説明

自動式カラムパッキング方法

手動の相互作用を必要とすることなく自動的に担体粒子及び液体の分散物であるスラリーから担体床をカラム(3)内にパックするための方法であって、全て自動的に実行される以下のステップa)−f)を含んでなる、前記方法。
a)カラム(3)に一定の体積のスラリーを充填する。
b)予め規定された目標の床高さ又は予め規定された目標の床圧縮度までスラリーから担体床をパックする。
c)充填床の分離効率を試験する。
d)試験結果が許容できない場合自動的に床をアンパッキングするか又は試験結果が許容できない場合充填床の流れを状態調節し、c)に戻す。
e)試験結果に基づいてカラムに充填するべきスラリーの新しい体積を計算する。
f)a)から繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラムの担体パッキングシステム及びカラムで使用される担体パッキング方法に関する。より具体的には、本発明は、クロマトグラフィーのカラムにクロマトグラフィー担体をパッキングする際の質、容易さ及び一貫性を改良するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、通例、液体キャリアが通過する多孔質クロマトグラフィー担体の充填床を収容する管状体を備えており、分離は液体キャリアと多孔質担体の固体相との間の分配によって起こる。通例、担体は、カラムにポンプ送給、注入又は吸引された離散粒子の懸濁液(スラリーとして知られる)を圧密化することにより形成される充填床としてカラム内に収容される。スラリーを圧密化して堅固な充填床を実現するには、スラリーを圧縮して、重力の影響下で沈積させて堆積床を形成させたときの体積よりも小さな体積にパッキングする。その後のクロマトグラフ分離の効率は、1)充填床の流体の入口と出口における液体の分配及び収集系、2)充填床内の担体粒子の空間的配向(パッキング幾何学(packing geometry)ともいう)、並びに3)充填床の圧縮(度)に強く依存している。充填床の圧縮度が低すぎると、その床で行われるクロマトグラフ分離は「テーリング」を起こし、また一般に、かかる不充分に圧縮された床は不安定である。充填床の圧縮度が高すぎると、その床で行われるクロマトグラフ分離は「リーディング」を起こし、かかる過度に圧縮された床はスループットと結合容量に影響を及ぼすおそれがあり、また一般に、作動圧力が格段に高くなりかねない。圧縮度が最適であると、使用中に形成される分離ピークはリーディング又はテーリングが格段に小さくなり実質的に対称である。カラムに必要とされる圧縮の最適な度合は、各カラムの大きさ(幅又は直径)、床の高さ及び担体の種類に関して実験的に決定される。
【0003】
あらゆる分離プロセスに先立って、カラムと床を調製しなければならない。カラムにスラリーを充填する前に、カラム、カラムに出入りするホース及びカラムに接続されたバルブを始動させる(prime)必要があることが多い。これは、カラム及び系に接続されたホースから空気をパージして取り除くことを意味する。通常、系とカラムを通して液体を流して空気を取り除く。床支持体又はスプレーノズルを通る液体流によりカラムが充填された後、加圧して最後の残留空気をカラムから追い出すことができる。これを実現するには、閉鎖した出口に向かってカラムに液体をポンプで送り続けた後その出口を開放して圧力を解放するか又は可動のアダプターを下方に速く動かすことにより床支持体を介して、おそらくは少しずつ空気を追い出すことができる。始動(priming)後カラムの消毒が必要になることも多い。その後、カラムにスラリーを充填することができ、パッキング手順を実施する。床形成のプロセスは「パッキング手順」と呼ばれ、正確に充填床は、充填床の性能に影響する重大な要因である。パッキング手順の主要な目的の1つは、最適な量の圧縮、すなわち最適な圧縮率だけ圧縮された床を提供することである。最適に圧縮されたときユーザーにより定義されることが多い床の高さは標的の圧縮床高さといわれる。
【0004】
大規模なカラムは、規定又は既知の濃度の担体粒子を有する所定の体積のスラリーをカラム内に吸引又は注入することによって製造することができる。所定の体積のスラリーがカラムに送り込まれたら、例えば、カラムの縦軸に沿ってカラムの底に向けて、普通は一定の速度で可動アダプターを下降させ、液体と粒子の両方をカラムの底に向けて押し付けることによって圧密化し圧縮する必要がある。この手順中に過剰の液体はカラム出口から追い出されるが、担体粒子はこれらの担体粒子が通り抜けられないような小さい細孔を有するフィルター物質、いわゆる「床支持体」によって保持される。充填床が最適な圧縮度で圧縮されたらパッキングプロセスは終了である。こうして圧縮床で良好かつ頑強な(robust)クロマトグラフ性能が可能であればこのパッキングプロセスは成功と考えられる。本発明で使用することができる代わりのパッキング方法がある。例えば、アダプターを下方に動かす代わりに、流れを生じさせて、スラリー内の粒子をカラムの出口に向けて移動させることができる。さらなる代案は、スプレーノズルを使用して、充填床が実現されるまでスラリーを噴霧することである。これらの方法については以下でさらに説明する。しかしながら、かかるクロマトグラフィー担体の最適に圧縮された床を手動の手段でクロマトグラフィーのカラムにパックすることは、最終的な充填床の品質がオペレーターの技能に大いに依存するために、実際問題として達成するのが容易ではない。カラムの充填及びその後のパッキング中、オペレーターはバルブ位置、ポンプ速度、アダプターの移動速度、などのような全てのパッキングパラメーターを手動で選択し調節する。オペレーターは、どのくらいのスラリーをカラムに充填するべきか決定するためにスラリー濃度を測定する必要がある。スラリー濃度の測定が正確でない場合(スラリー濃度を正確に測定するのは難しいのでよくあることである)、カラムに充填されるスラリーの体積は最適ではなく、圧密化床は(測定されたスラリー濃度から計算されるように)予期されなかった床高さに沈積し、この結果標的の圧縮度を標的床高さで実現することができない。また、オペレーターはアダプターが床を圧縮し始める点も判断しなければならない。この点を使用して、所要量の圧縮度を得るためにさらにどのくらいアダプターを移動させなければならないかを計算する。パッキングパラメーターのいずれかの選択を誤ると、普通はカラムの作動が悪くなる。さらに、床の圧縮が現実に始まるときを目で判断するのは、透明な管を備えたカラムにおいては困難であることがあり、またステンレス鋼のような不透明な管を備えたカラムにおいては不可能であり、この時点で重大な誤りがあると最適に圧縮された床を得ることは不可能になる。
【0005】
また、ユーザーが誤った決定をすると担体とカラムを損傷する危険もある。
【0006】
担体床がカラムにパックされた後、その充填床が使用するのに十分な程良好であるかどうか判断するために、効率試験を実施することがある。これは、例えば、パルス試験、遷移試験(transitional test)又は圧力/流動特性試験であることができよう。この試験での結果が、充填床が許容できない品質のものであることを示す場合、その床をアンパッキングした後、許容できる充填床が得られるように再パックする必要がある。
【0007】
実行する必要があるこれらのステップは全てもちろん時間がかかる。時間と費用がかかる再パックを招くオペレーターの誤りは普通にある。
【0008】
従って、クロマトグラフィーのカラムにクロマトグラフィー担体を正確かつ再現性よくパックするためのシステムと方法に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/262021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術のシステムの欠点を克服するためにカラムに担体をパックするためのカラムパッキングシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これは、請求項1に記載の方法、請求項7記載のコンピュータープログラム製品及び請求項8記載の制御ユニットにより実現される。
【0012】
これにより、これらの全ステップは手動の相互作用を必要とすることなく自動的に行われる。パッキング、試験、場合によりアンパッキング及び再パッキングはいずれもこの自動プロセスに含まれるので、最終的に、行われる試験により許容できる充填床がユーザーによる相互作用なく提供される。
【0013】
適した実施形態は従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明の上記及びその他の利点は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することで、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る担体パッキングシステムの概念図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るパッキング方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の現在のところ好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。この好ましい実施形態の説明は代表例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
本明細書及び後記特許請求の範囲で使用する場合、用語「カラム」は、用語「容器」及び「セル」、並びにその他、混和物を充填床といわれる固体又は液体の交換担体と接触させることによりその混和物からの成分の分離及び/又は反応及び/又は触媒作用及び/又は抽出を行うために分離技術の熟練者により利用されるあらゆる構造体を包含するものである。
【0018】
用語「スラリー」は、担体粒子及び液体の分散物である。
【0019】
用語「流れの縦方向」とは、カラム内で入口から出口に向かう流れの方向をいう。「長手方向」又は「縦」は、一貫して、方向には関係なくセルを貫通する流体の主要な流路を指定するために使用される。
【0020】
用語「分配系」とは、流体をカラムに導入し、カラムの全断面積にわたって分散させるための構造体をいい、用語「収集系」とは、カラムから流体を収集するのに使用される構造体をいう。
【0021】
用語「堆積床高さ」とは、スラリー中の担体粒子を重力のみの影響下で堆積させた後に床が形成されたとき得られる担体粒子の床の高さをいい、かかる床を「堆積床」という。
【0022】
用語「圧密化床高さ」とは、1)カラムに液体をポンプで送ることにより、2)液体をカラムの外にポンプで排出することにより又は3)液体をカラムの外に押し出す可動アダプターの移動(例えば、下降)により、流体の流れを流れの縦方向でカラムに通したとき、スラリー中の担体粒子を堆積させながらカラム内に床が形成されたときに得られる担体粒子の床の高さをいい、かかる床を「圧密化床」という。
【0023】
用語「圧縮床高さ」とは、圧密化された又は堆積床が、例えば可動アダプターなどとの接触及びそのさらなる移動により又は床の圧密化中に使用された速度より速い速度で流体をカラムに通してポンプで送ることにより圧縮されたとき得られるカラム内の担体粒子の床の高さをいい、かかる床を「圧縮床」という。
【0024】
用語「圧縮率」は(堆積床高さ)/(圧縮床高さ)と定義され、用語「パック率」は(圧密化床高さ)/(圧縮床高さ)と定義される。以後、パック率を使用する場合、代わりに圧縮率を使用することができるものと理解されたい。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るカラムパッキングシステムの概略図である。このシステムは、円筒状のカラム壁7により囲まれた、上部の蓋又はフランジ5a及び下端プレート5bを含むカラム3を含んでいる。カラム3内の蓋又はフランジ5aと下端プレート5bとの間には可動アダプター9が配置されており、これは、入ってくる液体をカラム3の横断面全体にわたって実質的に一様に分配するための液体分配系(図には示してない)と、カラムの横断面全体にわたって広がり床粒子が通り抜けるのを阻止するのに十分なほど細かいメッシュを備えた床支持体(図には示してない)を備えていることができ、試料混合物、溶離液、緩衝液などのような液体を送り込む液体送達系14に接続可能なカラム入口11に接続されている。可動アダプター9は、電気、油圧若しくは空気式モーター又はピストン/シリンダーアクチュエーターのようなアクチュエーター(図には示してない)によりカラムの縦方向で可動である。
【0026】
スラリーは、カラムの底に配置されたノズル又はバルブ12を介してカラム3中に吸い込むことができる。ノズル又はバルブ12は、場合によりスラリータンクバルブ17を介してスラリータンク13に接続されている。可動アダプター9は、固定されたレベル、例えば下端プレート5bの上面に対する可動アダプターの位置(「x」)を決定するために位置決め手段(図には示してない)を備えており、距離xに対応する信号が制御ユニット15に送られる。制御ユニット15は、この例では液体送達系14に接続されており、これによりカラムに対するバルブの開閉を制御することができる。しかし、制御ユニット15は、代わりに液体送達系14に組み込むことができよう。制御ユニット15はさらに、アダプターアクチュエーター、スラリータンクバルブ17及びノズル又は担体バルブ12に接続されていて適切な手段によりこれらを制御する。また、制御ユニット15は、本発明の一実施形態では、好ましくはスラリータンクの出口付近のどこかに位置するインラインスラリー濃度測定装置18に接続することもできる。アクチュエーターの作動及び対応する可動アダプター9の上下方向の移動は制御ユニット15により制御可能である。制御ユニット15は好ましくはカラム3の作動を制御するためのハードウェアとソフトウェアを含んでいる。制御ユニット15は、例えばバルブ(すなわち、液体送達系とカラムの入口及び出口との間のバルブ、担体バルブ12、並びにスラリータンクバルブ17)の開閉及び可動アダプターの移動速度を制御する。
【0027】
図1には、カラムの1つの例が示されている。しかしながら、同様にパッキングプロセスを本発明に従って自動化することができる他のタイプのカラムもある。例えば、パッキングは必ずしもアダプターの下方への移動によって行う必要はない。本発明に従って自動化することができるパッキングプロセスの別の例は、アダプターが意図する最終的な充填床高さに配置されたカラムであり、このカラムはカラムの頂部のノズルを介して同時に充填及びパックされる。スラリーがカラム内に噴霧されるとき、過剰の液体は底の床支持体を通ってカラムから出て行く。スラリーの粒子は床支持体により保持され、床が底から作り上げられる。正確な量のスラリーがスラリータンクからカラムに送り込まれたら、パッキングポンプを閉め、ノズルを引っ込めることができる。このパッキングは、タンク内のスラリーの量を重量で測定することにより又はカラムの入口の流量計により自動化することができる。スプレーノズルを有するカラムの場合、その噴霧作用を利用して床を壊し、カラムをアンパッキングすることができる。最終的に、床を壊し、スラリーをカラムからポンプで排出することができる。
【0028】
別の可能な方法はこのパッキング方法を可動アダプターと組み合わせることである。カラムは上記のようにパックすることができるが、ここでは床を圧縮しない。代わりに、最後の圧縮にアダプターを用いる。
【0029】
図1に示したカラムはまた、上記とは別の方法でパックすることも可能である。アダプターの下方への移動によって液体の流れを作出する代わりに、アダプターを充填位置にとどめることができ、一方頂部の床支持体を通る液体の流れを利用して床を圧密化又はパックする。流れの速度は、床が最初に圧密化され、次にパックされるように変化させることができる。最後に、床が流れによって圧縮されたとき、アダプターを床表面まで下げて床が広がるのを防ぐことができる。
【0030】
本発明により、カラムをパックするための完全に自動化方法が提供される。図2は、本発明の一実施形態に係るパッキングプロセスのフローチャートである。
【0031】
このプロセスは以下のステップを含むことができる。
【0032】
S1:システムの下準備をする(priming)(このステップは任意であり、場合により本発明の自動化方法に含まれる)、すなわちホース、バルブ及びカラムを含むシステムをパージして空気を追い出す。これは周知の方法に従って行うことができる。これを行うことができる1つの例は、先ず全ての関連するホースを通して液体をポンプで送ることにより、カラム及びタンクの全ての液体接続部に液体を流すことである。次いで、できるだけ多くの空気がカラムから押し出されるまでカラムに液体を充填し、その後アダプターを動かして、過剰の空気と液体を最初に頂部スクリーンを通して、次に底部スクリーンを通して又はその逆に追い出す。
【0033】
S2:カラムの消毒は任意であり、場合により自動化方法に含まれる。
【0034】
S3:本発明の一実施形態では、スラリー濃度を自動的にインラインで測定する。
【0035】
S5:任意に、充填高さ(カラム内に充填すべきスラリーの量)を自動的に計算することができる。この充填高さは、目標とする床高さ、パック率及びスラリー濃度に基づいて計算される。或いは、カラムは、所定の高さまで又は所定の体積のスラリーにより充填することができる。
【0036】
S7:カラムにスラリーを充填する。充填速度は使用する特定の担体又はスラリー濃度、粘度及び温度のような周囲の条件に適するように選択することができる。自動的に制御することができるバルブのようなスラリー容器とカラムとの間の通路は、アダプターが底の位置から所定の速度で移動するとき、スラリーが圧力下でタンクからカラム内に引き込まれるように開いていなければならない。また、カラムは、ポンプによって、スラリーがカラム内にポンプで送られる際にアダプターを押し上げるか又は既に正確な充填位置にあるアダプターを用いてカラムにスラリーを充填することにより、充填することもできる。ポンプの代わりに、スラリーを満たした加圧タンクを使用することができる。ポンプの場合、計算された充填高さ又は充填体積のところでアダプターを(動いているならば)停止させ、バルブを閉じる。
【0037】
S9:次に、ホースの自動的な濯ぎを場合により含むことができる。これは、充填後ホース内に残留しているあらゆる担体を避けるためである。残留する担体はホースを塞ぐことにより、後の手順をより困難にする可能性がある。
【0038】
S11:担体床のパッキング。移動相の1つが可動アダプターである例において、流路(殆どの場合底)を開き、アダプターをパッキングの方法及びパックされる担体の性質に応じた所定の速度で下降させ始める。すなわち、ユーザーが最初に設定した選択又は入力に応じて、制御ユニットがパッキング中のアダプターに使用すべき速度を選択する。カラム内部の液体がアダプターと同じ速度で下方に移動し始め、透過性の底部スクリーン及び底部移動相バルブを通って移動し始める。クロマトグラフィー担体の粒子はスクリーンを通過しないで、ろ過作用により停止され、圧密化床を形成し始める。ある時点で全ての粒子が床を形成し、アダプターが充填床と接触する。アダプターは依然として一定の速度で動き続ける(この速度は変化させることもできる)。アダプターが床と接する時点は圧力、光センサー、アクチュエーター出力又はその他の測定可能な力の変化によって検出することができる。この時点で床はゆるくパックされており、多くの場合、所望の分離性能、所望の長期床安定性及び充填床を通る流れに起因する圧縮力に対する抵抗力を得るためにさらなる圧縮が必要である。アダプターが床内に下降し続けると、床はバネと同じように圧縮し始める。床とアダプターの接触時点の後必要とされる圧縮の量は、アダプターの速度、パッキング緩衝液、温度、カラム直径、床高さに依存するが、最も重要なことにはクロマトグラフィー担体の性質に依存する。必要とされる圧縮の量は、非圧縮床高さと圧縮床高さの比であるパック率として定義される。特定の担体及び現在のアダプター速度に対するパック率により、床をさらにどのくらい圧縮するべきか、従ってアダプターが最終的な床高さに達するまでさらにどのくらい移動するかが決まる。入力したスラリー濃度が正確であれば、アダプターは意図した目標の床高さで停止する。この特徴により、最終的な床高さは入力データに基づいて計算することができるので、床の検出を全くすることのない方法も可能になる。その後、アダプターを計算のみに基づいて所定の位置まで単に移動させる。最終的な床高さ又はパック率に変動が許容され得るのであれば、それを考慮するようにソフトウェアをプログラムすることができる。これにより、幾らかの入力の誤り又はスラリー濃度の測定誤差が許容される。この手順の終了時に、カラムがパックされる。上述したように、本発明で使用可能な他のパッキング方法もある。
【0039】
S12:効率試験。多くの場合、充填床の均一性又は効率を測定する要望がある。これは多くの方法で行うことができ、最も普遍的なものはパルス試験であるか又は遷移分析(transitional analysis)によるものである。ポンプ系は、担体の種類、床高さ及びカラム体積を考慮して予めプログラムされた方法に従ってこれらの試験を実行するのに必要なバルブと検出器を備えていることができる。
【0040】
床の質を評価するのに使用することができる各種の試験を以下に記載し、概要を述べる。通例1以上の試験を使用することができ、その最も一般的なものを本明細書中に挙げる。すなわち、試験は本明細書に記載するものに限定されることはない。
【0041】
パルス試験:パルス試験は充填床における分離効率を決定するための試験であり、普通はHETP(Height Equivalent to Theoretical Plate、理論段と等価な高さ)及びピークのゆがみを説明する非対称性(Asymmetry)として記録される。例えばUV又は導電率によって検出することができる物質の小さいパルス(その体積はカラム体積の1%に等しいことが多い)をカラムに注入する。次に、その物質を、カラムから出て行くまでカラムに沿って移動させる物質によって溶出する。得られるピークの幅がカラムの分離効率を決定する。広ければ広いほど、より多くの混合がカラム内で起こったことになり、それだけ効率は低い。
【0042】
遷移試験:遷移試験はパルス試験と類似している。その違いは、パルスを注入する代わりに、異なる導電率を有する新しい溶液をカラムに連続的にポンプで送ることである。出口で、溶液Aから溶液Bへの遷移が階段状の形状として見られる。この階段の一次導関数は基本的にパルスと同じであり、同じ原理に従って評価することができる。
【0043】
圧力/流:圧力/流試験を行って、最適な圧縮が達成されたかどうかを決定することができる。一定の流速における圧力低下は床の圧縮度に極めて敏感であり、標準値からの偏りはその床が最適に圧縮されていないことを示し得る。
【0044】
安定性:安定性試験は基本的に2つのパルス試験、すなわち第一のパッキング直後と他の一定時間、例えば一晩床に流した後との比較である。2つの試験の間で結果が大きく異なる場合は、床の性能が使用中に経時的に変化することを示す。これは一般に望ましくない。
【0045】
隙間測定:充填床の隙間の割合、すなわち粒子間の体積は、大部分が圧縮度によって決まる。隙間の割合の測定によって、最適な圧縮が達成されたかどうかを明らかにすることができる。この試験はパルス試験として行われるが、大きすぎて粒子の細孔に入ることができなく、従って床の隙間体積内のみを通るトレーサー分子を利用する。
【0046】
試験結果が所定の規格に合致していれば、そのカラムはクロマトグラフ分離、すなわちステップS14(場合により、再度の消毒ステップS13の後)に使用できる。結果が所定の規格を外れている場合、そのシステムは自動的にアンパッキング手順、すなわちステップS15を開始することができる。この試験結果の分析は自動的に行われ、決定は予め規定された許容基準に基づく。
【0047】
S13:試験結果が所定の規格に合致しており、場合により消毒ステップを再度実施する。このカラムはまた場合により保存溶液中に移すこともできる。これにより、カラムは保存中その性質及び衛生状態を保つことができる。
【0048】
S14:許容できる充填床が得られ、本発明のプロセスは終了する。
【0049】
S15:アンパッキング。試験結果が所定の規格外である場合、すなわち充填床が許容基準を満たしていなかった場合、そのカラムは本発明に従って(幾らか変化した条件下で再びパックするために)自動的にアンパッキングすることができる。カラムは、多くの方法で、移動相のいずれかにより液体の流れを送り込むポンプ系、アダプターの上下方向の移動及びスラリー又は緩衝液をカラムにポンプで送り、またカラムからポンプで排出するか又はカラム内に噴霧する際に通すことができるバルブを利用する総合効果によってアンパッキングすることができる。全プロセスは、カラム圧力、アダプター位置及び速度並びに流速及び方向のような重大なパラメーターを測定することによってモニターし制御することができる。カラムが液体又はスラリーをカラム内に噴霧するための手段を備えている場合、これらのポンプも自動化することができる。この場合、噴霧作用により床構造体を壊し、得られたスラリーをポンプで又はアダプターによりカラムの外に排出することができる。或いは、底部移動相を介して液体を送り込むのと同時にアダプターを上方に動かすことにより床を広げることができる。これにより、床が底部スクリーンから持ち上げられ、非圧縮床の点まで及び/又はこれを超えて広げられる。下部の液体層により床を押し上げることで、床が壊れ底に落ちる。頂部のカラム入口から液体を押すことにより、床の破壊を速める役に立たせることができる。この時点で、底部バルブを開き、底部スクリーンを通る遅い液体流が担体を底部スクリーンに再度パックされないように維持し始める。アダプターを下方に動かすことにより、底部担体バルブを介してスラリーを出て行かせる。プロセスを通じてアダプター速度と底部スクリーンを通る液体速度の両方を変えて、最良のアンパッキング条件を生じさせ、また一定の最終スラリー濃度を達成することができる。アダプターをその底部位置までずっと動かし、残っている担体を押し出すことができる。これでカラムは別のサイクルの準備ができた。以下のパラメーターの任意の組合せを用いて、1以上のステップでカラムをアンパッキングすることができる。拡大高さ、いろいろなステップにおいてポンプで送る流速、アダプター速度、押し出す速度などを制御して最適なアンパッキング手順を得ることができる。カラムをアンパッキングするための別のオプションは、カラムに対してスラリーを前後に引いたり押したりして床を壊すことである。さらに別のオプションは、全てのカラム入口を閉じ、カラム内に床を引き離す減圧(under-pressure)を生成させることである。システムは担体体積及び加えられる液体体積を計算することができるので、アンパッキングは担体が保存又は処分されるものであれば可能な限り高くすることができる特定の目標濃度又は次のパッキング計画に適した任意の濃度に向けて行うことができる。
【0050】
アンパッキング及び再パッキングの代案として、水又はパッキング緩衝液のような何らかの液体を高い流速で床を通して流すことにより充填床を状態調節することができる。これにより、床内の粒子をあちこちに動かせて、より適切なパッキング幾何学を得、床をアンパッキングする必要性を除くことができる。この場合、状態調節後床の特性が改善されたかどうかを見るためにプロセスをステップS12の試験に戻す。
【0051】
S17:試験結果に基づいて新しい充填高さを計算する。すなわち、試験により担体床が十分にパックされてないことが示された場合、改善された充填床を実現するために、カラム内に充填されたスラリー体積又はスラリー濃度を修正することができる。充填床の性質を改善するためにパッキング条件を変える別の可能性は、パッキング中のアダプター速度を変化させることであろう。場合により、新しい充填高さを計算するために、スラリー濃度の新たな自動測定を実施することもできる。その後、ステップS7(スラリーをカラムに充填する)からの手順を繰り返す。
【0052】
この結果、制御ユニット15は、本発明によると、これらのステップ(そのうちの幾つかは任意である)の開始と停止を手動の相互作用なく自動的に制御することができるようなソフトウェアを含んでいる。オペレーターは、パッキングプロセスを開始する前に入力データを制御ユニット15に提供するか又は予めプログラムされたリストからデータを選択するのが好ましい。このデータは、例えば担体の種類、目標の床高さ、カラムの直径、試験条件(試験の種類、試料、溶媒、試料の体積、試験速度)、パック率並びにプロセスシステムにより制御される例えば流れ及び圧力のような実行される実際のパッキングに関する情報であることができる。こうして、試験、アンパッキング及び再パッキングを含めた全パッキングプロセスを完全に自動化することができる。
【0053】
制御ユニット15はまた、パッキング手順を通じてユーザーをガイドするためのソフトウェアも含んでいることができ、ユーザーがパッキング手順に従い、また場合により手順を中断し、プロセスの1以上の部分を手動で制御することもできるグラフィカルユーザーインターフェースを含んでいることができる。
【0054】
本発明の一実施形態では、安全及び故障の検証作動を保証するために、例えばカラムの過圧又は担体の過度の圧縮をモニターするための手段のような安全機能を含ませることができる。これらのモニター手段は、例えばカラムの内部との液体接続部における圧力計、流れを制御する流量計、空気をカラムに入れることの危険を低減する空気センサーであることができるが、また床にかかる力の量を検出するための手段であることもできよう。
【0055】
カラムが円筒状であり、一定の直径を有していて、シリンダーの体積と床高さの間の直線的な関係を可能にする実施形態の例によって本発明を説明して来たが、関係が非直線的である他のカラム形状にも本発明を適用することが考えられる。例えばラジアルなカラム又はその他の形状であることができよう。
【0056】
以上、特定の実施形態に関して本発明を説明して来たが、当業者には明らかなように、特許請求の範囲に記載の本発明の思想と範囲から逸脱することなく本発明の多くの修正と変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動の相互作用を必要とすることなく自動的に担体粒子及び液体の分散物であるスラリーから担体床をカラム(3)内にパックするための方法であって、全て自動的に実行される以下のステップa)−f)を含んでなる、前記方法。
a)カラム(3)に一定の体積のスラリーを充填する。
b)予め規定された目標の床高さ又は予め規定された目標の床圧縮度までスラリーから担体床をパックする。
c)充填床の分離効率を試験する。
d)試験結果が許容できない場合自動的に床をアンパッキングするか又は試験結果が許容できない場合充填床の流れを状態調節し、c)に戻す。
e)試験結果に基づいてカラムに充填するべきスラリーの新しい体積を計算する。
f)a)から繰り返す。
【請求項2】
さらに、カラムにスラリーを充填する前に自動的に下準備をするか及び/又はカラムを消毒するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、ユーザーが入力したデータ及び/又はインラインで測定されたデータを考慮してカラム内に充填するべきスラリーの体積を自動的に計算するステップを含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、カラムにスラリーを充填した後、パッキングを開始する前にホースを自動的に濯ぐステップを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
試験がパルス試験、遷移試験、圧力/流試験、安定性試験及び/又は隙間測定であることができる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
さらに、ステップd)の試験結果が許容できる場合、充填カラムを自動的に消毒するか及び/又は充填カラムを保存溶液中に提供するステップを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のステップを制御するためにカラムパッキングシステムでの使用に適合したコンピューターソフトウェア製品。
【請求項8】
カラム、液体送達系及びスラリータンクに接続された制御ユニットであって、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の自動化パッキングプロセスを制御するためのソフトウェアを含む前記制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−522247(P2011−522247A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511564(P2011−511564)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050600
【国際公開番号】WO2009/145714
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)