説明

自動水栓及び洗面システム

【課題】 センサユニット回路を高密度に集積した自動水栓においても、安定的な動作が可能な自動水栓及びこの自動水栓を備えた洗面システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 スパウトと、前記スパウトに設けられた吐水口と、前記吐水口と併設して設けられたセンサユニットと、前記吐水口に至る通水路の開閉を制御する電磁弁と、前記センサユニットからの出力信号に基づいて前記電磁弁の動作を制御する制御部と、前記スパウトをアースに接続する接続経路と、を備えたことを特徴とする自動水栓を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動水栓及び洗面システムに関し、特に、スパウトの内部にセンサユニットを内蔵した自動水栓及びこの自動水栓を備えた洗面システムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを利用して、使用者が手を差し出している間だけ水を吐水する自動水栓は、利便性が高いだけではなく、非接触式であるために衛生的であり、また「閉め忘れ」を解消することによる節水効果も高いことから広く普及しつつある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような自動水栓は、連結ホースを収容するスパウトの中に赤外線などのセンサを内蔵させることにより、洗面台への取り付けも容易で、外観もすっきりとさせることができる。
図25は、従来用いられてきた自動水栓を設けた洗面台を表す一部断面模式図である。
【0004】
すなわち、洗面台11にはスパウト12が設置され、連結ホースを介して供給される水をボウル面に吐水可能としている。そして、スパウト12の先端付近には、給水口13と共に、発光素子21と受光素子22とが設けられている。一方、洗面台11の下には、制御ボックス3が設置され、この中に発光素子21の駆動回路、受光素子22の受信回路、電磁弁の制御回路などが収容されている。発光素子21としては、例えば、赤外線を放出するLED(light emitting diode)が用いられ、受光素子22としては、この赤外線を検出するフォトダイオードあるいはフォトトランジスタなどを用いることができる。
【0005】
使用者が手を差し出すと、発光素子21から放出された赤外線などの検知光が反射され、受光素子22がこの反射光を検知して、給水口13から吐水を開始させる。
【特許文献1】特開平6−2348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スパウト12に発光素子21と受光素子22のみを内蔵し、制御ボックス3との間でアナログ信号の入出力を行う場合、外来ノイズなどに対処するためにシールド線を用いる必要があり、また、信号線の線数も多くなるため、スパウトのスリム化やコストの観点で不利となる。
【0007】
これに対して、本発明者は、発光素子や受光素子と信号処理回路とを一体化させ、スパウト内に内蔵可能なセンサユニットを開発した。このセンサユニットは、アナログ・デジタル変換回路も内蔵し、外部からのデジタル信号により発光素子を駆動させ、受光素子からのアナログ出力をデジタル信号に変換して、洗面台の下方などに設置される制御部に出力する。デジタル信号で入出力させることにより、シールド線などが不要となり、また線数も減らすことができる。
【0008】
しかし、スパウトという限られたスペースにセンサユニットを収容するためには、発光素子、受光素子、回路基板などを高密度に集積させ実装する必要がある。このため、静電気(サージ)に対して耐圧が低下し、誤動作や故障が生じやすくなるという問題があることが判明した。
【0009】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、高密度に集積したセンサユニットを設けた自動水栓においても、静電気に対して耐圧が高く安定的な動作が可能な自動水栓及びこの自動水栓を備えた洗面システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、スパウトと、前記スパウトに設けられた吐水口と、前記スパウトに内蔵され、センサと信号処理回路とを含むセンサユニットと、前記吐水口に至る通水路の開閉を制御する電磁弁と、前記センサユニットからの出力信号に基づいて前記電磁弁の動作を制御する制御部と、前記スパウトをアースに接続する接続経路と、を備えたことを特徴とする自動水栓が提供される。
【0011】
上記構成によれば、スパウトをアースすることにより、外部から静電気ノイズが印加されても直ちにアースに放出できる。その結果として、センサユニットを高密度に集積しても、安定的な動作が可能な自動水栓を提供できる。
【0012】
または、前記接続経路は、前記電磁弁に接続されるものとしても、スパウトを確実且つ容易にアースすることができる。
または、導電性材料からなり前記吐水口と前記電磁弁とを接続する連結ホースをさらに備え、前記接続経路は、前記スパウトと前記連結ホースとを接続するものとしても、スパウトを確実にアースすることができる。
または、前記接続経路は、前記電磁弁の一次側に接続される止水栓に接続されるものとしてしも、スパウトを確実にアースすることができる。
【0013】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁性の材料からなるスパウトと、前記スパウトに設けられた吐水口と、前記スパウトに内蔵され、センサ及び信号処理回路を含むセンサユニットと、前記吐水口に至る通水路の開閉を制御する電磁弁と、前記センサユニットからの出力に基づいて前記電磁弁の動作を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする自動水栓が提供される。
【0014】
スパウトを絶縁性の材料で形成すると、外部からの静電気ノイズを確実且つ容易に遮断できる。その結果として、センサユニットを高密度に集積しても、安定的な動作が可能な自動水栓を提供できる。また例えばスパウトを樹脂で形成した場合には、スパウトを容易に変形でき、使用者の好みの角度や方向に吐水させることが可能となる。
【0015】
ここで、前記信号処理回路は、前記センサから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部を有するものとすれば、センサから出力される微弱なアナログ信号を伝送するためにシールド線を用いたり、信号配線数が増加させる必要がなくなる。その結果として、スリムなスパウト内にセンサユニットを内蔵でき、しかも静電気に対する耐久性の高い自動水栓を実現できる。
【0016】
一方、本発明のさらに他の一態様によれば、洗面台と、前記洗面台に設置された上記のいずれかの自動水栓と、を備えたことを特徴とする洗面システムが提供される。
上記構成によれば、外部から静電気ノイズが印加されてもセンサユニットに誤動作や故障が生ずることがない。その結果として、センサユニットを高密度に集積しても、安定的な動作が可能な自動水栓型の洗面システムを提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スパウトをスリム化しセンサユニットを高密度に集積した自動水栓においても、安定的な動作が可能な自動水栓及びこの自動水栓を備えた洗面システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる自動水栓の要部構成を表す模式図である。
また、図2は、この自動水栓を設置した洗面システムの具体例を表す斜視組み立て図である。
【0019】
すなわち、本実施形態の自動水栓は、スパウト700と、電磁弁400と、機能部300と、を有する。スパウト700の中には連結ホース500が収容され、その先端に吐水口720が接続されている。そして、吐水口720と併設してセンサユニット100が設けられている。なお、図1に例示した具体例の場合、センサユニット100は、吐水口720と並置してスパウト700の先端付近に配置されているが、本発明はこれには限定されず、後に具体例を挙げて説明するようにセンサユニット100がスパウト700の中程に内蔵されスパウトの側面から検知する形式であってもよい。
センサユニット100は、配線200を介して、コントローラや電源回路を内蔵した機能部300に接続されている。機能部300は、センサユニット100からの信号に応じて、電磁弁400の開閉動作を制御する。
【0020】
そして、本実施形態においては、図1に表したようにスパウト700が接続経路600を介してアースされている。接続経路600は、図1に表したように直接的なアース配線でもよく、または、後に具体例を参照して詳述するように、配管やバルブ部品などの一部分や、水などを介したものであってもよい。直接的なアース配線としては、例えば、電源コンセントに付設されているアース端子とスパウト700とを配線で接続するものが挙げられる。このようにスパウト700をアースすることにより、静電気ノイズに起因するセンサユニット100の誤動作や故障などを抑制して、自動水栓を安定的に動作させることができる。
なお、本願明細書においてスパウト700をアースするとは、スパウト700に印加される静電気ノイズからみたインピーダンスがセンサユニット100よりも低い電流経路を設けることを意味するものとする。
【0021】
図3は、機能部300の具体的な構成を例示するブロック図である。
機能部300は、例えば、電源部310と、定電圧回路320と、コントローラ330と、を有する。電源部310は、商用の交流100ボルトを変圧整流して直流電力を生成する。定電圧回路320は、得られた直流電力の電圧を所定の範囲に制御する。コントローラ330は、例えばCPU(central processing unit)や駆動回路などを有し、センサユニット100に電力を供給し、センサユニット100から感知出力を入力して演算処理する。センサユニット100からの感知出力信号は、例えば、所定のビット数のシリアルデータとしてコントローラ330に入力する。そして、コントローラ330は、センサユニット100からの感知出力に基づいて、例えば、ラッチング・ソレノイド・バルブからなる電磁弁400の開閉動作を制御する。なお、機能部300の構成は図3に例示したものに限定されず、その他にも例えば、電源として1次電池や2次電池などを用いたものや、電磁弁400を介して流れる水の水力を利用して発電する発電機の出力を電源として用いるものであってもよい。
【0022】
図4は、センサユニット100の具体的な構成を例示するブロック図である。
すなわち、センサユニット100は、CPUやA/D変換回路などを内蔵する制御部110、EEPROMなどのメモリ120、同期積分回路130、定電流駆動回路140、発光素子150、受光素子160などを有する。例えば、一回の検出について、発光素子150から1パルスの投光を実施する。検出体から反射された光を受ける受光素子160からの検出信号は、増幅され同期積分回路130によってノイズが除去されA/D変換されて反射光量データとしてCPUにより処理され、シリアルデータとして機能部300に出力される。
【0023】
図4に例示したような回路構成を有するセンサユニット100は、基板上に複数の半導体チップを実装することにより形成される。そして、このセンサユニット100がスパウト700の内部に内蔵されている。
【0024】
図5は、スパウトの先端部の斜視分解図である。
すなわち、スパウト700の先端は、略円筒状に開口している。この開口内には、連結ホース500に接続された吐水口720と、センサユニット100と、が併設して収容される。
【0025】
図6は、吐水口720とセンサユニット100との配置関係を例示する模式図である。
【0026】
すなわち、略円筒状のスパウト700の開口内に、略円筒状の吐水口720が偏心して配置され、その上半分の残余空間を取り囲むように略円弧状のセンサユニット100が併設されている。つまり、センサユニット100は、吐水口720とスパウト700との間に挟まれるように配置されている。センサユニット100は、回路部170の周囲を金属製のシールド180が取り囲み、プラスチックなどの絶縁体からなるケース190の中に収容された構造を有する。つまり、図4に例示したような回路ブロックが回路部170として収容されている。
【0027】
このような構造のセンサユニット100をスパウト700の中に収容すると、スパウト700とシールド180との間に容量(キャパシタンス)が発生するため、静電気(サージ)のようなインパルスノイズの影響を受けやすくなる。自動水栓のスリム化などに対応してセンサユニット100を小型化すると、ケース190の厚みも薄くなり、スパウト700とシールド180との間の容量もさらに大きくなるため、静電気ノイズの影響をさらに受けやすくなる。
【0028】
図7は、自動水栓の使用状態を説明するための模式図である。
すなわち、自動水栓を使用する使用者900は、通常は完全にアースされた状態にはなく、所定の電荷Qを帯電した状態にある。そして、使用者900がスパウト700に近づき、または接触すると、この電荷の放電(electro-static discharge:ESD)が生ずる場合がある。放電はパルス状に生ずるので、AC成分を含み、スパウト700とセンサユニット100のシールドとで形成されるキャパシタを流れる。そして、使用者900から放出された電荷Qは、同図に例示した如く、自動水栓の配管内の水を介してアースに流れる場合が多い。この時に、センサユニット100に内蔵する回路部170に静電電流の流入あるいは放電が生じて誤動作や故障が生ずることが考えれる。故障の一例としては、回路部170に設けられた保護素子が劣化することにより、リーク電流が増大する現象が挙げられる。
【0029】
図8は、自動水栓の回路が直接アースされていない場合の等価回路図である。
自動水栓の回路が直接アースされていない場合には、水をアース電位とした場合に、アース電位と、電磁弁400により絶縁された回路のグラウンドと、の間に容量C2が形成され、また、センサユニットのシールド180とスパウト700との間に容量C1が形成される。一方、容量Cを有する使用者900が電荷Qを帯電している時、アースからみて電位Vが生じている。この電位Vによる静電気が、容量C1及びC2を介して流れることにより放電される。
【0030】
以上説明したように、使用者が帯電している場合、スパウト700に放電が生ずると、いくつかの経路により自動水栓の回路に大電流が流れて誤動作や故障が生ずる場合がある。
【0031】
これに対して、本発明においては、図1に表したように、スパウト700をアースする。こうすれば、使用者900からスパウト700に静電気ノイズが流入しても直ちにアースに放出され、内蔵されたセンサユニット100などに流入することはない。その結果として、スパウト700をスリム化してセンサユニットのケース190の厚みを薄くした場合でも、誤動作や故障などの問題を解消できる。
【0032】
以下、本実施形態においてスパウト700をアースする場合の具体例について説明する。
【0033】
図9は、スパウトの具体的な構造を例示する斜視組み立て図である。
すなわち、スパウト700には固定軸750が取り付けられる。固定軸750は、図示しない洗面台に設けられた取り付け穴を貫通し、パッキン760、ワッシャ752、座金754を介して六角ナット756により固定される。また、スパウト700の中には、連結ホース500が挿入され、ホースクランプ502により吐水継手722に接続される。吐水継手722の先端には、吐水キャップ(吐水口)720が取り付けられる。吐水口720とセンサユニット100は、固定ネジ726によりスパウト700の先端に固定される。
【0034】
スパウト700は金属製とされる場合が多く、固定軸750と電気的に導通している。従って、スパウト700をアースする際には、固定軸750に電線などの接続経路600を接続すると便利である。
【0035】
以下、スパウト700をアースする具体例について説明する。
【0036】
図10は、機能部300を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、AC100ボルトなどのコンセントに機能部300が接続されている場合、このコンセントのアース端子とスパウト700とを接続することによりアースできる。この時、同図に例示した如く、機能部300を介して接続経路600を配線することができる。
【0037】
図11は、吐水口720を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、吐水口720が金属などの導電性材料からなる場合には、スパウト700と吐水口720とを接続経路600により接続することによりアースできる。ただしこの場合には、電磁弁400から吐水口720までの連結ホース500に連続的に水が存在し、且つ、電磁弁400の上流側水路と下流側水路との間で電気的な導通が形成されていることが望ましい。
【0038】
図11に一点鎖線で表したように、吐水口720が水を介してアースされている場合には、スパウト700を吐水口720に接続することにより、放電経路を形成でき、自動水栓の誤動作や故障を抑制できる。
【0039】
図12は、連結ホース500を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、連結ホース500を導電性の材料により形成した場合には、連結ホース500あるいはその中の水と電磁弁400を介してアース経路が形成される。従って、スパウト700と連結ホース500とを接続経路600で接続すれば、スパウト700をアースできる。例えば、連結ホース500の材料として導電性の樹脂などを用いることにより、本具体例を実施できる。
【0040】
図13は、電磁弁400を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、電磁弁400にアースされている部分がある場合には、その部分とスパウト700とを接続経路600により接続することにより、スパウト700をアースできる。この場合も、図9に関して前述したように、固定軸750と電磁弁400とを接続することにより、スパウト700をアースできる。
【0041】
図14は、電磁弁400の断面構造を例示する模式図である。
すなわち、電磁弁400は、金属製のフレーム410に、プランジャー420、ソレノイドコイル430、シート部440などが設けられた構造を有する。水は、同図に矢印で表されたように1次側から供給され、シート部440の移動に応じて、2次側への流路が開閉される。そして、フレーム410は水に接しており、また水路の1次側と2次側との間も金属製のフレーム410により導通が確保されている。
【0042】
従って、このような構造の電磁弁400を用いる場合には、接続経路600によりスパウト700と電磁弁400のフレーム410とを接続することにより、スパウト700を確実且つ容易にアースできる。
【0043】
図15は、電磁弁400の1次側配管にスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、通常の使用態様においては、電磁弁400の1次側の配管は、金属製である場合が多い。また、1次側の配管は、常に水に満たされている場合が多い。また、従って、この1次側の配管に接続経路600を介してスパウト700を接続すれば、スパウト700をアースできる。
【0044】
図16は、止水栓480にスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
すなわち、通常は、電磁弁400の1次側に止水栓480が設けられる場合が多い。止水栓480は、手動による水路の開閉を可能とし、例えば、自動水栓を設置する工事や交換・除去する工事などの際に給水を停止するために用いることができる。
【0045】
図17(a)及び(b)は、止水栓480の近傍に機能部300が設置された状態を例示する模式図である。
このように、自動水栓の機能部300や電磁弁400は、洗面室の壁面に取り付けられた止水栓480の近傍に設置され、止水栓480の2次側の水路の開閉を自動制御する。そして、このような止水栓480も、殆どの場合は、図14に関して前述した電磁弁400と同様に金属製のフレームが1次側及び2次側の水と接触した構造を有する。従って、止水栓480とスパウト700とを接続経路600で接続すれば、スパウト700を確実且つ容易にアースできる。
【0046】
以上、使用者900からの放電に対して、スパウト700をアースする実施形態について説明した。しかし、本発明はこれら具体例には限定されない。これらの他にも、例えば、スパウト700に針状の電極を設置し、この電極を介して空中に放電が生ずるようにしてもよい。すなわち、スパウト700に流入した静電気ノイズが、針状の電極の先端から空気中に放出されるような「スタティック・ディスチャージャー(static dischargerr)」をスパウト700に接続することにより、センサユニット100を保護することも可能である。
【0047】
次に、本発明のもうひとつの実施形態として、スパウトを樹脂化する実施形態について説明する。
図18は、本実施形態のスパウト700R内部の断面構造を例示する模式図である。
すなわち、本実施形態においては、樹脂製のスパウト700Rの内部にセンサユニット100と吐水口720とが収容されている。
【0048】
スパウト700Rを絶縁性の樹脂で形成すれば、使用者900からの放電は生じず、その内部に収容されたセンサユニット100は確実に保護される。また、図6に関して前述したようなケース190を介した寄生容量が形成されることもない。従って、スパウト700Rをスリム化しても、使用者からのESDによるセンサユニットの誤動作や故障を防ぐことができる。
また、スパウト700Rを樹脂で形成した場合には、機械的な柔軟性が得られ、変形が容易となる。従って、使用者がスパウト700Rを曲げて好みの角度や方向に水を吐水させることも可能となる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
次に、本発明者が実施した実験の一例について説明する。
まず、スパウト700をアースする効果を調べた実験の結果について説明する。
【0050】
図19は、本発明者が実施した実験を説明するための模式図である。
すなわち、図19(a)及び(b)に表したように、厚み26センチメータのダンボール1000の上に金属製のスパウト700、機能部300及び電磁弁400を設置した。スパウト700の先端には、センサユニット100(図示せず)が収容されている。スパウト700に収容されたセンサユニット100と機能部300とが接続され、また機能部300と電磁弁400とが接続されている。
図19(a)に表した条件(条件1)の場合、電磁弁400は、グランドプレーン(GP)にアースされ、実際の使用状態に近い条件にされている。
一方、図19(b)に表した条件(条件2)の場合、電磁弁400は、グランドプレーンに接続され、さらにスパウト700もグランドプレーンに接続されてアースされた状態が形成されている。
【0051】
そして、これら条件1及び2について、スパウトに接触放電(無火花)させることによる静電気試験を実施した。いずれの場合も、放電コンデンサは150ピコファラド、放電抵抗は330オームとし、放電ガン1500をスパウト700に接触させて放電を実施した。また、放電電圧は1〜2キロボルトずつ上昇させ、各電圧レベルで10回の放電を実施してセンサユニット100の動作を調べた。
【0052】
図20は、この試験の結果をまとめた一覧表である。
スパウト700をアースしない場合(条件1)には、放電電圧を16キロボルトに上げた時に、センサユニット100の消費電流が13ミリアンペアに上昇した。これは、センサユニットの保護素子に大電流が流れて劣化し、リークが生じたためであると考えられる。なお、正常動作時の消費電流は、100マイクロアンペア程度である。
【0053】
これに対して、スパウト700をアースした場合(条件2)には、放電電圧30キロボルトまで上げてもセンサユニット100に異常は生じなかった。つまり、スパウト700をアースすることにより、静電気に対する耐久性が大幅に改善されたことを確認できた。
【0054】
次に、スパウトを樹脂化した実験について説明する。
図21は、スパウトを樹脂化する効果について調べた実験の条件を表す模式図である。
【0055】
すなわち、図19に関して前述したものと同様に、厚み26センチメータのダンボール1000の上に樹脂製のスパウト700R、機能部300及び電磁弁400を設置した。スパウト700Rの先端には、センサユニット100(図示せず)が収容されている。スパウト700Rに収容されたセンサユニット100と機能部300とが接続され、また機能部300と電磁弁400とが接続されている。そして、電磁弁400をアースした。
【0056】
この条件にて、図19に関して前述したものと同様の接触放電による試験を実施した。その結果、放電電圧を30キロボルトまで上げてもセンサユニット100に異常はみられなかった。つまり、スパウト700Rを樹脂で形成すると、静電気に対する耐久性が大きく改善されることが確認できた。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、スパウト700をアースし、あるいはスパウト700Rを樹脂化することにより、静電気ノイズの影響を遮断して安定的に動作させることができる。その結果として、スパウト700(700R)をスリム化させてデザイン性や汎用性を向上させた自動水栓を安定して動作させることが可能となる。
【0058】
図22は、本発明にかかる自動水栓を設けた洗面台を表す一部断面模式図である。
【0059】
すなわち、洗面台800にはスパウト700が設置され、連結ホース500を介して供給される水をボウル面に吐水可能としている。そして、スパウト700の側面にセンサユニット100が設けられている。センサユニット100は、使用者が手を差し出すとそれを検知して吐水を開始させる。
そして、本発明によれば、スパウト700をアースし、または樹脂化することにより、使用者からスパウトへの放電などによる静電気による誤動作や故障を確実に防ぐことができる。
【0060】
図23は、本発明にかかる自動水栓の第2の具体例を表す模式図である。すなわち、本具体例の場合、スパウト700の先端の開口端に、吐水口720とセンサユニット100とが併設されている。このようにすると、センサユニット100は使用者からは見えづらくなり、外観がさらにすっきりとする。また、使用者が吐水口720の前に手を差し出すと確実に検知させることができ、使用感に優れる。
そして、本具体例においても、スパウト700をアースし、または樹脂化することにより、使用者からスパウトへの放電などによる静電気による誤動作や故障を確実に防ぐことができる。
【0061】
またさらに、水栓は機能・デザインともに進化し続け、スリム化が進められている。
【0062】
図24は、本発明者が開発した自動水栓の外観を表す模式図である。
すなわち、この自動水栓の場合、スパウト700の外径は20ミリメータ余りと細く、図23に表したものの約半分のスリムサイズである。そして、その先端には、吐水口720とセンサユニット100とが高密度に併設されている。この自動水栓は、デザイン的に極めて優れ、汎用性も高く、且つ、使用者の手の位置を確実に検出して吐水を制御できる点でも優れる。
【0063】
そして、このようにスパウトを高度にスリム化させた場合においても、スパウト700をアースし、または樹脂化することにより、使用者からスパウトへの放電などによる静電気による誤動作や故障を確実に防ぐことができる。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
例えば、スパウト、センサユニット、吐水口、機能部、電磁弁などの形状や構造、サイズ、配置関係などについては、当業者が適宜設計変更して採用したものも、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態にかかる自動水栓の要部構成を表す模式図である。
【図2】本実施形態の自動水栓を設置した洗面システムの具体例を表す斜視組み立て図である。
【図3】機能部300の具体的な構成を例示するブロック図である。
【図4】センサユニット100の具体的な構成を例示するブロック図である。
【図5】スパウトの先端部の斜視分解図である。
【図6】吐水口720とセンサユニット100との配置関係を例示する模式図である。
【図7】自動水栓の使用状態を説明するための模式図である。
【図8】自動水栓の回路が直接アースされていない場合の等価回路図である。
【図9】スパウトの具体的な構造を例示する斜視組み立て図である。
【図10】機能部300に内蔵されるアース配線を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図11】吐水口720を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図12】連結ホース500を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図13】電磁弁400を介してスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図14】電磁弁400の断面構造を例示する模式図である。
【図15】電磁弁400の1次側配管にスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図16】止水栓480にスパウト700をアースする具体例を表す模式図である。
【図17】止水栓480の近傍に機能部300が設置された状態を例示する模式図である。
【図18】本発明の実施形態のスパウト700内部の断面構造を例示する模式図である。
【図19】本発明者が実施した実験を説明するための模式図である。
【図20】本発明が実施した試験の結果をまとめた一覧表である。
【図21】スパウト700を樹脂化する効果について調べた実験の条件を表す模式図である。
【図22】本発明にかかる自動水栓を設けた洗面台を表す一部断面模式図である。
【図23】本発明のかかる自動水栓の第2の具体例を表す模式図である。
【図24】本発明者が開発した自動水栓の外観を表す模式図である。
【図25】従来用いられてきた自動水栓を設けた洗面台を表す一部断面模式図である。
【符号の説明】
【0066】
100 センサユニット
110 制御部
120 メモリ
130 同期積分回路
140 定電流駆動回路
150 発光素子
160 受光素子
170 センサユニット回路部
180 シールド
190 ケース
200 配線
300 機能部
310 電源部
320 定電圧回路
330 コントローラ
400 電磁弁
410 フレーム
420 プランジャー
430 ソレノイドコイル
440 シート部
480 止水栓
500 連結ホース
500 配線
502 ホースクランプ
600 接続経路
700、700R スパウト
720 吐水口
722 吐水継手
726 固定ネジ
750 固定軸
752 ワッシャ
754 座金
756 六角ナット
760 パッキン
800 洗面台
900 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトと、
前記スパウトに設けられた吐水口と、
前記スパウトに内蔵され、センサと信号処理回路とを含むセンサユニットと、
前記吐水口に至る通水路の開閉を制御する電磁弁と、
前記センサユニットからの出力信号に基づいて前記電磁弁の動作を制御する制御部と、
前記スパウトをアースに接続する接続経路と、
を備えたことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
前記接続経路は、前記電磁弁に接続されることを特徴とする請求項1記載の自動水栓。
【請求項3】
導電性材料からなり前記吐水口と前記電磁弁とを接続する連結ホースをさらに備え、
前記接続経路は、前記スパウトと前記連結ホースとを接続することを特徴とする請求項1記載の自動水栓。
【請求項4】
前記接続経路は、前記電磁弁の一次側に接続される止水栓に接続されることを特徴とする請求項1記載の自動水栓。
【請求項5】
絶縁性の材料からなるスパウトと、
前記スパウトに設けられた吐水口と、
前記スパウトに内蔵され、センサ及び信号処理回路を含むセンサユニットと、
前記吐水口に至る通水路の開閉を制御する電磁弁と、
前記センサユニットからの出力に基づいて前記電磁弁の動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする自動水栓。
【請求項6】
前記信号処理回路は、前記センサから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動水栓。
【請求項7】
洗面台と、
前記洗面台に設置された請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動水栓と、
を備えたことを特徴とする洗面システム。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図2】
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【図14】
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【図17】
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【図25】
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