説明

自動取引装置

【課題】全てのセンサおよびモータが正常に動作しているか否かを短時間で確認するための手段を提供する。
【解決手段】各部所で駆動源として用いられる複数のモータと、各部所に設けられる複数のセンサとを備えた紙幣処理機において、センサ電圧閾値と、モータ電圧閾値、モータの立ち上り時間閾値を記憶する記憶手段を有し、センサおよびモータの動作確認を行う指示が入力された際に、各センサのセンサ電圧値を取得し、センサ電圧値とセンサ電圧閾値とを比較することで、センサ毎に動作が正常か否かを判断し、各モータのモータ電圧値と立ち上り時間とを取得し、モータ電圧値とモータ電圧閾値とを比較すると共に、立ち上り時間と立ち上り時間閾値とを比較することで、モータ毎に動作が正常か否かを判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機等の自動取引装置の保守点検機能に関し、特に一回の操作によって全てのセンサおよびモータの動作が正常か否かの確認を一括して行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣処理機は、紙幣投入口に投入された紙幣を1枚ずつ分離して鑑別部で真偽、金種、正損等の鑑別を行うと共に真券と鑑別された紙幣を計数し、真券と鑑別した紙幣を金種別に一時集積部に一時集積し、100枚集積された紙幣を移送機構により紙幣束施封機構に運んで、紙幣束施封機構で紙幣を紙帯と呼ばれるテープで結束して排出口から係員に排出している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−197509号公報(段落「0038」−段落「0045」、第1図) 一般的に上述した紙幣処理機は、係員により各部に備えられているセンサおよびモータの動作を確認する点検作業が行われる際、センサの点検では全てのセンサに対して発光電流を流すことで取得するセンサ電圧値をもとに各センサが正常に動作しているか否かを判断し、またモータの点検では対象となるモータを回転させて、そのモータの立ち上り時間が遅い、あるいはモータの速度が安定しない等の場合にモータの動作が正常ではないと判断している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、センサの動作の確認とモータの動作の確認を別々に行わなくてはならなく、またモータの点検を行うときはモータを個別に点検するためにその都度点検のための入力操作を行う必要があるため、全てのモータを点検するためには非常に手間がかかると共に時間もかかってしまうという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、現金の搬送、繰出しおよび取込を行う各部所で駆動源として用いられる複数のモータと、前記各部所に設けられて現金を検知する複数のセンサとを備えた自動取引装置において、前記センサ毎のセンサ電圧閾値と、前記モータ毎のモータ電圧閾値、モータの立ち上り時間閾値を記憶する記憶手段を有し、前記センサおよびモータの動作確認を行う指示が入力された際に、各センサのセンサ電圧値を取得し、該センサ電圧値と前記センサ電圧閾値とを比較することで、センサ毎に動作が正常か否かを判断し、各モータのモータ電圧値と立ち上り時間とを取得し、該モータ電圧値と前記モータ電圧閾値とを比較すると共に、前記立ち上り時間と前記立ち上り時間閾値とを比較することで、モータ毎に動作が正常か否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
これにより、本発明は、センサとモータの動作確認の指示が入力された際に、全てのセンサおよびモータが正常に動作しているか否かの確認を一括して行うことができるので、係員にとって手間が軽減し、さらに全てのセンサとモータ動作確認に掛かる時間を短縮することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、図面を参照して本発明による自動取引装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は実施例1の自動取引装置としての紙幣処理機の構造を示す説明図である。
図1において、1は紙幣取込部であり、紙幣処理機正面に設けた紙幣投入口を有し、その紙幣投入口に投入された紙幣を取り込む機能を有する。
2は表示入力部であり、紙幣処理機正面の接客面に露出させて設けられており、CRTディスプレイまたは液晶ディスプレイ等の表示部と、その表示部上に配置したタッチパネルの入力部により構成され、表示部にオペレータへの操作を誘導する画面や入力キーを表示し、タッチパネルから入力キーを押下することで入力キーに定義された情報を入力できるようになっている。
【0008】
3は搬送部であり、紙幣取込部1の紙幣投入口に投入された紙幣を紙幣処理機内部の各部へ搬送する機能を有する。
4は鑑別部であり、搬送部3によって搬送された紙幣の金種や正損、真偽等を鑑別する機能を有する。
5はリジェクト集積部であり、鑑別部4で金種不明と鑑別された紙幣等のリジェクト紙幣を集積するようになっており、集積されたリジェクト紙幣は外部から取り出し可能に構成されている。
【0009】
6は集積機構であり、縦に1列に並べた5つの一時集積部6aを備えており、鑑別部4で正常であると鑑別されて搬送部3によって搬送された紙幣を一時集積部6aに集積する機能を有する。
各一時集積部6aは、金種ごとに紙幣を定められた枚数(例えば、100枚)分集積できるようになっている。
【0010】
7は紙幣束施封機構であり、100枚に集積した紙幣束に紙帯と呼ばれるテープで施封する機能を有する他、施封した紙幣束を図示しない紙幣束排出口へ搬送して排出する機能を有する。
8はハンド部であり、集積機構6と紙幣束施封機構7との間を往復移動するように構成され、一時集積部6aで100枚集積した紙幣束を一括して受け取ってその紙幣束を紙幣束施封機構7まで運んで受け渡す機能を有している。
【0011】
10はオープンポケットであり、鑑別部4で金種が鑑別された紙幣の内、施封対象外の金種の紙幣を集積して係員に排出するための排出口となり、紙幣処理機上部に2箇所設けられている。
上述した構成の紙幣処理機で売上金精査のために紙幣の計数処理を行う場合、係員による表示入力部2での紙幣計数処理のための入力操作が行われ、紙幣投入口に紙幣が投入されると、その紙幣は搬送部3によって鑑別部4に搬送される。
【0012】
そして鑑別部4は、搬送された紙幣の真偽、金種、正損等の鑑別を行い、真券と鑑別された紙幣は搬送部3によって一時集積部6aあるいはオープンポケット10に搬送される。
このとき鑑別部4で真券と鑑別した紙幣の金額を認識して、合計額を計数していくものとする。
【0013】
ここで、一時集積部6aに集積される紙幣は搬送部3の途中に設けた図示しない紙幣反転部によって表裏を反転させることで、紙幣の表裏をそろえた状態で一時集積部6aに集積するようにしている。
なお、真券と鑑別されなかった紙幣はリジェクト紙幣として搬送部3によってリジェクト集積部5に集積される。
【0014】
一時集積部6aに搬送されて集積された紙幣は図示しないカウンタによって集積枚数を計数し、100枚集積していることを計数したときにハンド部8によって100枚の紙幣束を取り出して紙幣束施封機構7へ移動させて受け渡す。
紙幣束施封機構7は、受け渡された紙幣束を施封して図示しない紙幣束排出口へ搬送して係員に排出する。
【0015】
そして、紙幣束が排出された後、表示入力部2は紙幣束を排出した旨の画面や計数した真券の合計金額等を配した計数結果画面を表示する。
図2は紙幣処理機を示す回路ブロック図である。
図2において、15は主制御部であり、主記憶部16に格納された制御プログラムに従って紙幣処理機の各部の動作を統括制御する。
【0016】
主制御部15は、副制御部17と下位制御部20と接続しており、副制御部17を介して表示入力部2への画面表示や係員からの入力内容を受付け、下位制御部20を介して紙幣処理機の各部に設けたセンサおよびモータの動作指示を行うようにしている。
16は主記憶部であり、制御プログラムを格納する他、センサの発光電圧レベルや受光電圧レベルを判定するためのセンサ判定情報、モータの立ち上り時間やモータ負荷電圧レベルを判定するためのモータ判定情報を格納しており、さらに主制御部15による処理結果等を記憶する。
【0017】
また主記憶部16は、センサの各種電圧レベル等に対応し、予め設定されたセンサの動作に異常が起こる可能性を考慮した早急な処置の有無等を判定するためのセンサに関する処置ランクのテーブルを格納している。
なお、センサに限らず、モータについても同様であり、その場合はモータのモータ負荷電圧レベルと立ち上り時間等に対応して、予め設定されたモータに関する処置ランクのテーブルを格納している。
【0018】
17は副制御部であり、主制御部15と接続して、副記憶部18が格納する表示入力部2を制御するためのプログラムに従って係員により表示入力部2で入力された内容を主制御部15へ伝える他、主制御部15から受付けた情報に従う内容を表示入力部2に表示させ、表示入力部2の動作を制御する。
18は副記憶部であり、表示入力部2を制御するためのプログラムや紙幣の計数処理を行うための操作画面、紙幣処理機の保守点検を行うための操作画面等を格納する他、副制御部17が主制御部15から受信した情報を記憶するための記憶エリアを有している。
【0019】
20は下位制御部であり、主制御部15と接続し、下位記憶部21に格納されたモータ制御やセンサ制御のためのプログラムに従って搬送部3、集積機構6、紙幣束施封機構7、ハンド部8に設けられる受光素子と発光素子とを備えた光学センサ(単にセンサという。)や分離搬送モータ(単にモータという。)の制御や動作確認を行う。
下位記憶部21は、モータ制御やセンサ制御のためのプログラムや、制御するセンサおよびモータの設置場所等を特定する識別番号を格納する他、センサの発光電流確認を行う際に必要な受光電圧値、センサの受光電圧確認を行う際に必要な発光電流値や、分離搬送モータの判定立ち上り時間とモータ電流確認に必要な駆動電流値等を格納する他、下位制御部20による処理結果を記憶する。
【0020】
また、下位記憶部21はセンサの発光電流確認で得られる発光確認電圧値の閾値(発光電圧閾値という。)と、センサの受光電圧確認で得られる受光確認電圧値の閾値(受光電圧閾値という。)、モータ電流確認で得られるモータの電流からのモータ電圧値のモータ電圧閾値を格納している。
なお、本実施例において下位制御部20が4つ設けられており、各下位制御部20で搬送部3、鑑別部4、集積機構6、紙幣束施封機構7、ハンド部8に備えられたセンサおよびモータの動作を分担して制御しているものとする。
【0021】
また上記主記憶部16には、紙幣処理機の各部に設けたセンサとモータごとに通電した通電時間を記憶しておく他、紙幣処理機の清掃実施の履歴を記憶しておくための記憶エリアを確保している。
通電時間は、主制御部15が下位制御部20へセンサおよびモータの動作を指示してから、動作の終了を指示するまでの時間を測定することで取得する。
【0022】
上述した構成の作用について図3に示す紙幣処理機の自己診断テスト処理を示すフローチャートを用いてSで示すステップに従って説明する。
ここで、図4は保守機能初期画面を示す説明図、図5は自己診断テスト確認画面を示す説明図である。
なお、本実施例において、複数ある下位制御部20は全て同様に処理を行うため、以下のフローチャートでは1つの下位制御部20が行う処理で説明する。
【0023】
S1、係員が表示入力部2によって紙幣処理機の保守点検のための操作を行うと、副制御部17は図4に示すアクチュエータテスト、センサ調整テスト、自己診断テスト等の入力キーを配した保守機能初期画面を表示入力部2に表示する。
自己診断テストは、各センサおよび各モータについて正常に動作するかのエラー判定を行うと共に、後述するセンサ診断情報とモータ診断情報とを取得するための処理であり、一括コマンドに集約されて1回の操作で全てのセンサおよびモータについての情報が取得可能となっている。
【0024】
係員は表示された保守機能初期画面の自己診断テストの入力キーを押下する。
S2、副制御部17は、自己診断テストの入力キーが押下された認識すると、図5に示す自己診断テストを実行するための「実行」キーと保守機能初期画面に戻るための「戻る」キーを配した自己診断テスト確認画面を表示入力部2に表示する。
係員は表示された自己診断テスト確認画面の「実行」キーを押下する。
【0025】
S3、副制御部17は、自己診断テストを実行する旨を主制御部15に通知する。
S4、自己診断テストを実行する旨の通知を受けた主制御部15は、全ての下位制御部20に対してセンサ確認指示を伝える。
S5、下位制御部20は、下位記憶部21から受光電圧値と発光電流値とを読み出し、まずセンサに発光電流を流すことで発光した光から得られる受光電流をアナログ電圧に変換し、さらにAD変換機能によって電圧値を認識し、その電圧値が読み出した受光電圧値以下となるまで発光電流を段階的に上げていき、受光電圧値以下となったときの発光電流の電圧値(発光確認電圧値という。)を認識し、その発光確認電圧値を下位記憶部21に記憶する。
【0026】
S6、下位制御部20は、次に上記ステップS5で読み出した発光電流値に従ってセンサに電流を流し、そのときにセンサの受光電流の電圧値(受光確認電圧値)を認識して下位記憶部21に記憶する。
S7、下位制御部20は、下位記憶部21に記憶している発光確認電圧値と受光確認電圧値、格納している発光電圧閾値と受光電圧閾値を読み出し、発光確認電圧値と発光電圧閾値とを比較すると共に、受光確認電圧値と受光電圧閾値とを比較してセンサについてエラーの有無を判定し、そのエラー有無の結果としてセンサ判定結果を下位記憶部21に記憶する。
【0027】
センサについてのエラー有無の判定は、具体的に発光確認電圧値が発光電圧閾値以下で有るか否かを判断すると共に、受光確認電圧値が受光電圧閾値未満であるか否かを判断して、発光確認電圧値が発光電圧閾値以下で、かつ受光確認電圧値が受光電圧閾値未満の場合にはエラー無しと判定し、発光確認電圧値が発光電流閾値を超えている、あるいは受光確認電圧値が受光電圧閾値以上のときにエラー有りと判定する。
【0028】
S8、下位制御部20は、下位記憶部21からエラー有無の判定を行ったセンサの識別番号を読み出すと共に、記憶したセンサ判定結果と発光確認電圧値、受光確認電圧値を読み出し、読み出したセンサの識別番号、判定結果、発光確認電圧値、受光確認電圧値を付加したセンサ確認情報を主制御部15に送信する。
S9、主制御部15は、受信したセンサ確認情報の識別番号、センサ判定結果、発光確認電圧値、受光確認電圧値を主記憶部16に記憶し、モータ確認指示を下位制御部20に伝える。
【0029】
S10、下位制御部20は、分離搬送モータを動作させてから一定速度に達するまでのモータの立ち上り時間をタイマー機能によって測定し、その立ち上り時間を下位記憶部21に記憶し、続いて下位記憶部21から駆動電流値を読み出してその駆動電流値でモータを駆動したときのモータに流れる電流の電圧値を認識し、そのモータ電圧値を下位記憶部21に記憶する。
【0030】
S11、下位制御部20は、下位記憶部21に記憶した立ち上り時間とモータ電圧値、格納した判定立ち上り時間とモータ電圧閾値を読み出し、立ち上り時間と判定立ち上り時間とを比較すると共に、モータ電圧値とモータ電圧閾値とを比較することで、モータ動作におけるエラーの有無を判定し、そのモータ判定結果を記憶する。
モータ動作におけるエラー有無の判定は、具体的に立ち上り時間が判定立ち上り時間以下であるか否かを判断すると共に、モータ電圧値がモータ電圧閾値未満であるか否かを判断し、立ち上り時間が判定立ち上り時間以下で、かつモータ電圧値がモータ電圧閾値未満のときにエラー無しと判定し、立ち上り時間が判定立ち上り時間を超えている、あるいはモータ電圧値がモータ電圧閾値以上のときにエラー有りと判定する。
【0031】
S12、下位制御部20は、下位記憶部21からエラー有無の判定を行ったモータの識別番号を読み出すと共に、記憶した判定結果と立ち上り時間、モータ電圧値を読み出し、モータの識別番号、モータ判定結果、立ち上り時間、モータ電圧値を付加したモータ確認情報を主制御部15に送信する。
S13、主制御部15は、受信したモータ確認情報の識別番号、モータ判定結果、立ち上り時間、モータ電圧値を主記憶部16に記憶しておき、主記憶部16に記憶したセンサの識別番号、センサ判定結果、発光確認電圧値、受光確認電圧値およびモータの識別番号、モータ判定結果、立ち上り時間、モータ電圧値を読み出し、それらを用いて各センサおよび各モータについての良否判定および処置判定を行ってセンサ診断情報とモータ診断情報を構成する。
【0032】
ここで、図6はセンサにおける自己診断テストの結果を示す説明図である。
図6に示すように、センサの自己診断テストの結果を示すセンサ診断情報はセンサが設けられている「部位」、センサを特定する「識別番号」、上記のセンサ判定結果と発光確認電圧値、受光確認電圧値等から定める「良否判定No」、その良否判定Noに基づいた処置を示す「処置No」、処置実施の有無を示す「処置実施」等の項目で構成される。
【0033】
主制御部15は、「識別番号」の項目には読み出した識別番号を用い、また「部位」の項目は読み出した識別番号から認識したセンサの設置場所を用いて決定する。
良否判定Noは、図6に示すように処置ランクと発光電圧レベル、受光電圧レベル、寿命・消耗レベル、ハードウェア異常レベル、エラーコードによって構成される。
処置ランクは発光電圧レベル、受光電圧レベル、寿命・消耗レベル、ハードウェア異常レベル、エラーコードから総合的に決定されるものであるため、その説明は後述する。
【0034】
「発光電圧レベル」は、発光確認電圧値に応じて、予め定められた17段階(00〜16)のレベルを当てはめて決定され、発光確認電圧値が小さく発光素子が最も正常な状態に近いときには低いレベルを付与するようにし、発光確認電圧がエラー等で取得できなかった場合は「00」を付与する。
「受光電圧レベル」は、受光確認電圧値に応じて、予め定められた6段階(00〜05)のレベルを当てはめて決定され、受光確認電圧値が大きく受光素子が最も正常な状態に近いときに低いレベルを付与するようにし、受光確認電圧がエラー等で取得できなかった場合は「00」を付与する。
【0035】
「寿命、消耗レベル」は、5段階(01〜05)に分類して定めており、読み出した発光確認電圧値と受光確認電圧値の他、主記憶部16に記憶しているセンサごとの「通電時間」、紙幣処理機の「清掃実施の履歴」等から総合的に判断して決定している。
「ハードウェア異常レベル」は、5段階(01〜05)に分類して定めており、主記憶部16から読み出されたセンサ判定結果、発光確認電圧値、受光確認電圧値とから決定している。
【0036】
「エラーコード」は、発光確認電圧値が発光電流閾値を超えていた、または受光確認電圧値が受光電圧閾値未満であった場合にいずれか、あるいは両方同時に起こった場合にそれぞれの場合に応じたコードが付与されるようになっており、エラー無の場合は「0000」となる。
「処置ランク」は、主記憶部16に格納している処置ランクのテーブルを用いて定めるようにしており、5段階(01〜05)のランクに分類されている。
【0037】
処置ランク5は処置要(故障レベル)とし、エラー有で、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」とにより故障と認識した場合に付与される。
処置ランク4は処置要(休止レベル)とし、エラー無しだが、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」とから当該センサにエラーが発生しやすい状況である場合に付与される。
【0038】
処置ランク3は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」、「発光電圧レベル」、「受光電圧レベル」とから、エラーとして顕在化はしないがセンサが汚れている等のアラーム的な不具合が予想される場合に付与される。
処置ランク2は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常レベル」、「寿命、消耗レベル」が低く、「発光電圧レベル」と「受光電圧レベル」とから、トータル的に運用上問題ない場合に付与される。
【0039】
処置ランク1は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常」、「寿命、消耗」の判定レベルは「01」であり、「発光電圧レベル」と「受光電圧レベル」とから、トータル的に運用上問題なく、ほぼ劣化していない状況に有る場合に付与される。
上記のようにして定められた処置ランクと発光電圧レベル、受光電圧レベル、寿命・消耗レベル、ハードウェア異常レベル、エラーコードとによって良否判定Noが決定する。
【0040】
続いて、センサの処置判定に基づく「処置No」を決定していく。
処置Noは上記で定めた良否判定Noに対応したものを決定していくようにしており、例えば「センサの汚れ」が想定される場合は、「清掃」のNoを付与し、「センサの故障」の可能性が高い場合は「交換」のNoを付与する。
次に、モータについての自己診断テストの結果を示すモータ診断情報の構成を示す。
【0041】
ここで、図7はモータにおける自己診断テストの結果を示す説明図である。
図7に示すように、モータの自己診断テストの結果を示す文字列はモータが設けられている「部位」、モータを特定する「識別番号」、上記のモータ判定結果と立ち上り時間、モータ電圧値等から定める「良否判定No」、その良否判定Noに基づいた処置を示す「処置No」、処置実施の有無を示す「処置実施」等の項目で構成される。
【0042】
良否判定Noは、図7に示すように処置ランクとモータ負荷電圧レベル、モータ立ち上りレベル、寿命・消耗レベル、ハードウェア異常レベル、エラーコードによって構成されるものである。
「モータ負荷電圧レベル」は、モータ電圧値に応じて、予め定められた17段階(00〜16)のレベルを当てはめて決定され、モータ電圧値が大きくモータの動作が最も正常な状態に近いときに低いレベルを付与するようにし、モータ電圧値がエラー等で取得できなかった場合は「00」を付与する。
【0043】
「モータ立ち上りレベル」は、立ち上り時間に応じて、予め定められた6段階(00〜05)のレベルを当てはめて決定され、立ち上り時間が早いときに低いレベルを付与するようにし、立ち上り時間がエラー等で取得できなかった場合は「00」を付与する。
「寿命・消耗レベル」は、5段階(01〜05)に分類して定めており、読み出したモータ電圧値と立ち上り時間の他、主記憶部16に記憶しているモータごとの「通電時間」、紙幣処理機の「清掃実施の履歴」等から総合的に判断して決定している。
【0044】
「ハードウェア異常レベル」は、5段階(01〜05)に分類して定めており、主記憶部16から読み出されたモータ判定結果、モータ電圧値、立ち上り時間とから決定している。
「エラーコード」は、立ち上り時間が判定立ち上り時間を超えている、あるいはモータ電圧値がモータ電圧閾値以上の場合、あるいはその両方が起こった場合に、それぞれの場合に応じたエラーコードが付与されるようになっており、エラー無の場合は「0000」となる。
【0045】
「処置ランク」は、上記センサの処置ランクと同様で主記憶部16に格納している処置ランクのテーブルを用いて定めるようにしており、5段階(01〜05)のランクに分類されている。
処置ランク5は処置要(故障レベル)とし、エラー有で、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」とにより故障していると認識した場合に付与される。
【0046】
処置ランク4は処置要(休止レベル)とし、エラー無しだが、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」とから故障ではないが、当該モータにエラーが発生しやすい状況である場合に付与される。
処置ランク3は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常レベル」と「寿命、消耗レベル」、「モータ負荷電圧レベル」、「モータ立ち上りレベル」とから、エラーとして顕在化はしないがアラーム的な不具合が予想される場合に付与される。
【0047】
処置ランク2は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常レベル」、「寿命、消耗レベル」が低く、「モータ負荷電圧レベル」と「モータ立ち上りレベル」とから、トータル的に運用上問題ない場合に付与される。
処置ランク1は処置不要(正常レベル)とし、エラー無しで、「ハードウェア異常」、「寿命、消耗」の判定レベルは「01」であり、「モータ負荷電圧レベル」と「モータ立ち上りレベル」から、トータル的に運用上問題なく、ほぼ劣化していない状況に有る場合に付与される。
【0048】
続いて、「処置No」は上記で定めた良否判定Noに対応したものが付与されるようになっており、良否判定Noから特にモータに異常が無い場合は「00−00」を付与する。
なお、下位制御部20は、制御している全てのセンサとモータそれぞれの自己診断テストを行っている最中に、センサまたはモータにエラー有を認識した場合でも自己診断テストは中断せず、全てのセンサ診断情報とモータ診断情報を取得するまで処理を継続する。
【0049】
そして、主制御部15は、上述したように構成したセンサ診断情報とモータ診断情報を副制御部17に受け渡す。
ここで、図8は全てのセンサ診断情報とモータ診断情報との一覧を示すテスト結果画面例であり、(a)は一覧の第1頁を示す画面例、(b)は第1頁に表示しきれなかった分を次頁に表示した一覧を示す画面例である。
【0050】
図9は条件表示画面を示す説明図である。
S14、副制御部17は、表示入力部2に図8(a)に示す各センサ診断情報と各モータ診断情報の一覧と、画面に表示しきれなかった分を次頁に表示するための「次へ」キー、一覧を特定の条件に従って抽出するための「条件表示」キー等を配したテスト結果画面を表示し、自己診断テスト処理を終了する。
【0051】
なお、係員がテスト結果画面の「次へ」キーを押下した場合、副制御部17は表示入力部2に図8(b)に示す自己診断テストの結果一覧の次頁を表示する。
また、係員がテスト結果画面の「条件表示」キーを押下した場合、副制御部17は図9に示す一覧から特定の処置ランクのものを抽出するための処置ランク入力欄やその入力欄に数字を入力するためのテンキー、「エラー発生」有りを抽出するためのチェック項目、「処置No」有りを抽出するためのチェック項目等を配した条件表示画面を表示入力部2に表示する。
【0052】
ここで、図10は特定の条件で抽出を行った場合のテスト結果画面例であり、(a)は処置ランクが4以上のセンサ診断情報とモータ診断情報とを表示した画面、(b)は処置ランクが5のセンサ診断情報とモータ診断情報とを表示した画面である。
係員によって条件表示画面のテンキーで処置ランク入力欄に4が入力された場合、主制御部15は図10(a)に示すようにテスト結果画面に処置ランクが4以上であるセンサ診断情報とモータ診断情報を抽出して表示し、また入力欄に5が入力された場合は図10(b)に示すようにテスト結果画面に処置ランクが5であるセンサ診断情報とモータ診断情報を抽出して表示する。
【0053】
以上説明したように、本実施例においては、自己診断テストを実行するときに主制御部から複数の下位制御部に自己診断テストを行わせるための通知を送信することで、各下位制御部が制御するセンサおよびモータに対して一括して自己診断テストを行い、それぞれのセンサやモータが正常に動作するか否かを確認できるので、自己診断テストを短時間で済ませることができる。
【0054】
また、自己診断テスト中にセンサまたはモータにエラーが有っても自己診断テストは継続して行うようにしたので、一回の操作で自己診断テストを済ませることができる。
さらに、表示入力部にセンサおよびモータ毎の良否判定Noとそれに対応する処置Noとを表示した一覧を表示するので、係員はその処置Noに従うことでセンサやモータに対する適切な処置をとることができる。
【0055】
加えて、テスト結果画面の条件表示から処置ランクの指定や、エラー発生の有りを指定、処置No有りを指定することによって表示された自己診断テストの結果一覧から指定された条件に該当するセンサ診断情報とモータ診断情報を表示するようにしたので、係員にとって処置が必要なセンサとモータを容易に特定することができ、保守作業を効率よく行うことができる。
【0056】
なお、上述した実施例においては、紙幣処理装置を用いて説明したが、紙幣処理装置の代わりに自動取引装置としての硬貨処理装置や現金取扱装置を用いるようにしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の紙幣処理機の構造を示す説明図
【図2】紙幣処理機を示す回路ブロック図
【図3】紙幣処理機の自己診断テスト処理を示すフローチャート
【図4】保守機能初期画面を示す説明図
【図5】自己診断テスト確認画面を示す説明図
【図6】センサにおける自己診断テストの結果を示す説明図
【図7】モータにおける自己診断テストの結果を示す説明図
【図8】全てのセンサ診断情報とモータ診断情報との一覧を示すテスト結果画面例
【図9】条件表示画面を示す説明図
【図10】特定の条件で抽出を行った場合のテスト結果画面例
【符号の説明】
【0058】
1 紙幣取込部
2 表示入力部
3 搬送部
4 鑑別部
5 リジェクト集積部
6 集積機構
6a 一時集積部
7 紙幣束施封機構
8 ハンド部
10 オープンポケット
15 主制御部
16 主記憶部
17 副制御部
18 副記憶部
20 下位制御部
21 下位記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金の搬送、繰出しおよび取込を行う各部所で駆動源として用いられる複数のモータと、前記各部所に設けられて現金を検知する複数のセンサとを備えた自動取引装置において、
前記センサ毎のセンサ電圧閾値と、前記モータ毎のモータ電圧閾値、モータの立ち上り時間閾値を記憶する記憶手段を有し、
前記センサおよびモータの動作確認を行う指示が入力された際に、各センサのセンサ電圧値を取得し、該センサ電圧値と前記センサ電圧閾値とを比較することで、センサ毎に動作が正常か否かを判断し、
各モータのモータ電圧値と立ち上り時間とを取得し、該モータ電圧値と前記モータ電圧閾値とを比較すると共に、前記立ち上り時間と前記立ち上り時間閾値とを比較することで、モータ毎に動作が正常か否かを判断することを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動取引装置において、
予め設定した複数の前記センサ電圧値に対してセンサ毎に施す処置をランクとして関連づけたテーブルと、複数の前記モータ電圧値と立ち上り時間とに対してモータ毎に施す処置をランクとして関連づけたテーブルとを記憶手段に記憶し、
前記取得したセンサ電圧値に対応するセンサのランクを取得して、前記取得したモータ電圧値と立ち上り時間とに対応するモータのランクを取得することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動取引装置において、
表示部を備え、
前記センサ毎の前記正常か否かの判断結果、前記センサ電圧値、前記取得したランクで構成したセンサ情報と、
前記モータ毎の前記正常か否かの判断結果、前記モータ電圧値、前記立ち上り時間、前記取得したランクで構成したモータ情報との一覧を前記表示部に表示することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動取引装置において、
前記一覧を表示し、前記判断結果に従う正常の有無、電圧値、ランクの少なくとも1つが条件として入力されたときに、その条件に該当するセンサ情報およびモータ情報を前記一覧から抽出して前記表示部に表示することを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−158900(P2008−158900A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348519(P2006−348519)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】