説明

自動取引装置

【課題】利用者に不快感を与えたたり取り忘れ媒体が他人に渡るリスクを増加させたりすることなく、取り忘れ発生を防止できる自動取引装置を提供する。
【解決手段】利用者との間で媒体を用いて取引する自動取引装置であって、複数の種類の媒体を排出する媒体排出部と、媒体排出部の内部に残留している媒体である残留媒体を検出する残留媒体検出部と、利用者から残留媒体の受取操作の開始または終了を検出する受取操作検出部と、残留媒体が媒体排出部に残留している時間を計時する取忘れ監視タイマと、受取操作検出部が受取操作の開始を検出した後、受取操作の終了を検出した場合であって、残留媒体検出部が残留媒体を検出した場合、取忘れ監視タイマが計時する時間の長さを変更する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数枚の紙幣や硬貨、包装硬貨(棒金)等の媒体を利用者に受け渡す自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動預金支払機(ATM)や両替機等の自動取引装置において、カードや現金等の媒体の取り忘れを防止するために、媒体の抜取り待ち開始から一定時間経過しても媒体が残っている場合、警告音声を発することが自動取引装置では一般的に行われている。
【0003】
しかし、放出された複数の媒体のうち一部を取り忘れるケースにおいては、利用者は必要な媒体はすべて抜き取ったと思い込んでいる場合が多く、警告音声が発せられる前に自動取引装置の前から立ち去ってしまうことが、しばしば発生する。
【0004】
そのような利用者に対する対策として、利用者が自動取引装置から一定距離以上離れたとセンサで検知したにもかかわらず、媒体の残留を検知した場合は、警告音声発する技術(特許文献1参照)や、利用者による媒体の受取操作を検出したにもかかわらず前記媒体の残留を検出した場合に、即座に媒体の一部取り忘れと判断し警告音声を発する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、取り忘れた媒体が別の利用者に渡ってしまう事を防ぐため、通常、媒体の抜取り待ちには一定時間のタイムアウト時間が設けられているが、別の利用者に媒体が渡る可能性を少なくするために、抜取り待ちのタイムアウト時間を短くすると、利用者が一部の抜き取った媒体の処置(例えば財布などに収納)に手間取っている間に、タイムアウトが発生してしまうなどの問題がある。
【0006】
そのような場合の対策としては、カードや現金等の種類の違う複数媒体を同時に抜取り待ちをする場合は、いずれかの媒体が抜き取られるたびに、抜取りタイムアウト時間を再設定する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−35124号公報
【特許文献2】特開2004−54371号公報
【特許文献3】特開2006−18673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、利用者が自動取引装置から離れた場合に警告音声発する技術(特許文献1参照)では警告音声発のタイミングが遅すぎるという問題があり、一方、受取操作を検出したにもかかわらず媒体残留を検出した場合に即座に警告音声発する技術(特許文献2参照)では、利用者が一部の抜き取った媒体の処置に手間取っているだけの場合、利用者に対し非常に不快感を与えるという問題がある。
【0009】
特に、大量の硬貨が出金された場合や、両替機において複数の包装硬貨(棒金)を受け取る場合においては、大量の媒体を一度に抜き取れないため、取り忘れでなくても、一部の媒体が抜き取られないままの状態になることは、普通に発生する。
【0010】
さらに、媒体の一部が、媒体の放出口内で利用者から見えづらい位置に配置されたため、媒体の一部取り忘れが発生すケースもよく発生するが、この場合、通常の取り忘れに対する警告音声を発するだけでは、利用者が見えづらい位置に残った媒体に気付き難く、結局、取り忘れタイムアウトになってしまうという問題もある。
【0011】
このケースに対する対策としてタイムアウト時間を延ばそうとした場合、従来技術では、カードや現金等の種類の違う複数の媒体で同時に抜取り待ちをする場合のタイムアウト時間を再設定する技術(特許文献3参照)しかなく、このような、1種類の媒体の内の一部が見えづらい位置に配置された事が原因による、取り忘れの発生は防止できない。
【0012】
また、1種類の媒体の受取作業に時間がかかる場合がある事を想定し、単純にタイムアウト時間を長めに設定する方法もあるが、その場合、利用者が立ち去ってしまってもなかなか取り忘れタイムアウトとならず、取り忘れ媒体が他人に渡るリスクが増加するという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、1箇所の媒体の受渡し口から、複数の媒体(紙幣や硬貨、包装硬貨など)を、まとめて利用者に受け渡す場合において、取り忘れ媒体が他人に渡るリスクを増加させずに取り忘れの発生を防止し、かつ、利用者に不快感を与えない自動取引処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的を達成するために、本発明は、利用者との間で媒体を用いて取引する自動取引装置であって、複数の種類の前記媒体を排出する媒体排出部と、前記媒体排出部の内部に残留している媒体である残留媒体を検出する残留媒体検出部と、前記利用者から前記残留媒体の受取操作の開始または終了を検出する受取操作検出部と、前記残留媒体が前記媒体排出部に残留している時間を計時する取忘れ監視タイマと、前記受取操作検出部が前記受取操作の開始を検出した後、前記受取操作の終了を検出した場合であって、前記残留媒体検出部が前記残留媒体を検出した場合、前記取忘れ監視タイマが計時する時間の長さを変更する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上述のような構成としたので、抜取り操作をする毎にその都度取り忘れタイムアウト時間が延長が可能となるので、1種類の媒体の受取作業に時間がかかる事が想定される場合においても、単純にタイムアウト時間を長めに設定する必要が無く、利用者が立ち去ってしまったあと取り忘れ媒体が他人に渡ってしまうリスクを増加させずに、媒体の受取作業に手間取ったための媒体の一部取り忘れを発生を防ぐことが可能である。
【0016】
また、前記自動取引装置は、前記利用者に対して前記残留媒体を取り忘れている旨の警告を報知する報知部をさらに備え、前記制御部は、前記受取操作検出部が前記受取操作の開始を検出した後、前記受取操作の終了を検出した場合において、前記残留媒体検出部が前記残留媒体を検出した場合、前記利用者が前記残留媒体の一部を取り残したと判断し、前記報知部から前記利用者に対して前記警告報知させる。
【0017】
また、前記自動取引装置は、前記利用者が前記残留媒体の一部を取り残したと判断された場合であって、前記受取操作検出部が前記利用者により再び前記受取操作の開始を検出してからの時間を計時する再受取操作開始待ちタイマをさらに備え、前記制御部は、前記再受取操作開始待ちタイマが計時する時間が、あらかじめ定められた時間よりも長い場合、前記報知部から利用者に対して前記警告を出力させる。
【0018】
上述のような構成としたので、例えば前記報知部としてスピーカを利用し音声を使用して利用者に警告を発する場合、受取操作後、利用者が一部の抜き取った媒体の処置に手間取っているだけの場合などに、利用者にとっては媒体が残留している事が分かっているにもかかわらず媒体排出口から手が離した直後に警告音声が出力され、利用者に対し不快感を与えるという問題が軽減される。
【0019】
また、前記自動取引装置は、前記受取操作検出部が前記利用者による前記受取操作の回数をカウントする受取操作カウンタと、前記受取操作カウンタがカウントするカウント値に対応付けて前記報知部から出力される前記警告を記憶する記憶部と、をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記カウント値に応じて、前記報知部から前記警告を出力させる。
【0020】
上述のような構成としたので、最初の媒体一部取り残し検出時は一部取り忘れ媒体がある事を伝える警告音声を出力し、再度媒体受取操作を検出しても残留媒体が残っているような場合は、媒体が見えづらい位置に残っている可能性があるので媒体排出口内をよく確認するように伝える警告音声を出力することで、媒体の一部が媒体の放出口内で利用者から見えづらい位置に配置されたため、媒体の一部取り残しが発生しているような状況でも、利用者に対し適切な注意喚起が促すことが可能となり、一部取り忘れの発生を抑制できる。
【0021】
また、前記自動取引装置は、前記記憶部は、さらに前記警告に対応付けて前記受取操作開始待ちタイマが計時する時間の長さを記憶し、前記制御部は、前記カウント値に応じて、前記報知部から出力させる前記警告と前記受取操作開始待ちタイマが計時する時間の長さとを変更する。
【0022】
上述のような構成としたので、最初の媒体一部取り残し検出時は、媒体受取操作完了検出後しばらくしてから一部取り忘れ警告音声を出力し、何度も一部取り残しが検出された後は、媒体受取操作完了検出後すぐに、媒体放出口内の見えづらい位置に媒体が残っていないかを伝える警告音声を出力することが可能となり、利用者に対する不快感を増加させずに、一部取り忘れの発生を抑制できる。
【0023】
また、前記自動取引装置は、前記記憶部は、さらに前記警告に対応付けて前記媒体排出部に排出された前記媒体の量を記憶し、前記制御部は、前記媒体排出部に排出された前記媒体の量と前記カウント値とに応じて、前記取忘れ監視タイマが計時する時間の長さと前記報知部から出力させる前記警告と前記待ち時間の長さとを変更する。
【0024】
上述のような構成としたので、硬貨や棒金などで、1回の受取操作では抜き取りきれないと考えられる媒体量を放出した場合、1回目の一部取り残し検出時は警告音声を出力せず、タイムアウト時間は長めに延長し、2回目の一部取り残し検出時は一定時間後に一部取り忘れの警告音声を出力し、3回目以降の一部取り残し検出時はすぐに取り忘れ警告音声を出力し、放出した媒体量がさらに多い場合は、受取操作カウンタ値の値が3回目以降の場合に取り忘れ警告音声を流すといった、きめ細かい警告音声の出力とタイムアウト時間の制御が可能となり、放出媒体量が多い場合においても、利用者に対する不快感を増加させずに、一部取り忘れの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、利用者に不快感を与えたたり取り忘れ媒体が他人に渡るリスクを増加させたりすることなく、取り忘れ発生を防止できる自動取引装置を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した自動取引装置の概観を示す斜視図である。
【図2】図1における自動取引装置の内部構成図である。
【図3】紙幣入出金機構の入出金口部分の側面図である。
【図4】第1の実施形態における媒体受渡し処理時のフローチャート(タイムアウトのみ延長の基本ケース)である。
【図5】媒体受渡しタイマ時間・警告テーブルの例を示す図である。
【図6】媒体受渡しタイマ時間・警告パターンテーブルの例を示す図である。
【図7】第2の実施形態における媒体受渡し処理時のフローチャート(操作回数・放出媒体量に応じた制御)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。なお、以下では、本発明にかかる自動取引装置をATM(Automated teller machine)に適用した場合について説明しているが、例えば、貨幣の両替機やメダル交換機等の媒体を取り扱う種々の装置に適用することが可能である。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施の形態における自動取引装置1の外観を示す斜視図である。図1に示すように、自動取引装置1の上部には、取引の内容を表示および入力する操作部7が設けられており、利用者のカードを処理するカード処理機構3と、明細票を印字して放出する明細票処理機構4と、案内や警告音声を出力するスピーカ8と、数字入力を行うキーパッド9を備えている。
【0028】
本体制御部2は自動取引装置全体の制御を司るものである。自動取引装置1の下部には紙幣を処理する紙幣入出金機構5と、硬貨を処理する硬貨入出金機構6を備えている。カード処理機構3は、自動取引に必要な利用者情報が記録されている磁気カードおよびICカードを、挿入、放出、回収、情報の読み書き、カード表面の画像取得を行う機能を備えている。また、明細票処理機構4は、取引や係員処理などで使用する明細票を、印字、放出、回収する機能を備えている。
【0029】
本体制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、不図示のメモリ等のハードウェアから構成され、不図示のメモリ等には、利用者と取引を行うための種々のプログラム、データ等のソフトウェアが記憶されている。本体制御部2は、後述する処理を行う場合、不図示のメモリ等から上述したプログラムを読み出して実行することにより、各種処理、取引を制御する。
【0030】
図2は、自動取引装置1の内部構成図である。図2に示すように、カード処理機構3、明細票処理機構4、スピーカ8、キーパッド9、紙幣入出金機構5、硬貨紙幣入出金機構6および操作部7は、本体制御部2と接続されており、本体制御部2からの制御の下に必要な動作を行う。本体制御部2は、上記の他に、外部記憶装置10とも接続されており、必要なデータのやりとりを行うほか、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)等の通信網(ネットワーク)および回線接続部11を介して、ホストコンピュータ12との間で、取引に必要なデータの送受信を行う。
【0031】
図3は、図1に示した自動取引装置1の内部の紙幣入出金機構5の入出金口部分の側面図である。この紙幣入出金機構5は、利用者との間で受渡しを行う紙幣103を格納する入出金紙幣保持部104と、利用者が紙幣103を出し入れする入出金口105を開閉するシャッタ106と、入出金紙幣保持部104内の紙幣103の残留を検出する残留媒体検出部102と、利用者が入出金口105から手を挿し入れたことを検出する受取操作検出部101とを備えている。
【0032】
残留媒体検出部102は、発光素子102aと受光素子102bで構成されており、紙幣103により光が遮断されることにより媒体の残留を検出する。また、受取操作検出部101は、発光素子101aと受光素子101bで構成されており、入出金紙幣保持部104の最も入出金口105よりに配置され、入出金口105への利用者の手の挿し入れにより光が遮断される事により受取操作を検出する。以下では、残留媒体検出部102が媒体の残留を検出した場合、または受取操作検出部101が受取操作を検出した場合をオン状態(またはオン信号を受けた状態)等とよび、残留媒体検出部102が媒体の残留を検出しない場合、または受取操作検出部101が受取操作を検出しない場合をオフ状態(またはオフ信号を受けた状態)等とよぶこととする。
【0033】
図3に示す例では、一組の発光素子と受光素子によって残留媒体検出部101と受取操作検出部102が構成されているが、紙幣103の残留や入出金口105への利用者の手の挿し入れが検出可能であれば、マイクロスイッチや静電容量センサ、超音波センサや赤外線センサなど、発光・受光素子以外で構成されていてもよい。
【0034】
次に、第1の実施形態における媒体受渡し動作について説明する。図4は、第1の実施形態における媒体受渡し動作を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローチャートでは、紙幣や硬貨など特定の媒体の種類に限定されない処理となっているが、以下では、受渡し媒体が紙幣であるものとして説明する。
【0035】
まず、本体制御部2は、紙幣入出金機構5のシャッタ106を開く(ステップS1001)。そして、本体制御部2は、シャッタ106が正常に開き、利用者が入出金口105から紙幣103を受け取ることができる状態となるまで待機し、その時点で、取り忘れ監視タイマ(不図示)をスタートさせる(ステップS1002)。取り忘れ監視タイマは、このステップS1002以降、タイムアップするまで時間を計時する。
【0036】
その後、本体制御部2は、残留媒体があるか否かを判定し(ステップS1003)、残留媒体がない、すなわち残留媒体検出部102がオフ状態であると判定した場合(ステップS1003;No)、さらに受取操作検出部101がオフ状態となっているか否かを判定する(ステップS1004)。
【0037】
そして、本体制御部2は、受取操作検出部101がオフ状態となっていると判定した場合(ステップS1004;Yes)、媒体の受取操作が終了したものとして、シャッタ106を閉じ(ステップS1005)、処理を終了させる(正常終了)。
【0038】
一方、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態となっていると判定した場合(ステップS1004;No)、受取操作中であるものとして、ステップS1003に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0039】
本体制御部2は、ステップS1003において、残留媒体検出部102がオン状態であると判定した場合(ステップS1003;Yes)、さらに、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となったか否かを判定する(ステップS1006)。
【0040】
そして、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となっていないと判定した場合(ステップS1006;No)、さらに取り忘れ監視タイマがタイムアップしたか否かを判定する(ステップS1007)。
【0041】
そして、本体制御部2は、取り忘れ監視タイマがタイムアップしたと判定した場合(ステップS1007;Yes)、シャッタ106を閉じ(ステップS1008)、処理を終了させる(媒体取り忘れ終了)。
【0042】
一方、本体制御部2は、取り忘れ監視タイマがタイムアップしていないと判定した場合(ステップS1007;No)、受取操作中であるものとして、ステップS1003に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0043】
ステップS1006において、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となったと判定した場合(ステップS1006;Yes)、受取操作が終了したものとして、取り忘れ監視タイマのタイムアップ時間を延長し(ステップS1009)、受取操作中であるものとして、ステップS1003に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0044】
このように、利用者との間で媒体を用いて取引する自動取引装置1において、入出金口105が複数の種類の貨幣を排出し、残留媒体検出部102が入出金口105の内部に残留している貨幣である残留貨幣を検出し、受取操作検出部101が利用者から残留貨幣の受取操作の開始または終了を検出し、取忘れ監視タイマが残留貨幣が入出金口105に残留している時間を計時し、本体制御部2が受取操作検出部101が受取操作の開始を検出した後、受取操作の終了を検出した場合であって、残留媒体検出部102が残留貨幣を検出した場合、取忘れ監視タイマが計時する時間の長さを変更するので、利用者に不快感を与えたたり取り忘れ媒体が他人に渡るリスクを増加させたりすることなく、取り忘れ発生を防止できる。
【0045】
具体的には、媒体受取動作が完了した時点で媒体が残留していた時に、取り忘れタイムアウトまでの時間を延長することで、1種類の媒体の受取作業に時間がかかる事が想定される場合においても、処理開始時のステップS1002で取り忘れ監視タイマが計時する時間を長めに設定する必要がなくなる。すなわち、利用者が媒体の受取作業に手間取った場合の一部の媒体の取り忘れの発生を防ぐことが可能となる。
【0046】
また、処理開始時のステップS1002で取り忘れ監視タイマ時間を、無用に長く設定する必要がなくなるため、利用者が媒体を取り残したまま立ち去るケースにおいて、取り忘れ媒体が他人に渡ってしまうリスクを抑えることができる。
【0047】
さらに、前記第1の実施形態では1種類の媒体を受け渡す場合の説明となっているが、同時に紙幣と硬貨、紙幣と棒金というように、複数の媒体を同時に受け渡す場合でも適用可能である。この場合は、いずれかの媒体放出口に対する受取操作の完了を検出した時点で、いずれかの媒体が残留していた場合に取り忘れ監視タイムアウト時間を延長することで、1種類の媒体を受け渡す場合と同様、取り忘れ発生を抑制しつつ取り忘れ媒体が他人に渡ってしまうリスクを抑えることができる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施形態における媒体受渡し動作について説明する。図5は、第2の実施形態における媒体受渡し動作を示すフローチャートである。
【0048】
第2の実施形態では、本体制御部2は、まず、図5に示す定義に従い媒体の受渡し処理中に使用するタイマ時間や警告音声のテーブルを決定する(ステップS1101)。
【0049】
図5では、放出した媒体量(例えば、媒体の枚数や本数)がどのような条件の場合に、どのようなタイマ時間と警告音声のパターンを使用するかが対応付けて定義されている。さらに、図5に示した各パターンで、実際に使用する具体的なタイマ時間の値や警告音声の内容は、図6に示すパターンとして、これらが対応付けて定義されている。
【0050】
例えば、放出媒体が棒金4本であった場合は、本体制御部2は、図5に示したNo2(媒体量中)が使用すべきタイマ時間・警告のパターンと判断する。そして、媒体受渡し処理中において、受取操作回数が3回目の場合には、本体制御部2は、図5に示したNo2のパターンに対応する図6に示すNo3(初回警告)のパターンのタイマ時間や警告音声を使用して利用者に対する警告等を行う。なお、図5、図6に示した各パターンは、上述した本体制御部2の内部のメモリ等の記憶媒体に、あらかじめ記憶されているものとする。
【0051】
本体制御部2は、使用するタイマ時間・警告音声のテーブルを決定すると(ステップS1101)、次にシャッタ106を開き(ステップS1102)、再受取操作開始待ちタイマ(不図示)と取り忘れ監視タイマに受取操作回数が初回用のタイマ値をセットする(ステップS1103、S1104)。これらのステップが終了すると、本体制御部2は、その時点で、これらのタイマをスタートさせ、第1の実施の形態の場合と同様に、タイムアップするまで時間を計時させる。
【0052】
そして、本体制御部2は、その後、残留媒体があるか否かを判定し(ステップS1105)、残留媒体がない、すなわち残留媒体検出部102がオフ状態であると判定した場合(ステップS1105;No)、さらに受取操作検出部101がオフ状態となっているか否かを判定する(ステップS1106)。
【0053】
そして、本体制御部2は、受取操作検出部101がオフ状態となっていると判定した場合(ステップS1106;Yes)、媒体の受取操作が終了したものとして、シャッタ106を閉じ(ステップS1107)、処理を終了させる(正常終了)。
【0054】
一方、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態となっていると判定した場合(ステップS1106;No)、受取操作中であるものとして、ステップS1105に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0055】
本体制御部2は、ステップS1105において、残留媒体検出部102がオン状態であると判定した場合(ステップS1105;Yes)、さらに、受取操作検出部101がオフ状態からオン状態となったか否かを判定する(ステップS1108)。
【0056】
そして、本体制御部2は、受取操作検出部101がオフ状態からオン状態となったか否かを判定し(ステップS1108)、受取操作検出部101がオフ状態からオン状態となったと判定した場合(ステップS1108;Yes)、受取操作を開始したものとして、再受取操作開始待ちタイマを停止させ(ステップS1112)、受取操作回数をカウントするためのカウンタ(不図示)をインクリメントし(ステップS1113)、ステップS1105に戻る。
【0057】
一方、本体制御部2は、受取操作検出部101がオフ状態からオン状態となっていないと判定した場合(ステップS1108;No)、さらに、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となったか否かを判定する(ステップS1109)。
【0058】
そして、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となったと判定した場合(ステップS1109;Yes)、受取操作が終了したものとして、取り忘れ監視タイマのタイムアップ時間を延長し(ステップS1114)、受取操作回数に応じた時間で再受取操作開始待ちタイマを設定するとともに計時を開始させ(ステップS1115)、受取操作中であるものとして、ステップS1105に戻る。
【0059】
例えば、放出媒体が棒金4本であり、受取操作回数が3回目の場合、図5に示したパターンでは、本体制御部2は、「No2」に対応する「3(初回警告)」を選択し、さらに、図6に示したパターンを参照し、その「3(初回警告)」に対応する再受取操作開始待ちタイマ時間「5秒」を設定し、計時を開始させる。
【0060】
一方、本体制御部2は、受取操作検出部101がオン状態からオフ状態となっていないと判定した場合(ステップS1109;No)、さらに取り忘れ監視タイマがタイムアップしたか否かを判定する(ステップS1110)。
【0061】
そして、本体制御部2は、取り忘れ監視タイマがタイムアップしたと判定した場合(ステップS1110;Yes)、シャッタ106を閉じ(ステップS1111)、処理を終了させる(媒体取り忘れ終了)。
【0062】
一方、本体制御部2は、取り忘れ監視タイマがタイムアップしていないと判定した場合(ステップS1110;No)、さらに再受取操作開始待ちタイマがタイムアップしたか否かを判定する(ステップS1116)。
【0063】
そして、本体制御部2は、再受取操作開始待ちタイマがタイムアップしたと判定した場合(ステップS1116;Yes)、受取操作回数に応じた内容でスピーカ8から警告音声を出力させ(ステップS1117)、ステップS1105に戻る。
【0064】
例えば、図6に示したパターンが「3(初回警告)」である場合には、その「3(初回警告)」に対応する警告音声「xxxが残っています。xxxをお受け取りください。」というメッセージを、音量「大」で出力させる。
【0065】
一方、本体制御部2は、再受取操作開始待ちタイマがタイムアップしていないと判定した場合(ステップS1116;No)、受取操作中であるものとして、ステップS1105に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0066】
このように、放出した媒体量と受取操作の回数に応じて、警告音声再生までの再生時間、警告音声内容を最適化することにより、適切なタイミングで適切な警告音声を出力することが可能となり、利用者に対し不快感を抱かせることなく、第1の実施形態における自動取引装置に比べ、取り忘れ防止効果をさらに高めることができる。
【0067】
また前記第2の実施形態では、図5に示したパターンを用いて、放出した媒体量に応じて使用するタイマ時間・警告音声のテーブルを決定しているが、図5に示したパターンを用いず、媒体放出量を元にプログラムで動的に使用するタイマ時間・警告音声のテーブルを作成する形態とすることも可能である。
【0068】
さらに前記第2の実施形態では、取り忘れ監視時間、警告音声再生までの再生時間、警告音声内容の3つを、図6に示すパターンを用いて変化させている。しかし、変化させる内容はこの3つに限定されるものではなく、図6に示したパターンに含まれているように、警告音声の音量や操作部7に表示する案内画面、あるいは、さらに媒体放出中であることを利用者に告げるフリッカランプの点滅間隔など、利用者への報知手段として自動取引装置に備えられている部分のすべての出力を変化させてもよいし、設置場所の制限などにより警告音声を鳴らすことが適切ではない自動取引装置であれば、取り忘れ監視時間だけ変化させるなど、変化させる内容を限定した形態としてもよい。
【0069】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…自動取引装置
2…本体制御部
3…カード処理機構
4…明細票処理機構
5…紙幣入出金機構
6…硬貨入出金機構
7…操作部(顧客および係員用入力兼表示部)
8…スピーカ
9…キーパッド
10…外部記録装置
11…回線接続部
12…ホストコンピュータ
101…残留媒体検出部
102…受取操作検出部
103…紙幣
104…入出金紙幣保持部104
105…入出金口
106…シャッタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者との間で媒体を用いて取引する自動取引装置であって、
複数の種類の前記媒体を排出する媒体排出部と、
前記媒体排出部の内部に残留している媒体である残留媒体を検出する残留媒体検出部と、
前記利用者から前記残留媒体の受取操作の開始または終了を検出する受取操作検出部と、
前記残留媒体が前記媒体排出部に残留している時間を計時する取忘れ監視タイマと、
前記受取操作検出部が前記受取操作の開始を検出した後、前記受取操作の終了を検出した場合であって、前記残留媒体検出部が前記残留媒体を検出した場合、前記取忘れ監視タイマが計時する時間の長さを変更する制御部と、
を備えることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記利用者に対して前記残留媒体を取り忘れている旨の警告を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記受取操作検出部が前記受取操作の開始を検出した後、前記受取操作の終了を検出した場合において、前記残留媒体検出部が前記残留媒体を検出した場合、前記利用者が前記残留媒体の一部を取り残したと判断し、前記報知部から前記利用者に対して前記警告報知させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記利用者が前記残留媒体の一部を取り残したと判断された場合であって、前記受取操作検出部が前記利用者により再び前記受取操作の開始を検出してからの時間を計時する再受取操作開始待ちタイマをさらに備え、
前記制御部は、前記再受取操作開始待ちタイマが計時する時間が、あらかじめ定められた時間よりも長い場合、前記報知部から利用者に対して前記警告を出力させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記受取操作検出部が前記利用者による前記受取操作の回数をカウントする受取操作カウンタと、
前記受取操作カウンタがカウントするカウント値に対応付けて前記報知部から出力される前記警告を記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記カウント値に応じて、前記報知部から前記警告を出力させる、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記記憶部は、さらに前記警告に対応付けて前記受取操作開始待ちタイマが計時する時間の長さを記憶し、
前記制御部は、前記カウント値に応じて、前記報知部から出力させる前記警告と前記受取操作開始待ちタイマが計時する時間の長さとを変更する、
ことを特徴とする請求項4に記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記記憶部は、さらに前記警告に対応付けて前記媒体排出部に排出された前記媒体の量を記憶し、
前記制御部は、前記媒体排出部に排出された前記媒体の量と前記カウント値とに応じて、前記取忘れ監視タイマが計時する時間の長さと前記報知部から出力させる前記警告と前記待ち時間の長さとを変更する、
ことを特徴とする請求項5に記載の自動取引装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−237868(P2011−237868A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106361(P2010−106361)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】