説明

自動取引装置及び新規店舗登録方法

【課題】新店舗開設時において、ATM10が保持する金融機関名ファイル50に当店情報が未登録であっても、振込先選択画面に自店情報を表示できるようにする。
【解決手段】金融機関名ファイル50内の金融機関業態テーブル51の所定のレコードを当店情報エリアとして当店情報が記憶されるように構成し、当店情報が金融機関業態テーブル51に未登録のときには、ホストコンピュータ2に当店情報の要求を行ってこれを受信し、当店情報エリアに登録するように構成したので、営業店5の統廃合等によって新店舗が開設されたときに、自動取引装置10が保持する金融機関名ファイル50に当店情報が未登録であっても容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者の操作により振込取引が可能な現金自動預け払い機(以下「ATM」という。)等の自動取引装置と、それを用いた金融機関名ファイルにおける新規店舗登録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の各営業店には自動取引装置が設置されており、この自動取引装置を利用者が操作することによって、例えば、自行自店や自行内の他支店、或いは他行への振込が可能となっている。このような自動取引装置において、利用者が振込取引を行う場合には、取引選択画面において振込ボタンを押下して振込取引を選択し、次いで、振込開始画面において、振込入力方法の選択を行うことで振込取引が実行される。この振込入力方法には、利用者が振込先情報等を都度手入力する都度入力方法、振込カードの登録情報による振込カード入力方法、或いはICカードの登録情報によるICカード入力方法等がある。
【0003】
前記の都度入力方法において、例えば、その振込先が、利用者が使用している自動取引装置が設置されている営業店であった場合、即ち、振込先が同一営業店であった場合、先ず、振込先選択画面で振込先金融機関を指定し、次に営業店名選択画面で営業店名の頭文字入力し、頭文字で指定された営業店名群より該当する営業店名を選び出し、当該営業店名のボタンを押下することにより振込先の営業店を選択する方法が行われている。
【0004】
このような方法は、比較的取引件数の多い自行自店宛ての振込取引においては操作が煩雑であるという問題があるが、これを解決する方法として、特許文献1には、都度入力方法により、振込先が自動取引装置設置の営業店であった場合に、前記の振込先選択画面において、自動取引装置が設置された営業店の金融機関名、営業店名等を選択ボタンの1つとして表示し、これが押下された場合は、自店宛ての振込みであると判断する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−216912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の自行自店宛ての振込方法では、自動取引装置が保持する金融機関名ファイルから金融機関名や自店の営業店名等を読み出して、これを振込先選択画面に表示する方法であるため、営業店の統廃合等により新店舗が開設されたときには、自動取引装置が保持する金融機関名ファイルに当店情報が登録されていないことがあり、振込先選択画面へ自店の情報を表示できないという課題があった。
【0007】
更に、金融機関名ファイルは、部分的にデータを追加、変更することができない構成になっており、金融機関名ファイルの更新の際には、ファイル全体の再編成が必要となる。ファイルの再編成には一定の時間を要するため、自動取引装置において、営業店の統廃合等による新店舗の開設の都度、金融機関名ファイルの更新を行うことは運用上困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動取引装置は、利用者の操作によりホストコンピュータと通信して取引を行う自動取引装置であって、金融機関の業態ごとに複数の前記金融機関及びその営業店の情報を保持し、且つ前記自動取引装置が設置されている営業店に関する当店情報を登録するエリアが設けられている金融機関名ファイルと、前記金融機関名ファイル内に前記当店情報が登録済みであるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段において、前記当店情報が未登録と判断されたときには、前記ホストコンピュータに前記当店情報を要求して受信する当店情報要求受信手段と、前記当店情報を前記エリアに登録する登録手段とを備えている。
【0009】
本発明の新規店舗登録方法は、前記の自動取引装置を用いた新規店舗登録方法であって、前記金融機関名ファイル内に前記自動取引装置が設置されている前記営業店に関する当店情報が登録済みであるか否かを判断する判断処理と、前記判断処理において、前記当店情報が前記金融機関名ファイルに未登録と判断されたときには、前記ホストコンピュータに前記当店情報を要求して受信する当店情報要求受信処理と、前記当店情報を前記エリアに登録する登録処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動取引装置によれば、次の(1)〜(4)のような効果がある。
【0011】
(1) 金融機関名ファイル内のエリアに当店情報が記憶されるように構成したので、金融機関名ファイルの再編成を行わなくても、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0012】
(2) 金融機関名ファイル内のエリアに当店情報が記憶されるように構成したので、特別の変更データ用のファイルを作成することなく、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0013】
(3) 金融機関名ファイル内のエリアに当店情報が記憶されるように構成し、当店情報が金融機関名ファイルに未登録のときには、ホストコンピュータに当店情報の要求を行ってこれを受信し、エリアに登録するように構成したので、営業店の統廃合等によって新店舗が開設されたときに、自動取引装置が保持する金融機関名ファイルに当店情報が未登録であっても、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0014】
(4) 金融機関名ファイル内のエリアへの登録を行ったときには、同一の営業店に設置されている他の自動取引装置を検出して順次当店情報を送信し、他の自動取引装置の保持する金融機関名ファイル内のエリアに当店情報を登録するように構成したので、複数の他の自動取引装置ごとに登録作業を行う必要がなくなる。
【0015】
本発明の新規店舗登録方法によれば、次の(5)及び(6)のような効果がある。
【0016】
(5) 本発明の自動取引装置を用いて、当店情報が金融機関名ファイルに未登録のときには、ホストコンピュータに当店情報の要求を行ってこれを受信し、金融機関名ファイル内のエリアに登録するようにしたので、営業店の統廃合等によって新店舗が開設されたときに、金融機関名ファイルに当店情報が未登録であっても容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0017】
(6) 金融機関名ファイル内のエリアへの登録を行ったときには、同一の営業店に設置されている他の自動取引装置を検出して順次当店情報を送信し、他の自動取引装置の保持する金融機関名ファイル内のエリアに当店情報を登録するので、複数の他の自動取引装置ごとに登録作業を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例1における金融機関のオンラインシステムを示す概略の構成図である。
【図2】図2は図1中のATMを示す外観図である。
【図3】図3は図1中のATMを示す機能ブロック図である。
【図4】図4は図1中の金融機関名ファイルを示す構成図である。
【図5】図5は図2中の入力操作部に表示される取引選択画面を示す図である。
【図6】図6は図2中の入力操作部に表示される振込先選択画面を示す図である。
【図7】図7は図1中のATM間で通信される機種情報取得電文を示す構成図である。
【図8】図8は新店舗更新時の送信側ATMの動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は新店舗更新時の受信側ATMの動作を示すフローチャートである。
【図10】図10は図1中のATM間の送受信を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0020】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における金融機関のオンラインシステムを示す概略の構成図である。
【0021】
金融機関事務センタ1には、金融機関の勘定系の業務処理を司る勘定系ホストコンピュータ(以下単に「ホストコンピュータ」という。)2が設置されている。ここで勘定系業務とは、預金の入出金処理や為替等の勘定元帳の更新を伴う業務及びその関連業務をいう。ホストコンピュータ2には、通信制御装置3及び通信回線4を介して各営業店5に設置されている複数の自動取引装置(例えば、ATM)10(=10−1,10−2,・・・,10−N)や、図示しない窓口端末機等の各種端末機が接続されている。なお、本実施例1においては、金融機関の本店、支店、出張所及びコンビニエンスストアを含むATM10の設置されている振込取引可能な拠点を併せて営業店5という。
【0022】
ATM10等の端末機は、ローカルエリアネットワーク(以下「LAN」という。)6を介してゲートウエイ(以下「GW」という。)7に接続されている。GW7は、通信回線4を介して金融機関事務センタ1側の通信制御装置3に接続されている。
【0023】
ホストコンピュータ2は、振込取引等で参照される金融機関名ファイル2aを有しており、例えば、金融機関の合併や営業店5の統廃合等が発生した場合、都度更新されるようになっている。ATM10も、ホストコンピュータ2の金融機関名ファイル2aとは構成の異なる振込取引用の金融機関名ファイル50(=50−1,50−2,・・・,50−N)を複数のATM10ごとに有しており、金融機関の合併や営業店5の統廃合等が発生した場合、更新済みの金融機関名ファイル50のマスタファイルを再編成して作成し、これを各ATM10にインストールすることにより、ATM10の金融機関名ファイル50を更新するようになっている。
【0024】
この場合、ホストコンピュータ2は、金融機関名ファイル2aを都度更新するのに対し、ATM10における金融機関名ファイル50の更新は、作成から適用までに一定時間を必要とするため、例えば、2週間程度の遅延が発生する。更に、金融機関名ファイル50は、部分的な変更、追加ができない構造になっており、その更新にはファイル全体の再編成を行うので、例えば、約2週間の周期で更新を行うように運用されている。
【0025】
図2は、図1中のATMを示す外観図である。
本実施例1のATM10は、銀行の店舗、コンビニエンスストア等に設置され、利用者自身の操作により、現金の預入れ、現金の引出し、振込、残高照会、通帳記入等の取引を行うためのものである。
【0026】
ATM10には、操作のためのガイダンスを表示し、各種取引のための入力を行う入力操作部11が設けられている。その奥方向には、入出金取引等、現金を扱う取引で使用する紙幣入出金口12と硬貨入出金口13が設けられている。その上方には、通帳取扱口14及びキャッシュカード(以下単に「カード」という。)取扱口15が設けられている。
【0027】
ATM10の後面部の金庫扉16には、後面操作パネル17及び、ID(識別符号)登録キー18が設けられている。後面操作パネル17は、ATM10の管理者又は保守員(以下単に「管理者」という。)用の入力操作パネルであり、入力操作部11とほぼ同様の構成となっている。
【0028】
金融機関名ファイル50の更新作業は、ATM10の管理者が後面操作パネル17を操作しユーティリティプログラムを用いて行われる。
【0029】
図3は、図1中のATM10を示す機能ブロック図である。
ATM10は、中央処理装置及び主記憶装置からなる制御部31を有している。
【0030】
制御部31は、プログラム制御によりATM10全体を制御するものであり、金融機関名ファイル50を検索してATM10が設置されている営業店5に関する当店情報が金融機関名ファイル50に登録済みであるか否かを判断する判断手段31aと、この判断手段31aにおいて、当店情報が未登録と判断されたときには、ホストコンピュータ2に当店情報を要求して受信する当店情報要求受信手段31bと、当店情報を金融機関名ファイル50のエリア(例えば、当店情報エリア)に登録する登録手段31cとを有している。
【0031】
更に、制御部31は、営業店5に設置されている1又は複数の他のATM10を検出する検出手段31dと、この検出手段31dにより検出された他のATM10に対し、当店情報を送信する当店情報送信手段31eとを有している。
【0032】
この制御部31には、ハードディスクドライブ(以下「HDD」という。)32等の不揮発性の補助記憶装置、及びLAN6を介してGW7又はLAN6に接続されている他のATM10との通信を制御する通信制御部33が接続されている。HDD32には、金融機関名ファイル50が格納されている。
【0033】
制御部31により制御される入力操作部11は、文字や図形等で構成される操作画面を表示する液晶表示装置による画面表示部(以下「LCD画面表示部」という。)34と、LCD画面表示部34上に設けられた情報入力のためのタッチパネル入力部35とを有している。
【0034】
更に、制御部31により制御される近接センサ36、通帳記帳機37、カーリーダライタ38、紙幣入出金機39、硬貨入出金機40、レシートプリンタ41、ジャーナルプリンタ42、及び筐体コントローラ43が設けられている。
【0035】
近接センサ36は、ATM10への人の接近を検知するセンサである。通帳記帳機37は、通帳の記帳処理を行うものである。カードリーダライタ38は、カードの内容の読み取り書き込みを行うものである。紙幣入出金機39は、紙幣の真贋を鑑別し、計数し、入出金処理を行うものである。硬貨入出金機40は、硬貨の真贋を鑑別し、計数し、入出金処理を行うものである。
【0036】
レシートプリンタ41は、取引明細票としてのレシートを発行する機能を有する。このレシートは、引出し、預入れ、通帳記帳、残高照会、振込等の利用者の行った取引に関する情報が印刷される紙片であり、例えば、口座番号、取引種別、取引金額等が印刷される。
【0037】
ジャーナルプリンタ42は、レシートプリンタ41とほぼ同様の内容が印刷され、取引の事実を証拠として記録する機能を有している。
【0038】
図4は、図1中の金融機関名ファイル50を示す構成図である。
金融機関名ファイル50は、HDD32内に格納されており、区分51a、表示データ51b及び金融機関テーブルのポインタ51cの項目から構成される金融機関業態テーブル51を有している。
【0039】
金融機関業態テーブル51の各レコードは、各業態に1対1に対応しており、区分51aは業態を示す3桁のコードで、例えば、001は普通銀行を示し、002は地方銀行を示している。表示データ51bは、振込先選択画面に表示するための業態の名称を文字で表したものである。金融機関テーブルのポインタ51cは、HDD32内における複数の金融機関ファイル52(=52−1,52−2,・・・,52−N)の格納場所を示している。
【0040】
金融機関業態テーブル51の先頭レコードは、当該ATM10が設置されている金融機関の営業店5の情報である当店情報が格納されている当店情報エリアである。図4の例では、区分51aには900が割り当てられ、表示データ51bには、当該金融機関名と営業店5の名称が格納されている。当店情報エリアの金融機関テーブルのポインタ51cは、金融機関名ファイル50内において予め定められた図示しない別のエリアの場所を指しており、このエリアには、当店情報のうちの店番、住所、電話番号等の詳細情報が格納されるようになっている。
【0041】
金融機関業態テーブル51の各レコードは、普通銀行、地方銀行、信用金庫等の金融機関の業態を示しているが、この各業態に対応して金融機関名ファイル50内には、複数の金融機関名テーブル52(=52−1,52−2,・・・,952−N)が設けられている。金融機関名テーブル52は、金融機関コード52a、金融機関名52b、及び金融機関営業店名ファイルのポインタ52cの項目から構成されている。
【0042】
金融機関コード52aは、4桁の数字で、全国銀行協会内の金融機関共同コード管理委員会により業態別に番号帯が割り当てられている。例えば、都市銀行(=普通銀行)は0001〜0032、地方銀行は0116〜0199、信託銀行は0287〜0395、長期信用銀行は0396〜0399、第二地方銀行は0501〜0599、信用金庫は1001〜1999のように割り当てられている。
【0043】
金融機関名52bは、金融機関の名称を文字で表したものである。金融機関営業店テーブルのポインタ52cは、当該金融機関の営業店5の情報を記憶した複数の営業店名テーブル53(=53−1,53−2,・・・53−N)のHDD32内の格納場所を示している。
【0044】
営業店名テーブル53は、店番53a、営業店名53b、及び住所、電話番号等53cの項目から構成されている。
【0045】
店番53aは、3桁の数字で当該金融機関の営業店5を識別するためのコードである。営業店名53bは、営業店5の名称を文字で表している。住所、電話番号等53cは、当該営業店5の住所、電話番号、その他の情報である。
【0046】
図5は、図3中の入力操作部11上に取引開始前に表示される取引選択画面を示す図である。
【0047】
初期状態においては、ATM10の入力操作部11には、図5に示す取引選択画面が表示されている。この取引選択画面では、利用者が取引を選択するための複数の取引選択ボタン61(=61a,61b,・・・,61f)が表示されている。複数の取引選択ボタン61には、例えば、現金の引出しを行うための引出しボタン61a、口座の残高総会を行うための残高照会ボタン61b、現金の預入れを行うための預入れボタン61c、振込を行うための振込ボタン61d、通帳に未記帳データを印字するための通帳記入ボタン61e、振替取引のための振替ボタン61f等がある。利用者が例えば、振込ボタン61dを押下すると振込取引が選択される。
【0048】
図6は、図3中の入力操作部11上表示される振込先選択画面を示す図である。
図6に示す振込先選択画面は、振込取引の過程において入力操作部11上に表示されるガイダンス画面であり、振込先を利用者が選択するための画面である。画面上には、頻繁に選択される銀行名、例えば、○○銀行62b、××銀行62c、△△銀行62dが振込先選択ボタン62として表示されている。
【0049】
更に、振込先選択画面には、普通銀行62e、地方銀行62f、第2地方銀行62g等の金融機関の業態(種類)を示す振込先選択ボタン62が設けられている。通常、利用者は、振込先の金融機関名が振込先選択画面に表示されていないときには、振込先の金融機関がどの業態に属するかを判断して、業態を示す振込先選択ボタン62を選択して押下する。
【0050】
画面の右上部には、当該ATM10が設置されている営業店5の金融機関名及び営業店名を表示した振込先選択ボタン(以下「当店ボタン」という。)62aが設けられている。利用者は、この当店ボタン62を用いて、自店宛て振込を行うように構成されている。当店ボタン62aの更に右上部には、取引を取り消すための取引ボタン63が設けられている。画面の右下部には、振込先選択画面の次の画面へ進むための次の画面ボタン64が設けられている。
【0051】
図7(a)、(b)は、図2中のATM10間で通信される機種情報取得電文を示す構成図である。
【0052】
LAN6を介して相互に接続されるATM10等の端末機は、所定のフォーマットを有する電文を所定のプロトコルにより送受信することにより、相互に通信を行うように構成されている。
【0053】
図7(a)は、機種情報取得要求電文の場合の例で、機種情報取得要求電文に含まれる項目「宛先」には、宛先IPアドレスがセットされ、項目「問合せコード」には、機種問合せがセットされる。ここでIPアドレスとは、インターネットにおいて使用されているIPアドレスの概念を本実施例1におけるLAN6のプロトコルに転用したもので、送受信する機器を判別するための番号である。
【0054】
本実施例1におけるIPアドレスは、0〜255の数字をドットで区切って表示され(ドット付10進表記)、aaa.bbb.ccc.dddのように表される。aaa.bbb.cccは、ネットワーク部でネットワークを識別するために用いられる。本実施例1では、同一店舗のLAN6は同一のネットワークアドレスになる。dddは、ホスト部でホストアドレスを表す。本実施例1では、同一店舗内の機器を識別するために用いられる。
【0055】
図7(b)は、機種情報取得応答電文の場合の例で、機種情報取得応答電文に含まれる項目「応答元」には応答IPアドレスがセットされ、項目「機種種別」には、ATM10を示す情報であるATMがセットされる。
【0056】
(自店宛て振込の方法)
利用者により、図5に示す取引選択画面上の振込ボタン61dが押下されると、振込取引が選択され、入力操作部11には、図示しない振込取引の開始画面が表示される。この開始画面を用いて、利用者は、振込方法を選択する。振込方法には、利用者により振込先情報等を入力する都度入力方法、振込カードの登録情報による振込カード入力方法、或いはICカードの登録情報によるICカード入力方法等がある。本実施例1では、都度入力方法が選択されたとする。
【0057】
都度入力方法が選択されると、図6に示す振込先選択画面が入力操作部11に表示される。振込先選択画面は、振込先を利用者が選択するための画面である。既に述べたように、画面上には、頻繁に選択される金融機関の振込選択ボタン62b〜62dが設けられており、更に、普通銀行62e、地方銀行62f、第2地方銀行62g等の金融機関の業態を示す振込先選択ボタン62が設けられている。
【0058】
画面の右上部には、当該ATM10が設置されている営業店5の金融機関名及び営業店名を表示した当店ボタン62aが設けられている。利用者は、この当店ボタン62を用いて、簡便に自店宛て振込を行う。
【0059】
ここで、当店ボタン62a、即ちABC銀行EF支店のボタンが押下された場合には、その金融機関名と営業店名が入力されたものとし、ATM10は、次のステップ、即ち科目・口座番号入力を促し、それ以降の振込取引入力を継続して行う。
【0060】
(新規店舗登録方法)
前述した自店宛て振込方法では、ATM10が保持する金融機関名ファイル50から金融機関名や自店の営業店名等の当店情報を読み出して、これを振込先選択画面に表示する方法である。このため、営業店5の統廃合等により新店舗が開設されたときに、ATM10が保持する金融機関名ファイル50に当店情報が登録されていない場合には、振込先選択画面へ自店の情報を表示できないという課題があった。これを解決する方法を以下に説明する。
【0061】
新店舗が開設される場合、工場出荷時又は当該新規店舗にATM10が設置されたときに、その時点で最新版である金融機関名ファイル50がATM10にインストールされる。ここでは、当該新規店舗にATM10が設置されたときに、金融機関名ファイル50をインストールするケースを想定する。この場合には、次のようにインストールが行われる。即ち、管理者がATM10の金庫扉16のID登録キー18を右に回すことにより、後面操作パネル17が有効となる。
【0062】
管理者は、後面操作パネル17から金融機関名ファイル50をインストールするユーティリティを呼び出し、金融機関名ファイル50が格納された記録媒体をATM10の図示しない読み取り部にセットして、インストール用ユーティリティを起動する。このような操作により、金融機関名ファイル50がATM10のHDD32内に格納される。この操作は、ATM10の工場出荷時に行ってもよい。
【0063】
図8は、新店舗名更新時の送信側のATM10−1の動作を示すフローチャートである。
【0064】
図8のステップS1において、前述した金融機関名ファイル50のインストールに続いて、管理者は、同一営業店5内の特定のATM10−1の後面操作パネル17を用い、当店情報登録ユーティリティを起動する。当店情報登録ユーティリティは、判断手段31a、当店情報要求受信手段31b、登録手段31c、検出手段31d、及び当店情報送信手段31eを有している。判断手段31aは、金融機関名ファイル50を検索して当店情報を探して当店情報の有無を判断する。
【0065】
ステップS2において、金融機関名ファイル50内に当店情報が未登録と判断されたときには、ステップS3に進み、当店情報要求手段31bは、ホストコンピュータ2に対して、当該金融機関の金融機関コード及び店番を送信して金融機関名、営業店名等の情報を要求する。ホストコンピュータ2から、金融機関コード52a、漢字の金融機関名52b、カナ金融機関名、店番53a、漢字の営業店名53b、営業店5の住所、電話番号等を受信する。
【0066】
ステップS4において、当店情報要求手段31bは、送信した金融機関コード及び店番と受信した金融機関コード及び店番とが一致するか否かをチェックする。不一致の場合には、エラーメッセージを後面操作パネル17に表示して処理を終了する。一致した場合には、ステップS5へ進む。
【0067】
ステップS5において、登録手段31cは、受信した金融機関名、営業店名を金融機関名ファイル50の当店情報エリアの表示データ51bに格納する。更に、金融機関テーブルのポインタ51cの項目の示す予め定められた図示しない別のエリアに、受信した当店情報のうちのカナ表記の営業店名、店番、住所、電話番号等の詳細情報を格納する。
【0068】
図1の例では、金融機関業態テーブル51の区分900のレコードに表示データ51bとして、ABC銀行EF支店が格納される。金融機関名ファイル50の当店情報エリアへの格納が終了すると、ステップS7へ進む。
【0069】
前述したステップS2において、金融機関名ファイル50内に当店データが登録されているときには、ステップS6へ進む。ステップS6において、登録手段31cは、検索した金融機関名、営業店名等の情報を金融機関名ファイル50の当店情報エリアに格納する。
【0070】
次に、同一店舗内の他のATM10−i(iは2≦i≦Nの整数)に対して新規店舗の登録を行う。
【0071】
ステップS7において、ATM10−1の検出手段31dは、同一店舗内の機器に対し、順次機種情報取得要求電文を送信して機種情報取得応答電文を受信し、その機種種別がATMであることを確認する。ステップS8において、ATMであることが確認されたATM10−iに対して当店情報送信手段31eは、新店舗追加テータを送信する。機種情報取得要求電文を送信した相手がATMでなかったときには、図7(b)に示す機種情報取得応答電文の機種種別がATM以外の機種で返送されるので、検出手段31dは、次の機器へ機種情報取得要求を送信する。
【0072】
ステップS9において、同一店舗内のすべてのATMiに対して新店舗追加データが送信さたか否かが確認され、送信されていないときには、ステップS8へ戻り、更に次の機器への送信を行う。同一店舗内のすべての機器への送信が完了したときには処理を終了する。
【0073】
ここで、LAN6に接続されている同一店舗内の機器への機種情報取得要求電文の送信は、次のように行われる。図7の機種情報取得電文の構成例で述べた通り、IPアドレスは、aaa.bbb.ccc.dddのように表記され、このうちddd(0≦ddd≦255)が同一店舗内の機器の番号を表す。従って、このdddを順次0〜255まで変化させて機種別情報取得要求電文を送信することで同一店舗内のすべての機器に対し送信することが可能となる。
【0074】
図9は、新店舗名更新時の受信側のATM10−iの動作を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS11において、ATM10−iは、新規店舗の登録の完了したATM10−1から機種情報取得要求電文を受信し、これに対し、機種情報取得応答電文を返送する。続いて、ATM10−1から新店舗追加データを受信する。
【0076】
ステップS12において、当店情報登録ユーティリティは、受信した金融機関名、営業店名等の情報を金融機関名ファイル50の当店情報エリアに格納して処理を終了する。
【0077】
図10は、図2のATM10間の送受信を示すタイムチャートである。
図8及び図9で説明した新店舗名更新時の送信側ATM10−1と受信側ATM10−iとの間の送受信を図10のタイムチャート用いて説明する。
【0078】
フェーズP1において、新規店舗の登録が完了した送信側のATM10−1は、機種情報取得要求電文を送信する。この機種情報取得要求電文には、図7に示すように、宛先の機種番号を示す宛先IPアドレス(ddd)、及びこの電文が機種問合せであることを示す問合せコードが含まれている。
【0079】
フェーズP2において、ATM10−1は、受信側のATM10−iから機種情報取得応答電文を受信する。この機種情報取得応答電文には、応答したATM10−iの機種番号を示す応答IPアドレス(ddd)、及び応答した機種がATMであることを示す機種種別が含まれている。
【0080】
フェーズP3において、ATM10−1は、受信した機種情報取得応答電文を確認してATM10−iからの応答であれば、ATM10−iに対して新店舗追加テータを送信する。ATM10−1から新店舗追加データを受信したATM10−iは、既に述べた通り、受信した金融機関名、営業店名等の情報を金融機関名ファイル50の当店情報エリアに格納し、フェーズP4において、受信応答をATM10−1に返送する。
【0081】
フェーズP5において、ATM10−1は、次の機器に機種情報取得要求電文を送信する。フェーズP6において、ATM10−1は、機種情報取得応答電文を受信する。この機種情報取得応答電文には、応答した機器の機種番号を示すIPアドレス(ddd)、及び応答した機種がATM以外であることを示す機種種別が含まれている。この場合は、フェーズP1に戻り、次の機器へ機種情報取得要求を送信して同一営業店内のすべての機器確認が完了するまでフェーズP1〜P6を繰り返す。
【0082】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(4)のような効果がある。
【0083】
(1) 金融機関名ファイル50内の金融機関業態テーブル51の所定のレコードに当店情報エリアを設け、当店情報が記憶されるように構成したので、金融機関名ファイル50の再編成を行わなくても、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0084】
(2) 金融機関名ファイル50内の金融機関業態テーブル51の所定のレコードに当店情報エリアを設け、当店情報が記憶されるように構成したので、特別に変更データ用のファイルを作成することなく、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0085】
(3) 金融機関名ファイル50内の金融機関業態テーブル51の所定のレコードを当店情報エリアとして当店情報が記憶されるように構成し、当店情報が金融機関業態テーブル51の所定のレコードに未登録のときには、ホストコンピュータ2に当店情報の要求を行ってこれを受信し、当店情報エリアに当店情報を登録するように構成したので、営業店5の統廃合等によって新店舗が開設されたときに、自動取引装置10が保持する金融機関名ファイル50に当店情報が未登録であっても、容易に振込先選択画面に当店情報を表示することができる。
【0086】
(4) 当店情報エリアの更新を行ったときには、同一の営業店5に設置されている他の自動取引装置10−iを検出して順次当店情報を送信し、他の自動取引装置10−iの保持する金融機関名ファイル50内の金融機関業態テーブル51の当店情報エリアに当店情報を登録するように構成したので、複数の他の自動取引装置10−iごとに登録作業を行う必要がなくなる。
【0087】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の、(a)〜(c)のようなものがある。
【0088】
(a) 自動取引装置は、金融機関の店舗、コンビニエンスストア等に設置されるATM10のみに限定されない。顧客による操作で取引を行う装置で、例えば、振込専用機のように振込取引が可能なものであれば、広く適用ができる。
【0089】
(b) 実施例1においては、当店情報が金融機関業態テーブル51に未登録のときには、ホストコンピュータ2に当店情報の要求を行うことで説明したが、管理者により、ATM10の後面操作パネル17からユーティリティを起動して当店情報を入力してもよい。
【0090】
(c) 実施例1では、金融機関名ファイル50をHDD32にインストールし、金融機関業態テーブル51の表示データ51bを振込先選択画面に表示することで説明したが、ATM10の電源投入時等の初期設定時に、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに設けたエリアに、表示データ51bに基づいて振込先選択画面用の表示データを作成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 ATM
11 入力操作部
17 後面操作パネル
31 制御部
31a 判断手段
31b 当店情報要求手段
31c 登録手段
31d 検出手段
31e 当店情報送信手段
32 HDD
50 金融機関名ファイル
51 金融機関業態テーブル
52 金融機関名テーブル
53 営業店名テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の操作によりホストコンピュータと通信して取引を行う自動取引装置であって、
金融機関の業態ごとに複数の前記金融機関及びその営業店の情報を保持し、且つ前記自動取引装置が設置されている営業店に関する当店情報を登録するエリアが設けられている金融機関名ファイルと、
前記金融機関名ファイル内に前記当店情報が登録済みであるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段において、前記当店情報が未登録と判断されたときには、前記ホストコンピュータに前記当店情報を要求して受信する当店情報要求受信手段と、
前記当店情報を前記エリアに登録する登録手段と、
を備えたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記金融機関名ファイルは、
前記業態の名称と、前記各業態別の前記金融機関の情報を記憶する金融機関テーブルの格納場所を示すポインタと、を有する複数のレコードから構成される金融機関業態テーブルを備えており、前記エリアは、前記金融機関業態テーブル内の所定のレコードに設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動取引装置は、更に、
前記営業店に設置されている1又は複数の他の前記自動取引装置を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記他の自動取引装置に対し、前記当店情報を送信する当店情報送信手段と、
を備えたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動取引装置を用いた新規店舗登録方法であって、
前記金融機関名ファイル内に前記自動取引装置が設置されている前記営業店に関する当店情報が登録済みであるか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理において、前記当店情報が前記金融機関名ファイルに未登録と判断されたときには、前記ホストコンピュータに前記当店情報を要求して受信する当店情報要求受信処理と、
前記当店情報を前記エリアに登録する登録処理と、
を実行することを特徴とする新規店舗登録方法。
【請求項5】
請求項4記載の新規店舗登録方法は、更に、
前記営業店に設置されている1又は複数の他の前記自動取引装置を検出する検出処理と、
前記検出処理により検出された前記他の自動取引装置に対し、前記当店情報を送信する当店情報送信処理と、
を実行すること特徴とする新規店舗登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−243086(P2011−243086A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116032(P2010−116032)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)株式会社OKIソフトウェア (173)
【Fターム(参考)】