S16,S17,S19,S20、及びサンプル分注ポンプ16bの動作により実行されるステップ12,S14,S18により構成される。また、ステップS12,S14,S18におけるサンプル分注ポンプ16bの動作に対応するサンプル分注プローブ16内を図11(a)乃至(c)に示す。ここでは、図5の分析条件設定画面43で設定された検査項目の標準試料の分注を一例として説明する。
【0079】
サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションから標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS11)。
【0080】
サンプル分注プローブ16の移動に並行して、サンプル分注ポンプ16bは、図11(a)に示すように、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気を吸引する(ステップS12)。
【0081】
サンプル分注プローブ16内への空気の吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を下へ移動して、標準試料吸引位置T1に停止した試料容器17内の標準試料の吸引が可能な吸引高で停止する(ステップS13)。
【0082】
1回目の標準試料の分注における吸引では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(b)に示すように、ダミー用標準試料及び分析条件設定画面43における「試料の量」の欄に設定した分注量の測定用標準試料をサンプル分注プローブ16内に吸引する。このとき、ダミー用標準試料及び測定用標準試料、又は測定用標準試料のみを「液性」の欄に設定した「低粘度」に対応する第1の吸引速度で吸引する(ステップS14)。
【0083】
なお、図6に示した検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料の分注における吸引では、そのダミー用被検試料及び測定用被検試料、又は測定用被検試料のみをサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引する。また、図7に示した管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料の分注における吸引では、そのダミー用管理試料及び測定用管理試料をサンプル分注プローブ16内に基準動作の吸引速度で吸引する。
【0084】
1回目の標準試料の分注における吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS15)。
【0085】
標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動した後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS16)。
【0086】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動した後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内に標準試料を吐出するための試料吐出高へ移動する(ステップS17)。
【0087】
1回目の標準試料の分注における吐出では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(c)に示すように、サンプル分注プローブ16内の分注量の測定用標準試料を反応容器3内に基準動作の吐出速度で吐出する(ステップS18)。
【0088】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料の分注における吐出では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料の分注における吐出では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。
【0089】
このように、1回目の分注における吸引で、所定量の空気及びダミー用標準試料を吸引すると共に、ダミー用標準試料及び測定用標準試料、又は測定用標準試料のみを第1の吸引速度でサンプル分注プローブ16内に吸引することにより、1回目の分注における測定用標準試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。これにより、低粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0090】
また、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した被検試料の分注における吸引で、所定量の空気及びダミー用被検試料を吸引すると共に、そのダミー用被検試料及び測定用被検試料、又は測定用被検試料のみを「液性」の欄に設定した「高粘度」に対応する第2の吸引速度でサンプル分注プローブ16内に吸引することにより、高粘度被検試料の吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用被検試料の量の低下を防ぐことができる。これにより、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0091】
なお、低粘度及び高粘度の測定用試料を、基準動作の吐出速度よりも高速で吐出させるように実施してもよい。これにより、迅速に分注を行うことができる。
【0092】
1回目の標準試料の分注における吐出後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吐出高からサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS19)。
【0093】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションへ移動する(ステップS20)。
【0094】
図10は、試料分注工程S1の第nの試料分注工程S30を示したフローチャートである。この第nの試料分注工程S30は、サンプル分注アーム10の動作により実行されるステップS31,S32,S34,S35,S36,S38,S39、及びサンプル分注ポンプ16bの動作により実行されるステップ33,S37により構成される。また、ステップS33のサンプル分注ポンプ16bの動作に対応するサンプル分注プローブ16内を図11(d)に示す。
【0095】
サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションから標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS31)。
【0096】
標準試料吸引位置T1の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を下へ移動して試料吸引高で停止する(ステップS32)。
【0097】
n回目の標準試料の分注における吸引では、サンプル分注ポンプ16bは、図11(d)に示すように、サンプル分注プローブ16内に1回目の分注で吸引した空気及びダミー用標準試料を残した状態で、分注量の測定用標準試料を第1の吸引速度で吸引する(ステップS33)。
【0098】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料のn回目の分注における吸引では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16内に第2の吸引速度で吸引する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料のn回目の分注における吸引では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16内に基準動作の吸引速度で吸引する。
【0099】
n回目の標準試料の分注における吸引後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吸引高から標準試料吸引位置T1の上停止位置へ移動する(ステップS34)。
【0100】
標準試料吸引位置T1の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS35)。
【0101】
サンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をサンプル吐出位置T4に停止した反応容器3内の試料吐出高へ移動する(ステップS36)。
【0102】
n回目の標準試料の分注における吐出では、サンプル分注ポンプ16bは、サンプル分注プローブ16内の測定用標準試料を基準速度で反応容器3内に吐出する(ステップS37)。
【0103】
なお、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定した「1」で識別される被検試料のn回目の分注における吐出では、その測定用被検試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。また、管理試料設定画面45の「管理ID」の欄に設定した「CNT1」で識別される管理試料のn回目の分注における吐出では、その測定用管理試料をサンプル分注プローブ16から基準動作の吐出速度で吐出する。
【0104】
このように、1回目の分注のときに吸引した空気及びダミー用標準試料を、この標準試料の分注が終わるまでサンプル分注プローブ16内に残した状態で測定用標準試料を第1の吸引速度で吸引することにより、標準試料の浪費を防ぐと共に、n回目の測定用標準試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。これにより、低粘度の標準試料を精度よく分注することができる。
【0105】
また、検査項目設定画面44の「被検体ID」の欄に設定したn回目の被検試料の分注で、1回目の分注のときに吸引した空気及びダミー用被検試料を、この被検試料の分注が終わるまでサンプル分注プローブ16内に残した状態で測定用被検試料を第1の吸引速度で吸引することにより、被検試料の浪費を防ぐと共に、n回目の測定用被検試料の吸引量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用被検試料の量の低下を防ぐことができる。これにより、高粘度の被検試料を精度よく分注することができる。
【0106】
n回目の標準試料の分注における吐出後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16を試料吐出高からサンプル吐出位置T4の上停止位置へ移動する(ステップS38)。
【0107】
サンプル吐出位置T4の上停止位置への移動後、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションへ移動する(ステップS39)。
【0108】
そして、同じ標準試料の分注終了後に、サンプル分注プローブ16内の空気及びダミー用標準試料を排出した後、サンプル分注プローブ16の洗浄が行われる。洗浄後に、サンプル分注アーム10は、サンプル分注プローブ16をホームポジションに移動して、次の標準試料又は被検試料の分注に備えて待機する。
【0109】
以上述べた本発明の実施例によれば、各試料の液性を設定し、設定した液性に応じてその試料の分注動作を可変することができる。
【0110】
そして、低粘度を有する試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引すると共に、ダミー用試料及び測定用試料、又は測定用試料のみを第1の吸引速度で吸引する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で、測定用試料を第1の吸引速度で吸引する。これにより、測定用試料に含まれる検査項目成分の濃度の低下を低減することができる。
【0111】
また、高粘度を有する試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引すると共に、ダミー用試料及び測定用試料、又は測定用試料のみを第2の吸引速度で吸引する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で、測定用試料を第2の吸引速度で吸引する。これにより、サンプル分注プローブ16内へ高粘度試料を吸引する量の低下を防ぐことが可能となり、反応容器3内へ吐出する測定用試料の量の低下を防ぐことができる。
【0112】
更に、高発泡度の試料の1回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気、ダミー用試料、及び測定用試料を吸引し、吸引した測定用試料を基準動作の速度よりも遅い速度で反応容器3内に吐出する。また、n回目の分注では、サンプル分注プローブ16内に所定量の空気及びダミー用試料を残した状態で測定用試料を吸引し、吸引した測定用試料を基準動作の速度よりも遅い速度で反応容器3内に吐出する。これにより、反応容器3内に吐出したときの測定用試料の泡立ちを抑えることができる。
【0113】
以上により、各試料を精度よく分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例に係る分析部の各試料を分注する位置を示す図。
【図4】本発明の実施例に係るサンプル分注ポンプによりサンプル分注プローブ内に各試料を吸引する原理を説明するための図。
【図5】本発明の実施例に係る表示部に表示された分析条件設定画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る表示部に表示された検査項目設定画面の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る表示部に表示された管理試料設定画面の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る試料分注工程の構成を示す図。
【図9】図8に示した試料分注工程の第1の試料分注工程を示すフローチャート。
【図10】図8に示した試料分注工程のnの試料分注工程を示すフローチャート。
【図11】本発明の実施例に係る試料の分注におけるサンプル分注プローブ内の試料を示す図。
【符号の説明】
【0115】
T1 標準試料吸引位置
T2 被検試料吸引位置
T3 管理試料吸引位置
T4 サンプル吐出位置
3 反応容器
4 反応ディスク
5 ディスクサンプラ
10 サンプル分注アーム
16 サンプル分注プローブ
16b サンプル分注ポンプ
17 試料容器
24 分析部
25 分析制御部
26 機構部
27 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記試料の液体としての性質を設定する液性設定手段と、
前記液性設定手段により設定された性質の試料を収容した試料容器から分注プローブ内に吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う分注手段とを備え、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された液性の試料の分注動作を、その液性に応じて可変するようにしたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記液性設定手段により設定される液性は粘度であり、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された低粘度又は高粘度の試料を、前記低粘度よりも高く且つ前記高粘度よりも低い粘度を有する試料を吸引する速度よりも遅い速度で吸引するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記液性設定手段により設定される液性は発泡度であり、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された高発泡度の試料を、前記高発泡度よりも低い発泡度を有する試料を吐出する速度よりも遅い速度で吐出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注手段は、
前記液性設定手段により設定された性質の試料の1回目の分注では、前記サンプル分注プローブ内に所定量の空気を吸引した後に、ダミー用及び測定用の試料を吸引し、
前記液性設定手段により設定された性質の試料のn回目(2以上の整数)の分注では、前記サンプル分注プローブ内に前記空気及び前記ダミー用試料を残した状態で、測定用の試料を吸引することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試料は、前記検査項目の標準試料、又は被検体から採取された被検体試料、又は前記検査項目の管理を行うための管理試料であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項1】
試料及びこの試料の検査項目に該当する試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記試料の液体としての性質を設定する液性設定手段と、
前記液性設定手段により設定された性質の試料を収容した試料容器から分注プローブ内に吸引して前記反応容器に吐出する分注を行う分注手段とを備え、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された液性の試料の分注動作を、その液性に応じて可変するようにしたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記液性設定手段により設定される液性は粘度であり、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された低粘度又は高粘度の試料を、前記低粘度よりも高く且つ前記高粘度よりも低い粘度を有する試料を吸引する速度よりも遅い速度で吸引するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記液性設定手段により設定される液性は発泡度であり、
前記分注手段は、前記液性設定手段により設定された高発泡度の試料を、前記高発泡度よりも低い発泡度を有する試料を吐出する速度よりも遅い速度で吐出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注手段は、
前記液性設定手段により設定された性質の試料の1回目の分注では、前記サンプル分注プローブ内に所定量の空気を吸引した後に、ダミー用及び測定用の試料を吸引し、
前記液性設定手段により設定された性質の試料のn回目(2以上の整数)の分注では、前記サンプル分注プローブ内に前記空気及び前記ダミー用試料を残した状態で、測定用の試料を吸引することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試料は、前記検査項目の標準試料、又は被検体から採取された被検体試料、又は前記検査項目の管理を行うための管理試料であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−19744(P2010−19744A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181724(P2008−181724)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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