説明

自動式ジョイント

【課題】ジョイントを引き寄せるときにひもが切断する事故をなくす。
【解決手段】自動式ジョイントが、一方の端部11がふさがれ、他方の端部12が開放され、側面に軸方向の開口13を有する筒状体1と、この筒状体1内に進入可能で側面に末端方向に向けて開いた弾性材の翼体22を有する棒状体2とからなり、この棒状体2が筒状体1内に進入すると前記翼体22が前記の軸方向の開口13に対して開いて筒状体1内に捕捉されるようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば2本のひもを、互いに接近させることにより自動的に連結する自動式ジョイント(連結金具)に関する。
【背景技術】
【0002】
直接捕獲できない野生動物に測定器などを取り付けたい場合等に、ボール、矢、もり(銛)等を対象物に向けて投げ、ひもでつないである物品をその対象物に取り付けようとすることがある。例えば大洋を遊泳する鯨の生態を把握するため位置を発信するプローブを鯨の身体に取り付けようとする場合、このような目的のために鯨をいちいち捕獲することはできないが、健康に支障のない程度の深さで鯨の身体にもりを打込み、もりに連結したプローブを鯨に取り付けるのである。もりに直接プローブを搭載したのではもりの発射ができないし、重くなって命中精度も低下するので、もりとプローブをひもで連結し、命中したらひもを引いてプローブを鯨に近づけるようにする。図8によりこのやり方を説明する。
【0003】
図において3はもり、4、5、6はそれぞれ第1、第2、第3のひもで、第1、第3のひもはごく短く、第2のひもは十分長い。7は追跡移動手段である例えば船、8は取り付け用とする物体、例えば位置発信用のプローブ、2は棒状体、9はリングである。もり3とリング9とは1m程度の第1のひもで連結され、リング9には長い第2のひもがかけ通され、その一端は船7に、他端は棒状体2に連結されている。さらに棒状体2とプローブ8は1m程度の第3のひもで連結されている。
【0004】
キャッチャーボートのなどの捕鯨銃を備える船7から発射されたもり3は、軽いリング9を牽引して飛ぶが、第2のひも5が十分長いのでプローブ8などは飛行の抵抗とはならない。もり3が無事鯨に命中したら、船7から第2のひもを引き寄せると棒状体2がリング9に嵌合し、もり3とプローブ8が直結される。不要となった第2のひも5は切断する。以後この鯨はプローブ8を牽引したまま回遊を続けることになる。
【0005】
鯨生態観測衛星は、現在、北極と南極とを通過する高度800kmの軌道を100分の周期で回っており、地球全面を守備範囲としている。プローブ8が太陽電池により発信する位置や温度、圧力等の生態情報は、鯨が呼吸のため海面に浮上したとき衛星に向けて送信され、地上局からの指令によって衛星がこれを転送してくるので、地上の基地では鯨の位置をはじめとする各種情報を把握することができる。
【0006】
ところで、リング9と棒状体2で構成される従来のジョイントは、リング9が空中を飛んでいるときにはとくに問題はないが、一旦水中に潜ると、引かれることによってリング9が回転してひもがよじれ、ひもを引いたとき、棒状体2がまだリング9に嵌合しないうちに切れてしまう事故がたびたび発生し、せっかく命中したもり3が無駄になってしまい、再び鯨を発見する機会を待たなければならないという問題点があり、改善が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水中でも回転したり、ひもが切れたりすることのない自動式ジョイント、ならびにこれを使用した移動体への物体の結合装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一方の端部がふさがれ、他方の端部が開放され、側面に軸方向の開口を有する筒状体と、この筒状体内に進入可能で側面に末端方向に向けて開いた弾性材の翼体を有する棒状体とからなり、この棒状体が筒状体内に進入すると前記翼体が前記の軸方向の開口に対して開いて筒状体内に捕捉されるようになっていることを特徴とする自動式ジョイントであるか、あるいは一方の端部がふさがれ、他方の端部が開放され、側面に軸方向の開口を有し、他方の端部の内面に前記一方の端部に向けて閉じ方向に伸びる弾性材の掛止爪を有する筒状体と、この筒状体内に進入可能な頭部に段付きのくびれ部を有する棒状体とからなり、この棒状体が筒状体内に進入すると前記掛止爪が前記のくびれ部を掛止して筒状体内に捕捉されるようになっていることを特徴とする自動式ジョイントであり、望ましくは筒状体内部のふさがれた端部近くに、外周に紐がかけ通されるローラを備えた前記の自動式ジョイントである。
【0009】
また本発明は、短いひもを介してもりに連結され筒状体と、筒状体が短いひもを介して物体に連結された棒状体と、一端を前記棒状体に連結され、他端を前記筒状体の前記ローラをかけ通して追跡移動手段に連結された長いひもとからなり、前記もりが目的の移動体に命中した後、前記長いひもを前記追跡移動手段に引き寄せることにより前記筒状体と棒状体とを結合させて物体を移動体に結合させるようにした前記の自動式ジョイントを使用する移動体への物体の結合装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ひもが切れる事故がなくなるので命中したもりへのプローブの取り付け作業の能率が大幅に向上するという、すぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の自動式ジョイントでは、筒状体1が円筒形であるためひもで引かれても水中で回転することがない。また多少回転しても自然にもどる場合も見られ、いずれにしてもひもが切れることがないから、命中したもりが無駄にならない。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面により説明する。図1は実施例の円筒形の筒状体1(籠)および棒状体2(係止駒)を示す斜視図、図2は筒状体1の正面図、図3は棒状体2の正面図で、11は筒状体1の一方の端部、12は他方の端部、13は筒状体1の側面の軸方向の開口、14はローラ、21は棒状体2の本体、22は翼体である。
筒状体1は、一方の端部11がふさがれ、他方の端部12が開放され、側面に軸方向の開口13を有する。ふさがれている側を先端、開放されている側を末端とする。筒状体1内部のふさがれた端部11近くに、外周にひもがかけ通されるローラ14を備える。
【0013】
また棒状体2は、この筒状体1内に進入可能で、側面には末端方向に向けて開いた弾性材の翼体22を有している。棒状体2は、たとえば片側にねじを加工した金属棒に翼体22とこれを押さえるスリーブをはめ、袋ナットで締め付けて構成する。
これら筒状体1、棒状体2は軽量であること、海水中における耐久性等を考慮して、チタン合金製とすることが望ましい。
【0014】
図1に矢印で示したように、棒状体2は筒状体1の開放された端部12から内部に進入可能である。進入する瞬間は翼体22がなびいて開放された端部12をくぐり抜けるが、直ちに翼体22が開いて開口13よりも突出するから筒状体1内に捕捉され、自然には抜け出ることがない。
棒状体2が筒状体1内に進入するのはひもによって引かれるためであるから、以下ひもの作用を図4、5により説明する。
【0015】
もり3と筒状体1の先端が第1のひもで、棒状体2の末端とプローブ8が第3のひもで結ばれていることは従来の場合と同様である。長い第2のひもの一端は船7に、他端は棒状体2の先端に接続されているが、筒状体1のところでは第2のひもは側面の開口13から入り、ローラ14にかけ通され、ローラ14の表面を回って末端の端部12の内側から出ている。
【0016】
図5に示すように、もり3が鯨Wに命中し、船7から第2のひもをたぐり寄せると棒状体2が筒状体1内に進入するから、棒状体2が捕捉され、第1のひも4と第2のひも6とが自動式ジョイントを介して連結されたら、不要となった第2のひも5を切断する。この手順は従来の場合とほぼ同じであるが、本発明の自動式ジョイントは水中で回転することがなく、また多少回転しても自然にもどり、ひもが切れることがないから、命中したもりが無駄にならないのである。
【0017】
つぎに実施例の変形例を図6、7により説明する。図6は変形例の筒状体1aを示す正面図、図7は同じく変形例の棒状体2aを示す正面図で、符号はこれまでに説明したもののほか、15は掛止爪、23はくびれ部である。
筒状体1aは、一方の端部11がふさがれ、他方の端部12が開放され、側面に軸方向の開口13を有し、前記他方の端部12の内面に前記一方の端部11に向けて閉じ方向に伸びる弾性材の掛止爪15を有する。ふさがれている端部11近くに、外周にひもがかけ通されるローラ14を備える。
【0018】
また棒状体2aは、この筒状体1a内に進入可能で、頭部に段付きのくびれ部23を有する。図6に想像線で示したように、棒状体2aが筒状体1a内に進入すると、前記掛止爪15が前記のくびれ部23を掛止して筒状体1a内に捕捉され、自然には抜け出ることがないのは図1〜3に示したものと同様である。また、ひもの作用も図4、5の説明と同様である。
以上鯨にプローブを取り付ける場合について説明したが、本発明の自動式ジョイントの用途はこれに限られるものではない。水に溺れている者の救助、断崖へのロープの取り付け、火災時の建物への進入など、人間が近づくよりも先に投擲物で対象物にアクセスし、ロープなどを固定したい場合等にひろく活用できるものと期待される。ひもの通し方によってはローラ14が必要ない場合も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施例の筒状体および棒状体を示す斜視図である。
【図2】本発明実施例の筒状体を示す正面図である。
【図3】本発明実施例の棒状体を示す正面図である。
【図4】本発明実施例のひもの作用を説明する説明図である。
【図5】同じく本発明実施例のひもの作用を説明する説明図である。
【図6】本発明実施例における変形例の筒状体を示す正面図である。
【図7】本発明実施例における変形例の棒状体を示す正面図である。
【図8】従来の技術における自動式ジョイントの機能を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1、1a 筒状体(籠)
2、2a 棒状体(係止駒)
3 もり
4、6 (短い)ひも
5 (長い)ひも
7 船(追跡移動手段)
8 プローブ(物体)
9 リング
11、12 端部
13 開口
14 ローラ
15 掛止爪
21 (棒状体の)本体
22 翼体
23 くびれ部
W 鯨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部(11)がふさがれ、他方の端部(12)が開放され、側面に軸方向の開口(13)を有する筒状体(1)と、この筒状体(1)内に進入可能で側面に末端方向に向けて開いた弾性材の翼体(22)を有する棒状体(2)とからなり、この棒状体(2)が筒状体(1)内に進入すると前記翼体(22)が前記の軸方向の開口(13)に対して開いて筒状体(1)内に捕捉されるようになっていることを特徴とする自動式ジョイント。
【請求項2】
一方の端部(11)がふさがれ、他方の端部(12)が開放され、側面に軸方向の開口(13)を有し、前記他方の端部(12)の内面に前記一方の端部(11)に向けて閉じ方向に伸びる弾性材の掛止爪(15)を有する筒状体(1a)と、この筒状体(1a)内に進入可能な頭部に段付きのくびれ部(23)を有する棒状体(2a)とからなり、この棒状体(2a)が筒状体(1a)内に進入すると前記掛止爪(15)が前記のくびれ部(23)を掛止して筒状体(1a)内に捕捉されるようになっていることを特徴とする自動式ジョイント。
【請求項3】
筒状体(1)内部のふさがれた端部(11)近くに、外周にひもがかけ通されるローラ(14)を備えた請求項1または2に記載の自動式ジョイント。
【請求項4】
短いひも(4)を介してもり(3)に連結され筒状体(1)と、筒状体(1)が短いひも(6)を介して物体(8)に連結された棒状体(2、2a)と、一端を前記棒状体(2、2a)に連結され、他端を前記筒状体(1)の前記ローラ(14)をかけ通して追跡移動手段(7)に連結された長いひも(5)とからなり、前記もり(3)が目的の移動体に命中した後、前記長いひも(5)を前記追跡移動手段(7)に引き寄せることにより前記筒状体(1)と棒状体(2、2a)とを結合させて物体(8)を移動体に結合させるようにした請求項3に記載の自動式ジョイントを使用する移動体への物体の結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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